JP5711369B2 - 蛋白製剤の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ウイルス除去タンパク質製剤の製造方法及び該製造方法により製造されるウイルス除去タンパク質製剤に関する。
バイオ医薬品や血漿分画製剤等に代表されるタンパク質製剤は、原料由来又は工程由来のウイルスの混入が懸念される。従って、このようなタンパク質製剤を製造する際には、製剤中のウイルスの不活化や除去が、製剤の安全性及び安定性の観点から非常に重要である。ウイルスの不活化方法としては、加熱処理や化学薬品による処理等が行われているが、それら単独の処理ではウイルスの不活化は充分でなく、またこれらの方法では製剤中のタンパク質そのものも変性するおそれがある。このような背景から、化学的な変性を伴わない物理的なウイルス除去手段として、ウイルス除去膜を用いた濾過によるウイルスの分離除去が実施されている(例えば、特許文献1〜3等)。
ウイルス除去膜としては、セルロースのような天然素材よりなる膜、あるいはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルスルホン(PES)のような合成高分子素材よりなる膜が知られている(非特許文献1〜4)。特に、タンパク質溶液中のタンパク質の分子が小さい場合、ウイルスは透過できないが、タンパク質分子は透過できるようなサイズの孔径を有する濾過膜である小孔ウイルス除去膜が用いられる。
ウイルス除去膜を装填したウイルス除去装置によるウイルス含有溶液の濾過は、短時間でより多くの量のタンパク質溶液を濾過でき、かつ充分に高いウイルス除去性能を発揮できることが理想である。短時間でより多くの量のタンパク質溶液を処理するために、一般にウイルス含有溶液の濾過はできるかぎり高圧で行う。しかしながら、このような高圧での濾過を続けると、膜の内部に、濾液に含まれるべきタンパク質が残存する場合がある。また、近年ではタンパク質の製剤濃度が高くなる傾向にあり、それに伴いウイルスを除去するための濾過工程においてもタンパク質濃度を高くしたいという要求が高まりつつある。高濃度のタンパク質溶液を小孔ウイルス除去膜で濾過する場合、特に膜の内部へのタンパク質残存による目詰まりの発生が顕著である。
小孔ウイルス除去膜の内部に残存したタンパク質の回収には、タンパク質の含まれていない緩衝液(通常は、タンパク質を溶解している緩衝液と同じもの)を洗浄液として濾過することが行われる。この工程は、タンパク質濾過の後で追加的に行われる濾過であるため、ポストウォッシュ(Post−wash、後洗浄)、後濾過(Post filtration)と呼ばれている。ポストウォッシュの際、通常は、濾過液の入り口をタンパク質溶液のラインから洗浄液のラインに切り替えるために、濾過圧力を一旦開放する。濾過圧力を下げないと、洗浄液側に液が逆流してしまう。
ポストウォッシュ工程と同様、ウイルス除去膜で濾過する際の濾過圧力が下がる場合としては、停電等の事情で、濾過中に加圧が一旦中断するケースも挙げられる(ストップ・アンド・スタート(Stop&Start)と呼ばれる)。
また、タンパク質製剤の種類によっては、製剤の製造において、ウイルス除去膜で濾過する際の濾過圧力が低いことが望ましい場合もある。低い濾過圧力での濾過は、目詰まりしやすい溶液の最終処理量を増加しようとする場合や、形状が細長い高分子タンパク質溶液の透過率や回収率を増加しようとする場合に実施されることが多い。低い濾過圧力を採用する際の具体的な濾過圧力は、透過性と生産性との兼ね合いで決定されることが多く、得ようとするタンパク質製剤の濃度等にも左右される。例えば特許文献4は、0.15kgf/cm2程度の濾過圧力を採用している。
特開2001−335509号公報 特開2003−274941号公報 国際公開2010/109920号公報 米国特許7932355号公報
Manabe S, Dev. Biol. Stand., (1996)88:81-90 Brandwein Hら、Dev Biol (Basel)., (2000)102:157-63 Aranha-Creadoら、Biologicals., (1998)Jun;26(2):167-72 L. Moce-Llivinaら、Journal of Virological Methods, (2003)April, Vol.109, Issue 1, Pages 99-101
これまで、ウイルス除去膜を用いたタンパク質溶液の濾過は、処理量を増やし、効率を上げるために、できるかぎり高圧で行う方法に注目が集まり、低い濾過圧力下での濾過については、十分な知見が得られていなかった。
このような背景のもと、本発明者らは、低い濾過圧力下での、小孔ウイルス除去膜を用いたタンパク質溶液の濾過について、独自に研究を進めたところ、驚くべきことに、低い濾過圧力下での濾過を、高い濾過圧力下と同様の溶液条件で実施すると、溶液条件によっては、ウイルスが濾液側に漏れ、ウイルス除去率の低いタンパク質製剤が得られる場合があるという知見を得た。上述のポストウォッシュ工程や、ストップ・アンド・スタート工程においても、低い濾過圧力下で濾過が行われるため、溶液条件によっては、ウイルス除去率の低下が起こる場合があることも見出した。
上記の新たな知見に基づき、本発明は、低い濾過圧力下で、小孔ウイルス除去膜を用いてウイルス含有タンパク質溶液を濾過する工程を含むウイルス除去タンパク質製剤の製造方法であって、ウイルス除去率が高いタンパク質製剤の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決する為に鋭意研究を重ねた結果、濾過に供する溶液中のpH及び塩のイオン強度の条件を特定の値にすることで、低い濾過圧力下であってもウイルス除去率の高いタンパク質製剤が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下に関する。
〔1〕
以下の工程(a):
(a)小孔ウイルス除去膜を用いてウイルス含有タンパク質溶液を濾過してウイルス除去タンパク質溶液を得る濾過工程;
を含むウイルス除去タンパク質製剤の製造方法であって、
濾過工程(a)が、以下の工程(q):
(q)小孔ウイルス除去膜を用いて、濾過圧力0.30kgf/cm2以下で溶液を濾過してウイルス除去タンパク質溶液を得る低圧濾過工程;
を含み、
低圧濾過工程(q)における濾過前溶液のpH(X)及び塩のイオン強度(Y(mM))が、以下の式1及び式5:
0≦Y≦150X−590 (式1)
3.5≦X≦8.0 (式5)
又は、以下の式4及び式5:
Y=0 (式4)
3.5≦X≦8.0 (式5)
を満たす方法。
〔2〕
前記工程(q)における濾過前溶液が、ウイルス含有タンパク質溶液であって、
濾過工程(a)で濾過される全ウイルス含有タンパク質溶液の50%以上が低圧濾過工程(q)で濾過される、〔1〕に記載の方法。
〔3〕
濾過工程(a)が、小孔ウイルス除去膜を用いて、濾過圧力0.30kgf/cm2以下でウイルス含有タンパク質溶液を濾過してウイルス除去タンパク質溶液を得る工程であり、濾過工程(a)における濾過前溶液のpH(X)及び塩のイオン強度(Y(mM))が、以下の式1及び式5:
0≦Y≦150X−590 (式1)
3.5≦X≦8.0 (式5)
又は、以下の式4及び式5:
Y=0 (式4)
3.5≦X≦8.0 (式5)
を満たす、〔1〕に記載の方法。
〔4〕
濾過工程(a)が、低圧濾過工程(q)に先立って行われる以下の工程(p):
(p)小孔ウイルス除去膜を用いて、濾過圧力0.30kgf/cm2超でウイルス含有タンパク質溶液を濾過してウイルス除去タンパク質溶液を得る高圧濾過工程;
を含む、〔1〕に記載の方法。
〔5〕
低圧濾過工程(q)における濾過前溶液が洗浄用緩衝液である、〔4〕に記載の方法。
〔6〕
低圧濾過工程(q)が、ポストウォッシュ工程あるいはストップアンドスタート工程である、〔4〕又は〔5〕に記載の方法。
〔7〕
低圧濾過工程(q)における濾過溶液のpH(X)及び塩のイオン強度(Y(mM))が、以下の式2及び式5:
0≦Y≦50X−200 (式2)
3.5≦X≦8.0 (式5)
又は以下の式4及び式5:
Y=0 (式4)
3.5≦X≦8.0 (式5)
を満たす、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の方法。
〔8〕
低圧濾過工程(q)における濾過前溶液のpH(X)及び塩のイオン強度(Y(mM))が、以下の式3及び式5:
0≦Y≦50X−250 (式3)
3.5≦X≦8.0 (式5)
又は以下の式4及び式5:
Y=0 (式4)
3.5≦X≦8.0 (式5)
を満たす、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の方法。
〔9〕
低圧濾過工程(q)が、小孔ウイルス除去膜を用いて、濾過圧力0.20kgf/cm2以下で溶液を濾過してウイルス除去タンパク質溶液を得る工程である、〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の方法。
〔10〕
濾過工程(a)前のウイルス含有タンパク質溶液中のウイルス濃度(C0)と濾過後のウイルス除去タンパク質溶液中のウイルス濃度(CF)から以下の式6:
LRV=log10(C0/CF) (式6)
を用いて算出されるLRV(Log Reduction Value)が4以上である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の方法。
〔11〕
濾過工程(a)前のウイルス含有タンパク質溶液中のウイルス濃度(C0)と濾過後のウイルス除去タンパク質溶液中のウイルス濃度(CF)から以下の式6:
LRV=log10(C0/CF) (式6)
を用いて算出されるLRV(Log Reduction Value)が4以上であり、
濾過工程(a)前のウイルス含有タンパク質溶液中のウイルス濃度(C0)と、濾過工程(a)後の洗浄用緩衝液濾液中のウイルス濃度(Cw)から以下の式7:
LRV’=log10(C0/Cw) (式7)
を用いて算出されるLRV’が4以上である、〔5〕又は〔6〕に記載の方法。
〔12〕
小孔ウイルス除去膜の材質が、セルロース又は親水化された合成高分子である、〔1〕〜〔11〕のいずれかに記載の方法。
〔13〕
小孔ウイルス除去膜の材質が、親水化された合成高分子であり、前記合成高分子が、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン及びポリエチレンからなる群から選択される、〔1〕〜〔12〕のいずれかに記載の方法。
〔14〕
小孔ウイルス除去膜の形状が、平膜又は中空糸膜である〔1〕〜〔13〕のいずれかに記載の方法。
〔15〕
ウイルス含有タンパク質溶液中のタンパク質濃度が、1mg/mL〜100mg/mLである、〔1〕〜〔14〕のいずれかに記載の方法。
〔16〕
ウイルス含有タンパク質溶液が、各種モノクローナル抗体、遺伝子組み換え血液凝固因子、インターフェロン、各種ホルモン、各種酵素、免疫グロブリン、アルブミン、血液凝固第VIII因子、血液凝固第IX因子、フィブリノーゲン及びアンチトロンビンIIIからなる群から選択される1種以上のタンパク質含む、〔1〕〜〔15〕のいずれかに記載の方法。
〔17〕
ウイルス含有タンパク質溶液が、タンパク質として抗体を含む、〔1〕〜〔15〕のいずれかに記載の方法。
〔18〕
ウイルス含有タンパク質溶液が、タンパク質として血液凝固第VIII因子又はフィブリノーゲンを含む、請求項〔1〕〜〔15〕のいずれかに記載の方法。
〔19〕
ウイルス含有タンパク質溶液が、ヒトパルボウイルスB19(B19)、マウス微小ウイルス(MVM)、ブタパルボウイルス(PPV)、ウシパルボウイルス(BPV)、イヌパルボウイルス(CPV)、ポリオウイルス(Polio)、サーコウイルス、A型肝炎ウイルス(HAV)及びE型肝炎ウイルス(HEV)からなる群から選択される1種以上のウイルスを含有する、〔1〕〜〔18〕のいずれかに記載の方法。
〔20〕
ウイルス含有タンパク質溶液が、エンベロープを持たない直径32nm以下のウイルスを含有する、〔1〕〜〔19〕のいずれかに記載の方法。
〔21〕
ウイルス含有タンパク質溶液が、無機塩、緩衝液成分、界面活性剤及び糖類からなる群から選択される1種以上の成分を含有する、〔1〕〜〔20〕のいずれかに記載の方法。
〔22〕
以下の工程(a):
(a)小孔ウイルス除去膜を用いてウイルス含有タンパク質溶液を濾過してウイルス除去タンパク質溶液を得る濾過工程;
を含むウイルス除去タンパク質製剤の製造方法であって、
濾過工程(a)が、以下の工程(q):
(q)小孔ウイルス除去膜を用いて、濾過圧力0.30kgf/cm2以下で溶液を濾過してウイルス除去タンパク質溶液を得る低圧濾過工程;
を含み、低圧濾過工程(q)に先立って、工程(q)における濾過前溶液のpH(X)及び塩のイオン強度(Y(mM))が、以下の式1及び式5:
0≦Y≦150X−590 (式1)
3.5≦X≦8.0 (式5)
又は、以下の式4及び式5:
Y=0 (式4)
3.5≦X≦8.0 (式5)
を満たすよう、濾過前溶液を調整する工程を含む方法。
〔23〕
〔1〕〜〔22〕のいずれかに記載の方法で得られる、ウイルス除去タンパク質製剤。
本発明によれば、低い濾過圧力下で、小孔ウイルス除去膜を用いてウイルス含有タンパク質溶液を濾過する工程を含むウイルス除去タンパク質製剤の製造方法において、ウイルス除去率の高いタンパク質製剤を提供することができる。従って、例えば、低い濾過圧力で継続してウイルス含有タンパク質溶液を濾過する場合、ポストウォッシュ工程を含む場合、あるいはストップ・アンド・スタート工程を含む場合においても、ウイルス除去率の高いタンパク質製剤を提供することができる。
図1は、実施例2において、ウイルスの漏れを生じない場合の濾過前溶液中のpH(X)と塩のイオン強度(Y(mM))との関係を示すグラフである。左側から、実施例2で決定した、式1、式2及び式3に対応する線を示す。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態におけるウイルス除去タンパク質製剤の製造方法は、小孔ウイルス除去膜を用いてウイルス含有タンパク質溶液を濾過してウイルス除去タンパク質溶液を得る濾過工程(a)を含む。
工程(a)で濾過される「ウイルス含有タンパク質溶液」は、後述の小孔ウイルス濾過膜で濾過した場合に濾過膜を通過するタンパク質を含み、ウイルスを含有する可能性のある溶液であれば特に制限されない。特に、ヒトを含む動物由来成分や遺伝子等を原料とする溶液は、ウイルスを含有する可能性が高いため、本実施の形態の製造方法におけるウイルス含有タンパク質溶液として用いることで、ウイルス除去タンパク質製剤を効率よく提供することができる。
ウイルス含有タンパク質溶液としては、例えば、バイオ医薬品の原料である、遺伝子工学、細胞培養等のバイオテクノロジーを利用して生産される、ペプチドやタンパク質を有効成分として含む溶液が挙げられる。具体的には、各種モノクローナル抗体(IgG、IgM等)、遺伝子組み換え血液凝固因子、インターフェロン、各種ホルモン(成長ホルモン、エリスロポエチン等)、各種酵素、糖改変タンパク質、PEG化タンパク質に代表される改変タンパク質、人工タンパク質等を含む溶液等が例示されるが、これに制限されるものではない。
また、ウイルス含有タンパク質溶液としては、例えば、血漿から精製して得られる血漿分画製剤の原料も挙げられる。血漿分画製剤としては、免疫グロブリン製剤、アルブミン製剤、血液凝固因子製剤等が例示され、特に血液凝固因子製剤としては、血液凝固第VIII因子製剤、血液凝固第IX因子製剤、フィブリノーゲン製剤、アンチトロンビンIII製剤等が例示される。従って、ウイルス含有タンパク質溶液としては、具体的には、免疫グロブリン、アルブミン、血液凝固因子(血液凝固第VIII因子、血液凝固第IX因子、フィブリノーゲン、アンチトロンビンIII等)等を含む溶液が例示されるが、これに制限されるものではない。一態様において、本実施の形態におけるウイルス含有タンパク質溶液は、タンパク質として抗体を含むことが好ましい場合がある。一態様において、本実施の形態におけるウイルス含有タンパク質溶液は、タンパク質として血液凝固第VIII因子又はフィブリノーゲンを含むことが好ましい場合がある。
ウイルス含有タンパク質溶液中のタンパク質の濃度は、小孔ウイルス除去膜により濾過可能な限り特に限定されないが、例えば、1mg/mL〜100mg/mLであり、好ましくは1mg/mL〜80mg/mL、より好ましくは1mg/mL〜70mg/mL、さらに好ましくは1mg/mL〜50mg/mLである。タンパク質の濃度が高くなるとウイルス除去膜による濾過速度が低下する傾向にある。
ウイルス含有タンパク質溶液に含まれるウイルスは、特に限定されないが、ヒトパルボウイルスB19(B19)、マウス微小ウイルス(MVM)、ブタパルボウイルス(PPV)、ウシパルボウイルス(BPV)、イヌパルボウイルス(CPV)、ポリオウイルス(Polio)、サーコウイルス、A型肝炎ウイルス(HAV)及びE型肝炎ウイルス(HEV)等が挙げられ、好ましくは、ヒトパルボウイルスB19(B19)、マウス微小ウイルス(MVM)、ブタパルボウイルス(PPV)、ウシパルボウイルス(BPV)、イヌパルボウイルス(CPV)、ポリオウイルス(Polio)及びA型肝炎ウイルス(HAV)からなる群から選択される。
上記のウイルスのうち、特にパルボウイルスは、血漿分画製剤分野において、ヒトパルボウイルスB19(B19)による感染の事例が報告されており、血漿由来製剤のウイルス安全性に関するレポートがEMEA(欧州医薬品審査庁)から出されている。さらに、バイオ医薬品分野においても、マウスパルボウイルスのCHO細胞(マウス由来)への混入による、製造プロセスにおけるモノクローナル抗体への汚染の実例があり、動物細胞を用いて作られたバイオ医薬品のウイルス安全性評価に関するガイドライン(ICH Q5A)がFDA(アメリカ食品医薬品局)から出されている。
パルボウイルスはパルボウイルス科に属し、現在公知の最小ウイルス(直径18〜24nm)である。ヒトパルボウイルスB19(B19)、マウスパルボウイルス(MVM)、ブタパルボウイルス(PPV)、犬パルボウイルス(CPV)ウシパルボウイルス(BPV)等が挙げられる。
パルボウイルスは、エンベロープを持たないことから、物理化学的に安定で、生物学的製剤の製造プロセス中の不活化工程で一般的に行なわれる加熱、低pH、化学薬品処理に対して耐性があり、不活化法とは異なる作用機序のウイルス除去方法として、ウイルス除去膜によるパルボウイルス除去のニーズが高まっている。一態様において、本実施の形態は、パルボウイルス除去タンパク質製剤の製造方法を提供する。
また、パルボウイルス以外のエンベロープを持たない小ウイルスとして、サーコウイルス(17〜22nm)、ピコルナウイルス科のA型肝炎ウイルス(27〜30nm)、ポリオウイルス(30nm)、E型肝炎ウイルス(32nm)等が挙げられ、一態様において、本実施の形態は、エンベロープを持たないウイルス(好ましくは直径32nm以下、より好ましくは直径30nm以下、さらに好ましくは直径24nm以下のウイルス)を対象としたウイルス除去タンパク質製剤の製造方法を提供する。
ウイルス含有タンパク質溶液は、上記のタンパク質及びウイルスのほか、塩基性アミノ酸、無機塩、緩衝液成分、界面活性剤及び糖類からなる群から選ばれる一種以上の成分を含むことができる。
塩基性アミノ酸としては、アルギニン、ヒスチジン、グアニジン、リジン又はそれらの誘導体、あるいはそれらの塩が挙げられ、好ましくは、アルギニン、ヒスチジン、リジン又はそれらの誘導体、あるいはそれらの塩であり、より好ましくはアルギニン又はその誘導体、あるいはそれらの塩である。
無機塩としては、NaCl、緩衝塩を含むことができる。緩衝液成分としては、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、Tris−HCl緩衝液等を用いることができる。無機塩及び緩衝液成分の濃度は、以下に詳述する塩のイオン強度を参照して決定することができる。
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤であるTween20、Tween80等が例示され、0.01〜0.05wt%の濃度で含むことができる。
糖類としては、単糖、二糖、三糖、オリゴ糖、糖アルコール等、特に限定されず、具体的には、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、マルトース、スクロース(ショ糖)、ソルビトール、マンニトール、デキストラン等を1種又は複数種組み合わせて1〜10wt%、好ましくは1〜5wt%含むことができる。
濾過前のウイルス含有タンパク質溶液の温度は、得られるタンパク質製剤の状態に影響しない温度範囲であればよいが、タンパク質の変性を防ぐという観点から、好ましくは4℃〜40℃、より好ましくは4℃〜35℃の範囲である。温度はタンパク質溶液の粘度に影響し、ウイルス除去膜濾過の際のFluxに影響するので、タンパク質自体の温度に対する安定性にもよるが、さらに好ましくは20℃〜35℃の範囲である。
本実施の形態においてウイルス除去に用いる「小孔ウイルス除去膜」は、PDA(Parenteral Drug Association)により定義されており、30〜33nmの粒子径を有するバクテリオファージPP7(Pseudomonas phage 7)の除去率が、PDAのTechnical report41(2008年改訂、Appendix 1)に記載の手法に基づいて測定した場合に、4log10より大きな膜を意味する。
PDAによる小孔ウイスル除去膜の別の定義としては、静注免疫グロブリン(IVIG)水溶液又はIVIG含有緩衝液を用いて、上記のバクテリオファージPP7と同様の手法を用いて試験した場合に、タンパク質の透過率又は回収率が、90%より大きな膜が挙げられる。タンパク質の透過率は、濾過前溶液のタンパク質濃度に対する、膜濾過後の溶液のタンパク質濃度の割合で表され、膜濾過後の溶液のタンパク質濃度が安定するまで十分な容量の溶液を膜濾過した後に測定される。タンパク質濃度の測定には、UV分光測定(A280)を用いることができる。
小孔ウイルス除去膜は、各ウイルス除去膜の推奨圧力において、パルボウイルスの除去性能について後述の式6を用いて算出したLRVが4以上であることが望ましい。
小孔ウイルス除去膜の材質は、セルロース又は親水化された合成高分子が好ましい。セルロースとしては、再生セルロース、天然セルロース、酢酸セルロース等を用いることができる。親水化された合成高分子としては、親水化ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、親水化ポリエーテルスルホン(PES)、親水化ポリエチレン(PE)、親水化ポリスルホン(PS)等を用いることができる。親水化方法としては、コーティング、グラフト反応、架橋反応等の方法により、膜表面に親水性の官能基を導入する方法や、親水性ポリマーを固定する方法等があげられる。
膜の形状は平膜及び中空糸膜いずれでもよいが、膜面積が大きくても膜を容器に装填して作成したフィルターを小型にできるため、好ましくは中空糸膜である。被濾過液入り口側の一次側空間と濾過液出側の2次側空間が膜によって仕切られたフィルターを作成することができる。ウイルス除去膜を濾過に用いる際には、フィルターの形態として使用することができる。
パルボウイルス等の小ウイルス除去を対象とした市販の小孔ウイルス除去膜としては、セルロース製のPlanova(登録商標)15N(旭化成メディカル社製)及びPlanova(登録商標)20N(旭化成メディカル社製)、親水化PVDF製のPlanova(登録商標)BioEX(旭化成メディカル社製)、Ultipore(登録商標)VF DV20(Pall社製)及びViresolve NFP(Millipore社製)、親水化PES製のVirosart CPV(Sartorius社製)、Viresolve Pro(Millipore社製)等が挙げられる。除去しようとするウイルスや、製造しようとするタンパク質製剤の種類に応じて、ウイルス除去膜を適宜選択することができる。
小孔ウイルス除去膜を用いたウイルス含有タンパク質溶液の濾過は、各小孔ウイルス除去膜の通常の使用方法を用いて行うことができる。濾過は、回収率が高いという観点から、デッドエンドフィルトレーションが好ましい。濾過圧力を一定にする定圧濾過、濾過圧力を変動させる濾過、濾過速度を一定にする定速濾過等、いずれの濾過方法を用いてもよい。濾過前溶液の組成に応じて、好ましい濾過方法を採用する。
工程(a)における濾過圧力は、小孔ウイルス除去膜の材質によるが、膜の耐圧力以下の範囲で行なう。例えば、セルロースからなる小孔ウイルス除去膜の場合は、0.00kgf/cm2(0.0kPa)〜1.00kgf/cm2(9.8×10kPa)の範囲が最適である。親水化PVDF、親水化PES又は親水化PSからなる小孔ウイルス除去膜の場合、0.00kgf/cm2(0.0kPa)〜5.00kgf/cm2(4.9×10kPa)の範囲が最適である。
本実施の形態の製造方法において、工程(q)は、上述の小孔ウイルス除去膜を用いて、濾過圧力0.30kgf/cm2以下で溶液を濾過してウイルス除去タンパク質溶液を得る低圧濾過工程であり、上記の工程(a)に含まれる工程である。すなわち、工程(q)は、上記の工程(a)のうち、濾過圧力0.30kgf/cm2以下で濾過を行う工程を指す。
通常、ウイルス除去膜を用いたウイルス含有溶液の濾過は、短時間でより多くの量のタンパク質溶液を処理できるよう、できるだけ高い濾過圧力で行う。しかしながら、上述の小孔ウイルス除去膜を用いて、低い濾過圧力でウイルス含有溶液を濾過する低圧濾過工程において、ウイルスが濾液中に漏れ出し、除去されない場合があることを本発明者らは見出した。そして、このような低圧濾過工程において、濾過前溶液のpH(X)及び塩のイオン強度(Y(mM))が、以下の式1及び式5、又は式4及び式5を満たすよう調整することにより、ウイルスが濾液中に漏れ出すことがなく、ウイルス除去された濾液が得られることを本発明者らは見出した。
本実施の形態において、濾過圧力は、簡便には、上記の小孔ウイルス除去膜を装填したウイルス除去装置に備えられた圧力計を用いて測定することができる。供給液容器側に圧力計を設置し、測定することもできる。濾過圧力が0.30kgf/cm2以下(例えば後述の実施例に示すように、0.20kgf/cm2付近)において、濾過前溶液の組成によってはウイルスが濾液中に漏れ出す。理論に束縛されるものではないが、この理由としては、濾過圧力が低くなるにつれ、小孔ウイルス除去膜へのウイルスの拘束力が弱まり、ウイルスの自由度が高まって濾液側に漏れ出し、特に濾過圧力が0.30kgf/cm2以下で、この現象が顕在化すると考えられる。
しかし、低圧濾過工程において、濾過前溶液のpH(X)及び塩のイオン強度(Y(mM))が、以下の式1及び式5:
0≦Y≦150X−590 (式1)
3.5≦X≦8 (式5)
又は、以下の式4及び式5:
Y=0 (式4)
3.5≦X≦8.0 (式5)
を満たす場合、ウイルス除去された濾液を得ることができる。
得ようとするタンパク質製剤におけるウイルス除去率に応じて、低圧濾過工程における濾過前溶液のpH(X)及び塩のイオン強度(Y(mM))は、さらに以下の式2及び式5:
0≦Y≦50X−200 (式2)
3.5≦X≦8.0 (式5)
又は以下の式4及び式5:
Y=0 (式4)
3.5≦X≦8.0 (式5)
を満たすことがより好ましい場合があり、さらに以下の式3及び式5:
0≦Y≦50X−250 (式3)
3.5≦X≦8.0 (式5)
又は以下の式4及び式5:
Y=0 (式4)
3.5≦X≦8.0 (式5)
を満たすことが特に好ましい場合がある。
後述の実施例に示す通り、本発明者らは、濾過圧力が0.30kgf/cm2以下、例えば0.20kgf/cm2付近(例えば0.10kgf/cm2〜0.30kgf/cm2、さらに例示すれば0.15kgf/cm2〜0.25kgf/cm2)では、濾過前溶液のpH(X)及び塩のイオン強度(Y(mM))が上記の式1を満たす場合、濾過後のウイルスの除去率が高いことを確認している。
濾過後のウイルスの除去率は、Log Reduction Value(LRV)を用いて示すことができる。LRVは、濾過前溶液中のウイルス濃度(C0)と、濾過後溶液中のウイルス濃度(CF)から、以下の式6を用いて算出され、LRVの値が小さいほどウイルス除去率が低い。
LRV=log10(C0/CF) (式6)
LRVを算出する際のウイルス濃度は、感染価、ウイルス核酸のコピー数等で表現することができる。感染価の測定法としては、TCID50法、プラーク法等が挙げられる。ウイルスの核酸のコピー数はPCR法等を用いて測定することができる。
一般に、ウイルス除去膜の性能評価において、LRVが4以上であれば、膜濾過によりウイルスが十分に除去されており、LRV5以上であれば、10の5乗分の1以下までウイルスが除去されており、LRV6以上であれば、10の6乗分の1以下までウイルスが除去され、ほとんどウイルスの漏れがないとされている。
本実施の形態において、濾過工程(a)前のウイルス含有タンパク質溶液中のウイルス濃度(C0)と濾過後のウイルス除去タンパク質溶液中のウイルス濃度(CF)から上記の式6を用いて算出されるLRVは、好ましくは4以上であり、より好ましくは5以上であり、さらに好ましくは6以上である。ウイルス濃度(CF)が検出限界以下となることも好ましい。
後述の実施例の結果から明らかな通り、低圧濾過工程において、濾過前溶液のpHの低下に伴って、ウイルスの濾液中への漏れが増加し、LRVが低下する。この現象は、濾過前溶液の塩のイオン強度が高い場合、より顕著になり、濾過前溶液のpHが低く、塩のイオン強度が高い場合に、ウイルスの濾液中への漏れが最も多い。
後述の実施例に示すとおり、濾過前溶液のpH(X)及び塩のイオン強度(Y(mM))が、上記式1及び式5、又は式4及び式5のいずれかの組み合わせを満たす場合、LRV4以上のウイルス除去率で低圧濾過工程を行うことができるが、一方、上記式1及び式5、又は式4及び式5の組み合わせをいずれも満たさない場合には、ウイルス除去率が低くなり、ウイルスが濾液中に漏れ出てしまう。さらに、X及びYが、上記式2及び式5、又は式4及び式5のいずれかの組み合わせを満たす場合、LRV5以上のウイルス除去率で低圧濾過工程を行うことができ、X及びYが、上記式3及び式5、又は式4及び式5のいずれかの組み合わせを満たす場合、濾液中のウイルス濃度が検出限界以下となるような、さらに高いウイルス除去率で低圧濾過工程を行うことができる。従って、濾過前溶液のpH(X)及び塩のイオン強度(Y(mM))が、上記の式の組み合わせを満たすよう調整することにより、低い濾過圧力であっても、ウイルスが濾液側に漏れ出ることがなく、ウイルス除去された溶液を得ることができる。
低圧濾過工程において、濾過前溶液のpH(X)は、3.5以上8.0以下であることが望ましく、4.0以上8.0以下であることがより好ましい。pHが3.5未満及び8.0を超える場合、タンパク質の変性や分解が起こることがある。
濾過前溶液の塩のイオン強度(Y(mM))は、溶液中で解離した塩由来のイオン種全てについて、それぞれのイオンのモル濃度(Ci)とイオンの電荷数(Zi)の2乗の積を加え合わせ、さらにそれを1/2にしたものとして下記の式8で表される。
Y=1/2Σ(Ci×Zi2) (式8)
塩由来のイオン種の例としては、無機塩由来のイオン、緩衝液成分を構成する塩由来のイオンが挙げられる。溶液が緩衝液成分を含まず、無機塩のみを含む場合、塩のイオン強度は、無機塩のイオン強度のみで算出できる。また、無機塩がNaClの場合、塩のイオン強度は、NaClの塩濃度と同一となる。
通常、緩衝液成分を含む溶液では、緩衝液成分はpH調整の役割を有し、塩のイオン強度の調整は、無機塩(例えば、NaCl)を加えることで行うことが多い。
低圧濾過工程において、濾過前溶液の塩のイオン強度(Y(mM))は、タンパク質の変性や凝集体形成に影響を及ぼさない範囲として、500mM以下であることが望ましい。好ましくは300mM以下、より好ましくは150mM以下である。
本実施の形態の一態様において、濾過前溶液のpH(X)及び塩のイオン強度(Y(mM))が以下の範囲である場合にも、高いウイルス除去率で低圧濾過工程を行うことができる。
3.5≦X<4であり、Y=0である場合;
4≦X<4.6であり、0≦Y≦50、好ましくは0≦Y≦10、より好ましくはY=0である場合;
4.6≦X<5であり、0≦Y≦100、好ましくは0≦Y≦50、より好ましくは0≦Y≦10、さらに好ましくはY=0である場合;
5≦X<6であり、0≦Y≦150、好ましくは0≦Y≦100、より好ましくは0≦Y≦50、さらに好ましくはY=0である場合;及び
6≦X≦8であり、0≦Y≦300,好ましくは、0≦Y≦150、より好ましくは、0≦Y≦100である場合。
濾過前溶液のpHの調整は、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、Tris−HCl緩衝液等の緩衝液成分の選択及び増減、NaOH等のアルカリの添加、HCl等の酸の添加により行うことができる。濾過前溶液の塩のイオン強度の調整は、NaCl、緩衝塩等の塩の増減により行うことができる。また、濾過前溶液のpH及び塩のイオン強度の測定も、当業者に公知の手法で行うことができる。
工程(q)において濾過される濾過前溶液としては、濾過前溶液のpH(X)及び塩のイオン強度(Y(mM))が、上記式1及び式5、又は式4及び式5を満たす限り特に限定されないが、上述のウイルス含有タンパク質溶液のほか、緩衝液(例えば後述する洗浄用緩衝液)、水等が挙げられる。緩衝液の組成も特に限定されず、上述の緩衝液成分のほか、上述の塩基性アミノ酸、無機塩、界面活性剤、糖類等を含んでいてもよい。工程(a)におけるウイルス含有タンパク質溶液と重複する成分を含むことが好ましい。
本実施の形態の一態様において、工程(q)における濾過前溶液は、ウイルス含有タンパク質溶液であり、濾過工程(a)で濾過される全ウイルス含有タンパク質溶液の50%以上が低圧濾過工程(q)で濾過される。
一般に、小孔ウイルス濾過膜を用いたウイルス含有タンパク質溶液の濾過は、処理効率を高めるよう、できるだけ高い濾過圧力で行うが、低い濾過圧力での濾過が好ましいタンパク質もある。このようなタンパク質の一例としては、抗体が挙げられる。抗体としては、モノクローナル抗体やポリクローナル抗体が挙げられる。このようなタンパク質を含む場合、濾過工程(a)で濾過される全ウイルス含有タンパク質溶液の50%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上が低圧濾過工程(q)で濾過されることが望ましい。
本実施の形態の一態様において、濾過工程(a)で濾過される全ウイルス含有タンパク質溶液の全てが低圧濾過工程(q)で濾過される場合、濾過工程(a)は、小孔ウイルス除去膜を用いて、濾過圧力0.30kgf/cm2以下でウイルス含有タンパク質溶液を濾過してウイルス除去タンパク質溶液を得る工程であり、濾過工程(a)における濾過前溶液のpH(X)及び塩のイオン強度(Y(mM))が、以下の式1及び式5:
0≦Y≦150X−590 (式1)
3.5≦X≦8.0 (式5)
又は、以下の式4及び式5:
Y=0 (式4)
3.5≦X≦8.0 (式5)
を満たす。
この場合の濾過圧力、式1、式4及び式5に関しては、工程(q)について記載したとおりである。また、このような濾過に適したウイルス含有タンパク質溶液は、モノクローナル抗体溶液である。
本実施の形態の一態様において、濾過工程(a)は、上記の低圧濾過工程(q)に先立って行われる以下の工程(p):
(p)小孔ウイルス除去膜を用いて、濾過圧力0.30kgf/cm2超でウイルス含有タンパク質溶液を濾過してウイルス除去タンパク質溶液を得る高圧濾過工程;
を含む。工程(p)は、工程(q)と同様、上記の工程(a)に含まれる工程であり、工程(a)のうち、0.30kgf/cm2以下より高い濾過圧力で濾過を行う工程を指す。
工程(p)における、小孔ウイルス除去膜、ウイルス含有タンパク質溶液及び濾過方法は、上記工程(a)について説明したとおりである。
工程(p)における濾過圧力は、小孔ウイルス除去膜の材質にもよるが、0.30kgf/cm2より高く、膜の耐圧力以下の範囲であれば特に限定されない。例えば、セルロースからなる小孔ウイルス除去膜の場合は、0.50kgf/cm2(4.9×10kPa)〜1.00kgf/cm2(9.8×10kPa)の範囲が最適である。親水化PVDF、親水化PES又は親水化PSからなる小孔ウイルス除去膜の場合、1.00kgf/cm2(9.8×10kPa)〜5.00kgf/cm2(4.9×10kPa)の範囲が最適である。
小孔ウイルス濾過膜を用いたウイルス含有タンパク質溶液の継続濾過(処理効率を高めるよう、できるだけ高い濾過圧力で行われる)を行うと、濾過量に伴って膜の内部(濾液と反対側)にタンパク質粒子が残存し、目詰まりが生じる場合がある。そこで、タンパク質を含まない溶液(洗浄液)を濾過することにより、膜内部のタンパク質を濾液側に洗い出す、ポストウォッシュ工程と呼ばれる作業が行われることがある。本実施形態において、ポストウォッシュ工程とは、小孔ウイルス除去膜の内部に残存したタンパク質の回収のため、タンパク質濾過の後で追加的に行われる濾過のことである。ポストウォッシュ工程を行う場合、タンパク質含有溶液の代わりに洗浄液を濾過するために、濾過前溶液を導入するラインを切り替える。この切り替えの際、濾過圧力が高いままであると、洗浄液側に溶液が逆流するため、一度濾過圧力を開放し、0.0kPaにする。ライン切り替え後、再度濾過圧力をかけて洗浄液を濾過する。圧力をゼロにしてから、再度濾過圧力をかけて洗浄液の濾過を開始するまでの時間は特に限定されない。圧力降下が充分に起こるのは、例えば、5秒以上であり、1分以上、5分以上、30分以上の時に、より充分に圧力降下が起きる。また、作業性の観点から、例えば、7日以内、5日以内、3日以内、または24時間以内に開始される場合が多い。ライン切り替えの際、濾過圧力が一時的に下がるため、濾過前溶液の組成によってはウイルスが濾液側に漏れ出す。このウイルスの漏れは、上述したように工程(q)により防ぐことができる。
すなわち、本実施の形態の一態様において、上記の工程(p)を行う過程で膜の内部に残存したタンパク質粒子を、低圧濾過工程(q)を含むポストウォッシュ工程により洗浄する。低圧濾過工程(q)がポストウォッシュ工程(の一部)である場合、工程(q)における濾過前溶液は、タンパク質を含まない洗浄液であることが好ましい。洗浄液の組成は特に限定されないが、工程(a)又は(p)におけるウイルス含有タンパク質溶液と重複する成分を含むことが好ましく、洗浄用緩衝液であることがより好ましい。洗浄用緩衝液とは、工程(a)におけるウイルス含有タンパク質溶液を製造する際にタンパク質を溶解する緩衝液である。ポストウォッシュ工程は、必要に応じて複数回行うことができる。
なお、工程(a)がポストウォッシュ工程を含む場合、濾過工程(a)前のウイルス含有タンパク質溶液中のウイルス濃度(C0)と濾過後のウイルス除去タンパク質溶液中のウイルス濃度(CF)から上記の式6を用いて算出されるLRVが4以上(好ましくは5以上)であり、濾過工程(a)前のウイルス含有タンパク質溶液中のウイルス濃度(C0)と、濾過工程(a)後の洗浄用緩衝液濾液中のウイルス濃度(Cw)から以下の式7:
LRV’=log10(C0/Cw) (式7)
を用いて算出されるLRV’が4以上(好ましくは5以上)であることが好ましい。ウイルス濃度は、式6について上述した手法を用いて測定することができる。
なお、上記式7において、濾過工程(a)後の洗浄用緩衝液濾液中のウイルス濃度(Cw)とは、ポストウォッシュ工程で濾過する洗浄用緩衝液の濾液のみのウイルス濃度を指す。小孔ウイルス濾過膜内部には、ポストウォッシュ工程前に濾過したウイルス含有タンパク質溶液由来のウイルスが残存しており、低い濾過圧力での濾過を含むポストウォッシュ工程において、濾過前溶液のpH及び塩のイオン強度によっては洗浄用緩衝液濾液中にウイルスが漏れ出すことがある。濾過前溶液のpH(X)及び塩のイオン強度(Y(mM))が上記式1及び式5、又は式4及び式5を満たすよう調整することにより、ポストウォッシュ工程においてもウイルスの漏れを防ぐことができる。
また、ポストウォッシュ工程と同様、ウイルス除去膜で濾過する際の濾過圧力が下がる場合として、濾過中に加圧が一旦中断し、その後、加圧が再開するケースを含む工程(ストップ・アンド・スタート工程)が挙げられる。例として、小孔ウイルス濾過膜を用いたウイルス含有タンパク質溶液の濾過の際、電源が落ちる等の事情により濾過圧力がかからなくなり、その後再度電源を入れることで濾過圧力がかかるようになる事態が考え得る。圧力がゼロになってから、再度濾過圧力をかけて洗浄液の濾過を開始するまでの時間は特に限定されない。圧力降下が充分に起こるのは、例えば、5秒以上であり、1分以上、5分以上、30分以上の時に、より充分に圧力降下が起きる。また、作業性の観点から、例えば、7日以内、5日以内、3日以内、または24時間以内に開始される場合が多い。このような場合にも、一旦濾過圧力が下がるため、濾過前溶液の組成によってはウイルスが濾液側に漏れ出す場合がある。このウイルスの漏れは、上述したように工程(q)により防ぐことができる。
すなわち、本実施の形態の一態様において、上記の工程(p)を行っていて濾過圧力が下がった場合、濾過前溶液中のpH(X)と塩のイオン強度(Y(mM))が所定の範囲にある低圧濾過工程(q)を行うことにより、ウイルス除去タンパク質溶液を確実に得ることができる。
本実施の形態の一態様において、濾過工程(a)が上記の低圧濾過工程(q)に先立って行われる工程(p)を含む場合、工程(q)における濾過圧力がほぼ0.0kPaになる場合が含まれていてもよい。例えば、上述のポストウォッシュ工程において、濾過前溶液を導入するラインを切り替える場合や、ストップ・アンド・スタート工程で電源が落ちた場合に、濾過圧力がほぼ0.0kPaになり得る。この場合、再加圧の仕方は、小孔ウイルス除去膜と濾過前溶液供給容器間を閉止後、供給容器側の圧力を、工程(a)について記載した最適な濾過圧力に設定後、小孔ウイルス除去膜と濾過前溶液供給容器間を開放し、一定圧で濾過することもできるし、小孔ウイルス除去膜と濾過前溶液供給容器間を開放し、徐々に所定圧力まで上げながら濾過することもできる。例えば濾過圧力が0.0kPaになる放置時間(低い濾過圧力での濾過が行われる時間)を3時間として、その後再加圧して濾過をおこなった際のウイルス除去率を目安にすると、3時間より短い放置時間におけるウイルス除去率は、3時間の場合より高いと予想される。
本実施の形態のウイルス除去タンパク質製剤の製造方法において、工程(a)に先立って、小孔ウイルス除去膜の孔径サイズよりも大きい孔径の膜からなるフィルターで予備濾過をすることもできる。ここで大きい孔径のフィルターとしては、Planova(登録商標)35N,Planova(登録商標)75N(以上旭化成メディカル社製)、0.1μmフィルター、0.2μmフィルター等を用いることができる。予備濾過なしに、直接、小孔ウイルス除去膜を用いて工程(a)を行うこともできる。
工程(a)に先立って、クロマトグラフィー処理、S/D処理、濃縮処理及び濃縮/バッファー交換処理のいずれか1以上を行ってもよい。
クロマトグラフィー処理としては、イオン交換樹脂、ゲル濾過樹脂をカラムに詰めたカラムクロマトグラフィー、多孔膜の表面にイオン交換基を付与したメンブレンクロマトグラフィーが例示できる。クロマトグラフィーの分離モードとしては、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー(陽イオン交換:CEX、陰イオン交換:AEX)、疎水クロマトグラフィー(HIC)、アフィニティクロマトグラフィー、金属キレートアフィニティクロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー等が挙げられる。クロマトグラフィーのリガンドとしてイオン交換と疎水相互作用を複合させたクロマトグラフィーを用いてもよい。
S/D処理は、公知の方法に従って、有機溶媒としてTNBP(tri−n−butyl phosphate)等、界面活性剤としてTween80等を用いて、ウイルスを不活化することにより行うことができる。
濃縮処理は、公知の方法に従って、限外濾過(UF)膜を用いた方法で行なうことができる。遠心濃縮により行なうことができる。
バッファー交換処理は、公知の方法に従って、限外濾過膜を用いて濃縮と同時に行なうこともできる。ゲル濾過法により行なうこともできる。透析膜を用いた透析法によっても行なうことができる。
工程(a)に引き続き、得られたウイルス除去タンパク質溶液について、クロマトグラフィー処理による精製処理をすることができる。また、UF処理によりさらに高濃度化することもできる。工程(a)で得られたウイルス除去タンパク質溶液、その精製物又は濃縮物について、そのままの液組成で最終製剤化することもできる。また、糖類や界面活性剤等を添加し、最終製剤化することもできる。他の組成の溶媒と、バッファー交換することもできる。また、さらに凍結乾燥処理することもできる。
本実施の形態は、一態様において、以下の工程(a):
(a)小孔ウイルス除去膜を用いてウイルス含有タンパク質溶液を濾過してウイルス除去タンパク質溶液を得る濾過工程;
を含むウイルス除去タンパク質製剤の製造方法であって、濾過工程(a)が、以下の工程
(q):
(q)小孔ウイルス除去膜を用いて、濾過圧力0.30kgf/cm2以下で溶液を濾過してウイルス除去タンパク質溶液を得る低圧濾過工程;
を含み、低圧濾過工程(q)に先立って、工程(q)における濾過前溶液のpH(X)及び塩のイオン強度(Y(mM))が、以下の式1及び式5:
0≦Y≦150X−590 (式1)
3.5≦X≦8.0 (式5)
又は、以下の式4及び式5:
Y=0 (式4)
3.5≦X≦8.0 (式5)
を満たすよう調整する工程を含む方法にも関する。
本実施の形態は、上記の製造方法で得られるウイルス除去タンパク質製剤にも関する。本実施の形態はまた、上記の工程(a)(工程(q)を含む)を行うことを特徴とする、ウイルス含有タンパク質溶液中のウイルス除去方法にも関する。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明の範囲は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
以下に示す実施例では、小孔ウイルス除去膜として、セルロース中空糸膜からなるPlanova(登録商標)20N(旭化成メディカル株式会社製)を用いた。pHは、pHメーターを用いて測定した。塩のイオン強度は各溶液調整の際に用いた塩の量(塩濃度)から算出した。
(i)タンパク質溶液の調製
ポリクローナル抗体(ヒトIgG)(ヴェノグロブリン−IH、ベネシス社製)を用いて、抗体濃度が10mg/mLになるように注射用水(大塚製薬)で希釈した。また、以下の各実施例に示した塩のイオン強度になるように1M NaCl水溶液を用いて調製した。さらに、pHは0.1M HCl又は0.1M NaOHを用いて、以下の各実施例に示したpHになるように調整した。
(ii)ウイルス除去率(LRV)の測定
培養したPK-13細胞(ATCCより入手、ATCC No.CRL−6489)を、牛血清(Upstate社製、56℃の水浴で30分間加熱し、非働化させた後に使用)3体積%及びペニシリン/ストレプトマイシン(+10000 Units/mL Penicillin、+10000μg/mL Streptomycin、インビトロジェン製)1体積%含有D−MEM(インビトロジェン製、high−glucose)(この混合液は以後「3%FBS/D−MEM」と記載)で希釈し、細胞濃度2.0×105(cells/mL)の希釈懸濁液を調製した。この細胞懸濁液を、96well丸底細胞培養プレート(Falcon社製)を10枚準備し、全てのwellに100(μL)ずつ分注した。
次いで、下記各実施例で濾過を行った濾液について、それらの3%FBS/D−MEMによる10倍、102倍、103倍、104倍及び105倍希釈液を調製した。さらに、濾過直前に採取した各元液(ウイルス含有タンパク質溶液)について、それらの3%FBS/D−MEMによる102倍、103倍、104倍、105倍、106倍及び107倍希釈液を調製した。上記細胞懸濁液を分注した96well細胞培養プレートに、各濾液及び濾液の10倍、102倍、103倍、104倍及び105倍希釈液と、元液の102倍、103倍、104倍、105倍、106倍及び107倍希釈液を、それぞれ8wellに100(μL)ずつ分注し、37℃、5%二酸化炭素雰囲気下、インキュベーター中で、10日間培養した。
次いで、10日間培養した上記の細胞培養プレートに対し、赤血球吸着法(ウイルス実験学 総論 国立予防衛生研究所学友会編、p.173参照)によるTCID50(50%感染価)の測定を行った。ニワトリ保存血(日本バイオテスト製)をPBS(−)(日水製薬株式会社製、製品に添付の説明書に記載の方法で調製)で5倍に希釈後、2500(rpm)、4℃で5分間遠心分離し赤血球を沈殿させた後、上清を吸引除去して、得られた赤血球を含む沈殿物を再度上記PBS(−)で200倍に希釈した。
次いで、調製した赤血球沈殿物のPBS(−)希釈液を、上記細胞培養プレートの全wellに100(μL)ずつ分注し、2時間静置した後、培養した細胞組織の表面に対する赤血球の吸着の有無を目視で確認し、吸着が確認されたものをウイルス感染が起きたwell、吸着が確認されなかったものを感染なしのwellとして数えた。得られた培養液ごとのウイルス感染の有無について、濾液又はその各希釈液、あるいは元液の各希釈液ごとに割合を確認し、Reed−Muench法(ウイルス実験学 総論 国立予防衛生研究所学友会編、p.479−480参照)により、感染価としてlog(TCID50/mL)を算出し、以下の式を用いてウイルス除去率LRVを算出した。
LRV=log10(C0/CF
ここで、
0=小孔ウイルス除去膜で濾過する前の元液(ウイルス含有タンパク質溶液)中の感染価;
F=小孔ウイルス除去膜で濾過した後の溶液中の感染価;
である。
(実施例1:異なる濾過圧力でのウイルス除去膜を用いた濾過)
上記の(i)に記載の方法で、pH4、4.6、5、6、7又は8、塩のイオン強度は全て100mMの各タンパク質溶液(ポリクローナル抗体溶液)を調製した(実験例1〜16)。その後、それぞれにPPV(ブタパルボウイルス、社団法人 動物用生物学的製剤協会、以下実施例2〜4についても同様)を0.5vol%添加し、よく攪拌してウイルス含有タンパク質溶液を得た。
得られた各溶液について、膜面積0.001m2の小孔ウイルス除去膜(Planova(登録商標)20N)を用いて、0.10、0.20、0.50又は0.80kgf/cm2の濾過圧力でデッドエンドフィルトレーションを、濾過量が50L/m2に到達するまで行った。濾過圧力は供給液容器側に圧力計を設置して測定した。50L/m2 poolでのPPVの除去率を上記(ii)に記載の方法で測定した。
各濾過圧力及びpHと、ウイルス除去率(LRV)との関係を、以下の表1に示す。表1に示す通り、濾過圧力が高い場合にはpHが変化してもウイルス除去率は高く維持されていたが、濾過圧力が低い場合、濾過前のウイルス含有タンパク質溶液のpH低下に伴って、ウイルス除去率が低下し、ウイルスが漏れ出すことが明らかになった。
Figure 0005711369
(実施例2:pH及び塩のイオン強度の異なるウイルス含有タンパク質溶液の低圧継続濾過)
上記(i)の方法で、表1に実験例17〜31として示すpH及び塩のイオン強度の各タンパク質溶液(ポリクローナル抗体溶液)を調製した。その後、それぞれにPPV(ブタパルボウイルス)を0.5vol%添加し、よく攪拌してウイルス含有タンパク質溶液を得た。
得られた各溶液について、膜面積0.001m2の小孔ウイルス除去膜(Planova(登録商標)20N)を用いて0.20kgf/cm2(2.0×10kPa)の濾過圧力でデッドエンドフィルトレーションを、濾過量が50L/m2に到達するまで行った。濾過圧力は供給液容器側に圧力計を設置して測定した。50L/m2 poolでのPPVの除去率(LRV)を上記(ii)に記載の方法で測定し、結果を表2に示した。
表2に示す通り、濾過圧力が低く、濾過前のウイルス含有タンパク質溶液のpHが低い場合でも、塩のイオン強度によってはウイルスの濾液側への漏れがなく、ウイルス除去率が高いことが明らかになった。
Figure 0005711369
また、表2に示した結果から、低い濾過圧力での小孔ウイルス除去膜を用いたウイルス含有タンパク質溶液の濾過において、ウイルスの漏れを生じない場合の溶液中のpH(X)と塩のイオン強度(Y(mM))との間には、相関があることが明らかになった。濾過前溶液中のpH(X)と塩のイオン強度(Y(mM))について、下記の関係式が成り立つ。なお、下記式1〜3で示されるXとYの関係を、図1に図示した。
LRV4以上となるX及びYの範囲は、以下の式1又は式4を満たす(実験例18(pH4、塩のイオン強度10mM)と実験例21(pH4.6、塩のイオン強度100mM)の結果に基づく)。
0≦Y≦150X−590 (式1)
Y=0 (式4)
LRV5以上となるX及びYの範囲は、以下の式2又は式4を満たす(実験例24(pH5、塩のイオン強度50mM)と実験例27(pH6、塩のイオン強度100mM)の結果に基づく)。
0≦Y≦50X−200 (式2)
Y=0 (式4)
LRVに≧がつく場合(上記LRVの算出式において、CF(=小孔ウイルス除去膜で濾過した後の溶液中の感染価)が検出限界以下である場合)のX及びYの範囲は、以下の式3又は式4を満たす(実験例22(pH5、塩のイオン強度0mM)と実験例29(pH7、塩のイオン強度100mM)の結果に基づく)。
Y≦50X−250 (式3)
Y=0 (式4)
なお、一般に、小孔ウイルス濾過膜のウイルス除去率は、濾過前のタンパク質の種類に影響を受けにくいため、ポリクローナル抗体溶液以外のタンパク質溶液を用いた場合でも、同様の結果が得られると考えられた。また、濾過圧力が0.20kgf/cm2付近、例えば0.30kgf/cm2以下、より特定すれば0.10kgf/cm2〜0.30kgf/cm2、さらに特定すれば0.15kgf/cm2〜0.25kgf/cm2の場合には、同様の結果が得られると考えられた。
(実施例3:ポストウォッシュ工程を含む、小孔ウイルス除去膜による濾過)
上記(i)の方法で、表3に実験例32〜34として示すpH及び塩のイオン強度の各タンパク質溶液(ポリクローナル抗体溶液)を調製した。その後、それぞれにPPV(ブタパルボウイルス)を0.5vol%添加し、よく攪拌してウイルス含有タンパク質溶液を得た。
得られた各溶液について、膜面積0.001m2の小孔ウイルス除去膜(Planova(登録商標)20N)を用いて0.80kgf/cm2(7.8×10kPa)の濾過圧力で、デッドエンドフィルトレーションを、濾過量が100L/m2に到達するまで行った(Virus Filtration画分と呼ぶ)。濾過圧力は供給液容器側に圧力計を設置して測定した。
所定濾過量まで到達後、供給液容器出口ラインを閉止し、その後、まず、供給液側(外部)の圧力を0.0kPaになるまで開放した。さらに、濾過膜の一次側(膜を介して供給液側)の出口側ラインを開放し、濾過膜内の圧力も0.0kPaに開放後、3時間放置した。
次に、ポリクロナール抗体を用いない以外は上記(i)と同様の方法で、表3に実験例32〜34として示すpH及び塩のイオン強度の洗浄液(ウイルス非含有)を調整した。さらに、上記の洗浄液が入った供給液容器に切り替え、供給液容器出口ラインを閉止したまま、0.80kgf/cm2まで加圧したのち、供給液容器出口ラインを開き、洗浄液を、放置後の小孔ウイルス除去膜を用いて0.80kgf/cm2(7.8×10kPa)の圧力で5L/m2濾過した(Post-wash画分と呼ぶ)。
Virus Filtration画分のLRVを上記(ii)に記載の方法で算出し、結果を表3に示した。また、Post-wash画分のみのLRV’を、濾過前のウイルス含有タンパク質溶液中のウイルス濃度(C0)と、洗浄液のみ濾過後の洗浄液濾液中のウイルス濃度(Cw)から、以下の式7:
LRV’=log10(C0/Cw) (式7)
を用いて算出し、結果を同様に表3に示した。
実験例34では、Virus Filtration画分のLRVは高いにもかかわらず、Post-wash画分のLRV’が低くなっていることから、低い濾過圧力(濾過圧力0.0kPa)での濾過を含むPost-wash画分にウイルスが漏れ出ていることが明らかになった。一方、実験例32及び33では、このような低い濾過圧力での濾過を含む場合でもウイルス除去率が高かった。
Figure 0005711369
(実施例4:ストップ・アンド・スタート工程を含む、小孔ウイルス除去膜による濾過)
上記(i)の方法で、表3に実験例35〜37として示すpH及び塩のイオン強度の各タンパク質溶液(ポリクローナル抗体溶液)を調製した。その後、それぞれにPPV(ブタパルボウイルス)を0.5vol%添加し、よく攪拌してウイルス含有タンパク質溶液を得た。
得られた各溶液について膜面積0.001m2の小孔ウイルス除去膜(Planova(登録商標)20N)を用いて0.80kgf/cm2(7.8×10kPa)の圧力で、デッドエンドフィルトレーションを、濾過量が100L/m2に到達するまで行った(Virus Filtration画分と呼ぶ)。濾過圧力は供給液容器側に圧力計を設置して測定した。
所定濾過量まで到達後、供給液容器出口ラインを閉止し、その後、まず、供給液側(外部)の圧力を0.0kPaになるまで開放した。さらに、濾過膜の一次側(膜を介して供給液側)の出口側ラインを開放し、濾過膜内の圧力も0.0kPaに開放後、3時間放置した。
次に、供給液容器出口ラインを閉止し、0.80kgf/cm2まで加圧したのち、供給液容器出口ラインを開き、ウイルス含有タンパク質溶液を、再度、放置後の小孔ウイルス除去膜を用いて0.80kgf/cm2(7.8×10kPa)の圧力で10L/m2濾過した(Stop&Start画分と呼ぶ)。
Virus Filtration画分のLRV及びStop&Start画分のLRVを上記(ii)に記載の方法で算出し、結果を表4に示した。実験例37では、Virus Filtration画分のLRVは高いにもかかわらず、Stop&Start画分のLRVが低くなっていることから、低い濾過圧力(濾過圧力0.0kPa)での濾過を含むStop&Start画分にウイルスが漏れ出ていることが明らかになった。一方、実験例35及び36では、このような低い濾過圧力での濾過を含む場合でもウイルス除去率が高かった。
Figure 0005711369
以上の実施例1〜4の結果、低い濾過圧力での濾過を含む場合であっても、ウイルス含有タンパク質溶液の小孔ウイルス除去膜を用いた濾過において、高いウイルス除去率(PPVのLRV 4以上)を満たすことができる、濾過前溶液のpH及び塩のイオン強度の範囲を見出した。
本発明によれば、低い濾過圧力下での濾過工程を含む、小孔ウイルス除去膜を用いたウイルス除去タンパク質製剤の製造において、ウイルス除去率の高いタンパク質製剤を提供することができる。従って、例えば、濾過圧力を低圧に固定してのタンパク質溶液の濾過、ポストウォッシュ工程を含む濾過、ストップ・アンド・スタート工程を含む濾過においても、ウイルス除去率の高いタンパク質製剤を提供することができるという産業上の利用可能性を有する。

Claims (22)

  1. 以下の工程(a):
    (a)小孔ウイルス除去膜を用いてウイルス含有タンパク質溶液を濾過してウイルス除去タンパク質溶液を得る濾過工程;
    を含むウイルス除去タンパク質製剤の製造方法であって、
    濾過工程(a)が、以下の工程(q):
    (q)前記小孔ウイルス除去膜を用いて、濾過圧力0.30kgf/cm2以下で溶液を濾過して前記ウイルス除去タンパク質溶液を得る低圧濾過工程;
    を含み、
    低圧濾過工程(q)における前記濾過前溶液のpH(X)及び塩のイオン強度(Y(mM))が、以下の式1及び式5:
    0≦Y≦150X−590 (式1)
    3.5≦X≦8.0 (式5)
    又は、以下の式4及び式5:
    Y=0 (式4)
    3.5≦X≦8.0 (式5)
    を満たす方法。
  2. 前記工程(q)における前記濾過前溶液が、前記ウイルス含有タンパク質溶液であって、
    濾過工程(a)で濾過される全ウイルス含有タンパク質溶液の50%以上が低圧濾過工程(q)で濾過される、請求項1に記載の方法。
  3. 濾過工程(a)が、前記小孔ウイルス除去膜を用いて、濾過圧力0.30kgf/cm2以下で前記ウイルス含有タンパク質溶液を濾過して前記ウイルス除去タンパク質溶液を得る工程であり、濾過工程(a)における前記濾過前溶液のpH(X)及び塩のイオン強度(Y(mM))が、以下の式1及び式5:
    0≦Y≦150X−590 (式1)
    3.5≦X≦8.0 (式5)
    又は、以下の式4及び式5:
    Y=0 (式4)
    3.5≦X≦8.0 (式5)
    を満たす、請求項1に記載の方法。
  4. 濾過工程(a)が、低圧濾過工程(q)に先立って行われる以下の工程(p):
    (p)前記小孔ウイルス除去膜を用いて、濾過圧力0.30kgf/cm2超で前記ウイルス含有タンパク質溶液を濾過して前記ウイルス除去タンパク質溶液を得る高圧濾過工程;
    を含む、請求項1に記載の方法。
  5. 低圧濾過工程(q)における前記濾過前溶液が洗浄用緩衝液である、請求項4に記載の方法。
  6. 低圧濾過工程(q)が、ポストウォッシュ工程あるいはストップアンドスタート工程である、請求項4又は5に記載の方法。
  7. 低圧濾過工程(q)における前記濾過溶液のpH(X)及び塩のイオン強度(Y(mM))が、以下の式2及び式5:
    0≦Y≦50X−200 (式2)
    3.5≦X≦8.0 (式5)
    又は以下の式4及び式5:
    Y=0 (式4)
    3.5≦X≦8.0 (式5)
    を満たす、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 低圧濾過工程(q)における前記濾過前溶液のpH(X)及び塩のイオン強度(Y(mM))が、以下の式3及び式5:
    0≦Y≦50X−250 (式3)
    3.5≦X≦8.0 (式5)
    又は以下の式4及び式5:
    Y=0 (式4)
    3.5≦X≦8.0 (式5)
    を満たす、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  9. 低圧濾過工程(q)が、前記小孔ウイルス除去膜を用いて、濾過圧力0.20kgf/cm2以下で前記溶液を濾過して前記ウイルス除去タンパク質溶液を得る工程である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 濾過工程(a)前の前記ウイルス含有タンパク質溶液中のウイルス濃度(C0)と濾過後の前記ウイルス除去タンパク質溶液中のウイルス濃度(CF)から以下の式6:
    LRV=log10(C0/CF) (式6)
    を用いて算出されるLRV(Log Reduction Value)が4以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  11. 濾過工程(a)前の前記ウイルス含有タンパク質溶液中のウイルス濃度(C0)と濾過後の前記ウイルス除去タンパク質溶液中のウイルス濃度(CF)から以下の式6:
    LRV=log10(C0/CF) (式6)
    を用いて算出されるLRV(Log Reduction Value)が4以上であり、
    濾過工程(a)前の前記ウイルス含有タンパク質溶液中のウイルス濃度(C0)と、濾過工程(a)後の前記洗浄用緩衝液濾液中のウイルス濃度(Cw)から以下の式7:
    LRV'=log10(C0/Cw) (式7)
    を用いて算出されるLRV'が4以上である、請求項5又は6に記載の方法。
  12. 前記小孔ウイルス除去膜の材質が、セルロース又は親水化された合成高分子である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記小孔ウイルス除去膜の材質が、親水化された合成高分子であり、前記合成高分子が、ポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン及びポリエチレンからなる群から選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記小孔ウイルス除去膜の形状が、平膜又は中空糸膜である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記ウイルス含有タンパク質溶液中のタンパク質濃度が、1mg/mL〜100mg/mLである、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 前記ウイルス含有タンパク質溶液が、モノクローナル抗体、遺伝子組み換え血液凝固因子、インターフェロン、ホルモン、酵素、免疫グロブリン、アルブミン、血液凝固第VIII因子、血液凝固第IX因子、フィブリノーゲン及びアンチトロンビンIIIからなる群から選択される1種以上のタンパク質含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
  17. 前記ウイルス含有タンパク質溶液が、タンパク質として抗体を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
  18. 前記ウイルス含有タンパク質溶液が、タンパク質として血液凝固第VIII因子又はフィブリノーゲンを含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
  19. 前記ウイルス含有タンパク質溶液が、ヒトパルボウイルスB19(B19)、マウス微小ウイルス(MVM)、ブタパルボウイルス(PPV)、ウシパルボウイルス(BPV)、イヌパルボウイルス(CPV)、ポリオウイルス(Polio)、サーコウイルス、A型肝炎ウイルス(HAV)及びE型肝炎ウイルス(HEV)からなる群から選択される1種以上のウイルスを含有する、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 前記ウイルス含有タンパク質溶液が、エンベロープを持たない直径32nm以下のウイルスを含有する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
  21. 前記ウイルス含有タンパク質溶液が、無機塩、緩衝液成分、界面活性剤及び糖類からなる群から選択される1種以上の成分を含有する、請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法。
  22. 以下の工程(a):
    (a)小孔ウイルス除去膜を用いてウイルス含有タンパク質溶液を濾過してウイルス除去タンパク質溶液を得る濾過工程;
    を含むウイルス除去タンパク質製剤の製造方法であって、
    濾過工程(a)が、以下の工程(q):
    (q)前記小孔ウイルス除去膜を用いて、濾過圧力0.30kgf/cm2以下で溶液を濾過して前記ウイルス除去タンパク質溶液を得る低圧濾過工程;
    を含み、低圧濾過工程(q)に先立って、工程(q)における前記濾過前溶液のpH(X)及び塩のイオン強度(Y(mM))が、以下の式1及び式5:
    0≦Y≦150X−590 (式1)
    3.5≦X≦8.0 (式5)
    又は、以下の式4及び式5:
    Y=0 (式4)
    3.5≦X≦8.0 (式5)
    を満たすよう、前記濾過前溶液を調整する工程を含む方法。
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