JP2021011446A - タンパク質含有溶液のろ過方法 - Google Patents

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Ryota Oguri
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Abstract

【課題】ウイルス除去膜の目詰まりを抑制可能なタンパク質含有溶液のろ過方法を提供する。【解決手段】目的タンパク質を含むタンパク質含有溶液のろ過方法であって、以下の工程を含む方法;(a1)タンパク質含有溶液を、硫酸基が結合している糖鎖を備えるクロマトグラフィー担体に接触させる工程、及び(a2)クロマトグラフィー担体に接触させたタンパク質含有溶液をウイルス除去膜に通過させる工程。【選択図】なし

Description

本発明は、タンパク質含有溶液のろ過方法に関する。
タンパク質は食品から医薬品に至るまで産業上重要な生体高分子である。近年、医薬品開発においてタンパク質を応用したバイオ医薬品が注目されている。その中でも特に注目されているのが免疫グロブリン(抗体)であり、医薬品、診断薬あるいは対応する抗原タンパク質の分離精製材料等の用途において、その利用価値が高まっている。抗体は免疫反応を司る生理活性物質であり、免疫した動物の血液あるいは抗体産生能を保有する細胞の細胞培養液又は動物の腹水培養液から取得される。ただし、それらの抗体を含有する血液や培養液は、抗体以外のタンパク質、又は細胞培養に用いた原料液に由来する複雑な夾雑成分を包含し、その溶液中に抗体の二量体及びより高次の凝集体を含有することがある。タンパク質凝集体を除去する方法として、超遠心により除去する方法や限外ろ過膜を用いる方法、プロテインAカラム、イオン交換カラム、及びサイズ排除カラムを用いる方法、並びに疎水ゲルを用いる方法などがある(例えば、特許文献1から5及び非特許文献1参照。)。
タンパク質を含む製品において、ウイルス安全性を向上させる対策が必要となっている。ウイルスのなかでも、特にパルボウイルスは、血漿分画製剤分野において、ヒトパルボウイルスB19による感染の事例やバイオ医薬品分野でマウスのパルボウイルスのCHO(Chinese Hamster Ovary)細胞への汚染の事例が報告されてきている。また、例えばLeptospira speciesなどの微小バクテリアがバイオ医薬に残存する事例も報告されている。そこで、医薬品メーカーにおいては製造工程中にウイルス除去/不活化工程を導入する検討を行っている。
小ウイルスであるパルボウイルスはエンベロープを持たないことから、物理化学的に安定で、医薬品の製造プロセス中で一般的に行われている不活化工程である加熱処理、低pH処理、及び化学薬品処理に対して耐性がある。そのため、不活化法とは異なる作用機序のウイルス除去方法として、ウイルス除去膜によるウイルス除去及びバクテリア除去のニーズが高まっている。また、ウイルス除去フィルターを用いるろ過によるウイルス除去法は、有用なタンパク質を変性させることなく、ウイルスを低減することができる点においても、有効な方法である。ウイルス除去用のろ過膜としては、セルロースのような天然素材からなる膜、あるいはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリエーテルスルホン(PES)のような合成高分子素材からなるウイルス除去膜が知られている(例えば、特許文献6、7、又は非特許文献2から5参照。)。
特開昭56−59716号公報 特許第2638680号公報 特許第5768070号公報 特許第6141597号公報 特許2017−132757号公報 米国特許出願公開第2016/0176921号公報 国際公開2016/031834号公報
HLC MAILGRAM,東ソー株式会社,2003年8月25日 ,第97巻,第3号,p.10 Manabe.S、Removal of virus through novel membrane filtration m ethod.、Dev. Biol. Stand.、(1996)88: 81-90. Brandwein Hら.、Membrane filtration for virus removal.、Dev Biol (Basel).、(2000)102: 157-63. Aranha-Creadoら、Clearance of murine leukaemia virus from mon oclonal antibody solution by a hydrophilic PVDF microporous membrane filter.、 Biologicals. (1998) Jun; 26(2):167-72. L. Moce-Llivinaら、Comparison of polyvinylidene fluoride and polyether sulfone membranes in filtering viral suspensions、Journal of Virolog ical Methods 、(2003) April、 Vol.109, Issue 1,Pages 99-101.
バイオ医薬品の製剤製造プロセスにおいて、ウイルス除去膜は、しばしば製剤製造プロセスの最終工程で用いられる。タンパク質製剤のウイルス除去膜によるろ過は、短時間でより多くの量のタンパク質を処理でき、かつ充分に高いウイルス除去性能をもってウイルスを除去できることが好ましい。しかし、タンパク質製剤には、ウイルス除去膜の目詰まり原因となる物質である凝集体や多量体をしばしば含み、ウイルス除去膜を閉塞させる原因となり得る。
そこで、本発明は、ウイルス除去膜の目詰まりを抑制可能なタンパク質含有溶液のろ過方法を提供することを課題の一部とする。
[1]目的タンパク質を含むタンパク質含有溶液のろ過方法であって、以下の工程を含む方法;(a1)タンパク質含有溶液を、硫酸基が結合している糖鎖を備えるクロマトグラフィー担体に接触させる工程、及び(a2)クロマトグラフィー担体に接触させたタンパク質含有溶液をウイルス除去膜に通過させる工程。
[2]目的タンパク質を含むタンパク質含有溶液のろ過方法であって、以下の工程を含む方法;(b1)タンパク質含有溶液を、1級アミノ基を有するモノマー単位及び疎水性基を有するモノマー単位を含む共重合体が結合している糖鎖を備えるクロマトグラフィー担体に接触させる工程、及び(b2)クロマトグラフィー担体に接触させたタンパク質含有溶液をウイルス除去膜に通過させる工程。
[3]硫酸基が結合している糖鎖を備えるクロマトグラフィー担体における硫酸基の密度が、担体1mL当たり、1000μmol以下である、[1]に記載の方法。
[4]タンパク質含有溶液をフロースルーモードによってクロマトグラフィー担体に接触させる、[1]から[3]のいずれかに記載の方法。
[5]糖鎖が、セルロース、デキストラン、又はアガロースである、[1]から[4]のいずれかに記載の方法。
[6]目的タンパク質が抗体である、[1]から[5]のいずれかに記載の方法。
[7]タンパク質含有溶液のpHが4以上8以下である、[1]から[6]のいずれかに記載の方法。
[8]タンパク質含有溶液の電気伝導度が50mS/cm以下である、[1]から[7]のいずれかに記載の方法。
[9](a1)又は(b1)の工程で抗体凝集体を除去する、[1]から[8]のいずれかに記載の方法。
[10](a1)又は(b1)の工程でIgMを除去する、[1]から[8]のいずれかに記載の方法。
[11]アニオン交換基を有する媒体によってタンパク質含有溶液を処理する工程をさらに含む、[1]から[10]のいずれかに記載の方法。
[12](a1)工程と(a2)工程、又は(b1)工程と(b2)工程が連続的になされる、[1]から[11]のいずれかに記載の方法。
[13]疎水性基がブチル基である、[2]に記載の方法。
本発明によれば、ウイルス除去膜の目詰まりを抑制可能なタンパク質含有溶液のろ過方法が提供される。
以下、本発明の形態(以下、本明細書において「実施形態」と略すことがある。)について具体的に説明する。なお以下の示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための方法等を例示するものであって、これらの例示に限定されるものではない。
実施形態に係る目的タンパク質を含むタンパク質含有溶液のろ過方法は、(a1)タンパク質含有溶液を、硫酸基が結合している糖鎖を備えるクロマトグラフィー担体に接触させる工程と、(a2)クロマトグラフィー担体に接触させたタンパク質含有溶液をウイルス除去膜に通過させる工程と、を含む。
あるいは、実施形態に係る目的タンパク質を含むタンパク質含有溶液のろ過方法は、(b1)タンパク質含有溶液を、1級アミノ基を有するモノマー単位及び疎水性基を有するモノマー単位を含む共重合体が結合している糖鎖を備えるクロマトグラフィー担体に接触させる工程と、(b2)クロマトグラフィー担体に接触させたタンパク質含有溶液をウイルス除去膜に通過させる工程と、を含む。
(a1)工程又は(b1)工程で使用されるクロマトグラフィー担体を構成する糖鎖の例としては、セルロース、デキストラン、及びアガロースが挙げられる。クロマトグラフィー担体を構成する糖鎖は1種類に限られない。例えば、デキストランとカップリングしたセルロースであってもよい。
(a1)工程で使用されるクロマトグラフィー担体における硫酸基においては、硫黄原子に4つの酸素原子が結合している。硫酸基は、−O−SO3 -や−O−SO3Hで表される。硫酸エステル基の少なくとも一部であってもよい。硫酸エステル基は、−R−O−SO3 -や−R−O−SO3Hで表される。硫酸基は、糖鎖の水酸基を置換して、糖鎖に直接共有結合していてもよい。化学式(1)に示すように、硫酸基が硫酸エステル基の少なくとも一部である場合、硫酸エステル基は、糖鎖の水酸基を置換して、糖鎖に直接共有結合していてもよい。
例えば、化学式(2)に示すように、セルロースにカップリングしているデキストランの水酸基を置換して、硫酸基がデキストランに直接結合していてもよい。硫酸基が硫酸エステル基の少なくとも一部である場合、セルロースにカップリングしているデキストランの水酸基を置換して、硫酸エステル基がデキストランに直接共有結合していてもよい。
(a1)工程で使用されるクロマトグラフィー担体における硫酸基の密度の下限値の例としては、担体1mL当たり、6μmol以上、7μmol以上、8μmol以上、9μmol以上、10μmol以上、20μmol以上、25μmol以上、30μmol以上、36μmol以上、40μmol以上、50μmol以上、60μmol以上、70μmol以上、74μmol以上、76μmol以上、あるいは80μmol以上が挙げられる。
糖鎖がセルロースであり、硫酸エステル基が、セルロースの水酸基を置換して、セルロースに直接結合している場合、硫酸基の密度の下限値は、担体1mL当たり、好ましくは6μmol以上、7μmol以上、8μmol以上、あるいは9μmol以上である。
糖鎖がデキストランとカップリングしているセルロースであり、デキストランの水酸基を置換して、硫酸基がデキストランに直接結合している場合、硫酸基の密度の下限値は、担体1mL当たり、好ましくは30μmol以上、36μmol以上、40μmol以上、50μmol以上、60μmol以上、70μmol以上、74μmol以上、76μmol以上、あるいは80μmol以上である。
(a1)工程で使用されるクロマトグラフィー担体における硫酸基の密度の上限値の例としては、担体1mL当たり、1000μmol以下、500μmol以下、300μmol以下、100μmol以下、76μmol未満、75μmol以下、50μmol以下、40μmol以下、30μmol以下、20μmol以下、あるいは10μmol以下が挙げられる。
糖鎖がセルロースであり、硫酸エステル基が、セルロースの水酸基を置換して、セルロースに直接結合している場合、硫酸基の密度は低くてもよく、好ましくは30μmol以下、20μmol以下、あるいは10μmol以下である。
(b1)工程で使用されるクロマトグラフィー担体における1級アミノ基は、イオン交換基として機能し得る。(b1)工程で使用されるクロマトグラフィー担体における疎水性基は、化学式(2)に示すように、ブチル基であってもよい。(b1)工程で使用されるクロマトグラフィー担体における共重合体は、部分的にブチル基で修飾されたポリアリルアミンであってもよい。共重合体は、糖鎖に共有結合していてもよい。
一つの実施形態において、クロマトグラフィー担体の形状としては、タンパク質を精製できる形状であれば特に限定されない。クロマトグラフィー担体は多孔質成形体であってもよい。多孔質成形体が、微多孔膜、不織布、織布、モノリス、ゲル、又は粒子床であってもよい。
一つの実施形態において、精製対象となる目的タンパク質としては特に限定されないが、例えば、抗体、アルブミン、グロブリン、又はフィブリノゲンが挙げられる。クロマトグラフィー担体により、タンパク質単量体と、タンパク質凝集体又はIgMのようなタンパク質多量体と、が分離可能なタンパク質も目的タンパク質の一態様として例示される。(a1)又は(b1)の工程で、抗体凝集体等の凝集体を除去され得る。あるいは、(a1)又は(b1)の工程で、IgM等の多量体が除去され得る。
一つの実施形態において、生理活性物質の一例である抗体としては、生化学における一般的な定義のとおり、脊椎動物の感染防禦機構としてBリンパ球が産生する糖タンパク質分子(ガンマグロブリン又は免疫グロブリンともいう)が挙げられる。例えば、実施形態で精製される抗体は、ヒトの医薬品として使用され、投与対象であるヒトの体内にある抗体と実質的に同一の構造を有する。
抗体は、ヒト抗体であってもよく、ヒト以外のウシ及びマウス等の哺乳動物由来抗体タンパク質であってもよい。あるいは、抗体は、ヒトIgGとのキメラ抗体タンパク質、及びヒト化抗体であってもよい。ヒトIgGとのキメラ抗体とは、可変領域がマウスなどのヒト以外の生物由来であるが、その他の定常領域がヒト由来の免疫グロブリンに置換された抗体である。また、ヒト化抗体とは、可変領域のうち、相補性決定領域(complementarity−determining region:CDR)がヒト以外の生物由来であるが、その他のフレームワーク領域(framework region:FR)がヒト由来である抗体である。ヒト化は、キメラ抗体よりも免疫原性がさらに低減される。
抗体のクラス(アイソタイプ)及びサブクラスは特に限定されない。例えば、抗体は、定常領域の構造の違いにより、IgG,IgA,IgM,IgD,及びIgEの5種類のクラスに分類される。実施形態に係るろ過方法が精製対象とする抗体は、多量体であるIgM以外が好ましい。また、ヒト抗体においては、IgGにはIgG1からIgG4の4つのサブクラスがあり、IgAにはIgA1とIgA2の2つのサブクラスがある。しかし、実施形態に係るろ過方法が精製対象とする抗体のサブクラスは、いずれであってもよい。なお、Fc領域にタンパク質を結合したFc融合タンパク質等の抗体関連タンパク質も、実施形態に係るろ過方法が精製対象とする抗体に含まれ得る。
さらに、抗体は、由来によっても分類することができる。しかし、実施形態に係るろ過方法が精製対象とする抗体は、天然のヒト抗体、遺伝子組換え技術により製造された組換えヒト抗体、モノクローナル抗体、又はポリクローナル抗体の何れであってもよい。これらの抗体の中でも、実施形態に係るろ過方法が精製対象とする抗体としては、抗体医薬としての需要や重要性の観点から、モノクローナル抗体が好適であるが、これに限定されない。
抗体としては、IgD、IgG、IgA、又はIgEのいずれかを含むモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体が例示される。また、抗体は例えば、血漿生成物由来であってもよく、あるいは細胞培養液由来であってもよい。細胞培養によって抗体を得る場合は細胞として動物細胞もしくは微生物を使用することができる。動物細胞としては、種類は特に限定されないが、CHO細胞、Sp2/0細胞、NS0細胞、Vero細胞、PER.C6細胞などが挙げられる。微生物としては、種類は特に限定されないが、大腸菌や酵母などが挙げられる。
一つの実施形態において、クロマトグラフィー担体によるろ過前のタンパク質は、目的タンパク質の単量体以外に、生体高分子を含みうる。生体高分子としては、ウイルス除去フィルターの目詰まりの原因となる物質であれば特に限定されないが、目的タンパク質の凝集体、目的タンパク質の多量体、別の態様として目的タンパク質と目的タンパク質以外のタンパク質の凝集体が例示される。多量体は二量体を含む。本開示において、凝集体とは多量体を含む場合もある。一つの実施形態においてタンパク質の凝集体は、その単量体が複数凝集して形成されたものが例示される。生体高分子は生体高分子集合体と呼ばれることもある。
一つの実施形態において、クロマトグラフィー担体により、タンパク質単量体と、タンパク質凝集体又はタンパク質多量体と、が分離可能なタンパク質であれば含まれるタンパク質単量体の分子量は特に限定されない。含まれるタンパク質単量体の分子量の下限値としては、0.1kDa以上が例示され、別の態様として1kDa以上が例示され、別の態様として10kDa以上が例示され、別の態様として50kDa以上が例示され、さらに別の態様として100kDa以上が例示される。分子量の上限値としては、10000kDa以下が例示され別の態様として5000kDa以下が例示され、別の態様として1000kDa以下が例示され、別の態様として500kDa以下が例示され、さらに別の態様として200kDa以下が例示される。
一つの実施形態において、タンパク質含有溶液としては、タンパク質が溶液に溶解されていれば特に限定されない。溶液として使用できる緩衝液の種類は特に限定されないが、例えばtris塩、酢酸塩、Tween、ソルビトール、マルトース、グリシン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、スルホン酸塩、リン酸塩、クエン酸、又は塩化ナトリウムが溶解した緩衝液が例示される。
一つの実施形態において、タンパク質溶液の濃度としては、タンパク質が溶液に溶解されていれば特に限定されない。タンパク質溶液濃度の下限値としては、0.01mg/mL以上が例示され、別の態様として0.05mg/mL以上が例示され、別の態様として0.1mg/mL以上が例示され、別の態様として0.5mg/mL以上が例示され、別の態様として1.0mg/mL以上が例示され、さらに別の態様として5.0mg/mL以上が例示される。タンパク質溶液濃度の上限値としては、100mg/mL以下が例示され、別の態様として90mg/mL以下が例示され、別の態様として80mg/mL以下が例示され、別の態様として70mg/mL以下が例示され、別の態様として60mg/mL以下が例示され、別の態様として50mg/mL以下が例示され、別の態様として40mg/mL以下が例示され、別の態様として30mg/mL以下が例示され、別の態様として25mg/mL以下が例示され、さらに別の態様として20mg/mL以下が例示される。
一つの実施形態において、緩衝液の濃度は、上述した溶解物が溶解していれば特に限定されない。緩衝液の濃度の下限値としては、0mmol/L以上が例示され、別の態様として0.5mmol/L以上が例示され、別の態様として1.0mmol/L以上が例示され、別の態様として5mmol/L以上が例示され、別の態様として10mmol/L以上が例示され、別の態様として15mmol/L以上が例示され、別の態様として20mmol/L以上が例示され、さらに別の態様として25mmol/L以上が例示される。
一つの実施形態において、タンパク質溶液又は緩衝液のpHは、クロマトグラフィー担体により、タンパク質単量体と、タンパク質凝集体又はタンパク質多量体と、が分離可能なpHであれば特に限定されない。pHの下限値としては4.0以上が例示され、別の態様として4.5以上が例示され、さらに別の態様として5.0以上が例示され、さらに別の態様として5.5以上が例示され、さらに別の態様として、6.0以上が例示される。pHの上限値としては、8.0以下が例示され、別の態様として7.5以下が例示され、さらに別の態様として7.0以下が例示される。pHの測定方法としては特に限定されないが、例えば水素電極、キンヒドロン電極、アンチモン電極、ガラス電極を使用した方法が挙げられる。中でもガラス電極を用いた方法が好ましい。
タンパク質溶液又は緩衝液の電気伝導度は、クロマトグラフィー担体により、タンパク質単量体と、タンパク質凝集体又はタンパク質多量体と、が分離可能な電気伝導度であれば特に限定されない。電気伝導度の下限値としては、0mS/cm以上が例示され、別の態様として1mS/cm以上が例示され、別の態様として2mS/cm以上が例示され、別の態様として3mS/cm以上が例示され、別の態様として4mS/cm以上が例示され、さらに別の態様として5mS/cm以上が例示される。電気伝導度の上限値としては、50mS/cm以下が例示され、40mS/cm以下が例示され、30mS/cm以下が例示され、別の態様として20mS/cm以下が例示され、別の態様として15mS/cm以下が例示され、さらに別の態様として10mS/cm以下が例示される。電気伝導度の測定方法は特に限定されないが、例えばJIS K0130「電気伝導率測定法通則」に定められた方法が利用可能である。例えば、交流2電極方式、交流4電極方式、又は電磁誘導方式が挙げられる。中でも交流2電極方式であることが好ましい。
一つの実施形態において、精製タンパク質としては、精製タンパク質中の目的タンパク質の凝集体又は多量体の含量が、精製前、すなわちクロマトグラフィー担体に接触させる前のタンパク質含有溶液中のタンパク質中の目的タンパク質の凝集体又は多量体の含量よりも低減したタンパク質であれば特に限定されない。
一つの実施形態において、タンパク質の凝集体としては、目的タンパク質の単量体が2つ会合した二量体、目的タンパク質の単量体が3つ会合した三量体、又は目的タンパク質の単量体が4つ以上会合した多量体、或いはその混合物が例示される。なお、多量体は二量体及び三量体を含める場合がある。タンパク質の凝集体には、目的タンパク質以外のタンパク質が含まれる場合もある。また、タンパク質の凝集体は、不可逆的な会合体であってもよく、可逆的な会合体であってもよい。
一つの実施形態において、精製タンパク質を回収することとしては、精製タンパク質を取得することができれば特に限定されないが、精製タンパク質が溶解したままの溶液の状態で回収することができる。
一つの実施形態において、タンパク質含有溶液をクロマトグラフィー担体に接触させることとしては、タンパク質含有溶液をクロマトグラフィー担体に接触させることができれば特に限定されないが、タンパク質含有溶液をクロマトグラフィー担体に通過させること、又はタンパク質含有溶液中にクロマトグラフィー担体を浸漬することなどがあげられる。目的タンパク質精製の制御を比較的容易に行う観点からは、タンパク質含有溶液をクロマトグラフィー担体に通過させることが好ましい。
一つの実施形態において、タンパク質含有溶液をクロマトグラフィー担体に通過させることとしては、クロマトグラフィー担体を充填したカラムにタンパク質含有溶液を通液させることが例示される。この場合、タンパク質含有溶液をフロースルーモード又はバインドアンドエリュートモードによってクロマトグラフィー担体に接触させる。フロースルーモードにおいては、目的タンパク質がクロマトグラフィー担体を通過し、凝集体及び多量体がクロマトグラフィー担体に捕捉される。バインドアンドエリュートモードにおいては、目的タンパク質がクロマトグラフィー担体に捕捉され、凝集体及び多量体がクロマトグラフィー担体を通過する。その後、目的タンパク質をクロマトグラフィー担体から回収する。好ましくは、タンパク質含有溶液をフロースルーモードによってクロマトグラフィー担体に接触させる。
また、タンパク質含有溶液をクロマトグラフィー担体に通過させることとしては、シリンジ又はポンプなどによりタンパク質含有溶液をクロマトグラフィー担体に通過させることが例示される。タンパク質含有溶液をクロマトグラフィー担体に通過させる方法としては、クロマトグラフィー担体中のある部分に向けて流したタンパク質含有溶液がクロマトグラフィー担体を通過し、クロマトグラフィー担体の別の部分からタンパク質含有溶液が回収できればよい。さらに、タンパク質含有溶液をクロマトグラフィー担体に通過させる前後において、タンパク質含有溶液とは別に緩衝液をクロマトグラフィー担体に通過させてもよい。タンパク質含有溶液回収の際、クロマトグラフィー担体に通過させるタンパク質含有溶液をすべて回収してもよく、一定体積ごとにフラクションを取得してもよい。当該精製タンパク質を含有するフラクションを収集して一つにすることにより、精製タンパク質を回収することができる。また、タンパク質含有溶液をクロマトグラフィー担体に通過させる流速としては特に限定されないが、下限値としてクロマトグラフィー担体1mLに対して0.1mL/分以上が例示され、別の態様として0.5mL/分以上が例示され、別の態様として1.0mL/分以上が例示され、さらに別の態様としては5mL/分以上が例示される。
一つの実施形態において、タンパク質含有溶液をクロマトグラフィー担体に浸漬することとしては、タンパク質含有溶液中にクロマトグラフィー担体を投入することが例示される。この際、クロマトグラフィー担体が投入されたタンパク質含有溶液に対し、シェーカー等による振盪や攪拌子などによる攪拌を行ってもよいし、溶液を静置してもよい。浸漬後、クロマトグラフィー担体をタンパク質含有溶液から除去することにより精製タンパク質を回収することができる。クロマトグラフィー担体の除去方法としては、遠心分離、ろ過などが例示される。
一つの実施形態において、タンパク質凝集体を除去することとしては、上述したように、タンパク質含有溶液をクロマトグラフィー担体に接触させることにより、クロマトグラフィー担体に接触させる前のタンパク質含有溶液中の目的タンパク質の凝集体含量よりもタンパク質凝集体含量を選択的に低減させることができれば特に限定されない。選択的に低減することとしては、目的タンパク質単量体の量に比してタンパク質凝集体の量が少なくなることが例示される。
一つの実施形態において、クロマトグラフィー担体の孔径分布は均一であっても不均一であってもよい。均一な孔径とは、SEM画像によって確認することができる。
一つの実施形態において、ウイルス除去膜は実質的にウイルスが除去できるものであれば特に限定されないが、例として約15nm以上約75nm以下の公称孔サイズを有するウイルス除去膜である。例えば、公称孔サイズ20nmの膜では、パルボウイルス(直径18nm以上26nm以下)を除去することが可能であり、一方、160kD(約8nm)といった大きさであるタンパク質、例えばモノクローナル抗体の通過を可能にする。例えば公称孔サイズ35nm以上の膜を用いて、レトロウイルス(直径80nm以上100nm以下)を除去し得る。
一つの実施形態において、ウイルス除去膜は100kD以上1000kD以下の分画分子量を有する。これに関連して、膜の分画分子量(MWCO)は、その90%が膜を通過できる分子及び粒子の公称分画分子量(nominal molecular weight)を指す。
一つの実施形態において、ウイルス除去膜の素材としては、ウイルスを除去することができる膜であれば特に限定されないが、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、セルロース、セルロース誘導体又はそれらの混合物が挙げられる。それぞれ公知の方法で製造することができる(特許文献6、7、又は非特許文献2から5参照。)。
一つの実施形態において、(a1)工程で用いるクロマトグラフィー担体又は(b1)工程で用いるクロマトグラフィー担体と、(a2)工程又は(b2)工程で用いるウイルス除去膜と、を連結する場合、両者を直接流路で接続し、(a1)工程と(a2)工程、又は(b1)工程と(b2)工程が連続的になされてもよい。あるいは、(a1)工程と(a2)工程の間、又は(b1)工程と(b2)工程の間に、別のろ過工程を実施してもよい。
一つの実施形態において、実施形態に係る目的タンパク質を含むタンパク質含有溶液のろ過方法は、アニオン交換基を有する媒体によってタンパク質含有溶液を処理する工程をさらに含んでいてもよい。アニオン交換基を有する媒体によってタンパク質含有溶液を処理する工程は、例えば、(a1)工程又は(b1)工程の前に実施される。
以下に、実施形態の実施例を説明するが、これらは実施形態を何ら限定するものではない。
(抗体タンパク質含有溶液の調製1)
後述する実施例1から3及び比較例1で用いる抗体タンパク質含有溶液として、ヒト免疫グロブリン含有溶液を調製した。ヒト免疫グロブリンは、日本血液製剤製の献血ヴェノグロブリン溶液を使用した。20mmol/L Acetate−Na、pH6、NaCl塩濃度100mmol/Lのバッファー溶液に、抗体タンパク質の濃度が15mg/mLとなるように献血ヴェノグロブリン溶液を添加し、さらにNaClによる塩濃度が100mmol/L、pH6となるように溶液を調整した。得られた溶液の電気伝導度を12.4mS/cmに調整した。さらに、溶液に、酸処理(5mg/mL、pH2にて1時間)によって得られた、同じヒト免疫グロブリンの凝集体を全タンパク質の0.5質量%となるように添加し、凝集体を含むヒト抗体タンパク質含有溶液を調製した。
(クロマトグラフィー処理試験方法1)
凝集体を含む抗体タンパク質含有溶液を処理するため、後述する実施例1から3及び比較例1に係る各種クロマトグラフィー担体1mLをパッキングしたカラムを用意した。クロマトグラフィー処理には液体クロマトグラフィー装置としてAKTA Avant25(GEヘルスケア社製)を使用した。各クロマトグラフィーカラムを10mLの上記のバッファーによって洗浄、平衡化した後、抗体タンパク質含有溶液20mLを0.5mL/分の一定流速で各カラムにフロースルーモードで通液して処理し、さらにカラム内に残留したタンパク質を回収するために5mLのバッファーをカラムに通液して、フロースルーフラクションを回収した。回収したフロースルーフラクションにおける抗体タンパク質の濃度は、洗浄バッファーによる希釈のため、11.1mg/mLであった。
(ウイルス除去膜のろ過試験方法1)
後述する実施例1から3及び比較例1で、クロマトグラフィー担体のフロースルーフラクションを、旭化成メディカル製のウイルス除去膜Planova BioEX(有効膜面積0.0003m2)で、0.3MPaの等圧条件でろ過し、透過液の体積を計測した。
また、クロマトグラフィー処理をしていない、凝集体を添加していない抗体タンパク質含有溶液を、バッファー溶液により、抗体タンパク質の濃度が11.1mg/mLとなるように希釈した。さらに、クロマトグラフィー処理をしていない、0.5質量%凝集体を添加した抗体タンパク質含有溶液を、バッファー溶液により、抗体タンパク質の濃度が11.1mg/mLとなるように希釈した。次に、クロマトグラフィー処理をしていない、凝集体を添加していない抗体タンパク質含有溶液と、クロマトグラフィー処理をしていない、0.5質量%凝集体を添加した抗体タンパク質含有溶液と、のそれぞれを、ウイルス除去膜で、0.3MPaの等圧条件でろ過した。クロマトグラフィー処理をしていない、凝集体を添加していない抗体タンパク質含有溶液の30分後の透過液体積は、17.8mLであった。クロマトグラフィー処理をしていない、0.5質量%凝集体を添加した抗体タンパク質含有溶液の30分後の透過液体積は、3.6mLであった。したがって、クロマトグラフィー処理をしない場合、0.5質量%の凝集体により、ウイルス除去膜のろ過性能が顕著に低下したことが確認された。
(実施例1;溶液のpH:6;NaClによる溶液の塩濃度:100mmol/L;使用クロマトグラフィー担体:Cellufine Sulfate)
クロマトグラフィー担体として、硫酸基が結合しているセルロース鎖を備えるCellufine Sulfate(JNC株式会社製)を使用した。凝集体0.5質量%を添加した、濃度15mg/mLの抗体タンパク質含有溶液を、Cellufine Sulfateを充填したクロマトグラフィーカラムにて0.5mL/分の一定流速で処理し、洗浄液も併せて回収することにより、抗体タンパク質濃度11.1mg/mLのフロースルーフラクション溶液を得た。得られたフラクション溶液におけるタンパク質回収率は高かった。また、実施例1の回収率は、以下の実施例2及び3の回収率よりも高かった。得られたフラクション溶液をウイルス除去膜で0.3MPaの等圧条件でろ過したところ、30分後の透過液体積は18.7mLであった。
したがって、Cellufine Sulfateに接触させた抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積は、クロマトグラフィー処理しなかった抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積と比較して比べて5.2倍であった。よって、Cellufine Sulfateに接触させることにより、抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積が顕著に増加することが示された。
(実施例2;溶液のpH:6;NaClによる溶液の塩濃度:100mmol/L;使用クロマトグラフィー担体:Cellufine DexS HbP)
クロマトグラフィー担体として、硫酸基が結合しているデキストラン鎖とカップリングしているセルロース鎖を備えるCellufine DexS HbP(JNC株式会社製、サルフェイトリガンド密度:36μmol/mL以上)を使用した。実施例1と同様に、凝集体0.5質量%を添加した、濃度15mg/mLの抗体タンパク質含有溶液を、Cellufine DexS HbPを充填したクロマトグラフィーカラムにて0.5mL/分の一定流速で処理し、洗浄液も併せて回収することにより、抗体タンパク質濃度11.1mg/mLのフロースルーフラクション溶液を得た。得られたフラクション溶液のタンパク質回収率は高かった。得られたフラクション溶液をウイルス除去膜で0.3MPaの等圧条件でろ過したところ、30分後の透過液体積は22.4mLであった。
したがって、Cellufine DexS HbPに接触させた抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積は、クロマトグラフィー処理しなかった抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積と比較して比べて6.2倍であった。よって、Cellufine DexS HbPに接触させることにより、抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積が顕著に増加することが示された。
(実施例3;溶液のpH:6;NaClによる溶液の塩濃度:100mmol/L;使用クロマトグラフィー担体:Cellufine MAX IB)
クロマトグラフィー担体として、1級アミノ基を含むモノマー単位とブチル基を含むモノマー単位からなる共重合体が結合しているセルロース鎖を備える陰イオン交換樹脂であるCellufine MAX IB(JNC株式会社製)を使用した。実施例1と同様に、凝集体0.5質量%を添加した、濃度15mg/mLの抗体タンパク質含有溶液を、Cellufine MAX IBを充填したクロマトグラフィーカラムにて0.5mL/分の一定流速で処理し、洗浄液も併せて回収することにより、抗体タンパク質濃度11.1mg/mLのフロースルーフラクション溶液を得た。得られたフラクション溶液のタンパク質回収率は高かった。得られたフラクション溶液をウイルス除去膜で0.3MPaの等圧条件でろ過したところ、30分後の透過液体積は7.9mLであった。
したがって、Cellufine MAX IBに接触させた抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積は、クロマトグラフィー処理しなかった抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積と比較して比べて2.2倍であった。よって、Cellufine MAX IBに接触させることにより、抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積が顕著に増加することが示された。
(比較例1;溶液のpH:6;NaClによる溶液の塩濃度:100mmol/L;使用クロマトグラフィー担体:Cellufine MAX Q−h)
クロマトグラフィー担体として、4級アミノ基が結合しているデキストラン鎖とカップリングしているセルロース鎖を備える陰イオン交換樹脂であるCellufine MAX Q−h(JNC株式会社製)を使用した。実施例1と同様に、凝集体0.5質量%を添加した、濃度15mg/mLの抗体タンパク質含有溶液を、Cellufine MAX Q−hを充填したクロマトグラフィーカラムにて0.5mL/分の一定流速で処理し、洗浄液も併せて回収することにより、抗体タンパク質濃度11.1mg/mLのフロースルーフラクション溶液を得た。得られたフラクション溶液をウイルス除去膜で0.3MPaの等圧条件でろ過したところ、30分後の透過液体積は3.6mLであった。
したがって、Cellufine MAX Q−hに接触させた抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積は、クロマトグラフィー処理しなかった抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積と同じであった。
(抗体タンパク質含有溶液の調製2)
上述した抗体タンパク質含有溶液の調製1と同様の方法により、後述する実施例4から7で用いる抗体タンパク質含有溶液としてヒト免疫グロブリン含有溶液を調製した。ヒト免疫グロブリンは、日本血液製剤製の献血ヴェノグロブリン溶液を使用した。20mmol/L Acetate−Na、pH5、NaCl塩濃度250mmol/Lのバッファー溶液に、抗体タンパク質の濃度が15mg/mLとなるように献血ヴェノグロブリン溶液を添加し、さらにNaClによる塩濃度が250mmol/L、pH5となるように溶液を調整した。得られた溶液の電気伝導度を25.8mS/cmに調整した。さらに、溶液に、酸処理(2.5mg/mL、pH2にて1時間)によって得られた、同じヒト免疫グロブリンの凝集体を全タンパク質の0.5質量%となるように添加し、凝集体を含むヒト抗体タンパク質含有溶液を調製した。
(クロマトグラフィー処理試験方法2及びウイルス除去膜のろ過試験2)
得られたpH5、塩濃度250mmol/Lの抗体タンパク質含有溶液を用いて、上述したクロマトグラフィー処理試験方法1及びウイルス除去膜のろ過試験1と同様の方法により、後述する実施例4から7に係る各種クロマトグラフィー担体1mLをパッキングしたカラムを用いるフロースルーフラクションの採取と、ウイルス除去膜のろ過試験と、を実施した。
また、クロマトグラフィー処理をしていない、凝集体を添加していない抗体タンパク質含有溶液を、バッファー溶液により、抗体タンパク質の濃度が11.1mg/mLとなるように希釈した。さらに、クロマトグラフィー処理をしていない、0.5質量%凝集体を添加した抗体タンパク質含有溶液を、バッファー溶液により、抗体タンパク質の濃度が11.1mg/mLとなるように希釈した。次に、クロマトグラフィー処理をしていない、凝集体を添加していない抗体タンパク質含有溶液と、クロマトグラフィー処理をしていない、0.5質量%凝集体を添加した抗体タンパク質含有溶液と、のそれぞれを、ウイルス除去膜で、0.3MPaの等圧条件でろ過した。クロマトグラフィー処理をしていない、凝集体を添加していない抗体タンパク質含有溶液の30分後の透過液体積は、24.3mLであった。クロマトグラフィー処理をしていない、0.5質量%凝集体を添加した抗体タンパク質含有溶液の30分後の透過液体積は、9.2mLであった。したがって、クロマトグラフィー処理をしない場合、0.5質量%の凝集体により、ウイルス除去膜のろ過性能が顕著に低下したことが確認された。
(実施例4;溶液のpH:5;NaClによる溶液の塩濃度:250mmol/L;使用クロマトグラフィー担体:Cellufine Sulfate)
クロマトグラフィー担体として、硫酸基が結合しているセルロース鎖を備えるCellufine Sulfate(JNC株式会社製)を使用した。凝集体0.5質量%を添加した、濃度15mg/mLの抗体タンパク質含有溶液を、Cellufine Sulfateを充填したクロマトグラフィーカラムにて0.5mL/分の一定流速で処理し、洗浄液も併せて回収することにより、濃度11.1mg/mLのフロースルーフラクション溶液を得た。得られたフラクション溶液におけるタンパク質回収率は高かった。また、実施例4の回収率は、以下の実施例5〜7の回収率よりも高かった。得られたフラクション溶液をウイルス除去膜で0.3MPaの等圧条件でろ過したところ、30分後の透過液体積は24.3mLであった。
したがって、Cellufine Sulfateに接触させた抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積は、クロマトグラフィー処理しなかった抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積と比較して比べて大きく、また、クロマトグラフィー処理をしていない、凝集体を添加していない抗体タンパク質含有溶液の透過液体積と同じであった。よって、Cellufine Sulfateに接触させることにより、抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積が顕著に増加することが示された。
(実施例5;溶液のpH:5;NaClによる溶液の塩濃度:250mmol/L;使用クロマトグラフィー担体:Cellufine DexS HbP)
クロマトグラフィー担体として、硫酸基が結合しているデキストラン鎖とカップリングしているセルロース鎖を備えるCellufine DexS HbP(JNC株式会社製、サルフェイトリガンド密度:36μmol/mL以上)を使用した。実施例4と同様に、凝集体0.5質量%を添加した、濃度15mg/mLの抗体タンパク質含有溶液を、Cellufine DexS HbPを充填したクロマトグラフィーカラムにて0.5mL/分の一定流速で処理し、洗浄液も併せて回収することにより、抗体タンパク質濃度11.1mg/mLのフロースルーフラクション溶液を得た。得られたフラクション溶液のタンパク質回収率は高かった。得られたフラクション溶液をウイルス除去膜で0.3MPaの等圧条件でろ過したところ、30分後の透過液体積は24.3mLであった。
したがって、Cellufine DexS HbPに接触させた抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積は、クロマトグラフィー処理しなかった抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積と比較して比べて大きく、また、クロマトグラフィー処理をしていない、凝集体を添加していない抗体タンパク質含有溶液の透過液体積と同じであった。よって、Cellufine DexS HbPに接触させることにより、抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積が顕著に増加することが示された。
(実施例6;溶液のpH:5;NaClによる溶液の塩濃度:250mmol/L;使用クロマトグラフィー担体:Cellufine MAX IB)
クロマトグラフィー担体として、1級アミノ基を含むモノマー単位とブチル基を含むモノマー単位からなる共重合体が結合しているセルロース鎖を備える陰イオン交換樹脂であるCellufine MAX IB(JNC株式会社製)を使用した。実施例4と同様に、凝集体0.5質量%を添加した、濃度15mg/mLの抗体タンパク質含有溶液を、Cellufine MAX IBを充填したクロマトグラフィーカラムにて0.5mL/分の一定流速で処理し、洗浄液も併せて回収することにより、抗体タンパク質濃度11.1mg/mLのフロースルーフラクション溶液を得た。得られたフラクション溶液のタンパク質回収率は高かった。得られたフラクション溶液をウイルス除去膜で0.3MPaの等圧条件でろ過したところ、30分後の透過液体積は21.8mLであった。
したがって、Cellufine MAX IBに接触させた抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積は、クロマトグラフィー処理しなかった抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積と比較して比べて大きく、また、クロマトグラフィー処理をしていない、凝集体を添加していない抗体タンパク質含有溶液の透過液体積と同等であった。よって、Cellufine MAX IBに接触させることにより、抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積が顕著に増加することが示された。
(実施例7;溶液のpH:5;NaClによる溶液の塩濃度:250mmol/L;使用クロマトグラフィー担体:Cellufine DexS VirS)
クロマトグラフィー担体として、硫酸基が結合しているデキストラン鎖とカップリングしているセルロース鎖を備えるCellufine DexS VirS(JNC株式会社製、サルフェイトリガンド密度:76μmol/mL以上)を使用した。実施例4と同様に、凝集体0.5質量%を添加した、濃度15mg/mLの抗体タンパク質含有溶液を、Cellufine DexS VirSを充填したクロマトグラフィーカラムにて0.5mL/分の一定流速で処理し、洗浄液も併せて回収することにより、濃度11.1mg/mLのフロースルーフラクション溶液を得た。得られたフラクション溶液のタンパク質回収率は、Cellufine DexS HbPより低かった。得られた溶液をウイルス除去膜で0.3MPaの等圧条件でろ過したところ、30分後の透過液体積は24.4mLであった。
したがって、Cellufine DexS VirSに接触させた抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積は、クロマトグラフィー処理しなかった抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積と比較して比べて大きく、また、クロマトグラフィー処理をしていない、凝集体を添加していない抗体タンパク質含有溶液の透過液体積と同等であった。よって、Cellufine DexS VirSに接触させることにより、抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積が顕著に増加することが示された。また、サルフェイトリガンド密度が低いほうが、タンパク質の回収率が高いことが示された。
(抗体タンパク質含有溶液の調製3)
上述した抗体タンパク質含有溶液の調製1と同様の方法により、後述する実施例8から10で用いる抗体タンパク質含有溶液としてヒト免疫グロブリン含有溶液を調製した。ヒト免疫グロブリンは、献血ヴェノグロブリン溶液(日本血液製剤製)を使用した。20mmol/L Acetate−Na、pH5、NaCl塩濃度250mmol/Lのバッファー溶液に、抗体タンパク質の濃度が15mg/mLとなるように献血ヴェノグロブリン溶液を添加し、さらにNaClによる塩濃度が250mmol/L、pH5となるように溶液を調整した。得られた溶液の電気伝導度を25.8mS/cmに調整した。さらに、溶液に、ヒトIgM(オリエンタル酵母社製)を全タンパク質の0.2質量%となるように添加し、ヒトIgMを含むヒト抗体タンパク質含有溶液を調製した。
(クロマトグラフィー処理試験方法3及びウイルス除去膜のろ過試験3)
得られたpH5、塩濃度250mmol/Lの抗体タンパク質含有溶液を用いて、上述したクロマトグラフィー処理試験方法1及びウイルス除去膜のろ過試験1と同様の方法により、後述する実施例8から10に係る各種クロマトグラフィー担体1mLをパッキングしたカラムを用いるフロースルーフラクションの採取と、ウイルス除去膜のろ過試験と、を実施した。
また、クロマトグラフィー処理をしていない、ヒトIgMを添加していない抗体タンパク質含有溶液を、バッファー溶液により、抗体タンパク質の濃度が11.1mg/mLとなるように希釈した。さらに、クロマトグラフィー処理をしていない、0.2質量%ヒトIgMを添加した抗体タンパク質含有溶液を、バッファー溶液により、抗体タンパク質の濃度が11.1mg/mLとなるように希釈した。次に、クロマトグラフィー処理をしていない、ヒトIgMを添加していない抗体タンパク質含有溶液と、クロマトグラフィー処理をしていない、0.2質量%ヒトIgMを添加した抗体タンパク質含有溶液と、のそれぞれを、ウイルス除去膜で、0.3MPaの等圧条件でろ過した。クロマトグラフィー処理をしていない、ヒトIgMを添加していない抗体タンパク質含有溶液の30分後の透過液体積は、16.7mLであった。クロマトグラフィー処理をしていない、0.2質量%ヒトIgMを添加した抗体タンパク質含有溶液の30分後の透過液体積は、10.1mLであった。したがって、クロマトグラフィー処理をしない場合、0.2質量%ヒトIgMにより、ウイルス除去膜のろ過性能が顕著に低下したことが確認された。
(実施例8;溶液のpH:5;NaClによる溶液の塩濃度:250mmol/L;使用クロマトグラフィー担体:Cellufine DexS HbP)
クロマトグラフィー担体として、硫酸基が結合しているデキストラン鎖とカップリングしているセルロース鎖を備えるCellufine DexS HbP(JNC株式会社製、サルフェイトリガンド密度:36μmol/mL以上)を使用した。ヒトIgM0.2質量%を添加した、濃度15mg/mLの抗体タンパク質含有溶液を、Cellufine DexS HbPを充填したクロマトグラフィーカラムにて0.5mL/分の一定流速で処理し、洗浄液も併せて回収することにより、濃度11.1mg/mLのフロースルーフラクション溶液を得た。得られたフラクション溶液におけるタンパク質回収率は高かった。得られたフラクション溶液をウイルス除去膜で0.3MPaの等圧条件でろ過したところ、20分後の透過液体積は16.7mLであった。
したがって、Cellufine DexS HbPに接触させた抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積は、クロマトグラフィー処理しなかった抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積と比較して比べて大きく、また、クロマトグラフィー処理をしていない、ヒトIgMを添加していない抗体タンパク質含有溶液の透過液体積と同じであった。よって、Cellufine DexS HbPに接触させることにより、抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積が顕著に増加することが示された。
(実施例9;溶液のpH:5;NaClによる溶液の塩濃度:250mmol/L;使用クロマトグラフィー担体:Cellufine MAX IB)
クロマトグラフィー担体として、1級アミノ基を含むモノマー単位とブチル基を含むモノマー単位からなる共重合体が結合しているセルロース鎖を備える陰イオン交換樹脂であるCellufine MAX IB(JNC株式会社製)を使用した。実施例8と同様に、ヒトIgM0.2質量%を添加した、濃度15mg/mLの抗体タンパク質含有溶液を、Cellufine MAX IBを充填したクロマトグラフィーカラムにて0.5mL/分の一定流速で処理し、洗浄液も併せて回収することにより、濃度11.1mg/mLのフロースルーフラクション溶液を得た。得られたフラクション溶液のタンパク質回収率は高かった。得られた溶液をウイルス除去膜で0.3MPaの等圧条件でろ過したところ、20分後の透過液体積は16.7mLであった。
したがって、Cellufine MAX IBに接触させた抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積は、クロマトグラフィー処理しなかった抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積と比較して比べて大きく、また、クロマトグラフィー処理をしていない、ヒトIgMを添加していない抗体タンパク質含有溶液の透過液体積と同じであった。よって、Cellufine MAX IBに接触させることにより、抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積が顕著に増加することが示された。
(実施例10;溶液のpH:5;NaClによる溶液の塩濃度:250mmol/L;使用クロマトグラフィー担体:Cellufine DexS VirS)
クロマトグラフィー担体として、硫酸基が結合しているデキストラン鎖とカップリングしているセルロース鎖を備えるCellufine DexS VirS(JNC株式会社製、サルフェイトリガンド密度:76μmol/mL以上)を使用した。実施例8と同様に、ヒトIgM0.2質量%を添加した、濃度15mg/mLの抗体タンパク質含有溶液を、Cellufine DexS VirSを充填したクロマトグラフィーカラムにて0.5mL/分の一定流速で処理し、洗浄液も併せて回収することにより、濃度11.1mg/mLのフロースルーフラクション溶液を得た。得られたフラクション溶液のタンパク質回収率は、Cellufine DexS HbPより低かった。得られた溶液をウイルス除去膜で0.3MPaの等圧条件でろ過したところ、20分後の透過液体積は17.5mLであった。
したがって、Cellufine DexS VirSに接触させた抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積は、クロマトグラフィー処理しなかった抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積と比較して比べて大きかった。よって、Cellufine DexS VirSに接触させることにより、抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積が顕著に増加することが示された。また、サルフェイトリガンド密度が低いほうが、タンパク質の回収率が高いことが示された。
(抗体タンパク質含有溶液の調製4)
上述した抗体タンパク質含有溶液の調製1と同様の方法により、後述する実施例11、12で用いる抗体タンパク質含有溶液としてヒト免疫グロブリン含有溶液を調製した。ヒト免疫グロブリンは、献血ヴェノグロブリン溶液(日本血液製剤製)を使用した。20mmol/L Acetate−Na、pH6、NaCl塩濃度100mmol/Lのバッファー溶液に、抗体タンパク質の濃度が15mg/mLとなるように献血ヴェノグロブリン溶液を添加し、さらにNaClによる塩濃度が100mmol/L、pH6となるように溶液を調整した。得られた溶液の電気伝導度を12.4mS/cmに調整した。さらに、溶液に、ヒトIgM(オリエンタル酵母社製)を全タンパク質の0.2質量%となるように添加し、ヒトIgMを含むヒト抗体タンパク質含有溶液を調製した。
(クロマトグラフィー処理試験方法3及びウイルス除去膜のろ過試験3)
得られたpH6、塩濃度100mmol/Lの抗体タンパク質含有溶液を用いて、上述したクロマトグラフィー処理試験方法1及びウイルス除去膜のろ過試験1と同様の方法により、後述する実施例11、12に係る各種クロマトグラフィー担体1mLをパッキングしたカラムを用いるフロースルーフラクションの採取と、ウイルス除去膜のろ過試験と、を実施した。
また、クロマトグラフィー処理をしていない、ヒトIgMを添加していない抗体タンパク質含有溶液を、バッファー溶液により、抗体タンパク質の濃度が11.1mg/mLとなるように希釈した。さらに、クロマトグラフィー処理をしていない、0.2質量%ヒトIgMを添加した抗体タンパク質含有溶液を、バッファー溶液により、抗体タンパク質の濃度が11.1mg/mLとなるように希釈した。次に、クロマトグラフィー処理をしていない、ヒトIgMを添加していない抗体タンパク質含有溶液と、クロマトグラフィー処理をしていない、0.2質量%ヒトIgMを添加した抗体タンパク質含有溶液と、のそれぞれを、ウイルス除去膜で、0.3MPaの等圧条件でろ過した。クロマトグラフィー処理をしていない、ヒトIgMを添加していない抗体タンパク質含有溶液の20分後の透過液体積は、16.8mLであった。クロマトグラフィー処理をしていない、0.2質量%ヒトIgMを添加した抗体タンパク質含有溶液の20分後の透過液体積は、10.0mLであった。したがって、クロマトグラフィー処理をしない場合、0.2質量%ヒトIgMにより、ウイルス除去膜のろ過性能が顕著に低下したことが確認された。
(実施例11;溶液のpH:6;NaClによる溶液の塩濃度:100mmol/L;Cellufine MAX IB)
クロマトグラフィー担体として、1級アミノ基を含むモノマー単位とブチル基を含むモノマー単位からなる共重合体が結合しているセルロース鎖を備える陰イオン交換樹脂であるCellufine MAX IB(JNC株式会社製)を使用した。ヒトIgM0.2質量%を添加した、濃度15mg/mLの抗体タンパク質含有溶液を、Cellufine MAX IBを充填したクロマトグラフィーカラムにて0.5mL/分の一定流速で処理し、洗浄液も併せて回収することにより、濃度11.1mg/mLのフロースルーフラクション溶液を得た。得られたフラクション溶液のタンパク質回収率は高かった。得られた溶液をウイルス除去膜で0.3MPaの等圧条件でろ過したところ、20分後の透過液体積は16.7mLであった。
したがって、Cellufine MAX IBに接触させた抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積は、クロマトグラフィー処理しなかった抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積と比較して比べて大きく、また、クロマトグラフィー処理をしていない、ヒトIgMを添加していない抗体タンパク質含有溶液の透過液体積と同等であった。よって、Cellufine MAX IBに接触させることにより、抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積が顕著に増加することが示された。
(実施例12;溶液のpH:6;NaClによる溶液の塩濃度:100mmol/L;Cellufine DexS VirS)
クロマトグラフィー担体として、硫酸基が結合しているデキストラン鎖とカップリングしているセルロース鎖を備えるCellufine DexS VirS(JNC株式会社製、サルフェイトリガンド密度:76μmol/mL以上)を使用した。実施例11と同様に、ヒトIgM0.2質量%を添加した、濃度15mg/mLの抗体タンパク質含有溶液を、Cellufine DexS VirSを充填したクロマトグラフィーカラムにて0.5mL/分の一定流速で処理し、洗浄液も併せて回収することにより、濃度11.1mg/mLのフロースルーフラクション溶液を得た。得られたフラクション溶液のタンパク質回収率は高かった。得られた溶液をウイルス除去膜で0.3MPaの等圧条件でろ過したところ、20分後の透過液体積は14.8mLであった。
したがって、Cellufine DexS VirSに接触させた抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積は、クロマトグラフィー処理しなかった抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積と比較して比べて大きかった。よって、Cellufine DexS VirSに接触させることにより、抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積が顕著に増加することが示された。
(抗体タンパク質含有溶液の調製5)
後述する実施例13及び比較例2で用いる抗体タンパク質含有溶液として、ヒトモノクローナル抗体含有溶液を調製した。ヒトモノクローナル抗体は、CHO細胞を培養するおとによって得られた組み換えタンパク質であるヒトモノクローナル抗体を含む培養液から、プロテインAクロマトグラフィー及びカチオン交換クロマトグラフィーによって精製した。得られた抗体タンパク質含有溶液において、抗体タンパク質の濃度を15mg/mL、電気伝導度を15mS/cm、pHを7に調整した。さらに、溶液に、酸熱処理(15mg/mL、pH4、60℃にて1時間)によって得られた、同じモノクローナル抗体の凝集体を全タンパク質の1.5質量%となるように添加し、凝集体を含むヒト抗体タンパク質含有溶液を調製した。
(クロマトグラフィー処理試験方法5及びウイルス除去膜のろ過試験5)
得られたpH7、電気伝導度15mS/cmの抗体タンパク質含有溶液を用いて、上述したクロマトグラフィー処理試験方法1及びウイルス除去膜のろ過試験1と同様の方法により、後述する実施例13及び比較例2に係る各種クロマトグラフィー担体1mLをパッキングしたカラムを用いるフロースルーフラクションの採取と、ウイルス除去膜のろ過試験と、を実施した。
また、クロマトグラフィー処理をしていない、凝集体を添加していない抗体タンパク質含有溶液を、バッファー溶液により、抗体タンパク質の濃度が11.1mg/mLとなるように希釈した。さらに、クロマトグラフィー処理をしていない、1.5質量%凝集体を添加した抗体タンパク質含有溶液を、バッファー溶液により、抗体タンパク質の濃度が11.1mg/mLとなるように希釈した。次に、クロマトグラフィー処理をしていない、凝集体を添加していない抗体タンパク質含有溶液と、クロマトグラフィー処理をしていない、1.5質量%凝集体を添加した抗体タンパク質含有溶液と、のそれぞれを、ウイルス除去膜で、0.3MPaの等圧条件でろ過した。クロマトグラフィー処理をしていない、凝集体を添加していない抗体タンパク質含有溶液の30分後の透過液体積は、14.5mLであった。クロマトグラフィー処理をしていない、1.5質量%凝集体を添加した抗体タンパク質含有溶液の30分後の透過液体積は、2.6mLであった。したがって、クロマトグラフィー処理をしない場合、1.5質量%の凝集体により、ウイルス除去膜のろ過性能が顕著に低下したことが確認された。
(実施例13;溶液のpH:7;NaClによる溶液の塩濃度:150mmol/L;使用クロマトグラフィー担体:Cellufine MAX IB)
クロマトグラフィー担体として、1級アミノ基を含むモノマー単位とブチル基を含むモノマー単位からなる共重合体が結合しているセルロース鎖を備える陰イオン交換樹脂であるCellufine MAX IB(JNC株式会社製)を使用した。凝集体1.5質量%を添加した、濃度15mg/mLのモノクローナル抗体タンパク質含有溶液を、Cellufine MAX IBを充填したクロマトグラフィーカラムにて0.5mL/分の一定流速で処理し、洗浄液も併せて回収することにより、抗体タンパク質濃度11.1mg/mLのフロースルーフラクション溶液を得た。得られたフラクション溶液のタンパク質回収率は高かった。得られた溶液をウイルス除去膜で0.3MPaの等圧条件でろ過したところ、30分後の透過液体積は17.4mLであった。
したがって、Cellufine MAX IBに接触させた抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積は、クロマトグラフィー処理しなかった抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積と比較して比べて大きく、また、クロマトグラフィー処理をしていない、凝集体を添加していない抗体タンパク質含有溶液の透過液体積と比べても大きかった。よって、Cellufine MAX IBに接触させることにより、抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積が顕著に増加することが示された。
(比較例2;溶液のpH:7;NaClによる溶液の塩濃度:150mmol/L;使用クロマトグラフィー担体:Cellufine MAX Q−h)
クロマトグラフィー担体として、4級アミノ基が結合しているデキストラン鎖とカップリングしているセルロース鎖を備える陰イオン交換樹脂であるCellufine MAX Q−h(JNC株式会社製)を使用した。実施例13と同様に、凝集体1.5質量%を添加した、濃度15mg/mLのモノクローナル抗体タンパク質含有溶液を、Cellufine MAX Q−hを充填したクロマトグラフィーカラムにて0.5mL/分の一定流速で処理し、洗浄液も併せて回収することにより、抗体タンパク質濃度11.1mg/mLのフロースルーフラクション溶液を得た。得られたフラクション溶液のタンパク質回収率は高かった。得られた溶液をウイルス除去膜で0.3MPaの等圧条件でろ過したところ、30分後の透過液体積は3.2mLであった。
したがって、Cellufine MAX Q−hに接触させた抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積は、クロマトグラフィー処理しなかった抗体タンパク質含有溶液のウイルス除去膜の透過液体積と同程度であった。

Claims (13)

  1. 目的タンパク質を含むタンパク質含有溶液のろ過方法であって、以下の工程を含む方法;
    (a1)前記タンパク質含有溶液を、硫酸基が結合している糖鎖を備えるクロマトグラフィー担体に接触させる工程、及び
    (a2)前記クロマトグラフィー担体に接触させた前記タンパク質含有溶液をウイルス除去膜に通過させる工程。
  2. 目的タンパク質を含むタンパク質含有溶液のろ過方法であって、以下の工程を含む方法;
    (b1)前記タンパク質含有溶液を、1級アミノ基を有するモノマー単位及び疎水性基を有するモノマー単位を含む共重合体が結合している糖鎖を備えるクロマトグラフィー担体に接触させる工程、及び
    (b2)前記クロマトグラフィー担体に接触させた前記タンパク質含有溶液をウイルス除去膜に通過させる工程。
  3. 前記硫酸基が結合している糖鎖を備えるクロマトグラフィー担体における前記硫酸基の密度が、担体1mL当たり、1000μmol以下である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記タンパク質含有溶液をフロースルーモードによってクロマトグラフィー担体に接触させる、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記糖鎖が、セルロース、デキストラン、又はアガロースである、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記目的タンパク質が抗体である、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記タンパク質含有溶液のpHが4以上8以下である、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 前記タンパク質含有溶液の電気伝導度が50mS/cm以下である、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
  9. (a1)又は(b1)の工程で抗体凝集体を除去する、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
  10. (a1)又は(b1)の工程でIgMを除去する、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
  11. アニオン交換基を有する媒体によって前記タンパク質含有溶液を処理する工程をさらに含む、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
  12. (a1)工程と(a2)工程、又は(b1)工程と(b2)工程が連続的になされる、請求項1から11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記疎水性基がブチル基である、請求項2に記載の方法。
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