JP2011041475A - 抗体製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】抗体に対する抗体凝集体の比率を低く抑えつつ、ウイルスの量を低減可能な抗体製造法を提供する。
【解決手段】リガンドとの相互作用を利用して抗体を含有する溶液から医薬品としての抗体を得る抗体製造方法において、抗体を含有する溶液をpH2.5乃至3.5で0.5乃至10分間保持する工程を含む抗体製造方法を提供する。
【選択図】なし
【解決手段】リガンドとの相互作用を利用して抗体を含有する溶液から医薬品としての抗体を得る抗体製造方法において、抗体を含有する溶液をpH2.5乃至3.5で0.5乃至10分間保持する工程を含む抗体製造方法を提供する。
【選択図】なし
Description
本発明は、医薬品としての抗体を得る製造方法に関するものであり、医薬原料溶液から目的抗体を精製する工程を含む抗体製造方法に関する。
抗体は、それが認識し、結合する標的物質に対する特異性の高さから、研究用試薬や臨床検査試薬として極めて有用である。ことに近年においては、遺伝子組換え技術などのバイオテクノロジーを利用して種々の治療用抗体が開発され、従来治療が困難であったリウマチや癌などの分野において、画期的な治療薬として医療技術の進歩に大きく貢献している。これらは一般に抗体医薬と称されている。また、抗体は動物の体液からも精製することが可能であり、ヒトの血漿から精製された抗体はガンマグロブリン製剤と称され、医薬品として使用されている。
医薬品としての抗体製造においては、ヒトや免疫した動物の血液や腹水などの体液あるいは抗体産生能を持つ細胞の培養液が、抗体の原料として使用される。これらの医薬原料溶液には、目的とする抗体以外に様々なタンパク質やデオキシリボ核酸(DNA)等の不純物が含まれているため、精製工程において、古くは分別沈殿法やイオン交換法等の古典的手法を駆使して精製が行われていた。さらに、抗体の精製度をより高め、しかも生産性も高めるために、クロマトグラフィーを利用した分離技術も導入され、数多く検討されてきた。例えば、イオン交換クロマトグラフィーや疎水クロマトグラフィー、あるいはそれらの組合せがあるが(例えば、特許文献1参照。)、これらの方法では、溶液のpHを大きく変化させる、あるいは種々の塩を添加する等して抗体の吸着や解離を行うため、最終製品としての抗体を得る前に、溶液から不要な成分を除去する必要がある等の問題がある。しかも、溶液から不要な成分を除去してもなお、抗体の精製度は充分でなく、後述する特異的結合による方法には到底比肩するものではない。
イオン交換クロマトグラフィー技術や疎水クロマトグラフィー技術をさらに発展させた技術がアフィニティ分離技術である。アフィニティ分離技術は、目的物に親和性の高いリガンドを有する担体を用いるので、抗体の回収率や生産性の点では非常に優れた技術である。抗体の精製工程にもアフィニティ分離が積極的に導入されており、アフィニティリガンドとして近年重要な役割を果たしているのが、スタフィロコッカス属黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)由来のプロテインAである。プロテインAは、抗体、すなわち免疫グロブリンのFc領域に対して高い特異性と親和性とを有することから、これを担体のリガンドに用いた抗体精製方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。プロテインAは、中性条件下で抗体のFc領域に高い親和性を示すため、医薬原料溶液から抗体を精製する際には、プロテインA等をリガンドとして有する不溶性担体に医薬原料溶液を接触させて抗体を特異的に吸着させる。そして、中性の生理的溶液で非吸着成分を洗浄し、除去した後、酸性の生理的溶液で吸着抗体をリガンドから解離させると、抗体を高率に回収できることがよく知られている。
このように、プロテインA等を用いた抗体の精製方法は、結合特異性に優れるという長所があるものの、抗体を高率に回収するためには、pH3付近という低いpH条件が必要となる。低いpH条件はウイルス不活化工程も兼用できるという利点もあるので、プロテインAを用いた抗体の精製方法は、低pHに対して頑健なモノクローナル抗体を精製する場合には有効な方法といえる(例えば、特許文献3参照。)。しかし、プロテインAを用いた抗体の精製方法は、低pHで変性して失活する抗体には適用できない。また、低pH下では抗体の高次構造が変化しやすいため、失活には至らなくとも、凝集体の生成を引き起こす場合があることが知られている(例えば、非特許文献1参照。)。この抗体凝集体は、ヒトに投与した場合に抗原性を示すことが懸念されている(例えば、非特許文献2、3、4参照。)ので、こと治療用抗体の製造においては、後段の精製工程における凝集体の除去及び残留量のモニタリングが求められる。これまでの研究において、凝集体の不活化条件として、凝集体を含む溶液を、30分以上pH3.8以上にすること等が見出されている(例えば、非特許文献5、6、7参照。)。
低pH暴露による抗体の失活や凝集化を回避するために、微酸性乃至弱酸性で抗体溶出が可能なアフィニティリガンドが開発されている(例えば、非特許文献8、9参照。)。また、アミノ酸を添加した新たな溶離緩衝液により、微酸性乃至弱酸性の溶出の試みも報告されている(例えば、非特許文献10参照。)。
また、低pH暴露を回避する方策として、温度応答性クロマトグラフィーなどの機能性担体を用いたクロマトグラフィー(例えば、特許文献4、5参照。)の開発も進められている。
なお、ウイルス不活化のプロセスとしては、熱処理、UV照射、色素添加、及びソルベントデタージェント法などが用いられてきている(例えば、非特許文献11参照。)が、ウイルス不活化のためのロバストな工程として依然として低pH処理が行われている。
"Journal of Pharmaceutical Sciences"、2007年、第96巻、p.1−26
"Clinical Therapeutics"、200 2年、第24巻、p.1720−1740
"The AAPS Journal"、2006年、第8 巻、E501−E507
"FDA meeting presentation"、インターネット<URL:http://www.fda.gov/cder/regulatory/follow_on/200512/200512_rosenberg.pdf>
"Biotechnology and Bioengineering"、2003年、第82巻、p.321−329
"Journal of Chromatography B"、2007年、第848巻、p.28−39
"Current Opinion in Biotechnology"、2005年、第16巻、p.561−567
"Journal of Chromatography A"、2007年、第1161巻、p.36−40
「平成20年度バイオエンジニアリング研究会講演会 講演要旨集」、バイオインダストリー協会、平成21年1月23日、p.10−13
"Protein Expression and Purification"、2004年、第36巻、p.244−248
"Haema"、2002年、第5巻、p.213−221
これまで、抗体精製には一般的に抗体を含む医薬品原料液を数時間、低pHに暴露するという方法が用いられてきた。これは、ウイルス不活化に有効である反面、抗体凝集化を促進するので医薬品製造工程としては好ましくない。抗体を精製するためのアフィニティクロマトグラフィープロセスに関して種々検討が成されているが、ウイルス不活化など品質面まで含めたプロセス構築に関しては満足できる提案がなされていない。抗体医薬品を工業的に製造する際に、アフィニティークロマトグラフィーを用いた精製方法を用いるにあたり、抗体活性の低下や抗体凝集を回避しつつ、ウイルス不活化を達成するプロセスを構築する。
本発明者らは、低pH条件において抗体の凝集に要する時間とウイルスの不活化に要する時間が異なることに着目し、その特徴を利用したプロセスを組み合わせることが、高品質で安全な抗体医薬品製造に有用であることを見出した。つまり、微酸性乃至弱酸性のアフィニティーカラムから抗体を溶出することにより抗体凝集化を抑え、なおかつその後段に低pH処理の短時間処理プロセスを配置する。短時間pH処理は抗体凝集化を引き起こすことなく、しかも充分なウイルス不活化能力を発揮しうるため、高品質で安全な抗体医薬品の製造工程を構築する上で有用な方法である。
すなわち、本発明の態様は、リガンドとの相互作用を利用して抗体を含有する溶液から医薬品としての抗体を得る抗体製造方法において、抗体を含有する溶液をpH2.5乃至pH3.5付近で30秒乃至10分という短時間保持する工程を含む抗体製造方法であることを要旨とする。
本発明によれば、抗体に対する抗体凝集体の比率を低く抑えつつ、ウイルスの量を低減することが可能となる。
以下、本発明の実施の形態(以下において、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。本実施の形態に係る抗体製造方法は、リガンドとの相互作用を利用して抗体を含有する溶液から医薬品としての抗体を得る抗体製造方法であり、抗体を含有する溶液をpH2.5乃至3.5で0.5乃至10分間保持する工程を含む。
本実施の形態でいうリガンドとは、特定の受容体タンパク質に特異的に結合する物質のことである。一般にリガンドが対象物質と結合する部位は決まっており、選択的又は特異的に高い親和性を発揮する。酵素タンパク質とその基質、ホルモンや神経伝達物質などのシグナル物質とその受容体などが顕著な例であるが、本実施の形態においては、リガンドとは、受容体タンパク質としての抗体に特異的に結合する物質をいう。
本実施の形態でいう抗体とは、生化学における一般的な定義のとおり、脊椎動物の感染防禦機構としてBリンパ球が産生する糖タンパク質分子(ガンマグロブリン又は免疫グロブリンともいう)のことであるが、特に本実施の形態では、ヒトに対して医薬品として使用できるものをいう。すなわち、ウイルス等の病原微生物との混合が実質的に認められず、投与対象であるヒトの体内にある抗体と実質的に同一の構造を有するものである。
本実施の形態において、ヒトIgGとのキメラ抗体とは、可変領域はマウスなどのヒト以外の生物由来であるが、その他の定常領域をヒト由来の免疫グロブリンに置換したものをいう。また、ヒト化抗体とは可変領域のうち、相補性決定領域(complementarity−determining region: CDR)がヒト以外の生物由来で、その他のフレームワーク領域(framework region: FR)をヒト由来としたものをいう。ヒト化抗体は、キメラ抗体よりも免疫原性がさらに低減される。
抗体の種類については、医薬品として適用できるものであればよく、クラス(アイソタイプ)やサブクラスは特に限定されない。例えば、抗体は定常領域の構造の違いにより、IgG,IgA,IgM,IgD,及びIgEの5種類のクラスに分類されるが、各免疫グロブリンの何れであってもよい。ヒト抗体においては、IgGにはIgG1〜IgG4の4つのサブクラスがあり、IgAにはIgA1とIgA2の2つのサブクラスがあるが、これも特に限定されない。なお、医薬品として適用可能であれば、Fc領域が結合された抗体関連タンパク質も本実施の形態でいう抗体の範疇である。
さらに、抗体は由来や製造方法によっても分類することができ、天然のヒト抗体や遺伝子組換え技術により生産された組換えヒト抗体、あるいはモノクローナル抗体やポリクローナル抗体の何れであってもよい。これらの抗体の中でも、抗体医薬としての需要や重要性の観点から、ヒトIgGへの適用が好適である。また、後述する特定のリガンドと特定の液性による本実施の形態の抗体精製条件は、ヒトIgGの精製に好適である。
医薬品としての抗体は、大略、以下の工程を経て製造される。すなわち、細胞培養工程、細胞分離工程、精製工程、ウイルス除去工程、濃縮・液交換工程、ボトリング工程という順番である。勿論このフローに限定されるものではなく、付加的な工程が挿入されることや、各工程の一部が入れ替わることもある。上記は、細胞培養法によって目的抗体の生産を行う場合の代表的フローであるが、ヒトの体液又は細胞培養液から目的抗体を精製する場合は、細胞培養工程と細胞分離工程とが省略され、体液又は細胞培養液は精製工程に投入される。
ここで、ヒトの体液とは、血液、血漿、血清、リンパ液、腹水、胸水、あるいはそれらの混合液、それらに生理的食塩水、緩衝液、無菌水等の生理的溶液を加えた希釈液、並びに血液製剤等を全て含む。本実施の形態での細胞培養液とは医薬原料溶液を得ることを目的として培養された細胞が懸濁した液をさし、細胞としては動物の体液や組織から採取した細胞、人工的に癌化させた株化細胞、さらにはこれら細胞を生体外で培養したもの等をさす。また、細胞培養後、細胞分離工程を経て精製工程に投入される液とは、目的抗体が細胞外へ放出又は分泌された後、細胞が濾過や沈殿によって分離された溶液である。これに生理的溶液を加えた希釈液であってもよい。あるいは、これらが後述する粗精製を経た溶液であってもよく、例えば、イオン交換やクロマトグラフィー等で回収された溶液であってもよい。本実施の形態においては、このように精製工程のうち、特定のアミノ酸リガンドを用いる抗体の精製工程に投入する前の抗体含有溶液を医薬原料溶液と総称する。
精製工程には、一段階の本精製のみ、粗精製と本精製との組合せ、あるいは複数の粗精製と複数の本精製との組合せという幾つかの精製パターンが含まれるが、本実施の形態ではいずれかに限定する必要はない。本精製においては、抗体と相互作用するリガンドを有するアフィニティクロマトグラフィー工程が実施される。さらに、本精製においては、抗体の凝集を抑制するため、低pH処理を回避可能なアフィニティクロマトグラフィー工程が好適に実施される。低pH処理を回避可能なアフィニティクロマトグラフィーとして、温度応答性高分子を用いたクロマトグラフィーが利用可能である。温度応答性高分子を用いたクロマトグラフィーとは、温度変化によりタンパク質を吸脱着する吸着剤に目的タンパク質としての抗体を含む医薬原料液を接触させ、その後、溶液の温度を変化させて目的抗体を吸着材から離脱させ、回収する方法である。粗精製は、本実施の形態の特定リガンドを利用した本精製の前後に実施可能である。粗精製には、本精製とは異なる分離様式、例えば種々のクロマトグラフィーや膜分離等に基づく精製が利用可能である。
低pH処理を回避可能なアフィニティクロマトグラフィーと短時間低pH処理工程とを組み合わせることよって、抗体分子に変異を与えずにウイルスを除去可能なプロセスを構築することが可能となる。具体的には、アフィニティクロマトグラフィーで得られた抗体を含有する溶液の水素イオン指数を、短時間低pHとすることにより、抗体に対する抗体凝集体の比率を低く抑えつつ、溶液中のウイルスの量を低減することが可能となる。ウイルス除去の観点から、水素イオン指数は、pH2.5乃至3.5が好ましい。また、抗体に対する抗体凝集体の比率を低く抑えるという観点から、水素イオン指数をpH2.5乃至3.5にする時間は、0.5乃至10分間であることが好ましく、0.5乃至5分間であることがさらに好ましい。
以下、実施例によって本実施の形態をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
[抗体凝集度の評価方法]
本実施の形態の抗体凝集の評価系として、高速液体クロマトグラフィーのシステムを利用した。すなわち、リザーバタンク(移動相、0.1mol/Lリン酸、0.2mol/Lアルギニン、pH6.8)、送液ポンプ(送液線速1.68cm/min)、サンプルループ(容量100μL)、カラム(室温)、検出器(紫外線、波長280nm)、ドレンの順に接続した該システムを用いて目的物をロードした後、検出器から検出された吸光度から、目的物に含有される凝集体の比率を定量した。内径(直径)7.8mm、ベッド高さ300mmの東ソーTSKGEL G3000SWXLカラムを用いた。典型的には、溶出時間7分乃至8分に3量体以上の多量体ピーク(ピークA)が検出され、溶出時間9分乃至10分に2量体ピーク(ピークB)が検出され、溶出時間11分付近に単量体ピーク(ピークC)が検出される。これらのピークの面積比から、下記(1)式を用いるプログラムを用いて抗体凝集度を算出した。
本実施の形態の抗体凝集の評価系として、高速液体クロマトグラフィーのシステムを利用した。すなわち、リザーバタンク(移動相、0.1mol/Lリン酸、0.2mol/Lアルギニン、pH6.8)、送液ポンプ(送液線速1.68cm/min)、サンプルループ(容量100μL)、カラム(室温)、検出器(紫外線、波長280nm)、ドレンの順に接続した該システムを用いて目的物をロードした後、検出器から検出された吸光度から、目的物に含有される凝集体の比率を定量した。内径(直径)7.8mm、ベッド高さ300mmの東ソーTSKGEL G3000SWXLカラムを用いた。典型的には、溶出時間7分乃至8分に3量体以上の多量体ピーク(ピークA)が検出され、溶出時間9分乃至10分に2量体ピーク(ピークB)が検出され、溶出時間11分付近に単量体ピーク(ピークC)が検出される。これらのピークの面積比から、下記(1)式を用いるプログラムを用いて抗体凝集度を算出した。
抗体凝集度(%)=100×((ピークAの面積比)+(ピークBの面積比))・・・(1)
[ウイルス活性の評価方法]
本実施の形態のウイルス活性の評価系として、TCID50法を採用した。TCID50法を実施する際には、測定キット製造業者が推奨する下記の手順に従った。
手順1 細胞培養用シャーレ1枚にコンフルエントまで培養した培養細胞を用意する。
手順2 ウイルス液を培地で10倍ずつ段階希釈したウイルス液を用意する。
手順3 96ウエルプレート1枚の全てのウエルに50マイクロリットルずつ培地を入れる。
手順4 96ウエルプレートの第1列目に10の4乗倍希釈した組換えウイルスを25マイクロリットルずつ加える。
手順5 25マイクロリットルを第2列目のウエルに移す。
以下同じ操作を第11列目まで繰り返し最後の25マイクロリットルを捨てる。第12列目は非感染細胞のコントロールとする。チップは1列ごとに替える。
手順6 予め培養しておいた培養細胞を6mLの培地に懸濁する。
手順7 細胞懸濁液を50マイクロリットルずつ各ウエルに加える。
手順8 数日後に各ウエルに50マイクロリットルずつ10% 培地を穏やかに加える。
手順9 約2週間後に細胞変性の終末点を顕微鏡で判定する。その際、ウイルスが存在しているウエルの細胞は変性を起こして剥がれる。
手順10 下記(2)式で与えられるKarberの式を用いて、統計学的に50%細胞変性終末点(TCID50)を計算する。
TCID50 = (1列目の希釈率) × (希釈率)Σ−0.5 ・・・(2)
ただし、Σ=各希釈段階における(変性ウエル数)/(検体数)の総和である。
所定時間低pHに暴露されたサンプルのTCID50の対数と、出発試料に相当するウイルススパイクサンプルのTCID50の対数との差を、ウイルス溶液の対数減少値(LRV:Log Reduction Value)とした。
本実施の形態のウイルス活性の評価系として、TCID50法を採用した。TCID50法を実施する際には、測定キット製造業者が推奨する下記の手順に従った。
手順1 細胞培養用シャーレ1枚にコンフルエントまで培養した培養細胞を用意する。
手順2 ウイルス液を培地で10倍ずつ段階希釈したウイルス液を用意する。
手順3 96ウエルプレート1枚の全てのウエルに50マイクロリットルずつ培地を入れる。
手順4 96ウエルプレートの第1列目に10の4乗倍希釈した組換えウイルスを25マイクロリットルずつ加える。
手順5 25マイクロリットルを第2列目のウエルに移す。
以下同じ操作を第11列目まで繰り返し最後の25マイクロリットルを捨てる。第12列目は非感染細胞のコントロールとする。チップは1列ごとに替える。
手順6 予め培養しておいた培養細胞を6mLの培地に懸濁する。
手順7 細胞懸濁液を50マイクロリットルずつ各ウエルに加える。
手順8 数日後に各ウエルに50マイクロリットルずつ10% 培地を穏やかに加える。
手順9 約2週間後に細胞変性の終末点を顕微鏡で判定する。その際、ウイルスが存在しているウエルの細胞は変性を起こして剥がれる。
手順10 下記(2)式で与えられるKarberの式を用いて、統計学的に50%細胞変性終末点(TCID50)を計算する。
TCID50 = (1列目の希釈率) × (希釈率)Σ−0.5 ・・・(2)
ただし、Σ=各希釈段階における(変性ウエル数)/(検体数)の総和である。
所定時間低pHに暴露されたサンプルのTCID50の対数と、出発試料に相当するウイルススパイクサンプルのTCID50の対数との差を、ウイルス溶液の対数減少値(LRV:Log Reduction Value)とした。
(実施例1)
<低pH処理時間と抗体凝集度との関係>
以下の表1に示すように、10mmol/Lのグリシンを含むpH2.5の緩衝液、100mmol/Lのクエン酸を含むpH3.0の緩衝液、及び40mmol/Lのクエン酸を含むpH3.5の緩衝液をそれぞれ調製した。
<低pH処理時間と抗体凝集度との関係>
以下の表1に示すように、10mmol/Lのグリシンを含むpH2.5の緩衝液、100mmol/Lのクエン酸を含むpH3.0の緩衝液、及び40mmol/Lのクエン酸を含むpH3.5の緩衝液をそれぞれ調製した。
これらの緩衝液に対し、モデル抗体溶液として、ベネシス製の50mg/mLのポリクローナル抗体ヴェノグロブリン−I Hを抗体終濃度が5mg/mLになるように添加した。抗体溶液を緩衝液に添加した後、表2に示す各所定時間後に溶液のpHをpH6.5乃至pH8.5に中和し、その後冷蔵保存した。なお中和に必要なトリス緩衝液の濃度と量は、あらかじめ実験によって決めておいた。
中和後、フィルターチューブを用いて、溶液から不溶性成分を除去した。フィルターチューブには、孔径0.22マイクロメートルのミリポア製ウルトラフリーMCを使用した。その後、溶液中の抗体凝集度を、上述した抗体凝集度の評価方法に従って計測した。結果を、表3に示す。
表3の結果から、水素イオン指数をpH2.5乃至3.5にするのを10分以内にすれば、抗体凝集が10%程度に抑えられることが示された。これに対し、10分より長い180分の間、水素イオン指数をpH2.5乃至3.5にすると、抗体凝集が生じることが示された。
<低pH処理時間とウイルス不活化との関係>
pH3.5で0.1mol/Lのグリシン緩衝液、及びpH3.5で0.3mol/Lの塩化ナトリウム緩衝液を調製し、表4に示すウイルスをそれぞれ添加し、ウイルス溶液とした。ここで添加したマウス白血病ウイルスの量は、TCID50の対数値で5.80であった。また、仮性狂犬病ウイルスの量は、TCID50の対数値で5.61であった。
pH3.5で0.1mol/Lのグリシン緩衝液、及びpH3.5で0.3mol/Lの塩化ナトリウム緩衝液を調製し、表4に示すウイルスをそれぞれ添加し、ウイルス溶液とした。ここで添加したマウス白血病ウイルスの量は、TCID50の対数値で5.80であった。また、仮性狂犬病ウイルスの量は、TCID50の対数値で5.61であった。
これらのウイルス溶液に対し、表5に示す所定時間後に0.5mol/Lリン酸ナトリウム溶液を10分の1体積添加して、溶液の水素イオン指数をpH7.3に戻した。なお中和に必要なリン酸緩衝液量はあらかじめ実験によって決めておいた。
表6に示す結果から、水素イオン指数をpH3.5にする時間が0.5分未満では充分なウイルス不活化効果を得られない傾向にあるが、0.5分で充分なウイルス不活化効果が得られることが分かった。0.5分より長い処理時間でウイルスが不活化することは自明である。またpH3.5以下でウイルス不活化効果が得られることも自明である。
<低pH処理時間と抗体凝集度との関係>で示した結果と、<低pH処理時間とウイルス不活化との関係>で示した結果とから、0.5乃至10分の間、抗体を含む溶液の水素イオン指数をpH2.5乃至3.5にすることにより、抗体凝集抑制効果とウイルス不活化効果の両方が得られることが示された。また抗体凝集を10%以下に抑制できるより好ましい条件は、pH2.5乃至3.5かつ処理時間0.5乃至5分であった。
(実施例2)
低pH暴露を回避した抗体精製方法として、温度応答性クロマトグラフィーを表7に示す手順に従って実施した。また、比較例として、pH3.0で抗体を溶出する従来のクロマトグラフィーも、表7に示す手順に従って実施した。
低pH暴露を回避した抗体精製方法として、温度応答性クロマトグラフィーを表7に示す手順に従って実施した。また、比較例として、pH3.0で抗体を溶出する従来のクロマトグラフィーも、表7に示す手順に従って実施した。
それぞれのクロマトグラフィーにおいて、素通り画分及び洗浄画分(FT&W)、溶出画分(E)、並びに溶出確認画分(E−Conf)の3つのフラクションを採取し、それぞれのフラクションに含まれる抗体量を吸光度測定によって算出した。その後、溶出画分をゲルろ過クロマトグラフィーにかけて、溶出時に形成されたと考えられる多量体の形成率を測定し、上述した抗体凝集度の評価方法に従って抗体凝集度を算出した。結果を表8に示す。
次に、温度応答性クロマトグラフィープロセスで得られた溶出画分と従来プロセスで得られた溶出画分とを用いて、ウイルス不活化実験を、実施例1の<低pH処理時間とウイルス不活化との関係>で示した方法と同様に実施した。結果を表9に示す。
以上の結果から、低pH暴露を回避した温度応答性クロマトグラフィーで得られた溶出画分を用いた場合でも、pH3.5条件下、0.5分で充分なウイルス不活化効果が得られることが分かった。0.5分より長い処理時間でウイルスが不活化することは自明である。またpH3.5以下でウイルス不活化効果が得られることも自明である。
よって、温度応答性クロマトグラフィーと短時間低pH処理とを実施することが、ウイルス不活性化と抗体の凝集形成回避との両者を達成するための有効な手段であることが示された。
Claims (7)
- リガンドとの相互作用を利用して抗体を含有する溶液から医薬品としての前記抗体を得る抗体製造方法において、前記抗体を含有する溶液をpH2.5乃至3.5で0.5乃至10分間保持する工程を含む、抗体製造方法。
- 前記抗体を含有する溶液が体液又は細胞培養液である、請求項1に記載の抗体製造方法。
- 前記抗体が哺乳動物由来抗体、ヒトIgGとのキメラ抗体、又はヒト化抗体である、請求項1又は2に記載の抗体製造方法。
- 前記哺乳動物がヒト、ウシ、又はマウスである、請求項3に記載の抗体製造方法。
- 前記抗体がヒトIgGである請求項1又は2に記載の抗体製造方法。
- 前記抗体を含有する溶液をpH2.5乃至3.5で0.5乃至10分間保持する工程の前に、低pH処理を回避したクロマトグラフィーで前記抗体を含有する溶液を得る工程を更に含む、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の抗体製造方法。
- 前記低pH処理を回避したクロマトグラフィーが、温度応答性クロマトグラフィーである、請求項6に記載の抗体製造方法。
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