JP5711035B2 - アンカー及びアンカーの固定方法 - Google Patents
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Description
コンクリー構造物の改修や拡張を行うときには、特許文献2に記載されているように、作業足場や支保工を支持するために既存のコンクリート部材に鋼ブラケットを取り付け、この鋼ブラケットに作業足場や新たに打設するコンクリートの重量を一時的に支持させる場合がある。
一方、コンクリート部材の補強が必要となった場合にも、特許文献3に記載されているようにコンクリート部材の複数の位置にブラケットを取り付け、これらの間に緊張材を張架してコンクリート部材に追加のプレストレスを導入することがある。この他に既存のコンクリート部材に直接付加する部材をアンカーによって固着することなどが広く行われている。
鋼ブラケット102や付加部材に荷重が作用し、コンクリート部材110の鋼ブラケット102等が取り付けられた面に沿って大きな力が作用すると、この力はアンカーボルト101を介してコンクリー部材110に伝達され、アンカーボルト101には大きなせん断力が作用する。このせん断力に抵抗するためには、アンカーボルト101の本数を多くするか、又はアンカーボルトの径を大きくしなければならない場合が生じる。アンカーボルト101の本数が多くなると、アンカーボルト101を埋め込むための穴を多く切削する必要があり、既存のコンクリート部材110の耐久性等を保持するためには望ましくない。また、アンカーボルト101の径を大きくするとコンクリート部材110に切削する穴の径も大きくしなければならず、鉄筋105を切断しないように穴を穿設することが難しくなる。
一方、アンカーボルト101に大きなせん断力が作用すると、せん断力が作用する方向の背面側でアンカーボルト101とコンクリートとの接触面106で大きな支圧力が作用する。この支圧力を低減するためにも、アンカーボルト101の数を多くするか、又は径を拡大する必要が生じることがある。
上記鋼管は、先端から上記穴に挿入されたときに、コンクリート部材の表面より後端部が突出する長さを有するものであっても良いし、上記のように支圧プレートと一体に接合される場合には、上記鋼管は穴の深さより短いものであっても良い。
また、上記鋼管の外周面と穴の内周面との間に充填される充填材と、鋼管の内側に充填される充填される充填材とは、充填する時期が異なるものであっても良いし、双方に連続して充填されるものであっても良い。時期が異なるときには異なる種類の充填材を用いることもできる。
なお、上記発明において、コンクリート部材に埋め込まれた鉄筋に到達する深さで切削する穴は、鉄筋の表面が穴の底に露出する深さで形成するものであっても良いし、これより浅い穴であって穴の底の凹凸等によって鉄筋の表面の一部が露出し、鉄筋の位置が認識できる程度の深さであっても良い。
図1は、本発明に係るアンカーによってコンクリート部材に固着された鋼ブラケットを示す概略断面図である。また、図2は、図1に示す鋼ブラケットを固着するアンカーの拡大断面図である。
この鋼ブラケット2は、コンクリート部材3の鉛直面3aにアンカー1によって取り付けられたものであり、アンカー1は上下に2段が設けられ、横方向には2列以上が設けられている。
鋼ブラケット2は、コンクリート部材3の鉛直面3aに当接される当接板2aを有し、この当接板2aに張り出し部2bが設けられ、この張り出し部2bによって作業足場や支保工等の荷重を支持するものとなっている。
また、上記鋼管11の長さは、上記穴3bの深さより大きくなっており、先端部を穴3bに挿入して固定された状態で後部がコンクリート部材3の表面から突き出している。このコンクリート部材3の表面から突き出した部分には、雄ねじが形成されており、上記第2のナット15が螺合されている。
このアンカーボルト12は、上記鋼管11が挿入される穴3bの底部からさらに深い位置まで切削された小径穴3cに先端から挿入され、硬化した充填材17によって抜け出さないように固定されたものである。上記小径穴3cは上記穴3bより内径が小さくなっており、上記穴3bと同様にコアドリルや、ハンマードリル等のコンクリートに削孔が可能な既存の手段を用いて設けることができる。この小径穴3c内に上記アンカーボルト12を固定する充填材17は、上記鋼管11を固定するものと同様にエポキシ樹脂等の合成樹脂を用いることができる。
アンカー1を設置するには、まずコンクリート部材3の鋼ブラケット2を取り付けようとする位置に鋼管11を挿入するための穴3bを設ける。この穴3bは、図3(a)に示すように鋼管11の外径よりやや大きいものとし、コンクリート部材の表面3a近くに埋め込まれている鉄筋3dに到達する深さとする。また、この穴3bの切削によって鉄筋3dを損傷しない深さとする。この穴3bを設けることにより、鉄筋3dの位置を確認することが可能となり、鉄筋3dの位置を避けて上記穴3bの底部からアンカーボルト12を挿入して固定する小径穴3cをさらに深い位置まで切削する。このとき小径穴3cは必ずしも径が大きい穴3bの中心に設ける必要はない。鉄筋3dが配置されている位置を避けて、中心からはずれた位置に設けることができる。
なお、上記鋼管を挿入するための穴3bは、コンクリート部材が無筋コンクリート又は鉄筋が穴を切削する位置に無いことが明確なものであるときには、鉄筋が配置されている深さに関係なく穴の深さを設定することができる。
上記支圧プレート13を鋼管11の後端面に当接したとき、小径穴3cが径の大きい穴3bの中心に設けられていないと支圧プレート13が鋼管11に対して偏心することになるが、支圧プレート13は偏心があっても鋼管11の後端面の全域に当接する大きさに設定されており、鋼管11の後端面の全域に押し付けることができる。
このアンカー31は、コンクリート部材33中に埋め込まれた鉄筋33dに到達する深さで切削された穴33bに挿入された鋼管41と、上記穴33bの底部からさらに深い位置まで切削された小径穴33cに挿入して固定されたアンカーボルト42と、中央部に有する貫通孔に上記アンカーボルト42が挿通された支圧プレート43と、上記アンカーボルト42のコンクリート部材33から突き出した後端部に形成された雄ねじ部に螺合され、上記支圧プレート43に当接されるナット44と、を有するものである。上記鋼管41は、鋼ブラケットの当接板32に溶接よって固着されている。そして、上記支圧プレート43は鋼ブラケットの当接板32に押し付けられ、当接板32をコンクリート部材33の表面33aに押し付けて固定するものとなっている。
コンクリート部材33のアンカーが設けられる位置には、図2に示すアンカーと同様に、鋼管41を挿入する大きい径の穴33bを穿設する。この穴33bはコンクリート部材33の表面近くに埋め込まれている鉄筋33dに到達する深さで設け、鉄筋33dの位置を避けてこの穴33bの底部からアンカーボルト42を固定する小径穴33cを穿設する。そして、図7(a)に示すようにアンカーボルト42を小径穴33cに挿入し、充填した充填材47の硬化によってコンクリート部材33に固着する。
また、本発明のアンカーでコンクリート部材に固着される付加部材は、作業足場や支保工等の鉛直方向への荷重を支持するブラケットや、プレストレスを導入するための緊張材が定着されるブラケットとすることができる。また、構造物の改修等によって付加される設備、例えば照明灯の支柱等を支持する構造であっても良い。
その他、本発明は上述の態様に限定されること無く、様々な態様で実施することができる。
11:鋼管、 12:アンカーボルト、 13:支圧プレート、 14:ナット、 15:第2のナット、 16:充填材、 17:充填材、 18:充填材、
31:アンカー、 32:鋼ブラケットの当接板、 33:コンクリート部材、 33a:コンクリート部材の表面、 33b:鋼管を挿入する径の大きい穴、 33c:アンカーボルトを挿入する小径穴、 33d:コンクリート部材に埋め込まれた鉄筋、
41:鋼管、 42:アンカーボルト、 43:支圧プレート、 44:ナット、 46:充填材、 47:充填材
Claims (5)
- 既存のコンクリート部材の表面から、該コンクリート部材中に埋め込まれた鉄筋より浅い深さ又は鉄筋に到達する深さで切削された穴に、該穴と中心軸線の位置をほぼ一致させて挿入された鋼管と、
前記穴の底部から該穴より小さい内径で、前記鉄筋を避けてさらに深い位置まで又は前記コンクリート部材を貫通するように切削された小径穴に挿入され、抜け出さないように固定されるとともに、前記鋼管の内側に挿通されたアンカーボルトと、
前記アンカーボルトの前記コンクリート部材から突き出した端部に形成された雄ねじ部に螺合され、前記鋼管が該コンクリート部材から抜け出さないように拘束するナットと、を有し、
前記鋼管は、前記鉄筋の位置を避けて前記小径穴に挿入されたアンカーボルトを内側に挿通することができる内径を有するものであり、
前記鋼管の外周面と前記穴の内周面との間及び前記鋼管の内部には、充填材が充填されて硬化していることを特徴とするアンカー。 - 前記鋼管の外周面に雄ねじが形成され、該雄ねじに螺合された第2のナットを有し、
前記コンクリート部材に支持させる付加部材に設けられた貫通孔に前記鋼管を挿通し、前記第2のナットと前記コンクリート部材との間に前記付加部材を挟み込み、前記第2のナットを締め付けて前記付加部材を支持するものであることを特徴とする請求項1に記載のアンカー。 - 先端が前記穴に挿入された前記鋼管の後端に、前記コンクリート部材の表面に当接される鋼プレートが固着され、
該鋼プレートが前記付加部材の一部を構成するものであり、
前記アンカーボルトに螺合されたナットを締め付けることにより、前記鋼プレートを前記コンクリート部材側に押し付けるものであることを特徴とする請求項1に記載のアンカー。 - 既存のコンクリート部材の表面から、該コンクリート部材に埋め込まれた鉄筋より浅い深さ又は鉄筋に到達する深さで穴を切削する工程と、
前記穴より内径の小さい小径穴を、前記穴の底から前記鉄筋を避けて所定の深さまで又は前記コンクリート部材を貫通するように切削する工程と、
前記小径穴にアンカーボルトを挿入し、充填材によって前記アンカーボルトが抜け出さないように固定するか、又は該小径穴にアンカーボルトを貫通させ、該アンカーボルトが抜け出さないように貫通した先端部をコンクリー部材に係止する工程と、
前記穴に中心軸線をほぼ一致させ、前記鉄筋の位置を避けて前記小径穴に挿入されたアンカーボルトを内側に挿通することができる内径を有する鋼管を該穴に挿入し、
前記アンカーボルトの前記コンクリート部材から突き出した後端部に形成された雄ねじ部に螺合されるナットを前記鋼管に係止した状態で締め付け、前記鋼管を前記コンクリート部材側に押し付けるとともに、前記鋼管の外周面と前記穴の内周面との間に充填した充填材の硬化によって前記鋼管を前記コンクリート部材に固定する工程と、
前記鋼管の内側に充填材を充填する工程と、を含むことを特徴とするアンカーの固定方法。 - 既存のコンクリート部材の表面から、該コンクリート部材に埋め込まれた鉄筋より浅い深さ又は鉄筋に到達する深さで穴を切削する工程と、
前記穴より内径の小さい小径穴を、前記穴の底部から前記鉄筋を避けて所定の深さまで、又は前記コンクリート部材を貫通するように切削する工程と、
前記小径穴にアンカーボルトを挿入し、充填材によって前記アンカーボルトが抜け出さないように固定するか、又は該小径穴にアンカーボルトを貫通させ、該アンカーボルトが抜け出さないように貫通した先端部をコンクリー部材に係止する工程と、
前記穴と対応する位置に貫通孔を有し、該貫通孔の周囲を囲むように鋼管が溶接された鋼プレートを前記コンクリート部材の表面に当接するとともに、前記鋼管と前記穴との中心軸線をほぼ一致させ、前記鉄筋の位置を避けて前記小径穴に挿入されたアンカーボルトを前記鋼管の内側及び前記鋼プレートに設けられた貫通孔に挿通させて、該鋼管を前記穴に挿入し、
前記アンカーボルトの前記コンクリート部材から突き出した後端部に形成された雄ねじ部に螺合されるナットを締め付けて前記鋼プレートを前記コンクリート部材側に押し付ける工程と、
前記鋼管の外周面と前記穴の内周面との間、及び前記鋼管の内側に充填材を充填する工程と、を含むことを特徴とするアンカーの固定方法。
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