JP4741386B2 - 木質構造材の接合工法および接合構造 - Google Patents
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規模が大きい木造構造物の断面が大きい木質構造材の接合工法ないし接合構造に関する従来技術として、例えば下記の特許文献1には、木質構造材(柱材)の梁接合位置に、雌ネジ管を貫通させて設置し、前記雌ネジ管へねじ込むボルトにより同柱の梁接合位置に継ぎ手金具の片側半分を固定する。その一方、梁材の端部にも材軸方向に雌ネジ管を埋め込み、この雌ネジ管へねじ込むボルトによって前記継ぎ手金具の他側半分を固定する。そして、前記一対の継ぎ手金具部材を突き合わせ、接合プレートを重ね合わせボルト止めにより柱と梁を接合する構成が開示されている。しかし、接合部に前記の継ぎ手金具が大きく武骨に露出して木質構造材の意匠性を損なうし、重い構造になる。
特許文献3の接合構造は、通し柱の柱梁架構の接合には適用できないという問題点がある。また、梁と柱の接合部に曲げモーメントの伝達を期待できない構成である。
一方、特許文献4の接合構造は、逆に、梁と柱の接合部に曲げモーメントの伝達性能向上を試みた技術である。しかし、梁内のボルトは木材にとって強度的に最も弱い繊維と直交方向に配置された構成であるから、十分大きな曲げモーメントの伝達を望み難い。通し柱の接合に適用できないという問題点も認められる。
木質構造材1の木口1aから材軸方向へ複数の下穴を掘り、該下穴の内周面に雌ねじ2を形成する工程と、
中空円筒形状をなし、外周面に前記木質構造材1の雌ねじ2と共通仕様の雄ねじ3を形成し、中空部4の奥端近傍に中空部口径よりもやや小径の雌ねじ穴5を形成して成るアンカー部材6を木質構造材1の前記雌ねじ2へねじ込んで固定する工程と、
先端部に前記アンカー部材6の雌ねじ穴5と共通仕様の雄ねじ部7を有し、該雄ねじ部7を前記雌ねじ穴5へネジ接合すると木質構造材1の木口1aから後端部が突き出す長さとした連結用ボルト8の前記雄ねじ部7をアンカー部材6の前記雌ねじ穴5へネジ接合して連結用ボルト8を木質構造材1へ設置する工程と、
木質構造材1の木口1aから突き出た連結用ボルト8の後端部を鉄骨造又はコンクリート造の接合ブロック10又は15と接合する工程とからなることを特徴とする。
木質構造材1の木口1aから材軸方向へ複数の下穴を掘り、該下穴の内周面に雌ねじ2を形成すると共に当該雌ねじ2の面および下穴の奥端に接着剤を塗布ないし充填する工程と、
中空円筒形状をなし、外周面に前記木質構造材1の雌ねじ2と共通仕様の雄ねじ3を形成し、中空部4の奥端近傍に中空部口径よりもやや小径の雌ねじ穴5を形成して成るアンカー部材6を木質構造材1の前記雌ねじ2へねじ込んで接着し固定する工程と、
先端部に前記アンカー部材6の雌ねじ穴5と共通仕様の雄ねじ部7を有し、該雄ねじ部7を前記雌ねじ穴5へネジ接合すると木質構造材1の木口1aから後端部が突き出す長さとした連結用ボルト8の前記雄ねじ部7をアンカー部材6の前記雌ねじ穴5へネジ接合して連結用ボルト8を木質構造材1へ設置する工程と、
木質構造材1の木口1aから突き出た連結用ボルト8の後端部を鉄骨造又はコンクリート造の接合ブロック10又は15と接合する工程とからなることを特徴とする。
一つの木質構造材1の木口1aに複数設置されるアンカー部材6および連結用ボルト8の組みのうち一組みないし複数組みは、連結用ボルト8の少なくとも首部分8aの軸径をアンカー部材6の中空部口径に近接する大きさとしてせん断力に抵抗する構成とすることを特徴とする。
請求項4に記載した発明は、請求項2に記載した木質構造材の接合工法において、
アンカー部材6は、中空部4の奥端部を貫通させた穴に中空部口径よりもやや小径の雌ねじ穴5を形成し、更に雌ねじ穴5の先端部を接着剤が浸透しないように止め栓21で塞いだ構成とすることを特徴とする。
請求項5に記載した発明は、請求項1〜3のいずれか一に記載した木質構造材の接合工法において、
連結用ボルト8は、普通鋼、又は低降伏点鋼で製作されていることを特徴とする。
接合ブロックが鉄骨造10の場合は、連結用ボルト8において木質構造材1の木口1aから突き出る後端部に雄ねじ12を形成し、前記雄ねじ部12を接合ブロック10のボルト孔11へ通しナット13を締め込み接合することを特徴とする。
請求項7記載の発明は、請求項1〜3又は5のいずれか一に記載した木質構造材の接合工法において、
接合ブロックがコンクリート造15の場合は、連結用ボルト8において木質構造材1の木口1aから突き出る後端部に同連結用ボルト8の軸径よりも大径のコブを形成し、前記のコブを接合ブロック15の型枠16内へ一定のコンクリート被りとなる位置まで差し込み、同型枠16内へ現場打ちコンクリートを打設して接合することを特徴とする。
コンクリート造の接合ブロック用型枠16内に鉄筋を配筋して現場打ちコンクリートを打設し、又は鉄筋を配筋することなく繊維補強コンクリートを打設して連結用ボルト8と接合することを特徴とする。
木質構造材1の木口1aから材軸方向へ複数の雌ねじ穴2が形成されており、
中空円筒形状をなし、外周面には木質構造材1の前記雌ねじ穴2と共通仕様の雄ねじ3が形成され、中空部4の奥端近傍に中空部口径よりもやや小径の雌ねじ穴5が形成されて成るアンカー部材6が木質構造材1の前記雌ねじ穴2へねじ込まれ固定されており、
先端部に前記アンカー部材6の雌ねじ穴5と共通仕様の雄ねじ部7を有し、該雄ねじ部7を前記雌ねじ穴5へネジ接合すると木質構造材1の木口1aから後端部が突き出す長さとされた連結用ボルト8がその雄ねじ部7を前記アンカー部材6の雌ねじ穴5へネジ接合して木質構造材1へ設置されており、
木質構造材1の木口1aから突き出た前記連結用ボルト8の後端部が鉄骨造又はコンクリート造の接合ブロック10又は15と接合されていることを特徴とする。
先端部に前記アンカー部材6の雌ねじ穴5と共通仕様の雄ねじ部7を有し、該雄ねじ部7を前記雌ねじ穴5へネジ接合すると後端部が木質構造材1の木口1aから突き出す長さとした連結用ボルト8の前記雄ねじ部7をアンカー部材6の前記雌ねじ穴5へネジ接合して木質構造材1へ設置し、木質構造材1の木口1aから突き出た連結用ボルト8の後端部を鉄骨造又はコンクリート造の接合ブロック10又は15と接合する。
アンカー部材6は、中空部4の奥端部を貫通させた穴に中空部口径よりもやや小径の雌ねじ穴5を形成し、更に雌ねじ穴5の先端部を接着剤が浸透しないように止め栓で塞いだ構成とする。
連結用ボルト8は、普通鋼、又は低降伏点鋼で製作する。
連結用ボルト8と鉄骨造の接合ブロック10とは、連結用ボルト8において木質構造材1の木口1aから突き出た後端部に雄ねじ12を形成し、該雄ねじ12を接合ブロック10のボルト孔11へ通しナット13を締め込んで接合する。
連結用ボルト8とコンクリート造の接合ブロック15は、連結用ボルト8において木質構造材1の木口1aから突き出た後端部に連結用ボルト8の軸径よりも大径のコブ13を形成し、前記のコブ13を接合ブロック15の型枠16内へ一定のコンクリート被りとなる位置まで差し込み、同型枠16内へ現場打ちコンクリートを打設して接合する。その場合に、コンクリート造の接合ブロック15の型枠16内に鉄筋を配筋して現場打ちコンクリートを打設するか、又は鉄筋を配筋することなく繊維補強コンクリートを打設して接合する。
木製の梁材又は柱材の如き木質構造材1には、その接合端部の木口1aから材軸方向に向かって、図1と図2の場合には上下に2本の下穴が、後述する連結用ボルトが引っ張り応力に対して必要な耐力を発揮する上で必要とされる口径と奥行き深さ(通例口径は20〜30mm、奥行き深さ200mm〜300mm程度。但し、口径30mmで奥行き深さ500mm程度も実施される。)に掘られ、同下穴の内周面の全長にタップで雌ねじを形成するねじ切り加工が行なわれている。但し、下穴の本数や配置は、木質構造材1の断面や木口1aの大きさ、長さ、及び設計負荷の大きさなどに応じて適宜に設計し実施する。かくして木質構造材1の材軸方向に形成された雌ねじ穴を図面に符号2で示す。もっとも、下穴の穴あけと雌ねじ切り加工とを同時に行える機械による同時加工法による実施例も含むものとする。
その結果、図2に示したように、連結用ボルト8は、雄ねじ部7が雌ねじ穴5へネジ接合された部分を除いた長さ範囲Lが引っ張り応力で変形(歪み)可能な自由部分として構成される。よって、連結用ボルト8が普通鋼で製作された場合はもとより、特に低降伏点鋼で製作された場合には、一定大きさの負荷に応じて降伏して塑性エネルギーを吸収し制震作用を発揮するほか、接合部に作用する応力を一定大きさ(前記降伏応力)に制御する(制限する)ことが可能な接合を実現できる。勿論、地震等により降伏した連結用ボルト8は、交換することにより容易に修復することができる。
図3の場合、鉄骨造の接合ブロック10は、一例として、H形鋼を木質構造材1の幅寸と同じ長さに裁断したに等しい形状、構造とされ、各木質構造材1の木口1aが接合ブロック10のフランジ部10aの外面にぴったりと接触されている。
接合ブロック10のフランジ部10aには、木質構造材1の木口1aから突き出された上記連結用ボルト8の後端部と一致する位置に、予めボルト孔11が設けられている。また、木質構造材1の木口1aから突き出された上記連結用ボルト8の後端部には、一定の長さ範囲に予め雄ねじ12が形成されており、前記のようにフランジ部10aのボルト孔11へ通された雄ねじ12にナット13がねじ込まれ、強く締結されて接合の目的が達成されている。
もっとも、鉄骨造の接合ブロック10は、上記のH形鋼を裁断したような形状、構造の限りではない。木質構造材1の木口1aから突き出された上記連結用ボルト8の後端部を利用して接合可能な形状、構造であれば、その如何を問うものではない。例えば溶接組立品や鋳造品であっても良い。あるいはブロック品のかぎりではなく、必要、十分に長い鉄骨柱の類であっても良い。
因みに、図4を立面図として見る場合は、上下の柱および左右の梁を接合ブロック15で接合した柱梁接合部の実施例と理解することができる。また、図4を平面図として見る場合には、柱位置を中心として直交する4方向の梁−梁接合部の実施例と理解することができるであろう。
本実施例の場合に、コンクリート造の接合ブロック15による接合構造は、型枠16内に、図示を省略した鉄筋を配筋して現場打ちコンクリートを打設して行う場合、又は鉄筋を配筋することなく、繊維補強コンクリートを打設して接合する場合などを選択的に実施することができる。
また、コンクリート造の接合ブロック15は、図示したサイコロ形状のブロックである場合の他、図4の紙面と垂直方向に長いコンクリート造柱の構成などで実施することもできる。
なお、本実施例3でいう接着剤20は、アンカー部材6は木質構造材1の接着・固定に実効性があるものであれば足り、その種類を問うものではない。通例、合成樹脂製の接着剤(例えばエポキシ樹脂)などが好適である。
もっとも、実施例1、2のように接着剤を使用しない場合には、図6Aのように中空部4の先端が開口した構成のまま使用して接合を行うこともできる。
もっとも、図7の実施例は、A図に、長さは短いが、もっぱら接合部にせん断力が働いた場合に効果的に抵抗する連結用ボルト8の構成を示し、B図には引っ張り応力に対して塑性エネルギーの吸収に必要十分な長さを確保した連結用ボルト8の構成を示し、これら2種類のアンカー部材6および連結用ボルト8の組みを適宜に組み合わせて実施する場合を示している。また、図7Bは、例えば図1の実施例とは逆に、連結用ボルト8の軸径が先端の雄ねじ部7の有効外径よりも大径である実施例を示している。
1a 木口
2 雌ねじ穴
3 雄ねじ
4 中空部
5 雌ねじ穴
6 アンカー部材
7 雄ねじ部
8 連結用ボルト
10、15 接合ブロック
11 ボルト孔
12 雄ねじ
13 ナット
16 型枠
20 接着剤
21 止め栓
Claims (9)
- 木質構造材の木口から材軸方向へ複数の下穴を掘り、該下穴の内周面に雌ねじを形成する工程と、
中空円筒形状をなし、外周面に前記木質構造材の雌ねじと共通仕様の雄ねじを形成し、中空部の奥端近傍に中空部口径よりもやや小径の雌ねじ穴を形成して成るアンカー部材を木質構造材の前記雌ねじへねじ込んで固定する工程と、
先端部に前記アンカー部材の雌ねじ穴と共通仕様の雄ねじ部を有し、該雄ねじ部を前記雌ねじ穴へネジ接合すると木質構造材の木口から後端部が突き出す長さとした連結用ボルトの前記雄ねじ部をアンカー部材の前記雌ねじ穴へネジ接合して連結用ボルトを木質構造材へ設置する工程と、
木質構造材の木口から突き出た連結用ボルトの後端部を鉄骨造又はコンクリート造の接合ブロックと接合する工程とからなることを特徴とする、木質構造材の接合工法。 - 木質構造材の木口から材軸方向へ複数の下穴を掘り、該下穴の内周面に雌ねじを形成すると共に当該雌ねじ面および下穴の奥端に接着剤を塗布ないし充填する工程と、
中空円筒形状をなし、外周面に前記木質構造材の雌ねじと共通仕様の雄ねじを形成し、中空部の奥端近傍に中空部口径よりもやや小径の雌ねじ穴を形成して成るアンカー部材を木質構造材の前記雌ねじへねじ込んで接着し固定する工程と、
先端部に前記アンカー部材の雌ねじ穴と共通仕様の雄ねじ部を有し、該雄ねじ部を前記雌ねじ穴へネジ接合すると木質構造材の木口から後端部が突き出す長さとした連結用ボルトの前記雄ねじ部をアンカー部材の前記雌ねじ穴へネジ接合して連結用ボルトを木質構造材へ設置する工程と、
木質構造材の木口から突き出た連結用ボルトの後端部を鉄骨造又はコンクリート造の接合ブロックと接合する工程とからなることを特徴とする、木質構造材の接合工法。 - 一つの木質構造材の木口に複数設置されるアンカー部材および連結用ボルトの組みのうち一組みないし複数組みは、連結用ボルトの少なくとも首部分の軸径をアンカー部材の中空部口径に近接する大きさとしてせん断力に抵抗する構成とすることを特徴とする、請求項1又は2に記載した木質構造材の接合工法。
- アンカー部材は、中空部の奥端部を貫通させた穴に中空部口径よりもやや小径の雌ねじ穴を形成し、更に雌ねじ穴の先端部を接着剤が浸透しないように止め栓で塞いだ構成とすることを特徴とする、請求項2に記載した木質構造材の接合工法。
- 連結用ボルトは、普通鋼、又は低降伏点鋼で製作することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一に記載した木質構造材の接合工法。
- 接合ブロックが鉄骨造の場合は、連結用ボルトにおいて木質構造材の木口から突き出る後端部に雄ねじを形成し、前記雄ねじ部を接合ブロックのボルト孔へ通しナットを締め込み接合することを特徴とする、請求項1〜3又は5のいずれか一に記載した木質構造材の接合工法。
- 接合ブロックがコンクリート造の場合は、連結用ボルトにおいて木質構造材の木口から突き出る後端部に同連結用ボルトの軸径よりも大径のコブを形成し、前記のコブを接合ブロックの型枠内へ一定のコンクリート被りとなる位置まで差し込み、同型枠内へ現場打ちコンクリートを打設して接合することを特徴とする、請求項1〜3又は5のいずれか一に記載した木質構造材の接合工法。
- コンクリート造の接合ブロック用型枠内に鉄筋を配筋して現場打ちコンクリートを打設し、又は鉄筋を配筋することなく繊維補強コンクリートを打設して連結用ボルトと接合することを特徴とする、請求項1〜3又は5若しくは7のいずれか一に記載した木質構造材の接合工法。
- 木質構造材の木口から材軸方向へ複数の雌ねじ穴が形成されており、
中空円筒形状をなし、外周面には木質構造材の前記雌ねじ穴と共通仕様の雄ねじが形成され、中空部の奥端近傍に中空部口径よりもやや小径の雌ねじ穴が形成されて成るアンカー部材が木質構造材の前記雌ねじ穴へねじ込まれ固定されており、
先端部に前記アンカー部材の雌ねじ穴と共通仕様の雄ねじ部を有し、該雄ねじ部を前記雌ねじ穴へネジ接合すると木質構造材の木口から後端部が突き出す長さとされた連結用ボルトがその雄ねじ部を前記アンカー部材の雌ねじ穴へネジ接合して木質構造材へ設置されており、
木質構造材の木口から突き出た前記連結用ボルトの後端部が鉄骨造又はコンクリート造の接合ブロックと接合されていることを特徴とする、木質構造材の接合構造。
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