樹脂成形品の装飾性を高める方法として、表面に塗料等や被覆剤を塗布する塗装法による加飾が多く用いられている。従来から行われている塗装法は、金型内で射出成形した樹脂成形品を金型から取り出した後、スプレー法や浸漬法等により、樹脂成形品の表面に塗料や被覆剤を塗布することが一般的であり、塗布された塗料や被覆剤はその後乾燥・硬化することによって、強固な塗装膜や被覆膜となり樹脂成形品の表面を被覆し、表面を加飾するとともに保護する。
近年においては前記塗装方法の工程の簡略化を目的とし、樹脂成形品の成形と塗料等の被覆剤による被覆とを同一の金型内で行う金型内塗装方法(型内被覆成形方法ともいう。いわゆるインモールドコーティング。)が提案されている。この方法では、樹脂成形品を金型内で射出成形した後、金型を少し開いた(微小型開き)状態にさせることにより、金型内において樹脂成形品と金型キャビティ面との間に隙間を生じさせる。そして、該隙間に被覆剤注入機を使用して被覆剤を注入させた後、金型を再度型締めさせることによって樹脂成形品の表面に塗料を均一に拡張させ、その後硬化させて被覆が行われる。
前記金型内塗装方法によれば、樹脂成形品の成形と前記被覆とが同一の金型内で行われるため、工程の省略化によるコストダウンが可能である。また、それと同時に、空中に浮遊している塵が硬化する前の被覆膜に付着して不良となるといったことがほとんどなくなり、高い品質の製品を得ることができる。そのため、特に、外観に対して高い品質が要求される自動車部品等に、前記金型内塗装方法の利用が検討されている。
特許文献1には、金型を微小型開きさせ、射出充填又は補充填した樹脂により金型キャビティのパーティングライン全周から金型パーティング面にバリを発生させた後、金型に型締力を付加することによって、金型パーティング面で該バリを挟み込むことにより金型キャビティから塗料が漏れ出すことを防止する型内被覆成形方法及び型内被覆成形用金型が開示されている。
特許文献2には、所望する形状の樹脂成形品を成形するための主キャビティと、該主キャビティを形成する固定型と可動型の割面に連なり該割面を囲むように形成した副キャビティと、を有して、該主キャビティを形成する固定型と可動型のキャビティ面に、該副キャビティの形状に沿って該割面の全周を囲む複数個の溝部を形成し、成形の際には、複数個の溝部の中で収縮した樹脂が金型キャビティ部分を強く挟み込んで強固に密着した状態になるため、主キャビティの割面を流れる塗料が副キャビティに形成した溝部に達して、それより外部に流れ出すことがない型内被覆成形用金型が開示されている。
特許文献3には、裏面形成金型と表面形成金型と塗膜形成金型とを備える型内塗装用金型を用い、同じ金型内で成形品の成形と塗装を行うのではなく、成形品の成形を行う表面形成金型と成形品の表面に塗装膜を形成する塗膜形成金型とを切り替えることによって、塗膜を形成する塗装キャビティ以外に全く隙間がなくかつ強い型締力で固定できるので、熱硬化性塗料を高圧で注入しても熱硬化性塗料が塗装キャビティから漏れず型内塗装品に熱硬化性塗料層によるバリが発生することがなく、成形品の側面部にも仕様通りの膜厚で熱硬化性塗料層を形成することができる型内塗装品の製造方法及び型内塗装品形成装置が開示されている。
特許文献1の型内被覆成形方法及び型内被覆成形用金型においては、金型キャビティから塗料が漏れ出すことは防止できるものの、バリ(薄肉部)を形成するために金型の分割面(パーティング面、割面と称されることもある)をシェアエッジ構造にする必要がある。シェアエッジ構造とは、くいきり構造、あるいはインロー構造等と称されることもあり、金型分割面を形成する嵌合部の構造として一般的に知られた構造であって、金型開閉方向に伸びて、互いに摺動しながら挿脱することのできる嵌合部を、固定型と可動型の間に形成することによって金型キャビティから外に樹脂が漏れ出すのを防止することができる。しかしながら、シェアエッジ構造の金型は、シェアエッジ部の嵌合面に精度を要するため、通常の金型に比べて高価になりやすく、実際の使用においても定期的な手入れが必要である。また、金型キャビティから塗料が漏れ出すことを防止するためのバリ(薄肉部)が樹脂成形品の全周に形成されるため、成形された樹脂成形品を金型外へ取り出した後、その樹脂成形品全周に形成された不要部分となるバリ(薄肉部)を除去する必要がある。
特許文献2の型内被覆成形用金型においては、金型キャビティから塗料が漏れ出すことを防止し、更に、金型の分割面をシェアエッジ構造ではない一般的なフラットな構造とすることができる。しかしながら、金型キャビティから塗料が漏れ出すことを防止するための複数個の溝部が形成された副キャビティが、樹脂成形品の全周に連なる連結キャビティを介して形成されるため、特許文献1と同様に、成形された樹脂成形品を金型外へ取り出した後、その樹脂成形品全周に形成された不要部分となる連結キャビティ及び副キャビティ内成形部を除去する必要がある。
特許文献3の型内塗装品の製造方法及び型内塗装品形成装置においては、成形品の成形を行う表面形成金型と成形品の表面に塗装膜を形成する塗膜形成金型とを切り替えることによって、金型の分割面がシェアエッジ構造ではない一般的なフラットな面であっても、樹脂や熱硬化性塗料が金型キャビティから漏れ出すことを防止できる。そのため、樹脂成形品の全周に、バリや副キャビティを設け、熱硬化性塗料が金型キャビティから漏れ出すことを防止するためのシールを目的とした不要部分を形成したり、成形後に成形品からそれら不要部分を除去したりする必要がない。しかしながら、熱硬化性塗料注入のための隙間を成形品の表面と金型との間に形成させるために、微小型開きではなく、型締め状態において塗装膜そのものとなる隙間が形成される塗膜形成金型を使用するので、特許文献1や特許文献2のように、熱硬化性塗料注入後に、型締め力を増大させて再型締めを行い、該隙間を圧縮させて、注入された熱硬化性塗料に型締力を直接作用させることができない。そのため、成形品と塗膜形成金型との間に形成された隙間に熱硬化性塗料を均一に拡張させ、成形品表面に熱硬化性塗料を密着一体化させるためには、高い圧力で熱硬化性塗料を注入する必要がある。しかしながら、熱硬化性塗料の注入圧力を高くしたとしても、樹脂の冷却収縮の進行及び塗料の硬化収縮の進行による金型内の圧力低下を抑制することは困難であり、塗膜形成金型の金型キャビティ内面意匠の塗膜への転写性と塗膜そのものの意匠性を低下させるという問題が生じる。この問題を解決するために、熱硬化性樹脂の注入圧力を更に高くすれば、金型内外への高圧熱硬化性塗料の漏れ防止、熱硬化性塗料注入機や注入管路、注入管路内の開閉バルブ等、高圧注入される熱硬化性塗料に係る装置・管理のコスト高額化という問題が生じ、金型温度を低下させて熱硬化性塗料の粘性や流動性を確保しようとすると、成形品の冷却固化速度が速まり、他の成形条件や成形品の品質そのものに影響が及ぶという問題がある。
ここで、2層成形製品を対象とした金型内塗装方法において、2層成形製品を1組の金型内で成形する場合は、金型内に複数のキャビティを形成させるための複数の可動部が配置されるため、金型が高価になったり、2層成形製品の形状に制約があったりする場合が多い。特に、特許文献1及び特許文献2の型内被覆成形方法においては、樹脂成形品の全周に不要部分が成形されるため、2層成形製品のサイズに対して大きな金型が必要になったり、2層成形製品の形状の制約により、1組の金型内では2層成形そのものが困難になったりする場合がある。
ここで、2層成形品、あるいは多層成形製品を成形する方法として、金型をスライドさせるダイスライドインジェクション方式(DSI方式)や、型開閉方向を回転軸とする金型取付板に取り付けられた複数の金型を回転させるダイロータリーインジェクション方式(DRI方式)や、固定盤と可動盤との間で複数の金型を型開閉方向と垂直な方向に回転させる回転盤方式等の金型移動手段によって、型締装置に取り付けられた複数の金型の組み合わせを切り替えることができる多層成形用射出成形機を使用する方法が公知である。しかしながら、このような多層成形用射出成形機に、特許文献1及び特許文献2の型内被覆成形用金型を使用する場合においては、前述したような、成形後に樹脂成形製品全周に形成された不要部分を除去する必要があるという問題がある。多層成形用射出成形機に特許文献3の型内塗装品の製造方法を採用する場合においては、塗膜層を形成するための塗膜形成金型に加えて、複数層を形成するための成形金型も必要になるため、使用する金型数が増加し、金型移動手段がより大型化・特殊化するという問題がある。
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたもので、具体的には、金型移動手段を使用する、ある特定の形状を有する2層成形製品の金型内塗装において、金型分割面がシェアエッジ構造ではない一般的なフラットな構造で、且つ、金型キャビティから塗料等の被覆剤が漏れ出すことを防止するシール目的の不要部分等が無くても、金型キャビティから被覆剤が漏れ出すことを防止することができ、被覆剤注入後に被覆剤に直接型締力を作用させることができる2層成形品用の金型内塗装用金型及び金型内塗装方法を提供することを目的としている。
本発明の上記目的は、請求項1に示すように、コア金型と、
前記コア金型と組み合わされて第1キャビティが形成される第1キャビティ金型と、
前記第1キャビティ内に第1樹脂を射出充填させて成形される1次成形体が保持された前記コア金型と組み合わされて、前記1次成形体の外周部全周に前記1次成形体が内包される第2キャビティが形成される第2キャビティ金型と、
前記コア金型と前記第1キャビティ金型との少なくとも1つの金型に配置され、前記第2キャビティのアンダーカット形状部を形成させる可動部と、
を備えたことを特徴とする2層成形製品用の金型内塗装用金型によって達成される。
すなわち、金型内塗装が行われる2層成形製品において、2次成形体が1次成形体の外周部全周に前記1次成形体が内包されるように形成される形状の場合、後述する第2キャビティ内に第2樹脂を補充填させる補充填工程により、2次成形体そのものを、1次成形体と金型キャビティとの間に形成される微小隙間に注入される被覆剤が金型キャビティから漏れ出すことを防止することができるシール構造として機能させることができるので、金型分割面がシェアエッジ構造ではない一般的なフラットな構造で、且つ、金型キャビティから塗料等の被覆剤が漏れ出すことを防止するシール目的の不要部分等が無くても、金型キャビティから被覆剤が漏れ出すことを防止することができる。また、シール目的の不要部分等を形成させる金型キャビティを樹脂成形品が成形される金型キャビティの外周全周に設ける必要がないため、型開閉方向に直交する金型の面積を小さくすることができる。
また、第2キャビティが、1次成形体の第2キャビティ金型側だけでなく、コア金型側も内包されるように形成されれば、後述する第2キャビティ内に第2樹脂を補充填させる補充填工程により、2次成形体そのものを、2次成形体に囲まれた1次成形体の表面とコア金型との間に形成される微小隙間に注入される被覆剤が金型キャビティから漏れ出すことを防止することができるシール構造としても機能させることができる。この第2キャビティの、1次成形体のコア金型側が内包される部分はアンダーカット形状部となるため、このアンダーカット部が、コア金型や第1キャビティ金型に配置された可動部により形成されれば、2次成形体に囲まれた1次成形体の表面とコア金型との隙間に形成される微小隙間にも被覆剤を注入させ、1次成形体のコア金型側表面にも被覆膜を形成させることができるとともに、2次成形体の形状の設計自由度も高くなる。
更に、請求項2に示すように、製品押出手段の押出ピンが、前記コア金型と前記第2キャビティ金型との少なくとも1つの金型の前記第2キャビティ形成部に配置されたことを特徴とする請求項1に記載の2層成形製品用の金型内塗装用金型であっても良い。
金型内塗装方法においては、金型キャビティ内に供給された被覆剤が、一般的には可動金型に設けられ、可動盤に配置される製品押出機構により駆動される押出ピンと可動金型との摺動部分に入り込むことも被覆剤の金型外への漏れと同様に大きな問題となる。溶融樹脂と異なり、粘性が小さく流動性が高い被覆剤は、溶融樹脂が入り込むことのないこのような摺動部のわずかな隙間にも入り込み、摺動部分や金型内・製品押出機構内で硬化・堆積し、機械的・電気的トラブルの要因となる。しかしながら、後述するように、被覆剤が入り込むことがない第2キャビティ形成部にこれら押出ピンが配置されれば、押出ピンの摺動部に被覆剤の侵入を前提にした特別なシール機構等を備える必要がないため、そのような特別なシール機構等に係る押出ピンの配置に制約がない上、押出ピン摺動部を一般的な樹脂成形機の押出ピン摺動部と同等の構造とすることができる。また、本発明において、第2キャビティは2層成形製品の外周部全周に形成されているので、2層成形製品の形状に合わせて、複数の押出ピンをその外周部に製品押し出しに最適、且つ、必要最小限の箇所に配置させることができる。更に、押出ピンは、2層成形製品の意匠面ではない外周部に配置されるため、押出ピンをコア金型及び第2キャビティ金型のいずれにも配置させることができる。そのため、可動盤に取り付けられる金型に押出ピンが配置されれば、可動盤に配置される製品押出機構により押出ピンを駆動させることができ、固定盤側に取り付けられる金型内に押出ピンを駆動させる製品押出機構を配置させる必要がないため、金型の厚みを薄くすることができる。
また、請求項3に示すように、前記第1キャビティに前記第1樹脂が射出充填されて、前記1次成形体が成形される1次成形工程と、
前記第1キャビティ金型と前記コア金型とが型開きされた後、金型移動手段により、前記1次成形体が保持された前記コア金型と前記第2キャビティ金型とを対向する位置に相対的に移動させる金型移動工程と、
前記コア金型と前記第2キャビティ金型とが型締めされて、形成された前記第2キャビティ内に第2樹脂を射出充填させて、前記1次成形体の外周部全周に前記1次成形体が内包される2次成形体が積層成形される2次成形工程と、
前記2次成形体にスキン層が形成された後に、型締力を前記第2キャビティ内圧力による型開き力より低下させ、前記型開き力により、又は、型開閉手段により、前記コア金型と前記第2キャビティ金型とを微小型開きさせて、型開閉方向に拡大された前記第2キャビティ内に前記第2樹脂を捕充填させる補充填工程と、
前記補充填工程の微小型開きによって、前記2次成形体に囲まれた前記1次成形体の表面と前記コア金型との間、及び、前記2次成形体に囲まれた前記1次成形体の表面と前記第2キャビティ金型との間の少なくとも一方に発生させた微小隙間に、被覆剤を注入させた後、前記コア金型と前記第2キャビティ金型とを再型締めさせて、前記微小隙間を圧縮させて前記2次成形体に囲まれた前記1次成形体の表面に、注入された前記被覆剤を密着一体化させる被覆膜形成工程と、
を備えた、請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の2層成形製品用の金型内塗装用金型を使用する2層成形製品の金型内塗装方法が好ましい。
請求項1及び請求項2記載の2層成形製品用の金型内塗装用金型を使用する2層成形製品の金型内塗装方法であれば、金型内塗装が行われる2層成形製品において、2次成形体が1次成形体の外周部全周に前記1次成形体が内包されるように形成される形状の場合、後述する第2キャビティ内に第2樹脂を補充填させる補充填工程により、2次成形体そのものを、1次成形体と金型キャビティとの間に形成される微小隙間に注入される被覆剤が金型キャビティから漏れ出すことを防止することができるシール構造として機能させることができるので、金型分割面がシェアエッジ構造ではない一般的なフラットな構造で、且つ、金型キャビティから塗料等の被覆剤が漏れ出すことを防止するシール目的の不要部分等が無くても、金型キャビティから被覆剤が漏れ出すことを防止することができる。
また、第2キャビティの、1次成形体のコア金型側が内包されるアンダーカット形状部が、コア金型や第1キャビティ金型に配置された可動部により形成されれば、2次成形体に囲まれた1次成形体の表面とコア金型との隙間に形成される微小隙間にも被覆剤を注入させ、1次成形体のコア金型側表面にも被覆膜を形成させることができるとともに、2次成形体の形状の設計自由度も高くなる。
更に、被覆剤が入り込むことがない第2キャビティ形成部にこれら押出ピンが配置されれば、押出ピンの摺動部に被覆剤の侵入を前提にした特別なシール機構等を備える必要がないため、そのような特別なシール機構等に係る押出ピンの配置に制約がない上、押出ピン摺動部を一般的な樹脂成形用金型と同等の構造とすることができる。また、本発明において、第2キャビティは2層成形製品の外周部に連続して形成されているので、2層成形製品の形状に合わせて、複数の押出ピンをその外周部に製品押し出しに最適かつ必要最小限の箇所に配置させることができる。
また、請求項4に示すように、前記金型移動手段が、射出成形機の固定盤及び可動盤のいずれか一方の金型取付盤に配置された金型スライド機構又は金型回転機構と、
射出成形機の固定盤と可動盤との間に配置され、互いに平行な少なくとも2つの金型取付面を有し、型開閉方向の移動と、型開閉方向と略直交する回転軸周りの回転とが可能な回転盤機構と、
のいずれか1つであることを特徴とする請求項3記載の多層成形用の金型内塗装方法であっても良い。
請求項3記載の多層成形用の金型内塗装方法に使用される本発明の金型内塗装用金型は、シール目的の不要部分等を形成させる金型キャビティを樹脂成形品が成形される金型キャビティの外周全周に設ける必要がないため、型開閉方向に直交する金型の面積を小さくすることができる。また、金型分割面がシェアエッジ構造ではない一般的なフラットな構造で、且つ、可動盤に取り付けられる金型に押出ピンが配置されれば、可動盤に配置される製品押出機構により押出ピンを駆動させることができ、固定盤側に取り付けられる金型内に押出ピンを駆動させる製品押出機構を配置させる必要がないため、金型の厚みを薄くすることができる。そのため、金型のサイズや厚みに制約が多い、公知の金型スライド機構又は金型回転機構、あるいは射出成形機の固定盤と可動盤との間に配置された回転盤機構等の金型移動手段を備えた多層成形用射出成形機にも使用することができ、2層成形品の金型内塗装方法を行うことができる。
更に、請求項5に示すように、前記第1樹脂がポリカーボネートであり、前記第2樹脂が熱可塑性エラストマーであり、前記被覆剤が透光性を有するハードコート剤であることを特徴とする請求項3及び請求項4のいずれか1項に記載の多層成形用の金型内塗装方法であっても良い。
本発明は、請求項1記載の第1キャビティ及び第2キャビティで成形される2層成形品について適用可能である。特に、自動車用部品のサンルーフや固定ガラス部等のガラス代替樹脂化部品に好適である。具体的には、第1樹脂で成形される1次成形体がポリカーボネート等の透光性を有する樹脂で成形されるガラス代替樹脂化部品、第2樹脂で成形される2次成形体が、1次成形体であるガラス代替樹脂化部品の外周部に連続して成形される熱可塑性エストラマー等の柔軟性を有する樹脂で成形されるウェザーストリップ等のシール・パッキン部品、そして、2次成形体で囲まれた1次成形体の表面、すなわち、ウェザーストリップ等のシール・パッキン部品で囲まれたガラス代替樹脂化部品の表面に、傷付きや紫外線による経年変化を抑制する公知のハードコート剤が被覆されたガラス代替樹脂化部品を本発明の2層成形製品用の金型内塗装用金型及び金型内塗装方法により連続して成形することができる。
本発明に係る2層成形製品用の金型内塗装用金型は、コア金型と、
前記コア金型と組み合わされて第1キャビティが形成される第1キャビティ金型と、
前記第1キャビティ内に第1樹脂を射出充填させて成形される1次成形体が保持された前記コア金型と組み合わされて、前記1次成形体の外周部全周に前記1次成形体が内包される第2キャビティが形成される第2キャビティ金型と、
前記コア金型と前記第1キャビティ金型との少なくとも1つの金型に配置され、前記第2キャビティのアンダーカット形状部を形成させる可動部と、
を備えているので、金型分割面がシェアエッジ構造ではない一般的なフラットな構造で、且つ、金型キャビティから塗料等の被覆剤が漏れ出すことを防止するシール目的の不要部分等が無くても、金型キャビティから被覆剤が漏れ出すことを防止することができる。
また、本発明に係る2層成形製品用の金型内塗装用金型を使用する2層成形製品の金型内塗装方法は、前記第1キャビティに前記第1樹脂が射出充填されて、前記1次成形体が成形される1次成形工程と、
前記第1キャビティ金型と前記コア金型とが型開きされた後、金型移動手段により、前記1次成形体が保持された前記コア金型と前記第2キャビティ金型とを対向する位置に相対的に移動させる金型移動工程と、
前記コア金型と前記第2キャビティ金型とが型締めされて、形成された前記第2キャビティ内に第2樹脂を射出充填させて、前記1次成形体の外周部全周に前記1次成形体が内包される2次成形体が積層成形される2次成形工程と、
前記2次成形体にスキン層が形成された後に、型締力を前記第2キャビティ内圧力による型開き力より低下させ、前記型開き力により、又は、型開閉手段により、前記コア金型と前記第2キャビティ金型とを微小型開きさせて、型開閉方向に拡大された前記第2キャビティ内に前記第2樹脂を捕充填させる補充填工程と、
前記補充填工程の微小型開きによって、前記2次成形体に囲まれた前記1次成形体の表面と前記コア金型との間、及び、前記2次成形体に囲まれた前記1次成形体の表面と前記第2キャビティ金型との間の少なくとも一方に発生させた微小隙間に、被覆剤を注入させた後、前記コア金型と前記第2キャビティ金型とを再型締めさせて、前記微小隙間を圧縮させて前記2次成形体に囲まれた前記1次成形体の表面に、注入された前記被覆剤を密着一体化させる被覆膜形成工程と、
を備えた、請求項1及び請求項2のいずれか1項に記載の2層成形製品用の金型内塗装用金型を使用する2層成形製品の金型内塗装方法としたので、金型分割面がシェアエッジ構造ではない一般的なフラットな構造で、且つ、金型キャビティから塗料等の被覆剤が漏れ出すことを防止するシール目的の不要部分等が無くても、金型キャビティから被覆剤が漏れ出すことを防止することができる。
また、1次成形体のコア金型側表面にも被覆膜を形成させることができるとともに、2次成形体の形状の設計自由度も高くなる。更に、特別なシール機構等に係る押出ピンの配置に係る制約がない上、押出ピン摺動部を一般的な樹脂成形機の押出ピン摺動部と同等の構造とすることができるとともに、2層成形製品の形状に合わせて、複数の押出ピンをその外周部に製品押し出しに最適かつ必要最小限の箇所に配置させることができる。
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。
図1及び図2を参照しながら本発明の実施例1を説明する。図1は本発明の実施例1に係る成形工程を示す2層成形製品用の金型内塗装用金型の概略断面図である。図1(a)が1次成形工程、図1(b)が金型移動工程の開始時、図1(c)が2次成形工程、図1(d)が補充填工程及び被覆膜形成工程の被覆剤注入開始時、図1(e)が被覆膜形成工程、図1(f)が製品押出工程を示す。図2は本発明の実施例1に係る2層成形製品用の金型内塗装用金型の被覆剤のシール構造を説明する図1(d)要部A詳細図である。
説明を簡単にするために、実施例1においては、1次成形体が平板形状の2層成形製品を成形対象とする。図1(a)に示すように、2層成形製品用の金型内塗装用金型1において、図示しない型締装置に取り付けられたコア金型7と、同様に、図示しない型締装置に取り付けられた第1キャビティ金型8とが組み合わされて形成される第1キャビティ10aに、図示しない第1射出ユニットから第1樹脂用ゲート7aを介して第1樹脂10bが射出充填され1次成形体10が成形される1次成形工程が行われる。このとき、後に第2キャビティ20aの一部を形成する、1次成形体10のコア金型7側を内包させるためのアンダーカット形状部が、コア金型7に型開閉方向に摺動可能に配置されたコア金型可動部7bにより満たされた状態で第1キャビティ10aの一部を形成している。
次に、第1キャビティ10a内の1次成形体10の冷却固化後、図1(b)に示すように、1次成形体10が保持されたコア金型7から図示しない型締装置により第1キャビティ金型8が型開きされる。その後、型締装置に配置された図示しない金型移動手段により、コア金型7と第2キャビティ金型9とが対向する位置に相対的に移動される金型移動工程が開始される。このとき、コア金型可動部7bが摺動され、1次成形体10のコア金型7側表面に回りこんだアンダーカット部7cが形成され、第2キャビティ20aの一部を形成する。ここで、図示しない型締装置に取り付けられた金型移動手段は、射出成形機の固定盤及び可動盤のいずれか一方の金型取付盤に配置されたDSI方式やDRI方式の金型移動手段、あるいは、固定盤と可動盤との間で複数の金型を型開閉方向と垂直な方向に回転させる回転盤方式の金型移動手段等、公知の金型移動手段が採用されれば良く、また、1次成形体10が保持されたコア金型7に対して第1キャビティ金型8及び第2キャビティ金型9が移動されても、第1キャビティ金型8及び第2キャビティ金型9に対して1次成形体10が保持されたコア金型7が移動されても良く、コア金型7と、第1キャビティ金型8及び第2キャビティ金型9との組み合わせが相対的に切り替えられればそれぞれの金型の取付位置やその移動方法の制約はない。
金型移動工程の完了後、図1(c)に示すように、コア金型7とコア金型7に保持された1次成形体10と第2キャビティ金型9とが組み合わされて形成される第2キャビティ20aに、図示しない第2射出ユニットから第2樹脂用ゲート7dを介して第2樹脂20bが射出充填され、1次成形体10の外周部全周に2次成形体20が成形される2次成形工程が行われる。ここで、1次成形体10と2次成形体20との関係は、後述するように、2次成形体20そのものを1次成形体10の表面と金型との間に形成される微小隙間に注入される被覆剤のシール構造とするために、第2キャビティ20aが、1次成形体10の外周部全周に1次成形体10が内包されるように形成される。本実施例1においては、第2キャビティ20aが、1次成形体10のコア金型7側も内包されるように形成されるために、コア金型可動部7bにより1次成形体10のコア金型7側表面に回りこんだアンダーカット部7cを形成し、第2キャビティ20aの一部を形成することは先に説明したとおりである。
次に、第2キャビティ20a内の第2樹脂20bと第2キャビティ20a内面との接触面に柔軟性を維持するスキン層が形成された後、図1(d)に示すように、第2キャビティ金型9を距離Sだけ微小型開きさせて、型開閉方向に拡大された第2キャビティ20a内に第2樹脂20bを図示しない第2射出ユニットから第2樹脂用ゲート7dを介して捕充填させる補充填工程が行われる。第2キャビティ金型9を距離Sだけ微小型開きさせる方法は、図示しない型締装置により微小型開きさせても良いし、図1(c)に示す型締め状態から型締力を弱め、弱めた型締力より大きな所定の射出圧力で第2キャビティ20a内に第2樹脂20bを補充填させることにより微小型開きさせても良い。この微小型開き動作に加えて、1次成形体10の型開閉方向の冷却固化収縮により、1次成形体10と第2キャビティ金型9との間に第2キャビティ金型側微小隙間9aが形成される。ここで、微小型開き量S及び第2キャビティ金型側微小隙間9aの型開閉方向の距離は数十μm(マイクロメートル)から多くても数百μm前後なので、第2キャビティ20a内で、第2キャビティ20a内面との接触面にスキン層が形成された第2樹脂20b(2次成形体20)が、微小型開きさせた金型分割面及び第2キャビティ金型側微小隙間9aに侵入することはない。すなわち、微小型開きさせた金型分割面から射出充填させた溶融樹脂が漏れないように、金型分割面を高価で定期的な手入れが必要なシェアエッジ構造にする必要が無く、一般的なフラットな構造とすることができる。
ここで、第2キャビティ20a内で、スキン層が形成された第2樹脂20b(2次成形体20)には、第2樹脂用ゲート7dを介して第2樹脂20bが所定の射出圧力で捕充填されるため、第2キャビティ20a内の第2樹脂20b(2次成形体20)は、空間を満たすように挿入され空気を供給される風船のように、スキン層を維持しながら微小型開きにより拡大される第2キャビティ20aに追従し、所定圧力が作用した状態で第2キャビティ20aとの接触面との密着状態を補充填工程の間維持させる。特に型締力が作用する第2キャビティ20aの金型分割面と平行な面においては、その型締力が集中するため、これらの面における第2樹脂20b(2次成形体20)と第2キャビティ20aとの押し付け力が高まる。このような高い押し付け力により、第2樹脂20b(2次成形体20)は、後述する被覆剤の注入の際、注入直後の流動性が最も高い被覆剤30bが、補充填工程において、スキン層が形成された第2樹脂20b(2次成形体20)と第2キャビティ20aとの接触面を通って、微小型開きした金型分割面から外部に漏れるのを防止するシール構造を構成する。
補充填工程の途中、あるいは完了後に、第2キャビティ金型9側に形成された第2キャビティ金型側微小隙間9aに、被覆剤管路30aを介して被覆剤注入機30から被覆剤30bの注入が開始される。この被覆剤30bは1次成形体10の基材樹脂との固着性に優れた熱硬化性塗料が採用されることが一般的であるが、熱硬化性被覆剤や、硬化剤を添加して硬化させる被覆剤であっても使用可能である。被覆剤の注入は、被覆膜形成工程の開始ではあるが、説明を簡単にするため、図1(d)で示す補充填工程と一緒に図示した。
次に、被覆剤の注入完了後、第2樹脂用ゲート7d及び被覆剤管路30aに配置された図示しない閉止弁を閉止させた後、図1(e)に示すように、微小型開きさせていた第2キャビティ金型9を再型締めさせて、第2キャビティ金型側微小隙間9aを圧縮させて2次成形体20に囲まれた1次成形体10の第2キャビティ金型9側表面に、注入された被覆剤30bを密着一体化させる被覆膜形成工程が行われる。第2キャビティ20a内の2次成形体20(第2樹脂20b)は、先に説明した補充填工程の終了直後から型開閉方向に冷却固化収縮するが、直前まで行われていた第2キャビティ20aへの第2樹脂20bの補充填と、2次成形体20(第2樹脂20b)の型開閉方向への微小型開き量S分の圧縮とにより、前述した第2樹脂20b(2次成形体20)と第2キャビティ20aとの押し付け力は維持される。また、第2キャビティ金型9の再型締めにより、第2キャビティ金型側微小隙間9aは数十μm前後まで圧縮することができる。このため、被覆剤の注入直後は型締め力は被覆剤と2次成形体とで分担されるが、被覆剤の硬化収縮に伴い2次成形体側の分担力が大きくなり、結果として2次成形体が圧縮されることにより、被覆剤へ型締め力を作用させ続けることができるため、補充填工程の完了直後からこの被覆膜形成工程においても、2次成形体20(第2樹脂20b)のシール構造は機能し続ける。そして、第2キャビティ金型9の再型締めにより2次成形体20で囲まれた1次成形体10の表面に、注入された被覆剤30bを介して直接、第2キャビティ金型9の金型キャビティ内面全体で均等に型締力が付与されるため、第2キャビティ金型側微小隙間9a内の被覆剤30bは、2次成形体20で囲まれた1次成形体10の表面に均等に拡張されて、第2キャビティ金型9の金型キャビティ内面意匠が十分に転写され、それ自体の意匠性も優れた被覆膜30cとして2次成形体20で囲まれた1次成形体10の表面に密着一体化される。
次に、第2キャビティ20aの2次成形体20の冷却固化後、図1(f)に示すように、図示しない型締装置により第2キャビティ金型9を型開きさせた後、型締装置の可動盤や金型移動手段等の金型取付部3に配置された製品押出機構3aにより2次成形体20で囲まれた1次成型体10の表面に被覆膜30cが施工された2層成形製品40を第2キャビティ金型9から押し出す製品押出工程が行われる。第2キャビティ金型9から2層成形製品40を直接押し出す押出ピン3bは、第2キャビティ金型9の第2キャビティ20aの形成部に第2キャビティ金型9を貫通するように複数配置されており、その先端が第2キャビティ20aの内面の一部を形成している。先に説明したように、第2キャビティ金型側微小隙間9aに注入された被覆剤30bは、補充填工程及び被覆膜形成工程において、第2樹脂20b(2次成形体20)と第2キャビティ20aとの押し付け力によるシール構造で第2キャビティ金型側微小隙間9a内にシールされるので、第2キャビティ20aの形成部に複数配置された押出ピン3bの摺動部には到達しない。そのため、押出ピン3bの摺動部に被覆剤の侵入を前提にした特別なシール機構等を備える必要がなく、そのような特別なシール機構等に係る押出ピン3bの配置に係る制約がない上、押出ピン摺動部を一般的な樹脂成形機の押出ピン摺動部と同等の構造とすることができる。ここで、一般的には、押出ピンは製品毎(金型毎)に配置が異なるため金型側に配置され、押出ピンを駆動させる製品押出機構は、押出ピンが配置された金型が取り付けられる金型取付部側に配置され、押出ピンが配置された金型が取り付けられた状態で押出ピンを駆動させるように構成されるが、図を簡単にするために、押出ピンと製品押出機構とを図中では一体で図示している。
更に、第2キャビティ20aは2層成形製品40の外周部全周に形成されているので、製品中心線に対して外形が非対称な2層成型製品であっても、その形状に合わせて、複数の押出ピン3bをその外周部に製品押し出しに最適、且つ、必要最小限の箇所に配置させることができる。更に、押出ピンは、2層成形製品の意匠面ではない外周部に配置されるため、押出ピンをコア金型及び第2キャビティ金型のいずれにも配置させることができる。そのため、可動盤に取り付けられる金型に押出ピンが配置されれば、可動盤に配置される製品押出機構により押出ピンを駆動させることができ、固定盤側に取り付けられる金型内に押出ピンを駆動させる製品押出機構を配置させる必要がないため、金型の厚みを薄くすることができる。
最後に、第2キャビティ金型9から押し出された2層成形製品40は、図示しない製品取出手段により射出成形機外へ搬送される。このように図1(a)から図1(f)の成形工程が繰り返されることにより、2次成形体20で囲まれた1次成型体10の表面に被覆膜30cが施工された2層成形製品40が連続して成形される。
図2は本発明の実施例1に係る2層成形製品用の金型内塗装用金型の熱硬化性被覆剤のシール構造を説明する図1(d)要部A詳細図である。図2に示す補充填工程においては、第2キャビティ20a内に射出充填された第2樹脂20bと第2キャビティ20a内面との接触面に柔軟性を維持するスキン層20cが形成されており、スキン層20cの内部には、図示しない第2射出ユニットから第2樹脂用ゲート7dを介して第2樹脂20bが所定の射出圧力で捕充填されるため、第2キャビティ20a内の第2樹脂20b(2次成形体20)は、先に説明したように、空間(第2キャビティ20a)を満たすように挿入され空気(第2樹脂20b)を供給される風船(スキン層20c)のように、スキン層を維持しながら微小型開きにより拡大される第2キャビティ20aに追従し、所定圧力が作用した状態で第2キャビティ20aとの接触面との密着状態を維持する。ここで、微小型開き量S及び第2キャビティ金型側微小隙間9aの距離は数十μmから多くても数百μm前後なので、第2キャビティ20a内で、第2キャビティ20a内面との接触面にスキン層が形成された第2樹脂20b(2次成形体20)が、型開きした金型分割面及び第2キャビティ金型側微小隙間9aに侵入することはないこと、また、特に型締力f1が作用する第2キャビティ20aの金型分割面と平行な面20e(2次成形体型締力集中面)においては、その型締力f1が集中するため、これらの面における第2樹脂20b(2次成形体20)と第2キャビティ20aとの押し付け力が高まり、注入直後の流動性が最も高い被覆剤30bであっても、スキン層20cが形成された第2樹脂20b(2次成形体20)と第2キャビティ20aとの接触面20dや2次成形体型締力集中面20eを通って、微小型開きした金型分割面から外部に漏れるのを防止するシール構造を構成すること、このシール構造が、補充填工程から被覆膜形成工程においても機能し続けること、及び、このシール構造が補充填工程及び被覆膜形成工程において機能することにより、被覆剤30bは第2キャビティ金型側微小隙間9a内にシールされ押出ピン3bの摺動部には到達しないこと、は先に説明したとおりである。
図3及び図4を参照しながら本発明の実施例2を説明する。図3は本発明の実施例2に係る成形工程を示す2層成形製品用の金型内塗装用金型の概略断面図である。図3(a)が1次成形工程、図3(b)が金型移動工程の開始時、図3(c)が2次成形工程、図3(d)が補充填工程及び被覆膜形成工程の被覆剤注入開始時、図3(e)が被覆膜形成工程、図3(f)が製品押出工程を示す。図4は本発明の実施例2に係る2層成形製品用の型内被覆成型用金型の被覆剤のシール構造を説明する図3(d)要部B詳細図である。また、図中の符号については、基本的に実施例1と同じ構成部材には実施例1と同じ符号を付し、実施例1に相当する構成部材ではあるが、説明上区別したい構成部材には100を加えた符号を付している。
実施例2における実施例1との相違点は、後に第2キャビティの一部を形成する、1次成形体のコア金型側を内包させるためのアンダーカット形状部が、コア金型ではなく第1キャビティ金型に配置された可動部により形成される点と、2次成形体で囲まれた1次成形体の第2キャビティ金型側の表面だけでなく、コア金型側の表面にも被覆膜が形成される点である。それ以外の金型内塗装用金型の構成や金型内塗装方法は実施例1と基本的に同じため、実施例1との相違点についてのみ説明する。また、説明及び実施例1との比較を簡単にするために、実施例2においても、1次成形体が平板形状の2層成形製品を成形対象とする。
図3(a)に示すように、2層成形製品用の金型内塗装用金型101において、図示しない型締装置に取り付けられたコア金型107と、同様に、図示しない型締装置に取り付けられた第1キャビティ金型108とが組み合わされて形成される第1キャビティ110aに、図示しない第1射出ユニットから第1樹脂用ゲート107aを介して第1樹脂110bが射出充填され1次成形体110が成形される1次成形工程が行われる。実施例1との相違点は、第2キャビティ120aの一部を形成する、1次成形体110のコア金型107側を内包させるためのアンダーカット形状部が、第1キャビティ金型108に型開閉方向と直交する方向に摺動可能に配置された第1キャビティ金型可動部108bにより満たされた状態で第1キャビティ110aの一部を形成している点である。このアンダーカット形状部を形成する可動部が実施例1のようにコア金型側に配置されると、コア金型に対向する金型が第2キャビティ金型に切り替えられた後の2次成形においても、この可動部が1次成形後に移動した位置において、2次キャビティの一部を形成するように設計・配置される必要がある。(図1(b)〜(e)参照)しかしながら、アンダーカット部を形成する可動部が本実施例2のように第1キャビティ金型側に配置されると、可動部が2次キャビティの一部を形成するように設計・配置される必要がないため、可動部の設計・配置が容易である。
次に、第1キャビティ110a内の1次成形体110の冷却固化後、図3(b)に示すように、1次成形体110が保持されたコア金型107から図示しない型締装置により第1キャビティ金型108が型開きされ、型締装置に配置された図示しない金型移動手段により、コア金型107と第2キャビティ金型109とが対向する位置に相対的に移動され金型移動工程が開始される。このとき、第1キャビティ金型可動部108bが摺動され、1次成形体110のコア金型107側表面に回りこんだアンダーカット部107cが形成され、第2キャビティ120aの一部を形成する。
金型移動工程の完了後、図3(c)に示すように、コア金型107とコア金型107に保持された1次成形体110と第2キャビティ金型109とが組み合わされて形成される第2キャビティ120aに、図示しない第2射出ユニットから第2樹脂用ゲート107dを介して第2樹脂120bが射出充填され、1次成形体110の外周部に2次成形体120が成形される2次成形工程が行われる。
次に、第2キャビティ120a内の第2樹脂120bと第2キャビティ120a内面との接触面に柔軟性を維持するスキン層が形成された後、図3(d)に示すように、第2キャビティ金型109を距離S’だけ微小型開きさせて、型開閉方向に拡大された第2キャビティ120a内に第2樹脂120bを図示しない第2射出ユニットから第2樹脂用ゲート107dを介して捕充填させる補充填工程が行われる。実施例1との相違点は、微小型開き量S’と第2樹脂120bの補充填量とを、実施例1よりも所定量多くする点である。この実施例1よりも所定量多い微小型開き動作に加えて、1次成形体110の型開閉方向の冷却固化収縮により、1次成形体110と第2キャビティ金型109との間の第2キャビティ金型側微小隙間109aだけでなく、1次成形体110とコア金型107との間にコア金型側微小隙間107eが形成される。すなわち、2次成形体120で囲まれた1次成形体110の両表面に被覆剤が注入される第2キャビティ金型側微小隙間109a及びコア金型側微小隙間107eが形成される。
また、微小型開き量S’は実施例1の微小型開き量Sの略2倍程度である。ここで第2キャビティ金型側微小隙間109e及びコア金型側107eの距離は、各々被覆膜の厚み+αの数十μmから数百μmであるので、各々を合わせても実施例1と同様に、数十μmから数百μmの範囲となる。そのため、第2キャビティ20a内面との接触面にスキン層が形成された第2樹脂120b(2次成形体120)が、型開きした金型分割面、第2キャビティ金型109及びコア金型側微小隙間107eに侵入することはない。すなわち、金型分割面をシェアエッジ構造にする必要が無く、一般的なフラットな構造とすることができる。
ここで、第2キャビティ120a内で、スキン層が形成された第2樹脂120b(2次成形体120)には、第2樹脂用ゲート107dを介して第2樹脂120bが所定の射出圧力で捕充填されるため、実施例1と同様に、第2キャビティ120a内の第2樹脂120b(2次成形体120)が、注入直後の流動性が最も高い被覆剤30b及び被覆剤31bが、補充填工程において、スキン層が形成された第2樹脂120b(2次成形体120)と第2キャビティ120aとの接触面を通って、微小型開きした金型分割面から外部に漏れるのを防止するシール構造を構成する。
補充填工程の途中、あるいは完了後に、第2キャビティ金型109側に形成された第2キャビティ金型側微小隙間109aに、被覆剤管路30aを介して被覆剤注入機30から被覆剤30bの注入が開始される。また、コア金型107側に形成されたコア金型側微小隙間107eにも、被覆剤管路31aを介して被覆剤注入機31から被覆剤31bが注入される。被覆剤の注入は、被覆膜形成工程の開始ではあるが、説明を簡単にするため、実施例1と同様に図3(d)で示す補充填工程と一緒に図示した。
次に、被覆剤の注入完了後、第2樹脂用ゲート107d、被覆剤管路30a及び被覆剤管路31aに配置された図示しない閉止弁を閉止させた後、図3(e)に示すように、微小型開きさせていた第2キャビティ金型109を再型締めさせて、第2キャビティ金型側微小隙間109a及びコア金型側微小隙間107eを圧縮させて2次成形体120に囲まれた1次成形体110の第2キャビティ金型109側表面及びコア金型107側表面に、注入された被覆剤30b及び被覆剤31bを密着一体化させる被覆膜形成工程が行われる。第2キャビティ120a内の2次成形体120(第2樹脂120b)は、先に説明した補充填工程の終了直後から型開閉方向に冷却固化収縮するが、実施例1と同様に、補充填工程の完了直後からこの被覆膜形成工程においても、2次成形体120(第2樹脂120b)のシール構造は機能し続ける。そして、第2キャビティ金型109の再型締めにより2次成形体120で囲まれた1次成形体110の表面に、注入された被覆剤30b及び被覆剤31bを介して直接、第2キャビティ金型9の金型キャビティ内面全体で均等に型締力が付与されるため、第2キャビティ金型側微小隙間109a内の被覆剤30b及びコア金型側微小隙間107e内の被覆剤31bは、2次成形体120で囲まれた1次成形体110の両表面に均等に拡張されて、第2キャビティ金型109の金型キャビティ内面意匠が十分に転写され、それ自体の意匠性も優れた被覆膜30c及び被覆膜31cとして2次成形体120で囲まれた1次成形体110の両表面に密着一体化される。
次に、第2キャビティ120aの2次成形体120の冷却固化後、図3(f)に示すように、図示しない型締装置により第2キャビティ金型109を型開きさせた後、型締装置の可動盤や金型移動手段等の金型取付部3に配置された製品押出機構3aにより2次成形体120で囲まれた1次成型体110両表面に被覆膜30c及び被覆膜31cが施工された2層成形製品140を第2キャビティ金型109から押し出す製品押出工程が行われる。第2キャビティ金型109から2層成形製品140を直接押し出す押出ピン3bの配置及び、その配置により奏する効果は実施例1と同じである。また、本実施例2では、アンダーカット部を形成する可動部が第1キャビティ金型側に配置されるので、第2キャビティ内面にその可動部の摺動部分が一切ないため、押出ピンの配置が更に容易になり、2次成形体で囲まれた1次成形体の両表面に被覆膜を施工する場合に好適である。最後に、第2キャビティ金型109から押し出された2層成形製品140は、図示しない製品取出手段により射出成形機外へ搬送される。このように図3(a)から図3(f)の成形工程が繰り返されることにより、2次成形体120で囲まれた1次成型体110の両表面に被覆膜30c及び被覆膜31cが施工された2層成形製品140が連続して成形される。
図4は本発明の実施例2に係る2層成形製品用の金型内塗装用金型の熱硬化性被覆剤のシール構造を説明する図3(d)要部B詳細図である。図4に示す補充填工程においては、第2キャビティ120a内に射出充填された第2樹脂120bと第2キャビティ120a内面との接触面に柔軟性を維持するスキン層120cが形成されており、スキン層120cの内部には、図示しない第2射出ユニットから第2樹脂用ゲート107dを介して第2樹脂120bが所定の射出圧力で捕充填されるため、第2キャビティ120a内の第2樹脂120b(2次成形体120)は、先に説明したように、空間(第2キャビティ120a)を満たすように挿入され空気(第2樹脂120b)を補充される風船(スキン層120c)のように、スキン層を維持しながら微小型開きにより拡大される第2キャビティ120aに追従し、所定圧力が作用した状態で第2キャビティ120aとの接触面との密着状態を維持する。ここで、微小型開き量S’、第2キャビティ金型側微小隙間109a及びコア金型側微小隙間107eの距離は、各々被覆膜の厚み+αの数十μmから数百μmなので、第2キャビティ120a内で、第2キャビティ20a内面との接触面にスキン層が形成された第2樹脂120b(2次成形体120)が、型開きした金型分割面、第2キャビティ金型側微小隙間109a及びコア金型側微小隙間107eに侵入することはないこと、また、特に型締力f2が作用する第2キャビティ120aの金型分割面と平行な面120e(2次成形体型締力集中面)においてその型締力f2が集中するため、これらの面における第2樹脂120b(2次成形体120)と第2キャビティ120aとの押し付け力が高まり、注入直後の流動性が最も高い熱硬化性被覆剤30b及び熱硬化性被覆剤31bであっても、スキン層120cが形成された第2樹脂120b(2次成形体120)と第2キャビティ120aとの接触面120dや2次成形体型締力集中面120eを通って、微小型開きした金型分割面から外部に漏れるのを防止するシール構造を構成すること、このシール構造が、補充填工程から被覆膜形成工程においても機能し続けること、及び、このシール構造が補充填工程及び被覆膜形成工程において機能することにより、熱硬化性被覆剤30bは第2キャビティ金型側微小隙間9a内にシールされ押出ピン3bの摺動部には到達しないこと、は先に説明したとおりである。
図5及び図6を参照しながら本発明の実施例3を説明する。図5は本発明の実施例3に係る成形工程を示す2層成形製品用の金型内塗装用金型の概略断面図である。図5(a)が1次成形工程、図5(b)が金型移動工程の開始時、図5(c)が2次成形工程、図5(d)が補充填工程及び被覆膜形成工程の被覆剤注入開始時、図5(e)が被覆膜形成工程、図5(f)が製品押出工程を示す。図6は本発明の実施例3に係る2層成形製品用の金型内塗装用金型の被覆剤のシール構造を説明する図5(d)要部C詳細図である。また、図中の符号については、基本的に実施例1及び実施例2と同じ構成部材にはそれら実施例と同じ符号を付し、それら実施例に相当する構成部材ではあるが、説明上区別したい構成部材には200を加えた符号を付している。
実施例3における実施例1及び実施例2との相違点は、1次成形体のコア金型側を内包させるためのアンダーカット形状部が無く、コア金型及び第1キャビティ金型のいずれにもアンダーカット形状部を形成するための可動部がない点と、1次成形体の形状が平板形状でなく凸形状である点である。また、実施例1と同様に、2次成形体で囲まれた1次成形体の第2キャビティ金型側の表面を被覆するものとする。それ以外の金型内塗装用金型の構成や金型内塗装方法は実施例1及び実施例2と基本的に同じため、それらとの相違点についてのみ説明する。
図5(a)に示すように、2層成形製品用の金型内塗装用金型201において、図示しない型締装置に取り付けられたコア金型207と、同様に、図示しない型締装置に取り付けられた第1キャビティ金型208とが組み合わされて形成される第1キャビティ210aに、図示しない第1射出ユニットから第1樹脂用ゲート207aを介して第1樹脂210bが射出充填され1次成形体210が成形される1次成形工程が行われる。実施例1及び実施例2との相違点は、1次成形体のコア金型側を内包させるためのアンダーカット形状部が無く、コア金型及び第1キャビティ金型のいずれにもアンダーカット形状部を形成するための可動部がない点である。1次成形体のコア金型側を内包させるためのアンダーカット形状部がないため、第2樹脂で成形される2次成形体が1次成形体のシール・パッキン部品として形成される2層成形製品においては形状に制約があるものの、それが許されれば、コア金型及び第1キャビティ金型のいずれにもアンダーカット形状部を形成するための可動部が配置される必要がないため、金型が簡略化でき、設計・コストの面で有利である。
第1キャビティ210a内の1次成形体210の冷却固化後、図5(b)に示すように、1次成形体210が保持されたコア金型207から図示しない型締装置により第1キャビティ金型208が型開きされ、型締装置に配置された図示しない金型移動手段により、コア金型207と第2キャビティ金型209とが対向する位置に相対的に移動される金型移動工程が開始される。引き続き、図5(c)に示すように、コア金型207とコア金型207に保持された1次成形体210と第2キャビティ金型209とが組み合わされて形成される第2キャビティ220aに、図示しない第2射出ユニットから第2樹脂用ゲート207dを介して第2樹脂220bが射出充填され、1次成形体210の外周部に2次成形体220が成形される2次成形工程が行われる。
次に、第2キャビティ220a内の第2樹脂220bと第2キャビティ220a内面との接触面に柔軟性を維持するスキン層が形成された後、図5(d)に示すように、第2キャビティ金型209を距離S”だけ微小型開きさせて、型開閉方向に拡大された第2キャビティ220a内に第2樹脂220bを図示しない第2射出ユニットから第2樹脂用ゲート207dを介して捕充填させる補充填工程が行われる。この微小型開き動作に加えて、1次成形体210の型開閉方向の冷却固化収縮により、1次成形体210と第2キャビティ金型209との間に第2キャビティ金型側微小隙間209aが形成される。後述する被覆剤30bの注入に際し、第2キャビティ220a内の第2樹脂220b(2次成形体220)が、被覆剤30bが微小型開きした金型分割面から外部に漏れるのを防止するシール構造を構成することは先に説明したとおりである。
補充填工程の途中、あるいは完了後に、第2キャビティ金型209側に形成された第2キャビティ金型側微小隙間209aに、被覆剤管路30aを介して被覆剤注入機30から被覆剤30bの注入が開始される。被覆剤の注入は、被覆膜形成工程の開始ではあるが、説明を簡単にするため、実施例1及び実施例2と同様に図5(d)で示す補充填工程と一緒に図示した。
次に、被覆剤30bの注入完了後、第2樹脂用ゲート207d、被覆剤管路30aに配置された図示しない閉止弁を閉止させた後、図5(e)に示すように、微小型開きさせていた第2キャビティ金型209を再型締めさせて、第2キャビティ金型側微小隙間209aを圧縮させて2次成形体220に囲まれた1次成形体210の第2キャビティ金型側表面に、注入された被覆剤30bを密着一体化させる被覆膜形成工程が行われる。実施例1及び実施例2と同様に、補充填工程の完了直後からこの被覆膜形成工程においても、2次成形体220(第2樹脂220b)のシール構造は機能し続ける。そして、第2キャビティ金型209の再型締めにより2次成形体220で囲まれた1次成形体210の表面に、注入された被覆剤30bを介して直接、第2キャビティ金型9の金型キャビティ内面全体で均等に型締力が付与されるため、第2キャビティ金型側微小隙間209a内の被覆剤30bは、2次成形体220で囲まれた1次成形体210の表面に均等に拡張されて、第2キャビティ金型209の金型キャビティ内面意匠が十分に転写され、それ自体の意匠性も優れた被覆膜30cとして2次成形体220で囲まれた1次成形体210の表面に密着一体化される。
次に、第2キャビティ220aの2次成形体220の冷却固化後、図5(f)に示すように、図示しない型締装置により第2キャビティ金型209を型開きさせた後、型締装置の可動盤や金型移動手段等の金型取付部3に内蔵された製品押出機構3aにより2次成形体220で囲まれた1次成型体210両表面に被覆膜30cが施工された2層成形製品240を第2キャビティ金型209から押し出す製品押出工程が行われる。第2キャビティ金型209から2層成形製品240を直接押し出す押出ピン3bの配置及び、その配置により奏する効果は実施例1及び実施例2と同じである。また、本実施例3では、実施例2と同様に、第2キャビティ内面にその可動部の摺動部分が一切ないため、押出ピンの配置が容易になるため、実施例2と同様に、2次成形体で囲まれた1次成形体の両表面に被覆膜を施工する場合に好適である。最後に、第2キャビティ金型209から押し出された2層成形製品240は、図示しない製品取出手段により射出成形機外へ搬送される。このように図5(a)から図5(f)の成形工程が繰り返されることにより、2次成形体220で囲まれた1次成型体210の表面に被覆膜30cが施工された2層成形製品240が連続して成形される。
図6は本発明の実施例3に係る2層成形製品用の金型内塗装用金型の被覆剤のシール構造を説明する図5(d)要部C詳細図である。図6に示す補充填工程においては、第2キャビティ220a内に射出充填された第2樹脂220bと第2キャビティ220a内面との接触面に柔軟性を維持するスキン層220cが形成されており、スキン層220cの内部には、図示しない第2射出ユニットから第2樹脂用ゲート207dを介して第2樹脂220bが所定の射出圧力で捕充填されるため、第2キャビティ220a内の第2樹脂220b(2次成形体220)は、実施例1及び実施例2と同様に、空間(第2キャビティ220a)を満たすように挿入され空気(第2樹脂220b)を供給される風船(スキン層220c)のように、スキン層を維持しながら微小型開きにより拡大する第2キャビティ120aに追従し、所定圧力が作用した状態で第2キャビティ220aとの接触面との密着状態を維持する。
ここで、1次成形体が実施例3のような型開閉方向の立ち上がり部を有する形状の場合、補充填工程の微小型開き動作により、その立ち上がり部に型開閉方向と直交する方向に第2キャビティ金型側微小隙間209aのような微小隙間を形成させることは困難である。しかしながら、1次成形体の冷却固化収縮は型開閉方向だけでなく、型開閉方向と直交する方向へも進行する。よって、1次成形体220と第2キャビティ金型209との接触面220dにおいても、型開閉方向と直交する方向に図示しない微小隙間が形成されており、被覆剤30bの流動性が最も高い注入直後であれば、型開閉方向にその流動性を保持されるのに十分な距離を有する第2キャビティ金型側微小隙間209aを介してその微小隙間に問題なく注入される。
また、型締力f3が作用する第2キャビティ220aの金型分割面と平行な面220e(2次成形体型締力集中面)においては、その型締力f3が集中するため、これらの面における第2樹脂220b(2次成形体220)と第2キャビティ220aとの押し付け力が高まり、注入直後の流動性が最も高い被覆剤30bであっても、第2樹脂220b(2次成形体220)が、2次成形体型締力集中面220eを通って、微小型開きした金型分割面から外部に漏れるのを防止するシール構造を構成すること、このシール構造が、補充填工程から被覆膜形成工程においても機能し続けること、及び、このシール構造が補充填工程及び被覆膜形成工程において機能することにより、被覆剤30bは第2キャビティ金型側微小隙間9a内にシールされ押出ピン3bの摺動部には到達しないこと、は先に説明したとおりである。
ここで、本実施例3のように、第2キャビティが、第2キャビティ金型側の1次成形体のみの表面に重なっている2層成形製品であっても、実施例2のように、微小型開き量と第2樹脂の補充填量とを所定量多くすれば、実施例2のように2次成形体に囲まれた1次成形体の両表面に被覆膜が形成された2層成形製品を成形することができる。
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく色々な形で実施できる。例えば、実施例1から実施例3において、第1樹脂及び第2樹脂を共にコア金型側から射出充填する形態としたが、コア金型以外の金型側から射出充填する形態でも良い。同様に、製品押出ピンが第2キャビティ金型側に配置される形態としたが、金型あるいは2層成形製品によっては、コア金型側の第2キャビティ形成部に配置される形態であっても、本発明と同様の効果を奏する。また、実施例1及び実施例3においては、2次成形体で囲まれた1次成形体の第2キャビティ金型側表面に被覆膜が形成される形態としたが、実施例2のように、補充填工程における微小型開き量と第2樹脂の補充填量とを所定量増加させれば、2次成形体で囲まれた1次成形体のコア金型側表面にも微小隙間を形成させて被覆膜を形成させることが可能であることは先に説明したとおりである。