図1乃至図3を参照しながら本発明の実施例1を説明する。図1は本発明の実施例1に係る金型内塗装用金型及び射出成形装置の主要構成要件の概略側面図である。図2は本発明の実施例1に係る積層成形品の金型内塗装方法の一次成形工程乃至二次成形工程を示す概略部分断面図である。図2(a)が一次成形工程の完了状態、図2(b)が一次回転工程後の型開き状態、図2(c)が射出プレス成形方法による二次成形工程の射出充填状態、図2(d)が射出プレス成形方法による二次成形工程の金型キャビティ容積縮小動作状態を示す。図3は本発明の実施例1に係る積層成形品の金型内塗装方法の三次成形工程乃至四次成形工程を示す概略部分断面図である。図3(a)が三次成形工程の微少型開き動作及び第2被覆剤注入機からの第2被覆剤の注入、図3(b)が三次成形工程の金型キャビティ容積の縮小動作(被覆剤拡張・圧縮動作)、図3(c)が四次成形工程の微少型開き動作及び第1被覆剤注入機からの第1被覆剤の注入、図3(d)が四次成形工程の金型キャビティ容積の縮小動作(被覆剤拡張・圧縮動作)を示す。
最初に、図1を参照しながら、本発明に係る金型内塗装用金型及び射出成形装置1の基本構成について説明する。射出成形装置1は製品取り出し工程が完了した型開き状態である。ベッド2に固定された固定盤3と、固定盤3に対して型開閉方向に移動可能に設けられた可動盤5と、固定盤3及び可動盤5の間に配置され、取り付けられた回転金型部40を型開閉方向に直交する回転軸周りに回転可能に支持し、型開閉方向に移動させる回転金型支持機構4と、回転金型部40の一部を構成し、固定盤3及び可動盤5に対向する2つの金型取付面を有し、回転金型支持機構4に型開閉方向に直交する鉛直方向の回転軸周りに回転可能に支持される回転金型取付部41と、固定盤3側に設けられた第1射出ユニット17と、を備えている。
固定盤3には、正面側(可動盤5と対向する側)の面に、本発明に係る金型内塗装用金型を構成する共通金型19が取り付けられると共に、背面側から正面側に亘って第1射出ユニット17を共通金型19に向けて進退させるための貫通穴3aが形成されている。第1射出ユニット17は、この貫通孔3aから共通金型19に接続可能に配置されており、型締めにより共通金型19及び回転金型部40間に形成させる金型キャビティに、図示しない樹脂流路を介して第1溶融樹脂を射出充填可能に構成されている。固定盤3の四隅からは図示しないタイバーが突出して設けられ、このタイバーは、可動盤5を貫通している。
また、固定盤3には第1射出ユニット17とは別に、共通金型19に接続可能に第2射出ユニット18が配置されており、型締めにより共通金型19及び回転金型部40間に形成させる金型キャビティに図示しない樹脂流路を介して第2溶融樹脂を射出充填可能に構成されている。ここで、第2射出ユニット18は、図1において共通金型19の上面に接続されるように図示されているが、これは、第2射出ユニット18が共通金型19に接続されることを概略的に示すものであり、実際には、第2射出ユニット18は共通金型19の側面や、第1射出ユニット17と並べて共通金型19の背面に接続可能に配置されても良い。
第2射出ユニット18は移動しない共通金型19に接続されることが好ましいが、これに限定されるものではなく、回転金型部40に接続されても良い。また、成形する積層成形品の射出充填量の多い方の樹脂を第1射出ユニット17で、少ない方の樹脂を第2射出ユニット18で射出充填させるように構成させることにより、第2射出ユニット18を小型化できれば、その配置上の制約が減少し、射出成形装置の設置状況に対応させて、先に説明したような第2射出ユニット18の様々な配置が選択可能になる。更に、汎用の射出成形装置に回転金型支持機構等を追加して、本発明に係る積層成形品の金型内塗装成形方法を行う場合にも、第2射出ユニット18として、比較的、射出充填量の多くない市販の追加用小型射出ユニット等を採用することができる。
共通金型19には第1被覆剤注入機50が配置されている。簡単のために、図1において射出成形装置1外に図示されている第1被覆剤注入機50は、具体的には、共通金型19の内部に配置された図示しない注入機(インジェクター)、被覆剤流路及び注入ゲート、射出成形装置外に配置された被覆剤貯蔵容器、及びこれらを接続し、注入機及び被覆剤貯蔵容器間で被覆剤を循環させる循環流路と循環装置等で構成される。そして、成形工程に連動させて、図示しない注入ゲートを介して、共通金型19の金型キャビティ面のうち、後述する二次成形体9bを成形する第2金型キャビティ31の少なくとも一部を形成する金型キャビティ面19cに、任意のタイミングで、所定の被覆剤を所定の圧力で所定量、所定速度で注入させることができる。
可動盤5には、回転金型部40と対向する面に、本発明に係る金型内塗装用金型を構成するダミープレート6が取り付けられ、図示しないタイバーに案内され、図示しない型締手段によって、固定盤3に対して進退自在に設けられている。ダミープレート6は、型締め時に、対向する回転金型部40の金型分割面を保護する。
回転金型支持機構4は、固定盤3と可動盤5との間に配置され、ベッド2上を型開閉方向に移動可能に設けられている。この回転金型支持機構4の型開閉方向の移動の案内(ガイド)は、ベッド2に設けられた直動ガイド等の案内手段によるものであっても良いし、回転金型部40の回転金型取付部41を、金型取付面を有し回転する回転部と、これを回転可能に支持し回転しない枠部とで構成し、この回転しない枠部の四隅に、図示しないタイバーを貫通させて案内させるものであっても良いし、公知の案内手段が適宜、選択されれば良い。この回転金型支持機構4により、型開閉方向に直交する鉛直方向の回転軸周りに回転可能に支持され、本発明に係る金型内塗装用金型を構成する回転金型部40は、固定盤3及び可動盤5に対向する2つの金型取付面を有する回転金型取付部41と、回転金型取付部41の金型取付面にそれぞれ取り付けられた第1回転金型20及び第2回転金型21から構成され、回転金型支持機構4に着脱可能に取り付けられている。
これら回転金型取付部41と、第1回転金型20及び第2回転金型21とは、固定盤3及び可動盤5に対向する2つの金型分割面を有する1つの金型(回転金型部)として構成され、回転金型支持機構4、あるいは、先に説明した回転金型取付部41の回転しない枠部に着脱可能に取り付けられても良い。また、回転金型部40は、型開閉方向に直交する水平方向の回転軸周りに回転可能に支持される形態であっても良い。
第1回転金型20及び第2回転金型21は異なる金型キャビティ形状を有している。後述する一次成形工程において、第1回転金型20は型締めにより共通金型19と組み合わされて、一次成形体9aを成形する第1金型キャビティ30を形成させる。一方、二次成形工程において、第2回転金型21は型締めにより、一次成形体9aを保持させた共通金型19と組み合わされて、二次成形体9bを成形する第2金型キャビティ31を形成させる。また、回転金型部40には第2被覆剤注入機51が配置されている。簡単のために、図1において射出成形装置1外に図示されている第2被覆剤注入機51は、第1被覆剤注入機50と同様の構成であり、成形工程に連動させて、図示しない注入ゲートを介して、回転金型部40の少なくとも1つの金型キャビティ面に、任意のタイミングで、所定の被覆剤を所定の圧力で所定量、所定流量で注入させることができる。本実施例1では、第2被覆剤注入機51は第2回転金型21の金型キャビティ面21cに第2被覆剤51aを注入させるものとする。
次に、本実施例1の前提について説明する。成形対象は、取り付け等のための部位が、透光性を有するガラス代替部の外周部の少なくとも一部に積層成形された自動車等のガラス代替樹脂窓である。そのため、透光性を有するガラス代替部に意匠面及び非意匠面の区別がないため、以下の実施例の説明においては、本発明に係る被覆膜を形成させる意匠面及び非意匠面を、自動車等のガラス代替樹脂窓の車外側及び車内側と呼称する。最初の一次成形工程において、取り付け等のための部位(第1溶融樹脂/一次成形体9a)を射出成形し、次の二次成形工程において、該取り付け等のための部位(一次成形体9a)がその外周部の少なくとも一部になるように、透光性を有するガラス代替部(第2溶融樹脂/二次成形体9b)を射出プレス成形方法により射出成形する。その後、三次成形工程において、一次成形工程乃至二次成形工程において成形したガラス代替樹脂窓(積層成形品9)の第2回転金型21側(車外側)に、第2被覆剤注入機51から耐候性及び耐スクラッチ性を付与する第2被覆剤51aを注入させ、第2ハードコート層9dを形成させる。そして四次成形工程において、共通金型19側(車内側)に、第1被覆剤注入機50から主に耐スクラッチ性を付与する第1被覆剤50aを注入させ、第1ハードコート層9cを形成させ、最終的に、その内外面に異なる機能を有する第1ハードコート層9c及び第2ハードコート層9dを形成させたガラス代替樹脂窓(積層成形品9)を成形するものとする。
引き続き、図2及び図3を参照しながら、本発明の実施例1に係る積層成形品の金型内塗装方法の成形工程を説明する。図2は成形工程の理解を容易にするために、図1の金型部分(側面図)を中心に、成形工程を順に図示した概略部分断面図であり、成形工程に直接関係ない構成部位は図示していない。また、共通金型19、第1回転金型20及び第2回転金型21のみにハッチングを施し、断面であることを示している。更に、図3は、二次成形工程において成形が完了した積層成形品9の一部(図2(d)の要部A)のみ図示したものである。
図1に示す型開き状態から、図2(a)に示すように、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により、回転金型部40及びダミープレート6を共通金型19に型閉じさせた後、型締力を付与させて型締状態に移行する。矢印は金型の移動や射出ユニットの射出充填状態を示し、白抜き矢印は型締力が付与されていることを示す。この型締状態において、共通金型19及び第1回転金型20間に第1金型キャビティ30を形成させ、第2射出ユニット18から第1金型キャビティ30に第1溶融樹脂を射出充填させる(一次成形工程)。先に説明したように、一次成形工程は、取り付け等のための部位(一次成形体9a)を射出成形するものであり、一次成形体9aの仕様に好適な樹脂、成形条件が選択されれば良い。第1溶融樹脂としては、一般的には熱可塑性樹脂が選択される。一方、第2回転金型21はダミープレート6により、型締状態においてもその金型分割面が保護される。
一次成形体9aの冷却固化時間経過後、図2(b)に示すように、一次成形体9aを共通金型19に保持させた状態で、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により、ダミープレート6及び回転金型部40を共通金型19から型開きさせる。型開き後、回転金型支持機構4により回転金型部40を回転させ、第2回転金型21を共通金型19と対向する位置に移動させる(一次回転工程)。型開きが完了する前、すなわち、ダミープレート6が図示しない型締手段により型開き限位置に到達する前に、回転金型部40をその回転が可能な位置まで移動させることができる場合は、型開き中に一次回転工程を行っても良い。
一次回転工程後、図2(c)に示すように、再び、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により、回転金型部40及びダミープレート6を共通金型19に型閉じさせた後、型締力を付与させて型締状態に移行する。この型締状態において、一次成形体9aを保持させた共通金型19及び第2回転金型21間に第2金型キャビティ31を形成させ、第1射出ユニット17から第2金型キャビティ31に第2溶融樹脂を射出充填させる(二次成形工程/射出充填)。
先に説明したように、二次成形工程は、取り付け等のための部位(一次成形体9a)がその外周部の少なくとも一部になるように、透光性を有するガラス代替部(2次成形体9b)を射出プレス成形方法により射出成形するものであり、二次成形体9bの仕様に好適な樹脂、成形条件が選択されれば良い。第2溶融樹脂としては、一般的には熱可塑性樹脂が選択される。また、二次成形体9bを射出プレス成形方法により射出成形するために、一次成形体9aを保持させた共通金型19と第2回転金型21とは、型開閉方向に微少距離α(アルファ)だけ微少型開きさせた位置で、射出充填圧力に対抗するように位置保持されており、完全な型締状態に対して、微少型開き量αだけ金型キャビティ容積を拡張させた状態の第2金型キャビティ31に第2溶融樹脂を射出充填させる。
射出充填の完了後、あるいは完了前の適切なタイミングで、図2(d)に示すように、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により、回転金型部40及びダミープレート6を共通金型19に完全に型閉じさせた後、再度、型締力を付与させて型締状態に移行する(二次成形工程/金型キャビティ容積縮小動作)。この二次成形工程の金型キャビティ容積縮小動作中も第1射出ユニット17により、第2金型キャビティ31内の第2溶融樹脂に樹脂充填圧力を作用させることが好ましい。このように、一次成形工程乃至二次成形工程により、一次成形体9a及び二次成形体9bから成る積層成形品9が成形される。尚、図2(d)の要部Aは、後述する三次成形工程乃至四次成形工程の説明を容易にするためにピックアップしたもので、三次成形工程乃至四次成形工程を説明する図3は、この要部について図示している。
ここで、本実施例1では、一次成形工程において取り付け等のための部位(第1溶融樹脂/一次成形体9a)を射出成形した後、二次成形工程において透光性を有するガラス代替部(第2溶融樹脂/2次成形体9b)を射出プレス成形方法により射出成形するものとしたが、必要に応じて、共通金型19、回転金型部40、第1射出ユニット17及び第2射出ユニット18の構成を適宜変更すれば、この逆の順序、すなわち、一次成形工程において透光性を有するガラス代替部(第2溶融樹脂/2次成形体9b)を射出プレス成形方法により射出成形した後、二次成形工程において取り付け等のための部位(第1溶融樹脂/一次成形体9a)を射出成形することも可能である。その場合、後から射出充填させる、取り付け等のための部位(一次成形体9a)となる第1溶融樹脂の熱により、先に成形した透光性を有するガラス代替部(二次成形体9b)に歪みが生じないような、あるいは、歪みが生じても許容できるような配慮が必要となる。また、本実施例1では、二次成形工程において、二次成形体9bを射出成形させるために射出プレス成形方法を行うものとしたが、成形する積層成形品に応じて、射出プレス成形方法ではない一般的な射出成形を行っても良いし、一次成形工程及び二次成形工程の両方において、射出プレス成形方法を行っても良い。
このような、金型キャビティ容積を拡張させた状態で射出充填させることにより溶融樹脂の充填抵抗を低減させ、その後、金型キャビティ容積を縮小させることにより、金型キャビティ内の溶融樹脂に略均一に型締力を付与させることができる射出プレス成形方法は、射出圧縮成形方法と並び、樹脂成形品の冷却固化後の内部応力を低減させて、その内部応力に起因する樹脂成形品の成形後の歪みを低減させることができ、このような歪みを極力抑える必要があるガラス代替樹脂窓や、光ディスク等の光学式記録媒体等の樹脂成形品の射出成形に好適とされている。本実施例1では、射出プレス成形方法を行う形態を説明したが、型締力を弱めた状態で、射出充填圧力により金型キャビティを拡張させる射出圧縮成形方法も行うことができることは言うまでもない。
成形工程の説明に戻る。図2(d)に示すように、共通金型19及び第2回転金型21間に形成させた第2金型キャビティ31において、一次成形体9aと二次成形体9bとから成る積層成形品9が成形される。その冷却固化中の適切なタイミングで、図3(a)に示すように、積層成形品9を共通金型19に保持させた状態で、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により、ダミープレート6及び回転金型部40を共通金型19から、型開閉方向に距離β(ベータ)だけ微少型開きさせる(三次成形工程/微少型開き)。この微少型開き動作により積層成形品9及び第2回転金型21間に形成させた、その距離が略βの隙間に、第2被覆剤注入機51から第2回転金型21の金型キャビティ面21cに配置された図示しない注入ゲートを介して、耐候性及び耐スクラッチ性を付与する第2被覆剤51aを所定の圧力で所定量、所定流量で注入させる。
ここで、金型内塗装方法で使用する被覆剤としては、一般的には熱硬化性被覆剤が選択される。そのため、樹脂成形品と金型キャビティ面との隙間に被覆剤を注入させる際、樹脂成形品や金型キャビティ面の温度が高すぎる場合、被覆剤が注入直後から硬化し始めるため、樹脂成形品表面での流動性や金型キャビティ面の転写性が低下し被覆膜の品質を低下させてしまう。逆に低すぎると、樹脂成形品表面への被覆膜の形成が遅れ、成形サイクルが長くなるだけでなく、流動性を維持した被覆剤の金型内摺動部への侵入や、金型外部への漏洩を発生させてしまう可能性がある。これらを鑑みて、三次成形工程における微少型開き及び被覆剤の注入タイミングは、積層成形品9の冷却固化状態や金型の温度調整能力に応じて適切に決定される必要がある。
また、先に説明したように、本実施例1のような金型内塗装方法においては、微少型開き時の被覆剤の金型外への漏洩を防止するために、シェアエッジ構造やシール機構を有する金型を使用する必要がある。しかしながら、シェアエッジ構造は公知の構造であり、被覆剤の金型外への漏洩を防止するシール機構等は、様々な構造が開示されているため、本実施例1においては、共通金型19及び回転金型部40に、これら被覆剤の金型外への漏洩を防止する、図示しない構造あるいは機構が採用されているものとし、以後もこれらの構造あるいは機構については図示及び説明を割愛する。
成形工程の説明に戻る。第2被覆剤注入機51からの第2被覆剤51aの注入後、図3(b)に示すように、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により回転金型部40及びダミープレート6を共通金型19に完全に型閉じさせた後、再度、型締力を付与させて型締状態に移行する(三次成形工程/被覆剤拡張・圧縮動作)。この被覆剤拡張・圧縮動作により、積層成形品9の第2回転金型21側(車外側)の表面に第2被覆剤51aを均一に拡張・圧縮させ、その後硬化させて第2ハードコート層9dを形成させる。
本実施例1のように、金型の微少型開き動作により被覆剤を注入させる隙間を形成させる金型内塗装方法においては、樹脂成形品の型開閉方向に直交する面には、略微少型開き量と同じ距離の隙間を形成させることができる一方、その型開閉方向に直交する面に連続する立ち上がり面のように、型開閉方向との角度が90°より小さくなる面には、その角度が小さくなればなる程、形成させる隙間が小さくなる。しかしながら、本実施例1のガラス代替樹脂窓等のような、型開閉方向の厚み(側面の長さ)がその縦・横寸法に対して十分に小さい樹脂成形品であれば、樹脂成形品に一般的に設けられる抜け勾配(角度)を5°以上、好ましくは10°以上とすることで、微少型開き動作により、被覆剤を注入させるのに必要な数十〜数百μm(マイクロメートル)の隙間を形成させることに特に問題はない。また、積層成形品9の二次成形体9bは、その冷却固化収縮により全方位に収縮するため、その型開閉方向と直交する方向にも収縮し、積層成形品9の二次成形体9bの側面部分及び第2回転金型21の金型キャビティ面21c間にも、微少ではあるが隙間が形成される。そのため、積層成形品9の二次成形体9bについて、適切な抜け勾配を設けることにより、その立ち上がり面にも第2被覆剤51aを注入させて第2ハードコート層9dを形成させることができる。
三次成形工程の後、図3(c)に示すように、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により、ダミープレート6及び回転金型部40を共通金型19から、型開閉方向に微少距離γ(ガンマ)だけ微少型開きさせる(四次成形工程/微少型開き)。この微少型開き動作により積層成形品9及び共通金型19間に形成させた、その距離が略γの隙間に、第1被覆剤注入機50から共通金型19の金型キャビティ面19cに配置された図示しない注入ゲートを介して、主に耐スクラッチ性を付与する第1被覆剤50aを所定の圧力で所定量、所定流量で注入させる。
ここで、積層成形品9の共通金型19側にはその外周部の少なくとも一部に、取り付け等のための部位(一次成形体9a)が積層され凹凸形状が形成されている。積層成形品に限らず、樹脂成形品の冷却固化収縮により生じる圧縮力は、このような凹凸形状を成形する金型キャビティ面の凸部に集中するため、型開きの際に、樹脂成形品がそのような凸部が多い方の金型キャビティを有する金型側に保持されることが一般的である。そのため、本実施例1の場合、積層成形品9を第2回転金型21の金型キャビティ面21cに保持させる何らかの保持機構がなければ、微少型開きの際、積層成形品9は共通金型19側に保持されるため、図3(c)に示すように、積層成形品9及び共通金型19間の略全面に隙間は形成されず、図3(a)に示すように、第2回転金型21及び積層成形品9間の略全面に隙間が形成される可能性が高い。
しかしながら、このように、第1被覆剤50aを注入させるべき隙間が、積層成形品9及び共通金型19間ではなく、第2回転金型21及び積層成形品9間の略全面に形成される場合、積層成形品9は第2回転金型21の金型キャビティ面21cに支持されない状態となる。そのため、金型キャビティ内で積層成形品9を第2回転金型21側に押圧させることができれば、積層成形品9を第2回転金型21の金型キャビティ面21cまで移動させて、図3(c)に示すように、積層成形品9の共通金型19側の金型キャビティ面19cの略全面に亘って第1被覆剤50aを注入させる隙間を形成させることができる。
金型キャビティ内で積層成形品9を第2回転金型21側に押圧させる方法としては、例えば、まず、共通金型19側に配置された、図示しない製品押出用の押出ピンで積層成形品9を押圧させる方法がある。この場合、積層成形品9の一次成形体9aの非意匠面側等、押出ピンによる押出痕が生じても品質上問題にならない部分を押圧させることが好ましい。次に、共通金型19の金型キャビティ面19cに配置された、図示しない、開閉機構付の気体噴出孔から圧縮気体を噴出してその圧力で押圧させる方法も可能である。更には、積層成形品9を押圧させて、共通金型19側に第1被覆剤50aを注入させる隙間を形成させた後に注入を開始させるのではなく、第1被覆剤注入機50から共通金型19の金型キャビティ面19cに配置された図示しない注入ゲートを介して、第1被覆剤50aを所定の圧力で所定量、所定流量で直接注入させて、その圧力自体で積層成形品9を注入量に連動させて押圧させる方法等も可能である。
二次成形体9bは、その冷却固化収縮により全方位に収縮するため、その立ち上がり方向(型開閉方向/厚み方向)にも収縮し、積層成形品9及び共通金型19の金型キャビティ面19c間の略全面にも、微少ではあるが隙間が形成される。そのため、これら圧縮気体や第1被覆剤50aを噴出・注入させて、その圧力で積層成形品9を第2回転金型21側に押圧させる場合、それら流体の噴出・注入のごく初期の段階で、その微少な隙間はそれら流体で満たされ、第2回転金型21の金型キャビティ面21cに支持されない状態の積層成形品9の略全面に圧力を伝播させることができるため、位置ずれ等を生じさせることなく、積層成形品9を第2回転金型21側に移動させることができる。図3(c)はこのような方法のいずれかにより積層成形品9を押圧させて、積層成形品9及び共通金型19の金型キャビティ面19c間の略全面に形成させた、その距離が略γの隙間に、第1被覆剤注入機50から第1被覆剤50aを注入させている。
第1被覆剤注入機50からの第1被覆剤50aの注入後、図3(d)に示すように、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により回転金型部40及びダミープレート6を共通金型19に完全に型閉じさせた後、再度、型締力を付与させて型締状態に移行する(四次成形工程/被覆剤拡張・圧縮動作)。この被覆剤拡張・圧縮動作により、積層成形品9の共通金型19側(車内側)の表面に第1被覆剤50aを均一に拡張・圧縮させ、その後硬化させて第1ハードコート層9cを形成させる。この四次成形工程における微少型開き及び被覆剤の注入タイミングも、積層成形品9の冷却固化状態や金型の温度調整能力、更には、第2ハードコート層9dの硬化状態に応じて適切に決定される必要があることは言うまでもない。
第1ハードコート層9cの硬化後、図示はしていないが、積層成形品9を共通金型19及び第2回転金型21のいずれか一方に保持させた状態で、型締手段及び回転金型支持機構4により、ダミープレート6及び回転金型部40を共通金型19から型開きさせ、製品取り出し手段により積層成形品9を射出成形装置1外へ搬出させる(製品取り出し工程)。この製品取り出し工程の型開きにおいては、ダミープレート6及び回転金型部40を、回転金型部40の回転が可能な位置まで型開きさせても良いし、製品取り出しを容易にするため、回転金型部40を型開き限位置にあるダミープレート6に型合わせするまで型開きさせ、共通金型19及び回転金型部40間の距離(デーライト)が最大になるようにしても良い。その場合、ダミープレート6及び回転金型部40を一体化する機構を設けて、これらを一体で型開きさせても良い。製品取り出し工程後、回転金型部40をその回転が可能な位置で回転させ、第1回転金型20を共通金型19と対向する位置に移動させれば、図1に示す型開き状態となる(二次回転工程)。
このように、図1から図3(d)の成形工程が、本発明の実施例1に係る積層成形品の金型内塗装方法の成形工程の1成形サイクルとなり、本成形サイクルを繰り返すことにより、被覆膜形成金型を使用せず、その内外面に異なる機能を有する第1ハードコート層9c及び第2ハードコート層9dを形成させた、一次成形体9aと二次成形体9bとから成る積層成形品9を、微少型開きを除く型開き2回毎に連続して成形することができる。
また、本実施例1で説明した本発明に係る金型内塗装用金型、射出成形装置及び積層成形品の金型内塗装方法によれば、積層成形品の意匠面及び非意匠面の両面に被覆膜を形成させる場合、被覆膜形成金型を使用しないため、特許文献2の形態のように、射出成形装置のサイズに対して成形可能な樹脂成形品のサイズが小さくなるという問題はない。更に、特許文献3の形態のように、固定盤側や回転する金型側の金型を切り換える金型移動手段等を設ける必要はない。また更に、これら被覆膜形成金型を使用する形態に共通する、これらの金型のすべてに、型開き毎にそれぞれの金型から他方の金型へと積層成形品の保持を変更する複雑な製品保持機構を配置させて、それらの複雑な切り替え制御を行わなければならないという問題もない。
ここで、本実施例1においては、自動車等のガラス代替樹脂窓(積層成形品)の内外面に異なる機能を有するハードコート層を形成させるものとしたが、ハードコート層に限定されるものではなく、赤外線遮断機能や結露防止機能、乱反射防止機能等の機能層であってもよく、積層成形品の内外面に形成させる被覆膜は、様々な機能を有する被覆膜を必要に応じて任意に組み合わせることができる。また、必ずしも積層成形品の内外面両面に被覆膜を形成させる形態に限定されるものではなく、いずれか一方の面のみに被覆膜を形成させる場合は、先に説明した三次成形工程及び四次成形工程の内、被覆膜を形成させる面側の成形工程のみを行えば良い。
次に、図4を参照しながら本発明の実施例2を説明する。図4は本発明の実施例2に係る積層成形品の金型内塗装方法の三次成形工程を示す概略部分断面図である。図4(a)が三次成形工程の微少型開き動作、図4(b)が第1被覆剤注入機からの第1被覆剤の注入、図4(c)が第2被覆剤注入機からの第2被覆剤の注入、図4(d)が金型キャビティ容積の縮小動作(被覆剤拡張・圧縮動作)を示す。尚、実施例1と同様に、図4は、二次成形工程において成形が完了した積層成形品9の一部(図2(d)の要部A)のみ図示したものである。
実施例2における実施例1との基本構成上の相違点はない。ただし、実施例2においては、被覆剤を注入させるための隙間を形成させる微少型開き量が実施例1よりも多いことを説明するため、図面上、矛盾が生じないように、共通金型19及び第2回転金型21の金型分割面を形成する嵌合部の構造をシェアエッジ構造として図示している。これは本実施例2において、共通金型19及び第2回転金型21の構造にシェアエッジ構造が必須であることを示唆したものではない。実施例2における実施例1との相違点は、本発明に係る積層成形品の金型内塗装方法にあり、実施例1において三次成形工程及び四次成形工程の2工程で行っていた積層成形品9の内外面へのハードコート層の形成を三次成形工程の1工程で行う点である。したがって、一次成形体9aと二次成形体9bとから成る積層成形品9を成形する一次成形工程乃至二次成形工程は実施例1と基本的に同じため、その説明は割愛し、図4において実施例1と同じ構成要件については同じ符号を付し、実施例1との相違点についてのみ説明する。
図2(d)に示すように、共通金型19及び第2回転金型21間に形成させた第2金型キャビティ31において、一次成形体9aと二次成形体9bとから成る積層成形品9が成形された後、その冷却固化中の適切なタイミングで、図4(a)に示すように、積層成形品9を共通金型19に保持させた状態で、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により、ダミープレート6及び回転金型部40を共通金型19から、型開閉方向に距離β(ベータ)+γ(ガンマ)だけ微少型開きさせる(三次成形工程/微少型開き)。この距離β+γは、第2回転金型21の金型キャビティ面21c側に、第2被覆剤51aを注入させるのに必要な隙間を形成させるために必要な微少型開き量βと、共通金型19の金型キャビティ面19c側に、第1被覆剤50aを注入させるのに必要な隙間を形成させるために必要な微少型開き量γとを合計したものであり、この微少型開き動作により、積層成形品9及び第2回転金型21間に距離β+γと略同じ隙間を形成させる。言い換えれば、実施例1の三次成形工程及び四次成形工程で注入させる被覆剤容積と略同じだけ、金型キャビティ容積をこの微少型開き動作により拡張させるものである。
次に、図4(b)に示すように、第1被覆剤注入機50から共通金型19の金型キャビティ面19cに配置された図示しない注入ゲートを介して、主に耐スクラッチ性を付与する第1被覆剤50aを所定の圧力で所定量、所定流量で注入させる。先に説明したように、積層成形品9及び共通金型19の金型キャビティ面19c間の略全面には、積層成形品9の冷却固化収縮により微少な隙間が形成されており、第1被覆剤50aの注入のごく初期の段階で、その微少な隙間は第1被覆剤50aで満たされ、第2回転金型21の金型キャビティ面21cに支持されない状態の積層成形品9の略全面に圧力を伝播させることができるため、位置ずれ等を生じさせることなく、積層成形品9を距離γと略同じ距離だけ、第2回転金型21側に移動させる。一方、積層成形品9及び第2回転金型21間に距離βと略同じ隙間が残されることは言うまでもない。
次に、図4(c)に示すように、第2被覆剤注入機51から第2回転金型21の金型キャビティ面21cに配置された図示しない注入ゲートを介して、耐候性及び耐スクラッチ性を付与する第2被覆剤51aを所定の圧力で所定量、所定流量で注入させる。積層成形品9及び第2回転金型21間には、第2被覆剤51aを注入させるのに必要な微少型開き量βと略同じ隙間が形成されているため、実施例1の三次成形工程において注入させた第2被覆剤51aの全量と同じ量を問題なく注入させることができる。
第1被覆剤50a及び第2被覆剤51aの注入後、図4(d)に示すように、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により回転金型部40及びダミープレート6を共通金型19に完全に型閉じさせた後、再度、型締力を付与させて型締状態に移行する(三次成形工程/被覆剤拡張・圧縮動作)。この被覆剤拡張・圧縮動作により、積層成形品9の共通金型19側(車内側)の表面に第1被覆剤50aを均一に拡張・圧縮させ、その後硬化させて第1ハードコート層9cを、積層成形品9の回転金型部40側(車外側)の表面に第2被覆剤51aを均一に拡張・圧縮させ、その後硬化させて第2ハードコート層9dを略同時に形成させる。
このように、本発明の実施例1に係る積層成形品の金型内塗装方法の三次成形工程乃至四次成形工程を、本実施例2の三次成形工程に置き換えて成形工程の1成形サイクルとしても良く、本成形サイクルを繰り返すことにより、被覆膜形成金型を使用せず、その内外面に異なる機能の第1ハードコート層9c及び第2ハードコート層9dを形成させた、一次成形体9aと二次成形体9bとから成る積層成形品9を、微少型開きを除く型開き2回毎に連続して成形することができる。この場合、被覆剤を注入させる隙間を形成させるための微少型開き動作と、ハードコート層を形成させるための被覆剤拡張・圧縮動作とを、実施例1に対してそれぞれ1回ずつ少なくすることができ、成形サイクルを短縮することができる。
また、本実施例2においては、三次成形工程において、共通金型19側からの第1被覆剤50aの注入の後、第2回転金型21側からの第2被覆剤51aの注入を行うものとしたが、この時の微少型開き量を微少距離β(ベータ)+γ(ガンマ)以上とし、この微少型開き動作による金型キャビティ容積の拡張量を、第1被覆剤50a及び第2被覆剤51aの注入容積よりも確実に多くすれば、第1被覆剤50a及び第2被覆剤40の注入を略同時に、あるいは、先に第2回転金型21側からの第2被覆剤51aの注入を行ったとしても、一方の被覆剤の注入が他方の被覆剤の注入の障害(一方の注入圧力による他方の注入抵抗)になることはない。すなわち、これら被覆剤の注入順序を、積層成形品9の冷却固化状態や金型の温度調整能力に応じて、適宜選択することができるだけでなく、これら被覆剤を略同時に注入させて、成形サイクルを更に短縮することができる。
ここで、本発明に係る金型内塗装方法は、本発明に係る金型内塗装用金型及び射出成形装置の、一部の構成要件及び成形工程を変更することにより、積層成形品を成形するための、別の形態を有する射出成形装置でも実施することが可能である。これを、本発明に係る金型内塗装方法の応用例(以下:実施例3)として、図5を参照しながら説明する。図5は実施例3に係る積層成形品の金型内塗装方法の成形工程を示す概略部分断面図である。図5(a)が一次成形工程及び三次成形工程、図5(b)が回転工程、図5(c)が一次成形工程、二次成形工程及び三次成形工程、図5(d)が四次成形工程を示す。尚、実施例1の図2と同様に、図5は成形工程の理解を容易にするために、金型部分(側面図)を中心に、成形工程を順に図示した概略部分断面図であり、成形工程に直接関係ない構成部位は図示していない。また、共通金型19’、ダミープレート6’、第1回転金型20’及び第2回転金型21’のみにハッチングを施し、断面であることを示している。
実施例3に係る金型内塗装用金型、及び、別の形態を有する射出成形装置と、実施例1に係る金型内塗装用金型、及び、射出成形装置1との基本構成上の相違点は、まず、可動盤5に取り付けられるダミープレート6’が成形用金型として構成されている点と、第2射出ユニット18が可動盤5と同じベース上に載置され、型締手段等により可動盤5と共に型開閉方向に移動可能であり、且つ、該ベース上で可動盤5を介してダミープレート6’の背面(可動盤5への取り付け面)に接続可能に配置されている点である(いわゆる、射出ユニットの対向配置)。一方、共通金型19’や共通金型19’が取り付けられる固定盤3、固定盤3及び可動盤5間に配置され、取り付けられた回転金型部40を型開閉方向に直交する回転軸周りに回転可能に支持し、型開閉方向に移動させる回転金型支持機構4は実施例1と同じ基本構成であり、積層成形品を成形するための射出成形装置として公知の形態である。
そして、次の基本構成上の相違点は、第1被覆剤注入機50が共通金型19’ではなく、成形用金型として構成されるダミープレート6’に配置されている点と、第2被覆剤注入機51が第1回転金型20’の金型キャビティ面20’c及び第2回転金型21’の金型キャビティ面21’cに選択的に被覆剤を注入させる点である。また、実施例3における実施例1との金型内塗装方法の相違点は、実施例1において一次成形工程乃至四次成形工程がすべて共通金型19及び回転金型部40間で行われ、微少型開きを除く型開き2回と回転金型部40の回転工程2回とで行われる1成形サイクルが、共通金型19’、回転金型部40及びダミープレート6’間で行われ、微少型開きを除く型開き1回と回転金型部40の回転工程1回とで行われる点である。一次成形工程乃至四次成形工程の個々の成形工程は実施例1で説明した個々の成形工程と基本的に同じため、その説明は割愛し、図5において実施例1と同じ構成要件については同じ符号を付し、実施例1との相違点についてのみ説明する。
まず、図5(a)に示すように、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により、回転金型部40及びダミープレート6’を共通金型19’に型閉じさせた後、型締力を付与させて型締状態に移行する。ここで、実施例1との成形工程の相違から、回転金型部40の第1回転金型20’及び第2回転金型21’は同じ金型キャビティ形状を有しており、この型締状態において、共通金型19’及び第1回転金型20’(又は、第2回転金型21’)間に第1金型キャビティ30’を形成させ、第1射出ユニット17から第1金型キャビティ30’に第2溶融樹脂を射出充填させる(一次成形工程)。実施例1と異なり、この一次成形工程は、透光性を有するガラス代替部(第2溶融樹脂/二次成形体9b)を射出成形するものである。一次成形工程を実施例1と同様に射出プレス成形で行っても良い。一方、第2回転金型21’(又は、第1回転金型20’)及びダミープレート6’間には第2金型キャビティ31’を形成させ、後述するような二次成形工程他を行わせるが、説明を簡単にするため、ここでの説明は割愛する。
2次成形体9bの冷却固化中の適切なタイミングで、2次成形体9bを共通金型19’に保持させた状態で、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により、ダミープレート6’及び回転金型部40を共通金型19’から、型開閉方向に距離β(ベータ)だけ微少型開きさせる(三次成形工程/微少型開き)。この微少型開き動作により積層成形品9及び第1回転金型20’間に形成させた、その距離が略βの隙間に、第2被覆剤注入機51から第1回転金型20’の金型キャビティ面20’cに配置された図示しない注入ゲートを介して、耐候性及び耐スクラッチ性を付与する第2被覆剤51aを所定の圧力で所定量、所定流量で注入させる。
第2被覆剤注入機51からの第2被覆剤51aの注入後、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により回転金型部40及びダミープレート6’を共通金型19’に完全に型閉じさせた後、再度、型締力を付与させて型締状態に移行する(三次成形工程/被覆剤拡張・圧縮動作)。この被覆剤拡張・圧縮動作により、2次成形体9bの第1回転金型20’側(車外側)の表面に第2被覆剤51aを均一に拡張・圧縮させ、その後硬化させて第2ハードコート層9dを形成させる。図5(a)にこれら三次成形工程の微少型開き及び被覆剤拡張・圧縮動作の詳細は図示していないが、実施例1における図3(a)及び図3(b)の第2回転金型21及びその金型キャビティ面21cを、第1回転金型20’及びその金型キャビティ面20’cに読み換えると理解が容易である。また、次の成形サイクルにおいては、第1回転金型20’及びその金型キャビティ面20c’が、後述する回転工程により、第2回転金型21’及びその金型キャビティ面21’cに切り換えられるが、その説明は割愛する。
第2ハードコート層9dの形成後、二次成形体9bを第1回転金型20’に保持させた状態で、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により、ダミープレート6’及び回転金型部40を共通金型19’から型開きさせる。型開き後、図5(b)に示すように、回転金型支持機構4により回転金型部40を回転させ、第2回転金型21’を共通金型19’と対向する位置に、二次成形体9bを保持させた第1回転金型20’をダミープレート6’と対向する位置に移動させる(回転工程)。
回転工程後、図5(c)に示すように、再び、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により、回転金型部40及びダミープレート6’を共通金型19’に型閉じさせた後、型締力を付与させて型締状態に移行する。この型締状態において、二次成形体9bを保持させた第1回転金型20’及びダミープレート6’間に第2金型キャビティ31’を形成させ、第2射出ユニット18から第2金型キャビティ31’に第1溶融樹脂を射出充填させる(二次成形工程)。
実施例1と異なり、この二次成形工程は、透光性を有するガラス代替部(2次成形体9b)の外周部の少なくとも一部になるように、取り付け等のための部位(第1溶融樹脂/一次成形体9a)を射出成形するものであり、一次成形体9aの仕様に好適な樹脂、成形条件が選択されれば良い。第1溶融樹脂としては、一般的には熱可塑性樹脂が選択される。また、この二次成形工程と少なくとも一部を重複させて、あるいは前後に、共通金型19’及び第2回転金型21’間に形成させた第1金型キャビティ30’において、透光性を有するガラス代替部(2次成形体9b)を成形する一次成形工程と、2次成形体9bの第2回転金型21’側(車外側)の表面に第2ハードコート層9dを形成させる三次成形工程とを行わせる。これら一次成形工程及び三次成形工程については既に本実施例3の図5(a)他で説明した成形工程と基本的に同じであるため、説明は割愛する。
共通金型19’及び第2回転金型21’間に形成させた第1金型キャビティ30’において一次成形工程(二次成形体9b)及び三次成形工程(第2ハードコート層9d)が完了し、且つ、第1回転金型20’及びダミープレート6’間に形成させた第2金型キャビティ31’において成形させた一次成形体9aの冷却固化中の適切なタイミングで、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により、ダミープレート6’及び回転金型部40を共通金型19’から、型開閉方向に距離γ(ガンマ)だけ微少型開きさせる(四次成形工程/微少型開き)。この微少型開き動作により積層成形品9及びダミープレート6’間に形成させた、その距離が略γの隙間に、第1被覆剤注入機50からダミープレート6’の金型キャビティ面6’cに配置された図示しない注入ゲートを介して、主に耐スクラッチ性を付与する第1被覆剤50aを所定の圧力で所定量、所定流量で注入させる。
第1被覆剤注入機50からの第1被覆剤50aの注入後、図5(d)に示すように、図示しない型締手段及び回転金型支持機構4により回転金型部40及びダミープレート6’を共通金型19’に完全に型閉じさせた後、再度、型締力を付与させて型締状態に移行する(四次成形工程/被覆剤拡張・圧縮動作)。この被覆剤拡張・圧縮動作により、積層成形品9のダミープレート6’側(車内側)の表面に第1被覆剤50aを均一に拡張・圧縮させ、その後硬化させて第1ハードコート層9cを形成させる。このとき、第1被覆剤50aを注入させるべき隙間が、積層成形品9及びダミープレート6’間ではなく、第1回転金型20’及び積層成形品9間の略全面に形成される場合であっても、第1被覆剤50aが注入可能なことは先に説明したとおりである。
図5(c)及び図5(d)にこれら四次成形工程の微少型開き及び被覆剤拡張・圧縮動作の詳細は図示していないが、実施例1における図3(c)及び図3(d)の第2回転金型21及びその金型キャビティ面21c、そして、共通金型19及びその金型キャビティ面19cを、第1回転金型20’及びその金型キャビティ面20’c、そして、ダミープレート6’及びその金型キャビティ面6’cに読み換え、更に、読み替えたダミープレート6’側の図示しない型締手段及び第1回転金型20’(回転金型部40)の回転金型支持機構4により型開閉動作及び型締めが行われると考えれば理解が容易である。また、次の成形サイクルにおいては、第1回転金型20’及びその金型キャビティ面20c’が、先に説明した回転工程により、第2回転金型21’及びその金型キャビティ面21’cに切り換えられるが、その説明は割愛する。
第1ハードコート層9cの硬化後、図示はしていないが、積層成形品9をダミープレート6’及び第1回転金型20’のいずれか一方に保持させた状態で、型締手段及び回転金型支持機構4により、ダミープレート6’及び回転金型部40を共通金型19’から型開きさせ、製品取り出し手段により積層成形品9を射出成形装置外へ搬出させる(製品取り出し工程)。製品取り出し工程後、回転金型部40をその回転が可能な位置で回転させ、何も保持させていない第1回転金型20’を共通金型19’と対向する位置に、前の成形サイクルで成形させた二次成形体9bを保持させた第2回転金型21’をダミープレート6’と対向する位置に移動させた後、再び、型締状態に移行させれば、図5(a)に示す型締め状態となる(回転工程)。
このように、図5(a)から図5(d)の成形工程が、実施例3に係る一次成形工程乃至四次成形工程を含む積層成形品の金型内塗装方法の成形工程の1成形サイクルとなり、本成形サイクルを繰り返すことにより、被覆膜形成金型を使用せず、その内外面に異なる機能を有する第1ハードコート層9c及び第2ハードコート層9dを形成させた、一次成形体9aと二次成形体9bとから成る積層成形品9を、微少型開きを除く型開き1回毎に連続して成形することができる。
本発明は、上記の実施例1及び実施例2の中で説明した様々な形態を含め、上記の実施の形態に限定されることなく色々な形で実施できる。例えば、実施例1及び実施例2においては、微少型開き動作により被覆剤を注入させる隙間を形成させるものとしたが、部分的な被覆膜を形成させる場合や、同じ面に異なる複数の被覆膜を形成させる場合は、共通金型19や回転金型部40に可動中子等の金型内摺動部を設け、この摺動部により任意の隙間を形成させる方が好適な場合も考えられる。本発明は、そのような方法によって被覆剤を注入させる隙間を形成させる場合であっても、同様の効果を奏するものである。
また、実施例1乃至実施例3において、成形対象を、その内外面に異なる機能を有する第1ハードコート層及び第2ハードコート層を形成させたガラス代替樹脂窓としたが、このような、その内外面に異なる機能を有するハードコート層を形成させた積層成形品は、近年、軽量化や組み立て工数の削減を主目的に多くの分野で採用され始めている。自動車用のガラス代替樹脂窓以外の成形対象としては、同じく自動車のヘッドランプカバーやリアコンビネーションカバー(表面は高硬度+耐候性、裏面は結露防止)や、テレビやパソコン、携帯電話やその他携帯電子機器の画面に用いられる液晶パネル(表面は高硬度、裏面は乱反射抑制)等があり、本発明はこれらの成形対象であっても同様の効果を奏するものであることは言うまでもない。