JP5703087B2 - 色素増感太陽電池用光電極 - Google Patents

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Description

本発明は、高い光電交換効率を実現することが可能な色素増感太陽電池用光電極、及び、該色素増感太陽電池用光電極の製造方法に関する。
近年、環境問題の観点から、光エネルギーを電気エネルギーに変換することが可能な太陽電池が注目を集めている。現在実用化されている太陽電池の主流は単結晶、多結晶及び非結晶シリコンからなるシリコン系太陽電池であるが、これらは材料コストや製造プロセスにおけるエネルギーコストが高く、太陽電池の普及の大きな障害となっていた。
これに対して、色素増感太陽電池は、製造コストを低く抑えられることから、特に注目を集めている。また、色素増感太陽電池は、製造コストの低さや低環境負荷以外にも、カラフル性、軽量フレキシブル性、シースルー性等の既存シリコン太陽電池では実現が難しい付加価値を有している点でも優れている。
色素増感太陽電池は、増感色素を担持した酸化物半導体層及び透明導電層を有する光電極と、対向電極と、これらの電極の間に挟まれた電解質層とから構成されており、光電極に光が照射されると、増感色素が励起状態となって電子が放出され、この電子が酸化物半導体層を介して透明電極層に達することにより電気エネルギーが取り出される。
一方で、色素増感太陽電池は、製造コストが低いものの、光電変換効率が低いことが実用化の障害となっている。これに対して、色素増感太陽電池の受光面積を拡大し、電池の出力を大きくさせることが行われていたが、単に大面積化するだけでは、電池の内部抵抗の増大により電力の損失が生じ、結果的に変換効率の低下や形状因子(フィルファクタ(FF))が小さくなるという問題があった。
色素増感太陽電池では、増感色素の吸着量や、電解質中での電荷の移動度により光電変換効率が変化する。従って、光電変換効率を上げるためには、酸化物半導体層の空隙率を向上させることで表面積を大きくし、電解液をより移動しやすくする必要がある。
しかしながら、近年は電解液として、イオン液体等の高粘度のものが使用されることが多くなっており、このような場合は特に電解液の移動性が悪いものとなっていた。
これに対して、特許文献1には、色素増感型太陽電池等に使用される多孔質構造体の製造方法として、多孔質構造体形成粒子、増粘剤、添加剤(樹脂粒子等)及び溶媒等を含有する混合物を調製した後、基体上に付着させ、増粘剤及び添加剤を除去することにより空孔を形成する方法が開示されている。特許文献1では、添加剤の形状や大きさを適宜選択することにより、空孔の形状や大きさを制御することができるとしている。
しかしながら、特許文献1の方法では、添加剤が凝集することで、得られる多孔質構造体の空孔が不均一になるという課題が新たに生じていた。空孔が不均一になると、多孔質構造体に応力が掛かることで、クラック等を生じたり、効率的な光閉じ込め効果が得られず、光電変換効率が低下したりするという問題があった。
特開2006−324011号公報
本発明は、クラック等の不具合が発生せず、高い変換効率を有する色素増感型太陽電池が得られる色素増感太陽電池用光電極、及び、該色素増感太陽電池用光電極の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、多孔質金属酸化物半導体層と前記多孔質金属酸化物半導体層に吸着された増感色素と有する色素増感太陽電池用光電極であって、前記多孔質金属酸化物半導体層は、空隙率が40〜90体積%、空孔の平均短径が100〜3000nmであり、かつ、隣接して連続孔を形成する空孔の割合が全空孔の10%以下であり、前記多孔質金属酸化物半導体層の空孔は、加熱消滅性樹脂粒子が消滅することにより得られたものであり、前記加熱消滅性樹脂粒子は、架橋性モノマーを0.5重量%以上含有する重合性モノマーを重合してなる重合体からなり、SP値が9(cal/cm) 1/2 以上の溶剤中で測定したゼータ電位の絶対値が20mV以上である色素増感太陽電池用光電極である。
以下に本発明を詳述する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、色素増感太陽電池用光電極において、多孔質金属酸化物半導体層の空隙率及び空孔の平均短径を所定の範囲内として、かつ、隣接して連続孔を形成する空孔の割合を少なくすることで、多孔質金属酸化物半導体層の強度を向上させ、クラック等の発生を防止できるとともに、空孔の形状を制御することで、高い光電変換効率を有する色素増感太陽電池を製造することが可能な色素増感太陽電池用光電極が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
上記多孔質金属酸化物半導体層は、空隙率の下限が40体積%、上限が90体積%である。上記空隙率が40体積%未満であると、増感色素の吸着量が低下することのほか、金属酸化物半導体層が緻密になりすぎて強度が弱くなることがあり、90体積%を超えると、多孔質金属酸化物半導体層の導電性が下がることのほか、金属酸化物半導体層が疎になりすぎて強度が弱くなることがある。好ましい下限は55体積%、好ましい上限は80体積%である。
なお、本明細書において空隙率とは、多孔質金属酸化物半導体層全体積中に占める中空部体積を百分率(%)で表示したものであり、例えば、ガス吸着法細孔分布測定装置アサップ2020(島津製作所社製)を用いて封入窒素圧力0〜760mmHgの条件等にて測定することができる。
上記多孔質金属酸化物半導体層は、空孔の平均短径の下限が100nm、上限が3000nmである。
上記平均短径を上記範囲内とすることで、多孔質金属酸化物半導体層の強度や光拡散効果を確保しつつ、増感色素や電解質を注入する際の通り道となってその保持量を向上させることができ、その結果、得られる色素増感太陽電池が高い光電交換効率を実現することができる。上記空孔の平均短径が100nm未満であると、充分な強度や光拡散効果を得ることができないことがあり、3000nmを超えると応力が集中してやはり強度が低下することがある。好ましい下限は150nm、好ましい上限は1500nmである。
なお、上記空孔の平均短径は、例えば、多孔質金属酸化物半導体層の厚み方向の切断面を撮影したSEM写真を画像解析することで、無作為に抽出した任意個数の空孔の短径を測定した後、その平均値を求めることで測定することができる。
上記多孔質金属酸化物半導体層は、空孔の短径のCv値の好ましい上限が30%である。上記短径のCv値が30%を超えると、多孔質金属酸化物半導体層の空孔が均一にならず、意図した光拡散効果が得られないため色素増感太陽電池の光電変換効率が低下することがある。上記短径のCv値のより好ましい上限は、25%である。
なお、上記短径のCv値は、平均短径mと標準偏差σから、下記式(1)により算出することができる。
Cv=σ/m×100(%) (1)
本発明の色素増感太陽電池用光電極を構成する多孔質金属酸化物半導体層は、隣接して連続孔を形成する空孔の割合が全空孔の10%以下である。
このような空孔とすることで、光学散乱を助長可能な空孔が形成可能となり、光閉じ込め効果と、イオン拡散の促進により、更に高い光電変換効率を実現することができる。
また、空孔が均一に分布した独立孔を多く形成することにより、多孔質金属酸化物半導体層がハニカム構造を形成し、内部応力や歪を緩和して多孔質に柔軟性と強度を付与することができる。これにより厚塗りを行ってもクラック無しに半導体層を形成することができる。逆に隣接した連続孔が多い場合は空孔全体の巨大化を招き、応力が集中してクラックの原因となることがある。
上記連続孔を形成する空孔の割合が10%を超えると、光電変換効率が低下する他、多孔質金属酸化物半導体層の強度が低下してクラックが入ることがある。
上記連続孔を形成する空孔の割合の好ましい上限は5%である。
なお、本願において、「隣接して連続孔を形成する空孔」とは、独立孔である空孔が2つ以上連なった空孔のことを言い、近接する空孔同士の一部が互いに貫通している状態を意味する。
また、「連続孔を形成する空孔の割合」は、例えば、多孔質金属酸化物半導体層の厚み方向の切断面を撮影したSEM写真を画像解析することで、無作為に抽出した任意個数の空孔について、連続孔を形成している空孔の割合を計数することにより測定することができる。
上記多孔質金属酸化物半導体層の空孔は、加熱消滅性樹脂粒子が消滅することにより得られたものであることが好ましい。このような空孔は、空孔の平均短径、空孔の形状、空孔の分散状態を制御することが容易であることから好ましい。
また、このようにして得られることで、上記多孔質金属酸化物半導体層は、焼結によって生まれる金属酸化物粒子同士の間隙のほかに、加熱消滅性樹脂粒子の消滅に起因する平均短径が100nm以上の空孔を多く有することとなる。これにより、従来の多孔質金属酸化物半導体層に比べて空隙率を高いものとすることができる。
上記多孔質金属酸化物半導体層の厚みの好ましい下限は1μm、好ましい上限は50μmである。上記厚みが1μm未満であると、半導体の量が少なく光電変換が不充分となり、50μmを超えると、色素増感太陽電池セル自体にヒビ割れが生じてしまうことがある。
上記多孔質金属酸化物半導体層は、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ガリウム及び酸化イットリウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属酸化物、又は、前記金属酸化物を含有する複合酸化物からなることが好ましい。これらのなかでは、バンドギャップが広く、資源も比較的に豊富にあるという理由から、酸化チタン、酸化亜鉛等が好ましい。
上記多孔質金属酸化物半導体層は、金属酸化物半導体粒子からなるものであってもよい。特に、金属酸化物半導体粒子が酸化チタン粒子である場合は、例えば、通常ルチル型の酸化チタン粒子、アナターゼ型の酸化チタン粒子、ブルッカイト型の酸化チタン粒子及びこれら結晶性酸化チタンを修飾した酸化チタン粒子等を用いることができる。
上記多孔質金属酸化物半導体層には、増感色素が吸着している。
上記増感色素としては、ルテニウム−トリス、ルテニウム−ビス型のルテニウム色素、フタロシアニンやポルフィリン、シアニジン色素、メロシアニン色素、ローダミン色素、キサンテン系色素、トリフェニルメタン色素等の有機色素が挙げられる。
本発明の色素増感太陽電池用光電極において、上記多孔質金属酸化物半導体層及び増感色素以外の透明基板、透明導電層等の部材については、従来公知のものを使用することができる。
上記透明基板としては、透明な基板であれば特に限定されないが、珪酸塩ガラス等のガラス基板等が挙げられる。また、上記ガラス基板は、化学的、熱的に強化させたものを用いてもよい。更に、光透過性を確保できれば、種々のプラスチック基板等を使用してもよい。
上記透明基板の厚さは、0.1〜10mmが好ましく、0.3〜5mmがより好ましい。
上記透明導電層としては、InやSnOの導電性金属酸化物からなる層や金属等の導電性材料からなる層が挙げられる。上記導電性金属酸化物としては、例えば、In:Sn(ITO)、SnO:Sb、SnO:F、ZnO:Al、ZnO:F、CdSnO等が挙げられる。
本発明の色素増感太陽電池用光電極は、例えば、金属酸化物半導体粒子、加熱消滅性樹脂粒子及び有機溶剤を含有する金属酸化物半導体ペーストを調製する工程、前記金属酸化物半導体ペーストを塗工する工程、前記金属酸化物半導体ペーストを乾燥し、焼成することにより、多孔質金属酸化物半導体層を形成する工程、及び、前記多孔質金属酸化物半導体層に増感色素を吸着させる工程を有し、前記金属酸化物半導体粒子は、1次結晶粒子径が100nm以下であり、前記加熱消滅性樹脂粒子は、SP値が9(cal/cm)1/2以上の溶剤中で測定したゼータ電位の絶対値が20mV以上であり、平均粒子径が100〜3000nmであり、かつ、前記金属酸化物半導体粒子に対する前記加熱消滅性樹脂粒子の添加量は、5〜100重量%である方法によって製造することができる。このような色素増感太陽電池用光電極の製造方法もまた本発明の1つである。
本発明の色素増感太陽電池用光電極の製造方法は、金属酸化物半導体粒子、加熱消滅性樹脂粒子及び有機溶剤を含有する金属酸化物半導体ペーストを調製する工程を有する。
上記金属酸化物半導体粒子としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ガリウム及び酸化イットリウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属酸化物、又は、前記金属酸化物を含有する複合酸化物からなるものを用いることが好ましい。
上記金属酸化物半導体粒子の粒子径としては、1次結晶粒子径の上限が100nmである。上記範囲内とすることで、増感色素が吸着する表面積が拡大し、光エネルギーの吸収能力を高めることができる。好ましい下限は3nm、好ましい上限は50nmである。また、粒子径分布の異なる2種類以上の微粒子を混合してもよく、入射光を散乱させて光捕獲率を向上させる目的で、粒径の大きな、例えば1次結晶粒子径400nm程度の金属酸化物半導体粒子を混合してもよい。なお、上記1次結晶粒子径は、SEMにより測定することができる。
上記加熱消滅性樹脂粒子としては、酸化チタン等の金属酸化物半導体が焼結し始める500℃より低温にて分解・消滅するポリマー樹脂から構成される粒子であれば特に限定されず、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオキシアルキレン樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル樹脂などを含有する粒子が挙げられる。この中でも、酸素原子を含む樹脂からなる粒子が好ましく、ポリオキシアルキレン樹脂を含有する粒子が特に好ましい。
ポリ(メタ)アクリレート樹脂等上記酸素原子を含む樹脂は、所定熱が加えられると、燃焼反応を伴って分解消滅し、優れた加熱消滅性を発揮する。
また、上記ポリオキシアルキレン樹脂は、所定の温度に加熱することにより、低分子量の炭化水素、エーテル等に分解された後、燃焼反応や蒸発等の相変化によって消滅し、極めて優れた加熱消滅性を発揮する。
上記ポリオキシアルキレン樹脂としては特に限定されないが、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレン又はポリオキシテトラメチレンを含有することが好ましい。これらのポリオキシアルキレン樹脂を含有しない場合、所定の加熱消滅性や粒子強度が得られないことがある。なかでも、ポリオキシプロピレンがより好適である。なお、適度な加熱消滅性及び粒子強度を得るためには、上記加熱消滅性樹脂粒子に含有されるポリオキシアルキレン樹脂のうち、5重量%以上がポリオキシプロピレンであることが好ましい。また、ポリオキシエチレンは、エチレングリコールを含むものとする。
上記ポリオキシアルキレン樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、MSポリマーS−203、S−303、S−903(以上、カネカ社製)、サイリルSAT−200、MA−403、MA−447(以上、カネカ社製)、エピオンEP103S、EP303S、EP505S(以上、カネカ社製)、エクセスターESS−2410、ESS−2420、ESS−3630(以上、旭硝子社製)等が挙げられる。
上記ポリオキシアルキレン樹脂の数平均分子量としては特に限定されないが、数平均分子量の好ましい下限が300、好ましい上限が100万である。上記数平均分子量が300未満であると、高い加熱消滅性を実現できないことがあり、100万を超えると、高い粒子強度を実現できないことがある。
上記加熱消滅性樹脂粒子において、ポリオキシアルキレン樹脂の含有量の好ましい下限は5重量%である。5重量%未満であると、加熱消滅性を充分に実現できないことがある。
上記加熱消滅性樹脂粒子は、架橋性モノマーを含有する重合性モノマーを重合してなる重合体を含有することが好ましい。
上記架橋性モノマーを含有することによって、上記加熱消滅性樹脂粒子の圧縮強度を向上させることができる。また、上記架橋架橋性モノマーを含有することによって、加熱消滅性樹脂粒子を有機溶剤に膨潤しないものとすることができる。
上記架橋性モノマーとしては特に限定されず、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアクリル系多官能性モノマーや、ジビニルベンゼン、後述する官能基を2個以上もつマクロモノマー等が挙げられる。
上記架橋性モノマーを含有する重合性モノマーにおける上記架橋性モノマーの含有量は、0.5重量%以上であることが好ましい。これにより、有機溶剤への膨潤性を更に低減することができる。より好ましくは1〜30重量%である。
上記加熱消滅性樹脂粒子は、更に、アクリルモノマー重合体を含有することが好ましい。上記アクリルモノマー重合体は、解重合しやすく熱分解性に優れており、特にポリオキシアルキレン樹脂と共存することにより、更に分解性を向上させることができる。
上記アクリルモノマー重合体としては特に限定されず、例えば、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル等の重合体が挙げられる。
また、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のアクリル系多官能性モノマーの重合体が好適に用いられる。
上記加熱消滅性樹脂粒子は、SP値が9(cal/cm)1/2以上の溶剤中で測定したゼータ電位の絶対値が20mV以上である。上記ゼータ電位の絶対値が20mV以上を示す状態で金属酸化物半導体粒子及び有機溶剤と混合され、金属酸化物半導体ペーストが調製されることにより、金属酸化物半導体粒子と加熱消滅性樹脂粒子が、あるいは加熱消滅性樹脂粒子同士が、有機溶媒中で互いに電気的に反発し合い、金属酸化物半導体ペースト中で加熱消滅性樹脂粒子が凝集することなく、分散状態を保つことができる。上記加熱消滅性樹脂粒子の分散性が保たれた金属酸化物半導体ペーストを焼結することにより、空孔が均一に分布した独立孔を有する多孔質金属酸化物半導体層が得られることが本発明の特徴である。
樹脂粒子を用いて多孔質金属酸化物半導体層に空孔形成する方法はこれまでも報告されているが、一次結晶粒子径が100nm以下の金属酸化物半導体粒子を用いる場合、その比表面積が極めて大きいため、電気的に中性である乾燥粉体状態の樹脂粒子を用いると、金属酸化物半導体粒子と樹脂粒子が、あるいは樹脂粒子同士が互いに金属酸化物半導体ペースト中で凝集し、これを焼結しても空孔が均一に分布した独立孔を有する多孔質金属酸化物半導体層を得ることはできなかった。
上記加熱消滅性樹脂粒子のゼータ電位の絶対値が20mVに満たない場合、粒子間の反発力が小さいため、乾燥粉体を添加した場合と同様にペースト中で加熱消滅性樹脂粒子の凝集が起こる。上記ゼータ電位の絶対値は、30mV以上であることがより好ましい。
また、金属酸化物半導体粒子と加熱消滅性樹脂粒子が電気的に反発するためには、双方電位の正負が同じである必要がある。
なお、上記ゼータ電位は、ゼータ電位計又は動的光散乱光度計によって測定することができる。
また、上記SP値が9(cal/cm)1/2以上の溶剤としては、例えば、水(SP値=23.4(cal/cm)1/2、出典:ポリマーハンドブック3rdエディション)、メタノール(以下同14.5)、エタノール(12.7)、プロパノール(11.5)、ブタノール(11.4)、ジメチルホルムアミド(12.1)、ジメチルスルホキシド(14.5)、メチルエチルケトン(9.3)、アセトン(9.9)等が用いられる。
上記加熱消滅性樹脂粒子は、上記有機溶剤に24時間浸漬させた場合の膨潤度が1.5倍以下である。上記膨潤度を1.5倍以下とすることでペースト中での粒子強度が保たれ、空孔を形成する機能を発現する。
上記膨潤度が1.5倍を超えると、ペースト中での樹脂粒子強度が低下し、金属酸化物半導体粒子と混合した際、剪断によって樹脂粒子が破壊されることがある。
上記膨潤度は1.2倍以下であることが好ましい。
なお、上記膨潤度は、計量した試料を所定の有機溶剤に添加し、24時間静置後、最初に加えた試料の重量に対する試料に取り込まれた有機溶剤の重量の割合を算出することにより測定することができる。
また、上記有機溶剤とは、金属酸化物半導体ペーストを作製する際に使用される有機溶剤のことをいう。
上記加熱消滅性樹脂粒子は、100〜350℃の所定の温度に加熱することにより、1時間以内に90重量%以上が消滅することが好ましい。
上記加熱消滅性樹脂粒子は、低温領域であっても極めて優れた分解性を示す。90重量%以上が消滅に要する時間が1時間を超えると、多孔質樹脂フィルムの製造に用いる場合、多孔質樹脂フィルムの製造効率が低下することがある。1時間以内に消滅する部分が90重量%未満であると、発熱量を減少し、変形を抑制する効果が不充分となることがある。
上記加熱消滅性樹脂粒子の平均粒子径は、下限が100nm、上限が3000nmである。上記平均粒子径が100nm未満であると、多孔質金属酸化物半導体層の光閉じ込め効果が得られず変換効率が低下したり、ハニカム構造が形成できず強度が低下したりすることがあり、3000nmを超えると、得られる多孔質金属酸化物半導体層の強度が低下することがある。好ましい下限は150nm、好ましい上限は1500nmである。
上記金属酸化物半導体ペーストにおける上記加熱消滅性樹脂粒子の添加量の下限は、上記金属酸化物半導体粒子に対して5重量%、上限は100重量%である。上記添加量が5重量%未満であると、光閉じ込め効果が得られず変換効率が低下したり、ハニカム構造が形成できず強度が低下したりする。100重量%を超えると、得られる多孔質金属酸化物半導体層の強度が低下する。好ましい下限は10重量%、好ましい上限は60重量%である。
上記加熱消滅性樹脂粒子の製造方法としては特に限定されず、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法、ソープフリー重合法、ミニエマルジョン重合法等の従来公知の重合方法を用いて重合する方法等が挙げられる。
なかでも、ポリオキシアルキレン樹脂を含有する粒子の製造方法としては、ポリオキシアルキレンマクロモノマー又はポリオキシアルキレンマクロモノマーと他の重合性モノマーとの混合モノマーを重合する工程を有する方法が好ましい。なお、本明細書において、マクロモノマーとは、分子末端にビニル基等の重合可能な官能基を有する高分子量の線状分子のことをいい、ポリオキシアルキレンマクロモノマーとは、線状部分がポリオキシアルキレンからなるマクロモノマーのことをいう。
また、上記加熱消滅性樹脂粒子を重合する際、モノマーに分解促進剤が添加されてもよい。
上記金属酸化物半導体ペーストは、通常バインダー樹脂を含有する。上記バインダー樹脂として、例えば、エチルセルロース等のセルロース系化合物、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリエチレングリコール、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリ乳酸等が挙げられる。
上記金属酸化物半導体ペーストは、有機溶剤を含有する。上記有機溶剤としては極性が高いものが好ましく、例えば、α−テレピネオール、γ−テレピネオール等のテルペン系溶剤、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤、上記アルコール系溶媒/炭化水素等の混合溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン等のへテロ化合物、水等が挙げられる。
上記金属酸化物半導体ペーストを調製する方法としては、上記金属酸化物半導体粒子、加熱消滅性樹脂粒子、バインダー樹脂及び有機溶剤を、例えば、2本ロールミル、3本ロールミル、ビーズミル、ボールミル、ディスパー、プラネタリーミキサー、自転公転式攪拌装置、ニーダー、押し出し機、ミックスローター、スターラー等を用いて混合する方法等が挙げられる。
上記金属酸化物半導体ペーストを調製する工程においては、上記加熱消滅性樹脂粒子をSP値が9(cal/cm)1/2値以上の溶媒に分散させた状態で添加することが好ましい。このように、予め高極性の溶剤に分散させておくことによって、容易に加熱消滅性樹脂粒子と金属酸化物半導体粒子を均一に混合させることができる。このような効果は金属酸化物半導体粒子がSP値の大きい溶媒中で安定に分散することに起因している。
本発明の色素増感太陽電池用光電極の製造方法は、金属酸化物半導体ペーストを塗工する工程を有する。
上記金属酸化物半導体ペーストを塗工する方法としては特に限定されないが、上記加熱消滅性樹脂粒子の形状を維持したまま塗工できることから、スクリーン印刷法を用いることが好ましい。
上記金属酸化物半導体ペーストを塗工する工程は、一般的に透明導電層を形成した透明基板の該透明導電層上に塗工することによって行う。
上記スクリーン印刷工程におけるスクリーン版の目開きの大きさ、スキージアタック角、スキージ速度、スキージ押圧力等については、適宜設定することが好ましい。
本発明の色素増感太陽電池用光電極の製造方法は、金属酸化物半導体ペーストを乾燥し、焼成することにより、多孔質金属酸化物半導体層を形成する工程を有する。
上記金属酸化物半導体ペーストの乾燥及び焼成は、塗工する基板の種類等により、温度、時間、雰囲気等を適宜調整することができる。例えば、大気下又は不活性ガス雰囲気下、50〜800℃程度の範囲内で、10秒〜12時間程度行うことが好ましい。また、乾燥及び焼成は、単一の温度で1回又は温度を変化させて2回以上行ってもよい。
本発明の色素増感太陽電池用光電極の製造方法は、上記多孔質金属酸化物半導体層に増感色素を吸着させる工程を行う。
上記増感色素を吸着する方法としては、例えば、増感色素を含むアルコール溶液に、上記多孔質金属酸化物半導体層が形成された基板を浸漬した後、アルコールを乾燥除去する方法等が挙げられる。
このようにして得られた色素増感太陽電池用光電極は、対向電極と対向させて設置し、これらの電極の間に電解質層を形成することで、色素増感太陽電池セルを製造することができる。このようにして得られた色素増感太陽電池は、高い光電変換効率を達成することができる。
本発明によれば、高い光電交換効率を実現することが可能な色素増感太陽電池用光電極、及び、該色素増感太陽電池用光電極の製造方法を提供できる。
実施例1で得られた色素増感太陽電池用光電極の多孔質金属酸化物半導体層の厚み方向の切断面を撮影したSEM写真である。 比較例1で得られた色素増感太陽電池用光電極の多孔質金属酸化物半導体層の厚み方向の切断面を撮影したSEM写真である。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
(加熱消滅性樹脂粒子の作製)
モノマー成分として、ポリオキシプロピレンジメタクリレート20g(ポリオキシプロピレンユニット数=約4)、メタクリル酸イソブチル80gを攪拌混合し、モノマー溶液を調製した。得られたモノマー溶液の全量を、乳化剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテル1重量%を含む水溶液100gに加え、攪拌分散装置を用いて攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた2リットルの重合器にイオン交換水800gを仕込んだ後、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。重合器を昇温して60℃で一定となったことを確認した後、重合開始剤として過硫酸アンモニウム1gを添加し15分間攪拌した。この重合器内に、上記乳化懸濁液の2重量%(4g)を一括して投入し、シード粒子の重合を開始した。約15分でシード粒子の重合が完了したのを確認した後、残りの乳化懸濁液を2時間かけて滴下し、更に1時間熟成して重合を完了した。重合器を室温まで冷却して加熱消滅性樹脂粒子のエマルジョンを得た。
得られた加熱消滅性樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ485nmであった。なお、加熱消滅性樹脂粒子の平均粒子径(体積平均粒子径)は、動的光散乱式光度計(Particle Sizing Systems社製、「NICOMP model 380 ZLS−S」)を用いることにより測定した。
また、得られた加熱消滅性樹脂粒子エマルジョンをエタノールで希釈し、同上の動的光散乱計でゼータ電位を測定したところ、−41mVであった。
更に、得られた加熱消滅性樹脂粒子エマルジョンを、遠心分離機を用いて樹脂粒子を沈降させた後、溶媒をメチルエチルケトンに置換し、加熱消滅性樹脂粒子のメチルエチルケトン(MEK)分散液(樹脂固形分濃度20重量%)を得た。なお、加熱消滅性樹脂粒子のMEK中での膨潤度を、下記の方法で測定したところ、1.05倍であった。
[膨潤度測定]
加熱消滅性樹脂粒子1gを遠沈管に計量し、MEK30gを添加する。24時間静置後、遠心分離にて粒子を沈降させて上澄みの溶媒を捨てた。膨潤した加熱消滅性樹脂粒子の重量を計量し、下記式(2)にて膨潤度を求めた。
膨潤度(倍)=(膨潤した加熱消滅性樹脂粒子の重量/最初に加えた加熱消滅性樹脂粒子の重量) (2)
(色素増感太陽電池用光電極の作製)
酸化チタン粉末(1次結晶粒子径15nm)20重量部、エチルセルロース(和光純薬工業社製、EC100)10重量部、テルピネオール70重量部、及び、得られた加熱消滅性樹脂粒子のMEK分散液(樹脂固形分濃度20重量%)15重量部を脱泡しながら混合した後、減圧してMEKを蒸発させた。更に3本ロールを用いて均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。
その後、FTOを積層したガラス基板に、得られた酸化チタンペーストをスクリーン印刷法によって塗工した。次いで、150℃で30分間乾燥した後、500℃で30分間焼成することで酸化チタンからなる多孔質金属酸化物半導体層を作製した(膜厚:5μm)。更に、多孔質金属酸化物半導体層を形成したガラス基板を0.3mMのルテニウム色素溶液中に25℃で1日間にわたり浸漬することで、増感色素を吸着させて、洗浄、乾燥することにより、色素増感太陽電池用光電極を作製した。
(実施例2)
(加熱消滅性樹脂粒子の作製)
モノマー成分として、トリメチルプロパントリメタクリレート5g、メタクリル酸メチル95g、重合開始剤としてイソブチロニトリル1gを攪拌混合し、モノマー溶液を調製した。得られたモノマー溶液の全量を、ポリビニルアルコール(PVA)1重量%と亜硝酸ナトリウム0.02重量%との水溶液900重量部に加え、ホモジナイザーを用いて10000rpmにて1分間攪拌し、乳化懸濁液を得た。
次に、攪拌機、ジャケット、還流冷却機及び温度計を備えた2リットルの重合器を用い、重合器内を減圧し、容器内の脱酸素を行った後、窒素ガスにより圧力を大気圧まで戻し、重合器内部を窒素雰囲気とした。この重合器内に、得られた乳化懸濁液の全量を一括して投入し、重合器を60℃まで昇温して重合を開始した。4時間重合した後、重合器を室温まで冷却して加熱消滅性樹脂粒子のエマルジョンを得た。
得られた加熱消滅性樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ1340nmであった。また、得られた加熱消滅性樹脂粒子エマルジョンをエタノールで希釈し、ゼータ電位を測定したところ、−28mVであった。
更に、得られた加熱消滅性樹脂粒子エマルジョンを、遠心分離機を用いて樹脂粒子を沈降させた後、溶媒をエタノールに置換し、加熱消滅性樹脂粒子のエタノール分散液(樹脂固形分濃度20重量%)を得た。なお、加熱消滅性樹脂粒子の膨潤度(エタノール中)を、測定したところ、1.06倍であった。
(色素増感太陽電池用光電極の作製)
得られた加熱消滅性樹脂粒子のエタノール分散液(樹脂固形分濃度20重量%)を用いた以外は、実施例1と同様に多孔質金属酸化物半導体層(膜厚:5μm)及び色素増感太陽電池用光電極を作製した。
(実施例3)
実施例1の(色素増感太陽電池用光電極の作製)において、酸化チタン粉末(1次結晶粒子径15nm)20重量部、エチルセルロース(和光純薬工業社製、EC100)10重量部、テルピネオール70重量部に対し、加熱消滅性樹脂粒子のMEK分散液(樹脂固形分濃度20重量%)を80重量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質金属酸化物半導体層(膜厚:5μm)及び色素増感太陽電池用光電極を作製した。
(実施例4)
実施例1の(色素増感太陽電池用光電極の作製)において、酸化チタン粉末(1次結晶粒子径15nm)20重量部、エチルセルロース(和光純薬工業社製、EC100)10重量部、テルピネオール70重量部に対し、加熱消滅性樹脂粒子のMEK分散液(樹脂固形分濃度20重量%)を8重量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質金属酸化物半導体層(膜厚:5μm)及び色素増感太陽電池用光電極を作製した。
(実施例5)
実施例1の(色素増感太陽電池用光電極の作製)において、酸化チタン粉末(1次結晶粒子径15nm)20重量部に代えて、酸化亜鉛粉末(1次結晶粒子径12nm)20重量部を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、多孔質金属酸化物半導体層(膜厚:7μm)及び色素増感太陽電池用光電極を作製した。
(比較例1)
加熱消滅性樹脂粒子として、ポリスチレンパウダーを用いた。
このポリスチレンパウダーについて、無作為に抽出した100個の粒子径を測定し、その平均粒子径を求めたところ、510nmであった。また、このポリスチレンパウダーをエタノールで希釈しようとしたところ、一部が凝集したままであった。更に、このポリスチレンパウダーのエタノール懸濁液について、動的光散乱計を用いてゼータ電位を測定したところ、−1mVであった。
(色素増感太陽電池用光電極の作製)
酸化チタン粉末(1次結晶粒子径15nm)20重量部、エチルセルロース(和光純薬工業社製、EC100)10重量部、テルピネオール70重量部、及び、ポリスチレンパウダー3重量部を脱泡しながら混合した後、更に3本ロールを用いて均一に混合することにより酸化チタンペーストを調製した。その後、実施例1と同様の手順で多孔質金属酸化物半導体層(膜厚:6μm)及び色素増感太陽電池用光電極を作製した。
(比較例2)
比較例1の(色素増感太陽電池用光電極の作製)において、ポリスチレンパウダーの添加量を3重量部から6重量部に変更した以外は比較例1と同様にして、多孔質金属酸化物半導体層(膜厚:6μm)及び色素増感太陽電池用光電極を作製した。
(比較例3)
(加熱消滅性樹脂粒子の作製)
実施例2の(加熱消滅性樹脂粒子の作製)において、乳化懸濁液を作製する際のホモジナイザーの回転数を10000rpmから1000rpmに変更した以外は実施例2と同様にして加熱消滅性樹脂粒子を作製した。
なお、得られた加熱消滅性樹脂粒子の平均粒子径を測定したところ5660nmであった。また、得られた加熱消滅性樹脂粒子エマルジョンをエタノールで希釈し、ゼータ電位を測定したところ、−29mVであった。
更に、得られた加熱消滅性樹脂粒子エマルジョンを、遠心分離機を用いて樹脂粒子を沈降させた後、溶媒をエタノールに置換し、加熱消滅性樹脂粒子のエタノール分散液(樹脂固形分濃度20重量%)を得た。なお、加熱消滅性樹脂粒子の膨潤度(MEK中)を、測定したところ、1.05倍であった。
(色素増感太陽電池用光電極の作製)
得られた加熱消滅性樹脂粒子のエタノール分散液(樹脂固形分濃度20重量%)を用いて、実施例1と同様にして多孔質金属酸化物半導体層(膜厚:5μm)及び色素増感太陽電池用光電極を作製した。
(比較例4)
実施例1の(色素増感太陽電池用光電極の作製)において、得られた加熱消滅性樹脂粒子のMEK分散液(樹脂固形分濃度20重量%)の添加量を15重量部から200重量部に変更した以外は実施例1と同様にして、多孔質金属酸化物半導体層(膜厚:5μm)及び色素増感太陽電池用光電極を作製した。
(比較例5)
実施例1の(色素増感太陽電池用光電極の作製)において、得られた加熱消滅性樹脂粒子のMEK分散液(樹脂固形分濃度20重量%)15重量部を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、多孔質金属酸化物半導体層(膜厚:5μm)及び色素増感太陽電池用光電極を作製した。
(比較例6)
実施例5の(色素増感太陽電池用光電極の作製)において、得られた加熱消滅性樹脂粒子のMEK分散液(樹脂固形分濃度20重量%)15重量部を添加しなかった以外は実施例1と同様にして、多孔質金属酸化物半導体層(膜厚:7μm)及び色素増感太陽電池用光電極を作製した。
<評価>
実施例及び比較例で得られた多孔質金属酸化物半導体層及び色素増感太陽電池用光電極について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
(1)空隙率、空孔の平均短径、連続孔を形成する空孔の割合測定
(1−1)空隙率
得られた多孔質金属酸化物半導体層を、基板から剥離した後、細孔分布測定装置(島津製作所社製、「アサップ2020」)を用いて空隙率を測定した。
(1−2)空孔の平均短径及びCv値
得られた多孔質金属酸化物半導体層について、SEMを用いて厚み方向の切断面を撮影し、得られた写真から100個分の空孔を無作為に抽出し、その空孔について短径を測定し、その平均値を空孔の平均短径とした。また、平均短径と標準偏差から、上記式(1)によりCv値を算出した。
なお、実施例1で得られた色素増感太陽電池用光電極の多孔質金属酸化物半導体層の厚み方向の切断面を撮影したSEM写真を図1に、比較例1で得られた色素増感太陽電池用光電極の多孔質金属酸化物半導体層の厚み方向の切断面を撮影したSEM写真を図2に示した。
(1−3)連続孔を形成する空孔の割合
得られた多孔質金属酸化物半導体層について、SEMを用いて厚み方向の切断面を撮影し、得られた写真から100個分の空孔を無作為に抽出し、その空孔について2個以上が連結して連続孔を形成している空孔の数を調べ、「連結に関わる空孔の数」を計数した後、下記式(3)により「連続孔を形成する空孔の割合」を算出した。
連続孔を形成する空孔の割合(%)=(連結に関わる空孔の数/100)×100 (3)
(2)残留炭素量
得られた多孔質金属酸化物半導体層を、熱重量測定装置(TG)により、エア100ml/分流通下400℃で120分間保持し、重量減少率(%)を測定した。なお、燃焼酸化による重量減少率を残留炭素量とした。
(3)強度(クラックの発生有無)
得られた多孔質金属酸化物半導体層の表面について、SEMを用いて撮影し、得られた写真を観察して、任意の1000μm四方の領域にクラックが発生しているか確認した。
(4)光の閉じ込め効果
上記ガラス基板上に作成した多孔質金属酸化物半導体層の全光線透過率を測定し、100%から減じた値(吸光率)を光閉じ込め効果とした。
(5)色素増感太陽電池セルの評価
0.4MのTPAI(テトラプロピルアンモニウムヨーダイド)、0.05MのI、メトキシプロピオニトリルからなる電解質を得られた色素増感太陽電池用光電極の多孔質金属酸化物半導体層上に形成した。更に、対向電極を電解質を介して色素増感太陽電池用光電極と重ね合わせるように固定した後、側面をエポキシ系接着剤で封止することにより色素増感太陽電池セルを作製した。
得られた色素増感太陽電池セルについて、電流−電圧特性を測定した。具体的には、A.M1.5、100mW/cmの擬似太陽光を用いて、開放電圧(Voc)、短絡電流(Jsc)、フィルファクタ(FF)、光電変換効率(Eff)を測定した。
なお、比較例2及び比較例4で得られた色素増感太陽電池用光電極については、電極に生じたクラックが大きく、電流値が計測されなかった。
本発明によれば、高い光電交換効率を実現することが可能な色素増感太陽電池用光電極、及び、該色素増感太陽電池用光電極の製造方法を提供できる。

Claims (5)

  1. 多孔質金属酸化物半導体層と前記多孔質金属酸化物半導体層に吸着された増感色素と有する色素増感太陽電池用光電極であって、
    前記多孔質金属酸化物半導体層は、空隙率が40〜90体積%、空孔の平均短径が100〜3000nmであり、かつ、隣接して連続孔を形成する空孔の割合が全空孔の10%以下であり、
    前記多孔質金属酸化物半導体層の空孔は、加熱消滅性樹脂粒子が消滅することにより得られたものであり、前記加熱消滅性樹脂粒子は、架橋性モノマーを0.5重量%以上含有する重合性モノマーを重合してなる重合体からなり、SP値が9(cal/cm) 1/2 以上の溶剤中で測定したゼータ電位の絶対値が20mV以上である
    ことを特徴とする色素増感太陽電池用光電極。
  2. 多孔質金属酸化物半導体層の空孔は、短径のCv値が30%以下であることを特徴とする請求項1載の色素増感太陽電池用光電極。
  3. 多孔質金属酸化物半導体層は、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ガリウム及び酸化イットリウムからなる群より選択される少なくとも1種の金属酸化物、又は、前記金属酸化物を含有する複合酸化物からなることを特徴とする請求項1記載の色素増感太陽電池用光電極。
  4. 請求項1、2記載の色素増感太陽電池用光電極の製造方法であって、
    金属酸化物半導体粒子、加熱消滅性樹脂粒子及び有機溶剤を含有する金属酸化物半導体ペーストを調製する工程、
    前記金属酸化物半導体ペーストを塗工する工程、
    前記金属酸化物半導体ペーストを乾燥し、焼成することにより、多孔質金属酸化物半導体層を形成する工程、及び、
    前記多孔質金属酸化物半導体層に増感色素を吸着させる工程を有し、
    前記金属酸化物半導体粒子は、1次結晶粒子径が100nm以下であり、
    前記加熱消滅性樹脂粒子は、架橋性モノマーを0.5重量%以上含有する重合性モノマーを重合してなる重合体からなり、SP値が9(cal/cm)1/2以上の溶剤中で測定したゼータ電位の絶対値が20mV以上であり、平均粒子径が100〜3000nmであり、かつ、前記金属酸化物半導体粒子に対する前記加熱消滅性樹脂粒子の添加量は、5〜100重量%である
    ことを特徴とする色素増感太陽電池用光電極の製造方法。
  5. 金属酸化物半導体ペーストを調製する工程において、加熱消滅性樹脂粒子をSP値が9(cal/cm)1/2以上の溶剤中に分散した状態で添加することを特徴とする請求項記載の色素増感太陽電池用光電極の製造方法。
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