JP5702756B2 - 光導波路素子 - Google Patents
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Description
光導波路素子では、マルチモード干渉(Multi-Mode Interferometer:MMI)型合波器やY型合波器などの光合波器(カプラ)を組み込むことが多い。光合波器では、合波された光の1次モード光が光合波器の後段の光導波路を伝播しないようにすることが重要である。
例えば、マッハツェンダ型(Mach-Zehnder Interferometer:MZI)光変調器は、光合波器に注入する2つの光の位相差により光信号のon状態とoff状態の切り替えを制御する。2つの光が同位相で光合波器に注入された場合、2つの光が合波された光は、後段の光導波路を基本モードで伝播する。それに対し、2つの光が逆位相で光合波器に注入された場合、合波した光は後段の光導波路に対して1次モードで伝播する。後段の光導波路が1次モードを伝播させることのできない導波路構造を有する場合、合波された光は放射モードとなり、導波路の外に漏れ出ることで導波路上から消失する結果、MZI光変調器はoff状態となる。後段の光導波路が1次モードを伝播可能な場合、off状態にもかかわらず1次モード光が伝播してしまい、消光比の劣化を招く。
また、その一方で、主導波路を伝播する1次モード光を、主導波路に沿ったテーパ構造をもつ副導波路へ、断熱遷移によって分離し、導波させ、主導波路から除去する従来技術がある(特許文献1参照)。
まず、断熱遷移による分岐(分波)において高い分岐特性を得るためには、なだらかなテーパ部分が必要になる。非特許文献2の第四章のシミュレーションを参考にすると、断熱遷移による1次モード分岐に必要な分岐部の長さは、波長λを単位としておよそ1000λである。入射光の波長を1.55μmとすれば、テーパ部分の長さが約1.5mm必要になる。特許文献1の実施例1でも、入射光の波長1.5μmに対してテーパ長は2mmとされている。Si/SiO2導波路のような比屈折率差の大きいデバイスは、高い屈折率差を利用したμmオーダーのデバイスによる光デバイスの小型化が大きな特徴であるから、特許文献1のテーパ部分のようなmmサイズのデバイスを組み込むことはできない。
さらに、製造上も問題がある。特許文献1では基本モード光と1次モード光の分離を断熱遷移で行なっているため、2つの導波路間隔は導波路幅に対して極めて小さくする必要がある。例えば、コア幅500nmのSi/SiO2導波路の場合、導波路間隔によっては非常に困難を伴う。同様に、副導波路のテーパ構造をコア幅500nmのSi/SiO2導波路で形成するのは製造上困難であり、大幅な製造コストの上昇を招く。
なお、非特許文献1には、偏波モードの分離が可能なデバイスについて開示されているが、モード数nの異なる伝播モードの分離(例えば基本モードと高次モードとの分離)が可能なデバイスについては開示されていない。
前記主導波路と前記副導波路が、±10%以内で略同一の幅を有することが好ましい。
前記主導波路と前記副導波路が、±10%以内で略同一の厚さを有することが好ましい。
前記方向性結合器を構成する部分の開始部分で、前記副導波路が前記主導波路になだらかに接近する構造をもつことが好ましい。
前記方向性結合器を構成する部分の終了部分で、前記副導波路が前記主導波路からなだらかに離れる構造をもつことが好ましい。
前記モードスプリッタが、前記光合波器の出力側である後段に設けられることが好ましい。
前記光合波器と、前記光合波器の後段に設けられたモードスプリッタとの組が、カスケード型に連続して設けられてもよい。
前記光合波器は、2つの入力光を1つの出力光に合波するものであり、前記光合波器の入力側である前段に、光変調部と、1つの入力光を2つの出力光に分波する光分波器とを備え、前記光分波器の1つの出力光が前記光変調部を介して前記光合波器に入力され、前記光分波器のもう1つの出力光が前記光変調部を介さないで前記光合波器に入力されてもよい。
前記副導波路が前記主導波路の長手方向の異なる位置に2本以上あり、各々の前記副導波路の幅は、±10%以内で前記主導波路と略同一の幅を有し、前記副導波路と前記主導波路との間隔、及び前記副導波路が前記主導波路と平行に置かれた部分の長さが等しくてもよい。
前記副導波路が前記主導波路の長手方向の異なる位置に2本以上あり、各々の前記副導波路の幅は、±10%以内で前記主導波路と略同一の幅を有し、前記副導波路と前記主導波路との間隔、又は前記副導波路が前記主導波路と平行に置かれた部分の長さが異なってもよい。
前記光合波器がMMI型の光合波器であってもよい。
前記光合波器がY型の光合波器であってもよい。
前記コアの材料がSiであり、前記クラッドの材料がSiO2であってもよい。
前記副導波路は、高次モードを前記主導波路から分離させるものでもよい。
前記高次モードの光が前記主導波路に再結合することを防ぐため、前記副導波路の終了部分の先端に、不純物を高濃度でドープした光吸収層を備えてもよい。
前記高次モードの光の光量をモニタリングするため、前記副導波路の終了部分の先端に、受光素子及びこの受光素子の電流を取り出すための電気配線を備えてもよい。
前記主導波路と前記副導波路が、±10%以内で略同一の幅を有することが好ましい。
前記主導波路と前記副導波路が、±10%以内で略同一の厚さを有することが好ましい。
前記方向性結合器を構成する部分の開始部分で、前記副導波路が前記主導波路になだらかに接近する構造をもつことが好ましい。
前記方向性結合器を構成する部分の終了部分で、前記副導波路が前記主導波路からなだらかに離れる構造をもつことが好ましい。
前記副導波路が前記主導波路の長手方向の異なる位置に2本以上あり、各々の前記副導波路の幅は、±10%以内で前記主導波路と略同一の幅を有し、前記副導波路と前記主導波路との間隔、及び前記副導波路が前記主導波路と平行に置かれた部分の長さが等しくてもよい。
前記副導波路が前記主導波路の長手方向の異なる位置に2本以上あり、各々の前記副導波路の幅は、±10%以内で前記主導波路と略同一の幅を有し、前記副導波路と前記主導波路との間隔、又は前記副導波路が前記主導波路と平行に置かれた部分の長さが異なってもよい。
前記コアの材料がSiであり、前記クラッドの材料がSiO2であってもよい。
前記副導波路は、高次モードを前記主導波路から分離させるものでもよい。
前記高次モードの光が前記主導波路に再結合することを防ぐため、前記副導波路の終了部分の先端に、不純物を高濃度でドープした光吸収層を備えてもよい。
前記高次モードの光の光量をモニタリングするため、前記副導波路の終了部分の先端に、受光素子及びこの受光素子の電流を取り出すための電気配線を備えてもよい。
光合波器14に接続される導波路11,12,13は、光をマルチモードで導波するマルチモード導波路である。導波路11,12,13として、マルチモード導波路のようにコア幅の広い導波路を用いると、表面ラフネスによる導波路特性の劣化が起こりにくいので好ましい。
副導波路22は、主導波路21により導波可能な少なくとも2種類以上の伝播次数の異なる伝播モードのうち少なくとも1種類以上の伝播次数の異なる伝播モードを主導波路21から分離させる。そのため、主導波路21及び副導波路22は、一定の距離を空けて互いに平行に置かれた結合部分21b,22bを有し、これらの結合部分21b,22bにより長さL0の方向性結合器が構成される。さらに、図示例のモードスプリッタ20は、方向性結合器を構成する結合部分21b,22bの前にある開始部分21a,22aで、主導波路21及び副導波路22が互いになだらかに接近する構造をもつ。また、モードスプリッタ20は、結合部分21b,22bの後にある終了部分21c,22cで、主導波路21及び副導波路22が互いになだらかに離れる構造をもつ。副導波路22は、少なくとも2種類以上の伝播次数の異なる伝播モードが導波可能な導波路であってもよい。
例えばコアの材料がSi(屈折率3.475程度)であり、クラッドの材料がSiO2(屈折率1.444程度)の場合、SOI(Silicon On Insulator)基板などの半導体向け材料を導波路材料に用いることができるので好ましい。
コアの材料としては、SiOx(屈折率1.47)、SiON、SiNや非シリコン系の半導体材料(化合物半導体)などが挙げられる。
同様に、主導波路と副導波路とが、例えば±10%以内で略同一の厚さを有することが好ましい。
例えば、基本モードの結合長が高次モードの結合長よりも十分長くなる条件下で、方向性結合器の長さを短くする(例えば高次モードの結合長と同程度又はそれ以下とする)と、基本モードの移行の割合が小さいまま、高次モードの移行の割合を十分に大きくすると、基本モードの移行が小さく、特定の高次モード(例えば1次モード)を主導波路から副導波路に分離させることが可能なモードスプリッタを実現することができる。
方向性結合器の長さが高次モードの結合長よりも長い場合、高次モードが主導波路と副導波路との間を交互に移行する。そこで、例えば、方向性結合器の長さを基本モードの結合長と同程度としたときに、高次モードが副導波路に移行している割合が小さい構造とした場合には、基本モードを主導波路から副導波路に分離させることが可能なモードスプリッタとなることも考えられる。
図2(a)に示す光導波路素子のモードスプリッタ20Aにおいて、副導波路22Aは、方向性結合器を構成する部分である結合部分22bと、結合部分22bで分離したモードの光を取り出す終了部分22cを有するものの、副導波路が主導波路になだらかに接近する構造の開始部分(図1(c)の符号22a)を有しない。
図2(b)に示す光導波路素子のモードスプリッタ30において、主導波路31は、開始部分31aから結合部分31bを経て終了部分31cに至るまで全体が直線状である。モードスプリッタ30の副導波路32は、副導波路が主導波路になだらかに接近する構造の開始部分32aと、方向性結合器を構成する部分である結合部分32bと、結合部分32bで分離したモードの光を取り出す終了部分32cを有する。
図2(c)に示す光導波路素子のモードスプリッタ30Aにおいて、主導波路31は、開始部分31aから結合部分31bを経て終了部分31cに至るまで全体が直線状である。モードスプリッタ30Aの副導波路32Aは、方向性結合器を構成する部分である結合部分32bと、結合部分32bで分離したモードの光を取り出す終了部分32cを有するものの、副導波路が主導波路になだらかに接近する構造の開始部分(図2(b)の符号32a)を有しない。
なお、後述する第2〜第11実施形態等、他の実施形態においても、各モードスプリッタを図2(a)〜(c)に示す上述のモードスプリッタ20A,30,30Aと同様のものを用いてよい。図2(b)及び図2(c)では、主導波路21を直線とし、副導波路22を曲線としたが、その反対に、主導波路21を曲線とし、副導波路22を直線とすることもできる。
図1(c)のモードスプリッタ20では、方向性結合器を構成する結合部分21b,22bの中間線を対称中心線(対称軸)として、主導波路の開始部分21aと副導波路の開始部分22aとが対称とされ、主導波路の結合部分21bと副導波路の結合部分22bとが対称とされ、主導波路の終了部分21cと副導波路の終了部分22cとが対称とされている。主導波路の曲線部分(21a,21c)の曲率半径が、副導波路の曲線部分(22a,22c)の曲率半径と等しいか、前者が後者より大きいか、前者が後者より小さいかは、適宜選択可能である。
主導波路と副導波路との間が十分に離れた箇所では、基板上で所望の配置をとるように導波路を延ばしたり、曲げたりすることができ、また、導波路の向きや長さ等を自由に設定できることはいうまでもない。主導波路や副導波路の幅は、方向性結合器の部分の近傍のみならず、全体的に略同一の幅にすることもできる。
同様に、副導波路が主導波路からなだらかに離れる構造の終了部分を有する場合、損失をさらに低減することができ、好ましい。
導波路におけるなだらかに接近、又は離れる構造は、円弧、楕円弧、放物線、双曲線などの曲線に沿って構成されることが好ましい。その曲率半径は、例えば10μm以上であることが好ましい。直線の曲率半径は∞であることから、直線部と曲線部とが連続的に接続するための曲率半径に特に上限はないが、直線部に近接する曲線部の曲率半径として、例えば数十〜数百μmが挙げられる。
図1(c)のモードスプリッタ20では、方向性結合器を構成する結合部分21b,22bに垂直な二等分線を対称中心線(対称軸)として、主導波路の開始部分21aと主導波路の終了部分21cとが対称とされ、副導波路の開始部分22aと副導波路の終了部分22cとが対称とされている。開始部分の曲率半径が、終了部分の曲率半径と等しいか、前者が後者より大きいか、前者が後者より小さいかは、適宜選択可能である。
光分波器42の前段の光導波路41から光分波器42に注入された光は2つに分波され、それぞれ別の導波路(アーム)43,44を伝播する。光変調部45は、一般に位相変調器である。光変調部45を介して伝播された光と光変調部45を介さないで伝播された光とが所定の位相差を有して光合波器46に注入されると、光合波器46で合波された光は位相差に応じて変調される。例えば、光合波器46に注入する2つの光の位相差により光信号のon状態とoff状態の切り替えを制御する。2つの光が同位相で光合波器46に注入された場合、合波された光は後段の光導波路47を基本モードで伝播し、光信号がon状態になる。それに対し、2つの光が逆位相で光合波器46に注入された場合、合波された光は後段の光導波路47に対して1次モードで伝播し、光信号がoff状態になる。
マッハツェンダ型光変調器40の光合波器46の後段の光導波路47をモードスプリッタ20の主導波路21に接続し、1次モード光を副導波路22へ分離することにより、マッハツェンダ型光変調器40の消光比の劣化を抑制することができる。光合波器46としては、例えばMMI型合波器14を用いてもよい。MMI型合波器14とモードスプリッタ20との関係は、図1(a)の光導波路素子10と同様に構成することができる。
マッハツェンダ型光変調器40の光分波器42及び光合波器46としては、特に限定されないが、例えばMMI型の分波器又は合波器、Y型の分波器又は合波器、方向性結合器等が挙げられる。
マッハツェンダ型光変調器40にモードスプリッタ20を設ける場合、光分波器42の入力側である前段(導波路41)、光合波器46の出力側である後段(導波路47)、又は光分波器42と光合波器46との間である内部(導波路43,44)から選択される1箇所以上に設けることができる。
光合波器14がマッハツェンダ型光変調器40に組み込まれている場合(図4参照)等、他の実施形態においても、副導波路22の終了部分の先端に、光吸収層23を設けてもよい。
光合波器14がマッハツェンダ型光変調器40に組み込まれている場合(図4参照)等、他の実施形態においても、副導波路22の終了部分22cの先端に、PD24及び電気配線25を設けてもよい。マッハツェンダ型光変調器40と組み合わせた場合には、PD24を用いてモニタリングした結果を用いて、制御部により、光変調部45の動作条件(例えば電気制御の場合は印加電圧など)を調整してフィードバックすることができる。
PDは、基板上に配置することが好ましく、該部品を基板上に実装してもよい。半導体基板を用いた場合には、PDを半導体素子として、光導波路と同一の基板上に集積することもできる。Si/SiO2導波路を有するSi基板上に集積可能なPDとしては、例えばゲルマニウム(Ge)PD等のIV族半導体PDやインジウムリン(InP)系のPD等やガリウム砒素(GaAs)等のIII−V族化合物半導体PDが挙げられる。
電気配線25は、例えば基板上に(必要であれば絶縁層を介して)、1つのPD24につき平行に2本設けたり、その他PD24に必要な本数設けることができる。
図6に示す例では、副導波路22と主導波路21とが互いになだらかに離れる構造の終了部分21c,22cを有し、副導波路の終了部分22cの先端部22dは、PD24に向かって徐々に曲率半径を増大させ、最終的には直線状の導波路となってPD24に接続されている。
図3、図7、図8に示すように、光導波路素子が2本以上の副導波路22を有する場合、全部またはいずれか1本以上の副導波路22の終了部分の先端に、光吸収層23又はPD24を設けることができる。いずれかの副導波路22の終了部分の先端に光吸収層23を設け、さらに別の副導波路22の終了部分の先端にPD24を設ける等、任意に設計することが可能である。
本発明のモードスプリッタ20は、図1(a)に示すように光合波器14の後段の光導波路13に設ける場合に限られるものではなく、光合波器14の前段の各光導波路11,12のみに設けることもできる。また、光合波器14の前段の各光導波路11,12の両方に設ける場合に限られるものではなく、光合波器14の前段の各光導波路11,12の一方のみに設けることもできる。
光導波路及び光合波器は、クラッド領域をSiO2、コア領域をSiとして構成した。導波路コア領域の厚さ(図1(d)のt0参照)は220nmとし、導波路コア領域の幅(図1(d)のw1及びw2参照)は500nmとした。コアの上下には光がそれぞれ基板及び空気に触れないようにクラッドを設けた。クラッドの厚さ(図1(d)のt1及びt2参照)は上下のそれぞれに2μmとした。クラッドは、コアの側方及び導波路間にも形成した。
光合波器の後段(出射側)の導波路を主導波路とし、これと平行に、かつ間隔を空けて副導波路を置いた。副導波路への最大移行パワーをできる限り100%に近づけるため、副導波路の導波路幅は主導波路と同じ幅とした。主導波路と副導波路との間隔(導波路間隔)は、近すぎると主導波路から副導波路への基本モードの結合が強くなってしまい、基本モード光の損失が増大する。逆に副導波路を主導波路から離しすぎると、主導波路から副導波路への1次モードの結合が弱くなり、非常に長い副導波路長が必要になる。
結合係数と導波路間隔との関係を求めた結果を図11に示す。導波路間隔を広げていくと、基本モードと1次モードの結合係数χは共に小さくなっていくが、基本モードの結合係数χの減少が、1次モードの結合係数χの減少に比べて急であることが分かった。
また、結合長と導波路間隔との関係を求めた結果を図12に示す。導波路間隔を0.5μmとすると、基本モードの結合長は504μmであるが、1次モードの結合長は16μmであった。導波路間隔によって、基本モード及び1次モードの結合効率及び結合長が決まるので、副導波路が主導波路に沿って平行となる部分の長さ(副導波路長)を1次モードの結合長と等しくした。主導波路と副導波路とが対称的であると仮定すると、副導波路長を1次モードの結合長と等しくすれば、1次モード光を100%副導波路に移行させることができる。また、このとき基本モード光が副導波路に移行する割合は、sin2(π/2×16/504)=0.0025、すなわち0.25%の移行にとどまる。すなわち、基本モード光の損失は0.01dBであり、1次モードを完全に分離することができる。
副導波路長が短い場合に最大パワー移行効率が小さいのは、副導波路の開始点と終点での非対称性が影響しているためと考えられる。導波路間隔が広いと、結合が小さくなり、副導波路長を長くしないと副導波路への移行が見られない。
さらに、実施例1で副導波路を沿えたことによる基本モード光の損失(Loss)を計算した。その結果(波長1.53〜1.61μm)を図17に示す。基本モード光の損失は、C−band及びL−bandの全域で0.016dB以下であり、実用上問題にならないと考えられる。
実施例2においても、実施例1と同様の光導波路構造を採用した。具体的には、クラッドの材料がSiO2、コアの材料がSi、コアの厚さが220nm、コアの幅(導波路幅)が500nm、クラッドの厚さがコアの上下のそれぞれに2μmである。
いずれも1次モード光が副導波路に移行するが、詳しくは後述するように、図18(a)で主導波路に残る1次モード光が若干ながら認められる。図18(b)では主導波路に残る1次モード光は僅かであり、図18(c)では主導波路に残る1次モード光は全く見えない。
方向性結合器となる直線部の前後に設けられる曲げ部の曲率半径は、40μm、60μm、100μmの3種類とした。それぞれ、図19のグラフ中では、「R=40」、「R=60」、「R=100」と表示する。
その結果、曲げ部の曲率半径を大きくしたほうが、直線部の長さを最適化したときの分岐比(各折れ線における分岐比の最大値)が良くなる傾向が示された。なお、ここでは、具体的な結果を示していないが、本発明者らの検討によれば、図18(a)や図18(b)の構造でも、同様に、曲げ部の曲率半径を大きくしたほうが、直線部の長さを最適化したときの分岐比が良くなる傾向が認められた。
ここでの「最適化された分岐比」とは、各構造ごとに、直線部の長さを最適化したときの分岐比をいう。したがって、図20の(c)に挙げる分岐比は、図19から示される「最適化された分岐比」と同一の値である。
クラッド領域をSiO2、コア領域をSiとして導波路及び光合波器を構成した。コアの厚さは220nmとし、コアの幅(導波路幅)は500nmとした。コアの上下には光がそれぞれ基板及び空気に触れないようにクラッドを設けた。クラッドの厚さは上下のそれぞれに2μmとした。クラッドは、コアの側方及び導波路間にも形成した。
光合波器にはMMI型合波器を用いた。その幅WMMIは1.5μmで、長さLMMIは1.8μmとした。光合波器の片側に2本の光導波路が結合する箇所では、並行する導波路の間隔を0.3μmとした。
光合波器の後段(出射側)の導波路を主導波路とし、これと平行に、かつ間隔を空けて副導波路を置いた(図1(a)参照)。副導波路への最大移行パワーをできる限り100%に近づけるため、副導波路の導波路幅は主導波路と同じ幅とした。実施例1,2の検討に基づき、副導波路と主導波路との間隔は0.5μm(500nm)とした。
主導波路と副導波路が接近及び離れる際に、急激な変化があると導波光の揺動を起こし、損失低下をもたらすため、接近及び離れはなだらかであることが好ましい。しかし、接近部及び離れ部でも高次モードの結合は弱いながらも行われるため、なだらかにしすぎるのも適切ではない。そこで、実施例2の検討に基づき、図18(c)や図21に示すように、主導波路と副導波路のそれぞれに、接近部及び離れ部の曲率半径を100μmとし、直線部の長さを2μmとした。これにより、高次モードが効率よく主導波路から副導波路に移行し、しかも基本モードの移行をほとんどなくすことができる。
クラッド領域をSiO2、コア領域をSiとして導波路及び光合波器を構成した。コアの厚さは220nmとし、コアの幅(導波路幅)は600nmとした。コアの上下には光がそれぞれ基板及び空気に触れないようにクラッドを設けた。クラッドの厚さは上下のそれぞれに2μmとした。クラッドは、コアの側方及び導波路間にも形成した。
光合波器にはMMI型合波器を用いた。その幅WMMIは1.7μmで、長さLMMIは2.4μmとした。光合波器の片側に2本の光導波路が結合する箇所では、並行する導波路の間隔を0.3μmとした。
光合波器の後段(出射側)の導波路を主導波路とし、これと平行に、かつ間隔を空けて副導波路を置いた(図1(a)参照)。
実施例1〜3と同様に、600nmの導波路幅でも最適な導波路間隔を検討した結果、副導波路と主導波路との間隔は0.5μm(500nm)とした。また、図18(c)や図21に示すように、主導波路と副導波路のそれぞれに、接近部及び離れ部の曲率半径を100μmとしたとき、最適な直線部の長さをシミュレーションにより9μmと求めた。これにより、高次モードが効率よく主導波路から副導波路に移行し、しかも基本モードの移行をほとんどなくすことができる。
Claims (19)
- 基板上にコア及びクラッドを有する光導波路を備える光導波路素子であって、
前記光導波路素子は、
複数の入力光を1つの出力光に合波する光合波器と、
前記光合波器の出力側である後段に設けられたモードスプリッタと
を備え、
前記コアの屈折率ncoreと前記クラッドの屈折率ncladとの比であるncore/ncladが101〜250%の範囲内であり、
前記モードスプリッタは、
少なくとも2種類以上の伝播次数の異なる伝播モードが導波可能な主導波路と、
前記主導波路から一定の距離を空けて前記主導波路と平行に置かれた方向性結合器を構成する部分をもち、前記少なくとも2種類以上の伝播次数の異なる伝播モードのうち少なくとも1種類以上の伝播次数の異なる伝播モードを前記主導波路から分離させる副導波路と
を備え、
前記光合波器は、2つの入力光を1つの出力光に合波するものであり、
2つの入力光が同位相の場合、合波された光は後段の光導波路を基本モードで伝播し、光信号がon状態になり、
2つの入力光が逆位相の場合、合波された光は後段の光導波路を特定の高次モードである1次モードで伝播し、光信号がoff状態になり、
前記光合波器の出力側から前記モードスプリッタの前記主導波路に接続される導波路は、光をマルチモードで導波するマルチモード導波路であり、
前記モードスプリッタにおいて、前記1次モードを前記主導波路から前記副導波路に分離させ、前記副導波路に分岐する1次モードの光の光量をモニタリングすることができることを特徴とする光導波路素子。 - 基板上にコア及びクラッドを有する光導波路を備える光導波路素子であって、
前記光導波路素子は、
複数の入力光を1つの出力光に合波する光合波器と、
前記光合波器の入力側である前段に設けられたモードスプリッタと
を備え、
前記コアの屈折率ncoreと前記クラッドの屈折率ncladとの比であるncore/ncladが101〜250%の範囲内であり、
前記モードスプリッタは、
少なくとも2種類以上の伝播次数の異なる伝播モードが導波可能な主導波路と、
前記主導波路から一定の距離を空けて前記主導波路と平行に置かれた方向性結合器を構成する部分をもち、前記少なくとも2種類以上の伝播次数の異なる伝播モードのうち少なくとも1種類以上の伝播次数の異なる伝播モードを前記主導波路から分離させる副導波路と
を備え、
前記光合波器は、2つの入力光を1つの出力光に合波するものであり、
前記モードスプリッタは、前記光合波器の前段の2つの光導波路の一方のみ又は両方に設けられ、
前記モードスプリッタの前記主導波路から前記光合波器の入力側に接続される導波路は、光をマルチモードで導波するマルチモード導波路であり、
前記モードスプリッタは、高次モードを前記主導波路から前記副導波路に分離させることを特徴とする光導波路素子。 - 前記モードスプリッタが、前記光合波器の出力側である後段にも設けられた請求項2に記載の光導波路素子。
- 前記光合波器と、前記光合波器の後段に設けられたモードスプリッタとの組が、カスケード型に連続して設けられた請求項1又は3に記載の光導波路素子。
- 前記光合波器に接続される2つの入力側導波路及び1つの出力側導波路は、光をマルチモードで導波するマルチモード導波路であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光導波路素子。
- 前記主導波路と前記副導波路が、±10%以内で略同一の幅を有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の光導波路素子。
- 前記主導波路と前記副導波路が、±10%以内で略同一の厚さを有する請求項1〜6のいずれか1項に記載の光導波路素子。
- 前記方向性結合器を構成する部分の開始部分で、前記副導波路が前記主導波路になだらかに接近する構造をもつ請求項1〜7のいずれか1項に記載の光導波路素子。
- 前記方向性結合器を構成する部分の終了部分で、前記副導波路が前記主導波路からなだらかに離れる構造をもつ請求項1〜8のいずれか1項に記載の光導波路素子。
- 前記光導波路素子は、前記光合波器が組み込まれたマッハツェンダ型光変調器を備え、
前記マッハツェンダ型光変調器において、前記モードスプリッタが、前記光合波器の出力側である後段、又は前記マッハツェンダ型光変調器の光分波器と光合波器との間である内部から選択される1箇所以上に設けられる請求項1〜9のいずれか1項に記載の光導波路素子。 - 前記光合波器の入力側である前段に、光変調部と、1つの入力光を2つの出力光に分波する光分波器とを備え、
前記光分波器の1つの出力光が前記光変調部を介して前記光合波器に入力され、前記光分波器のもう1つの出力光が前記光変調部を介さないで前記光合波器に入力される請求項1〜10のいずれか1項に記載の光導波路素子。 - 前記副導波路が前記主導波路の長手方向の異なる位置に2本以上あり、
各々の前記副導波路の幅は、±10%以内で前記主導波路と略同一の幅を有し、
前記副導波路と前記主導波路との間隔、及び前記副導波路が前記主導波路と平行に置かれた部分の長さが等しい請求項1〜11のいずれか1項に記載の光導波路素子。 - 前記副導波路が前記主導波路の長手方向の異なる位置に2本以上あり、
各々の前記副導波路の幅は、±10%以内で前記主導波路と略同一の幅を有し、
前記副導波路と前記主導波路との間隔、又は前記副導波路が前記主導波路と平行に置かれた部分の長さが異なる請求項1〜11のいずれか1項に記載の光導波路素子。 - 前記光合波器がMMI型の光合波器である請求項1〜13のいずれか1項に記載の光導波路素子。
- 前記光合波器がY型の光合波器である請求項1〜13のいずれか1項に記載の光導波路素子。
- 前記コアの材料がSiであり、前記クラッドの材料がSiO2である請求項1〜15のいずれか1項に記載の光導波路素子。
- 前記高次モードの光が前記主導波路に再結合することを防ぐため、前記副導波路の終了部分の先端に、不純物を高濃度でドープした光吸収層を備える請求項1〜16のいずれか1項に記載の光導波路素子。
- 前記高次モードの光の光量をモニタリングするため、前記副導波路の終了部分の先端に、受光素子及びこの受光素子の電流を取り出すための電気配線を備える請求項1〜16のいずれか1項に記載の光導波路素子。
- 前記主導波路が曲げ部を有し、前記副導波路が直線状である請求項1〜18のいずれか1項に記載の光導波路素子。
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