JP5695847B2 - 内増やし方法、および編地 - Google Patents

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Description

本発明は、横編機を用いた編地の編成の際、針床に係止される編地の針床長手方向の端部よりも内側に増し目を形成する内増やし方法、およびその方法を適用して編成された編地に関する。
従来から、横編機で編地を編成する過程において、編地を所望の形状に編成するために、増し目を形成する場合がある。このような増し目を形成する方法として、針床に係止される編地における針床長手方向の端部に位置する複数の編目を、針床長手方向の外側に移動させて編地の編成領域内に空針を発生させ、この空針に掛け目を形成して編幅を増加させる内増やし方法が知られている。
しかし、この内増やし方法では、前コースの編目が存在しない空針に給糸することにより、掛け目からなる増し目を形成することになるので、増し目の形成箇所に孔が発生し易い。そこで、本出願人は、増し目の形成箇所における孔を目立たなくする内増やし方法として、例えば、特許文献1に示すような一つの編目を二つに分割する割り増やし(split knit)を行っている。しかし、割り増やしに対応していない横編機もあるため、以下に示すような、割り増やしに対応していない横編機でも増し目の形成箇所における孔を目立たなくできる内増やし方法も提案されている。
図8は、互いに対向する前後一対の針床を二対備える4枚ベッド横編機を用いて、編地を編地の編幅方向に2分する基準線X−Xを挟んで対称な位置に配置される一対の増し目の形成箇所における孔を目立ち難くするための一般的な内増やし方法の編成工程図の一部である。図中、下部前針床、下部後針床、上部前針床、および上部後針床は、それぞれFD、BD、FU、およびBUとする。図8の編成工程図において、図中左側のアルファベット+数字は工程番号を示し、左右方向の矢印は編成方向または給糸口9の移動方向を示し、上下方向または斜め方向の矢印は目移しの方向を示す。図中のA〜Rは前針床(FD,FU)の編針を、a〜rは後針床(BD,BU)の編針を示す。また、図中の○は編目を、V印は掛け目を示し、各編成工程で実際に行われた動作は、太線で示す。ここで、図8では、説明の便宜上、編針の数を実際の編成で使用する数より少なくし、すべて天竺で編成するものとする。また、図中では、ラッキングを伴う目移しについては、そのラッキングの動作を省略している。なお、図面の見方などは、後述する実施例図である図1,3〜6においても同様である。
V1には、周回編成によりBDの編針c〜p、FDの編針P〜Cに筒状編地を編成した状態が示されている。この状態から、V2では、BDの編針c〜e,n〜pに係止される編目をそれぞれ、対向するFUの編針C〜E,N〜Pに目移しする。続くV3,V4では、V2でFUの編針N〜P,C〜Eに目移しした編目をそれぞれ、対向するBDの編針o〜q,b〜dに目移しすることで、BDの編針e,nに増し目を形成するための空針を生じさせる。
そして、V5〜V9では、V3,V4で生じた空針に掛け目からなる増し目を形成しつつ、編地の後側編地部を編成する。具体的には、V5では、図の左から右方向に向けて給糸口9を移動させて、BDの編針b〜dで編目を形成する。V6では、左方向に向けて給糸口9を移動させて、BDの編針eに掛け目からなる増し目を形成する。V7では、右方向に向けて給糸口9を移動させて、BDの編針f〜mに編目を形成する。V8では、左方向に向かって給糸口9を移動させて、BDの編針nに掛け目からなる増し目を形成する。V9では、右方向に向かって給糸口9を移動させて、BDの編針o〜qに編目を形成する。これらV5〜V9の編成が大略的に左から右方向に進行している中で、BDの編針e,nでの掛け目の形成は右から左方向への給糸で行なわれているため、これら掛け目は捻れ目となっている。
上述のように、増し目を捻れ目とすることで、この捻れ目を挟む2つの編目の間隔が詰まるので、当該増し目の形成箇所に生じる孔を目立たなくすることができる。
特公昭62−52063号公報
しかし、編成に使用する編糸の種類や、当該増し目の形成箇所近傍の編組織によって孔空きを目立たなくする効果が十分でない場合もあり、より効果的に孔空きを目立たなくすることができる内増やし方法の開発が望まれている。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、編地の編成にあたり内増やしを行う際、増し目の形成箇所における孔空きを効果的に防止するための内増やし方法、およびこの内増やし方法を適用して編成された編地を提供することにある。
本発明内増やし方法は、少なくとも前後一対の針床と、各針床に複数配置される編針に編糸を給糸させる給糸口とを備える横編機を用いて、針床に係止される編地の針床長手方向の端部よりも内側に増し目を形成するにあたり、連続して編成される複数の編目からなる中間編目列を挟んで一対の増し目を形成する内増やし方法である。この本発明内増やし方法は、以下の過程を含み、その過程の途中、もしくはその過程の後に、下記操作1,2を行うことを特徴とする。
[過程]中間編目列の編成に先立ち、複数の編目からなる先行編目列を編成した後、この先行編目列の終端編目近傍の前後いずれかの針床の空針に捻れ目からなる一側増し目を形成する。次いで、先行編目列の編成に続いて中間編目列を編成する。さらに、中間編目列の終端編目近傍の前後いずれかの針床の空針に捻れ目からなる他側増し目を形成した後、複数の編目からなる後行編目列を編成する。
[操作1]先行編目列の編幅内、もしくは中間編目列の編幅内に、一側増し目を挿入する。
[操作2]一側増し目を先行編目列の編幅内に挿入する場合は、後行編目列の編幅内に他側増し目を挿入し、一側増し目を中間編目列の編幅内に挿入する場合は、中間編目列の編幅内に他側増し目を挿入する。
本発明内増やし方法は、筒状編地において一対の増し目を形成することに利用できる。例えば、セーターなどの身頃の身幅を大きくすることに本発明内増やし方法を適用する場合、身頃を編幅方向に2分する基準線を規定し、同一の編成コースでその基準線を挟んで左右対称の位置に一対の増し目を形成すると良い。また、本発明内増やし方法は、前後編地部を有さない一枚物の編地(以下、便宜上ハンカチ編地と呼ぶ)において一対の増し目を形成することにも利用できる。例えば、ハンカチ編地を編幅方向に2分する基準線を規定し、同一編成コースでその基準線を挟んで左右対称の位置に一対の増し目を形成しても良い。その他、ハンカチ編地に特に基準線を設定せずに、ある編成コースで一つ目の増し目を形成し、その編成コースの直上の編成コース、もしくはその編成コースよりも複数コース上の編成コースで残りの増し目を形成しても良い。例えば、ハンカチ編地における編幅方向の一方の端部に向かって先行編目列と一側増し目を形成し、次いで当該端部で折り返される中間編目列を編成する。そして、他側増し目を形成してから後行編目列を編成する。この場合、中間編目列は2コースに渡って形成されることになる。
なお、上記操作1,2を行うタイミングは、種々選択することができる。例えば、後述する第1実施形態に示すように、上記過程を行った後、順次操作1と操作2を行うことが挙げられる。その他、第2実施形態に示すように、上記過程における一側増し目の形成が終了した時点で操作1を行い、次いで上記過程の全てが終了した時点で操作2を行っても良い。さらに、後述する変形実施形態に示すように、上記過程における先行編目列の形成が終了した時点で、先行編目列において一側増し目を形成するためのスペースを空けておき、その空いたスペースに一側増し目を形成することで、一側増し目の形成と挿入とが同時に行われるようにしても良い。
本発明内増やし方法の一形態として、他側増し目の形成は、一側増し目を形成した針床に対向する針床で行うことが好ましい。
また、本発明内増やし方法の一形態として、内増やしを行う過程で一側増し目を目移ししないで済むように、一側増し目を形成する前に、既に針床に形成されている先行編目列のうち、少なくとも中間編目列寄りの端部編目を除く単数あるいは複数の編目を対向する針床に目移しして、その目移しによって空針となった編針に一側増し目を形成することが好ましい。
一方、本発明編地は、少なくとも前後一対の針床と、各針床に複数配置される編針に編糸を給糸させる給糸口とを備える横編機を用いて編成された編地であって、編成順に先行編目列、中間編目列、後行編目列と規定される複数の編目からなる3つの編目列を備える。この本発明編地は、先行編目列の中間編目列寄りの端部編目と、中間編目列の先行編目列寄りの端部編目とに直接繋がる捻れ目からなる一側増し目と、後行編目列の中間編目列寄りの端部編目と、中間編目列の後行編目列寄りの端部編目とに直接繋がる捻れ目からなる他側増し目と、を有する。一側増し目は、先行編目列の編幅内、もしくは中間編目列の編幅内に挿入され、他側増し目は、後行編目列の編幅内、もしくは中間編目列の編幅内に挿入されていることを特徴とする。
本発明内増やし方法によれば、先行編目列・一側増し目・中間編目列の並びでこれらを編成した上で、先行編目列の編幅内、もしくは中間編目列の編幅内に一側増し目を挿入している。そうすることで、一側増し目を挿入する位置を挟む編目同士を繋ぐ編糸が、一側増し目を横切るように渡るため、当該一側増し目による孔空きを目立たなくすることができる。他側増し目の形成位置においても同様に、他側増し目を挿入する位置を挟む編目同士を繋ぐ編糸が他側増し目を横切るように渡るため、当該他側増し目による孔空きを目立たなくできる。その結果、本発明内増やし方法を使用すれば孔空きの目立たない見栄えの良い本発明編地を得ることができる。
ここで、一側増し目と他側増し目を挿入する位置を両方とも、中間編目列の側、もしくは中間編目列から離れる側に揃えることで、編地の見栄えを良くすることができる。例えば、第1実施形態に示すように、基準線を規定する筒状編地の編成において、両増し目を基準線から離れる方向に挿入すると、基準線を挟んで増し目の形成状態が線対称となり、編地の見栄えが良くなる。また、基準線を設定しないハンカチ編地の場合、両増し目を中間編目列の方向に挿入すると、2コースにまたがる2つの増し目の傾きが揃い、編地の見栄えが良くなる。
また、他側増し目の形成を、一側増し目を形成した針床に対向する針床で行うことで、両増し目の形成状態を同じにできる。特に、編地を編幅方向に2分する基準線を規定し、この基準線を挟んで対称な位置に両増し目を形成する場合、出来上がる編地において、基準線を挟んだ増し目の形成箇所近傍の編目状態を完全な線対称の形状とすることができる。この点については、図1,2を参照する第1実施形態に詳しく説明する。
さらに、内増やしを行う過程で一側増し目を目移ししないで済むようにすることで、内増やしの編成効率を大幅に向上させることができる。この点については、図3を参照する変形実施形態に詳しく説明する。
第1実施形態に示す内増やし方法についての編成工程図である。 (A)は、図1の編成工程図で左側にある増し目の形成箇所近傍のループ図、(B)は、図1の編成工程図で右側にある増し目の形成箇所近傍のループ図である。 変形実施形態に示す内増やし方法についての編成工程図である。 第2実施形態に示す内増やし方法についての編成工程第1図である。 第2実施形態に示す内増やし方法についての編成工程第2図である。 第3実施形態に示す内増やし方法についての編成工程図である。 (A)は、図6の編成工程図で左側にある増し目の形成箇所近傍のループ図、(B)は、図6の編成工程図で右側にある増し目の形成箇所近傍のループ図である。 従来の内増やし方法についての編成工程図である。
以下、左右方向に延び、かつ、前後方向に互いに対向する前後二対の針床を有し、前後の針床間で編目の目移しが可能な4枚ベッドの横編機を用いて、本発明の実施形態を説明する。以降、この横編機に備わる下部前針床をFD、下部後針床をBD、上部前針床をFU、上部後針床をBUという。なお、以下に示す実施形態の編成は、編目の目移し用のトランスファージャックベッドを備える2枚ベッド横編機でも実施できるし、単なる2枚ベッド横編機であっても、各針床に係止される隣接する編目間に、目移し用の空針を設けることで実施することができる。
<第1実施形態>
図1は、セーターやカーディガンなどの筒状に編成される胴部において、身幅を大きくするために内増やしする際、本発明の内増やし方法を適用した編成工程図である。なお、本実施形態では、編地を編地の編幅方向に2分する基準線X−Xを規定している(図1中の一点鎖線を参照)。
S1には、内増やしを行う直前の編成コースが示されており、図の左から右方向に向けて給糸口9を移動させて、BDの編針c〜pで胴部の身頃の編目を形成し、その後、給糸口9を反転させて左方向に移動させて、FDの編針P〜Cに胴部の身頃の編目を形成する。以降のS2〜S12では、後身頃について基準線X−Xを挟んで対称な位置に一対の増し目を形成する例を説明する。
S2では、図の右方向に給糸口9を移動させて、BDの編針c〜eに後身頃の一部(先行編目列1)の編目を形成し、次のS3では、S2で形成した全ての編目を、対向するFUの編針B〜Dに目移しする。このS3の目移しにより、BDの編針eが空針となる。
次に、S4では、給糸口9を反転させて、左方向に向かって移動させる間に、空針となったBDの編針eに掛け目2を形成する。そして、S5では、給糸口9を右方向に向かって移動させる間に、BDの編針f〜mに後身頃の一部(中間編目列3)の編目を形成する。このS4,S5によりBDの編針eに形成された掛け目2は捻られ、この捻られた掛け目2は、一側増し目2として、後工程(S8〜S11)で先行編目列1の編幅内に挿入される。
S6では、給糸口9を反転させ、左方向に移動させる間に、空針であるFUの編針Mに掛け目4を形成する。そして、S7では、給糸口9を右方向に向かって移動させる間に、BDの編針n〜pに後身頃の残り(後行編目列5)の編目を形成する。このS6,S7によりFUの編目Mに形成される掛け目4は捻られ、この捻られた掛け目4は、他側増し目4として、後工程(S8,S9,S12)で後行編目列5の編幅内に挿入される。
S8では、S4でBDの編針eに形成した掛け目2を、対向するFUの編針Eに目移しすると共に、S7でBDの編針n〜pに形成した後行編目列5の編目のうち、編針o,pに係止される編目を対向するFUの編針O,Pに目移しする。
S9では、S3で目移しすることによりFUの編針Dに係止される編目11をBDの編針eに目移しすると共に、S8で目移しすることによりFUの編針O,Pに係止される編目を、対向するBDの編針p,qに目移しする。S9で目移しされた編目11(先行編目列1のうち、中間編目列3寄りの端部編目)は、S2で編成したときと同じ位置に戻された状態になる。また、このS9により、後行編目列5の編幅内であって、後行編目列5における中間編目列3寄りの端部編目51と、この端部編目51に隣接する隣接編目52の間に空針(BDの編針o)が形成される。
S10では、S3で目移しすることによりFUの編針B,Cに係止される編目を、対向するBDの編針b,cに目移しする。このS10により、先行編目列1の編幅内であって、先行編目列1における中間編目列3寄りの端部編目11と、この端部編目11に隣接する隣接編目12との間に空針(BDの編針d)が形成される。
最後に、S11,S12では、S8でFUの編針Eに預けておいた掛け目2、およびS6でFUの編針Mに形成した掛け目4をそれぞれ、S9,S10で形成した空針である編針d,oに目移しし、端部編目11と隣接編目12の間、および端部編目51と隣接編目52の間に挿入する。これにより、掛け目2,4が増し目として、後身頃の編幅内に形成される。
ここで、図示しないが、前身頃については、S2〜S12と同様の編成を、編成方向を入れ替えて行えば良い。
上述した編成により形成される増し目の形成箇所近傍におけるループ図を、図2に示す。図2(A)に示すように、一側増し目2は、先行編目列1の端部編目11と中間編目列3の端部編目31に直接繋がる捻り目であって、この一側増し目2を跨ぐように、先行編目列1の端部編目11と隣接編目12とを繋ぐ編糸が渡っており、一側増し目2の形成箇所における孔空きを目立たなくできる。同様に、図2(B)に示すように、他側増し目4は、後行編目列5の端部編目51と中間編目列3の端部編目33に直接繋がる捻り目であって、この他側増し目4を跨ぐように、後行編目列5の端部編目51と隣接編目52とを繋ぐ編糸が渡っており、他側増し目4の形成箇所における孔空きを目立たなくできる。また、図2(A)、(B)を対比すればわかるように、一側増し目2の形成箇所と、他側増し目4の形成箇所と、編目の並びや編交差状態が、基準線X−Xを挟んで完全な線対称となっている。そのため、出来上がる編地の見栄えを良くすることができる。
なお、図1に記載のステップを、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜入れ替えても良い。例えば、S11とS12の順序が逆でも良い。これら例示したものに限らず、適宜ステップを入れ替えたりすることで、編成効率を向上させることができる。その具体例を、次の変形実施形態に示す。
<変形実施形態>
変形実施形態では、内増やしを行う過程を通じて、形成した一側増し目を移動させないようにすることで、第1実施形態よりも編成効率を向上させた内増やし方法を図3に示す編成工程図に基づいて説明する。図3に示す編成は、図1に示す編成と共通する部分が多いので、図1との相違点を中心に説明する。
S1´,S2´では、図1のS1,S2と同様である。続くS3´では、図1のS3とは異なり、S2´で形成した先行編目列1の編目を全て目移しするのではなく、BDの編針c,dに係止される編目を、対向するFUの編針B,Cに目移しし、端部編目11はBDの編針eに残したままとする。
次いで、S4´では、S3´により空針となったBDの編針d(S2´で隣接編目12が形成されていた編針)に、捻り目となる掛け目2を形成する。この掛け目2は、後工程において移動することなく、そのまま一側増し目2となる。
S5´〜S7´では、図1のS5〜S7と同様の編成を行い、中間編目列3、他側増し目となる掛け目4、後行編目列5を編成する。
S8´では、S3´で目移しすることによりFUの編針B,Cに係止される編目を、対向するBDの編針b,cに目移しすると共に、S7´で形成した後行編目列5の編目のうち、BDの編針o,pに係止される編目を、対向するFUの編針O,Pに目移しする。このS8´により、先行編目列1の端部編目11と隣接編目12の間に、一側増し目2が挿入された状態になる。
S9´では、S8´で目移しすることによりFUの編針O,Pに係止される編目を、対向するBDの編針p,qに目移しし、続くS10´では、S6´で形成した掛け目4を、対向するBDの編針oに目移しする。このS9´,S10´により、後行編目列5の端部編目51と隣接編目52との間に、他側増し目4が挿入された状態になる。
この変形実施形態の編成工程によれば、第1実施形態で編成した編地と同じ編地を編成することができる。しかも、一側増し目2を形成位置から移動させないように編成工程を組むことで、第1実施形態よりも編成効率を向上させることができる。
<第2実施形態>
第2実施形態では、セーターなどの筒状に編成される袖において、袖幅を大きくするために内増やしをする際、本発明の内増やし方法を適用する例を図4,5に基づいて説明する。この場合、袖の内側において、袖の前後の編地部にそれぞれ増し目を形成するため、袖を前後の編地に2分するように基準線を規定する。つまり、図4,5に示すように、基準線X−Xは、前後の針床を分けるように、針床の長手方向に沿って設定される。
図4のT1には、内増やしを行う直前の編成コースが示されており、FDの編針E〜Mに袖の前側編地の編目が形成され、BDの編針e〜mに袖の後側編地の編目が形成されている。この状態から、袖の後側編地の一部を先行編目列、袖の前側編地の一部を後行編目列、後側編地と前側編地の残りの部分を中間編目列としてT2〜T15に示す編成を行う。
T2では、給糸口9を右方向に移動させ、BDの編針e〜jに先行編目列1の編目を形成し、T3,T4で給糸口9を左方向・右方向に移動させる間にFUの編針Jに掛け目2を、BDの編針k〜mに中間編目列3の一部の編目を形成する。掛け目2は、一側増し目2として、次のT5〜T7で中間編目列3の編幅内に挿入される。
T5,T6では、T4で形成した中間編目列3の3つの編目のうち、先行編目列1寄りの端部編目31(BDの編針kの編目)を動かさず、残りの2つの編目をFUの編針L,Mを経由してBDの編針m,nに目移しする。これらT5,T6の結果、中間編目列3の端部編目31と隣接編目32との間に空針(BDの編針l)が形成されるので、T7でその空針に、T3でFUの編針Jに形成した掛け目2を目移しする。これら一連の操作により、中間編目列3の端部編目31と隣接編目32の間に一側増し目(掛け目)2が挿入される。
次に、図5のT8では、T6で右側に止めおいた給糸口9を左方向に移動させ、FDの編針M〜Kに、T4で半分だけ形成した中間編目列3の残りの編目を形成する。続くT9では、T8で形成した編目を全て、BUの編針l〜nに目移しする。
T10,T11では、給糸口9を右方向・左方向に往復移動させる間に、FDの編針Kに掛け目4を、FDの編針J〜Eに後行編目列5の編目を形成する。掛け目4は、他側増し目4として、次のT12〜T15で中間編目列3の編幅内に挿入される。
T12では、T10で形成した掛け目4を対向するBUの編針kに預け、T13では、中間編目列3の端部編目33を、その形成時(T8参照)の位置であるFDの編針Kに戻す。そして、T14では、T9でBUに預けておいた中間編目列3の編目を、対向するFDの編針M,Nに目移しし、T15では、掛け目4を中間編目列3の端部編目33と隣接編目34との間に形成される空針(FDの編針L)に目移しする。これらT12〜T15により、中間編目列3の端部編目33と隣接編目34との間に他側増し目4が挿入される。
以上説明した編成工程に従って編幅を増加させた袖においても、基準線X−Xを挟んで左右完全に対称な一対の増し目を形成することができるし、その増し目の形成箇所における孔空きを目立たなくできる。
<第3実施形態>
上述した実施形態では、一側増し目と他側増し目を前後異なる側の針床で編成する例を説明したが、本第3実施形態では、両増し目を前後同じ側の針床で編成する例を、図6に基づいて説明する。
U1には、前身頃と後身頃を周回編成した状態が示されている。この状態から、U2では、給糸口9を右方向に移動させる間にBDの編針c〜eに先行編目列1の編目を形成し、続くU3では、給糸口9を反転させて、FUの編針Eで掛け目2を形成する。さらに、U4では、給糸口9を右方向に移動させる間に、BDの編針f〜mに中間編目列3の編目を形成し、続くU5では、給糸口を反転させて、FUの編針Nで掛け目4を形成し、U6では、給糸口9を右方向に移動させる間にBDの編針n〜pに後行編目列5の編目を形成する。これら一連の工程で掛け目2,4は共に、FUの編針に形成されることになる。
U7では、BDの編針c,d(o,p)に係止される先行編目列1(後行編目列5)の編目を、対向するFUの編針C,D(O,P)に目移しした後、U8(U9)でBUの編針p,q(b,c)に目移しする。これらU7〜U9により、先行編目列1の端部編目11と隣接編目12との間、および後行編目列5の端部編目51と隣接編目52との間に、空針(BDの編針d,o)が形成される。
最後に、U10,U11で、上記空針(BDの編針d,o)に、U3,U5で形成した掛け目2,4を増し目2,4として、編地部1,5の編幅内に挿入する。
第3実施形態の編成により形成される増し目の形成箇所近傍におけるループ図を、図7に示す。この図7(A)に示すように、先行編目列1の端部編目11と隣接編目12とを繋ぐ編糸が一側増し目2を跨ぐように渡り、図7(B)に示すように、後行編目列5の端部編目51と隣接編目52とを繋ぐ編糸が他側増し目4を跨ぐように渡るため、増し目2,4の形成箇所における孔空きを目立たなくできる。
なお、上述した実施形態では、説明の便宜上、全ての編地部を天竺編みとしたが、これらの編地部を組織柄にすることもできる。
1 先行編目列 11 端部編目 12 隣接編目
2 掛け目(一側増し目)
3 中間編目列 31,33 端部編目 32,34 隣接編目
4 掛け目(他側増し目)
5 後行編目列 51 端部編目 52 隣接編目
9 給糸口

Claims (3)

  1. 少なくとも前後一対の針床と、各針床に複数配置される編針に編糸を給糸させる給糸口とを備える横編機を用いて、針床に係止される編地の針床長手方向の端部よりも内側に増し目を形成するにあたり、連続して編成される複数の編目からなる中間編目列を挟んで一対の増し目を形成する内増やし方法であって、
    中間編目列の編成に先立ち、複数の編目からなる先行編目列を編成した後、この先行編目列の終端編目近傍の前後いずれかの針床の空針に捻れ目からなる一側増し目を形成し、
    次いで、先行編目列の編成に続いて中間編目列を編成し、
    さらに、中間編目列の終端編目近傍の前後いずれかの針床の空針に捻れ目からなる他側増し目を形成した後、複数の編目からなる後行編目列を編成する過程を含み、
    その過程の途中、もしくはその過程の後に、
    一側増し目を、先行編目列の編幅内、もしくは中間編目列の編幅内に挿入することと、
    他側増し目を、一側増し目を先行編目列の編幅内に挿入する場合は、後行編目列の編幅内に、一側増し目を中間編目列の編幅内に挿入する場合は、中間編目列の編幅内に挿入することと、
    を行うことを特徴とする内増やし方法。
  2. 他側増し目の形成は、一側増し目を形成した針床に対向する針床で行うことを特徴とする請求項1に記載の内増やし方法。
  3. 内増やしを行う過程で一側増し目を目移ししないで済むように、一側増し目を形成する前に、既に針床に形成されている先行編目列のうち、少なくとも中間編目列寄りの端部編目を除く単数あるいは複数の編目を対向する針床に目移しして、その目移しによって空針となった編針に一側増し目を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の内増やし方法。
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