JP5695311B2 - ランフラットタイヤ - Google Patents

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本発明はランフラットタイヤに関し、さらに詳しくは、ランフラット走行時におけるインナーライナー層の発熱を抑制して、耐久性を向上させるようにしたランフラットタイヤに関する。
一般に、サイドウォール部の内部に断面三日月状の補強ゴム層を挿入した所謂サイド補強型のランフラットタイヤでは、ランフラット走行時におけるサイド剛性を確保すると同時にタイヤの変形に伴う発熱を抑えるために、補強ゴム層として高モジュラスかつ低発熱性のゴム材料が使用されてきた(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、補強ゴム層に低発熱性のゴム材料を使用した場合にあっても、ランフラット耐久性の向上効果には限界があるという問題があった。
ランフラット耐久性を低下させる主な要因としては、ランフラット走行時におけるサイドウォール部の変形に伴い、サイドウォール部を構成するゴムの損失エネルギーが大きくなって発熱が加速することにあるということが知られている。本発明者は、この知見に基づいて、ランフラットタイヤにおける発熱原因の究明を続けてきたところ、この原因の一つとしてインナーライナー層を構成するゴムの物性がランフラット耐久性に大きく影響を及ぼしていることを確認するに至った。
従来のインナーライナー層には、耐空気透過性や耐亀裂成長性を確保する観点から、通例60℃における損失正接(tanδ)が0.15〜0.25程度のブチル系のゴム材料が使用されてきた(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、このようなゴム材料をインナーライナー層の全面に配置したランフラットタイヤでは、空気圧の低下に伴う変形により、インナーライナー層を構成するゴムの損失エネルギーが抑制できず、これにより耐久性が低下するということを確認した。
すなわち、本発明者の研究によれば、インナーライナー層の発熱は、図3に示すように、サイドウォール部6、6の内部に配置された補強ゴム層7、7に隣接する領域、特に補強ゴム層7、7の上端末7a、7a近傍の位置からタイヤ断面高さSHの略1/2に相当する位置に至る領域S、Sにおいて顕著に表れることを突き止め、本発明を完成するに至った。
特開2002−103925号公報 特開平10−87884号公報
本発明の目的は、上述する問題点を解消するもので、ランフラット走行時におけるインナーライナー層の発熱を抑制して、耐久性を向上させるようにしたランフラットタイヤを提供することにある。
上記目的を達成する本発明のランフラットタイヤは、左右一対のビード部に埋設されたビードコア間に延在するカーカス層と、該カーカス層の内周側に配置したインナーライナー層とを備えると共に、サイドウォール部における前記カーカス層とインナーライナー層との間に断面三日月状の補強ゴム層を介在させたランフラットタイヤにおいて、前記インナーライナー層のうち、少なくとも前記補強ゴム層のタイヤ径方向上端末からインナーライナー層に沿ってビード部側に10mm離間した位置からタイヤ断面高さの1/2に相当する位置に至る前記補強ゴム層に隣接する中間領域を熱可塑性樹脂にエラストマーを配合した60℃におけるtanδが0.03〜0.10の熱可塑性樹脂組成物からなる低発熱性材料により構成すると共に、前記中間領域を除くインナーライナー層を30℃における空気透過係数が200×10 -12 cc・cm/cm 2 ・sec・mmHg以下で、かつ厚さが0.3〜3mmのゴム組成物により構成したことを特徴とする。
さらに、上述する構成において、以下(1)及び/又は(2)に記載するように構成することが好ましい。
(1)前記ゴム組成物をブチル系ゴムを主成分とするゴム組成物で構成する。
(2)前記中間領域における低発熱性材料の空気透過係数を(1〜700)×10-12 cc・cm/cm2 ・sec・mmHgに設定する。
本発明によれば、インナーライナー層のうち、ランフラット走行時における変形が最も大きい少なくとも補強ゴム層のタイヤ径方向上端末からインナーライナー層に沿ってビード部側に10mm離間した位置からタイヤ断面高さの1/2に相当する位置に至る補強ゴム層に隣接する中間領域を熱可塑性樹脂にエラストマーを配合した60℃におけるtanδが0.03〜0.10の熱可塑性樹脂組成物からなる低発熱性材料により構成したので、この領域におけるインナーライナー層の変形に伴う損失エネルギーが効率よく抑制されて、ランフラット耐久性を向上させることができる。
しかも、本発明では、前記中間領域を除くインナーライナー層を30℃における空気透過係数が200×10 -12 cc・cm/cm 2 ・sec・mmHg以下で、かつ厚さが0.3〜3mmのゴム組成物により構成したので、この領域における空気圧の漏洩を効率よく防いで、良好なランフラット耐久性を確保することができる。
本発明の実施形態からなるランフラットタイヤの一例を示す断面図である。 図1のランフラットタイヤにおけるインナーライナー層の主要部の構成を説明するための一部を拡大して示す断面図である。 従来のランフラットタイヤにおけるインナーライナー層の発熱箇所を説明するための断面図である。
以下、本発明の構成につき添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態からなるランフラットタイヤの一例を示す断面図であり、図2は図1のランフラットタイヤにおけるインナーライナー層の主要部の構成を説明するための一部を拡大して示す断面図である。
図1において、本発明のランフラットタイヤ1は、左右一対のビード部2、2に埋設されたビードコアー3、3間に延在するカーカス層4と、カーカス層4の内周側に配置したインナーライナー層5とを備えると共に、サイドウォール部6、6におけるカーカス層4とインナーライナー層5との間に断面三日月状の補強ゴム層7、7を介在させている。図中8はトレッド部、9はビードフィラー、10はベルト層をそれぞれ示している。
そして、本発明のランフラットタイヤ1では、図2に示すように、インナーライナー層5のうち、少なくとも補強ゴム層7のタイヤ径方向上端末7aからインナーライナー層5に沿ってビード部2側に10mm離間した位置Aからタイヤ断面高さSHの1/2に相当する位置Bに至る補強ゴム層7に隣接する中間領域Q(図中の黒塗り部分)を熱可塑性樹脂にエラストマーを配合した60℃におけるtanδが0.03〜0.10、好ましくは0.03〜0.05の熱可塑性樹脂組成物からなる低発熱性材料により構成している。
このように、補強ゴム層7、7に隣接するインナーライナー層5の中間領域Q、Qを熱可塑性樹脂にエラストマーを配合した60℃におけるtanδが0.03〜0.10の熱可塑性樹脂組成物からなる低発熱性材料により構成したので、ランフラット走行時において、この領域Q、Qにおけるインナーライナー層5の変形に伴う損失エネルギーが効率よく抑制されて、ランフラット耐久性を飛躍的に向上させることができる。
上述する熱可塑性樹脂にエラストマーを配合した熱可塑性樹脂組成物からなる低発熱性材料は、特に限定されるものではないが、ポリアミド樹脂やポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂にジエン系ゴムやオレフィン系ゴムなどのエラストマーを配合した熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性樹脂組成物で構成するとよい。
本発明において、上述するtanδは、粘弾性スペクトロメーター(岩本製作所製)を使用して、周波数20Hz、初期歪み10%、動歪み±2%、温度60℃の条件で測定したときの値が適用される。また、タイヤ断面高さSHとは、タイヤを適用リムに装着して正規内圧を充填したときのタイヤ外径とリム径との差の1/2に相当する高さをいう。
さらに、本発明では、上述する中間領域Q、Qを除くトレッド部8の内周側の上方領域P及びビード部2側の下方領域R、Rにおけるインナーライナー層5を30℃における空気透過係数が200×10-12 cc・cm/cm2 ・sec・mmHg以下、好ましくは50×10-12 cc・cm/cm2 ・sec・mmHg以上で、かつ厚さが0.3〜3mmのゴム組成物により構成している。これにより、空気圧の漏洩を効率よく防いで耐久性を確保することができる。
なお、本発明ランフラットタイヤ1では、中間領域Q、Qにおける熱可塑性樹脂にエラストマーを配合した熱可塑性樹脂組成物からなる低発熱性材料の空気透過係数は、特に限定されるものではないが、好ましくは、空気透過係数が(1〜700)×10-12 cc・cm/cm2 ・sec・mmHg、最も好ましくは(1〜200)×10-12 cc・cm/cm2 ・sec・mmHgとなるように調整するとよい。これにより、インナーライナー層5の中間領域Q、Qからの空気の漏洩を効率よく防いで耐久性を確実に向上させることができる。
上述するように、本発明のランフラットタイヤ1は、インナーライナー層5のうち、ランフラット走行時における変形が最も大きい少なくとも補強ゴム層7、7の上端末7a、7aからビード部2側に10mm離間した位置A、Aからタイヤ断面高さSHの1/2に相当する位置B、Bに至る中間領域Q、Qを熱可塑性樹脂にエラストマーを配合した60℃におけるtanδが0.03〜0.10の熱可塑性樹脂組成物からなる低発熱性材料により構成すると共に、前記中間領域Q、Qを除くインナーライナー層5を30℃における空気透過係数が200×10 -12 cc・cm/cm 2 ・sec・mmHg以下で、かつ厚さが0.3〜3mmのゴム組成物により構成したことにより空気圧の漏洩を防ぎながらランフラット耐久性を向上させるもので、近年の高性能車両に装着するランフラットタイヤとして幅広く適用することができる。
タイヤサイズを195/55R1687・、タイヤ構造を図1として、インナーライナー層における領域P、Q及びRの材料、60℃におけるtanδ、空気透過係数及び厚さをそれぞれ表1のように異ならせて、従来タイヤ(従来例)、比較タイヤ(比較例1〜6)及び本発明タイヤ(実施例)を製作した。なお、各タイヤの補強ゴム層には60℃におけるtanδが0.05のジエン系ゴム組成物を使用した。なお、インナーライナー層を構成する表1におけるゴムにはブチル系ゴム組成物を使用し、樹脂にはポリアミド系樹脂にブチル系エラストマーを配合した熱可塑性エラストマーを使用した。
これら8種類のタイヤについて、それぞれ以下の試験方法によりランフラット耐久性の評価を行った。
〔ランフラット耐久性〕
各タイヤをリム(サイズ:16×6.0J)に組み込み、空気圧を210kPaとして、4輪のうち駆動輪右側(1本)のバルブコア除去して、排気量1600ccのFF車に装着し、4名乗車相当の荷重を負荷させたうえで、アスファルト路面からなるテストコースを平均速度80km/hにて走行させ、ドライバーがタイヤの故障による振動を感じるまで走行を続け、その走行距離を以って、ランフラット耐久性の評価とした。そして、その結果を従来タイヤを100とする指数により表1に併記した。
Figure 0005695311
表1より、中間領域Qを樹脂(熱可塑性エラストマー)で構成した本発明タイヤは、ゴムで構成した従来タイヤ及び比較タイヤに比して、ランフラット耐久性が飛躍的に向上していることがわかる。
1 ランフラットタイヤ
2 ビード部
3 ビードフィラー
4 カーカス層
5 インナーライナー層
6 サイドウォール部
7 補強ゴム層
8 トレッド部
9 ビードフィラー
10 ベルト層
P 上方領域
Q 中間領域
R 下方領域
SH タイヤ断面高さ

Claims (3)

  1. 左右一対のビード部に埋設されたビードコア間に延在するカーカス層と、該カーカス層の内周側に配置したインナーライナー層とを備えると共に、サイドウォール部における前記カーカス層とインナーライナー層との間に断面三日月状の補強ゴム層を介在させたランフラットタイヤにおいて、
    前記インナーライナー層のうち、少なくとも前記補強ゴム層のタイヤ径方向上端末からインナーライナー層に沿ってビード部側に10mm離間した位置からタイヤ断面高さの1/2に相当する位置に至る前記補強ゴム層に隣接する中間領域を熱可塑性樹脂にエラストマーを配合した60℃におけるtanδが0.03〜0.10の熱可塑性樹脂組成物からなる低発熱性材料により構成すると共に、前記中間領域を除くインナーライナー層を30℃における空気透過係数が200×10 -12 cc・cm/cm 2 ・sec・mmHg以下で、かつ厚さが0.3〜3mmのゴム組成物により構成したランフラットタイヤ。
  2. 前記ゴム組成物が、ブチル系ゴムを主成分とするゴム組成物である請求項1に記載のランフラットタイヤ。
  3. 前記中間領域における低発熱性材料の空気透過係数が(1〜700)×10-12 cc・cm/cm2 ・sec・mmHgである請求項1又は2に記載のランフラットタイヤ。
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