本実施形態の説明に当たっては、加工対象としての強化ガラス、その強化ガラスを加工する強化ガラス用加工装置としての超音波振動加工装置、その超音波振動加工装置を用いた強化ガラスの加工方法、加工品質の比較の順で説明する。
1.強化ガラス
強化ガラス1は、図1に示すように、ガラス母材(例えばアルミノシリケートガラス)2の表面側(裏面側)に表面強化層(化学強化層)3が設けられた構成とされている。この表面強化層3により、強化ガラス1は、薄板化を図りつつ、曲げ応力、衝撃に対して高強度が確保されることになっている。具体的には、強化ガラス1としては、母材2の厚みδ1が0.7mm前後、表面強化層3の厚みδ2が40μm以上(現在の時点で70μmのものが開発されているが、勿論、加工の対象)、表面圧縮応力が600MPa〜700MPaとされたものが対象とされている。勿論、強化ガラス1だけでなく通常のガラスも、超音波振動加工装置の加工対象となる。
加工装置本体5は、図2に示すように、比較的長尺な有底筒状のハウジング6と、該ハウジング6内に保持される加振装置(加振機構)7と、該加振装置7に取付けられる加工具8と、該加振装置7を回転駆動する回転駆動源としてのモータ9と、を有している。
(a)前記ハウジング6は、その軸心延び方向を上下方向に向けつつその開口を下側に向けた状態で、昇降装置(図2において、一部(ハウジング6に対する取付け部)のみ図示)10に取付けられている。昇降装置10は、ハウジング6を上下方向に昇降動させると共に、その際の昇降速度を調整できる機能を有しており(矢印参照)、この昇降装置10の機能により、ハウジング6は、加工時に所定の設定速度(送り速度)をもって下降される。
(b)前記加振装置7は、円柱状のボディ部11と、該ボディ部11に保持されて超音波振動を発生させる円柱状の超音波振動発生ユニット12と、を有している。ボディ部11は、その軸心を上下方向に向けた状態で前記ハウジング6の内周面に軸受け13を介して保持されており、その軸受け13により、ボディ部11は、その軸心を中心として相対回転可能且つ軸心延び方向(上下方向)に変位動不能とされている。このボディ部11の上端部には、モータ9の駆動軸9aを取付けるための円筒状の取付け筒部14が形成され、そのボディ部11の下端面には保持孔(図示略)が形成されている。超音波振動発生ユニット12は、ボディ部11下端面の保持孔に保持されている。この超音波振動発生ユニット12は、既知の如く、超音波振動子、振動伝達部、増幅部が直列的に連結された状態で構成されており、これらは、ボディ部11の保持孔の内部から開口側に向けて、超音波振動子、振動伝達部、増幅部の順で配置されている。このうち、超音波振動子は、圧電体と、これをボルト締めする金属ブロックとを有し、圧電体の間、及び、圧電体と金属ブロックとの間に電極(不図示)が配置されており、この電極間に直流電圧のパルス電圧を印加することにより、圧電体に縦振動が励振されることになっている。この超音波振動子は、印加する直流電圧のパルス電圧の周波数を超音波振動子の共振周波数に設定すると、共振現象により、強力な超音波振動が発生することになっている。振動伝達部は、超音波振動子の振動を増幅部に伝達する機能を有しており、増幅部は、振動伝達部から伝達された振動を増幅する機能を有している。
(c)前記加工具8は、前記超音波振動発生ユニット12の振動によって振動するようにすべく、図2に示すように、超音波振動発生ユニット12の軸心上においてその増幅部に連結されている。加工具8は、強化ガラス1に対して直接に接触してその強化ガラスの加工を行うものであり、本実施形態においては、軸状のダイヤモンド砥石が用いられ、その軸状の加工具8は超音波振動発生ユニット12から下方に向けて延びている。この加工具8は、加工対象である強化ガラスの加工を行うだけでなく、その強化ガラスの圧力変動を検出するセンサとしても機能する。
(d)前記モータ9は、前記ハウジング6の底部6a外面(上端面)に取付けられている。ハウジング6の底部6aには、ハウジング6内外を貫通させる貫通孔15が形成されており、モータ9の駆動軸9aは、その貫通孔15を貫通して前記ボディ部11における取付け筒部14に嵌合保持(固定)されている。これにより、モータ9の駆動力は、ボディ部11、超音波振動発生ユニット12を介して加工具8に伝達され、加工具8は、その軸心を中心として回転できることになっている。
超音波発振器16は、入力電気信号(具体的には、電圧又は電流)を調整してその調整電気信号を超音波振動発生ユニット12(超音波振動子)に付与することになっている。本実施形態においては、電流一定(例えば1〜2Aの所定値)の下で電源からの入力電圧の振幅、振動数(周波数)が調整され、その調整された電圧信号(例えば300〜400V)が超音波振動発生ユニット12(超音波振動子)に付与されることになる。勿論この場合、電圧信号に代えて、電圧一定の下で、電流信号を超音波振動子に付与してもよい。
(3)超音波振動加工装置4は、図2、図3に示すように、前記超音波発振器16(超音波振動発生ユニット12)及び前記モータ9をフィードバック制御する制御手段としての制御ユニットUを備えている。
(i)制御ユニットUには、超音波発振器16からの電圧信号(電圧の振幅、周波数信号)、モータ9の回転数信号(電圧信号)が入力される一方、制御ユニットUからは、超音波発振器16、モータ9に対して制御信号がそれぞれ出力されることになっている。
(ii)制御ユニットUは、フィードバッグ制御のための目標値を設定するための設定部(設定手段)と、設定部の目標値と制御変数との偏差に基づいて操作変数を判断する判断部(判断手段)と、判断部からの操作変数を実行すべく制御信号を出力する実行制御部(実行制御手段)と、を備えている。
(a)設定部は、本実施形態においては、フィードバック制御のための目標値として、超音波振動発生ユニット12(超音波振動子)に対する入力電圧に関して、目標振幅、目標周波数が設定されており、それらには、強化ガラスの加工に伴う該強化ガラスの厚み方向各部において変化する値であって該強化ガラスの品質を悪化させる品質悪化発生値(クラック、所定以上のチッピング等を発生させる値)の範囲に属さないがものが設定されている。強化ガラスの加工に伴う該強化ガラス内部の引張応力の開放等、加工に伴う強化ガラス内部の応力変化を考慮するためである。また、モータ9に対する入力電流に関しては、加工にとって効果的な回転とする観点から、目標電流が設定されている。
上記超音波振動発生ユニット12に対する入力電圧の目標振幅としては、最終的に加工具8の振幅が3μm〜9μmの範囲(品質悪化発生値の範囲に属さないもの)の所定振幅(好ましくは8μm)となるように設定され、加工具8の振幅が3μm未満及び9μmを超えるものについては、品質悪化発生値の範囲とされている。この場合、目標振幅を、加工具8の最終的な振幅において3μm〜9μmの範囲としているのは、本件発明者が得た知見に基づき、3μm未満では、加工能力が十分でないために(切削屑等が残って切削抵抗等が増大することにより)強化ガラスにクラック、所定以上のチッピング等が発生する一方、9μmを超えた場合には、加工に伴う強化ガラス内部の応力変化に追従できないために強化ガラスにクラック、所定以上のチッピング等が発生する可能性が高まるからである。
上記超音波振動発生ユニット12(超音波振動子)に対する入力電圧の目標周波数としては、最終的に加工具8の振動数が60kHz〜64kHzの範囲(品質悪化発生値の範囲に属さないもの)の所定振動数(好ましくは63kHz)となるように設定され、加工具8の振動数が60kHz未満及び64kHzを超えるものについては、品質悪化発生値の範囲とされている。この場合、目標周波数を、加工具8の最終的な振動数において60kHz〜64kHzとしているのは、本件発明者の知見に基づき、60kHz未満では、加工能力が十分でないために強化ガラスにクラック、所定以上のチッピング等が発生する一方、64kHzを越えた場合には、加工に伴う強化ガラス内部の応力変化に追従できないために強化ガラスにクラック、所定以上のチッピング等が発生する可能性が高まるからである。
上記モータ9に対する目標電流としては、最終的に加工具8の回転数が2000rpm〜30000rpmの範囲の所定回転数(好ましくは5000rpm)となるように設定されている。この場合、加工具8の回転数を2000rpm〜30000rpmの範囲としているのは、2000rpm未満では、強化ガラスに対する加工の効果が十分でない一方、30000rpmを越えると、加工面に対する滑り現象(加工抵抗低下)が生じて加工の効果が低下すると共に、耐久性の観点から問題を生じるからである。
(b)判断部は、加工具8の振幅に関しては、超音波発振器16からの電圧(戻り電圧)の振幅と設定部の目標振幅との偏差から操作変数を判断し、加工具8の振動数に関しては、超音波発振器16からの電圧(戻り電圧)の周波数と設定部の目標周波数との偏差から操作変数を判断する。また、加工具8の回転数に関しては、モータ9からの電流信号と設定部の目標電流との偏差から操作変数を判断する。
(c)実行制御部は、前記判断部からの各操作変数を制御信号として超音波発振器16及びモータ9に出力することになっている。これにより、超音波発振器16からの出力電圧(振幅、周波数)が調整されて、加工具8は、所定の上下振幅で且つ所定振動数となるようにフィードバッグ制御され、モータ9についても、その回転数がフィードバッグ制御されて、加工具8は所定回転数に維持されることになる。
(iii)制御ユニットUは、フィードバッグ制御を、サンプル周期(応答速度)を0.3msec以下である0.3msec〜0.2msecの範囲内の所定サンプル周期(好ましくは0.2msec)をもって行わせるように設定されている。0.3msec〜0.2msecの範囲内の所定サンプル周期とするのは、本件発明者が得た知見に基づき、0.3msecを超えると、強化ガラスの加工中の微細な応力変化に追従できず、強化ガラスにクラック、所定以上のチッピング等が発生する可能性が高まるからである。また、下限として、0.2msecを設定しているのは、現在の時点で得ることができる最下限であり、その値未満のサンプル周期をもって現実にはフィードバッグ制御を行うことができないからである。今後、0.2msec未満の値のものが開発されれば、より好ましい。
このため、制御ユニットUにおいては、フィードバッグ制御のサンプル周期の高速化を図るべく、従前のものに比して、アナログ/デジタル変換機能及びCPUの演算処理能力の高速化が図られている。これにより、具体的には、加工具8の振動数(周波数)が80kHzとされた下でサンプル周期を0.2msecとした場合には、負荷変動に対応して最適環境にて発振するまでに強化ガラスに与えられる振動衝撃を16回に抑えることができる。また、30mm/minの加工具8の送り速度の下で、0.2msecのサンプル周期で発振環境を最適化した場合、加工の進行が0.1μm毎にフィードバック制御が行われることになり、加工中の微細な状態変化(応力変化)に対応(追従)できることになる。
これに対して、加工具8の振動数(周波数)が80kHzである下では、0.0000125秒(0.0125ms)に一回、強化ガラスに対して振動衝撃が与えられることになるが、その下でサンプル周期(発振応答速度)を10msecとした場合(従前の制御ユニットの場合)には、負荷変動に対応して最適環境にて発振するまでに800回の振動衝撃が強化ガラスに与えられる。また、30mm/minの加工具8の送り速度の下で、10msecのサンプル周期で発振環境を最適化した場合には、加工の進行が5μmとなってしまう。このような5μmは、数十μmの表面強化層に対して相対的に大きすぎる値であり、その5μm毎の応答では、強化ガラスの状態変化に追従できない。この結果、強化ガラスにストレスを与えながら加工を行わなければならなくなり、強化ガラスにクラック等が発生してしまう。
(c-2)加工実験1の結果、図4に示す内容が得られた。その図4に示す内容によれば、加工具8の目標振動数は、60kHz〜64kHz(特に63kHz)が好ましいこと(60kHz未満、64kHzを超えるものが品質悪化発生値の範囲であること)が判明した。
(d-2)加工実験2の結果、図5に示す内容が得られた。その図5に示す内容によれば、加工具8の振幅は、3μm〜9μm(特に8μm)が好ましいこと(3μm未満、9μmを超えるものが品質悪化発生値の範囲であること)が判明した。
(e-2)加工実験3の結果、図6に示す内容が得られた。その図6に示す内容によれば、フィードバック制御のサンプル周期は、0.3msec以下(特に0.2msec)が好ましいことが判明した。尚、下限値(0.2msec)は、現在開発されている限界値である。
(e-3)図7は、フィードバック制御のサンプル周期(応答速度)と加工成功率との関係を示すものである。この図7によれば、応答速度が小さくなればなるほど、加工成功率が高くなることを示し、特に0.5ms以下においては、急激な立ち上がりをもって加工成功率が高まった。尚、加工成功の評価は、前述の評価(○)と同じであり、図6においては、加工成功率87%以上のものについて「○」と評価した。
(1)先ず、図8に示すように、表面強化層3を有する強化ガラス(具体的には、母材厚み0.7mm、表面強化層の厚み40μm以上、表面圧縮応力600MPa以上のもの)1が大板基板とされたものを用意する。携帯端末、タブレット等の保護用ガラスを作成するべく、大板基板から所定形状のものを切り出すためである。本実施形態においては、生産効率を高めるために、複数枚(例えば12枚)の大板基板(強化ガラス1)を接着剤20(接着層80μm〜100μm)により積層状態をもって接着した積層体(積層ガラス群)1Aが用意される。この場合、接着剤20としては、UV硬化接着剤等、紫外線により硬化し、それが温水により溶けるものが好ましい。迅速に接着剤を硬化させ、この後、最終的に、切り出された各強化ガラスを剥がす必要があるからである。この場合、積層体1Aの最外表面(表面、裏面)を構成するガラス1nについては、強化ガラスではなくコストが安い通常のガラスを用いてもよい。積層体1Aの最外表面は、チッピングが特に生じ易い傾向にあるからである。また、母材厚み0.5mmの大板基板(強化ガラス1)については、それを16枚接着した積層体1Aを用意してもよい。
(2)次に、図9に示すように、上記積層体1Aを厚板状の固定台21にセットする。この固定台21には、上面に複数の溝(図示略)が形成されている一方、その各溝に連なる連通孔22が固定台21の内部を経てその側面から開口されている。この各連通孔22には、図示を略す吸引装置(図示略)が接続されることになっており、固定台21上方側の空気が固定台21上面の溝、連通孔22を介して吸引されることになっている。これにより、固定台21上にセットされた積層体1Aは、この吸引作用に基づき固定台21に固定される。
(3)次に、図10に示すように、前述の超音波振動加工装置4を用いることにより、上記積層体1Aから携帯端末用保護ガラスの大きさのもの(積層ブロック1a)を複数切り出すと共に、図11に示すように、その各積層ブロック1aに対して長孔23、角孔24を形成すべく、研削加工を行う。そして、積層体1Aからの積層ブロック1aの切り出し等を終えると、積層体1Aのうち、積層ブロック1a以外のものが除去され、図12に示すように、各積層ブロック1aの外周、長孔23、角孔24に対して仕上げ研削加工を行う。このとき、各積層ブロック1aは、吸引作用に基づき固定台21に固定された状態が維持される。尚、図12においては、便宜上、固定台21が縮小された状態で示され、積層ブロック1aに形成されている長孔23、角孔24は省略されている。
この超音波振動加工装置4を用いた上記積層ブロックの切り出し加工、研削加工等においては、加工具8の振幅及び振動数が目標振幅及び目標振動数にそれぞれ近づくようにフィードバック制御され、その際の目標振幅及び目標振動数としては、加工中の微細な強化ガラスの応力変化があったとしても、強化ガラスのクラック、チッピング等の発生を基本的に防止すべく、強化ガラスの加工に伴う該強化ガラスの厚み方向各部において変化する品質悪化発生値(強化ガラスのクラック、所定以上のチッピングの発生基準)の範囲外のものが用いられる。
具体的には、加工具8の目標振幅が、3μm〜9μmの範囲内の好ましいもの、例えば8μmとされると共に、加工具8の目標振動数が60kHz〜64kHzの範囲内の好ましいもの、例えば63kHzに設定される。加工具8の目標振幅を3μm〜9μmの範囲内のものにする理由、加工具8の目標振動数を60kHz〜64kHzの範囲内のものにする理由は、前述の通りである。しかも、この場合のフィードバック制御におけるサンプル周期としては、0.3msec以下の0.2msecが用いられる。強化ガラスの内部で発生する応力変化を素早く捉え、強化ガラスに対するストレスを減らして、強化ガラスのクラックの発生等を的確に防止するためである。
またこの場合、加工具8は、その回転数が2000rpm〜30000rpmの範囲内の所定回転数5000rpmの下で回転される。超音波振動加工の効果を十分に発揮させつつ、加工具8の回転による好ましい効果を得るためである。その他の加工条件については、一般的な条件が用いられる。
(4)この後、ポリッシュ加工を経て、加工を終えた積層ブロック1aは、フッ酸等のガラス端面強化の化学処理を経て温水に浸漬され、各強化ガラス1は剥がされる。これにより、製品(携帯端末用保護ガラス等)として、加工された強化ガラスが得られる。
4.本件方法(上記加工装置)を用いて作成した試験用ガラスの品質と、従前の方法を用いて作成した比較例に係る試験用ガラスの品質とを比較評価した。
(1)本件方法を用いて作成した試験用ガラスの場合
(i)試験用ガラスの作成
試験用ガラスとして、図13に示す携帯端末用保護ガラス1Pを作成することを試みた。
(ii)本件方法による試験用ガラスの具体的作成方法及び作成条件
試験用ガラスの作成方法は、前述の強化ガラスの加工方法と同様である。すなわち、表面強化層を有する強化ガラス(具体的には、母材材質:アルミノシリケートガラス、母材厚み0.7mm、表面強化層40μm、表面圧縮応力600MPaのもの)が大板基板とされたもの12枚を、UV硬化接着剤等を用いることにより積層固定状態としたものを用意し、それから携帯端末用保護ガラスの大きさのもの(積層ブロック1a)を切り出し、その切り出したものに対して、長孔23、角孔24の研削加工を行って(一次加工)、一次加工品(積層体)を作成する。次に、一次加工品における外周、長孔23、角孔24の面取り仕上げ加工(二次加工)を行い、二次加工品(積層体)を作成する。次に、二次加工品に対してポリッシュ加工を行い、その後、加工を終えた積層ブロック1aの各ガラス板を温水に漬けて剥がし、試験用(評価用)ガラスを得る。
この場合、一次加工、二次加工において、前述の超音波振動加工装置4が用いられ、その一次加工、二次加工における加工条件は、下記の通りとされた。
一次加工条件
加工具8
種類:軸状のダイヤモンド砥石(粒度:♯320番)
直径:1.5mm
送り速度:60mm/min
振幅:8μm
振動数:63kHz
フィードバッグ制御のサンプル周期(応答速度):0.2msec
回転数:5000rpm
二次加工条件
加工具8
種類:軸状のダイヤモンド砥石(粒度:♯600番)
直径:1.5mm
送り速度:60mm/min
振幅:5μm
振動数:63kHz
フィードバッグ制御のサンプル周期(応答速度):0.2msec
回転数:5000rpm
(iii)本件方法による試験用ガラスの評価方法及び評価結果
図13に示す試験用ガラスの各部A〜Eにおける一次加工後、二次加工後、ポリッシュ加工後の加工状態を確認した。
それによれば、図14〜図18に示す拡大写真図(270倍)からも明らかなように、試験用ガラスの各部A〜Eは、いずれの加工段階(一次加工後、二次加工後、ポリッシュ加工後)の状態においても、良好な加工状態を示した。
(2)従前の方法を用いて作成した試験用ガラスの場合
(i)試験用ガラスの作成
本件方法による試験用ガラスの場合同様、試験用ガラスとして、図13に示す携帯端末用保護ガラスを作成することを試みた。
(ii)従前の方法による試験用ガラスの具体的作成方法及び作成条件
前述の本件方法同様、12枚の大板基板(表面強化層を有する強化ガラス)を積層状態をもって接着したものを用意し、それに対して、下記一次加工条件の下で、一次加工(積層ブロック1aの切り出し、長孔23、角孔24の加工)を行おうとした。しかし、積層ブロック1aの切り出し後、一次加工における長孔23の加工初期に、早々と複数のクラックが生じた。このため、比較例に係る試験用ガラスの孔加工に関する部分(D部,E部(図13参照))に関しては、一次加工における角孔24の加工を含め、以後の加工を行うことを断念した。また、比較例に係る試験用ガラスの外周面に関する部分(A部〜C部(図13参照))のうち、B部、C部に関しては、二次加工、ポリッシュ加工を行ったが、A部に関しては、クラックが入ったため、以後の加工を断念した。
一次加工条件
加工具8
種類:軸状のダイヤモンド砥石(粒度:♯320番)
直径:1.5mm
送り速度:60mm/min
振幅:8μm
振動数:50kHz
フィードバッグ制御のサンプル周期(応答速度):10msec
回転数:5000rpm
(iii)比較例に係る試験用ガラスの評価方法及び評価結果
比較例に係る試験用ガラスの各部A〜D(図13参照)において、一次加工後の加工状態を確認したところ、図19〜図21(270倍)、図22に示す拡大写真図(90倍)に示す結果となった。すなわち、比較例に係る試験用ガラスの各部A〜Cでは、クラック又は所定以上のチッピングが生じ、D部では、複数の大きなクラックが発生し、製品として成立し得ない品質のものとなった。図22中、中央の大きな穴は、長孔23に至る前の加工初期の穴である。
図23〜図39は他の実施形態を示す。この他の実施形態において、前記実施形態と同一構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
この実施形態は、前述の超音波振動加工装置4等を有効に利用して、製品ガラスとしての携帯端末、タブレット等の保護用ガラスを効率よく生産する具体的な加工方法(製造方法)を示しており、図23は、その加工方法の工程図を示している。
(1)この加工方法においては、表面強化層3を有する強化ガラス(具体的には、母材厚み0.7mm、表面強化層の厚み40μm以上、表面圧縮応力600MPa以上のもの)1として、その強化ガラスの大きさを大きくした大板基板(以下、符号1を用いる)が用意されている。この大板基板1は、後述するように、加工時に積層体1Aとして用いるべく、その複数枚が積層した状態で接着されることになっており、このため、多数の大板基板1が予め用意されている。この各大板基板1は、図24に示すように、平面視長方形状に形成され、その各大板基板1には、多数の枠状模様50(枠状模様群)と2つの位置合わせマークとしてのアライメントマーク(位置合わせマーク)51とが予め印刷されている。枠状模様50は、携帯端末、タブレット等の保護用ガラスの周縁部を占めることになっており、その保護用ガラスが携帯端末、タブレット等に用いられた場合には、その保護用ガラスの枠状模様50により、その携帯端末、タブレット等において長方形状の表示画面が区画されることになる。この多数の枠状模様50は、各大板基板1において、同じものが大板基板1の縦横に整列をなして複数列を構成しており、その枠状模様50の各列間には、ダイシング(dicing)ブレードによる切断加工を行うために、直線状に延びる若干の間隔52があけられている。アライメントマーク51は、大板基板1の周縁部のうち、その一方の組における一対の各対向辺(長辺)近傍においてそれぞれ設けられ、その両アライメントマーク51は、他方の組における一対の対向辺(短辺)の並設方向に離間された状態で配置されている。この2つのアライメントマーク51は、多数の枠状模様50に対して所定の配置関係となっており、この多数の枠状模様50と2つのアライメントマーク51との所定の配置関係は、各大板基板1において共通となっている。
また、本実施形態においては、前述の積層体1Aの最外表面(表面、裏面)を構成するべく、カバーガラス1nが用意されている。カバーガラス1nには、化学強化ガラスとは異なり、表面強化層を有しない通常のガラスが用いられ、そのカバーガラス1nの大きさは、前記大板基板1と同じ大きさとされている。このカバーガラス1nは、透明であり、その外面には、何も印刷されていない。
(2)このような準備の下、本実施形態に係る加工方法においては、図23、図25に示すように、先ず、「カバーガラス1nに対する印刷工程」が実行される。
この工程においては、この工程を実行するために、平面視長方形状の第1ベーステーブル54と、その第1ベーステーブル54上に設けられる2つの位置決めピン55と、第1ベーステーブル54の下方側にその第1ベーステーブル54の幅方向両側において配置される2台の検知カメラ56と、第1ベーステーブル54の上方側に前記各検知カメラ56に対応してそれぞれ設けられる2台のマーク印刷用インクジェットヘッド57と、が備えられている。
第1ベーステーブル54は、大板基板1を載置できる平坦な上面を有し、その上面形状は、大板基板1等の形状(板面形状)に似せつつ、その大板基板1よりも多少、大きくされている。このため、この第1ベーステーブル54の上面形状を作業者が見た場合には、その上面に対して大板基板1をどのように配置するかが把握できることになる。
2つの位置決めピン55は、第1ベーステーブル54の上面上において、その一の位置決めピン55が一方の組における一対の対向辺(長辺)の一方の近傍に配置され、他の位置決めピン55が他方の組における一対の対向辺(短辺)の一方の近傍に配置されている。これにより、第1ベーステーブル54上に大板基板1を載置し、その大板基板1の外周面を2つの位置決めピン55に当接したときには、その一の位置決めピン55が大板基板1の長辺部分に当接し、他の位置決めピン55が大板基板1の短辺部分に当接することになり、大板基板1は、第1ベーステーブル54上の所定位置に位置決められる。
各検知カメラ56は、作業者の手作業により移動可能となっている移動ユニット58にそれぞれ搭載されており、その各移動ユニット58の移動により、各検知カメラ56は、第1ベーステーブル54の下方側において、移動可能となっている。各検知カメラ56は、上方領域を写し出す機能を有しており、その写し出した内容は、撮像中心(検知カメラの軸線上に位置)を示す基準マークと共にモニタ(図示略)に表示されることになっている。
各マーク印刷用インクジェットヘッド57は、前記各移動ユニット58にそれぞれ搭載されている。各インクジェットヘッド57は、各検知カメラ56の上方において、該各検知カメラ56に対向した状態でそれぞれ配置(同一軸線上に配置)されており、各インクジェットヘッド57は、各移動ユニット58の移動により、第1ベーステーブル54の上方において、各検知カメラ56と同期して移動することになっている。
このような構成の下で、この工程を実行するに当たっては、先ず、第1ベーステーブル54上に大板基板1(多数の枠状模様50が印刷されているもの)を載置し、その大板基板1の上にカバーガラス1nを載置する。そして、その重ねられた大板基板1及びカバーガラス1nの両外周面を第1ベーステーブル54上面上の2つの位置決めピン55に当接させ、その両位置決めピン55により、重ねられた大板基板1及びカバーガラス1nを第1ベーステーブル54上の所定位置に位置決める。
第1ベーステーブル54上の所定位置に大板基板1及びカバーガラス1nが位置決められると、各移動ユニット58を作業者が移動させ、各検知カメラ56(軸心)と大板基板1の各アライメントマーク51とを、上下方向に延びる同一軸線上に位置させる。
この場合、第1ベーステーブル54には、大板基板1における各アライメントマーク51の配置予想領域において開口(図示略)が形成されており、その開口を通じて各検知カメラ56は各アライメントマーク51の検知作業を行うことができることになっている。また、作業者が移動ユニット58の移動位置を決めるに当たっては、検知カメラ56からの出力信号に基づいてモニタに表示されるアライメントマーク51と基準マーク(撮像中心を示すモニタ上のマーク:図示略)との位置合わせが行われる。
各アライメントマーク51に対する各検知カメラ56(モニタ上の基準マーク)の位置合わせが行われると、移動ユニット58によりインクジェットヘッド57を下降させ、そのインクジェットヘッド57により、カバーガラス1nに位置合わせマーク53を印刷する。これにより、カバーガラス1nに印刷された位置合わせマーク53は、大板基板1のアライメントマーク51に重なって配置されることになる。
また、この工程には、図25に示すように、第1ベーステーブル54の長手方向及び幅方向に移動可能な印刷ユニット59も備えられている。印刷ユニット59は、カバーガラス1nに対して印字を行うインクジェットヘッド60と、インクを硬化させる硬化ランプユニット61と、を備えており、この印刷ユニット59は、前述の検知カメラ56の位置情報(アライメントマーク51位置)に基づき、カバーガラス1n上を大板基板1の枠状模様50毎に移動すると共に、その各枠状模様50内において、印字及びその硬化のために細かく移動できることになっている。この印刷ユニット59のインクジェットヘッド60は、カバーガラス1nに、その各枠状模様50内において、製品管理番号の他に、図示を略す制御ユニット(記憶手段)に入力された加工予定条件等を印字することになっており、この印字内容と最終的加工結果(超音波振動加工終了後の加工結果)とを比較することにより、良好な製品ガラスを得るための加工条件が多く得られることになる。
このようなカバーガラス1nに対する位置合わせマーク53の印刷等が行われると、そのカバーガラス1nが取り除かれ、第1ベーステーブル54上に載置された大板基板1上に次の新たなカバーガラス1nが載置される。そして、その新たなカバーガラス1nに対して上述と同様の作業が行われ、その新たなカバーガラス1n上に位置合わせマーク53等が印刷される。
尚、図25においては、カバーガラス1nが透明であるため、大板基板1に印刷された多数の枠状模様50がカバーガラス1nを介して見えている。
(3)次に、図23に示すように、「接着剤の塗布工程」が実行される。加工対象を、複数枚の大板基板1が積層された積層体1Aとするためである。特に本実施形態においては、積層体1Aとして、最上段と最下段とがカバーガラス1nとされた構造のものが形成される。
このため、この工程においては、図26に示すように、第2ベーステーブル63上に、先ず、積層体1Aの最下段となるカバーガラス1n(位置合わせマーク53が印刷されたもの)を載置し、そのカバーガラス1nを、第2ベーステーブル63にその半周囲の範囲に亘って配置された位置決めブロック64に当接させることにより位置決める。そして、その第2ベーステーブル63上のカバーガラス1nに、移動可能な接着剤塗布用ディスペンサ65を用いて所定のパターンをもって接着剤を塗布する。
この接着剤としては、UV硬化接着剤等、紫外線により硬化し、それが温水により溶けるものが用いられる。迅速に接着剤を硬化させる一方、最終的に製品ガラスの積層体1Aが形成された後には、それを各製品ガラスとして剥がす必要があるからである。
尚、図26においては、カバーガラス1nの存在を明確に示すために、カバーガラス1nの下方側が透けて見えないように示されているが、カバーガラス1nは、透明性を有している。
(4)次に、図23に示すように、「ガラスの貼り合わせ及び接着剤の圧延工程」が実行される。
この工程においては、図27に示すように、先ず、前工程で接着剤塗布が行われたカバーガラス1nを、その接着剤塗布面を上側に向けつつ第3ベーステーブル67上に載置し、そのカバーガラス1nを、図示を略す位置決めピンにより位置決めした後、真空吸引装置(図示略)により第3ベーステーブル67に吸引固定する。次いで、その第3ベーステーブル67上のカバーガラス1nに対して大板基板1を重ね、それらを載置した第3ベーステーブル67を、搬送ユニット68により圧延ローラ69に向けて移動させる。この移動により、カバーガラス1nと大板基板1との間の接着剤が圧延され、その両ガラス1n、1からはみ出した接着剤は、スクレーパ・接着剤回収トレイ70に回収される。
(5)次に、図23に示すように、「積層位置合わせ調整及び接着剤の仮硬化工程」が実行される。
この工程においては、この工程を実行するために、図28に示すように、調整用ベーステーブルとしての平面視長方形状の第4ベーステーブル72と、第4ベーステーブル72を間に挟んで上下に配置される2組の一対の検知カメラ73a,73b(位置合わせ部)と、接着剤を仮硬化させる仮硬化用ランプ装置74と、が備えられている。
第4ベーステーブル72は、前述の大板基板1及びカバーガラス1nを載置できる平坦な上面を有しており、その上面には、大板基板1等の概略的な配置の向き、配置領域等を作業者に知らしめるべく、配置領域案内ブロック(図示略)が設けられている。これに基づき、第4ベーステーブル72には、大板基板1の各アライメントマーク51の配置想定領域を考慮し、その配置想定領域よりもやや広めの開口(図示略)がそれぞれ形成されている。また、第4ベーステーブル72には、上記開口の他にも開口(図示略)が適宜形成されており、その開口は、真空吸引装置(図示略)に連なっている。
各組の一対の検知カメラ73a,73bは、図28に示すように、第4ベーステーブル72に対して固定関係にある支持部材75にそれぞれ取付けられ、各組の一対の検知カメラ73a,73bは、第4ベーステーブル72に対して固定状態となっている。各組の一対の検知カメラ73a,73bは、その一方が下側検知カメラ73aとして第4ベーステーブル72の下側に配置され、他方が上側検知カメラ73bとして第4ベーステーブル72の上側に配置されている。この下側検知カメラ73aと上側検知カメラ73bとは、互いに対向して配置されており、両カメラ73a、73bの撮像中心は、上下方向に延びる同一軸線上に配置されるように設定されている。
この2組の検知カメラ73a,73bは、平面的には、第4ベーステーブル72の幅方向両側において、その長手方向に離間するようにして配置されており、その両組の検知カメラ73a,73b間の平面的な距離(各組における下側検知カメラ73aと上側検知カメラ73bとが結ぶ軸線と第4ベーステーブル72との交点間の距離)は、前述の大板基板1における2つのアライメントマーク51間の距離に等しくされている。これにより、大板基板を第4ベーステーブル72上に載置して、その各アライメントマーク51を、各組における下側検知カメラ73aと上側検知カメラ73bとが結ぶ軸線上に位置させたときには、図28に示すように、大板基板1は、第4ベーステーブル72内に収まると共に、大板基板1の短辺が第4ベーステーブル72の短辺に沿い、大板基板1の長辺が第4ベーステーブル72の長辺に沿う配置となる。
仮硬化用ランプ装置74は、接着剤の硬化を促進する照射光を照射するものである。本実施形態においては、カバーガラス1nと大板基板1との間に用いる接着剤として、UV硬化接着剤が用いられていることから、仮硬化用ランプ装置74は紫外線を照射することになっている。この場合、仮硬化用ランプ装置74による紫外線の照射は、UV硬化接着剤をある程度まで硬化させるものの、完全な硬化までには至らないものとなっている。
このような構成の下で、この工程を実行するに当たっては、先ず、前工程で貼り合わせられたカバーガラス1nと大板基板1とを、カバーガラス1nを下側にして第4ベーステーブル72上に載置する。そして、カバーガラス1nを第4ベーステーブル72上において移動させて、その各位置合わせマーク53を各組の下側検知カメラ73aの軸線上に位置させる。この位置合わせを終えると、真空吸引装置(図示略)によりカバーガラス1nを第4ベーステーブル72に吸引固定する。
一方、カバーガラス1n上に載置される大板基板1については、このときには、接着剤が未だ硬化しておらず、大板基板1がカバーガラス1n上を移動できることから、それを利用して、その各アライメントマーク51を各組の上側検知カメラ73bの軸線上に位置させる。勿論、上記各位置合わせとして、作業者がモニタを見ながら、各マーク51(53)を検知カメラ73の基準マークに合致させる作業を行う。このように、下側に配置されるカバーガラス1nの位置合わせには、下側検知カメラ73aを用い、上側に配置される大板基板1の位置合わせには、上側検知カメラ73bを用いることから、カバーガラス1nと大板基板1との間に介在される接着剤によりそれらの透明性が低下するとしても、下側又は上側検知カメラ73のいずれか一方をだけを用いる場合のように位置合わせ精度が低下するようなことはなく、高い位置合わせ精度が確保できることになる。
カバーガラス1nの位置合わせマーク53と大板基板1のアライメントマーク51とが位置合わせされると、仮硬化用ランプ装置74により紫外線が照射されて、接着剤が仮硬化され、カバーガラス1nと大板基板1とは、ある程度以上の接着力をもって仮一体化される。この仮一体化は、接着剤の仮硬化に基づいているが、人間の力では、カバーガラス1nと大板基板1とを剥がしたり、ずらしたりすることは容易にはできない。
(6)次に、カバーガラス1nと大板基板1との仮硬化処理を終えると、それらは、図23、図29に示すように、再び、「接着剤塗布工程」に戻される。
この工程では、第2ベーステーブル63上に、カバーガラス1nと大板基板1とを仮一体化したもの(以下、仮一体化物という)1A’を、カバーガラス1nを下側にした状態で載置し、大板基板1に対して、前述の「接着剤塗布工程」場合同様(図26参照)、接着剤の塗布を行う(図29参照)。
(7)次に、図23に示すように、大板基板1に接着剤が塗布された仮一体化物1A’は、再び、「ガラスの貼り合わせ及び接着剤の圧延工程」に運ばれる。
この工程では、第3ベーステーブル67上に、接着剤が塗布された大板基板1を上側にした状態で仮一体化物を載置し、その大板基板1上に新たな大板基板1が重ねた上で、前述同様、圧延ローラ69により大板基板1間の接着剤を圧延する(図27参照)。
(8)次に、図23に示すように、前工程を終えた仮一体化物1A’は、再び、「積層位置合わせ調整及び接着剤の仮硬化工程」に運ばれる。
この工程では、先ず、前工程で新たに大板基板1が積層された仮一体化物を、カバーガラスを下側にした状態で第4ベーステーブル72上に載置する。そして、前述同様、最下段のカバーガラス1nの位置合わせマークを下側検知カメラ73aの軸線上に位置合わせし、その位置合わせを終えると、真空吸引装置(図示略)によりカバーガラス1nを第4ベーステーブル72に吸引固定する。
カバーガラス1nが第4ベーステーブル72に吸引固定されると、現在、最上段に配置される大板基板1を、その各アライメントマーク51が各組の上側検知カメラ73bの軸線上に位置するように移動させる。
この位置合わせを終えると、再び、仮硬化用ランプ装置74による照射光により新たな大板基板1とその下側の大板基板1との間の接着剤を仮硬化させ、仮一体化物を、カバーガラス1n、大板基板1及び大板基板1の3枚とする。
(8)このようにして、図23に示すように、「接着剤の塗布工程」、「ガラスの貼り合わせ及び接着剤の圧延工程」、「積層位置合わせ調整及び接着剤の仮硬化工程」が繰り返され、これにより、複数枚の大板基板1が積層されつつ接着される。そして、最終的に、カバーガラス1nが大板基板1に積層された状態で接着され、最下段だけでなく、最上段もカバーガラス1nが配置されたものとなる。
勿論このとき、各大板基板1の枠状模様50、さらには、各大板基板1のアライメント51とカバーガラス1nの位置合わせマーク53とは、合致した状態で重なる。
(9)最上段と最下段がカバーガラス1nであり、その間の大板基板1が所定積層枚数であるものが作り上げられると、図23に示すように、その仮一体化物1A’は本硬化工程に運ばれる。
この本硬化工程においては、図30に示すように、スライド式の引き出しユニット76が備えられており、その各引き出しユニット76には、本硬化用ランプ77がそれぞれ設けられている。
この工程では、前工程である「積層位置合わせ調整及び接着剤の仮硬化工程」を終えた仮一体化物1A’を、各引き出しユニット76内に引き出した状態で設置し、それを元に戻した上で、本硬化用ランプ77を点灯する。本硬化用ランプ77は、点灯開始後、所定時間、点灯が行われ、その点灯をもって、仮一体化物1A’の接着剤は完全硬化されることになる。これにより、積層体1Aが得られたことになる。
(10)積層体1Aが形成されると、図23に示すように、その積層体1Aは、「移載プレートの取付け工程」に運ばれる。
この移載プレート取付け工程においては、「積層位置合わせ調整及び接着剤の仮硬化工程」において用いられた装置類が利用されるが、その装置類には、この工程を実行するための独自の構造も設けられ、その独自の構造は、新たな関係部材と共に利用される。
具体的には、装置類の一つである第4ベーステーブル72上に、筒状の第1、第2位置決め筒部78a,78b(位置決め関与部)が立設され、その第1、第2位置決め筒部78a,78bを利用するために移載部材としての移載プレート80と位置決めピン81a,81bとが用意されている(図28、図31参照)。
第1、第2位置決め筒部78a,78bは、第4ベーステーブル72上において、その幅方向両側に配置され、その第1、第2位置決め筒部78a,78bは、第4ベーステーブル72上で位置決めされた大板基板1の外側領域に位置されている。本実施形態においては、第1、第2位置決め筒部78a,78bは、第4ベーステーブル72(位置決めされた大板基板1)の長手方向中央を基準として、互い違いの配置関係をもって対称とされている。これは、後述するように、治具プレート82において適正に配置された大板基板1の枠状模様50群に対する第1、第2位置決め筒部86a,86bの配置位置を、第4ベーステーブル72で位置決めされた大板基板1の枠状模様50群に対する第1、第2位置決め筒部78a,78bの配置位置に反映させているのである。
移載プレート80は、平面視長方形状をしており、その長手方向長さは、大板基板1の幅方向長さを幾分超えるものとされている。この移載プレート80には、その長手方向両側において、第1、第2位置決め孔80a,80b(位置決め関係部)がそれぞれ形成されており、その両位置決め孔80a,80bは、移載プレート80の対角をなす角部に位置されている。この両位置決め孔80a,80bは、前記第1、第2位置決め筒部78a,78bに対して対応しており、第1位置決め筒部78aの開口と第1位置決め孔80aの開口とが重なるとき、第2位置決め筒部78bの開口と第2位置決め孔80bの開口とを重ねることができることになっている。
第1、第2位置決めピン81a,81bは、前述の第1、第2位置決め筒部78a,78b、第1、第2位置決め孔80a,80bと協働して移載プレート80を第4ベーステーブル72に位置決めるものであり、その位置決めに際して、第1位置決めピン81aについては、第1位置決め筒部78aと位置決め孔80aとに対して挿入し、第2位置決めピン81bについては、第2位置決め筒部78bと位置決め孔80bとに対して挿入することになる。
このような構成の下で、この工程を実行するに当たっては、先ず、積層体1Aを第4ベーステーブル72上に載置し、前述の積層位置合わせ調整工程の場合と同様、各下側検知カメラ73aを利用して、その各軸線上にカバーガラス1nの各位置合わせマーク(大板基板1のアライメントマーク)を位置させる。この位置決めを終えると、図示を略す真空吸引装置により、その位置決められた積層体1Aを第4ベーステーブル72上に吸引固定する。
次いで、接着剤が塗布された移載プレート80を、その接着剤が存在する側を積層体1Aに向けつつその積層体1A(カバーガラス1n(最上段ガラス))に重ねると共に、移載プレート80における第1位置決め孔80aの開口を第1位置決め筒部78aの開口に重ね、第2位置決め孔80bの開口を第2位置決め筒部78bの開口に重ねる。その作業を終えると、第1位置決め筒部78aと第1位置決め孔80aとに対して第1位置決めピン81aを挿入すると共に、第2位置決め筒部78bと第2位置決め孔80bとに対して第2位置決めピン81bを挿入し、移載プレート80を位置決めされた状態で積層体1A(カバーガラス1n)に接着する(図31参照)。
この場合、本実施形態においては、移載プレート80を積層体1Aに接着する接着剤は、大板基板1等を互いに接着する接着剤とは異なるものが用いられる。後述するように、移載プレート80を積層体1Aから切り離すタイミングと、大板基板1等を互いに剥がすタイミングとが異なるからである。このため、接着剤としては、例えば、アクリル樹脂とアクリルオリゴマーで構成される変性アクリレート系構造接着剤が用いられる。
(11)積層体1Aの上面に移載プレート80が接着されると、図23に示すように、その移載プレート80が接着された積層体1Aは「切断加工(ダイシング加工)工程」へ運ばれる。
この工程においては、図32に示すように、治具プレート82と、その治具プレート82に着脱可能に保持できる多数のセット治具83と、ダイシングブレード84(図35参照)と、が備えられている。
治具プレート82は、図32に示すように、前述の第1〜第4ベーステーブル54,63,67,72と同様の大きさをもって平面視長方形状に形成されており、その治具プレート82の上面には、多数の凹所85と、筒状の第1、第2位置決め筒部86a,86bと、位置決め孔87と、が設けられている。多数の凹所85は、その各凹所85の平面的な大きさを前述の大板基板1の枠状模様50よりも小さくしつつ、その大板基板1における多数の枠状模様50に対応した状態で配置されており、その多数の凹所85は、治具プレート82の長手方向及び幅方向に整列して複数列を構成している。第1、第2位置決め筒部86a,86bは、治具プレート82上において、その幅方向両側に立設されており、その第1、第2位置決め筒部86a,86bは、第4ベーステーブル72の長手方向中央を基準として、互い違いの状態で対称となっている。より具体的には、治具プレート82において適正に配置された大板基板1の枠状模様50群に対する第1、第2位置決め筒部86a,86bの配置位置が、第4ベーステーブル72で位置決めされた大板基板1の枠状模様50群に対する第1、第2位置決め筒部78a,78bの配置位置と同じにされている。このため、この第1、第2位置決め筒部86a,86bの開口は、そのうちの第1位置決め筒部86aの開口に前述の移載プレート80の第1位置決め孔80aを重ねたときには、移載プレート80の第2位置決め孔80bを第2位置決め筒部86bの開口に重ねることができるように設定されている。位置決め孔87は、治具プレート82の上面において、各凹所85当たり2つ形成されており、その2つの位置決め孔87は、治具プレート82の幅方向において、各凹所85毎にその各凹所85を挟むようにして配置されている。
多数の各セット治具83は、図32に示すように、上述の各凹所85内に着脱可能に嵌合できるものとなっている。この各セット治具83には、図33に示すように、嵌合凸部88と、その嵌合凸部88の基端側に設けられ表面(外面、上面)が平坦面とされた支持台部89と、その支持台部89の裏面に形成される位置決め孔90と、が備えられている。嵌合凸部88は、凹所85の大きさに対応して形成されており、嵌合凸部88と凹所85とは着脱可能に嵌合できることになっている。このため、この嵌合凸部88と凹所85との嵌合により、治具プレート82上において、セット治具83の位置決めがなされることになる。支持台部89は、嵌合凸部88よりも大きく且つ大板基板1の枠状模様50よりも多少、縮小された平面視長方形状に形成されており、嵌合凸部88が凹所85に嵌合されたときには、支持台部89の肉厚分が治具プレート82の上面から突出することになっている。位置決め孔90は、支持台部89裏面の周縁部において、治具プレート82の位置決め孔87に対応して2つ形成されており、嵌合凸部88が凹所85に嵌合されたときには、支持台部89裏面の各位置決め孔90と治具プレート82の各位置決め孔87とは重なることになる。
このような多数のセット治具83は、その各セット治具83の嵌合凸部88が各凹所85に嵌合されたときには、その各セット治具83における支持台部89の表面は、大板基板1の枠状模様50よりも多少、縮小された面積をもって、その大板基板1の多数の枠状模様と同じパターンを形成することになり、大板基板1の各枠状模様50を治具プレート82上の各セット治具83に合わせて大板基板1を多数のセット治具83上に重ねたときには、各枠状模様50の下方領域内に各セット治具83の支持台部89が収まることになる。
また、セット治具83は整列して複数の列を形成しており、その隣り合う各列間には、隙間91がそれぞれ形成されている。このため、各隙間91には、切断加工のために、ダイシングブレード84を進入させることができることになっている。
本実施形態においては、図32に示すように、治具プレート82の下側には電磁チャック92が設けられている。この電磁チャック92は、電磁石を利用して構成されており、治具プレート82における各凹所85にセット治具83(嵌合凸部88)が嵌合されている場合において、電磁チャック92が作動したときには、そのセット治具83は治具プレート82に強固に保持されることになる。
ダイシングブレード84(図35参照)は、その剛性等に基づき切断加工を超音波振動加工装置4における軸状の加工具8を用いる場合よりも早めることができること等に着目して用いられている。このダイシングブレード84としては、例えばダイヤモンドブレード等が用いられる。このダイシングブレード84は、その移動駆動源等が図示を略す制御ユニットにより制御されることになっており、その制御ユニットは、治具プレート82の位置、治具プレート82上のセット治具83の配置位置、セット治具83の大きさ、隣り合うセット治具83間の隙間91等の情報に基づき、ダイシングブレード84に積層体1Aからの積層ブロック1aの切り出しを行わせる。
このような構成の下で、この工程を実行するに当たっては、先ず、治具プレート82上に各凹所85毎に設けられる位置決め孔87に図示を略す位置決めピンを挿入して、その位置決めピンを治具プレート82上に立設した上で、各凹所85にセット治具83をそれぞれ嵌合すると共に、セット治具83の位置決め孔90に上記位置決めピンを挿入する。そして、電磁チャック92を作動させ、各セット治具83を治具プレート82に吸着させる。これにより、各セット治具83は、予め定められた所定位置において、治具プレート82に強固に保持されることになる(図32参照)。
一方、治具プレート82に各セット治具83が強固に保持されると、移載プレート80が接着された積層体1Aの下面に接着剤を塗布した上で、その積層体1Aを治具プレート82に運ぶ。そして、移載プレート80における第1位置決め孔80aを第1位置決め筒部86aの開口に合わせると共に、移載プレート80における第2位置決め孔80bを第2位置決め筒部86bの開口に合わせながら、積層体1Aを治具プレート82上に降ろし、第1位置決め孔80aと第1位置決め筒部86aとに対して第1位置決めピン81aを挿入し、第2位置決め孔80bと第2位置決め筒部86bとに対して第2位置決めピン81bを挿入する。これにより、移載プレート80は治具プレート82に位置決められることになり、積層体1Aの各枠状模様50が各セット治具83上に適正にそれぞれ配置された状態で、積層体1Aは各セット治具83に接着される。多数のセット治具83上に適正に配置される大板基板1の多数の枠状模様50群に対する第1、第2位置決め筒部86a,86bの配置位置が、第4ベーステーブル72上で位置決めされた積層体1Aにおける多数の枠状模様50群に対する第1、第2位置決め筒部78a,78bの配置位置として反映されているからである。
本実施形態においては、移載プレート80が接着された積層体1Aの下面に用いられる接着剤として、前述のUV硬化接着剤は用いられていない。UV硬化接着剤を用いた場合には、治具プレート82近辺に、接着剤を硬化させる硬化用ランプ装置を設けなければならないからである。このため、接着剤としては、硬化用ランプ装置による照射がなくても硬化する接着剤、例えば前述の変性アクリレート系構造接着剤等が用いられる。
移載プレート80が接着された積層体1Aが各セット治具83に接着されると、移載プレート80を積層体1Aから取り外す。この場合、移載プレート80を積層体1Aから取り外すに際しては、移載プレート80と積層体1Aとの接着を破壊する外力を加える。このとき、移載プレート80が積層体1Aにおける最上段のカバーガラス1nに接着されていることから、仮にそのカバーガラス1nが損傷しても問題とはならない。
次いで、図35に示すように、ダイシングブレード84を用いて、積層体1Aにおける枠状模様50の列間を、セット治具83間の隙間91を考慮しつつ、切断加工(ダイシング加工)を行う。ダイシングブレード84を用いて切断加工を行うのは、ダイシングブレード84の方が超音波振動加工装置4における軸状の加工具8よりも剛性が高く、その切断加工をもって積層体1A(大板基板1)から積層ブロック1a(積層体1Aから切り出したもの:製品用素板)を切り出した方が、超音波振動加工装置4における軸状の加工具8を用いて積層ブロック1aを切り出すよりも速いからである。
切断加工は、図36、図37に示すように、積層体1Aにおいて、各枠状模様50を切り出すことになり、各セット治具83上には積層ブロック1aが、セット治具83上面に接着された状態で切り出される。
(12)セット治具83に接着された積層ブロック1aが切り出されると、そのセット治具83に接着された積層ブロック1aは、図23に示すように、「超音波振動加工工程」に運ばれる。
この工程においては、加工用ベーステーブルとしての加工用治具プレート96と前述の超音波振動加工装置4とが備えられている。
加工用治具プレート96は、前記治具プレート82と基本的に同じ構成となっており、この加工用治具プレート96が治具プレート82に対して異なる点は、第1、第2位置決め筒部86a,86bが省かれている点と、隣り合う凹所85間の間隔が広げられて、積層ブロック1aが接着されたセット治具83を各凹所85に嵌合したときに、隣り合う積層ブロック1a間に、超音波振動加工を可能とすべく、所定の隙間97が確保されている点だけとなっている。このため、治具プレート82と同一構成要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
超音波振動加工装置4は、既に詳述しているが、超音波振動加工装置4には、ハウジング6を上下方向に昇降動させる昇降装置10(図2参照)だけでなく、昇降装置10を含むハウジング6を、前後左右に移動させる移動装置(図示略)が備えられている。この移動装置の移動、昇降装置10の昇降動は、加工用治具プレート96にセットされるセット治具83、そのセット治具83上に接着された積層ブロック1a等の情報を考慮した設定内容に基づき制御ユニットU(図3参照)により制御される。
このような構成の下で、この工程を実行するに当たっては、図36、図38に示すように、切り出した積層ブロック1aを接着したセット治具83を治具プレート82から取り出し、それらを、加工用治具プレート96の各凹所85内にセット(嵌合凸部88を凹所85に嵌合等)すると共に電磁チャック92により各セット治具83を加工用治具プレート96に強固に保持する。
このような状態の下で、図39に示すように、超音波振動加工装置4を用いて、積層ブロック1aに対して孔等の加工(仕上げ加工を含む)、積層ブロック1aの外周面を加工(仕上げ加工を含む)を行う。
(13)超音波振動加工装置4による加工が終了すると、積層ブロック1aが接着されたセット治具83は、図23に示すように、「剥がし作業工程」に運ばれる。積層ブロック1aをセット治具83から剥がすと共に、カバーガラス1nと製品ガラス、製品ガラス同士を互いに剥がして、製品ガラス(製品)を得る必要があるからである。
このため、この工程では、先ず、積層ブロック1aとセット治具83に剥がす外力を加えることにより、両者1a、83とを剥がす。次いで、積層ブロック1aを、温水が入っている温浴槽に入れ、積層ブロック1a等における接着剤を溶かす。これにより、製品としての製品ガラスが得られることになる。
したがって、上記実施形態においては、ダイシングブレード84を用いて、積層体1Aを切断加工することにより積層ブロック1aを切り出すこととしていることから、超音波振動加工装置4の軸状の加工具8を用いて積層ブロック1aを切り出す場合に比べて積層ブロック1aを早く切り出すことができる。その一方、外周面を超音波振動加工装置4の軸状の加工具8を用いて、積層ブロック1aの外周面を加工、仕上げ加工を行うことから、仮に、ダイシングブレード84による切断加工によって積層ブロック1aの外周面にチッピングが生じたとしても、基本的に行われる超音波振動加工装置4の加工具8による加工によって補修されることになる。このため、製品ガラスの品質を確保しつつ製品ガラス1枚の生産に要する時間を極力短縮できる。
また、治具プレート82上の所定位置に多数のセット治具83を規則的に配置できると共に、移載プレート80等を用いることにより、その各セット治具83上に大板基板1の各枠状模様50を適正に配置した状態にしつつ、大板基板1を多数のセット治具83に接着できることから、ダイシングブレード84による切断加工を単純な動作の繰り返しとすることができ、積層ブロック1aとして同じものを確実に大板基板1から切り出すことができると共に、ダイシングブレード84による切断加工制御を簡単化することができる。
この場合、カメラやセンサ類等を用いることなく、移載プレート80、位置決め筒部78a,78b,86a,86b等を用いるだけで、大板基板1の各枠状模様50を治具プレート82のセット治具83上に適正に配置でき、複雑で高価な設備を不要とすることができる。また、カメラやセンサ類のように故障するようなことはなく、耐久性の高いものを用いることができる。
さらには、上記積層ブロック1aを接着したセット治具83を加工用治具プレート96の規則的な各凹所85にそれぞれ保持することから、同じ形状の積層ブロック1aが加工用治具プレート96上に規則的に並ぶことになり、超音波振動加工装置4に規則的な作業を行わせることができる。このため、超音波振動加工装置4の制御も簡単化することができる。
以上実施形態について説明したが本発明にあっては、次の態様を包含する。
(1)請求項9の構成の下で、目標振幅を3μm〜9μmの範囲の所定振幅とすると共に、目標振動数を60kHz〜64kHzの範囲の所定振動数にすること。これにより、本件発明者が見出した知見に基づき、加工具の具体的な振幅及び振動数として、強化ガラスの加工精度の観点から好ましいものを提供できる。
この場合、目標振幅を3μm〜9μmとしているのは、3μm未満では、加工能力が十分でないために(切削屑等が残って切削抵抗等が増大することにより)強化ガラスにクラック、所定以上のチッピング等が発生する一方、9μmを超えた場合には、加工に伴う強化ガラス内部の応力変化に追従できないために強化ガラスにクラック、所定以上のチッピング等が発生する可能性が高まるからである。また、目標振動数を60kHz〜64kHzとしているのは、目標振幅の場合同様、60kHz未満では、加工能力が十分でないために強化ガラスにクラック等が発生する一方、64kHzを越えた場合には、加工に伴う強化ガラス内部の応力変化に追従できず強化ガラスにクラック等が発生する可能性が高まるからである。
(2)請求項9の構成の下で、加工具の回転数を、2000rpm〜30000rpmの範囲内の所定回転数とすること。これにより、本件発明者の知見に基づき、前述の加振条件の下で、加工具の回転数を、強度の高い表面強化層を有する強化ガラスを加工する観点から、好ましいものにできる。
この場合、加工具の回転数を2000rpm〜30000rpmの範囲内の所定回転数としているのは、2000rpm未満では、強化ガラスに対する加工の効果が十分でない一方、30000rpmを越えると、加工面に対する滑り現象(加工抵抗低下)が生じて加工の効果が低下すると共に、耐久性の観点から問題を生じるからである。