JP5689692B2 - 発泡電線及びこれを有する伝送ケーブル - Google Patents

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Description

本発明は、発泡電線及びこれを有する伝送ケーブルに関する。
USB3.0ケーブル、HDMIケーブル、インフィニバンドケーブル、マイクロUSBケーブルなどの高速伝送ケーブルなどに使用される発泡電線は、導体と、その導体を被覆する発泡絶縁層とで構成され、発泡絶縁層を製造する際には、マスターバッチが使用されることがある。
例えば下記特許文献1には、予め樹脂の一部に高濃度で発泡剤を練り込んだマスターバッチを作っておき、これをベース樹脂とドライブレンドして押出することにより導体上に発泡絶縁層を形成し、発泡絶縁電線を得ることが開示されている。
特開平11−213759号公報(段落0022)
しかし、上記特許文献1に記載の発泡電線は、以下に示す課題を有していた。
即ちマスターバッチ樹脂としてプロピレン系樹脂を用いると、低温において脆化が起こり易いという問題があった。発泡電線は極寒地域でも使用されうるため、このような低温における脆化は十分に抑制されることが望ましい。言い換えると、発泡電線は優れた耐寒性を有することが望ましい。
そこで、マスターバッチの樹脂として、耐寒性に優れるポリエチレンを使用することが考えられる。しかし、マスターバッチの樹脂として低密度ポリエチレン(LDPE:Low Density PolyEthylene)や高密度ポリエチレン(HDPE:High Density PolyEthylene)などのポリエチレンを用いる場合、得られる発泡電線には高周波における誘電特性(以下、単に「誘電特性」と呼ぶ)の向上の点で未だ改良の余地があった。
またマスターバッチの樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE:Linear Low Density PolyEthylene)を用いる場合、発泡絶縁層の表面に、押出に起因する肌荒れが発生する場合があった。この肌荒れは、VSWR(Voltage Standing Wave Ratio)で表されるような反射減衰特性などを悪化させ、特に高周波での伝送特性を低下させるため、表面肌荒れが十分に抑制されることが求められる。
また発泡電線においては、電気特性の低下を抑制するため、その長手方向に沿った発泡絶縁層の外径変動を十分に抑制することも求められる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた耐寒性及び誘電特性を有するとともに外径変動及び表面肌荒れを十分に抑制できる発泡電線及びこれを有する伝送ケーブルを提供することを目的とする。
本発明者は上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、マスターバッチの樹脂として、特定のエチレン系樹脂を用い、樹脂全体におけるエチレン系樹脂の配合比率を所定の範囲とすることで上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち本発明は、導体と、前記導体を被覆する発泡絶縁層とを備える発泡電線であって、前記発泡絶縁層が、熱分解型化学発泡剤及びエチレン系樹脂を含むマスターバッチを含有する発泡絶縁層形成用材料において前記エチレン系樹脂を溶融させた後、前記熱分解型化学発泡剤を熱分解させて発泡させることにより得られるものであり、前記発泡絶縁層形成用材料中の樹脂全体における前記エチレン系樹脂の配合比率が5質量%以上であり、前記エチレン系樹脂が、エチレンと、4〜20個の炭素原子を有するオレフィンとの共重合体であり、前記オレフィンがα−オレフィンであり、前記α−オレフィンが1−ブテン及び/又は1−ヘキセンであり、前記エチレン系樹脂中の1−ヘキセンの配合比率が5質量%を超えない発泡電線である。
この発泡電線によれば、優れた耐寒性及び誘電特性を有するとともに外径変動及び表面肌荒れを十分に抑制できる。またオレフィンがα−オレフィン以外のオレフィンである場合に比べて、結晶性が適度に高くなり、適度に高い耐熱性が得られるとともに、より優れた誘電特性が得られる。さらにα−オレフィンがブテン及び/又はヘキセン以外のα―オレフィンである場合に比べて、エチレン系樹脂を、低配合量でより効率的に適切な結晶性を有するように調節できる。さらにまたエチレン系樹脂中の1−ヘキセンの配合比率が5質量%を超える場合に比べて、結晶性を適度に高い状態にでき、それによって適度に高い耐熱性が得られるとともに、より優れた柔軟性、耐寒性及び誘電特性が得られる。
上記発泡電線においては、前記発泡絶縁層形成用材料がプロピレン系樹脂を更に含み、前記発泡絶縁層形成用材料中における樹脂全体における前記プロピレン系樹脂の配合比率が10〜95質量%であり、前記エチレン系樹脂の配合比率が5〜90質量%であることが好ましい。
この場合、優れた耐熱性と、優れた耐寒性及び誘電特性と、外径変動及び表面肌荒れの抑制とを両立させることができる。
α−オレフィンが1−ブテン及び1−ヘキセンである場合、前記エチレン系樹脂中の1−ブテンと1−ヘキセンとの合計配合比率は12質量%以下であることが好ましい。
この場合、エチレン系樹脂中の1−ブテンと1−ヘキセンとの合計配合比率が12質量%を超える場合に比べて、結晶性を適度に高い状態にでき、それによって適度に高い耐熱性が得られるとともに、より優れた柔軟性、耐寒性及び誘電特性が得られる。
前記エチレン系樹脂の融点は100〜128℃であることが好ましい。
この場合、融点が128℃を超える場合に比べて、マスターバッチを製造する過程でエチレン系樹脂を高温で溶融する必要がなくなり、化学発泡剤の熱分解をより十分に防止することができる。その結果、得られる発泡絶縁層において発泡ムラが生じにくくなり、誘電特性が大きく低下しにくくなる。またエチレン系樹脂の融点が100〜128℃であると、100℃未満である場合に比べて、結晶性を適度に高い状態にでき、それによって適度に高い耐熱性が得られるとともに、より優れた柔軟性、耐寒性及び誘電特性が得られる。
前記エチレン系樹脂の密度は0.910〜0.940g/cmであることが好ましい。
エチレン系樹脂の密度が上記範囲にあると、0.910g/cm未満である場合と比べて、エチレン系樹脂の結晶性がより高くなり、より優れた誘電特性が得られる。またエチレン系樹脂の密度が0.940g/cmを超える場合と比べて、結晶性が高すぎることがなくなり、それによって適度に高い耐熱性が得られるとともに、より優れた柔軟性、耐寒性及び誘電特性が得られる。
上記発泡電線においては、前記発泡絶縁層中の前記樹脂の破断時における溶融張力が13〜50mNであることが好ましい。
発泡絶縁層中の樹脂の破断時における溶融張力が13mN以上であると、発泡セルのより十分な微細化が可能になる。一方、発泡絶縁層中の樹脂の破断時における溶融張力が50mN以下であると、樹脂の押出時において発泡度が低くなりにくい傾向にある。
また本発明は、上記発泡電線を有する伝送ケーブルである。
なお、本発明において、「破断時における溶融張力」とは、キャピラリーレオメータ(キャピログラフ 1D、東洋精機製作所株式会社製)を用いて測定した溶融張力を言う。詳細には、「破断時における溶融張力」は以下のように定義される。即ち、まず内径1.0mm、長さ10mmのフラットキャピラリーに樹脂を充填する。次に、ピストンスピードを5mm/分、バレルの内径を9.55mm、引取加速度を400m/minに設定するとともに、バレル、キャピラリー及びバレル直後の恒温槽それぞれの温度を200℃の条件に設定する。その後、バレルに樹脂を充填して5分予熱した後、上記ピストンスピードで樹脂のピストン押出を開始する。そして、樹脂を上記引取加速度で加速して引き取り、樹脂が破断したときの張力を測定する。これを10回行って得られた張力の測定値の平均値を「破断時における溶融張力」と言うものとする。なお、フラットキャピラリー又はバレルに充填される「樹脂」とは、発泡絶縁層形成用材料中のベース樹脂とマスターバッチ中の樹脂との混合樹脂とする。
本発明によれば、優れた耐寒性及び誘電特性を有するとともに外径変動及び表面肌荒れを十分に抑制できる発泡電線及びこれを有する伝送ケーブルが提供される。
本発明の発泡電線の一実施形態を示す部分側面図である。 図1のII−II線に沿った断面図である。 本発明の発泡電線の他の実施形態を示す断面図である。
以下、本発明の実施形態について図1及び図2を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る発泡電線の一実施形態を示す部分側面図であり、発泡電線を伝送ケーブルとしての同軸ケーブルに適用した例を示すものである。図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。図1に示すように、伝送ケーブル10は同軸ケーブルを示しており、発泡電線5と、発泡電線5を包囲する外部導体3と、外部導体3を被覆するシース4とを備えている。そして、発泡電線5は、内部導体1と、内部導体1を被覆する発泡絶縁層2とを有している。
ここで、発泡絶縁層2は、熱分解型化学発泡剤と、エチレン系樹脂とを含むマスターバッチを含有する発泡絶縁層形成用材料において、エチレン系樹脂を溶融させた後、熱分解型化学発泡剤を熱分解させて発泡させることにより得られるものである。ここで、発泡絶縁層形成用材料中の樹脂全体におけるエチレン系樹脂の配合比率は5質量%以上となっている。エチレン系樹脂としては、エチレンと、4〜20個の炭素原子を有するオレフィンとの共重合体が用いられる。
このような構成を有する発泡電線5によれば、優れた耐寒性及び誘電特性を有するとともに外径変動及び表面肌荒れを十分に抑制できる。
次に、伝送ケーブル10の製造方法について説明する。
まず発泡電線5の製造方法について説明する。
<内部導体>
はじめに内部導体1を準備する。内部導体1としては、例えば銅線、銅合金線、アルミニウム線等の金属線が挙げられる。また、上記金属線の表面にスズや銀等のめっきを施したものを内部導体1として用いることもできる。また内部導体1としては、単線または撚線を用いることができる。
<発泡絶縁層>
次に、内部導体1上に発泡絶縁層2を形成する。
発泡絶縁層2を形成するためには、発泡絶縁層形成用材料を準備する。発泡絶縁層形成用材料は、熱分解型化学発泡剤と、エチレン系樹脂とを含むマスターバッチを含有するものである。
ここで、マスターバッチについて説明する。
(エチレン系樹脂)
エチレン系樹脂としては、エチレンと4〜20個の炭素原子を有するオレフィンとの共重合体が用いられる。ここで、4〜20個の炭素原子を有するオレフィンは、エチレン系樹脂を押し出す際の樹脂の急激な可塑化を適度にゆるやかにし、押し出しを安定しやすくするため、外径変動をより抑制することができる。また4〜20個の炭素原子を有するオレフィンは、エチレン系樹脂の表面を平滑化するため、表面肌荒れを抑制することもできる。なお、オレフィンの炭素原子数が4未満では、低温における脆化が生じやすくなる。一方、オレフィンの炭素原子数が20を超えると、結晶性が低下するとともに、誘電特性が悪化する。
4〜20個の炭素原子数を有するオレフィンとしては、α−オレフィンが挙げられる。
α−オレフィンとしては、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、1−ブテン及び1−ヘキセンが併用されることが好ましい。この場合、結晶性を適度に高い状態にでき、それによって適度に高い耐熱性が得られるとともに、より優れた柔軟性、耐寒性及び誘電特性が得られる。
オレフィンとしては、α−オレフィンが、不飽和エステルよりも結晶性が低くなりすぎにくいことから好ましく用いられる。
α―オレフィンとして、1−ブテン及び1−ヘキセンが併用される場合、エチレン系樹脂中の1−ブテンと1−ヘキセンとの合計配合比率は、エチレン系樹脂を100質量%とした場合に12質量%以下であることが好ましい。
この場合、エチレン系樹脂中の1−ブテンと1−ヘキセンとの合計配合比率が12質量%を超える場合と比較して、結晶性を適度に高い状態にでき、それによって適度に高い耐熱性が得られるとともに、より優れた柔軟性、耐寒性及び誘電特性が得られる。
1−ブテンと1−ヘキセンとの合計配合比率は、6質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましい。但し、エチレン系樹脂中の1−ブテンと1−ヘキセンとの合計配合比率は、結晶性を適度に高い状態にでき、それによって適度に高い耐熱性が得られるとともに、より優れた柔軟性、耐寒性及び誘電特性が得られることから、1質量%以上であることが好ましい。
またエチレン系樹脂中の1−ヘキセンの含有率は5質量%を超えないことが好ましい。
この場合、エチレン系樹脂中の1−ヘキセンの含有率が5質量%を超える場合に比べて結晶性が低くなりすぎにくく、適度に高い耐熱性が得られるとともに、より優れた柔軟性、耐寒性及び誘電特性が得られる。
またエチレン系樹脂中の1−ヘキセンの含有率は、0〜4質量%であることが好ましく、0.5〜2質量%であることがより好ましい。
尚、4〜20個の炭素原子を有するオレフィンとしては、不飽和エステルを用いることも可能である。不飽和エステルとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸イソブチル等の不飽和カルボン酸アルキルエステル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
エチレン系樹脂の融点は通常は80〜135℃であるが、好ましくは100〜128℃である。この場合、融点が128℃を超える場合に比べて、マスターバッチを製造する過程でエチレン系樹脂を高温で溶融する必要がなくなり、化学発泡剤の熱分解をより十分に防止することができる。その結果、得られる発泡絶縁層2において発泡ムラが生じにくくなり、誘電特性が大きく低下しにくくなる。またエチレン系樹脂の融点が100〜128℃であると、100℃未満である場合に比べて、結晶性を適度に高い状態にでき、それによって適度に高い耐熱性が得られるとともに、より優れた柔軟性、耐寒性及び誘電特性が得られる。
融点とは、JIS-K7121の手法に従って測定される融点を言う。具体的には、DSC(パーキンエルマー Diamond(入力補償型))で、試料の量を約5mgとし、試料を、
1) 200℃で10分等温保持し、
2) 200℃から−60℃に10℃/minで降温し、
3)−60℃で10分等温保持し、
4)−60℃から200℃に10℃/minで昇温 した場合に、
4)の条件下で観察される融解熱ピーク部分の頂点として求められる融解熱ピーク温度を融点と言うものとする。
エチレン系樹脂の融点は、105〜128℃であることがより好ましく、109〜127℃であることがさらに好ましい。
エチレン系樹脂の密度は通常、0.890〜0.965g/cmである。中でも、エチレン系樹脂の密度は、0.910〜0.940g/cmであることが好ましい。エチレン系樹脂の密度が上記範囲内にあると、0.910g/cm未満である場合と比べて、エチレン系樹脂の結晶性がより高くなり、より優れた誘電特性が得られる。またエチレン系樹脂の密度が0.940g/cmを超える場合と比べて、結晶性を適度に高い状態にでき、それによって適度に高い耐熱性が得られるとともに、より優れた柔軟性、耐寒性及び誘電特性が得られる。エチレン系樹脂の密度は、より好ましくは0.917〜0.929g/cmである。ここで、密度とは、JIS−K7112の手法に従って測定される密度を言う。
エチレン系樹脂は、マルチサイト触媒やシングルサイト触媒などの公知の重合触媒を用いて合成することができる。中でも、シングルサイト触媒の一つであるメタロセン系触媒が好ましい。メタロセン系触媒を用いて合成されたエチレン系樹脂においては、分子量分布が狭く、高周波信号を吸収し易く誘電特性を低下させる原因となる不要な低分子量成分の割合が少ないため、誘電特性を向上させることができる。
該メタロセン系触媒は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物からなる触媒成分と有機アルミニウムなどの助触媒成分とを用いて得られる重合触媒である。また、該シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む遷移金属化合物としては、元素の周期表(IUPAC1989年)第3〜6族の元素を有する化合物が好ましい。また、シクロペンタジエニル2個が遷移金属をサンドイッチ状に挟みこんだ構造が好ましい。
(熱分解型化学発泡剤)
熱分解型化学発泡剤としては、熱分解してNH3、N2、CO2等のガスを発生するものであればよく、例えば、アゾジカルボンアミド(以下、「ADCA」と呼ぶ)、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。中でも、アゾジカルボンアミドが、微細発泡が形成しやすく、熱分解温度が高く、エチレン系樹脂の融点と熱分解温度との差がより大きくなり、マスターバッチを製造する過程において化学発泡剤の熱分解を十分に抑制できるため好ましい。
マスターバッチ中の熱分解型化学発泡剤の含有率は通常、0.5〜7質量%であり、好ましくは0.6〜5質量%であり、より好ましくは0.7〜4質量%である。
マスターバッチを得るためには、エチレン系樹脂と熱分解型化学発泡剤とを押出機に導入して混練すればよい。そのためには、エチレン系樹脂及び熱分解型化学発泡剤を、エチレン系樹脂の融点以上の温度に加熱して混練すればよい。但し、混練中に熱分解型化学発泡剤が熱分解すると、発泡絶縁層2において発泡ムラが生じるおそれがある。そのため、混練は、樹脂温度が160℃以下となる温度で行うことが好ましい。例えば熱分解型化学発泡剤としてADCAを用いる場合には、混練は、樹脂温度が130〜160℃となる温度で行うことが好ましい。
こうしてマスターバッチを準備した後は、マスターバッチを含有する発泡絶縁層形成用材料において、まず発泡絶縁層形成用材料中の樹脂を溶融させる。このとき、熱分解型発泡剤を熱分解させない。こうして熱分解型化学発泡剤を樹脂中に均一に分散させた後、熱分解型化学発泡剤を熱分解温度以上の温度に加熱して熱分解させ、分解ガスを発生させる。そして、分解ガスを含有した樹脂を押し出しながら発泡させて、この押出物で内部導体1を被覆する。こうして内部導体1上に発泡絶縁層2が得られる。
このとき、発泡絶縁層形成用材料中の樹脂全体におけるエチレン系樹脂の配合比率は5質量%以上となるようにする。即ち、エチレン系樹脂は、発泡絶縁層形成用材料中の樹脂全体において5〜100質量%の割合で含まれる。エチレン系樹脂の配合比率を5質量%以上とするのは、配合比率が5質量%未満である場合に比べて、耐寒性及び誘電特性に優れるとともに外径変動及び表面荒れを十分に抑制できるためである。また、発泡絶縁層2を高速で押し出しても、発泡絶縁層形成用材料の熱による劣化を十分に抑制することができる。従って、発泡電線5の製造効率を十分に向上させることができる。
エチレン系樹脂の配合比率が100質量%である場合、発泡絶縁層形成用材料中の樹脂は、エチレン系樹脂のみから構成されることになる。
エチレン系樹脂の配合比率が100質量%未満である場合、発泡絶縁層形成用材料中の樹脂は、エチレン系樹脂と、エチレン系樹脂以外の樹脂とから構成されることになる。
エチレン系樹脂以外の樹脂としては、EVA(エチレン・酢酸ビニルコポリマー)、EEA(エチレン・エチルアクリレート共重合体)、プロピレン系樹脂などが挙げられるが、中でも、耐熱性を向上させる観点からは、プロピレン系樹脂が好ましい。プロピレン系樹脂とは、プロピレンに由来する構成単位を含む樹脂を言う。従って、このようなプロピレン系樹脂には、プロピレンの単独重合により得られるホモポリプロピレン、プロピレン以外のオレフィンとプロピレンとの共重合体、これらの2種以上の混合物が含まれる。プロピレン以外のオレフィンとしては、例えばエチレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ヘキセン、2−ヘキセンなどが挙げられる。中でも、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィンが、発泡セルのより十分な微細化を実現し、より優れた耐熱性を得る観点から好ましく用いられ、より好ましくはエチレンが用いられる。
プロピレン系樹脂が、プロピレン以外のオレフィンとプロピレンとの共重合体である場合、この共重合体は、ブロック共重合体を含むものであってもよく、ランダム共重合体を含むものであってもよいが、共重合体はブロック共重合体を含むことが好ましい。共重合体がブロック共重合体を含むと、ブロック共重合体を含まない場合に比べて、発泡セルをより十分に微細化でき、より優れた耐熱性を得ることができる。
ここで、共重合体は、ブロック共重合体のみで構成されてもよく、ブロック共重合体とランダム共重合体との混合物で構成されてもよいが、ブロック共重合体のみで構成されることが好ましい。この場合、共重合体がブロック共重合体とランダム共重合体との混合物で構成される場合と比較して、発泡セルをより十分に微細化でき、より優れた耐熱性を得ることができる。
プロピレン系樹脂は、150℃以上の融点を有することが好ましい。この場合、発泡電線5の耐熱性を向上させることができる。
発泡絶縁層2中に含まれるエチレン系樹脂以外の樹脂がプロピレン系樹脂である場合、発泡絶縁層形成用材料中の樹脂全体におけるエチレン系樹脂の配合比率は5〜90質量%であることが好ましく、プロピレン系樹脂の配合比率は10〜95質量%であることが好ましい。
この場合、エチレン系樹脂の配合比率又はプロピレン系樹脂の配合比率が上記範囲を外れる場合に比べて、優れた耐熱性と、優れた耐寒性及び誘電特性と、外径変動及び表面肌荒れの抑制とを両立させることができる。
ここで、エチレン系樹脂の配合比率は、より優れた低温脆化特性及び誘電特性を実現し、外径変動及び表面荒れをより十分に抑制するとともに優れた柔軟性を実現するという観点からは、20〜100質量%であることがより好ましく、60〜100質量%であることがさらに好ましい。一方、耐熱性を特に向上させる観点からは、20質量%未満であることが好ましい。
発泡絶縁層形成用材料中の樹脂がプロピレン系樹脂とエチレン系樹脂とで構成される場合、発泡絶縁層形成用材料は、プロピレン系樹脂と、マスターバッチとを混練することによって得られる。
上記発泡電線5においては、発泡絶縁層2中の樹脂の破断時における溶融張力が13mN以上であることが、発泡セルのより十分な微細化が可能になるという理由から好ましく、17mN以上であることがより好ましい。但し、樹脂の破断時における溶融張力が大きすぎると、樹脂の押出時において発泡度が低くなりやすい傾向にあるため、溶融張力は50mN以下であることが好ましく、35mN以下であることがより好ましい。
破断時における樹脂の溶融張力は、例えば押出機のダイス出口における樹脂の温度を調整することで調整することができる。
発泡絶縁層2の外径は、発泡電線5が高周波ケーブルに使用される場合には、1.6mm以下であることが好ましく、1.0mm以下であることがより好ましい。
なお、ベース樹脂のペレットの平均粒径は通常は0.2〜3mm、好ましくは0.5〜1.5mm、より好ましくは0.8〜1.3mmであり、熱分解型化学発泡剤の粒度分布は、よりシャープな粒度分布であることが好ましく、熱分解型化学発泡剤の平均粒径は、3〜10μmとすることが好ましい。この場合、ベース樹脂とマスターバッチとを混練する場合に、発泡剤がベース樹脂中に均一に分散され、その結果、得られる発泡絶縁層2の外径変動をより十分に抑制することができる。このことは特に発泡電線5の発泡絶縁層2が1.6mm以下の細径である場合に特に有用である。
またマスターバッチペレットの平均粒径は、ベース樹脂のペレットの平均粒径とほぼ同一にすることが好ましい。ここで、この場合、ベース樹脂のペレットとマスターバッチとを混練する場合に、発泡剤がベース樹脂中に均一に分散され、その結果、得られる発泡絶縁層2の外径変動を十分に抑制することができる。このことは特に発泡電線5の発泡絶縁層2が1.6mm以下の細径である場合に特に有用である。このとき、マスターバッチペレット及びベース樹脂のペレットの平均粒径が0.8〜1.3mmであると外径変動の抑制に対してより効果的である。
<外部導体>
次に、上記のようにして得られた発泡電線5を包囲するように外部導体3を形成する。外部導体3としては、従来より使用されている公知のものを使用することができる。例えば外部導体3は、導線や、導電シートを樹脂シートの間に挟んで構成したテープなどを発泡絶縁層2の外周に沿って巻くことなどによって形成することができる。また、外部導体3は、コルゲート加工、即ち波形成形した金属管で構成することもできる。この場合には、加工していない金属管と同程度の強度を有しながら、発泡電線5の屈曲性を向上させることができる。
<シース>
最後にシース4を形成する。シース4は、外部導体3を物理的又は化学的な損傷から保護するものであり、シース4を構成する材料としては、例えばフッ素樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の樹脂が挙げられるが、環境性等の観点からポリエチレン樹脂等のハロゲンフリー材料が好ましく用いられる。
以上のようにして伝送ケーブル10が得られる。
図3は、本発明に係る発泡電線の他の実施形態を示す断面図であり、発泡電線5を有するTwinaxタイプのケーブルを示している。図3に示すように、Twinaxタイプのケーブル20は、2本の発泡電線5と、ドレインワイヤ6と、ラミネートテープ7と、2本の電力線8と、アルミテープ層及び編組層からなる積層体層9と、シース4とを備えている。ここで、2本の発泡電線5は互いに平行に配置されており、これらは信号線として使用される。またラミネートテープ7は発泡電線5及びドレインワイヤ6を巻回しており、シース4は積層体層9を包囲するように積層体層9上に形成されている。ラミネートテープ7は例えばアルミニウム箔とポリエチレンテレフタレートフィルムとの積層体で構成され、シース4は、例えばリケンテクノス社製のANA9897N等のオレフィン系ノンハロ材などで構成される。なお、発泡電線5及び発泡絶縁層2は上記実施形態と同様のものである。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、発泡電線5が、伝送ケーブルとしての同軸ケーブルに適用された例が示されているが、発泡電線5は、USB3.0ケーブル、HDMIケーブル、インフィニバンドケーブル、マイクロUSBケーブルなどの高速伝送ケーブルなどにも適用可能である。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、表1中の数値の単位は、特に明示していない場合には「質量部」である。また表1において、空欄は、ベース樹脂又はマスターバッチ樹脂(MB樹脂)の配合比率が0質量%であることを意味する。さらに表1において、ρは密度を表し、その単位はg/cmである。
(実施例1)
まずベース樹脂として、165℃の融点を有するエチレン−プロピレン共重合体(商品名:FB5100、日本ポリプロ株式会社製。以下、「EP共重合体」と呼ぶ)を用意した。
一方、MB樹脂としての、125℃の融点を有するエチレン系樹脂であるCU5003(商品名、密度:0.928g/cm、住友化学株式会社製)、及び熱分解型化学発泡剤としてのアゾジカルボンアミド(ADCA)を押出機(製品名:ラボプラストミルD2020、スクリュー径(D):直径20mm、有効スクリュー長(L):400mm、東洋精機製作所社製)に投入した。このとき、ADCAは、MB樹脂95質量部に対して5質量部を添加した。そして、下記混練温度及びスクリュー速度で溶融押出を行い、溶融押出物をペレタイザーでカットし、ペレット状のマスターバッチを得た。なお、MB樹脂であるエチレン系樹脂は、メタロセン系触媒を用いて合成されたものである。
混練温度 :145℃(設定温度)
スクリュー速度:20rpm
そして、ベース樹脂であるEP共重合体とマスターバッチとを上記の押出機とは異なる押出機(スクリュー径(D):直径25mm、有効スクリュー長(L):800mm、聖製作所社製)に投入し、押出成形を行った。このとき、押出機の投入口から下流側に向かって80mmの部分(以下、「第1部分」と呼ぶ)を160℃に設定し、そのさらに下流側160mmの部分(以下、「第2部分」と呼ぶ)を190℃に設定することにより、第1部分でマスターバッチ中のMB樹脂を溶融した後、第2部分でADCAを熱分解するようにした。またベース樹脂とマスターバッチとを押出機に投入する際には、ベース樹脂と、マスターバッチ中のMB樹脂とからなる樹脂全体に対してMB樹脂の配合比率が表1に示す通りとなるようにした。このとき、最終的に(発泡成形押し出し時)、ベース樹脂及びマスターバッチ中の発泡剤の濃度が0.6質量%となるようにした。
そして、押出機から押出物をチューブ状に押し出し、このチューブ状の押出物で直径0.32mmの導体を被覆した。こうして、導体と導体を被覆する外径0.92mm、厚さ0.3mm、発泡度40%の発泡絶縁層とからなる発泡電線を作製した。
(実施例2〜9)
発泡絶縁層に含まれる樹脂全体におけるベース樹脂およびMB樹脂の配合比率を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして発泡電線を作製した。
(実施例10)
ベース樹脂を、FB5100から、EPブロック共重合体であるFB3312(商品名、mp(融点):165℃、日本ポリプロ株式会社製)に変更したこと以外は実施例6と同様にして発泡電線を作製した。
(実施例11)
ベース樹脂を、FB5100から、EPランダム共重合体であるF227D(商品名、mp:150℃、日本ポリプロ株式会社製)に変更し、ベース樹脂とマスターバッチとを、以下の条件で混練押出することにより得たこと以外は実施例6と同様にして発泡電線を作製した。
混練温度 :150℃
スクリュー速度:20rpm
(実施例12)
ベース樹脂を、FB5100から、ホモポリプロピレン重合体であるF113G(商品名、mp:165℃、日本ポリプロ株式会社製)に変更したこと以外は実施例6と同様にして発泡電線を作製した。
(実施例13〜15)
MB樹脂を、CU5003から、GT050(商品名、mp:110℃、密度:0.922g/cm、住友化学株式会社製)に変更し、発泡絶縁層に含まれる樹脂全体におけるベース樹脂の配合比率およびMB樹脂の配合比率を表1に示す通りとし、マスターバッチを、MB樹脂とADCAとを以下の条件で溶融押出することにより得たこと以外は実施例1と同様にして発泡電線を作製した。なお、MB樹脂であるGT050は、メタロセン系触媒を用いて合成されたエチレン系樹脂である。
混練温度 :130℃(設定温度)
スクリュー速度:20rpm
(実施例16〜18)
MB樹脂を、CU5003から、GT140(商品名、mp:106℃、密度:0.918g/cm、住友化学株式会社製)に変更し、発泡絶縁層に含まれる樹脂全体におけるベース樹脂の配合比率およびMB樹脂の配合比率を表1に示す通りとし、マスターバッチを、MB樹脂とADCAとを以下の条件で溶融押出することにより得たこと以外は実施例1と同様にして発泡電線を作製した。なお、MB樹脂であるGT140は、メタロセン系触媒を用いて合成されたエチレン系樹脂である。
混練温度 :125℃(設定温度)
スクリュー速度:20rpm
(実施例19〜21)
MB樹脂を、CU5003から、GH030(商品名、mp:102℃、密度:0.912g/cm、住友化学株式会社製)に変更し、発泡絶縁層に含まれる樹脂全体におけるベース樹脂の配合比率およびMB樹脂の配合比率を表1に示す通りとし、マスターバッチを、MB樹脂とADCAとを以下の条件で溶融押出することにより得たこと以外は実施例1と同様にして発泡電線を作製した。なお、MB樹脂であるGH030は、メタロセン系触媒を用いて合成されたエチレン系樹脂である。
混練温度 :120℃(設定温度)
スクリュー速度:20rpm
(比較例1〜2)
MB樹脂を、CU5003から、EPランダム共重合体であるWFX4TC(商品名、mp:125℃、密度:0.900g/cm、日本ポリプロ株式会社製)に変更し、発泡絶縁層に含まれる樹脂全体におけるベース樹脂の配合比率およびMB樹脂の配合比率を表1に示す通りとしたこと以外は実施例1と同様にして発泡電線を作製した。なお、EPランダム共重合体であるWFX4TCは、メタロセン系触媒を用いて合成されたプロピレン系樹脂である。
(比較例3)
MB樹脂を、CU5003から、LDPEであるB028(商品名、mp:113℃、密度:0.928g/cm、宇部丸善ポリエチレン株式会社製)に変更し、発泡絶縁層に含まれる樹脂全体におけるベース樹脂の配合比率およびMB樹脂の配合比率を表1に示す通りとし、マスターバッチを、MB樹脂とADCAとを以下の条件で溶融押出することにより得たこと以外は実施例1と同様にして発泡電線を作製した。なお、MB樹脂であるB028は、高圧法で合成されたLDPEである。
混練温度 :135℃(設定温度)
スクリュー速度:20rpm
(比較例4)
ベース樹脂を、FB5100から、HDPEであるHizex5305E(商品名、mp:130℃、プライムポリマー株式会社製)に変更し、熱分解型化学発泡剤であるADCAをマスターバッチに含有させた状態ではなく、直接ベース樹脂に添加し、発泡絶縁層を、ベース樹脂とADCAとを以下の条件で溶融押出することにより得たこと以外は実施例1と同様にして発泡電線を作製した。
混練温度 :150℃(設定温度)
スクリュー速度:20rpm
(比較例5)
発泡絶縁層に含まれる樹脂全体におけるベース樹脂およびMB樹脂の配合比率を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして発泡電線を作製した。
[特性評価]
実施例1〜21及び比較例1〜5で得られた発泡電線について、以下の特性を評価した。
(1)1−ブテン及び1−ヘキセンの含有率
エチレン系樹脂中の1−ブテン及び1-ヘキセンの含有率は、実施例1〜21及び比較例1〜5の発泡電線から発泡絶縁層を剥ぎ取り、その発泡絶縁層について測定したNMRスペクトルから算出した。結果を表1に示す。なお、NMRスペクトルは、日本電子JNM EX−270によって測定した。NMRの測定条件は以下の通りとした。
測 定 核 種:13C(67.8MHz)
積 算 回 数:10000回
測 定 温 度:114.2℃
溶 媒:オルトジクロロベンゼン及び重ベンゼンの混合溶媒(体積比=3:1)
試料の濃度 :5質量%
プ ロ ー ブ:外径5mmφ(石英ガラス)
(2)破断時における溶融張力
実施例1〜21及び比較例1〜5で得られた発泡電線について破断時における溶融張力を測定した。結果を表2に示す。
(3)平均発泡セル径
実施例1〜21及び比較例1〜5で得られた発泡電線から発泡絶縁層の一部を切り取り、その発泡絶縁層の断面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した。そして、無作為に選択した100個の発泡セルのそれぞれについてセル径を下記式:
Figure 0005689692
に基づいて測定した。そして、100個の発泡セルのセル径の平均値を「平均発泡セル径」として算出した。結果を表2に示す。
(4)外径変動幅
実施例1〜21及び比較例1〜5で得られた長さ2000mの発泡電線について、外径の最大値及び最小値を、外径測定器(キーエンス社製高速高精度デジタル測定器LS−7000シリーズ)を用いて測定し、下記式:
Figure 0005689692
に基づいて外径変動幅を算出した。結果を表2に示す。なお、表2においては、外径変動幅が40μm未満であれば外径変動幅が十分に抑制されているとして合格とし、外径変動幅が40μm以上であれば外径変動幅が十分に抑制されていないとして不合格とした。
(5)耐熱性
耐熱性は、実施例1〜21及び比較例1〜5の発泡電線について加熱変形試験を行って測定した加熱変形率に基づいて評価した。加熱変形試験は、東洋精機製作所株式会社製の「三個掛加熱変形試験機型番W−3」の加熱変形試験機を用いることによって行った。具体的には、直径9mm、長さ5.0mmの円柱ジグの上に、長さ5cmに切断した発泡電線を載せて1時間予熱した後、この発泡電線を円柱ジグに押し付けながら100℃に加熱して250gの荷重を1時間にわたってかけることにより行った。そして、加熱変形率は、下記式:
Figure 0005689692
(式中、Tbは加熱変形試験前の発泡絶縁層の厚さ、Taは加熱変形試験後の発泡絶縁層の厚さを示す)
に従って算出した。結果を表2に示す。
(6)低温脆化特性(耐寒性)
低温脆化特性は、実施例1〜21及び比較例1〜5の発泡電線について低温脆化試験を行うことによって評価した。低温脆化試験は、以下のようにして行った。
即ち実施例1〜21及び比較例1〜5の発泡電線について、脆化温度試験機(製品名:ぜい化試験機TM−2110、上島製作所製)を使用して脆化温度を測定した。このとき、試験片は約38mmに切断した試料を用い、試験条件はASTM D746に従い、発泡絶縁層に傷や割れが発生する温度を脆化温度とした。結果を表2に示す。なお、表2においては、低温脆化特性のレベルを、脆化温度に応じて以下のA〜Dの4段階に分けて表記した。ここで、A〜Cは低温脆化特性に優れるとして合格とし、Dは低温脆化特性に劣るとして不合格とした。

A…脆化温度が−50℃以下
B…脆化温度が−50℃より高く−40℃以下
C…脆化温度が−40℃より高く−30℃以下
D…脆化温度が−30℃より高い
(7)柔軟性
柔軟性は、実施例1〜21及び比較例1〜5で得られた発泡電線について以下のようにして評価した。
即ち発泡電線の柔軟性は、発泡絶縁層を形成するために用いた発泡絶縁層形成用材料をシート化し、この樹脂シートの柔軟性を評価することによって行った。このとき、樹脂シートの柔軟性は、指標として硬度(ショアD硬度)を用いて評価した。硬度はJIS規格K7215に準じて測定した(荷重保持時間5秒)。またこのとき、硬度の測定は、ASTMD2240規格によって作製した樹脂シートに対して行った。結果を表2に示す。なお、表2においては、柔軟性のレベルを、ショアD硬度に応じて以下のA〜Cの3段階に分けて表記した。

A…ショアD硬度が60未満
B…ショアD硬度が60以上65未満
C…ショアD硬度が65以上70未満
D…ショアD硬度が70以上
(8)発泡絶縁層製造時の押出外観
実施例1〜21及び比較例1〜5で得られた発泡電線の外観、即ち、発泡絶縁層の押出外観を目視にて観察することにより表面荒れの状態を調べた。結果を表2に示す。なお、表2においては、押出外観のレベルを、表面荒れの程度に応じて以下のA〜Dの4段階に分けて表記した。ここで、A〜Cは表面荒れが十分に抑制されているとして合格とし、Dは表面荒れが十分に抑制されていないとして不合格とした。

A…目視で表面の荒れが確認できず、触ると滑らかであり凹凸は確認できないレベル
B…目視で表面の荒れが確認できず、触るとわずかに凹凸が確認できるレベル
C…目視で表面の荒れがやや確認でき、触ると凹凸が確認できるレベル
D…目視で表面の荒れが十分に確認でき、触ると明確に凹凸が確認できるレベル
(9)誘電特性
誘電特性は、誘電正接(tanδ)に基づいて評価した。ここで、誘電正接(tanδ)は、実施例1〜21及び比較例1〜5の発泡電線のうち絶縁層の製造に使用した発泡絶縁層形成用材料を、直径2mm、長さ10cmの棒状に成形し、このシートについて、サムテック社製SUM-TM0m0の測定プログラムを用いたマイクロ波測定システムにて、測定周波数3.0GHzおよび14.6GHzの各周波数にて測定した。結果を表2に示す。各周波数ごとのtanδの合格基準は以下の通りである。

3.0GHz・・・・1.6×10−4以下
14.6GHz・・・2.4×10−4以下


Figure 0005689692


Figure 0005689692
表2に示す結果より、実施例1〜21の発泡電線はいずれも、外径変動幅、低温脆化特性、押出外観及び誘電正接の点で合格基準に達していた。これに対し、比較例1〜5の発泡電線は、外径変動幅、低温脆化特性、押出外観及び誘電正接のいずれか一つ以上の点で合格基準に達していなかった。
以上より、本発明の発泡電線は、優れた耐寒性及び誘電特性を有するとともに、外径変動及び表面荒れが十分に抑制されることが確認された。
1…内部導体(導体)
2…発泡絶縁層
5…発泡電線
10…伝送ケーブル

Claims (7)

  1. 導体と、
    前記導体を被覆する発泡絶縁層とを備える発泡電線であって、
    前記発泡絶縁層が、
    熱分解型化学発泡剤及びエチレン系樹脂を含むマスターバッチを含有する発泡絶縁層形成用材料において前記エチレン系樹脂を溶融させた後、前記熱分解型化学発泡剤を熱分解させて発泡させることにより得られるものであり、
    前記発泡絶縁層形成用材料中の樹脂全体における前記エチレン系樹脂の配合比率が5質量%以上であり、前記エチレン系樹脂が、エチレンと、4〜20個の炭素原子を有するオレフィンとの共重合体であり、
    前記オレフィンがα−オレフィンであり、
    前記α−オレフィンが1−ブテン及び/又は1−ヘキセンであり、
    前記エチレン系樹脂中の1−ヘキセンの配合比率が5質量%を超えない発泡電線。
  2. 前記発泡絶縁層形成用材料がプロピレン系樹脂を更に含み、前記発泡絶縁層形成用材料中における樹脂全体における前記プロピレン系樹脂の配合比率が10〜95質量%であり、前記エチレン系樹脂の配合比率が5〜90質量%である、請求項1に記載の発泡電線。
  3. 前記エチレン系樹脂中の1−ブテンと1−ヘキセンとの合計配合比率が12質量%以下である、請求項1又は2に記載の発泡電線。
  4. 前記エチレン系樹脂の融点が100〜128℃である、請求項1〜のいずれか一項に記載の発泡電線。
  5. 前記エチレン系樹脂の密度が0.910〜0.940g/cmである、請求項1〜のいずれか一項に記載の発泡電線。
  6. 前記発泡絶縁層中の前記樹脂の破断時における溶融張力が13〜50mNである請求項1〜のいずれか一項に記載の発泡電線。
  7. 請求項1〜のいずれか一項に記載の発泡電線を有する伝送ケーブル。
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