JP2006224446A - 押出発泡体の製造方法及び同軸ケーブル - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、tanδなどの誘電特性の改善を図った押出発泡体の製造方法を提供するものである。
【解決手段】 かゝる本発明は、ポリエチレン系樹脂などのベース樹脂に、発泡核剤として有機化学発泡剤が0.03〜0.07質量%添加されたコンパウンドを押出機で溶融させる一方、当該押出機に発泡ガスを注入し、押出発泡される押出発泡体の製造方法にあり、これにより、有機化学発泡剤の添加量が少量であるため、得られる発泡体の化学発泡剤による弊害の発生が抑制される。つまり、水の発生やtanδや吸水性の大きい副生成物の生成が少ないため、tanδの低い発泡体が得られる。また、有機化学発泡剤が発泡核剤として機能するため、平均発泡セル径が小さく、かつ、均一化の高い発泡体が得られる。さらに、化学発泡剤による水の発生が抑制されるため、吸湿によるtanδの増加率の小さい発泡体が得られる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、tanδなどの誘電特性の改善を図った押出発泡体の製造方法、及びこれにより得られる同軸ケーブルに関するものである。
近年、ケーブル(電線も含む)の使用周波数帯域が広がり、GHz帯域まで拡大してきている。一方、使用周波数が高くなるほど、ケーブル絶縁体部分の損失(誘電損)が大きくなるため、この損失の目安となる誘電特性(例えばtanδ)の小さいものが求められている。
このような誘電特性を小さくせる方法として、従来から、ベース樹脂を発泡させることがよく行われている。従来の発泡方法としては、大別すると二通りある。一つはガス(例えばフロンガス)をベース樹脂中に導入して発泡させるガス発泡であり、もう一つは、ベース樹脂中に有機化合物などの発泡剤を添加して熱分解したときに得られるガスにより発泡させる化学発泡である。
フロンガスにるガス発泡の場合、化学発泡に比較して高発泡度の発泡体が得られるという利点があるが、現在、フロンガスはオゾン層破壊の問題があるため、不活性ガスとして、二酸化炭素や窒素ガスなどが使用されている。
一方、化学発泡では、ガス発泡のように、高発泡させることは困難ではあるが、発泡セルを微細で均一に形成し易いという利点がある。このような化学発泡剤として、主にアゾジカルボンアミド(ADCA)や4、4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)が用いられている。
ところが、上記二酸化炭素や窒素ガスなどは、フロンガスに比較して、ポリオレフィンなどのベース樹脂に対する相溶性が悪く、発泡セルが不均一になったり、必要以上に大きくなるなどの問題があった。このため、ガス発泡において、発泡核剤となる材料の検討がこれまでにもなされてきている。
一方、化学発泡の場合、発泡剤の化合物が熱分解されて、発泡ガスが生成されると同時に、この反応時に副反応も起こり、水(水分)が発生したり、tanδや吸水性の大きい副生成物(固体発泡残渣)が生成されるという問題があった。
つまり、従来方法によると、ガス発泡にも、化学発泡にも一長一短があり、これらの問題を解決すべく、発泡体の形成において、発泡の核となる良好な発泡核剤の検討がこれまでにもなされていた(例えば引用文献1〜3)。
特開平08−185720号公報 特開平08−208873号公報 特開平05−002939号公報
このような状況下にあって、本発明者等は、鋭意検討し、種々の試験を行ったところ、以下のような着想に至った。先ず、一種のガス発泡と化学発泡の併用型として、ベース樹脂に有機化学発泡剤(例えばADCA)を少量(通常の添加量の10分の1程度)を添加し、これにガス発泡を組み合わせて発泡させたたところ、得られる発泡体の平均発泡セル径が小さく、かつ、高い均一性が得られることが分かった。また、吸湿によるtanδの増加率も小さく抑えることができることが分かった。さらに、押出温度を、有機化学発泡剤が分解しない温度で行うか、或いは、分解する温度で行うかにより、得られる発泡体の発泡度が調整できることも分かった。
本発明は、この観点に立ってなされたもので、基本的には、ベース樹脂に有機化学発泡剤を少量添加して、一種のガス発泡と化学発泡の併用型とすることにより、良好な特性の発泡体を得る押出発泡体の製造方法、及びこれにより得られる同軸ケーブルを提供するものである。
請求項1記載の本発明は、ベース樹脂に発泡核剤として有機化学発泡剤が0.03〜0.07質量%添加されたコンパウンドを押出機で溶融させる一方、当該押出機に発泡ガスを注入し、押出発泡されることを特徴とする押出発泡体の製造方法にある。
請求項2記載の本発明は、前記押出を、前記有機化学発泡剤が分解しない温度で行い、得られる発泡体の発泡度が約40〜60%であることを特徴とする請求項1記載の押出発泡体の製造方法にある。
請求項3記載の本発明は、前記押出を、前記有機化学発泡剤が分解する温度で行い、得られる発泡体の発泡度が約75%であることを特徴とする請求項1記載の押出発泡体の製造方法にある。
請求項4記載の本発明は、前記ベース樹脂が、ポリエチレンであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の押出発泡体の製造方法にある。
請求項5記載の本発明は、前記有機化学発泡剤が、ADCAであることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の押出発泡体の製造方法にある。
請求項6記載の本発明は、前記請求項1〜5記載の押出発泡体の製造方法のいずれかによる押出発泡体を絶縁体として用いたことを特徴とする同軸ケーブルにある。
本発明の押出発泡体の製造方法によると、先ず、有機化学発泡剤の添加量が少量(0.03〜0.07質量%、通常の添加量の10分の1程度)であるため、得られる発泡体において、化学発泡剤による弊害の発生が抑制される。つまり、水(水分)の発生やtanδや吸水性の大きい副生成物の生成が少ないため、tanδの低い発泡体が得られる。また、少量ではあるが、有機化学発泡剤が発泡核剤として機能するため、平均発泡セル径が小さく、かつ、均一化の高い発泡体が得られる。さらに、化学発泡剤による水の発生が抑制されるため、吸湿によるtanδの増加率の小さい発泡体が得られる。
また、押出温度を、有機化学発泡剤の発泡温度(分解温度)に対して、特定の関係〔分解(発泡)しない温度や分解(発泡)する温度〕とすることにより、得られる発泡体の発泡度(約40〜60%や約75%、例えば75±2%)を、調整することができる。つまり、得られる発泡体の用途に応じた対応も可能となる。
本発明の同軸ケーブルによると、上記押出発泡体の製造方法による押出発泡体を絶縁体として用いているため、GHz帯域などの高周波領域において、特性の優れたケーブルが得られる。
図1は、本発明に係る同軸ケーブルの一例を示したものである。図中、1は撚線導体などの導体(内部導体)、2は本発明の押出発泡体の製造方法により、導体1上に被覆された発泡体からなる絶縁体、3は金属編組やコルゲート銅パイプなどからなる金属層(外部導体)、4は無鉛PVCなどからなるシースである。このケーブル外径は、特に限定されないが、約1.6mm程度のものとして形成される。なお、必要に応じて絶縁体2と金属層3の間にアルミテープなどを入れることもできる。
上記絶縁体の場合、特に限定されないが、ベース樹脂として、ポリオレフィン系樹脂、特にポリエチレン(PE)系樹脂の使用が好ましい。例えば、PE系樹脂をベース樹脂として、このベース樹脂100質量部に、発泡核剤として有機化学発泡剤(例えばADCA)を0.03〜0.07質量%添加したコンパウンドを作り、これを押出機に供給して溶融させる一方、この押出機に不活性ガス(例えば窒素ガス)を発泡剤として注入し、ガス発泡されることにより得られる。
ここで、ベース樹脂100質量部に対する有機化学発泡剤の添加量、0.03〜0.07質量%は、通常の添加量の10分の1程度である。従って、この有機化学発泡剤の添加による弊害は最小限に抑えることができる。
しかし、有機化学発泡剤の添加量が0.03質量%未満では、発泡核剤としての機能ガ殆ど得られず、平均発泡セル径が大きくなり、高い均一性が得られなくなる。一方、その添加量が0.07質量%を超えるようになると、得られる発泡体のtanδが大きくなる。特に、吸湿によるtanδの増加率が大きくなる。従って、上記したように、有機化学発泡剤の添加量は、0.03〜0.07質量%の範囲に抑える必要がある。
また、上記押出時において、その押出温度を、有機化学発泡剤の分解温度(例えばADCAの場合200℃前後)を目安にして、2通りの温度を選択することができる。
その一つは、有機化学発泡剤が分解(発泡)しない温度、例えば、180℃前後での押出ガス発泡である。この場合、発泡剤は発泡自体には殆ど寄与しないため、得られる発泡体の発泡度は、約40〜60%と高い発泡度は得られない。しかし、得られる発泡体の平均発泡セル径が小さく、高い均一性がが得られる。
その理由としては、ベース樹脂中に分散された有機化学発泡剤は、上記のように、分解温度未満の押出温度であるため、化学発泡というレベルの発泡は殆どないものの、この少量の発泡剤の存在が、発泡核剤として機能し、平均発泡セル径が小さく、高い均一性が得られるものと、推測される。
そのもう一つは、有機化学発泡剤が分解(発泡)する温度、例えば、200℃前後での押出ガス発泡である。この場合、有機化学発泡剤も積極的に発泡し、かつ、ガス発泡も併用されているため、得られる発泡体の発泡度は、約75%(より厳密には75±2%)と高い発泡度が得られる。同時に、この有機化学発泡剤が発泡核剤として機能するため、上記の場合と同様、平均発泡セル径が小さく、かつ、高い均一性の発泡体が得られるものと、推測される。
上記いずれの方法でも、先ず、添加する有機化学発泡剤の添加量が少量であるため、発泡剤添加による弊害が最小限に抑えられ、平均発泡セル径が小さく、かつ、高い均一性の高い発泡体が得られる。つまり、水の発生や、tanδ、吸水性の大きい副生成物の生成が少ないため、tanδの低い発泡体が得られる。また、吸湿によるtanδの増加率の小さい発泡体が得られる。また、発泡度については、上記したように、有機化学発泡剤の分解温度を考慮した押出温度の調整により、約40〜60%、又は約75%の発泡度が得られる。
なお、上記PE系樹脂以外のベース樹脂としては、ポリプロピレン(PP)、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1などのポリオレフィン系炭化水素モノマーの単独重合体、これらの2種類以上のモノマーの共重合体、例えばエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン−1共重合体など、或いはこれらのオレフィン系炭化水素モノマーと少量のビニルエステル系モノマーやアクリレート系モノマーとの共重合体、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)などを挙げることができる。そして、これらを単独で用いたり、又は2種以上のブレンド品(混合物)として用いることも可能である。
本発明のベース樹脂組成物には、必要により他の添加剤、例えば酸化防止剤、難燃剤、銅害防止剤、分散剤、滑剤などを適宜添加することができる。
〈実施例1〜8、比較例1〜11〉
先ず、表1〜表3に示す配合からなるコンパウンド〔ベース樹脂に有機化学発泡剤を少量添加したもの(実施例1〜8、比較例1〜8)、ベース樹脂に有機化学発泡剤を通常量添加したもの(比較例9)〕を作り、及びベース樹脂のみ(比較例10〜11)を用意し、これらを押出機(L/D=32、φ25mm)に供給し、図1に示した如き、同軸ケーブルの内部導体上に押出し被覆すると同時に、押出機には外部から窒素ガスを導入してガス発泡させた。そして、これらの発泡絶縁体の外周に、金属編組からなる金属層(外部導体)を設けた後、無鉛PVCなどからなるシースを設けて、目的とする同軸ケーブルを得た。これらのケーブルでは、内部導体径が約0.6mm(単線)、全体の外径が約1.6mmである。なお、同表1〜3において、配合数値は質量部数を表す。
ここで、用いたベース樹脂はPE系樹脂で、ZC023(商品名、密度=0.940g/cm3 、融点=111℃〜130℃、宇部丸善ポリエチレン社製)、DGDJ3364(商品名、密度=0.945g/cm3 、融点=126℃、日本ユニカー社製)である。有機化学発泡剤はADCAで、ビルホールAC♯3C(商品名、永和化成工業社製)である。窒素ガスの注入は、16〜30Ncc/minの範囲で行った。また、押出温度については、180℃と200℃で行った。
上記のようにして得られた同軸ケーブルについて、表1〜3に示すように、発泡度(%)、平均発泡セル径(μm)、吸湿によるtanδ増加率(%)を、以下に示す試験方法により、評価を行った。
〈発泡度〉
得られた上記各同軸ケーブルについて、発泡絶縁体部分を剥ぎ取り、この剥ぎ取り後の体積に基づいた質量を測定し、全体積がPE系樹脂の充実体に基づいた質量との比(%)により求めた。
〈平均発泡セル径〉
得られた上記各同軸ケーブルについて、発泡絶縁体部分を剥ぎ取り、発泡の状態を顕微鏡下で観察し、平均発泡セル径(μm)を求めた。平均発泡セル径が約90μm未満であれば、ほぼ合格(微細)と判定することができる。一方、平均発泡セル径が約130μmを超えるようであれば、大き過ぎて不合格と判定することができる。
〈tanδ増加率〉
得られた上記各同軸ケーブルについて、発泡絶縁体部分を剥ぎ取り、空洞共振摂動法により、tanδ増加率(%)を求めた。tanδ増加率が約20%未満であれば、ほぼ合格と判定することができる。一方、tanδ増加率が約20%を超えるようであれば、大き過ぎて不合格と判定することができる。
Figure 2006224446
Figure 2006224446
Figure 2006224446
上記表1から、本発明の押出発泡体の製造方法により得られた同軸ケーブルにあっては、すべての特性において良好であった。
これに対して、本発明の条件を欠いた押出発泡体の製造方法や、従来の化学発泡、ガス発泡からなる押出発泡体の製造方法では、すべての特性において不具合があることが分かる。つまり、比較例1、3、5、7は有機化学発泡剤(ADCA)の添加量が少な過ぎる場合(0.01質量%)、比較例2、4、6、8は有機化学発泡剤(ADCA)の添加量が多過ぎる場合(0.1質量%)、比較例9は従来の有機化学発泡剤(ADCA)のみの添加による化学発泡の場合、比較例10、11は発泡核剤であるタルクを添加してガス発泡させた場合である。
本発明に係る高周波用同軸ケーブルの一例を示した縦断端面図である。
符号の説明
1・・・導体(内部導体)、2・・・絶縁体、3・・・金属層(外部導体)、4・・・シース

Claims (6)

  1. ベース樹脂に発泡核剤として有機化学発泡剤が0.03〜0.07質量%添加されたコンパウンドを押出機で溶融させる一方、当該押出機に発泡ガスを注入し、押出発泡されることを特徴とする押出発泡体の製造方法。
  2. 前記押出を、前記有機化学発泡剤が分解しない温度で行い、得られる発泡体の発泡度が約40〜60%であることを特徴とする請求項1記載の押出発泡体の製造方法。
  3. 前記押出を、前記有機化学発泡剤が分解する温度で行い、得られる発泡体の発泡度が約75%であることを特徴とする請求項1記載の押出発泡体の製造方法。
  4. 前記ベース樹脂が、ポリエチレンであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の押出発泡体の製造方法。
  5. 前記有機化学発泡剤が、ADCAであることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の押出発泡体の製造方法。
  6. 前記請求項1〜5記載の押出発泡体の製造方法のいずれかによる押出発泡体を絶縁体として用いたことを特徴とする同軸ケーブル。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2012146482A (ja) * 2011-01-12 2012-08-02 Fujikura Ltd 発泡電線及びこれを有する伝送ケーブル

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