JP5483939B2 - 発泡絶縁電線及び発泡絶縁同軸ケーブル - Google Patents

発泡絶縁電線及び発泡絶縁同軸ケーブル Download PDF

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Description

本発明は、発泡絶縁電線及び発泡絶縁同軸ケーブルに関する。
同軸ケーブルは、図1に例示するとおり、内部導体11に絶縁樹脂を被覆して絶縁層12とし、さらに外部導体13とシース14を配した構造である。低い減衰量や低い電圧定在波比等が望まれるため、前記絶縁樹脂には誘電率や誘電損失が低い樹脂(例えば、ポリエチレンやテトラフルオロエチレン樹脂等の無極性樹脂や、発泡ポリエチレン等)が選択される(特許文献1及び2)。
使用周波数帯が高いなどのため特に低減衰量が求められる場合、同軸ケーブルの絶縁層12の誘電率や誘電損失を、低くする必要があり、例えば、絶縁層12を発泡層とする場合がある。しかしながら、同軸ケーブルの絶縁層12を発泡層とした場合は、充実層とした場合より、内部導体11と絶縁層12との密着力が低くなる傾向にある。内部導体11と絶縁層12の密着力が著しく低下すると、引抜力(内部導体を絶縁層から引き抜く力)の低下が起こり、内部導体11の突き出し又は引き込み等の問題が生じる可能性がある。この問題を解決するために、図2に例示する発泡絶縁電線のように、接着性樹脂(例えば、エチレン-エチルアクリレート共重合体やエチレン-ビニルアセテート共重合体等のエチレン系共重合体又はアイオノマー樹脂等)を含む樹脂からなる内部充実絶縁層22を内部導体21と発泡絶縁層23の間に設けて、内部導体21と発泡絶縁層23の密着力を高める検討がなされた(特許文献3)。なお、発泡絶縁層23に外部充実絶縁層(図示せず)を被覆する場合がある。
一方、前記接着性樹脂の有する極性基が、同軸ケーブルの減衰量や電圧定在波比等に悪影響を及ぼすため問題となる場合がある。この問題を解決するために、特許文献4及び5には、メルトマスフローレイトが0.5〜10g/分であるエチレン/α−オレフィン共重合体を内部充実絶縁層に用いた同軸ケーブルが開示されている。エチレン/α−オレフィン共重合体は極性基を含まない化学構造であることから誘電率や誘電損失が前記接着性樹脂より低いため、電気特性の点から内部充実絶縁層に好適な樹脂といえる。且つ、特許文献4には、内部充実絶縁層表面に凹凸が生じている方が、発泡絶縁層と内部充実絶縁層との接触面積が増加するために両層間の接着性が向上することが開示されており、特許文献5には、内部充実絶縁層表面に鮫肌が生じにくくなると発泡絶縁層との密着度が低下することが開示されている。すなわち、特許文献4及び5には、電気特性が良好であるが密着性が低いエチレン/α−オレフィン共重合体を内部充実絶縁層に使用するため、内部充実絶縁層の表面にメルトフラクチャーを生じさせることにより、内部充実絶縁層と発泡絶縁層の密着力を向上することが開示されている。
特許文献6には、メタロセン系触媒により合成したポリエチレンは分子量分布が非常に狭いことから押出成形した際に外観荒れが生じやすいことと、内部導体に内部充実絶縁層を被覆した後に発泡絶縁層を押出被覆する際、内部充実絶縁層に外観荒れが生じているとダイス内で詰まりやすくなってしまうため、長尺押出性が悪いという問題が提示されており、それを解決するものとして、無水マレイン酸をグラフトしたポリエチレンを含む内部充実絶縁層を設けた同軸ケーブルが開示されている。
特開2003−208823号公報 特開2007−179985号公報 特開平02−207413号公報 特開平04−229903号公報 特開平11−283444号公報 特開2004−339272号公報
しかしながら、特許文献6が開示したとおりに内部充実絶縁層に無水マレイン酸をグラフトしたポリエチレンを使用すると、発泡絶縁電線の引抜力は良好であるが、無水マレイン酸の極性基に起因して内部充実絶縁層樹脂の誘電損失が上昇し、同軸ケーブルの電圧定在波比や減衰量に悪影響を及ぼすことが懸念される。近年、高周波同軸ケーブルは、通信速度の高速化、容量の増加等を目的として、高い周波数帯(10MHz〜5GHz帯域)での使用が求められているが、同軸ケーブルの絶縁層の誘電損失は周波数が高くなると急激に増加するため、特に高い周波数帯の用途では、内部充実絶縁層に極性基を含まない絶縁体の適応が望まれる。
一方、特許文献4及び5が開示したとおり、内部充実絶縁層に極性基を含まない絶縁体を適応した場合、内部充実絶縁層と発泡絶縁層の密着性の点から、内部充実絶縁層にメルトフラクチャーを生じさせる必要があるが、発泡絶縁層を被覆する際、内部充実絶縁層にメルトフラクチャーが生じていると、内部充実絶縁層がダイス又はニップルと擦れた際に摩耗粉を生じやすく、ニップル内で前記摩耗粉が詰まりやすくなるため、長尺押出性が困難となる問題がある。
本発明はこのような実情に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、極性基を含まない樹脂を内部充実絶縁層として用いても、発泡絶縁電線として充分な引抜力を有し、且つ長尺押出性が良好な発泡絶縁電線及び発泡絶縁同軸ケーブルを提供することにある。
本発明は、内部導体に内部充実絶縁層を被覆したのち発泡絶縁層を被覆する発泡絶縁電線において、前記内部充実絶縁層がシングルサイト触媒により重合されたポリエチレンからなり、前記ポリエチレンのメルトマスフローレイトが10.5g/10分以上、16.5g/10分以下であり、融解ピーク温度が90℃以上、109℃以下であることを特徴とする発泡絶縁電線である。
前記ポリエチレンの密度が920kg/m以下であっても良い。
前記発泡絶縁電線を発泡絶縁同軸ケーブルに使用しても良い。
本発明の発泡絶縁電線によれば、引抜力、減衰量及び電圧定在波比のいずれもが良好な発泡絶縁同軸ケーブルが提供される。発泡絶縁電線において、発泡絶縁層の発泡度が高くなるほど、もしくは絶縁層の外径(発泡絶縁層の外径、又は外部充実絶縁層を設ける場合は外部充実絶縁層の外径)が小さくなるほど、発泡絶縁電線の引抜力が小さくなる傾向にあるが、本発明の発泡絶縁電線は、発泡絶縁同軸ケーブルとした場合に減衰量及び電圧定在波比が良好でありながら、発泡絶縁電線の引抜力が極めて良好であるため、発泡絶縁層単体の発泡度が50%以上の発泡絶縁電線や、絶縁層外径が10mm以下の細物の発泡絶縁電線であっても、充分な引抜力が得られる。したがって、本発明で得られた発泡絶縁電線を使用した発泡絶縁同軸ケーブルは、通信用アンテナ給電線、CATV用伝送線路、路携帯電話基地局用供給線装置等に好適に使用できる。且つ、本発明によれば内部充実絶縁層表面にメルトフラクチャーを生じないため、発泡絶縁層を長尺で被覆することが可能である。
また、シングルサイト触媒により重合されたポリエチレンのうち、密度が920kg/m以下であるポリエチレンを用いた絶縁電線は、装置配線やジャンパ線等の用途に使用される細物の発泡絶縁同軸ケーブルに好適に使用できる。
同軸ケーブルを説明するための同軸ケーブルの断面図である。 内部充実絶縁層を備えた発泡絶縁電線を説明するための発泡絶縁電線の断面図である。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。上記課題を達成するために、本発明の発泡絶縁電線は、内部導体に内部充実絶縁層を被覆した後に発泡絶縁層を設ける発泡絶縁電線において、前記内部充実絶縁層がシングルサイト触媒により重合されたポリエチレンからなり、JISK7210に従い試験温度190℃及び試験荷重21.18Nの条件にて測定した前記ポリエチレンのメルトマスフローレイトが10.5g/10分以上、16.5g/10分以下であり、JISK7121に従い加熱速度10℃/分で測定した前記ポリエチレンの融解ピーク温度が90℃以上、109℃以下であることを特徴とする。
本発明におけるポリエチレンは、シングルサイト触媒を用いて重合したエチレン単独又はエチレンとα−オレフィンの共重合体であれば重合方法は特に制限はない。前記重合方法として高圧イオン重合法や気相イオン重合法等が挙げられるが、引抜力の点からは、高圧イオン重合法によりシングルサイト触媒を用いて重合したポリエチレンがより好ましい。前記シングルサイト触媒は、例えばメタロセン触媒等公知の種々のものが使用できる。
前記α−オレフィンは特に制限はなく、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等が挙げられ、これらを1種あるいは2種以上組み合わせて使用することができる。
本発明におけるポリエチレンの種類は、シングルサイト触媒を用いて重合したポリエチレンであれば特に制限がない。シングルサイト触媒を用いて重合したポリエチレンとしては、密度が、942kg/m以上である高密度ポリエチレン(HDPE)、930kg/m以上942kg/m未満の中密度ポリエチレン(MDPE)、910kg/m以上930kg/m未満の低密度ポリエチレン(LDPE)、910kg/m未満の超低密度ポリエチレン(VLDPE)等が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。シングルサイト触媒を用いて製造されたポリエチレンとしては、例えば日本ポリエチレン社製カーネルシリーズ等から入手可能である。本発明におけるポリエチレンを、シングルサイト触媒を用いて重合したLDPE又はVLDPEとした場合、発泡絶縁電線の引抜力が、より良好であり、前記ポリエチレンの密度を920kg/m以下とした場合、発泡絶縁電線の引抜力が、極めて良好である。
本発明におけるポリエチレンの、JISK7210に従い試験温度190℃及び試験荷重21.18Nの条件にて測定したメルトマスフローレイトは、10.5g/10分以上、16.5g/10分以下が好ましい。前記メルトマスフローレイトを10.5g/10分以上とすると内部充実絶縁層の成形加工時において内部充実絶縁層の表面にメルトフラクチャーが確認されること無く良好に成形できる。メルトマスフローレイトが低すぎるとポリエチレンの流動性が低くなるため内部充実絶縁層の表面にメルトフラクチャーが生じ、後に発泡絶縁層を被覆する際にダイス又はニップルにて内部充実絶縁層表面が摩耗し、ニップル詰まりや、内部充実絶縁層と絶縁層の界面等にコンタミとして付着する等の問題が起こる。一方、16.5g/10分以下とすると押出成形が良好に行える。メルトマスフローレイトが高すぎるとポリエチレンの流動性が高くなり、内部導体に被覆したポリエチレンにタレが生じ、これにより内部充実絶縁層が著しく偏肉するため問題となる。
本発明におけるポリエチレンの、JISK7121に従い加熱速度10℃/分の条件にて測定した融解ピーク温度は、90℃以上、109℃以下が好ましい。前記融解ピーク温度を90℃以上とすると内部充実絶縁層として押出成形が良好に行える。前記融解ピーク温度が低すぎると、ポリエチレンの流動性が高くなるため、押出被覆の際に内部導体に被覆したポリエチレンにタレが生じ、これにより内部充実絶縁層が著しく偏肉するため問題となる。一方、前記融解ピーク温度が109℃以下であると内部充実絶縁層の成形加工時において内部充実絶縁層の表面が平滑に成形でき、且つ発泡絶縁体とした時の引抜力が良好である。融解ピーク温度が高すぎると、ポリエチレンの流動性が低くなり内部充実絶縁層の表面にメルトフラクチャーが生じやすくなり、該メルトフラクチャーが次工程で発泡絶縁層を被覆する際にダイス又はニップルにて内部充実絶縁層表面が摩耗し、ニップル詰まりや、内部充実絶縁層と発泡絶縁層の界面等にコンタミとして付着する等の問題が起こる。
本発明における内部充実絶縁層はメルトマスフローレイトが10.5g/10分以上、16.5g/10分以下であり、融解ピーク温度が90℃以上、109℃以下であるシングルサイト触媒により重合されたポリエチレンからなることが特徴であるが、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、その他のポリエチレンや、ポリエチレン以外の樹脂をブレンドしてもよい。ブレンドする樹脂としては、メルトマスフローレイトが10.5g/10分以下又は16.5g/10分以上であるシングルサイト触媒により重合されたポリエチレン、融解ピーク温度が90℃以下又は109℃以上であるシングルサイト触媒により重合されたポリエチレン、マルチサイト触媒(例えばZiegler−natta触媒)により重合されたポリエチレン、ラジカル開始剤(酸素又は過酸化物等)を触媒とした高圧ラジカル重合法により重合されたポリエチレン等のポリエチレンや、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体等のエチレン系共重合体、アイオノマー樹脂又は無水マレイン酸を含むエチレン系樹脂等が例示され、上記の樹脂を一種あるいは二種以上を組み合わせてブレンドしてもよい。
さらに、本発明における内部充実絶縁層は、必要に応じて各種添加剤、例えば、酸化防止剤、滑剤、架橋剤、カーボンブラック、顔料、無機充填剤(タルク、炭酸カルシウム、クレー、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム等)等を配合することができる。
本発明における内部導体は特に限定しないが、銅、アルミ、銅クラッドアルミ等公知の内部導体用材料が使用できる。前記内部導体の表面はクロム、ニッケル、銀等公知のメッキを行っても良い。前記内部導体の形状、内径や外径は特に限定しない。同軸ケーブルとしては、内部導体の断面形状は、中空又は充填のいずれでも良く、円形又は矩形等が好適である。長手方向にスパイラル状の溝を付与しても良い。内部導体の外径は特に限定はなく、所望のケーブル特性に合わせて選択すれば良い。
本発明における内部充実絶縁層は、内部導体を予熱し、メルトマスフローレイトが10.5g/10分以上、16.5g/10分以下であり、融解ピーク温度が90℃以上、109℃以下であるシングルサイト触媒により重合されたポリエチレンを、押出成形により被覆することにより形成される。前記予熱温度は好ましくは40℃〜80℃、より好ましくは40℃〜60℃、さらに好ましくは45℃〜55℃が好適である。前記予熱温度が40℃以上であると、発泡絶縁電線の引抜力が良好である。前記予熱温度が低すぎると、内部導体と内部充実絶縁層の密着力が低下する傾向にある。前記予熱温度が80℃以下であると内部導体の予熱による変形が問題とならずに発泡絶縁電線を製造することが出来る。前記予熱温度が高すぎると、特に絶縁層の外径(発泡絶縁層の外径、又は外部充実絶縁層を設ける場合は外部充実絶縁層の外径)が10mm以下の細物の発泡絶縁電線に用いられる内部導体は、変心して偏心率が規格外となる恐れがある。また、内部充実絶縁層の押出ダイス温度は、好ましくは170℃〜270℃、さらに好ましくは190℃〜250℃である。170℃以上であると前記ポリエチレンが充分に溶解するため内部充実絶縁層表面にメルトフラクチャーが発生しにくく、270℃以下であれば、長尺においても、押出成形機で前記ポリエチレンのやけが生じにくい。
本発明の内部充実絶縁層の厚さは特に限定せず、減衰量及び電圧波在波比が優れていることから0.05mm〜0.3mmがより好ましく、減衰量が極めて優れていることから0.05〜0.1mmが更に好ましい。発泡絶縁層の厚さに対する内部充実絶縁層厚さの比率が低くなるほど発泡絶縁同軸ケーブルの電圧定在波比や減衰量が向上するため、内部充実絶縁層の厚さは出来るだけ薄くすることが望ましく、内部充実絶縁層の厚さが0.05mm以上であると内部充実絶縁層厚さが安定した被覆を行えるため、より好ましい。且つ、内部充実絶縁層の厚さが0.3mm以下であると、良好な減衰量特性の発泡絶縁同軸ケーブルが得られるため、更に好ましい。内部充実絶縁層の厚さが厚くなると、発泡絶縁同軸ケーブルの特性インピーダンスが設計値から外れ、減衰量特性の低下が起こる。
本発明における発泡絶縁層は特に制限するものはなく、ポリエチレン、テトラフルオロエチレン樹脂等公知の絶縁材料を適応でき、所望の絶縁電線性能に適した発泡絶縁層を選択することが望ましい。発泡方法は特に限定されず、化学発泡やガス発泡等公知の発泡方法を選択できる。
本発明における発泡絶縁層の被覆工程は、内部充実絶縁層と同時、又は別工程のいずれでもよい。本発明における発泡絶縁層の被覆厚さは特に制限しないが、特に絶縁層の外径(発泡絶縁層の外径、又は外部充実絶縁層を設ける場合は外部充実絶縁層の外径)が10mm以下の細物の発泡絶縁電線に適応すると、減衰量特性及び電圧定在波比を低下することなく、細物で問題となる引抜力を向上できるため、効果的である。
本発明における発泡絶縁電線に、外部充実絶縁層、外部導体又はシース等を被覆しても良い。
以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、実施例等に使用した樹脂は以下のとおりである。
・ メタロセン系LLDPE[1](商品名:カーネルKC570S、日本ポリエチレン社製):メタロセン触媒で高圧イオン重合法で得られたポリエチレン、密度906kg/m、メルトマスフローレイト10.5g/10分、融解ピーク温度102℃
・ メタロセン系LLDPE[2](商品名:カーネルKC580S、日本ポリエチレン社製):メタロセン触媒で高圧イオン重合法で得られたポリエチレン、密度920kg/m、メルトマスフローレイト10.5g/10分、融解ピーク温度109℃
・ メタロセン系LLDPE[3](商品名:カーネルKC573、日本ポリエチレン社製):メタロセン触媒で高圧イオン重合法で得られたポリエチレン、密度910kg/m、メルトマスフローレイト15g/10分、融解ピーク温度102℃
・ メタロセン系LLDPE[4](商品名:カーネルKS560T、日本ポリエチレン社製):メタロセン触媒で高圧イオン重合法で得られたポリエチレン、密度898kg/m、メルトマスフローレイト16.5g/10分、融解ピーク温度90℃
・ メタロセン系LLDPE[5](商品名:ハーモレックスNH745N、日本ポリエチレン社製):メタロセン触媒で気相イオン重合法で得られたポリエチレン、密度913kg/m、メルトマスフローレイト8.0g/10分、融解ピーク温度121℃
・ メタロセン系LLDPE[6](商品名:ハーモレックスNH845N、日本ポリエチレン社製):メタロセン触媒で気相イオン重合法で得られたポリエチレン、密度913kg/m、メルトマスフローレイト15g/10分、融解ピーク温度120℃
・ メタロセン系LLDPE[7](商品名:カーネルKC550T、日本ポリエチレン社製):メタロセン触媒で高圧イオン重合法で得られたポリエチレン、密度888kg/m、メルトマスフローレイト20g/10分、融解ピーク温度55℃
・ メタロセン系LLDPE[8](商品名:カーネルKJ640T、日本ポリエチレン社製):メタロセン触媒で高圧イオン重合法で得られたポリエチレン、密度880kg/m3、メルトマスフローレイト30g/10分、融解ピーク温度58℃
・ LDPE(商品名:ノバテック LD LJ802、日本ポリエチレン社製):高圧ラジカル重合法で得られた低密度ポリエチレン、密度918kg/m、メルトマスフローレイト22g/10分、融解ピーク温度106℃
実施例1〜実施例7及び比較例5
充実タイプの内部導体として外径φ1.9mmの銅導体を用い、前記銅導体に、表1又は表2に記載の樹脂を、表1又は表2に記載の内部充実絶縁層外径で押出被覆して内部充実絶縁層を形成した。押出被覆条件は、内部導体予熱温度50℃、押出ダイス温度220℃とした。さらに、発泡絶縁層(アルゴンガス発泡により成形した80%発泡ポリエチレン、発泡絶縁層外径4.4mm)を押出被覆し、さらに外径5.0mmの外部充実絶縁層を被覆して発泡絶縁電線を得た。
上記工程で得られた発泡絶縁電線に、外部導体(仕上がり外径φ5.8mm)として、アルミラミネートプラスチックテープをラップ巻きした後に錫めっき軟銅線編組で被覆し、さらに外径7.4mmのシースとして、ポリエチレン樹脂を押出被覆して、発泡絶縁同軸ケーブルを得た。
比較例1及び比較例2
内部充実絶縁層形成まで実施例1と同様に実施し、内部充実絶縁層を目視にて観察したところ、メルトフラクチャー(表面あれ)が確認されたため、発泡絶縁層被覆以降の工程は実施しなかった。
比較例3及び4
内部充実絶縁層形成まで実施例1と同様に実施し、更に押出ダイス温度の調整を行ったが、いずれの温度条件においても押出直後の樹脂が垂れてしまい、良好に内部充実絶縁層を成形することが困難であったため、発泡絶縁層被覆以降の工程は実施しなかった。
上記工程で得られた実施例1〜実施例7及び比較例1〜比較例5の樹脂、発泡絶縁電線及び発泡絶縁同軸ケーブルをサンプルとして、以下の(1)〜(9)の評価試験を行なった。その結果を表1及び表2にまとめる。
(1)内部充実絶縁層用樹脂のメルトマスフローレイト
JISK6922−2に従い調整した内部充実絶縁層用樹脂ペレットについて、JISK7210記載のA法に従い、試験温度190℃及び試験荷重21.18Nの条件にて測定する。
(2)内部充実絶縁層用樹脂の融解ピーク温度
JISK7121に従い、示差走査型熱量計を用いて、JISK6922−2に従い調整した内部充実絶縁層用樹脂を約5mgアルミパンに詰め、窒素ガス流入速度50ml/分の条件で測定する。試験片の状態調節として、示差走査熱量計にて室温から200℃まで加熱速度100℃/分で昇温し、200℃で10分間保持し、さらに冷却速度10℃/分で−30℃まで降温する。引き続き−30℃から200℃まで加熱速度10℃/分で昇温して得られた融解ピークの頂点の温度を融解ピーク温度とする。
(3)内部充実絶縁層用樹脂の密度
JISK6922−2に従い調整した内部充実絶縁層用樹脂の1mm厚さの圧縮成形シートについて、JISK7112記載のA法(水中置換法)により測定する。
(4)内部充実絶縁層の外径
レーザ外径変位センサにより、内部充実絶縁層外径のXYの二軸方向についてオンラインで計測し、XYの二軸方向の内部充実絶縁層外径の平均値を内部充実絶縁層外径とする。
(5)内部充実絶縁体層の外観
目視にて内部充実絶縁体の表面を観察して、「垂れなく正常に押出成形できているか」、「メルトフラクチャーが無いか」を確認して、以下の判定を行う。
合格:垂れなく正常に押出成形できており、メルトフラクチャーが確認されない
不合格:垂れ等の押出成形上の不具合、もしくはメルトフラクチャーが確認される
(6)発泡絶縁電線の単位長さ当たりの引抜力
発泡絶縁電線を400mm切り出し、両端から50mmの絶縁層(内部充実絶縁層、発泡絶縁層及び外部充実絶縁層)を剥き取り測定用サンプルとする。引張試験機を用いて、発泡絶縁電線から測定用サンプルの内部導体を200mm/分で引き抜く時に掛かる最大荷重を計測する。サンプル5本について計測した最大荷重の最小値f[N]から、数1により発泡絶縁電線の前記引抜力F[N/m]を算出する。発泡絶縁電線の前記引抜力Fは98N/m以上を合格とし、98N/mに満たないものを不合格とする。
Figure 0005483939
(7)発泡絶縁同軸ケーブルの電圧定在波比
両端に接続器(コネクタ)を取り付けた発泡絶縁同軸ケーブルをネットワークアナライザに接続し、前記ネットワークアナライザを用いて、反射法により、10MHz〜3000MHzの範囲にて電圧定在波比を連続測定する。測定周波数範囲の電圧定在波比の最大値が1.3以下のものを合格とし、1.3を超えるものは不合格とする。
(8)発泡絶縁同軸ケーブルの特性インピーダンス
両端に接続器(コネクタ)を取り付けた発泡絶縁同軸ケーブルをネットワークアナライザに接続し、前記ネットワークアナライザを用いて、10MHzの近傍の周波数における特性インピーダンスを測定する。全ての実施例及び比較例は50Ω系で設計しているため、発泡絶縁同軸ケーブルの特性インピーダンスが48Ω以上52Ω以下を合格、48Ω未満又は52Ωを超えるものは不合格とする。
(9)発泡絶縁同軸ケーブルの減衰量
両端に接続器(コネクタ)を取り付けた発泡絶縁同軸ケーブルをネットワークアナライザに接続し、前記ネットワークアナライザを用いて、挿入損失法(ケーブル挿入前後のレベル差により減衰量を求める方法)により、100、400、1000、1600、2000MHzの5周波数での減衰量αを測定し、数2を用いて測定値を20℃での値に温度換算して求めたα20 を、発泡絶縁同軸ケーブルの減衰量とする。
Figure 0005483939
発泡絶縁同軸ケーブルの減衰量は、
100MHzは66.7dB/km以下、
400MHzは135.7dB/km以下、
1000MHzは218.5dB/km以下、
1600MHzは299.0dB/km以下、
2000MHzは317.4dB/km以下、
を合格とし、いずれかが超えるものは不合格とする。
(10)総合評価
上記(5)〜(9)の評価結果から、以下のとおり判定した
○:全評価が合格である
×:一つ以上の評価が不合格である
Figure 0005483939
Figure 0005483939
表1から明らかなように、実施例1〜実施例7に示した細物の発泡絶縁電線、すなわち、メルトマスフローレイトが10.5g/10分以上、16.5g/10分以下であり、融解ピーク温度が90℃以上、109℃以下であるシングルサイト触媒の一種であるメタロセン触媒により重合されたポリエチレンからなる内部充実絶縁層を持つ発泡絶縁電線は、細物であるにもかかわらず単位長さ当たりの引抜力が優れており、且つ前記発泡絶縁電線を用いた発泡絶縁同軸ケーブルの電圧定在波比や減衰量が、高周波数帯においても良好であることがわかった。また、内部充実絶縁層の外観が良好であることから長尺押し出し性に優れることがわかった。
実施例1〜実施例7で使用した内部充実絶縁層用樹脂は、いずれもシングルサイト触媒の一種であるメタロセン触媒により重合されたポリエチレンであるが、メタロセン触媒以外のシングルサイト触媒により重合されたポリエチレンも、メタロセン触媒による重合で得られる特徴的な分子形態(ポリエチレンの側鎖の分岐が少なく、分子量及びコモノマーの分布が均一であること等)と同様の分子形態をとるため、メタロセン触媒以外のシングルサイト触媒により重合されたポリエチレンを本発明のポリエチレンに適用した場合も、実施例1〜実施例7のメタロセン触媒により重合されたポリエチレンと同様の効果を奏することは明らかである。
これに対して、表2から明らかなように、比較例1の内部充実絶縁層は、シングルサイト触媒の一種であるメタロセン触媒により重合された低メルトマスフローレイトのポリエチレンからなり、比較例2の内部充実絶縁層は、シングルサイト触媒により重合された高融解ピーク温度のポリエチレンからなるが、比較例1及び比較例2は内部充実絶縁層の外観にメルトフラクチャーが確認されたため、長尺押出性に問題がある。比較例3及び比較例4は、シングルサイト触媒の一種であるメタロセン触媒により重合された低融解ピーク温度のポリエチレンからなる内部充実絶縁層を持つが、押出成形の際に内部充実絶縁層が垂れ、正常に成形できなかったため、発泡絶縁同軸ケーブル化が困難であった。比較例5は、ラジカル開始剤(酸素又は過酸化物等)を触媒とした高圧ラジカル重合法により重合したポリエチレンからなる内部充実絶縁層をもつが、単位長さ当たりの引抜力が問題となるものであった。
本発明で得られた発泡絶縁電線は、従来実現できなかった、引抜力、減衰量及び電圧定在波比のいずれもが良好な高周波同軸ケーブルが提供される。したがって、本発明で得られた、高周波同軸ケーブルは通信用アンテナ給電線、CATV用伝送線路、路携帯電話基地局用供給線装置等に好適に使用でき、本発明で得られた、細径高周波同軸ケーブルは、装置配線やジャンパ線等の用途に好適に使用できる。
11、21 内部導体
12 絶縁層
13 外部導体
14 シース
22 内部充実絶縁層
23 発泡絶縁層

Claims (3)

  1. 内部導体に内部充実絶縁層を被覆したのち発泡絶縁層を被覆する発泡絶縁電線において、前記内部充実絶縁層がシングルサイト触媒により重合されたポリエチレンからなり、前記ポリエチレンのメルトマスフローレイトが10.5g/10分以上、16.5g/10分以下であり、融解ピーク温度が90℃以上、109℃以下であることを特徴とする発泡絶縁電線。
  2. 前記ポリエチレンの密度が920kg/m以下であることを特徴とする請求項1に記載の発泡絶縁電線。
  3. 請求項1又は2に記載の発泡絶縁電線を含むことを特徴とする発泡絶縁同軸ケーブル。
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