JP4644497B2 - 同軸ケーブル - Google Patents

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本発明は、特に導体密着性に優れた充実絶縁体層を有する細径の同軸ケーブルに関するものである。
高周波用の同軸ケーブルは、銅等からなる内部導体とその上に設けられる絶縁体層とその外周に設けられる外部導体等から構成される。そして最近は、周波数域がGHz帯域に於いても減衰量が小さい同軸ケーブルが要求されるため、特に誘電特性に優れた絶縁体層が望まれている。そのため、充実絶縁体層として誘電損失が小さい高密度ポリエチレンが使用されているが、この材料は内部導体との密着性に問題があり低密度ポリエチレンを混合して用いることも行われている。しかしながら、密着性と誘電特性の両者を十分に満足させるには至っていない。また、最近は同軸ケーブルの耐熱温度の要求が高くなっているため、前記絶縁体層は電子線照射架橋が行われることが多くなってきた。このように電子線照射架橋を行い樹脂の融点近傍の温度で使用される場合、ポリプロピレン樹脂ほどではないが、銅害によるポリエチレン樹脂の劣化・変色問題が無視できなくなっている。このため、ポリエチレン樹脂中に銅害防止剤や酸化防止剤を添加することが行われるが、これは絶縁体層の誘電特性を低下させることになるので、このような問題がない同軸ケーブルが求められている。さらに、電子機器類の小型化等により、前述した問題がない細径の同軸ケーブルが望まれている。例えば特許文献1には、導体と発泡絶縁体層との密着性を改良するために、銅体上に超薄膜状のポリオレフィンやイオン性共重合体の充実被覆を施した後、発泡絶縁体層を形成する発泡同軸ケーブルに関する技術が記載されているが、充実絶縁体層を有する同軸ケーブルの場合についての記載はなく、また、電子線照射架橋による問題や銅害問題に関しての開示もされていない。
特公昭48−42314号公報
よって本発明が解決しようとする課題は、内層と内部導体とが適度な密着力を有し口出し作業性に優れていると共に、内層の押出し加工性にも優れた特に、細径同軸ケーブルを提供すること。さらには、内層の押出し加工性に優れ、銅害がないと共に誘電正接に優れた特に、細径同軸ケーブルを提供することにある。
前記解決しようとする課題は、請求項1に記載されるように、内部導体上に、密度が0.918〜0.922g/cmでメルトマスフローレートが3.0〜5.2g/10min(190℃、2.16kg)、厚さが15〜50μmのポリエチレン樹脂の薄層からなる内層が設けられ、その上にポリエチレン系樹脂からなる充実絶縁体層、外部導体が順次形成された同軸ケーブルとすることによって、解決される。また請求項2に記載されるように、銅からなる内部導体上に、密度が0.918〜0.92g/cmでメルトマスフローレートが3.0〜5.2g/10min(190℃、2.16kg)、厚さが15〜50μmのポリエチレン樹脂の薄層からなる内層が設けられ、その上にポリエチレン系樹脂からなる充実絶縁体層、外部導体が順次形成された同軸ケーブルにおいて、前記内層は、前記ポリエチレン樹脂中に0.05〜0.15質量%の銅害防止剤を添加したポリエチレン樹脂組成物である同軸ケーブルとすることによって、解決される。
そして請求項に記載するように、請求項1または2のいずれかに記載の同軸ケーブルは、前記充実絶縁体層が電子線照射架橋されている同軸ケーブルとすることによって、解
決される。
以上のような本発明は、内部導体上に特定の密度とメルトマスフローレート(以下MFR)のポリエチレン樹脂(以下PE)の薄層からなる内層を設け、その上にポリエチレン系樹脂からなる充実絶縁体層を形成した細径の同軸ケーブルであり、特に前記薄層からなる内層の厚さを15〜50μmとしたので、内部導体との適度な密着力を付与でき、ケーブルの口出し作業等の作業性に優れると共に、内層の押出し加工性に優れた細径の同軸ケーブルが得られる。
また、前記内層として特定量の銅害防止剤を配合したポリエチレン樹脂組成物(以下PE組成物)を用いたので、内層の押出し加工性に優れ、銅害が防止できると共に優れた誘電正接(以下tanδ)を有する細径の同軸ケーブルとすることができる。
さらに、請求項1または2のいずれかに記載の同軸ケーブルが、電子線照射架橋されている同軸ケーブルとすることによって、前述の効果に加えて、耐熱性を付与した実用的な細径の同軸ケーブルが得られる。
以下に本発明を詳細に説明する。請求項1に記載される発明は、内部導体上に、密度が0.918〜0.92g/cmメルトマスフローレートが3.0〜5.2g/10min(190℃、2.16kg)、厚さが15〜50μmポリエチレン樹脂の薄層からなる内層が設けられ、その上にポリエチレン系樹脂からなる充実絶縁体層、外部導体が順次形成された同軸ケーブルである。
図1を用いて説明する。本発明の同軸ケーブルは、充実絶縁体層を有する細径の同軸ケーブルに関するもので、銅線等からなる内部導体1と、その上に設けられる薄肉の内層2およびその上に形成する充実絶縁体層3から構成される。そして内層2は、密度が0.918〜0.92g/cmで、MFRが3.0〜5.2g/10min(190℃、2.16kg)のPEを用いることが重要である。これは、内部導体1との適度な密着力が得られるようにして口出し作業等の作業性を優れたものとすると共に、内層2の押出し速度を速めても偏肉等が生じない押出し加工性を良好にするためである。すなわち、密度が0.918〜0.92g/cmで、MFRが3.0〜5.2g/10min(190℃、2.16kg)のPEを使用することによって、導体1との密着力を5〜15N/50mm程度のものとすることができ、また内層2の押出し加工性を良好にできる。このため製造コスト的にも優れたものとなる。
そして、密度が0.918〜0.92g/cmで、MFRが3.0〜5.2g/10min(190℃、2.16kg)のPEの内層2は、好ましくはその厚さを15〜50μmとすることによって、内層2と内部導体1との適度な密着力が得られ、導体の口出し等に於いて作業性に優れたものとなる。また、内層2の押出し速度を比較的早くしても、内部導体1上に樹脂が途切れたり偏肉等を生じることがない、優れた押出し加工性が得られる。なお、厚さを50μmまでとすることによって、充実絶縁体層の厚さを十分確保できると共に、細径の同軸ケーブルとしても十分機能する厚さとなる。また、比較的多量の銅害防止剤を添加したペレットを用いて製造しても、銅害防止剤のバラツキの少ない内層を形成することができる。
また、ポリエチレン系樹脂からなる充実絶縁体層3は、低密度ポリエチレン(以下LDPE)、中密度ポリエチレン(以下MDPE)、高密度ポリエチレン(以下HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(以下LLDPE)や、これらの混合物から選定して用いられる。これらのポリエチレン系樹脂は、比較的tanδに優れたものであり、また、これらの樹脂に銅害防止剤を直接添加することがないので、同軸ケーブルのtanδを低下させることがない。具体的なポリエチレン系樹脂としては、HDPEとして日本ユニカー社の(6944NT)、三井化学社の(Hizex5305E)等、MDPEとして宇部興産社の(ZM007)等、またLDPEとしては、宇部興産社のZ463、日本ユニカー社の1253NT等が挙げられる。
そして、充実絶縁体層3の厚さは、本発明で対象とする同軸ケーブルは比較的細径のものであるから、通常1.5mm程度までとされる。そして、内部導体1としては通常0.5〜1.0mm程度の導体径のものが使用される。なお、充実絶縁体層3の上には、通常銅などの薄板等によって形成された外部導体(図示せず)、その外部にはプラスチック材料からなるシース(図示せず)が設けられる。また、この細径同軸ケーブルは耐熱性を要求されるので、通常、電子線照射架橋が行われる。しかしながら電子線照射が施されると、ポリエチレン系樹脂に於いてもそれまでの耐熱温度では見られなかった、銅害と称する絶縁体の劣化や変色現象が見られる。このために、通常絶縁体層には銅害防止剤を添加して使用することが行われる。しかし銅害防止剤は絶縁体層の誘電正接を増加させるので、多量には添加することはできない。
そこで本発明では、請求項に記載するように、密度が0.918〜0.92g/cmで、MFRが3.0〜5.2g/10min(190℃、2.16kg)で、厚さが15〜50μmのPEの内層2中に、0.05〜0.15質量%の範囲で銅害防止剤を添加することにしたものである。このような銅害防止剤を特定量配合したPE組成物からなる薄肉の内層2とすることにより、充実絶縁体層3のtanδを低下させることなく、銅害防止効果を発揮させることができる。すなわち、銅害防止剤の配合量を0.05質量%以上とすることによって、銅害を防止できると共に十分な分散性を確保できることになるが、本発明の内層2は非常に薄いものであるからPE組成物のペレット一粒ごとのバラツキが生じる可能性があり、この程度の濃度は必要である。また、0.15質量%以下とすることによって、銅害防止剤がペレットから析出する問題もなくなる。また、前述のように内層2を15μm以上の厚さとしているので、充実絶縁体層3を銅害による劣化や変色から保護できることが判った。これは、充実絶縁体層3の劣化や変色部分を詳細に検討した結果、銅害の開始が生じるのは15μm程度からであるとの知見によるものである。
以上の構成の同軸ケーブルは、耐熱性を付与するために電子線照射を行って架橋処理が施される。すなわち、請求項に記載するように、内部導体1上に設けられた薄肉の内層2、その上に形成された充実絶縁体層3を有する細径の同軸ケーブルに、電子線照射を行って充実絶縁体層3を架橋する。このように架橋処理された細径の同軸ケーブルは、要求される耐熱性を付与された電子機器類用の同軸ケーブルとして、実用的なものとすることが可能となる。また、充実絶縁体層3には例えばチバスペシャリティケミカルズ社のイルガノックス1010のような酸化防止剤が必要量添加される。また、前記充実絶縁体層3の上には編組等による外部導体、その外部には保護層として通常プラスチック材料からなるシースが施される。
表1の実施例並びに表2の比較例によって、本発明の効果を確認した。表1または表2に記載した内層を有する2層構造の細径の同軸ケーブルを作製し、内層と導体との密着力(導体密着力)を、また内層の押出し加工性を確認するために、内層の肉厚変動、偏肉および内層の状態(内層樹脂が途切れ途切れになっていないか、または撚り線導体の谷間に内層樹脂が十分に入っているか否か)についても調べた。さらに、銅害の有無を調べるために内層の銅イオンマッピングを行った。また細径同軸ケーブルの誘電特性を調べるために、tanδを測定した。すなわち、0.54mmΦの銅導体上に第1押出機を用いて各種PEを、押出し速度を50m/minで、またダイス径を変えることによって、15μm、25μm(比較例用)並びに50μm厚さにそれぞれ押出し被覆した。続いて第2押出機からポリエチレン系樹脂の充実絶縁体層を0.52mm厚さに押出し被覆して、細径の同軸ケーブルとした。また前記と同様に、銅害防止剤としてCDA−1(旭電化工業社製)を添加したPEを内層とする細径の同軸ケーブルを作製した。
内層と内部導体との導体密着力は、図2に示す引張試験装置によって測定しN/50mmの値として記載した。評価は、導体密着力として5.0〜15.0N/50mmの範囲のものを合格とした。すなわち、残留する同軸ケーブルの長さが50mmとなるように、内層2並びに充実絶縁体層3を皮剥ぎして、内部導体1を露出させ、ついでこの内部導体1を、内部導体1と略等しい開孔5を形成した引張冶具6に挿通し、その端部を挟み込み固定部7でチャック8に固定する。一方引張冶具6の端部は、その端部を挟み込み固定部9でチャック10に固定される。そしてこの引張冶具6は、定められた速度で矢印(↓)方向に移動可能となっている。このような状態で、引張冶具6を矢印(↓)方向に移動させて導体密着力(N/50mm)を測定した。なお、この引張試験装置に於いては、同軸ケーブル4を指定速度で上方へ引張ることによっても密着力を測定することができる。
また、内層の押出し加工性に関しては、内層を50m/minで押出し被覆した時の肉厚変動、偏肉および内層の状態を観察した。すなわち、内層断面をCCDカメラおよびSEM(走査型電子顕微鏡)を用いて観察し、内層の厚みが大きく変動していたものを有りとして×印で記載した。また問題になるほどではないものは、無しとして○印で記載した。さらに内層の偏肉については、最小厚さ/最大厚さとして計算し0.90以上の場合を偏肉無しとして○印で、0.90未満の場合を偏肉有りとして×印で記載した。さらに内層の状態として、内部導体上の内層樹脂について、導体上の樹脂が途切れ途切れになっていたり或いは撚り線導体の谷間に樹脂が十分に入っていないものを、問題ありとして×印で、問題がない場合は○印として記載した。
さらに銅害の有無について、EPMA(エレクトロンプローブマイクロアナライザー)による二次X線検出によって銅イオンマッピングを行い、銅イオンが検出されたものは銅害有りとして×印で、銅イオンが検出されなかったものは銅害無しとして、○印で記載した。また誘電特性の評価として、5GHzにおけるtanδの増加量を空洞共振摂動法によって測定し、比較例9に記載した同軸ケーブルとの差を増加量として記載した。増加量が0.3×10−4以内を合格とした。結果を表1および2に示した。
Figure 0004644497
表1から明らかなとおり、実施例1〜8に記載される本発明の同軸ケーブルは、口出し作業性等に優れた導体密着力を有し、また肉厚変動、偏肉等がなく、さらに内層状態にも問題がない優れた押出し加工性を有するものであった。さらに、内層には銅害がないと共にtanδも優れた細径同軸ケーブルであった。
すなわち、実施例1〜4に示されるように、密度が0.918〜0.922g/cm、MFRが3.0〜5.2g/10minのPEの内層を15〜50μmの厚さに被覆した細径同軸ケーブルは、導体密着力が5.0N/50mm〜13.3N/50mmと好ましい範囲のものであり、また内層には肉厚変動、偏肉や内層の状態にも問題がなく押出し加工性にも優れたものであった。さらに、銅害防止剤(CDA−1)を添加した実施例5〜8に示される例から明らかなように、CDA−1を0.05〜0.15質量%配合したPEの内層を15μm〜50μmの厚さに被覆した細径同軸ケーブルは、充実絶縁体層に銅イオンが検出されなかった。また、tanδの増加量も0.3×10−4以下と小さく誘電特性に優れたものである。さらには、内層に肉厚変動、偏肉や内層の状態にも問題のない押出し加工性にも優れたものであった。
Figure 0004644497
これに対して、表2に示した比較例1〜8に示す細径同軸ケーブルの場合は、内層の厚さが本発明の範囲であっても、導体密着力や内層の肉厚変動、偏肉および押出し加工性のいずれかに問題が見られた。また、比較例9〜11に示した細径同軸ケーブルでは押出し加工性には問題はないが、銅害が見られたり、tanδに問題となるものがあった。
すなわち、比較例1のように内層の厚さや密度が本発明の範囲であっても、MFRが本発明の上限値を超えると、内層に偏肉が見られるようになる。また比較例2および3のように、内層の厚さや密度が本発明の範囲であっても、MFRが本発明の下限値未満であると、内層の状態に問題が生じ押出し加工性が悪くなる。さらに比較例4、6および7のように、密度が本発明の範囲を超えMFRが本発明の範囲以下では、導体密着力が小さくなったり、内層の状態に問題があり押出し加工性が悪くなる。また比較例5のように、密度が0.934g/cmまたMFRが5.0g/10minのように、本発明の範囲を超える場合には導体密着力が小さくなる問題がある。さらに比較例8のように、密度が0.962g/cm、MFRが8.0g/10minのように本発明の範囲を大きく超える場合には、導体密着力が小さくまた肉厚変動や偏肉を生じて好ましくない。さらにまた、比較例9の場合のように銅害防止剤を添加しない場合には、銅イオンが検出され銅害を受けていた。また、添加したとしても0.03質量%と少ない比較例10の場合には、銅害防止剤の添加量が少量過ぎて、分散不良が生じやすくバラツキが生じると共に、PEに銅イオンが大量に検出された。また比較例11のように、CDA−1を0.2質量%と多く添加すると、銅害は見られなくなるがtanδの増加量が0.5×10−5と大きくなり誘電特性のうえから好ましくない。
以上のような本発明の細径同軸ケーブルは、導体との密着力が適度で作業性に優れ、また肉厚変動、偏肉や内層の状態等の押出し加工性に優れ、さらに銅害がないと共に誘電特性に優れているので、細径の同軸ケーブルとして種々の電子機器類用として実用的なものである。
本発明の細径同軸ケーブルの一例を示す概略断面図である。 導体との密着力を測定するための引張試験装置の概略を示す断面図である。
符号の説明
1 内部導体
2 内層
3 充実絶縁体層
4 同軸ケーブル
5 開孔
6 引張冶具
7、9 挟み込み固定部
8、10 チャック

Claims (3)

  1. 内部導体上に、密度が0.918〜0.92g/cmでメルトマスフローレートが3.0〜5.2g/10min(190℃、2.16kg)、厚さが15〜50μmのポリエチレン樹脂の薄層からなる内層が設けられ、その上にポリエチレン系樹脂からなる充実絶縁体層、外部導体が順次形成されたことを特徴とする同軸ケーブル。
  2. 銅からなる内部導体上に、密度が0.918〜0.922g/cm でメルトマスフローレートが3.0〜5.2g/10min(190℃、2.16kg)、厚さが15〜50μmのポリエチレン樹脂の薄層からなる内層が設けられ、その上にポリエチレン系樹脂からなる充実絶縁体層、外部導体が順次形成された同軸ケーブルにおいて、前記内層は、前記ポリエチレン樹脂中に0.05〜0.15質量%の銅害防止剤を添加したポリエチレン樹脂組成物であることを特徴とする同軸ケーブル。
  3. 請求項1または2のいずれかに記載の同軸ケーブルは、前記充実絶縁体層が電子線照射架橋されていることを特徴とする同軸ケーブル。
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