JP3780682B2 - 難燃性薄肉絶縁電線 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、薄肉絶縁層を有する薄肉難燃絶縁電線、特に絶縁層の厚さが0.4mm以下の車両用に適した薄肉難燃絶縁電線に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、車両用電線には、難燃ポリエチレン、難燃架橋ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等を、導体の周囲に厚さ0.8〜1mmに被覆したものが一般に使用されてきている。ポリエチレンの難燃化のためには、低密度ポリエチレンや高密度ポリエチレンに、有機ハロゲン系の難燃剤を添加し、必要に応じ無機系難燃剤を併用する方法が採用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、車両用絶縁電線の軽量化、省スペース化のため、電線の絶縁層の肉厚を薄くする要求が高まっており、また、絶縁電線の燃焼時の煙害や腐食性ガスの発生を防止するため、難燃剤として金属水和物が使用されるようになってきた。しかしながら、絶縁層の肉厚を例えば0.4mm以下と薄くし、かつ、金属水和物を配合すると、絶縁電線のカットスルー抵抗が大幅に低下するという問題がある。
【0004】
従って、本発明の目的は、カットスルー抵抗に優れ、かつ燃焼時に有毒な腐食性ガスを発生しない、薄肉難燃絶縁電線を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するため、導体外周の絶縁層を内層と外層の2層構造とし、内層をASTM D2240 ショアD硬度が40〜55、外層をASTM D2240 ショアD硬度が60以上である薄肉絶縁電線を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明において、内層は、ポリオレフィンに難燃剤として金属水和物を配合したで形成するのが好ましい。ポリオレフィンとしては、エチレンプロピレンコポリマ、エチレンプロピレンジエンターポリマ、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン酢酸ビニルコポリマ、エチレンメチルアクリレート、エチレンメチルメタアクリレート、エチレンオクテンコポリマ、エチレンブテンコポリマ、エチレンブテンジエンターポリマ、エチレンエチルアクイレート、ポリプロピレンといったもをがあげられ、これらは単独で、あるいは2種以上混合して使用できる。金属水和物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、ハイドロタルサイト類などがあげられ、これらは1種あるいは2 種以上の併用が可能である。金属水和物は、シランカップリング剤、ステアリン酸、りん酸エステルなどで表面処理したものも使用できる。金属水和物は、ポリオレフィン100重両部に対して、40〜200重量部の範囲で混和するのが好ましく、40重量部未満では難燃性が不十分となり、200重量部を越えると機械的特性や耐熱性が低下する。
【0007】
外層は、機械的特性を考慮し、密度が0.93以上のポリエチレンで形成するのが好ましい。
【0008】
本発明において、絶縁層の内層をASTM D2240 ショアD硬度が40〜55、外層をASTM D2240 ショアD硬度が60以上とすることにより、優れたカットスルー抵抗を示すことが見出された。すなわち、ショアD硬度が60以上の外層によりシャープエッジに対する抵抗性を示し、ショアD硬度が40〜55の比較的柔軟な内層がクッションとなってクラックの発生、成長を阻止するものである。
【0009】
したがって、外層のショアD硬度が60未満ではカットスルー抵抗が不十分であり、また、内層のショアD硬度が40未満では柔らかすぎカットスルー抵抗が不十分であり、55を越えると内層と外層間の硬度差が小さいためクッション効果が小さく、カットスルー抵抗が不十分である。
【0010】
高カットスルー抵抗を実現するため、外層を密度が0.93以上のポリエチレンで形成すること好ましいが、このようなポリエチレンは高結晶性であるため、難燃剤である金属水和物を多量に混和すると伸びが著しく低下する。機械特性保持のためには、難燃剤を混和しないことが好ましく、この場合、絶縁電線としての難燃性を低下させないため、外層と内層の厚さの比(外層/内層)を1/2〜1/5とすることが好ましい。外層の厚さが小さ過ぎるとカットスルー抵抗が低下することは言うまでもない。
【0011】
本発明においては、上記配合剤の他に、架橋助剤、酸化防止剤、滑剤、加工助剤、安定剤、着色剤、表面処理剤、カーボンブラック等を適量添加しても差支えない。
【0012】
絶縁層は、電子線やγ線等の電離性放射線により照射架橋したり、あるいはパーオキサイド等を添加して加熱架橋したりすることが、絶縁電線の特性を維持する上で好ましい。
【0013】
【実施例】
[実施例1]
エチレンエチルアクリレートコポリマ(メルトフローレート:13、密度:0.93)を100重量部、架橋助剤としていのトリアリルイソシアヌレートを2重量部、酸化防止剤としてのメルカプトベンズイミダゾールを1重量部、難燃剤としての水酸化マグネシウムを80重量部、滑剤を1重量部それぞれ秤量し、これらを容量250mlの小型ミキサに投入し、180℃で混練りして内層コンパンドを得た。
【0014】
高密度ポリエチレン(メルトフローレート:0.8、密度:0.953)を100重量部、酸化防止剤としてのメルカプトベンズイミダゾールを1重量部、カーボンブラックを1重量部それぞれ秤量し、これらを容量250mlの小型ミキサに投入し、180℃で混練りして外層コンパンドを得た。
【0015】
内層コンパウンド及び外層コンパウンドを2層同時押出方式により、外径0.18mmの銅線を37本撚り合わせた導体上に内層厚さ0.2mm、外層厚さ0.1mmとなるように押出被覆し、次いで20Mradの電子線を照射して架橋して絶縁電線を製造した。なお、内層は25mm押出機を用い200℃で押出し、外層は15mm押出機を用いて200℃で押出した。
【0016】
[実施例2]
エチレンエチルアクリレートコポリマに代えて超低密度ポリエチレン(メルトフローレート:15、密度:0.915)を、水酸化マグネシウムに代えて水酸化アルミニウムを使用して内層コンパウンドを調整し、内層厚さを0.225mm、外層厚さを0.075mmとした以外は実施例1と同様にして絶縁電線を製造した。
【0017】
[実施例3]
水酸化アルミニウムの配合量を100重量部として内層コンパンドを調整し、高密度ポリエチレンに代えて中密度ポリエチレン(メルトフローレート:4.5、密度:0.935)を使用して外層コンパウンドを調整した以外は実施例2と同様にして絶縁電線を製造した。
【0018】
[実施例4]
超低密度ポリエチレンに代えて低密度ポリエチレン(メルトフローレート:2.5、密度:0.92)を使用し、難燃剤として水酸化マグネシウム20重量部と水酸化アルミニウム50重量部を使用して内層コンパウンドを調整し、内層厚さを0.24mm、外層厚さを0.06mmとした以外は実施例3と同様にして絶縁電線を製造した。
【0019】
[実施例5]
難燃剤として水酸化マグネシウム50重量部と水酸化アルミニウム20重量部を使用して内層コンパウンドを調整し、外層コンパウンドは実施例1と同様のものを使用し、内層厚さを0.25mm、外層厚さを0.05mmとした以外は実施例4と同様にして絶縁電線を製造した。
【0020】
[比較例1]
エチレン酢酸ビニルコポリマ(メルトフローレート:3、密度:0.93)を100重量部、架橋助剤としていのトリアリルイソシアヌレートを2重量部、酸化防止剤としてのメルカプトベンズイミダゾールを1重量部、難燃剤としての水酸化マグネシウムを50重量部と水酸化アルミニウムを20重量部、滑剤を1重量部それぞれ秤量し、これらを容量250mlの小型ミキサに投入し、180℃で混練りして内層コンパンドを得た。
【0021】
中密度ポリエチレン(メルトフローレート:4.5、密度:0.935)を100重量部、酸化防止剤としてのメルカプトベンズイミダゾールを1重量部、カーボンブラックを1重量部それぞれ秤量し、これらを容量250mlの小型ミキサに投入し、180℃で混練りして外層コンパンドを得た。
【0022】
内層コンパウンド及び外層コンパウンドを2層同時押出方式により、外径0.18mmの銅線を37本撚り合わせた導体上に内層厚さ0.225mm、外層厚さ0.075mmとなるように押出被覆し、次いで20Mradの電子線を照射して架橋して絶縁電線を製造した。なお、内層は25mm押出機を用い200℃で押出し、外層は15mm押出機を用いて200℃で押出した。
【0023】
[比較例2]
エチレン酢酸ビニルコポリマに代えてエチレンエチルアクリレートコポリマ(メルトフローレート:13、密度:0.93)を使用して内層コンパウンドを調整し、中密度ポリエチレンに代えて低密度ポリエチレン(メルトフローレート:2.5、密度:0.92)を使用して外層コンパウンドを調整し、内層厚さを0.24mm、外層厚さを0.06mmとした以外は比較例1と同様にして絶縁電線を製造した。
【0024】
[比較例3]
エチレン酢酸ビニルコポリマに代えてエチレンエチルアクリレートコポリマ(メルトフローレート:13、密度:0.93)を使用して内層コンパウンドを調整し、内層厚さを0.15mm、外層厚さを0.15mmとした以外は比較例1と同様にして絶縁電線を製造した。
【0025】
[比較例4]
エチレン酢酸ビニルコポリマに代えて超低密度ポリエチレン(メルトフローレート:15、密度:0.915)を使用して内層コンパウンドを調整し、中密度ポリエチレンに代えて高密度ポリエチレン(メルトフローレート:0.8、密度:0.953)を使用して外層コンパウンドを調整し、内層厚さを0.26mm、外層厚さを0.04mmとした以外は比較例1と同様にして絶縁電線を製造した。
【0026】
[比較例5]
内層コンパンドを厚さ0.3mmに被覆し、外層なしの絶縁電線を比較例4と同様にして製造した。
【0027】
実施例1〜5及び比較例1〜5の絶縁電線について評価した結果を表1に示す。なお、表1には各例の配合も併せて示した。
【0028】
硬度は、電線サンプルから絶縁層を剥ぎ取り、ミクロトームを用いて外層と内層に切り分け、これらをASTM D2240に準拠しショアDで測定した。サンプルが微少の場合は、ダイナミック超微小硬度計((株)島津製作所 DVH−201)を用いて測定した。
【0029】
カットスルー抵抗は、室温雰囲気中でUL Subject758に準じて測定した。
【0030】
難燃性は、JISC−3005の傾斜試験に準じて評価し、鉛直方向に対して60°傾斜した各絶縁電線に所定時間炎を当て、その後炎を取り去り、60秒以内で自己消化したものを合格(○)、炎を取り去った後60秒たっても自己消化しないものを不合格(×)とした。
【0031】
【表1】
【0032】
表1からも明らかなように、本発明に係る実施例1〜5ではいずれもカットスルー抵抗が3000g以上と優れており、また、難燃性も良好である。これに対し、比較例1は内層の硬度が、比較例2は外層の硬度がそれぞれ規定値より低いため、カットスルー抵抗が低い。比較例3は外層の割合が大きいものであり、難燃性が不合格である。比較例4は外層が薄すぎるためカットスルー抵抗が低い。比較例5は一層の場合であるが、カットスルー抵抗が大幅に劣る。
【0033】
【発明の効果】
以上説明してきた本発明によれば、優れたカットスルー抵抗を有する難燃性薄肉絶縁電線を実現できるようになる。
Claims (5)
- 導体外周の絶縁層を内層と外層の2層構造とし、内層のASTM D2240 ショアD硬度が40〜55、外層のASTM D2240 ショアD硬度が60以上であり、かつ外層と内層の厚さの比(外層/内層)が1/2〜1/5であることを特徴とする難燃性薄肉絶縁電線。
- 絶縁層の厚さは0.4mm以下である請求項1記載の難燃性薄肉絶縁電線。
- 内層をポリオレフィンに金属水和物を配合したコンパウンドで形成した請求項1記載の難燃性薄肉絶縁電線。
- ポリオレフィン100重量部に対して金属水和物を40〜200重量部混和した請求項3記載の難燃性薄肉絶縁電線。
- 外層を密度0.93以上のポリエチレンンを主体とするコンパウンドで形成した請求項1記載の難燃性薄肉絶縁電線。
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