JP5688232B2 - 弾性クローラとこれを用いたクローラ式走行装置 - Google Patents
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Description
かかる階段昇降用のクロ−ラ式走行装置の弾性クローラは、無端帯状のゴム製の弾性体によりなるクローラ本体と、階段の段鼻に嵌合するようにクローラ本体の外周面にクローラ周方向に列設された複数のラグとを備えており、このラグを段鼻に咬み合わせて階段を昇降するためのトラクションを得るようになっている。
そこで、階段昇降に適した弾性クローラとして、通常のラグ間に高さの低い複数の小ラグをクローラ周方向に所定ピッチで配設することにより、ラグピッチを狭めて段鼻への係合機会を増やしてスリップを防止するものがある(例えば、特許文献1参照)。
一方、これを解決する手段としては、ラグのゴム硬度を増大してラグ先端部の変形を低減させたり、ラグの当接面にシボ加工等による滑り止め部を形成したりする手段が考えられる。
本発明は、上記従来の問題点に鑑み、階段昇降時のトラクション性能を長期に渡って維持することができる弾性クローラと、これを用いたクローラ式走行装置を提供することを目的とする。
また、上記滑り止め凸部は突出厚よりも接地幅の方が大きいので、シボ加工等による小さな突起に比べて、段鼻の上縁面に対する接地面積が大きく摩耗し難い。このため、階段昇降時のトラクション性能を長期に渡って維持することができる。
その理由は、段鼻の上縁面に主として当接するのは、当接面における上記中心線よりもラグの先端側の部分であり、かつ、その中心線よりも基端側に滑り止め凸部が存在すると、先端側に配置された滑り止め凸部の接地圧が弱まり、却って摩擦力が低下するからである。
特に、当接面におけるクローラ幅方向ほぼ全長に渡って連続して延設された滑り止め凸部の場合には、段鼻の上縁面への引っ掛かり度合いが増して摩擦力をより向上できる点で好ましい。
後述の実施例の通り、滑り止め凸部の突出厚が1mm未満の場合には、実質的な滑り止め効果が得られず、4mmを超えると凸部の剛性が低くなり過ぎて滑り止め効果が却って低下するので、滑り止め凸部の突出厚は1〜4mmであることが有効である。
その理由は、後述の実施例の通り、滑り止め凸部が上記の数値範囲にある場合には、最大の滑り止め効果が得られる可能性が高いからである。
従って、本発明のクローラ式走行装置は、本発明の弾性クローラと同様の作用効果を奏する。
図1は、本発明の実施形態に係るクローラ式走行装置1の側面図である。また、図2は、弾性クローラ11が階段5に咬み合った状態を示す側面図である。
図1に示すように、本実施形態のクローラ式走行装置(以下、「走行装置」ということがある。)1は、主として階段昇降用のものであり、例えば重い荷物や車椅子に乗った身体障害者等を積載可能な荷台が上部に取り付けられた階段昇降台車に用いられる。
この走行装置1は、駆動輪としての駆動スプロケット2と、従動輪としてのアイドラ3と、これらの間に列設された複数のガイドローラ4とを備えており、これらの外周に前記弾性クローラ5が巻き掛けられることによって構成されている。
また、走行装置1のガイドローラ4は、弾性クローラ11の駆動突起14と噛み合いつつ転動するギア状の転輪よりなり、クローラ周方向に沿って駆動される弾性クローラ11を内周側から支持する。
図1及び図2に示すように、本実施形態の弾性クローラ11は、無端帯状のゴム製の弾性体よりなるクローラ本体12と、階段5の段鼻6に係合するようにクローラ本体12の外周面にクローラ周方向に列設された複数のラグ13とを備えている。
また、上記弾性クローラ11は、クローラ本体12の内周面から一体に突設された複数の駆動突起14と、クローラ本体12の内部にクローラ周方向に沿って埋設された抗張体15(図3及び図4参照)とを備えている。
クローラ本体12の外周面のラグ13と内周面の駆動突起14は、いずれもクローラ本体12と同じゴム材料によって一体成形されている。このうち、ラグ14は、それぞれ、側面視においてほぼ直角二等辺三角形状に形成され、一方側の面が階段5の段鼻6の上縁面と面接触する当接面13Aとなっている。
また、図3及び図4に示すように、本実施形態の弾性クローラ11では、各々のラグ14及び駆動突起14は、クローラ本体11の幅方向においてほぼ全長に渡って一体形成されている。
更に、この場合、芯金に突起部を設け、この突起部をクローラ本体12の内周面から突出させることで駆動突起を構成してもよい。
図3(a)は、第1実施形態の弾性クローラの側面断面図であり、図3(b)は同クローラの横断面図(図3(a)の左方向から視た断面図)である。
図3に示すように、第1実施形態の弾性クローラ11では、階段5の段鼻6の上縁面と面接触するラグ13の当接面13Aに、この当接面13Aから一体に突設された滑り止め凸部16が設けられている。
すなわち、図5(a)に示すように、ラグ13の当接面13Aにおいて、クローラ幅方向をX方向とし、これに直交する当接面13A内の方向をY方向とすると、滑り止め凸部16のX方向幅d1とY方向幅d2はいずれも突出厚tよりも大きくなっている。
なお、滑り止め凸部16の平面形状は、上記円形に限らず、図5(b)に示す六角形や図5(c)に示す五角形を含む多角形であってもよい。また、X方向の配置数も特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。
図4(a)は、第2実施形態の弾性クローラの側面断面図であり、図4(b)は同クローラの横断面図(図4(a)の左方向から視た断面図)である。
図4に示すように、第2実施形態の弾性クローラ11では、ラグ13の当接面13Aに一体に突設された滑り止め凸部16の形状が、クローラ幅方向全長に渡って連続して延設されたものとなっており、この点で第1実施形態の場合と異なる。
また、クローラ幅方向に延設された滑り止め凸部16は、当接面13Aにおけるラグ高さの半分に相当する中心線Cよりもラグ13の先端側(図5の下側)に偏って配置されており、当該中心線Cよりもラグ13の基端側(図5の上側)には滑り止め凸部16が設けられていない。
上記実施形態に係る弾性クローラ11によれば、段鼻6の上縁面と面接触するラグ13の当接面13Aに滑り止め凸部16が形成されているので、この凸部16の滑り止め効果によって当接面13Aの摩擦力が増大し、段鼻6に係合したラグ13がその上縁面から外れ難くなる。このため、階段昇降時のトラクション性能が向上する。
また、滑り止め凸部16は突出厚tよりも接地幅d1,d2の方が大きいので、シボ加工等による小さな突起に比べて、段鼻6の上縁面に対する接地面積が大きく摩耗し難い。このため、階段昇降時のトラクション性能を長期に渡って維持することができる。
すなわち、段鼻6の上縁面に主として当接するのは、ラグ13の当接面13Aにおける上記中心線Cよりもラグ13の先端側の部分であるため、この部分に滑り止め凸部16を集中して設けておくことにより、凸部16による滑り止め効果が有効に確保される。
更に、第2実施形態の弾性クローラ11では、滑り止め凸部16が、当接面13Aにおけるクローラ幅方向ほぼ全長に渡って連続しているので、第1実施形態に比べて段鼻6の上縁面への引っ掛かり度合いが増大し、摩擦力がより向上するという利点がある。
本実施例では、図3及び図4に示す各実施形態の弾性クローラ11を、実際にクローラ式走行装置1に装着して、段鼻6を含む踏み面全体が平坦な階段6を数回昇降させて停止させ、この状態で、各ラグ13の段鼻6との係合度合いを目視で評価した。
また、この実施例における共通の諸元は次の通りである。
実機重量を含む全荷重:230kg
ラグ当接面の長さ(クローラ幅方向の長さ):51mm
ラグ当接面の幅(ラグ高さ方向の長さ) :15mm
また、突出厚tが5mmに達すると、凸部16がない場合の評価指数である「100」に概ね戻るので、t=5mm以上の滑り止め凸部16を設けても、却って滑り止め効果が低下するので設ける意味がない。
また、滑り止め凸部16による滑り止め効果を最大限に確保するには、突出厚tの数値範囲を、2mm≦t≦3mmの範囲に設定すればよいことが分かる。
なお、今回開示した実施形態は本発明の例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、上記実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲及びその構成と均等な範囲でのすべての変更が含まれる。
また、ラグ13間のクローラ周方向のピッチ間隔は必ずしも等間隔でなくてもよく、適用する階段5の段鼻6間の間隔に応じて適宜設定することができる。
2 駆動スプロケット
3 アイドラ
4 ガイドローラ
5 階段
6 段鼻
11 弾性クローラ
12 クローラ本体
13 ラグ
13A 当接面
14 駆動突起
15 抗張体
16 滑り止め凸部
16A 接地面
Claims (7)
- 無端帯状のゴム製の弾性体よりなるクローラ本体と、階段の段鼻に係合するように前記クローラ本体の外周面にクローラ周方向に列設された弾性体よりなる複数のラグとを備えている階段昇降に適した弾性クローラにおいて、
前記ラグは、基端部側から先端側に向うに従いクローラ周方向の幅が小さく形成され、
前記段鼻の上縁面と面接触する前記ラグの当接面が平坦面に形成され、
前記ラグの当接面に、突出厚よりも接地幅の方が大きい滑り止め凸部が一体に突設され、
前記滑り止め凸部の突出厚が1〜4mmであり、
前記滑り止め凸部が、側面視で平板状に形成され、段鼻の上縁面に面接触する接地面を有していることを特徴とする弾性クローラ。 - 前記滑り止め凸部の突出厚が2〜3mmである請求項1に記載の弾性クローラ。
- 前記ラグ及び前記滑り止め凸部のゴム硬度(デュロメーター:タイプA)が63〜80度である請求項1又は2に記載の弾性クローラ。
- 前記滑り止め凸部は、前記当接面におけるラグ高さの半分に相当する中心線よりも前記ラグの先端側に配置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性クローラ。
- 前記滑り止め凸部は、前記当接面におけるクローラ幅方向に間隔をおいて複数設けられている請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性クローラ。
- 前記滑り止め凸部は、前記当接面におけるクローラ幅方向ほぼ全長に渡って連続して延設されている請求項1〜5のいずれか1項に記載の弾性クローラ。
- 駆動スプロケット及びアイドラと、この間に設けられた複数のガイドローラと、これらの外周に巻き掛けられた請求項1〜6のいずれか1項に記載の弾性クローラとを備えているクローラ式走行装置。
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