JP5686252B2 - インクジェット記録用水性顔料インク - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット記録用水性顔料インクに関する。具体的にいえば、本発明は、自己分散顔料を含有するインクジェット記録用水性顔料インクに関する。
従来、被記録媒体に、画像データ信号に基づき画像を形成する記録方法として、種々の方式が利用されてきた。このうち、インクジェット方式は、安価な装置で、必要とされる画像部のみにインクを吐出し被記録媒体上に直接画像形成を行うため、インクを効率良く使用でき、ランニングコストが安い。さらに、インクジェット方式は騒音が小さいため、記録方法として優れている。
近年、インクジェット方式の記録方法に適用可能なインクとして、様々な被記録媒体に適用できると共に、耐水性及び耐光性に優れた顔料インクが注目されている。しかし、インクジェット記録用の顔料インクは、色再現領域、印字濃度、及び信頼性の点で問題が生じる。そこで、これらの問題を解消するため、分散剤を使用せずに安定的に分散可能な、いわゆる自己分散型顔料を含有する水性顔料インクが開発されている。
例えば、特許文献1には、カーボンブラックの表面に、キノン基に対するモル比が10以上の水酸基を導入した表面官能基組成を有するよう表面改質した、自己分散型カーボンブラックが開示されている。また、特許文献2には、酸性カーボンブラック及び水を混合し、これに次亜塩素酸ソーダを滴下して、100〜105℃で10時間撹拌し、脱塩、濃縮して得られた顔料分散液を酸処理、濃縮、乾燥することにより、活性水素で表面改質した自己分散型酸化カーボンブラック粉末の製造方法が開示されている。
また、例えば、特許文献3には、着色顔料をスルファニル酸と混合し、ここに亜硝酸ナトリウム溶液を添加して顔料スラリーを形成させた後、塩化水素酸を添加し70℃下で混合、乾燥させることで、C64SO3 -NA+基を有する表面改質した着色顔料を製造する方法が開示されている。
特開平5−186704号公報 特開平8−3498号公報 特表2000−513396号公報
しかしながら、インクには通常、界面活性剤や有機溶媒や樹脂粒子などの多くの添加剤(成分)が含まれるため、自己分散型顔料の分散安定性が悪化し、当該顔料の凝集による沈降が発生するという問題が生じる。
そこで、本発明は、顔料の凝集による沈降を抑制でき、自己分散型顔料の分散安定性に優れるインクジェット記録用水性顔料インクを提供することを目的の一つとする。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、自己分散型顔料と、4級アミノ酸と、当該4級アミノ酸より少量の1,6−ヘキサンジオールと、を含有するインクジェット記録用水性顔料インクにより、上記の問題点を解決することができることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は下記のとおりである。
[1]
自己分散型顔料と、4級アミノ酸と、アルカンジオールと、を含有し、前記アルカンジオールは、少なくとも1質量%以上の1,6−ヘキサンジオールを含み、前記4級アミノ酸は、前記1,6−ヘキサンジオールよりも多く含有される、インクジェット記録用水性顔料インク。
[2]
前記4級アミノ酸が、トリメチルグリシンである、[1]に記載のインクジェット記録用水性顔料インク。
[3]
前記アルカンジオールは1,6−ヘキサンジオールからなる、[1]又は[2]に記載のインクジェット記録用水性顔料インク。
[4]
前記1,6−ヘキサンジオール以外のアルカンジオールを一種以上さらに含有し、前記1,6−ヘキサンジオールは、該1,6−ヘキサンジオール以外のアルカンジオールの総量よりも多く含有される、[1]又は[2]に記載のインクジェット記録用水性顔料インク。
[5]
アセチレングリコール系界面活性剤をさらに含有する、[1]〜[4]のいずれかに記載のインクジェット記録用水性顔料インク。
[6]
[1]〜[5]のいずれかに記載のインクジェット記録用水性顔料インクを被記録媒体に対して吐出するインクジェットヘッドを備え、前記インクジェットヘッドは、前記被記録媒体に対して相対的に移動するものである、インクジェット記録装置。
[7]
前記インクジェットヘッドと共にキャリッジに搭載されるインクカートリッジ、又は、前記インクジェットヘッドを搭載したキャリッジと独立して搭載されるとともに、インク供給チューブによって該インクジェットヘッドと接続されたインクカートリッジをさらに備える、[6]に記載のインクジェット記録装置。
[8]
被記録媒体に対してインクジェットヘッドから[1]〜[5]のいずれかに記載のインクジェット記録用水性顔料インクを吐出する吐出工程を含む、インクジェット記録方法。
本実施形態におけるプリンター1の構成を示す斜視図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本明細書において、「分散安定性」とは、固体粒子を液体中に分散させて安定な縣濁液を形成する性質をいう。「吐出安定性」とは、ノズルの目詰まりがなく常に安定したインクの液滴をノズルから吐出させる性質をいう。
[インクジェット記録用水性顔料インク]
本発明の一実施形態に係る顔料インクは、自己分散型顔料と、4級アミノ酸と、アルカンジオールと、を含有する。そして、上記アルカンジオールは、少なくとも1,6−ヘキサンジオールを含み、かつ、上記4級アミノ酸は上記1,6−ヘキサンジオールよりも多く含有されることを特徴とする。
以下、当該インクジェット記録用水性顔料インクに含まれるか又は含まれ得る添加剤(成分)について、説明する。
〔自己分散型顔料〕
本実施形態のインクジェット記録用水性顔料インクは、自己分散型顔料を含有する。この自己分散型顔料は、上記のとおり、その表面が分散性付与基(親水性官能基及びその塩のうち少なくともいずれか)の結合により改質されたものである。このような表面改質により、自己分散型顔料は分散剤を使用しなくとも水性溶媒中で安定的に分散することができる。
上記自己分散型顔料の原料である顔料として、以下に限定されないが、例えば、C.I.ピグメントイエロー 1,3,12,13,14,17,24,34,35,37,42,53,55,74,81,83,95,97,98,100,101,104,108,109,110,117,120,128,138,150,153,155,174,180,198、C.I.ピグメントレッド 1,3,5,8,9,16,17,19,22,38,57:1,90,112,122,123,127、146,184、202、209、C.I.ピグメントバイオレット 1,3,5:1,16,19,23,38、C.I.ピグメントブルー 1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,16、C.I.ピグメントブラック 1,7が挙げられる。
また、上記顔料は、酸化チタン等のセラミックス、樹脂微粒子、及び金属などの、白色又はメタリックの顔料であってもよい。
自己分散型顔料は、上記顔料の表面に分散性付与基を、直接的に、又はアルキル基、アルキルエーテル基、アリール基等を介して間接的に結合させることにより作製することができる。このようにして顔料から加工された自己分散型顔料は、分散剤の不存在下で水性溶媒中に分散又は溶解する。
また、自己分散型顔料は、インクの保存安定性を良好にし、かつ、ノズルの目詰まりを防止するため、その平均粒径が50〜250nmの範囲であることが好ましい。ここで、本明細書において、平均粒径とは、光散乱法による球換算50%平均粒径(d50)を意味し、以下のようにして得られる値である。
分散媒中の粒子に光を照射し、この分散媒の前方・側方・後方に配置された検出器によって、発生する回折散乱光を測定する。得られた測定値を利用して、本来は不定形である粒子を、球形であると仮定し、当該粒子の体積と等しい球に換算された粒子集団の全体積を100%として累積カーブを求め、その際の累積値が50%となる点を、「光散乱法による球換算50%平均粒径(d50)」とする。上記回折散乱光の測定装置としては、例えば、レーザー回折散乱式粒度分布測定器 LMS−2000e(セイシン企業社(SEISHIN ENTERPRISE Co.,Ltd.)製商品名)などが挙げられる。
上記自己分散型顔料のうち、ブラック色の自己分散型顔料の市販品として、例えば、Cabot社より異なる2種類の製品として販売されている。CAB−O−JET200(スルホン化カーボンブラック)、CAB−O−JET300(カルボキシル化カーボンブラック)(以上、キャボット社(Cabot Corporation)製商品名)、Bonjet Black CW−1(オリエント化学工業社(ORIENT CHEMICAL INDUSTRIES CO., LTD.)製商品名)が挙げられる。
自己分散型顔料の表面に結合される分散性付与基としては、以下に限定されないが、例えば、カルボキシル基(−COOH)、ケトン基(−CO)、水酸基(−OH)、スルホン酸基(−SO3H)、リン酸基(−PO32)、及び4級アンモニウム、並びにそれらの塩が挙げられる。これらの分散性付与基は、インクジェット記録用水性顔料インクに含まれる様々な物質(中でも極性の高い物質)によって不安定化される場合がある。
そこで、後述の、所定の量的関係を有する4級アミノ酸及び1,6−ヘキサンジオールが自己分散型顔料の表面に層を形成して自己分散型顔料を被覆し、これにより自己分散型顔料が安定化する(分散安定性に優れる)ことを、本発明者らは見出した。つまり、自己分散型顔料と所定の量的関係を有する4級アミノ酸及び1,6−ヘキサンジオールとをインクジェット記録用水性顔料インクに含有させることで、自己分散型顔料の周囲にその沈降を抑制するカプセルが形成されると推測されることを、本発明者らは見出した。さらにいえば、本実施形態における自己分散型顔料は、構造上及び機能上、いわゆる擬似的なマイクロカプセル化顔料ということができる。なお、上記「構造上」とは、4級アミノ酸及び1,6−ヘキサンジオールが自己分散型顔料の表面に層を形成することを指し、上記「機能上」とは、表面に層が形成された自己分散型顔料が分散安定性に優れることを指す。ただし、マイクロカプセルは、一般的にポリマーやワックスや無機物などの比較的強固なカプセルを形成するもののことを言う。本実施形態における自己分散型顔料への層形成は、カプセル構造を形成し分散性向上には寄与するものの、非ポリマーで形成されているため強固なカプセルではなくマイクロカプセル化顔料とまで言い切れない。よって、本実施形態における自己分散型顔料への層形成は、分散剤とマイクロカプセルの中間の性質を有するものであり、擬似的にマイクロカプセル化した自己分散型顔料ということができる。
従来、墨汁のニカワや牛乳のカゼインのように、保護コロイドでコロイドを覆って安定化させる技術が知られている。しかし、当該技術によれば、コロイドを安定化させるためにコロイドを覆うのは高分子であるため、この高分子が溶媒まで高粘度化してしまうという問題が生じる。そのため、顔料を安定化させるために高分子から形成される保護コロイドを利用することは困難である。そこで、本発明者らが鋭意検討した結果、所定の量的関係を有するイオン性の4級アミノ酸と結晶性の1,6−ヘキサンジオールとが、自己分散型顔料の周りに安定した層構造を形成することで、この層構造が保護コロイドとしての機能を有し、自己分散型顔料を擬似的なマイクロカプセル化することに想到した。そして、この擬似的なマイクロカプセル化した自己分散型顔料をインクに含有させることで、溶媒を高粘度化させることなく、保護コロイドのような上記層構造が顔料の分散安定性を良好なものとすることができることを本発明者らは見出したのである。
また、本実施形態における自己分散型顔料を擬似的なマイクロカプセル化したものは、従来のマイクロカプセル化顔料に比べ、インクに高濃度で含有させたとしても、低粘度であって吐出安定性に優れたインクとすることができる。
また、上記の自己分散型顔料は、分散安定性に優れ、顔料の凝集による沈降を抑制できるため、インクの保存安定性に優れた効果を発揮するものである。さらに、上記擬似的なマイクロカプセル化顔料を含有するインクジェット記録用水性顔料インクは、顔料の分散安定性に優れると共に、記録物上での発色性にも優れる。
上記自己分散型顔料は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記自己分散型顔料は、インクジェット記録用水性顔料インクの総質量(100質量%)に対し、2〜15質量%含有されることが好ましく、5〜12質量%含有されることがより好ましい。含有量が2質量%以上であると、印字濃度が十分なものとなって発色性に優れる。また、含有量が15質量%以下であると、ノズルが目詰まりすることなく、吐出安定性にも優れる。
〔4級アミノ酸〕
本実施形態のインクジェット記録用水性顔料インクは、4級アミノ酸を含有する。この4級アミノ酸は、4つの置換又は無置換のアルキル基を有する4級アンモニウムイオンをアミノ基として有するアミノ酸を意味する。
上記4級アミノ酸は、アミノ酸が共通して持つ、pH調整機能、保湿機能や被記録媒体のカール抑制剤としての機能を有する。これに加えて、4級アミノ酸は、3級アミノ酸、2級アミノ酸、及び1級アミノ酸よりも化学的安定性に優れ、さらにインクの長期保存安定性にも適している。
4級アミノ酸として、以下に限定されないが、例えば、トリメチルグリシン、N,N,N−トリメチルアラニン、N,N,N−トリメチルグルタミン酸、及びトリエチルグリシンが挙げられる。
これらの中でも、最も分子量の低いトリメチルグリシンが好ましい。4級アミノ酸としてトリメチルグリシンを後述の1,6−ヘキサンジオールと共にインクジェット記録用水性顔料インクに含有させることで、自己分散型顔料が厚い層で被覆されて分散安定性に優れる。
4級アミノ酸の市販品としては、アミノコート(登録商標、トリメチルグリシン、旭化成ケミカルズ社(Asahi Kasei Chemicals Corporation.)製商品名)が好ましく挙げられる。
4級アミノ酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態において、4級アミノ酸は、後述の1,6−ヘキサンジオールよりも多く含有されることを特徴とする。この場合、自己分散型顔料の周囲に十分な擬似的なマイクロカプセルが形成されることが推測され、実際に顔料の凝集による沈降を抑制できるため(後述の遠心沈降率を低下させることができるため)、自己分散型顔料の分散安定性に優れたものとなる。イオン性の4級アミノ酸と結晶性の1,6−ヘキサンジオールとの間の量的関係が、自己分散型顔料の分散安定性に影響する理由については後述する。
4級アミノ酸は、インクジェット記録用水性顔料インクの総質量(100質量%)に対し、好ましくは1〜30質量%含まれ、より好ましくは4〜20質量%含まれる。含有量が上記範囲内であると、4級アミノ酸と1,6−ヘキサンジオールとが、上記自己分散型顔料に対し協働して層形成して自己分散型顔料の分散安定性を優れたものとすることができる。
〔アルカンジオール〕
本実施形態のインクジェット記録用水性顔料インクはアルカンジオールを含有し、このアルカンジオールは少なくとも1,6−ヘキサンジオールを含む。
(1,6−ヘキサンジオール)
インクジェット記録用水性顔料インクは、上記のとおり、1,6−ヘキサンジオールを含有する。この1,6−ヘキサンジオールを含有するインクは、普通紙に対しても乾燥が速く、かつ、滲みの少ない高画質のカラー画像を形成することができる。そして、上記のとおり、所定の量的関係を有する上記4級アミノ酸と1,6−ヘキサンジオールとが、上記自己分散型顔料に対し協働することで、結果として自己分散型顔料の分散安定性を優れたものとすることができる。
アルカンジオールは1,6−ヘキサンジオールからなることが好ましい。この場合、上記のような、4級アミノ酸及び1,6−ヘキサンジオールの協働作用を一層強化することができる。
本実施形態においては、上記のとおり、インクジェット記録用水性顔料インク中、1,6−ヘキサンジオールが上記4級アミノ酸よりも少量含有される。ここで、イオン性の4級アミノ酸及び結晶性の1,6−ヘキサンジオールの存在意義、並びにこれらの間の量的関係が、自己分散型顔料の分散安定性に影響する理由については、以下のように説明できる。
4級アミノ酸は、疎水基、並びに2種の親水基としてのカルボキシル基及びアミノ基を有するため、自己分散型顔料の表面にも付着しやすいという特徴がある。4級アミノ酸が自己分散型顔料の表面に付着すると、上記のカルボキシル基及びアミノ基が自己分散型顔料のζ(ゼータ)電位を上昇させ、顔料の帯電反発力を向上させることで、自己分散型顔料は分散安定化する。
また、1,6−ヘキサンジオールは結晶性物質であるが、水には容易に溶解するという特徴がある。しかし、4級アミノ酸における疎水基(例えば、トリメチルグリシンにおけるメチル基)の近傍において、1,6−ヘキサンジオールは層形態をとる。
その結果、4級アミノ酸とこれより少量の1,6−ヘキサンジオールとがインク中に併存すると、自己分散型顔料がマイクロカプセル化顔料と同等の機能を有し、これにより顔料の凝集による沈降を抑制でき、自己分散型顔料の分散安定性に優れる。
他方、インクジェット記録用水性顔料インク中、1,6−ヘキサンジオールはそれ以外のアルカンジオールの総量よりも多く含有されるのが好ましい。この場合、1,6−ヘキサンジオールが自己分散型顔料に付着する際、他の種類のアルカンジオールによる上記付着の阻害が抑制される。1,6−ヘキサンジオールとそれ以外のアルカンジオールとは、自己分散型顔料への付着にとって競合的(拮抗的)関係にあるものと推測される。そのため、1,6−ヘキサンジオールがそれ以外のアルカンジオールの総量よりも多く含有されることで、アルカンジオールのうち1,6−ヘキサンジオールが優先して自己分散型顔料に付着することができ、結果として4級アミノ酸及び1,6−ヘキサンジオールの協働作用による層形成を安定化させることができる。
4級アミノ酸とこれより少量の1,6−ヘキサンジオールとがインク中に併存することに加えて、上記のように、1,6−ヘキサンジオールの顔料への吸着を阻害しない条件も満たされると、顔料の凝集による沈降を一層抑制でき、自己分散型顔料の分散安定性に極めて優れる。
また、上記の場合、1,6−ヘキサンジオール以外のアルカンジオールを一種以上さらに含有してもよいし、含有しなくてもよい。これらのうち、前者については上述のとおりである。後者については後述する。
また、1,6−ヘキサンジオールは、インクジェット記録用水性顔料インクの総質量(100質量%)に対し、好ましくは1〜15質量%含まれ、より好ましくは3〜12質量%含まれる。含有量が上記範囲内であると、4級アミノ酸と1,6−ヘキサンジオールとが、上記自己分散型顔料に対し協働して層形成して自己分散型顔料の分散安定性を優れたものとすることができる。
(1,6−ヘキサンジオール以外のアルカンジオール)
本実施形態のインクジェット記録用水性顔料インクは、上記のとおり、1,6−ヘキサンジオールよりも少量である限りにおいて、1,6−ヘキサンジオール以外のアルカンジオールを含有してもよい。
1,6−ヘキサンジオール以外のアルカンジオールとして、以下に限定されないが、例えば、1,2−ヘキサンジオール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、及び2−エチル−1,3−ヘキサンジオールが挙げられる。
1,6−ヘキサンジオール以外のアルカンジオールは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、1,6−ヘキサンジオール以外のアルカンジオールは、インクジェット記録用水性顔料インクの総質量(100質量%)に対し、10質量%以下含まれ得る。
〔界面活性剤〕
本実施形態のインクジェット記録用水性顔料インクは、界面活性剤を含有してもよい。この界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤が好ましく、アセチレングリコール系界面活性剤がより好ましい。インクジェット記録用水性顔料インクにアセチレングリコール系界面活性剤を含有させることで、4級アミノ酸の自己分散型顔料への吸着阻害を抑制でき、自己分散型顔料の分散安定性に優れたインクジェット記録用水性顔料インクが得られる。
その理由として、ノニオン系界面活性剤の中でも直鎖構造ではなく立体構造を有するものは、4級アミノ酸よりも自己分散型顔料に付着しにくくなるためと推測される。立体構造を有するノニオン系界面活性剤の中では、上記のとおり、アセチレングリコール系界面活性剤が好ましい。
アセチレングリコール系界面活性剤は、アセチレン基を中央に持ち、左右対称の構造を有する非イオン系界面活性剤であり、泡立ちにくい濡れ剤として様々な分野の水系材料に応用されている。また、アセチレングリコール系界面活性剤は、濡れ、消泡、及び分散といった各機能に優れる。さらに、アセチレングリコール系界面活性剤は、分子構造としても非常に安定したグリコールで、分子量も小さく、水の表面張力を下げる効果があるため、インクの被記録媒体への浸透性や滲みを適度に制御できる。
4級アミノ酸とこれより少量の1,6−ヘキサンジオールとがインク中に併存することに加えて、4級アミノ酸の顔料への吸着を阻害しない条件も満たされると、顔料の凝集による沈降を一層抑制でき、自己分散型顔料の分散安定性に極めて優れる。
アセチレンアルコール系界面活性剤として、以下に限定されないが、例えば、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、及び3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールが挙げられる。
アセチレングリコール系界面活性剤の市販品としては、例えば、サーフィノール 104(シリーズ)、420、440、465、485、104、STG(以上、エアープロダクツ社(Air Products and Chemicals. Inc.)商品名)、オルフィン STG、PD−001、SPC、E1004、E1010(以上、日信化学工業社(以上、Nissin Chemical Industry Co., Ltd.)製商品名)、アセチレノール E00、E40、E100、LH(以上、川研ファインケミカル社(Kawaken Fine Chemicals Co., Ltd.)製商品名)が挙げられる。
アセチレングリコール系界面活性剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アセチレングリコール系界面活性剤の含有量は、インクジェット記録用水性顔料インクの総質量(100質量%)に対し、0.1〜3.0質量%が好ましく、0.3〜2.0質量%がより好ましい。含有量が上記範囲内であると、光沢感及び浸透性が良好なものとなる。
〔水〕
本実施形態のインクジェット記録用水性顔料インクに含有される水は主溶媒である。この水として、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水が挙げられる。中でも、カビやバクテリアの発生を防止してインク組成物の長期保存が可能となるため、紫外線照射又は過酸化水素の添加などにより滅菌処理した水が好ましい。
〔その他の添加剤〕
本実施形態のインクジェット記録用水性顔料インクは、上記した添加剤(成分)以外のものを含んでもよい。以下、インクジェット記録用水性顔料インクに含まれ得る添加剤を説明する。
インクジェット記録用水性顔料インクはpH調整剤を含有してもよい。このpH調整剤として、例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物、アンモニア、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等のアミン類が挙げられる。また、必要に応じて、コリジン、イミダゾール、燐酸、3−(N−モルホリノ)プロパンスルホン酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、及びほう酸などをpH緩衝剤として用いてもよい。
pH調整剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。pH調整剤は、インクジェット記録用水性顔料インクの総質量(100質量%)に対し、0.01〜2質量%含まれるとよい。
インクジェットヘッドのノズル近傍での目詰まりを防止する目的で、インクジェット記録用水性顔料インクは湿潤効果を付与する水溶性有機溶剤(湿潤剤)を含有してもよい。この湿潤剤として、例えば、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレンフリコール、ジプロピレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等の多価アルコール類、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等の糖類、糖アルコール類、ヒアルロン酸類、尿素類などのいわゆる固体湿潤剤、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、ピロリドンカルボン酸、アスパラギン酸、グリシン、グリシン、プロリン、及びベタイン等のいわゆるアミノ酸、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、及びスルホランが挙げられる。なお、本実施形態における4級アミノ酸も上記湿潤剤(保湿剤)の一つに含まれる。
湿潤剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。インクの適正な物性値(粘度等)、並びに良好な印刷品質及び信頼性を確保するため、湿潤剤は、インクジェット記録用水性顔料インクの総質量(100質量%)に対し、5〜50質量%含まれるとよい。
インクジェット記録用水性顔料インクは防腐剤・防黴剤を含有してもよい。この防腐剤・防黴剤として、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン(Avecia社製のプロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL−2、及びプロキセルTN)が挙げられる。
防腐剤・防黴剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。防腐剤・防黴剤は、インクジェット記録用水性顔料インクの総質量(100質量%)に対し、0.001〜1質量%含まれるとよい。
インクジェット記録用水性顔料インクは、水性溶媒が被記録媒体に浸透することを促進する目的で、浸透促進剤をさらに含有してもよい。水性溶媒が被記録媒体に素早く浸透することによって、画像の滲みが少ない記録物を得ることができる。このような浸透剤としては、多価アルコールのアルキルエーテル(グリコールエーテルモノアルキルエーテル)及び1,2−アルキルジオールが挙げられる。上記グリコールエーテルモノアルキルエーテルの具体例として、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、及びトリエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGmBE)が挙げられる。上記1,2−アルキルジオールの具体例として、1,2−ペンタンジオール及び1,2−ヘキサンジオールが挙げられる。
浸透促進剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。浸透促進剤は、インクジェット記録用水性顔料インクの総質量(100質量%)に対し、1〜15質量%含まれるとよい。
インクジェット記録用水性顔料インクは酸化防止剤(紫外線吸収剤)を含有してもよい。この酸化防止剤(紫外線吸収剤)として、例えば、アロハネート、メチルアロハネート等のアロハネート類、ビウレット、ジメチルビウレット、テトラメチルビウレットなどのビウレット類など、L−アスコルビン酸及びその塩など、チバガイギー社製のTinuvin328、900、1130、384、292、123、144、622、770、292、Irgacor252、153、Irganox1010、1076、1035、MD1024など、あるいはランタニドの酸化物が挙げられる。
酸化防止剤(紫外線吸収剤)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、上記以外に、消泡剤などをインクジェット記録用水性顔料インクに含有させてもよい。
このように、本実施形態によれば、顔料の凝集による沈降を抑制でき、自己分散型顔料の分散安定性に優れるインクジェット記録用水性顔料インクを提供することができる。また、4級アミノ酸とこれより少量の1,6−ヘキサンジオールとがインク中に併存し、さらに、4級アミノ酸及び1,6−ヘキサンジオールの顔料への吸着を阻害しない条件も満たされると、顔料の凝集による沈降を一層抑制でき、自己分散型顔料の分散安定性に極めて優れる。
[インクジェット記録装置]
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録装置は、インクジェットヘッドを、被記録媒体に対して、相対的に移動させつつ、インクジェットヘッドからインクを吐出させて記録を行うものであれば、特に制限されない。したがって、プリントヘッド(インクジェットヘッド)がほぼ移動せずに記録が行われるラインプリンターであってもよく、インクジェットヘッドが被記録媒体の搬送方向と直交した方向を往復移動しながら記録が行われるシリアルプリンターであってもよい。これらのうちシリアルプリンターとしては、インクカートリッジ(インクタンク)をインクジェットヘッドと共にキャリッジに搭載するオンキャリッジタイプであってもよく、インクカートリッジをキャリッジに搭載せず別の場所に載置し、当該インクカートリッジとキャリッジ上のインクジェットヘッドとをチューブで繋ぐオフキャリッジタイプであってもよい。
本実施形態に係るインクジェット記録装置として、オフキャリッジタイプのシリアルプリンター(以下、単に「プリンター」という。)を例示し、図を参照しつつ説明する。なお、以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本実施形態におけるプリンター1の構成を示す斜視図である。図1に示すように、プリンター1は、フレーム2に、プラテン3、紙送りモーター4、及びガイド部材5を備える。プラテン3は、その上に、紙送りモーター4の駆動により被記録媒体Pが給送されるものである。
ガイド部材5は、キャリッジ6がガイド部材5の軸線方向に往復移動可能に支持されたものである。キャリッジ6は、フレーム2内に設けられたタイミングベルト7を介して、キャリッジモーター8に連結されたものである。
キャリッジ6は、その内部にインクジェットヘッド(図示せず)を備える。当該インクジェットヘッドは、上記実施形態のインクジェット記録用水性顔料インクを被記録媒体Pに対して吐出するものである。
インクカートリッジ9は、キャリッジ6と独立して搭載されてもよい。例えば、プリンター1本体の外側(キャリッジ6の移動範囲の外側)に設けられたカートリッジ収納部10に収納されている。インクカートリッジ9とキャリッジ6との間は、インク供給チューブ13で接続される。インクカートリッジ9及びキャリッジ6は、共に動かない。
キャップ11は、乾燥によるノズル目詰まりを防ぐためのものである。また、クリーナー12は、ノズルが目詰まりを起こした場合に吸引を行うためのものである。したがって、クリーナー12はポンプなどの吸引手段が搭載された部材であり、吸引装置又はクリーニングボックスとも称される。
なお、図示していないが、大容量インクタンクがプリンター1の外側に増設される場合、当該大容量インクタンクとインクカートリッジ9との間がインク補給チューブで接続される。これにより、オンキャリッジタイプのプリンターと同様、オフキャリッジタイプのプリンター1においても、上記インクジェット記録用水性顔料インクの貯蔵量を大幅に増大させることができる。
〔インクジェット記録方法〕
本発明の一実施形態に係るインクジェット記録方法は、上記実施形態のインクジェット記録用水性顔料インクを吐出する吐出工程を含む。当該インクジェット記録方法は、図1に示すようなインクジェット記録装置を用いて、紙送りモーター4の駆動により、被記録媒体Pがプラテン3上に給送される。プラテン3の上方では、キャリッジモーター8の駆動により、キャリッジ6がガイド部材5に沿って、図1に示す矢印方向に往復移動する。
上記の吐出工程においては、被記録媒体に向けて、上記インクジェット記録用水性顔料インクを吐出する。具体的に言えば、インクカートリッジ9内のインクジェット記録用水性顔料インクは、インクジェットヘッドに備えられた圧電素子(図示せず)の駆動により、インクカートリッジ9からインクジェット記録用水性顔料インク用のインクジェットヘッドへと供給される。そして、このインクジェットヘッドのノズル形成面に形成された複数のノズルから、プラテン3上に給送された被記録媒体P(の被記録面)に向けて、上記インクジェット記録用水性顔料インクが吐出される。これにより、被記録媒体P上にインク層(図示せず)が形成される。
本実施形態のインクジェット記録方法は、上記の吐出工程に加えて、吐出されたインクジェット記録用水性顔料インクが付着した被記録媒体を加熱する加熱工程をさらに有してもよい。
インクジェット記録用水性顔料インクは、分散媒として水を含むものであって吐出後速やかに乾燥する。そのため、吐出工程の後に、別途、乾燥工程を有しなくてもよい。その一方で、加熱工程をさらに有することで、被記録媒体が保水性に優れたものである場合や、インクジェット記録用水性顔料インクが揮発度の低い液体成分を比較的高い含有率で含む場合であっても、得られる記録物中に、インクジェット記録用水性顔料インクを構成する液体成分が残存することを効果的に防止することができる。そして、これにより、記録物の耐久性及び信頼性を優れたものとすることができる。
以上2つの実施形態によれば、顔料の凝集による沈降を抑制でき、自己分散型顔料の分散安定性に優れるインクジェット記録用水性顔料インクを用いて記録を行うのに好適なインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
[使用材料]
〔顔料分散体〕
・CAB−O−JET300(キャボット社製商品名、固形分15%)
・BONJET BLACK CW−1(オリエント化学工業社製商品名、顔料分20%)
〔4級アミノ酸〕
・トリメチルグリシン(無水ベタイン、東京化成工業社(Tokyo Chemical Industry Co., Ltd.)製)
〔1級アミノ酸〕
・グリシン(東京化成工業社製)
〔アルカンジオール〕
・1,6−ヘキサンジオール(東京化成工業社製)
・1,2−ヘキサンジオール(東京化成工業社製)
・1,8−オクタンジオール(東京化成工業社製)
・1,5−ペンタンジオール(東京化成工業社製)
・1,3−プロパンジオール(東京化成工業社製)
〔アセチレングリコール系界面活性剤〕
・オルフィンE1010(エアープロダクツ社製商品名、アセチレングリコール)
・サーフィノール104(日信化学工業社製商品名、アセチレングリコール)
〔浸透促進剤〕
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル(表1中「TEGmBE」と略記した。)
〔湿潤剤〕
・グリセリン
〔pH調整剤〕
・トリイソプロパノールアミン(東京化成社製)
〔防腐剤・防黴剤〕
・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)
・プロキセルXL−2(Avecia社製商品名、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン)
〔水〕
・イオン交換水
[顔料インクの作製]
表1に示す含有量で各材料を混合し、室温にて2時間攪拌した後、孔径5μmのメンブランフィルターで濾過して、実施例1〜5及び比較例1〜6の各インクジェット記録用水性顔料インクを作製した。
なお、表1中に示す含有量の単位は質量%であり、顔料分散体は固形分濃度で表している。また、空欄部は無添加であることを表す。また、イオン交換水の「残量」とは、インク全量が100質量%となるようにイオン交換水を加えたことを意味する。
表1に示した各インクジェット記録用水性顔料インクについて、以下の各評価を行った。
[顔料の平均粒径における増大度評価]
上記で作製したインクを、顔料濃度(質量%)が1/1000となるように純水で希釈した。その際の顔料の平均粒径を、マイクロトラックUPA150を用いて測定することで、層形成を確認した。層が形成されていれば、擬似的なマイクロカプセルが形成されているものと推測することができる。評価基準は以下のとおりである。結果を表2に示す。
○:顔料の平均粒径が5nm以上大きくなっていたため、厚みの大きな層が形成されていると推測される。
△:顔料の平均粒径が2nm以上5nm未満大きくなっていたため、層が形成されていると推測される。
×:顔料の平均粒径が添加前と比較して2nm未満の範囲で大きくなっていたため、層が形成できていない。
[遠心沈降率の評価]
作成したインクを、遠心分離機Himac社製DR20B2を用いて、10,000rpmで16分間遠心分離を行い、上澄み液を4,000倍に希釈して分光光度計HITACHI U−3300での吸光度の変化率を沈降率として測定した。評価基準は以下のとおりである。結果を表2に示す。
◎:沈降率18%未満、
△:沈降率18%以上25%未満、
×:沈降率25%以上。
表2を見ると、イオン性のトリメチルグリシン(4級アミノ酸)と結晶性の1,6−ヘキサンジオールとをインクに併用し、かつ、インク中に4級アミノ酸が1,6−ヘキサンジオールよりも多く含まれている場合(各実施例)、そうでない場合と比べて(各比較例)、顔料の平均粒径の増大度が同等以上であることに加え、遠心沈降率が顕著に低いことが分かった。
また、4級アミノ酸と1,6−ヘキサンジオール以外のアルカンジオールとをインクに併用した場合、顔料の平均粒径の増大度が比較的大きくなることはあるが、遠心沈降率は改善されないことが分かった(比較例1,3〜6)。さらに、1,2−ヘキサンジオールや1,5−ペンタンジオールが1,6−ヘキサンジオールの顔料付着を阻害することも分かった(比較例4,5)。
また、インク中、4級アミノ酸が1,6−ヘキサンジオールよりも多く含まれている場合(各実施例)、そうでない場合(比較例3)と比べて、顔料の平均粒径の増大度は同等である一方、遠心沈降率は顕著に高くなることが分かった。
また、4級アミノ酸がインクに含まれていない場合、たとえ代替的に1級アミノ酸(グリシン)がインクに含まれていても、顔料の平均粒径の増大度も遠心沈降率も顕著に低いことが分かった(比較例2,6)。
以上のことから、インク中に、自己分散型顔料に加えて、4級アミノ酸とこれより少量の1,6−ヘキサンジオールとが存在することにより、自己分散型顔料が安定的なマイクロカプセルを形成するため、顔料の凝集による沈降を抑制でき、自己分散型顔料の分散安定性に優れることが分かった。

Claims (7)

  1. 自己分散型顔料と、4級アミノ酸と、アルカンジオールと、を含有し、
    前記アルカンジオールは、少なくとも1質量%以上の1,6−ヘキサンジオールを含み、
    前記4級アミノ酸は、前記1,6−ヘキサンジオールよりも多く含有される、インクジェット記録用水性顔料インク。
  2. 前記4級アミノ酸が、トリメチルグリシンである、請求項1に記載のインクジェット記録用水性顔料インク。
  3. 前記アルカンジオールは1,6−ヘキサンジオールからなる、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用水性顔料インク。
  4. 前記1,6−ヘキサンジオール以外のアルカンジオールを一種以上さらに含有し、
    前記1,6−ヘキサンジオールは、該1,6−ヘキサンジオール以外のアルカンジオールの総量よりも多く含有される、請求項1又は2に記載のインクジェット記録用水性顔料インク。
  5. アセチレングリコール系界面活性剤をさらに含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェット記録用水性顔料インク。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェット記録用水性顔料インクを被記録媒体に対して吐出するインクジェットヘッドを備え、
    前記インクジェットヘッドは、前記被記録媒体に対して相対的に移動するものである、インクジェット記録装置。
  7. 前記インクジェットヘッドと共にキャリッジに搭載されるインクカートリッジ、又は、前記インクジェットヘッドを搭載したキャリッジと独立して搭載されるとともに、インク供給チューブによって該インクジェットヘッドと接続されたインクカートリッジをさらに備える、請求項6に記載のインクジェット記録装置。
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