JP5685869B2 - 太陽電池パネルのインターコネクター用銅圧延箔及びその製造方法 - Google Patents
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耐折性を向上させる方法として、鋳塊を熱間圧延した後、冷間圧延と焼鈍とを繰り返し、直前に焼鈍を行った後5〜25%の所定の圧延率で仕上げ冷間圧延を行い、さらに所定温度で仕上げ熱処理を行い、特殊粒界の長さ比率が60%以上の再結晶組織を有する組織とする。
結晶粒界は、二次元断面観察の結果、隣り合う2つの結晶間の配向方位差が15°以上となっている場合の当該結晶間の境界として定義される。
特殊粒界とは、結晶学的にCSL理論(Kronberg et.al.:Trans. Met. Soc. AIME, 185, 501 (1949))に基づき定義されるΣ値で3≦Σ≦29を有する結晶粒界(対応粒界)であって、当該粒界における固有対応部位格子方位欠陥Dqが Dq≦15°/Σ1/2 (D.G.Brandon:Acta.Metallurgica. Vol.14,p1479,1966)を満たす結晶粒界である。
すべての結晶粒界のうち、この特殊粒界の長さ比率が高いと、組織全体の結晶粒界の整合性が向上して、転位が蓄積しにくくなり、耐折性を向上させることができる。
この場合、再結晶温度Ts(℃)を以下のように定義する。所定の材料を加工率93%で冷間圧延加工を行った板材について、JIS Z 2244 ビッカース硬さ試験に準拠した試験方法に基づいてビッカース硬さを測定し、その後100℃以上900℃以下の温度範囲において、100℃から50℃刻みで昇温変量した各温度で600秒間保持した後、水焼入れを行い、同様にビッカース硬さを測定して得られたビッカース硬さが、熱処理前(冷間加工放し)のビッカース硬さに対して1/2以下となった熱処理温度を再結晶温度Tsと定義する。
仕上げ処理プロセスは、実質的に残留加工歪みが無い状態の箔体素材に対して5〜25%の比較的低い圧下率で仕上げ冷間圧延を行った後、被加工材の再結晶温度Tsに対して、(Ts−150)<Ta<(Ts+150)となる範囲の熱処理温度Ta(℃)で5〜3600秒間の仕上げ再結晶焼鈍を施し、材料を部分再結晶化させることにより、特殊粒界の長さ比率が60%以上の再結晶組織を有するように制御する。仕上げ処理に供する実質的に残留加工歪みが無い状態の材料については、熱間圧延後に冷間圧延を行い所定の厚みに調整した後、歪み除去のための焼鈍熱処理を行ったものを供するのが一般的であるが、その他の方法により製造された箔体素材であっても問題は無い。
また、仕上げ冷間圧延の圧下率が5%未満では、再結晶化熱処理の過程において特殊粒界の形成が促進されず、一方、25%を超える圧下率の場合は、導入歪みが大き過ぎて、再結晶化熱処理の過程において特殊粒界以外の粒界形成比率が増加し、所望の特殊粒界長さ比率を得ることができない。
本実施形態の電子部品用銅又は銅合金圧延箔は、銅の純度が99.96mass%以上のタフピッチ銅(酸素含有量100ppm)、銅の純度が99.99mass%以上の無酸素銅(酸素含有量1ppm)、又は99.999mass%以上の高純度無酸素銅(酸素含有量0.1ppm)、クロム(Cr)を0.4〜1.2mass%含有したクロム銅、クロム(Cr)を0.1〜0.4mass%及びジルコニウム(Zr)を0.02〜0.2mass%含有したクロムジルコニウム銅などが用いられる。また、添加元素以外の不純物元素については、Zn、Sn、Fe、Co、Al、Ag、Mn、B、P、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、希土類元素、 Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Re、Ru、Os、Se、Te、Rh、Ir、Pd、Pt、Au、Cd、Ga、In、Li、Si、Ge、As、Sb、Ti、Tl、Pb、Bi、S、O、C、Ni、Be、N、H、Hgなどが含まれる場合があるが、これらが含まれる場合は、その合計が0.3mass%以下とする。
なお、本実施形態で例示した素材は、所定の用途に用いられる材料の一例であり、他の素材で、フレキシブル印刷配線板の配線部材やインターコネクター用配線材料等に用いられる素材についても、本特許に示されるのと同様の加工・熱処理を実施することにより、特性向上効果が期待される。
また、圧延箔の厚さは、フレキシブル印刷配線板の配線部材やインターコネクター用配線材料の素材として好適な200μm未満とされる。
結晶粒界は、二次元断面観察の結果、隣り合う2つの結晶間の配向方位差が15°以上となっている場合の当該結晶間の境界として定義される。
特殊粒界とは、結晶学的にCSL理論(Kronberg et.al.:Trans. Met. Soc. AIME, 185, 501 (1949))に基づき定義されるΣ値で3≦Σ≦29を有する結晶粒界(対応粒界)であって、当該粒界における固有対応部位格子方位欠陥Dqが Dq≦15°/Σ1/2 (D.G.Brandon:Acta.Metallurgica. Vol.14,p1479,1966)を満たす結晶粒界である。
すべての結晶粒界のうち、この特殊粒界の長さ比率が高いと、結晶粒界の整合性が向上して、転位が蓄積しにくくなり、均一な変形特性を示し、過酷な使用環境の下、熱膨張及び熱収縮を繰り返すような場合や、フレキシブル印刷配線板の配線部材のように繰り返し曲げ変形がなされる場合でも、加工硬化がおきにくく、耐折性を向上させることができる。
上述した組成を有する銅合金の原料を溶解して鋳造する溶解・鋳造工程と、この溶解・鋳造工程の後に、鋳塊を熱間圧延して3〜20mmの厚さの圧延板とする熱間圧延工程と、この熱間圧延工程の後に、総圧延率93%以上で冷間圧延を行うとともに、冷間圧延材に所定の温度範囲で再結晶熱処理を行う冷間圧延工程とを有しており、その冷間圧延工程においては、粗冷間圧延の後に、歪み除去のための焼鈍処理を行い、その後、低圧下率の仕上げ冷間圧延と仕上げ再結晶熱処理とを行う仕上げ処理を有している。
熱間圧延工程は、特別な条件ではなく、被加工材の銅又は銅合金に応じて通常用いられる適切な条件で行えばよい。
冷間圧延工程は、3〜20mmの厚さになった熱間圧延板を200μm未満の箔に加工するものであり、粗冷間圧延の後に、前段で実施した粗冷間加工で導入された歪みを除去する目的で焼鈍を行う。当該焼鈍条件については、被加工材の銅又は銅合金に応じて通常用いられる適切な条件で行えばよい。
仕上げ冷間圧延時の圧下率が5%未満であれば、この仕上げ冷間圧延時に素材全体に均質な歪みが導入できず、結果としてその後に行う仕上げ再結晶熱処理の過程において特殊粒界の形成が促進されず、また25%を超えて大きくなると、導入された均質ひずみ量が大き過ぎ、仕上げ冷間圧延後の再結晶熱処理過程において、再結晶化後の特殊粒界の長さ比率が低下傾向となり、同比率を60%以上に保つ事が難しい。なお、総圧延率は、粗冷間圧延前の板厚に対する仕上げ冷間圧延後の板厚の減少率であり、仕上げ圧延時の圧下率は、1回のパス時の加工前板厚に対する加工後の板厚の減少率である。
熱処理温度Taが(Ts−150)以下で、5秒未満の条件では、再結晶化が十分に起きない。一方、熱処理温度Taを(Ts+150)より大きくし、3600秒より長時間の条件とした場合、二次再結晶化による結晶粒の粗大化が起き、その結果、特殊粒界の長さ比率が低下傾向となり60%以上に保つことが困難となる。
熱処理雰囲気については、不活性雰囲気(窒素、アルゴン)や還元雰囲気(水素)などが酸化抑制の観点から望ましいが、適切な短時間熱処理条件を選べば大気中であっても良い。
被加工材の銅又は銅合金として、タフピッチ銅、無酸素銅、高純度無酸素銅、クロム銅、クロムジルコニウム銅の四種類を用いた。それぞれの概略成分組成は表1に示す通りである。表1中「−」は該当成分を添加していないことを示す。また、添加元素以外のZn、Sn、Fe、Co、Al、Ag、Mnなどの不純物については、全て0.3mass%以下であった。
そして、このような冷間圧延工程により得られた薄肉の圧延板のビッカース硬さ、特殊粒界比率、屈曲寿命を以下のように測定した。
<ビッカース硬さ>
ビッカース硬さは、圧延方向(R.D.方向)に沿う縦断面(T.D.方向に見た面)に対して、JIS(Z2244)に規定される方法(測定荷重500g)により測定した。
各試料について、耐水研磨紙、ダイヤモンド砥粒を用いて機械研磨を行った後、コロイダルシリカ溶液を用いて仕上げ研磨を行った。
そして、EBSD測定装置(HITACHI社製 S4300−SEM,EDAX/TSL社製 OIM Data Collection)と、解析ソフト(EDAX/TSL社製 OIM Data Analysis ver.5.2)によって、結晶粒界、特殊粒界を特定し、その長さを算出することにより、平均結晶粒径及び特殊粒界長さ比率の解析を行った。
まず、走査型電子顕微鏡を用いて、試料表面の測定範囲内の個々の測定点(ピクセル)に電子線を照射し、電子線を試料表面に2次元で走査させ、後方散乱電子線回折による方位解析により、隣接する測定点間の方位差が15°以上となる測定点間を結晶粒界とした。
また、測定範囲における結晶粒界の全粒界長さLを測定し、隣接する結晶粒の界面が特殊粒界を構成する結晶粒界の位置を決定するとともに、特殊粒界の全特殊粒界長さLσと、上記測定した結晶粒界の全粒界長さLとの粒界長比率Lσ/Lを求め、特殊粒界長さ比率とした。
<屈曲寿命>
板厚0.19mm、幅10mmの試料について、「紙及び板紙−耐折強さ試験方法−MIT試験機法(JIS P8115:2001)」に基づいて試験した。試験装置には、株式会社東洋精機製作所製 MIT耐折試験機MIT−DAを用い、試料に0.5kgの荷重を負荷し、片側折り曲げ角度を135°、折り曲げ半径を5.0mm、折り曲げ速度を175往復/分とし、繰り返し曲げ荷重を負荷した。試料に亀裂が生じ、最終的に破断に至るまでの往復折り曲げ回数を測定し、屈曲寿命とした。
表2〜表5中の耐折性の増減の欄は、各表(各材料毎)に、試験No.1(比較例)の屈曲寿命を基準とし、その屈曲寿命に対する増減率を示しており、向上評価の欄は、屈曲寿命が20%以上増加したものを○、それ以外を×として表した。
例えば、仕上げ冷間圧延と仕上げ再結晶熱処理とを複数回繰り返す場合、毎回同じ条件で繰り返してもよいし、異なる条件で繰り返してもよい。
Claims (3)
- 厚さ200μm未満であり、EBSD法にて測定した全ての結晶粒界長さLに対する特殊粒界長さLσの比率(Lσ/L)が60%以上であることを特徴とする太陽電池パネルのインターコネクター用銅圧延箔。
- 銅からなる鋳塊の熱間圧延工程と、前記熱間圧延工程の後に、粗冷間圧延及びその歪みを除去する焼鈍処理を行い、その後、仕上げ圧延及び熱処理を行って、前記粗冷間圧延前の板厚と前記仕上げ圧延後の板厚から計算される総圧延率が93%以上で、厚さを200μm未満の圧延箔とする冷間圧延工程とを有するとともに、前記仕上げ圧延及び熱処理は、圧下率が5〜25%の仕上げ冷間圧延と、被加工材の再結晶温度をTs(℃)としたときに、熱処理温度Ta(℃)を(Ts−150)<Ta<(Ts+150)とし、熱処理時間を5〜3600秒とした仕上げ再結晶熱処理とを行って、EBSD法にて測定した全ての結晶粒界長さLに対する特殊粒界長さLσの比率(Lσ/L)が60%以上の再結晶組織を有する圧延箔を製造することを特徴とする太陽電池パネルのインターコネクター用銅圧延箔の製造方法。
- 前記仕上げ冷間圧延と前記再結晶熱処理とを2回以上繰り返すことを特徴とする請求項2記載の太陽電池パネルのインターコネクター用銅圧延箔の製造方法。
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