JP2011162848A - 強度異方性が小さく曲げ加工性に優れた銅合金 - Google Patents

強度異方性が小さく曲げ加工性に優れた銅合金 Download PDF

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Abstract

【課題】180°の密着曲げ加工を実施しても割れが発生しない、強度(特に圧延直角方向の耐力)と曲げ加工性バランスに優れた銅合金を提供することを課題とする。
【解決手段】Ni:1.0〜3.6%、Si:0.2〜1.0%、Sn:0.05〜3.0%、Zn:0.05〜3.0%を含有し、残部銅および不可避的不純物からなる銅合金であって、平均結晶粒径が25μm以下であり、Cube方位の平均面積率が20〜60%で、Brass方位、S方位、Copper方位の平均合計面積率が20〜50%である集合組織を有すると共に、KAM値が0.8〜3.0である。
【選択図】 なし

Description

本発明は、強度異方性が小さく、且つ、曲げ加工性に優れた銅合金に関し、自動車用コネクタ等に好適に用いることができる電気・電子部品用の高強度銅合金に関するものである。
近年、電子機器の小型化及び軽量化の要請に伴い、コネクタ、端子、スイッチ、リレー、リードフレームなどの電気・電子部品の小型化及び軽量化が進んでいる。
この電気・電子部品の小型化及び軽量化のために、これらに使用される銅合金材料も板厚及び幅が小さくなってきており、特にICにおいては、板厚が0.1〜0.15mmと薄い銅合金板も使用されるようになってきている。その結果、これらの電気・電子部品に使用される銅合金材料には、より一層高い引張強度が求められるようになっている。例えば、自動車用コネクタなどでは、耐力650MPa以上の高強度銅合金板が求められるようになっている。
また、これらコネクタ、端子、スイッチ、リレー、リードフレームなどに用いられる銅合金板は、前記した高強度および高導電率はもちろんのこと、180°の密着曲げなど厳しい曲げ加工性が要求されることが多くなってきている。
更に、電気・電子部品の前記薄板化及び幅狭化の傾向は、銅合金材料の導電性部分の断面積を減少させる。この断面積の減少による導電性の低下を補うためには、銅合金材料自体に、導電率が30%IACS以上の良好な導電率が求められるようになっている。
そのため、前記種々の特性に優れ、且つ安価なコルソン合金(Cu−Ni−Si系銅合金)が、電気・電子部品用に使用されるようになった。このコルソン合金は、ケイ化ニッケル化合物(Ni2Si) の銅に対する固溶限が、温度によって著しく変化する合金で、焼入・焼戻によって硬化する析出硬化型合金の1種であり、耐熱性や高温強度も良好で、これまでも、導電用各種バネや高抗張力用電線などに広く使用されている。
しかし、このコルソン合金は、圧延平行方向(L.D.方向)と圧延直角方向(T.D.方向)の強度差が大きい、すなわち、圧延平行方向より圧延直角方向の方が相対的に強度が低いという特徴がある。また、引張強度(TS)と0.2%耐力(YP)の差が大きいという特徴もある。そのため、このコルソン合金を、端子・コネクタに用いた場合は、圧延直角方向の耐力が低くなり、接圧強度が不足するなどの問題が発生している。
一方で、コルソン合金の接圧強度を高めるために高強度化を進めていくと、曲げ加工時に割れが発生するという問題が発生する。そのため、強度の異方性が小さく、曲げ加工性に優れるという相矛盾する問題を解決した新たなコルソン合金が開発されることが待ち望まれていた。
このコルソン合金の曲げ加工性を改善する方法は種々提案されている。例えば、特許文献1として、Ni、Siに加えてMgを含有し、同時にSの含有量を制限して、好適な強度、導電性、曲げ加工性、応力緩和特性、メッキ密着性を向上させる方法が提案されている。また、特許文献2として、溶体化後に冷間圧延を行わずに時効を施すことで、介在物サイズを2μm以下とすると共に、0.1μm以上2μm以下の介在物の総量を全容積の0.5%以下と制御する方法が提案されている。
更に、コルソン合金の曲げ加工性を向上させる有効な方法として、結晶粒の集合組織を制御する技術が提案されている。例えば、特許文献3によれば、Niを2.0〜6.0質量%、SiをNi/Siの質量比で4〜5の範囲で各々含むコルソン合金の、平均結晶粒径を10μm以下とすると共に、SEM−EBSP法による測定結果で、Cube方位{001}<100>の割合が50%以上である集合組織を有し、且つ、300倍の光学顕微鏡による組織観察によって観察しうる層状境界を有さない銅合金板が提案されている。
この特許文献3によれば、Cu−Ni−Si系銅合金からなる銅合金圧延板を仕上げ冷間圧延するに際し、最終溶体化処理前に95%以上の加工率で冷間圧延し、前記最終溶体化処理後に20%以下の加工率で冷間圧延した後、時効処理を施して、前記した組織に制御することで、導電率が20〜45%IACS程度で、且つ、700〜1050MPa程度の引張強度を有する高強度で曲げ加工性に優れたコルソン合金が得られることが開示されている。
また、特許文献4によれば、Cu−Ni−Si系銅合金の{420}面、{220}面の回折強度をI{420}/I0{420}>1.0、I{220}/I0{220}≦3.0と制御することで、曲げ加工性を向上させることが開示されている。
一方、強度異方性を解消させるための方法としては、特許文献5として、溶体化焼鈍後の固溶量を高くする方法が提案されている。
また、結晶粒の形状を制御することにより、強度異方性を解消させるための方法が、特許文献6として提案されている。この方法は、最終の圧下率を3.0%以下とすることで、圧延平行方向の結晶粒の長さと圧延直角方向の結晶粒の長さを小さくすることで、強度異方性を小さくする方法である。
また、強度異方性が小さく、且つ、曲げ加工性を向上させる方法としては、特許文献7により、{220}結晶面の回析強度と、{200}結晶面の回析強度を、夫々制御する方法が提案されている。
特開2002−180161号公報 特開2006−249516号公報 特開2006−152392号公報 特開2008−223136号公報 特開2006−219733号公報 特開2008−24999号公報 特開2008−223136号公報
前記した特許文献1〜4に記載のコルソン合金は、小型化及び軽量化した電気・電子部品用として、ノッチング後の90°曲げなどの厳しい曲げ加工性に対応したものである。
また、前記した特許文献5〜6に記載のコルソン合金は、小型化及び軽量化した電気・電子部品用として、強度異方性が小さく、圧延直角方向の接圧強度を高めたものである。
しかしながら、これら改良されたコルソン合金においても、例えば、圧延直角方向の0.2%耐力が650MPa以上の強度レベルで、180°の密着曲げなど、前記した従来の曲げ加工以上に厳しい条件の曲げ加工を加えると、割れが発生するなどの問題があり、更なる曲げ加工性の向上が課題となっている。
また、特許文献5に示すように、曲げ加工性を向上させるためには集合組織を制御するためには、最終の圧下率を低くすることが望ましい。反面、特許文献7に示すように、強度異方性を解消させるための集合組織制御には、最終の圧下率を高くすることが望ましい。また、一般的に、最終の圧下率が高く、転位密度が大きいと、引張強度と0.2%耐力の差が小さくなり、接圧強度を大きくするのに有効である。このように、強度異方性を解消し、圧延直角方向の耐力を向上させることと、曲げ加工性を向上させることを、同時に実現することは、従来から非常に困難な課題となっていた。
特許文献7に記載された方法は、強度異方性と曲げ加工性を向上させているものの、最終の圧下率を制御することで、強度異方性と曲げ加工性を適度なバランスに制御しているだけで、強度異方性が小さく、曲げ加工性に優れたという特徴を併せ持つ銅合金を得るためには、十分な方法とはいえなかった。すなわち、この特許文献7に記載された方法は、強度異方性と曲げ加工性のバランスを十分に向上させたものとはいえなく、強度異方性の解消と更なる曲げ加工性改善を図ることが、現在の課題となっている。
本発明は、上記従来の問題を解決せんとしてなされたもので、銅合金の曲げ加工性向上のための集合組織制御と強度異方性向上のための転位密度制御という相矛盾する制御を、組み合わせて行うことを可能とし、180°の密着曲げ加工を実施しても割れが発生しない、強度(特に圧延直角方向の耐力)と曲げ加工性バランスに優れた銅合金を提供することを課題とするものである。
請求項1記載の発明は、質量%で、Ni:1.0〜3.6%、Si:0.2〜1.0%、Sn:0.05〜3.0%、Zn:0.05〜3.0%を含有し、残部が銅および不可避的不純物からなる銅合金であって、この銅合金の平均結晶粒径が25μm以下で、且つ、SEM−EBSP法による測定結果で、Cube方位{001}<100>の平均面積率が20〜60%であり、Brass方位{011}<211>、S方位{123}<634>、Copper方位{112}<111>の3つの方位の平均合計面積率が20〜50%である集合組織を有すると共に、KAM値が1.00〜3.00であることを特徴とする強度異方性が小さく曲げ加工性に優れた銅合金である。
請求項2記載の発明は、更に、質量%で、Fe、Mn、Mg、Co、Ti、Cr、Zrのうち一種または二種以上を、合計で0.01〜3.0%含有する請求項1記載の強度異方性が小さく曲げ加工性に優れた銅合金である。
本発明者らは、コルソン合金の製造工程を見直し、強度異方性が小さく圧延直角方向の耐力が高く、且つ、前記した180°の密着曲げのようなより厳しい加工条件でも割れが発生することがない、曲げ加工性向上のための条件を種々検討した。
特許文献7に示されているように、強度異方性を解消して圧延直角方向の耐力を高めるためには、溶体化焼鈍後の圧下率を高くし、転位密度を高める必要がある。一方で、特許文献5および7に示されているように、溶体化焼鈍後の圧下率を高めると、再結晶集合組織である{100}<001>Cube方位が低下し、その結果、曲げ加工性が低下してしまう。そのため、強度異方性を解消して圧延直角方向の耐力を高め、且つ、曲げ加工性を向上させるためには、溶体化焼鈍後の圧下率を可能な限り低くしたままで、転位密度を高めることが必要となる。本発明者らは、SEM−EBSDにより、転位密度と相関のあるKAM(Kernel Average Misorientation)値を詳細に調査することで、溶体化焼鈍後の工程を制御し、比較的低い圧下率においても、最終板の転位密度を増加できることを知見した。
また、本発明者らは最終の冷間圧延前後の集合組織をSEM−EBSDにて詳細に調査することで、圧延を施しても圧延前の結晶方位を保ったままの結晶粒が多く残存することを知見した。更に、最終圧延前のCube方位粒の集積率を高めるには、溶体化焼鈍前の圧下率を高くし、且つ、溶体化焼鈍の昇温速度を低速化することが重要であることを知見した。
これらの知見により、最終の圧延前のCube方位粒の集積率を高めることにより、最終の圧延率を高くしても、最終圧延後の銅合金板のCube方位粒の集積率を高めることができることを知見し、課題となっていた異方性が小さく曲げ加工性に優れた銅合金を製造することが可能になった。
尚、特許文献7においては、最終の圧下率を制御することにより、圧延集合組織である{220}面のX線回折強度I{220}を3.0≦I{220}/I0{220}≦6.0とし、再結晶集合組織である{200}面のX線回折強度I{200}を1.5≦I{200}/I0{200}≦2.5の範囲に制御することで、強度異方性と曲げ性を向上させている。この方法では、溶体化焼鈍後の圧下率を35%〜50%と比較的高く制御しているため、KAM値が比較的高くなり、その結果、異方性が高くなり、圧延直角方向の耐力を高くすることが可能になったと推測される。
しかし、本発明の集合組織制御では、結晶面だけでなく、結晶面方位も制御する。すなわち、本発明では、X線回折で検出される{200}面の中でも、{001}<100>で定義されるCube方位の面積率を高くし、X線回折で検出される{220}面の中でも、{011}<211>で定義されるBrass方位、また{123}<634>で定義されるS方位、{112}<111>で定義されるCopper方位の各面積率を夫々低下させており、より詳細な制御を実施している。そのため、特許文献7に記載された条件では、後述する実施例に記載の比較例25、26に示すように、特にCube方位面積率が、本発明と比較すると低くなり、曲げ性が低下している。
その点、前記した特許文献5に記載の方法では、SEM−EBSP法による測定結果で、Cube方位{001}<100>の割合を50%以上と多くしている。そして、前記Cube方位の割合を高めるために、通常の方法によって製造したコルソン合金板に必然的に生じる、Cube方位以外の、S方位{123}<634>や、B方位{011}<211>などの、曲げ加工を低下させる方位の存在を、副方位として許容している。具体的には、その表2の実施例ベースでは、S方位とB方位との合計割合で16〜33%程度に制限(許容)している。
このように、前記特許文献5に記載の方法では、コルソン合金の集合組織を制御できているものの、その製法は、溶体化焼鈍後に20%と比較的低い圧下率により冷間圧延を施している。そのため、圧延平行方向の引張強度と曲げ性は非常に優れているものの、KAM値が小さく、強度異方性が大きくなっており、圧延直角方向の強度が、後述する実施例に記載の比較例33のように低くなっている。
これに対して、本発明では、前記した通り、溶体化処理前の圧下率と溶体化焼鈍の昇温速度、最終の圧下率を制御することにより、集合組織とKAM値を制御することができ、強度異方性が小さく、特に圧延直角方向の耐力が高く、また、曲げ加工性のバランスに優れたコルソン合金の製造や特性の向上を可能としている。
これによって、本発明では、後述する実施例によって裏付ける通り、圧延直角方向の0.2%耐力が650MPa以上の高強度レベルであっても、180°の密着曲げのようなより厳しい加工条件でも割れが発生しない、強度−曲げ加工性バランスに優れたコルソン合金、すなわち、強度異方性が小さく曲げ加工性に優れた銅合金を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態について、各要件ごとに具体的に説明するが、まず、本発明の銅合金の組織の要件について順に説明する。尚、以下の説明において、平均結晶粒径、集合組織における平均面積率を記載する場合は、「平均」を省略し、単に、結晶粒径、面積率と説明する場合もある。
(平均結晶粒径)
銅合金において、平均結晶粒径が小さいほど、強度−曲げ加工性バランスが向上することが知られている。本発明者らは、集合組織を制御することで、比較的粗大な結晶粒径においても良好な曲げ加工性を得られることを知見した。この平均結晶粒径は、25μm以下とすることが好ましく、15μm以下とすることがより好ましい。
(集合組織)
本発明者らは、曲げ加工時の亀裂が変形帯やせん断帯に沿って進むことに着目し、集合組織(方位粒)によって、180°の密着曲げ加工の際の変形帯やせん断帯の生成挙動が異なることを知見した。
Cube方位:
Cube方位{001}<100>は、より多くのすべり系が活動できる方位である。このCube方位を面積率で20%以上集積させることにより、局所的な変形の発達を抑制し、180°の密着曲げ加工性を向上させることが可能となる。このCube方位粒の集積率が低すぎると、前記した局所的な変形の発達を抑制することができず、180°の密着曲げ加工性が低下する。従って、本発明では、Cube方位{001}<100>の平均面積率を20%以上、好ましくは30%以上と規定する。
一方、このCube方位粒の集積率が高すぎると、後述のBrass方位{011}<211>、S方位{123}<634>、Copper方位{112}<111>の3つの方位の平均合計面積率が低下して、強度が低下してしまう。従って、強度異方性が小さく、且つ曲げ加工性の向上を実現させるには、前記Cube方位の平均面積率を60%以下として、20〜60%の範囲とする必要がある。また、30〜50%の範囲とすることがより好ましい。
Brass方位、S方位、Copperの3つの方位:
本発明のように、集合組織制御を、前記した結晶粒径の微細化の組織制御と組み合わせで行う場合、180°の密着曲げ加工に対しては、前記した通り、Cube方位の平均面積率だけでなく、更に、Brass方位{011}<211>、S方位{123}<634>、Copper方位{112}<111>の3つの方位の平均合計面積率を、よりバランス良く存在させる必要がある。
これらBrass方位、S方位、Copperの3つの方位は、活動できるすべり系が限定的である。そのため、これらの方位の集積率が高すぎると、局所的な変形が生じてしまい、180°の密着曲げ加工性が低下する。従って、曲げ加工性を向上させるには、これらBrass方位、S方位、Copperの3つの方位の各面積率の合計を、平均で50%以下とし、より好ましくは40%以下とする。
しかし、一方で、これら3つの方位粒は、圧延時に生成する方位粒であり、一定量集積させることによって強度を向上させることができる。そのため、これらの方位粒の各面積率の合計(合計面積率)が低すぎると、圧延による加工硬化が不足して、強度が低下してしまう。よって、強度を向上させるためには、これら3つの方位の平均合計面積率の下限を20%以上、より好ましくは30%以上とする必要がある。
これらの結果、強度異方性が小さく、且つ180°の密着曲げ加工性を両立させるためには、Brass方位{011}<211>、S方位{123}<634>、Copper方位{112}<111>の3つの方位の平均合計面積率を、20〜50%の範囲、より好ましくは30〜40%の範囲とする。
(平均結晶粒径、集合組織測定、KAM値測定方法)
電界放出型走査電子顕微鏡(Field Emission Scanning Electron Microscope:FESEM)に、後方散乱電子回折像[EBSP:ElectronBack Scattering(Scattered)Pattern]システムを搭載した結晶方位解析法を用いて、本発明では、製品銅合金の板厚方向の表面部の集合組織を測定し、平均結晶粒径の測定を行う。
EBSP法は、FESEMの鏡筒内にセットした試料に、電子線を照射してスクリーン上にEBSPを投影する。これを高感度カメラで撮影して、コンピュータに画像として取り込む。コンピュータでは、この画像を解析して、既知の結晶系を用いたシミュレーションによるパターンとの比較によって、結晶の方位が決定される。算出された結晶の方位は3次元オイラー角として、位置座標(x、y)などと共に記録される。このプロセスが全測定点に対して自動的に行われるので、測定終了時には数万〜数十万点の結晶方位データを得ることができる。
ここで、通常の銅合金板の場合、主に、以下に示すようなCube方位、Goss方位、Brass方位、Copper方位、S方位等と呼ばれる多くの方位因子からなる集合組織を形成し、それらに応じた結晶面が存在する。これらの事実は、例えば、長島晋一編著、「集合組織」(丸善株式会社刊)や軽金属学会「軽金属」解説Vol.43、1993、P285−293などに記載されている。これらの集合組織の形成は同じ結晶系の場合でも加工、熱処理方法によって異なる。圧延による板材の集合組織の場合は、圧延面と圧延方向で表されており、圧延面は{ABC}で表現され、圧延方向は<DEF>で表現される(ABCDEFは整数を示す)。かかる表現に基づき、各方位は下記のように表現される。
Cube方位{001}<100>
Goss方位{011}<100>
Rotated−Goss方位{011}<011>
Brass方位{011}<211>
Copper方位{112}<111>
(若しくはD方位{4411}<11118>
S方位{123}<634>
B/G方位{011}<511>
B/S方位{168}<211>
P方位{011}<111>
本発明においては、基本的にこれらの結晶面から±15°以内の方位のずれのものは、同一の結晶面(方位因子)に属するものとする。また、隣り合う結晶粒の方位差が5°以上の結晶粒の境界を結晶粒界と定義する。
そのうえで、本発明においては、測定エリア300×300μmに対して0.5μmのピッチで電子線を照射し、上記結晶方位解析法により測定した結晶粒の数をn、それぞれの測定した結晶粒径をxとした時、上記平均結晶粒径を(Σx)/nで算出する。
また、本発明においては、測定エリア300×300μmに対して0.5μmのピッチで電子線を照射し、上記結晶方位解析法により測定した結晶方位の面積をそれぞれ測定し、測定エリアに対する各方位の面積率(平均)を求めた。
ここで、結晶方位分布は板厚方向に分布がある可能性がある。従って、板厚方向に何点か任意にとって平均を得ることによって求める方が好ましい。
また、EBSDを用いて、結晶粒内の方位差を測定することで、KAM(Kerner Average Misorientation)値を求めた。このKAM値は、結晶粒の数をn、夫々の測定した各結晶粒の方位差をyとしたとき、(Σy)/nで定義した。このKAM値は転位密度と相関があることが報告されており、その事実は、例えば、「材料」(Journal of the Society of Materials Science,Japan)Vol.58、No.7,P568−574,July 2009などに報告されている。
(銅合金の化学成分組成)
次に、本発明に係る銅合金の化学成分組成について説明する。本発明に係る銅合金の化学成分組成は、圧延直角方向の耐力0.2%が、650MPa以上の高強度レベルで、180°の密着曲げで割れが発生しない、強度−曲げ加工性バランスに優れたコルソン合金を得るための前提条件となる。これに基づく本発明に係る銅合金の化学成分組成は質量%で、Ni:1.0〜3.6%、Si:0.2〜1.0%、Sn:0.05〜3.0%、Zn:0.05〜3.0%含有し、更に、必要により、Fe、Mn、Mg、Co、Ti、Cr、Zrのうち一種または二種以上を、合計で0.01〜3.0%含有し、残部が銅および不可避的不純物からなる銅合金とする。尚、本明細書に記載の含有量の%は、全て質量%を示す。
以下に、本発明における各元素の限定理由を順に説明する。
Ni:1.0〜3.6%
Niは、Siとの化合物を晶出または析出させることにより、銅合金の強度および導電率を確保する作用がある。Niの含有量が1.0%未満と少な過ぎると、析出物の生成量が不十分となり、所望の強度が得られなくなり、また、銅合金組織の結晶粒が粗大化する。一方、Niの含有量が3.6%を超えて多くなり過ぎると、導電率が低下するのに加えて、粗大な析出物の数が多くなりすぎ、曲げ加工性が低下する。従って、Ni量は1.0〜3.6%の範囲とする。
Si:0.20〜1.0%
Siは、Niとの前記化合物を晶・析出させて銅合金の強度および導電率を向上させる。Siの含有量が0.20%未満と少な過ぎる場合は、析出物の生成が不十分となり、所望の強度が得られないばかりか、結晶粒が粗大化する。一方、Siの含有量が1.0%を超えて多くなり過ぎると、粗大な析出物の数が多くなりすぎ、曲げ加工性が低下する。従って、Si含有量は0.20〜1.0%の範囲とする。
Zn:0.005〜3.0%
Znは、電子部品の接合に用いるSnめっきやはんだの耐熱剥離性を改善し、熱剥離を抑制するのに有効な元素である。このような効果を有効に発揮させるためには、0.005%以上含有させる必要がある。しかし、過剰に含有すると、却って溶融Snやはんだの濡れ広がり性を劣化させ、また、導電率も大きく低下してしまう。また、過剰に添加すると、Cube方位面積率が低下し、Brass方位、S方位、Copper方位の面積率が増加して、前記した両者の面積率のバランスが崩れる。従って、Znは、耐熱剥離性向上効果と導電率低下作用とを考慮したうえで、0.005〜3.0%の範囲、好ましくは0.005〜1.5%の範囲から、含有量を決定する。
Sn:0.05〜3.0%
Snは、銅合金中に固溶して強度向上に寄与し、この効果を有効に発揮させるためには、0.05%以上含有させる必要がある。しかし、過剰に含有すると、その効果が飽和し、また、導電率を大きく低下させる。また、過剰に添加するとCube方位面積率が低下し、Brass方位、S方位、Copper方位の面積率が増加する。従って、Snは、強度向上効果と導電率低下作用とを考慮したうえで、0.05〜3.0%の範囲、好ましくは0.1〜1.0%の範囲の範囲から、含有量を決定する。
Fe、Mn、Mg、Co、Ti、Cr、Zrのうち一種または二種以上を合計で0.01〜3.0%
これらの元素は、結晶粒の微細化に効果がある。また、Siとの間に化合物を形成させることで、強度、導電率が向上する。これらの効果を発揮させる場合には、選択的に、Fe、Mn、Mg、Co、Ti、Cr、Zrのうち一種または二種以上を、合計で0.01%以上含有させる必要がある。しかし、これらの元素の合計含有量(総量)が3.0%を超えると、化合物が粗大になり、曲げ加工性を損なう。従って、選択的に含有させる場合のこれら元素の含有量は、合計で(総量で)0.01〜3.0%の範囲とする。
(製造条件)
次に、この銅合金の組織を本発明で規定した組織とするための、好ましい製造条件について、以下に説明する。本発明に係る銅合金は、基本的には、圧延された銅合金板であり、これを幅方向にスリットした条や、これら板、条をコイル化したものも本発明銅合金の範囲に含まれる。
本発明では、前記した特定成分組成に調整した銅合金溶湯の鋳造、鋳塊の面削、均熱、熱間圧延、冷間圧延、溶体化処理(再結晶焼鈍)、時効硬化処理、冷間圧延、低温度焼鈍などを含む工程により、最終(製品)板を得る。
(熱間圧延)
熱間圧延の終了温度は550〜850℃とすることが好ましい。この温度が550℃より低い温度域で熱間圧延を行うと、再結晶が不完全なため不均一組織となり、曲げ加工性が劣化する。一方、熱間圧延の終了温度が850℃より高いと、結晶粒が粗大化し、曲げ加工性が劣化する。尚、この熱間圧延後は水冷することが望ましい。
(冷間圧延)
この熱延板に対して、中延べといわれる冷間圧延を施す。この中延べ後の銅合金板に対し、溶体化処理と仕上げ冷間圧延が施され、更に、時効処理されて、製品板厚の銅合金板とされる。
(仕上げ冷間圧延)
通常、この仕上げ冷間圧延は、最終の溶体化処理を挟んで(溶体化処理の前後で)、前半と後半の2段に分けて行われる。本発明では、溶体化焼鈍前の冷延率を高めて90%以上とすることが好ましく、より好ましくは93%以上とする。この冷延率が90%より低いと、最終のCube方位の面積率が小さくなり、所望の集合組織を得ることができない。また、溶体化処理直前の圧下率が90%以上であれば、必要に応じて熱間圧延後に圧延焼鈍工程を繰り返しても良い。
(最終溶体化処理)
最終溶体化処理は、所望の、結晶粒径、集合組織を得るために重要な工程である。発明者らは、最終溶体化処理(溶体化焼鈍)の各温度域における組織を詳細に調査することにより、昇温速度が遅いほど、また、結晶粒径が大きいほど、Cube方位粒が優先的に成長し、Cube方位の面積率が大きくなることを見出した。そのため、所望の本発明の組織を得るためには、溶体化焼鈍の温度と昇温速度を制御する必要がある。
すなわち、最終溶体化処理において、800℃〜900℃の温度まで、0.1℃/s以下の昇温速度で加熱することが望ましい。
溶体化処理温度が800℃以下、または、昇温速度が0.1℃/sよりも速いと、Cube方位粒の優先成長が十分に起きず、Cube方位の面積率が小さくなってしまい、曲げ加工性が劣化してしまう。また、溶体化焼鈍温度が低すぎると、溶体化焼鈍後の固溶量が低くなりすぎ、時効処理での強化量が小さくなり、最終の強度が低くなりすぎてしまう。一方、溶体化処理温度が900℃以上では、結晶粒径が粗大化してしまい、曲げ加工性が劣化してしまう。
(溶体化処理後の処理)
溶体化焼鈍に引き続いて、時効処理を行う。Cu−Ni−Si系合金の一般的な製造方法では、溶体化焼鈍後に冷間圧延を施し、その後、時効処理を施す方法が採用される。このように冷間圧延後に時効処理を施すと、時効処理過程では、20nm以下の微細な第2相粒子が析出すると共に、回復が起きてしまう。そのため、20nm以下の微細な第2相粒子の析出量を増やすために、時効温度を高温・長時間化すると転位密度が過剰に低下してしまい、異方性が大きくなる。一方、転位密度を高くするために、時効温度を低温・短時間とすると、20nm以下の微細な第2相粒子の析出量が少なくなってしまい、強度が低くなりすぎてしまう。そのため、溶体化焼鈍後に時効処理を行い、冷間圧延を行うことが望ましい。このような工程では、時効処理により、20nm以下の微細な第2相粒子の析出を、冷間圧延工程により転位密度を、それぞれ別の工程にて制御しており、高強度で異方性を小さくすることが可能となる。
また、本発明者らは、SEM−EBSDにより、転位密度と相関のあるKAM値を詳細に調査することにより、従来の溶体化焼鈍後に、冷間圧延、時効処理の順で製造工程を進めるよりも、溶体化焼鈍工程の後に、時効、圧延工程の順で製造工程を進めることにより、同じ圧下率でもKAM値が大きくなることを見出し、比較的低い圧下率においても、転位密度を残存できることを見出した。
これらの観点から、時効温度は400℃〜550℃の温度で実施することが望ましい。時効温度が400℃よりも低温では、20nm以下の微細な第2相粒子の量が少なくなりすぎ、強度が低くなってしまう。一方、550℃よりも高温であると、20nm以下の微細な第2相粒子が比較的粗大となり、やはり、強度が低くなってしまう。
最終の冷間圧延は、25%〜60%とすることが好ましく、30%〜50%とすることがより好ましい。圧下率が25%よりも小さいと、KAM値が0.8以下と低くなりすぎ、強度異方性が大きくなってしまう。一方、圧下率が60%を超えると、KAM値が3.0以上と大きくなりすぎてしまい、またCube方位面積率が低くなりすぎてしまうため、曲げ加工時に割れが発生してしまう。
最終の冷間圧延後には、板材の残留応力の低減、ばね限界値と耐応力緩和特性の向上を目的として、低温焼鈍を施すことができる。このときの加熱温度は250℃〜600℃の範囲とすることが望ましい。これにより、板材内部の残留応力が低減され、強度低下をほとんど伴わずに、曲げ加工性と破断伸びを上昇させることができる。また、導電率を上昇させることもできる。この加熱温度が高すぎると、KAM値が低下し、軟化してしまう。一方、加熱温度が低すぎると、上記特性の改善効果が十分に得られない。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
以下、本発明の実施例について説明する。表1に示す種々の化学成分組成のCu−Ni−Si−Zn−Sn系銅合金の銅合金薄板を、表1および表2に示す種々の条件で製造し、平均結晶粒径や集合組織、KAM値などの板組織、強度や導電率、曲げ性などの板特性を各々調査して評価した。これらの結果を表3および表4に示す。
具体的な銅合金板の製造方法としては、クリプトル炉において、大気中、木炭被覆下で溶解し、鋳鉄製ブックモールドに鋳造し、表1および表2に記載する化学組成を有する厚さ50mmの鋳塊を得た。そして、その鋳塊の表面を面削した後、950℃の温度で、厚さが6.00〜1.25mmになるまで熱間圧延し、750℃以上の温度から水中で急冷した。次に、酸化スケールを除去した後、冷間圧延を行い、厚さが0.20〜0.33mmの板を得た。
次いで、昇温速度が0.03〜0.1℃のバッチ炉、および昇温速度が40〜80℃/sの塩浴炉、または通電加熱機を使用し、表1に記載する種々の条件で、溶体化処理を行い、その後、水冷を行った。
これら溶体化処理(焼鈍)後の試料について、バッチ炉において、2時間の焼鈍を施し、後半の仕上げ冷間圧延により、厚さが0.15mmの冷延板とした。この冷延板に対し、塩浴炉において、480℃×30sの低温焼鈍処理を施して最終の銅合金板を得た。
(組織)
平均結晶粒径、各方位の平均面積率およびKAM値:
得られた各試料の銅合金薄板から組織観察片を採取し、上述した要領で、平均結晶粒径および各方位の平均面積率を、電界放出型走査電子顕微鏡に後方散乱電子回折像システムを搭載した結晶方位解析法により測定した。具体的には、製品銅合金の圧延面表面を機械研磨し、更に、バフ研磨に次いで電解研磨して、表面を調整した試料を準備した。その後、日本電子社製FESEM(JEOL JSM 5410)を用いて、EBSPによる結晶方位測定並びに結晶粒径測定を行った。測定領域は300μm×300μmの領域であり、測定ステップ間隔を0.5μmとした。
EBSP測定・解析システムは、EBSP:TSL社製(OIM)を用いた。平均結晶粒径(μm)は、結晶粒の数をn、それぞれの測定した結晶粒径をxとしたときに、(Σx)/nで定義した。また各方位の面積率は、各方位の面積をEBSPにより測定し、測定エリアにおける面積率から計算により求めた。また、従来技術と比較するため、Cube方位の面積率/(Cube方位面積率+Brass方位面積率+S方位面積率+Copper方位面積率)で示されるCube方位の割合を参考値として表2に示した。
また、KAM値は、結晶粒の数をn、夫々の測定した各結晶粒の方位差をyとしたときに、(Σy)/nで定義した。
引張試験:
引張試験は、試験片の長手方向を圧延方向としたJIS13号B試験片を用いて、5882型インストロン社製万能試験機により、室温、試験速度10.0mm/min、GL=50mmの条件で実施し、0.2%耐力(MPa)を測定した。尚、この引張試験では、同一条件の試験片を3本試験し、それらの平均値を採用した。この引張試験結果が、圧延直角方向(T.D.方向)の0.2%耐力(YP)が650MPa超のものを、高強度と評価する。
導電率:
導電率は、試験片の長手方向を圧延方向として、ミーリングにより、幅10mm×長さ300mmの短冊状の試験片を加工し、ダブルブリッジ式抵抗測定装置により電気抵抗を測定して、平均断面積法により算出した。尚、この測定でも、同一条件の試験片を3本測定し、それらの平均値を採用した。この測定で、導電率が30%IACS以上のものを、高導電性を有していると評価する。
曲げ加工性:
銅合金板試料の曲げ試験は、以下の方法により実施した。板材を幅10mm、長さ30mmに切出し、1000kgf(約9800N)の荷重をかけて曲げ半径0.15mmで、GoodWay(曲げ軸が圧延方向に直角)に90°曲げを行った。その後、1000kgf(約9800N)の荷重をかけて180°密着曲げを実施し、曲げ部における割れの発生の有無を、50倍の光学顕微鏡で目視観察した。その際に、割れの評価は日本伸銅協会技術標準JBMA−T307に記載のA〜Eにより評価した。尚、その評価がA〜Cのものを、曲げ加工性が優れているとする。
表1に示すように、発明例1〜15は、化学成分組成および製造条件が発明範囲内あるいは好ましい条件範囲内で適正であるので、表3に示すように、平均結晶粒径、集合組織の各平均面積率、およびKAM値が、各々規定の範囲内に制御されている。その結果、これら発明例では、圧延直角方向(T.D.方向)の0.2%耐力(YP)が650MPa超、導電率が30%IACS以上の、高強度−高導電性を達成しつつ、優れた曲げ加工性を兼備している。
尚、Cube方位の平均面積率が比較的小さい発明例2、3、12は、発明例の中では、曲げ加工性の評価がCと低い傾向があり、また、Snの添加量が他の発明例と比較して多めの発明例5は、導電率が発明例の中では比較的低くなっている。
一方、比較例16、18、20、21は、適正な製造条件で製造しているにもかかわらず、何れかの元素の含有量が本発明の上限範囲を超えて多い。そのため、Cube方位の面積率を好ましい範囲に制御できず、曲げ加工性の評価がDと著しく低い結果となった。また、比較例17、19は、逆に何れかの元素の含有量が本発明の下限範囲を超えて少ない。そのため、圧延直角方向(T.D.方向)の0.2%耐力(YP)が、650MPa以下と低くなっている。
また、比較例22〜33は、本発明の成分範囲を満たしているが、溶体化処理条件などの製造条件が、好ましい範囲外であるため、所望の組織が得られず、強度、導電率、曲げ加工性などが発明例に比して劣る。
比較例22は、最終溶体化処理前の冷間圧延の加工率(圧下率)が小さすぎる。従って、最終のCube方位の面積率が小さくなりすぎ、Brass方位、S方位、Copperの3つの方位の各面積率の合計も大きくなりすぎている。そのため、180°の密着曲げ性が劣っている。
比較例23は、最終溶体化処理における溶体化処理温度が低すぎる。従って、最終のCube方位の面積率が小さくなりすぎている。そのため、180°の密着曲げ性が劣っている。
比較例24は、最終溶体化処理における溶体化処理温度が高すぎる。従って、結晶粒径が大きくなっている。そのため、180°の密着曲げ性が劣っている。
比較例25、26は、最終溶体化処理における昇温速度が大きすぎる。従って、Cube方位の面積率も小さくなっている。そのため、180°の密着曲げ性が劣っている。
比較例27、28は、時効処理温度が適正な範囲にない。そのため、圧延直角方向(T.D.方向)の0.2%耐力(YP)が650MPa以下と低くなっている。
比較例29は、最終溶体化処理後の冷延率が低すぎる。そのため、KAM値が小さすぎ、強度異方性が大きくなり、圧延直角方向(T.D.方向)の0.2%耐力(YP)が650MPa以下と低くなっている。
比較例30は、最終溶体化処理後の冷延率が高すぎる。そのため、KAM値が大きすぎ、また、Cube方位面積率が低すぎ、180°の密着曲げ性が劣る結果となっている。
比較例31、32、33は、表2に示すように、溶体化焼鈍後の順を、他の発明例および比較例と異なり、圧延―時効の順としている。そのため、強度異方性が大きく圧延直角方向(T.D.方向)の0.2%耐力(YP)が650MPa以下と低くなっている。尚、これらのうちでも、比較例32、33は、KAM値が小さすぎるため、強度異方性が大きくなっている。
Figure 2011162848
Figure 2011162848
Figure 2011162848
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Claims (2)

  1. 質量%で、Ni:1.0〜3.6%、Si:0.2〜1.0%、Sn:0.05〜3.0%、Zn:0.05〜3.0%を含有し、残部が銅および不可避的不純物からなる銅合金であって、
    この銅合金の平均結晶粒径が25μm以下で、
    且つ、SEM−EBSP法による測定結果で、Cube方位{001}<100>の平均面積率が20〜60%であり、Brass方位{011}<211>、S方位{123}<634>、Copper方位{112}<111>の3つの方位の平均合計面積率が20〜50%である集合組織を有すると共に、
    KAM値が1.00〜3.00であることを特徴とする強度異方性が小さく曲げ加工性に優れた銅合金。
  2. 更に、質量%で、Fe、Mn、Mg、Co、Ti、Cr、Zrのうち一種または二種以上を、合計で0.01〜3.0%含有する請求項1記載の強度異方性が小さく曲げ加工性に優れた銅合金。
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