JP4001491B2 - 高強度チタン銅合金及びその製造法並びにそれを用いた端子・コネクター - Google Patents

高強度チタン銅合金及びその製造法並びにそれを用いた端子・コネクター Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は端子・コネクター等の電子部品用に用いられる曲げ加工性に優れた高強度チタン銅合金及びその製造方法、更にそれらを用いた端子・コネクターに関するものである。また、本発明は、素材である金属材料に対して高強度の要求されるフォーク型コンタクト用として最適な高強度チタン銅合金及びその製造方法、さらに該チタン銅合金を用いたフォーク型コネクターに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
C1990等のチタンを含む銅合金(以下チタン銅合金)は、優れた加工性と機械的強度を有するため、電子部品用として端子・コネクターなどの用途で広く用いられている。一方、近年においては、電子部品の軽薄・短小化の進展が従前にもまして著しく、これに対応するため電子部品用の銅合金条にも、材料厚さが薄いことが要求されてきている。ところが、材料が薄くなったにもかかわらず、コネクターの接触圧等を維持するために材料自体の強度が高いことと、小さなスペースでその機能を果たすために部品の曲げ加工も小さな曲げ半径で施すことが要求されている。すなわち、チタン銅合金には、高導電率であることに加えて高強度で且つ曲げ加工性が良好であるという相反する特性が要求されている。
【0003】
さらに、携帯電話、デジタルカメラ、ビデオカメラ等高密度実装化の進展に伴い、電子部品用の端子・コネクター、リードフレーム等の金属部材にも過酷でかつ複雑な曲げ成形が行われるため、高強度の他に加工性としてとりわけ曲げ加工性が良好であることが要求される。
【0004】
こうした状況において、チタン銅合金の曲げ加工性及び応力緩和率を改善するために、結晶粒度を20μmを越えない熱処理条件で溶体化処理を行う製造方法に関する報告(例えば特開平7−258803号公報)がなされている。ところが、近年の端子・コネクター等の電子部品用に用いられる銅合金素材に対する曲げ加工性の要求に対して上記改善を行ったチタン銅でも、必ずしも満足できる曲げ加工性を有しているとはいえないのが現状である。チタン銅合金について要求を満足させるためには、強度と曲げ加工性の相関を改善することが必要であり、そのためにはチタン銅合金の製造方法も改善することが必要となる。
【0005】
また、従来より、電子部品用銅合金の引張強さが500〜800MPaの中程度の強度が要求される場合には、黄銅、りん青銅、洋白、更に高導電性が要求される時には、Cu−Ni−Si系、Cu−Cr−Zr系、Cu−Cr−Sn系の銅合金が使用されており、また900MPa程度以上の高強度が要求される場合には、ベリリウム銅、チタン銅が使用されている。
【0006】
こうした中で、最近ではFPC(フレキシブルプリント配線板)の需要が増え、FPC用のコネクターも改良が加えられている。フォーク型コネクターはFPC用のコネクターに使用され、金属材料の面で接触する汎用のコネクターと異なり、基板とは、銅合金板の破面で接触させる構造である。 そのため、曲げ加工は行われず、フォーク型コネクターとしては、曲げ加工性が良好ではなくとも、強度が高いことが第一に要求される。
【0007】
具体的にフォーク型コネクターとしては、最低でも1000MPa以上の引張強さが必要であり、多様な設計に対応できるためには1200MPa以上の引張強さが必要である。
【0008】
ステンレス鋼は高強度のもの、例えばSUS301では1200MPaを超える引張強さを有する材料もあるが、スレンレスは導電率2.4%IACS程度と低く、フォーク型コネクター用としては使用できない。フォーク型コネクターとしては、最低でも10%IACSの導電率が必要である。
【0009】
1200MPa以上の引張強さを有する銅合金としては、ベリリウム銅がある。また、高強度銅合金としては、チタン銅も有力であるが、1200MPa以上の引張強さを得るには、4質量%チタンを含有させ、更にMTH(時効加工加熱処理)等の特殊な処理を行わなければならない(講座・現代の金属学 材料編5 非鉄材料,p78(日本金属学会)等)。
【0010】
しかしながら、4質量%Tiを含有するチタン銅は加工性が悪く、熱間圧延にて割れ、冷間圧延にて耳割れが発生しやすいため、工業的に歩留よく製造するのは難しく、電子部品用素材として、商業的に拡販することは困難である。また、MTH処理は、時効処理後のチタン銅を更に冷間圧延し、その後熱処理するプロセスであるが、時効処理後のチタン銅合金を冷間圧延することは、耳割れ等が発生し易く、製造が困難である。
【0011】
一方、3質量%Tiを含有するチタン銅(C1990)は従来の製造法ではせいぜい1000MPa程度の引張強さしか得られない。 また、特開平7−258803では、チタン銅合金について結晶粒が20μmを越えない熱処理条件で溶体化処理を行う製造方法に関する報告がなされ、従来の同材料と比べて特に強度が低下せずに曲げ特性の優れた材料が製造できることが知られているが、高強度のチタン銅は得られていない。したがって、1200MPa以上の引張強さを有する銅合金としては、ベリリウム銅以外の銅合金はなく、独占的な市場であった。
【0012】
しかしながら、ベリリウム銅も最適な銅合金ではなく、応力緩和特性はチタン銅に劣り、決して満足できるものではなかった。よって、Tiを2.0〜3.5質量%含有するチタン銅合金について、従前より更に高強度である1200MPa以上の引張強さが得られれば、応力緩和特性を含めて最適な高強度銅合金となりうるため、改善が待たれている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はかかる点に鑑みて為されたものであり、チタン銅合金について曲げ加工性を低下させないで強度を向上させた端子・コネクター材料を提供することを目的としている。また、本発明は、引張強さがベリリウム銅に匹敵する1200MPa以上、導電率が10%IACS以上を有する高強度チタン銅合金、及びその製造方法、並びに該高強度チタン銅合金を用いた電子部品、特にフォーク型コネクターを提供することを目的としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、チタン銅合金の最終の再結晶焼鈍条件(溶体化処理条件)およびその後の冷間圧延条件及び時効処理条件を調整し、最終熱処理後に各特性値間の相関を調査することにより、曲げ加工性を低下させないで強度を向上させた特性を有するチタン銅合金素材を安定的に得ることを見い出した。
【0015】
本発明は上記知見に基づいてなされたもので、Tiを2.0質量%以上3.5質量%以下を含有し、残部が銅及び不可避不純物からなるチタン銅合金において、平均結晶粒径が20μm以下、かつbで表示される0.2%耐力が800N/mm以上で圧延方向に対し直角方向にW曲げ試験を行った際、aで表示される割れの発生しない曲げ半径比(曲げ半径/板厚)が、a≦0.05×b−40となることを特徴としている。
【0016】
本発明の第2の特徴は、Tiを2.0質量%以上3.5質量%以下を含有し、更にZn、Cr、Zr、Fe、Ni、Sn、In、Mn、P及びSiの1種以上を総量で0.01質量%以上3.0質量%以下含有し、残部が銅及び不可避不純物からなるチタン銅合金において、平均結晶粒径が20μm以下、かつbで表示される0.2%耐力が800N/mm以上で圧延方向に対し直角方向にW曲げ試験を行った際、aで表示される割れの発生しない曲げ半径比(曲げ半径/板厚)が、a≦0.05×b−40となるものである。
【0017】
以下、上記数値限定の根拠を本発明の作用とともに説明する。なお、以下の説明において「%」は「質量%」を意味するものとする。
A.Ti:2.0〜3.5%
TiにはCu−Ti合金を時効処理した際にスピノーダル分解を起こして母材中に濃度の変調構造を生成し、これにより非常に高い強度を確保する作用があるが、その含有率が2.0%未満では所望の強化が期待できず、一方3.5%を越えてTiを含有させると粒界反応型の析出を起こし易くなって逆に強度低下を招いたり、加工性を劣化したりする。よって、Ti含有量は2.0〜3.5%と規定した。
【0018】
B.Zn、Cr、Zr、Fe、Ni、Sn、In、Mn、P、Si:総量で0.01〜3.0%
Cr、Zr、Fe、Ni、Sn、In、Mn、P及びSiは、いずれもCu−Ti合金の導電性を大きく低下させず粒界反応型析出を抑制し、結晶粒径を微細にし、さらに時効析出により強度を上昇させるなどの作用を有している。また、Sn、In、Mn、P及びSiは固溶強化によりCu−Ti合金の強度を向上させる作用を有している。したがって、必要に応じてこれらの元素が1種または2種以上添加されるが、その含有量が総量で0.01%未満では前記作用による所望の効果が得られず、一方総量で3.0%を越える含有量になるとCu−Ti合金の導電性及び加工性を著しく劣化させる。よって、1種の単独添加或いは2種以上の複合添加がなされるZn、Cr、Zr、Fe、Ni、Sn、In、Mn、P及びSiの含有量は、総量で0.01%〜3.0%と定めた。
【0019】
ここで、上記添加元素のうちZnは、Cu−Ti合金の導電性を低下させずに半田の熱剥離を抑制する作用が期待できるため、特に好適に添加されるが、その含有量が0.05%未満では所望の効果が得られず、また2.0%を越えると導電性及び応力緩和特性が劣化する。よって、Znの含有量は0.05%〜2.0%であることが望ましい。
【0020】
C.チタン銅合金の特性
チタン銅合金が端子・コネクター材として用いられるためには、特に、その材料強度と共に複雑な部品加工を施されて使用されるために曲げ加工性が重要である。部品設計をする際には、材料強度の指標である0.2%耐力と、材料板厚に対して種々の曲げ半径で曲げ加工を施したときの曲げ部の状況によって評価される曲げ特性とが考慮される。本発明者等は、近年の電子部品に要求される強度と板厚に応じた曲げ加工性を定量的に解析した結果、以下に示すように、両者をバランスさせた一定の尺度を見い出した。
【0021】
すなわち、本発明は、bで表示される0.2%耐力が800N/mm以上で圧延方向に対し直角方向にW曲げ試験を行った際、aで表示される割れの発生しない曲げ半径比(曲げ半径/板厚)が、a≦0.05×b−40であることにより、高強度と曲げ加工性をバランスさせて近年の要求に応えることができるチタン銅合金を提供し得たものである。なお、チタン銅合金の0.2%耐力を800N/mm以上と規定したのは、800N/mm未満であると、チタン銅合金としての高強度特性を十分に生かし切れないからである。また、本発明において、結晶粒径の測定はJIS H 0501に準じて、切断法により求めた値を使用する。
【0022】
チタン銅合金の強度を向上させるためには、合金元素の添加による固溶強化、時効処理温度を適正にして析出強化させること及び時効前の加工度を適正にした加工硬化による強化があり、従来はこれらを組み合わせることによって所望の材料特性を確保していた。ところが、こうした強化機構のみで強度を向上させると曲げ性が劣化し、所望とする材料特性の領域に達しない場合が生じた。そこで、本発明者等は種々の試験を実施したところ、結晶粒度に対して強度と曲げ特性の相関があり、0.2%耐力と曲げ半径比の上記のような関係を得るためには、平均結晶粒径が20μm以下である必要があることを見出した。
【0023】
なお、材料の強度を低下させずに曲げ特性を向上させるには、結晶粒度を厳密に規定し、かつ最終の再結晶焼鈍条件、冷間加工度及び時効処理温度を適正にする必要がある。また、本発明は、上記のようなチタン銅合金を用いた端子・コネクターでもある。
【0024】
次に、本発明のチタン銅合金の製造方法は、最終再結晶焼鈍を図1に示すα相とα+CuTi相の境界線L以下の温度で行うことで上記チタン銅合金を製造することを特徴としている。
【0025】
本発明においては、最終の再結晶焼鈍条件とこれに続く冷間加工、更に時効処理の条件を規定することが基本となっている。最終の再結晶焼鈍条件はその後に続く加工を容易にするため、並びに材料の特性及び結晶粒度を調整するために行われる。
【0026】
従来、結晶粒度が20μmを越えないチタン銅合金を製造するには、処理温度をTiの固溶領域に定めて処理時間を適正にすることによって結晶粒度を調整する方法が取られている。しかしながら、高温短時間での溶体化処理により再結晶させる場合、結晶粒径の均一性が不十分なために、強度の向上は図れるものの曲げ加工性が悪くなるとともに特性のばらつきが生じ、20μm以下の結晶粒径にてチタン銅合金の高強度化の安定化を図ることは困難であった。
【0027】
そこで、本発明者等は再結晶焼鈍に関する種々の試験を行った結果、各組成に対し、固溶−析出の境界であるα−(α+CuTi)境界線L以下の温度、すなわち、含有する全てのTiがCu中に固溶する温度領域ではなく、一部析出が起こる温度領域にて、平均結晶粒径が20μmを越えない時間再結晶焼鈍を行うと、強度を低下させないで曲げ加工性が良好であり、しかも特性のばらつきが小さいチタン銅合金を提供することができることを見出した。なお、α−(α+CuTi)境界線Lの温度y(℃)については、簡略的にTi濃度をx(%)とし、y=50x+650で近似することができる。
なお、結晶粒が微細になれば曲げ加工性は良好になるが、平均結晶粒径が3μm未満になると、未再結晶部が残存することがあり、曲げ加工性が劣化することがあるため、平均結晶粒径は20μm以下、好ましくは3〜20μmとする。
【0028】
また、再結晶焼鈍後の冷却速度を100℃/秒以上とすることが望ましい。これは、冷却速度が100℃/秒を下回ると冷却時にスピノーダル分解を起こして材料が硬化し、その後の加工が困難になるためである。このため、加熱炉を出た材料表面を水や気水によって冷却することが、上記冷却速度を確保しかつ材料を均一に冷却するために好ましい。
【0029】
さらに、上記のような0.2%耐力と曲げ加工性の特性の相関を得るには、再結晶焼鈍条件の他にその後の冷間加工度と時効処理条件を厳密に規定する必要がある。再結晶焼鈍された材料は、殆どのTiが固溶され、冷間圧延によって加工された後、時効処理が施される。その冷間圧延時の加工度は、5〜70%以下とすることが望ましい。これは、5%未満の加工度では、加工硬化による強度の向上が小さいために所望の強度が得られず、一方、加工度が70%を超えると時効処理条件を適正にすることによって高い強度は得られるものの、曲げ加工性が劣化して上記のような0.2%耐力と曲げ加工性の特性の相関特性を得ることができないためである。
【0030】
また、時効処理条件は300℃以上600℃以下であることが望ましい。これは、時効処理温度が300℃未満であると十分に時効処理が施されずに材料強度が向上せず、一方、600℃以上の温度にて時効処理を行っても固溶Ti量が多く(析出物量が少なく)、所望の強度が得られないためである。また、時効時間は、1時間以上15時間以下であることが望ましい。これは、1時間未満では時効による強度、導電性の向上が期待できず、一方、15時間を超えると著しい過時効による強度低下が起こるためである。
【0031】
以上のように、本発明は、時効硬化型銅合金であるチタン銅合金であって曲げ加工性に優れた高強度のものであり、小型で優れた曲げ加工性、高強度が要求される端子・コネクターに適用される。また、端子・コネクターのコンタクトに加工前、又は加工後にめっき処理されても強度、曲げ加工性は殆ど劣化せず、本発明の効果は発揮される。
【0032】
上記のような高強度チタン銅は、一般に、時効処理の後にプレス加工が行われる。本発明者等は、プレス加工後に時効処理を行うとともに結晶粒度の範囲を上記よりも限定することにより、曲げ加工性がさらに向上されることを見い出した。すなわち、本発明の第3の特徴は、Tiを2.0質量%以上3.5質量%以下含有し、残部が銅及び不可避不純物からなるチタン銅合金において、プレス加工後に時効処理が行われ、結晶粒度が5〜15μmであり、かつ、時効処理前に曲げ半径が0で圧延方向に対し直角方向にW曲げ試験を行った際に割れが発生せず、上記時効処理後に硬さが300Hv以上、好ましくは310Hv以上となる加工組織を有するものである。
【0033】
また、本発明の第4の特徴は、Tiを2.0質量%以上3.5質量%以下含有し、更にZn、Cr、Zr、Fe、Ni、Sn、In、Mn、P及びSiの1種以上を総量で0.01質量%以上3.0質量%以下含有し、残部が銅及び不可避不純物からなるチタン銅合金において、プレス加工後に時効処理が行われ、結晶粒度が5〜15μmであり、かつ、時効処理前に曲げ半径が0で圧延方向に対し直角方向にW曲げ試験を行った際に割れが発生せず、上記時効処理後に硬さが300Hv以上、好ましくは310Hv以上となる加工組織を有するものである。
【0034】
上記のような高強度チタン銅合金は、最終再結晶焼鈍をα相とα+CuTi相の境界線以下の温度で行って結晶粒度を5〜15μmに調整後、加工度5〜50%の最終冷間圧延を行うことで製造することができる。また、時効処理条件は、上記第1、第2の特徴と同じ条件とすることができ、そのような製造方法も本発明の特徴である。さらに、第3および第4の特徴も小型で優れた曲げ加工性、高強度が要求される端子・コネクターに適用され、そのような端子・コネクターも本発明の特徴である。
【0035】
次に、本発明者らは、チタン銅合金の製造工程を検討し、熱間圧延条件、その後の冷間圧延条件、それに続く時効処理条件を調整することにより、1200MPa以上の引張強さを有する高強度チタン銅合金を安定的に得ることが可能であることを見出した。
【0036】
すなわち、本発明の第5の特徴は、Tiを2.0〜3.5質量%含み、残部銅及び不可避的不純物からなる高強度チタン銅合金であって、引張強さが1200MPa以上、導電率が10%IACS以上のものである。
【0037】
また、本発明の第6の特徴は、Tiを2.0〜3.5質量%含み、更にZn0.05質量%以上2.0質量%未満、Cr、Zr、Fe、Ni、Sn、In、Mn、P及びSiの1種以上を総量で0.01質量%以上3.0質量%未満含有し、残部銅及び不可避的不純物からなる高強度チタン銅合金であって、引張強さが1200MPa以上、導電率が10%IACS以上のものである。
【0038】
上記高強度チタン銅合金は、600℃以上の温度で熱間圧延した後、続いて加工度95%以上で冷間圧延し、引き続き冷間圧延の集合組織の状態を保持して340℃以上480℃未満で1時間以上15時間未満の温度で時効処理することで製造することができる。
【0039】
また、本発明は、上記第5、第6の特徴を有する高強度チタン銅合金を用いたフォーク型コネクターでもある。
【0040】
第5、第6の特徴において成分の限定理由は上記第1、第2の特徴と同じである。第5、第6の特徴における特性値の限定理由は以下のとおりである。
▲1▼引張強さ:FPC用のフォーク型コネクターは、金属材料の面で接触する汎用のコネクターと異なり、基板とは、銅合金板の破面で接触させる構造であり、曲げ加工は行われない。 そのため、強度が高いことが第一に要求される。本発明では、強度の指標として引張強さを用いた。フォーク型コネクターとして要求される引張強さは、黄銅、りん青銅、洋白等の汎用銅合金で得られる引張強さでは十分でなく、フォーク型コネクター用として多様な設計に対応可能とするためには、1200MPa以上の引張強さが必要である。
【0041】
▲2▼導電率:FPC用のフォーク型コネクター用の金属材料としては、強度が高いことが第一に要求されるが、フォーク型コネクターは金属材料の破面で接触する構造であるため、他のコネクターに比べて接触抵抗が大きい。対応として、接触部に金めっきして使用されるが、金属材料としても、ある程度の導電性が要求される。 ステンレス鋼は高強度の材料もあるが、導電性が低く、コンタクト部で発生した熱を放散しにくい。最低でも10%IACSの導電率が必要である。
【0042】
第5、第6の特徴を有する高強度チタン銅合金は、以下のようにして製造することができる。
従来、チタン銅合金の強度を向上させる製造工程としては、熱間圧延後、冷間圧延・熱処理を適宜行なった後、熱処理(溶体化処理)を施して結晶粒を20μm以下に調整し、かつ最終冷間圧延の加工度、及び時効処理温度を適正にする方法があり、これによって引張強さが1000MPa程度で、かつ曲げ性の優れた材料を製造できる(特開平7−258803)。ところが、製造性を考慮し、Ti量が2.0〜3.5質量%の範囲において、この製造方法にて、引張強さが1200MPa以上の高強度チタン銅を製造することは未だ達成されてない。 また、前述のMTH処置についてもTi量が2.0〜3.5質量%の範囲では1200MPa以上の引張強さは得られていない。
【0043】
本発明の製造方法においては、「熱間圧延での材料温度」「時効処理前の冷間圧延の加工度」「時効処理条件」を規定することが基本となっている。
▲1▼熱間圧延:熱間圧延は、鋳造組織を均質化し更に高温で圧延することによって動的再結晶を起こさせて、その後の加工を容易にするが、熱間圧延時に材料温度が600℃以下になるとチタン銅合金はスピノーダル分解を起こして急激に硬化するため、それ以降の冷間加工が困難になると共に特性のばらつきが生じる。したがって、熱間圧延時の材料温度を600℃以上に保持して行うこととした。また、熱間圧延後の冷却は、急冷しなければ材料が硬化し、その後の圧延加工が困難になることから、水冷等によって材料の冷却速度を200℃/秒以上とすることが好ましい。
【0044】
▲2▼冷間圧延:従来、チタン銅合金は、熱間圧延後に冷間圧延と焼鈍が適宜行われ、冷間圧延にて所定の板厚とした後、更に時効処理の前に高温短時間の熱処理(溶体化処理)が施されていた。 すなわち、熱処理は材料特性を調整すること及びその後の加工を容易にするために行うのであるが、熱間圧延終了から時効処理までの間に、熱処理を施すために、冷間圧延の適度な加工度が設定できず、強度が低下し、所望の高強度を得ることが困難となる。
【0045】
ところが、前記熱間圧延の加工条件を厳密に規定することによって、その後の冷間圧延でも95%以上の強加工が可能となる。 ここで、冷間加工の加工度を95%以上としたのは、一般に加工度が高くなるにしたがって強度が上昇するが、その後の時効処理にて1200MPa以上の引張強さを得るためには、加工度を厳密に規定する必要があり、加工度95%以上にすることによって1200MPa以上の引張強さを得ることが可能となるためである。
【0046】
▲3▼時効処理:さらに、冷間圧延を終えた材料は、より強度を向上させると共に、伸びとばね性、導電率等の特性を改善するために、時効処理が施される。この時の時効処理条件を340℃以上480℃未満としたのは、時効処理温度が340℃未満であると十分に時効処理が施されずに強度、導電性が向上しないためであり、480℃以上であると、時効処理前の冷間圧延加工度が95%以上と強加工であるために、短時間の時効処理でも過時効状態となり、強度が低下し所望の特性が得られないため、340℃以上480℃未満の温度範囲とした。
【0047】
また、時効処理時間を1時間以上15時間未満としたのは、1時間未満では時効による強度、導電性の向上が期待できず、15時間以上であると、著しい過時効による強度低下が起こるために1時間以上15時間未満とした。
【0048】
上記のような高強度チタン銅は、一般に、時効処理の後にプレス加工が行われる。本発明者等は、プレス加工後に時効処理を行うことにより、時効処理後の寸法変化を大幅に低減できることを見い出した。すなわち、本発明の第7の特徴は、Tiを2.0質量%以上3.5質量%以下含有し、残部が銅及び不可避不純物からなるチタン銅合金において、プレス加工後に時効処理が行われ、上記時効処理後に硬さが345Hv以上となる加工組織を有するものである。
【0049】
また、本発明の第8の特徴は、Tiを2.0〜3.5質量%含み、更にZn0.05質量%以上2.0質量%未満、Cr、Zr、Fe、Ni、Sn、In、Mn、P及びSiの1種以上を総量で0.01質量%以上3.0質量%未満含有し、残部銅及び不可避的不純物からなるチタン銅合金において、プレス加工後に時効処理が行われ、上記時効処理後に硬さが345Hv以上となる加工組織を有するものである。
【0050】
上記第7、第8の特徴を有する高強度チタン銅は、600℃以上の温度で熱間圧延した後、続いて加工度95%以上で冷間圧延して製造することができ、そのような製造方法も本発明の特徴である。また、第7、第8の特徴を有する高強度チタン銅は、フォーク型コネクターに特に好適であり、そのようなフォーク型コネクターも本発明の特徴である。
【0051】
【実施例】
[第1実施例]
本発明を特に好ましい合金組成範囲を示す第1実施例により更に具体的に説明する。まず、電気銅あるいは無酸素銅を原料とし、高周波溶解炉にて表1(実施例)及び表2(比較例)に示す各種組成の銅合金インゴット(50mm×100mm×200mm)を溶製した。次に、これら各インゴットを850〜950℃の温度で1時間加熱後、熱間圧延を行い8mm厚さの板を得た。なお、その際の熱間圧延後の材料温度は650℃以上とし、熱間圧延後は材料を水冷した。次いで、板の表面の酸化層を研磨して除去後、圧延と再結晶焼鈍を繰り返し、適宜酸洗を行った後、表1、2の条件にて再結晶焼鈍(溶体化処理)を行った後、冷間圧延、時効処理を行い、0.2mm厚さの材料を得た。なお、再結晶焼鈍後の冷却は熱処理後水中に投入することにより行った。この時の冷却速度は200℃/秒以上であることを、材料表面に熱電対を取り付けることにより確認した。また、表中には、α−(α+CuTi)境界線の温度を前述した簡略式(y=50x+650)にて求めた値を付記する。表1に示すように、本発明ではα−(α+CuTi)境界線以下であって50℃以内の温度で再結晶焼鈍を行った。
【0052】
【表1】
Figure 0004001491
【0053】
【表2】
Figure 0004001491
【0054】
上記一連の処理を施すことにより得られた材料から各種の試験片を採取して特性試験を行った。まず、ばね性及び強度を評価する尺度として引張試験を行うことによって、0.2%耐力、引張強さ及び伸びをJISZ2201及びZ2241に従って測定した。次に、曲げ加工性については10mm×100mmの寸法の試験片を圧延方向と直角に採取し、W曲げ試験(JIS H 3110)を各種曲げ半径で行い、日本伸銅協会技術標準JBTA T307:1999による評価基準でランクC以上の良好な曲げ部外観が得られる、割れの発生しない最小の曲げ半径比(r/t:r;曲げ半径、t;試験片厚さ(板厚))を、曲げ部を光学顕微鏡により観察して求めた。この評価基準はランクA:しわ無し、ランクB:しわ小、ランクC:しわ大、ランクD:割れ小、ランクE:割れ大の5ランクに分けられ、Cランクの結果が得られた曲げ半径比より大きな曲げ半径比で曲げ試験を行った場合は、同等若しくはより良好なA〜Cの外観が得られる。なお、W曲げ試験の曲げ軸は、曲げ特性が劣る 圧延方向と平行方向(Bad Way)により評価した。また、曲げ半径は、曲げ中心から試験片の内周面までの距離とし、種々の曲げ半径を有する治具を用いて評価した。
【0055】
表3(実施例)および4(比較例)に上記特性試験の結果を示す。本発明の実施例No.1〜24では、bで表示される0.2%耐力と、aで表示される割れの発生しない曲げ半径比(曲げ半径/板厚)がa≦0.05×b−40となり、高強度と曲げ加工性とがバランスされた近年の要求に応えるチタン銅合金(評価:良好)を得ることができた。これに対して、比較例No.25〜39は、以下に説明するように、本発明の要件を満たしていないため、0.2%耐力に対して、曲げ加工性が悪い等の問題が発生した。
【0056】
No.25,26ではTi含有量が低いため、0.2%耐力が800N/mm以上の高強度が得られない。No.27,28では、強度が本発明の実施例の合金より低く、曲げ半径比も大きく曲げ加工性が悪い。これは、Ti含有量が多すぎるために、強度向上に寄与しない粒界への析出が多く発生したため、引張試験、曲げ試験の際に、粒界への析出物を起点にクラックが発生したためと考えられる。
【0057】
No.29では、Zn量が多すぎる例、No.30は添加した副成分の総量が多すぎる例であり、これらはいずれも導電率が低く、曲げ加工性も悪い。No.31,32は再結晶温度が高すぎる例であるが、20μm以下の平均結晶粒径が得られず、高い0.2%耐力が得られなかった。また、本発明例における同レベルの0.2%耐力の合金例と比較すると曲げ半径比が大きく、曲げ加工性が悪い。なお、No.31は混粒組織であった。そのため、No.31の平均結晶粒径は25μmとNo.32より小さいが、曲げ半径比が3.0〜5.0の範囲でばらついた。なお、表4にはその最大値を記載した。
【0058】
No.33,34は冷間圧延の加工度が高すぎる例であるが、時効処理時間を他の例に比べて短くすることにより、高い0.2%耐力は得られたが、曲げ加工性が悪い。No.35は時効処理温度が低い例であるが、温度が低いため、時効処理が不充分で強度が低い。No.36は時効処理時間が長すぎる例であり、過時効状態となり、0.2%耐力が低下した。
【0059】
No.37は時効処理温度が高すぎ、時効処理時間が短すぎる例であるが、時効処理温度が高すぎるため、Tiの固溶量が多く、しかも時効処理温度が短いため、十分な0.2%耐力が得られなかった。No.38は時効処理時間が短い例であり、時効が不充分なため0.2%耐力が低い。No.39は時効処理温度が低い例であり、50時間という長い時効処理時間でも高い0.2%耐力が得られない。
【0060】
以上のように、本発明の合金例では、適正な組成において、α−(α+CuTi)境界線以下の温度にて再結晶焼鈍(溶体化処理)を行い、その後の冷間圧延、時効処理を適正な条件で行うことにより、0.2%耐力と曲げ半径比の良好な関係が得られ、曲げ加工性を損なわず、高強度のチタン銅合金が得られる。これに対して、比較例の合金はいずれも本発明の合金に比べて、0.2%耐力と曲げ半径比の良好な関係が得られず、バランスの良い材料が得られなかった。
【0061】
【表3】
Figure 0004001491
【0062】
【表4】
Figure 0004001491
【0063】
[第2実施例]
最終再結晶焼鈍を表5に示す条件で行った以外は第1実施例のNo.2およびNo.10と同じ条件で冷間圧延までの工程を行ったものをプレス加工した。このプレス加工した試験片に対して実施例1と同じ条件でW曲げ試験を行った後、時効処理を施した。時効処理は、No.2に対しては400℃で6時間、No.10に対しては380℃で6時間行った。時効処理を行う前と後で試験片の各種特性を第1実施例と同じ方法で調査し、その結果を表5に併記した。表5から明かなように、平均結晶粒径が5〜15μmの場合には、曲げ半径比(r/t)がゼロであり、極めて優れた曲げ加工性を示すことが確認された。また、それらの試験片は、時効処理後の硬さが310Hv以上であり、引張強度も1000MPa以上であった。
【0064】
【表5】
Figure 0004001491
【0065】
[第3実施例]
電気銅或いは無酸素銅及び添加元素の金属塊若しくは母合金を原料とし、高周波溶解炉にて表6(実施例)及び表7(比較例)に示す各種組成の銅合金インゴットを溶製した。次に、これらのインゴット(形状:50mmt×100mmw×150mml;重量約7000g)の押湯部を切断し、表層を除去後、850℃で1時間以上加熱した後、材料温度を600℃以上に保持して厚さ8mmまで熱間圧延を行い、水冷した。なお、熱間圧延時の材料温度は、予め温度補正された2色式パイロメーターによって測定した。その後、表面の酸化スケールを片面約0.4mm厚さ機械研磨することによって除去した後、板厚0.4mm未満(加工度95%以上)の所定の板厚まで冷間加工し、アセトン等の有機溶剤で材料表面に付着した圧延油を除去した後、真空焼鈍炉を用いて所定の条件で時効処理を施し、供試材を作製した。
【0066】
【表6】
Figure 0004001491
【0067】
【表7】
Figure 0004001491
【0068】
そして、上記製造工程により得られた板材から、各種の試験片を採取して材料試験に供した。まず、強度を評価する尺度としてJIS Z 2241により、引張試験を行い、0.2%耐力、引張強さ及び伸びをの評価を行なった。なお試験片は、JIS Z 2201により13B号試験片を使用した。 導電率はJIS H 0505に従って測定した。測定結果を表8、9に示す。
【0069】
【表8】
Figure 0004001491
【0070】
【表9】
Figure 0004001491
【0071】
表8の本発明例は、何れもフォーク型コネクターとして要求される1200MPa以上の引張強さを有し、No.4〜6、8、15、20は1300MPa以上の引張強さを有する。しかしながら、表9の比較の例において、No.26、27、30、31は、熱間若しくは冷間圧延途中で割れが発生し、製造性が悪く、特性の評価ができなかった。 すなわち、No.26、27はTi量が多すぎるため、No.26は熱間圧延にて割れが発生し、35mmの厚さまで熱間圧延を行なったが、その後の加工は行わなかった。No.27は熱間圧延時には割れの発生はなかったが、その後の冷間圧延にて耳割れが発生した。また、No.30、31は、熱間圧延時の温度が低く、夫々25mm、15mm厚さの段階で600℃以下の温度となり、熱間圧延後の冷間圧延にて耳割れが発生した。
【0072】
No.24はTi量が少ないため、強度が低い。 No.25も同様にTi量が少なく、Cu−Cr−Zr系銅合金の例であり、導電率は高いものの、強度が低い。No.28、29はZn等の含有量が多いため、導電率が低く、No.29は冷間圧延中に耳割れた発生した。
【0073】
No.32、33は冷間圧延の加工度のが低すぎるため、強度が低い。No.34、38は時効温度が低いため、No.38にて50時間と長い時効時間を設けても所望の導電率に達しない。 No.37は時効時間が短いため、所望の導電率に達しない。No.35、36は時効温度が高い、若しくは時効時間が長い例であり、時効処理前の冷間圧延の加工度が高いこともあり、過時効状態となり、高い強度が得られない。
【0074】
No.39、40は本発明No.3、4の合金にて、冷間圧延までは同一の製造工程で、時効処理を行わないことだけが異なる例だが、高加工度の冷間圧延により、1200MPa以上の強度は得られるが、導電率が低く、フォーク型コネクターとしては、使用できない。
【0075】
以上のように、本発明のチタン銅は、本発明の製造方法によってのみ得られるもので、従来にない1200MPa以上の引張強さ、10%IACS以上の導電率を有するチタン銅合金である。また、本発明の高強度チタン銅を用いたフォーク型コネクターは、ベリリウム銅を使用した場合に匹敵する接圧を有する。
【0076】
[第4実施例]
第3実施例の表6の冷間圧延までの工程を行ったものから表10に記載のものを選定してプレス加工した。このプレス加工した試験片に対して第3実施例と同じ条件で時効処理を施した。時効処理を行う前と後で試験片の各種特性を第3実施例と同じ方法で調査し、その結果を表10に併記した。また、時効処理後の試験片の熱伸縮率を測定し、その結果を表10に併記した。なお、熱伸縮率は、圧延平行方向を長手方向として100×10mmの試料を切り出した後、所定位置のマーキング間の距離を3次元座標測定装置を用いて測定し、時効処理後に再度マーキング間距離を測定し、加熱前後の寸法の測定値から寸法の変化率を測定した。また、比較のために、表7に示すものとベリリウム銅を用いて上記と同じ条件で試験片を作成し、上記と同じ方法で各種特性を測定した。その結果を表10に併記した。
【0077】
【表10】
Figure 0004001491
【0078】
表10から判るように、第4実施例であるNo.1〜10は、時効処理後の強度がベリリウム銅(No.16)に匹敵するとともに、高い導電率を有している。これに対して、No.11はチタンの含有率が2.0質量%未満であるため引張強度が低い。また、No.16は、熱伸縮率が極端に大きくなった。
【0079】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、曲げ加工性を損なわずに、チタン銅合金の高強度化が図れ、電子部品用の端子・コネクター用として、要求されていた特性改善が図れ、信頼性の高い端子・コネクター用の素材を供給することが可能となる。また、本発明例は、チタン銅合金について引張強さが1200MPa以上、導電率が10%IACS以上と、ベリリウム銅に匹敵する高強度化が図れ、電子部品用の端子・コネクター用、特にFPCのフォーク型のコネクターに適した銅合金に改善され、ベリリウム銅合金の代替銅合金として十分対応できる可能性が見出された。 また、端子・コネクターのコンタクトに加工前、又は加工後にめっき処理されても強度は殆ど劣化せず、本発明の効果は発揮される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Ti−Cu平衡状態図である。

Claims (9)

  1. Tiを2.0質量%以上3.5質量%以下を含有し、残部が銅及び不可避不純物からなるチタン銅合金において、平均結晶粒径が20μm以下、かつbで表示される0.2%耐力が800N/mm2以上で圧延方向に対し直角方向にW曲げ試験を行った際、aで表示される割れの発生しない曲げ半径比(曲げ半径/板厚)が、a≦0.05×b−40となる高強度チタン銅合金。
  2. Tiを2.0質量%以上3.5質量%以下を含有し、更にZn、Cr、Zr、Fe、Ni、Sn、In、Mn、P及びSiの1種以上を総量で0.01質量%以上3.0質量%以下含有し、残部が銅及び不可避不純物からなるチタン銅合金において、平均結晶粒径が20μm以下、かつbで表示される0.2%耐力が800N/mm2以上で圧延方向に対し直角方向にW曲げ試験を行った際、aで表示される割れの発生しない曲げ半径比(曲げ半径/板厚)が、a≦0.05×b−40となる高強度チタン銅合金。
  3. 平均結晶粒径が3〜20μmであることを特徴とする請求項1または2に記載の高強度チタン銅合金。
  4. 最終再結晶焼鈍を、固溶−析出の境界であるα相および(α+Cu3Ti)相の境界線以下の温度であり含有するTiの一部が析出する温度であって、前記境界線の温度Tが下記式(1)で近似したときに、(T−60)℃〜(T−10)℃の温度範囲で行って得られたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高強度チタン銅合金。
    Figure 0004001491
    xはTi濃度(mass%)
  5. 最終再結晶焼鈍を、固溶−析出の境界であるα相および(α+Cu3Ti)相の境界線の温度T以下の温度であり含有するTiの一部が析出するする温度であって、前記境界線の温度Tが下記式(1)で近似したときに、(T−60)℃〜(T−10)℃の温度範囲で行い、その後加工度5〜70%の冷間加工を施し、更に300℃以上600℃以下の温度で1時間以上15時間以下時効処理を施すことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高強度チタン銅合金の製造方法。
    Figure 0004001491
    xはTi濃度(mass%)
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の高強度チタン銅を用いた端子・コネクター。
  7. Tiを2.0質量%以上3.5質量%以下含有し、残部が銅及び不可避不純物からなり、プレス加工後に時効処理が行われるチタン銅合金において、晶粒径が5〜15μmであり、曲げ半径が0で圧延方向に対し直角方向にW曲げ試験を行った際に割れが発生せず、300℃以上600℃以下の温度で1時間以上15時間以下時効処理を加えると硬さが300Hv以上となる性質を有することを特徴とする高強度チタン銅合金。
  8. Tiを2.0質量%以上3.5質量%以下含有し、更にZn、Cr、Zr、Fe、Ni、Sn、In、Mn、P及びSiの1種以上を総量で0.01質量%以上3.0質量%以下含有し、残部が銅及び不可避不純物からなり、プレス加工後に時効処理が行われるチタン銅合金において、結晶粒径が5〜15μmであり、曲げ半径が0で圧延方向に対し直角方向にW曲げ試験を行った際に割れが発生せず、300℃以上600℃以下の温度で1時間以上15時間以下時効処理を加えると硬さが300Hv以上となる性質を有することを特徴とする高強度チタン銅合金。
  9. 請求項7または8に記載の高強度チタン銅を用いた端子・コネクター。
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