JP5685734B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子、照明器具、及び食品保管装置 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子、照明器具、及び食品保管装置 Download PDF

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Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子、この有機エレクトロルミネッセンス素子を備える照明器具、及びこの照明器具を備える食品保管装置に関する。
有機エレクトロルミネッセンス素子(有機発光ダイオード)は、低電圧で高輝度の面発光が可能であること等の理由により、フラットパネルディスプレイ、液晶表示装置用バックライト、照明用の光源などとして活用可能な次世代光源として注目を集めている。
従来の有機エレクトロルミネッセンス素子の一例が、特許文献1に開示されている。この有機エレクトロルミネッセンス素子では、発光層を、第1の蛍光材料が添加された正孔輸送性材料を母材とする正孔輸送性発光層と、第2の蛍光材料が添加された電子輸送性材料を母材とする電子輸送性発光層とにより構成し、正孔輸送性発光層と電子輸送性発光層とを同時に発光させてこれら両発光層からの発光色を混色として認識させるようにし、正孔輸送性発光層から発光される発光色の発光スペクトルと電子輸送性発光層から発光される発光色の発光スペクトルとが略同じになるように、正孔輸送性発光層及び電子輸送性発光層の第1の蛍光材料、第2の蛍光材料は共に2種類以上の蛍光材料よりなり、該2種類以上の蛍光材料の固体状態の蛍光ピーク波長が異なっている。この特許文献1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子は、印加電流量の変化や発光時間の経過に伴う発光色の色度変化を防止する観点から構成されている。
日本国特許第3589960号公報
しかし、本発明者らは、有機エレクトロルミネッセンス素子の照明用途への適用にあたり、照明器具が使用される温度環境と照明される対象との関係という、従来十分に検討されていなかった事項に着目した新たな検討をおこなった。
例えば、食品や調理済み料理などを店頭で展示したり保管したりするために、細菌の繁殖を抑え食中毒を防止する目的で、60℃近くの高温で食品等を保管可能なショーケースなどの食品保管装置が使用される。この食品保管装置における照明には、商品である食品等の見映えをよくするために、特定の特殊演色評価数が高い光源が用いられる。一方、室内照明のためには、平均演色評価数が高い光源が好まれる。
従来、このような光源として、主として蛍光灯が用いられていた。しかし、蛍光灯は発光スペクトルの幅が狭く様々な演色性を得るのが困難なため、食品保管装置における照明用途と室内照明用途には、演色性能の異なる蛍光灯がそれぞれ開発されていた。そのため、光源の低コスト化が難しいという問題があった。更に、蛍光灯の平均演色評価数の値は80程度と低いため、食品保管装置における照明用途や室内照明用途において、照明対象の見映えを十分に向上することもできなかった。
そこで、高温下における食品の見映えを高め得る演色性と、室温下における高い平均演色評価数とを兼ね備える有機エレクトロルミネッセンス素子が得られれば、照明の目的に応じて有機エレクトロルミネッセンス素子の設計を変更する必要がなくなる。そうすると、汎用性の高い有機エレクトロルミネッセンス素子が低コストで得られるようになる。このような観点から設計された有機エレクトロルミネッセンス素子は、未だ存在していなかった。
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、高温下における食品照明と、室温下における室内照明とに、共に適する有機エレクトロルミネッセンス素子及び照明器具、並びに前記照明器具を備え、高温下で食品を保管しながらこの食品の見映えをよくすることができる食品保管装置を提供することを目的とする。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、5℃以上60℃以下の素子温度範囲において、平均演色評価数Raが最大値となる素子温度が、15℃以上35℃以下の範囲にあり、5℃以上60℃以下の素子温度範囲における、演色評価数R8、特殊演色評価数R9、特殊演色評価数R14、及び特殊演色評価数R15のうち少なくとも一つが最大値となる素子温度が、前記平均演色評価数Raが最大値となる素子温度よりも高い温度範囲にある特性を有する。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子においては、前記平均演色評価数Raが最大値となる素子温度以上60℃以下の素子温度範囲において、演色評価数R8、特殊演色評価数R9、特殊演色評価数R14、及び特殊演色評価数R15のうち少なくとも一つが、素子温度の上昇に従って増加することが好ましい。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子においては、前記平均演色評価数Raが最大値となる素子温度以上60℃以下の素子温度の範囲において、演色評価数R8と特殊演色評価数R9のうち少なくとも一方が、素子温度の上昇に従って増加することが好ましい。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子においては、素子温度60℃での特殊演色評価数R9の値が、素子温度25℃の場合の特殊演色評価数R9の値の1.2倍以上1.9倍以下であることが好ましい。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子においては、5℃以上60℃以下の素子温度範囲における、特殊演色評価数R14と特殊演色評価数R15のうち少なくとも一方が最大値となる素子温度が、40℃以上60℃以下の範囲にあることが好ましい。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子においては、素子温度25℃の場合よりも素子温度60℃の場合の方が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する複数の層の積層方向と一致する方向の発光色の、u’v’色度図(CIE 1976 UCS色度図)のu’の値がより増加すると共にv’の値がより減少することが好ましい。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子においては、素子温度25℃の場合よりも素子温度60℃の場合の方が、発光色の色温度が、低いことが好ましい。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子においては、素子温度25℃の場合よりも素子温度60℃の場合の方が、電流密度が同一の値となるために要する印加電圧が、低いことが好ましい。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子においては、0℃以上60℃以下の素子温度範囲において、特殊演色評価数R8、特殊演色評価数R9、特殊演色評価数R14、特殊演色評価数R15のうち少なくとも一つの最大値が、素子温度10℃以上30℃以下の範囲にあることも好ましい。
更に、0℃以上30℃以下の素子温度範囲において、0℃以上30℃以下の素子温度範囲において、平均演色評価数Ra、特殊演色評価数R8、特殊演色評価数R14、特殊演色評価数R15のうち少なくとも一つが、その最大値とその最小値との比が、0.8以上であり、且つその値が70以上である条件を満たすことが、好ましい。
更に、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子においては、0℃以上30℃以下の素子温度範囲において、特殊演色評価数R9の最大値とその最小値との比が、0.75以上であり、且つその値が40以上であることが、好ましい。
更に、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子においては、素子温度25℃の場合よりも素子温度0℃の場合の方が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する複数の層の積層方向と一致する方向の発光色の、u’v’色度図のu’及びv’の値が、より大きいことが、好ましい。
また、本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子においては、素子温度25℃の場合よりも素子温度0℃の場合の方が、発光色の色温度が低いことが、好ましい。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、緑色域の光を発する発光層を複数備え、前記複数の発光層のうちの少なくとも一つが、燐光発光性のドーパントを含有することが、好ましい。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、赤色域の光を発する赤色域発光層と、この赤色域発光層に積層し、燐光発光性のドーパントを含有し、緑色域の光を発する緑色域発光層とを備え、前記赤色域発光層の厚みが、前記緑色域発光層の厚みよりも小さいことが、好ましい。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子において、前記緑色域発光層の厚みに対する、前記赤色域発光層の厚みの比率が、2〜15%の範囲であることが、好ましい。
本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子は、第一の発光ユニット、第二の発光ユニット、及び前記第一の発光ユニットと前記第二の発光ユニットとの間に介在する中間層を備えるマルチユニット素子であることが好ましい。
本発明に係る照明器具は、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を備える。
本発明に係る食品保管装置は、食品を保管するように構成されている保管器具と、前記保管器具内を照らすように構成されている前記照明器具とを備える。
本発明によれば、高温下における食品照明と、室温下における室内照明とに、共に適する有機エレクトロルミネッセンス素子及び照明器具が得られる。
また、本発明によれば、前記照明器具を備え、高温下で食品を保管しながらこの食品の見映えをよくすることができる食品保管装置が得られる。
本発明の一実施形態における、有機エレクトロルミネッセンス素子の層構造の概略を示す断面図である。 緑色の燐光発光性のドーパントと蛍光発光性のドーパントの発光効率の温度依存性の一例を示すグラフである。 高温下における緑色域の発光強度の低下が発生する原因として推定されているメカニズムを示す推定メカニズム図である。 本発明の一実施形態における、照明器具を示す断面図である。 前記照明器具の分解斜視図である。 前記照明器具におけるユニットを示す分解斜視図である。 本発明の一実施形態における、食品保管装置を示す斜視図である。 蛍光発光性の発光層の発光強度と、燐光発光性の発光層の発光強度の、素子温度を変更した場合の相対値の例を示すグラフである。 本発明の実施例1における有機エレクトロルミネッセンス素子の、等色関数Xのピーク位置450nm、等色関数Yのピーク位置560nm、等色関数Zのピーク位置600nm、及びピーク間の谷間位置500nmの波長での、発光強度の温度変化を示すグラフである。 前記実施例1における有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルにおける、青、緑、及び赤のピーク強度の温度依存性を示すグラフである。 前記実施例1における有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルにおける緑のピーク波長強度と平均演色評価数Raとの関係を示すグラフである。 本発明の実施例2における有機エレクトロルミネッセンス素子の、等色関数Xのピーク位置450nm、等色関数Yのピーク位置560nm、等色関数Zのピーク位置616nm、及びピーク間の谷間位置500nmの波長での、発光強度の温度変化を示すグラフである。 前記実施例3における有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルにおける、青、緑、及び赤のピーク強度の温度依存性を示すグラフである。 本発明の実施例2における有機エレクトロルミネッセンス素子の、等色関数Xのピーク位置450nm、等色関数Yのピーク位置560nm、等色関数Zのピーク位置616nm、及びピーク間の谷間位置500nmの波長での、発光強度の温度変化を示すグラフである。 前記実施例3における有機エレクトロルミネッセンス素子の発光スペクトルにおける、青、緑、及び赤のピーク強度の温度依存性を示すグラフである。
本実施形態における有機エレクトロルミネッセンス素子(有機発光ダイオード)の構造の一例を、図1に概略的に示す。この有機エレクトロルミネッセンス素子1は、第一の発光ユニット11、第二の発光ユニット12、並びに第一の発光ユニット11と第二の発光ユニット12との間に介在する中間層13を備えるマルチユニット素子である。
この有機エレクトロルミネッセンス素子1は、基板14、第一の電極15、第一の発光ユニット11、中間層13、第二の発光ユニット12、及び第二の電極16が、この順番に積層している構造を有する。
基板14は光透過性を有することが好ましい。基板14は無色透明であっても、多少着色されていてもよい。基板14は磨りガラス状であってもよい。
基板14の材質としては、ソーダライムガラス、無アルカリガラスなどの透明ガラス;ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂等のプラスチックなどが挙げられる。基板14の形状はフィルム状でも板状でもよい。
基板14が光拡散効果を有することも好ましい。このような基板14の構造としては、母相と、この母相中に分散している母相とは屈折率の異なる粒子、粉体、気泡等とを備える構造、表面に光拡散性向上のための形状加工が施されている構造、光拡散性向上のために基板表面に光散乱性フィルムやマイクロレンズフィルムを積層した構造などが、挙げられる。
有機エレクトロルミネッセンス素子1から発せられる光が基板14を透過する必要がない場合には、基板14は光透過性を有しなくてもよい。この場合、素子の発光特性、寿命特性等を損なわない限り、基板14の材質は特に制限されない。但し、素子の温度上昇を抑制する観点からは、基板14が、アルミニウム製の金属フォイルなど熱伝導性の高い材質から形成されることが好ましい。
第一の電極15は陽極として機能する。有機エレクトロルミネッセンス素子1における陽極は、発光層2中にホールを注入するための電極である。第一の電極15は、仕事関数の大きい金属、合金、電気伝導性化合物、これらの混合物等の材料から形成されることが好ましい。特に第一の電極15が、仕事関数が4eV以上の材料から形成されることが好ましい。すなわち第一の電極15の仕事関数が4eV以上となることが好ましい。このような第一の電極15を形成するための材料としては、例えば、ITO(インジウム−スズ酸化物)、SnO、ZnO、IZO(インジウム−亜鉛酸化物)等の金属酸化物等が用いられる。第一の電極15は、これらの材料を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法、塗布等の適宜の方法により形成され得る。有機エレクトロルミネッセンス素子1から発せられる光が第一の電極15を透過する場合には、第一の電極15の光透過率が70%以上であることが好ましく、90%以上であることが更に好ましい。さらに、第一の電極15のシート抵抗は数百Ω/□以下であることが好ましく、特に100Ω/□以下であることが好ましい。第一の電極15の厚みは、第一の電極15の光透過率、シート抵抗等の特性が所望の程度となるように適宜設定される。第一の電極15の好ましい厚みは第一の電極15を構成する材料によって異なるが、第一の電極15の厚みは500nm以下、好ましくは10〜200nmの範囲で設定されるのがよい。
第一の電極15から発光層2へホールを低電圧で注入するために、第一の電極15上にホール注入層が積層していることが好ましい。ホール注入層を形成するための材料としては、例えば、PEDOT/PSS、ポリアニリン等の導電性高分子;任意のアクセプタ等でドープした導電性高分子;カーボンナノチューブ、CuPc(銅フタロシアニン)、MTDATA[4,4',4”-Tris(3-methyl-phenylphenylamino)tri-phenylamine]、TiOPC(チタニルフタロシアニン)、アモルファスカーボンなどの、導電性と光透過性とを併せ持つ材料が挙げられる。ホール注入層が導電性高分子から形成される場合には、例えば導電性高分子がインク状に加工されてから、塗布法、印刷法などの手法で成膜されることでホール注入層が形成される。ホール注入層が低分子有機材料や無機物から形成される場合には、例えば真空蒸着法などによりホール注入層が形成される。
第二の電極16は陰極として機能する。有機エレクトロルミネッセンス素子1における陰極は、発光層2中に電子を注入するための電極である。第二の電極16は、仕事関数の小さい金属、合金、電気伝導性化合物、これらの混合物などの材料から形成されることが好ましい。特に第二の電極16が、仕事関数が5eV以下の材料から形成されることが好ましい。すなわち第二の電極16の仕事関数が5eV以下となることが好ましい。このような第二の電極16を形成するための材料としては、例えば、Al、Ag、MgAgなどが挙げられる。Al/Al混合物などからも第二の電極16が形成され得る。有機エレクトロルミネッセンス素子1から発せられる光が第二の電極16を透過する場合には、第二の電極16が複数の層から成り、その層の一部がITO、IZOなどに代表される透明な導電性材料から形成されることも好ましい。第二の電極16は、これらの材料を用いて、真空蒸着法、スパッタリング法等の適宜の方法により形成され得る。有機エレクトロルミネッセンス素子1から発せられる光が第一の電極15を透過する場合には、第二の電極16の光透過率が10%以下であることが好ましい。但し、有機エレクトロルミネッセンス素子1から発せられる光が第二の電極16を透過する場合には、第二の電極16の光透過率が70%以上であることが好ましい。第二の電極16の厚みは、第二の電極16の光透過率、シート抵抗等の特性が所望の程度となるように適宜設定される。第二の電極16の好ましい厚みは第二の電極16を構成する材料によって異なるが、第二の電極16の厚みは500nm以下、好ましくは20〜200nmの範囲で設定されるのがよい。
第二の電極16から発光層2へ電子を低電圧で注入されるために、第二の電極16上に電子注入層が積層していることが好ましい。電子注入層を形成するための材料としては、アルカリ金属、アルカリ金属のハロゲン化物、アルカリ金属の酸化物、アルカリ金属の炭酸化物、アルカリ土類金属、これらの金属を含む合金などが挙げられる。これらの材料の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム、フッ化リチウム、LiO、LiCO、マグネシウム、MgO、マグネシウム−インジウム混合物、アルミニウム−リチウム合金、Al/LiF混合物等が挙げられる。電子注入層は、リチウム、ナトリウム、セシウム、カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属などがドープされている有機物層などからも形成され得る。
第一の発光ユニット11は、発光層2を備える。第一の発光ユニット11は必要に応じて更にホール輸送層3、電子輸送層4等を備えてもよい。第二の発光ユニット12も、発光層2を備える。第二の発光ユニット12も、必要に応じて更にホール輸送層3、電子輸送層4等を備えてもよい。各発光ユニットは、例えばホール輸送層3/一以上の発光層2/電子輸送層4という、積層構造を有する。
本態様では、第一の発光ユニット11は、発光層2として、青色域発光層21と蛍光発光を示す緑色域発光層22(第一の緑色域発光層22)とを備える。青色域発光層21は青色光を発する発光層2であり、第一の緑色域発光層22は緑色光を発する発光層2である。一方、第二の発光ユニット12は、発光層2として、赤色域発光層23と燐光発光を示す緑色域発光層24(第二の緑色域発光層24)とを備える。赤色域発光層23は赤色光を発する発光層2であり、第二の緑色域発光層24は緑色光を発する発光層2である。
各発光層2は、発光性有機物質(ドーパント)がドープされた有機材料(ホスト材料)から形成され得る。
ホスト材料としては、電子輸送性の材料、ホール輸送性の材料、電子輸送性とホール輸送性とを併せ持つ材料の、いずれも使用され得る。ホスト材料として、電子輸送性の材料とホール輸送性の材料とが併用されてもよい。発光層2内にホスト材料の濃度勾配が形成されてもよい。例えば発光層2内で第一の電極15に近いほどホール輸送性の材料の濃度が高く、第二の電極16に近いほど電子輸送性の材料の濃度が高くなるように、発光層2が形成されても良い。ホスト材料として使用される電子輸送性の材料及びホール輸送性の材料は、特に制限されない。例えばホール輸送性の材料は後述するホール輸送層3を構成し得る材料から適宜選択され得る。また、電子輸送性の材料は後述する電子輸送層4を構成し得る材料から、適宜選択され得る。
第一の緑色域発光層22を構成するホスト材料としては、Alq(トリス(8−オキソキノリン)アルミニウム(III))、ADN、BDAFなどが挙げられる。第一の緑色域発光層22における蛍光発光性のドーパントとしては、C545T(クマリンC545T;10−2−(ベンゾチアゾリル)−2,3,6,7−テトラヒドロ−1,1,7,7−テトラメチル−1H,5H,11H−(1)ベンゾピロピラノ(6,7,−8−ij)キノリジン−11−オン))、DMQA、coumarin6、rubreneなどが挙げられる。第一の緑色域発光層22におけるドーパントの濃度は1〜20質量%の範囲であることが好ましい。
第二の緑色域発光層24を構成するホスト材料としては、CBP、CzTT、TCTA、mCP、CDBPなどが挙げられる。第二の緑色域発光層24における燐光発光性のドーパントとしては、Ir(ppy)(ファクトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム)、Ir(ppy)(acac)、Ir(mppy)などが挙げられる。第二の緑色域発光層24におけるドーパントの濃度は1〜40質量%の範囲であることが好ましい。
赤色域発光層23を構成するホスト材料としては、CBP(4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル)、CzTT、TCTA、mCP、CDBPなどが挙げられる。赤色域発光層23におけるドーパントとしては、BtpIr(acac)(ビス−(3−(2−(2−ピリジル)ベンゾチエニル)モノ−アセチルアセトネート)イリジウム(III)))、BtIr(acac)、PtOEPなどが挙げられる。赤色域発光層23におけるドーパントの濃度は1〜40質量%の範囲であることが好ましい。
青色域発光層21を構成するホスト材料としては、TBADN(2−t−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン)、ADN、BDAFなどが挙げられる。青色域発光層21におけるドーパントとしては、TBP(1−tert−ブチル−ペリレン)、BCzVBi、peryleneなどが挙げられる。電荷移動補助ドーパントとして、NPD(4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル)、TPD(N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン)、Spiro−TADなども用いられ得る。青色域発光層21におけるドーパントの濃度は1〜30質量%の範囲であることが好ましい。
各発光層2は、真空蒸着、転写等の乾式プロセスや、スピンコート、スプレーコート、ダイコート、グラビア印刷等の湿式プロセスなど、適宜の手法により形成され得る。
ホール輸送層3を構成する材料(ホール輸送性材料)は、ホール輸送性を有する化合物の群から適宜選定される。ホール輸送性材料は、電子供与性を有し、且つ、電子供与によりラジカルカチオン化した際にも安定である化合物であることが好ましい。ホール輸送性材料としては、例えば、ポリアニリン、4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、2−TNATA、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、スピロ−NPD、スピロ−TPD、スピロ−TAD、TNBなどを代表例とする、トリアリールアミン系化合物、カルバゾール基を含むアミン化合物、フルオレン誘導体を含むアミン化合物、スターバーストアミン類(m−MTDATA)、TDATA系材料として1−TMATA、2−TNATA、p−PMTDATA、TFATAなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、一般に知られる任意のホール輸送材料が使用される。ホール輸送層3は蒸着法などの適宜の方法で形成され得る。
電子輸送層4を形成するための材料(電子輸送性材料)は、電子を輸送する能力を有し、第二の電極16からの電子の注入を受け得ると共に発光層2に対して優れた電子注入効果を発揮し、さらに電子輸送層4へのホールの移動を阻害し、かつ薄膜形成能力の優れた化合物であることが好ましい。電子輸送性材料として、Alq3、オキサジアゾール誘導体、スターバーストオキサジアゾール、トリアゾール誘導体、フェニルキノキサリン誘導体、シロール誘導体などが挙げられる。電子輸送性材料の具体例として、フルオレン、バソフェナントロリン、バソクプロイン、アントラキノジメタン、ジフェノキノン、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、アントラキノジメタン、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)等やそれらの化合物、金属錯体化合物、含窒素五員環誘導体などが挙げられる。金属錯体化合物としては、具体的には、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリ(2−メチル−8−ヒドロキシキノリナート)アルミニウム、トリス(8−ヒドロキシキノリナート)ガリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)ベリリウム、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナート)亜鉛、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(o−クレゾラート)ガリウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)(1−ナフトラート)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリナート)−4−フェニルフェノラート等が挙げられるが、これらに限定されない。含窒素五員環誘導体としては、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール誘導体などが好ましく、具体的には、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−チアゾール、2,5−ビス(1−フェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−(4’−tert−ブチルフェニル)−5−(4”−ビフェニル)1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、1,4−ビス[2−(5−フェニルチアジアゾリル)]ベンゼン、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−トリアゾール、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等が挙げられるが、これらに限定されない。電子輸送性材料として、ポリマー有機エレクトロルミネッセンス素子1に使用されるポリマー材料も挙げられる。このポリマー材料として、ポリパラフェニレン及びその誘導体、フルオレン及びその誘導体等が挙げられる。電子輸送層4の厚みに特に制限はないが、例えば、10〜300nmの範囲に形成される。電子輸送層4は蒸着法などの適宜の方法で形成され得る。
中間層13は、二つの発光ユニットを電気的に直列接続する機能を果たす。中間層13は透明性が高く、且つ熱的・電気的に安定性が高いことが好ましい。中間層13は、例えば等電位面を形成する層、電荷発生層などから形成され得る。等電位面を形成する層もしくは電荷発生層の材料としては、例えばAg、Au、Al等の金属薄膜;酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化レニウム、酸化タングステン等の金属酸化物;ITO、IZO、AZO、GZO、ATO、SnO2等の透明導電膜;いわゆるn型半導体とp型半導体との積層体;金属薄膜もしくは透明導電膜と、n型半導体及びp型半導体のうちの一方又は双方との積層体;n型半導体とp型半導体の混合物;n型半導体とp型半導体とのうちの一方又は双方と金属との混合物などが挙げられる。n型半導体及びp型半導体としては、特に制限されることなく必要に応じて選定されたものが使用される。n型半導体及びp型半導体は、無機材料、有機材料のうちいずれであっても良い。n型半導体及びp型半導体は、有機材料と金属との混合物;有機材料と金属酸化物との組み合わせ;有機材料と有機系アクセプタ/ドナー材料や無機系アクセプタ/ドナー材料との組み合わせ等であってもよい。中間層13は、BCP:Li、ITO、NPD:MoO、Liq:Alなどからも形成され得る。BCPは2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナンスロリンを示す。例えば、中間層13は、BCP:Liからなる第1層を陽極側に、ITOからなる第2層を陰極側に配置した、二層構成のものにすることができる。中間層13がAlq3/Li2O/HAT−CN6、Alq3/Li2O、Alq3/Li2O/Alq3/HAT−CN6などの層構造を有していることも好ましい。
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1は、5℃以上60℃以下の素子温度範囲において、平均演色評価数Raが最大値となる素子温度が、15℃以上35℃以下の範囲にある特性を有する。室温は通常は20℃(標準の室温と呼ぶ)程度が快適だが、一日の内に変動し、また季節によっても変動する。室内には様々な色彩を有する物があるため、室内照明における演色性は平均演色性で議論するのが適当である。本実施形態のように平均演色評価数Raが最大値となる素子温度が、15℃以上35℃以下の範囲にあると、有機エレクトロルミネッセンス素子1が室内照明用途に適用される場合、室温が低い朝から温度が上がる日中までの間で演色性の絶対的な変動幅が小さくなる。このため有機エレクトロルミネッセンス素子1から発せられる光に照らされる対象物の見映えが良好になる。平均演色評価数Raが最大値となる素子温度は、駆動時には発熱のため室温から高くなることを考慮すると、特に25℃或いはその付近であることが好ましい。
室温で高い平均演色評価数Raを実現するのが、本実施形態の目的の一つであるが、素子温度は前記のとおり発熱のため環境温度より高くなる。例えば、素子温度が環境温度より5℃高い場合で、室温に相当する温度が10℃〜30℃であると、素子温度は15℃〜35℃であれば良い。また、人が快適と感じる温度は20℃程度なので、更に理想的には素子温度は25℃であるのが望ましい。
更に、本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1は、素子温度5℃以上60℃以下の範囲における演色評価数R8(赤みの紫)、特殊演色評価数R9(赤)、特殊演色評価数R14(木の葉)、及び特殊演色評価数R15(日本人の肌色)のうち少なくとも一つが最大値となる素子温度が、平均演色評価数Raが最大値となる素子温度よりも高い温度範囲にある特性を有する。有機エレクトロルミネッセンス素子1がこのような演色特性を有すると、高温下において有機エレクトロルミネッセンス素子1から発せられる光に照らされる食品類(調理済み料理を含む)の見映えが良くなる。
[第一の態様]
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1の第一の態様では、平均演色評価数Raが最大値となる素子温度以上60℃以下の素子温度範囲において、R8(赤みの紫)、特殊演色評価数R9(赤)、特殊演色評価数R14(木の葉)、及び特殊演色評価数R15(日本人の肌色)のうち少なくとも一つが素子温度の上昇に従って増加することが好ましい。有機エレクトロルミネッセンス素子1がこのような演色特性を有すると、高温下において有機エレクトロルミネッセンス素子1から発せられる光に照らされる食品類(調理済み料理を含む)の見映えが、更に良くなる。
有機エレクトロルミネッセンス素子1を光源とする演色評価数及び特殊演色評価数による演色性の評価は、JIS Z8726に基づく。
演色評価数R8(赤みの紫)及び特殊演色評価数R9(赤)は、肉類やトマトなどの赤みを帯びた食品類の見映えに影響を与える。この演色評価数R8(赤みの紫)、及び特殊演色評価数R9(赤)のうち少なくとも一方が最大値となる素子温度が、平均演色評価数Raが最大値となる素子温度よりも高い温度範囲にあると、室温から60℃までの温度範囲において演色評価数R8(赤みの紫)、特殊演色評価数R9(赤)のうち少なくとも一方の値が高くなる。このため高温下において有機エレクトロルミネッセンス素子1から発せられる光に照らされる赤みを帯びた食品類の見映えが良くなる。特に演色評価数R8(赤みの紫)が最大値となる素子温度と、特殊演色評価数R9(赤)が最大値となる素子温度が、共に平均演色評価数Raが最大値となる素子温度よりも高い温度範囲にあることが好ましい。
更に、平均演色評価数Raが最大値となる素子温度以上60℃以下の温度範囲において、演色評価数R8(赤みの紫)、特殊演色評価数R9(赤)のうち少なくとも一方が素子温度の上昇に従って増加すると、高温(60℃程度)で演色評価数R8(赤みの紫)、特殊演色評価数R9(赤)のうち少なくとも一方の値が最も高くなる。このため、赤みを帯びた食品類の見映えが更に向上する。特に演色評価数R8(赤みの紫)と特殊演色評価数R9(赤)とが、共に素子温度の上昇に従って増加することが好ましい。
更に、素子温度60℃での特殊演色評価数R9の値が、素子温度25℃の場合の特殊演色評価数R9の値の1.2倍以上1.9倍以下であることが好ましい。この場合、25℃付近での室内照明の場合には、光に照らされた対象物の赤みが強調され過ぎなくなると共に、高温下では赤みを帯びた食品類の見映えが良好になる。例えば、R9が、素子温度25℃で50程度、素子温度60℃で70程度となることが好ましい。素子温度60℃での特殊演色評価数R9の値が、素子温度25℃の場合の特殊演色評価数R9の値の1.2倍以上であることで、高温下で対象物の赤みが十分に強調される。また、室内照明時の平均演色性が高い場合(特に90以上、好ましくは95以上の場合)、R9があまり低くてもバランスが悪くなるため、室温下での特殊演色評価数R9の値は50程度であることが好ましい。そうすると特殊演色性の最大値は100であるので、高温下での照明時における平均演色評価数Raと特殊演色評価数R9とのバランスをとると共に高温下で対象物の赤みを十分に強調するための素子温度60℃での特殊演色評価数R9は、素子温度25℃の場合の特殊演色評価数R9の値の1.9倍以下であることが好ましい。
特に、素子温度60℃での特殊演色評価数R9の値が65〜95の範囲、素子温度25℃の場合の特殊演色評価数R9の値が45〜60の範囲にあり、且つ素子温度60℃での特殊演色評価数R9の値が、素子温度25℃の場合の特殊演色評価数R9の値の1.2倍以上1.9倍以下であることが好ましい。
特殊演色評価数R14(木の葉)、及び特殊演色評価数R15(日本人の肌色)は、ホウレン草などの葉物野菜やジャガイモなど芋類などの野菜類、果物類などの食品類の見映えに影響を与える。この特殊演色評価数R14(木の葉)、及び特殊演色評価数R15(日本人の肌色)のうち少なくとも一方が最大値となる素子温度が、平均演色評価数Raが最大値となる素子温度よりも高い温度範囲にあると、室温から60℃までの温度範囲において特殊演色評価数R14(木の葉)、及び特殊演色評価数R15(日本人の肌色)のうち少なくとも一方の値が高くなる。このため高温下において有機エレクトロルミネッセンス素子1から発せられる光に照らされる野菜類、果物類の見映えが良くなる。特に特殊演色評価数R14(木の葉)が最大値となる素子温度と、特殊演色評価数R15(日本人の肌色)が最大値となる素子温度とが、共に平均演色評価数Raが最大値となる素子温度よりも高い温度範囲にあることが好ましい。
更に、平均演色評価数Raが最大値となる素子温度以上60℃以下の温度範囲において、特殊演色評価数R14(木の葉)、及び特殊演色評価数R15(日本人の肌色)のうち少なくとも一方が素子温度の上昇に従って増加すると、高温(60℃程度)で特殊演色評価数R14(木の葉)、及び特殊演色評価数R15(日本人の肌色)のうち少なくとも一方の値が最も高くなる。このため、野菜類、果物類の見映えが更に向上する。特に特殊演色評価数R14(木の葉)と特殊演色評価数R15(日本人の肌色)とが、共に素子温度の上昇に従って増加することが好ましい。
更に、5℃以上60℃以下の素子温度範囲における、特殊演色評価数R14(木の葉)、及び特殊演色評価数R15(日本人の肌色)のうち少なくとも一方が最大値となる素子温度が、40℃以上60℃以下の範囲にあることが好ましい。この場合、高温下での野菜類、果物類の見映えが更に向上する。特に、5℃以上60℃以下の素子温度範囲における、特殊演色評価数R14(木の葉)が最大値となる素子温度と、特殊演色評価数R15(日本人の肌色)が最大値となる素子温度とが、共に40℃以上60℃以下の範囲にあることが好ましい。
更に、25〜60℃の素子温度範囲において、演色評価数R8(赤みの紫)及び特殊演色評価数R9(赤)が最大値をとる素子温度が、特殊演色評価数R14(木の葉)及び特殊演色評価数R15(日本人の肌色)が最大値をとる素子温度よりも高いことが好ましい。この場合、高温になるほど赤みの映えが優勢となる。赤みを帯びた食品類の色は、心理的な温かみを感じさせたり、食欲を増進したりするので、このような食品類の赤みが高温下で映えると、購入意欲が増し、効果的である。
有機エレクトロルミネッセンス素子1の演色評価数R8(赤みの紫)、特殊演色評価数R9(赤)、特殊演色評価数R14(木の葉)、及び特殊演色評価数R15(日本人の肌色)のうちのいずれかが上記のような条件を満たせば、高温下で有機エレクトロルミネッセンス素子1から発せられる光に照らされる食品類の見映えがよくなる。特に調理済み料理などでは一品中に種々の色の食材を含むので、このような種々の色が映えるためには、演色評価数R8(赤みの紫)、特殊演色評価数R9(赤)、特殊演色評価数R14(木の葉)、及び特殊演色評価数R15(日本人の肌色)のうちの複数の指標が上記条件を満たすことが好ましく、全ての指標が上記条件を満たすならば更に好ましい。
有機エレクトロルミネッセンス素子1の正面方向の発光色の、u’v’色度図(CIE 1976 UCS色度図)による座標u’,v’に関し、素子温度25℃の場合よりも素子温度60℃の場合でu’の値がより増加すると共にv’の値がより減少することも好ましい。正面方向とは、有機エレクトロルミネッセンス素子1を構成する複数の層の積層方向と一致する方向である。この場合、高温になるほど有機エレクトロルミネッセンス素子1の発光色が赤みを帯びるようになる。このため、有機エレクトロルミネッセンス素子1から発せられる光に照らされる食品類を観察する者が、有機エレクトロルミネッセンス素子1からの赤みを帯びた発光色も観察することになり、この発光色が観察者に心理的な影響を与えて購入意欲を促進するようになる。
素子温度25℃の場合よりも素子温度60℃の場合の方が、有機エレクトロルミネッセンス素子1の発光色の色温度が低いことも好ましい。この場合も、高温になるほど有機エレクトロルミネッセンス素子1の発光色が赤みを帯びるようになる。このため、有機エレクトロルミネッセンス素子1から発せられる光に照らされる食品類を観察する者が、有機エレクトロルミネッセンス素子1からの赤みを帯びた発光色も観察することになり、この発光色が観察者に心理的な影響を与えて購入意欲を促進するようになる。
R8やR9だけでなく、R14やR15を上記のように設計しても、全般に心理的に赤みを増す効果が得られるため、同様の効果が得られる。
更に、素子温度25℃の場合よりも素子温度60℃の場合の方が、有機エレクトロルミネッセンス素子1内の電流密度が同一の値となるために要する印加電圧が、低くなることが好ましい。照明器具3においては、環境温度が高温になると、AC−DCコンバーターの変換効率が低下するため、電源回路を作動させるために必要な電圧が上昇するが、前記のように高温での印加電圧を低くすることができると、高温時に照明器具3内の総電圧の上昇が抑制される。このため、室温下と高温下での照明器具3の消費電力差を小さくすることができる。
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1は、室温下では通常の室内照明に適すると共に高温下では食品類の照明に適したものとなる。このように、室温から高温まで異なる使用目的、使用条件が、一種類の有機エレクトロルミネッセンス素子1で実現可能となる。このため、用途別及び条件別の有機エレクトロルミネッセンス素子1の開発及び生産が不要となり、低コスト化が可能となる。
このような本態様に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1は、次のようにして実現される。
第一の発光ユニット11内では、第一の電極15側に青色域発光層21が、第二の電極16側に第一の緑色域発光層22が、それぞれ配置されている。第二の発光ユニット12内では、第一の電極15側に赤色域発光層23が、第二の電極16側に第二の緑色域発光層24が、それぞれ配置されている。
前述の通り、第一の緑色域発光層22は蛍光発光性のドーパントを含み、第二の緑色域発光層24は燐光発光性のドーパントを含む。燐光発光性のドーパントは、三重項状態から発光するため、一重項状態からのみ発光する蛍光発光性のドーパントに比べ、約4倍高い発光効率を有し、理想的には内部量子効率100%の高効率発光が可能となる。
更に、緑色のドーパントのうち、燐光発光性のドーパントの発光効率は、蛍光発光性のドーパントより温度依存性が大きく、その値は図2に示されるように、高温下で蛍光発光性のドーパントに比較して大きく低下する。これは燐光発光性のドーパントの熱失活が大きいためである。
このような緑色の燐光発光性のドーパントの特性を利用して、室温下と高温下での各演色性の設計が可能となる。すなわち、本実施形態では、有機エレクトロルミネッセンス素子1が、蛍光発光性のドーパントを含む緑色域発光層22と、燐光発光性のドーパントを含む緑色域発光層24とを共に備え、これら緑色域発光層22,24の温度依存性の違いを利用して室温と高温のそれぞれで最適な演色性が実現するものである。
例えば、図2に示すグラフにおいて、蛍光発光性のドーパントと燐光発光性のドーパントの発光効率の温度による変化が小さい温度領域が室温付近となれば、発光スペクトル全体中の緑色域の成分の強度が強くなる。この緑の強度に合わせて、赤色域発光層23と青色域発光層21の発光強度を設計することで、室温下での平均演色性が極めて高くなるような設計が可能となる。次に、高温域で燐光発光性のドーパントの発光効率が低下すると、発光スペクトル全体中で緑色域の成分の強度が相対的に低下する。それに伴って、発光スペクトル全体中で赤色域の成分の強度が相対的に強くなると共に、発光色が赤みを帯びるようになる。これにより、高温下での演色評価数R8、特殊演色評価数R9、特殊演色評価数R14、及び特殊演色評価数R15の増加がもたらされ、発光色のu’値の増加とv’値の減少も、もたらされ、発光色の色温度の低下も、もたらされる。
赤色域の光を発する発光層2、緑色域の光を発する発光層2、及び青色域の光を発する発光層2を備える有機エレクトロルミネッセンス素子1において、素子温度に応じた演色性を発揮するための発光スペクトルの設計のためには、緑色域の光を発する発光層2の発光強度を制御することが効率的である。これは、緑色域は可視光スペクトルにおける中程度の波長域であり、且つ緑色域の光を発する発光層2の発光スペクトルの曲線のすそ野は長波長側の赤色域及び短波長側の青色域に重なっているためである。これにより、緑色域の光を発する発光層2から発せられる光の強度が変化することで緑色域の発光強度が変化すると、それに応じて長波長側の赤色域及び短波長側の青色域の発光強度も影響を受けるのである。このため、赤と緑の成分を主に含み、青成分を従で含む肌色や、緑と青の中間に位置する青緑など、様々な演色性の値が、緑色域の光を発する発光層2の発光強度により効率良く制御され得る。つまり、赤、緑、青の各ドーパントの種類や発光層2の膜厚を調整して各色の発光層2から発せられる光を独立して最適化せずとも、緑色域の光を発する発光層2の発光強度の調整をメインに考え、青と赤は緑に付随して調整することで、有機エレクトロルミネッセンス素子1の様々な演色性並びに演色性の温度依存性を実現できるのである。
まず、平均演色評価数Raが素子温度15℃〜35℃で最大値を有する構成とするには、素子温度15℃〜35℃の範囲にある温度(例えば25℃)での発光スペクトルの波形から算出される色温度が、色温度曲線上に乗るように素子を構成し、かつ、発光スペクトル中の緑色域の相対強度が低温側で高く、高温側で低くなるようにする。そうすると、発光色のu’v’色度図(CIE 1976 UCS色度図)上のポイントが、低温から高温に移動する際に色温度曲線を横切る形となる。このスペクトル変化を平均演色評価数Raで計算すれば、平均演色評価数Raが、室温付近でピークを有することになる。
素子温度が低いほど励起子の移動距離は散乱を受けず長くなり、緑色域発光層24から赤色域発光層23へのエネルギー遷移が大きくなる。このため、素子温度が低いときに、平均演色評価数Raが最大値となる場合は、赤色域発光層23/第二の緑色域発光層24の膜厚比はより小さくなることが好ましい。一方、平均演色評価数Raが最大値となる素子温度が高いほど、赤色域発光層23/第二の緑色域発光層24の膜厚比はより大きくなることが好ましい。
緑色域の発光強度の温度依存性は、第二の発光ユニット12における赤色域発光層23と第二の緑色域発光層24の厚み比、ドーパント濃度等の調整により制御することが可能である。第二の緑色域発光層24における燐光発光性のドーパントは、単独でも高温での熱失活が大きくなって緑色域の発光強度が低下する。しかし、第二の緑色域発光層24と赤色域発光層23とが接していると、高温下において緑色域の発光強度の更なる低下がもたらされる。この発光強度の低下が発生する原因として推定するメカニズムを、図3に示す。赤色域発光層23に隣接した第二の緑色域発光層24では、励起子のエネルギーの全てが緑色発光を引き起こすのではなく、この励起子のエネルギーの一部は赤色域発光層23内のドーパント又はホスト材料に遷移し、最終的には赤色域発光層23内で赤色域の発光を引き起こすと考えられる。燐光発光の際の励起子は三重項からの遷移のため励起子寿命が蛍光材料より長いのが通常であるから、燐光発光性のドーパントを含む第二の緑色域発光層24から赤色域発光層23へのエネルギーの遷移は、顕著に現れる。第二の緑色域発光層24から赤色域発光層23へ遷移するエネルギーの量は、励起子寿命、励起子の移動距離、ドーパント濃度などが調整されることで制御され得る。
例えば第二の緑色域発光層24の厚みが厚くなるほど、第二の緑色域発光層24から赤色域発光層23までの励起子の移動距離も長くなるため、エネルギーの遷移量は少なくなる。また、赤色域発光層23の厚みが小さくなるほど、並びに赤色域発光層23内のドーパントの濃度が低くなるほど、緑色域発光層22から赤色域発光層23へエネルギーが遷移しにくくなる。また、上記に加えて、高温下で緑色域発光の熱失活が大きくなるため、緑域のスペクトル強度が低下する。このため、緑色に対して赤色域のスペクトルの相対強度が増加する効果が現れる。従って、第二の緑色域発光層24の厚み、赤色域発光層23の厚み、赤色域発光層23内のドーパントの濃度などが調整されることで、室温下では第二の緑色域発光層24から赤色域発光層23へのエネルギーの遷移が十分に抑制されて緑色域の発光強度が充分に高くなると共に、高温下ではこの第二の緑色域発光層24から赤色域発光層23へ十分な量のエネルギーが遷移して緑色域の発光強度が低くなる、もしくは高温で緑域の発光が熱失活で低下するような設計が可能となる。
例えば、第二の緑色域発光層24の厚みが大きくなると、高温下では第二の緑色域発光層24での熱失活の影響が大きくなって緑色域の強度が減少し、相対的に赤色域や青色域の強度の割合が増える。逆に第二の緑色域発光層24の厚みが小さくなると、第二の緑色域発光層24での熱失活の影響は相対的に小さくなると共に、第二の緑色域発光層24から赤色域発光層23へのエネルギーの遷移割合が大きくなり、このため赤色域の強度が高くなる。第二の緑色域発光層24があまりに薄くなると、室温でも赤色域発光層23へのエネルギーの遷移が大きくなりすぎて、室温下で高い平均演色性が得られなくなる。一方、赤色域発光層23の厚みが大きくなると赤色域の強度が上がり、この厚みが小さくなると赤色域の強度が下がる。これらを考慮して、第二の緑色域発光層24及び赤色域発光層23の最適な厚み並びに厚み比が設定され得る。特に、赤色域発光層23の厚みは第二の緑色域発光層24の厚みの2%以上15%以下の範囲で調整されることが好ましい。第二の緑色域発光層24の厚みは、燐光発光の励起子の移動距離が通常20nm以上60nm以下であるので、第二の緑色域発光層24から赤色域発光層23へのエネルギー遷移を考慮すると、これと同程度、すなわち20nm以上60nm以下であることが好ましい。
光学設計の観点からは、赤色域発光層23と第二の緑色域発光層24の合計厚みが一定の値であると、有機エレクトロルミネッセンス素子1全体の総厚みが光学的に最適な厚みに保たれた状態で、赤色域発光層23と第二の緑色域発光層24の発光強度比が制御可能となり、設計自由度が高くなる。すなわち、駆動電圧が低く且つ高効率な素子設計が可能となる。このため、上記の膜厚範囲でそれぞれの膜厚を選択するのが望ましい。
また、赤色域発光層23でのドーパント濃度が高くなりすぎると濃度消光により発光効率が下がるが、第二の緑色域発光層24からのエネルギー遷移を受けるにはドーパント濃度が高いほど有利である。これらのバランスを考慮して、ドーパント濃度の最適な値が設定される。特に、赤色域発光層23内のドーパント濃度は0.2質量%以上10質量%以下の範囲で調整されることが好ましい。濃度消光は特に燐光ドーパントを用いる場合に顕著に現れる。これは、燐光の励起子寿命が長いためドーパント間で励起子のエネルギー移動/熱失活が発生しやすいためである。
具体的な素子設計にあたっては、例えば赤色域、青色域、緑色域の各発光層2に使用されるドーパント単独でのフォトルミネッセンス(PL)スペクトルを基にしたシミュレーションにより、素子の白色の発光スペクトルを分離する。このとき、ある温度での演色性に対する各色のスペクトルの寄与を計算するには、まず、素子の白色の発光スペクトルを赤色域、青色域、緑色域のスペクトルに分離する。次に、この各色のスペクトルの大きさ(例えばスペクトルの内部面積)を求めることで、まずある温度において、白色スペクトルに占める各色のスペクトルの面積%が算出できる。次に、様々な温度での白色スペクトルを上記手法でRGBに分離することで、各色のスペクトルの面積%の温度変化を求めることができる。最後に、白色スペクトル自体から算出される演色性と、上記の各色の面積%の関係を、個々の要素の温度変化のデータを用いて、重回帰の手法で近似し、各要素(すなわち各色の面積%の温度変化の大きさ)の寄与度から求めることができる。すなわち、演色性の温度変化をY、各色のスペクトルの温度変化を、Rx、Gx、Bxとしたときに、
Y=α×Rx+β×Gx+γ×Bx+(定数項)
(α、β、γは係数)
と近似したときの、Rx、Gx、BxのYに対する寄与度を計算すればよい。
上記のような赤色域発光層23と第二の緑色域発光層24の設計に代えて、或いはこれに加えて、他の手法を採用することで、演色性を制御することも可能である。
例えば、第一の発光ユニット11、第二の発光ユニット12、中間層13などを構成する有機材料の選択によって、演色性を制御することが可能である。これらの有機材料の電荷移動度(ホール移動度または電子移動度)は温度依存性を有する。このような電荷移動度の温度依存性を利用して、発光スペクトルの温度依存性を制御することが可能である。
例えば有機材料の選択によって、高温下での有機エレクトロルミネッセンス素子1中のキャリアバランスが最大値を取る箇所が、第一の発光ユニット11寄りに位置するように調整される。それによって、高温下での第二の緑色域発光層24での発光強度が抑制される。一般に、有機材料の電荷移動度は高温ほど増加するが、例えば、第一の発光ユニット11で使用されるホール輸送材料のホール移動度の温度変化が相対的に小さく、第二の発光ユニット12で使用されている電子輸送材料の電子移動度の温度変化が相対的に大きいと、高温下では第一の発光ユニット11から発せられる光が強くなるため、第二の緑色域発光層24の発光強度が抑制される。
有機材料の選択によって、素子温度25℃の場合よりも素子温度60℃の場合の方が、有機エレクトロルミネッセンス素子1内の電流密度が同一の値となるために要する印加電圧が、低くなることも実現可能である。すなわち、温度上昇に伴って電荷移動度(ホール移動度、または電子移動度)が上昇する有機材料が選択されることで、前記のような特性を有する有機エレクトロルミネッセンス素子1が得られる。
有機エレクトロルミネッセンス素子1の構造は上記の例には限られない。例えば、発光ユニットの数は1個でもよいし、3個以上であってもよい。発光ユニットの数が増えると同じ電流量でもユニット数に応じた高い発光効率が得られる。また、有機エレクトロルミネッセンス素子1の総膜厚が大きくなることで、異物や基板14の微細凹凸に起因する電極間のショート、リーク電流に起因する欠陥などが抑制され、歩留まりが向上する。さらに、複数の発光ユニットの各々が単数又は複数の発光層2を有することで、有機エレクトロルミネッセンス素子1全体の発光層2の数が増える。素子の面内バラツキや視野角での輝度や色度、演色性のバラツキは、主に有機エレクトロルミネッセンス素子1内の光学干渉のズレに起因する。このため、有機エレクトロルミネッセンス素子1内の発光層2の総数が増えると光学干渉が平均化される程度が高くなり、これらの性能バラツキが低減する。発光層2の数だけでなく、発光層2の素子内での位置によっても干渉条件が変わるので、これらが併せて設計されることが好ましい。更に、発光色域が同じ発光層2の数が多いと、通電時の寿命特性の変化も平均化されるので、寿命バラツキを抑える効果も得られる。
一つの発光ユニットにおける発光層2の数の数も特に制限されず、1個であっても、2個以上であってもよい。また、上記有機エレクトロルミネッセンス素子1の構造において、第一の発光ユニット11における発光層2の構造と第二の発光ユニット12における発光層2の構造とが入れ替わっていてもよい。
第一の緑色域発光層22と第二の緑色域発光層24におけるドーパントが、共に燐光発光性のドーパントであってもよい。この場合、緑色域の発光強度の温度変化が更に大きくなることで演色性の温度変化が更に大きくなる。このような有機エレクトロルミネッセンス素子1は、たとえば演色性の温度変化をさらに積極的に利用する用途に適用可能となる。発光強度の温度依存性が大きい蛍光発光性のドーパントが使用されるならば、緑色域の光を発する発光層2におけるドーパントが蛍光発光性のドーパントのみ(例えば第一の緑色域発光層22と第二の緑色域発光層24におけるドーパントが、共に蛍光発光性のドーパント)であってもよい。すなわち、有機エレクトロルミネッセンス素子1は、緑色域の光を発し、発光強度の温度依存性が高く、高温下で発光強度が低下する発光層2を、少なくとも一つ備えればよい。
また、発光スペクトルの形状は、上述のように緑色域の光を発する発光層2の発光強度によって最も容易に調整されるが、例えば有機エレクトロルミネッセンス素子1が燐光発光する赤色域の発光層2と蛍光発光する赤色域の発光層2とを備える場合でも、演色性の温度変化を調整する一定の効果は得られる。
有機エレクトロルミネッセンス素子1は、緑色光を発する発光層2、赤色光を発する発光層2、及び青色光を発する発光層2の各々を、一個以上備えることが好ましい。但し、燐光発光する発光層2の発光特性の温度依存性を利用して本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1を実現することができるならば、青色光を発する発光層2と黄色光を発する発光層2との組み合わせ、青色光を発する発光層2とオレンジ色光を発する発光層2と赤色光を発する発光層2との組み合わせなどの、種々の発光層2の組み合わせが採用されてもよい。
[第二の態様]
本実施形態に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1の第二の態様では、0℃以上60℃以下の素子温度範囲において、特殊演色評価数R8、特殊演色評価数R9、特殊演色評価数R14、特殊演色評価数R15のうち少なくとも一つの最大値が、素子温度10℃以上30℃以下の範囲にあることが、好ましい。この場合、人間にとって適切とされる環境温度下での、食品の見映えが向上する。例えば、演色評価数R8と特殊演色評価数R9のうち少なくとも一方の最大値が、素子温度10℃以上30℃以下の範囲にあると、赤みを帯びた肉類の見映えが向上する。また、特殊演色評価数R14の最大値が、素子温度10℃以上30℃以下の範囲にあると、葉の青みを帯びた野菜類あるいは果物類の見映えが向上する。また、特殊演色評価数R15の最大値値が、素子温度10℃以上30℃以下の範囲にあると、白みを帯びた野菜類および人間の肌の本来の色の見映えが向上する。
また、本態様では、0℃以上30℃以下の素子温度範囲において、平均演色評価数Ra、特殊演色評価数R8、特殊演色評価数R14、特殊演色評価数R15のうち少なくとも一つが、その最大値とその最小値との比が0.8以上であり、且つその値が70以上である条件を満たすことが好ましい。この場合、人間にとって適切とされる環境温度から、食品が低温で保存される場合の環境温度までに亘って、高い演色性が維持される。このため、食品が消費される場合と、食品が保存されている場合とで、食品の色の見え方に変化が生じにくくなる。このため、食品を観察する者が、食品の外観に基づいて食品の状態を正確に判断することが可能となる。また、食品を観察する者に、精神的な違和感が生じにくくなる。
また、0℃以上30℃以下の素子温度範囲において、特殊演色評価数R9の最大値とその最小値との比が、0.75以上であることが好ましい。更に、素子温度0℃以上30℃以下の範囲において、特殊演色評価数R9の値が40以上であることが好ましい。この場合、人間に適切とされる環境温度から、食品が低温で保存される場合の環境温度までに亘って、特殊演色評価数R9が充分に高く維持される。これにより、赤みを帯びた肉類などの食品が消費される場合と、この食品が保存されている場合とで、この食品の色の見え方に変化が生じにくくなる。このため、赤みを帯びた肉類などの食品を観察する者が、食品の外観に基づいて食品の状態を正確に判断することが可能となる。これにより、食品の衛生管理が容易となる。
また、素子温度25℃の場合よりも素子温度0℃の場合の方が、正面方向の発光色の、u’v’色度図のu’及びv’の値が、より大きいことが、好ましい。この場合、低温下において有機エレクトロルミネッセンス素子1の発光に照らされる食品類が全体的に赤みを帯びる傾向が生じる。このため、低温下で食品を観察する者がその食品から冷たい印象を受けるという心理的な作用が、軽減される。
また、素子温度25℃の場合よりも素子温度0℃の場合の方が、発光色の色温度が低いことが好ましい。この場合、有機エレクトロルミネッセンス素子1の発光に照らされる食品類が全体的に赤みを帯びる傾向が生じる。このため、低温下で食品を観察する者がその食品から冷たい印象を受けるという心理的な作用が、軽減される。
このように、本態様による有機エレクトロルミネッセンス素子1は、低温下から室温下に亘って、高い演色性を発揮する。このため、本態様による有機エレクトロルミネッセンス素子1は、低温下から室温下に亘る広い温度範囲において、種々の使用条件下で、種々の使用目的のために、広く適用可能である。特に本態様による有機エレクトロルミネッセンス素子1は、低温下から室温下に亘って、食品の照明のために適したものである。
このような第二の態様に係る有機エレクトロルミネッセンス素子1の発光特性は、例えば有機エレクトロルミネッセンス素子1が発光層2として、蛍光発光性のドーパントを含む青色域発光層21、蛍光発光性のドーパントを含む緑色域発光層22、燐光発光性のドーパントを含む赤色域発光層23、及び燐光発光性のドーパントを含む緑色域発光層24を備える場合に、これらの蛍光発光性のドーパントを含む発光層と、燐光発光性のドーパントを含む発光層との、発光強度の温度依存性の違いを利用することで、実現することができる。図8に、蛍光発光性の発光層の発光強度(蛍光発光性のドーパントを含む青色域発光層21の発光強度と蛍光発光性のドーパントを含む緑色域発光層22の発光強度を足し合わせた値)と、燐光発光性の発光層の発光強度(燐光発光性のドーパントを含む赤色域発光層23の発光強度と燐光発光性のドーパントを含む緑色域発光層24の発光強度とを足し合わせた値)の、素子温度を変更した場合の相対値の例を示す。これによると、0℃以上30℃以下の素子温度範囲では、蛍光発光強度に局所最大値(極大値)が存在するが、燐光発光強度は、素子温度の増大に対して単調減少する。この場合、蛍光発光強度の温度依存性及び燐光発光強度の温度依存性が、小さくなるように設計することによって、演色評価数R8、特殊演色評価数R9、特殊演色評価数R14、及び特殊演色評価数R15の最大値を、10℃以上30℃以下の素子温度範囲に維持することができる。また、素子温度が低下すると、燐光発光強度が蛍光発光強度と比べて大きく増加するようになる。それに伴って、発光スペクトル全体中での赤色域の成分が相対的に強くなり、その結果、発光色が赤みを帯びるようになる。これにより、低温下での発光色のu’値及びv’値の増加、並びに発光色の色温度の低下が、もたらされる。
[照明器具]
照明器具3は、有機エレクトロルミネッセンス素子1、有機エレクトロルミネッセンス素子1と電源とを接続する接続端子、並びに有機エレクトロルミネッセンス素子1を保持する筐体を備える。図4〜図6は有機エレクトロルミネセンス素子を備える照明器具3の一例を示す。照明器具3は、有機エレクトロルミネッセンス素子1を備えるユニット31と、このユニット31を保持する筐体と、ユニット31から照射される光を放出する前面パネル32と、ユニット31に電力を供給する配線部33とを、備える。
筐体は、正面側筐体34及び背面側筐体35を備える。正面側筐体34は枠体状に形成され、背面側筐体35は下面開口の蓋体状に形成されている。正面側筐体34及び背面側筐体35は、重なり合わさってユニット31を保持する。正面側筐体34は、背面側筐体35の側壁と接する周縁部に、導体のリード線やコネクタ等である配線部33を通すための溝を有し、また、下面開口には透光性を有する板状の前面パネル32が設置される。
ユニット31は、有機エレクトロルミネッセンス素子1と、有機エレクトロルミネッセンス素子1に給電する給電部36と、有機エレクトロルミネッセンス素子1と給電部36を保持する正面側ケース37及び背面側素子ケース38と、を備える。
有機エレクトロルミネッセンス素子1の基板14上には、第一の電極15に接続されているプラス電極39と、第二の電極16に接続されているマイナス電極40も形成されている。基板14上には有機エレクトロルミネッセンス素子1を覆う封止基板44も設けられている。配線部33が取り付けられた一対の給電部36が、プラス電極39及びマイナス電極40にそれぞれ接触することで、有機エレクトロルミネッセンス素子1に給電される。
給電部36は、プラス電極39及びマイナス電極40と接する複数の接点部41を有し、これら各接点部41がプラス電極39及びマイナス電極40に素子ケース37、38によって圧接されることで機械的及び電気的に多点にて接続される。接点部41は、板状の銅やステンレススチールのような金属導電体から成る給電部36に曲げ加工を施すことで、ディンプル状に形成され、このディンプル状部分の凸側がプラス電極39及びマイナス電極40と接する。なお、給電部36は、板状の金属導電体にディンプル状の接点部41を形成したもの以外に、例えば、線状の金属導電体にコイル状の接点部41を形成したものであってもよい。
素子ケース37、38は、いずれも蓋体状に形成されている。正面側素子ケース37は、有機エレクトロルミネッセンス素子1の基板14と対向するケース壁に光を出射するための開口部42と、ケース側壁に給電部36を保持するための溝部43と、を有する。素子ケース37、38は、アクリル等の樹脂から形成され、互いの側壁同士が接するようにして重なり合わさることで、直方体の箱状となり、有機エレクトロルミネッセンス素子1と給電部36を保持する。
食品保管装置は、食品を保管するように構成されている保管器具と、照明器具3とを備える。照明器具3は、保管器具における食品を照らすように構成されている有機エレクトロルミネッセンス素子1を備える。保管器具としては、具体的には扉付きショーケースや、バイキング形式の料理陳列棚などが挙げられる。食品保管装置は、保管器具に保管されている食品を加熱して保温するためのヒータを備えることが好ましい。保管温度は主に食中毒を防止するため60℃程度であることが好ましい。
図7に食品保管装置50の一例を示す。この食品保管装置50は、本体部52と、この本体部52の上に設置されている保管器具51を備える。保管器具51はガラス張りのショーケースであり、その内部に棚53が設置されている。更に保管器具51の天井面に、照明器具3が固定されている。この照明器具3により保管器具51内が照らされるようになっている。本体部52内には、保管器具51内を加熱するヒータが内装されている。
このような食品保管装置50は、消費者の目前で食材や調理済み料理を、高温で保管し、或いは販売するために使用され得る。このような食品保管装置50によれば、高温下で保管器具51に保管されている食品類を有機エレクトロルミネッセンス素子1から発せられる光で照らすことで、食品類の見映えを非常に良くすることができる。
[実施例1]
ガラス基板14上にITOを厚み130nmに成膜することで第一の電極15を形成した。更に第一の電極15の上にPEDOT/PSSからなる厚み35nmのホール注入層を湿式法により形成した。続いてホール輸送層3、青領域発光層21(蛍光発光)、第一の緑色域発光層22(蛍光発光)、電子輸送層4を、蒸着法により5nm〜60nmの厚みに順次形成した。次に、Alq3/LiO/Alq3/HAT−CN6の層構造を有する中間層13を層厚15nmで積層した。次に、ホール輸送層3、赤色域発光層23(燐光発光)、第二の緑色域発光層24(燐光発光)、電子輸送層4を、各層が最大50nmの膜厚で順次形成した。続いて、Li膜からなる電子注入層、Al膜からなる第二の電極16を順次形成した。赤色域発光層23の厚みは2.5nm、第二の緑色域発光層24の厚みは40nmとした。
青色域発光層21におけるドーパントの発光スペクトルのピーク波長は450nm、第二の緑色域発光層24におけるドーパントの発光スペクトルのピーク波長は563nm、赤色域発光層23におけるドーパントの発光スペクトルのピーク波長は620nmであった。
素子温度30℃での有機エレクトロルミネッセンス素子1の発光スペクトルにおける、青(450nm):緑(563nm):赤(623nm)のピーク強度比は、1:1.5:2.5であった。
また演色性に重要なXYZ等色関数のXのピーク位置450nm、Yのピーク位置560nm、Zのピーク位置600nm、及びピーク間の谷間に相当する位置500nmの波長での、有機エレクトロルミネッセンス素子1の発光強度の温度変化は、図9に示す通りであった。
赤色域発光層23と第二の緑色域発光層24の、厚み、ドープ濃度等が選択されることで、等色関数のYのピーク波長560nm付近のスペクトル強度の温度変化が大きくなる。等色関数のYのピーク波長は、視感度が最大となる波長の位置に相当する。つまり、この560nmのスペクトル強度を主として制御することで演色性の数値を設計通りに制御することができる。等色関数XYZのピーク位置等に相当する波長での強度比は、ドーパントの種類、ドーパント濃度、発光層2等の厚み、発光層2等の電荷移動度などを適時選択して設計すればよい。
素子温度5〜60℃での、有機エレクトロルミネッセンス素子1のスペクトル、各種演色性、発光色を、分光放射輝度計(CS−2000)を用いて測定したところ、その結果は次の通りであった。
有機エレクトロルミネッセンス素子1の発光スペクトルにおける、青(450nm):緑(563nm):赤(623nm)、各ピーク強度の、素子温度を変更した場合の相対値(25℃を1に規格化)を、図10に示す。素子温度が上昇すると、緑のピーク強度が最も大きく変化し、且つ高温で最も大きく低下した。
緑のピーク波長強度と平均演色評価数Raとの関係を図11に示す。両者を二次関数で近似すると相関係数は91%となり、高い相関性があった。赤、青のピーク波長強度についても同様の近似をおこなうと、相関係数は赤の場合が56%、青の場合が81%であった。このように緑のピーク波長強度と平均演色評価数Raとの相関性が高かった。
同様のプロットを、演色評価数R8、特殊演色評価数R9、特殊演色評価数R14、及び特殊演色評価数R15について実施して相関係数を算出した。その結果を表1に示す。この結果、演色評価数R8、特殊演色評価数R9、特殊演色評価数R14、及び特殊演色評価数R15のいずれの場合も、緑のピーク波長強度との相関係数が大きかった。このため、本実施例の構成によれば、緑のピーク波長強度の温度依存性が最適化されることで、各種の演色性の温度依存性が容易に調整され得ることが、確認できた。
表1に示すとおり、平均演色評価数Raは、素子温度5℃から60℃の広い範囲において、85以上という高い値であった。これは、本実施例による有機エレクトロルミネッセンス素子1が蛍光発光する第一の緑色域発光層22と燐光発光する第二の緑色域発光層24とを備え、これらの発光強度の温度依存性を利用することで実現したものである。平均演色評価数Raは素子温度25℃でピークを有し、かつ、この平均演色評価数Raの値も95と極めて高かった。素子温度5℃から60℃の平均演色評価数Raの最大値とその最小との差は10%程度で、かつ、絶対値も最低でも86(60℃)となり、安定して高い演色性が得られた。
演色評価数R8(赤みの紫)、特殊演色評価数R9(赤)は、素子温度の増加と共に増加し、測定範囲では60℃で最大値を示した。60℃でのR9の値は25℃の場合の1.4倍であった。すなわち、室温での平均演色評価数Raが高いと共に、高温でのR9が高くなった。
特殊演色評価数R14、R15はともに、素子温度50℃でピーク値を示した。R9は、素子温度60℃で最大だが絶対値が74と、R14やR15より低い。このように高温でR14とR15を若干抑える設計とすると、素子温度60℃でR9の赤を強調する効果が増し、食材に心理的に温かみが加味される効果が得られる。
Figure 0005685734
恒温試験槽に、電球型蛍光灯(R9は25)と、本実施例に係る素子とを配置し、赤みを帯びた食材としてトマト、調理した肉料理、及び、R8とR9の演色性の色票を配置し、素子温度を25℃から60℃まで上げてこれらの見映えを観察した。このとき、本実施例に係る素子では、R9が25℃で53であるが、これは蛍光灯の場合の2倍以上の値である。この場合、配置した料理や色標の色が良好に再現された。さらに温度を60℃に上げると、素子のR9は74に上昇し、極めて鮮やかに色を再現することができた。
本実施例に係る素子における、素子温度が25℃と60℃の場合の、色度u’及びv’、色温度、並びに電流密度が5mA/cmとなるのに要する電圧の変化を、表2に示す。
Figure 0005685734
これによると、素子温度60℃になると、u’が増加すると共にv’が減少し、色温度は高温で低下した。更に電圧は高温で低下した。このように、本実施例に係る素子は、高温下において低電力で暖かみのある光を発することができた。
以上のことから、本実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子1を用いることで、室温照明用として高い平均演色評価数Raを実現し、かつ、高温環境下において食品や料理の見映えを向上する目的のためにも同じ素子を使用することができる。すなわち、素子の共通化が可能となり、開発費が削減され、低コスト化や照明機器の標準化が進むという効果が得られる。
[実施例2]
ガラス基板14上にITOを厚み130nmに成膜することで第一の電極15を形成した。更に第一の電極15の上にPEDOT/PSSからなる厚み35nmのホール注入層を湿式法により形成した。続いてホール輸送層3、青領域発光層21(蛍光発光)、第一の緑色域発光層22(蛍光発光)、電子輸送層4を、蒸着法により5nm〜60nmの厚みに順次形成した。次に、Alq3/LiO/Alq3/HAT−CN6の層構造を有する中間層13を層厚15nmで積層した。次に、ホール輸送層3、赤色域発光層23(燐光発光)、第二の緑色域発光層24(燐光発光)、電子輸送層4を、各層が最大50nmの膜厚で順次形成した。続いて、Li膜からなる電子注入層、Al膜からなる第二の電極16を順次形成した。赤色域発光層23の厚みは5nm、第二の緑色域発光層24の厚みは40nmとした。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子1を得た。
演色性に重要なXYZ等色関数のXのピーク位置450nm、Yのピーク位置560nm、Zのピーク位置616nm、及びピーク間の谷間に相当する位置500nmの波長での、有機エレクトロルミネッセンス素子1の発光強度の温度変化は、図12に示す通りであった。
また、素子温度30℃での有機エレクトロルミネッセンス素子1の発光スペクトルにおける、青(450nm):緑(563nm):赤(623nm)のピーク強度比は、1:1.1:1.3であった。
素子温度0〜60℃での、有機エレクトロルミネッセンス素子1のスペクトル、各種演色性、発光色を、分光放射輝度計(CS−2000)を用いて測定したところ、その結果は次の通りであった。
有機エレクトロルミネッセンス素子1の発光スペクトルにおける、青(450nm):緑(563nm):赤(623nm)、各ピーク強度の、素子温度を変更した場合の相対値(25℃を1に規格化)を、図13に示す。素子温度が上昇すると、緑のピーク強度が最も大きく変化し、且つ高温で最も大きく低下した。
表3に示すとおり、平均演色評価数Raは、素子温度5℃から60℃の広い範囲において、85以上という高い値であった。これは、本実施例による有機エレクトロルミネッセンス素子1が蛍光発光する第一の緑色域発光層22と燐光発光する第二の緑色域発光層24とを備え、これらの発光強度の温度依存性を利用することで実現したものである。平均演色評価数Raは素子温度25℃付近でピークを有し、かつ、この平均演色評価数Raの値も極めて高かった。素子温度5℃から60℃の平均演色評価数Raの最大値とその最小との差は小さく、かつ、絶対値も最低でも90.1(5℃)となり、安定して高い演色性が得られた。
演色評価数R8(赤みの紫)、特殊演色評価数R9(赤)は、素子温度の増加と共に増加し、測定範囲では60℃で最大値を示した。すなわち、室温での平均演色評価数Raが高いと共に、高温でのR9が高くなった。
特殊演色評価数R14、R15はともに、高温で若干低下した。R9は、素子温度60℃で最大だがその絶対値がR14及びR15より低い。このように高温でR14とR15を若干抑える設計とすると、素子温度60℃でR9の赤を強調する効果が増し、食材に心理的に温かみが加味される効果が得られる。
Figure 0005685734
本実施例に係る素子における、素子温度が25℃と60℃の場合の、色度u’及びv’、並びに色温度の変化を、表2に示す。
Figure 0005685734
これによると、素子温度60℃になると、u’が増加すると共にv’が減少し、色温度は高温で低下した。このように、本実施例に係る素子は、高温下において暖かみのある光を発することができた。
以上のことから、本実施例の有機エレクトロルミネッセンス素子1を用いることで、室温照明用として高い平均演色評価数Raを実現し、かつ、高温環境下において食品や料理の見映えを向上する目的のためにも同じ素子を使用することができる。すなわち、素子の共通化が可能となり、開発費が削減され、低コスト化や照明機器の標準化が進むという効果が得られる。
[実施例3]
ガラス基板14上にITOを厚み130nmに成膜することで第一の電極15を形成した。更に第一の電極15の上にPEDOT/PSSからなる厚み35nmのホール注入層を湿式法により形成した。続いてホール輸送層3、青領域発光層22(蛍光発光)、第一の緑色域発光層22(蛍光発光)、電子輸送層4を、蒸着法により5nm〜60nmの厚みに順次形成した。次に、Alq3/LiO/Alq3/HAT−CN6の層構造を有する中間層13を層厚15nmで積層した。次に、ホール輸送層3、赤色域発光層23(燐光発光)、第二の緑色域発光層24(燐光発光)、電子輸送層4を、各層が最大50nmの膜厚で順次形成した。続いて、Li膜からなる電子注入層、Al膜からなる第二の電極16を順次形成した。赤色域発光層23の厚みは2nm、第二の緑色域発光層24の厚みは40nmとした。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子1を得た。
演色性に重要なXYZ等色関数のXのピーク位置450nm、Yのピーク位置560nm、Zのピーク位置616nm、及びピーク間の谷間に相当する位置500nmの波長での、有機エレクトロルミネッセンス素子1の発光強度の温度変化は、図14に示す通りであった。
素子温度30℃での有機エレクトロルミネッセンス素子1の発光スペクトルにおける、青(450nm):緑(563nm):赤(623nm)のピーク強度比は、1:0.8:0.9であった。
素子温度0〜60℃での、有機エレクトロルミネッセンス素子1のスペクトル、各種演色性、発光色を、分光放射輝度計(CS−2000)を用いて測定したところ、その結果は次の通りであった。
有機エレクトロルミネッセンス素子1の発光スペクトルにおける、青(450nm):緑(563nm):赤(623nm)、各ピーク強度の、素子温度を変更した場合の相対値(25℃を1に規格化)を、図15に示す。素子温度が上昇すると、赤のピーク強度が最も大きく変化し、且つ高温で最も大きく低下した。
表5に示すとおり、平均演色評価数Raは、広い素子温度範囲において高い値であった。これは、本実施例による有機エレクトロルミネッセンス素子1が、蛍光発光性する青色域発光層21、蛍光発光する第一の緑色域発光層22、燐光発光する赤色域発光層23、及び燐光発光する第二の緑色域発光層24を備え、これらの発光強度の温度依存性を利用することで実現したものである。
また、0℃以上60℃以下の素子温度範囲において、特殊演色評価数R8、特殊演色評価数R9、特殊演色評価数R14、及び特殊演色評価数R15の最大値が、素子温度10℃以上30℃以下の範囲であった。
また、0℃以上30℃以下の素子温度範囲において、平均演色評価数Ra、特殊演色評価数R8、特殊演色評価数R14、及び特殊演色評価数R15の各々の、最大値とその最小値との比が、0.8以上であり、且つその値が70以上であった。
また、0℃以上30℃以下の素子温度範囲において、特殊演色評価数R9の最大値とその最小値との比が、0.75以上であり、且つその値が40以上であった。
Figure 0005685734
本実施例に係る素子における、素子温度が0℃と25℃の場合の、色度u’及びv’、色温度を、表6に示す。
Figure 0005685734
この結果、素子温度25℃の場合よりも素子温度0℃の場合の方が、u’及びv’の値が、より大きかった。また、素子温度25℃の場合よりも素子温度0℃の場合の方が、発光色の色温度が、より低かった。
1 有機エレクトロルミネッセンス素子
2 発光層
3 照明器具

Claims (16)

  1. 第一の発光ユニット、第二の発光ユニット、及び前記第一の発光ユニットと前記第二の発光ユニットとの間に介在する中間層を備え、
    前記第一の発光ユニットは、青色域発光層と蛍光発光を示す第一の緑色域発光層とを備え、
    前記第二の発光ユニットは、赤色域発光層と燐光発光を示す第二の緑色域発光層とを備え、
    前記赤色域発光層の厚みが、前記第二の緑色域発光層の厚みよりも小さく、
    5℃以上60℃以下の素子温度範囲において、平均演色評価数Raが最大値となる素子温度が、15℃以上35℃以下の範囲にあり、
    5℃以上60℃以下の素子温度範囲における、演色評価数R8、特殊演色評価数R9、特殊演色評価数R14、及び特殊演色評価数R15のうち少なくとも一つが最大値となる素子温度が、前記平均演色評価数Raが最大値となる素子温度よりも高い温度範囲にある特性を有する有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 前記平均演色評価数Raが最大値となる素子温度以上60℃以下の素子温度範囲において、演色評価数R8、特殊演色評価数R9、特殊演色評価数R14、及び特殊演色評価数R15のうち少なくとも一つが、素子温度の上昇に従って増加する請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記平均演色評価数Raが最大値となる素子温度以上60℃以下の素子温度範囲において、演色評価数R8と特殊演色評価数R9のうち少なくとも一方が、素子温度の上昇に従って増加する請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 素子温度60℃での特殊演色評価数R9の値が、素子温度25℃の場合の特殊演色評価数R9の値の1.2倍以上1.9倍以下である請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 5℃以上60℃以下の素子温度範囲における、特殊演色評価数R14と特殊演色評価数R15のうち少なくとも一方が最大値となる素子温度が、40℃以上60℃以下の範囲にある請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 素子温度25℃の場合よりも素子温度60℃の場合の方が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する複数の層の積層方向と一致する方向の発光色の、u’v’色度図のu’の値がより増加すると共にv’の値がより減少する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  7. 素子温度25℃の場合よりも素子温度60℃の場合の方が、発光色の色温度が低い請求項1乃至6のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  8. 素子温度25℃の場合よりも素子温度60℃の場合の方が、電流密度が同一の値となるために要する印加電圧が、低い請求項1乃至7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  9. 0℃以上60℃以下の素子温度範囲において、特殊演色評価数R8、特殊演色評価数R9、特殊演色評価数R14、特殊演色評価数R15のうち少なくとも一つの最大値が、素子温度10℃以上30℃以下の範囲にある請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  10. 0℃以上30℃以下の素子温度範囲において、平均演色評価数Ra、特殊演色評価数R8、特殊演色評価数R14、特殊演色評価数R15のうち少なくとも一つが、
    その最大値とその最小値との比が0.8以上であり、且つその値が70以上である条件を満たす請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  11. 0℃以上30℃以下の素子温度範囲において、特殊演色評価数R9の最大値とその最小値との比が、0.75以上であり、且つその値が40以上である請求項10に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  12. 素子温度25℃の場合よりも素子温度0℃の場合の方が、前記有機エレクトロルミネッセンス素子を構成する複数の層の積層方向と一致する方向の発光色の、u’v’色度図のu’及びv’の値が、より大きい請求項1並びに請求項9乃至11のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  13. 素子温度25℃の場合よりも素子温度0℃の場合の方が、発光色の色温度が低い請求項1並びに請求項9乃至12のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  14. 前記緑色域発光層の厚みに対する、前記赤色域発光層の厚みの比率が、2〜15%の範囲である請求項1乃至13のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  15. 請求項1乃至14のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を備える照明器具。
  16. 食品を保管するように構成されている保管器具と、前記保管器具内を照らすように構成されている請求項15に記載の照明器具とを備える食品保管装置。
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