以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。構造に関する図面は模式的なものであり、現実のものとは異なる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
まず、図1〜3、図6〜17を用いて、本発明の樹脂成形方法に用いる樹脂成形装置の全体構成と各構成部品について説明する。
図1は、樹脂成形装置の全体構成を示す。U字状に形成された基台4と、基台4上に設置された下プラテン3と可動プラテン2と上プラテン1とを備えている。上プラテン1と下プラテン3は、固定プラテンである。下プラテン3の四隅にそれぞれタイバー5が立設されており、タイバー5の上端に上プラテン1が固定され、可動プラテン2が上プラテン1と下プラテン3の間をタイバー5をガイドとして上下に自在に摺動できるように形成されている。
上プラテン1には、図示されていないが、上金型30と樹脂成形板31をクランプする機構が設けられており、上プラテン1に上金型30と樹脂成形板31を固定することができる。可動プラテンには、上金型30と対向する位置に下金型32が固定されている。このように、上金型30は固定型であり、下金型32は可動型である。
また、図2は、図1の樹脂成形装置の上金型30に取り付けられた圧力センサの配置を示す図である。図3は、図1の樹脂成形装置の上プラテン1に取り付けられたヒータユニットの配置、可動プラテン2に取り付けられたヒータユニット及び位置検出器の配置、駆動ネジとの位置関係を示す図である。図6は、図1の金型部分の詳細な構成を示す図である。以下、これらの図も参照しながら説明する。
駆動ネジ6a、6b、6c、6dは、タイバーの軸線方向と平行に、軸線の周りに回動可能に基台4上に立設されている。駆動ネジ6a〜6dは、可動プラテンの下面の四隅に取り付けられたナット部に各々螺合する。駆動ネジ6a〜6dは、4つの駆動モータにそれぞれ接続されている。駆動ネジ6aは駆動モータ60aと、駆動ネジ6bは駆動モータ60bと、駆動ネジ6cは駆動モータ60c(図示せず)と、駆動ネジ6dは駆動モータ60d(図示せず)と接続されている。駆動モータには、例えば、サーボモータ等が用いられ、駆動モータと駆動ネジはカップリング等を介して力が伝達される。
駆動手段を構成する駆動モ−タ60a〜60dは、トルク制御とした場合、高トルク化ができ、型締め力が上げられると共に、加減速機能も組込み滑らかな上下動が行われる。駆動ネジ6a〜6dは、駆動モータの正逆回転により押上げられ、あるいは引き下げられて、可動プラテン2の上下動を行なう。駆動モ−タ60a〜60dが同期運転を行うことで、可動プラテンの前後左右の姿勢を一定の状態に維持しつつ、上下動させることができる。
駆動モータ70は、駆動ネジ62を上下動させるが、可動プラテン2に螺合されているのではなく、可動プラテン2を貫通し、ナット部を介して後述する樹脂加圧プランジャ33に螺合されている。したがって、駆動モータ70及び駆動ネジ62は、可動プラテン2の動きには関係がなく、樹脂加圧プランジャ33を押し上げたり、引下げたりするものである。
圧力センサが上金型30又は下金型32のいずれか一方に組み込まれている。圧力センサには、歪ゲージを用いたロードセル等のセンサや圧電センサ等を用いることができる。この中でも、高温で正確に動作する水晶圧電式センサ等が望ましい。図2は、上金型30に圧力センサが配置された例を示しており、上金型の範囲で、各部分の圧力が測定できるように、9個の圧力センサ30a〜30iがほぼ等間隔でマトリックス状に設けられている。これらの圧力センサ30a〜30iは、型締め時の圧力を測定するために、各圧力センサの下面は、上金型30の下面から少し突出した構成となっており、後述する基板押さえ11に当接し、これを支持する構造になっている。
また、圧力センサではなく、非接触変位センサを上金型30又は下金型32のいずれか一方に組み込むようにしても良い。非接触変位センサは、対象物と接触しなくても、対象物の変位、対象物との距離(ギャップ)、厚み等を測定できるものであり、渦電流式、超音波式、光学式、静電容量式等がある。樹脂硬化のために金型の温度を高くしなければならないので、高温でも耐熱性のある渦電流式が望ましい。非接触変位センサを用いる場合は、例えば、図6に示すように、下金型32のスライドリング14の四隅のLの位置に設けられる。上記のように、圧力センサ又は非接触変位センサのいずれであっても、複数のセンサが2次元状に配置されており、その個数は限定されるものではない。
圧力センサ30a〜30iの出力は、A/D変換器83によりデジタル化されて、駆動制御部82に入力される。なお、非接触変位センサを用いる場合の信号の流れについても同様である。駆動制御部82は、いわゆるサーボアンプに相当するもので、指令部81からの指令に従い、駆動モータ60a〜60dを駆動させる。また、指令部81は、駆動モータに対して動作の指令を出すコントローラーであり、いわゆるシーケンサーと呼ばれるものに相当する。
また、上金型30の上面にはヒータユニット6が、下金型32の下面にはヒータユニット7がそれぞれ取り付けられている。ヒータユニットは、少なくとも1つの温度センサと1つのヒータとがセットになったものであり、ヒータユニット6、7は、シート状のヒータ又は複数のパイプ状のヒータと温度センサとで構成されている。
また、上プラテン1と可動プラテン2にもヒータユニットが設置されている。図3に示されるように、上プラテン1に設置されたヒータユニット10a、10b、10c、10dは、上プラテン1の平面視における四角形の各辺の中間位置であって、上プラテンの上面側寄りに取り付けられている。また、可動プラテン2に設置されたヒータユニット20a、20b、20c、20dは、可動プラテン2の平面視における四角形の各辺の中間位置であって、可動プラテンの下面側寄りに取り付けられている。上プラテン1と可動プラテン2に取り付けられた合計8個のヒータユニットは、それぞれ、例えば、4つのヒータと1つの温度センサで構成される。
これらのヒータユニット6、7、10a〜10d、20a〜20dは、温度制御部84に接続されており、温度制御部84により、各々のヒータユニットを独立して制御できるようになっている。ヒータユニットの役割は、上金型30を均等な温度分布にし、下金型32も均等な温度分布にして、樹脂の成形不良を防止している。また、上金型30と下金型32の温度分布による歪や反りを防止するものである。さらに、上プラテン1と可動プラテン2に設置されているヒータユニットも、上プラテン1を均等な温度分布にし、可動プラテン2も均等な温度分布にして、上プラテン1内の温度分布差及び可動プラテン2内の温度分布差による歪や反りを防止するようにしている。
加えて、以下のような目的もある。図6に示されるように、上金型30の温度を調節するためのヒータユニット6と上プラテン1との間には断熱材8が配置されており、ヒータユニット6の熱が上プラテン1になるべく伝導しないようにしている。しかし、それでもヒータユニット6の熱は、上プラテン1に伝導し、上プラテン1に影響を与える。また、可動プラテン2とヒータユニット7との関係も同様で、ヒータユニット7と可動プラテン2との間には断熱材9が配置されており、ヒータユニット7の熱が可動プラテン2になるべく伝導しないようにしているが、それでも、ヒータユニット7の熱は、可動プラテン2に伝導し、可動プラテン2に影響を与える。
したがって、ヒータユニット10a〜10d、20a〜20dにより、上プラテン1及び可動プラテン2の温度分布を均等にしていたとしても、ヒータユニット6、7の影響により、温度分布に大きなバラツキが発生し、上プラテン1と可動プラテン2に反りや歪みが生じる。したがって、後述するように、あらかじめ、上金型30と下金型32との平行出しを行ったとしても、平行度調整時と比較して、樹脂硬化時の金型の温度が相違すれば、樹脂成形時の可動プラテン及び上プラテンの温度分布は均一ではなくなり、歪や反りが発生し、最初に測定した平行度補正データが有効ではなくなる。
上記の問題を解消するために、樹脂硬化のために上金型30を所定の温度まで上昇させたときの到達温度に対して、上金型30に影響を受けた上プラテン1の温度分布で最も高い温度をあらかじめ測定しておく。また、同様に、下金型32に影響を受けた可動プラテン2の温度分布で最も高い温度をあらかじめ測定しておく。
例えば、上金型30及び下金型32の到達温度がTM℃のときの上プラテン1の温度分布のうち最も高い温度がT1℃、可動プラテン2の温度分布のうち最も高い温度がT1℃であったとする。このとき、TM>T1である。
次に、平行度調整を行う前の状態で、ヒータユニット10a〜10dを用いて上プラテン1の全体の温度をT1℃、ヒータユニット20a〜20dを用いて可動プラテン2の全体の温度をT1℃になるように、温度制御部84で温度調節を行う。そして、この温度を維持する。この状態で、樹脂成形を行った場合、金型の温度の影響があったとしても、上プラテン1と可動プラテン2は、T1℃を超える温度にはならず、かつ、上プラテン1と可動プラテン2の各々の温度分布は均一になっているので、上プラテン1及び可動プラテン2に反りや歪みの発生が防止される。
したがって、平行度の調整は、上金型30及び下金型32の温度を樹脂成形時の温度まで上昇させ、かつ、上プラテン1及び可動プラテン2の温度が、上記のように、樹脂成形時の金型の温度に影響されない温度に調節されていれば、平行度調整時の補正データが非常に有効なものとなる。これにより、非常に正確な上金型と下金型の型面相互間の平行度の調整を行うことができ、成形型に均等圧の型締めができ、成形不良を防止することができる。一例として、金型全体の到達温度が135℃のときに、上プラテン1及び可動プラテン2の全体の温度は80℃程度に設定される。
可動プラテン2の外側面には、長手方向をタイバーの軸線方向と平行とし、上プラテン1側に先端を延出させるようにして位置検出器が4つ取り付けられている。位置検出器には、例えば、直線的な位置を検出できるリニアスケールを用いるようにしても良い。図面では、リニアスケールを用いた例を示している。位置検出器41、42、43、44は、図1及び図3に示すように、タイバー5の外側において、可動プラテン2の四隅に設置されている。それぞれのリニアスケールは測定器とスケールで構成されている。
図1では、位置検出器41、42について、スケールと測定器を図示したが、図3では、測定器の記載を省略している。また、位置検出器41〜44にリニアスケールを用いた場合は、図示はしていないが、例えば、下プラテン3等の固定された構造物から延設された支持棒の先に測定器が取り付けられ、スケールの目盛りを読みとる。なお、可動プラテン2にスケールを取り付けているが、下プラテン3にスケールを取り付け、可動プラテン2に測定器を取り付けてもよい。
リニアスケールには、透過形光電式スケール、反射形光電式スケール、電磁誘導式スケール等が用いられる。また、リニアスケール以外に、位置検出器41〜44として、レーザ距離計や超音波距離計等を用いて、可動プラテン2と上プラテン1又は下プラテン3との距離を測定することにより、可動プラテン2の位置を検出するようにしても良い。このように、位置検出器41〜44は、樹脂成形動作に応じて可動プラテン2が昇降移動する際に、可動プラテン2の位置を検知する。位置検出器41〜44で検出されるパルス信号は、駆動制御部82へ送信される。
なお、位置の検出は、可動プラテン2の初期の位置を0にセットし、可動プラテン2が上昇したときには、位置検出器41〜44で検出されるパルス信号の数に基づいて算出される。
図6によれば、上金型30上にはヒータユニット6が配置され、ヒータユニット6と上プラテン1との間には断熱材8が配置されている。
下金型32は、スライドリング14、加圧ブロック16、可動部材15で構成されている。可動部材15は、上下に移動できる機構であれば良い。可動部材15は、受動的に上下動させる場合には、例えばバネ等の弾性部材が用いられる。能動的に上下動させる場合には、アクチュエーター等の駆動機構が用いられる。下金型32の加圧ブロック16の下にはヒータユニット7が配置され、ヒータユニット7の下面には、断熱材9が配置されている。また、加圧ブロック16の中央部には、樹脂加圧プランジャ33が組み込まれている。
樹脂成形時には、樹脂が形成される基板12と、この基板12の全体を押さえるための基板押さえ11と、樹脂を所定の形状に形成するための成形キャビティ等を備えた樹脂成形板31が配置される。樹脂成形板31は、例えば、被成形品を樹脂で所定の形状にモールドしたり、封止するようにした樹脂成形専用の金型であり、被成形品の種類や数に応じて、樹脂成形板31を異なる種類のものに取り換えることにより、所望の樹脂を成形することができる。また、樹脂材料が投入される領域には、樹脂フィルム17が下金型32上に配置される。
樹脂フィルム17は、単なる離型フィルムとは異なる。一般的な圧縮成形では、ETFE(ポリテトラフルオロエチレン)フィルムが用いられており、樹脂成形過程において樹脂材料とはくっつかないようになっている。このように、離型性があるため、以下のような問題が発生する。
図9は、樹脂成形材料18を樹脂材料載置空間に投入した後、隙間Dより真空引きを行う工程を示す図であるが、樹脂フィルム17が離型性を有すると以下のような状態になる。樹脂フィルム17は、例えば、下金型32の加圧ブロック16とスライドリング14との間の狭い隙間を通じて真空引きされることにより、下金型32上に吸着される。これは、大気圧で下金型32に押しつけていることになる。上記真空吸着されるときに、引き延ばされた状態になり、樹脂フィルム17は弾力性を有するため、元の状態に戻ろうとする復元力が発生する。
このため、図9のように、成形プロセスの途中で、樹脂フィルム17の上面も真空になると、樹脂フィルム17を押しつけている力がなくなり、樹脂フィルム17は復元力により縮小し、下金型32から浮き上がるという状態が発生する。樹脂フィルム17と下金型32との間の真空度を大きくしたとしても、樹脂フィルム17上の真空度との差はそれほど大きくなく、樹脂フィルム17を下金型32に押し付ける力としては非常に弱いものとなる。そして、ETFEは、上記のように離型性を有するため、下金型32から剥がれてしまうようになり、成形不良が発生する原因となる。
そこで、樹脂フィルム17は、プラスチック等の樹脂を基材に用い、基材が下金型32と接する面に接着性を持たせ、基材が樹脂成形板31と対向する面は、離型性を持たせるように形成されている。これは、例えば、以下のように形成することができる。離型性を有する接着性を有しない樹脂であるETFEを基材に用い、このETFEが下金型32に接する面に接着層をコーティングした2層構造とすることができる。接着層は、例えば、シリコン系やアクリル系の微粘着接着剤等をコーティングして形成すれば良い。
さらに、図17のように、樹脂フィルム17を3層構造とすることもできる。17bは、基材に相当する部分で、プラスチック等の樹脂を用いる。樹脂材料の中でも、PET(ポリエチレンテレフタレート)は、一般産業、電気電子、包装、グラフィック、ディスプレイ産業等において多様な用途として用いられており、供給先が多いため、安価であり、需給も容易である。このため、例えば、基材17bには、PETやPEN(ポリエチレンナフタレート)を用いるようにしても良い。
基材17bの上には離型層17aが形成されている。離型層17aは、樹脂成形材料18側又は樹脂成形板31側に形成される。離型層17aは、離型性を有する層であり、樹脂成形材料や金型とくっつきにくくするためのものである。離型層17aは、離型剤をコーティングして形成しても良いし、離型性を有する樹脂、例えばETFEを基材17b上に接合するようにしても良い。
ここで、例えば、基材17bに用いることができるPETやPENは、接着性を有するので、離型層17aと基材17bの2層構造にしても良いのであるが、さらに接着力を付与するために、接着層17cを基材17bの下面に形成するようにしても良い。接着層17cは下金型32側に形成される。
以上のように、樹脂フィルム17を形成することで、図9のような真空引きの工程において、樹脂フィルム17は、下金型32から剥離することなく、樹脂成形工程を進めることができ、他方、樹脂成形材料18や樹脂成形板31の一部が樹脂フィルム17にくっつくことを防止できる。
基板12上に配置された被成形品に、所定形状の樹脂をモールドないしは成形するために、樹脂成形板31が用いられる。樹脂成形板31の一例を図12に示す。図13は、図12の樹脂成形板の一部を拡大したものである。図13において、樹脂成形板31の樹脂が注入される領域のA−A断面を示すのが図14である。図14に示されるように、樹脂流入孔310と樹脂成形キャビティ311は、ランナー312により連結されている。
樹脂成形材料は、図14の下側から樹脂流入孔310に供給され、樹脂流入孔310からランナー312を経由して成形キャビティ311内に満たされる。これにより、複数の樹脂流入孔310は、それに対応する複数の成形キャビティ311と一つの樹脂供給空間20とを連結する構造となっている。ここで、基板12側に形成される樹脂は、破線で示した成形キャビティ311及びランナー312の領域の樹脂であり、樹脂流入孔310に存在する樹脂は、最終的に取り除かれる。
樹脂成形材料18に対する樹脂成形板31の表面接着特性を樹脂フィルム17に対して相対的に下げるために、樹脂成形板31の表面には離型性を有するめっき被膜313が形成されている。めっき被膜313は、成形キャビティ311内面とランナー312内面と樹脂流入孔310内面に形成され、さらには、樹脂成形板31の基材319の表面及び裏面に至るまで全面に連続的に形成される。樹脂成形板31の材料には、通常Fe(鉄)が用いられ、その表面に離型性を有するめっき被膜313としてPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を含むNi(ニッケル)を電解メッキにより形成する。これは、電解ニッケルメッキにPTFE粒子を分散共析等させて形成する。
また、樹脂成形材料18として、半導体樹脂を用いる場合は、上記のめっき被膜では削られてしまう恐れがあるため、離型性を有するめっき被膜313としてニッケル−タングステン(Ni−W)合金からなる被膜を形成するようにしても良い。これは、電解メッキ処理により形成される。以上のように、離型性を有するめっき被膜を形成することで、多数回の樹脂成形にわたって良好な離型性を維持することが可能になる。また、めっき被膜のため、膜厚をナノメートルオーダーまで薄くすることができる。
次に、図14とは異なる構造を有する樹脂成形板の断面を図15に示す。図15に示される成形板では、1つの樹脂流入孔(ゲート)320と複数の成形キャビティ321が1つのランナー322により連結されている。樹脂成形材料は、Eの矢印で示される方向から樹脂流入孔320に注入され、ランナー322を経由して複数の成形キャビティ321内にそれぞれ満たされる。ここで、基板12側に形成される樹脂は、破線で示した成形キャビティ321及びランナー323の領域の樹脂であり、樹脂流入孔320に存在する樹脂は、最終的に取り除かれる。
図15のように構成することで、図14と比較して樹脂成形板を比較的簡単に作製することができ、被成形品に対する樹脂成形を一度に大量に処理することが可能になる。
樹脂成形板の基材329の表面には離型性を有するめっき被膜323が形成されている。めっき被膜323は、複数の成形キャビティ321内面とランナー322内面と樹脂流入孔320内面に形成され、さらには、樹脂成形板の基材329の表面及び裏面に至るまで全面に連続的に形成される。
なお、成形キャビティ内面とランナー内面と樹脂流入孔内面にだけめっき被膜を形成する場合には、めっき被膜が不要な領域にマスクを設けてめっき処理が行われないようにするか、あるいは、基材の全面にめっき被膜を形成した後に、不要な領域のめっき被膜を砥石や刃物等で削って除去すれば良い。
また、基板12と樹脂成形板31との間に、わずかな隙間を持たせるために、樹脂成形板31上又は基板12上に突起物を形成するようにしても良い。これは、後述するが、樹脂成形時に、樹脂成形材料18に気泡が入らないように、樹脂供給空間20内の気体を真空引きして真空状態にするのであるが、この時点で、完全に真空状態にすることはできない。このため、樹脂成形材料18にわずかに気泡が入ってしまうが、このような気泡を逃がすためのものである。
したがって、樹脂成形時の最初は、一定の隙間を維持するが、成形キャビティ311に溶融樹脂が注入された後は、完全に基板12と樹脂成形板31が合わさるように、一定以上の圧力がかかれば、突起形状が崩れるような材質が良い。例えば、上記突起物は、Al(アルミ)で構成される。また、基板12の凹凸にもよるが、例えば、高さを15μm〜50μm程度にしておけば、十分に残りの気泡等の気体を排出することができる。
図12では、樹脂成形板31側に、突起物315を設けた例が示されている。図では、樹脂成形板31の四隅にそれぞれ突起物315が形成されているが、基板12の撓み等を考慮した場合、図13に示すように、各成形キャビティ311の周囲を囲むように複数の突起物を設けるようにしても良い。また、樹脂成形板31に密着して配置される基板12側に突起物を設けるようにしても良い。
図16は、基板12側に突起物315が形成された場合の一例を示す。121が樹脂がモールドされる被成形品の位置を示している。基板12上に、図16のように突起物315を直接形成しても良いし、レジスト120として基板12上に形成するようにしても良い。なお、突起物の形成位置は、樹脂成形板31側に形成するのと同様、基板12の四隅に形成するようにしても良く、その位置は限定されるものではない。
次に、上金型30と下金型32の平行度を調整する動作が伴った樹脂成形方法を、図4、図7〜図11を参照しながら、以下説明する。
まず、図7に示すように、上プラテン1に装着された上金型30に、基板押さえ11、基板12、樹脂成形板31をセットする。これらの装着は、図示されていないが、例えば、上プラテン1に設けられたクランプ機構により行われる。また、上金型30に対向するように下金型32が可動プラテン2上に配置される。
ここで、図4のS1に示されるように、異なる種類の金型又は樹脂成形板に交換した場合、あるいは、金型の温度を変更した場合には、S3に進みヒータユニットによる温度調節を行い、その後、型面相互間の平行度の調整を行う。上金型30及び下金型32の温度を変更する場合とは、例えば、樹脂の硬化温度を変更した場合等である。なお、樹脂成形板を使用せずに、上金型又は下金型に成形キャビティが設けられている装置等の場合は、樹脂成形板31等をセットせずに、平行度の調整を行う。
ヒータユニットによる温度調節は、上述したように、上金型30、下金型32、上プラテン1、可動プラテン2に取り付けられた各ヒータユニットを温度制御部84で制御し、所定の温度まで上昇させ、その温度を維持するようにする。これにより、上述したように、上金型30及び下金型32の温度と上プラテン1及び可動プラテン2との温度が一定の関係に維持されるとともに、それぞれの部材の全体が均等な温度に維持される。
次に、樹脂フィルム17等は配置せずに、すなわち、樹脂成形を行わない状態で、指令部81からの指示により、駆動制御部82の制御で、駆動モータ60a〜60cを起動させ、可動プラテン2を上昇させて、上金型30と下金型32とを合わせて軽く閉める。
このときの荷重を圧力センサ30a〜30iで計測し(S4)、計測された圧力信号は、A/D変換器83に送信され、デジタル信号に変換されて駆動制御部82に送信される。上金型30内に配置されたそれぞれの圧力センサからの圧力信号を確認して、それらの圧力が均等になるように駆動モータを動作させる。
例えば、9個の圧力センサからの圧力信号がA1、A2、A3、A4、・・・、A9であり、この中で信号の値が、A3が最も小さい場合は、A1−A3=E1、A2−A3=E2、A4−A3=E4、A5−A3=E5、A6−A3=E6、A7−A3=E7、A8−A3=E8、A9−A3=E9と補正量を算出し(S5)、これらの値E1、E2、E4、E5、E6、E7、E8、E9が0になるように又は一定の許容値内に収まるように、4つの駆動モータを駆動させるとともに、位置制御により可動プラテン2を成形材料投入位置まで移動させる。上記の例では、A3の値を基準としたが、基準とする値は、他の数値であっても良い。
可動プラテン2の上下動に応じて、位置検出器41〜44から位置信号が送信されてきており、可動プラテン2の四隅の位置情報が認識されるが、上記のように、各圧力センサからの相互の差がなくなるようにしたときの位置検出器41〜44からの各位置情報に補正量を適用する(S6)。例えば、駆動制御部82内の位置カウンタで位置検出器41〜44からのパルス信号を計数している場合は、各圧力センサからの相互の差がなくなった時点で、各位置検出器に対応する位置カウンタの相互の差を0にするようにすれば良い。
これにより、可動プラテン2及び下金型32の前後左右の傾きが調整されて、上金型30と下金型32とが平行の状態になる。以降は、可動プラテン2の昇降作動は同期運転を行えばよい。可動プラテン2の昇降作動は位置検出器からのパルス信号より位置が検出されるので、常に平行を保つことができる。このようにして、各駆動モータを等距離駆動させて可動プラテン2の姿勢を維持したまま、移動させることができる。
上金型30と下金型32との平行度を調整した後、すぐに、指令部1により駆動制御部82を介して駆動モータ60a〜60dを駆動させて、可動プラテンの四隅を同じ距離下降させて、樹脂成形開始位置へ可動プラテン2を移動させる。図4の場合は、樹脂成形開始位置は、成形材料投入位置である(S7)。
一方、圧力センサの代わりに、上述した非接触変位センサを用いた場合は、下金型32を上金型30に近接させたときに、上金型30と下金型32との間の隙間の四隅のそれぞれの距離が検出できるので、上金型30と下金型32とを合わせて軽く閉める必要はない。そして、非接触変位センサで検出された信号に基づき、上記圧力センサの場合と同様に補正量を算出し、4つの駆動モータを駆動させ、可動プラテンの位置情報に補正量を適用する。
このとき、非接触変位センサの分解能にもよるが、成形材料投入位置まで下金型32を近づけたときに、上金型30と下金型32との間の隙間の四隅の距離が測定できれば、その位置で、平行度を調整すれば良いので、無駄な動きが省略できる。この場合には、平行度の調整を行った後、可動プラテン2を移動させることなく、すぐに、樹脂成形工程を開始することができる。
次に、樹脂成形を開始するために、下金型32の上に樹脂フィルム17を敷き、真空機器(図示せず)により真空引きして、図7のように樹脂フィルム17を下金型32の上部に吸着させる。樹脂フィルム17は、下金型32の加圧ブロック16とスライドリング14との間の狭い隙間を通じて真空吸着される。この樹脂フィルム17により、溶融樹脂が下金型32と直接接触せず、その溶融樹脂が下金型32の下方に漏れないようにしている。
このような過程により、下金型32の上に、加圧ブロック16とスライドリング14との間の高低差により窪んだ空間を有する樹脂供給空間20が形成される。樹脂供給空間20により、加圧工程中、溶融樹脂の外部漏れを防止することができる。
次に、図8に示すように、上記樹脂供給空間20内に一定量の固形または液状の成形材料となる樹脂成形材料18を注入又は投入する。
次に、指令部81からの位置制御指令により、駆動制御部82を介して駆動モータを作動させ、図9に示すように、真空引き位置まで可動プラテン2を上昇させる(S8)。真空引き位置は、樹脂成形板31とスライドリング14上のフィルム17との間に、わずかな隙間Dが形成されるように設定される。真空機器(図示せず)により、この隙間Dから樹脂供給空間20に存在する気体を真空引きにより排気する。
真空引き動作が完了すると、指令部81からの指令に基づき、駆動制御部82は、各駆動モータ60a〜60dをトルク制御により駆動させ、可動プラテン2を上昇させる。このとき、各駆動モータ60a〜60dは、トルク制御で作動しているので、モータトルクと樹脂成形板31からの反力とが等しくなった時点で、各駆動モ−タは停止する。
より詳しく説明すると、図10に示すように、駆動モータ60a〜60dにより可動プラテン2をトルク制御で上昇させると、可動部材15の圧縮を伴い、加圧ブロック16がさらに上昇し、樹脂供給空間20内の樹脂成形材料18を加圧するようになる。この加圧により、樹脂供給空間20は次第に縮小していく。樹脂供給空間20が減少しながら、直接的に樹脂成形材料18を加圧するようになり、加圧された樹脂成形材料18は、樹脂成形板31に設けられた樹脂流入孔310からランナー312を介して成形キャビティ311内に注入される。そして、所定のトルクに達すると、駆動モータは停止する。
図10に示されるように、駆動モータが停止して型締めが行われた後、図11に示されるように、樹脂加圧プランジャ33で樹脂成形材料18を加圧し、ヒータユニット7からの熱を下金型32を介して、及びヒータユニット6からの熱を上金型30を介して受熱して硬化させる。
ここで、樹脂加圧プランジャ33は、樹脂成形材料18に対する加圧又は減圧を独立して行うものである。したがって、樹脂成形材料18に対する圧力が適正でない場合は、この樹脂加圧プランジャ33をさらに上下動させて微調整することができる。
図11の状態を維持し、上金型30、下金型32からの加熱で一定の時間を経て硬化させ、これにより、基板12には、樹脂成形板31の成形キャビティ311及びランナー312の形状に基づいてレンズ状の封止材が形成される。この際、除去すべき剰余の固形樹脂は、樹脂流入孔310から樹脂成形板31と樹脂フィルム17の間にそのまま残っている。
樹脂成形板31内に押し込まれた樹脂材料の硬化成形が完了すると、各駆動モ−タ60a〜60dの逆回転駆動により、各駆動ネジ6a〜6dは逆回転となって可動プラテン2を引き下げる。上記のように、可動プラテン2を下降させることにより、下金型32を下降させ、上金型30と下金型32を離隔させる。このとき、上金型30、基板押さえ11、基板12、及び樹脂成形板30は、上プラテン1に固定されているので、下金型32及び下金型32の上面に設けられた樹脂フィルム17から分離される。
上金型30と下金型32を離隔させるときには、低速で可動プラテン2を下降させ、樹脂成形板31の樹脂流入孔310部分の樹脂を綺麗に除去できるようにする。このとき可動プラテン2の移動速度は、例えば、移動開始から2秒程度かけて、5mm/秒前後の速度になるように加速される。
上記のように制御して、可動プラテン2を下降させると、樹脂流入孔310部分で硬化された樹脂と樹脂フィルム17上に残った剰余固形樹脂は、樹脂フィルム17に接着されたまま、樹脂フィルム17と一緒に樹脂成形板31から分離される。したがって、樹脂成形板31の成形キャビティ311及びランナー312内において硬化された樹脂の表面から剰余固形樹脂がきれいに除去される。
可動プラテン2が基板取り出し可能位置まで下がった時点で各駆動モータを停止させ(S11)、樹脂が形成された基板、すなわち成形品を取り出して樹脂成形工程を完了する。
他方、最初のS1において、異なる種類の金型への交換、異なる種類の樹脂成形板への交換、金型の温度の変更のいずれにも該当しない場合には、S2のヒータユニットによる温度調節に進む。S2のヒータユニットによる温度調節は、前述のS3のヒータユニットによる温度調節と同様に行われる。そして、S4〜S6による型面相互間の平行度の調整を行わずに、S7〜S11までの樹脂成形工程を実施する。S7〜S11の工程は、既に説明したとおりである。以上の動作を繰り返すことで、樹脂の成形不良を防止し、効率良く生産を行なうことができる。
図4では、最初に、S1に示されるように、異なる種類の金型又は樹脂成形板に交換した場合、あるいは、金型の温度を変更した場合のみ、型面相互間の平行度の調整を行い、その後に、樹脂成形工程を実施するようにし、異なる種類の金型への交換、異なる種類の樹脂成形板への交換、金型の温度の変更のいずれにも該当しない場合には、型面相互間の平行度の調整を行わずに、樹脂成形工程を実施するようにした。しかし、図5に示すように、異なる種類の金型への交換、異なる種類の樹脂成形板への交換、金型の温度の変更等の条件に関係なく、常に、型面相互間の平行度の調整を行ってから、樹脂成形工程を実施するようにする方が望ましい。図5のS3〜S11の工程は、図4で説明したS3〜S11の工程と同じであるので、説明は省略する。