JP5685136B2 - 配管用成形品 - Google Patents
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Description
本発明の被膜形成用組成物は、SP値が8.0以上かつ11.0未満である有機溶媒を含んでいる。望ましくは、上記有機溶媒のSP値は9.0以上かつ10.0未満である。上記有機溶媒のSP値を上記範囲とすることによって、上記有機溶媒と、塩化ビニル系樹脂とのSP値が近くなる。そのため、塩化ビニル系樹脂成形品に被膜形成用組成物の被膜を形成した際に、上記被膜と塩化ビニル系樹脂成形品との密着性を高めることができる。
本発明の被膜形成用組成物は、上記有機溶媒に溶解可能な合成樹脂を含んでいる。本発明において、合成樹脂が有機溶媒に溶解可能であるとは、23℃の条件下において、1リットル中の上記有機溶媒に対して10gの合成樹脂が完全に溶解することを示す。合成樹脂が有機溶媒に完全に溶解するとは、上記有機溶媒に上記合成樹脂を投入して攪拌した後に、上記有機溶媒中にゲル状の組成物が残っていないことを示す。ゲル状の組成物が残っていないことについて目視にて確認できない場合には、濾紙等を用いることにより確認する。本発明の被膜形成用組成物においては、上記合成樹脂は、上記有機溶媒に完全に溶解していることが好ましい。
本発明の被膜形成用組成物は、紫外線吸収剤を含んでいる。上記紫外線吸収剤は、塩化ビニル系樹脂成形品の劣化の原因となる紫外線を吸収する。そのため、被膜形成用組成物による被膜が形成された塩化ビニル系樹脂成形品は、屋外において長期間使用され続けたとしても、紫外線による劣化が抑制される。従って、上記塩化ビニル系樹脂成形品の耐候性を高めることができる。
本発明の被膜形成用組成物は、被膜形成用組成物の光・熱・水などによる劣化を抑制するために、光安定剤を含んでいる。上記光安定剤としては、好ましくは、ヒンダードアミン系光安定剤が使用される。上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)〔[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル〕ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、デカン二酸ビス[2,2,6,6−テトラメチル−1−オクチルオキシ)−4−ピペリジニル]エステルなどや、これらの混合物、変性物、重合物及び誘導体などが挙げられる。上記光安定剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の被膜形成用組成物は、上述した各成分の他に、本発明の目的を阻害しない範囲で、必要に応じて様々な添加剤を適量含んでいてもよい。上記添加剤としては、例えば、有機安定剤、無機安定剤、成膜助剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、酸化防止剤、防微剤、防腐剤、凍結安定剤、帯電防止剤等の各種安定剤や、体質顔料、着色顔料、防錆顔料等の顔料などが挙げられる。
本発明の配管用成形品は、ポリ塩化ビニル系樹脂及び/または塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂からなる配管用成形体と、上記配管用成形体の表層上に形成された被膜とを備える。上記被膜は、本発明の被膜形成用組成物を上記配管用成形体の表層上に付与した後、上記被膜形成用組成物に含まれる上記有機溶媒を除去することにより得られる。そのため、上記被膜が形成されている本発明の配管用成形品では、本発明の配管用成形品と塩化ビニル樹脂製の継手とを塩化ビニル系樹脂用接着剤を介して接着接合することができ、かつ本発明の配管用成形品の耐候性を高めることができる。
・ポリ塩化ビニル:徳山積水工業(株)製、TS−800E、重合度800
・ポリ塩化ビニル:徳山積水工業(株)製、TS−640M、重合度640
・ポリ塩化ビニル:信越化学工業(株)製、TK−2500P、重合度3000
・紫外線吸収剤:BASFジャパン(株)製、TINUVIN 326、ベンゾトリアゾール系
・光安定剤:BASFジャパン(株)製、TINUVIN770DF、ヒンダードアミン系
・市販品塗料:関西ペイント(株)製、ビニボン100、塩化ビニル樹脂系塗料
・市販品塗料:大日本塗料(株)製、ビニローゼ、塩化ビニル樹脂系塗料
・市販品塗料:日本ペイント(株)製、テラベールAE、アクリル樹脂系塗料
表1に記載の有機溶媒及び合成樹脂を用いて、実施例1〜11及び比較例1〜10の被膜形成用組成物を、以下の方法で調製した。
・板状サンプルの作製
上記の製造方法により得られた上記被膜形成用組成物を、17cm×17cm×0.2cmの硬質塩化ビニル樹脂製プレス板の上に、棒状のバーコーターを使用して塗布した。これにより、上面に表1に記載の厚みの上記被膜形成用組成物液が塗布された上記プレス板を得た。その後、上記被膜形成用組成物が塗布された上記プレス板を、20℃雰囲気下において1時間放置することにより、上記被膜形成用組成物に含まれる上記有機溶媒を蒸発させて、表1に記載の厚みの被膜が上面に形成された板状サンプルを得た。
上記の製造方法により得られた上記被膜形成用組成物に、表1に記載の有機溶媒を下記の所定量さらに添加して、ディッピング液を得た。上記ディッピング液に、管端に封をした硬質塩化ビニル樹脂製パイプ(積水化学工業(株)製、商品名「プラントVPパイプ」、呼び径20)を封をした管端を下向きにしてパイプを縦方向に浸した。次に、上記硬質塩化ビニル樹脂製パイプを15cm/sの引き上げ速度で、上記ディッピング液から引き上げた。これにより、表層上に表1に記載の厚みの上記ディッピング液が塗布された上記硬質塩化ビニル樹脂製パイプを得た。その後、表層上に上記ディッピング液が塗布された上記硬質塩化ビニル樹脂製パイプを、20℃雰囲気下において1時間放置することにより、上記ディッピング液に含まれる上記有機溶媒を蒸発させて、表1に記載の厚みの被膜が表層上に形成されたパイプ状サンプルを得た。
実施例1〜11及び比較例1〜10における被膜形成用組成物および被膜が形成されたサンプルについて、以下の方法により評価を行った。
上記被膜形成用組成物の調製工程において、上記合成樹脂の上記有機溶媒への可溶性を判定した。判定基準において可溶とは、上記有機溶媒に上記合成樹脂を投入して攪拌した後に、上記有機溶媒中にゲル状の組成物が残っていないことを示す。ゲル状の組成物が残っていないことについて目視にて確認できない場合には、濾紙等を用いることにより確認した。判定結果を表1に示した。
上記の方法で作製したパイプ状サンプルを切断し、長さ30cmのパイプ状サンプルを2本用意した。上記2本のパイプ状サンプルと、呼び径20の硬質塩化ビニル樹脂製の継手とを、一般塩化ビニル樹脂用接着剤(積水化学工業(株)製、NO.73接着剤)を介して接着して、上記2本のパイプ状サンプルを接続した。続いて、接続された上記パイプ状サンプルを23℃雰囲気下において24時間放置することにより、上記接着剤を乾燥させた。その後、接続された上記パイプ状サンプルの内部に水を流し、上記パイプ状サンプルに水圧を負荷させた。このとき、管が破壊された又はパイプが挿入抜け破壊された時の、接続された上記パイプ状サンプルの負荷圧力を計測した。
◎:被膜無しの状態の100%以上。
○:被膜無しの状態の90%以上。
△:被膜無しの状態の80%以上。
×:被膜無しの状態の80%未満。
上記の方法で作製した板状サンプルを用いて、JIS K5600−5−6に記載の密着性試験(クロスカット法−100マス)により、基材となる硬質塩化ビニル樹脂製プレス板と板状サンプルに形成された被膜との密着性を、以下の基準で評価した。評価結果を表1に示した。
◎:まったく剥がれなし。
○:剥れ面が全体の5%未満。
△:剥れ面が全体の15%未満。
×:剥れ面が全体の30%未満。
上記の方法で作製した板状サンプルを、メタルウェザー(ダイプラ・ウィンテス(株)製、商品名「ダイプラ メタルウェザー」)に設置した。次に、上記メタルウェザーを以下の運転モードで運転することにより以下のL、D及びシャワーの条件を繰り返して、上記板状サンプルに紫外線を120時間照射した。その後、上記板状サンプルの表面状態の色差ΔE値を色差計(東京電色(株)製、商品名「カラーアナライザー」)によりを算出し、評価した。評価結果を表1に示した。
L:ブラックパネル温度65℃、湿度50%、紫外線照射強度80mW/mm2、4時間
D:ブラックパネル温度30℃、湿度98%、4時間
シャワー:D時の前後各30秒にわたって、上記板状サンプルに水をシャワーする。
◎:ΔEが0.5未満。
○:ΔEが1.0未満。
△:ΔEが3.0未満。
×:ΔEが3.0以上。
上記の方法で作製したパイプ状サンプルを、上記メタルウェザーを用いて、上記と同様にして紫外線を120時間照射した。その後、衝撃性能をJIS K7211に記載の硬質プラスチックの落錘衝撃試験方法通則により、衝撃低下率を測定した。
◎:被膜を形成する前の上記硬質塩化ビニル樹脂製パイプからの衝撃低下率が10%未満。
○:被膜を形成する前の上記硬質塩化ビニル樹脂製パイプからの衝撃低下率が30%未満。
△:被膜を形成する前の上記硬質塩化ビニル樹脂製パイプからの衝撃低下率が50%未満。
×:被膜を形成する前の上記硬質塩化ビニル樹脂製パイプからの衝撃低下率が50%以上。
被膜形成用組成物に含まれる有機溶媒について、実施例1のTHF(SP値=9.1)、実施例2のシクロヘキサン(SP値=8.2)及び実施例3のDMAc(SP値=10.8)を用いた場合には、良好な接着性能及び耐候性能が得られた。これらに対し、比較例1のジメチルシロサキン(SP値=5.5)及び比較例2のメタノール(SP値=14.5)を用いた場合には、合成樹脂が上記有機溶媒に全く溶解せず、被膜の形成ができなかった。
被膜形成用組成物に含まれる合成樹脂について、実施例4のアクリルを用いた場合には、良好な接着性能及び耐候性能が得られた。これに対し、比較例3のフッ素樹脂を用いた場合には、有機溶媒であるTHFに溶解しなかった。そのため、基材との接着強度が著しく低下し、接着性能及び耐候性能も著しく悪化した。
被膜形成用組成物に含まれる合成樹脂として、ポリ塩化ビニル系樹脂の重合度を変化させた。実施例5及び6のいずれの場合も良好な接着性能及び耐候性能が得られた。
被膜形成用組成物に含まれる紫外線吸収剤の添加量について、実施例7の5重量部の場合には、耐候性試験において色調及び物性がわずかに悪化したものの、充分な接着性能及び耐候性能が得られた。実施例8の200重量部の場合にも、耐候性試験において色調がわずかに悪化したものの、充分な接着性能及び耐候性能が得られた。これらに対し、比較例4の1重量部では、耐候性試験において色調及び物性が著しく劣っていた。比較例5の300重量部では、サンプルの表層に上記紫外線吸収剤のブリードが生じた。そのため、耐候性試験における色調の著しい悪化が見られた。
被膜形成用組成物に含まれる光安定剤の添加量について、実施例9の5重量部の場合には、耐候性試験において色調及び物性がわずかに悪化したものの、充分な接着性能及び耐候性能が得られた。実施例10の50重量部の場合にも、耐候性試験において色調がわずかに悪化したものの、充分な接着性能及び耐候性能が得られた。これらに対し、比較例6の1重量部の場合には、耐候性試験において色調及び物性が著しく劣っていた。比較例7の100重量部の場合には、サンプルの表層にブリードが生じた。そのため、耐候性能における色調変化の著しい悪化が見られた。
サンプルに形成された被膜の厚みを1μmとした。その場合には、耐候性試験において色調及び物性がわずかに悪化したものの、充分な接着性能及び耐候性能が得られた。
一般的に市販されている表1に記載の塗料組成物を用いて、上記と同様の手法により被膜が形成されたサンプルを作製し、各種性能評価を実施した。その場合には、継手との接着強度が著しく低下し、耐候性試験における物性も著しく低下した。
Claims (3)
- ポリ塩化ビニル系樹脂及び/または塩素化ポリ塩化ビニル系樹脂からなる配管用成形体と、
前記配管用成形体の表層上に形成された被膜とを備える配管用成形品であって、
前記被膜が、SP値が8.0以上かつ11.0未満である有機溶媒と、
前記有機溶媒に溶解可能な合成樹脂と、
前記合成樹脂100重量部に対して5〜200重量部の紫外線吸収剤と、
前記合成樹脂100重量部に対して5〜50重量部の光安定剤とを含む被膜形成用組成物を、前記配管用成形体の表層上に付与した後、前記被膜形成用組成物に含まれる前記有機溶媒を除去することにより得られた被膜であり、
前記被膜の膜厚が1μm以上、15μm以下であり、
前記被膜の下記の測定方法で測定された色差ΔEが1.0未満である、配管用成形品。
色差ΔEの測定方法:硬質塩化ビニル樹脂製プレス板状に前記被膜形成用組成物を塗布し、20℃において1時間放置し、被膜形成用組成物が上面に塗付された板状サンプルを得、この板状サンプルを、下記のL、D及びシャワーの条件に繰り返し維持して前記板状サンプルに紫外線を120分間照射したのち、表面状態の色差ΔE値を色差計により求めた。
L:ブラックパネル温度65℃、湿度50%、紫外線照射強度80mW/mm 2 、4時間
D:ブラックパネル温度30℃、湿度98%、4時間
シャワー:D時の前後各30秒にわたって、上記板状サンプルに水をシャワーする。 - 前記紫外線吸収剤が有機系紫外線吸収剤である、請求項1に記載の配管用成形品。
- 前記光安定剤がヒンダードアミン系光安定剤である、請求項1に記載の配管用成形品。
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