JP5683899B2 - 建物の気密構造 - Google Patents

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本発明は、住宅等の建物の気密構造に関する。
近年の住宅においては、快適性の向上や冷暖房の効率を高め且つ結露等の不具合を防止するために、住宅内部の居室空間を囲むように断熱ライン及び気密ラインを形成して、良好な断熱性と気密性を確保した構造のものが知られている。このような断熱ラインや気密ラインは、住宅の外壁、天井及び床に設ける断熱面や気密面を繋げることで形成されている。
例えば特許文献1には、鉄骨造の躯体構造に軽量気泡コンクリート(ALC)からなる床パネルと外壁とを取り付けて形成される住宅建物が開示されており、当該住宅建物では、気密、及び断熱ラインが階毎に形成されている。或る階の気密、及び断熱ラインを代表して説明すると、その階の外壁の室内側には気密断熱材が沿設され、その階の一つ上の階の床パネルを支える梁の下面及び室内側側面に沿って気密断熱材が設けられている。そして、上の階の床パネル、梁周りの気密断熱材、外壁に沿設された気密断熱材、及び、その階の床パネル表面によって気密、及び断熱ラインが形成される。
ところで、近年、住宅建物に対する空間構成の自由度に対する要求は強まってきており、居室の性質に応じて当該居室の高さを他の居室よりも高く或いは低くする提案もなされてきている。例えば特許文献2には、中間階の当該中間階を構成する一部の床をより低くした下げ床部を有するスキップフロア型の建物の構成が開示されている。
特開2003−96940号公報 特開2002−332711号公報
しかしながら、上記特許文献2の構成においては、中間階の一般床部よりも下げ床部が低くなっており、床面全体がフラットである場合に比べて各床部を支持する梁と外壁との関係や構造が複雑になっている。そのため、例えば、特許文献1に示されるような気密構造を採用して一般床部と外壁との間での気密性を確保できたとしても、下げ床部と外壁との間での気密性の確保は難しい。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、中間階の一部に下げ床部を有する場合にも、下げ床部の気密性を確保することができる建物の気密構造を提供することを目的とする。
本発明は、少なくとも中間階を1以上有する建物の気密構造であって、中間階には、一般床部と、一般床部よりも低い位置に床面を有する下げ床部とが設けられており、下げ床部は、外壁部を介して外気と対向する位置に設けられ外壁部の室内側に沿って気密性を有する断熱材が設けられており、断熱材と下げ床部との間には、断熱材に気密処理を施された状態で連結されると共に、下げ床部の床面に気密処理を施された状態で連結されて外壁と下げ床部の床面との間を気密状態で連結する気密形成部が設けられており、断熱材の下方には、外壁部を保持する梁が設けられており、外壁部を保持する梁の上端面と一般床部となる床を支持する梁の上端面とは略同一高さになるように配置されており、気密形成部は、外壁部を保持する梁の上面を覆って断熱材に気密処理を施された状態で連結される上端部材と、外壁部を保持する梁の室内側側面のうち、下げ床部の床面よりも上方に露出する面を覆って床面に気密処理を施された状態で連結される側部材とを備えていることを特徴とする。
本発明では、外壁部に沿って配置された気密性を有する断熱材と下げ床部の床面との間に気密形成部を設ける構成であり、気密形成部は、断熱材との間で気密処理を施されて連結されると共に、下げ床部の床面との間で気密処理を施された状態で連結されるものであるので、下げ床部の存在によっても気密ラインは維持されるものとなり、建物全体の気密性を確保できる。
また、外壁部が梁に支持されることとなるので、当該外壁部の支持強度を向上させることができる。気密形成部が、梁の上面を覆う上端部材と、梁の室内側の面を覆う側部材からなり、梁の各面に沿った部材を組み合わせて形成されるため、単純な形状を組み合わせて梁の複雑な形状に対応することができるものとなるのである。
さらに、気密形成部は、気密性と断熱性とを具備するプラスチック系断熱材により形成されていると好適である。この構成によれば、気密形成部によって、気密性が確保されるのみならず断熱ラインも形成されることとなり、下げ床部の断熱性の向上も図られることとなる。また、外壁部を支持する梁を設ける場合には、当該梁は気密形成部による断熱ラインよりも室外側に位置することとなるので、当該梁の結露を防止することができるものとなる。
本発明によれば、中間階の一部に下げ床部を有する場合にも、下げ床部の気密性を確保することができる。
本発明の実施形態に係る建物の斜視図である。 実施形態に係る建物の1階部分を示す断面図である。 実施形態に係る建物の2階部分を示す断面図である。 図3のIV−IV線に沿った断面図である。
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
(建物の全体構成)
図1〜図3に示されるように、本実施形態に係る建物1は、3階建ての住宅建物であって、梁3A,3Bと柱4とを備えた構造躯体2(図3参照)と、これら梁3A,3Bや柱4等に支持されて各階の床を形成する各階床部5A,5B,5Cと、梁3A,3Bや柱4等に支持されて建物1の屋根を形成する屋根部6と、同じく梁3A,3Bや柱4等に支持されて建物1の外皮を形成する外壁8とを備えている。なお、本実施形態に係る建物1では、適宜箇所に小梁3Zが設けられている箇所がある。
構造躯体2は、基礎から立ち上がる複数本(本実施形態においては8本)の柱4と、隣り合う柱4間に架設される複数本の梁3A,3Bとを備えてなるいわゆるラーメン構造を構成している。
本実施形態に係る柱4は、建物1の1階下部から3階上部に亘って延設されており、各階を形成すべく所定高さに設定された梁接合部と、端部から梁接合部までを連絡する長尺状の部位、及び上下の各梁接合部間を連絡する長尺状の部位からなる一般部とを備えている。一般部は、公知の角形鋼管により形成されている。また、梁接合部は、梁3A,3Bのせい(梁3A,3Bの下端から上端までの高さ)と同程度の高さを有して四角筒状に形成されている。
梁3A,3Bは、上下一対のフランジの中央部分をウェブにて連結してなるH型鋼により形成された梁本体と、梁本体の両端部に接合されて柱4の梁接合部に面接触するエンドプレートとを備えている。梁3A,3Bは、エンドプレートが梁接合部に面接触して適宜にボルト結合される。
1階の床部5Aは、所定寸法に形成される軽量気泡コンクリート(ALC)製の複数枚の床パネル5a(図2参照)を基礎上に敷き並べて形成される。また、2階、及び3階の床部5B,5Cは、所定寸法に形成される軽量気泡コンクリート製の複数枚の床パネル5aと、これら複数枚の床パネル5aを構造力学的に一体化させる公知の剛床機構とを備えており、複数枚の床パネル5aは適宜に梁3A,3Bに支持されている。
なお、本実施形態では、2階が中間階に相当し、2階の床部5B(図3参照)は、2階の階高に一致した床面を有する一般床部50と、床面51a(図4参照)が一般床部50よりも低位となる下げ床部51とを備えている。
屋根部6(図1参照)は、所定寸法に形成される軽量気泡コンクリート製の複数枚の屋根パネル6aを備えている。また、屋根部6としては、水平に屋根パネル6aを敷設してなる陸屋根部61と、陸屋根部61と建物1の外壁8とを連結する傾斜屋根部62との二種類の態様が設けられている。
屋根部6は、屋外を向いて風雨に晒される外面領域を有するため、その外面領域には室内への雨水等の進入を防止するための防水構造が設けられている。例えば、陸屋根部61には、軽量気泡コンクリート(ALC)からなる屋根パネル6aの上に発泡下地材(断熱材)、不燃板、そして防水シートが積層されて所定の防水構造が形成されている。また、傾斜屋根部62には、軽量気泡コンクリート(ALC)からなる屋根パネル6aの上に不燃板、防水シート、そして屋根仕上げ材(瓦材)などが積層されて所定の防水構造が形成されている。
外壁8は、一般に所定寸法に形成された軽量気泡コンクリート製の複数枚の外壁パネル9Aによって形成され、各外壁パネル9Aは、いわゆるロッキング工法(「ロッキング機構」ともいう)により上下両端部が梁3A,3Bに、または梁3A,3Bと基礎とに保持されている。また、外壁パネル9Aの内側には断熱材が沿設されており、断熱材の内側には内装材を支持する内装下地が設けられている。
本実施形態に係る主要な断熱材は、フェノールフォーム等の気密性を有するプラスチック系断熱材を用いて平板状に形成された断熱ボードである。この種の断熱材は、設置する部位のサイズに応じて複数のブロックに分割され、そして各ブロックは外壁パネル9Aの内側の所定位置に敷設され、継ぎ目が気密テープなどで覆われて設置されている。なお、断熱材としては、ロックウールやグラスウール等の繊維系断熱材も適宜に用いられている。
また、内装下地は、一対の縦桟の間に複数の横桟を組みつけて形成される木製のフレーム状に形成されており、支持固定部材を介して床パネル5aや梁3A,3Bに固定されるものとなっている。また、内装材は、平板状の石膏ボードなどにより形成されており、その石膏ボードが内装下地に留め付けられることで形成されている。
本実施形態に係る建物1の全体構成は以上である。次に、本実施形態に係る建物1の間取り等の一例について簡単に説明する。
本実施形態に係る建物1は、1階の前部(通りに面した部分)にガレージ(キャビティ)Gが形成されている。また、ガレージGよりも後方(奥方)となる領域は外壁8で覆われており、外壁8の内側となる屋内領域(室内の領域)には各居室等が設けられている。建物1の前方からガレージGを眺めた場合の右側の屋内領域は手前側に突き出ており、この突き出た領域には玄関R1が設けられている。
また、2階には、1階のガレージGの略上方となる前部にリビングR8が設けられており、リビングR8の奥方にキッチンR10が設けられている。リビングR8は下げ床部51として構成されている。
また、キッチンR10に面してベランダVが配されており、ベランダVの先端部には、通常の手摺などよりも、せい(高さ)の高いハイウォール部10が設けられている。ハイウォール部10は外壁パネル9Aによって形成され、ハイウォール部10のせいは、2階の階高よりも数十センチ程度低くなっている。その結果、キッチンR10は、ハイウォール部10によって隣接する建物からの視線が遮断される一方、採光を確保できるものとなっている。
(リビングの外壁側の気密構造)
次に、本発明の第1実施形態について、図3、図4を参照して詳しく説明する。上述のように、中間階となる2階には、複数の外壁パネル9A,9Bによって形成される外壁8と、外壁8を支持する梁3A,3Bと、キッチンR10となる一般床部50(図3参照)と、リビングR8となる下げ床部51とが設けられている。
通常の一般的な建物では一つの中間階において床面が全体的にフラット(平坦)である場合が多く構造的に断熱性や気密性を確保し易い。一方、本実施形態に係る建物1では、下げ床部51が一般床部50よりも低くなっており、外壁8や一般床部50を支持する梁3A,3Bとの間に段差が生じてしまい、従来の気密構造では充分な断熱性や気密性を確保することが難しい。そこで、本実施形態では、従来とは異なる特殊な気密構造11を採用している。
気密構造11は、下げ床部51の境界となる端縁の周辺に設けられている。具体的には、略矩形の下げ床部51の各辺に相当する端縁は、一般床部50に繋がる段差部分を除いて外壁8に近接している。その結果、下げ床部51は、外壁8を介して屋外(外気)と対向する位置に設けられた態様を具現化しており、気密構造11は、下げ床部51の端縁のうち、外壁8に近接する端縁の周辺に設けられている。
外壁8を支持する複数の梁(以下、便宜的に「外壁用梁」という)3Aは、2階全体で梁の上端面が略同一の高さとなるように柱4同士の間に架設されている。また、柱4同士の間には、一般床部50となる複数の床パネル5aを支持する梁(以下、便宜的に「一般床用梁」という)3Bも架設されており、一般床用梁3Bの上端面と外壁用梁3Aの上端面とは略同一の高さとなるように配置されている。
一方で、リビングR8となる下げ床部51を囲む位置において、外壁用梁3A、及び一般床用梁3Bの下方には、一般床部50よりも低い位置に床面51aを有する下げ床部51の複数の床パネル5aを支持する梁(以下、便宜的に「下げ床用梁」という)3Cが設けられている。下げ床用梁3Cは、外壁用梁3A、または一般床用梁3Bの長手方向に沿って延在し、平面視で外壁用梁3A、または一般床用梁3Bに重なるように配置されている。さらに、下げ床用梁3Cは、外壁用梁3A、または一般床用梁3Bの下部フランジ3cに連結用の金物(以下、「連結金物」という)30を介してボルト結合されている。
外壁用梁3Aは、上方の外壁パネル(以下、「上部外壁部」という)9Aを支持するために上部外壁部9Aに沿って延設されている。H型鋼からなる外壁用梁3Aの上部フランジ3aには、上面側に金属製のパネル支持部材31がボルト結合されている。外壁用梁3Aは、パネル支持部材31を介して上部外壁部9Aの下部を支持しており、上部外壁部9Aの上部は上方の梁(図示省略)に支持されている。なお、上方の梁、及び外壁用梁3Aで上部外壁部9Aを支持する機構は、ロッキング機構になっている。本実施形態では、上部外壁部9Aが本発明の外壁部に相当する。
また、上部外壁部9Aの下には、外壁用梁3A及び下げ床用梁3Cの目隠しとなる下方の外壁パネル(以下、「下部外壁部」という)9Bが配置されている。外壁用梁3Aの上部フランジ3aの下面側には、下部外壁部9Bの上部を支持する断面略L字状の長尺金物(以下「上部支持部材」という)32がボルト結合されている。また、下げ床用梁3Cの下部フランジ3fには、下部外壁部9Bの下部を支持する断面略Z字状の長尺金物(以下「下部支持部材」という)33がボルト結合されている。下部外壁部9Bは、上部支持部材32と下部支持部材33とを介して、外壁用梁3A及び下げ床用梁3Cにロッキング機構にて支持されている。
また、上部外壁部9Aと下部外壁部9Bとは上下に並んで配置されており、上部外壁部9Aと下部外壁部9Bとの小口面同士が対面する目地部分にはシール材34が充填されている。また、下部外壁部9Bの下端には、カバー部材35が留め付けられており、カバー部材35の室内側、つまり、下部外壁部9B側とは反対となる側には、軒天37が設置されている。
軒天37の上面側、すなわち、室内側にはロックウールが敷き詰められて断熱部12Aが形成されており、断熱部12Aと下げ床部51を形成する床パネル5aとの間には空気層Arが設けられている。断熱部12Aの上端部は、下げ床部51の床パネル5aに当接している。
下げ床用梁3Cのウェブ3eの室内側には、床パネル5aを支持するための支持金物36が結合されており、支持金物36には、上部にL字状の切欠部36aが設けられている。切欠部36aには断面L字状の長尺部材52が当接され、床パネル5aは長尺部材52に支持されている。
床パネル5aは、ALC製のパネルからなり、或る程度の断熱性、及び気密性を有する。床パネル5aは、その縁部下面が長尺部材52に当接して支えられている。また、床パネル5aと長尺部材52との間の隙間には、モルタルなどの充填材53が充填されている。
下げ床用梁3Cのウェブ3bの室内側には、ロックウールが設置されて遮音部13が形成され、遮音部13の室内側には、フェノールフォーム等の気密性を有するプラスチック系断熱材から製造された断熱ボード(以下、「第1断熱板」という)14が設置されている。第1断熱板14は、シーリングなどの気密処理が施された状態で床面51aに連結されている。その結果、第1断熱板14の室内側の面と床パネル5aの床面51aとの間は気密状態で連結されている。
また、第1断熱板14は、ロックウールからなる遮音部13を覆うように外壁用梁3Aの室内側の側面に対応して設けられている。すなわち、第1断熱板14は、外壁用梁3Aの室内側側面のうち、下げ床部51の床パネル5aよりも上方に露出する面を覆うように床面51aから立設されており、外壁用梁3Aの上部フランジ3aの縁部、及び下部フランジ3cの縁部に当接し、上端が外壁用梁3Aの上部フランジ3aよりも数cm程度突き出すように配置されている。
外壁用梁3Aの上部フランジ3aには、上方に突き出すように複数の下地固定部材21が固定されている。また、複数の下地固定部材21は、上部フランジ3aの室内側の縁に揃うように設置されており、さらに、複数の下地固定部材21が、外壁用梁3Aの長手方向において所定の間隔を空けて設置されている。
水平方向に並ぶ複数の下地固定部材21の上には棒状の角材22が固定され、さらに、角材22には、木製フレーム状の内装下地23がねじ止めされている。つまり、内装下地23は、平面視で外壁用梁3Aに重なり合う位置に設けられており、また、下地固定部材21を介して外壁用梁3Aから持ち上げられた状態で保持されている。内装下地23の室内側には、石膏ボードにより形成された平板状の内装材24が留め付けられている。また、床パネル5aの上は、セルフレベリング材25aを介して内装材25が設置されている。
外壁用梁3Aの上部フランジ3aの上面には、フェノールフォーム等の気密性を有するプラスチック系断熱材から製造された断熱ボード(以下、「第2断熱板」という)15が設置されている。第2断熱板(上端部材)15は、内装下地23と外壁用梁3Aとの間の隙間に配置されている。また、第2断熱板15は、一方の端部が第1断熱板14の上部に接着などの気密処理が施された状態で連結され、他方の端部が外壁パネル(上部外壁部)9Aの室内側の側面近傍にまで達している。なお、第2断熱板15には、下地固定部材21を通すための隙間が形成されているが、この隙間は気密テープなどで適宜に塞がれている。
外壁用梁3Aの上方には、上部外壁部9Aの室内側の側面に沿ってフェノールフォーム等の気密性を有するプラスチック系断熱材から製造された断熱ボード(以下、「外壁側断熱板」という)17が設置されている。外壁側断熱板17は、下部断熱板17aと、下部断熱板の上端に当接する上部断熱板17bとを備えており、下部断熱板17aは、気密テープの貼付や接着などの気密処理が施された状態で第2断熱板15の端面に当接している。本実施形態では、外壁側断熱板17が本発明における断熱材に相当する。
以上の第1断熱板14は、下げ床部51の床面51aを形成する床パネル5aに気密処理を施した状態で連結され、第2断熱板15は外壁側断熱板17に気密処理を施した状態で連結され、さらに第1断熱板14、及び第2断熱板15は互いに気密処理を施した状態で連結されている。その結果、第1断熱板14、及び第2断熱板15は、外壁側断熱板17の室内側の面と下げ床部51の床面51aとの間を気密状態で連結する気密形成部16となる。
本実施形態に係る気密構造11によれば、外壁部9Aに沿って配置された気密性を有する外壁側断熱板17と下げ床部51の床面51aとの間に気密形成部16を設ける構成であり、気密形成部16は、外壁側断熱板17との間で気密処理を施されて連結されると共に、下げ床部51の床面51aとの間で気密処理を施された状態で連結されるものであるので、下げ床部51の存在によっても気密状態は維持されるものとなり、建物全体の気密性を確保できる。
また、本実施形態に係る気密構造11では、下げ床部51の各床パネル5aは、外壁用梁3Aとは別に設けられた下げ床用梁3Cによって支持されている。したがって、一般床部50側で上部外壁部9Aを支持する外壁用梁3Aと、下げ床部51側で上部外壁部9Aを支持する外壁用梁3Aとは実質的に同一の構造とすることができ、両方の外壁用梁3Aは同一平面上、すなわち、同じ高さとなるように配置されている。従って、上部外壁部9Aの室内側に配置される外壁側断熱板17の縦方向の長さ寸法については、一般床部50側と下げ床部51側とで規格を同一にできる。
ここで、例えば、外壁側断熱板17を下げ床部用の専用品として部材化することも可能であるが、下げ床部専用品として部材化することは、下げ床部51を設けるか否かを施主の意向により決定される注文住宅等の場合には、必ずしも下げ床部51が設けられるわけではなく、下げ床部専用品の生産上の管理が煩雑になる可能性がある。しかしながら、本実施形態に係る気密構造11では、少なくとも外壁側断熱板17の規格を一般床部50側と下げ床部51側とで同一にできるため、生産上の管理負担は軽減される。
さらに、本実施形態に係る気密構造11では、外壁側断熱板17の下方に上部外壁部9Aを保持する外壁用梁3Aが設けられており、気密形成部16は、外壁用梁3Aの室内側で露出する側面を覆う第1断熱板(側部材)14と、外壁用梁3Aの上面を覆う第2断熱板(上端部材)15と、を備えている。そして、気密構造11によれば、上部外壁部9Aが外壁用梁3Aに支持されることとなるので、上部外壁部9Aの支持強度を向上させることができる。また、気密形成部16が、外壁用梁3Aの各面に沿った部材を組み合わせて形成されるため、単純な形状を組み合わせて外壁用梁3Aの複雑な形状に対応することができるものとなる。
さらに、気密形成部16は、気密性と断熱性とを具備するプラスチック系断熱材により形成されているので、気密形成部16によって、気密ラインのみならず断熱ラインも形成されることとなり、下げ床部51の断熱性の向上も図られることとなる。また、上部外壁部9Aを支持する外壁用梁3Aは気密形成部16による気密断熱ラインLaよりも室外側に位置することとなるので、外壁用梁3Aの結露を防止することができる。
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は、以上の実施形態のみに限定されるものではなく、例えば、中間階としては、4階建て以上の建物の場合には、最下階または最上階を除く、2階、または3階以上の上階であってもよい。また、気密形成部となる部材はフェノールフォーム等に限定されず、気密性を確保し得るその他の要素であってもよい。
1…建物、3A…外壁用梁、9A…上部外壁部(外壁部)、11…気密構造、12A…第1断熱部(断熱層)、14…第1断熱板(側部材)、15…第2断熱板(上端部材)、16…気密形成部、17…外壁側断熱板、50…一般床部、51…下げ床部、51a…床面、Ar…空気層。

Claims (2)

  1. 少なくとも中間階を1以上有する建物の気密構造であって、
    前記中間階には、一般床部と、前記一般床部よりも低い位置に床面を有する下げ床部と、が設けられており、
    前記下げ床部は、外壁部を介して外気と対向する位置に設けられ、
    前記外壁部の室内側に沿って気密性を有する断熱材が設けられており、前記断熱材と前記下げ床部との間には、前記断熱材に気密処理を施された状態で連結されると共に、前記下げ床部の床面に気密処理を施された状態で連結されて前記外壁と下げ床部の床面との間を気密状態で連結する気密形成部が設けられており、
    前記断熱材の下方には、前記外壁部を保持する梁が設けられており、
    前記外壁部を保持する前記梁の上端面と前記一般床部となる床を支持する梁の上端面とは略同一高さになるように配置されており、
    前記気密形成部は、前記外壁部を保持する前記梁の上面を覆って前記断熱材に気密処理を施された状態で連結される上端部材と、前記外壁部を保持する前記梁の室内側側面のうち、前記下げ床部の床面よりも上方に露出する面を覆って前記床面に気密処理を施された状態で連結される側部材とを備えていることを特徴とする建物の気密構造。
  2. 前記気密形成部は、気密性と断熱性とを具備するプラスチック系断熱材により形成されていることを特徴とする請求項記載の建物の気密構造。
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