以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
(建物の全体構成)
図1〜図3に示されるように、本実施形態に係る建物1は、3階建ての住宅建物であって、梁3A,3Bと柱4とを備えた構造躯体2(図3参照)と、これら梁3A,3Bや柱4等に支持されて各階の床を形成する各階床部5A,5B,5Cと、梁3A,3Bや柱4等に支持されて建物1の屋根を形成する屋根部6と、同じく梁3A,3Bや柱4等に支持されて建物1の外皮を形成する外壁8とを備えている。なお、本実施形態に係る建物1では、適宜箇所に小梁3Zが設けられている箇所がある。
構造躯体2は、基礎から立ち上がる複数本(本実施形態においては8本)の柱4と、隣り合う柱4間に架設される複数本の梁3A,3Bとを備えてなるいわゆるラーメン構造を構成している。
本実施形態に係る柱4は、建物1の1階下部から3階上部に亘って延設されており、各階を形成すべく所定高さに設定された梁接合部と、端部から梁接合部までを連絡する長尺状の部位、及び上下の各梁接合部間を連絡する長尺状の部位からなる一般部とを備えている。一般部は、公知の角形鋼管により形成されている。また、梁接合部は、梁3A,3Bのせい(梁3A,3Bの下端から上端までの高さ)と同程度の高さを有して四角筒状に形成されている。
梁3A,3Bは、上下一対のフランジの中央部分をウェブにて連結してなるH型鋼により形成された梁本体と、梁本体の両端部に接合されて柱4の梁接合部に面接触するエンドプレートとを備えている。梁3A,3Bは、エンドプレートが梁接合部に面接触して適宜にボルト結合される。
1階の床部5Aは、所定寸法に形成される軽量気泡コンクリート(ALC)製の複数枚の床パネル5a(図2参照)を基礎上に敷き並べて形成される。また、2階、及び3階の床部5B,5Cは、所定寸法に形成される軽量気泡コンクリート製の複数枚の床パネル5aと、これら複数枚の床パネル5aを構造力学的に一体化させる公知の剛床機構とを備えており、複数枚の床パネル5aは適宜に梁3A,3Bに支持されている。
なお、本実施形態では、2階が中間階に相当し、2階の床部5B(図3参照)は、2階の階高に一致した床面を有する一般床部50と、床面51a(図4参照)が一般床部50よりも低位となる下げ床部51とを備えている。
屋根部6(図1参照)は、所定寸法に形成される軽量気泡コンクリート製の複数枚の屋根パネル6aを備えている。また、屋根部6としては、水平に屋根パネル6aを敷設してなる陸屋根部61と、陸屋根部61と建物1の外壁8とを連結する傾斜屋根部62との二種類の態様が設けられている。
屋根部6は、屋外を向いて風雨に晒される外面領域を有するため、その外面領域には室内への雨水等の進入を防止するための防水構造が設けられている。例えば、陸屋根部61には、軽量気泡コンクリート(ALC)からなる屋根パネル6aの上に発泡下地材(断熱材)、不燃板、そして防水シートが積層されて所定の防水構造が形成されている。また、傾斜屋根部62には、軽量気泡コンクリート(ALC)からなる屋根パネル6aの上に不燃板、防水シート、そして屋根仕上げ材(瓦材)などが積層されて所定の防水構造が形成されている。
外壁8は、一般に所定寸法に形成された軽量気泡コンクリート製の複数枚の外壁パネル9Aによって形成され、各外壁パネル9Aは、いわゆるロッキング工法(「ロッキング機構」ともいう)により上下両端部が梁3A,3Bに、または梁3A,3Bと基礎とに保持されている。また、外壁パネル9Aの内側には断熱材が沿設されており、断熱材の内側には内装材を支持する内装下地が設けられている。
本実施形態に係る主要な断熱材は、フェノールフォーム等の気密性を有するプラスチック系断熱材を用いて平板状に形成された断熱ボードである。この種の断熱材は、設置する部位のサイズに応じて複数のブロックに分割され、そして各ブロックは外壁パネル9Aの内側の所定位置に敷設され、継ぎ目が気密テープなどで覆われて設置されている。なお、断熱材としては、ロックウールやグラスウール等の繊維系断熱材も適宜に用いられている。
また、内装下地は、一対の縦桟の間に複数の横桟を組みつけて形成される木製のフレーム状に形成されており、支持固定部材を介して床パネル5aや梁3A,3Bに固定されるものとなっている。また、内装材は、平板状の石膏ボードなどにより形成されており、その石膏ボードが内装下地に留め付けられることで形成されている。
本実施形態に係る建物1の全体構成は以上である。次に、本実施形態に係る建物1の間取り等の一例について簡単に説明する。
本実施形態に係る建物1は、1階の前部(通りに面した部分)にガレージ(キャビティ)Gが形成されている。また、ガレージGよりも後方(奥方)となる領域は外壁8で覆われており、外壁8の内側となる屋内領域(室内の領域)には各居室等が設けられている。建物1の前方からガレージGを眺めた場合の右側の屋内領域は手前側に突き出ており、この突き出た領域には玄関R1が設けられている。
また、2階には、1階のガレージGの略上方となる前部にリビングR8が設けられており、リビングR8の奥方にキッチンR10が設けられている。リビングR8は下げ床部51として構成されている。
また、キッチンR10に面してベランダVが配されており、ベランダVの先端部には、通常の手摺などよりも、せい(高さ)の高いハイウォール部10が設けられている。ハイウォール部10は外壁パネル9Aによって形成され、ハイウォール部10のせいは、2階の階高よりも数十センチ程度低くなっている。その結果、キッチンR10は、ハイウォール部10によって隣接する建物からの視線が遮断される一方、採光を確保できるものとなっている。
(リビングの外壁側の断熱構造)
次に、本発明の第1実施形態について、図3〜図5を参照して詳しく説明する。上述のように、中間階となる2階には、複数の外壁パネル9A,9Bによって形成される外壁8と、外壁8を支持する梁3A,3Bと、キッチンR10となる一般床部50(図3参照)と、リビングR8となる下げ床部51とが設けられている。
通常の一般的な建物では一つの中間階において床面が全体的にフラット(平坦)である場合が多く構造的に断熱性や気密性を確保し易い。一方、本実施形態に係る建物1では、下げ床部51が一般床部50よりも低くなっており、外壁8や一般床部50を支持する梁3A,3Bとの間に段差が生じてしまい、従来の断熱構造では充分な断熱性や気密性を確保することが難しい。そこで、本実施形態では、従来とは異なる特殊な断熱構造11を採用している。
断熱構造11は、下げ床部51の境界となる端縁の周辺に設けられている。具体的には、略矩形の下げ床部51の各辺に相当する端縁は、一般床部50に繋がる段差部分を除いて外壁8に近接している。その結果、下げ床部51は、外壁8を介して屋外(外気)と対向する位置に設けられた態様を具現化しており、断熱構造11は、下げ床部51の端縁のうち、外壁8に近接する端縁の周辺に設けられている。
外壁8を支持する複数の梁(以下、便宜的に「外壁用梁」という)3Aは、2階全体で梁の上端面が略同一の高さとなるように柱4同士の間に架設されている。また、柱4同士の間には、一般床部50となる複数の床パネル5aを支持する梁(以下、便宜的に「一般床用梁」という)3Bも架設されており、一般床用梁3Bの上端面と外壁用梁3Aの上端面とは略同一の高さとなるように配置されている。
一方で、リビングR8となる下げ床部51を囲む位置において、外壁用梁3A、及び一般床用梁3Bの下方には、一般床部50よりも低い位置に床面51aを有する下げ床部51の複数の床パネル5aを支持する梁(以下、便宜的に「下げ床用梁」という)3Cが設けられている。下げ床用梁3Cは、外壁用梁3A、または一般床用梁3Bの長手方向に沿って延在し、平面視で外壁用梁3A、または一般床用梁3Bに重なるように配置されている。さらに、下げ床用梁3Cは、外壁用梁3A、または一般床用梁3Bの下部フランジ3cに連結用の金物(以下、「連結金物」という)30を介してボルト結合されている。
外壁用梁3Aは、上方の外壁パネル(以下、「上部外壁部」という)9Aを支持するために上部外壁部9Aに沿って延設されている。H型鋼からなる外壁用梁3Aの上部フランジ3aには、上面側に金属製のパネル支持部材31がボルト結合されている。外壁用梁3Aは、パネル支持部材31を介して上部外壁部9Aの下部を支持しており、上部外壁部9Aの上部は上方の梁(図示省略)に支持されている。なお、上方の梁、及び外壁用梁3Aで上部外壁部9Aを支持する機構は、ロッキング機構になっている。本実施形態では、上部外壁部9Aが本発明の外壁部に相当する。
また、上部外壁部9Aの下には、外壁用梁3A及び下げ床用梁3Cの目隠しとなる下方の外壁パネル(以下、「下部外壁部」という)9Bが配置されている。外壁用梁3Aの上部フランジ3aの下面側には、下部外壁部9Bの上部を支持する断面略L字状の長尺金物(以下「上部支持部材」という)32がボルト結合されている。また、下げ床用梁3Cの下部フランジ3fには、下部外壁部9Bの下部を支持する断面略Z字状の長尺金物(以下「下部支持部材」という)33がボルト結合されている。下部外壁部9Bは、上部支持部材32と下部支持部材33とを介して、外壁用梁3A及び下げ床用梁3Cにロッキング機構にて支持されている。
また、上部外壁部9Aと下部外壁部9Bとは上下に並んで配置されており、上部外壁部9Aと下部外壁部9Bとの小口面同士が対面する目地部分にはシール材34が充填されている。また、下部外壁部9Bの下端には、カバー部材35が留め付けられており、カバー部材35の室内側、つまり、下部外壁部9B側とは反対となる側には、軒天37が設置されている。
軒天37の上面側、すなわち、室内側にはロックウールが敷き詰められて断熱部12Aが形成されており、断熱部12Aと下げ床部51を形成する床パネル5aとの間には空気層Arが設けられている。断熱部12Aの上端部は、下げ床部51の床パネル5aに当接しており、下げ床部51下方での断熱ラインを形成する。
外壁用梁3Aのウェブ3eの室内側には、床パネル5aを支持するための支持金物36が結合されており、支持金物36には、上部にL字状の切欠部36aが設けられている。切欠部36aには断面L字状の長尺部材52が当接され、床パネル51aは長尺部材52に支持されている。
床パネル5aは、ALC製のパネルからなり、或る程度の断熱性、及び気密性を有する。床パネル5aは、その縁部下面が長尺部材52に当接して支えられている。また、床パネル5aと長尺部材52との間の隙間には、モルタルなどの充填材53が充填されている。
外壁用梁3Aのウェブ3bの室内側には、ロックウールが設置されて遮音部13が形成され、遮音部13の室内側には、フェノールフォーム等の気密性を有するプラスチック系断熱材から製造された断熱ボード(以下、「第1断熱板」という)14が設置されている。第1断熱板14は、シーリングなどの気密処理が施された状態で床面51aに連結されている。その結果、第1断熱板14の室内側の面と床パネル5aの床面51aとの間には連続した断熱ラインLaが形成されている。
また、第1断熱板14は、ロックウールからなる遮音部13を覆うように外壁用梁3Aの室内側の側面に対応して設けられている。すなわち、第1断熱板14は、外壁用梁3Aの室内側側面のうち、下げ床部51の床パネル5aよりも上方に露出する面を覆うように床面51aから立設されており、外壁用梁3Aの上部フランジ3aの縁部、及び下部フランジ3cの縁部に当接し、上端が外壁用梁3Aの上部フランジ3aよりも数cm程度突き出すように配置されている。
外壁用梁3Aの上部フランジ3aには、上方に突き出すように複数の下地固定部材21が固定されている。また、複数の下地固定部材21は、上部フランジ3aの室内側の縁に揃うように設置されており、さらに、複数の下地固定部材21が、外壁用梁3Aの長手方向において所定の間隔を空けて設置されている。
水平方向に並ぶ複数の下地固定部材(図5参照)21の上には棒状の角材22が固定され、さらに、角材22には、木製フレーム状の内装下地23がねじ止めされている。つまり、内装下地23は、平面視で外壁用梁3Aに重なり合う位置に設けられており、また、下地固定部材21を介して外壁用梁3Aから持ち上げられた状態で保持されている。内装下地23の室内側には、石膏ボードにより形成された平板状の内装材24が留め付けられている。また、床パネル5aの上は、セルフレベリング材25aを介して内装材25が設置されている。
ここで、下地固定部材21について、さらに、詳しく説明する。図6に示されるように、下地固定部材21は、例えば金属製の板材を正面視で略コの字状(図6(c)参照)となるように屈曲形成されており、外壁用梁3Aに留め付けられる留付け片(留付け部)21aと、内装下地23を受ける平板状の下地受け片21b(受け部)21bと、及び、留付け片21aと下地受け片21bとを連絡する脚片(脚部)21cとを備えている。留付け片21aには、ボルト21gが挿通される挿通孔21dが形成されており、留付け片21aは、そのボルト21g、及びナット21kによって外壁用梁3Aの上部フランジ3aに回転可能に留め付けられている。
脚片21cは、留付け片21aから上方に突き出すように(突出状)に設けられており、さらに、脚片21cの上端は、下地受け片21bを、留付け片21aの回転軸、すなわちボルト21gの軸線Sfから径外方向D(図6(a)参照)に離間させた位置となるように支持している。また、下地受け片21bには、内装下地23をねじ止めするためのねじの挿通孔21eが形成されている。
図4には、内装材24が留め付けられた状態での内装下地23を設置する態様の一例が記載されている。この態様での内装下地23は、平板状の内装材24が下方にまで延びて床側の内装材25に直接当接することを前提として位置や向きが規定されている。従って、この態様では、内装材24が第1断熱板(気密断熱層)14に干渉しないように内装下地23を設置する必要がある。そこで、本実施形態に係る下地固定部材21では、留付け片21aを外壁用梁3Aの上部フランジ3aに留め付けたときにおいて、上部フランジ3aの室内側の縁部(外壁用梁3Aの室内側の側面)からの下地受け片21bの最大出寸法Lが第1断熱板14の厚さと同一又は第1断熱板14の厚さよりも大きくなるように設定されている。
一方、図7には、内装下地23の別の設置態様が例示されている。図7に示される例は、図4に示される例に比べて内装下地23、及び内装材24を外壁8寄りに配置し、その結果、室内の空間を僅かながら広げている。図7に示す態様では、平板状の内装材24が、そのまま床側の内装材25に当接することを前提としておらず、屈曲した内装材の配置を前提としている。そして、この態様を採用する場合には、例えば、図4に示す態様から下地固定部材21を90°回転させて調整することで実現できる。
つまり、本実施形態によれば、下地固定部材21の下地受け片21bは、留付け片21aの回転軸Sfから径外方向Dに離間した位置に設けられるので、下地固定部材21を外壁用梁3Aの上部フランジ3a上で回転させることにより、外壁用梁3Aの中心軸と下地受け片21bとの間の間隔を下地受け片21bの回転半径内で自在に変更することができる。これによって、内装下地23が外壁用梁3Aの上方のいずれの位置に設けられる場合でも、比較的自由度が大きな状態で内装下地23を下地受け片21bで受けることができるものとなり、現場での施工誤差や地域による仕様の変更に柔軟に対応できるものとなっている。なお、外壁用梁3Aの中心軸とは、平面視で上部フランジ3aの幅方向の中心を通り、且つ外壁用梁3Aの長手方向に沿って延在する仮想の直線を意図する。
図4に示されるように、外壁用梁3Aの上部フランジ3aの上面には、フェノールフォーム等の気密性を有するプラスチック系断熱材から製造された断熱ボード(以下、「第2断熱板」という)15が設置されている。第2断熱板15は、内装下地23と外壁用梁3Aとの間の隙間に配置されている。また、第2断熱板15は、一方の端部が第1断熱板14の上部に接着などの気密処理が施された状態で連結され、他方の端部が外壁パネル(上部外壁部)9Aの室内側の側面近傍にまで達している。なお、第2断熱板15には、下地固定部材21を通すための隙間が形成されているが、この隙間は気密テープなどで適宜に塞がれている。
外壁用梁3Aの上方には、上部外壁部9Aの室内側の側面に沿ってフェノールフォーム等の気密性を有するプラスチック系断熱材から製造された断熱ボード(以下、「外壁側断熱板」という)17が設置されている。外壁側断熱板17は、下部断熱板17aと、下部断熱板の上端に当接する上部断熱板17bとを備えており、下部断熱板17aは、気密テープの貼付や接着などの気密処理が施された状態で第2断熱板15の端面に当接している。本実施形態では、外壁側断熱板17が本発明における断熱材に相当する。
以上の第1断熱板14は、下げ床部51の床面51aを形成する床パネル5aに気密処理を施した状態で連結され、第2断熱板15は外壁側断熱板17に気密処理を施した状態で連結され、さらに第1断熱板14、及び第2断熱板15は互いに気密処理を施した状態で連結されている。本実施形態では、第1断熱板14、及び第2断熱板15が断熱ライン形成部16となる。断熱ライン形成部16によって外壁側断熱板17の室内側の面と下げ床部51の床面51aとを連続させた上方の断熱ラインLaが形成され、さらに、断熱ラインLaは、床パネル5aを介し、断熱部12Aによって形成される下方での断熱ラインに連絡している。
本実施形態に係る断熱構造11によれば、内装下地23は、外壁用梁3Aの上方に、外壁用梁3Aから離間した状態で設けられることとなるが、下地固定部材21を介して外壁用梁3Aに保持されるため、確実に外壁用梁3Aに支持されることとなる。
また、断熱構造11では、内装下地23を外壁用梁3Aから離間した位置に設けることで、内装下地23と外壁用梁3Aとの間には隙間が形成されることとなるが、その隙間に断熱ライン形成部16が設けられ、断熱ライン形成部16によって外壁側断熱板17と下げ床部51の床面51aとが連結される。したがって、当該部位にて、2階(中間階)の外壁側断熱板17、断熱ライン形成部16、及び下げ床部51の床面51aとの間に連続した断熱ラインLaが形成され、外壁用梁3Aは断熱ラインLaよりも室外側に位置することとなるため、外壁用梁3Aが熱橋を形成してしまうことを効果的に防止できる。なお、本実施形態では下地固定部材21が金属製であり、且つ、断熱ライン形成部16を貫通して室内側に突き出ているが、外壁用梁3Aに比べて非常に僅かな部分でしかなく、熱橋の防止という観点での影響はほとんどない。
また、本実施形態に係る断熱構造11では、下げ床部51の各床パネル5aは、外壁用梁3Aとは別に設けられた下げ床用梁3Cによって支持されている。したがって、一般床部50側で上部外壁部9Aを支持する外壁用梁3Aと、下げ床部51側で上部外壁部9Aを支持する外壁用梁3Aとは実質的に同一の構造とすることができ、両方の外壁用梁3Aは同一平面上、すなわち、同じ高さとなるように配置されている。従って、上部外壁部9Aの室内側に配置される外壁側断熱板17の縦方向の長さ寸法については、一般床部50側と下げ床部51側とで規格を同一にできる。
ここで、例えば、外壁側断熱板17を下げ床部用の専用品として部材化することも可能であるが、下げ床部専用品として部材化することは、下げ床部51を設けるか否かを施主の意向により決定される注文住宅等の場合には、必ずしも下げ床部51が設けられるわけではなく、下げ床部専用品の生産上の管理が煩雑になる可能性がある。しかしながら、本実施形態に係る断熱構造11では、少なくとも外壁側断熱板17の規格、寸法を一般床部50側と下げ床部51側とで同一にできるため、生産上の管理負担は軽減される。
(第2実施形態)
次に、図8,図9を参照して本発明の第2実施形態に係る建物の断熱構造を説明する。なお、本実施形態に係る断熱構造において、第1実施形態に係る断熱構造11と実質的に同様な構成や部材については、第1実施形態に係る断熱構造11と同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
本実施形態に係る建物1Aは、3階建ての住宅建物であって、梁3Aと柱4とからなっていわゆるラーメン構造を構成する構造躯体2(図8参照)と、これら梁3Aや柱4等に支持されて各階の床を形成する各階床部5Dと、梁3A,3Bや柱4等に支持されて建物1Aの外皮を形成する外壁8とを備えている。
建物1Aには、1階から3階までを連絡する階段が設けられており、この階段を形成するために、中間階となる2階の床部5Dには、床パネル6aが配置された一般床部50と、一般床部50を不存在とする吹抜部40とが設けられている。
吹抜部40は、外壁8を介して屋外(外気)と対向する位置に設けられた態様になっており、本実施形態に係る断熱構造11Aは、吹抜部40の外壁8に近接する部分の周辺に設けられている。
図9に示されるように、外壁用梁3AはH型鋼からなり、外壁パネル9Aを支持するために、外壁パネル9Aに沿って延設されている。外壁用梁3Aの上部フランジ3aの上面側には、金属製のパネル支持部材81がボルト結合されている(ボルトの図示省略)。上部外壁部9Aは、パネル支持部材81を介して下部が外壁用梁3Aに支持され、上部は、3階の梁(図示省略)に支持されている。なお、3階の梁、及び外壁用梁3Aで上部外壁部9Aを支持する機構は、ロッキング機構になっている。外壁用梁3Aに支持されている外壁パネル9Aは、本実施形態での外壁に相当する。
外壁パネル9Aの下方には、ALC製の別の外壁パネル9Cが並んで設置されており、外壁パネル9Aと外壁パネル9Cとの間の目地部には、シール材82が充填されている。
外壁パネル9Cの室内側には、外壁パネル9Cの側面に沿ってフェノールフォーム等の気密性を有するプラスチック系断熱材から製造された断熱ボード(以下、「下階断熱板」という)70が設置されている。本実施形態では、下階断熱板70が下階の断熱要素に相当する。
外壁用梁3Aの下部フランジ3cの下面には、フェノールフォーム等の気密性を有するプラスチック系断熱材から製造された断熱ボード(以下、「第1断熱板」という)71が設置されている。第1断熱板71は、下階断熱板70の上部に当接し、また、下部フランジ3cの室内側の縁部にまで達している。
外壁用梁3Aのウェブ3bの室内側には、フェノールフォーム等の気密性を有するプラスチック系断熱材から製造された断熱ボード(以下、「第2断熱板」という)72が設置されている。第2断熱板72は、上部フランジ3aと下部フランジ3cとの間に嵌め込まれるように装着されている。さらに、第2断熱板72の室内側には、第2断熱板72に重なるようにして、フェノールフォーム等の気密性を有するプラスチック系断熱材から製造された断熱ボード(以下、「第3断熱板」という)73が設置されている。
第3断熱板73は、第2断熱板72よりも板厚が薄く、また、第2断熱板72を覆うように外壁用梁3Aの上部フランジ3aの縁部、及び下部フランジ3cの縁部に当接し、さらに、上端が外壁用梁3Aの上部フランジ3aよりも数cm程度突き出し、下端が外壁用梁3Aの下部フランジ3cよりも数cm程度突き出すように配置されている。なお、外壁用梁3Aの上部フランジ3aの縁部、及び下部フランジ3cの縁部は、外壁用梁3Aの室内側の側面に相当し、第3断熱板73は外壁用梁3Aの室内側の側面に対応して設けられている。
外壁用梁3Aの上部フランジ3aには、上方に突き出すように複数の下地固定部材21が固定されている。また、複数の下地固定部材21は、上部フランジ3aの室内側の縁に揃うように設置されており、さらに、複数の下地固定部材21が、外壁用梁3Aの長手方向において所定の間隔を空けて設置されている。
水平方向に並ぶ複数の下地固定部材21の上には棒状の角材22が固定され、さらに、角材22には、木製フレーム状の内装下地23がねじ止めされている。つまり、内装下地23は、平面視で外壁用梁3Aに重なり合う位置に設けられており、また、下地固定部材21を介して外壁用梁3Aから持ち上げられた状態で保持されている。内装下地23の室内側には、石膏ボードにより形成された平板状の内装材24が留め付けられている。
下地固定部材21は、外壁用梁3Aに留め付けられる留付け片(留付け部)21aと、内装下地23を受ける平板状の下地受け片21b(受け部)23bと、及び、留付け片21aと下地受け片21bとを連絡する脚片(脚部)23cとを備えている。留付け片21aは、外壁用梁3Aの上部フランジ3aに回転可能に留め付けられている。また、脚片21cは、留付け片21aから上方に突き出すように(突出状)に設けられており、さらに、脚片21cの上端は、下地受け片21bを、留付け片21aの回転軸から径外方向に離間させた位置となるように支持している。
上部フランジ3aの上面には、フェノールフォーム等の気密性を有するプラスチック系断熱材から製造された断熱ボード(以下、「第4断熱板」という)74が設置されている。第4断熱板74は、内装下地23と外壁用梁3Aとの間の隙間に配置されており、第3断熱板73の上部に当接し、また、外壁パネル9Aの室内側の側面近傍にまで達している。なお、第4断熱板74には、下地固定部材21を通すための隙間が形成されているが、この隙間は気密テープなどで適宜に塞がれている。
また、上部外壁部9Aの室内側には、外壁パネル9Aの側面に沿ってフェノールフォーム等の気密性を有するプラスチック系断熱材から製造された断熱ボード(以下、「外壁側断熱板」という)75が設置されている。外壁側断熱板75は、下部断熱板75aと、下部断熱板75aの上端に当接する上部断熱板75bとを備えており、下部断熱板75aは、気密テープの貼付や接着などの気密処理が施された状態で第4断熱板74の端面に当接している。本実施形態では、外壁側断熱板75が本発明における断熱材に相当する。
以上の第1断熱板71は、下階断熱板70に当接した状態で連結され、第4断熱板74は外壁側断熱板75に当接した状態で連結され、さらに第1断熱板74、第3断熱板73、及び第4断熱板74は互いに当接した状態で連結されている。その結果、第1断熱板71、第3断熱板73、及び第4断熱板74は、外壁側断熱板75の室内側の面と下階断熱板70とを連続させた断熱ラインLbを形成する断熱ライン形成部76となる。
本実施形態に係る断熱構造11Aによれば、内装下地23は、外壁用梁3Aの上方に、外壁用梁3Aから離間した状態で設けられることとなるが、下地固定部材21を介して外壁用梁3Aに保持されるため、確実に外壁用梁3Aに支持されることとなる。
また、断熱構造11Aでは、内装下地23を外壁用梁3Aから離間した位置に設けることで、内装下地23と外壁用梁3Aとの間には隙間が形成されることとなるが、その隙間に断熱ライン形成部76が設けられ、外壁側断熱板75に連結されると共に、下階断熱板70に連結されることとなる。したがって、当該部位にて、2階(中間階)の外壁側断熱板75、断熱ライン形成部76、及び下階断熱板70との間に連続した断熱ラインLbが形成され、外壁用梁3Aは断熱ラインLbよりも室外側に位置することとなるため、外壁用梁3Aが熱橋を形成してしまうことを効果的に防止できる。なお、本実施形態では下地固定部材21が金属製であり、且つ、断熱ライン形成部76を貫通して室内側に突き出ているが、外壁用梁3Aに比べて非常に僅かな部分でしかなく、熱橋の防止という観点での影響はほとんどない。
以上、本発明を各実施形態に基づいて説明したが、本発明は、以上の各実施形態のみに限定されるものではなく、例えば、中間階としては、4階建て以上の建物の場合には、最下階または最上階を除く、2階、または3階以上の上階であってもよい。また、断熱材や断熱ライン形成部となる部材はフェノールフォーム等に限定されず、断熱性や気密性を確保し得るその他の要素であってもよい。