図1は、本発明の一実施例であるハイブリッド車両8に係る駆動系統の構成を概念的に示す図である。この図1に示すハイブリッド車両8は、ハイブリッド車両用駆動装置10(以下、駆動装置10という)と差動歯車装置21と左右1対の車軸22と左右1対の駆動輪24と油圧制御回路34とインバータ56と電子制御装置58とを備えている。そして、その駆動装置10は、走行用の駆動源として機能するエンジン12及び電動機MGと、エンジン断続用クラッチK0と、トルクコンバータ16と、自動変速機18と、油圧ポンプ28とを備えている。図1に示すように、ハイブリッド車両8は、エンジン12及び電動機MGにより発生させられた駆動力が、トルクコンバータ16、自動変速機18、差動歯車装置21、及び左右1対の車軸22をそれぞれ介して左右1対の駆動輪24へ伝達されるように構成されている。斯かる構成から、上記ハイブリッド車両8は、上記エンジン12及び電動機MGの少なくとも一方を走行用の駆動源として駆動される。すなわち、上記ハイブリッド車両8においては、専ら上記エンジン12を走行用の駆動源とするエンジン走行、エンジン12を停止させると共に専ら上記電動機MGを走行用の駆動源とするEV走行(モータ走行)、及び、上記エンジン12及び電動機MGを走行用の駆動源とすると共に走行状態に応じてその電動機MGにより回生(発電)を行うEHV走行(ハイブリッド走行)の何れかが選択的に成立させられる。
上記エンジン12は、例えば、燃料が燃焼室内に直接噴射される筒内噴射型のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関である。また、エンジン12には、エンジン12の駆動(出力トルク)を制御するために、電子スロットル弁を開閉制御するスロットルアクチュエータ、燃料噴射制御を行う燃料噴射装置、及び点火時期制御を行う点火装置等を備えた出力制御装置14が設けられている。この出力制御装置14は、後述する電子制御装置58から供給される指令に従ってスロットル制御のために上記スロットルアクチュエータにより上記電子スロットル弁を開閉制御する他、燃料噴射制御のために上記燃料噴射装置による燃料噴射を制御し、点火時期制御のために上記点火装置による点火時期を制御する等して上記エンジン12の出力制御を実行する。
前記電動機MGは、例えば3相の同期電動機であって、駆動力を発生させるモータ(発動機)としての機能と反力を発生させるジェネレータ(発電機)としての機能とを有するモータジェネレータであり、少なくとも上記モータとしての機能を有している。また、前記エンジン12とその電動機MGとの間の動力伝達経路には、係合状態に応じてその動力伝達経路における動力伝達を制御するエンジン断続用クラッチK0が設けられている。すなわち、前記エンジン12の出力部材であるクランク軸26は、斯かるエンジン断続用クラッチK0を介して前記電動機MGのロータ30に選択的に連結されるようになっている。また、その電動機MGのロータ30は、前記トルクコンバータ16の入力部材であるフロントカバー32に相対回転不能に連結されている。
上記エンジン断続用クラッチK0は、例えば、油圧アクチュエータによって係合制御される湿式多板型の油圧式摩擦係合装置であり、油圧制御回路34から供給される油圧に応じてその係合状態が係合(完全係合)、スリップ係合、乃至解放(完全解放)の間で制御されるようになっている。具体的には、このエンジン断続用クラッチK0が係合されることにより、上記クランク軸26とフロントカバー32との間の動力伝達経路における動力伝達が行われる(接続される)。その一方で、上記エンジン断続用クラッチK0が解放されることにより、上記クランク軸26とフロントカバー32との間の動力伝達経路における動力伝達が遮断される。また、上記エンジン断続用クラッチK0がスリップ係合されることにより、上記クランク軸26とフロントカバー32との間の動力伝達経路においてそのエンジン断続用クラッチK0の伝達トルクに応じた動力伝達が行われる。
前記自動変速機18は、トルクコンバータ16と駆動輪24との間の動力伝達経路の一部を構成しており、係合要素の掴み替えによりクラッチ・ツゥ・クラッチ変速を行う有段式の自動変速機構である。換言すれば、その自動変速機18は、予め定められた複数の変速段(変速比)の何れかが択一的に成立させられる自動変速機構であり、斯かる変速を行うために複数の係合要素と複数の遊星歯車装置とを備えて構成されている。例えば、その自動変速機18が有する係合要素は、湿式多板型のクラッチやブレーキ等であり、要するに油圧アクチュエータによって係合制御される油圧式摩擦係合装置である。自動変速機18では、前記油圧制御回路34から供給される油圧に応じてそれら複数の油圧式摩擦係合装置が選択的に係合乃至解放される。そして、それら油圧式摩擦係合装置の連結状態の組合せに応じて、例えば第1速から第4速である複数の前進変速段(前進ギヤ段、前進走行用ギヤ段)、或いは後進変速段(後進ギヤ段、後進走行用ギヤ段)の何れかが択一的に成立させられる。
図2は、図1のハイブリッド車両8における前記電動機MG及びトルクコンバータ16付近の構成を説明するために、その一部を切り欠いて示す断面図である。なお、前記電動機MG、トルクコンバータ16、自動変速機18、及びクランク軸26はそれらに共通の軸心Cに対して略対称的に構成されており、図2においては軸心Cの下半分が省略されている。この図2に示すように、前記電動機MG、トルクコンバータ16、及び自動変速機18は、何れもトランスミッションケース36内に収容されている。このトランスミッションケース36は、例えばアルミダイキャスト製の分割式ケースであり、車体等の非回転部材に固定されている。
前記エンジン断続用クラッチK0は、円筒状のクラッチドラム38と、そのクラッチドラム38よりも小径であってクラッチドラム38と同心且つ相対回転可能に設けられた円筒状のクラッチハブ40と、それらクラッチドラム38とクラッチハブ40との間の円環状の間隙内に設けられた摩擦係合部材42と、その摩擦係合部材42を軸心C方向において押圧するクラッチピストン44とを、備えている。上記クラッチドラム38は、前記電動機MGのロータ30におけるボス部30aに例えば溶接等により一体的に固設されており、そのロータ30と一体回転させられるようになっている。また、上記摩擦係合部材42は、上記クラッチドラム38に相対回転不能に係合された複数の円環板状のセパレータと、それら複数のセパレータ間にそれぞれ設けられて上記クラッチハブ40に相対回転不能に係合された複数の円環板状の摩擦プレートとを、備えている。
このように構成された前記エンジン断続用クラッチK0においては、上記摩擦係合部材42が上記クラッチピストン44により軸心C方向に押圧されて上記セパレータと摩擦プレートとが相互に摩擦係合させられることで、上記クラッチドラム38とクラッチハブ40との間の相対回転が抑制されるようになっている。すなわち、上記摩擦係合部材42のセパレータと摩擦プレートとの摩擦係合により、上記クラッチドラム38とクラッチハブ40との間が相互に動力伝達可能な状態とされる。なお、このエンジン断続用クラッチK0は、好適には、後述する電子制御装置58から指令が出力されない状態においては係合させられる常閉型(ノーマリークローズ)のクラッチとされる。
前記クランク軸26は、その出力端部すなわち前記電動機MG側の一端部がドライブプレート46等を介して前記エンジン断続用クラッチK0のクラッチハブ40と一体的に回転させられる回転軸48に連結されている。すなわち、前記クランク軸26とクラッチハブ40とは、共通の軸心Cまわりに一体的に回転させられるように上記ドライブプレート46及び回転軸48等を介して連結されている。また、前記トルクコンバータ16のポンプ翼車16pには油圧ポンプ28が連結されており、そのポンプ翼車16pの回転に伴いその油圧ポンプ28により発生させられた油圧が前記油圧制御回路34に元圧として供給されるようになっている。
トルクコンバータ16は、電動機MGと自動変速機18との間に介装されており、軸心Cまわりに回転するように配設された流体伝動装置であり、ポンプ翼車16pとタービン翼車16tとステータ翼車16sとフロントカバー32とを備えている。そして、トルクコンバータ16は、ポンプ翼車16pに入力された駆動力をタービン翼車16tへ流体(作動油)を介して伝達する。このトルクコンバータ16のポンプ翼車16pは、フロントカバー32に一体的に固設されており、そのフロントカバー32と一体回転させられるようになっている。従って、ポンプ翼車16pはトルクコンバータ16の入力側回転要素であって、そのポンプ翼車16pには、電動機MGからの駆動力が入力されると共に、エンジン12からの動力がエンジン断続用クラッチK0の係合または解放により選択的に入力される。タービン翼車16tは、自動変速機18の入力軸である変速機入力軸19にスプライン嵌合等によって相対回転不能に連結されている。すなわち、タービン翼車16tは、駆動輪24に向けて動力を出力する回転要素であり、要するに、トルクコンバータ16の出力側回転要素である。ステータ翼車16sは、非回転部材であるトランスミッションケース36に一方向クラッチを介して連結されている。
また、トルクコンバータ16は、ポンプ翼車16pとタービン翼車16tとの間に、ポンプ翼車16p及びタービン翼車16tを選択的に相互に直結するロックアップクラッチLUを備えている。このロックアップクラッチLUは、油圧制御回路34から供給される油圧に応じてその係合状態が係合(完全係合)、スリップ係合、乃至解放(完全解放)の間で制御されるようになっている。
前記電動機MGは、前記回転軸48の外周側において前記トランスミッションケース36により軸心Cまわりの回転可能に支持されたロータ30と、そのロータ30の外周側において前記トランスミッションケース36に一体的に固定されたステータ50とを、備えている。前記ロータ30は、1対の軸受52を介して前記トランスミッションケース36に回転可能に支持された円筒状のボス部30aと、上記ステータ50の内周側においてそのステータ50との間に僅かな隙間を隔てた状態で軸心C方向に積層された複数の円環状の鋼板を有するロータ部30bと、それらボス部30aとロータ部30bとを一体に連結する連結部30cとを、備えている。前記ロータ30は、上記ロータ部30bの内周側に連結されると共に例えば溶接等により前記フロントカバー32に一体的に固定された伝達部材54を介してそのフロントカバー32に連結されている。また、上記ステータ50は、複数の円環状の鋼板がそれぞれ軸心C方向に積層されたコア50aと、そのコア50aの内周部の周方向の一部に環状に巻き掛けられ、周方向に連続して複数設けられたコイル50bとを、備えている。このコア50aは、周方向の複数箇所においてボルト等により前記トランスミッションケース36に一体的に固定されている。
このように構成された前記電動機MGは、図1に示すインバータ56を介してバッテリやコンデンサ等の蓄電装置57に接続されており、後述する電子制御装置58によりそのインバータ56が制御されることで上記コイル50bに供給される駆動電流が調節されることにより、前記電動機MGの駆動が制御されるようになっている。換言すれば、上記電子制御装置58によりそのインバータ56が制御されることで前記電動機MGの出力トルクTmg(以下、電動機トルクTmgという)が増減させられるようになっている。なお、斯かる電動機トルクTmgは、前記エンジン断続用クラッチK0の解放時(非係合時)には前記トルクコンバータ16に対してのみ出力されるが、前記エンジン断続用クラッチK0の係合時にはその電動機トルクTmgの一部が前記トルクコンバータ16に出力されると共に他部が前記エンジン12に出力される。また、電動機トルクTmgおよびエンジントルクTeは、エンジン12の回転方向に一致する方向、すなわち、駆動輪24を駆動する方向が正方向である。一方で、駆動輪24を制動する方向が負方向である。
前記ハイブリッド車両8においては、例えば専ら前記電動機MGを走行用の駆動源とするEV走行から前記エンジン12を駆動源として用いるエンジン走行又はハイブリッド走行への移行に際して、前記エンジン断続用クラッチK0の係合により前記エンジン12の始動が行われる。すなわち、前記エンジン断続用クラッチK0がスリップ係合乃至完全係合させられることにより、そのエンジン断続用クラッチK0を介して伝達されるエンジン始動のためのトルクにより前記エンジン12が回転駆動され、それによりエンジン回転速度Neが引き上げられつつエンジン点火や燃料供給等が制御されることで前記エンジン12が始動される。また、この際に前記電動機MGにより補償トルクが発生させられ、車両前後方向の加速度(減速G)の発生が抑制される。すなわち、前記エンジン12の始動は、着火による爆発エネルギから得られるトルクと、前記エンジン断続用クラッチK0による係合エネルギから得られるトルクすなわちそのエンジン断続用クラッチK0を介して伝達されるエンジン始動トルクとで前記エンジン12が回転駆動されることにより行われる。
また、前記ハイブリッド車両8は、図1に例示するような制御系統を備えている。この図1に示す電子制御装置58は、CPU、RAM、ROM、及び入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されている。その電子制御装置58は、CPUがRAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、前記エンジン12の駆動制御、前記電動機MGの駆動制御、前記自動変速機18の変速制御、前記エンジン断続用クラッチK0の係合力制御、及び前記ロックアップクラッチLUの係合制御等の各種制御を実行する。
図1に示すように、上記電子制御装置58には、前記ハイブリッド車両8に設けられた各センサにより検出される各種入力信号が供給されるようになっている。例えば、アクセル開度センサ60により検出されるアクセル開度Accを表す信号、電動機回転速度センサ62により検出される前記電動機MGの回転速度(電動機回転速度)Nmgを表す信号、エンジン回転速度センサ64により検出される前記エンジン12の回転速度(エンジン回転速度)Neを表す信号、タービン回転速度センサ66により検出される前記トルクコンバータ16のタービン翼車16tの回転速度(タービン回転速度)Ntを表す信号、車速センサ68により検出される車速Vを表す信号、及び水温センサ70により検出される前記エンジン12の冷却水温TEMPwを表す信号等が、上記電子制御装置58に入力される。ここで、電動機回転速度センサ62により検出される電動機回転速度Nmgは、前記トルクコンバータ16の入力回転速度であり、そのトルクコンバータ16におけるポンプ翼車16pの回転速度(ポンプ回転速度)Npに相当する。また、上記タービン回転速度センサ66により検出されるタービン回転速度Ntは、前記トルクコンバータ16の出力回転速度であり、前記自動変速機18における変速機入力軸19の回転速度Natinすなわち変速機入力回転速度Natinに相当する。また、自動変速機18の出力軸20(以下、変速機出力軸20という)の回転速度Natoutすなわち変速機出力回転速度Natoutは、前記車速Vに対応する。
また、前記電子制御装置58から、前記ハイブリッド車両8に設けられた各装置に各種出力信号が供給されるようになっている。例えば、前記エンジン12の駆動制御のためにそのエンジン12の出力制御装置14に供給される信号、前記電動機MGの駆動制御のために前記インバータ56に供給される信号、前記自動変速機18の変速制御のために前記油圧制御回路34における複数の電磁制御弁に供給される信号、前記エンジン断続用クラッチK0の係合制御のために前記油圧制御回路34における電磁制御弁に供給される信号、及び前記ロックアップクラッチLUの係合制御のために前記油圧制御回路34における電磁制御弁に供給される信号等が、前記電子制御装置58から各部へ供給される。
電子制御装置58が実行するハイブリッド駆動制御及び自動変速機18の変速制御の概要に関して説明する。前記自動変速機18の変速制御は、予め定められた関係から前記ハイブリッド車両8の駆動状態(走行状態)に基づいて、電子制御装置58により実行される。例えば、その変速制御では、前記自動変速機18において成立させられるべき変速段(ギヤ段)が、予め定められて記憶装置72に記憶された後述する図3に示すような変速マップ74から、前記車速センサ68により検出される車速V及び前記アクセル開度センサ60により検出されるアクセル開度Acc等の駆動力要求量に基づいて判定される。そして、その判定に基づき、その成立させられるべき変速段が成立させられるように前記自動変速機18へ供給される油圧が制御される。具体的には、前記油圧制御回路34に備えられた各電子制御弁の作動(出力油圧)が電子制御装置58により制御され、それにより、その油圧制御回路34から前記自動変速機18における各油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータへ供給される油圧が制御される。ここで、上記駆動力要求量は、運転者の操作に応じて定められる前記ハイブリッド車両8に要求される走行用の駆動力を示す値であり、上記アクセル開度Acc以外の値としては、アクセルペダル71の踏込量や、電子スロットル弁の開度θth(スロットル開度θth)等が用いられてもよい。
また、前記ハイブリッド車両8におけるハイブリッド駆動制御が、電子制御装置58により実行される。すなわち、前記エンジン12の駆動が出力制御装置14を介して制御されると共に電動機MGの作動が前記インバータ56を介して制御され、それにより、それらエンジン12及び電動機MGの少なくとも一方を走行用の駆動源とする前記ハイブリッド車両8の駆動制御が実行される。例えば、前記EV走行を行うEV走行モード(モータ走行モード)、前記エンジン走行を行うエンジン走行モード、前記EHV走行を行うEHV走行モード(ハイブリッド走行モード)等が、電子制御装置58により、前記ハイブリッド車両8の走行状態に応じて選択的に成立させられる。
上記EV走行モードにおいて、電子制御装置58は、専ら前記電動機MGを走行用の駆動源として前記ハイブリッド車両8の走行制御を行う。すなわち、予め記憶された駆動力マップから駆動力要求量としてのアクセル開度Accや車速V等に基づいて要求出力軸トルクを決定し、その要求出力軸トルクから充電要求値等を考慮して要求駆動力を算出する。そして、その要求駆動力が得られるように前記電動機MGの駆動(出力トルク)を制御する。このEV走行モードにおいて、基本的には前記エンジン12の駆動は停止させられると共に前記エンジン断続用クラッチK0は解放(完全解放)される。これにより、前記エンジン12と電動機MGとの間の動力伝達経路は遮断され、そのエンジン12から前記ロックアップクラッチ16側へ動力伝達は行われず、逆にそのロックアップクラッチ16側から前記エンジン12へのトルク伝達も行われない。
前記エンジン走行モードにおいて、電子制御装置58は、専ら前記エンジン12を走行用の駆動源として前記ハイブリッド車両8の走行制御を行う。すなわち、電子制御装置58は、上述のようにして求められる要求駆動力が得られるように目標エンジン出力を算出する。そして、運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に求められて記憶された前記エンジン12の最適燃費率曲線(燃費マップ、関係)に沿ってそのエンジン12を作動させつつ上記目標エンジン出力が得られるエンジン回転速度Ne及びエンジントルクTeとなるように前記エンジン12の駆動を制御する。このエンジン走行モードにおいて、前記エンジン断続用クラッチK0は係合(完全係合)される。また、前記電動機MGは空転させられるが、走行状態に応じて回生を行うように作動させられるものであってもよい。
前記EHV走行モードにおいて、電子制御装置58は、前記エンジン12及び電動機MGを共に走行用の駆動源として前記ハイブリッド車両8の走行制御を行う。すなわち、電子制御装置58は、前述のようにして求められる要求駆動力が得られるように伝達損失、補機負荷、前記電動機MGのアシストトルク等を考慮して目標エンジン出力を算出する。そして、予め実験的に求められて記憶された前記最適燃費率曲線に沿ってエンジン12を作動させつつ上記目標エンジン出力が得られるエンジン回転速度Ne及びエンジントルクTeとなるように前記エンジン12及び電動機MGの駆動を制御する。このEHV走行モードにおいて、前記電動機MGは必ずしも常に走行用の駆動源として用いられるものでなくともよく、前記ハイブリッド車両8の走行状態に応じて空転させられたり、回生作動させられる等の制御が行われるものであってもよい。
また、電子制御装置58は、前記電動機MGによる回生(発電)を制御する。すなわち、予め定められた関係から駆動力要求量としてのアクセル開度Acc等に基づいて回生の実行が判定された場合には、前記電動機MGにより回生が行われるようにその作動を制御する。このようにして前記電動機MGの回生により発生させられた電気エネルギは、前記インバータ56を介して図示しない蓄電装置57に蓄積される。そして、前記電動機MGが駆動源として用いられる際に、蓄電装置57から前記インバータ56を介してその電動機MGに電気エネルギが供給されて駆動力が発生させられる。
図3は、電子制御装置58による前記自動変速機18の変速判定に用いられる変速マップ74と、電子制御装置58による走行モード切替判定に用いられる切替マップ76とを併せて示す図である。この図3に示す変速マップ74は、変速判定に用いられる変速線のうちアップシフト線すなわち低速段(比較的変速比が大きい変速段)から高速段(比較的変速比が小さい変速段)への変速を判定するための変速線のみを示しており、ダウンシフト線すなわち高速段から低速段への変速を判定するための変速線は省略されている。要するに、上記変速マップ74は、自動変速機18のアップシフトについての変速判定に用いられるアップシフトマップであると言える。また、図3では、第1速から第2速への変速を判定する変速線(1→2アップシフト線)は実線で示され、第1速乃至第2速から第3速への変速を判定する変速線(1→3アップシフト線乃至2→3アップシフト線)は一点鎖線で示され、第3速から第4速への変速を判定する変速線(3→4アップシフト線)は二点鎖線で示され、EV走行モード(EV領域)とEHV走行モード(EHV領域)との切替を判定する切替線は破線で示されている。
図3に示すように、上記変速マップ74及び切替マップ76においては、前記自動変速機18の第2速から第3速への変速を判定するための変速線(2→3アップシフト線)の一部と、前記EHV走行モードからEV走行モードへの切替を判定する切替線の一部とが重なっている。また、前記自動変速機18の第3速から第4速への変速を判定するための変速線(3→4アップシフト線)の一部と、前記EHV走行モードからEV走行モードへの切替を判定する切替線の一部とが重なっている。すなわち、前記変速判定及び走行モードの切替判定において、上記2→3アップシフト線及び3→4アップシフト線それぞれの一部と、前記EHV走行モードからEV走行モードへの切替を判定する切替線の一部とが共用されるように定められている。ここで、図3においては、各線の線種をわかりやすく図示するため、斯かる共用部分を若干ずらして示しているが、好適には変速線と切替線とが同一の関係(一致)とされる。また、実用上略同一の関係とみなすことができる程度の差異があってもよい。すなわち、変速線と切替線とが共用されるとは、前記変速判定と走行モードの切替判定とが略同期して行われる関係を言い、例えば変速線を基準として所定の誤差範囲内(図3では車速及びアクセル開度に関する誤差)に切替線が定められているのであれば変速線と切替線とが共用されるものであると言える。以下の説明において同じである。
換言すれば、前記変速マップ74及び切替マップ76は、2→3アップシフト線及びEHV→EV切替線として共用される関係から、車速V及びアクセル開度Accに基づいて、前記EHV走行モードであり且つ前記自動変速機18が第2速である状態から前記EV走行モードであり且つ前記自動変速機18が第3速である状態への移行が判定されるように定められている。また、3→4アップシフト線及びEHV→EV切替線として共用される関係から、車速V及びアクセル開度Accに基づいて、前記EHV走行モードであり且つ前記自動変速機18が第3速である状態から前記EV走行モードであり且つ前記自動変速機18が第4速である状態への移行が判定されるように定められている。
また、前記変速マップ74及び切替マップ76においては、前記自動変速機18が第1速に維持されたまま前記EV走行モードから前記HEV走行モードへの切替を判定するための切替線が、前記EV走行モードに維持されたまま前記自動変速機18の第1速から第3速への変速を判定するための変速線(1→3アップシフト線)よりも高駆動力要求量側(高アクセル開度側)に定められている。また、前記自動変速機18が第4速に維持されたまま前記EV走行モードから前記HEV走行モードへの切替を判定するための切替線が、前記HEV走行モードに維持されたまま前記自動変速機18の第3速から第4速への変速を判定するための変速線(3→4アップシフト線)よりも低駆動力要求量側(低アクセル開度側)に定められている。また、前記変速マップ74の変速線において前記切替マップ76の切替線と共用される部分すなわち前記2→3アップシフト線及び3→4アップシフト線それぞれの一部は、車速Vが高くなるほど対応する駆動力要求量であるアクセル開度Accが漸減(単調減少)させられるように定められている。換言すれば、図3に示す車速Vを横軸としアクセル開度Accを縦軸とする平面座標において、前記変速マップ74の変速線において前記切替マップ76の切替線と共用される部分が右下がりとなるように定められている。
図4は、図3に示す変速マップ74及び切替マップ76を用いた具体的な変速制御及び走行モード切替制御について説明するための図である。運転者により図4に示す操作(1)が行われた場合、すなわち前記EHV走行モードであり且つ前記自動変速機18が第2速である状態から車速Vが略一定でアクセルペダル71が踏み戻される(アクセルオン→アクセルオフ)操作が行われた場合、前記EHV走行モードからEV走行モードへの切替制御及び前記自動変速機18の第2速から第3速への変速制御が同時に判定乃至実行される。
図5は、電子制御装置58による前記自動変速機18の変速判定に用いられる他の変速マップ78と、電子制御装置58による走行モード切替判定に用いられる切替マップ76とを併せて示す図である。この図5に示す変速マップ78は、変速判定に用いられる変速線のうちダウンシフト線すなわち高速段から低速段への変速を判定するための変速線のみを示しており、アップシフト線すなわち低速段から高速段への変速を判定するための変速線を省略している。要するに、上記変速マップ78は、自動変速機18のダウンシフトについての変速判定に用いられるダウンシフトマップであると言える。また、第2速から第1速への変速を判定する変速線(2→1ダウンシフト線)を実線で、第3速から第2速乃至第1速への変速を判定する変速線(3→1ダウンシフト線乃至3→2ダウンシフト線)を一点鎖線で、第4速から第3速への変速を判定する変速線(4→3ダウンシフト線)を二点鎖線で、EV走行モード(EV領域)とEHV走行モード(EHV領域)との切替を判定する切替線を破線でそれぞれ示している。
図5に示すように、上記変速マップ78及び切替マップ76においては、前記自動変速機18の第3速から第2速への変速を判定するための変速線(3→2ダウンシフト線)の一部と、前記EV走行モードからEHV走行モードへの切替を判定する切替線の一部とが重なっている。また、前記自動変速機18の第4速から第3速への変速を判定するための変速線(4→3ダウンシフト線)の一部と、前記EV走行モードからEHV走行モードへの切替を判定する切替線の一部とが重なっている。すなわち、前記変速判定及び走行モードの切替判定において、上記3→2ダウンシフト線及び4→3ダウンシフト線それぞれの一部と、前記EV走行モードからEHV走行モードへの切替を判定する切替線の一部とが共用されるように定められている。
換言すれば、前記変速マップ78及び切替マップ76は、3→2ダウンシフト線及びEV→EHV切替線として共用される関係から、車速V及びアクセル開度Accに基づいて、前記EV走行モードであり且つ前記自動変速機18が第3速である状態から前記EHV走行モードであり且つ前記自動変速機18が第2速である状態への移行が判定されるように定められている。また、4→3ダウンシフト線及びEV→EHV切替線として共用される関係から、車速V及びアクセル開度Accに基づいて、前記EV走行モードであり且つ前記自動変速機18が第4速である状態から前記EHV走行モードであり且つ前記自動変速機18が第3速である状態への移行が判定されるように定められている。
前記変速マップ78及び切替マップ76を用いた変速制御及び走行モード切替制御では、前記変速マップ74及び切替マップ76を用いた制御と同様に、前記自動変速機18が略ニュートラル状態とされている間に前記EV走行モードからEHV走行モードへの移行が実行される。すなわち、例えば前記自動変速機18の第3速から第2速への変速制御に同期してEV走行モードからEHV走行モードへの移行が行われる場合、前記自動変速機18における係合要素の掴み替えによりニュートラル状態が成立している間に前記エンジン12を始動させることで、その始動に起因するショックが出力側すなわち前記自動変速機18の出力軸乃至差動歯車装置21側に伝達するのを好適に抑制でき、ショックに対するロバスト性を向上させることができる。特に、高速段から低速段へのダウンシフトにおいては、前記自動変速機18が略ニュートラル状態とされている間のエンジン始動に起因して前記タービン回転速度Ntが上昇させられた後に低速段が成立させられるため、エンジン始動ショックと変速ショックとを相殺して更にロバスト性を向上させることができる。
ところで、前述したように、図4の操作(1)として示す車両状態の変化が生じた際、すなわち、前記EHV走行モードでの車両走行中にエンジン12が停止させられると共に自動変速機18の変速が行われる際には、前記EHV走行モードから前記EV走行モードへの移行が自動変速機18の変速制御に同期して行われる。具体的にその変速制御では、自動変速機18が有する複数の係合要素に含まれ解放作動させられる解放側係合要素Crが解放された時点から、上記複数の係合要素に含まれ係合作動させられる係合側係合要素Cenが係合されトルク容量を生じ始める時点までの間において、自動変速機18は略ニュートラル状態とされる。すなわち、変速機入力軸19と駆動輪24との間の動力伝達経路が実質的に遮断された状態となる。本実施例の制御では、前記EHV走行モードから前記EV走行モードへの移行に伴うエンジン断続用クラッチK0の解放及びロックアップクラッチLUの係合が、その動力伝達経路が実質的に遮断された状態となっているときに実行される。その制御を実行する制御機能の要部について図6を用いて、次に説明する。なお、前記EHV走行モードから前記EV走行モードへの移行の際にロックアップクラッチLUが係合させられるのは、例えば上記EV走行モードでの惰性走行(コースト走行)中などに電動機MGによる電力回生が効率良く行われるようにするためである。
図6は、前記電子制御装置58に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図6に示すように、電子制御装置58は、制御実行判断手段82と電動機トルクダウン制御手段84と変速制御手段86と走行モード切替制御手段88とを備えている。
制御実行判断手段82は、エンジン12を駆動している車両走行中にエンジン12を停止すると共に自動変速機18の変速を行うべきか否かを判断する。具体的には、上記エンジン12を駆動している車両走行中とは、前記EHV走行モードでの車両走行中のことである。すなわち、制御実行判断手段82は、EHV走行モードでの車両走行中において、図3に示すような前記変速線及び前記切替線とが相互に一致している関係に基づき、車速V及びアクセル開度Accによって示される車両状態が上記変速線及び切替線を同時に横切ったか否かを判断する。そして、制御実行判断手段82は、その車両状態が上記変速線及び切替線を同時に横切ったと判断した場合には、エンジン12を停止すると共に自動変速機18の変速を行うべきとする判定を行う。すなわち、前記EHV走行モードからEV走行モードへの走行モードの切替と共に自動変速機18の変速制御を行うべきとする重複制御実施判定を行う。
例えば、図4に示す操作(1)のように、前記EHV走行モードでの車両走行中に運転者によってアクセルペダル71の戻し操作がなされた場合には、車速V及びアクセル開度Accによって示される車両状態は、前記EHV走行モードからEV走行モードへの切替線と自動変速機18の第2速から第3速へのアップシフト線とを同時に横切る。従って、前記重複制御実施判定は、上記操作(1)のようなアクセルペダル71の戻し操作(アクセルオン→アクセルオフ)に関連して行われる。
電動機トルクダウン制御手段84は、前記重複制御実施判定がなされた場合には、電動機トルクTmgを低下させる電動機トルクダウン制御を実行する。詳細には、その電動機トルクダウン制御では、その制御開始前に対する電動機MGのトルク低下量DTmg(以下、電動機トルク低下量DTmgという。図9参照。)を決定し、その決定した電動機トルク低下量DTmgだけ電動機トルクTmgを低下させる。この電動機トルクダウン制御は、EHV走行モードからEV走行モードへ切り替える前記走行モード切替制御に含まれるエンジン断続用クラッチK0の解放およびロックアップクラッチLUの係合に先立って開始される。具体的には、電動機トルクダウン制御で電動機トルクTmgを低下させることが、上記エンジン断続用クラッチK0の解放およびロックアップクラッチLUの係合に先立って開始される。
ここで、前記電動機トルクダウン制御の実行によってポンプ回転速度Npを積極的に低下させる必要はないので、その電動機トルクダウン制御において前記電動機トルク低下量DTmgは、ポンプ回転速度Npを引き下げるために必要なトルク低下量よりも小さく決定される。例えば、上記電動機トルク低下量DTmgは、自動変速機18の変速制御でのクラッチ解放に起因したエンジン12の吹上がりを抑えるのに必要なトルク低下量とされる。具体的には、電動機トルクダウン制御手段84は、逐次検出されるエンジン12の吸入空気量に基づいてエンジントルクTeを逐次推定しており、その推定したエンジントルクTe(エンジン推定トルク)のうちエンジン12を所定のアイドル回転速度よりも引き上げることになるエンジントルク余剰分Teov(図9参照)を算出する。そして、電動機トルクダウン制御手段84は、そのエンジントルク余剰分Teovを打ち消すように、換言すれば、そのエンジントルク余剰分Teovと釣り合うように、電動機トルク低下量DTmgを決定する。
そして、電動機トルクダウン制御手段84は、後述するエンジン断続用クラッチK0が完全に解放された場合には、前記電動機トルクダウン制御を終了する。
変速制御手段86は、前記重複制御実施判定がなされた場合には、その重複制御実施判定に含まれる前記変速判定に基づいて、自動変速機18のクラッチ・ツゥ・クラッチ変速である変速制御を実行する。そのために、変速制御手段86は、前記解放側係合要素Crの解放制御を行う解放側係合要素制御手段90と、前記係合側係合要素Cenの係合制御を行う係合側係合要素制御手段92とを、備えている。上記解放側係合要素Crおよび係合側係合要素Cenは、それぞれ、自動変速機18が有する複数の係合要素のうちの1つである。解放側係合要素制御手段90は、前記重複制御実施判定がなされた場合には、前記解放側係合要素Crの解放制御を実行する。例えばその解放制御では、解放側係合要素制御手段90は、前記電動機トルクダウン制御が開始された後、詳細には、電動機トルクTmgが低下し始めた後に、解放側係合要素Crの係合圧である解放側油圧Prを所定の減少率で減少させ解放側係合要素Crを解放させる。そして、解放側係合要素制御手段90は、解放側係合要素Crが完全に解放した場合には、解放側係合要素Crの解放制御を終了し、解放側係合要素Crが完全に解放した旨の解放側係合要素解放判定を行う。例えば、解放側油圧Prの指令値が0kPaとなり、その0kPaとなった時点から、上記指令値に対する実油圧の遅れ時間に相当するように決定された所定猶予時間が経過した場合には、解放側係合要素Crが完全に解放したと判断できる。或いは、解放側係合要素Crが完全に解放したか否かは、自動変速機18の変速開始時からの経過時間に基づいて判断されてもよいし、エンジン回転速度Ne、タービン回転速度Nt、変速機出力回転速度Natout、自動変速機18に含まれる回転要素の回転速度、および電動機回転速度Nmgの何れか又はそれらの組合せを用いて判断されても差し支えない。
走行モード切替制御手段88は、前記重複制御実施判定がなされた場合には、その重複制御実施判定に含まれる前記走行モード切替判定に基づいて、走行モードを前記EHV走行モードからEV走行モードへ切り替える走行モード切替制御を実行する。その走行モード切替制御には、エンジン断続用クラッチK0を解放させることと、ロックアップクラッチLUを係合させることと、エンジン12に対しフューエルカット(F/C)を行いエンジン12を停止させることとが、含まれる。つまり、その走行モード切替制御は、エンジン12を停止させることに関連するエンジン停止制御を含むと言える。具体的に、その走行モード切替制御において、走行モード切替制御手段88は、前記解放側係合要素Crの解放後にエンジン断続用クラッチK0の解放とロックアップクラッチLUの係合とを行う。すなわち、解放側係合要素制御手段90により前記解放側係合要素解放判定が行われた後に、エンジン断続用クラッチK0の係合圧を零に向けて所定の減少率で減少させてエンジン断続用クラッチK0を解放させ、且つ、ロックアップクラッチLUの係合圧を上昇させてロックアップクラッチLUを係合させる。また、走行モード切替制御手段88は、エンジン断続用クラッチK0が完全に解放した場合には、エンジン12に対しフューエルカット(F/C)を行ってエンジン12を停止させる。そのフューエルカットは、エンジン断続用クラッチK0の完全解放後に開始されるのであれば、その開始時期に特に制限はないが、上記エンジン断続用クラッチK0の完全解放後直ちに開始されるのが好ましい。例えば上記エンジン断続用クラッチK0が完全に解放したか否かの判断に関し、エンジン断続用クラッチK0が確実に解放される予め実験的に求められた所定の係合圧にエンジン断続用クラッチK0の係合圧(指令値)がなった時点で、上記エンジン断続用クラッチK0が完全に解放したと判断することができる。或いは、上記エンジン断続用クラッチK0が完全に解放したか否かは、エンジン断続用クラッチK0の係合圧(指令値)、エンジン断続用クラッチK0の解放作動開始時点からの経過時間およびエンジン回転速度Neの何れか若しくはそれらの組合せに基づいて判断されても差し支えない。
前記係合側係合要素制御手段92は、エンジン断続用クラッチK0が完全に解放され且つロックアップクラッチLUが完全に係合された場合には、前記係合側係合要素Cenの係合圧である係合側油圧Penを所定の上昇率で上昇させ係合側係合要素Cenを係合させる。それと共に、係合側係合要素制御手段92は、電動機トルクTmgが負方向トルクであれば、係合側係合要素Cenの完全係合時には電動機トルクTmgを正方向トルクにする。例えば係合側係合要素制御手段92は、そのように電動機トルクTmgを正方向トルクにするために電動機トルクTmgを所定の増大率で増大させ、それと共に前記係合側油圧Penを次第に上昇させる。そして、その係合側油圧Penが、係合側係合要素Cenを完全係合させる係合圧よりも低い所定の完全係合待機圧に到達した時点で、電動機トルクTmgを確認する。その確認において、電動機トルクTmgが正方向トルクであればそのまま前記係合側油圧Penの上昇を継続し、一方で、電動機トルクTmgが未だ正方向トルクに至っていなければ、電動機トルクTmgが正方向トルクになるのを待って前記係合側油圧Penを再び上昇させ始める。
また、係合側係合要素制御手段92は、係合側係合要素Cenが完全に係合した場合には、その係合側係合要素Cenの完全係合状態を確実に維持する所定の変速完了係合圧にまで係合側油圧Penを上昇させる。これにより、自動変速機18の変速制御は終了する。上記係合側係合要素Cenの完全係合、すなわち、係合側係合要素Cenの同期完了は、自動変速機18の変速後の変速比と前記変速機入力回転速度Natinと前記変速機出力回転速度Natoutとに基づいて判断できる。なお、係合側係合要素制御手段92は、エンジン断続用クラッチK0が完全に解放される前においては、そのエンジン断続用クラッチK0の完全解放前であることを理由に、係合側係合要素Cenの同期が完了したとは判断しない。すなわち、自動変速機18の変速制御を終了させることはしない。例えば、エンジン断続用クラッチK0が完全に解放される前に、何らかの原因により、変速機入力回転速度Natin(=タービン回転速度Nt)が、変速後に達成されるべき目標値である目標変速機入力回転速度に一致したとしても、係合側係合要素制御手段92は自動変速機18の変速制御を終了させないということである。
また、係合側係合要素制御手段92は、係合側係合要素Cenが完全に係合した場合には、アクセル開度Accに応じた駆動力が得られるように電動機トルクTmgを変化させる。
以上のようにして、電子制御装置58は、前記EHV走行モードでの車両走行中にエンジン12を停止すると共に自動変速機18の変速を行う際には、前記EHV走行モードから前記EV走行モードへの移行を自動変速機18の変速制御に同期して行う。すなわち、その際には、前記解放側係合要素Crの解放後にエンジン断続用クラッチK0の解放とロックアップクラッチLUの係合とを行い、エンジン断続用クラッチK0の解放後かつロックアップクラッチLUの係合後に前記係合側係合要素Cenを係合させる。ここで、エンジン断続用クラッチK0の解放おいて、その解放作動に要する時間が短くなるほど、その解放に起因してエンジン断続用クラッチK0で発生するショックは大きくなるものである。これは、ロックアップクラッチLUの係合に関しても同様である。従って、上記ショックは自動変速機18の非変速時であれば駆動輪24に伝達され易いので、そのショックを抑えることができるように、ある程度の時間を要して、エンジン断続用クラッチK0は解放作動させられ、ロックアップクラッチLUは係合作動させられる。しかし、前記走行モード切替制御において走行モード切替制御手段88が実行するエンジン断続用クラッチK0の解放およびロックアップクラッチLUの係合は、自動変速機18の変速における解放側係合要素Crの解放後から係合側係合要素Cenの係合前までに行われる。つまり、そのエンジン断続用クラッチK0の解放およびロックアップクラッチLUの係合は、自動変速機18内の動力伝達経路が実質的に遮断された状態において行われる。従って、エンジン断続用クラッチK0またはロックアップクラッチLUにて発生したショックは殆ど駆動輪24に伝達されないので、走行モード切替制御手段88は、そのエンジン断続用クラッチK0の解放とロックアップクラッチLUの係合とを、自動変速機18の非変速時と比較して早期に完了させる。
図7及び図8は、電子制御装置58の制御作動の要部、すなわち、前記EHV走行モードから前記EV走行モードへの移行を自動変速機18の変速制御に同期して行う制御作動を説明するためのフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。この図7及び図8に示す制御作動は、単独で或いは他の制御作動と並列的に実行される。また、図7及び図8に示す制御作動は、前記EHV走行モード(EHV領域)での車両走行中に開始される。
先ず、図7のステップ(以下、「ステップ」を省略する)SA1では、前記EHV走行モードでの車両走行中において、前記EHV走行モードから前記EV走行モードへの走行モードの切替と共に自動変速機18の変速制御を行うべきか否かが判断される。すなわち、車速V及びアクセル開度Accによって示される車両状態が、図3のマップに含まれる前記変速線及び前記切替線を同時に横切ったか否かが、判断される。このSA1の判断が肯定された場合、すなわち、前記EHV走行モードから前記EV走行モードへの走行モードの切替と共に自動変速機18の変速制御を行うべきと判断された場合には、SA2に移る。一方、このSA2の判断が否定された場合には、本フローチャートは終了する。例えば、図4に示す操作(1)のように、前記EHV走行モードでの車両走行中に運転者によってアクセルペダル71の戻し操作(アクセルオン→アクセルオフ)がなされた場合には、このSA1の判断は肯定される。なお、SA1は制御実行判断手段82に対応する。
SA2においては、前記EHV走行モードから前記EV走行モードへの走行モードの切替および自動変速機18の変速制御が開始される。例えば、SA2では、その変速制御において、係合側係合要素Cenのファーストフィルが行われたり、解放側係合要素Crを応答性良く解放作動させるために解放側油圧Prが解放側係合要素Crの係合状態を維持しつつ所定圧まで低下させられたりする。また、ロックアップクラッチLUのファーストフィルが行われても差し支えない。なお、このSA2においては、未だ、係合側係合要素CenおよびロックアップクラッチLUは完全に解放されており、解放側係合要素Crおよびエンジン断続用クラッチK0は完全に係合されている。要するに、SA2は、それら係合側係合要素Cen、解放側係合要素Cr、ロックアップクラッチLU、およびエンジン断続用クラッチK0の係合状態または解放状態を変化させるものではない。更に、SA2は、エンジン12を停止させるものでもない。SA2の次はSA3に移る。SA2は、走行モード切替制御手段88、解放側係合要素制御手段90、および係合側係合要素制御手段92に対応する。
電動機トルクダウン制御手段84に対応するSA3においては、エンジン12の吸入空気量に基づいてエンジントルクTeが推定され、その推定されたエンジントルクTe(エンジン推定トルク)および車両負荷トルク等に基づいて、前記電動機トルクダウン制御における前記電動機トルク低下量DTmg(MGトルクダウン量DTmg)が決定される。そして、その決定された電動機トルク低下量DTmgで前記電動機トルクダウン制御が開始される。このSA3にて開始された電動機トルクダウン制御は、前記走行モード切替制御においてエンジン断続用クラッチK0が完全に解放されるまで継続される。SA3の前記電動機トルクダウン制御にて電動機MGのトルクダウンが開始されると、次はSA4に移る。
SA4においては、前記解放側油圧Prが所定の減少率で減少させられ、それにより、解放側係合要素Crが解放させられる。既に上記解放側油圧Prの減少が開始されているのであれば、それが継続させられる。ここで、上記解放側係合要素Crとは、例えばそれがクラッチであれば、自動変速機18の現在のギヤ段(変速前ギヤ段)を形成している現在ギヤ段形成クラッチである。SA4の次はSA5に移る。
SA5においては、前記解放側係合要素Crが完全に解放されたか否かが判定される。このSA5の判定が肯定された場合、すなわち、解放側係合要素Crが完全に解放された場合には、図8のSA6に移る。一方、このSA5の判定が否定された場合には、SA4に移る。このSA5の判定時点で前記係合側係合要素Cenは未だ解放状態にあるので、解放側係合要素Crが完全に解放された場合には、解放側係合要素Crおよび係合側係合要素Cenが共に解放されているという変速機側クラッチ解放判定をすることができる。なお、SA4およびSA5は解放側係合要素制御手段90に対応する。
走行モード切替制御手段88に対応するSA6では、走行モードを前記EHV走行モードからEV走行モードへ切り替える前記走行モード切替制御において、エンジン断続用クラッチK0の係合圧が零に向けて所定の減少率で減少させられ、それにより、エンジン断続用クラッチK0が解放される。また、ロックアップクラッチLUの係合圧が上昇させられ、それにより、ロックアップクラッチLUが係合される。また、エンジン断続用クラッチK0が完全に解放された後に、エンジン12に対しフューエルカットが行われ、それにより、エンジン12が停止させられる。ここで、このフローチャートでは上記走行モード切替制御は、自動変速機18の変速を伴うものであるで、自動変速機18の非変速時と比較して、ショック低減よりも早期の制御完了を重視して実行される。SA6の次はSA7に移る。
係合側係合要素制御手段92に対応するSA7においては、上記走行モード切替制御にてエンジン断続用クラッチK0が完全に解放され且つロックアップクラッチLUが完全に係合されたか否かが判断される。このSA7の判断が肯定された場合、すなわち、エンジン断続用クラッチK0が完全に解放され且つロックアップクラッチLUが完全に係合された場合には、SA8に移る。一方、このSA7の判断が否定された場合には、SA6に移る。要するに、次のSA8は、エンジン断続用クラッチK0が完全に解放され且つロックアップクラッチLUが完全に係合された後に、実行される。
係合側係合要素制御手段92に対応するSA8においては、前記係合側油圧Penが所定の上昇率で上昇させられ、それにより、前記係合側係合要素Cenが係合される。すなわち、自動変速機18の変速制御のイナーシャ相が進行させられる。それと共に、電動機MGのトルク制御が行われる。具体的にそのトルク制御では、電動機トルクTmgが負方向トルクであれば、係合側係合要素Cenの完全係合時に電動機トルクTmgが正方向トルクになるように変化させられる。なお、上記イナーシャ相では、電動機トルクTmgは、自動変速機18の変速後に達成すべきタービン回転速度Ntの目標値(目標タービン回転速度)と、タービン回転速度センサ66により検出されるタービン回転速度Ntの現在の変化率とに基づいて、上記イナーシャ相終了時点でタービン回転速度Ntが上記目標タービン回転速度に一致するように調節されるのが好ましい。SA8の次はSA9に移る。
SA9においては、係合側係合要素Cenの同期が完了し且つ電動機トルクTmgが正方向トルクであるか否かが判断される。上記係合側係合要素Cenの同期完了とはその係合側係合要素Cenの完全係合のことである。このSA9の判断が肯定された場合、すなわち、係合側係合要素Cenの同期が完了し且つ電動機トルクTmgが正方向トルクである場合には、本フローチャートは終了する。一方、このSA9の判断が否定された場合には、SA8に移る。
図9は、前記EHV走行モードでの車両走行中に図4の操作(1)のようなアクセルオフがなされた場合を例として、図7および図8に示す制御作動を説明するためのタイムチャートである。図4から判るように、図9にて実行される自動変速機18の変速制御は第2速から第3速へのアップシフトである。なお、図9において、MGトルクとは電動機トルクTmgのことであり、LU油圧とはロックアップクラッチLUの係合圧のことであり、K0油圧とはエンジン断続用クラッチK0の係合圧のことであり、出力軸トルクとは変速機出力軸20のトルクである。また、MGトルクのタイムチャートにおいて実線は電動機トルクTmgの指令値を示しており、破線L01は電動機トルクTmgの実際値を示している。また、この図9のエンジントルクTeのタイムチャートは、エンジン12の吸入空気量に基づいて推定されるエンジントルクTeすなわち前記エンジン推定トルクを表している。また、回転速度のタイムチャートには、エンジン回転速度Neと電動機回転速度Nmgとタービン回転速度Ntとが表されている。また、K0油圧およびLU油圧のタイムチャートでは、両者を区別して表示するため、K0油圧に関しては破線で表示している。またそれと同様に、解放側油圧Prおよび係合側油圧Penのタイムチャートでは、解放側油圧Prに関しては破線で表示している。
図9において、t1時点前から、運転者によってアクセルペダル71の戻し操作が行われ、アクセル開度Accが次第に低下しており、そのアクセル開度Accはt1時点にて零にはなっていないが略零に至っている。そして、t1時点において、車速V及びアクセル開度Accによって示される車両状態が、前記EHV走行モードからEV走行モードへの切替線と自動変速機18の第2速から第3速へのアップシフト線とを同時に横切っており、図7のSA1の判断が肯定されている。そのため、図7のフローチャートではSA2に移る。具体的には、図9のt1時点にて解放側係合要素Crの係合状態が維持されつつ解放側油圧Prがt1時点前よりも低下させられている。また、t1時点〜t2時点の間で係合側係合要素Cenのファーストフィルが実行された後に、係合側油圧Penは、係合側係合要素Cenの解放状態を維持しつつ機械的クリアランスを詰める低圧待機圧とされている。更に、t2時点にて、ロックアップクラッチLUのファーストフィルが実行され、その後、LU油圧は、ロックアップクラッチLUの解放状態を維持しつつ機械的クリアランスを詰める低圧待機圧とされている。また、t2時点にて、エンジン断続用クラッチK0の係合状態が維持されつつK0油圧がt2時点前よりも低下させられている。要するに、t1時点では、前記車両状態が前記アップシフト線を横切ったことに基づいて、自動変速機18の変速制御が開始されている。そして、t2時点では、前記車両状態が前記EHV走行モードからEV走行モードへの切替線を横切ったことに基づいて、前記走行モード切替制御が開始されている。
また、t2時点では、図7のSA3において前記電動機トルクダウン制御が開始されているので、電動機トルクTmgがt2時点前に対して低下させられている。また、t2時点から、図7のSA4において前記解放側油圧Prが所定の減少率で減少させられており、それにより解放側係合要素Crが解放され始めている。ここで、電動機トルクTmgの低下時点と上記解放側油圧Prの上記所定の減少率での減少開始時点とは何れもt2時点で一致しているが、詳細には、上記電動機トルクダウン制御での電動機トルクTmgの低下が確認された後に、上記解放側油圧Prが上記所定の減少率で減少され始めている。
t3時点は、図7のSA5にて上記解放側係合要素Crが完全に解放されたと判定された時点を示している。すなわち、t3時点にて前記解放側係合要素解放判定が行われている。従って、t3時点から、図8のSA6においてK0油圧が所定の減少率で減少させられており、それによりエンジン断続用クラッチK0が解放され始めている。また、t3時点とt4時点との間の時点から、上記SA6においてLU油圧が上昇させられている。そして、t4時点にて、エンジン断続用クラッチK0が完全に解放され且つロックアップクラッチLUが完全に係合されている。従って、t4時点にて図8のSA7の判断が肯定されている。
また、t4時点ではエンジン12がアイドリング状態に至っており、図9のトルクTeidはそのアイドリング状態でのエンジントルクTeであるので、略零の正方向トルクである。また、t5時点からエンジン12に対しフューエルカットが実施されている。t5時点以降では、エンジン12は上記フューエルカットが実施されているので、仮にエンジン回転速度Neが引き上げられるとすれば、エンジン12の回転抵抗(フリクション)により負方向のエンジントルクTeを生じる。
上記t4時点にて上記SA7の判断が肯定されているので、t5時点から、図8のSA8において前記係合側油圧Penが所定の上昇率で上昇させられており、それにより前記係合側係合要素Cenが係合され始めている。また、上記係合側油圧Penの上昇と共に、電動機トルクTmgが係合側係合要素Cenの完全係合時に正方向トルクになるように、t5時点から増大させられる。
t6時点は、前記係合側係合要素Cenが完全に係合された時点を示している。そして、t6時点では電動機トルクTmgは正方向トルクである。従って、t6時点にて図8のSA9の判断は肯定される。また、t6時点の直後において係合側油圧Penが前記変速完了係合圧にまで上昇させられている。
t7時点は、運転者によってブレーキペダルの踏込操作が開始された時点を示している。すなわち、t7時点はブレーキオンの開始時点である。そのブレーキペダルの踏込操作によって、ディスクブレーキ等の車輪を機械的に制動する車輪制動装置(ホイールブレーキ装置)と電動機MGとが協調した車両制動が実施されている。すなわち、その協調した車両制動では、電動機MGが負方向のトルクすなわち回生トルクを発生し、それと共に、上記車輪制動装置がブレーキ制動力を発生させている。
本実施例によれば、電子制御装置58は、エンジン12を駆動している車両走行中にそのエンジン12を停止すると共に自動変速機18の変速を行う際には、その変速における解放側係合要素Crの解放後にエンジン断続用クラッチK0の解放とロックアップクラッチLUの係合とを行い、そのエンジン断続用クラッチK0の解放後に上記変速における係合側係合要素Cenを係合させる。従って、エンジン断続用クラッチK0の解放及びロックアップクラッチLUの係合は、前記解放側係合要素Crの解放後であって前記係合側係合要素Cenの係合前に行われる。そのため、そのエンジン断続用クラッチK0の解放またはロックアップクラッチLUの係合によって自動変速機18のエンジン側でショックが生じたとしても、そのショックは駆動輪24に伝達されない。或いは、その駆動輪24に殆ど伝達されない。従って、エンジン12の停止ショックを低減できる。また、自動変速機18のエンジン側で生じたショックは駆動輪に伝達されず或いは殆ど伝達されないので、ショック低減よりも応答性向上を重視して、エンジン断続用クラッチK0の解放及びロックアップクラッチLUの係合を迅速に行うことが可能である。その結果として、例えばエンジン断続用クラッチK0の解放及びロックアップクラッチLUの係合を自動変速機18の変速前または変速後に行う場合と比較して、自動変速機18の変速をエンジン12の停止制御と共に行う際の応答性向上を図ることが可能である。
また、本実施例によれば、前記係合側係合要素Cenはエンジン断続用クラッチK0の解放後に係合され始めるので、自動変速機18の変速中において、その係合側係合要素Cenの係合作動に伴う変速機入力回転速度Natinの変化がエンジントルク変動やエンジン側のイナーシャ変化の影響を受けない。従って、上記変速中における変速機入力回転速度Natinのコントロール性が向上するという利点がある。
また、本実施例によれば、電子制御装置58は、電動機トルクTmgを低下させる前記電動機トルクダウン制御をエンジン断続用クラッチK0の解放およびロックアップクラッチLUの係合に先立って開始する。そして、上記電動機トルクダウン制御における電動機トルク低下量DTmgを、ポンプ回転速度Npを引き下げるために必要なトルク低下量よりも小さくする。従って、上記電動機トルク低下量DTmgが、ポンプ回転速度Npを引き下げるほどには大きくならないので、電動機トルクTmgが、電動機MGの発電電力に対する発電制限または電動機MGの定格値などにより制約を受け難くなる。そのため、従って、上記電動機トルクダウン制御における電動機トルク低下量DTmgを安定して設定し易くなる。ここで、ロックアップクラッチLUの係合前では通常、トルクコンバータ16のポンプ回転速度Npの方がタービン回転速度Ntよりも高いので、ロックアップクラッチLUをショック無く係合させるためには、ポンプ回転速度Npを低下させタービン翼車16tとポンプ翼車16pとを互いに同期させてからロックアップクラッチLUを係合させる必要がある。しかし、前述したように、ロックアップクラッチLUの係合によって自動変速機18のエンジン側で生じたショックは駆動輪24に殆ど伝達されないので、ロックアップクラッチLUの係合時にタービン翼車16tとポンプ翼車16pとを互いに同期させることはあまり重要ではない。すなわち、その両翼車16t,16pの同期のために、ポンプ回転速度Npを電動機MGで積極的に引き下げる必要性が低い。従って、図7および図8に示す制御作動では、前記電動機トルクダウン制御における電動機トルク低下量DTmgが、ポンプ回転速度Npを引き下げるほどには大きくないからといって、ロックアップクラッチLUの係合に起因したショックが運転者にとって大きくなることはない。
また、本実施例によれば、電子制御装置58は、自動変速機18の変速における解放側係合要素Crの解放後から係合側係合要素Cenの係合前までに行うエンジン断続用クラッチK0の解放とロックアップクラッチLUの係合とを、その自動変速機18の非変速時と比較して早期に完了させる。従って、自動変速機18の変速と同期して実行されるエンジン12の停止制御を、エンジン12の停止ショックを低減しつつ早期に完了することが可能である。また、自動変速機18の変速が早期に完了すれば燃費向上にも寄与できる。
また、本実施例によれば、電子制御装置58は、前記係合側係合要素Cenの係合完了時には、電動機トルクTmgを、駆動輪24を駆動する方向のトルクすなわち正方向トルクにする。従って、上記係合側係合要素Cenの係合完了時に、差動歯車装置21などのガタつきによるショックを軽減できる。また、上記係合側係合要素Cenの係合完了時に電動機トルクTmgが例えば負方向トルクであったとすれば、車両制動力が上記係合側係合要素Cenの係合完了と同時に発生するところ、それが回避される。従って、駆動トルクを滑らかに変化させ、運転者に対する違和感を抑えることが可能である。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
例えば、前述の実施例において、図9のタイムチャートに示された前記走行モード切替制御は、自動変速機18のアップシフトに同期して実行されるが、その自動変速機18のダウンシフトに同期して実行されても差し支えない。
また、前述の実施例において、アクセルペダル71の戻し操作に関連して、前記EHV走行モードからEV走行モードへの前記走行モード切替制御と自動変速機18の変速制御とが互いに同期して実施されているが、上記アクセルペダル71の戻し操作ではなく他の車両状態変化に関連して、上記走行モード切替制御と自動変速機18の変速制御とが互いに同期して実施されても差し支えない。
また、前述の実施例において、車速V及びアクセル開度Accによって示される車両状態が前記変速線及び前記切替線を同時に横切った場合に、前記走行モード切替制御と自動変速機18の変速制御とが互いに同期して実施されているが、その車両状態が上記変速線及び上記切替線を同時に横切った場合以外で、それら制御が互いに同期して実施されても差し支えない。例えば、自動変速機18の変速判定がなされた後で解放側係合要素Crの解放作動が実際に開始される前に前記走行モード切替判定がなされた場合に、前記走行モード切替制御と前記変速制御とが互いに同期して実施されても差し支えない。
また、前述の実施例において、図8のフローチャート内のSA7では、前記走行モード切替制御にてエンジン断続用クラッチK0が完全に解放され且つロックアップクラッチLUが完全に係合された場合に、そのSA7の判断は肯定されるが、そのロックアップクラッチLUが完全に係合されたか否かはSA7で判断されなくても差し支えない。すなわち、エンジン断続用クラッチK0が完全に解放された場合には、SA7の判断は肯定されても差し支えない。なぜなら、エンジン断続用クラッチK0が完全に解放されていれば、エンジン12がポンプ翼車16pから切り離されているため、そのポンプ翼車16pにかかるイナーシャが小さく、ロックアップクラッチLUの係合に起因したショックがあまり大きくはならないようにできるからである。
また、前述の実施例において、電子制御装置58は、図7および図8のフローチャートに示すようにして、前記EHV走行モードから前記EV走行モードへの移行を自動変速機18の変速制御に同期して行うが、それと同様にして、前記エンジン走行モードから前記EV走行モードへの移行を自動変速機18の変速制御に同期して行うものであっても差し支えない。
また、前述の実施例において、図7のフローチャート内のSA3では、前記電動機トルクダウン制御が開始されているが、その電動機トルクダウン制御の実行は必須ではない。
また、前述の実施例において、前記係合側係合要素Cenの完全係合時には電動機トルクTmgが正方向トルクにされるが、その完全係合時に常に正方向トルクにされなければならないというわけではない。
また、前述の実施例において、トルクコンバータ16が流体伝動装置として用いられているが、そのトルクコンバータ16のトルク増幅作用は必ずしも必要ではなく、例えば、そのトルクコンバータ16がトルク増幅作用のないフルードカップリングに置き換わっていても差し支えない。
また、前述の実施例において、トルクコンバータ16はロックアップクラッチLUを備えているが、そのロックアップクラッチLUを備えていなくても差し支えない。
また、前述の実施例において、図1の自動変速機18は、複数の油圧式摩擦係合装置と複数の遊星歯車装置とを備え、その油圧式摩擦係合装置の係合乃至解放に応じて複数の変速段を選択的に成立させる自動変速機構であるが、所謂デュアルクラッチトランスミッション(Dual Clutch Transmission:DCT)であっても差し支えない。上記DCTとは、シンクロメッシュ機構を備えた同期噛合式変速機(マニュアルトランスミッション)を2機備え、その2機の同期噛合式変速機をそれぞれ自動的に変速すると共にそれら同期噛合式変速機の一方をクラッチの掴み替えにより動力伝達可能にする自動変速機構である。
また、前述の実施例において説明した図3等に示す変速マップ74及び切替マップ76は、あくまで本発明の特徴をわかりやすく説明するために作成されたものであり、実用上は車両の特性等に応じてより詳細に定められた関係が用いられることは言うまでもない。