JP5679402B2 - 皮膚角化促進剤 - Google Patents
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Description
例えば、皮膚の角化とともにコーニファイドエンベローブの成分として生成されるタンパク質であるソラヤシンの発現量を指標として、このソラヤシン発現が増強される物質を研究した結果、酪酸またはその誘導体、およびカルシウムイオン供給化合物を含有する皮膚角化促進剤が知られている(特許文献1)。
また、遺伝子工学的に産生される真珠タンパク質(ナクレイン)の製造方法が開示されている(特許文献4)。
また、粒度50〜200μmに粉砕した真珠層をグアニジン塩酸塩で抽出したタンパク質成分を医薬目的の使用、およびそれらを含む組成物に利用する方法が知られている(特許文献5)。
すなわち、本発明の皮膚角化促進剤は、貝殻もしくは真珠断片の粉末をキレート剤で脱灰して得られる物質からの抽出物であり、S100A7遺伝子の発現に寄与する分子量が55kDaであるナクレインタンパク質を主成分として含むことを特徴とする。特に貝殻がアコヤ貝の貝殻であることを特徴とする。
上記(I)の方法について説明する。
本発明で好ましく使用できる貝殻としては、特に限定はなくアコヤ貝(Pictada martensii)、イガイ(Mytilus coruscum)、イケチョウガイ(Hyriopsis schlegelii)、カラスガイ(Cristaria plicata)等ウグイスガイ科、イガイ科、イシガイ科の貝類等が例示される。特に好適なものは、真珠養殖などで多量に得られるアコヤ貝(真珠貝)である。
真珠断片とは、真珠を割り核を取り除いた破砕片である。真珠断片の製造方法は粉砕するのではなく真珠をそのまままたは複数個の断片に割ることにより得られる。真珠としては、アコヤ貝、イケチョウ貝などの真珠貝より得られる球体真珠、マベ貝より得られるマベ半円真珠殻などが挙げられる。
これより、酸に溶解する物質を抽出するか、イオン交換樹脂や、分子量分画、吸着樹脂等の1種または2種以上の方法を適用して、ナクレインタンパク質あるいはナクレインタンパク質を含む分画を製造できる。
脱灰処理に使用できるキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸塩、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸四ナトリウム塩、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等のキレート剤であれば用いることができる。
これらの中でエチレンジアミン四酢酸塩が、他のキレート剤より効率的に脱灰処理を行なえるので好ましい。エチレンジアミン四酢酸塩としては、二ナトリウム塩、三ナトリウム塩、四ナトリウム塩等いずれも使用できる。
(1)必要により、アコヤ貝貝殻を破砕して貝殻断片とする。
アコヤ貝貝殻は破砕する前に回転バレル研磨機、振動バレル研磨機等を用いて稜柱層を取り除くことが好ましい。稜柱層を取り除くことにより脱灰時間を短くすることができる。
また、破砕する場合、その方法は、回転バレル研磨機、振動バレル研磨機等で稜柱層を取り除く工程でその研磨強度を調整することによって行なうか、別途、ハンマーミル等で行なう。
アコヤ貝貝殻に含まれるタンパク質(約2重量%)を考慮して、また、貝殻断片が炭酸カルシウムとして、カルシウムイオン量を算出する。エチレンジアミン四酢酸塩は少なくとも1個のカルシウムイオンとキレートを形成するので、エチレンジアミン四酢酸塩はカルシウムイオンに対して等モル以上使用する。好ましくは等モル〜5倍等モル量である。
また、エチレンジアミン四酢酸塩は水に溶解し難いため、水に分散されているアコヤ貝貝殻の量が多い場合、あるいはエチレンジアミン四酢酸塩の濃度を高める場合には、アコヤ貝貝殻を分散させている水のpHを、水酸化ナトリウムなどのアルカリを添加することで、pH7.0〜9.0に調整することが好ましい。
分散液の条件として、分散されるアコヤ貝貝殻の濃度は、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。0.1重量%未満であるとナクレインタンパク質の生産性が劣り、10重量%をこえると脱灰処理に長い時間がかかる。
ナクレインタンパク質の配合割合としては、皮膚角化促進剤全体に対して、0.00001〜1.0重量%で、好ましくは0.001〜0.5重量%である。
ナクレインタンパク質を以下の方法で製造した。
アコヤ貝貝殻の稜柱層を、バレル研磨機を用いて取り除いた。稜柱層を取り除き真珠層が主成分となった貝殻粉末200gに、水酸化ナトリウムでpH8.0に調整した0.5MのEDTA水溶液を1000ml加えて、72時間、温度4℃で撹拌した。
撹拌により得られた溶液を8270Gの遠心力で30分間遠心分離した。上清を、30mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)で、セロハンチューブ(三光純薬社製、商品名セルロースチューブC−150)を用いて透析した。透析外液は1回4000ml使用し、3回交換した。透析後、さらに8270Gの遠心力で30分間遠心分離した。上清を、目の粗さ0.45μmのフィルターでろ過した。以上の遠心分離および透析操作を4℃で行なった。
カラム:TSKgel DEAE−5PW(東ソー社製 55.0mmΦ×20.0cmL)
移動層:30mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)0.5〜1.0M塩化ナトリウムグラジエント、なお、塩化ナトリウムは0.5Mで60分間流した後、150分かけて1.0Mにした。
流速 :6.0ml/min.
検出器:紫外線吸光度検出器280nm
分画 :5分間隔
なお、分画は60分後のグラジエント開始より検出器で確認しながら、吸光し始めた時点より開始した。
フラクションNo.4を分取して、蒸留水を外液として透析を行なった。透析外液は1回2000ml使用し3回交換した。透析内液を凍結乾燥した。分取されたフラクションNo.4の成分は、分子量55kDaのタンパク質であり、このタンパク質はナクレインであることが、MALDI−TOF MSに供し、得られたアミノ酸配列をMascotで相同性検索した結果より明らかとなった。
S100A7は、乾癬の皮膚に過剰発現している分泌タンパク質として最初に同定されたタンパク質であり多くの炎症性疾患においても、過剰発現が確認されている。またS100A7は、体の表面でバクテリアを殺す働きがある。従って抗菌タンパク質であることが明らかとなっている。
2継代目のヒト包皮由来表皮細胞(クラボウ、StrainNo.445529)を50−70%コンフルエントとなるようHuMedia−KG2培地(フェノールレッド不含)で培養後、カルシウム濃度が0.5mMおよび1.8mMの2種類のHuMedia−KG2培地に、10μMおよび100μΜ(終濃度)となるよう添加し、さらに2日間37℃、5%CO2インキュベータ中で8日間培養した。
細胞からの Total RNAの抽出は、トリプシン/EDTAで剥離後、SV Total RNA Isolation System(プロメガ社)を用い、プロメガ社の添付マニュアル(日本語プロトコールNoTM048J2001年6月作成)に従い調製した。RNA濃度は、NanoDrop1000(Thermo SCIENTIFIC)を用い算出した。
2.5μgのTotal RNAを使い、MMLV Reverse Transcriptase RNaseH−(東洋紡社)を用い、東洋紡社推奨プロトコール(TOYOBO BIOCHEMICALS FOR LIFE SCIENCE 2008/2009のページ1−42)に従いRT反応を行なった。
リアルタイムPCRはAppliedBiosystems 7500 リアルタイムPCR Systemを用い、以下のように実施した。SYBR Green法を用い(THUNDERBIRD SYBR qPCR Mix,東洋紡社)、7500 リアルタイムPCR Systemの操作マニュアル(AppliedBiosystems)を用いて、Comparative CT(△△CT)法(n=3)により遺伝子発現比較を実施した。内部標準としてGAPDHを使用した。
S100A7:フォワードプライマーがTGCTGACGATGATGAAGGAGの塩基配列と、リバースプライマーがATGTCTCCCAGCAAGGACAGの塩基配列とのセット
GAPDH:フォワードプライマーがGAGTCAACGGATTTGGTCGTの塩基配列と、リバースプライマーがTTGATTTTGGAGGGATCTCGの塩基配列とのセット
カルシウムは皮膚の分化に影響を及ぼす最もよく知られた成分で、表皮基底層から有棘層、顆粒層と分化が進むに従い、その濃度も高くなることが知られている。ナクレインタンパク質の皮膚の分化に対する作用を確認する目的で、中濃度(0.5mM)ならびに高濃度(1.8mM)のカルシウムの存在下で、10μΜおよび100μΜのナクレインタンパク質を作用し、表皮の分化と関連の深い、S100A7の遺伝子発現量の変化をリアルタイムPCRを用い確認した。その結果、図2に示すように、カルシウム濃度による差は多少認められるが、S100A7が非常に強く誘導されることが判明した。
Claims (2)
- 貝殻もしくは真珠断片の粉末をキレート剤で脱灰して得られる物質からの抽出物であり、S100A7遺伝子の発現に寄与する分子量が55kDaであるナクレインタンパク質を主成分として含むことを特徴とする皮膚角化促進剤。
- 前記貝殻がアコヤ貝であることを特徴とする請求項1記載の皮膚角化促進剤。
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