JP2013166710A - 皮膚角化促進剤およびこれを配合した皮膚外用剤 - Google Patents
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Abstract
皮膚のバリア機能の改善、皮膚の老化防止に有用な皮膚角化促進剤を提供する。
【解決手段】
アコヤガイの貝殻もしくは真珠断片またはこれらの粉末が産出するN16とその関連タンパク質は、トランスグルタミナーゼ1、ソラヤシン(S100A7)、ロリクリン遺伝子の発現が増加し、特にソラヤシン(S100A7)遺伝子の発現量が非常に増加することがわかった。皮膚角化促進剤として、非常に有効なことがわかった。ソラヤシン(S100A7)は、抗炎症、静菌等皮膚の恒常性を維持する機能があり、これらを配合した皮膚外用剤は非常に有効である。
【選択図】図2
Description
以下に詳細に説明する。
なお、N16にはいくつかの関連タンパク質が知られている。
一方、皮膚は角質細胞が基底細胞から有棘細胞、顆粒細胞、さらには角層細胞へと約4週間かけて分化し、この分化につれてカルシウム濃度が高くなる。N16とその関連タンパク質が皮膚の分化にどのように作用するのか試験した結果、皮膚の分化に関連の深いトランスグルタミナーゼ1、ソラヤシン(S100A7)、ロリクリン遺伝子の発現量が増加することが確認された。特にソラヤシン(S100A7)遺伝子の発現量が顕著に増加することがわかった。本発明は、このような知見に基づくものである。すなわち、本発明の皮膚角化促進剤は、貝殻もしくは真珠断片またはこれらの粉末由来のN16とその関連タンパク質のいずれか1種以上を含むことを特徴とする。特に貝殻がアコヤガイの貝殻であることを特徴とする。
また、上記N16とその関連タンパク質が貝殻もしくは真珠断片またはこれらの粉末をキレート剤で脱灰して得られる物質からの抽出物であることを特徴とする。さらに上記N16とその関連タンパク質は、貝殻もしくは真珠断片またはこれらの粉末をキレート剤で脱灰して得られる物質からの抽出物と、大腸菌、酵母菌、または蚕のいずれか1つから選択される宿主細胞とを利用して遺伝子工学的に製造されるタンパク質であることを特徴とする。
上記(I)の方法について説明する。
本発明で好ましく使用できる貝殻としては、特に限定はなくアコヤガイ(Pictada fucata)、イガイ(Mytilus coruscum)、イケチョウガイ(Hyriopsis schlegelii)、カラスガイ(Cristaria plicata)等ウグイスガイ科、イガイ科、イシガイ科の貝類等が例示される。特に好適なものは、真珠養殖などで多量に得られるアコヤガイ(真珠貝)である。
真珠断片とは、真珠を割り核を取り除いた破砕片である。真珠断片の製造方法は粉砕するのではなく真珠をそのまままたは複数個の断片に割ることにより得られる。真珠としては、アコヤガイ、イケチョウ貝などの真珠貝より得られる球体真珠、マベ貝より得られるマベ半円真珠殻などが挙げられる。
これより、酸に溶解する物質を抽出するか、イオン交換樹脂や、分子量分画、吸着樹脂等の1種または2種以上の方法を適用して、N16やその関連タンパク質あるいはN16とその関連タンパク質を含む分画を製造できる。
脱灰処理に使用できるキレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸塩、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸四ナトリウム塩、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸等のキレート剤であれば用いることができる。これらの中でエチレンジアミン四酢酸塩が、他のキレート剤より効率的に脱灰処理を行なえるので好ましい。エチレンジアミン四酢酸塩としては、二ナトリウム塩、三ナトリウム塩、四ナトリウム塩等いずれも使用できる。
アコヤガイの貝殻を原料とする脱灰処理方法について以下説明する。
(1)必要により、アコヤガイ貝殻を破砕して貝殻断片とする。
アコヤガイ貝殻は破砕する前に回転バレル研磨機、振動バレル研磨機等を用いて稜柱層を取り除くことが好ましい。稜柱層を取り除くことにより脱灰時間を短くすることができる。
また、破砕する場合、その方法は、回転バレル研磨機、振動バレル研磨機等で稜柱層を取り除く工程でその研磨強度を調整することによって行なうか、別途、ハンマーミル等で行なう。
また、エチレンジアミン四酢酸塩は水に溶解し難いため、水に分散されているアコヤガイ貝殻の量が多い場合、あるいはエチレンジアミン四酢酸塩の濃度を高める場合には、アコヤガイ貝殻を分散させている水のpHを、水酸化ナトリウムなどのアルカリを添加することで、pH7.0〜9.0に調整することが好ましい。
分散液の条件として、分散されるアコヤガイ貝殻の濃度は、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。0.1重量%未満であると必要なタンパク質の生産性が劣り、10重量%をこえると脱灰処理に長い時間がかかる。
N16とその関連タンパク質のいずれか1種以上の配合割合としては、皮膚角化促進剤全体に対して、0.00001〜1.0重量%で、好ましくは0.001〜0.5重量%である。
アコヤガイ貝殻粉末(500.0g)を,2Lの0.5MEDTA溶液(pH8.0)に浸し,10日間撹拌した。操作は全て低温下で行った。脱灰液の交換頻度を1日1回とした.10日後,遠心分離(8,000×g,30分間,4℃)に供し沈殿を回収した。
得られた残渣に6.5M酢酸100mlを加えてホモジナイズし,遠心分離(21,000×g,30分間,4℃)により上清を回収した。残渣は6.5M酢酸を加え再度ホモジナイズし,遠心分離(21,000×g,30分間,4℃)に供した.この操作を5回繰り返した。上清は,30mMTris−HCl(pH8.0)を外液とし透析を行った。得られた溶液を遠心分離(21,000×g,30分間,4℃)に供し上清を回収した。
これを蒸留水を外液として透析を行なった。透析外液は1回2000ml使用し3回交換した。透析内液を凍結乾燥した。この成分の大部分は、分子量16kDaのタンパク質であり、MALDI−TOF MSに供し、得られたアミノ酸配列をMascotで相同性検索した結果、N16.2タンパク質と判断された。
(イオン交換クロマトグラフィーで分画した成分のSDS−PAGEの結果を図1に示す)
アコヤガイ貝殻粉末(100.0g)を,500mLの0.5MEDTA溶液(pH8.0)に浸し,5日間撹拌した.操作は全て低温下で行った.脱灰液の交換頻度を1日1回とし,5日後,遠心分離(8,000×g,30分間,4℃)に供し上清を回収した。得られた上清をポリエチレングリコールによる濃縮と限外ろ過による濃縮を行った。蒸留水を外液として透析を行った後,30mMTris−HCl(pH8.0)を外液として透析を行った。
得られたタンパク質溶液を0.45μmのフィルター(Millipore)でろ過し,30mMTris−HCl(pH8.0)溶液で平衡化したイオン交換クロマトグラフィーTSKgelDEAE−5PW(直径7.5mm,長さ7.5cm,東ソー)に試料を添加後,30mMTris−HCl溶液で非吸着画分を洗浄後、NaClを含んだ30mMTris−HCl溶液(pH8.0)で0−1.0MNaClリニアグラジエント法で溶出した。流速は1.0ml/minとし1.0mlずつ分画した。それぞれの画分の280nmにおける吸光度を測定し溶出曲線を作成した。280nmの紫外線吸光がある分画を集めた。
これを蒸留水を外液として透析を行なった。透析外液は1回2000ml使用し3回交換した。透析内液を凍結乾燥した。この成分の一部は、分子量16kDaのタンパク質であり、MALDI−TOF MSに供し、得られたアミノ酸配列をMascotで相同性検索した結果、N16.5タンパク質と判断された。
なお、ソラヤシン(S100A7)は、乾癬の皮膚に過剰発現している分泌タンパク質として最初に同定されたタンパク質であり多くの炎症性疾患においても、過剰発現が確認されている。またソラヤシン(S100A7)は、体の表面でバクテリアを殺す働きがある。従って抗菌タンパク質であることが明らかとなっている。
2継代目のヒト包皮由来表皮細胞 (クラボウ,StrainNo.465535) を50−70%コンフルエントとなるようフェノールレッドを含まないHuMedia−KG2培地で培養後,カルシウム濃度が1.8mMに変更し,終濃度が規定の濃度になるよう実施例を添加し,さらに2日間37℃,5%CO2インキュベータ中で培養した。
細胞からの Total RNAの抽出は、トリプシン/EDTAで剥離後、SV Total RNA Isolation System(プロメガ社)を用い、プロメガ社の添付マニュアル(日本語プロトコールNoTM048J2001年6月作成)に従い調製した。RNA濃度は、NanoDrop1000(Thermo SCIENTIFIC)を用い算出した。
2.5μgのTotal RNAを使い、MMLV Reverse Transcriptase RNaseH−(東洋紡社)を用い、東洋紡社推奨プロトコール(TOYOBO BIOCHEMICALS FOR LIFE SCIENCE 2008/2009のページ1−42)に従いRT反応を行なった。
リアルタイムPCRはAppliedBiosystems 7500 リアルタイムPCR Systemを用い、以下のように実施した。SYBR Green法を用い(THUNDERBIRD SYBR qPCR Mix,東洋紡社)、7500 リアルタイムPCR Systemの操作マニュアル(AppliedBiosystems)を用いて、Comparative CT法(n=3)により遺伝子発現比較を実施した。内部標準としてGAPDHを使用した。
トランスグルタミナーゼ1:フォワードプライマーがGAGCGGAAGGCAGTAGAGACAの塩基配列と、リバースプライマーがCCCCGGTTGGCATACACAの塩基配列とのセット
ソラヤシン(S100A7):フォワードプライマーがTGCTGACGATGATGAAGGAGの塩基配列と、リバースプライマーがATGTCTCCCAGCAAGGACAGの塩基配列とのセット
ロリクリン:フォワードプライマーがGGAGTTGGAGGTGTTTTCCAの塩基配列と、リバースプライマーがACTGGGGTTGGGAGGTAGTT塩基配列とのセット
GAPDH:フォワードプライマーがGAGTCAACGGATTTGGTCGTの塩基配列と、リバースプライマーがTTGATTTTGGAGGGATCTCGの塩基配列とのセット
ソラヤシン(S100A7)は、皮膚の角化とともにコーニファイドエンベローブの成分として生成されることが知られており、皮膚角化の指標として有用である。また、ロリクリンはコーニファイドエンベローブの主要成分でありその発現はケラトヒアリン顆粒より始まり次第にコーニファイドエンベローブに組み込まれていく、周辺帯の構成タンパク質の重要な1つであり、天然保湿因子の形成をはじめ種々の角層機能に関わり、シワの形成、肌理の不正常、荒れ肌等の発生を抑制する。トランスグルタミナーゼも,細胞膜にロリクリン,イルボルクリン,シスタチンα,SPR などの蛋白分子を結合させる酵素であり、正常なコーニファイドエンベローブを構築するために必要な酵素である。
本発明の皮膚角化促進剤は、このトランスグルタミナーゼ1、ソラヤシン(S100A7)、ロリクリン遺伝子の発現を顕著に増強され、本発明の皮膚角化促進剤を用いれば、皮膚のバリア機能が改善される。また、ソラヤシン(S100A7)は抗菌作用を有することが知られているため、本発明皮膚角化促進剤を用いれば、皮膚の抗菌作用が増強され、バリア機能が増大する。
特に他の遺伝子に比較してソラヤシン(S100A7)の遺伝子の発現は顕著に増強された。
Claims (3)
- 貝殻もしくは真珠断片またはこれらの粉末由来のN16とその関連タンパク質のいずれか1種以上を含むことを特徴とする皮膚角化促進剤。
- 前記貝殻がアコヤガイであることを特徴とする請求項1記載の皮膚角化促進剤。
- 請求項1乃至請求項2の皮膚角化促進剤を配合した皮膚外用剤
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