JP5677097B2 - セロビオース2−エピメラーゼとその製造方法並びに用途 - Google Patents

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Description

本発明は、新規セロビオース2−エピメラーゼとその製造方法並びに用途に関し、詳細には、2−エピマー化反応のみならずアルドース−ケトース変換反応をも触媒するセロビオース2−エピメラーゼとその製造方法、当該酵素をコードするDNAとこれを含んでなる組換えDNAと形質転換体、さらには当該酵素を用いた異性化糖の製造方法に関するものである。
異性化酵素(イソメラーゼ)は異性体間の変換を触媒する酵素の総称であり、エンザイム・ノメンクレイチャー(Enzyme Nomenclature、アメリカ合衆国、Academic Press. Inc.1992年)によると、(1)光学異性化を触媒するラセマーゼ、エピメラーゼを含むEC5.1群;(2)シス−トランス幾何異性体間の変換を触媒するEC5.2群;(3)アルドース−ケトース変換、ケト−エノール互変異性、分子内で二重結合の位置の移動を触媒するEC5.3群;(4)分子内基転位を触媒し構造異性体を生成するEC5.4群;(5)分子内リアーゼ反応を触媒するEC5.5群;及び(6)他の異性化反応を触媒するEC5.99群の6群に分類されている。これら異性化酵素の内、中性糖の異性化を触媒する異性化酵素としては、例えば、D−キシロースとD−キシルロース、D−グルコースとD−フラクトースの相互変換(アルドース−ケトース変換)を触媒するキシロースイソメラーゼ(EC 5.3.1.5)、アルドースのα、βアノマーの相互変換を触媒するアルドース1−エピメラーゼ(EC 5.1.3.3)、種々のケトペントース及びケトヘキソースの3位をエピマー化し、それぞれに対応するエピマーに変換するケトース3−エピメラーゼ(特開平6−125776号公報、国際公開番号 WO 2007/058086号パンフレットなどを参照)などがよく知られており、それぞれ工業的な異性化糖の製造、糖の定量、希少糖質の調製などに幅広く利用されている。
一方、タイラー(Tyler)ら、アーカイブス・オブ・バイオケミストリー・アンド・バイオフィジックス(Archives of biochemistry and biophysics)、第119巻、363乃至367頁(1967年)には、嫌気性菌ルミノコッカス・アルブス(Ruminococcus albus)が産生する、セロビオースの還元末端グルコースの2位をエピマー化してエピセロビオース(4−O−β−D−グルコシルD−マンノース)に変換するセロビオース2−エピメラーゼが報告されており、当該酵素には前記エンザイム・ノメンクレイチャーにおいて酵素番号EC 5.1.3.11が付与されている。イトウ(Ito)ら、バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochemical and biophysical research communications)、第360巻、640乃至645頁(2007年)及びイトウ(Ito)ら、アプライド・ミクロバイオロジー・アンド・バイオテクノロジー(Applied microbiology and biotechnology)、第79巻、433乃至441頁(2008年)には当該セロビオース2−エピメラーゼのアミノ酸配列、そのアミノ酸配列をコードするDNAの塩基配列、及び、当該セロビオース2−エピメラーゼがセロビオースのみならずセロオリゴ糖やラクトースにも作用し、エピセロオリゴ糖やエピラクトース(4−O−β−D−ガラクトシルD−マンノース)をも生成することなどが開示されている。さらに、タグチ(Taguchi)ら、フェムス・ミクロバイオロジー・レターズ(FEMS microbiology letters)、第287巻、34乃至40頁(2008年)には、同じく嫌気性菌であるユーバクテリウム・セルロソルベンス(Eubacterium cellulosolvens)由来のセロビオース2−エピメラーゼが開示されている。
また、ニシムカイ(Nishimukai)ら、ジャーナル・オブ・アグリカルチュラル・アンド・フード・ケミストリー(Journal of agricultural and food chemistry)、第56巻、10340乃至10345頁(2008年)には、セロビオース2−エピメラーゼを用いてラクトースを変換して調製されるエピラクトースが、ラットに摂取させた場合、小腸でのカルシウム吸収を増強し、腸内の短鎖脂肪酸量を増加させ、血漿中のコレステロールを低減するなどの生理機能を発揮するという知見が開示されており、エピラクトースのプレバイオティクスの素材としての開発が期待されている。
しかしながら、上記した公知のセロビオース2−エピメラーゼには、耐熱性が低く、エピラクトース、エピセロビオースなどの糖質を工業レベルで製造するには利用し難いという問題点がある。酵素の耐熱性は、酵素反応を実用化する際、極めて重要な因子であり、耐熱性に優れる酵素は、少量の酵素量で長時間反応できるため、酵素反応における酵素量が低減でき経済的に有利である。また、工業的な利用を考慮すると、雑菌汚染を防止するため55℃以上、望ましくは、60℃以上で反応を行うことが好ましい。このような観点から、より耐熱性に優れるセロビオース2−エピメラーゼが望まれている。
本発明は、耐熱性に優れるセロビオース2−エピメラーゼとその製造方法並びに用途を提供することを課題とする。
このような状況下、上記課題を解決するために、本発明者らは、耐熱性に優れたセロビオース2−エピメラーゼを求めて多数の好熱性微生物を対象としてスクリーニングを行った。その結果、カルジセルロシルプトル(Caldicellulosiruptor)属に属する微生物カルジセルロシルプトル・サッカロリティカス(Caldicellulosiruptor saccharolyticus) ATCC43494の菌体破砕抽出液にラクトースをエピマー化してエピラクトースを生成し、また、セロビオースから異性化糖と推定される糖質を生成する酵素活性を見出した。当該エピメラーゼを、電気泳動的に単一バンドを示す程度まで精製し性質を調べたところ、70℃まで安定な耐熱性を有することが判明した。しかしながら、得られた精製酵素標品は微量であり、当該エピメラーゼの詳細な基質特異性を調べるには不十分であった。
そこで、当該エピメラーゼの部分アミノ酸配列の情報に基づき、カルジセルロシルプトル・サッカロリティカスのゲノムDNAより、当該エピメラーゼをコードするDNAをクローニングし、これを含む組換えDNAで大腸菌を形質転換し、培養して組換え酵素を調製した。この組換え酵素を用いて基質特異性を調べたところ、意外にもこの酵素は、セロビオース及びラクトースをエピマー化してそれぞれをエピセロビオース及びエピラクトースに変換するのみならず、単糖ではD−グルコース及びD−ガラクトースに作用し、二糖ではさらにマルトースに、オリゴ糖では重合度3以上のマルトオリゴ糖及びセロオリゴ糖に作用してエピマー化し、それぞれに対応するD−マンノース、D−タロース、エピマルトース(4−O−α−D−グルコシルD−マンノース)、重合度3以上のエピマルトオリゴ糖及びエピセロオリゴ糖に変換するという幅広い基質特異性を有することを見出した。また、本酵素は、酵素作用量を増すと2−エピマー化反応のみならずアルドース−ケトース変換反応をも触媒し、D−グルコース又はD−マンノース、D−ガラクトース又はD−タロース、マルトース又はエピマルトース、セロビオース又はエピセロビオース、及び、ラクトース又はエピラクトースに作用して、それぞれ対応するD−フラクトース、D−タガトース、マルツロース(4−O−α−D−グルコシルD−フラクトース)、セロビウロース(4−O−β−D−グルコシルD−フラクトース)及びラクツロース(4−O−β−D−ガラクトシルD−フラクトース)に変換する作用を有することも見出した。すなわち、本酵素は、2−エピマー化反応とアルドース−ケトース変換反応のいずれをも触媒する、新規なセロビオース2−エピメラーゼであることが判明した。
これらの知見に基づき、本発明者らは、新規セロビオース2−エピメラーゼ、当該酵素をコードするDNAとこれを含んでなる組換えDNA及び形質転換体、当該酵素の製造方法を確立するとともに、該酵素を利用した異性化糖の製造方法を確立して本発明を完成した。
すなわち、本発明は、耐熱性に優れるセロビオース2−エピメラーゼ、当該酵素をコードするDNAとこれを含んでなる組換えDNA、形質転換体、及び、当該酵素の製造方法、さらには当該酵素を用いた異性化糖の製造方法を提供することにより上記課題を解決するものである。
本発明のセロビオース2−エピメラーゼは、耐熱性が高く、組換え微生物における大量発現が可能で、組換え型酵素の精製も容易である。本発明のセロビオース2−エピメラーゼによれば、D−グルコースからD−マンノースを、マルトースからエピマルトースを、セロビオースからエピセロビオース又はセロビウロースを、さらに、ラクトースからエピラクトース又はラクツロースを製造でき、安価な原料から、希少であって、より付加価値の高い糖質を工業レベルで製造することができる。
カルジセルロシルプトル・サッカロリティカス ATCC43494の菌体破砕抽出液上清をセロビオース、ラクトース又はエピラクトースに作用させた場合の反応液のTLCクロマトグラムである。 本発明のセロビオース2−エピメラーゼの酵素活性に及ぼす温度の影響を示す図である。 本発明のセロビオース2−エピメラーゼの酵素活性に及ぼすpHの影響を示す図である。 本発明のセロビオース2−エピメラーゼの安定性に及ぼす温度の影響を示す図である。 本発明のセロビオース2−エピメラーゼの安定性に及ぼすpHの影響を示す図である。 本発明のセロビオース2−エピメラーゼをラクトースに作用させて得た反応液のHPLCクロマトグラムである。 本発明のセロビオース2−エピメラーゼをラクトースに作用させて単離した異性化糖AのH−NMRスペクトルである。 市販のエピラクトース標準品のH−NMRスペクトルである。 本発明のセロビオース2−エピメラーゼをラクトースに作用させて単離した異性化糖BのH−NMRスペクトルである。 市販のラクツロース標準品のH−NMRスペクトルである。 本発明のセロビオース2−エピメラーゼをセロビオースに作用させて得た反応液のHPLCクロマトグラムである。 本発明のセロビオース2−エピメラーゼをセロビオースに作用させて単離した異性化糖CのH−NMRスペクトルである。 本発明のセロビオース2−エピメラーゼをセロビオースに作用させて単離した異性化糖Cの13C−NMRスペクトルである。 本発明のセロビオース2−エピメラーゼをセロビオースに作用させて単離した異性化糖DのH−NMRスペクトルである。 本発明のセロビオース2−エピメラーゼをセロビオースに作用させて単離した異性化糖Dの13C−NMRスペクトルである。 本発明のセロビオース2−エピメラーゼをマルトースに作用させて得た反応液のHPLCクロマトグラムである。 本発明のセロビオース2−エピメラーゼをマルトースに作用させて単離した異性化糖EのH−NMRスペクトルである。 本発明のセロビオース2−エピメラーゼをマルトースに作用させて単離した異性化糖Eの13C−NMRスペクトルである 本発明のセロビオース2−エピメラーゼをマルトースに作用させて単離した異性化糖FのH−NMRスペクトルである。 市販のマルツロース標準品のH−NMRスペクトルである。 本発明のセロビオース2−エピメラーゼをマルトトリオースに作用させて得た反応液のHPLCクロマトグラムである。 本発明のセロビオース2−エピメラーゼをマルトトリオースに作用させて単離した異性化糖GのH−NMRスペクトルである。 本発明のセロビオース2−エピメラーゼをマルトトリオースに作用させて単離した異性化糖Gの13C−NMRスペクトルである。
図1において、
a:マルトオリゴ糖混合物(グルコース重合度のマーカー)
b:セロビオース標準品
c:セロビオース反応液
d:ラクトース標準品
e:ラクトース反応液
f:エピラクトース標準品
g:エピラクトース反応液
←:ラクトース(異性化糖)
:グルコース
:マルトース
:マルトトリオース
:マルトテトラオース
図6において、
Lac:ラクトース
A+B:異性化糖A及びBの混合物
図11において、
Cel:セロビオース
C:異性化糖C
D:異性化糖D
図12、14及び17において、
↓:D−グルコースの1位プロトンのシグナル
図13、18及び23において、
*:D−マンノースのC−4位シグナル
図15において
*:D−フラクトースのC−4位シグナル
図16において、
Mal:マルトース
E:異性化糖E
F:異性化糖F
図21において、
:マルトトリオース
G:異性化糖G
図22において、
↓:D−マンノースに結合したD−グルコースの1プロトンのシグナル
x:D−グルコースに結合したD−グルコースの1プロトンのシグナル
図23において、
#:D−グルコースが結合したD−グルコースのC−4位シグナル
本発明のセロビオース2−エピメラーゼは、異性化反応、より具体的には、下記の2−エピマー化反応とアルドース−ケトース変換反応を触媒する酵素である。
(1)2−エピマー化反応
D−グルコース及びD−ガラクトースの2位をエピマー化して、それぞれD−マンノース及びD−タロースに変換し、その逆反応も触媒する;
マルトース、セロビオース及びラクトースにおける還元末端グルコースの2位をエピマー化して、それぞれエピマルトース、エピセロビオース及びエピラクトースに変換する;
重合度3以上のマルトオリゴ糖及びセロオリゴ糖における還元末端グルコースの2位をエピマー化して、それぞれエピマルトオリゴ糖及びエピセロオリゴ糖に変換する;
(2)アルドース−ケトース変換反応
D−グルコース又はD−マンノースをD−フラクトースに、D−ガラクトース又はD−タロースをD−タガトースにそれぞれ変換し、その逆反応も触媒する;
マルトース又はエピマルトースをマルツロースに、セロビオース又はエピセロビオースをセロビウロースに、ラクトース又はエピラクトースをラクツロースに変換する。
本発明のセロビオース2−エピメラーゼの具体例としては、下記の理化学的性質を有するものが挙げられる。
(1)分子量
SDS−ゲル電気泳動法において、44,000±5,000ダルトン;
(2)至適温度
pH6.0、20分間反応の条件下で80℃;
(3)至適pH
50℃、20分間反応の条件下でpH7.8;
(4)温度安定性
pH6.0、60分間保持する条件下で70℃まで安定;
(5)pH安定性
4℃、24時間保持する条件下でpH4.5乃至9.5の範囲で安定。
本明細書を通じてセロビオース2−エピメラーゼの酵素活性は、高純度品が安価に入手できるラクトースを基質として用い、ラクトースをエピマー化してエピラクトースを生成するラクトース2−エピメラーゼ活性として評価した。ラクトース2−エピメラーゼ活性は以下のようにして測定した。反応液における終濃度としてラクトースを35.1mM、酢酸緩衝液(pH6.0)を20mMとなるよう調製した基質溶液1000μlに酵素液200μlを加えて1200μlの反応液とし、50℃で20分間反応を行った後、沸騰湯浴中で10分間加熱し反応を停止させた。この反応停止液をHPLC分析に供し、本酵素の反応によって生成したエピラクトース量を測定した。なお、HPLCは、『エムシーアイゲル(MCI GEL)CK08EP』カラム(三菱化学株式会社製)を用い、カラム温度75℃、流速0.6ml/min、溶離液に水を用いる条件で行い、検出は示差屈折計『RID−10A』(株式会社島津製作所製)を用いて行なった。酵素活性1単位は、上記条件下でラクトースから1分間に1μmolのエピラクトースを生成する酵素量と定義した。
また、上記理化学的性質を有する本発明のセロビオース2−エピメラーゼの一つは、上記理化学的性質のみならず、そのN末端配列として、配列表における配列番号1で表されるアミノ酸配列を有している場合がある。
本発明のセロビオース2−エピメラーゼは、通常、特定のアミノ酸配列を有しており、その一例としては、例えば、配列表における配列番号10で示されるアミノ酸配列又はそれに相同的なアミノ酸配列が挙げられる。配列表における配列番号10で示されるアミノ酸配列に相同的なアミノ酸配列としては、種々の異性化反応を触媒するという上記酵素活性を保持する範囲で、配列表における配列番号10で示されるアミノ酸配列において1個以上10個未満のアミノ酸が欠失、置換、若しくは付加したアミノ酸配列が挙げられる。
本発明のDNAとは、上記のアミノ酸配列を有するセロビオース2−エピメラーゼをコードするDNAを意味する。本発明のDNAは、当該セロビオース2−エピメラーゼをコードするものである限り、それが天然由来のものであっても、人為的に合成されたものであってもよい。天然の給源としては、例えば、カルジセルロシルプトル・サッカロリティカス(Caldicellulosiruptor saccharolyticus) ATCC43494を含むカルジセルロシルプトル属の微生物が挙げられ、これらの菌体から本発明のDNAを含むゲノムDNAを得ることができる。すなわち、斯かる微生物を栄養培地に接種し、嫌気的条件下で約1乃至3日間培養後、培養物から菌体を採取し、リゾチームやβ−グルカナーゼなどの細胞壁溶解酵素や超音波で処理することにより当該DNAを含むゲノムDNAを菌体外に溶出させる。このとき、プロテアーゼなどの蛋白質分解酵素を併用したり、SDSなどの界面活性剤を共存させたり凍結融解してもよい。斯くして得られる処理物に、例えば、フェノール抽出、アルコール沈殿、遠心分離、リボヌクレアーゼ処理などの常法を適用すれば目的のゲノムDNAが得られる。本発明のDNAを人為的に合成するには、例えば、配列表における配列番号10で示されるアミノ酸配列に基づいて化学合成すればよい。また、当該DNAを含むゲノムDNAを鋳型として、適当なプライマーとなる化学合成オリゴヌクレオチドを用いてPCR合成することも有利に実施できる。
本発明のDNAは、特定の塩基配列を有する場合があり、その一例としては、例えば、配列表における配列番号9で示される塩基配列又はそれに相同的な塩基配列、又はそれらの塩基配列に相補的な塩基配列が挙げられる。配列表における配列番号9で示される塩基配列に相同的な塩基配列としては、配列表における配列番号9で示される塩基配列において、コードする酵素の活性を保持する範囲で、1個以上30個未満の塩基が欠失、置換、若しくは付加した塩基配列が挙げられる。また、当然のことながら、本発明のDNAには、配列表における配列番号9で示される塩基配列か、又は、配列表における配列番号9で示される塩基配列において、コードする酵素の活性を保持する範囲で、1個以上30個未満の塩基が欠失、置換、若しくは付加した塩基配列において、遺伝暗号の縮重に基づき、コードする酵素のアミノ酸配列を変えることなく塩基の1個又は2個以上を他の塩基に置換した塩基配列を有するDNAも含まれる。
本発明のDNAを、自律複製可能な適宜のベクターに挿入して組換えDNAとすることも有利に実施できる。組換えDNAは、通常、DNAと自律複製可能なベクターとからなり、DNAが入手できれば、常法の組換えDNA技術により比較的容易に調製することができる。斯かるベクターの例としては、pBR322、pUC18、pBluescript II SK(+)、pUB110、pTZ4、pC194、pCR−Script Cam SK+、pHV14、TRp7、YEp7、pBS7などのプラスミドベクターやλgt・λC、λgt・λB、ρ11、φ1、φ105などのファージベクターが挙げられる。この内、本発明のDNAを大腸菌で発現させるには、pBR322、pUC18、pBluescript II SK(+)、pCR−Script Cam SK+、λgt・λC及びλgt・λBが好適であり、一方、枯草菌で発現させるには、pUB110、pTZ4、pC194、ρ11、φ1及びφ105が好適である。pHV14、TRp7、YEp7及びpBS7は、組換えDNAを二種以上の宿主内で複製させる場合に有用である。DNAを斯かるベクターに挿入するには、斯界において通常一般の方法が採用される。具体的には、まず、DNAを含むゲノムDNAと自律複製可能なベクターとを制限酵素により切断し、次に、生成したDNA断片とベクター断片とを連結する。遺伝子DNA及びベクターの切断にヌクレオチドに特異的に作用する制限酵素、とりわけII型の制限酵素、詳細には、Sau 3AI、Eco RI、Hind III、Bam HI、Sal I、Xba I、Sac I、Pst I、Nde I、Nco Iなどを使用すれば、DNA断片とベクター断片とを連結するのが容易である。必要に応じて、両者をアニーリングした後、生体内又は生体外でDNAリガーゼを作用させればよい。斯くして得られる組換えDNAは、適宜宿主に導入して形質転換体とし、これを培養することにより無限に複製可能である。
このようにして得られる組換えDNAを、大腸菌、枯草菌、放線菌、酵母などの適宜の宿主微生物に導入することにより形質転換体を得ることができる。形質転換体を取得するには、コロニーハイブリダイゼーション法を適用するか、栄養培地で培養して粗酵素を調製し、当該セロビオース2−エピメラーゼ活性を有するものを選択すればよい。
本発明のセロビオース2−エピメラーゼ産生能を有する微生物(形質転換体を含む)の培養に用いる培地は、微生物が生育でき、セロビオース2−エピメラーゼを産生しうる栄養培地であればよく、合成培地および天然培地のいずれでもよい。炭素源としては、微生物が生育に利用できる物であればよく、例えば、澱粉の部分分解物やグルコース、フラクトース、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、糖蜜などの糖質、また、クエン酸、コハク酸などの有機酸も使用することができる。培地におけるこれらの炭素源の濃度は炭素源の種類により適宜選択できる。窒素源としては、例えば、アンモニウム塩、硝酸塩などの無機窒素化合物および、例えば、尿素、コーン・スティープ・リカー、カゼイン、ペプトン、酵母エキス、肉エキスなどの有機窒素含有物を適宜用いることができる。また、無機成分としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、リン酸塩、マンガン塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩、モリブデン塩、コバルト塩などの塩類を適宜用いることができる。更に、必要に応じて、アミノ酸、ビタミンなども適宜用いることができる。
培養には、本発明のセロビオース2−エピメラーゼ産生能を有する微生物が良好に生育する条件を適宜選択して用いればよい。例えば、カルジセルロシルプトル属の微生物を用いる場合、培養は、通常、温度50乃至80℃、好ましくは、60乃至70℃、pH5乃至8、好ましくは、pH6.5乃至7.5の範囲から選ばれる条件で嫌気的に行われる。培養時間は当該微生物が増殖し得る時間であればよく、好ましくは10乃至72時間である。また、微生物が形質転換体である場合、その宿主微生物の種類によって異なるものの、培養は、通常、温度15乃至37℃でpH5.5乃至10の範囲、好ましくは温度20乃至50℃、pH2乃至9の範囲から選ばれる条件で、通気攪拌する好気的な条件下で10時間乃至150時間とすればよい。また、培養方式は、回分培養又は連続培養のいずれでもよい。
このようにして微生物を培養した後、本発明のセロビオース2−エピメラーゼを含む培養物を回収する。本発明のセロビオース2−エピメラーゼ活性は、主に菌体内に認められ、菌体を粗酵素として採取することも、菌体破砕抽出液を粗酵素液として用いることもできる。培養物から菌体を回収するには公知の固液分離法が採用される。例えば、培養物そのものを遠心分離する方法、あるいは、プレコートフィルターなどを用いて濾過分離する方法、平膜、中空糸膜などの膜濾過により分離する方法などが適宜採用される。菌体破砕抽出液は、そのまま粗酵素液として用いることができるものの、一般的には、濃縮して用いられる。濃縮法としては、硫安塩析法、アセトン及びアルコール沈殿法、平膜、中空膜などを用いた膜濃縮法などを採用することができる。
本発明のセロビオース2−エピメラーゼが組換え酵素である場合には、宿主の種類によっては菌体内に酵素が蓄積することがある。このような場合には、菌体又は培養物をそのまま使用することも可能であるものの、通常は使用に先立ち、必要に応じて、浸透圧ショックや界面活性剤により菌体から抽出した後、又は、超音波や細胞壁溶解酵素により菌体を破砕した後、濾過、遠心分離などにより組換え型酵素を菌体又は菌体破砕物から分離して用いることも有利に実施できる。
上記のように本発明のセロビオース2−エピメラーゼは、菌体破砕抽出液などの粗酵素液をそのまま又は濃縮して用いることができるものの、必要に応じて、公知の方法によって、さらに分離・精製して利用することもできる。例えば、菌体破砕抽出液の上清をUF膜で濃縮、又は硫安塩析・透析した酵素液を陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィーなど各種の精製方法を組み合わせて精製することにより、本発明のセロビオース2−エピメラーゼを電気泳動的に単一な酵素として得ることができる。また、本発明のセロビオース2−エピメラーゼが形質転換体を培養して得た組換え型酵素の場合、通常の蛋白質よりも耐熱性に優れる点を利用して、菌体破砕抽出液を硫安塩析して濃縮した粗酵素標品を、約70℃で一定時間熱処理することにより夾雑する宿主由来の蛋白質を熱変性させ、変性により沈澱する蛋白質を遠心分離などで除去することにより簡便に精製することができる。
更に、本発明のセロビオース2−エピメラーゼ活性を有する菌体破砕抽出液、濃縮液又は精製した酵素液を用いて、本発明のセロビオース2−エピメラーゼを公知の方法により固定化酵素とすることもできる。固定化方法としては、例えば、イオン交換体への結合法、樹脂及び膜などとの共有結合法・吸着法、高分子物質を用いた包括法などを適宜採用できる。
本発明のセロビオース2−エピメラーゼは幅広い基質特異性を有する。後述する実験の項で示すように、単糖ではD−グルコース、D−ガラクトース及びD−マンノースに作用し、それぞれのエピマーであるD−マンノース、D−タロース及びD−グルコースに変換する。二糖では、マルトース、セロビオース及びラクトースに作用し、それぞれエピマルトース、エピセロビオース及びエピラクトースに変換する。さらに、オリゴ糖ではセロオリゴ糖及びマルトオリゴ糖に作用し、それぞれに対応するエピセロオリゴ糖及びエピマルトオリゴ糖に変換する。
またさらに、本発明のセロビオース2−エピメラーゼは、酵素作用量を増すと、2−エピマー化反応のみならず、アルドース−ケトース変換反応をも触媒する。単糖では、D−グルコース又はD−マンノースをD−フラクトースに、D−ガラクトース又はD−タロースをD−タガトースに変換する。二糖では、セロビオース又はエピセロビオースをセロビウロースに、ラクトース又はエピラクトースをラクツロースに、また、マルトース又はエピマルトースをマルツロースに変換する。本酵素はアルドースをケトースに変換し、その逆反応をも触媒するものの、ケトースのアルドースへの変換活性は微弱であり、変換には多量の酵素を要する。
本発明のセロビオース2−エピメラーゼを基質に作用させるに際し、その基質濃度は特に限定されず、例えば、基質濃度0.1%(w/v)の比較的低濃度の溶液を用いた場合でも、本発明のセロビオース2−エピメラーゼの反応は進行して、特定の糖質からそのエピマー及び/又はアルドース−ケトース変換した異性化糖を生成する。工業的には、基質濃度1%(w/v)以上が好適であり、この条件下で、種々のエピマー及び/又は異性化糖を有利に生成できる。反応温度は反応が進行する温度、即ち80℃付近までで行えばよい。好ましくは50乃至60℃付近の温度を用いる。反応pHは、通常、5.0乃至9.0の範囲、好ましくはpH6.0乃至8.0の範囲に調整するのがよい。酵素の使用量と反応時間とは密接に関係しており、目的とする酵素反応の進行により適宜選択すればよい。
また、本発明のセロビオース2−エピメラーゼ産生能を有する微生物を、基質となる上記アルドース又はケトースを含んでなる栄養培地で培養し、培養液中に生成する、アルドース又はケトースにそれぞれ対応する異性化糖を採取することにより異性化糖を製造することもできる。
上記の反応系によって得られた異性化糖の精製方法としては、糖の精製に用いられる通常の方法を適宜採用すればよく、例えば、活性炭による脱色、H型、OH型イオン交換樹脂による脱塩、イオン交換カラムクロマトグラフィー、活性炭カラムクロマトグラフィー、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどのカラムクロマトグラフィーによる分画、適度な分離性能を有する膜による分離、更には、目的糖質を利用せず夾雑糖質を資化、分解する微生物、例えば酵母などによる発酵処理や、目的糖質に作用せず原料糖質を特異的に分解する酵素を用いる酵素処理などの1種又は2種以上の精製方法が適宜採用できる。
とりわけ、工業的な精製方法としては、イオン交換カラムクロマトグラフィーの採用が好適であり、例えば、特開昭58−23799号公報、特開昭58−72598号公報などに開示されている強酸性カチオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーにより夾雑糖類を除去し、目的糖質含量を向上させた糖組成物を有利に製造することができる。この際、固定床方式、移動床方式、疑似移動床方式のいずれの方式を採用することも随意である。
以下、実験により本発明をさらに具体的に説明する。
<実験1:カルジセルロシルプトル・サッカロリティカス ATCC43494菌体破砕抽出液によるエピラクトース及びエピセロビオースの生成>
<実験1−1:カルジセルロシルプトル・サッカロリティカス ATCC43494の培養と菌体破砕抽出液の調製>
『ATCCカタログ・オブ・バクテリア・アンド・バクテリオファージズ、第18版』(アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション発行、1992年)470頁に記載のアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション培地、1368番を調製し、12ml容耐圧ガラスボトルに12ml入れ滅菌した後、カルジセルロシルプトル・サッカロリティカス ATCC43494を接種して温度70℃で約72時間静置培養した。培養液を遠心分離して得た菌体を超音波破砕し、菌体破砕抽出液の遠心上清を粗酵素液とした。
<実験1−2:粗酵素液のラクトース、セロビオース及びエピラクトースへの作用>
セロビオース、ラクトース又はエピラクトースを100mM酢酸緩衝液(pH6.0)に終濃度3.4%(w/v)となるように溶解し、それぞれ基質溶液とした。基質溶液10μlに、実験1−1の方法で調製した粗酵素液を10μl加え、50℃で16時間反応させた。反応終了後、下記の条件による薄層クロマトグラフィー(以下、「TLC」と略称する)分析に供した。TLCクロマトグラムを図1に示す。
<TLC分析の条件>
薄層プレート:シリカゲルアルミプレート(10×20cm)
(『キーゼルゲル60F254』、メルク社製、10×20cm)
展開溶媒:n−ブタノール:ピリジン:水(容量比6:4:1)混液
展開方法及び回数:上昇法にて2回展開
発色方法:10%硫酸−メタノール溶液を噴霧し、110℃、6分間加熱
図1における符号a乃至gは、それぞれTLC分析に供した試料を表し、符号a、b、c、d、e、f及びgは、それぞれマルトオリゴ糖混合物(グルコース重合度のマーカー)、セロビオース標準品、セロビオース反応液、ラクトース標準品、ラクトース反応液、エピラクトース標準品及びエピラクトース反応液を示す。図1に示すように、セロビオースの反応液(図1における符号c)にはセロビオースの分解産物であるグルコース(図1の符号aにおけるGに相当する位置)と未知糖(図1の符号aにおけるGに相当する位置)のスポットが認められ、ラクトースの反応液(図1における符号e)にはラクトースの分解産物であるグルコースとガラクトース(図1の符号aにおけるGに相当する位置)のスポットが認められた。一方、エピラクトースの反応液(図1における符号g)にはラクトースと推定される異性化物のスポット(図1における符号←)が認められた。エピラクトースから異性化物であるラクトースの生成が認められたことから、セロビオースとラクトースの反応液には分解産物以外の生成物が存在し、そのスポットが分解産物のスポットと重なっている可能性が考えられたため、セロビオースとラクトースの反応液について、さらに、反応液を常法に従いトリメチルシリル化(TMS化)した後、下記の条件によるガスクロマトグラフィー(以下、「GC」と略称する。)に供して生成物を同定した。その結果、ラクトースからは分解産物以外にエピラクトースが、セロビオースからは分解産物以外にエピセロビオースと推定される未知糖が、それぞれ生成していることが確認された。この結果から、カルジセルロシルプトル・サッカロリティカス ATCC43494はセロビオース、ラクトース及びエピラクトースをエピマー化するエピメラーゼ(セロビオース2−エピメラーゼ)産生能を有することが判明した。
<GC分析条件>
ガスクロマトグラフ:GC−14A(株式会社島津製作所製)
カラム:2% OV−17 クロモソルブW/AW−DMCS
(内径3mm×長さ2m、株式会社ジー・エル・サイエンス製)
キャリアーガス:窒素 キャリアーガス流量:40ml/分
燃焼ガス:水素 燃焼ガス流量:40ml/分
助燃ガス:空気 助燃ガス流量:600ml/分
昇温プログラム:160℃ → 320℃(7.5℃/分)
検出:FID(水素炎イオン化検出器)
<実験2:カルジセルロシルプトル・サッカロリティカス ATCC43494からのセロビオース2−エピメラーゼの精製>
カルジセルロシルプトル・サッカロリティカス ATCC43494が産生するセロビオース2−エピメラーゼの理化学的性質を明らかにする目的で当該酵素の精製を行った。
<実験2−1:粗酵素液の調製>
実験1−1で用いた培地100mlを入れた100ml容耐圧ガラスボトル8本に、カルジセルロシルプトル・サッカロリティカス ATCC43494を接種した以外は、実験1−1と同様に培養し、種培養とした。次いで、同培地10Lを入れた11L容耐圧スチールボトル8本に、種培養した培養液を1本ずつ接種して同様に培養し、培養後、約80Lの培養液を遠心分離して湿菌体約24gを得た。菌体を20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)に懸濁し、超音波破砕した後遠心分離して菌体破砕抽出液上清を得た。菌体破砕抽出液上清を粗酵素液とした。粗酵素液のエピメラーゼ活性を測定し、培養液1ml当たりに換算すると0.009単位/mlであった。
<実験2−2:セロビオース2−エピメラーゼの精製>
実験2−1で得た粗酵素液をUF膜にて濃縮し、濃縮酵素液約40mlを回収した。この濃縮酵素液を20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)対して一晩透析し、遠心分離して不溶物を除いて得た透析液上清(38ml)を『DEAE−トヨパール650S』(東ソー株式会社販売)ゲルを用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィー(ゲル容量380ml)に供した。カラムに吸着した蛋白を0から0.5MNaClまでのリニアグラジエントにより溶出させ、得られたフラクションのエピメラーゼ活性を調べたところ、エピメラーゼ活性は約0.1MのNaCl濃度の画分に溶出していた。この溶出活性画分を回収し、1M硫安を含む同緩衝液に対して透析し、『Butyl−トヨパール650M』(東ソー株式会社販売)ゲルを用いた疎水カラムクロマトグラフィー(ゲル容量50ml)に供した。カラムに吸着した蛋白を1Mから0M硫安までのリニアグラジエントにより溶出させたところ、エピメラーゼ活性は約0.8Mの硫安濃度の画分に溶出していた。当該活性画分をUF膜で濃縮し、0.4M NaClを含有する20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)に対して透析した後、同緩衝液で平衡化した『スーパーデックス75』カラム(16mm×60cm、GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社製)を用いたゲル濾過クロマトグラフィーに供し、エピメラーゼ活性画分を回収した。回収した活性画分を20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)対して一晩透析し、同緩衝液で平衡化した『DEAE−5PW』カラム(3.3ml、東ソー株式会社製)を用いた陰イオン交換クロマトグラフィーに供した。カラムに吸着した蛋白を0Mから0.5MまでのNaClリニアグラジエントにより溶出し、約0.1MのNaCl濃度の画分に溶出するエピメラーゼ活性画分を回収した。
以上の精製により得られた精製酵素標品は、蛋白として0.9mgであり、粗酵素液からの活性回収率は3.4%であった。また、本精製酵素標品の比活性は26.9単位/mg−蛋白であった。なお、蛋白の定量は牛血清アルブミンを標準蛋白としたローリー法にて行った。本精製酵素標品の純度を5乃至20%(w/v)濃度勾配ポリアクリルアミドゲルを用いたゲル電気泳動法により検定したところ、蛋白バンドは単一であり純度の高い標品であった。
<実験3:カルジセルロシルプトル・サッカロリティカス ATCC43494由来セロビオース2−エピメラーゼの諸性質>
<実験3−1:分子量>
実験2の方法で得たセロビオース2−エピメラーゼ精製標品を5乃至20%(w/v)グラジエントゲルを用いたSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法に供し、同時に泳動した分子量マーカー(日本バイオ・ラッド・ラボラトリーズ株式会社製)と比較して分子量を測定したところ、分子量は44,000±5,000ダルトンであった。
<実験3−2:至適温度及び至適pH>
実験2の方法で得たセロビオース2−エピメラーゼ精製標品を用いて、エピメラーゼ活性に及ぼす温度及びpHの影響を活性測定の方法に準じて調べた。結果を図3(至適温度)及び図4(至適pH)に示す。本エピメラーゼの至適温度はpH6.0、20分間反応で80℃であった。至適pHは、50℃、20分間反応でpH7.8であった。
<実験3−3:温度安定性及びpH安定性>
実験2の方法で得たセロビオース2−エピメラーゼ精製標品を用いて、エピメラーゼ活性の安定性に及ぼす温度及びpHの影響を調べた。温度安定性は、10mM 酢酸緩衝液(pH6.0)を用い、酵素溶液を各温度に60分間保持し、水冷した後、残存する酵素活性を測定することにより求めた。pH安定性は、酵素を各pHの100mM緩衝液中で4℃、24時間保持した後、pHを6.0に再調整し、残存する酵素活性を測定することにより求めた。これらの結果を図5(温度安定性)及び図6(pH安定性)に示す。図5から明らかなように、本エピメラーゼは70℃まで安定であった。また、図6から明らかなように、本エピメラーゼは、pH4.5乃至9.5の範囲で安定であった。
<実験3−4:酵素活性に及ぼす金属イオンの影響>
実験2の方法で得たセロビオース2−エピメラーゼ精製標品を用いて、酵素活性に及ぼす金属イオンの影響を、1mMの各種金属塩存在下で活性測定することにより調べた。結果を表1に示す。
表1に示すように、本エピメラーゼの活性は、Al3+、Fe2+、Fe3+及びPb2+イオンによって阻害され、Cu2+、Zn2+及びHg2+イオンによってほぼ完全に阻害されることが判明した。
<実験3−5:N末端アミノ酸配列>
実験2の方法で得たセロビオース2−エピメラーゼ精製標品を用いて、本酵素のN末端アミノ酸配列を、プロテインシーケンサー モデル492HT(アプライドバイオシステムズ社製)を用いてN末端から15残基分析したところ、配列表における配列番号1で示されるアミノ酸配列、すなわち、メチオニン―アスパラギン酸−イソロイシン−スレオニン−アルギニン−フェニルアラニン−リジン−グルタミン酸−アスパラギン酸−ロイシン−リジン−アラニン−ヒスチジン−ロイシン−グルタミン酸 を有していることが判明した。
<実験3−6:内部部分アミノ酸配列>
実験2の方法で得たセロビオース2−エピメラーゼ精製標品を適量とり、10mMトリス・塩酸緩衝液(pH9.0)に対して4℃で18時間透析した後、同緩衝液を加えて蛋白濃度約0.6mg/mlとした。この溶液を約50μlとり、リジルエンドペプチダーゼ(和光純薬株式会社販売)1.2μgを加えて、30℃、20時間保持して酵素蛋白を加水分解した。加水分解物を予め0.065%(v/v)トリフルオロ酢酸で平衡化させておいたHPLC用カラム(商品名『マイクロRPC C2/C18 SC2.1/10』、直径2.1mm×長さ100mm、GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に注入し、流速0.1ml/分、室温の条件下、0.065%(v/v)トリフルオロ酢酸−から0.055%(v/v)トリフルオロ酢酸−80%(v/v)アセトニトリル溶液の160分間のリニアグラジエントで通液し、ペプチド断片を分画した。カラムから溶出したペプチド断片は波長214nmの吸光度を測定することにより検出した。保持時間約29分、約37分及び約39分に溶出した3種のペプチド断片P1、P2及びP3を分取し、それぞれのアミノ酸配列を実験3−5と同じ方法で分析したところ、それぞれ配列表における配列番号2、3及び4で示されるアミノ酸配列を有していた。
<実験4:セロビオース2−エピメラーゼをコードするDNAのクローニング及びこれを含む組換えDNAと形質転換体の調製>
セロビオース2−エピメラーゼをコードするDNAをカルジセルロシルプトル・サッカロリティカス ATCC43494からクローニングし、自律複製可能な組換えDNAの作製、酵素をコードするDNAの塩基配列の決定及び形質転換体の調製を行った。
<実験4−1:ゲノムDNAの調製>
実験1−1と同じ方法でカルジセルロシルプトル・サッカロリティカス ATCC43494を培養し、培養液約20mlを遠心分離して、培養菌体10mgを得た。回収した菌体から『ディーエヌイージー・ティシュー・キット』(キアゲン社製)を用い、キットに添付された説明書記載の方法に従ってゲノムDNAを調製し、1.8mgを得た。調製したゲノムDNAの濃度は1.8mg/mlとした。
<実験4−2:セロビオース2−エピメラーゼをコードするDNAのクローニング及び塩基配列の決定>
セロビオース2−エピメラーゼのN末端アミノ酸配列(配列表における配列番号1で示されるアミノ酸配列)の第1乃至第6番目のアミノ酸配列に基づき、センスプライマーとして配列表における配列番号5で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成し、同エピメラーゼの内部部分アミノ酸配列である配列表における配列番号4で示されるアミノ酸配列の第2乃至第7番目のアミノ酸配列に基づき、アンチセンスプライマーとして配列表における配列番号6で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成した。これらのプライマーを用い、実験4−1で得たゲノムDNAを鋳型とし、KOD−プラス−DNAポリメラーゼ(東洋紡製)をPCR酵素として、DNA サーマルサイクラー PJ2000(パーキン・エルマー社製)を用いて常法によりPCR増幅を行ったところ、約1,000bpのDNA断片が増幅された。このDNA断片をクローニングベクターpCR−Script Cam SK+(ストラタジーン社製)の制限酵素Srf Iサイトにクローニングし、得られた組換えDNAを用いて大腸菌XL−10Goldを形質転換した。形質転換体からプラスミドを調製して調べたところ、目的とする約1,000bpのDNA断片を有していた。その組換えDNAを「pCRCS1」と命名した。
組換えDNA、pCRCS1が有する約1,000bpのDNA断片の塩基配列を、通常のジデオキシ法により解読したところ、解読した1,004bpの塩基配列がコードするアミノ酸配列中に、セロビオース2−エピメラーゼの内部部分アミノ酸配列(配列表における配列番号3で示されるアミノ酸配列)が含まれていた。この結果から、得られたDNA断片は目的とするセロビオース2−エピメラーゼをコードするDNAの一部と推察された。
上記のセロビオース2−エピメラーゼをコードするDNAの一部と推察されたDNA断片が制限酵素Pst Iにて切断されないことを予め確認した後、実験4−1で得たゲノムDNAを制限酵素Pst Iにて消化し、消化物をセルフライゲーションさせて環状化ゲノムを得た。セロビオース2−エピメラーゼをコードするDNAの一部と推定されるDNA断片の塩基配列に基づき、配列表における配列番号7及び8で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをそれぞれセンスプライマー及びアンチセンスプライマーとして合成し、上記環状化ゲノムを鋳型としてPCRを行ったところ、約3,400bpの増幅DNA断片が得られた。
得られた約3,400bpのDNA断片の塩基配列を、直接、常法のジデオキシ法により解読したところ、セロビオース2−エピメラーゼのN末端アミノ酸配列(配列表における配列番号1で示されるアミノ酸配列)で始まり、3種の内部部分アミノ酸配列(配列表における配列番号2乃至4で示されるアミノ酸配列)を全て含むアミノ酸配列をコードするオープンリーディングフレームが認められ、本DNA断片中に目的遺伝子全長が存在していることが判明した。この知見に基づきセロビオース2−エピメラーゼをコードするDNAの塩基配列及びこれにコードされる当該酵素のアミノ酸配列を決定した。その結果、カルジセルロシルプトル・サッカロリティカス ATCC43494由来セロビオース2−エピメラーゼをコードするDNAは、配列表における配列番号9で示される鎖長1,170bpの塩基配列を有しており、当該塩基配列は配列表における配列番号10で示される390残基のアミノ酸配列をコードしていることが判明した。実験3−5で判明したセロビオース2−エピメラーゼのN末端アミノ酸配列(配列表における配列番号1で示されるアミノ酸配列)及び実験3−6で判明した3種の内部部分アミノ酸配列(配列表における配列番号2乃至4で示されるアミノ酸配列)は、そのいずれもが配列表における配列番号10で示されるアミノ酸配列に認められ、それぞれ当該アミノ酸配列における第1乃至第15番目、第342乃至第349番目、第104乃至第110番目、及び、第329乃至第335番目のアミノ酸配列と完全に一致していた。なお、配列表における配列番号10で示されるアミノ酸配列から算出される分子量は46,488であり、この値は実験3−1で求めたカルジセルロシルプトル・サッカロリティカス ATCC43494由来セロビオース2−エピメラーゼの分子量、44,000±5,000ダルトンとよく一致するものであった。
<実験4−3:組換え型セロビオース2−エピメラーゼ発現用ベクターの構築と形質転換体の調製>
カルジセルロシルプトル・サッカロリティカス ATCC43494由来セロビオース2−エピメラーゼのN末端アミノ酸配列(配列表における配列番号1で示されるアミノ酸配列)における第1乃至第9番目のアミノ酸配列に基づき、また、遺伝子の5´末端側に制限酵素Nco I認識部位を作製すべく、センスプライマーとして配列表における配列番号11で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成した。また、配列表における配列番号10で示されるアミノ酸配列における第384乃至第390番目のアミノ酸配列に基づき、また、遺伝子の3´末端側に制限酵素Bam HI認識部位を作製すべく、アンチセンスプライマーとして配列表における配列番号12で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成した。これらのプライマーを用い、実験4−1で得たゲノムDNAを鋳型とし、KOD−プラス−DNAポリメラーゼ(東洋紡製)をPCR酵素として、DNA サーマルサイクラー PJ2000(パーキン・エルマー社製)を用いて常法によりPCR増幅を行ったところ、約1,200bpのDNA断片が増幅された。増幅されたDNAを制限酵素Nco I及びBam HIにより消化し、フェノール・クロロホルム処理して制限酵素を失活させた後、この消化物を用いて、予め制限酵素Nco I及びBam HIで消化した発現ベクター、pET−3d(ノバジェン社製)に市販のキット(商品名「Ligation High、東洋紡製)を用いて挿入した。この反応物を用いてクローニング用宿主大腸菌XL10−Gold(ストラタジーン社製)を形質転換した。形質転換体からプラスミドを調製して調べ、目的とする約1,200bpのDNA断片を有するものを選択した。選択した形質転換体が有する組換えDNAを「pETCS1」と命名した。組換えDNA、pETCS1を用いて発現用宿主大腸菌Rosetta(DE3)(ノバジェン社製)を形質転換し、形質転換体『ETCS1』を調製した。
<実験4−4:形質転換体における組換え型セロビオース2−エピメラーゼの発現と精製>
実験4−3で得た形質転換体ETCS1を、500ml容の三角フラスコに100mlずつ入れたTB培地(トリプトン 1.2%、酵母エキス 2.4%、グリセリン 0.4%、リン酸2水素1カリウム 17mM、リン酸水素2カリウム 72mM、pH6.8、アンピシリン 80μg/ml、クロラムフェニコール 30μg/ml含有)に植菌し、27℃で24時間培養した。得られた培養物を、常法に従い、遠心分離して培養上清と菌体とに分離して回収した。菌体については、超音波破砕法により細胞からの全抽出物を調製した。超音波破砕法は、菌体を20mM酢酸緩衝液(pH6.5)に懸濁した後、その菌体懸濁液を氷水中で冷却しながら超音波ホモジナイザー(モデルUH−600、株式会社エスエムテー製)で細胞破砕することによって行い、その破砕物を全細胞抽出物とした。
このようにして調製した培養上清と全細胞抽出物とについて、それぞれのセロビオース2−エピメラーゼ活性(ラクトース2−エピメラーゼ活性)を測定し、それぞれの活性値を培養物1ml当りに換算した。なお、対照としてプラスミドpET−3dを保持する大腸菌Rosetta(DE3)を上述の形質転換体の場合と同一条件で培養し、培養物から培養上清と全細胞抽出物を調製し、同様に酵素活性を測定した。これらの結果を表2に示す。
表2の結果から明らかなように、形質転換体ETCS1は、セロビオース2−エピメラーゼを細胞内に産生することが判明した。宿主である対照の大腸菌では培養上清、全細胞抽出物のいずれにも当該エピメラーゼ活性は全く認められなかった。
上記で得た全細胞抽出物を、70℃で30分間熱処理し、熱変性して不溶化した宿主由来の蛋白を遠心分離にて除去した。この熱処理液上清を、『DEAE−5PW』カラムを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー及び『スーパーデックス 200』ゲルを用いたゲル濾過カラムクロマトグラフィーに供して精製し、さらにこの精製酵素標品を実験3に示した方法に準じて分析した。その結果、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法による分子量は44,000±5,000ダルトン、エピメラーゼ活性の至適温度は、pH6.0、20分間反応の条件下で80℃、至適pHは50℃、20分間反応の条件下で7.8、温度安定性は、各温度に60分間保持する条件下で70℃まで安定であり、pH安定性は、各pHに4℃で24時間保持する条件下で4.5乃至9.5の範囲で安定であった。組換え型エピメラーゼのこれらの理化学的性質は、実験2で精製したセロビオース2−エピメラーゼのそれと実質的に同一であった。以上の結果は、カルジセルロシルプトル・サッカロリティカス ATCC43494由来セロビオース2−エピメラーゼは、組換えDNA技術によって良好に製造できることを示している。
なお、カルジセルロシルプトル・サッカロリティカス ATCC43494のゲノムDNAの全塩基配列は既に明らかにされており、遺伝子データベース『GenBank』に登録されている(アクセッションNo.CP000679)。実験4−2で判明したセロビオース2−エピメラーゼの全アミノ酸配列(配列表における配列番号10で示されるアミノ酸配列)に基づき、当該ゲノムDNA情報を検索したところ、セロビオース2−エピメラーゼのアミノ酸配列は、意外にもカルジセルロシルプトル・サッカロリティカス ATCC43494のゲノムDNAにおいて、「N−アシルグルコサミン2−エピメラーゼ」をコードすると推定されている遺伝子(Csac0294)がコードするアミノ酸配列と完全に一致していることが判明した。この結果は、カルジセルロシルプトル・サッカロリティカス ATCC43494のゲノムDNAにおいて「N−アシルグルコサミン2−エピメラーゼ」をコードすると推定されていた遺伝子(Csac0294)が、正しくはセロビオース2−エピメラーゼをコードする遺伝子であることを物語っている。
<実験5:セロビオース2−エピメラーゼの基質特異性>
実験4−4の方法で得た組換え型セロビオース2−エピメラーゼ精製標品を各種糖質に作用させて基質特異性を調べた。D−グルコース、D−キシロース、D−アロース、D−リボース、D−ガラクトース、D−フラクトース、D−マンノース、D−プシコース、D−タガトース、L−ソルボース、L−ラムノース、L−リボース、トレハロース、コージビオース、ニゲロース、イソマルトース、ネオトレハロース、ゲンチオビオース、ラクトース、スクロース、マルツロース、パラチノース、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース、マルトヘプタオース、セロビオース、セロトリオース、セロテトラオース、セラギノース、イソマルトシルグルコシド、イソマルトトリオース、パノース、イソパノース、エルロース、マルチトール、マルトトリイトール、メチル−α−グルコシド、メチル−β−グルコシド、D−グルコサミン、D−ガラクトサミン、D−グルクロン酸、N−アセチルグルコサミン、又は、N−アセチルガラクトサミンを2%(w/v)含み、終濃度40mMになるようMOPS緩衝液(pH8.0)を加えた各基質溶液に、実験4−4の方法で得た組換え型セロビオース2−エピメラーゼ精製標品を基質固形物1グラム当たりそれぞれ500単位ずつ加え、60℃で24時間作用させた。反応液を100℃で10分間加熱して反応を停止させた後、酵素反応前後の反応液中の糖質を調べるため、実験1−2で行ったものと同じ方法によるTLC分析に供した。基質特異性は、基質糖質以外の反応生成物のスポットの有無と発色の強さの程度を調べることにより判定した。結果を表3に示す。
表3の結果から明らかなように、本酵素は、試験した基質の内、ラクトース、セロビオース、セロトリオース及びセロテトラオースによく作用し、また、D−グルコース、D−マンノース、マルトース及びマルトトリオースに作用して、異性化糖と考えられる生成物を生成した。さらに、D−ガラクトース、D−フラクトース、D−タガトース、マルツロース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マルトヘキサオース及びマルトヘプタオースにも僅かに作用した。
<実験6:単糖から生成する異性化糖>
本セロビオース2−エピメラーゼをD−グルコース、D−ガラクトース又はD−マンノースに作用させた場合の反応生成物を調べた。D−グルコース、D−ガラクトース又はD−マンノースを50mM酢酸緩衝液(pH6.0)に終濃度20%(w/v)となるように溶解し、それぞれ基質溶液とした。基質溶液0.1mlに、実験4−4の方法で調製した組換え型セロビオース2−エピメラーゼ精製標品を、D−グルコース及びD−マンノースの場合には基質固形物1グラム当たり130単位(酵素液として0.1ml)、D−ガラクトースの場合には基質固形物1グラム当たり500単位(酵素液として0.1ml)加え、60℃で48時間反応させた。酵素反応後、100℃で10分間加熱して反応を停止させた。各反応液は反応液中の生成物を調べるためHPLC分析に供した。なお、反応液中の生成物の分析は、単糖を分離するため下記のHPLC条件により行った。結果を表4に示す。
<HPLC条件>
カラム:MCIgel CK08EC(三菱化学株式会社製)
溶離液:脱イオン水 カラム温度:75℃
流 速:0.6ml/分
検 出:示差屈折計 RID−10A(株式会社島津製作所製)
表4の結果から明らかなように、本セロビオース2−エピメラーゼは、D−グルコースからD−マンノース及びD−フラクトースを、D−ガラクトースからD−タロース及びD−タガトースを、また、D−マンノースからD−グルコース及びD−フラクトースをそれぞれ生成していた。本酵素のD−ガラクトースへの作用は、D−グルコース及びD−マンノースへの作用に比べ弱いものであった。本酵素は、D−グルコース及びD−ガラクトースをそれぞれのエピマーであるD−マンノース及びD−タロースに変換するのみならず、それぞれD−フラクトース及びD−タガトースをも生成したことから、本酵素は2−エピマー化反応とアルドース−ケトース変換反応のいずれをも触媒する酵素であることが判明した。
<実験7:ラクトースから生成する異性化糖>
本セロビオース2−エピメラーゼの作用によりラクトースから生成する異性化糖を確認する目的で、異性化糖の単離と構造解析を行った。
<実験7−1:ラクトースからの異性化糖の調製>
20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に終濃度1.1w/v%となるようにラクトースを溶解した基質溶液200mlに、実験4−4の方法で得た組換え型セロビオース2−エピメラーゼ精製標品を、基質固形物1グラム当たり130単位(酵素液として20ml)を加え、50℃で8時間反応させた。酵素反応後、100℃で10分間加熱して反応を停止させた。反応液中の糖質を調べるため、実験1−2に記載した条件によるTLC分析と下記の条件によるHPLC分析とを行った。
<HPLC条件>
カラム:MCIgel CK08EP(三菱化学株式会社製造)
溶離液:脱イオン水 カラム温度:75℃
流 速:0.6ml/分
検 出:示差屈折計 RID−10A(株式会社島津製作所製)
TLCクロマトグラムにおいて、反応液中には未反応のラクトースとともに2種類の異性化糖が認められた。TLCにおいてエピラクトースと同じRf値を示す異性化糖を異性化糖Aと、ラクトースとほとんど分離しないRf値のより低い異性化糖を異性化糖Bと呼称することにした。異性化糖Bは、ジフェニルアミン−アニリン−リン酸発色において発色したことから、構造中にケトースを含む異性化糖と考えられた。反応液のHPLCクロマトグラムを図6に示す。HPLCにおいて、これら異性化糖A及びBはラクトース(図6における符号Lac)とは分離したものの、異性化糖同士では分離せず混合物の状態で検出され(図6における符号A+B)、反応液の糖組成はラクトース52.7質量%、異性化糖A及びBの混合物47.3質量%であった。
<実験7−2:異性化糖A及びBの単離精製>
上記したように、TLCでは異性化糖AとBは分離するものの異性化糖Bがラクトースと分離せず、一方、HPLCでは異性化糖A及びBとラクトースは分離するものの、異性化糖AとBは分離しなかった。この知見に基づき、まずHPLCによりラクトースを除去し異性化糖A及びBの混合物を取得した後、分取TLCにより異性化糖A及びBを単離精製することとした。
<実験7−2−1:分取HPLCによる異性化糖A及びBの混合物の取得>
実験7−1で得た反応液の固形物として330mgを80回に分けて実験7−1に記載したHPLCに供し、異性化糖A及びBの混合物を分取し、分取画分を濃縮、乾固し、混合物としての含量98.7質量%の糖質標品(単糖を1.3質量%含有)を固形物として153mg得た。
<実験7−2−2:分取TLCによる異性化糖A及びBの単離>
実験7−2−1で得た異性化糖A及びBを含む糖質標品57.6mgを実験1−2に記載したTLCに供して2回展開した後、異性化糖A及びBそれぞれに該当するRf値のシリカゲルを別々にかき取り、採取したシリカゲルから異性化糖A及びBを常法に従い脱イオン水で抽出し、濃縮、乾固して異性化糖A標品を固形物として21.9mg、異性化糖B標品を固形物として17.8mg得た。得られた標品の一部を実験1−2に記載の方法でGC分析に供し、それぞれの純度を測定したところ、異性化糖Aは純度90.2質量%(単糖を9.8質量%含有)、異性化糖Bは純度97.7質量%(単糖を2.3質量%含有)であった。
<実験7−3:異性化糖A及びBの構造解析>
実験6において本酵素は2−エピマー化反応とアルドース−ケトース変換反応のいずれをも触媒することが判明した。その結果に基づいて、異性化糖Aを基質ラクトースのエピマーであるエピラクトースと、また、異性化糖Bをラクトースの還元末端グルコースがフラクトースに異性化したラクツロースと推定した。以下、本実験では、異性化糖A及びBの、市販のエピラクトース標準品及びラクツロース標準品との異同を核磁気共鳴(NMR)分析により調べた。
実験7−2で得られた異性化糖A及びBの標品を用い、下記の条件によりプロトンNMR(H−NMR)分析を行った。また、市販のエピラクトース及びラクツロースの標準品についても同様に行った。異性化糖A及びエピラクトース標準品のH−NMRスペクトルをそれぞれ図7及び8に、また、異性化糖B及びラクツロース標準品のH−NMRスペクトルをそれぞれ図9及び10に示した。
H−NMR測定条件>
核磁気共鳴装置:JNM−AL300型(日本電子株式会社製)
溶媒:DO 試料量:20mg
磁場強度:300.4MHz 積算回数:16回
図7及び8から明らかなように、異性化糖AのH−NMRスペクトルはエピラクトース標準品のそれと、また、図9及び10から明らかなように、異性化糖BのH−NMRスペクトルはラクツロース標準品のそれと、それぞれ完全に一致した。以上の結果から、ラクトースから生成した異性化糖Aはエピラクトースであり、異性化糖Bはラクツロースであることが確認された。
<実験8:セロビオースから生成する異性化糖>
本セロビオース2−エピメラーゼの作用によりセロビオースから生成する異性化糖を特定する目的で、異性化糖の単離と構造解析を行った。
<実験8−1:セロビオースからの異性化糖の調製>
セロビオースを20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に10%(w/v)となるように溶解した基質溶液20mlに、実験4−4の方法で得た組換え型セロビオース2−エピメラーゼ生成標品を、基質固形物1グラム当たり50単位(酵素液として10ml)加え、60℃で23時間反応させた。酵素反応後、反応液を100℃で10分間加熱して反応を停止させた。反応液の糖組成を下記の条件によるHPLC分析にて調べた。HPLCクロマトグラムを図11に示す。
<HPLC条件>
カラム:Shodex SUGAR SP0810(昭和電工株式会社製)とMCIgel CK08EP(三菱化学株式会社製造)の2本のカラムをこの順序で直列に連結したもの
溶離液:脱イオン水 カラム温度:75℃
流 速:0.6ml/分
検 出:示差屈折計 RID−10A(株式会社島津製作所製)
図11に示すように、反応液には未反応のセロビオースのピーク(図11における符号Cel)とともに異性化糖と考えられる2つのピークが認められた。上記HPLCにおいて28.9分に溶出する糖質を異性化糖C(図11における符号C)と、また、27.4分に溶出する糖質を異性化糖D(図11における符号D)と呼称することにした。反応液の糖組成はセロビオース40.5質量%、異性化糖C16.5質量%、及び、異性化糖D43.0質量%であった。
<実験8−2:異性化糖C及びDの単離精製>
実験8−1で得た反応液の固形物として432mgを100回に分けて実験8−1に記載したHPLCに供し、異性化糖C及びDをそれぞれ分取し精製した。それぞれの分取画分を濃縮、乾固し、いずれも純度100%の異性化糖Cを17.9mg、異性化糖Dを118mg得た。
<実験8−3:異性化糖Cの構造解析>
<実験8−3−1:質量分析>
実験8−2で得た異性化糖Cについて質量分析装置『LCQ−Advantage』(サーモフィッシャー社製)を用いて質量分析したところ、質量数365のナトリウム付加分子イオンが顕著に検出され、異性化糖Cの質量数は342であることが判明した。
<実験8−3−2:酵素分解>
実験8−2で得た異性化糖Cを20mM酢酸緩衝液に濃度2%(w/v)となるように溶解した基質溶液0.3mlに、β−グルコシダーゼ(オリエンタル酵母工業株式会社製)を基質1グラム当たり500単位添加(酵素液として0.3ml)し、40℃で16時間反応させた。100℃で10分間加熱して反応を停止させた後、反応生成物を調べるため実験6で用いたHPLCに供し、生成した単糖を調べたところ、D−グルコースとD−マンノースが等モル認められた。この結果とβ−グルコシダーゼの基質特異性を考慮すると、異性化糖CはD−マンノースにD−グルコースがβ結合した二糖であることが判明した。
<実験8−3−3:核磁気共鳴分析>
実験8−2の方法で得られた異性化糖Cの標品を用い、常法に従って、核磁気共鳴(NMR)分析を行った。H−NMRスペクトルは実験7−3記載の条件で、また、13C−NMRスペクトルは下記の条件で測定した。
13C−NMR測定条件>
核磁気共鳴装置:JNM−AL300型(日本電子株式会社製)
溶媒:DO 試料量:14〜30mg
磁場強度:75.45MHz 積算回数:1000回
異性化糖C標品のH−NMRスペクトルを図12に、13C−NMRスペクトルを図13に示す。図13の13C−NMRスペクトルにおいて、D−マンノースのC−4位シグナル(79.3及び78.9ppm、図13における符号*)が大きく低磁場側にシフトしていたことから、D−グルコースはD−マンノースの4位に結合していることが分かった。また、図12のH−NMRスペクトルにおいて、約4.35ppmのシグナル(図12における符号↓)はD−グルコース残基の1位プロトンに帰属され、そのスピン−スピン結合定数を求めたところ、約7.9Hzであったことから、D−マンノースの4位に結合したD−グルコース残基の1位のアノマー型はβ型であることが判明した。さらに、異性化糖Cの13C−NMRスペクトルにおける各炭素シグナルの化学シフト値は、ウスイら、アグリカルチュラル・バイオロジカル・ケミストリー(Agricultural Biological Chemistry),第43巻,863−865頁(1979年)に開示されたエピセロビオースのそれとよく一致した。
実験8−3−1乃至8−3−3の結果から、本エピメラーゼの作用によりセロビオースから生成した異性化糖Cは、4−O−β−D−グルコシルD−マンノース、すなわち、エピセロビオースであることが判明した。
<実験8−4:異性化糖Dの構造解析>
<実験8−4−1:質量分析>
実験8−2で得た異性化糖Dについて実験8−3−1と同様に質量分析したところ、質量数365のナトリウム付加分子イオンが顕著に検出され、異性化糖Cの質量数は342であることが判明した。
<実験8−4−2:酵素分解>
異性化糖Cに替えて実験8−2で得た異性化糖Dを用いた以外は実験8−3−2と同様に処理して、異性化糖Dの酵素分解を行った。反応生成物を調べるため実験6で用いたHPLCに供し、生成した単糖を調べたところ、D−グルコースとD−フラクトースが等モル認められた。この結果とβ−グルコシダーゼの基質特異性を考慮すると、異性化糖DはD−フラクトースにD−グルコースがβ結合した二糖であることが判明した。
<実験8−4−3:核磁気共鳴分析>
実験8−3−3と同様に、実験8−2の方法で得た異性化糖D標品のNMR分析を行った。H−NMRスペクトルを図14に、13C−NMRスペクトルを図15に示す。図15の13C−NMRスペクトルにおいて、D−フラクトースのC−4位シグナル(79.9、86.4及び87.7ppm、図15における符号*)が大きく低磁場側にシフトしていたことから、D−グルコースはD−フラクトースの4位に結合していることが分かった。また、図14のH−NMRスペクトルにおいて、約4.49ppmのシグナル、約4.40ppmのシグナル、及び、約4.38ppmのシグナル(図14における符号↓)はD−グルコース残基の1位プロトンに帰属され、そのスピン−スピン結合定数を求めたところ、約7.9Hz(約4.49ppmのシグナル)、約7.7Hz(約4.40ppmのシグナル)、及び、約6.1Hz(約4.38ppmのシグナル)であったことから、D−フラクトースの4位に結合したD−グルコース残基の1位のアノマー型はβ型であることが判明した。さらに、異性化糖Dの13C−NMRスペクトルにおける各炭素シグナルの化学シフト値は、フェファーら、カーボハイドレート・リサーチ(Carbohydrate Research),第102巻,11−22頁(1982年)に開示されたセロビウロースのそれとよく一致した。
実験8−4−1乃至8−4−3の結果から、本エピメラーゼの作用によりセロビオースから生成した異性化糖Dは、4−O−β−D−グルコシルD−フラクトース、すなわち、セロビウロースであることが判明した。
<実験9:マルトースから生成する異性化糖>
本セロビオース2−エピメラーゼの作用によりマルトースから生成する異性化糖を特定する目的で、異性化糖の単離と構造解析を行った。
<実験9−1:マルトースからの異性化糖の調製>
基質をセロビオースからマルトースに替え、実験4−4の方法で得た組換え型セロビオース2−エピメラーゼの酵素作用量を基質固形物1グラム当たり200単位とした以外は、実験8−1と同様に反応させて反応液を得た。反応液のHPLCクロマトグラムを図16に示す。図16に示すように、反応液には未反応のマルトースのピーク(図16における符号Mal)とともに異性化糖と考えられる2つのピークが認められた。上記HPLCにおいて31.6分に溶出する糖質を異性化糖E(図16における符号E)と、また、28.0分に溶出する糖質を異性化糖F(図16における符号F)と呼称することにした。反応液の糖組成はマルトース70.1質量%、異性化糖E22.2質量%、及び、異性化糖F7.7質量%であった。
<実験9−2:異性化糖E及びFの単離精製>
実験9−1で得た反応液の固形物として191mgを29回に分けて実験8−1で用いたHPLCに供し、異性化糖E及びFをそれぞれ分取し精製した。分取画分をそれぞれ濃縮、乾固し、純度99.1質量%の異性化糖Eを38.1mg、純度92.3質量%の異性化糖Fを14.2mg得た。
<実験9−3:異性化糖Eの構造解析>
<実験9−3−1:質量分析>
実験9−2で得た異性化糖Eについて実験8−3−1と同様に質量分析したところ、質量数365のナトリウム付加分子イオンが顕著に検出され、異性化糖Eの質量数は342であることが判明した。
<実験9−3−2:酵素分解>
実験9−2で得た異性化糖Eを20mM酢酸緩衝液に濃度2%(w/v)となるように溶解した基質溶液0.3mlに、α−グルコシダーゼ(天野エンザイム株式会社製)を基質1グラム当たり500単位添加(酵素液として0.3ml)し、50℃で16時間反応させた。100℃で10分間加熱して反応を停止させた後、反応生成物を調べるため実験6で用いたHPLCに供し、生成した単糖を調べたところ、D−グルコースとD−マンノースが等モル認められた。この結果とα−グルコシダーゼの基質特異性を考慮すると、異性化糖EはD−マンノースにD−グルコースがα結合した二糖であることが判明した。
<実験9−3−3:核磁気共鳴分析>
実験8−3−3と同様に、実験9−2の方法で得た異性化糖E標品のNMR分析を行った。H−NMRスペクトルを図17に、13C−NMRスペクトルを図18に示す。図18の13C−NMRスペクトルにおいて、D−マンノースのC−4位シグナル(77.7及び77.2ppm、図18における符号*)が大きく低磁場側にシフトしていたことから、D−グルコースはD−マンノースの4位に結合していることが分かった。また、図17のH−NMRスペクトルにおいて、約5.22ppmのシグナル(図17における符号↓)はD−グルコース残基の1位プロトンに帰属され、そのスピン−スピン結合定数を求めたところ、約3.9Hzであったことから、D−マンノースの4位に結合したD−グルコース残基の1位のアノマー型はα型であることが判明した。さらに、異性化糖Eの13C−NMRスペクトルにおける各炭素シグナルの化学シフト値は、特開平10−95794号公報に開示された4−α−D−グルコシルD−マンノースのそれとよく一致した。
実験9−3−1乃至9−3−3の結果から、本エピメラーゼの作用によりマルトースから生成した異性化糖Eは、4−O−α−D−グルコシルD−マンノース、すなわち、エピマルトースであることが判明した。
<実験9−4:異性化糖Fの構造解析>
実験6において本酵素は2−エピマー化反応のみならずアルドース−ケトース変換反応をも触媒することが判明し、実験7においてラクトースからラクツロースが、実験8においてセロビオースからセロビウロースが生成していたことから、異性化糖Fはマルトースの還元末端グルコースがフラクトースに異性化したマルツロースであると推定された。以下、本実験では、異性化糖Fの市販のマルツロース標準品との異同をH−NMR分析により調べた。
実験9−2で得た異性化糖F標品を用い、実験7−3と同じ条件でH−NMR分析を行った。また、市販のマルツロース標準品についても同様に行った。異性化糖F及びマルツロース標準品のH−NMRスペクトルをそれぞれ図19及び20に示した。
図19及び20から明らかなように、異性化糖FのH−NMRスペクトルはマルツロース標準品のそれと完全に一致した。この結果から、マルトースから生成した異性化糖Fはマルツロースと同定された。
<実験10:マルトトリオースから生成する異性化糖>
本セロビオース2−エピメラーゼの作用によりマルトトリオースから生成する異性化糖を特定する目的で、異性化糖の単離と構造解析を行った。
<実験10−1:マルトトリオースからの異性化糖の調製>
基質をマルトースからマルトトリオースに替えた以外は、実験9−1と同様に反応させて反応液を得た。反応液のHPLCクロマトグラムを図21に示す。図21に示すように、反応液には未反応のマルトトリオースのピーク(図21における符号G)とともに異性化糖と考えられる1つのピークが認められた。上記HPLCにおいて29.9分に溶出する糖質を異性化糖G(図21における符号G)と呼称することにした。反応液の糖組成はマルトトリオース73.8質量%、異性化糖G23.3質量%、及び、その他未知糖2.9質量%であった。
<実験10−2:異性化糖Gの単離精製>
実験10−1で得た反応液の固形物として475mgを80回に分けて実験8−1で用いたHPLCに供し、異性化糖Gを分取し精製した。分取画分を濃縮、乾固し、純度99.4質量%の異性化糖Gを113mg得た。
<実験10−3:異性化糖Gの構造解析>
<実験10−3−1:質量分析>
実験10−2で得た異性化糖Gについて実験8−3−1と同様に質量分析したところ、質量数527のナトリウム付加分子イオンが顕著に検出され、異性化糖Gの質量数は504であることが判明した。
<実験10−3−2:酵素分解>
異性化糖E標品を実験10−2で得た異性化糖G標品に替えた以外は実験9−3−2と同様にα−グルコシダーゼで酵素分解し、反応液をHPLCに供して生成した単糖を調べたところ、D−グルコースとD−マンノースが2:1のモル比で認められた。この結果とα−グルコシダーゼの基質特異性を考慮すると、異性化糖Gは、還元末端に存在するD−マンノース1分子とD−グルコース2分子とからなる三糖であることが判明した。
<実験10−3−3:核磁気共鳴分析>
実験8−3−3と同様に、実験10−2の方法で得た異性化糖G標品のNMR分析を行った。H−NMRスペクトルを図22に、13C−NMRスペクトルを図23に示す。図23の13C−NMRスペクトルにおいて、D−マンノースのC−4位シグナル(77.9及び77.3ppm、図23における符号*)が大きく低磁場側にシフトしていたことから、D−グルコースはD−マンノースの4位に結合していることが分かった。また、D−グルコース1分子のC−4位シグナル(79.2ppm、図23における符号#)も大きく低磁場側にシフトしていたことから、D−グルコース1分子がD−グルコースの4位に結合していることも判明した。さらに、図22のH−NMRスペクトルにおいて、約5.20ppmのシグナル(図22における符号↓)はD−マンノースに結合したD−グルコース残基の1位プロトンに帰属され、そのスピン−スピン結合定数を求めたところ、約3.9Hzであったことから、D−マンノースの4位に結合したD−グルコース残基の1位のアノマー型はα型であることが判明した。またさらに、約5.26ppmのシグナル(図22における符号x)はD−グルコースに結合したD−グルコース残基の1位プロトンに帰属され、そのスピン−スピン結合定数を求めたところ、約3.7Hzであったことから、D−グルコースの4位に結合したD−グルコース残基の1位のアノマー型もα型であることが判明した。
実験10−3−1乃至10−3−3の結果から、本エピメラーゼの作用によりマルトトリオースから生成した異性化糖Gは、4−O−α−D−グルコシル−4−O−α−グルコシルD−マンノース、すなわち、エピマルトトリオースであることが判明した。
<実験11:各種糖質からの異性化糖の生成−酵素作用量の影響−>
実験5乃至10の結果から、本セロビオース2−エピメラーゼは、D−グルコース、D−ガラクトース、D−フラクトース、D−マンノース、D−タガトースなどの単糖、マルトース、セロビオース、ラクトースなどの二糖、及び、マルトオリゴ糖、セロオリゴ糖などのオリゴ糖に作用し、2−エピマー化反応とアルドース−ケトース変換反応を触媒することが判明した。本実験では、各種基質の異性化反応に及ぼす酵素作用量の影響を調べた。
単糖としてD−グルコース、D−ガラクトース、D−マンノース、D−タロース、D−フラクトース及びD−タガトースの6種、二糖としてマルトース、セロビオース及びラクトースの3種、三糖としてマルトトリオースの1種をそれぞれ基質として用い、それぞれを20mM酢酸緩衝液(pH6.0)に溶解し、実験4−4の方法で得た組換え型セロビオース2−エピメラーゼ精製標品を添加し、基質濃度10%(w/v)、60℃で72時間反応させた。酵素作用量は、基質が単糖の場合は基質1グラム当たり130又は500単位、基質が二糖及び三糖の場合は、基質1グラム当たり1及び/又は130単位とした。各反応液は、100℃で10分間加熱して反応を停止させ、HPLC分析に供して反応液の固形物当たりの異性化糖含量を測定した。なお、基質ラクトースの反応液中のエピラクトース及びラクツロース含量については、実験1−2で用いたGC分析により測定した。結果を表5に示す。
表5から明らかなように、本セロビオース2−エピメラーゼはセロビオース及びラクトースによく作用し、酵素作用量が基質1グラム当たり1単位と比較的低い場合においても2−エピマー化反応を触媒し、エピセロビオース及びエピラクトースを生成した。また、酵素作用量を増加させるとアルドース−ケトース変換反応によるセロビウロース及びラクツロースが顕著に生成した。本酵素の単糖や三糖への作用は、セロビオース及びラクトースへの場合と比較して弱く、異性化には多量の酵素を要した。
ここまでの実験で得られたカルジセルロシルプトル・サッカロリティカス ATCC43494由来セロビオース2−エピメラーゼの理化学的性質及び基質特異性を、公知のルミノコッカス・アルブス由来セロビオース2−エピメラーゼ(非特許文献3より抜粋)及びユーバクテリウム・セルロソルベンス由来セロビオース2−エピメラーゼ(非特許文献4より抜粋)の理化学的性質及び基質特異性とともに表6にまとめた。
表6から明らかなように、カルジセルロシルプトル・サッカロリティカス ATCC43494由来セロビオース2−エピメラーゼは、ルミノコッカス・アルブス及びユーバクテリウム・セルロソルベンスにそれぞれ由来する公知のセロビオース2−エピメラーゼと比較して、至適温度が45乃至50℃高く、温度安定性が30℃程度高い、耐熱性に優れる酵素であった。また、カルジセルロシルプトル・サッカロリティカス ATCC43494由来セロビオース2−エピメラーゼは、公知のルミノコッカス・アルブス由来及びユーバクテリウム・セルロソルベンス由来セロビオース2−エピメラーゼでは作用しないと報告(非特許文献3及び4を参照)されているD−グルコース、D−ガラクトース、D−マンノースなどの単糖や、マルトースにも作用する新規な酵素であることが判明した
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
<D−マンノースの調製>
D−グルコースの10%(w/v)水溶液(pH6.5)に、実験4−4の方法で精製した組換え型セロビオース2−エピメラーゼをD−グルコース1グラム当り130単位(ラクトース2−エピメラーゼ活性)の割合で加え、60℃で48時間反応させたところ、糖組成中D−マンノースが21質量%生成した。反応後、反応液を常法に従って、活性炭を用いて脱色し、次いで、H型イオン交換樹脂(商品名「ダイヤイオン SK1B」、三菱化学株式会社製)及びOH型イオン交換樹脂(商品名「ダイヤイオン WA30」、三菱化学株式会社製)を用いて脱塩し、減圧濃縮してD−マンノースを含む透明なシラップを得た。本シラップを塩型強酸性カチオン交換樹脂(ダイヤイオンUBK−530、Ca型、三菱化学株式会社製)を用いるカラムクロマトグラフィーにかけ、分離精製し、濃縮してシラップ状のD−マンノースを固形物当り収率約18%で得た。
<エピラクトースの調製>
ラクトースの10%(w/v)水溶液(pH6.5)に、実験4−4の方法で精製した組換え型セロビオース2−エピメラーゼをラクトース1グラム当り2単位(ラクトース2−エピメラーゼ活性)の割合で加え、60℃で72時間反応させた。反応液を100℃で15分間加熱して反応を停止させ、冷却した後、反応液の糖組成をHPLC及びGCにて測定したところ、固形物当たり未反応のラクトースを69質量%、エピラクトースを28質量%、ラクツロースを3質量%含有していた。この糖液のpHを4.5に調製した後、ラクターゼ剤(商品名「ラクターゼY−AO」、ヤクルト薬品工業株式会社販売)を基質1グラム当たり25単位添加し、40℃で16時間反応させて、糖液中のラクトース及びラクツロースを優先的に加水分解し、反応後、反応液を実施例1と同様に、脱色、脱塩し、減圧濃縮してエピラクトースを含む透明なシラップを得た。本シラップを実施例1と同様に塩型強酸性カチオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーにより、分離精製し、濃縮してシラップ状のエピラクトースを固形物当り収率約23%で得た。
<エピセロビオース含有シラップの調製>
セロビオースの10%(w/v)水溶液(pH6.5)に、実験4−4の方法で精製した組換え型セロビオース2−エピメラーゼをセロビオース1グラム当り2単位(ラクトース2−エピメラーゼ活性)の割合で加え、60℃で72時間反応させた。反応液を100℃で10分間加熱して反応を停止させ、冷却した後、反応液の糖組成をHPLC及びGCにて測定したところ、固形物当たり未反応のセロビオースを69質量%、エピセロビオースを28質量%、セロビウロースを3質量%含有していた。反応液を実施例1と同様に、脱色、脱塩し、減圧濃縮し透明なエピセロビオース含有シラップを固形物当り収率約97%で得た。
<エピマルトース含有シラップの調製>
マルトースの10%(w/v)水溶液(pH7.3)に、実験4−4の方法で精製した組換え型セロビオース2−エピメラーゼをマルトース1グラム当り200単位(ラクトース2−エピメラーゼ活性)の割合で加え、60℃で23時間反応させた。反応液を100℃で10分間加熱して反応を停止させ、冷却した後、反応液の糖組成をHPLCにて測定したところ、固形物当たり未反応のマルトースを70質量%、エピマルトースを22質量%、マルツロースを8質量%含有していた。反応液を実施例1と同様に、脱色、脱塩し、減圧濃縮し透明なエピマルトース含有シラップを固形物当り収率約96%で得た。
<セロビウロースの調製>
実験4−4の方法で精製した組換え型セロビオース2−エピメラーゼをセロビオース1グラム当り130単位(ラクトース2−エピメラーゼ活性)作用させた以外は、実施例3と同様にしてセロビオースに作用させた。反応停止後の反応液の糖組成をHPLCにて調べたところ、固形物当たり未反応のセロビオースを33質量%、エピセロビオースを13質量%、セロビウロースを54質量%含有していた。反応液を実施例3と同様に、脱色、脱塩し、減圧濃縮して透明なシラップを得た後、本シラップを実施例1と同様に塩型強酸性カチオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーにより、分離精製し、濃縮してシラップ状のセロビウロースを固形物当り収率約45%で得た。
<固定化セロビオース2−エピメラーゼ>
実験4−4の方法で形質転換体『ETCS1』を培養し、培養液を遠心分離してセロビオース2−エピメラーゼ活性を発現した湿菌体100gを得た。次いで、この湿菌体を、20mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)に溶解した2.5%アルギン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社販売)100mlに混練した。得られた菌体を含むスラリーを、マグネティックスターラーで攪拌した0.1MのCaCl水溶液に、水面より約20cmの高さから連続的に滴下し、直径約2mmの球状のゲル化物を調製した。これを0.1MのCaCl水溶液中に約2時間保持した後、吸引濾過してアルギン酸固定化菌体を回収した。この固定化菌体はセロビオース2−エピメラーゼ活性を発現していることから、カラムに充填するなどして固定化セロビオース2−エピメラーゼとして有利に利用できる。
本発明のセロビオース2−エピメラーゼは、従来公知のセロビオース2−エピメラーゼに比べ優れた耐熱性を有し、また新規な糖異性化反応を触媒するので、D−グルコースからD−マンノースの、マルトースからエピマルトースの、セロビオースからエピセロビオースやセロビウロースの、又は、ラクトースからエピラクトースやラクツロースの製造など、安価な原料から、より付加価値の高い糖質を工業レベルで製造する上で非常に有利な酵素である。本発明は、かくも顕著な作用効果を奏する発明であり、産業上の貢献度が誠に多大な意義ある発明である。

Claims (4)

  1. D−グルコース、D−ガラクトース、マルトース、及び、重合度3以上のマルトオリゴ糖から選ばれる糖質に、配列表における配列番号10で示されるアミノ酸配列か、当該アミノ酸配列において酵素活性を保持する範囲で1個以上10個未満のアミノ酸残基が置換、欠失又は付加したアミノ酸配列を有するセロビオース2−エピメラーゼを作用させて、それぞれに対応するD−マンノース、D−タロース、エピマルトース、及び、重合度3以上のエピマルトオリゴ糖から選ばれる異性化糖を生成させる工程と、生成した異性化糖を採取する工程とを含んでなる異性化糖の製造方法。
  2. D−グルコース、D−ガラクトース、マルトース、及び、重合度3以上のマルトオリゴ糖から選ばれる糖質を含んでなる栄養培地で配列表における配列番号10で示されるアミノ酸配列か、当該アミノ酸配列において酵素活性を保持する範囲で1個以上10個未満のアミノ酸残基が置換、欠失又は付加したアミノ酸配列を有するセロビオース2−エピメラーゼ産生能を有する微生物を培養する工程と、培養液中に生成する、それぞれに対応するD−マンノース、D−タロース、エピマルトース、及び、重合度3以上のエピマルトオリゴ糖から選ばれる異性化糖を採取する工程とを含んでなる異性化糖の製造方法。
  3. D−グルコース又はD−マンノース、D−ガラクトース又はD−タロース、マルトース又はエピマルトース、セロビオース又はエピセロビオース、及び、ラクトース又はエピラクトースから選ばれる糖質に、配列表における配列番号10で示されるアミノ酸配列か、当該アミノ酸配列において酵素活性を保持する範囲で1個以上10個未満のアミノ酸残基が置換、欠失又は付加したアミノ酸配列を有するセロビオース2−エピメラーゼを作用させて、それぞれに対応するD−フラクトース、D−タガトース、マルツロース、セロビウロース及びラクツロースから選ばれる異性化糖を生成させる工程と、生成した異性化糖を採取する工程とを含んでなる異性化糖の製造方法。
  4. D−グルコース又はD−マンノース、D−ガラクトース又はD−タロース、マルトース又はエピマルトース、セロビオース又はエピセロビオース、及び、ラクトース又はエピラクトースから選ばれる糖質を含んでなる栄養培地で配列表における配列番号10で示されるアミノ酸配列か、当該アミノ酸配列において酵素活性を保持する範囲で1個以上10個未満のアミノ酸残基が置換、欠失又は付加したアミノ酸配列を有するセロビオース2−エピメラーゼ産生能を有する微生物を培養する工程と、培養液中に生成する、それぞれに対応するD−フラクトース、D−タガトース、マルツロース、セロビウロース及びラクツロースから選ばれる異性化糖を採取する工程とを含んでなる異性化糖の製造方法。
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