JP5098086B2 - ケトース3−エピメラーゼとその製造方法並びに用途 - Google Patents

ケトース3−エピメラーゼとその製造方法並びに用途 Download PDF

Info

Publication number
JP5098086B2
JP5098086B2 JP2007545197A JP2007545197A JP5098086B2 JP 5098086 B2 JP5098086 B2 JP 5098086B2 JP 2007545197 A JP2007545197 A JP 2007545197A JP 2007545197 A JP2007545197 A JP 2007545197A JP 5098086 B2 JP5098086 B2 JP 5098086B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
ketose
epimerase
ketohexose
ketopentose
ions
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2007545197A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2007058086A1 (ja
Inventor
和彦 丸田
康三 山本
友之 西本
博人 茶圓
哲也 仲田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hayashibara Seibutsu Kagaku Kenkyujo KK
Original Assignee
Hayashibara Seibutsu Kagaku Kenkyujo KK
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hayashibara Seibutsu Kagaku Kenkyujo KK filed Critical Hayashibara Seibutsu Kagaku Kenkyujo KK
Priority to JP2007545197A priority Critical patent/JP5098086B2/ja
Publication of JPWO2007058086A1 publication Critical patent/JPWO2007058086A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5098086B2 publication Critical patent/JP5098086B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/90Isomerases (5.)
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N15/00Mutation or genetic engineering; DNA or RNA concerning genetic engineering, vectors, e.g. plasmids, or their isolation, preparation or purification; Use of hosts therefor
    • C12N15/09Recombinant DNA-technology
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P19/00Preparation of compounds containing saccharide radicals
    • C12P19/02Monosaccharides

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Biophysics (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Description

本発明は、ケトース3−エピメラーゼとその製造方法並びに用途に関し、詳細には、リゾビウム属に属する微生物から得ることができ、下記(1)及び(2)の基質特異性を有するケトース3−エピメラーゼとその製造方法、当該酵素をコードするDNAとこれを含んでなる組換えDNAと形質転換体、さらには当該酵素を用いたケトースの製造方法に関するものである。
(1)D−又はL−ケトヘキソースの3位をエピマー化し、対応するD−又はL−ケトヘキソースを生成する。D−又はL−ケトペントースの3位をエピマー化し、対応するD−又はL−ケトペントースを生成する。
(2)D−又はL−ケトヘキソース及びD−又はL−ケトペントースの中ではD−フラクトース及びD−プシコースに対する基質特異性が最も高い。
特開2001−11090号公報には、D−プシコースが低カロリー甘味料として、低カロリー飲食品の製造に有利に利用できることが記載されている。また、特開2005−213227号公報には、D−プシコースが血糖上昇抑制作用を有していることから、健康食品、糖尿病患者用飲食品、痩身用飲食品などに有利に利用できることが記載されている。
一方、Ken Izumoriら、Biosci. Biotech. Biochem.,57,1037−1039(1993)にはシュードモナス・チコリ(Pseudomonas cichorii) ST−24由来のD−ケトヘキソース3−エピメラーゼが開示されており、この酵素を利用することによりD−フラクトースからD−プシコースが製造できることが記載されている。しかしながら、この酵素は別名D−タガトース3−エピメラーゼとも呼ばれるように、D−タガトースへの特異性が最も高く、D−フラクトースへの作用は比較的弱いことが知られている。また、シュードモナス・チコリは植物病原性微生物であり、D−ケトヘキソース3−エピメラーゼ産生能が非常に低いため、工業的に利用する上で適しているとは言えない。シュードモナス属に属する微生物とは異なるケトース3−エピメラーゼ産生能の高い微生物、及びD−フラクトースへの特異性が高く、D−プシコースの製造に適した新規ケトース3−エピメラーゼが求められている。
本発明は、新規なケトース3−エピメラーゼとその製造方法、当該酵素をコードするDNA、これを含んでなる組換えDNA及び形質転換体、並びに当該酵素を用いたケトースの製造方法を提供することを課題とする。
本発明者等は、ケトース3−エピメラーゼ産生能を有するシュードモナス属に属する微生物以外の微生物に着目して、鋭意探索を続けてきた。その結果、新規なケトース3−エピメラーゼを産生するリゾビウム属に属する微生物を見出した。また、当該微生物由来の新規なケトース3−エピメラーゼは、D又はL−ケトヘキソース、D−又はL−ケトペントースにも作用し、対応するD−又はL−ケトースへのエピマー化を触媒する幅広い基質特異性を有しており、意外にも、D−又はL−ケトヘキソース及びD−又はL−ケトペントースの中ではD−フラクトース及びD−プシコースに対する基質特異性が最も高く、D−フラクトースからのD−プシコースの製造に適していることを見出した。そして、リゾビウム属に属する微生物より得ることのできる新規ケトース3−エピメラーゼとその製造方法、当該酵素をコードするDNAとこれを含んでなる組換えDNA及び形質転換体を確立するとともに、該酵素を利用したケトースの変換方法並びにケトースの製造方法を確立して本発明を完成した。
すなわち、本発明は、リゾビウム属に属する微生物から得ることのできるケトース3−エピメラーゼとその製造方法、当該酵素をコードするDNAとこれを含んでなる組換えDNA及び形質転換体、並びに該酵素を利用して、D−又はL−ケトヘキソースの3位をエピマー化し、対応するD−又はL−ケトヘキソースを製造し、また、D−又はL−ケトペントースの3位をエピマー化し、対応するD−又はL−ケトペントースを製造する方法を提供することにより上記課題を解決するものである。
リゾビウム属に属する微生物は新規なケトース3−エピメラーゼ産生能が比較的高く、シュードモナス・チコリとは異なり植物病原性も有していない。また、当該微生物から得ることのできる本発明のケトース3−エピメラーゼは、とりわけD−プシコース及びD−フラクトース間の相互変換を良く触媒することから、D−フラクトースからのD−プシコースの製造に有用である。
本発明のケトース3−エピメラーゼの至適pHを示す図である。 本発明のケトース3−エピメラーゼの至適温度を示す図である。 本発明のケトース3−エピメラーゼのpH安定性を示す図である。 本発明のケトース3−エピメラーゼの温度安定性を示す図である。 組換え型ケトース3−エピメラーゼ発現用の組換えDNA、pETDPE1を示す図である。図中、黒い太線で示した部分は、リゾビウム・レグミノサラム ATCC14480由来のケトース3−エピメラーゼをコードするDNAである。
符号の説明
図1乃至4において、
●:1mM Mn2+イオン非存在下
○:1mM Mn2+イオン存在下
図5において、
f1 ori:f1ファージ複製起点
Kan:カナマイシン耐性遺伝子
lacI:lacリプレッサー
本発明でいうケトヘキソースとは、ケトース構造を有する六炭糖であり、具体的にはフラクトース、プシコース、タガトース及びソルボースを意味し、D−又はL−ケトヘキソースはこれらのD−体及びL−体を意味する。また、同様に、本発明でいうケトペントースとは、ケトース構造を有する五炭糖であり、具体的にはキシルロース及びリブロースを意味し、D−又はL−ケトペントースはこれらのD−体及びL−体を意味する。
本発明のケトース3−エピメラーゼは、D−又はL−ケトヘキソースの3位をエピマー化し、対応するD−又はL−ケトヘキソースを生成する活性を有し、D−又はL−フラクトースとD−又はL−プシコース間の相互変換、及び、D−又はL−タガトースとD−又はL−ソルボース間の相互変換を触媒する。また、D−又はL−ケトペントースの3位をエピマー化し、対応するD−又はL−ケトペントースを生成する活性を有し、D−又はL−キシルロースとD−又はL−リブロース間の相互変換を触媒する。本発明のケトヘキソース3−エピメラーゼは、D−又はL−ケトヘキソース及びD−又はL−ケトペントースの中ではD−フラクトース及びD−プシコースに対する基質特異性が最も高い酵素である。本発明の酵素は後述するリゾビウム属に属する微生物から得ることができる。
本発明のケトース3−エピメラーゼの活性は、D−プシコースを基質とし、D−フラクトースの生成量を測定することにより測定することができる。具体的には、1mMのMnClを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)中にD−プシコースを終濃度1%(w/v)になるよう溶解したものを基質溶液とし、この基質溶液2mlと、酵素液0.2mlを混合し45℃で30分間反応を行ない、その後沸騰水浴中で5分間保持することで酵素を失活させ反応を停止する。次いで、反応液1mlを採取し、これに脱イオン水1ml及びNADP溶液(0.3Mトリエタノールアミン−HCl緩衝液(pH7.6)の500mlにNADPを2.37g、ATPを5.93g、MgSO・7HOを1g溶解したもの)を1ml添加し混合した後、後述する酵素液Aと酵素液Bを0.3Mトリエタノールアミン−HCl緩衝液(pH7.6)にてそれぞれ4倍希釈した溶液の等量混合液を40μl添加混合し、室温で30分間静置後、340nmにおける吸光度を測定することにより、反応により生成物したD−フラクトースの量を測定する。酵素液Aは、0.3Mトリエタノールアミン−HCl緩衝液(pH7.6)にヘキソキナーゼ6.7mg、グルコース6−リン酸脱水素酵素82μlを加え2mlとした溶液である。酵素液Bは、0.3Mトリエタノールアミン−HCl緩衝液(pH7.6)にホスホグルコースイソメラーゼを4mg加え2mlとした溶液である。酵素活性1単位は、上記条件下において、D−プシコースをエピマー化し1分間に1μmolのD−フラクトースを生成する酵素量と定義する。
本発明のケトース3−エピメラーゼは、リゾビウム属に属し、ケトース3−エピメラーゼ産生能を有する微生物を培養し、培養液中に生成したケトース3−エピメラーゼを採取することにより調製することができる。リゾビウム属に属する微生物としては、例えば、リゾビウム・レグミノサラム(Rhizobium leguminosarum (biovar trifolii)) ATCC14480株、リゾビウム・フレディ(Rhizobium fredii) ATCC35423株及びリゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti) ATCC9930株及びこれらの変異株などが有利に利用できる。これら菌株の内、リゾビウム・レグミノサラム ATCC14480株はケトース3−エピメラーゼの産生能が比較的高く、本発明の酵素を得る上で好適である。
本発明のケトース3−エピメラーゼは、下記の理化学的性質を有している場合がある。
(1)分子量
SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動において、30,000±3,000ダルトンを示す。
(2)至適pH
45℃、30分間反応、1mM Mn2+イオン存在下の条件下で、pH9.0乃至9.5
(3)至適温度
pH8.0、30分間反応、1mM Mn2+イオン非存在下の条件下で、約50℃
1mM Mn2+イオン存在下で、約65℃
(4)pH安定性
30℃、60分間保持、1mM Mn2+イオン非存在下の条件下で、少なくともpH8乃至10の範囲で安定
1mM Mn2+イオン存在下で、pH4.5乃至9.5の範囲で安定
(5)温度安定性
pH8.0、10分間保持、1mM Mn2+イオン非存在下の条件下で、約50℃以下で安定
1mM Mn2+イオン存在下で、約75℃以下で安定
(6)金属イオンによる活性化
Mn2+及びMg2+イオンにより活性化される
また、上記理化学的性質を有する本発明のケトース3−エピメラーゼの一つは、上記理化学的性質のみならず、そのN末端アミノ酸配列として、配列表における配列番号1で示されるアミノ酸配列を有している場合がある。
本発明のケトース3−エピメラーゼは、通常、所定のアミノ酸配列を有しており、その一例としては、例えば、配列表における配列番号2で示されるアミノ酸配列又はそれに相同的なアミノ酸配列が挙げられる。配列表における配列番号2で示されるアミノ酸配列に相同的なアミノ酸配列を有する変異体酵素としては、D−又はL−ケトヘキソースの3位をエピマー化し、対応するD−又はL−ケトヘキソースを生成し、且つ、D−又はL−ケトペントースの3位をエピマー化し、対応するD−又はL−ケトペントースを生成するという酵素活性を保持する範囲で、配列番号2で示されるアミノ酸配列において1個又は2個以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加したアミノ酸配列を有するものが挙げられ、配列番号2で示されるアミノ酸配列に対し、通常、60%以上、望ましくは、70%以上、さらに望ましくは、80%以上、よりさらに望ましくは、90%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有するものが好適である。
本発明のDNAとは、上記ケトース3−エピメラーゼをコードするもの全般を意味する。本発明のDNAは、ケトース3−エピメラーゼをコードするものである限り、それが天然由来のものであっても、人為的に合成されたものであってもよい。天然の給源としては、例えば、リゾビウム・レグミノサラム(Rhizobium leguminosarum (biovar trifolii)) ATCC14480、リゾビウム・フレディ(Rhizobium fredii) ATCC35423、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti) ATCC9930を含むリゾビウム属の微生物が挙げられ、これらの菌体から本発明のDNAを含む遺伝子DNAを得ることができる。すなわち、斯かる微生物を栄養培地に接種し、好気的条件下で約1乃至3日間培養後、培養物から菌体を採取し、リゾチームやβ−グルカナーゼなどの細胞壁溶解酵素や超音波で処理することにより当該DNAを含む遺伝子DNAを菌体外に溶出させる。このとき、プロテアーゼなどの蛋白質分解酵素を併用したり、SDSなどの界面活性剤を共存させたり凍結融解してもよい。斯くして得られる処理物に、例えば、フェノール抽出、アルコール沈殿、遠心分離、リボヌクレアーゼ処理などの常法を適用すれば目的の遺伝子DNAが得られる。本発明のDNAを人為的に合成するには、例えば、配列表における配列番号2で示されるアミノ酸配列に基づいて化学合成すればよい。また、当該DNAを含む遺伝子DNAを鋳型として、適当なプライマーとなる化学合成DNAを用いてPCR合成することも有利に実施できる。
本発明のDNAは、通常、所定の塩基配列を有しており、その一例としては、例えば、配列表における配列番号3で示される塩基配列又はそれに相同的な塩基配列が挙げられる。配列表における配列番号3で示される塩基配列に相同的な塩基配列を有する変異体DNAとしては、コードする酵素の活性を保持する範囲で、配列番号3で示される塩基配列において1個又は2個以上の塩基が欠失、置換若しくは付加した塩基配列を有するものが挙げられ、配列番号3で示される塩基配列に対し、通常、60%以上、望ましくは、70%以上、さらに望ましくは、80%以上、よりさらに望ましくは、90%以上の相同性を有する塩基配列を有するものが好適である。また、遺伝子コードの縮重に基づき、そのコードする酵素のアミノ酸配列を変えることなく塩基の1個又は2個以上を他の塩基に置換したものも当然、本発明のDNAに包含される。
本発明のDNAを、自律複製可能な適宜ベクターに挿入して組換えDNAとすることも有利に実施できる。組換えDNAは、通常、DNAと自律複製可能なベクターとからなり、DNAが入手できれば、常法の組換えDNA技術により比較的容易に調製することができる。斯かるベクターの例としては、pBR322、pUC18、pBluescript II SK(+)、pUB110、pTZ4、pC194、pHV14、TRp7、YEp7、pBS7などのプラスミドベクターやλgt・λC、λgt・λB、ρ11、φ1、φ105などのファージベクターが挙げられる。この内、本発明のDNAを大腸菌で発現させるには、pBR322、pUC18、pBluescript II SK(+)、λgt・λC及びλgt・λBが好適であり、一方、枯草菌で発現させるには、pUB110、pTZ4、pC194、ρ11、φ1及びφ105が好適である。pHV14、TRp7、YEp7及びpBS7は、組換えDNAを二種以上の宿主内で複製させる場合に有用である。DNAを斯かるベクターに挿入するには、斯界において通常一般の方法が採用される。具体的には、まず、DNAを含む遺伝子DNAと自律複製可能なベクターとを制限酵素及び/又は超音波により切断し、次に、生成したDNA断片とベクター断片とを連結する。遺伝子DNA及びベクターの切断にヌクレオチドに特異的に作用する制限酵素、とりわけII型の制限酵素、詳細には、Sau 3AI、Eco RI、Hin dIII、Bam HI、Sal I、Xba I、Sac I、Pst Iなどを使用すれば、DNA断片とベクター断片とを連結するのが容易である。必要に応じて、両者をアニーリングした後、生体内又は生体外でDNAリガーゼを作用させればよい。斯くして得られる組換えDNAは、適宜宿主に導入して形質転換体とし、これを培養することにより無限に複製可能である。
このようにして得られる組換えDNAは、大腸菌、枯草菌、放線菌、酵母をはじめとする適宜の宿主微生物に導入することができる。形質転換体を取得するには、コロニーハイブリダイゼーション法を適用するか、栄養培地で培養し、目的とするケトース3−エピメラーゼを生成するものを選択すればよい。
本発明のケトース3−エピメラーゼ産生能を有するリゾビウム属に属する微生物若しくは形質転換体の培養方法は、常法に従って、炭素源、窒素源、無機塩、ビタミンなどを含有する栄養培地に1乃至5日間程度培養、望ましくは、液体培地に通気撹拌などにより好気的条件下で培養し、得られる菌体、又は培養液上清などの培養物からケトース3−エピメラーゼを採取すればよい。通常、培養物を粗ケトース3−エピメラーゼとして利用することができる。必要ならば、培養物を濾過、遠心分離、塩析、透析、濃縮、凍結乾燥など公知の方法で部分精製して採取し、利用することができる。さらに高度の精製を必要とする場合には、例えば、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、電気泳動、更には、モノクローナル抗体への吸着、溶出などを組合せて純度を高めて利用することも随意である。また、本発明のケトース3−エピメラーゼ又はケトース3−エピメラーゼを発現したリゾビウム属微生物菌体を公知の方法により固定化して、反応に繰り返し利用することも、連続反応に利用することも有利に実施できる。
ケトース3−エピメラーゼが組換え型酵素である場合には、宿主の種類によっては菌体内に酵素が蓄積することがある。このような場合には、菌体又は培養物をそのまま使用することも可能であるものの、通常は使用に先立ち、必要に応じて、浸透圧ショックや界面活性剤により菌体から抽出した後、又は、超音波や細胞壁溶解酵素により菌体を破砕した後、濾過、遠心分離などにより組換え型酵素を菌体又は菌体破砕物から分離して用いることも有利に実施できる。
ケトースの変換反応は、通常、次の条件で行なわれる。基質濃度は1乃至60%(w/v)、望ましくは、約5乃至50%(w/v)、反応温度は10乃至70℃、望ましくは、約30乃至60℃、反応pHは5乃至10、望ましくは、約7乃至10、酵素活性は基質1グラム当り1単位以上、望ましくは、50乃至5,000単位の範囲から選ばれる。反応時間は、適宜選択できるが、経済性との関係で、バッチ反応の場合には、通常、5乃至50時間の範囲が選ばれる。
このようにして変換させて得られる反応溶液は、原料のケトースと新たに生成したケトースとを含有しており、これをそのまま甘味料、保湿剤、結晶析出防止剤、照り付与剤などとして利用することも有利に実施できる。通常、反応溶液は、常法に従い、活性炭を用いて脱色し、H型及びOH型イオン変換樹脂を用いて脱塩、濃縮してシラップ状製品を得る。
必要ならば、更に、この濃縮液を、例えば、アルカリ金属型又はアルカリ土類金属型強酸性カチオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーにより、新たに生成したケトースと原料ケトースとを分離精製し、新たに生成したケトース高含有画分を濃縮し、シラップ状製品を得ることも、更に、結晶化しうるケトースの場合には、晶出させて、結晶製品を得ることも有利に実施できる。また、この分離された原料のケトースを、再度、変換反応の原料に用いることも有利に実施できる。
このようにして得られたケトースは、甘味料として好適であり、飲食物、飼料、餌料、歯みがき、口中香錠、舌下錠、内服薬など経口摂取物の甘味付け、嗜好性向上などに有利に利用できる。また、発酵用炭素源、試薬、化学品・医薬品の原料、中間体などとしても有利に利用できる。
以下、実験により本発明を詳細に説明する。なお、以下の実験においてはD−プシコースをD−フラクトースに変換するD−プシコース3−エピメラーゼ活性を前述した活性測定法により測定し、ケトース3−エピメラーゼ活性と表記した。
<実験1:リゾビウム・レグミノサラム ATCC14480の培養>
澱粉部分分解物(商品名「パインデックス#4」、松谷化学工業株式会社販売)1.5%(w/v)、マルトース(商品名「サンマルトS」、株式会社林原商事販売)0.1%(w/v)、酵母エキス(商品名「酵母エキスS」、日本製薬株式会社販売)0.1%(w/v)、ポリペプトン(商品名「ポリペプトンS」、日本製薬株式会社販売)0.5%(w/v)、リン酸水素二カリウム0.1%(w/v)、リン酸二水素ナトリウム0.06%(w/v)、硫酸マグネシウム0.05%(w/v)、硫酸第一鉄0.001%(w/v)、硫酸マンガン0.001%(w/v)及び脱イオン水からなる液体培地を30L−容ジャーファーメンターに20L入れ、120℃、20分間滅菌した後、リゾビウム・レグミノサラム ATCC14480の種培養液1%(v/v)を無菌的に添加し、通気撹拌しながら27℃で72時間培養した。得られた培養液中のケトース3−エピメラーゼ活性は約1.0単位/ml−培養液であった。
<実験2:ケトース3−エピメラーゼの精製>
実験1で得た培養液約10Lから遠心分離して菌体を集め、これを20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)1Lに懸濁し、細胞破砕機ダイノミル(ベッコーフェン製)を用いて破砕した。得られた菌体破砕懸濁液を遠心分離し、上清を回収して菌体破砕抽出液とした。菌体破砕抽出液は、20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に対して透析した後、セパビーズ(Sepabeads) FP−DA13(三菱化学株式会社製)を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー(ゲル容量800ml)に供し、吸着したケトース3−エピメラーゼを食塩濃度0Mから0.6Mのリニアグラジエントで溶出させた。得られた活性画分を回収し、終濃度1Mとなるように硫安を添加し、ブチル−トヨパール(Butyl−Toyopearl) 650M(東ソー株式会社製)を用いた疎水クロマトグラフィー(ゲル容量100ml)に供したところ、ケトース3−エピメラーゼは吸着せず非吸着画分に溶出した。活性画分を20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に透析し、DEAE−トヨパール(Toyopearl) 650S(東ソー株式会社製)を用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィー(ゲル容量100ml)に供し、吸着したケトース3−エピメラーゼを食塩濃度0Mから0.6Mのリニアグラジエントで溶出させた。得られた活性画分を濃縮し、トヨパール HW−55S(東ソー株式会社製)を用いるゲル濾過クロマトグラフィー(ゲル容量300ml)に供し活性画分を回収した。得られた活性画分は、さらにリソース(Resouce) PHE(アマシャム・バイオサイエンス社製)を用いた疎水クロマトグラフィー、リソース Q(アマシャム・バイオサイエンス社製)を用いた陰イオン交換クロマトグラフィー及びスーパーデックス(Superdex) 200 HR26/60(アマシャム・バイオサイエンス社製)を用いたゲル濾過クロマトグラフィーに供して精製し、ケトース3−エピメラーゼ精製標品を得た。精製工程を表1にまとめた。
Figure 0005098086
表1の結果から明らかなように、この精製工程によって、比活性は約2,080倍に上昇した。精製したケトース3−エピメラーゼ標品の純度を5乃至20%(w/v)濃度勾配ポリアクリルアミドゲルを用いたゲル電気泳動法により検定したところ、蛋白バンドはほぼ単一であり、純度の高い標品であった。
<実験3:ケトース3−エピメラーゼの性質>
<実験3−1:分子量>
実験2の方法で得たケトース3−エピメラーゼ精製標品をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(5乃至20%(w/v)濃度勾配)に供し、同時に泳動した分子量マーカー(日本バイオ・ラッド・ラボラトリーズ株式会社製)と比較して分子量を測定したところ、ケトース3−エピメラーゼの分子量は30,000±3,000ダルトンであることが判明した。
<実験3−2:至適pH及び至適温度>
実験2の方法で得たケトース3−エピメラーゼ精製標品を用いて、ケトース3−エピメラーゼ活性に及ぼすpH、温度の影響を活性測定の方法に準じて調べた。これらの結果を図1(至適pH)、図2(至適温度)に示した。本発明のケトース3−エピメラーゼの至適pHは、45℃、30分間反応、1mM Mn2+イオン存在下の条件でpH9.0乃至9.5であった。至適温度はpH8.0、30分間反応、1mM Mn2+イオン非存在下(図2における符号●)の条件で約50℃であり、1mM Mn2+イオン存在下(図2における符号○)では約65℃であることが判明した。
<実験3−3:pH安定性及び温度安定性>
実験2の方法で得たケトース3−エピメラーゼ精製標品を用いて、ケトース3−エピメラーゼのpH安定性及び温度安定性を調べた。pH安定性は、酵素を1mM MnCl添加又は無添加の各pHの10mM緩衝液中で30℃、60分間保持した後、pHを8.0に調整し、残存する酵素活性を測定することにより求めた。温度安定性は、1mM MnCl添加又は無添加の20mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.0)を用い、酵素溶液を各温度に10分間保持し、水冷した後、残存する酵素活性を測定することにより求めた。これらの結果を図3(pH安定性)、図4(温度安定性)に示した。図3から明らかなように、本発明のケトース3−エピメラーゼのpH安定性は、1mM Mn2+イオンの非存在下(図3における符号●)では少なくともpH8乃至10の範囲で安定であることが判明した。pH10を越えると活性測定において、生成するD−フラクトースの定量に支障をきたすため、pH10を越える範囲の安定性は評価できなかった。一方、1mM Mn2+イオン存在下(図3における符号○)では、pH4.5乃至9.5の範囲で安定であることが判明した。また、図4から明らかなように、温度安定性は、1mM Mn2+イオン非存在下(図4における●)では約50℃以下で安定であり、1mM Mn2+イオン存在下(図4における○)では約75℃以下で安定であることが判明した。
<実験3−4:酵素活性に及ぼす金属イオンの影響>
実験2の方法で得た精製酵素標品を用いて、酵素活性に及ぼす金属イオンの影響を、1mMのMnClを含まない基質溶液を用い、濃度1mMの各種金属塩存在下で活性測定することにより調べた。金属塩の内、塩化鉄の2種(FeCl及びFeCl)及び塩化水銀(HgCl)は反応液中のD−フラクトースの定量に悪影響を及ぼすため、これら3種の金属イオン存在下におけるD−フラクトースの生成量については、HPLCを用いて定量した。結果を表2に示す。
Figure 0005098086
本発明のケトース3−エピメラーゼの活性は、調査した15種の金属イオンの内、Mg2+及びMn2+イオンによって、それぞれ金属イオン無添加時の約140%及び約280%に活性化された。Sn2+イオンでは若干、活性化され、Co2+及びSr2+イオンでは影響は認められなかった。Ni2+、Cu2+、Pb2+、Fe2+及びFe3+の各イオンでは活性がやや阻害され、Zn2+及びHg2+イオンでは著しく阻害された。また、EDTAによっては阻害されなかった。
<実験3−5:N末端アミノ酸配列>
実験2の方法で得た精製ケトース3−エピメラーゼ標品を用いて、本酵素のN末端アミノ酸配列を、プロテインシーケンサー モデル492HT(アプライドバイオシステムズ社製)を用いて分析したところ、配列表における配列番号1で示されるアミノ酸配列、すなわち、メチオニン−グルタミン酸−グリシン−フェニルアラニン−グリシン−バリン−ヒスチジン−スレオニン−セリン−メチオニン を有していることが判明した。
<実験4:ケトース3−エピメラーゼをコードするDNAのクローニング及びこれを含む組換えDNAと形質転換体の調製>
ケトース3−エピメラーゼをコードするDNAをリゾビウム・レグミノサラム ATCC14480からクローニングし、自律複製可能な組換えDNAの作製、酵素をコードするDNAの塩基配列の決定、及び形質転換体の調製を行った。
<実験4−1:染色体DNAの調製>
D−マンニトール2w/v%、酵母エキス(商品名『Bacto−yeast extract』、Difco社販売)0.1w/v%、ペプトン(商品名『Bacto−peptone』、Difco社販売)、0.5w/v%、リン酸二カリウム0.1w/v%、リン酸一ナトリウム・2水塩0.1w/v%、硫酸マグネシウム・7水塩0.05w/v%及び水からなる液体培地(pH7.0)を、500ml容三角フラスコ20本に50mlずつ入れ、オートクレーブで121℃、20分間滅菌し、冷却して、リゾビウム・レグミノサラム ATCC14480を接種し、27℃、230rpmで2日間回転振盪培養した。
遠心分離により培養物から採取した菌体をTES緩衝液(pH8.0)に浮遊させ、リゾチームを0.05%(w/v)加え、37℃で30分間インキュベートした。処理物を−80℃で1時間凍結後、TES緩衝液(pH9.0)を加えて60℃に加温し、TES緩衝液/フェノール混液を加え、氷水中で冷却しながら10分間激しく振盪した後、遠心分離により上清を採取した。この上清に2倍容の冷エタノールを加え、沈殿した粗染色体DNAを採取し、SSC緩衝液(pH7.1)に溶解後、リボヌクレアーゼとプロテイナーゼをそれぞれ7.5μgと125μg加え、37℃で1時間保持して反応させた。反応物にクロロホルム/イソアミルアルコール混液を加えて染色体DNAを抽出し、冷エタノールを加え、生成した染色体DNAを含む沈殿を採取した。このようにして得た精製染色体DNAを濃度約1mg/mlになるようにSSC緩衝液(pH7.1)に溶解し、−80℃で凍結した。
<実験4−2:ケトース3−エピメラーゼをコードするDNAのクローニング及び塩基配列の決定>
実験3−5で得たケトース3−エピメラーゼのN末端アミノ酸配列(配列表における配列番号1で示されるアミノ酸配列)に基づき、同アミノ酸配列と相同性を示すアミノ酸配列を有する蛋白質を、相同性検索プログラム『BLAST』を用い、データベース『GenBank』を対象に検索したところ、N末端アミノ酸配列のアミノ酸残基10残基中9残基が一致するシノリゾビウム・メリロティ(Sinorhizobium meliloti)1021由来の未知蛋白質が認められ、この蛋白質も糖質のエピメラーゼと推察された。なお、当該未知蛋白質は配列表における配列番号4で示されるアミノ酸配列を有しており、配列表における配列番号5で示される塩基配列を有するDNAによりコードされていた。リゾビウム・レグミノサラム ATCC14480のケトース3−エピメラーゼのアミノ酸配列が全域にわたり上記未知蛋白質のアミノ酸配列と相同性が高いとの前提をもとに、ケトース3−エピメラーゼをコードするDNAのクローニングを試みた。
配列表における配列番号4で示されるアミノ酸配列(シノリゾビウム・メリロティ1021由来未知蛋白質)の第10乃至16番目のアミノ酸配列に基づき、センスプライマーとして配列表における配列番号6で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成し、同第179乃至185番目のアミノ酸配列に基づき、アンチセンスプライマーとして配列表における配列番号7で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成した。これらのプライマーを用い、実験4−1で得た染色体DNAを鋳型として常法によりPCR増幅を行ったところ、約600bpのDNA断片が増幅された。このDNA断片をクローニングベクターpCR−Script Amp SK+(ストラタジーン社製)の制限酵素Srf Iサイトにクローニングし、得られた組換えDNAを用いて大腸菌JM109を形質転換した。形質転換体5クローンからプラスミドを調製して調べたところ、いずれも目的とする約600bpのDNA断片を有していた。1クローンを選択して、その組換えプラスミドを「pCR12−1」と命名した。
組換えDNA、pCR12−1が有する約600bpのDNA断片の塩基配列を、通常のジデオキシ法により解読したところ、解読した345bpの塩基配列がコードするアミノ酸配列は、前記シノリゾビウム・メリロティ 1021由来の糖質のエピメラーゼと推察される未知蛋白質の部分アミノ酸配列と約78%の高い相同性を有していた。この結果から、得られたDNA断片は目的とするケトース3−エピメラーゼをコードするDNAの一部と推察された。
上記のケトース3−エピメラーゼをコードするDNAの一部と推察されたDNA断片が制限酵素Cla Iにて切断されないことを予め確認した後、実験4−1で得た染色体DNAを制限酵素Cla Iにて消化し、消化物をセルフライゲーションさせて環状化ゲノムを得た。ケトース3−エピメラーゼをコードするDNAの一部と推察されたDNA断片の塩基配列に基づき、プライマーとして、配列表における配列番号8乃至11で示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成した。配列表における配列番号8及び9の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをそれぞれセンスプライマー及びアンチセンスプライマーとして用い、上記環状化ゲノムを鋳型として1次PCRを行い、続いて、配列表における配列番号10及び11の塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをそれぞれセンスプライマー及びアンチセンスプライマーとして2次PCRを行ったところ、約1,800bpのDNA断片が増幅された。
得られた約1,800bpのDNA断片の塩基配列を、直接、常法のジデオキシ法により解読し、当該塩基配列にコードされるアミノ酸配列と実験3−5の方法で確認されたケトース3−エピメラーゼのN末端アミノ酸配列(配列表における配列番号1で示されるアミノ酸配列)を比較したところ、当該塩基配列内にコードされた、配列表における配列番号2で示されるアミノ酸配列における第1乃至10番目のアミノ酸配列と完全に一致した。このことは、リゾビウム・レグミノサラム ATCC14480のケトース3−エピメラーゼが、配列表における配列番号2で示される282アミノ酸残基のアミノ酸配列からなるものであり、且つ、当該酵素をコードするDNAは、配列表における配列番号3で示される鎖長846bpの塩基配列を有することを示している。なお、配列表における配列番号2に示されるアミノ酸配列から算出される分子量は約30,900ダルトンであり、この値は実験3−1において測定されたリゾビウム・レグミノサラム ATCC14480のケトース3−エピメラーゼの分子量30,000±3,000ダルトンとよく一致した。
<実験4−3:ケトース3−エピメラーゼをコードするDNAの再クローニングと塩基配列の再確認>
実験4−2で決定したケトース3−エピメラーゼをコードするDNAの塩基配列を確定させる目的で、当該DNAにおける翻訳開始コドン及び終始コドンを含むプライマーを合成し、実験4−1で得た染色体DNAを鋳型としてPCRを行い、ケトース3−エピメラーゼをコードするDNAの再クローニングを行い、塩基配列を再度解析した。また、上記プライマーは、再クローン化したケトース3−エピメラーゼをコードするDNAを発現用ベクターに組込む目的で、当該DNAの上流に制限酵素Nde I認識部位を導入し、下流に制限酵素Eco RI認識部位を導入すべく設計した。
配列表における配列番号12及び13でそれぞれ示される塩基配列を有するオリゴヌクレオチドを合成し、それぞれをセンスプライマー及びアンチセンスプライマーとして用い、実験4−1で得た染色体DNAを鋳型としてPCRを行い、増幅DNA断片をベクターpCR−Script Amp SK+(ストラタジーン社製)の制限酵素Srf Iサイトにクローニングし、得られた組換えDNAを『pCRDPE6』と命名した。pCRDPE6が有するDNAの塩基配列を常法のジデオキシ法により決定したところ、実験4−2で決定した配列表における配列番号3で示される塩基配列と全く同一の塩基配列を含んでいた。
<実験5:発現用組換えDNA、pETDPE1の作製とその形質転換体による組換え型ケトース3−エピメラーゼの産生>
組換えDNA『pCRDPE6』中のケトース3−エピメラーゼをコードするDNAを発現用ベクターに挿入し、大腸菌において組換え型ケトース3−エピメラーゼを発現させ、その活性を調べた。
<実験5−1:発現用組換えDNA、pETDPE1の作製及び形質転換体ETDPE1の調製>
実験4−3で得たケトース3−エピメラーゼをコードするDNAを含む組換えDNA『pCRDPE6』を制限酵素Nde I及びEco RIにより消化し、70℃で30分間熱処理して制限酵素を失活させた。この消化物を用いて、予め制限酵素Nde I及びEco RIで消化した発現ベクター、pET−38b(+)(ノバジェン社製)に市販のキット(商品名「Ligation Kit Ver.2.1、宝酒造製)を用いて挿入した。この反応物を用いて大腸菌JM109(東洋紡製)を形質転換し、目的とする組換えDNAを保持する形質転換体を選択し、この形質転換体から組換えDNAを単離して『pETDPE1』と命名した。次いで、pETDPE1を図5に示す。pETDPE1を用いて発現用宿主大腸菌Rosetta(DE3)(ノバジェン社製)を形質転換して形質転換体『ETDPE1』を調製した。
<実験5−2:形質転換体ETDPE1による組換え型ケトース3−エピメラーゼの産生>
10g/lトリプトン(商品名『Bacto−tryptone』、Difco社販売)、5g/l酵母エキス(商品名『Bacto−yeast extract』、Difco社販売)及び10g/l食塩及び水からなる液体培地を、500ml容三角フラスコに100mlずつ入れ、オートクレーブで121℃、20分間滅菌し、冷却して、無菌的にpH7.5に調整した後、カナマイシン2mgを無菌的に添加して液体培地を調製した。この液体培地に実験5−1の方法で得た形質転換体ETDPE1を接種し、37℃で回転振盪培養して濁度が約0.6に達した時点でイソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(IPTG)を終濃度0.4mMになるように添加してケトース3−エピメラーゼ遺伝子の発現を誘導し、さらに27℃で3時間培養した。得られた培養物を、常法に従い、遠心分離して菌体を回収した。次いで、菌体を20mMトリス−塩酸緩衝液(pH7.5)に懸濁した後、その菌体懸濁液を氷水中で冷却しながら超音波ホモジナイザー(モデルUH−600、株式会社エスエムテー製)で細胞破砕し、その破砕物の遠心上清を細胞破砕可溶性画分とした。
このようにして調製した細胞破砕可溶性画分についてケトース3−エピメラーゼ活性を測定し、活性値を培養物1ml当りに換算した。なお、対照としてプラスミドpET−38b(+)を保持する大腸菌Rosetta(DE3)を上述の形質転換体の場合と同一条件で培養し、同様に培養物から細胞破砕可溶性画分を調製し、ケトース3−エピメラーゼ活性を測定した。これらの結果を表3に示す。
Figure 0005098086
表3の結果から明らかなように、形質転換体ETDPE1は、組換え型ケトース3−エピメラーゼを細胞内に産生することが判明した。発現用ベクターのみを保持する対照の大腸菌では当該酵素活性は全く認められなかった。
この実験5の方法で得た細胞破砕可溶性画分を、さらに実験2に示した方法に準じて、塩析、透析し、セパビーズゲル、ブチル−トヨパールゲルを用いたカラムクロマトグラフィーに供して部分精製し、さらにこの部分精製酵素標品を実験3に示した方法に準じて分析した。その結果、組換え型ケトース3−エピメラーゼの至適pHは、45℃、30分間反応、1mM Mn2+イオン存在下でpH9.0乃至9.5、至適温度はpH8.0、30分間反応、1mM Mn2+イオン存在下で約65℃、pH安定性は、1mM Mn2+イオン存在下、各pHに30℃で60分間保持する条件下で約4.5乃至9.5の範囲で安定、温度安定性は、各温度にpH8.0で10分間保持する条件下で、Mn2+イオン非存在下で約50℃まで、1mM Mn2+イオン存在下で約75℃まで安定であった。これらの理化学的性質は、実験2に示された方法で調製された当該酵素のそれと実質的に同一であった。以上の結果は、本発明のケトース3−エピメラーゼは、組換えDNA技術によって良好に製造できることを示している。
<実験6:ケトース3−エピメラーゼの基質特異性>
実験2の方法で得たケトース3−エピメラーゼの精製標品を用いて、当該酵素の基質特異性を、各種D−又はL−ケトヘキソース及びD−又はL−ケトペントースを用いて調べた。D−フラクトース、D−プシコース、D−タガトース、D−ソルボース、D−キシルロース、D−リブロース、L−フラクトース、L−プシコース、L−タガトース、L−ソルボース、L−キシルロース又はL−リブロースを、それぞれ終濃度1%(w/v)になるように1mMのMnClを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に溶解したものを基質溶液とし、実験2の方法で得たケトース3−エピメラーゼ精製標品をD−プシコース3−エピメラーゼ活性として基質固形物1グラム当たり2単位又は20単位ずつ加え、45℃で17時間反応させた。100℃で10分間保持して反応を停止させた後、それぞれの基質から生成したエピマーの含量を高速液体クロマトグラフィー(以下、HPLCと略称する。)を用いて測定した。HPLCは、カラムに『MCI GEL CK08EC』(株式会社三菱化学製)を用い、溶離液に水を用いて、カラム温度75℃、流速0.6ml/分の条件で行い、検出は示差屈折計RID−10A(株式会社島津製作所製)を用いて行った。結果を表4に示す。
Figure 0005098086
表4の結果から明らかなように、本発明のケトース3−エピメラーゼは試験した全てのD−又はL−ケトヘキソース、D−又はL−ケトペントースに作用して、程度の差はあるものの3位水酸基のアノマーをエピマー化し、対応するD−又はL−ケトヘキソース、D−又はL−ケトペントースを生成することが判明した。酵素作用量が2単位/g−基質と少ない場合においてもD−プシコースの約39%がD−フラクトースに変換され、一方、D−フラクトースの約18%がD−プシコースに変換されたことから、本発明のケトース3−エピメラーゼは試験した基質の中ではD−フラクトース及びD−プシコース間の変換を最も良く触媒することが判明した。D−リブロース及びD−キシルロース間、又は、L−リブロース及びL−キシルロース間の変換も比較的良く触媒したものの、D−タガトース及びD−ソルボース間の変換はごく僅かであった。
一方、上記と同様に、D−グルコース、D−ガラクトース、D―マンノース、D−キシロース、D−リボース又はL−アラビノースを用いて、D−アルドヘキソース、D−又はL−アルドペントースへの作用も調べたところ、これらの基質には当該ケトース3−エピメラーゼは全く作用せず、試験した範囲ではアルドースには作用しないことが確認された。
<実験7:他のリゾビウム属に属する微生物由来のケトース3−エピメラーゼ>
他のリゾビウム属に属する微生物の内、ケトース3−エピメラーゼ産生能の認められたリゾビウム・フレディ(Rhizobium fredii) ATCC35423及びリゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti) ATCC9930を実験1の場合と同様にファーメンターで培養した。それぞれの培養液約10Lを用いて、実験2の場合と同様に菌体を破砕し、遠心上清を回収し、続いて、透析、陰イオン交換カラムクロマトグラフィーに供して部分精製酵素を調製した。得られた部分精製酵素について実験3の場合と同様に酵素的性質を調べた。これらの結果を、前述のリゾビウム・レグミノサラム ATCC14480由来のケトース3−エピメラーゼの性質及び公知のシュードモナス・チコリ ST−24由来の酵素の性質(Ken Izumoriら、Biosci. Biotech. Biochem.,57,1037−1039(1993)より抜粋)とともに表5にまとめた。
Figure 0005098086
表5の結果から明らかなように、リゾビウム・フレディ ATCC35423及びリゾビウム・メリロティ ATCC9930由来のケトース3−エピメラーゼは、リゾビウム・レグミノサラム ATCC14480由来の酵素と同等の酵素的性質を示した。これらリゾビウム属微生物由来ケトース3−エピメラーゼの性質は、従来のシュードモナス・チコリ ST−24の酵素のそれとは異なっていた。
リゾビウム・フレディ ATCC35423及びリゾビウム・メリロティ ATCC9930由来のケトース3−エピメラーゼについても実験2と同様にDEAE−トヨパール工程まで精製した部分精製酵素を用いて実験6の場合と同様に基質特異性を調べたところ、前述のリゾビウム・レグミノサラム ATCC14480由来のケトース3−エピメラーゼと同等の結果であった。
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、本実施例におけるケトース3−エピメラーゼ活性は、実験の項と同様にD−プシコース3−エピメラーゼ活性を意味する。
<ケトース3−エピメラーゼの調製>
実験1で用いた液体培地を30L−容ジャーファーメンターに約20L入れ、120℃、20分間滅菌した後、リゾビウム・フレディ ATCC35423の種培養液1%(v/v)を無菌的に添加し、通気撹拌しながら27℃で60時間培養した。得られた培養液中のケトース3−エピメラーゼ活性は約0.7単位/ml−培養液であった。培養液約18Lから遠心分離して菌体を集め、これを20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)1.5Lに懸濁し、細胞破砕機ダイノミル(ベッコーフェン製)を用いて破砕した。得られた菌体破砕懸濁液を遠心分離し、上清を回収して菌体破砕抽出液とした。菌体破砕抽出液は、実験2の方法に準じてDEAE−トヨパール 650S(東ソー株式会社製)を用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィーの段階まで精製し、ケトース3−エピメラーゼ部分精製酵素標品として総活性で約7,200単位を得た。
<ケトース3−エピメラーゼの調製>
常法により、リゾビウム・レグミノサラム ATCC14480を突然変異させ、ケトース3−エピメラーゼ高産生変異株を取得した。実験1で用いた液体培地を30L−容ジャーファーメンターに約20L入れ、120℃、20分間滅菌した後、上記変異株の種培養液1%(v/v)を無菌的に添加し、通気撹拌しながら27℃で60時間培養した。得られた培養液中のケトース3−エピメラーゼ活性は約13単位/ml−培養液であった。培養液約18Lから遠心分離して菌体を集め、これを20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)1.5Lに懸濁し、細胞破砕機ダイノミル(ベッコーフェン製)を用いて破砕した。得られた菌体破砕懸濁液を遠心分離し、上清を回収して菌体破砕抽出液とした。菌体破砕抽出液は、実験2の方法に準じてDEAE−トヨパール 650S(東ソー株式会社製)を用いた陰イオン交換カラムクロマトグラフィーの段階まで精製し、ケトース3−エピメラーゼ部分精製酵素標品として総活性で約82,000単位を得た。
<D−フラクトースからのD−プシコースの製造>
D−フラクトースの10w/v%水溶液(pH8.0、1mMのMnClを含む)に、実施例1の方法で得たリゾビウム・フレディ ATCC35423由来の部分精製ケトース3−エピメラーゼを、D−フラクトース1グラム当り50単位の割合で加え、45℃、30時間反応させた。反応後、反応液を常法に従って、活性炭を用いて脱色し、次いで、H型イオン交換樹脂(商品名「ダイヤイオン SK1B」、三菱化学株式会社製造)及びOH型イオン交換樹脂(商品名「ダイヤイオン WA30」、三菱化学株式会社製造)を用いて脱塩し、減圧濃縮してD−プシコースを含む透明なシラップを得た。本シラップを塩型強酸性カチオン交換樹脂(アンバーライトCR−1310、Na型、オルガノ株式会社製造)を用いるカラムクロマトグラフィーにかけ、分離精製し、濃縮してシラップ状のD−プシコースを固形物当り収率約23%で得た。本品の理化学的性質は、標準のD−プシコースのそれとよく一致した。本品は、甘味料、発酵用炭素源、試薬、化学品、医薬品の原料及び中間体などとして有利に利用できる。また、本酵素反応が可逆的な反応であることから、原料としてD−プシコースを用いることにより、D−フラクトースを製品として採取することも容易である。
<D−キシルロースからのD−リブロースの調製>
D−キシルロースの1%(w/v)水溶液(pH8.0、1mMのMnClを含む)に、実験1及び2の方法でDEAE−トヨパール工程まで部分精製したリゾビウム・レグミノサラム ATCC14480由来のケトース3−エピメラーゼをD−キシルロース1グラム当り20単位の割合で加え、45℃、50時間反応させた。反応後、反応液を実施例3と同様に、脱色、脱塩し、減圧濃縮してD−リブロースを含む透明なシラップを得た。本シラップを実施例3と同様に塩型強酸性カチオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーにより、分離精製し、濃縮してシラップ状のD−リブロースを固形物当り収率約16%で得た。本品の理化学的性質は、標準のD−リブロースのそれとよく一致した。本品は、甘味料、発酵用炭素源、試薬、化学品、医薬品の原料及び中間体などとして有利に利用できる。また、本酵素反応が可逆的な反応であることから、原料としてD−リブロースを用いることにより、D−キシルロースを製品として採取することも容易である。
<L−キシルロースからのL−リブロースの調製>
1%(w/v)L−キシルロース水溶液(pH8.0、1mMのMnClを含む)に対し、実施例1の方法で得たリゾビウム・フレディ ATCC35423由来の部分精製ケトース3−エピメラーゼをL−キシルロース1グラム当り100単位の割合で加え、45℃、50時間反応した。反応後、反応液を実施例2と同様に、脱色、脱塩し、減圧濃縮してL−リブロースを含む透明なシラップを得た。本シラップを実施例3と同様に塩型強酸性カチオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーにより、分離精製し、濃縮してシラップ状のL−リブロースを固形物当り収率約25%で得た。本品の理化学的性質は、標準のL−リブロースのそれとよく一致した。本品は、甘味料、発酵用炭素源、試薬、化学品、医薬品の原料及び中間体などとして有利に利用できる。また、本酵素反応が可逆的な反応であることから、原料としてL−リブロースを用いることにより、L−キシルロースを製品として採取することも容易である。
<L−タガトースからのL−ソルボースの調製>
1%(w/v)L−タガトース水溶液(pH8.0、1mMのMnClを含む)に対し、実施例2の方法で得た、リゾビウム・レグミノサラム ATCC14480の酵素高産生変異株由来の部分精製ケトース3−エピメラーゼをL−タガトース1グラム当り20単位の割合で加え、45℃、50時間反応した。反応後、反応液を実施例3と同様に、脱色、脱塩し、減圧濃縮してL−ソルボースを含む透明なシラップを得た。本シラップを実施例3と同様に塩型強酸性カチオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーにより、分離精製し、濃縮してシラップ状のL−ソルボースを固形物当り収率約25%で得た。本品の理化学的性質は、標準のL−ソルボースのそれとよく一致した。本品は、甘味料、発酵用炭素源、試薬、化学品、医薬品の原料及び中間体などとして有利に利用できる。また、本酵素反応が可逆的な反応であることから、原料としてL−ソルボースを用いることにより、L−タガトースを製品として採取することも容易である。
<固定化ケトース3−エピメラーゼ>
リゾビウム・レグミノサラム ATCC14480を実験1と同様の方法で培養し、遠心分離してケトース3−エピメラーゼ活性を発現した湿菌体100gを得た。次いで、この湿菌体を20mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に溶解した2.5%アルギン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社販売)100mlに混練した。得られた菌体を含むスラリーを、マグネティックスターラーで攪拌した0.1MCaCl溶液に、水面より約20cmの高さから連続的に滴下し、直径約2mmの球状のゲル化物を調製した。これを0.1MCaCl溶液中に約2時間保持した後、吸引濾過してアルギン酸固定化菌体を回収した。この固定化菌体はケトース3−エピメラーゼ活性を発現していることから、カラムに充填するなどして固定化ケトース3−エピメラーゼとして有利に利用できる。
本発明のケトース3−エピメラーゼは、遊離のD−又はL−ケトヘキソース、D−又はL−ケトペントースに作用させて、これらケトースの3位をエピマー化し、対応するD−又はL−ケトヘキソース、D−又はL−ケトペントースを容易に生成する。この反応は、各種ケトース、とりわけD−フラクトースを原料としたD−プシコースの大量生産の道を拓くものである。従って、本発明のケトース3−エピメラーゼとその製造方法の確立は、製糖産業のみならず、これに関連する食品、化粧品、医薬品産業における工業的意義が極めて大きい。

Claims (14)

  1. リゾビウム(Rhizobium)属に属する微生物から得ることができ、下記の基質特異性と理化学的性質を有するケトース3−エピメラーゼ:
    (1)D−又はL−ケトヘキソースの3位をエピマー化し、対応するD−又はL−ケトヘキソースを生成する。D−又はL−ケトペントースの3位をエピマー化し、対応するD−又はL−ケトペントースを生成する;
    (2)D−又はL−ケトヘキソース及びD−又はL−ケトペントースの中ではD−フラクトース及びD−プシコースに対する基質特異性が最も高い
    (3)分子量
    SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動において、30,000±3,000ダルトンを示す
    (4)至適pH
    45℃、30分間反応、1mM Mn 2+ イオン存在下の条件下で、pH9.0乃至9.5
    (5)至適温度
    pH8.0、30分間反応、1mM Mn 2+ イオン非存在下の条件下で、50℃;
    1mM Mn 2+ イオン存在下で、65℃
    (6)pH安定性
    30℃、60分間保持、1mM Mn 2+ イオン非存在下の条件下で、少なくともpH8乃至10の範囲で安定
    1mM Mn 2+ イオン存在下で、pH4.5乃至9.5の範囲で安定
    (7)温度安定性
    pH8.0、10分間保持、1mM Mn 2+ イオン非存在下の条件下で、50℃以下で安定
    1mM Mn 2+ イオン存在下で、75℃以下で安定
    (8)金属イオンによる活性化
    Mn 2+ 又はMg 2+ イオンにより活性化される。
  2. リゾビウム属に属する微生物が、リゾビウム・レグミノサラム(Rhizobium leguminosarum)、リゾビウム・フレディ(Rhizobium fredii)及びリゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)のいずれかである請求項1記載のケトース3−エピメラーゼ。
  3. 配列表における配列番号1で示されるアミノ酸配列をN末端アミノ酸配列として有する請求項1又は2記載のケトース3−エピメラーゼ。
  4. 配列表における配列番号2で示されるアミノ酸配列か、配列表における配列番号2で示されるアミノ酸配列において、酵素の活性を保持する範囲で1個以上10個未満のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加したアミノ酸配列を有する請求項1乃至3のいずれかに記載のケトース3−エピメラーゼ。
  5. 請求項4記載のケトース3−エピメラーゼをコードするDNA。
  6. 配列表における配列番号3で示される塩基配列か、又は配列表における配列番号3で示される塩基配列において、コードする酵素の活性を保持する範囲で1個以上30個未満の塩基が欠失、置換若しくは付加した塩基配列、又はそれらに相補的な塩基配列を有する請求項5記載のDNA。
  7. 遺伝子コードの縮重に基づき、コードするアミノ酸配列を変えることなく、塩基配列における塩基の1個以上30個未満を他の塩基で置換した請求項5又は6記載のDNA。
  8. 請求項5乃至7のいずれかに記載のDNAと、自律複製可能なベクターを含んでなる組換えDNA。
  9. 請求項8記載の組換えDNAを適宜の宿主に導入してなる形質転換微生物
  10. リゾビウム属に属し、ケトース3−エピメラーゼ産生能を有する微生物を、栄養培地で培養して請求項1乃至4のいずれかに記載のケトース3−エピメラーゼを生成せしめ、これを採取することを特徴とするケトース3−エピメラーゼの製造方法。
  11. 請求項9記載の形質転換微生物を培養し、培養物から組換え型ケトース3−エピメラーゼを採取することを特徴とする組換え型ケトース3−エピメラーゼの製造方法。
  12. D−又はL−ケトヘキソース及びD−又はL−ケトペントースから選ばれる1種以上のケトースを含有する溶液に、リゾビウム(Rhizobium)属微生物に由来し、下記の基質特異性を有するケトース3−エピメラーゼを作用させて、該ケトースの3位をエピマー化することを特徴とするケトースの変換方法;
    (1)D−又はL−ケトヘキソースの3位をエピマー化し、対応するD−又はL−ケトヘキソースを生成する。D−又はL−ケトペントースの3位をエピマー化し、対応するD−又はL−ケトペントースを生成する;
    (2)D−又はL−ケトヘキソース及びD−又はL−ケトペントースの中ではD−フラクトース及びD−プシコースに対する基質特異性が最も高い。
  13. D−又はL−ケトヘキソース及びD−又はL−ケトペントースから選ばれる1種以上のケトースを含有する溶液に、リゾビウム(Rhizobium)属微生物に由来し、下記の基質特異性を有するケトース3−エピメラーゼを作用させて該ケトースの3位をエピマー化し、対応するケトースを生成せしめ、これを採取することを特徴とするケトースの製造方法;
    (1)D−又はL−ケトヘキソースの3位をエピマー化し、対応するD−又はL−ケトヘキソースを生成する。D−又はL−ケトペントースの3位をエピマー化し、対応するD−又はL−ケトペントースを生成する;
    (2)D−又はL−ケトヘキソース及びD−又はL−ケトペントースの中ではD−フラクトース及びD−プシコースに対する基質特異性が最も高い。
  14. ケトースを採取する方法が、塩型強酸性カチオン交換樹脂を用いるカラムクロマトグラフィーによりケトースを採取する方法であることを特徴とする請求項13記載のケトースの製造方法。
JP2007545197A 2005-11-15 2006-11-06 ケトース3−エピメラーゼとその製造方法並びに用途 Expired - Fee Related JP5098086B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007545197A JP5098086B2 (ja) 2005-11-15 2006-11-06 ケトース3−エピメラーゼとその製造方法並びに用途

Applications Claiming Priority (6)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005329683 2005-11-15
JP2005329683 2005-11-15
JP2006194037 2006-07-14
JP2006194037 2006-07-14
PCT/JP2006/322105 WO2007058086A1 (ja) 2005-11-15 2006-11-06 ケトース3-エピメラーゼとその製造方法並びに用途
JP2007545197A JP5098086B2 (ja) 2005-11-15 2006-11-06 ケトース3−エピメラーゼとその製造方法並びに用途

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2007058086A1 JPWO2007058086A1 (ja) 2009-04-30
JP5098086B2 true JP5098086B2 (ja) 2012-12-12

Family

ID=38048475

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007545197A Expired - Fee Related JP5098086B2 (ja) 2005-11-15 2006-11-06 ケトース3−エピメラーゼとその製造方法並びに用途

Country Status (5)

Country Link
US (2) US8008058B2 (ja)
EP (1) EP1956088B1 (ja)
JP (1) JP5098086B2 (ja)
KR (1) KR101339443B1 (ja)
WO (1) WO2007058086A1 (ja)

Families Citing this family (27)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR101556988B1 (ko) * 2006-11-20 2015-10-02 고쿠리츠다이가쿠호우징 카가와다이가쿠 데옥시케토헥소스 아이소머라제 및 그것을 이용한 데옥시케토헥소스 및 그 유도체의 제조 방법
US20120040407A1 (en) 2009-02-05 2012-02-16 Kabushiki Kaisha Hayashibara Seibutsu Kagaku Kenkyujo Cellobiose 2-epimerase, its preparation and uses
KR20110035805A (ko) * 2009-09-30 2011-04-06 씨제이제일제당 (주) 사이코스-에피머화 효소의 고정화 및 이를 이용한 사이코스의 제조방법
US9057062B2 (en) 2011-07-06 2015-06-16 Matsutani Chemical Industry Co., Ltd. Enzyme produced by Arthrobacter globiformis
GB2583417B (en) 2012-09-27 2021-03-31 Tate & Lyle Ingredients Americas Llc A protein
EP2918677B1 (en) 2012-10-30 2020-12-09 Matsutani Chemical Industry Co., Ltd. Method for producing d-allose
KR102132381B1 (ko) * 2013-01-08 2020-07-09 마쓰다니가가꾸고오교가부시끼가이샤 아스로박터 글로비포미스에 의해 생산되는 케토오스 3-에피머라제
GB201309079D0 (en) 2013-03-15 2013-07-03 Tate & Lyle Ingredients Improved sweetner
GB201309077D0 (en) 2013-03-15 2013-07-03 Tate & Lyle Ingredients Improved sweetener
GB201309076D0 (en) 2013-03-15 2013-07-03 Tate & Lyle Ingredients Improved sweetener
WO2015032761A1 (en) 2013-09-03 2015-03-12 Roquette Freres Improved variant of d-psicose 3-epimerase and uses thereof
EP2843044A1 (en) 2013-09-03 2015-03-04 Roquette Frères Improved variant of D-psicose 3-epimerase and uses thereof
KR101868194B1 (ko) 2013-11-19 2018-06-18 씨제이제일제당 (주) 호열균 유래 당 에피머화효소를 포함하는, 비인산헥소오스의 에피머화용 조성물
KR101539097B1 (ko) * 2013-12-26 2015-07-23 주식회사 삼양제넥스 사이코스 에피머화 효소를 암호화 하는 폴리뉴클레오타이드, 및 이를 이용하는 사이코스 생산방법
GB2526383B (en) 2014-05-20 2018-01-31 Tate & Lyle Ingredients Americas Llc Improved sweetener
KR101473918B1 (ko) 2014-05-28 2014-12-17 대상 주식회사 사이코스 에피머화 효소, 이의 제조방법 및 이를 이용한 사이코스의 제조방법
BR112017001192B1 (pt) 2014-07-21 2021-11-30 Roquette Freres Alulose, uso de alulose, processo para a fabricação de alulose, composição diretamente compressível e comprimido que compreende a dita alulose e método para a fabricação de um comprimido
EP3261455B8 (en) 2015-02-24 2022-02-16 Tate & Lyle Ingredients Americas LLC Allulose syrups
US20180077958A1 (en) * 2015-03-26 2018-03-22 Matsutani Chemical Industry Co., Ltd. Method for manufacturing allulose-containing sweetener composition
KR101785300B1 (ko) * 2015-12-23 2017-11-15 대상 주식회사 미생물 균체 고정화 장치 및 이를 이용한 미생물 균체 고정화 방법
RU2727845C1 (ru) * 2016-11-16 2020-07-24 СиДжей ЧеилДжеданг Корпорейшн Способ получения D-псикозы с использованием микроорганизма рода kaistia
EP3543336A4 (en) * 2016-11-16 2020-06-17 Cj Cheiljedang Corporation Novel D-PSICOSE-3-EPIMERASE AND METHOD FOR PRODUCING D-PSICOSE USING THEREOF
KR101965509B1 (ko) 2017-11-15 2019-04-03 씨제이제일제당 (주) 신규한 d-사이코스 3-에피머화 효소 및 이를 이용한 d-사이코스의 제조 방법
KR102254411B1 (ko) 2019-12-19 2021-05-24 대상 주식회사 알룰로스 에피머화 효소 변이체, 이의 제조방법 및 이를 이용한 알룰로스의 제조방법
KR102448351B1 (ko) 2020-04-27 2022-09-28 대상 주식회사 알룰로스 에피머화 효소 변이체, 이의 제조방법 및 이를 이용한 알룰로스의 제조방법
WO2022058754A1 (en) 2020-09-18 2022-03-24 Tate & Lyle Ingredients Americas Llc Sweetener syrups containing allulose
KR20230073739A (ko) 2021-11-19 2023-05-26 대상 주식회사 열 안정성이 우수한 알룰로스 에피머화 효소 변이체, 이의 제조방법 및 이를 이용한 알룰로스의 제조방법

Family Cites Families (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4473980B2 (ja) 1999-06-24 2010-06-02 株式会社林原生物化学研究所 糖質複合体結晶とその製造方法
JP5421512B2 (ja) 2004-01-30 2014-02-19 帝國製薬株式会社 D−プシコースの血糖上昇抑制効果の利用

Also Published As

Publication number Publication date
KR101339443B1 (ko) 2013-12-06
EP1956088A1 (en) 2008-08-13
US8216818B2 (en) 2012-07-10
EP1956088B1 (en) 2013-10-23
WO2007058086A1 (ja) 2007-05-24
US20110275138A1 (en) 2011-11-10
JPWO2007058086A1 (ja) 2009-04-30
US8008058B2 (en) 2011-08-30
US20100129865A1 (en) 2010-05-27
KR20080071176A (ko) 2008-08-01
EP1956088A4 (en) 2009-10-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5098086B2 (ja) ケトース3−エピメラーゼとその製造方法並びに用途
EP1885850B1 (en) D-psicose production method by d-psicose epimerase
JP5848834B2 (ja) アルスロバクターグロビホルミスの生産するケトース3−エピメラーゼ
Jørgensen et al. Enzymatic conversion of D-galactose to D-tagatose: heterologous expression and characterisation of a thermostable L-arabinose isomerase from Thermoanaerobacter mathranii
JP5997693B2 (ja) アルスロバクターグロビホルミスの生産する酵素
JP5677097B2 (ja) セロビオース2−エピメラーゼとその製造方法並びに用途
Poonperm et al. Cloning, sequencing, overexpression and characterization of L-rhamnose isomerase from Bacillus pallidus Y25 for rare sugar production
EP1257638B1 (en) Bacterial isolates of the genus klebsiella, and an isomaltulose synthase gene isolated therefrom
EP2843044A1 (en) Improved variant of D-psicose 3-epimerase and uses thereof
JP5714241B2 (ja) α−グルコシダーゼとその製造方法並びに用途
WO2022114207A1 (ja) 新規l-ラムノースイソメラーゼ
KR20170117860A (ko) 딕토글로무스 투르기둠 유래 프락토스 에피머화효소를 이용하는 타가토스의 생산 방법 및 그에 필요한 조성물
JP3557276B2 (ja) 酵素をコードするdnaとそれを含む組換えdna並びに形質転換体
JP2010148502A (ja) β−ホスホグルコムターゼとその製造方法並びに用途
JP3557271B2 (ja) 酵素をコードするdnaとそれを含む組換えdna並びに形質転換体
WO2004007738A1 (en) Optimization method for preparation of tagatose by thermostable isomerase isomerase
KR20230115919A (ko) 원-팟 d-알로스 생산용 조성물 및 이를 이용한 알로스의 제조방법
JP2005304306A (ja) 新規な糖質酸化酵素

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090928

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120228

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120425

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120828

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20120903

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120905

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20151005

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5098086

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees