JP5675734B2 - 除染廃液処理方法 - Google Patents
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Description
ここで、除染対象物となる原子力プラントの配管等の部材は、鉄を多く含むステンレス鋼だけでなく、ニッケルをベースとするインコネル等のニッケル基合金も多く使用されており、これらの複数の材料で形成された複数の部材から構成されている。シュウ酸を用いた化学除染では、除染対象物がこれらのような部材のようにニッケルを多く含むと、酸化被膜から鉄を還元溶出するためのシュウ酸と、部材中に含まれるニッケルとが反応してシュウ酸ニッケルを生成し、ステンレス鋼の表面に析出し、ステンレス鋼に付着した酸化被膜とシュウ酸との反応を阻害してしまう。そのため、次第に還元溶出の効率が低下してしまい、除染対象物を十分に除染できなくなってしまう。そこで、ピコリン酸などの窒素を含む有機酸を添加することで、ニッケルの溶解を促進させて、除染性能を維持し改善する方法がある。
本発明の一態様に係る除染廃液処理方法は、シュウ酸、窒素を含む有機酸、及び、該有機酸によって除染対象物から溶出させたニッケルを含む処理水を、前記シュウ酸の分解開始温度以上、前記窒素を含む有機酸の分解開始温度以下の温度で、前記処理水を加熱することで少なくともシュウ酸を分解する分解工程と、該分解工程の後に、カチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂によって前記処理水中の前記窒素を含む有機酸及び前記ニッケルを除去する除去工程と、を備えることを特徴とする。
まず、本実施形態の対象となる除染対象物Zについて説明する。
本実施形態の対象となる除染対象物Zは、原子力プラントを構成する配管、容器、各種機器等の部品であって、炉水が接触する部品である。
即ち、酸化工程S10は、処理水Wに酸化剤として過マンガン酸を添加し、除染対象物Z内部に酸化剤を添加した処理水Wを供給し循環させる。除染対象物Z内部に酸化剤を添加した処理水Wを循環させることで、除染対象物Zである酸化被膜中のクロムがCr6+として酸化溶出し、この放射性核種であるクロムを含有する一次処理水W10が生成される。
なお、酸化剤として用いられるものは過マンガン酸に限定されるものではない。例えば、オゾンや過マンガン酸カリウムなど、クロムを酸化溶出できる添加剤であれば良い。
また、過マンガン酸の添加量については、除染対象となる原子力発電プラントPの規模に応じて適宜決定すれば良い。
即ち、還元工程S20は、酸化工程S10を実施後の一次処理水W10に還元剤として、シュウ酸及びピコリン酸を添加し、除染対象物Z内部にこれらの還元剤を添加した一次処理水W10を供給し循環させる。そして、還元工程S20は、加圧ポンプによって加圧し、除染対象物Zを加熱して一次処理水W10を高温にして実施する。加熱温度は80℃から100℃に設定することが好ましく、90℃に設定することがより好ましい。
除染対象物Z内部に還元剤を添加した一次処理水W10を循環させることで、ステンレス鋼に付着する酸化被膜中の鉄がシュウ酸によって還元溶出する。この際の化学式は、以下(1)式で表すことができる。
即ち、分解工程S30は、還元工程S20を実施後の二次処理水W20を加圧ポンプで加圧して加熱することで実施する。加熱温度はシュウ酸の分解開始温度と分解終了温度とを加味し、110℃に設定され、24時間にわたって連続して加熱を行いながら、除染対象物Z内部に加熱された二次処理水W20を供給し循環させる。
ここで、分解開始温度とは、添加物が溶液中から顕著に分解を開始する温度であり、例えば、シュウ酸の場合は、昇温速度を55℃/時間としたときに2000ppmのシュウ酸のうち5%以上の分解が見られた温度である110℃となる。一方、分解終了温度とは、添加物が溶液中で分解を終了し検出できなくなる温度であり、例えば、昇温速度を55℃/時間としたときに2000ppmのシュウ酸のうちすべてが分解され検出できなくなる温度である280℃である。
二次処理水W20は、加熱されることによって、二次処理水W20に含まれるシュウ酸が熱分解される。この際の化学反応式は、以下(4)式で表すことができる。
2C2H2O4+O2→4CO2+2H2O・・・(式4)
加熱温度である110℃は、表1に示すようにピコリン酸の分解開始温度よりも低い温度であり、ピコリン酸はほとんど分解されずに二次処理水W20中に残留する。これにより、二次処理水W20からシュウ酸の多くが除去された三次処理水W30が生成される。
即ち、除去工程S40では、イオン交換樹脂であるカチオン交換樹脂を用いて、三次処理水W30中に含有されているクロム、鉄、ニッケルの放射性核種を除去する。また、同時に、イオン交換樹脂であるアニオン交換樹脂を用いて、三次処理水W30中に残留する放射性核種で汚染された過マンガン酸、ピコリン酸などを除去して、三次処理水W30を除染する。除染された三次処理水W30は次サイクル以降再び処理水Wとして使用される。
上記のような除染廃液処理方法によれば、シュウ酸のみが顕著に分解を開始し始める分解開始温度以上である110℃で24時間にわたって加熱しながら分解工程S30を実施することで、二次処理水W20中のシュウ酸のうち80%程度を炭素と水とに熱分解し、処理水W中の大部分のシュウ酸を除去した三次処理水W30を生成することができる。三次処理水W30をアニオン交換樹脂で除去することで、アニオン交換樹脂で除去するシュウ酸がほとんどないため、シュウ酸を分解しない場合と比較して、アニオン樹脂の使用量を約40%程度低減できる。
また、加熱温度がピコリン酸の分解開始温度である170〜190℃に達していないことからほとんど分解されず、ピコリン酸等の窒素を含む有機酸が熱分解されることによって生じるアンモニアもほとんど発生しない。通常、アンモニアはカチオン交換樹脂でなければ除去できないために、除染廃液において放射性核種であるクロムやニッケルと共にカチオン交換樹脂で除去されてしまい、高線量の二次廃棄物となってしまう。しかし、ピコリン酸自体はアニオン交換樹脂で除去が可能なため、ピコリン酸を熱分解せずに化学除染を行うことで、高線量であるカチオン交換樹脂の使用量を増加させない。
ピコリン酸を分解せずにシュウ酸のみを分解することで、高線量であるカチオン交換樹脂による二次廃棄物を増加させずに、低線量であるアニオン交換樹脂による二次廃棄物の使用量を低減することができ、除染に使用され二次廃棄物となるイオン交換樹脂の使用量を大きく低減することが可能となる。
さらに、シュウ酸とピコリン酸を使用して化学除染を実施することで、ステンレス鋼やニッケル基合金を含む除染対象物Zへの除染性能を向上することができる。
第二実施形態においては第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を伏して詳細な説明を省略する。この第二実施形態の除染廃液処理方法は、分解工程S30の後に酸素濃度上昇工程S50と、さらに再分解工程S31を実施する点について第一実施形態と相違する。
再分解工程S31では、酸素濃度を上昇させた高酸素濃度処理水W50を再び加圧ポンプで加圧して加熱することで実施する。加熱温度は、分解工程S30と同様に110℃に設定され、24時間にわたって連続して加熱を行いながら、除染対象物Z内部に加熱された高酸素濃度処理水W50を供給し循環させる。高酸素濃度処理水W50は、加熱されることによってシュウ酸の熱分解が再度行われる。これにより、高酸素濃度処理水W50からシュウ酸のさらに多くが除去されたシュウ酸除去処理水W31が生成される。
第三実施形態においては第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を伏して詳細な説明を省略する。この第三実施形態の除染廃液処理方法は、酸化工程S10と除去工程S40の間に実施する工程が、還元工程S20と分解工程S30ではなく、シュウ酸のみを添加して行うシュウ酸還元工程S21と、シュウ酸を熱分解するシュウ酸分解工程S32と、ピコリン酸を添加して行う有機酸還元工程S22である点について第一実施形態と相違する。
なお、ニッケルとシュウ酸とが反応し、シュウ酸ニッケルが溶出するのを防止するため.に、還元剤として添加するシュウ酸は2000ppmが必要な除染対象物Zの場合で、200ppm程度と添加量を少量にして実施することが好ましい。
なお、シュウ酸分解工程S32ではピコリン酸が含まれていないため、シュウ酸の分解開始温度である約110℃以上であれば、化学除染を行う設備で対応可能な温度内であれば設定することができる。その際、加熱時間は、24時間であってもよく、加熱温度やシュウ酸の添加量に合わせてシュウ酸が充分に分解する時間に設定されれば良い。
第四実施形態においては第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を伏して詳細な説明を省略する。この第四実施形態の除染廃液処理方法は、還元工程S20と除去工程S40の間に実施する工程が、放射性核種を除去する放射性核種除去工程S41と、その後シュウ酸とピコリン酸を同時に熱分解するシュウ酸有機酸分解工程S33とである点について第一実施形態と相違する。
シュウ酸有機酸分解工程S33は、放射性核種除去工程S41を実施後に、シュウ酸とピコリン酸がとも熱分解を開始する180℃で24時間にわたって加熱して加熱する。これにより、シュウ酸とピコリン酸が除去され、アンモニアが含有するシュウ酸有機酸除去水W33が生成される。
また、本実施形態で使用される窒素を含む有機酸はピコリン酸に限定されるものではなく、例えばEDTAやアスパラギン酸などが使用できる。その際、分解開始温度や分解終了温度が使用する有機酸ごとに若干異なるため、使用される有機酸によって適宜選択する必要ある。一般的に、窒素を含む有機酸が脱炭酸を起こさない温度である170〜200℃付近に分解開始温度があり、同様に220〜250℃付近に分解終了温度がある。例えば、EDTAの場合、前述の表1に示すように、昇温速度を55℃/時間としたときに、分解開始温度が170〜190℃、分解終了温度が220〜240℃である。
Claims (5)
- シュウ酸、窒素を含む有機酸、及び、該有機酸によって除染対象物から溶出させたニッケルを含む処理水を、前記シュウ酸の分解開始温度以上、前記窒素を含む有機酸の分解開始温度以下の温度で、前記処理水を加熱することで少なくともシュウ酸を分解する分解工程と、
該分解工程の後に、カチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂によって前記処理水中の前記窒素を含む有機酸及び前記ニッケルを除去する除去工程と、
を備えることを特徴とする除染廃液処理方法。 - 前記窒素を含む有機酸が、ピコリン酸であることを特徴とする請求項1に記載の除染廃液処理方法。
- 前記分解工程の後に、
前記処理水中の酸素濃度を上昇させる酸素濃度上昇工程と、
前記酸素濃度上昇工程の後に前記処理水を再び加熱し前記処理水中の前記シュウ酸を分解する再分解工程とを備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の除染廃液処理方法。 - シュウ酸を処理水に添加し、除染対象物に付着する鉄を還元溶出させるシュウ酸還元工程と、
前記シュウ酸還元工程の後、シュウ酸の分解開始温度以上で、前記処理水を加熱して前記シュウ酸を分解するシュウ酸分解工程と、
前記シュウ酸分解工程の後に、窒素を含む有機酸を前記処理水に添加して、前記除染対象物に付着するニッケルの還元溶出を行う有機酸還元工程と、
該有機酸還元工程の後に、カチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂によって前記処理水中の前記窒素を含む有機酸及び前記ニッケルを除去する除去工程と、を備えることを特徴とする除染廃液処理方法。 - シュウ酸、窒素を含む有機酸、及び、該有機酸によって除染対象物から溶出させたニッケルを含む処理水を、
カチオン交換樹脂に通水することで、放射性核種を除去する放射性核種除去工程と、
前記放射性核種除去工程の後で、前記処理水を加熱することで前記シュウ酸及び前記窒素を含む有機酸を分解する分解工程と、
前記分解工程の後に、カチオン交換樹脂を通水させることで、前記窒素を含む有機酸から発生したアンモニアを除去する除去工程と、
を備えることを特徴とする除染廃液処理方法。
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