JP5675081B2 - 翼体及びこの翼体を備えたガスタービン - Google Patents

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Description

この発明は、ガスタービンをはじめとするタービンや翼体を備えた回転機械に用いられる翼体及びこの翼体を備えたガスタービンに関するものである。
周知のように、例えば、ガスタービンに用いる翼体(例えば、タービン静翼、タービン動翼)は、高温燃焼ガスに晒されるため、翼体の基端部に冷却空気を導き、その冷却空気を翼体内の冷却空気用通路に通じることにより翼体を冷却するようになっている。
このような翼体では、充分な肉厚を確保する必要があるものの、翼体の後縁部近傍は翼体本体の厚さが薄くなって充分な肉厚を確保することが難しく、後縁部近傍は中央側よりも相対的に高温となりやすいため、翼体の後縁部近傍の内部に冷却用のピンフィンを設けて冷却する場合がある。(例えば、特許文献1参照。)。
図5は、ピンフィンを有するタービン静翼10の一例を示す図であり、図5(A)は翼高さ方向に直交する断面図を、図5(B)は、図5(A)において矢視Sで示したタービン静翼表面のフィルム冷却孔とインサート表面のインピジメント孔(破線)の概略を示している。なお、翼高さ方向とは、タービン静翼が延在する方向をいい、タービンケーシング内に立設された翼体がロータの回転軸に向かう方向とほぼ一致する。
タービン静翼10は、翼体本体20とインサート30とを備えており、翼体本体20は、翼高さ方向と直交する断面が、図5(A)に示すように外面凹面状とされた腹側壁部21と外面凸面状とされた背側壁部22とが、前縁部23aと後縁部23bで接続されるとともに内部に中空部24が形成された翼型とされている。
また、翼体本体20の後縁部23b近傍には、腹側壁部21と背側壁部22とを接続する複数のピンフィン28が形成されており、これらピンフィン28は、冷却空気Aが腹側壁部21と背側壁部22の間に形成される後縁部冷却領域29を通過することにより冷却されるようになっている。
インサート30は、例えば、中空部24を2つの仕切板25により区画した3つのキャビティC1、C2、C3のそれぞれに配置されており、インサート30内部の流路31に導かれた冷却空気Aが、インサート30のインピンジメント孔32から腹側壁部21、背側壁部22の内面に噴射され、その後、タービン静翼10のフィルム冷却孔26及びタービン静翼10の後縁部23bの通気孔27から流出し、通気孔27から流出する冷却空気Aが後縁部冷却領域29を通過する際にピンフィン28を冷却し、ひいては翼体本体20の後縁部23b近傍を冷却するようになっている。
特開2000−356104号公報
しかしながら、タービン静翼をはじめとする翼体の翼体本体を鋳造する際には、中空部を中子を用いて成形するため、中子の破損を防止するために中子の肉厚を厚くすると、後縁部冷却領域の冷却空気通路が大きくなり、ピンフィンが大量の冷却空気によって冷却されてピンフィンが過冷却となる。
ピンフィンの過冷却によって、翼体本体の温度分布がアンバランスになり熱応力や熱変形が生じるとともに、冷却空気の流量が過剰となりガスタービン全体の性能、熱効率が低下するという問題がある。
また、冷却空気流量を低減するためにインピンジメント孔の数や開口面積を低減させると、局所的なホットスポットが生じてしまうという問題がある。
そこで、ピンフィンの過冷却を抑制するとともにガスタービンの性能、熱効率を向上させるために、ピンフィンを効率的に冷却させたいという強い技術的要請がある。
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、翼体本体内におけるピンフィンの冷却効率を適正化させて、ピンフィンの過冷却及び翼体の後縁部近傍における温度分布のバラつきを抑制し、ひいてはガスタービンの性能、効率を向上することを目的とする。
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
請求項1に記載の発明は、翼高さ方向に延在するとともに、前記翼高さ方向と直交する断面において外面凹面状とされた腹側壁部と外面凸面状とされた背側壁部とが前縁部と後縁部で接続されるとともに内部に中空部が形成された翼型とされた翼体本体と、前記中空部に、前記腹側壁部の内面及び前記背側壁部の内面との間に冷却空間をあけて配置され、内部の流路から前記腹側壁部の内面及び前記背側壁部の内面の少なくともいずれかに向けて冷却空気を噴射する複数の第1のインピンジメント孔が形成されたインサートと、を備え、前記中空部の後縁部近傍に設けられたピンフィンが、後縁部冷却領域において前記第1のインピンジメント孔から噴射された冷却空気によって冷却される翼体であって、前記インサート内に、前記流路から前記第1のインピンジメント孔に流れる冷却空気の流量を調整することによって第2のインピンジメント孔に流れる冷却空気の流量を調整するインサート内流量調整板が設けられ、前記第1のインピンジメント孔から噴射された冷却空気を、第2のインピンジメント孔を通じて噴射して、前記後縁部冷却領域を冷却するように構成されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の翼体であって、前記翼体本体は、前記後縁部近傍に外部に連通する通気孔が形成されることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の翼体であって、前記翼体本体は、前記腹側壁部と前記背側壁部の少なくともいずれかに複数のフィルム冷却孔が設けられていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の翼体であって、前記翼体本体は、前記第2のインピンジメント孔が形成された冷却調整部材を有し、前記第2のインピンジメント孔は冷却空気を前記腹側壁部の内面及び前記背側壁部の内面の少なくともいずれかに向けて噴射することを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項1に記載の翼体であって、前記インサート内流量調整板は、前記インサートに前縁部側と後縁部側の二つの区画を形成するとともに、前記第2のインピンジメント孔は、前記第1のインピンジメント孔の後縁部側に形成されて前記腹側壁部の内面及び前記背側壁部の内面の少なくともいずれかに向けて噴射することを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、ガスタービンであって、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の翼体を備えることを特徴とする。
この発明に係る翼体及びガスタービンによれば、第1のインピンジメント孔から腹側壁部の内面及び背側壁部の内面の少なくともいずれかに噴射されて翼体本体を冷却した冷却空気が、冷却調整部材に形成された第2のインピンジメント孔を通じて腹側壁部の内面及び背側壁部の内面の少なくともいずれかに再度噴射されて翼体本体を冷却してから後縁部冷却領域に流れるので、少量の冷却空気を使いまわすことによって冷却空気流量を低減させてガスタービンの性能、熱効率を向上させることができる。また、ピンフィンの過冷却が抑制されて翼体に生じる温度分布のバラつきが小さくなるとともに、インピンジメント孔のピッチを密にできるので局所的なホットスポットを防止することができる。
また、インサート内流量調整板によって、インサート内の流路から第1のインピンジメント孔に流れる冷却空気の流量や圧力を調整できるので、第1のインピンジメント孔から噴射され第2のインピンジメント孔に流入する冷却空気の流量や圧力を容易かつ適切に調整することができる。また、インサートの剛性をさらに高めることができる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の翼体であって、前記インサート内流量調整板は、前記インサートを前縁部側と後縁部側の二つの区画を形成することを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の翼体であって、前記後縁部側の区画を流れてきた冷却空気は、一部が前記後縁部側の区画に形成されたインピンジメント孔から噴射され、残りは前記第1のインピンジメント孔から噴射されることを特徴とする。
この発明に係る翼体によれば、インサートの剛性を向上させることができる。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の翼体であって、前記冷却調整部材は、前記腹側壁部と前記背側壁部の少なくともいずれかとの間に、前記後縁部冷却領域と連通する壁部冷却路をあけて形成されていることを特徴とする。
この発明に係る翼体によれば、第2のインピンジメント孔を通じて壁部冷却路に流入する冷却空気が、腹側壁部と背側壁部の少なくともいずれかとの間に形成された壁部冷却路に沿って流れるので、冷却空気を腹側壁部や背側壁部に対応する温度に安定して上昇させることができる。その結果、ピンフィンの過冷却の抑制及びガスタービンの性能、熱効率を向上させることができる。なお、壁部冷却路を背側壁部の側に形成した場合、翼体本体の周囲との圧力差を確保して冷却空気の排出を容易に行なうことができる点で、より好適である。
請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の翼体であって、前記第2のインピンジメント孔は、前記第1のインピンジメント孔よりも後縁部側に配置されていることを特徴とする。
この発明に係る翼体によれば、第2のインピンジメント孔が、第1のインピンジメント孔よりも後縁部側に配置されているので、第1のインピンジメント孔から噴射された冷却空気が第2のインピンジメント孔を介して後縁部冷却領域に至るまでの経路を長く確保することが可能となり、その結果、壁部冷却路に流通する冷却空気の温度を効率的に上昇させることができる。
請求項10に記載の発明は、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の翼体であって、前記第1のインピンジメント孔から前記第2のインピンジメント孔に流れる冷却空気の流量を調整するインピンジメント流量調整板が設けられていることを特徴とする。
この発明に係る翼体によれば、インピンジメント流量調整板によって、第1のインピンジメント孔から第2のインピンジメント孔に流れる冷却空気の流量や圧力を調整できるので、ピンフィンを有する後縁部冷却領域に流れる冷却空気の流量や圧力を容易に調整することができる。また、インサート及び冷却調整部材の剛性を高めることができる。
本発明に係る翼体及びガスタービンによれば、ピンフィンの過冷却及びこれに起因する翼体の後縁部近傍における温度分布のバラつきを抑制するとともに、冷却空気の流量が過剰となることを抑制してガスタービンの性能、熱効率を向上することができる。
本発明の参考例に係るガスタービンの概略構成を示す縦断面図である。 参考例に係るガスタービンの要部拡大断面図である。 参考例態に係るタービン静翼の要部拡大断面図であり、図2におけるI−I断面を示す図である。 本発明の一実施形態に係るタービン静翼の要部拡大断面図であり、(A)は、図2におけるI−I断面を示す図であり、(B)は、インピンジメント流量調整板またはインサート内流量調整の一例を示す図であり、図4(A)におけるX-X線又はY-Y線断面を示す図である。 従来の翼体の一例を示す図であり、(A)は翼高さ方向と直交する断面を、(B)は(A)におけるS-S矢視した場合のフィルム冷却孔とインピンジメント孔の概略を示す図である。
以下、図1から図4を参照し、本発明の参考例について説明する。
参考例
図1は、本発明の参考例に係るガスタービン1の概略構成を示す縦断面図である。
ガスタービン1は、図1に示すように、圧縮空気cを生成する圧縮機2と、圧縮機2から供給される圧縮空気cに燃料を供給して作動流体である燃焼ガスG1を生成する複数の燃焼器3と、一組一段となったタービン静翼(翼体)10及びタービン動翼6を四段有し、燃焼器3から供給される燃焼ガスG1により回転動力を発生させるタービン4とを備えている。
また、ガスタービン1には、軸線方向Dに延びるロータ7が、圧縮機2からタービン4まで一体的に取り付けられており、このロータ7は、一端が圧縮機2の上流側に設けられた軸受部7aによって軸線O回りであるタービン4の周方向Rに回転可能に支持されると共に、他端がタービン4の下流側に設けられた軸受部7bによってタービン4の周方向Rに回転可能に支持されている。以下、ロータ7の軸線方向Dにおいて圧縮機2側を前側とし、タービン4側を後側とする。
圧縮機2は、空気を取り込む空気取入口2aを前側に配設した圧縮機ケーシング2bと、この圧縮機ケーシング2b内に配設された複数の圧縮機静翼2c及び複数の圧縮機動翼2dとを備えている。圧縮機静翼2cは、それぞれ圧縮機ケーシング2bの内周面に固定されると共にロータ7側に向けて延設され、タービン4の周方向Rに互いに等しい間隔をあけて配列している。また、圧縮機動翼2dは、ロータ7の外周面に固定されると共に圧縮機ケーシング2bの内周面に向けて延設され、タービン4の周方向Rに互いに等しい間隔をあけて配列している。そして、これら圧縮機静翼2cと圧縮機動翼2dとは、軸線方向Dに沿って交互になるように多段に配置されている。
燃焼器3は、内部に図示しないバーナを有する内筒3aと、圧縮機2から供給される圧縮空気cを内筒3aに導く外筒3bと、内筒3aに燃料を供給する図示しない燃料噴射器と、内筒3aからの燃焼ガスG1をタービン4に導く尾筒3cとを備えている。複数の燃焼器3は、タービン4の周方向Rに配置されると共に、前端部が圧縮機ケーシング2bの後端部に連結された燃焼器ケーシング3dの内部に配設されている。
タービン4は、前端部が燃焼器ケーシング3dの後端部に連結されたタービンケーシング5と、タービンケーシング5内に軸方向に交互に四段に配設されたタービン静翼10及びタービン動翼6とを備えている。
各段のタービン静翼10は、周方向Rに環状に等しい間隔をあけて配列され、それぞれタービンケーシング5側に固定されると共にロータ7側に向けて放射状に複数延設されている。同様に、各段のタービン動翼6も、周方向Rに環状に等しい間隔をあけて配列され、ロータ7側に固定されると共にタービンケーシング5側に向けて放射状に延設されている。
このタービン4のタービンケーシング5の後端部には、後側に向けて開口した排気室8が連結されている。この排気室8には、タービン静翼10及びタービン動翼6を通過した燃焼ガスG1の動圧を静圧に変換する排気ディフューザ8aが備えられている。
以上のように構成されたガスタービン1においては、まず、圧縮機2の空気取入口2aから取り込まれた空気が、多段に配置された圧縮機静翼2c及び圧縮機動翼2dを通過して圧縮空気cが生成される。次いで、燃焼器3にて、前述したように圧縮空気cに燃料を供給して燃焼させることにより燃焼ガスG1が生成され、この燃焼ガスG1がタービン4に導かれる。そして、この燃焼ガスG1がタービン静翼10及びタービン動翼6が配列する範囲を燃焼ガス流路として通過することでロータ7が回転駆動される。そして、ロータ7を回転駆動した後の排気ガスは、排気室8の排気ディフューザ8aで静圧に変換された後、大気に放出される。
図2は、ガスタービン1の要部拡大断面図である。
図2に示すように、ロータ7は、その外周に第1段〜第4段のタービン動翼6A〜6Dを固定するロータディスク7A〜7Dを備えている。そして、この第1段のロータディスク7Aの上流側には、シールディスク11が同軸に接続されている。このシールディスク11には、上流側からの圧縮空気cの一部を、各タービン動翼6A〜6Dに向かって供給するために貫通したディスクホール11aが、その軸線を中心として互いに等角度間隔をおいて複数形成されている。なお、図2における符号Hは、タービン動翼6Dをロータ7に立設した場合のロータの径方向の高さを示しており、この方向を翼方向高さという。
また、第1段のロータディスク7Aには、各ディスクホール11aを通って流れ込んできた圧縮空気cのうち一部を取り込んで、各タービン動翼6Aの内部に導くラジアルホール7A1が、互いに等角度間隔をおいて複数形成されている。さらに、ロータディスク7Aには、残りの圧縮空気cを第2段に向かって供給するためのディスクホール7A2が、互いに等角度間隔をおいて複数形成されている。
ロータディスク7Aと同様に、各ロータディスク7B,7Cのそれぞれにも、ラジアルホール7B1,7C1と、ディスクホール7B2,7C2がそれぞれ複数形成されている。ロータディスク7Dには、ラジアルホール7D1のみが複数形成されている。
また、タービンケーシング5には、各タービン静翼10に対応して圧縮空気流路12が形成されており、図示しない圧縮空気流路を経由して圧縮機2で圧縮した圧縮空気cの一部が送り込まれ、圧縮空気cを冷却空気Aとして各段のタービン静翼10のインサート30内部の流路31に向かって供給するようになっている。
なお、図2における符号Hは、タービン静翼10をタービンケーシング5の内周に径方向内周に向かって立設した場合のロータの径方向の高さを示しており、この方向を翼高さ方向という。
図3は、タービン静翼10の要部拡大断面図であり、図2におけるI−I断面を示す図である。
タービン静翼10は、図3に示すように、翼体本体20とインサート30と流量調整板40とを備えており、翼体本体20、インサート30、流量調整板40は、それぞれ翼高さ方向に延在している。
翼体本体20は、例えば、鋳造により翼高さ方向に成形されており、翼高さ方向と直交する断面において、外面凹面状とされた腹側壁部21と、外面凸面状とされた背側壁部22とが、前縁部23aと後縁部23bにおいて接続され、内部に中空部24が形成された翼型とされている。
この参考例の静翼10において、中空部24は、腹側壁部21と背側壁部22とを接続する2つの仕切板25により、例えば、3つのキャビティC1、C2、C3に区画されていて、キャビティC1、C2に対応する腹側壁部21及び背側壁部22の表面に、翼高さ方向、及び前縁部23aから後縁部23b側に向かう方向に間隔をあけて、中空部24から外部に連通するフィルム冷却孔26が複数形成されている。
また、後縁部23bには、中空部24から外部に連通する通気孔27が翼高さ方向に複数配列して形成されている。
ピンフィン28は、例えば、円柱状に形成され、翼高さ方向、及び前縁部23aから後縁部23b側に向かう方向に間隔をあけて、後縁部23b近傍の翼体本体20において、腹側壁部21と背側壁部22とを接続するように複数配置され、後縁部冷却領域29を通過する冷却空気Aにより冷却されるようになっている。
参考例において、後縁部冷却領域29とは、腹側壁部21の内面と背側壁部22の内面の間に形成され、前縁部23aから後縁部23b側に向かう方向における位置が、ピンフィン28が存在している範囲を示すものとする。
インサート30は、翼高さ方向に延在して形成されるとともに、翼高さ方向と直交する断面が矩形形状または略三角形形状とされるとともに内部に冷却空気Aを流す流路31が形成され、キャビティC1、C2の腹側壁部21及び背側壁部22との間に冷却空間24a、24bをあけて1つずつ配置されている。
インサート30には、流路31からインサート30外部に連通するインピンジメント孔32が、翼高さ方向、及び前縁部23aから後縁部23b側に向かう方向に間隔をあけて複数形成されており、インピンジメント孔32から、腹側壁部21の内面及び背側壁部22の内面に向かって冷却空気Aを噴射して腹側壁部21及び背側壁部22を冷却するとともに、フィルム冷却孔26から翼体本体20の外部、すなわち、タービンの主流流路に流出するようになっている。
インサート30Aは、キャビティC3内の腹側壁部21との間に冷却空間24aを、背側壁部22及び冷却調整部材40との間に冷却空間24bをあけて配置され、前縁部23a側中央部に一体に形成され仕切板25と接続されるシールダム30Bにより冷却空間24aと冷却空間24b間が直接連通して腹側壁部から背側壁部側に燃焼ガスが冷却空間を通過するのを防止するようになっている。
また、インサート30Aは、翼高さ方向と直交する断面は、背側壁部22側に形成された冷却調整部材40に対応して後縁部23b側が狭く形成され、インサート30Aには、流路31Aから腹側壁部21の内面、背側壁部22の内面、及び冷却調整部材40に向かって噴射する第1のインピンジメント孔32Aが、翼高さ方向、及び前縁部23aから後縁部23b側に向かう方向に間隔をあけて複数形成されている。
冷却調整部材40は、最も後縁部23b側に位置するキャビティC3の背側壁部22の内面とインサート30Aとの間に壁部冷却路41をあけて形成されていて、冷却調整部材40には、冷却空間24bから壁部冷却路41に連通する第2のインピンジメント孔42が、翼高さ方向、及び前縁部23aから後縁部23b側に向かう方向に間隔をあけて複数形成されている。また、参考例において、第2のインピンジメント孔42は、前縁部23aから後縁部23bに向かう方向における位置が、すべてインサート30Aに形成された第1のインピンジメント孔32Aよりも後縁部23b側に配置されている。
キャビティC3の冷却空間24aから後縁部冷却領域29に流れる冷却空気Aは、全て冷却調整部材40の第2のインピンジメント孔42を通過するようになっており、壁部冷却路41に流入する冷却空気Aの流量を第2のインピンジメント孔42により調整することで、キャビティC3から後縁部冷却領域29に流れる冷却空気Aの流量を調整するようになっている。
また、第1のインピンジメント孔32Aから背側壁部22の内面に向けて噴射して翼体本体20の背側壁部22の冷却に使用された冷却空気Aを使いまわして、第2のインピンジメント孔42から再度背側壁部22の内面に向けて噴射して翼体本体20の背側壁部22の冷却に有効活用(再利用)できるようになっている。
次に、ガスタービン1の動作について、図を用いて説明する。
まず、図2に示すように、圧縮機2から抽気されて供給される圧縮空気cのうち一部が、回転するシールディスク11に向かって供給され、各ディスクホール11aを通り抜けてから第1段のロータディスク7Aへと供給され、そして、順次ディスクホール7A2〜7C2を経て、ロータディスク7B〜7Dのラジアルホール7B1〜7D1に到達する。次いで、各ラジアルホール7A1〜7D1に到達した圧縮空気cは、各タービン動翼6A〜6D内の冷却通路に翼根底面から流入して基端から先端に流れてタービン動翼6を冷却する。
一方、圧縮空気cの一部は、図示しない圧縮空気流路を経由して、圧縮空気流路12に送り込まれ、冷却空気Aとして各段のタービン静翼10のインサート30に向かって供給される。
タービン静翼10のキャビティC1、C2に配置されたインサート30に供給された圧縮空気cは、流路31を冷却空気Aとして流れて、インピンジメント孔32からそれぞれのキャビティC1、C2内の腹側壁部21、背側壁部22の内面に向かって噴射されて翼体本体20の内面をインピンジメント冷却し、その後、翼体本体20のフィルム冷却孔26から流出して翼体本体20の周囲に冷却空気Aによるフィルム層を形成して、タービン静翼10をフィルム冷却する。
一方、インサート30Aの第1のインピンジメント孔32Aから、キャビティC3内の背側壁部22噴射された冷却空気Aは、背側壁部22の内面をインピンジメント冷却してから、流量調整板40の第2のインピンジメント孔42を通じて後縁部冷却領域29に流入してピンフィン28を冷却し、後縁部23bの通気孔27から排出される。また、ピンフィン28が冷却されることで、翼体本体20の後縁部23b近傍が冷却される。
このとき、流量調整板40を通過する冷却空気Aは、適切に設定された流量調整孔42により、ピンフィン28を過冷却することなく適度に冷却しながら流れるような流量、流速に調整される。
また、インサート30Aのインピンジメント孔32からキャビティC3内の腹側壁部21の内面に向かって噴射された冷却空気Aは、翼体本体20の腹側壁部21の内面をインピンジメント冷却し、その後、キャビティC3の腹側壁部21側に形成されたフィルム冷却孔26から流出して翼体本体20の腹側壁部21側に冷却空気Aによるフィルム層を形成して、タービン静翼10をフィルム冷却する。
参考例に係るタービン静翼10及びガスタービン1によれば、第1のインピンジメント孔32Aから噴射された冷却空気Aを、冷却調整部材40に形成された第2のインピンジメント孔42を通じて後縁部冷却領域29に流すように構成されているので、少量の冷却空気Aを使いまわすことによって冷却に必要となる冷却空気Aの流量を低減させてガスタービンの性能、効率を向上させることができる。また、ピンフィン28の過冷却が抑制されて翼体本体20に生じる温度分布のバラつきが小さくなるとともに、第1のインピンジメント孔32A及び第2のインピンジメント孔42のピッチを密にできるので局所的なホットスポットを防止することができる。
また、タービン静翼10によれば、第2のインピンジメント孔42から壁部冷却路41に流入した冷却空気Aが背側壁部22の内面に沿って流れるので、冷却空気Aを背側壁部22に対応する温度に安定して上昇させることができる。
また、タービン静翼10によれば、第2のインピンジメント孔42が、第1のインピンジメント孔32よりも後縁部23b側に配置されているので、第1のインピンジメント孔32Aから噴射された冷却空気Aが第2のインピンジメント孔42を介して後縁部冷却領域に至るまでの経路を長く確保することが可能とされ、壁部冷却路41に流通する冷却空気Aの温度を効率的に上昇させることができる。
以上のように、少量かつ温度が適切に上昇した冷却空気Aによってピンフィン28を冷却することにより、ピンフィン28の過冷却が抑制されてタービン静翼10に生じる温度分布のバラつきが小さくなり、また、ガスタービン1の性能、熱効率を向上することができる。
次に、図4を参照して、この発明の一実施形態について説明する。
一実施形態
一実施形態が、参考例と異なるのは、インサート30A、冷却調整部材40に代えてインサート内流量調整板37を備えたインサート30Bが配置されるとともに、インピンジメント流量調整板45を備えている点である。その他は、参考例と同様であるので、同一の符号を付して説明を省略する。
インサート30Bは、図4(A)に示すように、参考例に係るインサート30Aの流路31Aにインサート内流量調整板37が配置された構成とされ、インサート内流量調整板37により流路31Bが前縁部23a側と後縁部23b側の2つの区画に分けられていて、この2つの区画は主にインサート内流量調整板37に形成された流量調整孔38により連通している。
また、第1のインピンジメント孔32Bは、インサート30Bの流路31Bの前縁部23a側の区画にのみ配置されていて、後縁部23b側の区画を流れてきた冷却空気Aは、一部が後縁部23b側の区画に形成されたインピンジメント孔32から噴射され、残りを占める多くの冷却空気Aは、流量調整孔38を介して前縁部23a側の区画に流入した後に第1のインピンジメント孔32Bから噴射されるようになっている。
インピンジメント流量調整板45は、板材に流量調整孔46が形成されるとともに冷却調整部材40とインサート30Bとを接続した構成とされ、冷却空間24bから冷却調整部材40の第2のインピンジメント孔42に流れる冷却空気Aのすべてが流量調整孔46を通過することにより、後縁部冷却領域29に流れる冷却空気Aの流量を調整するようになっている。
なお、インサート内流量調整板37に形成された流量調整孔38(X−X線断面)、及びインピンジメント流量調整板45に形成された流量調整孔46(Y−Y線断面)は、例えば、図4(B)に示すように、板材に四角形の流通孔が翼高さ方向に間隔をあけて複数配列された構成とされている。
かかる構成により、インサート30Bの流路31Bを流れる冷却空気Aは、一部が流路31Bの前縁部23a側をケーシング5(径方向外方)側からロータ7(径方向内方)側に流れ、残りが流路31Bの後縁部23b側をケーシング5(径方向外方)側からロータ7(径方向内方)側に流れる過程で流量調整孔38を介して前縁部23a側の区画に流入し、その後、前縁部23a側の区画から第1のインピンジメント孔32Bを通じてキャビティC3の冷却空間24a、24bに噴射され、翼体本体20の内面をインピンジメント冷却する。
また、第1のインピンジメント孔32BからキャビティC3に噴射された冷却空気Aの一部は、翼体本体20のフィルム冷却孔26から流出してタービン静翼10をフィルム冷却し、残りの冷却空気Aはインピンジメント流量調整板45の流量調整孔46を通じて第2のインピンジメント孔42から壁部冷却路41に噴射され、後縁部冷却領域29を通過する際にピンフィン28を冷却して通気孔27から外部へ排出される。
一実施形態に係るタービン静翼10によれば、インピンジメント流量調整板45により、第1のインピンジメント孔32Bから第2のインピンジメント孔42に流れる冷却空気Aの流量を調整することにより、後縁部冷却領域29に流れる冷却空気Aの流量や圧力を容易に調整することができる。また、インサート30B及び冷却調整部材40の剛性をさらに高めることができる。
また、インサート内流量調整板37により、インサート30B内の流路31Bから第1のインピンジメント孔32Bに流れる冷却空気Aの流量を調整することにより、第1のインピンジメント孔32Bから噴射され第2のインピンジメント孔42に流れる冷却空気Aの流量や圧力を容易かつ適切に調整することができる。また、インサート30Bの剛性をさらに高めることができる。
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
例えば、上記実施の形態においては、インサート30A、30Bの背側壁部22側に第1のインピンジメント孔32A、32Bが形成された場合について説明したが、第1のインピンジメント孔32A、32Bをインサート30A、30Bの背側壁部22と腹側壁部21のいずれの側に設けるかは任意に設定することができる。また、腹側壁部21と背側壁部22のいずれにフィルム冷却孔26を設けるかについても任意に設定することができる。
また、上記実施の形態においては、本発明をタービン静翼10に適用する場合について説明したが、タービン動翼6に適用してもよい。
また、翼体本体20内に配置するインサート30の数、中空部24を区画するための仕切板25の数、フィルム冷却孔26、インピンジメント孔32の配列(ピッチ、数)についても任意に設定することができる。
また、上記実施の形態においては、タービン静翼10がガスタービン1に用いられる場合について説明したが、ガスタービン以外のタービンやジェットエンジンに適用することも可能である。
また、一実施形態において、流量調整孔38(X−X線断面)、及び流量調整孔46(Y−Y線断面)が、例えば、それぞれ四角形の流量調整孔が翼高さ方向に複数配列される場合について説明したが、流量調整孔38、流量調整孔46の形状は、四角形以外の多角形や円形など他の形状としてもよいし、数、間隔についても任意に設定することができる。また、一の流量調整板に複数の形状の流量調整孔が設定される構成としてもよい。
また、流量調整板35、流量調整板37のいずれか一方のみを設ける構成としてもよいし、それぞれ複数の流量調整板を用いた構成としてもよい。
また、後縁部23b近傍における温度分布に応じて、流量調整孔38、46の大きさや形状、数、位置、ピッチなどを最適に調整することも可能である。
また、円形のピンフィン28を用いて説明したが、これに限定されるものではなく、円形以外の形状でもよいし、長円形状などのペデスタルと呼ばれる冷却部材をピンフィン28に含まれるものとして構成してもよい。
また、上記実施の形態においては、キャビティC1、キャビティC2にシールダムを設けていない状態を図示したが、キャビティC1、キャビティC2にシールダムを設置可能であることは、いうまでもない。
また、上記実施の形態においては、圧縮空気cを冷却空気Aとして用いる場合について説明したが、この圧縮空気cを冷却する機構を設けて、圧縮空気cを冷却してからタービン静翼10に供給する構成としてもよいし、圧縮機2に代えて外部から冷却空気を供給する構成にしてもよい。
この発明に係る翼体及びガスタービンによれば、ピンフィンの過冷却及び翼体の後縁部近傍における温度分布のバラつきを抑制し、ガスタービンの性能、熱効率を向上することができるので産業上利用可能である。
A 冷却空気
c 圧縮空気
H 翼高さ
1 ガスタービン
6 タービン動翼
10 タービン静翼(翼体)
20 翼体本体
21 腹側壁部
22 背側壁部
23a 前縁部
23b 後縁部
24 中空部
24a、24b 冷却空間
26 フィルム冷却孔
27 通気孔
28 ピンフィン
29 後縁部冷却領域
30、30A、30B インサート
31、31A、31B 流路
32、32A、32B 第1のインピンジメント孔
37 インサート内流量調整板
40 冷却調整部材
41 壁部冷却路
42 第2のインピンジメント孔
45 インピンジメント流量調整板

Claims (11)

  1. 翼高さ方向に延在するとともに、前記翼高さ方向と直交する断面において外面凹面状とされた腹側壁部と外面凸面状とされた背側壁部とが前縁部と後縁部で接続されるとともに内部に中空部が形成された翼型とされた翼体本体と、
    前記中空部に、前記腹側壁部の内面及び前記背側壁部の内面との間に冷却空間をあけて配置され、内部の流路から前記腹側壁部の内面及び前記背側壁部の内面の少なくともいずれかに向けて冷却空気を噴射する複数の第1のインピンジメント孔が形成されたインサートと、を備え、
    前記中空部の後縁部近傍に設けられたピンフィンが、後縁部冷却領域において前記第1のインピンジメント孔から噴射された冷却空気によって冷却される翼体であって、
    前記インサート内に、前記流路から前記第1のインピンジメント孔に流れる冷却空気の流量を調整することによって第2のインピンジメント孔に流れる冷却空気の流量を調整するインサート内流量調整板が設けられ、前記第1のインピンジメント孔から噴射された冷却空気を、第2のインピンジメント孔を通じて噴射して、前記後縁部冷却領域を冷却するように構成されていることを特徴とする翼体。
  2. 請求項1に記載の翼体であって、
    前記インサート内流量調整板は、
    前記インサートを前縁部側と後縁部側の二つの区画を形成することを特徴とする翼体。
  3. 請求項2に記載の翼体であって、
    前記後縁部側の区画を流れてきた冷却空気は、一部が前記後縁部側の区画に形成されたインピンジメント孔から噴射され、残りは前記第1のインピンジメント孔から噴射されることを特徴とする翼体。
  4. 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の翼体であって、
    前記翼体本体は、
    前記後縁部近傍に外部に連通する通気孔が形成されることを特徴とする翼体。
  5. 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の翼体であって、
    前記翼体本体は、
    前記腹側壁部と前記背側壁部の少なくともいずれかに複数のフィルム冷却孔が設けられていることを特徴とする翼体。
  6. 請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の翼体であって、
    前記翼体本体は、
    前記第2のインピンジメント孔が形成された冷却調整部材を有し、前記第2のインピンジメント孔は冷却空気を前記腹側壁部の内面及び前記背側壁部の内面の少なくともいずれかに向けて噴射することを特徴とする翼体。
  7. 請求項6に記載の翼体であって、
    前記冷却調整部材は、
    前記腹側壁部と前記背側壁部の少なくともいずれかとの間に、前記後縁部冷却領域と連通する壁部冷却路をあけて形成されていることを特徴とする翼体。
  8. 請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の翼体であって、
    前記第2のインピンジメント孔は、前記第1のインピンジメント孔よりも後縁部側に配置されていることを特徴とする翼体。
  9. 請求項1に記載の翼体であって、
    前記インサート内流量調整板は、前記インサートに前縁部側と後縁部側の二つの区画を形成するとともに、
    前記第2のインピンジメント孔は、前記第1のインピンジメント孔の後縁部側に形成されて前記腹側壁部の内面及び前記背側壁部の内面の少なくともいずれかに向けて噴射することを特徴とする翼体。
  10. 請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の翼体であって、
    前記第1のインピンジメント孔から前記第2のインピンジメント孔に流れる冷却空気の流量を調整するインピンジメント流量調整板が設けられていることを特徴とする翼体。
  11. 請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の翼体を備えることを特徴とするガスタービン。
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