JP5673946B2 - 窒化ケイ素系セラミックスの製造方法 - Google Patents
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まず、窒化ケイ素系セラミックの原料となる金属Si、焼結助剤および造孔剤を準備する。
各成分の平均粒子径が所望の値よりも大きい場合、各成分を粉砕してサイズを小さくする(粉砕工程)ことが望ましい。粉砕にはボールミル、ビーズミル、ロールミルなどを使用することができ、不純物の混入を防止する観点から窒化ケイ素製のボールミルまたはビーズミルが好適に使用される。
次に、粉砕後の金属Si、焼結助剤および造孔剤が所定の組成比になるように、金属Si、焼結助剤および造孔剤を混合する(混合工程)。混合工程で用いる混合装置としては例えばボールミルを使用でき、その場合、ボール径10mmのSi3N4ボールを用いて24h混合させればよい。その後、得られた混合物を乾燥させて造粒する(造粒工程)。この際、顆粒状にするために適宜バインダー樹脂等を添加してもよい。これにより、混合物を造粒し易くなる。造粒剤としては、パラフィンなどが挙げられ、シクロヘキサン等の有機溶媒に溶解して混合物に添加すればよい。
続いて、造粒物を所定形状の成形型に充填し、加圧成形することで圧粉体を形成する。加圧成形の方法としては、公知の成形方法を適用でき、一軸プレス成形法、冷間静水等方圧プレス(CIP)法などを用いることができる。また、一軸プレス成形法により仮成形した後にCIPを用いて本成形してもよい。
造孔工程では、上記混合物の圧粉体を加熱して造孔剤が溶融または気化して、金属Si間に気孔を形成する(造孔工程)。気孔の形成には、常圧加熱、加圧加熱(ホットプレス)、雰囲気加圧加熱、HIP(熱間静水圧プレス:ホットアイソスタティックプレス)加熱などの様々な加熱方法を適用可能である。造孔工程では、金属Si、焼結助剤および造孔剤を含む圧粉体を加熱して金属Si間に気孔を形成する。
窒化工程は、上記造孔工程にて得られた、気孔を有した金属Siを含む多孔体を、窒素雰囲気下にて焼成して窒化ケイ素系セラミックスである反応焼結体(ポスト反応焼結体)を得る工程である。造孔工程では加熱処理を行うため、温度を上げることによって造孔工程および窒化工程を連続的に行うことができる。なお、一旦、多孔体を取り出した後に窒化工程を行ってもよい。
緻密化工程は、窒化工程での窒化温度を超える温度にて反応焼結体を焼成して緻密化する工程であり、本工程によって窒化ケイ素系セラミックスである最終焼結体が得られる。
理論密度に対するアルキメデス法による実測密度の比率を算出することによって、圧粉体、反応焼結体および最終焼結体の相対密度を求めた。
最終焼結体から試験片を切り出し、JIS R1603に規定する方法に従って曲げ強度を測定した。曲げ試験後の最終焼結体を鏡面研磨し、JIS R160Xに規定する方法に従って荷重20Kgにてビッカース硬度を測定すると共に、IF法に基づく新原の計算式により破壊靭性値(MPa・m1/2)を算出した。
X線回折によって、反応焼成体におけるSi、α−Si3N4、β−Si3N4の重量分率を各成分のX線回折ピークから求めた。
窒化工程にて金属Siの噴出が生じた否かを、目視によって観察することによって判断した。
窒化工程から緻密化工程における窒化ケイ素系セラミックス(反応焼結体から最終焼結体へ焼成される)の収縮率を、マイクロメーター(株式会社ミツトヨ社製、No.293-661-10N)を使用して測定した。
研磨機を用いて試験片を100μm程度の厚みに薄片加工し、当該薄片を光学顕微鏡の透過モードで観察した。
(S1.原料準備工程)
出発原料である金属Si、焼結助剤および造孔剤として、以下のものを用いた。
・金属Si
山石金属株式会社製の#600粉末、平均粒径12.6μm
・焼結助剤
Y2O3:信越化学工業株式会社製「RU−P」、平均粒径1.1μm
MgO:宇部興産株式会社製「500A」、平均粒径0.05μm
ZrO2:東ソー株式会社製「TZ−O」、平均粒径0.07μm
・分散剤:共栄社化学(株)製「フローレンG」
・造孔剤:エア・ウォーター・ベルパール株式会社製「ベルパール R200」(フェノール樹脂)
(S2.粉砕工程)
以下の粉砕条件により粉砕を行った。なお、得られた金属Siをビーズミル粉砕物とする。
その後、外径15mmの円柱状の中空部を有する金型を用いて、一軸プレス成形法により、50MPaの圧力を30秒間加えて成形した。さらに、冷間静水等方圧プレス(CIP)法により、200MPaの圧力を60秒間加えて成形した。これにより、圧粉された圧粉体を得た。
得られた圧粉体を500℃で3時間保持し、造孔および脱脂を行った。その後、各実施例において、表1に記載の焼成条件で窒化工程および緻密化工程を行った。窒化工程では、窒素雰囲気中にて焼成を行った。また、緻密化工程では、0.9MPaの窒素を4l(4リットル)/minの速度で流しながら焼成を行った。
実施例1〜3に関する圧粉体、反応焼結体および最終焼結体の相対密度、ビッカース硬さ、破壊靭性、曲げ強度およびSiの噴出結果を表2に示した。また、実施例4〜12に関する圧粉体、反応焼結体および最終焼結体の相対密度、反応焼結体における、Si、α−Si3N4およびβ−Si3N4の重量分率並びにSiの噴出結果、最終焼結体の曲げ強度を表2に示した。
ベルパールを使用しなかった以外は、実施例1と同様にして最終焼結体を得た。比較例1に関する圧粉体、反応焼結体および最終焼結体の相対密度、ビッカース硬さ、破壊靭性、曲げ強度およびSiの噴出結果を表2に示した。
比較例1において金属Siに代えて、Si3N4粉末(宇部興産(株)製の「SN−E10」)を使用して最終焼結体を得た。
表1に示されるように、造孔剤であるベルパールを使用しなかった比較例1では、窒化工程において反応焼結体に金属Siが噴出してしまい、最終焼結体の相対密度、ビッカース硬さおよび破壊靭性に影響は良好な値であったものの、最終焼結体として製品価値が低いものであった。また、反応炉の清掃に時間を費やすこととなった。比較例1で得られた最終焼結体の写真図を図2に示す。
Claims (5)
- 金属Siを窒化する窒化ケイ素系セラミックスの製造方法において、
金属Si、焼結助剤、および、加熱することによって気孔を形成する造孔剤を含む混合物の圧粉体を加熱して、上記圧粉体中の金属Si間に気孔を形成する造孔工程と、
上記造孔工程にて得られた、気孔が形成された金属Siおよび焼結助剤を含む多孔体を、窒素雰囲気下にて焼成して反応焼結体を得る窒化工程と、
上記窒化工程での反応焼結体を焼成した窒化温度を超える温度にて反応焼結体を焼成して緻密化し、最終焼結体を得る緻密化工程と、を含み、
前記圧粉体をなす混合物に含まれる金属Siは、体積基準の累積粒度分布における累積パーセントが50%であるときの粒径が1.7μm以下であり、かつ、累積パーセントが90%のときの粒径と10%のときの粒径との差が2.0μm以下であることを特徴とする窒化ケイ素系セラミックスの製造方法。 - 上記金属Siと焼結助剤の総体積に対する造孔剤の割合が、30体積%以上、60体積%以下であることを特徴とする請求項1に記載の窒化ケイ素系セラミックスの製造方法。
- 上記金属Siと焼結助剤の総体積に対する造孔剤の割合が、45体積%以上、60体積%以下であることを特徴とする請求項2に記載の窒化ケイ素系セラミックスの製造方法。
- 上記造孔工程における混合物の圧粉体を加熱する温度が、500℃以上、1000℃以下であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の窒化ケイ素系セラミックスの製造方法。
- 金属Siを窒化する窒化ケイ素系セラミックスの製造方法において、
金属Si、焼結助剤、および、加熱することによって気孔を形成する造孔剤を含む混合物の圧粉体を加熱して、上記圧粉体中の金属Si間に気孔を形成する造孔工程と、
上記造孔工程にて得られた、気孔が形成された金属Siおよび焼結助剤を含む多孔体を、窒素雰囲気下にて焼成して反応焼結体を得る窒化工程と、を含み、
前記圧粉体をなす混合物に含まれる金属Siは、体積基準の累積粒度分布における累積パーセントが50%であるときの粒径が1.7μm以下であり、かつ、累積パーセントが90%のときの粒径と10%のときの粒径との差が2.0μm以下であることを特徴とする窒化ケイ素系セラミックスの製造方法。
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