JP5673138B2 - 印刷物 - Google Patents

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本発明は、印刷物表面における外光の反射を防止することが可能であり、かつ耐水性および洗浄性に優れ、さらに長期間にわたって印刷物の印刷画像の視認性を優れたものとすることができる印刷物、および上記印刷物を簡便な方法で製造することが可能な印刷物の製造方法に関するものである。
広告、雑誌、ポスター等の種々の印刷物においては、近年、ますます高精細で鮮明な印刷画像が求められており、印刷技術分野においては、印刷媒体への画像データの出力方法や、印刷媒体に用いられる材料およびインキの材料等の選択方法等のあらゆる印刷技術を用いることが検討されている。
しかしながら、上述した種々の印刷技術を用いて印刷媒体上に高精細かつ鮮明な印刷画像が印刷されたとしても、印刷物の印刷表面(以下、単に印刷表面と称して説明する場合がある。)においては外光の一部を反射してしまう場合が多いため、観察者からは実際の印刷画像に比べて白っぽく観察されてしまい、文字や模様の判読を妨げるといった問題があった。また、印刷表面に強い光が照射された場合や、朝日や夕日などの光が当たった場合や、印刷物が斜め方向から観察された場合、あるいは印刷表面に対して光が斜めから当たる場合は、印刷表面からの反射光によって印刷画像の視認性が低下したり、印刷画像を観察することが困難となる可能性があるといった問題があった。
上記問題に対しては、印刷表面にフッ素系樹脂等のフッ素系低屈折物質を用いた透明低反射層を形成して反射防止性を付与する方法(特許文献1)、印刷表面にマット性を付与することが可能な微粒子を添加した透明樹脂層(マット層)を印刷法で形成するオーバーコート方法(特許文献2)、高屈折率微粒子を含有した低反射層を有する保護フィルムを粘着層を介して印刷表面に貼り合わせるオーバーラミネート法(特許文献3)、印刷表面に透明な熱可塑性のフィルムを積層して熱プレスでエンボス加工を行うことによりマット層を形成する熱プレスオーバーラミネート法(特許文献4)、紫外線硬化樹脂組成物中にマット性を付与するための添加剤を混入して印刷表面にオーバーコートした後、紫外線硬化処理を行ってマット層を形成する方法(特許文献5)、印刷表面に表面張力の異なる材料を用いた上塗り層および下塗り層を形成し、上塗り層と下塗り層の表面張力差を利用して硬化時にマット化する処理を行い、マット層を形成する方法(特許文献6)等、印刷表面における外光の反射を防止する種々の方法が提案されている。
しかしながら、フッ素系樹脂を用いる場合、印刷物の製造コストが高くなり、また十分な性能を引き出すための樹脂や、これらを使用するときに使う特殊な溶剤は環境負荷が高いといった課題が残っている。また、微粒子を用いたマット層を用いる場合やエンボス加工が施されたマット層を用いる場合、上記微粒子や上記エンボス加工を通して印刷画像を観察するため、光が乱反射することによる光沢性の悪化や、また印刷画像の色が元の色よりくすんだり、ボケたりするなどの問題がある。
また、樹脂材料に微粒子や添加剤を添加し、これを硬化させたマット層を形成する場合には、樹脂材料中の微粒子や添加剤の凝集状態や分散状態は不安定であり、特に樹脂材料に硬化処理を施すに際して、これらの状態を制御することが困難であることから、微粒子や添加剤の凝集状態や分散状態が良好なマット層を安定的に得ることが困難であるといった問題があった。
また、表面張力の異なる2種類の樹脂材料を用いてマット層を形成する場合も、各々の樹脂材料の表面張力を制御することが困難であることから、良好なマット層を安定的に得ることが困難であった。
よって、上述したいずれの方法を用いた場合も、印刷物に付与された所望の光沢感や色彩を損なうことなく、かつ印刷物に所望の反射防止機能を低コストで安定的に付与することは困難であった。
また、印刷物に油性のマジックや水滴などが付着した場合には、水やアルコール等で拭き取る必要があるが、上述したマット加工等の方法により反射防止機能を付与した印刷物においては、表面の拭き取り性が悪く、十分に拭き取れなかったり、何回も拭き取り作業を行うと、表面の低反射性を付与している樹脂層が摩擦により表面から拭き取られたり、マット層の表面構造が壊れたりして、耐久性が十分に維持できないといった問題があった。
ところで、屋外等にある一定の期間設置されて用いられる広告、ポスター等の印刷物においては、高い耐水性を付与することが望まれている。上述した印刷物に耐水性を付与する方法としては、例えば、印刷法を用いてフッ素樹脂層を積層して撥水性を付与する方法や、印刷の表面に耐水性を有する樹脂製フィルムを貼り付ける方法が挙げられる。しかしながら、フッ素樹脂層を用いる方法は、フッ素樹脂は環境問題から使用の制限があることから、汎用性がないといった問題があった。また、上記樹脂製フィルムを貼りつける方法は、印刷物の製造コストが高くなるといった問題や、樹脂製フィルムにより外光を反射しやすくなるため、上述した外光の反射による印刷画像の視認性の低下が生じやすくなる場合があるといった問題があった。
特開平7−148881号公報 特許第3046715号公報 特開平11−77874号公報 特許第3093424号公報 特開2010−155238号公報 特開平6−278354号公報
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、印刷物表面の光の反射を防止して印刷物に印刷された印刷画像の視認性を向上させることが可能であり、かつ優れた耐水性および洗浄性を示し、さらに長期間にわたる視認性に優れた印刷物、および上述した印刷物を簡便な方法で製造することが可能な印刷物の製造方法を提供することを主目的とする。
上記課題を解決するために、本発明は、基材と、上記基材上に形成され、樹脂インキを含むインキ層とを有する印刷物であって、上記印刷物の上記インキ層側の最表面に、可視光領域の波長以下の周期で形成された複数の凸部を備える微細凹凸を有し、上記微細凹凸が、上記インキ層の表面に形成されていることを特徴とする印刷物を提供する。
本発明によれば、上記印刷物の上記インキ層側の最表面に上述した微細凹凸を有することから、上記印刷物の上記インキ層側の最表面における外光の反射を好適に防止することが可能となり、上記印刷物に形成された上記インキ層により構成される印刷画像を鮮明に観察することが可能となる。また、上記微細凹凸を有することにより、上記印刷物の上記インキ層側の最表面においては、水分等との接触面積を小さくすることが可能となることから、耐水性の高い印刷物とすることができる。
また、上記微細凹凸を有することにより、本発明の印刷物は、従来のマット加工が施された印刷物に比べて、防汚性に優れ、また汚れが付着した際のふき取り性にも優れていることから、印刷物の微細凹凸表面に高い洗浄性を付与することができる。よって、上記微細凹凸を安定的に保持することができ、長期間にわたる視認性に優れた印刷物とすることができる。
本発明においては、上記微細凹凸が、上記インキ層の表面に形成されていてもよい。本発明の印刷物を構成する層の数を少なくすることができることから、上記印刷物を薄くすることができるため、加工性の高いものとすることができる。
本発明は、基材と、上記基材上に形成され、樹脂インキを含み、かつ表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された複数の凸部を備える微細凹凸が形成されているインキ層とを有する印刷物の製造方法であって、上記基材上に上記樹脂インキを含むインキ層形成用層を形成するインキ層形成用層形成工程と、金属基体、および上記金属基体の表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された複数の微細孔を備える金型または上記金型の複製型を準備し、上記インキ層形成用層表面と上記金型または上記複製型の上記微細孔側とを接触させて配置し、圧力を負荷することにより、上記インキ層形成用層の上記金型側表面または上記複製型側表面に上記微細凹凸を形成する賦型工程と、上記賦型工程後に上記インキ層形成用層を固化する工程、および上記インキ層形成用層から上記金型または上記複製型を剥離する工程を順不同に行い、上記インキ層を形成する固化・剥離工程とを有することを特徴とする印刷物の製造方法を提供する。
本発明によれば、簡便な方法で上記インキ層の表面に上記微細凹凸を形成することができる。よって、上記印刷物の上記インキ層側の最表面における外光の反射を好適に防止し、かつ高い耐水性および洗浄性を発揮し、長期間にわたる視認性に優れた印刷物を製造することが可能である。
本発明の印刷物は、印刷物のインキ層側表面に微細凹凸を有することにより、上記印刷物表面の光の反射を防止することができるため、上記印刷物における上記インキ層により構成される印刷画像を鮮明に観察することが可能であるといった作用効果を奏する。また、上記微細凹凸を有することにより、優れた耐水性を有するといった作用効果を奏する。また、上記微細凹凸を有することにより、上記印刷物の上記インキ層側表面の防汚性やふき取り性を向上させることが可能となり、繰り返しの洗浄処理に対しても高い耐久性を示すことができるため、長期間にわたり視認性に優れた印刷物とすることができるといった作用効果を奏する。
本発明の印刷物の一例を示す概略断面図である。 本発明の印刷物の他の例を示す概略断面図である。 本発明の印刷物の他の例を示す概略断面図である。 本発明における透明樹脂層の一例を示す概略断面図である。 本発明の透明樹脂層の他の例を示す概略断面図である。 本発明の印刷物における微細凹凸の形状を説明する概略図である。 本発明の印刷物における微細凹凸の先端部の一例を示す概略断面図である。 本発明の印刷物における微細凹凸を特定するパラメータを説明する概略図である。 本発明の印刷物の他の例を示す概略断面図である。 本発明の印刷物の他の例を示す概略断面図である。 本発明の印刷物の他の例を示す概略断面図である。 本発明の印刷物の製造方法の一例を示す工程図である。 本発明の印刷物の製造方法に用いられる金型の一例を示す概略断面図である。 本発明の印刷物の製造方法に用いられる金型の他の例を示す概略断面図である。 本発明の印刷物の製造方法に用いられる金型の微細孔を特定するパラメータを説明する概略図である。 本発明の印刷物の製造方法に用いられる圧力負荷方法の一例を示す概略図である。 本発明の印刷物の製造方法に用いられる圧力負荷方法の他の例を示す概略図である。 本発明の印刷物の製造方法に用いられる圧力負荷方法の他の例を示す概略図である。 本発明の印刷物の製造方法に用いられる圧力負荷方法の他の例を示す概略図である。 本発明の印刷物の製造方法に用いられる金型の形成方法の一例を示す工程図である。 本発明の印刷物の製造方法他の例を示す工程図である。
以下、本発明の印刷物およびその製造方法について説明する。
A.印刷物
まず、本発明の印刷物について説明する。
本発明の印刷物は、基材と、上記基材上に形成され、樹脂インキを含むインキ層とを有する印刷物であって、上記印刷物の上記インキ層側の最表面に、可視光領域の波長以下の周期で形成された複数の凸部を備える微細凹凸を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、上記印刷物の上記インキ層側の最表面に上述した微細凹凸を有することから、上記印刷物の上記インキ層側の最表面における外光の反射を好適に防止することが可能となり、上記印刷物に形成された上記インキ層により構成される印刷画像を鮮明に観察することが可能となる。また、上記微細凹凸を有することにより、上記印刷物の上記インキ層側の最表面においては、水分等との接触面積を小さくすることが可能となることから、耐水性の高い印刷物とすることができる。
また、上記微細凹凸を有することにより、本発明の印刷物は、従来のマット加工が施された印刷物に比べて、防汚性に優れ、また汚れが付着した際のふき取り性にも優れていることから、上記印刷物の上記微細凹凸表面に高い洗浄性を付与することができる。よって、上記微細凹凸を安定的に保持することができ、長期間にわたる視認性に優れた印刷物とすることができる。
ここで、上記印刷物の上記インキ層側の最表面に上述した微細凹凸を有することにより、上記印刷物の最表面における外光の反射を防止することができる理由については以下のように考えられる。
すなわち、上記微細凹凸は、可視光領域の波長以下の周期に制御されたものであることから、いわゆるモスアイ(moth eye(蛾の目))構造の原理を利用することが可能なものである。よって、上記印刷物の上記インキ層側の最表面に入射した光に対する屈折率を連続的に変化させ、屈折率の不連続界面を消失させることが可能となる。その結果、上記印刷物の最表面における外光の反射を防止することが可能になると考えられる。
本発明の印刷物は、印刷物のインキ層側の最表面に上記微細凹凸を有するものであれば特に限定されるものではなく、具体的には、微細凹凸が、透明樹脂を含み、かつ上記インキ層上に形成された透明樹脂層の表面に形成されている態様(第1態様)と、微細凹凸が、上記インキ層の表面に形成されている態様(第2態様)とを挙げることができる。
以下、それぞれについて説明する。
I.第1態様
まず、本発明の印刷物の第1態様について説明する。
本態様の印刷物は、微細凹凸が、透明樹脂を含み、かつ上記インキ層上に形成された透明樹脂層の表面に形成されているものである。具体的には、基材と、基材上に形成されたインキ層と、インキ層上に形成され、透明樹脂を含む透明樹脂層とを有し、透明樹脂層の表面に上述した微細凹凸が形成されているものである。
また、本態様においては、通常、透明樹脂層は印刷物のインキ層側の最表面に位置するものである。
ここで、本態様の印刷物について図を用いて説明する。図1は、本態様の印刷物の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、本態様の印刷物10は、基材1と基材1上に形成されたインキ層2と、インキ層2上に形成された透明樹脂層3とを有し、透明樹脂層3の表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された複数の凸部を備える微細凹凸αを有するものである。また、透明樹脂層3は通常、微細凹凸αを支持するための基底部βを有するものである。
本態様においては、上記透明樹脂層によって上記インキ層を保護することが可能となることから、耐久性の高い印刷物とすることができる。
以下、本態様の印刷物の各構成について説明する。
1.微細凹凸
まず、本態様における微細凹凸について説明する。
本態様における微細凹凸は、後述する透明樹脂層の表面に形成されるものであり、可視光領域の波長以下の周期で形成された複数の凸部を備えるものである。
上記微細凹凸における凸部の形状としては、透明樹脂層の表面に形成することができ、かつ所望の反射防止機能を発現することが可能であれば特に限定されるものではなく、図2(a)に示すように、微細凹凸αにおける凸部の先端が尖っているものであってもよく、図2(b)に示すように、微細凹凸αにおける凸部の先端が平坦なものであってもよく、図1に示すように、微細凹凸αにおける凸部の先端が曲面構造を有するものであってもよい。なお、図2(a)、(b)は、本態様の印刷物の他の例を示す概略断面図であり、説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本態様においては、上述したなかでも、微細凹凸における凸部の先端が曲面構造を有するものであることが好ましい。
凸部の先端が曲面構造を有する場合は、凸部の先端が尖っている場合に比べて、凸部の先端部分の機械的強度が高く、割れを生じにくいからである。また、凸部の先端が曲面構造を有する場合は、凸部の先端が尖っている場合に比べて、後述する「B.印刷物の製造方法」の項で説明するように、金型等を用いて透明樹脂層の表面に微細凹凸を形成する際の、金型等からの型抜き性が良くなるため、高精細な微細凹凸を有する透明樹脂層を形成することが可能となる。
一方、凸部の先端が平坦である場合は、凸部の先端が尖っている場合に比べて、上述した凸部の先端部分の機械的強度や、金型等からの型抜き性は良好となると考えられるが、反射防止機能が低下してしまうことが懸念される。凸部の先端が曲面構造を有する場合は、反射防止機能の低下を抑制することが可能であるため、より好適に用いることができる。
また、上記微細凹凸における凸部の形状としては、凸部の縦断面を観察した際に、図3に示すように、基材1に対して微細凹凸αの凸部が垂直に立ち上がる形状を有していてもよく、図1に示すように、基材1に対して微細凹凸αの凸部がテーパー状に立ち上がる形状を有していてもよい。
なお、図3は、本態様の印刷物の製造方法の一例を示す概略断面図であり、説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本態様においては、なかでも微細凹凸における凸部の縦断面がテーパー状に立ち上がる形状であることがより好ましい。
凸部の縦断面が基材に対してテーパー状に立ち上がる形状であることにより、良好な反射防止機能を示すことが可能となり、また凸部の機械的強度を向上させることができる。また、本態様の印刷物を金型等を用いて製造する際の金型等からの型抜き性についても良好なものとすることができる。
ここで、凸部が垂直に立ち上がる形状において、特に円柱状等の形状を有する場合においては、表面張力の大きい液体が微細凹凸に入り込んだ後、それが蒸発する際に、上記液体の表面張力により隣り合う凸部同士が接触あるいはくっつきあう現象(スティッキング)が起こりやすいといった問題がある。
一方、凸部がテーパー状に立ち上がる形状である場合は、蒸発する上述した液体の表面張力に対する構造的な強度を向上させることができるため、上記スティッキングについて抑制することが可能となる。
さらに、スティッキングを抑制することが可能となることから、微細凹凸を備える透明樹脂層表面を、例えば水やアルコール等の液体を用いて洗浄し、上記液体をふき取る際にスティッキングが発生して白濁し、反射防止機能が低下することを抑制することが可能となる。
以上から、本態様における微細凹凸αを構成する凸部としては、図4に示すように、基材に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部α1と、本体部α1の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部α2とを有することが好ましい。なお、図4は、本態様における透明樹脂層の一例を示す概略断面図である。また、説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
以下、上記構成を有する凸部について説明する。
(1)本体部
本態様に用いられる本体部は、基材に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状であるものである。本態様においては、錐台形状の本体部を有しているため、良好な反射防止機能を有するとともに、本態様の印刷物を製造する際に用いる金型等から抜けやすくなる。金型等から抜けにくい場合、本体部を形成するための透明樹脂層の材料が金型等の微細孔の中に残留するようになる。残留部分に相当する部分が転写された透明樹脂層の表面は、反射防止機能を発現するための凹凸形状がない状態となり、反射防止機能を阻害する原因となる。また、本体部がテーパー状に立ち上がる錐台形状を有することで機械的強度も向上し、テーパーが小さい場合に比べ、スティッキングが発生しにくい。
上記本体部の縦断面における基材に対するテーパー角度としては、テーパー状に立ち上がる錐台形状を形成することが可能な角度であれば特に限定されるものではないが、50°〜87°の範囲内であることが好ましく、55°〜85°の範囲内であることがより好ましく、55°〜82°の範囲内であることがさらに好ましい。上記テーパー角度が上記範囲よりも大きいと、上記本体部が垂直に立ち上がる形状に近くなり、本態様の印刷物を製造する際に用いる金型等から抜けにくくなる場合があり、また、良好な反射防止機能を示さない可能性があるからである。さらに、スティッキングが発生しやすくなる場合がある。一方、上記テーパー角度が上記範囲よりも小さいと、反射防止機能が低下し、反射率の波長依存性を受けやすくなり、さらに、上記本体部を形成することが困難となる場合があるからである。
本態様における上記テーパー角度とは、本体部の縦断面での側面が直線状の場合、上記側面を近似する直線と、基材表面に平行な直線とで形成される角度をいい、例えば、図4におけるθで表される角度である。
一方、本体部の縦断面での側面が曲線状の場合、本体部の頂面の外周上の点および本体部の底面の外周上の点を最短距離となるように選択して結んだ直線と、基材表面に平行な直線とで形成される角度をいい、例えば、図5におけるθで表される角度である。
なお、本体部の頂面は、微細凹凸における凸部の側面の曲率が大きく変化する部位の横断面からなる面とし、本体部の底面は、本体部と基底部とが接する面とする。
また、本態様における上記テーパー角度は、本体部の縦断面を電子顕微鏡により観察して10個分のテーパー角度を測定し、その測定値の平均値とする。
なお、図5は、本態様における透明樹脂層の他の例を示す概略断面図であり、図5における各符号については、図4と同様であるので、ここでの記載は省略する。
また、上記本体部の高さとしては、本態様における透明樹脂層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内であれば、特に限定されるものではなく、適宜調整できるものである。ここで、上記高さが高いほど、上記微細凹凸を有する透明樹脂層の反射率を低くすることができ、一方、上記高さが低いほど、長波長側の反射率が増加する傾向にある。このようなことから、本態様における上記本体部の高さは、60nm〜1400nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜1000nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜750nmの範囲内であることがさらに好ましい。本体部の高さが上記範囲よりも高いと、本体部が損壊しやすく、また、スティッキングが発生しやすくなる場合があり、本体部の高さが上記範囲よりも低いと、上記微細凹凸を有する透明樹脂層の長波長側の光に対する反射防止機能が不十分になってしまう場合があるからである。
本態様における上記本体部の高さとは、基底部表面から、本体部の頂面までの距離をいい、例えば、図4および図5においてHで表される距離である。なお、本態様における上記本体部の高さは、上述した方法で決定した平均値とする。
上記本体部の頂面の径としては、上記本体部の底面の径よりも小さければ特に限定されるものではないが、1nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、2nm〜50nmの範囲内であることがより好ましい。本体部の頂面の径が小さすぎると、機械的強度が小さくなり、本体部が損傷しやすくなるからである。また、本体部の頂面の径が大きすぎると、テーパーが小さくなるため、スティッキングを発生しやすくなったり、金型等から抜けにくくなったりするからである。なお、本態様における上記本体部の頂面の径は、上述した方法で決定した平均値とする。
上記本体部の底面の径としては、上記本体部の頂面の径よりも大きければ特に限定されるものではないが、25nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、50nm〜250nmの範囲内であることがより好ましい。本体部の底面の径が小さくなると、隣り合う構造体の間が開き、構造体を形成していない部分が多くなるため、反射防止機能が悪くなる。なお、本態様における上記本体部の底面の径は、上述した方法で決定した平均値とする。
上記本体部の頂面形状および底面形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、円、楕円等の丸形状の他、多角形形状などを挙げることができる。
上記本体部の側面形状としては、上記本体部の縦断面において、直線状であってもよく、曲線状であってもよい。中でも、本態様においては、上記本体部が後述する先端部と連続的な曲面状の側面を形成することが好ましい。図5に例示するように、微細凹凸の凸部を釣鐘形状とすることができ、良好な反射防止機能を得ることができるからである。以下、上記凸部が釣鐘形状であることにより反射防止機能が良好となる理由について、具体的に説明する。
ここで、モスアイ構造が反射防止をする原理については、次のように考えられる。図6(a)に例示されるモスアイ構造体Xの頂点部付近の空間(擬似層a)の屈折率Nは、空気の屈折率を1、擬似層a中でモスアイ構造体Xが占める体積の割合をV、モスアイ構造体Xを構成する樹脂の屈折率をNとすると、下記の(1)式が成り立つ。
N=1×(1−V)+N×V (1)
すなわち、擬似層aの屈折率は、空気と樹脂との、それぞれの体積と屈折率とを考慮した加重平均として与えられる。擬似層b以降も、同様である。擬似層a〜擬似層kへと基材Yに近づくにつれ、擬似層の屈折率は大きくなるが、図6(b)に例示するように、錐形状の屈折率の変化量が曲線的に変化するのに対して、釣鐘形状の屈折率の変化量はほぼ直線的に変化する。これは、モスアイ構造体Xが占める体積の割合は、擬似層aから擬似層kまでの断面積の変化ととらえることができ、この断面積の変化は錐形状の場合、曲線的に変化し、釣鐘形状の場合、ほぼ直線的に変化するからである。そのため、釣鐘形状のモスアイ構造体Xは、錐形状のモスアイ構造体Xに比べて、基材Y近傍の屈折率の変化率が小さいという特徴がある。基材Y近傍の屈折率の変化率が小さい方が、空気と樹脂との屈折率を小さくすることが擬似的に起こり、反射率を小さくすることが可能となる。また、本体部のテーパーが小さい場合、図6(b)に例示するように、擬似層kでの屈折率の変化量は小さいが、擬似層aからc部分での屈折率の変化量が大きくなるため、全体に白っぽくなる傾向がある。したがって、錐形状のモスアイ構造体Xおよびテーパーが小さい形状のモスアイ構造体Xよりも釣鐘形状のモスアイ構造体Xの方が、反射防止機能が優れている。
本態様においては、上記本体部のテーパー角度および上記先端部の曲率半径を適宜調整し、上記微細凹凸における凸部の釣鐘形状を規定することにより、上記擬似層の屈折率分布を最適化することができ、上記微細凹凸を光学的特性に優れたモスアイ構造とすることができる。
(2)先端部
本態様に用いられる先端部は、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有するものである。本態様においては、上記先端部が曲面構造を有することにより、透明樹脂層における微細凹凸の凸部の最先端部が割れる等の不具合がなく、さらに、型抜き性に優れた微細凹凸とすることができる。なお、上記先端部の曲面構造は、透明樹脂層に微細凹凸を形成する際の圧力、透明樹脂層に用いられる透明樹脂層用組成物の粘度等で制御することが可能である。
上記先端部の形状としては、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造であれば特に限定されるものではない。本態様においては、中でも、略球面状であることが好ましく、その曲率半径としては、本態様の印刷物の用途等に応じて適宜調整することができるものであり、例えば、本態様に用いられる本体部の頂面の径に対して、1.0倍〜5.0倍の範囲内であることが好ましく、1.0倍〜2.0倍の範囲内であることがより好ましく、1.0倍〜1.5倍の範囲内であることがさらに好ましい。先端部の曲率半径が上記範囲よりも大きいと、先端部が平らな形状に近くなるため、上記微細凹凸を有する透明樹脂層の反射率が高くなり、本態様における印刷物の反射防止機能が低下する場合があるからである。また、曲面構造は、図7(a)に例示するように、球面状であることが望ましいが、図7(b)〜(c)に例示するように、一部尖っている形状および/またはうねりがあってもよい。また、先端部の最先端部は本体部の頂面の中心にある必要はなく、中心からずれていても反射防止機能には変化はない。
なお、図7(a)〜(c)は、本態様における微細凹凸の先端部の一例を示す概略断面図である。
また、上記先端部の高さ、すなわち、本体部の頂面から先端部の最先端部までの距離としては、上記微細凹凸を有する透明樹脂層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で適宜調整することができる。
(3)凸部
本態様に用いられる凸部は、上記先端部と上記本体部とから構成されるものであり、上記微細凹凸を有する透明樹脂層の反射防止機能は、上記凸部が形成された周期、高さ、間隔に依存する。
なお、上記凸部が形成された周期、高さ、および間隔は、それぞれ図8におけるP、Q、およびRで示す通り、それぞれ隣接する凸部における先端部の頂部から先端部の頂部までの距離、凸部における先端部の頂部から本体部の底面までの距離、および隣接する凸部における本体部の底面の外周間の最短距離である。ここで、図8は本態様の印刷物における微細凹凸を特定するパラメータを説明する概略図であり、図8において説明していない符号については、図4と同様とすることができるので、ここでの記載は省略する。
上記凸部の周期としては、可視光領域の波長以下であれば特に限定されるものではなく、本態様の印刷物の用途等に応じて適宜決定することができる。ここで、上記周期は、上記微細凹凸を有する透明樹脂層の反射率の波長依存性に影響を及ぼすものであり、その周期が長くなるほど可視光領域の短波長側の光に対する反射率が増加する傾向にある。一方、周期が200nm以下においては、周期の変動に伴う反射率の波長依存性の変化は少なくなるものである。このようなことから、本態様における上記凸部の周期は、80nm〜400nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜300nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜250nmの範囲内であることがさらに好ましい。上記凸部の周期が上記範囲よりも短いと、個々の凸部の形状が極微小になることから、高精度で凸部を形成することが困難になる場合があるからである。また、上記凸部の周期が上記範囲よりも長いと、上記微細凹凸を有する透明樹脂層の短波長側の光に対する反射防止機能が不十分になってしまう場合があるからである。なお、本態様における上記凸部の周期は、凸部の縦断面を電子顕微鏡により観察して10個分の周期を測定し、その測定値の平均値とする。
上記凸部の高さについても、上記微細凹凸が形成されている透明樹脂層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で適宜調整することができるものであり、特に限定されるものではない。ここで、上記高さが高いほど、上記微細凹凸を有する透明樹脂層の反射率を低くすることができ、一方、低くなると長波長側の反射率が増加する傾向にある。このようなことから、本態様における上記凸部の高さは、62nm〜1402nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜1002nmの範囲内であることがより好ましく、120nm〜752nmの範囲内であることがさらに好ましい。上記凸部の高さが上記範囲よりも高いと、個々の凸部が損壊しやすくなってしまう場合があり、上記凸部の高さが上記範囲よりも低いと、上記微細凹凸を有する透明樹脂層の長波長側の光に対する反射防止機能が不十分になってしまう場合があるからである。なお、本態様における上記凸部の高さは、上述した方法で決定した平均値とする。
また、透明樹脂層の耐水性を向上させる観点からは、上記凸部の高さが1000nm以下であることが好ましい。上記凸部の高さが1000nm以下であることにより、微細凹凸を構成する凸部間に水が浸透することを好適に抑制することが可能となるからである。
なお、透明樹脂層の耐水性については、後述するため、ここでの説明は省略する。
上記凸部の高さのばらつきとしては、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。上記凸部の高さのばらつきが上記範囲よりも大きいと、上記微細凹凸を有する透明樹脂層の反射防止機能にムラが生じる場合があるからである。また、凸部の頂点から構成される表面の機械的強度が低下し、損傷を受けやすくなる。なお、上記凸部の高さのばらつきとは、凸部の縦断面を電子顕微鏡により観察して10個分の高さを測定し、その測定値の最大値と最小値との差をいう。
上記凸部が形成される間隔は、広くなるほど可視光の全波長領域において反射率が増加する傾向にあり、狭くなるほど可視光の全波長領域において反射率が低下する傾向にある。このようなことから、本態様における上記凸部が形成された間隔は、上記微細凹凸を有する透明樹脂層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で適宜調整することができるものであり、特に限定されるものではない。なお、本態様における上記凸部の間隔は、上述した方法で決定した平均値とする。
上記凸部の単位面積当たりの個数としては、上記微細凹凸を有する透明樹脂層に所望の反射防止機能を付与できる範囲内で適宜調整することができるものであり、特に限定されるものではないが、例えば、50個/μm以上であることが好ましく、60個/μm以上であることがより好ましく、70個/μm以上であることがさらに好ましい。上記凸部の単位面積当たりの個数が50個/μm未満の場合、ギラツキが発生し、反射防止機能が悪くなる。また、凸部の頂点から構成される表面の機械的強度が低下し、損傷を受けやすくなる。
なお、本態様においては、透明樹脂層が上記凸部以外の構造体を有していてもよいが、透明樹脂層における上記凸部の個数の、透明樹脂層における構造体全体の個数に対する割合は、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。上記割合が少なすぎると、反射防止機能、スティッキング耐性および型抜け性が低下してしまうからである。
上記凸部の360nm〜760nmの波長領域における入射角5°での正反射率は、0.5%以下であることが好ましく、0.005%〜0.3%の範囲内であることがより好ましく、0.005%〜0.1%の範囲内であることがさらに好ましい。
また、上記凸部の360nm〜760nmの波長領域におけるヘイズ値は、0.1%〜50%の範囲内であることが好ましい。
上記凸部は、短波長領域から長波長領域までくまなく反射することが可能である。
2.透明樹脂層
本態様における透明樹脂層は、上記微細凹凸を有するものである。また、透明樹脂層は透明樹脂を含むものである。
(1)透明樹脂層の構造
本態様における透明樹脂層は、表面に上記微細凹凸を有するものであれば特に限定されるものではないが、通常は、図1に示すように、微細凹凸αを支持するための基底部βを有する。
本態様における透明樹脂層においては、微細凹凸および基底部は一体で形成されていてもよく、別体で形成されていてもよいが、一体で形成されていることがより好ましい。
微細凹凸および基底部が一体であることにより、後述する「B.印刷物の製造方法」の項で説明するように、簡便な方法で透明樹脂層の表面に微細凹凸を形成することが可能となるからである。
上記基底部βの形成位置については、上記微細凹凸を支持することが可能であれば特に限定されるものではなく、図1に示すように、インキ層2を覆うように、基材1上に直接形成されていてもよく、図9(a)、(b)や、図10に示すように、後述の光透過性基板4、機能層6等を介して基材1に設けられていてもよい。
このような基底部の厚みとしては、上記微細凹凸を支持することが可能であれば特に限定されるものではなく、0.5μm〜150μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜100μmの範囲内であることがより好ましく、2μm〜80μmの範囲内であることがさらに好ましい。基底部の厚みが上記範囲内であることにより、透明樹脂層の収縮応力の程度を低減することができ、後述する基材等の種類に関わらず、本態様の印刷物にカールが生じることを防止することができるからである。また、クッション層としての効果があり、透明樹脂層の機械的損傷を補強することができる。例えば、透明樹脂層の機械的強度を高くさせたり、擦傷耐性を向上させ、傷つきにくくさせたりすることができる。さらに、透明樹脂層と基材およびインキ層との密着性を向上させることができる。
透明樹脂層の透明性としては、透明樹脂層を介して、印刷物のインキ層を観察することが可能であれば特に限定されないが、可視光の全波長範囲に対する光の透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
ここで、上記光の透過率は、例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製分光光度計、U−4100により測定することができる。
また、上記透明樹脂層の屈折率としては、通常、1.20〜2.40の範囲内とされる。
また、本態様における透明樹脂層は、上記微細凹凸を有することにより、優れた耐水性を示す。
ここで、本態様における「透明樹脂層の耐水性」とは、透明樹脂層に対する水の浸透速度として表すことができる。また上記浸透速度は、透明樹脂層表面における水との接触面積に比例するものである。
本態様においては、透明樹脂層が上記微細凹凸を有することから、透明樹脂層の微細凹凸面と水との接触面積を小さくすることができるため、微細凹凸に水が浸透していくことを抑制することが可能となる。また、本態様においては、上記微細凹凸の構造を調整することで、微細凹凸を有さない透明樹脂層に比べて、水の浸透速度を1/10以下程度に抑えることが可能となる。
透明樹脂層に対する水の浸透速度を評価する方法としては、40℃、90%の温湿度の環境下に一定期間印刷物を放置した時の外観の変化を確認する方法や、水分吸着量として質量変化率を計測する方法等を挙げることができる。
本態様においては、上記透明樹脂層が親水性を有していることが好ましい。上記透明樹脂層が親水性を有していることにより、透明樹脂層の防汚性やふき取り性を向上させることができるからである。
透明樹脂層の親水性としては、透明樹脂層の防汚性やふき取り性を向上させることが可能であれば特に限定されないが、水に対する接触角が50°以下であることが好ましく、さらには30°以下であることが好ましい。
なお、透明樹脂層の水に対する接触角についてはJIS K2396 に則り評価した値である。
透明樹脂層に親水性を付与する方法としては、例えば、後述の親水性剤を透明樹脂層に添加する方法、また例えば、透明樹脂層表面をコロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、電子線処理等によって処理することで、透明樹脂層表面に、水酸基、カルボキシル基、アミン基等を付与する方法、また例えば、スパッタ法または蒸着法等により透明樹脂層表面に親水性フッ化物、親水性金属化合物、二酸化チタン、二酸化珪素等の親水性無機物を積層する方法、また例えば、フッ素ガスと酸素もしくは二酸化硫黄等との親水性基を付与可能な混合ガス、またはフッ素系イソシアネートのガスを吹き付けることにより透明樹脂層表面に親水性基を付与する方法、また例えば、オゾンガス処理を行う方法等を挙げることができる。
透明樹脂層の形成方法としては、透明樹脂層の表面に形成される微細凹凸の形状、透明樹脂層に用いられる材料、透明樹脂層の形成位置、および本態様の印刷物の用途等により適宜選択されるものであるが、後述する「B.印刷物の製造方法」の項の説明する方法を好適に用いることができる。
(2)透明樹脂層の材料
次に透明樹脂層の材料について説明する。
本態様における透明樹脂層は、透明樹脂を含むものである。
本態様における透明樹脂層に用いられる透明樹脂の透明度については上述した透明樹脂層の透明度と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本態様に用いられる透明樹脂としては、上述した基底部および微細凹凸を有する透明樹脂層を形成することが可能であれば特に限定されるものではなく、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等を挙げることができる。中でも、本態様においては、電離放射線硬化性樹脂を用いることが好ましい。電離線放射線硬化性樹脂を用いることで、高精度に微細凹凸を作製することができ、透明樹脂層に良好な反射防止機能を付与することができるからである。
本態様に用いられる電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂が挙げられる。アクリル系樹脂としては、少なくとも3つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を挙げることができる。例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物;ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、ポリエーテルポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリルポリ(メタ)アクリレート、ポリアルキッドポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシポリ(メタ)アクリレート、ポリスピロアセタールポリ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンポリ(メタ)アクリレート、ポリチオールポリエンポリ(メタ)アクリレート、ポリシリコンポリ(メタ)アクリレート等の多官能化合物の(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
これら少なくとも3つ以上のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物のうち、塗膜強度、密着性の観点より、少なくとも6つの官能基を有するポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシポリ(メタ)アクリレート等のポリ(メタ)アクリレート類、分子内に4個以上のアクリロイル基を有する多官能のアクリレート類を好適に使用することができる。
ポリエポキシポリ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂のエポキシ基を(メタ)アクリル酸でエステル化し、官能基を(メタ)アクリロイル基としたものであり、ビスフェノールA型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物、ノボラック型エポキシ樹脂への(メタ)アクリル酸付加物等がある。
ポリウレタンポリ(メタ)アクリレートは、例えば、ジイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるもの、ポリオールとポリイソシアネートとをイソシアネート基過剰の条件下に反応させてなるイソシアネート基含有ウレタンプレポリマーを、水酸基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得られるものがある。あるいは、ポリオールとポリイソシアネートとを水酸基過剰の条件下に反応させてなる水酸基含有ウレタンプレポリマーを、イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類と反応させて得ることもできる。
ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサントリオール、トリメリロールプロパン、ポリテトラメチレングリコール、アジピン酸とエチレングリコールとの縮重合物等が挙げられる。
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。
水酸基をもつ(メタ)アクリレート類としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリテート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート等が挙げられる。
イソシアネート基を有する(メタ)アクリレート類としては、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート等が挙げられる。
分子内に4個以上のアクリロイル基を有する多官能としては、具体的には、上述した多価アルコールとアクリル酸のエステル化合物が挙げられ、単独または2種以上の混合物が好ましい。
さらに、WO2007/040159に記載されている(メタ)アクリル系重合性組成物を用いることができる。
また、本態様に用いられる熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチロール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、スチレン−イソプレンゴム、フッ素樹脂等を挙げることができる。また、これらのエラストマーや酸変性物などを挙げることができる。
本態様に用いられる透明樹脂層は、上述した樹脂に加えて、必要に応じて任意の機能性材料を含有していてもよい。このような機能性材料としては、例えば、帯電防止剤(導電剤)、屈折率調製剤、レベリング剤、防汚染剤、粘着剤、紫外線・赤外線吸収剤、高硬度化剤、硬度調製剤、流動性調整剤、酸化防止剤、フッ素系樹脂、流動パラフィン、パラフィンワックス、合成ポリエチレンワックスなどの炭化水素系、脂肪酸アマイド系、ステアリン酸金属塩、ステアリン酸カルシウム・ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸鉛・ステアリン酸亜鉛などの金属石鹸系、脂肪酸エステル系、シリコーンオイル系、アクリル系高分子系などの離型剤や内部または外部滑剤、炭酸ストロンチウムなどの偏屈折調整剤、親水性剤、親油性剤、着色剤等を挙げることができる。具体的には、例えば、特開2009−230045号公報に記載されている以下の物質が挙げられる。
(i)帯電防止剤(導電剤)
帯電防止剤(導電剤)を添加することにより、透明樹脂層の表面における塵埃付着を有効に防止することができる。帯電防止剤(導電剤)の具体例としては、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1〜第3アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基等のアニオン性基を有するアニオン性化合物、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系等の両性化合物、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系等のノニオン性化合物、スズおよびチタンのアルコキシドのような有機金属化合物およびそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等が挙げられ、さらに上記に列記した化合物を高分子量化した化合物が挙げられる。また、第3級アミノ基、第4級アンモニウム基、または金属キレート部を有し、かつ、電離放射線により重合可能なモノマーまたはオリゴマー、あるいは官能基を有するカップリング剤のような有機金属化合物等の重合性化合物もまた帯電防止剤として使用できる。
また、帯電防止剤として、導電性ポリマーが挙げられ、その具体例としては、脂肪族共役系のポリアセチレン、ポリアセン、オリアズレン等;芳香族共役系のポリ(パラフェニレン)等;複素環式共役系のポリピロール、ポリチオフェン、ポリイソシアナフテン等;含ヘテロ原子共役系のポリアニリン、ポリチエニレンビニレン等;混合型共役系のポリ(フェニレンビニレン)等が挙げられ、これら以外に、分子中に複数の共役鎖を持つ共役系である複鎖型共役系、上述の共役高分子鎖を飽和高分子にグラフトまたはブロック共重した高分子である導電性複合体、これら導電性ポリマー誘導体等が挙げられる。取り分け、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン等の有機系帯電防止剤を使用することがより好ましい。上記有機系帯電防止剤を使用することによって、優れた帯電防止性能を発揮すると同時に、透明樹脂層の全光線透過率を高めるとともにヘイズ値を下げることも可能になる。また、導電性向上や、帯電防止性能向上を目的として、有機スルホン酸や塩化鉄等の陰イオンを、ドーパント(電子供与剤)として添加することもできる。ドーパント添加効果も踏まえ、特にポリチオフェンは透明性、帯電防止性が高く、好ましい。上記ポリチオフェンとしては、オリゴチオフェンも好適に使用することができる。上記誘導体としては特に限定されず、例えば、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレンのアルキル基置換体等を挙げることができる。また、導電カーボンナノチューブ、ボロンおよびその化合物、金属、およびこれらの金属酸化物の粒子径1μm以下の微粉末を添加することもできる。例えば、チタン、アルミニウム、セリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、アンチモンからなる金属、または金属酸化物、あるいはこれらを表面に被覆またはドープした化合物が用いられる。
本態様の好ましい態様によれば、透明樹脂層中の帯電防止剤の含有量としては、0.01質量%〜50質量%程度であり、好ましくは0.1質量%〜30質量%程度である。上記数値範囲に調整することにより、透明樹脂層としての透明性を保ち、また反射防止機能に影響を与えることなく、帯電防止性能を付与することができる点で好ましい。
(ii)屈折率調整剤
屈折率調製剤を添加することにより、透明樹脂層の光学特性を調整することが可能となる。屈折率調製剤には、低屈折率剤、中屈折率剤、高屈折率剤等が挙げられる。
(a)低屈折率剤
低屈折率剤を添加した透明樹脂層の屈折率は、1.5未満であり、好ましくは1.45以下で構成されてなるものが好ましい。低屈折率剤の好ましいものとしては、シリカ、フッ化マグネシウムなどの低屈折率無機超微粒子(多孔質、中空など全ての種類の微粒子)、および低屈折率樹脂であるフッ素系樹脂が挙げられる。フッ素系樹脂としては、少なくとも分子中にフッ素原子を含む重合性化合物またはその重合体を用いることができる。重合性化合物は、特に限定されないが、例えば、電離放射線で硬化する官能基、熱硬化する極性基等の硬化反応性の基を有するものが好ましい。また、これらの反応性の基を同時に併せ持つ化合物でもよい。この重合性化合物に対し、重合体とは、上記のような反応性基などを一切もたないものである。
電離放射線硬化性基を有する重合性化合物としては、エチレン性不飽和結合を有するフッ素含有モノマーを広く用いることができる。より具体的には、フルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロブタジエン、パーフルオロ‐2,2‐ジメチル‐1,3‐ジオキソールなど)を例示することができる。(メタ)アクリロイルオキシ基を有するものとして、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、α−トリフルオロメタクリル酸メチル、α−トリフルオロメタクリル酸エチルのような、分子中にフッ素原子を有する(メタ)アクリレート化合物;分子中に、フッ素原子を少なくとも3個持つ炭素数1〜14のフルオロアルキル基、フルオロシクロアルキル基またはフルオロアルキレン基と、少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する含フッ素多官能(メタ)アクリル酸エステル化合物などもある。
熱硬化性極性基として好ましいのは、例えば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エポキシ基等の水素結合形成基である。これらは、塗膜との密着性だけでなく、シリカなどの無機超微粒子との親和性にも優れている。熱硬化性極性基を持つ重合成化合物としては、例えば、4−フルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体;フルオロエチレン−炭化水素系ビニルエーテル共重合体;エポキシ、ポリウレタン、セルロース、フェノール、ポリイミド等の各樹脂のフッ素変性品などを挙げることができる。
電離放射線硬化性基と熱硬化性極性基とを併せ持つ重合性化合物としては、アクリルまたはメタクリル酸の部分および完全フッ素化アルキル、アルケニル、アリールエステル類、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類、完全または部分フッ素化ビニルエステル類、完全または部分フッ素化ビニルケトン類等を例示することができる。
また、含フッ素重合体の具体例としては、上記電離放射線硬化性基を有する重合性化合物の含フッ素(メタ)アクリレート化合物を少なくとも1種類含むモノマーまたはモノマー混合物の重合体;上記含フッ素(メタ)アクリレート化合物の少なくとも1種類と、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートの如き分子中にフッ素原子を含まない(メタ)アクリレート化合物との共重合体;フルオロエチレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン、1,1,2−トリクロロ−3,3,3−トリフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレンのような含フッ素モノマーの単独重合体または共重合体等が挙げられる。
これらの共重合体にシリコーン成分を含有させたシリコーン含有フッ化ビニリデン共重合体も使うことができる。この場合のシリコーン成分としては、(ポリ)ジメチルシロキサン、(ポリ)ジエチルシロキサン、(ポリ)ジフェニルシロキサン、(ポリ)メチルフェニルシロキサン、アルキル変性(ポリ)ジメチルシロキサン、アゾ基含有(ポリ)ジメチルシロキサン、ジメチルシリコーン、フェニルメチルシリコーン、アルキル・アラルキル変性シリコーン、フルオロシリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、脂肪酸エステル変性シリコーン、メチル水素シリコーン、シラノール基含有シリコーン、アルコキシ基含有シリコーン、フェノール基含有シリコーン、メタクリル変性シリコーン、アクリル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、カルボン酸変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン等が例示される。中でもジメチルシロキサン構造を有するものが好ましい。
さらには、以下のような化合物からなる非重合体または重合体も、フッ素系樹脂として用いることができる。すなわち、分子中に少なくとも1個のイソシアナト基を有する含フッ素化合物と、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基のようなイソシアナト基と反応する官能基を分子中に少なくとも1個有する化合物とを反応させて得られる化合物;フッ素含有ポリエーテルポリオール、フッ素含有アルキルポリオール、フッ素含有ポリエステルポリオール、フッ素含有ε−カプロラクトン変性ポリオールのようなフッ素含有ポリオールと、イソシアナト基を有する化合物とを反応させて得られる化合物等を用いることができる。
本態様の好ましい態様によれば、低屈折率剤として、「空隙を有する微粒子」を利用することが好ましい。「空隙を有する微粒子」は透明樹脂層の層強度を保持しつつ、その屈折率を下げることを可能とする。本態様において、「空隙を有する微粒子」とは、微粒子の内部に気体が充填された構造および/または気体を含む多孔質構造体を形成し、微粒子本来の屈折率に比べて微粒子中の気体の占有率に反比例して屈折率が低下する微粒子を意味する。また、本態様にあっては、微粒子の形態、構造、凝集状態、塗膜内部での微粒子の分散状態により、内部、および/または表面の少なくとも一部にナノポーラス構造の形成が可能な微粒子も含まれる。
空隙を有する無機系の微粒子の具体例としては、特開2001−233611号公報で開示されている技術を用いて調製したシリカ微粒子が好ましくは挙げられる。その他、特開平7−133105号公報、特開2002−79616号公報、特開2006−106714号公報等に記載された製法によって得られるシリカ微粒子であってよい。空隙を有するシリカ微粒子は製造が容易でそれ自身の硬度が高いため、バインダーと混合して透明樹脂層に添加した際、その層強度が向上され、かつ、屈折率を1.20〜1.45程度の範囲内に調整することを可能とする。特に、空隙を有する有機系の微粒子の具体例としては、特開2002−80503号公報で開示されている技術を用いて調製した中空ポリマー微粒子が好ましく挙げられる。
塗膜の内部および/または表面の少なくとも一部にナノポーラス構造の形成が可能な微粒子としては先のシリカ微粒子に加え、比表面積を大きくすることを目的として製造され、充填用のカラムおよび表面の多孔質部に各種化学物質を吸着させる徐放材、触媒固定用に使用される多孔質微粒子、または断熱材や低誘電材に組み込むことを目的とする中空微粒子の分散体や凝集体を挙げることができる。そのような具体的としては、市販品として日本シリカ工業株式会社製の商品名NipsilやNipgelの中から多孔質シリカ微粒子の集合体、日産化学工業社製のシリカ微粒子が鎖状に繋がった構造を有するコロイダルシリカUPシリーズ(商品名)から、本態様の好ましい粒子径の範囲内のものを利用することが可能である。
「空隙を有する微粒子」の平均粒子径は、5nm〜300nm程度であり、好ましくは8nm〜100nm程度であり、より好ましくは10nm〜80nm程度である。微粒子の平均粒子径がこの範囲内にあることにより、透明樹脂層に優れた透明性を付与することが可能となる。
(b)高屈折率剤/中屈折率剤
高屈折率剤、中屈折率剤は、反射防止機能をさらに向上させるために用いられる。高屈折率剤、中屈折率剤の屈折率は1.55〜2.00の範囲内で設定されてよく、中屈折率剤は、その屈折率が1.55〜1.80の範囲内のものを意味し、高屈折率剤は、その屈折率が1.65〜2.00の範囲内のものを意味する。
これら屈折率剤としては、微粒子が挙げられ、その具体例(かっこ内は屈折率を示す)としては、酸化亜鉛(1.90)、チタニア(2.3〜2.7)、セリア(1.95)、スズドープ酸化インジウム(1.95)、アンチモンドープ酸化スズ(1.80)、イットリア(1.87)、ジルコニア(2.0)が挙げられる。
(iii)レベリング剤
レベリング剤は、透明樹脂層に、滑り性、防汚性および耐擦傷性の効果を付与することを可能とする。従って、レベリング剤は防汚染剤、撥水剤、撥油剤、指紋付着防止剤として機能するものである。レベリング剤の好ましいものとしては、フッ素系またはシリコーン系等が挙げられる。
(iv)防汚染剤
防汚染剤は、透明樹脂層の最表面の汚れ防止を主目的とし、さらに透明樹脂層に耐擦傷性を付与することが可能となる。防汚染剤の具体例としては、撥水性、撥油性、指紋拭き取り性を発現するような添加剤が有効である。具体例としては、フッ素系化合物、ケイ素系化合物、またはこれらの混合化合物が挙げられる。より具体的には、2−パーフロロオクチルエチルトリアミノシラン等のフロロアルキル基を有するシランカップリング剤等が挙げられ、特に、アミノ基を有するものが好ましくは使用することができる。
(v)紫外線・赤外線吸収剤
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物等が挙げられる。また、赤外線吸収剤としては、ジインモニウム系化合物、フタロシアニン系化合物等が挙げられる。
(vi)高硬度化剤、硬度調整剤、および流動性調整剤
高硬度化剤、硬度調製剤、および流動性調整剤は、通常、透明樹脂層で用いられるものであればいずれのものであってもよい。
(vii)親水性剤
親水性剤は、透明樹脂層の防汚性やふき取り性を向上させることが可能である。
親水性剤としては、具体的には末端に水酸基やカルボキシル基やアミン基を有する化合物を結合させたフッ素あるいはシリコーン化合物、あるいは界面活性剤等を挙げることができる。
また、界面活性剤としては、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤(エステル型、エーテル型、エステルエーテル型等)を挙げることができる。
(3)透明樹脂層のその他の構成
本態様における透明樹脂層は、表面に上述した微細凹凸を有し、かつ印刷物のインキ層上に形成することが可能であれば特に限定されるものではなく、他にも必要な構成を適宜選択して追加することができる。以下、このような構成について説明する。
(i)光透過性基板
本態様においては、図9(a)、(b)に示すように、透明樹脂層3の微細凹凸α側とは反対側に光透過性基板4を有していてもよい。光透過性基板4を有することにより、透明樹脂層3を光透過性基板4上に形成した後、粘着層5を介して、インキ層2上に貼付して、本態様の印刷物10とすることができる。よって、インキ層2上に直接、透明樹脂層3を形成することが困難な場合に有効である。なお、粘着層5については後述する。
また、図9(b)に示すように、透明樹脂層3が後述する機能層6を有する場合は、光透過性基板4は機能層6よりもインキ層2側に配置される。
本態様に用いられる光透過性基板は、可視光に対する透過性を備えるものであれば特に限定されるものではないが、中でも、可視光の全波長範囲に対する光の透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
ここで、上記光の透過率は、例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製分光光度計、U−4100により測定することができる。
本態様に用いられる光透過性基板は、その屈折率が上記透明樹脂層に用いられる樹脂の屈折率と同程度であることが好ましい。これにより、本態様の印刷物において、透明樹脂層と光透過性基板との界面に、屈折率の不連続界面が形成され、当該不連続界面において光が反射されることにより、本態様の印刷物の反射防止機能が損なわれることを防止することができるからである。
本態様における透明樹脂層の屈折率と光透過性基板の屈折率の差としては、具体的には、0〜0.5の範囲内であることが好ましく、0〜0.2の範囲内であることがより好ましく、0〜0.1の範囲内であることがさらに好ましい。
なお、本態様に用いられる光透過性基板の屈折率の値は、上述した樹脂の屈折率との関係において決定されるものであるから、特に好ましい値はないが、通常、1.20〜2.40の範囲内とされる。
本態様に用いられる光透過性基板を構成する材料としては、上述した光透過性を示し、かつ所望の屈折率を有する光透過性基板を得ることができるものであれば、特に限定されるものではない。本態様において、光透過性基板に用いられる材料としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル共重合体等のアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、環状オレフィン系高分子(代表的にはノルボルネン系樹脂等があるが、例えば、日本ゼオン株式会社製の製品名「ゼオノア」、JSR株式会社製の「アートン」等がある)等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、あるいは、ガラス(セラミックスを含む)等を挙げることができる。
また、必要に応じて上述した透明樹脂層の材料の項で説明した機能性材料を含有していてもよい。
本態様における透明樹脂層が光透過性基板を有する場合は、光透過性基板に透明樹脂層が積層形成されていてもよく、透明樹脂層および光透過性基板の樹脂を共押し出しして形成されていてもよい。
また、上記光透過性基板に、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂など、有機溶剤に可溶な樹脂が用いられている場合、透明樹脂層に用いられる樹脂を有機溶剤に希釈し、光透過性基板に積層する方法が一般的であるが、このとき、光透過性基板には使用される有機溶剤が浸透し、それに伴い、使用される透明樹脂層の樹脂の一部も浸透する浸透層が形成されることで、密着性の向上および透明樹脂層の機械強度の向上がなされてもよい。
(ii)粘着層
本態様においては、図9(a)、(b)に示すように、透明樹脂層3が光透過性基板4を有する場合は、通常、光透過性基板4とインキ層2との間に粘着層5が形成される。
本態様に用いられる粘着層は、本態様の印刷物の用途に応じて所望の粘着剤からなるものであれば、特に限定されるものではない。上記粘着層に用いられる粘着剤としては、例えば、アクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマー、いわゆるゲルポリマー等を挙げることができる。
また、本態様に用いられる粘着層の厚みは、1μm〜1000μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜300μmの範囲内であることがより好ましく、1μm〜100μmの範囲内であることがさらに好ましいが、特に限定されるものではない。
(iii)機能層
本態様においては、図9(b)、図10に示すように、透明樹脂層3の微細凹凸α側とは反対側に機能層6を有していてもよい。
ここで、本態様における透明樹脂層の材料として、上述した種々の機能性材料を用いた場合は、透明樹脂層の成形性が低下して高精細な微細凹凸を形成することが困難となる場合がある。一方、透明樹脂層の微細凹凸側とは反対側に機能性材料を含む機能層を有する場合は、機能層によって透明樹脂層に所望の機能を付与することが可能となり、また、透明樹脂層は上述した機能性材料を含まないことから成形性が低下せず、高精細な微細凹凸を形成することができる。
上記機能層としては、上述した機能性材料を含有し、所望の機能を透明樹脂層に付与することが可能であれば特に限定されない。本態様における機能層としては、透明樹脂層の硬度を向上させて透明樹脂層に耐久性を付与するハードコート層、透明樹脂層と基材およびインキ層との密着性を向上させるプライマー層、透明樹脂層の帯電を防止する帯電防止層等を好適に用いることが可能である。
また、ハードコート層またはプライマー層は、上記帯電防止層を兼ねることが可能である。
本態様における機能層の厚みとしては、透明樹脂層に所望の機能を付与することが可能であり、かつ透明樹脂層の微細凹凸側とは反対側、すなわち印刷物のインキ層側に形成可能であれば特に限定されるものではないが、具体的には、0.05μm〜50μmの範囲内、なかでも0.1μm〜30μmの範囲内、特に1μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。機能層の厚みが上記範囲を超える場合は、機能層を形成することにより、印刷物にカールを生じてしまう可能性があるからであり、機能層の厚みが上記範囲に満たない場合は、透明樹脂層に所望の機能を付与することが困難となる可能性があるからである。
本態様における機能層は、その屈折率が上記透明樹脂層の屈折率と同程度であることが好ましい。これにより、透明樹脂層と機能層との境界において、屈折率の不連続界面が形成されることを防止できるため、上記境界において光が反射されることに起因して、本態様における透明樹脂層の反射防止機能が損なわれることを防止することができるからである。なお、具体的な透明樹脂層の屈折率および機能層の屈折率の差については、上述した透明樹脂層の屈折率および光透過性基板の屈折率の差の項で説明した数値範囲と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
また、透明樹脂層が、機能層の他に上述した光透過性基板を有する場合は、透明樹脂層の屈折率、機能層の屈折率、および光透過性基板の屈折率のそれぞれの差が、上述した透明樹脂層の屈折率および機能層の屈折率の差の項で説明した数値範囲内となることが好ましい。
本態様における機能層の材料については、透明樹脂層に所望の機能を付与することが可能な機能層を形成することができる材料であれば特に限定されず、上述した透明樹脂層に用いられる樹脂、機能性材料等から適宜選択することができるので、ここでの説明は省略する。
なお、本態様における機能層を上述した光透過性基板上に形成する場合は、上記光透過性基板に、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂など、有機溶剤に可溶な樹脂が用いられている場合、機能層に用いられる樹脂を有機溶剤に希釈し、光透過性基板に積層する方法が一般的であるが、このとき、光透過性基板には使用される有機溶剤が浸透し、それに伴い、使用される機能層の樹脂の一部も浸透する浸透層が形成されることで、密着性の向上および機能層の機械強度の向上がなされてもよい。
3.インキ層
本態様におけるインキ層は、基材上に形成され、樹脂インキを含むものである。
また、本態様においては通常、複数色のインキ層が基材上に形成され、絵柄、写真、文字、数字、標章等の印刷画像を構成するために用いられる。
上記インキ層としては、一般的な印刷法により形成されるものであり、具体的な樹脂インキについては、一般的な印刷物のインキ層に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
上記インキ層の厚みとしては、インキ層を形成する際に用いられる印刷法により適宜選択されるものであるが、具体的には、0.01μm〜2000μmの範囲内、なかでも0.3μm〜800μmの範囲内、特に0.8μm〜400μmの範囲内であることが好ましい。インキ層の厚みが上記範囲を超える場合は、印刷物が厚膜化するため、印刷物の加工性が低下する恐れがあるからであり、インキ層の厚みが上記範囲に満たない場合は、インキ層を基材上に均質に形成することが困難となり、擦れやムラを生じやすくなる可能性があるからである。
また、本態様におけるインキ層の形成方法としては、上述したように、一般的な印刷法を用いることが可能である。具体的には、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、活版印刷、LCコート法(例えば特許第2098895号公報参照)、電子写真法、インクジェット、熱溶融型熱転写法、昇華転写法、スプレー法、電着法、ディップコート法、静電塗装法、粉体塗装法等を挙げることができる。なお、インキ層の形成方法については、本態様の印刷物の用途等に応じて適宜選択することができる。
4.基材
次に基材について説明する。
本態様に用いられる基材としては、上記インキ層を形成することが可能な程度の自己支持性を有するものであれば特に限定されるものではない。
上記基材としては、耐水性を有するものであってもよく、耐水性を有さないものであってもよい。
このような基材としては、例えば紙基材、金属基材、樹脂製基材、布、セラミック等を挙げることができる。本態様においては、上述した基材のなかでも、紙基材あるいは樹脂製基材であることが好ましい。紙基材や樹脂製基材は加工性に優れるからである。
上記紙基材あるいは樹脂製基材としては、具体的には、一般的な印刷法に用いられる紙基材あるいは樹脂製基材と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
5.その他の構成
本態様の印刷物は、上述した透明樹脂層、インキ層、および基材を有するものであれば特に限定されるものではなく、他にも必要な構成を適宜選択して追加することが可能である。
(1)印刷物用粘着層
本態様においては、基材の透明樹脂層側とは反対側の面に印刷物用粘着層を有していてもよい。印刷物用粘着層を有することにより、本態様の印刷物を壁、看板等に容易に貼付することが可能となるからである。また、印刷物と、壁や看板等との間を印刷物用粘着層を用いて埋めることができることから、貼付された印刷物表面に不要な段差を生じないものとすることができる。
印刷物用粘着層に用いられる粘着剤については、上述した粘着剤と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
印刷物用粘着層の膜厚としては、印刷物用粘着層を介して本態様の印刷物を貼付し、印刷物の段差を埋めることができれば特に限定されるものではなく、例えば、0.5μm〜3000μm程度、好ましくは1.0μm〜1000μm程度とすることができる。
印刷物用粘着層の形成方法としては、公知の方法を用いることができる。
(2)剥離層
本態様においては、上述した印刷物用粘着層を有する場合、印刷物用粘着層上に剥離層を有していてもよい。印刷物用粘着層上に剥離層を有することにより、本態様の印刷物の取り扱いが容易になる。また、印刷物から剥離層を剥離するのみで、本態様の印刷物を壁、看板等に容易に貼付することが可能なる。
本態様における剥離層は、本態様の印刷物を貼付する際に剥がされるものである。剥離層としては、剥離性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、一般的な樹脂基材を用いることができる。
6.用途
本態様の印刷物は、広告、ポスター、雑誌、書籍、カタログ、化粧板等に用いることができる。
7.印刷物の製造方法
本態様の印刷物の製造方法については、特に限定されないが、例えば後述する「B.印刷物の製造方法」の項で説明する製造方法により製造することができる。
II.第2態様
次に、本発明の印刷物の第2態様について説明する。
本態様の印刷物は、微細凹凸が、上記インキ層の表面に形成されているものである。具体的に、基材と、基材上に形成されたインキ層とを有し、上記インキ層の表面に上述した微細凹凸が形成されているものである。
また、本態様においては、通常、インキ層は印刷物のインキ層側の最表面に位置するものである。また、本態様においては、通常、複数色のインキ層が基材上に形成され、絵柄、写真、文字、数字、標章等の印刷画像を構成するために用いられる。
ここで、本態様の印刷物について図を用いて説明する。図11は本態様の印刷物の一例を示す概略断面図である。図11に示すように、本態様の印刷物10は、基材1と基材1上に形成されたインキ層2とを有し、インキ層2の表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された複数の凸部を備える微細凹凸αを有するものである。また、本態様におけるインキ層2は通常、微細凹凸αを支持するための基底部β(以下、インキ層用基底部と称して説明する場合がある。)を有するものである。また、図11に示すように、本態様においては、基材1上に複数色のインキ層2が形成されるものである。
本態様においては、本態様の印刷物を構成する層の数を少なくすることができ、上記印刷物を薄くすることができることから、加工性の高い印刷物とすることができる。
以下、本態様の印刷物について説明する。なお、本態様における微細凹凸、基材、その他の構成、および用途については、上述した第1態様の印刷物の項で記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
1.インキ層
本態様におけるインキ層は、基材上に形成され、樹脂インキを含み、可視光領域の波長以下の周期で形成された複数の凸部を備える微細凹凸を有するものである。また、本態様におけるインキ層は、上述した印刷画像を構成するものである。
(1)インキ層の構造
本態様のインキ層は、通常、上記微細凹凸を支持するためのインキ層用基底部を有するものである。
本態様においては、上記微細凹凸およびインキ層用基底部が一体で形成されていてもよく、別体で形成されていてもよいが、一体で形成されていることが好ましい。上記微細凹凸およびインキ層用基底部が一体であることにより、後述する「B.印刷物の製造方法」の項で説明するように、簡便な方法でインキ層表面に微細凹凸を形成することができるからである。
上記インキ層用基底部の厚みとしては、上記微細凹凸を支持することができ、かつ印刷物における所望の印刷画像を構成することが可能であれば特に限定されないが、0.3μm〜100mmの範囲内、なかでも6μm〜30mmの範囲内、特に9μm〜15mmの範囲内であることが好ましい。インキ層用基底部の厚みが上記範囲に満たない場合は、所望の反射防止機能を示す微細凹凸を形成することが困難である可能性や、所望の印刷画像を構成することが困難である可能性があるからである。また、インキ層用基底部の厚みが上記範囲を超える場合は、印刷物の厚みが厚くなり、加工性が低下する可能性があるからである。また、インキ層が硬化性樹脂インキを含む場合は割れが生じやすくなるためである。
本態様におけるインキ層2としては、図11に示すように、基材1の全面に形成されているものであってもよく、図示はしないが、基材の一部の面に形成されているものであってもよい。
本態様におけるインキ層の形成方法としては、インキ層表面に形成される微細凹凸の形状、インキ層の材料、および印刷物の用途等により適宜選択されるものであるが、後述する「B.印刷物の製造方法」の項で説明する方法を好適に用いることができる。
(2)インキ層の材料
本態様におけるインキ層は樹脂インキを含むものである。
また、樹脂インキは通常、樹脂と着色剤とを含むものである。
上記樹脂インキとしては、印刷物の基材表面に印刷画像を構成することができ、かつ表面に上記微細凹凸を形成することが可能なインキ層を形成することができるものであれば特に限定されない。本態様においては、なかでも、硬化性樹脂インキであることが好ましい。本態様におけるインキ層を硬化性樹脂インキを用いて形成することにより、インキ層の表面に高精細な微細凹凸を形成することが可能となるからである。
樹脂インキとしては、具体的には、上述した第1態様の印刷物の項で記載した透明樹脂層と同様の材料に顔料や染料などの着色剤を添加したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
また、着色剤については、一般的な印刷物に用いられるものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本態様においては、上述した樹脂インキに機能性材料を添加して用いることもできる。なお、機能性材料については上述した第1態様の項で記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
2.印刷物の製造方法
本態様の印刷物の製造方法については、特に限定されず、例えば後述する「B.印刷物の製造方法」の項で説明する製造方法を用いて製造することができる。
B.印刷物の製造方法
次に、本発明の印刷物の製造方法について説明する。
本発明の印刷物の製造方法は、基材と、上記基材上に形成され、樹脂インキを含むインキ層とを有し、上記印刷物の上記インキ層側の最表面に、可視光領域の波長以下の周期で形成された複数の凸部を備える微細凹凸を有することを特徴とする印刷物の製造方法であり、具体的には、上述した「A.印刷物」の項で説明した第1態様の印刷物を製造する製造方法(第1実施態様)と、第2態様の印刷物を製造する製造方法(第2実施態様)とを有する。
以下、各実施態様について説明する。
I.第1実施態様
まず、本発明の印刷物の製造方法の第1実施態様について説明する。
本実施態様の印刷物の製造方法は、上述した「A.印刷物」の項で説明した第1態様の印刷物を製造する製造方法である。
具体的に、本実施態様の印刷物の製造方法は、基材と、上記基材上に形成され、樹脂インキを含むインキ層と、上記インキ層上に形成され、透明樹脂を含み、かつ表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された複数の凸部を備える微細凹凸が形成されている透明樹脂層とを有する印刷物の製造方法であって、上記インキ層が形成された上記基材上に上記透明樹脂を含む透明樹脂層形成用層を形成する透明樹脂層形成用層形成工程と、金属基体、および上記金属基体の表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された複数の微細孔を備える金型または上記金型の複製型を準備し、上記透明樹脂層形成用層表面と上記金型または上記複製型の上記微細孔側とを接触させて配置し、圧力を負荷することにより、上記透明樹脂層形成用層の上記金型側表面または上記複製型側表面に上記微細凹凸を形成する賦型工程と、上記賦型工程後に、上記透明樹脂層形成用層を固化する工程、および上記透明樹脂層形成用層から上記金型または上記複製型を剥離する工程を順不同に行い、上記透明樹脂層を形成する固化・剥離工程とを有することを特徴とする製造方法である。
ここで、本実施態様の印刷物の製造方法について図を用いて説明する。図12(a)〜(d)は、本実施態様の印刷物の製造方法の一例を示す工程図である。本実施態様の印刷物の製造方法においては、まず、図12(a)に示すように、インキ層2が形成された基材1上に透明樹脂を含む透明樹脂層形成用層3’を形成する(透明樹脂層形成用層形成工程)。次に、図12(b)に示すように、金属基体21、および金属基体21の表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された複数の微細孔を備える金型20を準備し、透明樹脂層形成用層3’表面と金型20の微細孔側とを接触させて配置し、ロール30等を用いて圧力を負荷することにより、上記透明樹脂層形成用層3’の金型20側表面に微細凹凸を形成する(賦型工程)。賦型工程後に、図3(c)に示すように、透明樹脂層形成用層3’を固化した後、透明樹脂層形成用層3’から金型20を剥離することにより、図12(d)に示すような透明樹脂層3を形成する(固化・剥離工程)。本実施態様の印刷物の製造方法においては、上述した工程を行うことにより、図12(d)に示すような印刷物10を製造することができる。なお、図12(d)において説明していない符号については、図1と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本実施態様によれば、簡便な方法で、上記透明樹脂層の表面に上記微細凹凸を形成することができ、反射防止機能を備え、かつ優れた耐水性を有する印刷物を製造することが可能となる。
以下、本実施態様の印刷物の製造方法における各工程について説明する。
1.透明樹脂層形成用層形成工程
本実施態様における透明樹脂層形成用層形成工程は、上記インキ層が形成された上記基材上に上記透明樹脂を含む透明樹脂層形成用層を形成する工程である。
また、本工程においては、通常、透明樹脂を含む透明樹脂層用組成物を調製し、これをインキ層が形成された基材上に所定の厚みで塗布することにより、透明樹脂層形成用層が形成される。
上記透明樹脂層用組成物に用いられる透明樹脂については、上述した「A.印刷物」に記載した透明樹脂層に用いられる樹脂と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
また、透明樹脂層用組成物は、上述した「A.印刷物」に記載した機能性材料を含有していてもよい。
また、上記透明樹脂層形成用層が電離放射線硬化性樹脂を含む場合は、光重合開始剤を含有していることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。具体的には、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ゲンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ミヒラーズケトン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられ、これらの光重合開始剤は2種以上を適宜併用することもできる。
上記透明樹脂層用組成物の形態としては、所望の膜厚で透明樹脂層形成用層を形成することが可能であれば特に限定されず、インキ状であってもよく、粉体状であってもよい。また、透明樹脂層用組成物として、熱可塑性樹脂を含む場合は、シート状であってもよい。
透明樹脂層用組成物の粘度としては、インキ層が形成された基材上に所定の膜厚を有する透明樹脂層形成用層を形成することが可能であれば特に限定されないが、例えば、25℃において、10mPa・s〜10000mPa・sの範囲内であることが好ましく、50mPa・s〜5000mPa・sの範囲内であることがより好ましく、100mPa・s〜3000mPa・sの範囲内であることがさらに好ましい。
また、溶融型の樹脂の場合には、例えば、190℃におけるメルトフローインデックス(MFI)が、1.0g/10min以上であることが好ましく、3.0g/10min以上であることがより好ましく、5.0g/10min以上であることがさらに好ましい。
透明樹脂層用組成物の塗布方法としては、一般的な塗布方法と同様とすることができ、例えば基材上に均一に透明樹脂層用組成物を塗布することができれば特に限定されるものではなく、例えば、ディップコート法、ロールコート法、Tダイコート法、キャストコート法、ブレードコート法、スピンコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、LB法、電子写真法等、公知の方法を用いることができる。塗工後、適宜乾燥工程や熱またはUVやEBによるハーフキュア工程を入れることができる。
本工程により形成される透明樹脂層形成用層の厚みとしては、製造される印刷物の用途等により適宜選択される。
また、本工程に用いられる基材およびインキ層については、上述した「A.印刷物」の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
2.賦型工程
本実施態様における賦型工程は、金属基体、および上記金属基体の表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された複数の微細孔を備える金型または上記金型の複製型を準備し、上記透明樹脂層形成用層表面と上記金型または上記複製型の微細孔側とを接触させて配置し、圧力を負荷することにより、上記透明樹脂層形成用層の上記金型側表面または上記複製型側表面に上記微細凹凸を形成する工程である。
(1)金型
本工程に用いられる金型について説明する。
本工程に用いられる金型は、金属基体、および上記金属基体の表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された複数の微細孔を備えるものである。
本工程に用いられる金型について図を用いて説明する。図13は、本工程に用いられる金型の一例を示す概略断面図である。図13に示すように、本工程に用いられる金型20は、通常、金属基体21と、上記金属基体21の表面に形成され、所定の周期で形成された複数の微細孔を備える金属酸化膜21’とを有するものである。
(i)金属基体
本実施態様に用いられる金属基体としては、その表面に金属酸化被膜を形成することができる金属、いわゆるバルブ金属からなるものであれば、特に限定されるものではない。このような金属基体としては、アルミニウム、マグネシウム、チタン、シリコン等からなるものを挙げることができ、中でも、アルミニウムからなるものを好適に用いることができる。アルミニウムは酸化されやすく、陽極酸化法を用いてアルミニウム酸化膜を形成しやすいからである。本実施態様に用いられる金属基体としては、アルミニウム単体からなるものであってもよく、任意の基材上にアルミニウムからなる層がスパッタ法、蒸着法、メッキ法で最表層となるように形成された構成を有するものであってもよい。金属基体に用いられる基材としては、ゴム、樹脂、金属等からなるものを挙げることができる。
また、本実施態様に用いられる金属基体の形態は、特に限定されるものではない。したがって、本実施態様においては、シート状、ロール状、スリーブ形状、ベルト状、立体状、フィルム状等のいずれの形態を有する金属基体であっても好適に用いることができる。なお、ここで「立体状の金属基体」とは、射出成型等により形成された立体物である金属基体のことをいい、「フィルム状の金属基体」とは、厚さ200μm以下のポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、ポチブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、アクリル樹脂、アクリルメラミン樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂等の樹脂層が積層された金属基体、またはニッケル、アルミニウム、ステンレス、銅などの金属、またはこれらの合金、またはこれらの合金の表面にドライメッキ法あるいはウェットメッキ法でクロム、タンタル、チタン、銅、銀、金、ケイ素等の金属や無機物あるいはこれらの化合物を積層した金属などの金属フィルム上に積層された金属基体、あるいはこれらの複合体からなる金属基体のことをいう。
上記金属基体の厚みとしては、上記金属基体の表面に複数の微細孔を有する金属酸化膜を形成することができ、かつ金型として十分な強度を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、50nm〜100mmの範囲内で設定することができる。
(ii)金属酸化膜
上記金属酸化膜は、金属基体の表面に形成され、複数の微細孔を有するものである。上記金属酸化膜は、通常、金属基体を陽極酸化することによって形成される。上記金属酸化膜の厚みとしては、特に限定されるものではなく、製造される印刷物に形成される透明樹脂層に応じて適宜選択される。
ここで、本実施態様の製造方法により製造される印刷物における透明樹脂層としては、上述した「A.印刷物」の項で説明したように、透明樹脂層の表面に形成される微細凹凸における凸部が、基材に対してテーパー状に立ち上がる錐台形状の本体部と、上記本体部の頂面を覆うように形成された曲面構造を有する先端部とを有することが好ましい。
よって、本工程に用いられる金型における微細孔については、上述した凸部を有する微細凹凸を形成することができるような形状であることが好ましい。
このような金属酸化膜が有する微細孔としては、上記微細孔の開口部におけるテーパー形状の深さが、60nm〜2000nmの範囲内であることが好ましく、中でも、100nm〜1200nmの範囲内であることが好ましく、特に120nm〜800nmの範囲内であることが好ましい。上記テーパー形状の深さが上記範囲よりも深いと、本実施態様における金型を用いて形成された透明樹脂層において、微細孔の転写部分が損壊しやすくなってしまう場合があったり、スティッキングが発生しやすくなる場合があったり、金型から抜けにくくなったりする場合があるからである。一方、上記テーパー形状の深さが上記範囲よりも浅いと、テーパー形状を形成することが困難となり、また、反射防止機能が悪くなる場合があるからである。
ここで、微細孔の開口部におけるテーパー形状の深さとは、微細孔の開口表面からテーパー形状の最深部までの距離をいい、図13におけるDで表される距離のことである。微細孔の形状によっては、上記テーパー形状の深さと、微細孔の孔深さとが同一になる場合がある。なお、本実施態様における上記テーパー形状の深さは、微細孔の縦断面を電子顕微鏡により観察して10個分のテーパー形状の深さを測定し、その測定値の平均値とする。
上記微細孔の開口部の縦断面におけるテーパー角度としては、テーパー形状を形成することが可能な角度であれば特に限定されるものではないが、50°〜87°の範囲内であることが好ましく、55°〜85°の範囲内であることがより好ましく、55°〜82°の範囲内であることがさらに好ましい。微細孔の開口部の縦断面におけるテーパー角度が上記範囲よりも大きいと、開口部が垂直形状に近くなり、透明樹脂層を形成する際に、金型の微細孔に透明樹脂層形成用層が入り込みにくくなる場合があるからである。また、金型から抜けにくくなるからである。一方、微細孔の開口部の縦断面におけるテーパー角度が上記範囲よりも小さいと、開口部を形成することが困難となる場合があるからである。また、反射防止機能が劣るようになるからである。
ここで、微細孔の開口部の縦断面におけるテーパー角度とは、微細孔の縦断面での側壁が直線状の場合、上記側壁を近似する直線と、開口表面に平行な直線とで形成される角度をいい、例えば、図13におけるθで表される角度のことである。一方、微細孔の縦断面での側壁が曲線状の場合、微細孔の開口表面の外周上の点および微細孔におけるテーパー形状の最深部の横断面からなる面の外周上の点を最短距離となるように選択して結んだ直線と、開口表面に平行な直線とで形成される角度をいい、図14におけるθで表される角度のことである。なお、本実施態様における上記テーパー角度は、上述した方法で決定した平均値とする。また、図14は、本実施態様における金型の他の例を示す概略断面図であり、図14における各符号は、図13と同様であるので、ここでの記載は省略する。
本実施態様における微細孔は、開口部に所定の深さのテーパー形状を有していればよく、先端部の形状は、開口部に対して狭まっていれば特に限定されるものではない。上記微細孔の先端部の形状は、例えば、尖端形状であってもよく、平面形状であってもよく、曲面形状であってもよい。中でも、本実施態様においては、上記微細孔の先端部の形状が曲面形状であることが好ましい。曲面形状の場合、樹脂の入り込みが均一になりやすく、形状のばらつきが少なくなるからである。一方、平面形状の場合、万が一、透明樹脂層用組成物が平面形状を充満した場合、抜けなくなる場合がある。
上記微細孔の開口表面の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、円、楕円等の丸形状の他、多角形形状などを挙げることができる。
また、上記微細孔の開口表面の径、すなわち上記微細孔の孔径としては、特に限定されるものではないが、25nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、50nm〜250nmの範囲内であることがより好ましい。上記微細孔の孔径が25nm以下の場合、透明樹脂層において隣り合う構造体の間が大きくなるため、構造体を形成していない部分が多くなり、反射防止機能が悪くなる。なお、本実施態様における上記孔径は、上述した方法で決定した平均値とする。
上記微細孔の周期は、特に限定されるものではなく、本実施態様における金型を用いて製造される印刷物の用途等に応じて適宜決定することができる。ここで、上記微細孔の周期は、本実施態様における金型を用いて形成される透明樹脂層の反射率の波長依存性に影響を及ぼすものであり、その周期が長くなるほど可視光領域の短波長側の光に対する反射率が増加する傾向にあるものである。一方、周期が200nm以下においては、周期の変動に伴う反射率の波長依存性の変化は少なくなるものである。このようなことから、上記微細孔の周期は、80nm〜400nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜300nmの範囲内であることがより好ましい。なお、本実施態様における上記周期は、上述した方法で決定した平均値とする。
また、上記微細孔の深さも、本実施態様における金型を用いて形成される透明樹脂層の反射率の波長依存性に影響を及ぼすものであり、その深さが深いほど反射率を低くすることができ、一方、浅くなると長波長側の反射率が増加する傾向にあるものである。このようなことから、上記微細孔の深さは、60nm〜2000nmの範囲内であることが好ましく、100nm〜800nmの範囲内であることがより好ましい。なお、本実施態様における上記深さは、上述した方法で決定した平均値とする。
また、上記微細孔の間隔は、これが広くなるほど、本実施態様における金型を用いて形成される透明樹脂層において、可視光の全波長領域において反射率が増加する傾向にあり、狭くなるほど可視光の全波長領域において反射率が低下する傾向にある。このようなことから、上記微細孔の間隔は、0nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、5nm〜80nmの範囲内であることがより好ましい。なお、本実施態様における上記間隔は、上述した方法で決定した平均値とする。
ここで、上記微細孔の周期、深さ、および間隔は、それぞれ図15におけるP、Q、およびRで示す通り、それぞれ隣接する微細孔における先端部の頂部から先端部の頂部までの距離、微細孔における先端部の頂部から開口表面までの距離、および隣接する微細孔における開口表面の外周間の最短距離である。なお、図15は、本実施態様における金型における微細凹凸を特定するパラメータを説明する概略図である。
上記微細孔の深さのばらつきとしては、100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。上記微細孔の深さのばらつきが上記範囲よりも大きいと、本実施態様における金型を用いて形成された透明樹脂層の反射防止機能にムラが生じる場合があるからである。なお、上記微細孔の深さのばらつきとは、微細孔の縦断面を電子顕微鏡により観察して10個分の深さを測定し、その測定値の最大値と最小値との差をいう。
本実施態様においては、隣接する上記微細孔の開口表面同士の段差(以下、小さいうねりと称する。)が、100nm以下であることが好ましく、80nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。小さいうねりが100nmを超えると表面のキズとして目視できるようになり、反射防止機能が不均一になるからである。
また、本実施態様においては、500nm以上離れた上記微細孔の開口表面同士の段差(以下、大きいうねりと称する。)が、10μm以下であることが好ましく、500nm〜2μmの範囲内であることがより好ましい。500nm以上離れた場合、大きいうねりが10μm以下であれば、反射防止機能に影響を与えず、目視してもわからない(ごまかされる)ためである。
(iii)金型
本工程に用いられる金型の転写率としては、透明樹脂層形成用層に用いられる樹脂の粘度および圧力に応じて適宜調整されるものであるが、50%以上であればよい。すなわち、本工程に用いられる金型は、転写率が100%でなくとも、透明樹脂層に十分な反射防止機能を付与することが可能となる微細凹凸パターンが得られる程度に、微細孔の形状を透明樹脂層形成用層に賦型することができるものである。したがって、金型の微細孔に入り込んだ樹脂層の先端部分には、微細孔の底面、あるいは側壁、または底面および側壁と接触しない部分が発生する。ここで、転写率とは、微細孔の深さに対する樹脂層の入り込む深さの比率をいう。樹脂層の入り込む深さは、成型品の凸部の高さと同じであるため、転写率とは、微細孔の深さに対する成型品の凸部の高さの比率となる。
(iv)金型の形成方法
金型の形成方法については、後述の「5.その他」の項で詳しく説明するため、ここでの説明は省略する。
(2)複製型
本工程に用いられる複製型は、上述した金型を用いて複製されたものである。
ここで、上記複製型としては、上述した金型を用いて複製され、所望の微細凹凸を透明樹脂層表面に形成することが可能であれば特に限定されず、金属製のものであってもよく、樹脂製のものであってもよいが、樹脂製のものであることが好ましい。複製型を簡便な工程で、かつ安価に形成することが可能となるからである。
また複製型は上述した金型と同様、シート状、ロール状、スリーブ形状、ベルト状、立体状、フィルム状等のいずれの形態でも良い。
上記複製型の形成方法としては、一般的な複製方法と同様とすることができる。例えば以下の複製方法により複製型を形成することができる。
まず、微細凹凸を賦型可能な層に上述した金型を用いて微細凹凸を転写することにより微細凹凸型を形成する。次に微細孔を賦型可能な層に上述した微細凹凸型を用いて微細孔を転写することにより複製型を形成することができる。
上記微細凹凸を賦型可能な層、または微細孔を賦型可能な層としては、樹脂層、金属層、無機物層等を挙げることができ、透明樹脂層に形成される微細凹凸の形状等により適宜選択することができる。
上記樹脂層に用いられる樹脂としては、「A.印刷物」の項で説明した透明樹脂層に用いられる樹脂と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
また、樹脂層の厚みについては、透明樹脂層に形成される微細凹凸の形状等により適宜調整することができる。
上記樹脂層の形成方法としては、上述した「1.透明樹脂層形成用層形成工程」の項で説明した透明樹脂層用組成物の塗布法を用いて透明樹脂層を形成する方法や、スプレー法、電着法、静電塗装法、粉体塗装法等の一般的な塗布方法を用いて透明樹脂層を形成する方法を挙げることができる。
また、上記樹脂層表面に微細凹凸、または微細孔を転写する方法については、上記樹脂層表面に金型または微細凹凸型を配置して、後述する圧力負荷方法を用いて圧力を負荷する方法を挙げることができる。また、樹脂層を用いる場合は、通常、転写後に、後述する固化・剥離工程と同様の工程が行われる。
また、金属層に用いられる金属としては、所望の微細凹凸型または複製版を形成することが可能であれば特に限定されないが、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、ブリキ、鉄、銅、銀、金、クロム、亜鉛、珪素、チタン、タンタル、スズ、これらの合金や混合物が挙げられる。
また、無機物層に用いられる材料としては、所望の微細凹凸型または複製版を形成することが可能であれば特に限定されないが、酸化チタン(TiO、Ti)、酸化タンタル(Ta)、酸化ケイ素(SiO、SiO)、酸化錫(SnO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化クロム(Cr)、チタン酸バリウム(BaTiO)、酸化インジウム(In)、酸化亜鉛(ZnO、ZnO)等の金属酸化物、TiC、SiC、BC、WC等の炭化物、TiN、SiN、CrN、BN、AIN、CN、ZrN等の窒化物、フッ化バリウム(BaF)、フッ化マグネシウム(MgF)、酸化マグネシウム(MgO)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、グラッシーカーボン、ガラス、セラミック等を挙げることができる。
金属層または無機物層の厚みについては、透明樹脂層に形成される微細凹凸の形状により適宜調整される。
金属層または無機物層の形成方法は一般的な形成方法と同様とすることができ、例えば具体的にはイオンプレーティング法、スパッタ法、蒸着法、めっき法、溶射、溶融押出し法等挙げることができる。
上記金属層表面または無機物層表面に微細凹凸または微細孔を転写する方法としては、金属層表面または無機物層表面に、金型または微細凹凸型を配置して、後述する圧力負荷方法を用いて圧力を負荷する方法や、金型の微細孔側表面または微細凹凸型の微細凹凸側表面に、上述した形成方法を用いて金属層または無機物層を形成した後、金型または微細凹凸型から剥離する方法を挙げることができる。
(3)配置方法
本工程における金型または複製型の配置方法については、上記透明樹脂層形成用層表面と上記金型または複製型の微細孔側とを接触させて配置することが可能であれば特に限定されず、透明樹脂層形成用層の厚みや、金型または複製型の形状等により適宜調整される。
(4)圧力負荷方法
本工程に用いられる圧力負荷方法としては、透明樹脂層形成用層の表面に所望の微細凹凸を形成することが可能な程度の圧力を負荷することが可能であれば特に限定されるものではない。
本工程における圧力としては、本実施態様に用いられる透明樹脂層用組成物の粘度等に応じて適宜選択されるものであり、上記透明樹脂層用組成物および上記金型または上記複製型を用いて、上記金型または上記複製型の微細孔の形状を上記透明樹脂層形成用層にどの程度賦型することができるか、圧力を調整しながら繰り返し実験を行うことにより見出されるものである。例えば、上述した粘度を有する上記透明樹脂層用組成物を用いて透明樹脂層を形成した場合、上記圧力は、1.0N/cm〜50N/cmの範囲内であることが好ましく、2.5N/cm〜40N/cmの範囲内であることがより好ましく、5.0N/cm〜25N/cmの範囲内であることがさらに好ましい。上記圧力が低すぎると、上記透明樹脂層用組成物が上記金型または上記複製型にあまり入り込まず、上記微細凹凸における凸部の高さが十分ではないおそれがあるからであり、上記圧力が高すぎると、上記透明樹脂層用組成物が上記金型または上記複製型に入り込み過ぎて、金型または上記複製型から抜けなくなるおそれがあるからである。
本工程において、上記圧力を負荷する方法としては、例えば、ロールプレス方式、平板プレス方式、インジェクションプレス方式、ベルトプレス方式、スリーブタッチ方式、弾性金属ロールによるロールタッチ方式、フィルム方式等を用いる方法を挙げることができる。 本工程においては、上述したなかでも、ベルトプレス方式、ロールタッチ方式、フィルム方式、電子写真方式等を用いる方法であることが好ましい。以下、これらの方式を用いて透明樹脂層形成用層に上記圧力を負荷する方法を図を用いて説明する。
図16(a)、(b)は、ベルトプレス方式を用いて透明樹脂層形成用層に圧力を負荷する方法の一例を示す図である。ベルトプレス方式においては、図16(a)に示すように、透明樹脂層形成用層3’の表面と、スリーブ形状の金型20の微細凹凸側とが接触するように配置し、スリーブ形状の金型20と滑車51およびベルト部52を有するベルトコンベア50とを対峙させて、滑車51を駆動させることにより、透明樹脂層形成用層3’に所望の圧力の負荷が行われる。なお、ベルトプレス方式においてはスリーブ形状の金型20の他、例えば図16(b)に示すように、ロール形状の金型20とベルトコンベア50とを対峙させることによって透明樹脂層形成用層3’に圧力を負荷することも可能である。
ベルトプレス方式では、金型20と透明樹脂層形成用層3’との接触時間を長くすることができるため、透明樹脂層形成用層3’に所望の微細凹凸を安定して形成することが可能となる。
なお、図16(a)、(b)において説明していない符号については、図12(b)と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
図17は、ロールタッチ方式を用いて透明樹脂層形成用層に圧力を負荷する方法の一例を示す図である。ロールタッチ方式においては、図17に示すように、透明樹脂層形成用層3’の表面と、弾性を有する支持基体60が配置された金型20の微細孔側とが接触するように配置し、基材1の透明樹脂層形成用層3’側とは反対側からロール30等を用いて圧力をかけることにより透明樹脂層形成用層3’に所望の圧力の負荷が行われる。
ロールタッチ方式では、ロール30からの圧力により、金型20が変形するため、金型20と透明樹脂層形成用層3’との接触時間を長くすることができるため、透明樹脂層形成用層3’に所望の微細凹凸を安定して形成することが可能となる。
なお、図17において説明していない符号については、図7と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
図18(a)は、フィルム方式を用いて透明樹脂層形成用層に圧力を負荷する方法の一例を示す簡略図であり、図18(b)は図18(a)のA部分の拡大図である。フィルム方式においては、図18(a)、(b)に示すように、透明樹脂層形成用層3’の表面と、樹脂フィルムからなる支持基体60が配置されたフィルム形状の金型20(図18においてはフィルム形状の金型20が巻回されている例について示す。)の微細孔側とが接触するように配置し、基材1の透明樹脂層形成用層3’側とは反対側からロール30等を用いて圧力をかけることにより透明樹脂層形成用層3’に所望の圧力の負荷が行われる。
フィルム方式では、フィルム形状の金型20を透明樹脂層形成用層3’の保護フィルムとして用いることができることから、印刷物の製造時に透明樹脂層形成用層3’が製造装置等と接触して損傷してしまうことを防止することが可能となる。
なお、図18において説明していない符号については、図16と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
図19は、電子写真方式を用いて透明樹脂層形成層に圧力を負荷する方法の一例を示す簡略図である。電子写真方式においては、まず、帯電ロール71に電圧を印加することにより感光ドラム72表面に一様に電荷を与える。次に、供給ロール73と現像ロール74とを摩擦させることにより、粉体状の透明樹脂層用組成物3”を帯電させ、ブレード75等と接触させることで現像ロール74上に薄膜状に透明樹脂層用組成物3”を配置する。次に、現像ロール74と感光ドラム72とを接触させることで薄膜状の透明樹脂層用組成物3”を感光ドラム72上に現像し、さらに感光ドラム72上の透明樹脂層用組成物3”をインキ層2が形成された基材1上に静電気力によって配置して透明樹脂層形成用層3’を形成し(透明樹脂層形成用層形成工程)、定着装置76で圧力を負荷して透明樹脂層形成用層3’を定着させる。この際、定着装置76に用いられる定着ロールとして金型20を用い、またロール30等を用いて圧力を負荷することにより、透明樹脂層形成用層3’に所望の圧力を負荷することが可能となる。
なお、図19において説明していない符号については、図16と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
電子写真方式では、透明樹脂層を形成する場合に溶剤を使用しないため、乾燥装置を設置する必要が無いため省電力化ができ、製造装置がコンパクトにできるため、CO削減に寄与できる。また、透明樹脂層を形成する場合に溶剤を用いないことから、揮発する溶剤が無いため環境や人体への影響が低減できる。
本工程においては、さらには金型または複製型、及び、または、これに対峙する圧力を受けるためのロール、ベルト等に、必要に応じて上記透明樹脂層用組成物が軟化、または溶融する程度まで温度を保たせた状態に保持し、圧力だけでなく熱による賦型を行う熱プレス法を用いても良い。また予め上記透明樹脂層用組成物が軟化、または溶融する程度まで加熱した状態で金型表面または複製型表面に接触させ、微細凹凸を形成する予備加熱式熱プレス方式を用いても良い。
なお、本工程および上述した透明樹脂層形成用層形成工程は同時に行ってもよく、上述した透明樹脂層形成用層形成工程を行った後に、本工程を行ってもよい。
3.固化・剥離工程
本実施態様における固化・剥離工程は、上記賦型工程後に、上記透明樹脂層形成用層を固化する工程、および上記透明樹脂層形成用層から上記金型または上記複製型を剥離する工程を順不同に行い、上記透明樹脂層を形成する工程である。
本工程においては、透明樹脂層形成用層から金型または複製型を剥離した後に透明樹脂層形成用層を固化してもよく、透明樹脂層形成用層を固化した後に透明樹脂層形成用層から金型または複製型を剥離してもよい。
本工程における透明樹脂層形成用層を固化させる方法としては、上記透明樹脂層形成用層に含有される樹脂に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、上記樹脂が電離放射線硬化性樹脂の場合、紫外線硬化法および電子線硬化法等を挙げることができ、上記樹脂が熱硬化性樹脂の場合、加熱硬化法および常温硬化法等を挙げることができる。また、上記樹脂に熱可塑性樹脂を用いる場合は、冷却ロールなどを接触させる冷却法により固化させることができる。
本工程における金型または複製型の剥離方法としては、透明樹脂層形成用層を傷つけることなく、上記金型を剥離することができれば、特に限定されるものではない。
4.その他の工程
本実施態様の印刷物の製造方法は、上述した透明樹脂層形成用層形成工程、賦型工程、および固化・剥離工程を有するものであれば特に限定されるものではなく、必要な工程を適宜選択して追加することができる。このような工程としては、例えば、基材上にインキ層を形成する工程や、上述した「A.印刷物」の項に記載した印刷物における任意の構成を形成する工程を行うことができる。
5.その他
本実施態様において用いられる金型の形成方法について説明する。
上記金型の形成方法としては、所望の微細凹凸を形成可能な複数の微細孔を有する金型を形成することが可能な方法であれば特に限定されず、一般的な陽極酸化法を用いて金属基体表面に加工を施すことにより、形成することが可能である。
ここで、本実施態様においては、上述した金属酸化膜の項で説明したように、上記微細孔の開口部におけるテーパー形状の深さが所定の範囲内である複数の微細孔を備える金属酸化膜を有する金型を用いることが好ましい。
上述の微細孔を備える金属酸化膜を有する金型の形成方法としては、例えば、金属基体を用い、陽極酸化法によって上記金属基体の表面に複数の微細孔を有する金属酸化膜を形成する陽極酸化工程と、上記金属酸化膜をエッチングすることにより上記微細孔の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程と、上記金属酸化膜を上記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより上記微細孔の孔径を拡大する第2エッチング工程とを順次実施し、必要に応じて繰り返し実施することによって、上記金属基体の表面に複数の微細孔を形成する微細孔形成工程を有する形成方法を挙げることができる。
本実施態様における金型の形成方法について、図面を参照しながら説明する。図20は、本実施態様における金型の形成方法の一例を示す工程図である。図20に例示するように、本実施態様における金型の形成方法は、金属基体21を用い(図20(a))、金属基体21を対象として微細孔形成工程を実施することにより(図20(b)〜図20(d))、金属基体21の表面に微細孔が形成された構成を有する金型20を形成するものである(図20(e))。
ここで、上記微細孔形成工程は、金属基体21を用い(図20(a))、陽極酸化法によって金属基体21の表面に複数の微細孔を有する金属酸化膜21’を形成する陽極酸化工程(図20(b))と、金属酸化膜21’をエッチングすることにより微細孔の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程(図20(c))と、金属酸化膜21’を第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより微細孔の孔径を拡大する第2エッチング工程(図20(d))とを順次実施し、必要に応じて繰り返し実施することによって、金属基体21の表面に複数の微細孔を形成する。これにより金型20を形成することができる。
本実施態様によれば、上記第1エッチング工程を有しているため、微細孔の開口部にテーパー形状を形成することができ、印刷物を製造する際に、微細孔に透明樹脂層用組成物が入り込みやすく、抜けやすい金型を得ることができる。
本実施態様における金型の形成方法は、少なくとも陽極酸化工程、第1エッチング工程および第2エッチング工程を有する微細孔形成工程を有するものであり、必要に応じて他の任意の工程が用いられてもよいものである。
以下、本実施態様における金型の形成方法における各工程について説明する。
(1)微細孔形成工程
まず、本実施態様における微細孔形成工程について説明する。本実施態様における微細孔形成工程は、金属基体を用い、陽極酸化法によって上記金属基体の表面に複数の微細孔を有する金属酸化膜を形成する陽極酸化工程と、上記金属酸化膜をエッチングすることにより上記微細孔の開口部にテーパー形状を形成する第1エッチング工程と、上記金属酸化膜を上記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより上記微細孔の孔径を拡大する第2エッチング工程とを順次実施し、必要に応じて繰り返し実施することによって、上記金属基体の表面に複数の微細孔を形成する工程である。
(i)金属基体
金属基体については、上述した「2.賦型工程」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
(ii)陽極酸化工程
本実施態様における陽極酸化工程は、陽極酸化法によって上記金属基体の表面に複数の微細孔を有する金属酸化膜を形成する工程である。
本工程に用いられる陽極酸化法としては、上記金属基体の表面に所望の深さおよび配列態様で微細孔が形成された金属酸化膜を形成できる方法であれば、特に限定されるものではない。ここで、上記陽極酸化法により形成される微細孔の深さや配列態様は、陽極酸化に用いる電解液の液性等に依存するものであるところ、本工程に用いられる電解液は、中性の電解液であっても、あるいは酸性の電解液であっても好適に用いることができる。中でも、本工程においては、上記電解液として酸性の電解液が用いられることが好ましい。酸性の電解液が用いられることにより、本工程において、上記金属基体の表面に微細孔をランダムな位置に形成することができるからである。本工程に用いられる酸性の電解液としては、例えば、硫酸水溶液、シュウ酸水溶液、およびリン酸クロム水溶液、またはこれらの混合物の水溶液等を挙げることができる。
本工程における陽極酸化時間としては、金属基体の表面に所望の形状の複数の微細孔を有する金属酸化膜を形成することができれば特に限定されるものではなく、本実施態様に用いられる金属基体、本工程に用いられる電解液等に応じて適宜設定されるものである。
本工程により形成される金属酸化膜の厚みとしては、所望の形状の複数の微細孔を有していれば特に限定されるものではない。
(iii)第1エッチング工程
本実施態様における第1エッチング工程は、上記金属酸化膜をエッチングすることにより上記微細孔の開口部にテーパー形状を形成する工程である。
本工程において、金属酸化膜をエッチングする方法としては、上記微細孔の開口部に所望のテーパー形状を形成することができる方法であれば、特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、アルカリエッチング法、酸性エッチング法、電解エッチング法等を挙げることができる。本工程においては、これらのいずれの方法であっても用いることができるが、アルカリエッチング法は、光沢や表面粗度等が大きく、エッチング面を一定の状態に維持することが難しく、遊離アルカリ濃度や浴中の溶存金属成分を常に一定範囲に管理することなどが要求されるため、酸性エッチング法が用いられることが好ましい。
中でも本実施態様においては、本工程が、上記陽極酸化工程直後に、上記陽極酸化工程で用いられた電解液中で行われる工程であることが好ましい。第1エッチング工程に用いられるエッチング液を別途用意する必要がなく、容易に上記微細孔の開口部にテーパー形状を形成することができるからである。
本工程に用いられる電解液としては、上記陽極酸化工程で用いられたものであるが、具体的には、硫酸水溶液、シュウ酸水溶液、リン酸水溶液、リン酸クロム水溶液およびこれらの混合液等の酸性電解液を挙げることができ、中でも、取り扱いや管理の面から、シュウ酸水溶液が好ましい。
また、本工程が、上記陽極酸化工程直後に、上記陽極酸化工程で用いられた電解液中で行われる時間、すなわち、上記陽極酸化工程により複数の微細孔を有する金属酸化膜が表面に形成された金属基体を、上記陽極酸化工程で用いられた電解液中にそのまま放置する時間としては、上記微細孔の開口部に所望のテーパー形状を形成することができれば特に限定されるものではないが、例えば、3秒以上であることが好ましく、10秒以上であることがより好ましく、60秒以上であることがさらに好ましい。
なお、本工程により上記微細孔の開口部にテーパー形状を形成することが可能な理由としては、以下のようなことが挙げられる。
<1>陽極酸化を行うと、酸化皮膜を形成しながらポーラス状の円柱形状の孔が形成される。
<2>この酸化皮膜が、化学的溶解を受けると、内部(すなわち下面)に比べ、外部(すなわち上面)の方が、エッチング液にさらされる時間が長くなる。これは、内部に浸入したエッチング液の交換速度が外部のエッチング液よりも遅いためである。
<3>この結果、外部の方がエッチングされる量が多くなり、テーパー形状となる。
本工程のエッチングレートは、後述する第2エッチング工程のエッチングレートよりも低いものである。本実施態様において、第1エッチング工程と第2エッチング工程とで、エッチングレートの違いにより微細孔の開口部に形成される形状が異なる理由としては、第2エッチングは、第1エッチングよりもエッチング速度が速いため、第1エッチングでテーパー形状を形成された孔の全体の直径を広げる作用があるからである。
(iv)第2エッチング工程
本実施態様における第2エッチング工程は、上記金属酸化膜を上記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングすることにより上記微細孔の孔径を拡大する工程である。本実施態様においては、通常、第2エッチング工程によって、上記微細孔の開口部にテーパー形状は形成されず、第1エッチング工程によって形成されたテーパー形状を有する孔の径を均等に大きくする。
本工程において、金属酸化膜を上記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高いエッチングレートでエッチングする方法としては、上記金属酸化膜に形成された微細孔の孔径を所望の程度に拡大する方法であれば、特に限定されるものではない。このような方法としては、上記第1エッチング工程に記載した方法と同様のエッチング法を挙げることができる。
本工程のエッチングレートとしては、上記第1エッチング工程のエッチングレートよりも高く、上記微細孔の孔径を拡大することができれば特に限定されるものではないが、上記第1エッチング工程のエッチングレートに対して、1.2倍以上であることが好ましく、1.5倍以上であることがより好ましく、2.0倍以上であることがさらに好ましい。1.2倍以下では、十分に孔径を拡大させる効果が少なくなるからである。
本工程に用いられるエッチング液としては、例えば、硫酸水溶液、シュウ酸水溶液、リン酸水溶液、クロム酸水溶液、リン酸クロム水溶液等の酸性水溶液、およびこれらの混合液が用いられる。また、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液が用いられる。中でも、取り扱いや管理の面から、リン酸水溶液が好ましい。
また、上記エッチング液の濃度としては、本工程に用いられるエッチング液の種類、本発明に用いられる金属基体等に応じて適宜調整されるものであるが、例えば、0.005M〜2.0Mの範囲内であることが好ましく、0.01M〜1.5Mの範囲内であることがより好ましい。第2エッチング工程に用いられるエッチング液の濃度が上記範囲よりも高いと、第2エッチング工程により金属酸化膜をすべて除去してしまう場合があるからであり、第2エッチング工程に用いられるエッチング液の濃度が上記範囲よりも低いと、第2エッチング工程のエッチングレートが低下し、十分な孔径拡大処理ができないからである。
本工程におけるエッチング時間としては、本工程に用いられるエッチング液、本実施態様に用いられる金属基体、処理温度、濃度等に応じて適宜調整されるものであるが、例えば、1分間〜60分間の範囲内であることが好ましく、2分間〜30分間の範囲内であることがより好ましい。第2エッチング工程のエッチング時間が上記範囲よりも長いと、第2エッチング工程により金属酸化膜をすべて除去してしまい、孔と孔との間の壁が薄くなって強度が弱くなり、樹脂が入り込むと破損してしまう場合があるからであり、第2エッチング工程のエッチング時間が上記範囲よりも短いと、上記微細孔を十分に拡大することができず、所望の形状が得られない場合があるからである。
(v)微細孔形成工程
本工程において、上記陽極酸化工程と、上記第1エッチング工程と、上記第2エッチング工程とを順次実施し、必要に応じて実施する際の繰り返しの程度としては、金型として用いることが可能な程度に均一な微細孔ができるまで、複数回繰り返して行われる。本工程は、上記陽極酸化工程で終わってもよく、上記第2エッチング工程で終わってもよい。
本工程において、上記陽極酸化工程と、上記第1エッチング工程と、上記第2エッチング工程とが順次繰り返し実施される回数としては、目標とする微細孔の形状等に応じて適宜決定することができるものであり、特に限定されるものではない。また、本工程において、これらの工程が順次繰り返し実施される回数は、目的とするエッチング量に応じ、エッチング液およびエッチング時間等のエッチング条件とともに適宜調整される。
本工程により金属基体の表面に形成される微細孔の形状は、開口部にテーパー形状を有していれば特に限定されるものではない。上記微細孔の形状については、上述した金型の項に記載したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
(2)任意の工程
本実施態様における金型の形成方法は、少なくとも上記微細孔形成工程を有するものであり、必要に応じて他の任意の工程を有していてもよいものである。このような工程としては、離型処理工程、水洗工程、乾燥工程等が挙げられる。
中でも、本実施態様においては、上記微細孔形成工程により得られた金型に離型処理を施す離型処理工程を有することが好ましい。離型処理工程を有することで、本実施態様により得られる金型に離型性を付与することができるからである。上記金型が離型性を有することにより、印刷物を製造する際に、上記金型から透明樹脂層形成用層を取り出しやすいという利点がある。
離型処理の方法としては、上記金型における金属酸化膜が有する微細孔を埋めない方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、離型剤を上記金型に塗布する方法、離型剤をスパッタ法で上記金型に積層する方法、フッ素ガスを表面に吹き付け表面にパーフルオロ基を形成する方法等を挙げることができる。また、離型剤としては、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、脂肪族アマイド系化合物、パラフィン系化合物等を挙げることができる。
なお、水洗工程に用いられる水洗方法、乾燥工程に用いられる乾燥方法については、いずれも公知の方法とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本実施態様においては、金属基体表面に上述した大きなうねりを形成する工程を有していてもよい。
金属基体の表面に大きなうねりを作る方法としては、金属基体の表面あるいは金属基体の支持体を粗化し、凹凸を形成する方法、金属基体の表面あるいは金属基体の支持体を粗化し、凹凸を形成した後、スパッタ法、メッキ法、蒸着法で金属基体を積層する方法、金属基体の表面あるいは金属基体の支持体を粗化し、凹凸を形成した後、樹脂を積層し、凹凸をなだらかにした後、スパッタ法、メッキ法、蒸着法で金属基体を積層する方法、金属基体の表面あるいは金属基体の支持体に樹脂を積層し、凹凸を形成した後、金属基体を積層する方法、表面にシリカ、金属または金属酸化物の粒子を含む樹脂を金属基体あるいは金属基体の支持体に積層し、凹凸を形成した後、金属基体を積層する方法等が挙げられる。
金属基体の表面あるいは金属基体の支持体を粗化する方法としては、機械的処理、電気化学的処理、陽極酸化、エンボス法、研磨法、エッチング法、湿式メッキ法、乾式メッキ法、溶射法、フォトリソグラフィ法、表面熱処理法、ゾルゲル法等を適宜単独または組み合わせながら処理する方法が挙げられる。
機械的処理法としては、サンド・ブラスト法、ショット・ブラスト法、グリット・ブラスト法、ガラスビーズ・ブラスト法等のブラスト法、ナイロン、ポリプロピレン、および塩化ビニル樹脂などの合成樹脂からなる合成樹脂毛、不織布、動物毛、スチールワイヤ等のブラシ毛(材)を用いるブラシグレイニング法、金属ワイヤーでひっかくワイヤーグレイニング法、研磨剤を含有するスラリー液を供給しながらブラシ研磨する方法(ブラシグレイン法)、ボールグレイン法、液体ホーニング法等のバフ研磨法、ショットピーニング法等が挙げられる。
電気化学的処理法としては、塩酸、硝酸または硫酸および塩化物イオンまたは硝酸塩イオンを含む電解液水溶液中で、直流または交流を用いて処理する方法がある。
エンボス法としては、大きなうねりとなる形状を表面に付与したロール型や枚葉プレス型を押圧し、その形状を50%以上転写するロールエンボス、枚葉プレス型エンボス等が挙げられる。
研磨法としては、回転型バレルや振動型バレルを用いたバレル研磨法、バフ研磨法、リューター研磨法、砥粒流動研磨法、電解研磨法、化学研磨法、化学複合研磨法、電解複合研磨法、化学機械研磨法、CMP研磨法等が挙げられる。
エッチング法としては、化学エッチング法、電解エッチング法、スパッタ法による乾式エッチング法等が挙げられる。
湿式メッキ法としては、電気メッキ法、無電解メッキ法、溶融亜鉛メッキ法、溶融アルミメッキ法、不溶解性アノード法等が挙げられる。
乾式メッキ法としては、真空蒸着メッキ、抵抗加熱、スパッタリング、イオンプレーティングなどの物理蒸着法(PVD)、常圧熱CVD・減圧熱CVD・プラズマCVDなどの化学蒸着法(CVD)等が挙げられる。
金属、セラミックス、プラスチック、サーメット、カーバイド、アブレイダブルを材料として用いる溶射法としては、溶線式フレーム溶射、粉末式フレーム溶射、溶棒式フレーム溶射、爆発溶射(Dガン)などのフレーム溶射法やアーク溶射、プラズマ溶射(減圧プラズマ式溶射・大気プラズマ式溶射・水プラズマ式溶射)、線爆溶射などの電気式溶射法、高速フレーム溶射法、コールドスプレー溶射法等が挙げられる。
表面熱処理法としては、表面に気泡を形成したり、ブラッシング化させたり、クレーター化させたり、亀裂化させたり、結晶成長処理をさせたり、バルク化させたり、対流散逸パターン化させたり、沈降散逸パターン化させたり、散逸パターン化させたり、粒子の凝集を起こさせたり、ナノバックリング形成させたりするなどの方法で形状を形成する方法が挙げられる。
また、プラズマを用いて表面にうねりを形成するプラズマアッシング方式なども用いることができる。
金属基体またはその支持体に樹脂を積層する方法としては、スプレー法、電着法、ディップ法、ディップコート法、ロールコート法、Tダイコート法、キャストコート法、ブレードコート法、スピンコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、キャスト法、LB法、静電塗装法、粉体塗装法、チューブやスリーブなどを被覆する方法などの公知の方法を用いることができる。塗工後、適宜乾燥工程や熱またはUVやEBによるハーフキュア工程を入れることができる。
使用される樹脂としては、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂等の電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等があげられ、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリオレフィン樹脂、スチロール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、スチレン−イソプレンゴム、フッ素樹脂等を挙げることができる。また、これらのエラストマーや酸変性物がある。
大きなうねりの形成は、上述した陽極酸化工程、第1エッチング工程、その後の第2エッチング工程を本処理工程とした場合、本処理工程の前処理として施してよく、また、本処理工程後に処理してもよい。または、本処理工程の前後で行ってもよい。さらには、本処理工程中の陽極酸化工程の後で行ってもよく、または第1エッチング工程の後で行ってもよく、さらに、これらの組み合わせで処理することができる。
6.印刷物
本実施態様の製造方法により製造される印刷物については、上述した「A.印刷物」の項で説明した第1態様の印刷物と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
7.第1態様の印刷物の製造方法
上述した「A.印刷物」の項で説明した第1態様の印刷物の製造方法としては、上述した第1実施態様の印刷物の製造方法の他にも例えば以下のような方法を挙げることができる。
例えば、光透過性基板上に上述した透明樹脂層形成用層を形成した後、上述した賦型工程、固化・剥離工程と同様の工程を行うことにより光透過性基板および透明樹脂層の積層体を形成する。次に、インキ層が形成された基材上に粘着層を形成し、粘着層上に上述した積層体を配置することにより、上述した第1態様の印刷物を製造することができる。
また、例えば、上述した賦型工程に用いられる金型に透明樹脂層用組成物を充填し、金型に充填された透明樹脂層用組成物の表面と、インキ層が形成された基材のインキ層側とが接触するように配置して、所定の圧力を加えた後、上述した固化・剥離工程と同様の工程を行うことによっても上述した第1態様の印刷物を製造することができる。
II.第2実施態様
本発明の印刷物の製造方法の第2実施態様について説明する。
本実施態様の印刷物の製造方法は、上述した「A.印刷物」の項で説明した第2態様の印刷物を製造する製造方法である。
具体的に、本実施態様の印刷物の製造方法は、基材と、上記基材上に形成され、樹脂インキを含み、かつ表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された複数の凸部を備える微細凹凸が形成されているインキ層とを有する印刷物の製造方法であって、上記基材上に上記樹脂インキを含むインキ層形成用層を形成するインキ層形成用層形成工程と、金属基体、および上記金属基体の表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された複数の微細孔を備える金型または上記金型の複製型を準備し、上記インキ層形成用層表面と上記金型または上記複製型の上記微細孔側とを接触させて配置し、圧力を負荷することにより、上記インキ層形成用層の上記金型側表面または上記複製型側表面に上記微細凹凸を形成する賦型工程と、上記賦型工程後に上記インキ層形成用層を固化する工程、および上記インキ層形成用層から上記金型または上記複製型を剥離する工程を順不同に行い、上記インキ層を形成する固化・剥離工程とを有することを特徴とする製造方法である。
ここで、本実施態様の印刷物の製造方法について説明する。図21(a)〜(d)は、本実施態様の印刷物の製造方法の一例を示す工程図である。本実施態様の印刷物の製造方法においては、まず図21(a)に示すように、基材1上に樹脂インキを含むインキ層形成用層2’を形成する(インキ層形成用層形成工程)。次に、金属基体21、および金属基体21の表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された複数の微細孔を備える金型20を準備し、インキ層形成用層2’表面と金型20の微細孔側とを接触させて配置し、ロール30等を用いて圧力を負荷することにより、インキ層形成用層2’の金型20側表面に微細凹凸を形成する(賦型工程)。賦型工程後に、図21(c)に示すように、インキ層形成用層2’を固化した後、インキ層形成用層2’から金型20を剥離して、図21(d)に示すように、インキ層2を形成する(固化・剥離工程)。本実施態様の印刷物の製造方法においては、上述した工程を行うことにより、図21(d)に示すような印刷物10を製造することができる。なお、図21(d)において説明していない符号については、図11と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本実施態様によれば、簡便な方法で、インキ層の表面に微細凹凸を形成することができ、反射防止機能を備え、かつ優れた耐水性を有する印刷物を製造することが可能となる。
以下、本実施態様の印刷物の製造方法における各工程について説明する。
1.インキ層形成用層形成工程
本実施態様におけるインキ層形成用層形成工程は、上記基材上に上記樹脂インキを含むインキ層形成用層を形成する工程である。
本実施態様においては、通常、樹脂インキを含むインキ層用組成物を調製し、これを用いて基材上にインキ層形成用層が形成される。
上記インキ層用組成物に用いられる樹脂インキについては、上述した「A.印刷物」の項で説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。また、上記インキ層用組成物は上述した「A.印刷物」の項で説明した機能性材料を含有していてもよい。また、樹脂インキにおける樹脂として電離放射線硬化性樹脂を含有する場合は、光重合開始剤を含有していてもよい。なお、光重合開始剤については、上述した第1実施態様の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
インキ層用組成物の粘度、およびインキ層用組成物の形態については、上述した第1実施態様の項で説明した透明樹脂層用組成物の粘度、および透明樹脂層用組成物の形態と同様とすることができる。
インキ層形成用層の形成方法としては、基材上に所望の色彩、絵柄等を表示することが可能なインキ層とすることができ、かつ表面に所望の微細凹凸を形成可能なインキ層形成用層を形成することが可能な方法であれば特に限定されず、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、活版印刷、電子写真法、インクジェット、熱溶融型熱転写法、昇華転写法、スプレー法、電着法、ディップコート法、静電塗装法、粉体塗装法が挙げられる。
2.賦型工程
本実施態様における賦型工程は、金属基体、および上記金属基体の表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された複数の微細孔を備える金型または上記金型の複製型を準備し、上記インキ層形成用層表面と上記金型または上記複製型の微細孔側とを接触させて配置し、圧力を負荷することにより、上記インキ層形成用層の上記金型側表面または上記複製型側表面に上記微細凹凸を形成する工程である。
本実施態様における賦型工程に用いられる金型または複製型、配置方法、および圧力負荷方法については上述した第1実施態様の印刷物の製造方法の項で記載した金型または複製型、配置方法、および圧力負荷方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本工程は、上述したインキ層形成用層形成工程と同時に行ってもよく、上述したインキ層形成用層形成工程後に行ってもよい。
また、上述したインキ層形成用層形成工程と本工程とを同時に行う場合は、上記金型または複製型がインキ層を形成するために用いられるインキ層用型を兼ねることが好ましい。
3.固化・剥離工程
本実施態様における固化・剥離工程は、上記賦型工程後に上記インキ層形成用層を固化する工程、および上記インキ層形成用層から上記金型を剥離する工程を順不同に行い、上記インキ層を形成する工程である。
本実施態様においては、インキ層形成用層を固化した後にインキ層形成用層から金型を剥離してもよく、インキ層形成用層から金型を剥離した後にインキ層形成用層を固化させてもよい。
本工程におけるインキ層形成用層を固化する方法としては、上記インキ層形成用層に含有される樹脂に応じて適宜選択されるものであるが、例えば、上記樹脂が電離放射線硬化性樹脂の場合、紫外線硬化法および電子線硬化法等を挙げることができ、上記樹脂が熱硬化性樹脂の場合、加熱硬化法および常温硬化法等を挙げることができる。また、上記樹脂に熱可塑性樹脂を用いる場合は、冷却ロールなどを接触させる冷却法により固化させることができる。
また、剥離方法については、インキ層形成用層を損傷させることなく金型を剥離することが可能な方法であれば特に限定されるものではなく、上述した第1実施態様の印刷物の製造方法の項で説明した剥離方法と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
4.その他の工程
本実施態様の印刷物の製造方法は、上述したインキ層形成用層形成工程、賦型工程、および固化・剥離工程を有するものであれば特に限定されず、他にも必要な工程を適宜選択して行うことができる。
このような工程については、第1実施態様の印刷物の製造方法の項で記載した工程と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
5.印刷物
本実施態様の製造方法により製造される印刷物については、上述した「A.印刷物」の項で説明した第2態様の印刷物と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
6.第2態様の印刷物の製造方法
上述した「A.印刷物」の項で説明した第2態様の印刷物の製造方法としては、上述した第2実施態様の印刷物の製造方法の他にも例えば以下のような方法を挙げることができる。
例えば、上述した賦型工程に用いられる金型にインキ層用組成物を充填し、金型に充填されたインキ層用組成物の表面と、基材とが接触するように配置して、所定の圧力を加えた後、上述した固化・剥離工程と同様の工程を行うことによって上述した第2態様の印刷物を製造することができる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例および比較例を用いて本発明についてさらに詳しく説明する。
参考例1−1
(金属基体の作製)
まず、純度99%のアルミニウムからなり、押出しされた厚み20mmのアルミニウムパイプ表面に、第1平滑層として厚み10μmのイオウ含有ニッケルメッキ層を形成した。次に、第1平滑層上に第2平滑層として厚み40μmのクロムメッキ層(マイクロクラック密度180個/cm)を形成した。その後、第2平滑層の研磨を行い、小さいうねりとしてRz30nmとなるように仕上げた後、第2平滑層上に中間層として、スパッタ法により厚み500Åの酸化タンタル層を形成した。その後、スパッタ法により中間層上に厚み2μmの純度99.9%のアルミニウム薄膜を形成した。
(金型の作製)
上述した金属基体を用いて以下の手順で金型を作製した。
0.02Mシュウ酸水溶液の電解液中で、化成電圧40V、20℃の条件にて120秒間、アルミニウム薄膜表面に陽極酸化を施した。次に、第1エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で60秒間エッチング処理を行った。続いて、第2エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で150秒間孔径拡大処理を行った。さらに上記工程を繰り返し、これらを合計5回追加実施した。これにより、アルミニウム薄膜表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された微細孔を有する微細孔層を形成した。最後に、微細孔層にフッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、金型を得た。
(印刷物の作製)
透明樹脂基材上にグラビア印刷法を用いて以下のような絵柄を有するインキ層を形成した。なお、インキ層の各色については、DIC社製カラーコードを指定したものである。
インキ層の絵柄としては、背景がカラーコードNo.582の黒色インキ層から構成され、白抜き、カラーコードNo.582の黄色インキ層、カラーコードNo.564の赤色インキ層、カラーコードNo.649の緑色インキ層、カラーコードNo.578の青色インキ層を用いて大きさ20ptでアルファベットAからZまでが表示されているものである。
次に、透明樹脂基材のインキ層側表面に透明樹脂層用組成物として親水性フッ素化合物を添加した溶剤を含まない紫外線硬化性樹脂組成物(粘度100mPa・s)を印刷法で塗布した後、金型を配置して、ゴムローラーにより10N/cmの荷重で圧着した。金型全体に均一な紫外線硬化性樹脂組成物が塗布されたことを確認し、透明樹脂基材側から2000mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化させた。その後、金型から剥離することにより、微細凹凸を有する透明樹脂層が形成された印刷物を得た。
参考例1−2
(金属基体の作製)
まず、純度99%のアルミニウムからなり、押出しされた厚み20mmのアルミニウムパイプ表面に、第1平滑層として厚み10μmのイオウ含有ニッケルメッキ層を形成した。次に、第1平滑層上に第2平滑層として厚み40μmのクロムメッキ層(マイクロクラック密度180個/cm)を形成した。その後、第2平滑層の研磨を行い、小さいうねりとしてRz30nmとなるように仕上げた後、第2平滑層上に中間層として、スパッタ法により厚み500Åの酸化タンタル層を形成した。その後、スパッタ法により中間層上に厚み2μmの純度99.9%のアルミニウム薄膜を形成した。
(金型および複製型の作製)
上述した金属基体を用いて以下の手順で金型を作製した。
0.02Mシュウ酸水溶液の電解液中で、化成電圧40V、20℃の条件にて120秒間、アルミニウム薄膜表面に陽極酸化を施した。次に、第1エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で60秒間エッチング処理を行った。続いて、第2エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で150秒間孔径拡大処理を行った。さらに上記工程を繰り返し、これらを合計5回追加実施した。これにより、アルミニウム薄膜表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された微細孔を有する微細孔層を形成した。最後に、微細孔層にフッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、金型を得た。
上述した金型を用いて以下の手順で複製型を作製した。
光透過性基板として厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製、屈折率1.66)に、紫外線硬化性樹脂組成物(粘度100mPa・s)を厚さ10μmとなるように塗布した後、金型を配置して、ゴムローラーにより25N/cmの荷重で圧着した。金型全体に均一な紫外線硬化性樹脂組成物が塗布されたことを確認し、フィルム側から2000mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化させ、金型から剥離した後、最後にフッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで微細凹凸型を得た。
次に、光透過性基板として厚さ250μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製、屈折率1.66)に、紫外線硬化性樹脂組成物(粘度100mPa・s)を厚さ10μmとなるように塗布した後、微細凹凸型を配置して、ゴムローラーにより25N/cmの荷重で圧着した。微細凹凸型に均一な紫外線硬化性樹脂組成物が塗布されたことを確認し、光透過性基板側から2000mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化させ、微細凹凸型から剥離した後、最後にフッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで複製型を得た。なお、得られた複製型は透明性を有するものである。
(印刷物の作製)
紙基材の上に参考例1−1と同様にしてインキ層を形成した。
次に、紙基材のインキ層側表面に、透明樹脂層用組成物として親水性フッ素化合物を添加した溶剤を含まない紫外線硬化性樹脂組成物(粘度100mPa・s)を印刷法で塗布し、ベルト状につないだ複製型と上記複製型に対峙するニッケル製ベルトとの間に10N/cmの荷重で挟んで圧着した。複製型全体に均一に紫外線硬化性樹脂組成物が塗布されたことを確認し、複製型側から2000mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化させた。その後、複製型から剥離することにより、微細凹凸を有する透明樹脂層が形成されている印刷物を得た。
参考例2
(金属基体の作製)
まず、純度99%のアルミニウムからなり、押出しされた厚み20mmのアルミニウムパイプ表面に、第1平滑層として厚み10μmのイオウ含有ニッケルメッキ層を形成した。次に、第1平滑層上に第2平滑層として厚み40μmのクロムメッキ層(マイクロクラック密度180個/cm)を形成した。その後、第2平滑層の研磨を行い、小さいうねりとしてRz30nmとなるように仕上げた後、第2平滑層上に中間層として、スパッタ法により厚み500Åの酸化タンタル層を形成した。その後、スパッタ法により中間層上に厚み2μmの純度99.9%のアルミニウム薄膜を形成した。
(金型の作製)
上述した金属基体を用いて以下の手順で金型を作製した。
0.02Mシュウ酸水溶液の電解液中で、化成電圧40V、20℃の条件にて120秒間、アルミニウム薄膜表面に陽極酸化を施した。次に、第1エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で60秒間エッチング処理を行った。続いて、第2エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で150秒間孔径拡大処理を行った。さらに上記工程を繰り返し、これらを合計5回追加実施した。これにより、アルミニウム薄膜表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された微細孔を有する微細孔層を形成した。最後に、微細孔層にフッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、金型を得た。
(印刷物の作製)
紙基材の上に参考例1−1と同様にしてインキ層を形成した。
次に、紙基材のインキ層側表面に透明樹脂層用組成物として親水性フッ化物を添加した熱可塑性アクリル樹脂層を印刷法で塗布した。熱可塑性アクリル樹脂層が軟化する温度になるように上記ロール状の金型を加温した状態で、対峙するゴムロールの間に上記熱可塑性アクリル樹脂層表面が金型に一様に接触するように印刷物を挟み、50N/cmの荷重で加圧した。その後、上記熱可塑性アクリル樹脂層を冷却して固化させた後、金型から剥離することにより、微細凹凸を有する透明樹脂層が形成されている印刷物を得た。
参考例3
(金属基体の作製)
まず、厚み150μmのニッケル製スリーブの表面に、平滑層として厚み80μmのクロムメッキ膜(マイクロクラック密度300個/cm)を形成した。その後、平滑層に研磨を行い、小さいうねりとしてRz80nmとなるように仕上げた後、平滑層上に中間層としてスパッタ法により500Åの酸化タンタル層を形成した。その後、スパッタ法により中間層上に厚み2μmの純度99.9%のアルミニウム薄膜を形成した。
(金型の作製)
上述した金属基体を用いて以下の手順で金型を作製した。
0.02Mシュウ酸水溶液の電解液中で、化成電圧40V、20℃の条件にて120秒間、アルミニウム薄膜表面に陽極酸化を施した。次に、第1エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で60秒間エッチング処理を行った。続いて、第2エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で150秒間孔径拡大処理を行った。さらに上記工程を繰り返し、これらを合計5回追加実施した。これにより、アルミニウム薄膜表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された微細孔を有する微細孔層を形成した。最後に、微細孔層にフッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、金型を得た。
(印刷物の作製)
紙基材の上に参考例1−1と同様にしてインキ層を形成した。
次に、紙基材のインキ層側表面に透明樹脂層用組成物として親水性フッ化物を添加した熱可塑性ポリエステル樹脂層を印刷法で塗布した。熱可塑性ポリエステル樹脂層が軟化する温度になるように、上記ベルト状の金型を加温した状態で、対峙するベルト状のニッケルベルト間に上記熱可塑性ポリエステル樹脂層表面が金型に一様に接触するように印刷物を挟み、100N/cmの荷重で加圧した。その後、上記熱可塑性ポリエステル樹脂層を冷却して固化させた後、金型から剥離することにより、微細凹凸を有する透明樹脂層が形成されている印刷物を得た。
参考例4
(金属基体の作製)
まず、厚み200μmのニッケル製スリーブの表面を小さいうねりとしてRzが60nmになるように研磨した後、中間層として電着法により大きなうねりとして1.5μmとなるように、厚み10μmのアクリルメラミン層を形成し、さらに中間層上にスパッタ法により厚み2μmの純度99.9%のアルミニウム薄膜を形成した。
(金型の作製)
上述した金属基体を用いて以下の手順で金型を作製した。
0.03Mシュウ酸水溶液の電解液中で、化成電圧55V、20℃の条件にて20秒間、アルミニウム薄膜層表面に陽極酸化を施した。次に、第1エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で30秒間エッチング処理を行った。続いて、第2エッチング処理として、0.5Mリン酸水溶液で10分間孔径拡大処理を行った。さらに上記工程を繰り返し、これらを合計4回追加実施した。これにより、アルミニウム薄膜表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された微細孔を有する微細孔層を形成した。最後に、微細孔層にフッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、金型を得た。
(印刷物の作製)
まず、上述した金型を用いて以下の手順で反射防止フィルムを作製した。
光透過性基板として厚さ50μmのアクリルフィルム(住友化学製、屈折率1.49)に、透明樹脂層用組成物として、100質量部の親水性シリコーン樹脂を含有する紫外線硬化性樹脂組成物(粘度100mPa・s)に対し、アクリルに浸透する溶剤として、トルエン40質量部およびシクロヘキサノン10質量部を含む溶剤含有樹脂組成物を厚さ10μmとなるように塗布した後、溶剤を80℃で30秒間乾燥除去し、金型を配置した後、ゴムローラーにより25N/cmの荷重で圧着した。金型全体に均一な紫外線硬化性樹脂組成物が塗布されたことを確認し、フィルム側から2000mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化させた。その後、金型から剥離することにより、微細凹凸を有する反射防止フィルムを得た。この反射防止フィルムの紫外線硬化樹脂組成物側(微細凹凸側)とは反対面に厚み10μmのアクリル製粘着フィルムを貼合した後、紙基材の上に参考例1−1と同様の方法によりインキ層が形成された印刷物のインキ層側と上記反射防止フィルムの粘着面を空気が入らないように貼り合わせた。これにより、微細凹凸を有する透明樹脂層が形成されている印刷物を得た。
参考例5
(金属基体の作製)
まず、厚み150μmのニッケル製スリーブの表面に、平滑層として厚み80μmのクロムメッキ膜(マイクロクラック密度300個/cm)を形成した。その後、平滑層に研磨を行い、小さいうねりとしてRz80nmとなるように仕上げた後、平滑層上に中間層としてスパッタ法により500Åの酸化タンタル層を形成した。その後、スパッタ法により中間層上に厚み2μmの純度99.9%のアルミニウム薄膜を形成した。
(金型の作製)
上述した金属基体を用いて以下の手順で金型を作製した。
0.02Mシュウ酸水溶液の電解液中で、化成電圧40V、20℃の条件にて120秒間、アルミニウム薄膜表面に陽極酸化を施した。次に、第1エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で60秒間エッチング処理を行った。続いて、第2エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で150秒間孔径拡大処理を行った。さらに上記工程を繰り返し、これらを合計5回追加実施した。これにより、アルミニウム薄膜表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された微細孔を有する微細孔層を形成した。最後に、微細孔層にフッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、金型を得た。
(印刷物の作製)
上述した金型を用いて以下の手順で反射防止フィルムを作製した。
金型の表面を覆い、厚さ500μmとなるように、200℃で加熱溶融したアクリル樹脂(溶融粘度6g/10min)を押し出し、金型に金属ベルトで50N/cmの荷重で2秒間圧着した。金型全体に均一なアクリル樹脂膜が形成されたことを確認し、表面から空冷で冷却してアクリル樹脂膜を硬化させた。その後、金型から剥離することにより微細凹凸を有する反射防止フィルムを得た。
この反射防止フィルムのアクリル樹脂膜側(微細凹凸側)とは反対面に厚み10μmのアクリル製粘着フィルムを貼合した後、紙基材の上にグラビア法で黒背景に白抜きの文字(大きさ20pt)が表示されるように印刷した印刷物のインキ面側と上記反射防止フィルムの粘着面を空気が入らないように貼り合わせた。これにより、微細凹凸を有する透明樹脂層が形成されている印刷物を得た。
[実施例6]
(金属基体の作製)
まず、厚み150μmのニッケル製スリーブの表面に、平滑層として厚み80μmのクロムメッキ膜(マイクロクラック密度300個/cm)を形成した。その後、平滑層に研磨を行い、小さいうねりとしてRz80nmとなるように仕上げた後、平滑層上に中間層としてスパッタ法により500Åの酸化タンタル層を形成した。その後、スパッタ法により中間層上に厚み2μmの純度99.9%のアルミニウム薄膜を形成した。
(金型および複製型の作製)
上述した金属基体を用いて以下の手順で金型を作製した。
0.03Mシュウ酸水溶液の電解液中で、化成電圧55V、20℃の条件にて20秒間、アルミニウム薄膜層表面に陽極酸化を施した。次に、第1エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で30秒間エッチング処理を行った。続いて、第2エッチング処理として、0.5Mリン酸水溶液で10分間孔径拡大処理を行った。さらに上記工程を繰り返し、これらを合計4回追加実施した。これにより、アルミニウム薄膜表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された微細孔を有する微細孔層を形成した。最後に、微細孔層にフッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、金型を得た。
上述した金型を用いて以下の手順で複製型を形成した。
光透過性基板として厚さ125μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製、屈折率1.66)に、紫外線硬化性樹脂組成物(粘度100mPa・s)を厚さ10μmとなるように塗布した後、金型にゴムローラーにより25N/cmの荷重で圧着した。金型全体に均一な紫外線硬化性樹脂組成物が塗布されたことを確認し、フィルム側から2000mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化させ、金型から剥離した後、最後にフッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで微細凹凸型を得た。
さらに、光透過性基板として厚さ250μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製、屈折率1.66)に、紫外線硬化性樹脂組成物(粘度100mPa・s)を厚さ10μmとなるように塗布した後、金型にゴムローラーにより25N/cmの荷重で圧着した。金型全体に均一な紫外線硬化性樹脂組成物が塗布されたことを確認し、光透過性基板側から2000mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化させ、金型から剥離した後、最後にフッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで複製型を得た。なお、得られた複製型は透明性を有するものである。
(印刷物の作製)
紙基材上に紫外線硬化樹脂インキを用いグラビア法で参考例1−1と同様の絵柄でインキ層形成用層を形成した。次に、印刷物のインキ層形成用層表面にベルト状につないだ金型を空気が入らないように均一に接触させるとともに、対峙するステンレスベルトにより25N/cmの荷重で圧着しながら、複製型側から2000mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射してインキ層形成用層を光硬化させた。その後、金型からインキ層形成用層を剥離することにより、微細凹凸を有するインキ層が形成されている印刷物を得た。
[実施例7]
(金型基体の作製)
まず、厚み20mmのステンレス製ベルトの表面を小さいうねりとしてRzが180nmとなるように研磨した後、中間層としてスパッタ法により厚み500Åの二酸化ケイ素層を形成した。その後、スパッタ法により中間層上に厚み2μmの純度99.9%のアルミニウム薄膜を形成した。
(金型の作製)
上述した金属基体を用いて以下の手順で金型を作製した。
0.02Mシュウ酸水溶液の電解液中で、化成電圧40V、20℃の条件にて120秒間、アルミニウム薄膜表面に陽極酸化を施した。次に、第1エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で60秒間エッチング処理を行った。続いて、第2エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で150秒間孔径拡大処理を行った。さらに上記工程を繰り返し、これらを合計5回追加実施した。これによりアルミニウム薄膜表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された微細孔を有する微細孔層を形成した。最後に、微細孔層にフッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、金型を得た。
(印刷物の作製)
紙基材の上に活版印刷法で親水性フッ素化合物を添加した熱可塑性アクリル樹脂からなるインキで参考例1−1と同様の絵柄を有するインキ層形成用層を形成した。熱可塑性アクリル樹脂が軟化する温度になるように上記ベルト状の反射防止構造体製造金型を加温した状態で、対峙するベルト状のニッケルベルト間に上記インキ層形成用層が金型に一様に接触するように印刷物を挟み、50N/cmの荷重で加圧した。その後、冷却することによりインキ層形成用層を固化させ、金型から剥離することにより、微細凹凸を有するインキ層が形成されている印刷物を得た。
[実施例8]
(金属基体の作製)
厚み150μmのニッケル製スリーブの表面に、平滑層として厚み80μmのクロムメッキ膜(マイクロクラック密度300個/cm)を形成した。その後、平滑層に研磨を行い、小さいうねりとしてRz80nmとなるように仕上げた後、平滑層上に中間層としてスパッタ法により500Åの酸化タンタル層を形成した。その後、スパッタ法により中間層上に厚み2μmの純度99.9%のアルミニウム薄膜を形成した。
(金型の作製)
上述した金属基体を用いて以下の手順で金型を作製した。
0.02Mシュウ酸水溶液の電解液中で、化成電圧40V、20℃の条件にて120秒間、アルミニウム薄膜表面に陽極酸化を施した。次に、第1エッチング処理として、陽極酸化後の電解液で60秒間エッチング処理を行った。続いて、第2エッチング処理として、1.0Mリン酸水溶液で150秒間孔径拡大処理を行った。さらに上記工程を繰り返し、これらを合計5回追加実施した。これにより、アルミニウム薄膜表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された微細孔を有する微細孔層を形成した。最後に、微細孔層にフッ素系離型剤を塗布し、余分な離型剤を洗浄することで、金型を得た。
(印刷物の作製)
紙基材上に親水性フッ素化合物を添加したポリエステル系樹脂とスチレンアクリル系樹脂からなるトナーを用い電子写真法で参考例1−1と同様の絵柄を有するインキ層形成用層を形成した。ポリエステル系樹脂とスチレンアクリル系樹脂が軟化する温度になるように金型を最外層に有する弾性ロールを加温した状態で、対峙する弾性ロール間に上記インキ層形成用層が金型に一様に接触するように印刷物を挟み、10N/cmの荷重で加圧した。その後、冷却することによりインキ層形成用層を固化させ、金型から剥離することにより、微細凹凸を有するインキ層が形成されている印刷物を得た。
[比較例1]
紙基材上に参考例1−1と同様にしてインキ層を形成した。
[比較例2]
紙基材上に参考例1−1と同様にしてインキ層を形成した。さらにその上に、紫外線硬化樹脂組成物をグラビア法で印刷した後、2000mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化させることにより、オーバーコート層を形成した。
[比較例3]
紙基材上に参考例1−1と同様にしてインキ層を形成した。印刷面の上に粘着層がついたOPPフィルムを貼り合わせた。
[比較例4]
紙基材上に参考例1−1と同様にしてインキ層を形成した。さらにその上に、硬化後表面がつや消し状態になるフィラーを含有した紫外線硬化樹脂組成物をグラビア法で印刷したのち2000mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化させて、マット層を形成した。
[評価1]
(走査型電子顕微鏡による金型断面または複製型断面の観察)
集束イオンビームにより金型または複製型を垂直に切断し、日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、上記金型または複製型の断面を観察し、得られた画像から、微細孔の孔径、周期、深さ、および開口部の形状を測定した。
参考例1−1の金型は、およそ孔径100nmのテーパー形状の微細孔の奥に、およそ孔径0.5nmの微細孔が形成されていることが確認され、微細孔の周期は110nmであり、微細孔の深さは220nmであった。また、微細孔の開口部には、テーパー形状が形成されていることが確認され、テーパー形状の深さは215nmであり、テーパー角度は77°であった。
参考例1−2の金型および複製型は、いずれも、およそ孔径100nmのテーパー形状の微細孔の奥に、およそ孔径0.8nmの微細孔が形成されていることが確認され、微細孔の周期は110nmであり、微細孔の深さは220nmであった。また、微細孔の開口部には、テーパー形状が形成されていることが確認され、テーパー形状の深さは215nmであり、テーパー角度は77°であった。
参考例2の金型は、およそ孔径100nmのテーパー形状の微細孔の奥に、およそ孔径0.5nmの微細孔が形成されていることが確認され、微細孔の周期は110nmであり、微細孔の深さは220nmであった。また、微細孔の開口部には、テーパー形状が形成されていることが確認され、テーパー形状の深さは215nmであり、テーパー角度は77°であった。
参考例3の金型は、およそ孔径100nmのテーパー形状の微細孔の奥に、およそ孔径0.5nmの微細孔が形成されていることが確認され、微細孔の周期は110nmであり、微細孔の深さは220nmであった。また、微細孔の開口部には、テーパー形状が形成されていることが確認され、テーパー形状の深さは215nmであり、テーパー角度は77°であった。
参考例4の金型は、およそ孔径120nmのテーパー形状の微細孔の奥に、およそ孔径2nmの微細孔が形成されていることが確認され、微細孔の周期は130nmであり、微細孔の深さは340nmであった。また、微細孔の開口部には、テーパー形状が形成されていることが確認され、テーパー形状の深さは320nmであり、テーパー角度は80°であった。
参考例5の金型は、およそ孔径100nmのテーパー形状の微細孔の奥に、およそ孔径0.5nmの微細孔が形成されていることが確認され、微細孔の周期は110nmであり、微細孔の深さは220nmであった。また、微細孔の開口部には、テーパー形状が形成されていることが確認され、テーパー形状の深さは215nmであり、テーパー角度は77°であった。
実施例6の金型および複製型は、いずれも、およそ孔径120nmのテーパー形状の微細孔の奥に、およそ孔径2nmの微細孔が形成されていることが確認され、微細孔の周期は130nmであり、微細孔の深さは340nmであった。また、微細孔の開口部には、テーパー形状が形成されていることが確認され、テーパー形状の深さは320nmであり、テーパー角度は80°であった。
実施例7の金型は、およそ孔径100nmのテーパー形状の微細孔の奥に、およそ孔径0.5nmの微細孔が形成されていることが確認され、微細孔の周期は110nmであり、微細孔の深さは220nmであった。また、微細孔の開口部には、テーパー形状が形成されていることが確認され、テーパー形状の深さは215nmであり、テーパー角度は77°であった。
実施例8の金型は、およそ孔径100nmのテーパー形状の微細孔の奥に、およそ孔径0.5nmの微細孔が形成されていることが確認され、微細孔の周期は110nmであり、微細孔の深さは220nmであった。また、微細孔の開口部には、テーパー形状が形成されていることが確認され、テーパー形状の深さは215nmであり、テーパー角度は77°であった。
[評価2]
(走査型電子顕微鏡による印刷物の微細凹凸の表面および断面の観察)
日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、印刷物の表面を観察した。また、ガラス切片で断面を製作し、日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、上記印刷物の断面を観察し、得られた画像から、微細凹凸における凸部の周期、凸部の高さ、本体部および先端部の形状を計測した。
(微細凹凸の反射率)
微細凹凸の反射率についての測定を行った。なお、微細凹凸の反射率については、上述した参考例1−1〜5、実施例6〜8の金型または複製型を用いて、以下の方法により反射率測定用フィルムを形成し、反射率測定用フィルムの微細凹凸側とは反対側に黒色テープを貼り付け、島津製作所製自記分光光度計UV−3100を用いて、反射率測定用フィルム表面への5°正反射率を測定することにより評価した。
まず、光透過性基板として準備した厚さ80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製、屈折率1.48)に、100質量部の紫外線硬化性樹脂組成物(粘度500mPa・s)に対し、トリアセチルセルロースに浸透する溶剤として、メチルエチルケトン80質量部およびメチルイソブチルケトン20質量部を含む溶剤含有樹脂組成物を厚さ20μmとなるように塗布した後、溶剤を80℃で30秒間乾燥除去し、上述した金型または複製型にゴムローラーにより10N/cmの荷重で圧着した。金型または複製型全体に均一な紫外線硬化性樹脂組成物が塗布されたことを確認し、光透過性基板側から2000mJ/cmのエネルギーで紫外線を照射して紫外線硬化性樹脂組成物を光硬化させた。その後、金型または複製型から剥離することにより、反射率測定用フィルムを得た。
(印刷物の視認性)
目視にて、文字のボケ状態の確認を行った。目視するとき、蛍光灯を印刷物表面に対して上面に設定し、机上に印刷物を置き、真上から斜め60度まで目視で確認を行った。また蛍光灯を印刷物表面から斜め30度に設置し、真上から斜め30度まで目視で確認した。
(洗浄性とスティッキングの発生の有無)
印刷物の微細凹凸側表面に指紋を付着させた後、水を湿らせたガーゼで拭き取り、24時間風乾させた。表面に水滴が残っていないことを確認し、洗浄性として指紋の残りを目視での確認と日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、上記反射防止面の表面を観察した。得られた画像から、スティッキングの発生の有無を確認した。
(布拭き性)
印刷物を、ネルで50g/cmの荷重で擦り、12時間放置後、日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、上記フィルムの表面を観察した。得られた画像から、微細凹凸の凸部の損傷の発生の有無を確認した。
(微細凹凸の金型または複製型からの抜け性)
日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、反射防止フィルムの表面を観察した。得られた画像から、上記フィルム表面の構造体の破損状態を観察した。
(濡れ性評価)
親水性の指標である濡れ性は水の接触角としてJIS K2396に則り評価した。
(耐水性評価)
印刷物の反射防止面が40℃、90%の温湿度の環境に接するように保管し、上記温湿度の環境下に120時間放置後の、微細凹凸側表面の変化を目視で観察した。
(洗浄処理に対する耐久性)
印刷物の微細凹凸側表面に指紋を付着させた後、水を湿らせたガーゼで拭き取り、24時間風乾させた。表面に水滴が残っていないことを確認した。この作業を10回繰り返した後、洗浄性の耐久性評価として指紋の残りを目視での確認と日立ハイテクノロジーズ製走査型電子顕微鏡S−4500を用いて、上記反射防止面の表面を観察した。得られた画像から、スティッキングの発生の有無を確認した。
(干渉縞の有無)
フナテック社製の干渉縞検査ランプ(Naランプ)を用いて、反射防止フィルムにおける干渉縞の有無を目視にて検査した。干渉縞の発生が全く見えないもの、あるいはぼんやり見えるものは問題ないと判断し、はっきり見えるものを不良と判断した。
なお、評価2においては、参考例1−1〜5、実施例6〜8については上述したすべての項目について評価を行い、比較例1〜3については印刷物の視認性、洗浄性、洗浄処理に対する耐久性、濡れ性について評価を行い、比較例4については走査型電子顕微鏡によるマット層の表面の観察、印刷物の視認性、洗浄性、洗浄処理に対する耐久性、濡れ性について評価を行った。
参考例1−1の印刷物の表面に形成された透明樹脂層の表面(転写面)には、金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが210nm、本体部が曲率をもつテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径4nmの円弧状の構造体が形成されていた。金型からの抜け性は、問題なく実施された。また、5°正反射率は0.02%であった。
また濡れ性は30度であった。耐水性も問題なかった。
また、指紋の残り、およびスティッキングの発生は観察されなかったことから、洗浄性には問題がないことが確認された。
また、洗浄処理に対する耐久性の評価においても、指紋の残り、およびスティッキングの発生は観察されなかったことから、洗浄処理に対する耐久性にも問題がないことが確認された。
外観も白くなく、印刷物の視認性は実用に耐え得るものであった。また、布拭きでも損傷は抑えられ、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。
参考例1−2の印刷物の表面に形成された透明樹脂層の表面(転写面)には、金型の表面構造が転写されていた。なお転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが210nm、本体部が曲率をもつテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径4nmの円弧状の構造体が形成されていた。金型からの抜け性は、問題なく実施された。また、5°正反射率は0.02%であった。
また濡れ性は28度であった。耐水性も問題なかった。
また、参考例1−1と同様に、洗浄性および洗浄処理に対する耐久性があることが確認された。
外観も白くなく、印刷物の視認性は実用に耐え得るものであった。また、布拭きでも損傷は抑えられ、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。
参考例2の印刷物の表面に形成された透明樹脂層の表面(転写面)には、金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが210nm、本体部が曲率をもつテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径4nmの円弧状の構造体が形成されていた。金型からの抜け性は、問題なく実施された。また、5°正反射率は0.02%であった。
また濡れ性は25度であった。耐水性も問題なかった。
また、参考例1−1と同様に、洗浄性および洗浄処理に対する耐久性があることが確認された。
外観も白くなく、印刷物の視認性は実用に耐え得るものであった。また、布拭きでも損傷は抑えられ、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。
参考例3の印刷物の表面に形成された透明樹脂層の表面(転写面)には、金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが180nm、本体部が曲率をもつテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径6nmの円弧状の構造体が形成されていた。金型からの抜け性は、問題なく実施された。また、5°正反射率は0.06%であった。
また濡れ性は20度であった。耐水性も問題なかった。
また、参考例1−1と同様に、洗浄性および洗浄処理に対する耐久性があることが確認された。
外観も白くなく、印刷物の視認性は実用に耐え得るものであった。また、布拭きでも損傷は抑えられ、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。
参考例4の印刷物の表面に形成された透明樹脂層の表面(転写面)には、金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が130nm、凸部の高さが298nm、本体部が曲率をもたないテーパー形状からなり、そのテーパー角度が80°、先端部の形状が半径9nmの円弧状の構造体が形成されていた。金型からの抜け性は、問題なく実施された。また、5°正反射率は0.01%であった。
また濡れ性は30度であった。耐水性も問題なかった。
また、参考例1−1と同様に、洗浄性および洗浄処理に対する耐久性があることが確認された。
外観も白くなく、印刷物の視認性は実用に耐え得るものであった。また、布拭きでも損傷は抑えられ、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。
参考例5の印刷物の表面に形成された透明樹脂層の表面(転写面)には、金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが180nm、本体部が曲率をもつテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径6nmの円弧状の構造体が形成されていた。金型からの抜け性は、問題なく実施された。また、5°正反射率は0.03%であった。
また濡れ性は32度であった。耐水性も問題なかった。
また、参考例1−1と同様に、洗浄性および洗浄処理に対する耐久性があることが確認された。
外観も白くなく、印刷物の視認性は実用に耐え得るものであった。また、布拭きでも損傷は抑えられ、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。
実施例6の印刷物の表面に形成されたインキ層の表面(転写面)には、金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が130nm、凸部の高さが298nm、本体部が曲率をもたないテーパー形状からなり、そのテーパー角度が80°、先端部の形状が半径9nmの円弧状の構造体が形成されていた。金型からの抜け性は、問題なく実施された。また、5°正反射率は0.01%であった。
また濡れ性は25度であった。耐水性も問題なかった。
また、参考例1−1と同様に、洗浄性および洗浄処理に対する耐久性があることが確認された。
外観も白くなく、印刷物の視認性は実用に耐え得るものであった。また、布拭きでも損傷は抑えられ、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。
実施例7の印刷物の表面に形成されたインキ層の表面(転写面)には、金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが190nm、本体部が曲率をもつテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径5nmの円弧状の構造体が形成されていた。金型からの抜け性は、問題なく実施された。また、5°正反射率は0.03%であった。
また濡れ性は8度であった。耐水性も問題なかった。
また、参考例1−1と同様に、洗浄性および洗浄処理に対する耐久性があることが確認された。
外観も白くなく、印刷物の視認性は実用に耐え得るものであった。また、布拭きでも損傷は抑えられ、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。
実施例8の印刷物の表面に形成されたインキ層の表面(転写面)には、金型の表面構造が転写されていた。なお、転写面には、凸部の周期が110nm、凸部の高さが180nm、本体部が曲率をもつテーパー形状からなり、そのテーパー角度が77°、先端部の形状が半径6nmの円弧状の構造体が形成されていた。金型からの抜け性は、問題なく実施された。また、5°正反射率は0.03%であった。
また濡れ性は18度であった。耐水性も問題なかった。
また、参考例1−1と同様に、洗浄性および洗浄処理に対する耐久性があることが確認された。
外観も白くなく、印刷物の視認性は実用に耐え得るものであった。また、布拭きでも損傷は抑えられ、干渉縞の発生も抑えられており、実用上問題はなかった。
比較例1の印刷物は、耐水性は悪く、試験後はシワが発生していた。また、印刷物の視認性は悪く、蛍光灯の光が反射し、文字の視認が悪かった。また、洗浄性は悪く、指紋が残っており、洗浄処理に対する耐久性がなかった。印刷物表面の濡れ性は60度であった。
比較例2の印刷物は、耐水性は問題なかったが、印刷物の視認性は悪く、蛍光灯の光が反射し、文字の視認が悪かった。また、洗浄性は悪く、指紋が残っており、洗浄処理に対する耐久性がなかった。印刷物表面の濡れ性は79度であった。
比較例3の印刷物は、耐水性は問題なかったが、印刷物の視認性は悪く、蛍光灯の光が反射し、文字の視認が悪かった。また、洗浄性は悪く指紋が残っており、洗浄処理に対する耐久性がなかった。印刷物表面の濡れ性は82度であった。
比較例4の印刷物表面は、マット状の紫外線硬化樹脂層が形成されていた。耐水性は問題なかったが、印刷物の視認性は悪く、蛍光灯の光が乱反射して白っぽく見え文字の視認が悪かった。洗浄性は悪く指紋が残っており、洗浄処理に対する耐久性がなかった。印刷物表面の濡れ性は60度であった。
1 … 基材
2 … インキ層
2’ … インキ層形成用層
3 … 透明樹脂層
3’ … 透明樹脂層形成用層
10 … 印刷物
20 … 金型

Claims (2)

  1. 基材と、
    前記基材上に形成され、樹脂インキを含むインキ層とを有する印刷物であって、
    前記印刷物の前記インキ層側の最表面に、可視光領域の波長以下の周期で形成された複数の凸部を備える微細凹凸を有し、
    前記微細凹凸が、前記インキ層の表面に形成されていることを特徴とする印刷物。
  2. 基材と、前記基材上に形成され、樹脂インキを含み、かつ表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された複数の凸部を備える微細凹凸が形成されているインキ層とを有する印刷物の製造方法であって、
    前記基材上に前記樹脂インキを含むインキ層形成用層を形成するインキ層形成用層形成工程と、
    金属基体、および前記金属基体の表面に可視光領域の波長以下の周期で形成された複数の微細孔を備える金型または前記金型の複製型を準備し、前記インキ層形成用層表面と前記金型または前記複製型の前記微細孔側とを接触させて配置し、圧力を負荷することにより、前記インキ層形成用層の前記金型側表面または前記複製型側表面に前記微細凹凸を形成する賦型工程と、
    前記賦型工程後に前記インキ層形成用層を固化する工程、および前記インキ層形成用層から前記金型または前記複製型を剥離する工程を順不同に行い、前記インキ層を形成する固化・剥離工程と
    を有することを特徴とする印刷物の製造方法。
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