以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付与することにより、重複する説明を省略する。
(第1実施形態)
本発明の好ましい実施形態について、図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による流量計測装置10を示す概略構成図である。
流量計測装置10は、計測対象となるインジェクタ100から噴射される計測流体の流量を計測する装置であり、圧力容器20、供給部30、排出部40、計測部50、補助インジェクタ60、制御部70などから構成されている。
最初に、インジェクタ100について説明する。インジェクタ100は、先端に噴孔を有しており、インジェクタ100に供給される計測流体を噴孔より噴射する。噴孔は、インジェクタ100に内蔵される弁部材により開閉される。インジェクタ100は、制御部70と電気的に接続されており、制御部70からの駆動パルスTWVにより弁部材に作用する圧力が変えられ、弁部材が開閉駆動されることにより、噴孔からの噴射量が制御される。弁部材の開弁時間は、制御部70から出力される駆動パルスTWVの長さを制御することによって制御される。
圧力容器20は、液密な所定容積を有し、圧力容器20に設置されたインジェクタ100から噴射される計測流体を一時的に貯留する。圧力容器20は、インジェクタ100の噴射量を計測するよりも以前に、計測流体で満たされている。圧力容器20内の計測前の圧力は、後述する排出部40のレギュレータ42によって調整される。
供給部30は、所定の圧力に高められた計測流体をインジェクタ100に供給する。供給部30は、高圧ポンプ32及びコモンレール34などから構成される。高圧ポンプ32は、計測流体を蓄積するタンク(図示せず)から計測流体を汲み上げ、加圧し、加圧した計測流体をコモンレール34に供給する。コモンレール34は、高圧ポンプ32にて加圧された計測流体を一時的に貯留し、配管を介して接続されたインジェクタ100に供給する。
本実施形態では、コモンレール34は、後述する補助インジェクタ60とも配管を介して接続されており、補助インジェクタ60にも高圧ポンプ32にて加圧された計測流体を供給する。したがって、インジェクタ100及び補助インジェクタ60の噴射圧力は、コモンレール34に貯留された計測流体の圧力とほぼ同じとなる。
高圧ポンプ32は、カムを有する回転軸を回転させるモータ、カムの回転により往復動するプランジャ、プランジャの往復動により計測流体を加圧する加圧室、及び加圧室への計測流体の供給量を調整することにより、加圧室からコモンレール34に向けて吐出される計測流体の吐出量を調整する吸入調量部などから構成されている。高圧ポンプ32のモータ及び吸入調量部は、制御部70と電気的に接続されており、制御部70からの指令信号により、モータ及び吸入調量部が制御され、コモンレール34に向けて吐出される計測流量の吐出量が制御され、このことによりコモンレール34内の圧力が調圧される。
コモンレール34には、図示しない圧力センサが取り付けられており、コモンレール34内の計測流体の圧力に応じた信号を制御部70に出力する。制御部70は、圧力センサからの信号に基づいて、コモンレール34内の圧力が設定された圧力となるように、高圧ポンプ32からコモンレール34へ吐出される計測流体の吐出量を制御する。
また、高圧ポンプ32の回転軸には、図示しないエンコーダが設けられており、エンコーダは、回転軸の回転に伴って適宜パルス信号を発生する。パルス信号は、回転軸が1回転するたびに発生する基準パルス信号と、回転軸の1回転につき複数のパルスを発生する回転パルス信号とからなる(図4を参照)。本実施形態では、エンコーダが1回転するごとに1個の基準パルス信号と、数十個の回転パルス信号が発生するようになっている。エンコーダは、回転軸が回転することにより発生するこれらのパルス信号を制御部70に出力する。これら基準パルス信号及び回転パルス信号は、噴射基準信号の生成のために使用される。本実施形態では、基準パルス信号が検出されてから、所定数の回転パルス信号が検出されるときに噴射基準信号が生成されるようになっている。したがって、高圧ポンプ32の回転数を固定すると、噴射基準信号は、高圧ポンプ32の回転数に応じた間隔で生成されることとなる。また、本実施形態では、生成された噴射基準信号を基準に、リセット信号、排出部40の電磁弁44の開弁タイミング、開弁時間、インジェクタ100の開弁タイミング、補助インジェクタ60の開弁タイミングが設定される。
排出部40は、インジェクタ100や補助インジェクタ60から計測流体が噴射されることにより、上昇した圧力容器20内の圧力分の計測流体を圧力容器20の外部に排出するものである。排出部40は、レギュレータ42、及び電磁弁44などから構成される。レギュレータ42は、圧力容器20内の圧力をレギュレータ42の設定圧に保持するためのものであり、圧力容器20内の圧力が当該設定圧を上回ると、その圧力分に相当する計測流体を圧力容器20の外部に排出する。レギュレータ42の設定圧は、数MPaとすればよい。
電磁弁44は、制御部70からの指令信号によって開閉されるものであり、圧力容器20とレギュレータ42との間に設けられる。制御部70によって電磁弁44が開弁制御されると、圧力容器20内の計測流体はレギュレータ42に供給される。電磁弁44は、噴射基準信号を基準に設定された開弁タイミング及び開弁時間に応じて制御される。制御部70によって電磁弁44が開弁されたとき、圧力容器20内の圧力がレギュレータ42の設定圧力以上であれば、レギュレータ42は、圧力容器20内の圧力が設定圧となるまで計測流体を排出する。一方、圧力容器20内の圧力がレギュレータ42の設定圧を下回る値であれば、レギュレータ42へ計測流体が供給されても、レギュレータ42から計測流体は排出されない。制御部70によって電磁弁44が閉弁されると、圧力容器20内の計測流体はレギュレータ42に供給されず、圧力容器20は密閉状態となる。したがって、圧力容器20内の圧力がレギュレータ42の設定圧以上となっても、圧力容器20からは計測流体は排出されない。
計測部50は、排出部40から排出された計測流体の体積流量を計測することにより、インジェクタ100及び補助インジェクタ60の実噴射量を計測するものである。計測部50は、圧力センサ52、及び体積流量計54などから構成されている。圧力センサ52は、圧力容器20内の圧力変化量を検出するものであり、圧力容器20内の圧力に応じた信号を制御部70に出力する。なお、リセット信号が発生されることにより、圧力センサ52からの信号は一旦リセットされる。
体積流量計54は、レギュレータ42の下流側に設置されており、レギュレータ42から排出され、体積流量計54本体を通過する計測流体の流量を計測し、その流量に応じた信号を制御部70に出力する。体積流量計54としては、ギヤ式の体積流量計を使用することが可能である。この方式の体積流量計は、レギュレータ42から排出される計測流体によって回転可能なギヤを流量計本体内の通路に設置し、このギヤの回転数から流量計本体を通過する計測流体の流量を計測する。
補助インジェクタ60は、インジェクタ100とは別に、圧力容器20内に計測流体を噴射する。補助インジェクタ60は、インジェクタ100と同様に先端に噴孔と、噴孔を開閉する弁部材を有している。弁部材が駆動して噴孔を開弁することにより、噴孔から計測流体が噴射される。補助インジェクタ60は、制御部70と電気的に接続されており、制御部70からの駆動パルスTWVにより弁部材が開閉駆動され、噴孔からの噴射量が制御される。弁部材の開弁時間は、制御部70から出力される駆動パルスTWVの長さを制御することによって制御される。
制御部70は、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリなどを中心とするマイクロコンピュータにて構成されている。制御部70は、高圧ポンプ32、インジェクタ100、電磁弁44、補助インジェクタ60、圧力センサ52、及び体積流量計54と電気的に接続されている。制御部70は、インジェクタ100の目標計測噴射量及び目標計測噴射圧からなる複数の計測噴射条件を取得する。そして、制御部70は、取得した複数の計測噴射条件のうち、それぞれの計測噴射条件に従ってインジェクタ100からの噴射により圧力容器20内の計測流体に付与される熱量を、計測噴射条件ごとに算出する。そして、これらの熱量のうち、値が最大となる最大熱量を検索する。
さらに、制御部70は、算出された複数の計測噴射条件ごとの熱量と、目標補助噴射量及び目標補助噴射圧からなる補助噴射条件によって補助インジェクタ60からの噴射により圧力容器20内の計測流体に付与される熱量とを加算した加算熱量が、最大熱量となるように、補助噴射条件を設定する。
なお、本実施形態では、補助インジェクタ60へ供給される計測流体の供給源はコモンレール34となっているため、目標補助噴射圧は、インジェクタ100の目標計測噴射圧と同じとなる。したがって、目標補助噴射量のみが、インジェクタ100の目標計測噴射量と異なる。こうして設定された計測噴射条件及び補助噴射条件に従って制御部70は、高圧ポンプ32、インジェクタ100、電磁弁44、及び補助インジェクタ60を制御する。
インジェクタ100から最大熱量となる計測噴射条件による噴射を行う場合、補助噴射条件の目標補助噴射量がゼロとなっているため、インジェクタ100のみから噴射が行われ、補助インジェクタ60から噴射は行われない。インジェクタ100の噴射が行われた後、制御部70は、電磁弁44を開弁させる。そうすると、圧力容器20の計測流体が、レギュレータ42に供給される。このとき圧力容器20内の圧力は、計測噴射条件による噴射の分だけ上昇しているため、その上昇した圧力分の計測流体がレギュレータ42から排出される。その後、体積流量計54は、レギュレータ42から排出された計測流体の流量を計測する。この場合では、インジェクタ100のみからしか噴射が行われないから、体積流量計54によって計測された結果が、インジェクタ100の実噴射量となる。
一方、インジェクタ100から最大熱量以外の熱量となる計測噴射条件による噴射を行う場合、インジェクタ100の噴射に加え、補助インジェクタ60の噴射も行われる。インジェクタ100及び補助インジェクタ60の噴射が行われた後、制御部70は、電磁弁44を開弁させる。そうすると、圧力容器20の計測流体は、レギュレータ42に供給される。このとき圧力容器20内の圧力は、インジェクタ100の噴射、及び補助インジェクタ60の噴射の分上昇しているため、その上昇した圧力分の計測流体がレギュレータ42から排出される。このとき、圧力容器20に設けられた圧力センサ52により、インジェクタ100及び補助インジェクタ60の噴射が行われたときの圧力変化量が検出され、その圧力変化量に応じた信号が圧力センサ52から制御部70に出力される。その後、体積流量計54は、レギュレータ42から排出された計測流体の流量を計測する。体積流量計54で計測された結果は、インジェクタ100及び補助インジェクタ60からの噴射を足し合わせたものとなっている。制御部70は、インジェクタ100の噴射による圧力容器20内の圧力変化量と、補助インジェクタ60の噴射による圧力容器20内の圧力変化量とによって、体積流量計54の計測結果を、比例配分することにより、インジェクタ100の実噴射量と、補助インジェクタ60の実噴射量を算出する。
以下、インジェクタ100の流量計測(噴射量計測)について、図2及び図3のフローチャートに基づいて詳細に説明する。このフローチャートは、計測対象となるインジェクタ100が圧力容器20に設置されてから開始される。
まず、ステップS10では、計測対象のインジェクタ100の計測噴射条件の数Mを入力装置から取り込み、制御部70のRAM又はフラッシュメモリに記憶する。そして、ステップS20では、供給部30の条件を入力装置から取り込み、制御部70のRAM又はフラッシュメモリに記憶する。供給部30の条件には、高圧ポンプ32の回転数、インジェクタ100の計測噴射圧Pmとしてのコモンレール34の設定圧が含まれている。高圧ポンプ32の回転数、及びコモンレール34の設定圧は計測噴射条件ごとに設定されている。このステップS20では、計測噴射条件ごとに設定された高圧ポンプ32の回転数、コモンレール34の設定圧全てを取り込み、制御部70のRAM又はフラッシュメモリに記憶する。なお、コモンレール34の設定圧は、計測噴射条件の計測噴射圧としてRAMなどに記憶される。このステップS20において取り込んだコモンレール34の設定圧、つまり、計測噴射圧Pmが特許請求の範囲に記載の目標計測噴射圧となる。ステップS30では、制御部70からインジェクタ100へ出力する駆動パルスTWVmを入力装置から取り込み、制御部70のRAM又はフラッシュメモリに記憶する。なお、この駆動パルスは、計測噴射条件ごとに設定されており、このステップS30では、計測噴射条件ごとに設定された全ての駆動パルスTWVmを取り込む。
ステップS40〜ステップS100は、計測噴射条件ごとに設定された計測噴射圧Pm及び駆動パルスTWVmから計測噴射量Vmを算出するとともに、計測噴射量Vmと計測噴射圧Pmとの乗算により算出される計測噴射条件ごとの熱量Cmのうち、最大熱量Cmを検索する処理である。このステップS40〜ステップS100の処理は、1番目の計測噴射条件からM番目の計測噴射条件まで一つずつ実施され、M番目の計測噴射条件についての処理が実施されるまで、繰り返し実施される。ここで、熱量とは、インジェクタ100又は補助インジェクタ60から圧力容器20に計測流体が噴射される際に、圧力容器20内の計測流体に付与されるものである。熱量は、インジェクタ100又は補助インジェクタ60から噴射される計測流体の噴射量と噴射圧との乗算によって算出することができる。本実施形態では、圧力容器20内の計測流体に付与される実際の熱量は計測できないので、インジェクタ100及び補助インジェクタ60から噴射される噴射量の目標値と噴射圧の目標値とを乗算することによって得られる結果を、圧力容器20内の計測流体に付与される熱量としている。
以下、j番目の計測噴射条件の設定について説明する。ステップS40では、インジェクタ100の計測噴射量が、駆動パルスTWVm及び計測噴射圧Pmに依存してどのように変化するのかを示した図5の特性線図を用いて、ステップS30において取り込んだj番目の計測噴射圧Pm及び駆動パルスTWVmから計測噴射量Vmjを算出する。このステップS40において算出された計測噴射量Vmjが特許請求の範囲に記載の目標計測噴射量となる。
なお、図5から明らかなように、インジェクタ100の計測噴射量Vmは、計測噴射圧Pmが高くなるほど多くなるとともに、各計測噴射圧において駆動パルスTWVmが長くなるほど増加する。ステップS40で算出された計測噴射量Vmjは、制御部70のRAM又はフラッシュメモリに記憶される。
ステップS50では、ステップS20で取り込んだj番目の計測噴射圧Pmjと、ステップS40で算出したj番目の計測噴射量Vmjとを乗算することによって、インジェクタ100から計測噴射量Vmj、計測噴射圧Pmjで噴射したときに圧力容器20内の計測流体に付与される熱量Cmjを算出する。以下、この熱量Cmjをj番目の計測噴射条件の熱量と称する。熱量Cmjが算出された後、熱量Cmjは制御部70のRAM又はフラッシュメモリに記憶される。
ステップS60では、ステップS50で算出された熱量Cmjが、制御部70のRAM又はフラッシュメモリに記憶されたj−1番目の計測噴射条件の熱量Cmj−1以上であるか否かを判定する。ステップS60において、熱量Cmjが熱量Cmj−1以上であれば、処理はステップS70に進み、熱量Cmjが熱量Cmj−1を下回っていれば、処理はステップS100に進む。なお、ステップS60の処理を実施する際、熱量Cmj−1がRAM又はフラッシュメモリに記憶されていない場合、処理はステップS70に進む。
熱量Cmjが熱量Cmj−1を下回っているときに実施されるステップS100では、現時点で記憶されている当面の最大熱量Cmkを、再び当面の最大熱量Cmkとして、制御部70のRAM又はフラッシュメモリに記憶する。一方、熱量Cmjが熱量Cmj−1以上であるときに実施されるステップS70では、現時点で制御部70のRAM又はフラッシュメモリに記憶されている最大熱量Cmkが熱量Cmj以上であるか否かを判定する。ステップS70において、最大熱量Cmkが熱量Cmj以上であれば、処理はステップS80に進み、最大熱量Cmkが熱量Cmjを下回っていれば、処理はステップS90に進む。
ステップS70の処理が実施された後に実施されるステップS80では、当面の最大熱量Cmkとして記憶されている熱量を再び最大熱量Cmkとして制御部70のRAM又はフラッシュメモリに記憶する。
ステップS70において算出された熱量Cmjが当面の最大熱量Cmkとして記憶されている熱量を上回っていると判定されたときに実施されるステップS90では、j番目の熱量Cmjを当面の最大熱量Cmkとして制御部70のRAM又はフラッシュメモリに記憶する。
なお、1番目の熱量Cm1について最大熱量Cmkの検索を行う場合、最大熱量Cmkは、RAM又はフラッシュメモリに記憶されていないので、ステップS60は肯定判定となり、ステップS70に進む。そして、ステップS70でも、否定判定となり、ステップS90に進む。この後に実施されるステップS90では、1番目の熱量Cm1を当面の最大熱量Cmkとして、制御部70のRAM又はフラッシュメモリに記憶する。
ステップS80、S90、S100の処理が終了すると、ステップS110の処理を実施する。ステップS110では、ステップS40〜ステップS100で処理した計測噴射条件の番号jが、番号M以上であるか否かを判定する。ステップS110において番号jが番号M以上であれば、M個全ての計測噴射条件についての計測噴射量Vmが算出され、最終的な最大熱量Cmkが検索されたものと判定し、処理をステップS120に進める。
一方、ステップS110において番号jが番号Mを下回っていれば、処理をステップS40に戻す。ステップS40に戻った後に行われるステップS40〜ステップS100の処理は、全てj+1番目の計測噴射条件についてのものとなる。1番目からM番目までの計測噴射条件のそれぞれについてステップS40〜ステップS100の処理が完了すると、制御部70のRAM又はフラッシュメモリには、最終的な最大熱量Cmkが記憶されることとなる。
ステップS120〜ステップS150は、計測噴射条件のそれぞれの熱量Cmjと、補助噴射条件に従って補助インジェクタ60から噴射したときに圧力容器20内の計測流体に付与される熱量と、を加算した加算熱量が、最大熱量Cmkと等しくなるように、補助噴射条件を計測噴射条件ごとに設定する処理である。なお、補助噴射条件は、補助噴射量Vaj及び補助噴射圧Pajからなり、ステップS120〜ステップS150では、計測噴射条件ごとに補助噴射量Vaj及び補助噴射圧Pajを設定する。ステップS120〜ステップS150の処理は、計測噴射条件ごとに全ての補助噴射条件が設定されるまで繰り返し実施される。
以下、j番目の計測噴射条件に対応する補助インジェクタ60の補助噴射条件の設定について説明する。ステップS120では、補助噴射条件の補助噴射圧Pajを設定し、制御部70のRAM又はフラッシュメモリに記憶する。本実施形態の場合、補助インジェクタ60の計測流体の供給源がコモンレール34となっているため、ここで設定される補助噴射圧Pajは、計測噴射圧Pmjと同じ値となる。
ステップS130では、j番目の補助噴射条件について、j番目の計測噴射条件の熱量Cmjに、補助噴射量Vajと補助噴射圧Pajとの乗算して得られる熱量Cajを加えた加算熱量が、最大熱量Cmkとなるような、補助噴射量Vajを算出する。
そして、ステップS140では、補助インジェクタ60の補助噴射量が、駆動パルスTWVa及び補助噴射圧Paに依存してどのように変化するのかを示した図6の特性線図を用いて、補助噴射圧Paj及び補助噴射量Vajから駆動パルスTWVajを算出し、制御部70のRAM又はフラッシュメモリに記憶する。なお、図6から明らかなように、補助インジェクタ60の補助噴射量Vaは、補助噴射圧Paが高くなるほど多くなるとともに、各補助噴射圧において駆動パルスTWVaが長くなるほど増加する。
さらに、ステップS150では、インジェクタ100及び補助インジェクタ60の噴射が重ならないように、インジェクタ100の噴射と、補助インジェクタ60の噴射との間にインターバル(無噴射期間)を設定する。具体的には、インジェクタ100の噴射を補助インジェクタ60の噴射よりも先に行う場合、インジェクタ100の駆動パルスTWVmjの終了から、補助インジェクタ60の駆動パルスTWVajの開始までの間にインターバルを設定する。
これらステップS120〜ステップS150の処理が終了すると、ステップS160の処理を実施する。ステップS160では、ステップS120〜ステップS150で処理した計測噴射条件の番号jが、番号M以上であるか否かを判定する。ステップS160において番号jが番号M以上であれば、計測噴射条件についての補助噴射条件(補助噴射量Va及び補助噴射圧Pa)が算出され、設定されたものと判定し、処理をステップS170に進める。
一方、ステップS160において番号jが番号Mを下回っていれば、処理をステップS120に戻す。ステップS120に戻った後に行われるステップS120〜ステップS150の処理は、全てj+1番目の計測噴射条件に対応する補助噴射条件の補助噴射量Vaj及び補助噴射圧Pajについてのものとなる。1番目からM番目までの補助噴射条件のそれぞれについてステップS120〜ステップS150までの処理が完了すると、制御部70のRAM又はフラッシュメモリには、1番目からM番目までの補助噴射条件の補助噴射量Vaj及び補助噴射圧Pajが記憶されることとなる。なお、熱量Cmjの値が最大熱量Cmkとなっている場合では、補助噴射量Vaj=0となる。また、ステップS120〜ステップS150の処理で、算出された補助噴射量Vaj及び補助噴射圧Pajのそれぞれが特許請求の範囲に記載の目標補助噴射量及び目標補助噴射圧となる。
ステップS170〜ステップS200は、1番目からM番目までの計測噴射条件ごとの噴射を行う場合の排出部40及び計測部50の作動条件の設定を行うとともに、それぞれの計測噴射条件ごとの噴射回数を設定する処理である。
以下、j番目の計測噴射条件の噴射を実施するときの、排出部40及び計測部50の作動条件の設定、及び噴射回数の設定について説明する。ステップS170では、j番目の計測噴射条件による噴射を実施するときの排出部40及び計測部50の作動条件を取り込んで、制御部70のRAM又はフラッシュメモリに記憶する。このステップS170で取り込む排出部40の作動条件は、電磁弁44の開弁タイミング及び開弁時間を含んでおり、計測部50の作動条件は、圧力センサ52からの信号をリセットするリセット信号の発生タイミングを含んでいる。電磁弁44の開弁タイミング及びリセット信号の発生タイミングは、高圧ポンプ32が回転することにより生成される噴射基準信号を基準として定められるものである。なお、電磁弁44の開弁時間は、インジェクタ100及び補助インジェクタ60から圧力容器20に噴射された計測流体が圧力容器20から十分に排出されるだけの時間に設定される。この開弁時間は、全ての計測噴射条件で固定であっても良いし、計測噴射条件ごとに変化させても良い。
ステップS180では、j番目の計測噴射条件の計測噴射圧Pmjがインジェクタ駆動安定圧Ps上回っているか否かを判定する。なお、このインジェクタ駆動安定圧Psとは、インジェクタ100において供給される計測流体の圧力によって動作する弁部材が、比較的安定して動作するための計測流体の供給圧力(計測噴射圧力Pm)である。
ステップS180において計測噴射圧Pmjがインジェクタ駆動安定圧Ps上回っている場合、処理はステップS190に進み、計測噴射圧Pmjがインジェクタ駆動安定圧Ps以下の場合、処理はステップS200に進む。
ステップS190では、j番目の計測噴射条件による噴射回数NsをN回に設定し、その回数を制御部70のRAM又はフラッシュメモリに記憶する。一方、ステップS200では、j番目の計測噴射条件による噴射回数NsをN/2回に設定し、その回数を制御部70のRAM又はフラッシュメモリに記憶する。
ステップS170〜ステップS200の処理が終了すると、ステップS210の処理を実施する。ステップS210では、ステップS170〜ステップS200で処理した計測噴射条件の番号jが、番号M以上であるか否かを判定する。ステップS210において、番号jが番号M以上であれば、M個全ての計測噴射条件の噴射についての排出部40及び計測部50の作動条件、及びそれぞれの計測噴射条件ごとの噴射回数が設定されたものと判定し、処理をステップS220に進める。
一方、ステップS210において、番号jが番号Mを下回っていれば、処理をステップS170に戻す。ステップS170に戻った後に行われるステップS170〜ステップS200の処理は、全てj+1番目の計測噴射条件に対応する排出部40及び計測部50の作動条件、及び噴射回数が設定される処理となる。
ステップS220〜ステップS270は、ステップS10〜ステップS210において設定された、1番目からM番目までの計測噴射条件及びk番目を除く1番目からM番目までの補助噴射条件に従ってインジェクタ100、補助インジェクタ60、供給部30、排出部40、及び計測部50を制御して、計測噴射条件ごとのインジェクタ100の実噴射量を計測する処理である。
ステップS220では、制御部70のRAM又はフラッシュメモリに設定された計測噴射条件及び補助噴射条件に従ってインジェクタ100、補助インジェクタ60、供給部30、及び排出部40を制御する。具体的には、j番目の熱量Cmjが最大熱量Cmkである場合、制御部70は、j番目の計測噴射条件の計測噴射量Vmj、つまり駆動パルスTWVmjに従いインジェクタ100を制御するとともに、計測噴射圧Pmjに従い供給部30の高圧ポンプ32を制御する。このとき、補助噴射量Vaj=0であるため、補助インジェクタ60からは計測流体が噴射されない。j番目の熱量Cmjが最大熱量Cmk以外の熱量である場合、制御部70は、j番目の計測噴射条件の計測噴射量Vmj、つまり駆動パルスTWVmjに従いインジェクタ100を制御するとともに、計測噴射圧Pmjに従い供給部30の高圧ポンプ32を制御する。それとともに、制御部70は、j番目の補助噴射条件の補助噴射量Vaj、つまり駆動パルスTWVajに従い補助インジェクタ60を制御する。そして、制御部70は、インジェクタ100及び補助インジェクタ60の噴射制御が終了した後に、排出部40による計測流体の排出を制御する。
ステップS230では、ステップS220において噴射が実施されるときに入力される圧力センサ52からの圧力容器20内の圧力に応じた信号を取り込み、制御部70のRAM又はフラッシュメモリに記憶する。そして、インジェクタ100及び補助インジェクタ60の噴射が終了し、排出部40から排出されたときに計測部50の体積流量計54から入力される流量に応じた信号を取り込み、制御部70のRAM又フラッシュメモリに記憶する。
続く、ステップS240では、ステップS230において取り込んだ圧力容器20内の圧力に応じた信号から、インジェクタ100の噴射による圧力容器20内の圧力変化量、及び補助インジェクタ60の噴射による圧力容器20内の圧力変化量を算出する。本実施形態では、制御部70は、インジェクタ100の噴射が行われる直前に生成されるリセット信号により、圧力センサ52からの信号をゼロにリセットし、リセット後の圧力センサ52からの信号により圧力容器20内の圧力変化量を算出する。
例えば、計測を実施するj番目の計測噴射条件が最大熱量Cmkのものである場合、制御部70は、インジェクタ100の噴射の直前に生成されるリセット信号により、圧力センサ52からの信号を一旦リセットする。そして、制御部70は、インジェクタ100から計測流体が噴射されることにより圧力センサ52から入力される信号に基づきΔPmjのみを算出し、その算出結果を制御部70のRAM又はフラッシュメモリに記憶する。一方、計測を実施するj番目の計測噴射条件が最大熱量Cmk以外のものである場合、制御部70は、インジェクタ100の噴射の直前に生成されるリセット信号により、圧力センサ52からの信号を一旦リセットする。そして、制御部70は、インジェクタ100の噴射により圧力センサ52からの入力される信号に基づきΔPmjを算出し、その算出結果を制御部70のRAM又はフラッシュメモリに記憶する。さらに、制御部70は、補助インジェクタ60の噴射により圧力センサ52から入力される信号と、先のΔPmjに基づきΔPajを算出し、その算出結果を制御部70のRAM又はフラッシュメモリに記憶する。加えて、制御部70は、先のΔPmjにΔPajを加算することにより、インジェクタ100及び補助インジェクタ60の噴射による圧力変化量ΔPjを算出し、その算出結果を制御部70のRAM又はフラッシュメモリに記憶する。このΔPmjが特許請求の範囲に記載の第一圧力変化量に相当し、ΔPajが特許請求の範囲に記載の第二圧力変化量に相当する。
ステップS250では、計測噴射条件による噴射回数が、ステップS190又はステップS200において設定された噴射回数Ns以上となったか否かを判定する。このステップS250において、噴射回数が設定された噴射回数Nsを下回っている場合は、処理をステップS220に戻し、噴射及び計測を実施する。ステップS250において、噴射回数が設定された噴射回数Ns以上となっている場合は、処理をステップS260に進める。
ステップS260では、RAM又はフラッシュメモリに記憶されている噴射ごとに取り込んだ体積流量計54の計測結果を積算することにより、積算流量Qを算出する。
ステップS270では、ステップS240で算出した圧力容器20の圧力変化量と、ステップS260で算出した積算流量Qとに基づいて、インジェクタ100の実噴射量Qmを算出する。制御部70は、式(1)、(2)に基づいて、インジェクタ100の実噴射量Qmを算出する。
Qm=Q×{(ΣΔPmj)/(ΣΔPj)}/Ns・・・・(1)Qa=Q×{(ΣΔPaj)/(ΣΔPj)}/Ns・・・・(2)
なお、実噴射量Qmを求める計測噴射条件が最大熱量のものである場合、ΔPmj=ΔPjであるため、ΣΔPmj=ΣPjとなる。また、ΔPaj=0となっているため、補助インジェクタ60の実噴射量Qa=0となる。上記式(1)、(2)を用いることにより、インジェクタ100の実噴射量Qm及び補助インジェクタ60の実噴射量Qaが算出される。
ステップS280では、ステップS220〜ステップS270で処理した計測噴射条件の番号jが番号M以上であるか否かを判定する。ステップS280において、番号jが番号M以上であれば、M個全ての計測噴射条件によるインジェクタ100の実噴射量の計測が完了したものと判定し、この制御フローを終了する。一方、ステップS280において、番号jが番号Mを下回っていれば、処理をステップS220に戻す。ステップS220に戻った後に行われるステップS220〜ステップS270の処理は、全てj+1番目の計測噴射条件に対応したものとなる。
次に、上記フローチャートを実施したときの流量計測装置10の作動及び効果について、図4を用いて説明する。この例では、二つの異なる計測噴射条件による噴射を実施したときのインジェクタ100の実噴射量の計測について説明する。第一計測噴射条件では、インジェクタ100の駆動パルスをTWVm1=0.5msec(計測噴射量Vm1=40mm 3 /st)とし、計測噴射圧をPm1=100MPaとする。第二計測噴射条件では、インジェクタ100の駆動パルスをTWVm2=0.2msec(計測噴射量Vm2=2mm 3 /st)とし、計測噴射圧をPm2=30MPaとする。なお、計測噴射量の単位「mm 3 /st」は、インジェクタ100から一回あたりの噴射で噴射される計測流体の体積である。
図2及び図3のフローチャートが実行されることにより、ステップS10において、入力装置から条件数M=2が取り込まれ、制御部70のRAMなどに記憶される。そして、ステップS20において、入力装置から高圧ポンプ32の回転数、及びコモンレール34の設定圧100MPa(第一計測噴射条件)、30MPa(第二計測噴射条件)が取り込まれ、制御部70のRAMなどに記憶される。なお、本実施形態では、二つの計測噴射条件ともに高圧ポンプ32の回転数は同じとなっている。なお、本実施形態において、高圧ポンプ32の回転数は、噴射基準信号を30msecごとに発生させることができる回転数に設定される。
さらに、ステップS30において、入力装置から第一計測噴射条件における駆動パルスTWVm1=0.5msec及び第二計測噴射条件における駆動パルスTWVm2=0.2msecが取り込まれ、制御部70のRAMなどに記憶される。
次に、第一、第二計測噴射条件ごとにステップS40〜ステップS100の処理が実施されることにより、第一計測噴射条件の計測噴射量Vm1=40mm3/st及び第二計測噴射条件の計測噴射量Vm2=2mm3/stが算出される。この例では、第一計測噴射条件の計測噴射量Vm1=40mm3/stと計測噴射圧Pm1=100MPaとを乗算して得られる熱量Cm1は、第二計測噴射条件の計測噴射量Vm2=2mm3/stと計測噴射圧Pm2=30MPaとを乗算して得られる熱量Cm2よりも大きいため、第一計測噴射条件が最大熱量の条件となる。
次に、ステップS120〜ステップS150の処理が実施されることにより、補助インジェクタ60における補助噴射条件の補助噴射圧Pa2=30MPaが設定されるとともに、補助噴射条件の補助噴射量Va2=131mm3/stが算出され、図6の特性図に基づき、駆動パルスTWVa2=3msecが算出される。この例では、補助インジェクタ60の計測流体の供給源は、コモンレール34であり、インジェクタ100の計測流体の供給源と共通しているため、補助噴射圧Pa2は、計測噴射圧Pm2と同じ、30MPaとなる。また、第二計測噴射条件による噴射と補助噴射条件による噴射との間のインターバルは、5msecに設定される。このように、補助噴射量Va2及び補助噴射圧Pa2が設定されるので、第二計測噴射条件の熱量Cm2に対して第二補助噴射条件の熱量Ca2が加算されたときの加算熱量が、第一計測噴射条件の熱量Cm1と同じとなる。
ステップS170〜ステップS200の処理が実施されることにより、電磁弁44の開弁タイミング及び開弁時間、並びに圧力センサ52からの信号をリセットするリセット信号の発生タイミングが取り込まれるとともに、第一、第二計測噴射条件ごとの噴射回数が設定され、制御部70のRAMなどに記憶される。この例では、電磁弁44の開弁タイミングは、噴射基準信号の発生から10msec後とされ、開弁時間は12msecとされ、リセット信号の発生タイミングは、噴射基準信号の3msec前とされる。また、この例では、上述した電磁弁44の開弁タイミング、開弁時間、及びリセット信号発生タイミングは、第一、第二計測噴射条件に対して共通の値となっている。また、この例では、第一計測噴射条件の計測噴射圧Pm1は、100MPaとなっているため、噴射回数Nsは、N回に設定される。第二計測噴射条件の計測噴射圧Pm2は、30MPaとなっているため、噴射回数Nsは、N/2回に設定される。
続く、ステップS220以降の処理が実行されることで、インジェクタ100及び補助インジェクタ60から計測流体が噴射され、インジェクタ100及び補助インジェクタ60の実噴射量が計測される。
図4に示すように、高圧ポンプ32が設定された回転数に制御されるとともに、コモンレール34の圧力が設定圧100MPaに調整される。コモンレール34の圧力が設定圧に調整されると、噴射基準信号が発生する3msec前にリセット信号が発生する。そうすると、圧力センサ52から入力される圧力容器20の圧力に応じた信号がリセットされる。その後、噴射基準信号が発生し、その信号に応じてインジェクタ100に駆動パルスTWVm1が制御部70より出力される。かかる駆動パルスTWVm1によりインジェクタ100が駆動され、噴孔より計測流体が噴射される。インジェクタ100より計測流体が噴射されることによる圧力容器20内の圧力変化量が圧力センサ52によって検出され、検出された圧力変化量に応じた信号が圧力センサ52より制御部70に入力される。制御部70では、この圧力センサ52から入力される信号に基づき、ΔPm1が算出される。
噴射基準信号の発生から10msec後、電磁弁44が開弁する。電磁弁44が開弁されると、圧力容器20の計測流体が、レギュレータ42に供給される。このとき圧力容器20内の圧力は、インジェクタ100から噴射された計測流体の分だけ上昇しているため、その上昇した圧力分の計測流体がレギュレータ42から排出される。そうすると、圧力容器20内の圧力はレギュレータ42の設定圧にまで低下し、それ以上の計測流体の排出が制限される。なお、この圧力容器20の圧力状態は、インジェクタ100から計測流体が噴射される直前の状態とほぼ同じとなる。この例では、電磁弁44の開弁時間は、12msecとなっているので、インジェクタ100から噴射された計測流体を、圧力容器20から排出させることが十分に可能である。上昇した圧力分の計測流体がレギュレータ42から排出された後、体積流量計54により、当該排出された計測流体の流量が計測され、制御部70のRAMなどにその計測結果が記憶される。
このようにして、第一計測噴射条件による噴射が1回行われるごとに、圧力容器20内の圧力変化量、及び体積流量計54の計測結果が制御部70のRAMなどに記憶される。この例では、第一計測噴射条件による噴射の回数NsがN回と設定されているので、上述した計測をN回繰り返す。これにより、N回分のΔPm1、ΔP1及び体積流量計54の計測結果が制御部70のRAMなどに記憶されることとなる。その後、N回分の体積流量計54の計測結果が積算され積算流量Qが算出されるとともに、算出された積算流量Q、ΔPm1、ΔP1、及びNs(=N)に基づき、インジェクタ100の実噴射量Qm1の平均値が算出される(図3に示すステップS270を参照)。
第一計測噴射条件のN回分の計測が終了すると、計測噴射条件が第二計測噴射条件に切り替わる。計測噴射条件が切り替わると、コモンレール34の圧力が設定圧30MPaに調整される。コモンレール34の圧力が設定圧に調整されると、噴射基準信号が発生する3msec前にリセット信号が発生する。そうすると、圧力センサ52から入力される圧力容器20の圧力に応じた信号がリセットされる。その後、噴射基準信号が発生し、その信号に応じてインジェクタ100に駆動パルスTWVm2が制御部70より出力される。かかる駆動パルスTWVm2によりインジェクタ100が駆動され、噴孔より計測流体が噴射される。インジェクタ100への駆動パルスTWVm2がオフとなってから、5msecが経過すると、制御部70は、補助インジェクタ60に駆動パルスTWVa2を出力する。かかる駆動パルスTWVa2により補助インジェクタ60が駆動され、噴孔より計測流体が噴射される。インジェクタ100より計測流体が噴射されることによる圧力容器20内の圧力変化量が圧力センサ52によって検出され、検出された圧力変化量に応じた信号が圧力センサ52より制御部70に入力される。制御部70では、この圧力センサ52から入力される信号に基づき、ΔPm2が算出される。さらに、補助インジェクタ60より計測流体が噴射されることによる圧力容器20内の圧力変化量が圧力センサ52によって検出され、検出された圧力変化量に応じた信号が圧力センサ52に入力される。制御部70では、この圧力センサ52から入力される信号に基づき、ΔPa2、及びΔP2が算出される。
噴射基準信号の発生から10msec後、電磁弁44が開弁する。電磁弁44が開弁されると、圧力容器20の計測流体が、レギュレータ42に供給される。このとき圧力容器20内の圧力は、インジェクタ100及び補助インジェクタ60から噴射された計測流体の分だけ上昇しているため、その上昇した圧力分の計測流体がレギュレータ42から排出される。そうすると、圧力容器20内の圧力はレギュレータ42の設定圧にまで低下し、それ以上の計測流体の排出が制限される。この例では、電磁弁44の開弁時間は、12msecとなっているので、インジェクタ100及び補助インジェクタ60から噴射された計測流体を、圧力容器20から排出させるとが十分に可能である。上昇した圧力分の計測流体がレギュレータ42から排出された後、体積流量計54により、当該排出された計測流体の流量が計測され、制御部70のRAMなどにその計測結果が記憶される。
このようにして、第二計測噴射条件による噴射が1回行われるごとに、圧力容器20内の圧力変化量、及び体積流量計54の計測結果が制御部70のRAMなどに記憶される。この例では、第二計測噴射条件による噴射の回数NsがN/2回と設定されているので、上述した計測をN/2回繰り返す。これにより、N/2回分のΔPm2、ΔPa2、ΔP2及び体積流量計54の計測結果が制御部70のRAMなどに記憶されることとなる。その後、N/2回分の体積流量計54の計測結果が積算された積算流量Qが算出されるとともに、算出された積算流量Q、ΔPm2、ΔPa2、ΔP2、及びNs(=N/2)に基づき、インジェクタ100の実噴射量Qm2及び補助インジェクタ60の実噴射量Qa2の平均値が算出される(図3に示すステップS270を参照)。
また、図4に示すように、圧力センサ52から入力される信号を微分することにより、インジェクタ100及び補助インジェクタ60の噴射率を算出しても良い。
上述したように、この例では、第二計測噴射条件において、インジェクタ100とは別に、補助インジェクタ60から計測流体の補助的な噴射を行っている。このため、第一計測噴射条件及び第二計測噴射条件が異なっているために、インジェクタ100から噴射しようとする第一、第二計測噴射条件による噴射により圧力容器20内の計測流体に付与される熱量が異なっていたとしても、計測流体ごとの圧力容器20内の計測流体に付与される熱量の差が小さくなる。したがって、図7に示すように、計測噴射条件の切り替え直後の計測流体の温度変化を抑制することができるので、このときの計測流体の体積変化を抑制することができる。よって、計測噴射条件切り替え直後から体積流量計54によるインジェクタ100及び補助インジェクタ60の実噴射量の計測が可能となるので、一つのインジェクタ100の実噴射量の計測時間を大幅に短縮することができる。
また、特にこの例では、第二補助噴射条件が、第二計測噴射条件の熱量Cm2と、第二補助噴射条件の熱量Ca2とを加算した加算熱量が、最大熱量である第一計測噴射条件の熱量Cm1となるように、設定され、それに従って補助インジェクタ60から補助的な噴射を行っている。
このため、第一計測噴射条件による噴射が実施されるときに圧力容器20内の計測流体に付与される熱量と、第二計測噴射条件による噴射が実施されるときに圧力容器20内の計測流体に付与される熱量とが同じとなるため、第一から第二計測噴射条件に切り替えた直後の温度変化を極力小さくすることができ、このときの計測流体の体積変化を極力小さくすることができる。したがって、計測噴射条件切り替え直後から体積流量計54によるインジェクタ100及び補助インジェクタ60の実噴射量の計測が可能となるので、一つのインジェクタ100の実噴射量の計測時間を大幅に短縮することができる。
また、この例では、第一計測噴射条件での噴射回数をN回、第二計測噴射条件での噴射回数をN/2回と、一つの計測噴射条件での噴射回数を複数回としている。このことによれば、それぞれの計測噴射条件でのインジェクタ100の実噴射量の計測精度が向上する。
ここで、圧力が高められた計測流体を噴射するインジェクタ100は、インジェクタ100に供給される計測流体の圧力が低いほど噴射精度が高くなると一般的に言われている。即ち、インジェクタ100の計測噴射圧Pmが低いほど、インジェクタ100の噴射精度が高く、噴射のばらつきが少ない。
この例では、このことを利用して、各計測噴射条件での噴射回数を変更するようにしている。具体的には、計測噴射圧Pm1が100MPaである第一計測噴射条件よりも、計測噴射圧Pm2が30MPaである第二計測噴射条件の噴射回数を減らしている。先に述べたように、インジェクタ100は計測流体の圧力(計測噴射圧Pm)が低いほど噴射精度が高くなるから、第二計測噴射条件の計測噴射圧Pmが比較的低い場合に第二計測噴射条件の噴射回数を第一計測噴射条件よりも減らしたとしても、インジェクタ100の実噴射量の計測精度への影響は少ない。したがって、インジェクタ100の実噴射量の計測精度を担保しながら、計測時間をさらに短縮することができる。
ここで、電磁弁44は、インジェクタ100及び補助インジェクタ60の噴射が行われてから圧力容器20内の計測流体を排出するので、圧力容器20内の圧力は、インジェクタ100及び補助インジェクタ60の噴射量に応じて変化する。そして、電磁弁44は、電磁弁44は、インジェクタ100及び補助インジェクタ60の噴射が行われてから圧力容器20内の計測流体を排出するので、体積流量計54の計測結果は、インジェクタ100及び補助インジェクタ60の両方の噴射が足し合わされたものとなる。以上より、体積流量計54による計測結果を、インジェクタ100の噴射による圧力容器20内の圧力変化量と、補助インジェクタ60の噴射による圧力容器20内の圧力変化量とによって比例配分することで、インジェクタ100の実噴射量を算出することができる。
特に、この例では、このことを利用しており、インジェクタ100の噴射による圧力容器20の圧力変化量ΔPm2と、補助インジェクタ60の噴射による圧力変化量ΔPa2とにより、体積流量計54の計測結果を比例配分することで、インジェクタ100の実噴射量Qmを得ている。したがって、電磁弁44からレギュレータ42を介して排出され、体積流量計54によって計測された結果が、インジェクタ100及び補助インジェクタ60の両方の噴射が足し合わされたものとなっていても、インジェクタ100の実噴射量を的確に把握することができる。
さらに、この例では、第二計測噴射条件において、インジェクタ100の噴射と補助インジェクタ60の噴射との間にインターバルが設けられるので、インジェクタ100及び補助インジェクタ60の両方から同時に噴射されることを回避できる。これによれば、インジェクタ100の噴射による圧力容器20内の圧力変化量ΔPm2と、補助インジェクタ60の噴射による圧力容器20内の圧力変化量ΔPa2を的確に把握することができる。よって、インジェクタ100の実噴射量の計測精度を高めることができる。
また、この例では、補助インジェクタ60への計測流体の供給を、インジェクタ100への計測流体の供給を行うコモンレール34から行っているので、補助インジェクタ60へ計測流体を供給する手段を別に備える必要がない。したがって、流量計測装置10の構成が簡単なものとなる。
また、この例では、補助インジェクタ60は、インジェクタ100とは異なる別個のインジェクタとしている。これによれば、例えば、補助インジェクタ60の機能をインジェクタ100に持たせ、インジェクタ100から補助インジェクタ60の代わりに補助的な噴射も行う場合と比較して、インジェクタ100の作動頻度を少なくすることができる。よって、この例によれば、インジェクタ100に極力負担をかけずに実噴射量の計測を短時間に行うことができる。
なお、本実施形態において、インジェクタ100が特許請求の範囲に記載の「流体噴射弁」に相当し、補助インジェクタ60が特許請求の範囲に記載の「補助噴射弁」に相当する。
そして、供給部30が特許請求の範囲に記載の「供給手段」に相当し、圧力容器20が特許請求の範囲に記載の「容器」に相当し、排出部40が特許請求の範囲に記載の「排出手段」に相当し、計測部50が特許請求の範囲に記載の「計測手段」に相当し、圧力センサ52が特許請求の範囲に記載の「圧力検出手段」に相当し、制御部70が特許請求の範囲に記載の「制御手段」に相当し、補助インジェクタ60が特許請求の範囲に記載の「補助噴射手段」に相当する。
なお、本実施形態において、ステップS50を実行する制御部70が、特許請求の範囲に記載の「熱量算出手段」に相当し、ステップS70〜S100を実行する制御部70が、特許請求の範囲に記載の「検索手段」に相当し、ステップS120、S130が、特許請求の範囲に記載の「補助噴射条件設定手段」に相当する。
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態による流量計測装置200を示す概略構成図である。本実施形態では、独立した補助インジェクタ60が存在していないという点で第1実施形態と異なっている。ここでは、本実施形態の特徴部分のみを説明する。
本実施形態においてインジェクタ100は、第1実施形態の補助インジェクタ60を兼ねている。例えば、先の実施形態において、第二計測噴射条件での計測流体の噴射を行う場合、インジェクタ100から第二計測噴射条件による噴射を行い、設定されたインターバルが経過した後、補助噴射条件による噴射を行うようにする。このようにインジェクタ100から第二計測噴射条件及び補助噴射条件の噴射を行えば、流量計測装置200をさらに簡単なものとすることができる。
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態による流量計測装置300を示す概略構成図である。本実施形態では、補助インジェクタ60への計測流体の供給源が、インジェクタ100への計測流体の供給源と独立している点で、先の実施形態と異なっている。ここでは、本実施形態の特徴部分のみを説明する。
流量計測装置300は、供給部30とは別に、補助高圧ポンプ92及び補助コモンレール94から構成される補助供給部90を備える。補助高圧ポンプ92は、高圧ポンプ32と同様の構成となっており、補助コモンレール94も、コモンレール34と同様の構成となっている。補助高圧ポンプ92によって加圧された計測流体は、一旦補助コモンレール94に貯留され、補助インジェクタ60に供給される。このような流量計測装置300では、補助インジェクタ60への計測流体の供給圧をインジェクタ100への計測流体の供給圧とは独立させることができる。なお、この補助供給部90が特許請求の範囲に記載の補助供給手段に相当する。
このような流量計測装置300では、例えば、ステップS120において、補助噴射圧Pa2を、第二計測噴射条件の計測噴射圧Pm2よりも高く設定することができる。このように補助噴射圧Pa2が計測噴射圧Pm2よりも高く設定できれば、ステップS130において算出される補助噴射量Va2を、第1実施形態の補助噴射量Va2に比べ、少なくすることができ、補助インジェクタ60の噴射時間を短くすることができる。したがって、第二計測噴射条件でのインジェクタ100の実噴射量Qmを計測するときの計測時間を短縮することができる。