本願発明者らは、エアロゾルデポジション(AD、Aerosol Deposition)法に関する実験を行った。
エアロゾルデポジション法とは、セラミックス等の粒子をガスと混合してエアロゾル化し、ノズル等を通して基板に噴射して成膜する技術である。エアロゾルとは、気体を媒介として液体又は固体の微小な粒子が浮遊している系又は状態のことである。
図1は、開口寸法の異なる開口部にエアロゾルデポジション法によりセラミックス粒子を充填した際の断面図である。図1(a)はSEM(Scanning Electron Microscope、走査型電子顕微鏡)画像を示す図であり、図1(b)は図1(a)の模式図である。図1の左側は、開口寸法が50μm×50μmの場合を示している。図1の右側は、開口寸法が100μm×100μmの場合を示している。
図1に示すように、開口寸法が大きくなると、開口部内に充填されたセラミックス粒子により形成される膜の厚さは薄くなる。
また、エアロゾルデポジション法により堆積された膜の内部には、微細孔が形成される。即ち、エアロゾルデポジション法を用いることにより、多孔質のセラミックス膜が形成される。
図2は、開口部の開口寸法とセラミックス粒子の充填率との関係を示すグラフである。
充填率とは、開口部内に充填される膜の厚さの開口部の深さに対する比である。図2における横軸は、開口寸法を示している。図2における縦軸は、充填率を示している。図2における■印のプロットは、セラミックス粒子の粒径が3μmの場合を示している。図2における◆印のプロットは、セラミックス粒子の粒径が200nmの場合を示している。
図2に示すように、充填率の変化はセラミックス粒子の粒径に依存する。
セラミックス粒子の粒径が3μmと比較的大きい場合には、開口寸法の増加に対する充填率の減少は著しく、開口寸法が数十μm以上になると充填率が著しく小さくなってしまう。
一方、セラミックス粒子の粒径が200nmと比較的小さい場合には、開口寸法の増加に対する充填率の減少は緩やかである。しかし、粒径が200nmのセラミックス粒子を用いたとしても、開口寸法が数百μm以上と大きい場合には、十分な充填率は得られない。
このように、開口寸法が大きい場合には、セラミックス粒子の粒径を小さくすることによっても、十分な充填率を確保することは困難である。
[第1実施形態]
第1実施形態によるセラミックス構造体及びその製造方法について図3を用いて説明する。
(セラミックス構造体)
まず、本実施形態によるセラミックス構造体について図3を用いて説明する。図3は、本実施形態によるセラミックス構造体を示す断面図及び平面図である。図3(a)は断面図であり、図3(b)は平面図である。図3(a)は、図3(b)のA−A′線断面図である。
図3に示すように、基板2には、開口部3が形成されている。基板2としては、例えばシリコン基板が用いられている。開口部3の開口寸法は、例えば(50μm×50μm)〜(500μm×500μm)程度とする。ここでは、開口部3の開口寸法を、例えば150μm×150μm程度とする。開口部3の深さは、例えば50μm〜500μm程度とする。ここでは、開口部3の深さを、例えば200μm程度とする。
開口部3内には、セラミック構造体9が埋め込まれている。
開口部3が形成された領域を除く領域における基板2上には、例えばシリコン酸化膜のハードマスク4が形成されている。
セラミックス構造体9は、格子状の部分構造体6と複数の柱状の部分構造体8とにより形成されている。
格子状の部分構造体6は、基板2の表面に平行な方向における断面のパターンが格子状となっているものである。格子状の部分構造体6には、複数の孔7が形成されている。格子状の部分構造体6に形成された複数の孔7は、図3(b)に示すように、縦横に等間隔に整列している。孔7の断面は、例えば正方形である。複数の孔7の深さは、互いに等しくなっている。柱状の部分構造体8は、格子状の部分構造体6の孔7にそれぞれ埋め込まれている。
格子状の部分構造体6は、開口部64(図9参照)が形成された領域である第1の部分領域に形成されている。柱状の部分構造体8は、孔(開口部)7が形成された領域である第2の部分領域に形成されている。格子状の部分構造体6が形成された部分領域と柱状の部分構造体8が形成された部分領域とは、互いに隣接している。
格子状の部分構造体6は、エアロゾルデポジション法によりセラミックス粒子を堆積することにより形成されたものである。このため、格子状の部分構造体6の内部には、微細孔(ナノボイド)が形成されている。即ち、格子状の部分構造体6は、多孔質のセラミックス膜により形成されている。格子状の部分構造体6を形成する際に用いる成膜原料、即ち、セラミックス粒子としては、例えば酸化物の粒子が用いられている。具体的には、セラミックス粒子として、例えば酸化亜鉛(ZnO)の粒子が用いられている。より具体的には、セラミックス粒子として、例えばアルミニウムをドープした酸化亜鉛(AZO、Aluminum-Doped Zinc Oxide)の粒子が用いられている。酸化亜鉛は、熱電材料(熱電変換材料)である。
格子状の部分構造体6の格子のパターンの幅、即ち、孔7と孔7との間隔は、例えば10μm程度である。格子状の部分構造体6に形成された複数の孔7の開口寸法は、例えば25μm×25μm程度である。格子状の部分構造体6の高さは、例えば200μm程度である。
柱状の部分構造体8も、格子状の部分構造体6と同様に、エアロゾルデポジション法によりセラミックス粒子を堆積することにより形成されたものである。このため、柱状の部分構造体8の内部には、格子状の部分構造体6と同様に、微細孔が形成されている。即ち、柱状の部分構造体8も、格子状の部分構造体6と同様に、多孔質のセラミックス膜により形成されている。柱状の部分構造体8を形成する際の成膜原料としては、例えば、格子状の部分構造体6を形成する際の成膜原料と同様の成膜原料が用いられている。
柱状の部分構造体8は、格子状の部分構造体6の孔7にそれぞれ埋め込まれたものである。格子状の部分構造体6の孔7の開口寸法が25μm×25μm程度の場合には、柱状の部分構造体8の断面の寸法も25μm×25μm程度となる。また、格子状の部分構造体6の高さが200μm程度である場合には、柱状の部分構造体8の高さも200μm程度となる。
本実施形態において、エアロゾルデポジション法を用いて格子状の部分構造体6及び柱状の部分構造体8を形成するのは、以下のような理由によるものである。
即ち、格子状の部分構造体6及び柱状の部分構造体8の材料として用いられる酸化亜鉛は、他の酸化物熱電材料と比較して電子の移動度が高い材料(高電気伝導率材料)である。
しかしながら、酸化亜鉛は、熱伝導率が非常に高い材料である。このため、単に酸化亜鉛により熱電変換素子を形成した場合には、熱電変換素子内の温度勾配が小さくなってしまい、従って、温度勾配によって発生する熱起電力が小さくなってしまう。
これに対し、エアロゾルデポジション法を用いて部分構造体6,8を形成すれば、部分構造体6,8の内部には、上述したように微細孔が形成される。即ち、エアロゾルデポジション法を用いて部分構造体6,8を形成すれば、多孔質の部分構造体6,8が形成される。このような微細孔は、熱の伝達を抑制するのに寄与する。このため、エアロゾルデポジション法を用いて部分構造体6,8を形成すれば、部分構造体6,8の材料として酸化亜鉛を用いているにもかかわらず、熱伝導率を十分に低くすることができる。微細孔の径を適切に制御することにより、部分構造体6,8の高い電気伝導率を維持したまま部分構造体6,8の熱伝導率を低下させることができる。このような理由により、本実施形態では、エアロゾルデポジション法を用いて部分構造体6,8を形成している。
また、本実施形態において、格子状の部分構造体6と複数の柱状の部分構造体8とによりセラミックス構造体9を形成するのは以下のような理由によるものである。
即ち、セラミックス構造体9を用いて熱電変換素子を形成する場合において、大きい電力を得るためには、セラミックス構造体9の断面積を大きくすることが好ましい場合がある。
しかしながら、開口寸法の大きい開口部3内にセラミックス構造体9をエアロゾルデポジション法により単に埋め込んだ場合には、高い充填率で埋め込むことが困難である。
一方、比較的粒径の小さいセラミックス粒子を成膜原料として用いれば、充填率をある程度向上させることは可能である。
しかしながら、大きな電力を得るためには、セラミックス構造体の電気抵抗を小さくすることが好ましい。セラミックス構造体の電気抵抗を小さくするためには、比較的粒径の大きいセラミックス粒子を成膜原料として用いることが好ましい。成膜原料として比較的粒径の大きいセラミックス粒子を用いれば、セラミックス粒子間の界面電気抵抗の総和が小さくなり、セラミックス構造体の電気抵抗が小さくなるためである。成膜原料として比較的粒径の小さいセラミックス粒子を用いた場合には、セラミックス粒子間の界面抵抗の総和が大きくなり、セラミックス構造体の電気抵抗が大きくなってしまう。従って、比較的粒径の小さいセラミックス粒子を成膜原料として用いることにより充填率を向上させることは、大きな電力を得る観点からは好ましくない。
そこで、本実施形態では、部分構造体6と部分構造体8とによりセラミックス構造体9を形成する。このような部分構造体6,8は、後述するように、高い充填率で埋め込むことが可能である。このため、本実施形態によれば、エアロゾルデポジション法を用いて形成するにもかかわらず、断面積の大きいセラミックス構造体9を得ることができる。
このような理由により、本実施形態では、格子状の部分構造体6と複数の柱状の部分構造体8とによりセラミックス構造体9を形成する。
このように、本実施形態によれば、エアロゾルデポジション法を用いてセラミックス構造体9を形成するため、セラミックス構造体9の熱伝導率を十分に低くすることができる。しかも、本実施形態によれば、格子状の部分構造体6と複数の柱状の部分構造体8とによりセラミックス構造体9を形成するため、高い充填率を得ることができる。このため、本実施形態によれば、所望のサイズのセラミックス構造体9を得ることが可能である。
(エアロゾルデポジション装置)
第1実施形態によるセラミックス構造体の製造方法について説明するのに先立って、本実施形態によるセラミックス構造体の製造方法において用いられるエアロゾルデポジション装置について図4を用いて説明する。図4は、エアロゾルデポジション装置の例を示す図である。
図4に示すように、エアロゾルデポジション装置は、エアロゾルを発生させるエアロゾル発生器10と、成膜を行う成膜室12とを有している。
エアロゾルを発生させるエアロゾル発生器10には、酸素ガス等のキャリアガスを供給するキャリアガスタンク14が流量計(MFC)16を備えた配管18を介して接続されている。また、エアロゾル発生器10の外側には、エアロゾル発生器10を振動させる超音波振動器20が設けられている。
成膜を行う成膜室12は、基板22を保持する基板保持部材24と成膜ノズル26とを備えている。
基板保持部材24は、支柱28を介して、XYZθステージ30に取り付けられている。XYZθステージ30は、支柱28及び基板保持部材24を介して基板22を移動させる。
成膜室12は、メカニカルブースタポンプ32を介して真空ポンプ34に接続されている。また、エアロゾル発生器10は、配管36及びメカニカルブースタポンプ32を介して真空ポンプ34に接続されている。
エアロゾル発生器10と成膜室12とは、エアロゾル用配管38及び微粒子分級器40を介して接続されている。微粒子分級器40と成膜室12の間には、粒子サイズ測定器42が設けられている。
成膜を行う際は、成膜室12内を真空ポンプ34で真空引きしたのち、原料粉末を収容したエアロゾル発生器10を超音波振動器20で振動させながらキャリアガスタンク14からキャリアガスを送り込んでエアロゾルを生成する。
発生したエアロゾルは、エアロゾル用配管38及び微粒子分級器40を介して成膜室12に輸送される。微粒子分級器40を通過したエアロゾルの粒子のサイズは、粒子サイズ測定器42により測定される。エアロゾルの粒子は、成膜ノズル26のスリット状の開口部から基板22に向けて噴射される。成膜は、XYZθステージ30を操作して基板22を移動させながら行われる。
エアロゾルデポジション法によりセラミックス膜の成膜する際の基板温度は、例えば常温とする。エアロゾルデポジション法により成膜されたセラミックス膜は、同じ成膜温度で他の方法により成膜されたセラミックス膜より良好な特性を有するが、更に特性を向上させるために、焼成工程を行ってもよい。
(セラミックス構造体の製造方法)
次に、本実施形態によるセラミックス構造体の製造方法を図5乃至図15を用いて説明する。図5乃至図15は、本実施形態によるセラミックス構造体の製造方法を示す工程図である。図5乃至図15の(a)は、断面図である。図5乃至図15の(b)は、平面図である。図5乃至図15の(a)は、図5乃至図15の(b)のA−A′線断面に対応している。また、図11(b)、図14(b)は、図11(a)、図14(a)のB−B′断面にそれぞれ対応している。
まず、基板2を用意する。基板2としては、例えばシリコン基板を用いる。
次に、全面に、例えば熱酸化又はプラズマCVD法により、例えば膜厚2μmのシリコン酸化膜4を形成する。シリコン酸化膜4は、ハードマスクとなるものである。
次に、全面に、スピンコート法により、フォトレジスト膜54を形成する(図5参照)。フォトレジスト膜54の膜厚は、例えば4μm程度とする。フォトレジスト膜54の材料としては、例えばAZエレクトロニックマテリアルズ社製のフォトレジスト(商品名:AZ P4620)等を用いることができる。
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、フォトレジスト膜54をパターニングする。これにより、開口寸法が例えば150μm×150μmの開口部55が、フォトレジスト膜54に形成される(図6参照)。現像液としては、例えば、AZエレクトロニックマテリアルズ社製の現像液(商品名:AZ 400K)を1:4に希釈した希釈液を用いる。
次に、フォトレジスト膜54をマスクとし、例えばバッファードフッ酸を用いたウェットエッチングにより、シリコン酸化膜4をエッチングする。これにより、開口寸法が例えば150μm×150μmの開口部5が、シリコン酸化膜4に形成される。
次に、例えばアッシングにより、フォトレジスト膜54を除去する(図7参照)。
次に、全面に、例えばスピンコート法により、例えば膜厚4μmのフォトレジスト膜62を形成する。
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、フォトレジスト膜62をパターニングする。これにより、格子状の部分構造体6を埋め込むための開口部(溝)64(図9参照)を形成するための開口部63が、フォトレジスト膜62に形成される。開口部63のパターンは、格子状に形成される。開口部63のパターンの幅は、例えば10μm程度とする。開口部63のパターンの格子のピッチは、例えば35μm程度とする。フォトレジスト膜62に開口部63を形成する際には、フォトレジスト膜62の開口部63のパターンの外周の位置とシリコン酸化膜4の開口部5のパターンの外周の位置とが合致するように位置合わせを行う(図8参照)。
次に、フォトレジスト膜62をマスクとして、例えばドライエッチングにより、シリコン基板2に、例えば200μmの深さの開口部64を形成する。開口部64を形成する際には、例えば、Boschプロセスを用いる。Boschプロセスとは、エッチングとエッチング側壁保護とを繰り返しながら行うことにより、アスペクト比の高いエッチングを可能とする深掘りエッチング技術である。エッチングのステップにおいては、例えば、主にSF6ガスを用いてエッチングを行う。側壁保護のステップにおいては、テフロン(登録商標)系のガス(C4F8ガス等)を用いて側壁を保護する。保護膜により横方向のエッチングが抑制されるため、高いアスペクト比で良好な開口部64を形成することが可能である。開口部64が形成された領域(部分領域)は、格子状の部分構造体6が埋め込まれる領域となる(図9参照)。
次に、例えばアッシングにより、フォトレジスト膜62を除去する(図10参照)。
次に、エアロゾルデポジション法を用いて、セラミックス膜6を成膜する。セラミックス膜6は、以下のようにして成膜することができる。
成膜原料としては、例えばアルミニウムをドープした酸化亜鉛の粒子を用いる。成膜原料の粒子の平均粒径は、例えば100nm程度とする。成膜原料は、エアロゾル発生器10に収容される。エアロゾルを生成するためには、成膜原料をエアロゾル発生器10の中で予め乾燥させておくことが好ましい。成膜原料の乾燥は、エアロゾル発生器10を加熱しながら、超音波振動器20により振動を加えるとともに、真空ポンプ34を用いてエアロゾル発生器10内を排気することにより行うことができる。成膜原料を乾燥させる際の加熱温度は、例えば150℃程度とする。乾燥時間は、例えば30分程度とする。
また、エアロゾルデポジション法による成膜を行う際の成膜室12内の圧力は、十分に低いことが好ましい。従って、エアロゾルデポジション法による成膜を開始する前に、成膜室12内の圧力を十分に低下させておく。成膜室12内の圧力は、例えば10Pa以下とする。
エアロゾルデポジション法により成膜を行う際には、エアロゾル発生器10内に、例えば酸素ガスを導入する。酸素ガスの純度は、例えば99.9%とする。ガス圧は、例えば2kg/cm2とする。酸素ガスの流量は、例えば4000cc/分とする。エアロゾル発生器10内に酸素ガスを導入すると、エアロゾルが生成される。即ち、成膜原料の粒子が酸素ガス中に浮遊した状態となる。こうして生成されたエアロゾルを成膜ノズル26から噴射することにより、セラミックス膜6の成膜を行うことができる。
こうして、開口部64内を充填するように、セラミックス膜6が形成される。比較的細いパターンの開口部64にセラミックス膜6を充填するため、エアロゾルデポジション法を用いるにもかかわらず、開口部64内にセラミックス膜6を十分に充填することができる。セラミックス膜6は、開口部64内のみならず、シリコン基板2及びシリコン酸化膜4上にも形成される(図11参照)。
次に、開口部64内に充填された部分を除く部分のセラミックス膜6を、例えばウェットエッチングにより除去する。エッチング液としては、例えば酢酸を用いる。こうして、セラミックス膜により形成された格子状の部分構造体6が開口部64内に埋め込まれる(図12参照)。
なお、開口部64内に充填された部分を除く部分のセラミックス膜6を除去する方法は、ウェットエッチングに限定されるものではない。例えば、開口部64内に充填された部分を除く部分のセラミックス膜6を、ドライエッチングにより除去してもよい。ドライエッチングを行う際には、例えば、CH4ガスとH2ガスとの混合ガスを用いて生成したプラズマを用いることができる。また、開口部64内に充填された部分を除く部分のセラミックス膜6を、CMP(Chemical Mechanical Polishing、化学的機械的研磨)法により除去することも可能である。
この後、セラミックス膜の機械的強度や電気的特性を向上させるために、例えば800℃、1時間程度の熱処理(アニール)を行ってもよい。
次に、シリコン酸化膜4をマスクとし、例えばプラズマエッチング法により、格子状の部分構造体6の下端まで、シリコン基板2をエッチングする。水平方向にエッチングが殆ど進行しないような異方性の極めて高いエッチングを行った場合には、格子状の部分構造体6の側壁にシリコンが残存してしまう虞がある。格子状の部分構造体6の側壁にシリコンが残存した場合には、格子状の部分構造体6と柱状の部分構造体8との間にシリコンが介在することとなり、好ましくない。従って、シリコン基板2をエッチングする際には、水平方向にもある程度のエッチングが進行するような異方性エッチングを行うことが好ましい。このため、シリコン基板2をエッチングする際に、例えばSF6プラズマを用いる。SF6プラズマを用いてエッチングすれば、水平方向にもある程度エッチングが進行し、格子状の部分構造体6の側壁にシリコンが残存するのを防止することができる。こうして、シリコン基板2がエッチング除去された箇所に、孔7が形成される。孔(開口部)が形成された領域(部分領域)は、柱状の部分構造体8が埋め込まれる領域となる(図13参照)。
なお、等方性のドライエッチングにより、シリコン基板2をエッチングするようにしてもよい。等方性のドライエッチングによりシリコン基板2をエッチングする際には、例えばXeF2ガス等を用いることができる。
次に、図11を用いて上述したセラミックス膜6の成膜方法と同様にして、セラミックス膜8を成膜する。成膜原料としては、セラミックス膜6と同様に、例えばアルミニウムがドープされた酸化亜鉛を用いる。これにより、孔7内を充填するようにセラミックス膜8が形成される。開口寸法が比較的小さい孔7内にセラミックス膜8を充填するため、エアロゾルデポジション法を用いるにもかかわらず、孔7内にセラミックス膜8を十分に充填することができる。セラミックス膜8は、孔7内のみならず、シリコン酸化膜4上及び格子状の部分構造体6上にも形成される(図14参照)。
次に、孔7内に充填された部分を除く部分のセラミックス膜8を、例えばウェットエッチングにより除去する。エッチング液としては、例えば酢酸を用いる。こうして、セラミックス膜により形成された複数の柱状の部分構造体8が、孔7内に埋め込まれる。格子状の部分構造体6と柱状の部分構造体8とにより、セラミックス構造体9が形成される(図15参照)。
こうして、本実施形態によるセラミックス構造体が形成される。
このように、本実施形態によれば、格子状のパターンの開口部64内に部分構造体6を充填し、孔7内に部分構造体8を充填することにより、セラミックス構造体9を形成する。本実施形態によれば、開口部64のパターンを比較的細くすることが可能であるため、エアロゾルデポジション法を用いるにもかかわらず、開口部64内にセラミックス粒子を十分に充填することができる。また、本実施形態によれば、孔7の開口寸法を比較的小さくすることが可能であるため、エアロゾルデポジション法を用いるにもかかわらず、孔7内にセラミックス膜8を十分に充填することができる。そして、格子状の部分構造体6と複数の柱状の部分構造体8とによりセラミックス構造体9が形成される。このため、本実施形態によれば、エアロゾルデポジション法を用いるにもかかわらず、所望のサイズのセラミックス構造体9を得ることができる。
[第2実施形態]
第2実施形態によるセラミックス構造体及びその製造方法について図16乃至図27を用いて説明する。図3乃至図15に示す第1実施形態によるセラミックス構造体及びその製造方法と同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
(セラミックス構造体)
まず、本実施形態によるセラミックス構造体について図16を用いて説明する。図16は、本実施形態によるセラミックス構造体を示す断面図及び平面図である。図16(a)は断面図であり、図16(b)は平面図である。図16(a)は、図16(b)のA−A′線断面図である。
本実施形態によるセラミックス構造体は、SOI(Silicon On Insulator)基板80を用いたものである。
基板2aは、SOI基板80の支持基板である。基板2aは、例えばシリコン基板である。基板2aの厚さは、例えば500μm程度である。シリコン酸化膜84は、SOI基板80の埋め込み酸化膜(BOX、Buried Oxide)である。埋め込み酸化膜84の膜厚は、例えば500nm程度である。埋め込み酸化膜84上のシリコン層82の厚さは、例えば200μm程度である。
図16に示すように、シリコン層82には、開口部3が形成されている。
開口部3内には、第1実施形態と同様に、格子状の部分構造体6と複数の部分構造体8とを有するセラミック構造体9が埋め込まれている。
このように、SOI基板80を用いるようにしてもよい。
(セラミックス構造体の製造方法)
次に、本実施形態によるセラミックス構造体の製造方法を図17乃至図27を用いて説明する。図17乃至図27は、本実施形態によるセラミックス構造体の製造方法を示す工程図である。図17乃至図27の(a)は、断面図である。図17乃至図27の(b)は、平面図である。図17乃至図27の(a)は、図17乃至図27の(b)のA−A′線断面に対応している。また、図23(b)、図26(b)は、図23(a)、図26(a)のB−B′断面にそれぞれ対応している。
まず、図17に示すように、SOI基板80を用意する。基板2aは、SOI基板80の支持基板である。基板2aは、例えばシリコン基板である。基板2aの厚さは、例えば500μm程度である。シリコン酸化膜84は、SOI基板80の埋め込み酸化膜である。埋め込み酸化膜84の膜厚は、例えば500nm程度である。埋め込み酸化膜84上のシリコン層82の厚さは、例えば200μm程度である。
この後のシリコン酸化膜4を形成する工程からフォトレジスト膜62をパターニングするまでの工程は、図5乃至図8を用いて上述した第1実施形態によるセラミックス構造体の製造方法と同様であるため、説明を省略する(図17乃至図20参照)。
次に、フォトレジスト膜62をマスクとし、埋め込み酸化膜84をエッチングストッパとして、例えばドライエッチングにより、シリコン層82をエッチングする。開口部64を形成する際には、図9を用いて上述した第1実施形態によるセラミックス構造体の製造方法と同様に、例えばBoschプロセスを用いる(図21参照)。
次に、例えばアッシングにより、フォトレジスト膜62を除去する(図22参照)。
次に、図11を用いて上述した第1実施形態によるセラミックス構造体の製造方法と同様にして、セラミックス膜6を成膜する(図23参照)。
次に、図12を用いて上述した第1実施形態によるセラミックス構造体の製造方法と同様にして、開口部64内に充填された部分を除く部分のセラミックス膜6を、例えばウェットエッチングにより除去する(図24参照)。
次に、シリコン酸化膜4及び格子状の部分構造体6をマスクとし、埋め込み酸化膜84をエッチングストッパとして、例えばプラズマエッチングにより、シリコン層82をエッチングする。エッチングには、例えばSF6プラズマを用いる。これにより、シリコン層82がエッチング除去された箇所に、孔7が形成される(図25参照)。
次に、図11を用いて上述した第1実施形態によるセラミックス構造体の製造方法と同様にして、セラミックス膜8を成膜する(図26参照)。
次に、図15を用いて上述した第1実施形態によるセラミックス構造体の製造方法と同様にして、孔7内に充填された部分を除く部分のセラミックス膜8を、例えばウェットエッチングにより除去する(図15参照)。
こうして、本実施形態によるセラミックス構造体9が形成される。
このように、本実施形態では、SOI基板80を用いる。このため、本実施形態によれば、SOI基板80の埋め込み酸化膜84をエッチングストッパとして、シリコン層82をエッチングすることができる。このため、本実施形態によれば、開口部64の下端と孔7の下端とを揃えることができ、ひいては、格子状の部分構造体6の下端と柱状の部分構造体8の下端とを確実に揃えることができる。従って、本実施形態によれば、セラミックス構造体9の寸法のばらつきを低減することができ、セラミックス構造体9の製造歩留り等を向上させることができる。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態による熱電変換素子及びその製造方法について図28乃至図42を用いて説明する。図3乃至図27に示す第1又は第2実施形態によるセラミックス構造体及びその製造方法と同一の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し又は簡潔にする。
(熱電変換素子)
まず、第3実施形態による熱電変換素子について図28を用いて説明する。図28は、本実施形態による熱電変換素子を示す断面図である。
図28に示すように、支持基板102上には、P型のセラミックス構造体9P(9Pa〜9Pc)とN型のセラミックス構造体9N(9Na〜9Nc)とが埋め込まれたシリコン層82が配されている。支持基板102としては、例えばシリコン基板が用いられている。セラミックス構造体9Pa〜9Pc,9Na〜9Ncは、シリコン層82に形成された開口部3a〜3c、3d〜3f内にそれぞれ埋め込まれている。P型のセラミックス構造体9PとN型のセラミックス構造体9Nとは、交互に配されている。セラミックス構造体9P,9Nどうしの間隔は、例えば50μmである。セラミックス構造体9P,9Nが埋め込まれたシリコン層82は、接着層104により支持基板102に固定されている。シリコン層82は、後述するように、SOI基板80のシリコン層82である(図29(a)参照)。
セラミックス構造体9P(9Pa〜9Pc)は、格子状の部分構造体6Pと、複数の柱状の部分構造体8Pとによりそれぞれ形成されている。格子状の部分構造体6Pの形状は、上述した第1及び第2実施形態によるセラミックス構造体9の格子状の部分構造体6の形状と同様である。また、柱状の部分構造体8Pの形状は、上述した第1及び第2実施形態によるセラミックス構造体9の柱状の部分構造体8の形状と同様である。複数の柱状の部分構造体8Pは、格子状の部分構造体6Pの孔7a〜7cにそれぞれ埋め込まれている。
部分構造体6P、8Pは、第1及び第2実施形態によるセラミックス構造体の部分構造体6,8と同様に、エアロゾルデポジション法によりセラミックス粒子を堆積することにより形成されたものである。このため、部分構造体6P,8Pの内部には、部分構造体6,8と同様に、微細孔が形成されている。即ち、部分構造体6P,8Pも、部分構造体6,8と同様に、多孔質のセラミックス膜により形成されている。格子状の部分構造体6Pを形成する際に用いる成膜原料(セラミックス粒子)としては、例えばカルシウムコバルト酸化物(Ca3Co4O9)の粒子が用いられている。カルシウムコバルト酸化物は、P型の熱電材料である。
格子状の部分構造体6Pは、開口部64a〜64c(図31(b)参照)が形成された領域(部分領域)に形成されている。柱状の部分構造体8Pは、孔7a〜7cが形成された領域(部分領域)にそれぞれ形成されている。格子状の部分構造体6Pが形成された部分領域と柱状の部分構造体8Pが形成された部分領域とは、互いに隣接している。
セラミックス構造体9N(9Na〜9Nc)は、格子状の部分構造体6Nと、複数の柱状の部分構造体8Nとによりそれぞれ形成されている。格子状の部分構造体6Nは、上述した第1及び第2実施形態によるセラミックス構造体9の格子状の部分構造体6と同様である。また、柱状の部分構造体8Nは、上述した第1及び第2実施形態によるセラミックス構造体9の柱状の部分構造体8と同様である。複数の柱状の部分構造体8Nは、格子状の部分構造体6Nの孔7d〜7fに埋め込まれている。
部分構造体6N、8Nは、第1及び第2実施形態によるセラミックス構造体の部分構造体6,8と同様に、エアロゾルデポジション法によりセラミックス粒子を堆積することにより形成されたものである。このため、部分構造体6N,8Nの内部には、部分構造体6,8と同様に、微細孔が形成されている。即ち、部分構造体6N,8Nも、部分構造体6,8と同様に、多孔質のセラミックス膜により形成されている。部分構造体6N,8Nを形成する際に用いる成膜原料(セラミックス粒子)としては、第1及び第2実施形態と同様に、例えばアルミニウムをドープした酸化亜鉛の粒子が用いられている。アルミニウムをドープした酸化亜鉛は、N型の熱電材料である。
格子状の部分構造体6Nは、開口部64d〜64f(図36(b)参照)が形成された領域(部分領域)に形成されている。柱状の部分構造体8Nは、孔7d〜7fが形成された領域(部分領域)にそれぞれ形成されている。格子状の部分構造体6Nが形成された部分領域と柱状の部分構造体8Nが形成された部分領域とは、互いに隣接している。
シリコン層82の下面側には、シリコン酸化膜(ハードマスク)4が残存している。
セラミックス構造体9P,9Nが埋め込まれたシリコン層82の一方の面側(図28における下面側)には、配線(電極)98a〜98cが形成されている。配線98a〜98cは、例えばチタン(Ti)膜と金(Au)膜との積層膜により形成されている。配線98a〜98cの厚さは、例えば500nm程度である。
なお、配線98a〜98cは、例えば銀ナノメタルを用いて、インクジェット法により形成することも可能である。
N型のセラミックス構造体9Naの下面とP型のセラミックス構造体9Paの下面とは、配線98aにより電気的に接続されている。また、N型のセラミックス構造体9Nbの下面とP型のセラミックス構造体9Pbの下面とは、配線98bにより電気的に接続されている。また、N型のセラミックス構造体9Ncの下面とP型のセラミックス構造体9Pcの下面とは、配線98cにより電気的に接続されている。
セラミックス構造体9P,9Nが埋め込まれたシリコン層82の他方の面側(図28における上面側)には、電極(外部接続電極、引き出し電極)94a、配線(電極)94b、94c、及び、電極(外部接続電極、引き出し電極)94dが形成されている。電極94a、配線94b、94c、及び、電極94dは、例えばTi膜とAu膜との積層膜により形成されている。電極94a、配線94b、94c、及び、電極94dの厚さは、例えば500nm程度である。
なお、電極94a、配線94b、94c、及び、電極94dは、例えば銀ナノメタルを用いてインクジェット法により形成することも可能である。
電極94aは、N型のセラミックス構造体9Naの上面に接続されている。P型のセラミックス構造体9Paの上面とN型のセラミックス構造体9Nbの上面とは、配線94bにより電気的に接続されている。P型のセラミックス構造体9Pbの上面とN型のセラミックス構造体9Ncの上面とは、配線94cにより電気的に接続されている。電極94dは、P型のセラミックス構造体9Pcの上面に接続されている。
こうして、N型のセラミックス構造体9NとP型のセラミックス構造体9Pとが交互に直列に接続されている。N型のセラミックス構造体9NとP型のセラミックス構造体9Pとを交互に直列に接続しているのは、大きい起電力を得るためである。
このように、本実施形態によれば、エアロゾルデポジション法を用いるため、熱伝導率の低いセラミックス構造体9P,9Nを得ることができる。しかも、部分構造体6P,8Pによりセラミックス構造体9Pを形成し、部分構造体6N,8Nによりセラミックス構造体9Nを形成するため、断面積の十分に大きいセラミックス構造体9P,9Nを得ることができる。しかも、セラミックス構造体9Pとセラミックス構造体9Nとが交互に直列に接続されている。このため、本実施形態によれば、起電力の大きい熱電変換素子を得ることができる。
(熱電変換素子の製造方法)
次に、第3実施形態による熱電変換素子の製造方法について図29乃至図42を用いて説明する。図29乃至図42は、本実施形態による熱電変換素子の製造を示す工程断面図である。
まず、SOI基板80を用意する。
次に、図5を用いて上述した第1実施形態によるセラミックス構造体の製造方法と同様にして、シリコン酸化膜4を形成する。
次に、図5を用いて上述した第2実施形態によるセラミックス構造体の製造方法と同様にして、フォトレジスト膜54を形成する(図29(a)参照)。
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、フォトレジスト膜54をパターニングする。これにより、例えば150μm×150μmの開口部55a〜55cがフォトレジスト膜54に形成される。開口部55aと開口部55bとの間の距離、及び、開口部55bと開口部55cとの間の距離は、例えばそれぞれ200μm程度とする(図29(b)参照)。
次に、フォトレジスト膜54をマスクとし、例えばバッファードフッ酸を用いたウェットエッチングにより、シリコン酸化膜4をエッチングする。これにより、例えば150μm×150μmの開口部5a〜5cが、シリコン酸化膜4に形成される。
次に、例えばアッシングにより、フォトレジスト膜54を除去する(図30(a)参照)。
次に、全面に、例えば膜厚4μmのフォトレジスト膜105を形成する。
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、フォトレジスト膜105をパターニングする。これにより、格子状の部分構造体6Pを埋め込むための開口部(溝)64a〜64c(図31(a)参照)を形成するための開口部106a〜106cが、フォトレジスト膜105に形成される。開口部106a〜106cのパターンは、格子状に形成される。開口部106a〜106cのパターンの幅は、例えば10μm程度とする。開口部106a〜106cのパターンの格子のピッチは、例えば35μm程度とする。フォトレジスト膜105に開口部106a〜106cを形成する際には、フォトレジスト膜105の開口部106a〜106cのパターンの外周の位置とシリコン酸化膜4の開口部5a〜5cのパターンの外周の位置とが合致するように位置合わせを行う(図30(b)参照)。
次に、フォトレジスト膜105をマスクとし、埋め込み酸化膜84をエッチングストッパとして、例えばドライエッチングにより、シリコン層82に開口部64a〜64cを形成する。開口部64a〜64cを形成する際には、図9を用いて上述した第1実施形態による開口部64の形成方法と同様に、例えば、Boschプロセスを用いる。Boschプロセスを用いることにより、高いアスペクト比で良好な開口部64a〜64cを形成することが可能である。開口部64a〜64cが形成された領域(部分領域)は、格子状の部分構造体6Pが埋め込まれる領域となる(図31(a)参照)。
次に、例えばアッシングにより、フォトレジスト膜105を除去する(図31(b)参照)。
次に、エアロゾルデポジション法を用いて、セラミックス膜6Pを成膜する。セラミックス膜6を形成する際の成膜原料としては、例えばカルシウムコバルト酸化物の粒子を用いる。カルシウムコバルト酸化物は、P型の熱電材料である。成膜原料の粒子の平均粒径は、例えば100nm程度とする。セラミックス膜6Pの成膜条件は、例えば、図11を用いて上述したセラミックス膜6の成膜条件と同様とする。
こうして、開口部64内を充填するように、セラミックス膜6Pが形成される。比較的細いパターンの開口部64にセラミックス膜6Pを充填するため、エアロゾルデポジション法を用いるにもかかわらず、開口部64内にセラミックス膜6Pを十分に充填することができる。セラミックス6Pは、開口部64内のみならず、シリコン酸化膜4及びシリコン層82上にも形成される(図32(a)参照)。
次に、開口部64内に充填された部分を除く部分のセラミックス膜6Pを、例えばウェットエッチングにより除去する。こうして、セラミックス膜により形成された格子状の部分構造体6Pが開口部64a〜64c内に埋め込まれる(図32(b)参照)。
次に、図25を用いて上述した第2実施形態によるセラミックス構造体の製造方法と同様にして、シリコン層82をエッチングする。こうして、シリコン層82がエッチング除去された箇所に、孔7a〜7cが形成される。孔7a〜7cが形成された領域(部分領域)は、柱状の部分構造体8Pが埋め込まれる領域となる(図33(a)参照)。
次に、図32(a)を用いて上述したセラミックス膜6Pの成膜方法と同様にして、セラミックス膜8Pを成膜する。成膜原料としては、セラミックス膜6Pの成膜原料と同様に、例えばカルシウムコバルト酸化物の粒子を用いる。これにより、孔7a〜7c内を充填するようにセラミックス膜8Pが形成される。開口寸法が比較的小さい孔7a〜7c内にセラミックス膜8Pを充填するため、エアロゾルデポジション法を用いるにもかかわらず、孔7a〜7c内にセラミックス膜8Pを十分に充填することができる。セラミックス膜8Pは、孔7a〜7c内のみならず、シリコン酸化膜4及び格子状の部分構造体6P上にも形成される(図33(b)参照)。
次に、孔7a〜7c内に充填された部分を除く部分のセラミックス膜8Pを、例えばウェットエッチングにより除去する。こうして、セラミックス膜により形成された複数の柱状の部分構造体8Pが孔7a〜7c内にそれぞれ埋め込まれる。格子状の部分構造体6Pと柱状の部分構造体8Pとにより、P型のセラミックス構造体9P(9Pa〜9Pc)が形成される(図34(a)参照)。
次に、全面に、スピンコート法により、フォトレジスト膜110を形成する。
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、フォトレジスト膜110をパターニングする。これにより、例えば150μm×150μmの開口部111a〜111cが、フォトレジスト膜110に形成される。開口部111aと開口部111bとの間の距離、及び、開口部111bと開口部111cとの間の距離は、例えばそれぞれ200μm程度とする(図34(b)参照)。
次に、フォトレジスト膜110をマスクとし、例えばバッファードフッ酸を用いたウェットエッチングにより、シリコン酸化膜4をエッチングする。これにより、例えば150μm×150μmの開口部5d〜5fがシリコン酸化膜4に形成される(図35(a)参照)。
次に、例えばアッシングにより、フォトレジスト膜110を除去する(図35(b)参照)。
次に、全面に、例えばスピンコート法により、フォトレジスト膜112を形成する。
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、フォトレジスト膜112をパターニングする。これにより、格子状の部分構造体6Nを埋め込むための開口部(溝)64d〜64fを形成するための開口部113a〜113cが、フォトレジスト膜112に形成される。開口部113a〜113cのパターンは、格子状に形成される。開口部113a〜113cのパターンの幅は、例えば10μm程度とする。開口部113a〜113cのパターンの格子のピッチは、例えば35μm程度とする。フォトレジスト膜112に開口部113a〜113cを形成する際には、フォトレジスト膜112の開口部113a〜113cのパターンの外周の位置とシリコン酸化膜4の開口部5d〜5fのパターンの外周の位置とが合致するように位置合わせを行う(図36(a)参照)。
次に、フォトレジスト膜112をマスクとし、埋め込み酸化膜84をエッチングストッパとして、例えばドライエッチングにより、シリコン層82をエッチングすることにより、開口部64d〜64fを形成する。開口部64d〜64fを形成する際には、図9を用いて上述した第1実施形態によるセラミックス構造体の製造方法と同様に、例えばBoschプロセスを用いる。開口部64d〜64fが形成された領域(部分領域)は、格子状の部分構造体6Nが埋め込まれる領域となる(図36(b)参照)。
次に、例えばアッシングにより、フォトレジスト膜112を除去する(図37(a)参照)。
次に、エアロゾルデポジション法を用いて、セラミックス膜6Nを成膜する。セラミックス膜6Nの成膜原料としては、図11を用いて上述した第1実施形態によるセラミックス膜6の成膜方法と同様に、例えばアルミニウムをドープした酸化亜鉛の粒子を用いる。アルミニウムをドープした酸化亜鉛は、N型の熱電材料である。成膜原料の粒子の平均粒径は、例えば100nm程度とする。セラミックス膜6Nの成膜条件は、例えば、図12を用いて上述したセラミックス膜6の成膜条件と同様とする。
こうして、開口部64d〜64f内を充填するように、セラミックス膜6Nが形成される。比較的細いパターンの開口部64d〜64f内にセラミックス膜6Nを充填するため、エアロゾルデポジション法を用いるにもかかわらず、開口部64d〜64f内にセラミックス膜6Nを十分に充填することができる。セラミックス膜66は、開口部64d〜64f内のみならず、シリコン酸化膜4上、シリコン層82上、及び、セラミックス構造体9P上にも形成される(図37(b)参照)。
次に、開口部64内に充填された部分を除く部分のセラミックス膜6Nを、例えばウェットエッチングにより除去する。エッチング液としては、例えば酢酸を用いる。こうして、セラミックス膜により形成された格子状の部分構造体6Nが、開口部64d〜64f内に埋め込まれる(図38(a)参照)。
次に、図25を用いて上述した第2実施形態によるセラミックス構造体の製造方法と同様にして、シリコン層82をエッチングする。こうして、シリコン層82がエッチング除去された箇所に、孔7d〜7fが形成される。孔7d〜7fが形成された領域(部分領域)は、柱状の部分構造体8Pが埋め込まれる領域となる(図38(b)参照)。
次に、図37を用いて上述したセラミックス膜6Nの成膜方法と同様にして、セラミックス膜8Nを成膜する。セラミックス膜8Nの成膜原料としては、図37を用いて上述したセラミックス膜6Nの成膜原料と同様に、例えばアルミニウムをドープした酸化亜鉛の粒子を用いる。これにより、孔7d〜7f内を充填するようにセラミックス膜8Nが形成される。開口寸法が比較的小さい孔7d〜7f内にセラミックス膜8Nを充填するため、エアロゾルデポジション法を用いるにもかかわらず、孔7d〜7f内にセラミックス膜8Nを十分に充填することができる。セラミックス膜8Nは、孔7d〜7f内のみならず、シリコン酸化膜4上、セラミックス構造体9P上、及び、格子状の部分構造体6N上にも形成される(図39(a)参照)。
次に、孔7d〜7f内に充填された部分を除く部分のセラミックス膜8Nを、例えばウェットエッチングにより除去する。こうして、複数の柱状の部分構造体8Nが孔7d〜7f内に埋め込まれる。格子状の部分構造体6Nと複数の柱状の部分構造体8Nとにより、N型のセラミックス構造体9N(9Na〜9Nc)が形成される(図39(b)参照)。
次に、全面に、例えばスパッタリング法又は真空蒸着法により、例えば膜厚100nmのTi膜(図示せず)と膜厚400nmのAu膜(図示せず)とを順次積層することにより積層膜を形成する。
次に、例えばスピンコート法により、積層膜上に、フォトレジスト膜(図示せず)を形成する。
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、配線(電極)98a〜98cの平面形状にフォトレジスト膜をパターニングする。
次に、フォトレジスト膜をマスクとして、例えばイオンミリング又はRIE(Reactive Ion Etching、反応性イオンエッチング)により、積層膜をエッチングする。
なお、例えば銀ナノメタルを用いてインクジェット法により、配線98a〜98cを形成することも可能である。
次に、例えばアッシングによりフォトレジスト膜を除去する。
こうして、配線98a〜98cが形成される。N型のセラミックス構造体9Naの一方の面(図40における紙面上側の面)と、P型のセラミックス構造体9Paの一方の面(図40における紙面上側の面)とが、配線98aにより電気的に接続される。また、N型のセラミックス構造体9Nbの一方の面(図40における紙面上側の面)と、P型のセラミックス構造体9Pbの一方の面(図40における紙面上側の面)とが、配線98bにより電気的に接続される。また、N型のセラミックス構造体9Ncの一方の面(図40における紙面上側の面)と、P型のセラミックス構造体9Pcの一方の面(図40における紙面上側の面)とが、配線98cにより電気的に接続される(図40(a)参照)。
次に、配線98a〜98cが形成されたシリコン層82上の全面に、接着層104を塗布する。接着層104としては、例えばエポキシ樹脂系のレジスト等を用いることが可能である。かかるエポキシ樹脂系のレジストとしては、例えば日本化薬株式会社製のレジスト(商品名:SU−8)等が挙げられる。接着層104の厚さは、例えば10μm程度とする(図40(b)参照)。
次に、接着層104上に、支持基板102を配置する。支持基板102は、本実施形態による熱電変換素子の支持体となるものである。支持基板102としては、例えばシリコン基板を用いる。支持基板102の厚さは、例えば100μmとする。そして、支持基板102を接着層104が形成されたSOI基板80に押し付ける。そして、例えば200℃で加熱することにより、接着層104を硬化させる。これにより、支持基板102とSOI基板80とが接着層104により接合される(図41(a)参照)。
次に、SOI基板80が上側になり、支持基板102が下側になるように、張り合わされたSOI基板80及び支持基板102の上下を反転させる。
次に、例えばRIE又はCMP法により、シリコン基板2a及びシリコン酸化膜4を除去する(図41(b)参照)。
次に、全面に、例えばスパッタリング法又は真空蒸着法により、例えば膜厚100nmのTi膜と膜厚400nmのAu膜とを順次積層することにより、積層膜を形成する。
次に、全面に、例えばスピンコート法により、フォトレジスト膜(図示せず)を形成する。
次に、フォトリソグラフィ技術を用い、電極94a、配線(電極)94b、94c、及び、電極94dの平面形状に、フォトレジスト膜をパターニングする。
次に、フォトレジスト膜をマスクとして、例えばイオンミリング又はRIEにより、積層膜をエッチングする。こうして、電極94a、配線94b、94c、及び、電極94dが、積層膜により形成される。こうして、電極94aが、N型のセラミックス構造体9Naの他方の一面(図42中における紙面上側の面)に接続される。P型のセラミックス構造体9Paの他方の一面(図42中における紙面上側の面)と、N型のセラミックス構造体9Nbの他方の一面(図42中における紙面上側の面)とが、配線94bにより電気的に接続される。P型のセラミックス構造体9Pbの他方の一面(図42中における紙面上側の面)と、N型のセラミックス構造体9Ncの他方の一面(図42中における紙面上側の面)とが、配線94cにより電気的に接続される。電極94dが、P型のセラミックス構造体9Pcの他方の一面(図42中における紙面上側の面)に接続される。
次に、例えばアッシングにより、フォトレジスト膜を除去する。
こうして、本実施形態による熱電変換素子が製造される(図42参照)。
なお、図42の段階では、P型のセラミックス構造体9PとN型のセラミックス構造体9Nとの間にシリコン層82が存在している。シリコン層82は熱伝導率が比較的高いため、必ずしも十分な起電力が得られないことも考えられる。より大きい起電力を得るために、例えばシリコン層82をエッチング除去してもよい。例えば、XeF2ガスを用いたドライエッチングにより、シリコン層82をエッチングすることが可能である(犠牲層エッチング)。
このように、本実施形態によれば、エアロゾルデポジション法を用いるため、熱伝導率の低いセラミックス構造体9P,9Nを得ることができる。しかも、部分構造体6P,8Pによりセラミックス構造体9Pを形成し、部分構造体6N,8Nによりセラミックス構造体9Nを形成するため、断面積の十分に大きいセラミックス構造体9P,9Nを得ることができる。しかも、セラミックス構造体9Pとセラミックス構造体9Nとを交互に直列に接続する。従って、本実施形態によれば、起電力の大きい熱電変換素子を得ることができる。
[変形実施形態]
上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
例えば、第1及び第2実施形態では、セラミックス膜6,8を成膜する際の成膜原料としてアルミニウムをドープした酸化亜鉛の粒子を用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。成膜原料として、例えばカルシウムコバルト酸化物、(Bi,Sb)2Te3、ナトリウムコバルト酸化物(NaxCoO2)、ビスマステルライド(Bi2Te3)等を用いてもよい。
また、第1及び第2実施形態では、セラミックス膜6,8を形成する際の成膜原料として酸化亜鉛等の熱電材料を用いる場合を例に説明したが、成膜原料は熱電材料に限定されるものではない。例えば、成膜原料が圧電セラミックス材料であってもよい。かかる圧電セラミックスとしては、例えばPZT(Pb(Zr,Ti)O3)(チタン酸ジルコン酸鉛)等を挙げることができる。また、成膜原料が、磁性セラミックス材料であってもよい。かかる磁性セラミックス材料としては、フェライト等を挙げることができる。
また、第3実施形態では、セラミックス膜6P、8Pを形成する際の成膜原料としてカルシウムコバルト酸化物を用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。セラミックス膜6P、8Pを形成する際の成膜原料として、例えば(Bi,Sb)2Te3等を用いてもよい。
また、第3実施形態では、セラミックス膜6N、8Nを形成する際の成膜原料として酸化亜鉛を用いる場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。セラミックス膜6N、8Nを形成する際の成膜原料として、例えばナトリウムコバルト酸化物やビスマステルライド等を用いてもよい。
また、第1実施形態では、基板2としてシリコン基板を用いる場合を例に説明したが、基板2はシリコン基板に限定されるものではない。例えば、基板2の材料として、ガラス基板等を用いてもよい。また、セラミックス構造体9に対して焼結を行わなくてよい場合には、耐熱温度が比較的低い樹脂基板やレジスト等を用いることも可能である。かかるレジストとしては、例えば日本化薬株式会社製のレジスト(商品名:SU−8)等を挙げることができる。
また、上記実施形態では、セラミックス膜を成膜した後に、セラミックス膜に対して熱処理(アニール)を特に行わなかったが、成膜したセラミックス膜に対して熱処理を行ってもよい。セラミックス膜に対して熱処理を行うことにより、セラミックス膜の導電性を向上させることができる。熱処理温度としては、例えば800℃程度とする。熱処理時間は、例えば1時間程度とする。
また、第3実施形態では、SOI基板80を用いる場合を例に説明したが、基板80はSOI基板に限定されるものではない。例えば、第1実施形態のように、基板80としてシリコン基板を用いてもよい。また、基板80として、ガラス基板等を用いることも可能である。かかるガラス基板としては、例えば感光性ガラス基板等を用いることができる。
また、第3実施形態では、熱電変換素子の支持基板102としてシリコン基板を用いたが、シリコン基板に限定されるものではない。但し、セラミックス構造体9P(n)、9N(n)の一方の側(図28における紙面下側)を所望の温度に設定する観点からは、支持基板102の材料として熱伝導率に優れた材料を用いることが好ましい。例えば、支持基板102として、アルミナ基板等を用いることができる。
また、上記実施形態では、部分構造体6を格子状に形成し、部分構造体8を柱状に形成する場合を例に説明したが、部分構造体6,8の形状はこれに限定されるものではない。例えば、部分構造体6,8を市松模様状に配してもよい。また、部分構造体6、8のパターンが、それぞれストライプ状のパターンであってもよい。
また、第3実施形態では、シリコン層82にセラミックス構造体9P、9Nを埋め込む場合を例に説明したが、層82の材料はシリコンに限定されるものではない。例えば、層82が酸化アルミニウムであってもよい。この場合には、基板80として、例えば酸化アルミニウムの基板(アルミナ基板)を用いる。基板80としてアルミナ基板を用いる場合、埋め込み酸化膜84は存在せず、層82と基板2とは埋め込み酸化膜84により分離されていない。酸化アルミニウムはシリコンと比較して熱伝導率が低いため、より大きい起電力を得ることが可能となる。