本発明の圧力センサーの第1の実施形態は、半導体ウエハのような円板状の基板や、矩形状(たとえば、正方形や長方形)の薄板状の基板の一方の面(第1の面)に他方の面(第2の面)まで貫通しない溝(第1面溝)を形成し、第2の面に第1面溝と交差せずかつ第2の面まで貫通しない溝(第2面溝)を形成し、第1面溝と第2面溝を隔てる隔壁(側壁)を用いた容量型センサーである。
図1は、本発明の圧力センサーの構造を分かりやすく説明するための斜視図である。本発明の第1の実施形態において使用される基板は基本的に導電体基板である。基本的にという意味は、後述するように基板の一部は絶縁体や半導体であるが、大部分は導電体であるということである。また、導電体という意味は、必ずしも金属や合金であるということではなく、電気抵抗が低く電気が流れやすい物質ということである。たとえば、N+シリコンやP+シリコンのような高濃度の不純物元素を含む低抵抗の半導体も本発明では導電体に含まれる。
図1に示すように、第1面側(上面側)に溝(第1面溝)O(O1、O2、O3)が第2面側(下面側)に向かって基板の厚み方向に形成されているが、第2面までは達していない。すなわち、第1面溝は第2面には貫通していない。一方、第2面にも溝Q(Q1、Q2,Q3、Q4)が形成されているが、第1面までは達していない。すなわち、第2面溝は第1面には貫通していない。図1に示す構造は、本発明の圧力センサーの構造の断面からの斜視図で示されている。実際の第1面溝は、この断面側(図に示すx軸方向(+側および−側)にも隔壁がある。すなわち、第1面溝は、第1面側にのみ開口している。一方、実際の第2面溝は、第1面溝を取り囲むように形成されている。(この詳細は、後の図でより明確に把握される。)
第1面溝O1の1つの側壁(第1面溝O1と第2面溝Q1との隔壁)を側壁1003−1、第1面溝O1の他の側壁(第1面溝O1と第2面溝Q2との隔壁)を側壁1003−3、第1面溝O1の底壁を1003−2とする。第1面溝O2の1つの側壁(第1面溝O2と第2面溝Q2との隔壁)を側壁1004−1、第1面溝O2の他の側壁(第1面溝O2と第2面溝Q3との隔壁)を側壁1004−3)、第1面溝O2の底壁を1004−2とする。第1面溝O3の1つの側壁(第1面溝O3と第2面溝Q3との隔壁)を側壁1005−1、第1面溝O3の他の側壁(第1面溝O3と第2面溝Q4との隔壁)を側壁1005−3)、第1面溝O1の底壁を1005−2とする。尚、第1面溝O(O1〜O3)は、第2面側の溝によってその側壁が取り囲まれているので、実際にはもう2面の側壁(X方向の+側および−側)があるが、ここでは省略する。(図1においては、上述した様に溝内部が良く分かるように開放されているので、これら2面の側壁は描かれていないが、それらの存在は容易に理解される。)
第1面溝Oによって分離されている第1面1001側の上壁を第1面上壁1006(1006−1〜4)とする。図1に示す基板1000は導電体であるから、第1面溝Oおよび第2面溝Qを形成しても、図1に示す構造(溝パターンと称する)は電気的につながっているので、このままでは容量を形成できない。そこで、本発明は、第1面上壁において第1面側から第2面溝に達する電気的不活性領域を備えている。すなわち、図1において、第1面上壁1006−2に形成された領域I1および第1面上壁1006−3に形成された領域I2がその電気的不活性領域である。これらの電気的不活性領域I1およびI2は図1では分離されて示されているが、実際には、第1面溝O2を囲んでいるのでつながっていて、同じ領域である。ここで記載する電気的不活性領域とは、電気が流れない領域である。すなわち、第1面上壁1006−2は導電体であるが、電気的不活性領域I1によって分離された2つの領域1006−2−1および1006−2−2は電気的には導通していないので、1006−2−1および1006−2−2に電圧を印加したときには、一定の耐圧までは電気が流れない。同様に、第1面上壁1006−3は導電体であるが、電気的不活性領域I2によって分離された2つの領域1006−3−1および1006−3−2は電気的には導通していないので、1006−3−1および1006−3−2に電圧を印加したときには、一定の耐電圧までは電気が流れない。
それぞれの第1面上壁に配線・電極を設ける。ここでは、模式的にN1〜N6で示す。すなわち、1006−1にはN1、1006−2−1にはN2、1006−2−2にはN3、1006−3−1にはN4、1006−3−2にはN5および1006−4にはN6の配線・電極を設ける。N1とN2、N3とN4、N5とN6は電気的に導通しているが、N2とN3は電気的不活性領域I1により電気的に導通していない。従って、圧力がかからないときは、側壁1003−3および側壁1004−1は(略)平行になっているので、第2面溝Q2を空間(絶縁)領域として、側壁1003−3および側壁1004−1で容量(コンデンサ)を形成している。第2面溝Q2の溝幅(側壁1003−3および側壁1004−1の離間距離)をd1、側壁1003−3および側壁1004−1の対面する面積をS1とすれば、これらの側壁電極間に生じる容量は、ε*S1/d1となる。同様に、N4とN5は電気的不活性領域I2により電気的に導通していない。従って、側壁1004−3および側壁1005−1は(略)平行になっているので、第2面溝Q3を空間(絶縁)領域として、側壁1004−3および側壁1005−1で容量(コンデンサ)を形成している。第2面溝Q3の溝幅(側壁1004−3および側壁1005−1の離間距離)をd2、側壁1004−3および側壁1005−1の対面する面積をS2とすれば、これらの側壁電極間に生じる容量は、ε*S2/d2となる。このように電気的不活性領域を備えることにより、導電体基板の厚み方向に形成された溝を用いて静電容量を測定できる。(εは誘電率、本発明の容量では空間容量なので、εは空気等の気体の誘電率或いは、真空誘電率に近い。真空は存在しないので、圧力を小さくしても真空には近くなるが真空にはならない。物質の比誘電率をε1、真空誘電率をε0とすると、物質の誘電率εsはεs=ε1*ε0となる。)
図1は、第1面溝の両サイドは開放して記載しているが、上述したように、この部分は第1面溝の状態を見やすいように断面にして見たものであり、実際には両サイドも閉じて上方(第1面側)だけが開口された溝となっている。また、第2面溝は、上述したように、第1面溝を取り巻くように形成されている。この結果、第1面溝は、上方の基板すなわち上壁だけで支持され、溝の4つの側面側(側壁)や溝の底面(底壁)はどこにも接触していない状態、すなわち浮いた状態となっている。また、第1面側(上方)の空間と第2面側(下方)の空間は溝状に形成された基板1000によって完全に分離している。従って、上方空間の圧力(Pu)と下方空間の圧力(Pb)が異なっていても圧力が伝達され平準化することはない。そこでPu>Pbの場合、その圧力差により溝を形成する上壁、側壁および底壁は第1面側から第2面側に膨らむ。逆にPu<Pbの場合、その圧力差により溝を形成する上壁、側壁および底壁は第2面側から第1面側に膨らむ。特に容量を構成している側壁(電極)1003−3、1004−1、1004−3、1005−1などは上壁1006や底壁よりも薄く形成されているので、撓みやすい。つまり、容量を構成する側壁は圧力差により変形するダイヤフラムのようになっている。PuとPbの圧力差Pu−Pbによるd1の変形量をΔd1とすれば、容量変化ΔC1は、ΔC1=ε*S{1/(d1−Δd1)−1/d1}となる。またd2に関しては、PuとPbの圧力差Pu−Pbによるd2の変形量をΔd2とすれば、容量変化ΔC2は、ΔC2=ε*S{1/(d2−Δd2)−1/d2}となる。この変形量は、変形する材料である側壁(導電体基板)の物理量(たとえば、ヤング率)や側壁の厚みによっても変化する。導電体であってヤング率の小さな材料を用いたり、側壁の厚みを薄くすれば撓み量が大きくなるので、同じ圧力差でも容量変化ΔCを大きくできる。(もちろん、繰り返しの圧力差によりダイヤフラムが破壊しない程度の強度が必要である。)尚側壁(電極)は側壁の枠(上壁、両側面、底壁)によって周囲が押さえられているので、側壁の周囲は変形量が小さいか殆どなく、そこから離れた側壁の中心部付近の変形量が大きく、曲面形状の撓みとなる。従って、上記のd1、d2、Δd1、Δd2などは平均値として考える必要がある。(尚、電極・配線N2およびN3の間に生じる静電容量として、電気的不活性領域に生じる静電容量も存在するが、この静電容量は圧力差が生じてもほぼ一定であるため、圧力差による容量変化を問題にするときは考えなくても良い。)
前述のように導電体基板として各種の金属材料や合金を使用できる。またN+シリコン基板、P+シリコン基板などの低抵抗半導体基板も使用できる。導電性高分子や導電性ゴムも使用でき、これらの材料のヤング率は小さいのでわずかな圧力差によって側壁電極が変動するので、逆に微小な圧力変動を検知することができる。導電性炭素や導電性カーボンナノチューブや導電性グラフェンも使用できる。さらに、ステンレス鋼(たとえば、SUS6300)も使用でき、金属ガラス(Ni基金属ガラス:Ni53Nb 20Ti10Zr8Co6Cu3(ヤング率100Gpa、引張強度1700Mpa)やZr基金属ガラス:Zr55Al 10Cu30Ni5(ヤング率140Gpa、引張強度2700Mpa))のように、ステンレス鋼より低ヤング率で高強度な材料も使用できる。
ヤング率が小さく高強度の材料を有する導電性基板(以下、低Y基板と称する)とシリコンを張り合わせて形成した複合基板でも良い。シリコン基板側はあらかじめ高濃度領域の導電体層を低濃度領域内に形成したものを張り合わせても良い。さらには、低Y基板にあらかじめ第1面溝および/または第2面溝を形成した基板をシリコン基板に張り付けても良い。および/またはシリコン基板にもあらかじめ第1面溝を形成ししたものを低Y基板に張り付けても良い。複合基板は上記の組合せに限らず各種の導電体基板を組み合わせても良い。
低Y基板で側壁電極を作り、ダイヤフラムとして機能させると低い圧力差でも変形することができ感度を良くすることができる。また、シリコン基板側には電気不活性領域Iを作製しやすい。たとえば、電気不活性領域としてシリコン酸化膜などを形成することができる。
低Y基板とシリコン基板を張り付けた複合基板に関して、低Y基板側から第2面溝を形成するとき、高速にしかも異方性エッチングができるエッチング方法(エッチング装置、エッチング方式、エッチングガス、その他のエッチング条件)により低Y基板をシリコン基板側までエッチングする必要がある。低Y基板側はかなり厚い(たとえば、シリコン基板の厚みは約10〜100μmに対して、低Y基板を200μm以上とする)ので、オーバーエッチングが必要であるから、早く露出した一部のシリコン基板もエッチングされるので、そのエッチング量も見込んでシリコン基板の厚みを決定しなければならない。しかし、低Y基板のエッチング速度は速いが、シリコン基板のエッチングが遅いか殆どエッチングしないエッチング方法で行うことによりシリコン基板側のオーバーエッチング量を抑えることができる。複合基板の場合には、異なる材料であるため、このような選択比の高いエッチング方法を選定しやすいという利点もある。低Y基板として金属や合金等の導電体基板や、もっとYが小さい材料も使用できる。たとえば、導電性ゴム部材や導電性高分子などを使用すれば、側壁電極の厚みも厚くできるので、プロセスの安定度が向上する。低Y基板に貼りつける基板としてはシリコン基板以外の導電体基板を使用しても良い。ただし、電気不活性層を形成しやすい基板が良い。
図2は、図1の斜視図で示された圧力センサーを平面的に描いた図である。図2(a)は第1面側から見た図(平面図)である。図2(b)は図2(a)に示すA1−A2における切断面の側面図であり、図2(c)は図2(a)に示すB1−B2における切断面の側面図である。図2は、容量を構成する部分だけを描いているが、図1に含まれる部分および図1に含まれない部分についても容易に図2を拡張できる。1011(1011−1、1011−2)の実線は溝O(O1、O2)の内枠を示す。溝Oは第1面(上面)から下方に向かって形成されていて、図2(b)や(c)に示されるように、第2面(下面)には達せず完全に貫通していない文字通りの溝となっている。すなわち、溝O1は第1面(上面)側が開口され、その他の面(側壁1003−1、1003−3、1003−4、1003−5および底壁1003−2)によって囲まれている。溝O2も第1面(上面)側が開口され、その他の面(側壁1004−1、1004−3、1004−4、1004−5および底壁1004−2)によって囲まれている。
図2(a)に示す矩形状の破線は第2面側の溝部との境界を示すもので、この外側が第2面溝Q(Q1、Q2、Q3)となっている。すなわち、第2面溝Qは第2面側(下側)が開口され、第1面側(上面側)に向かって形成されているが、第1面(上面)には到達せず完全に貫通していない文字通りの溝となっている。図2から分かるように、第2面溝Qは第1面溝Oを取り囲んでいるが、第1面溝Oは第2面溝Qと側壁や底壁によって隔離されている。すなわち、第1面溝O1は、側壁1003−1、1003−3、1003−4、1003−5および底壁1003−2により、第1面溝O2は、側壁1004−1、1004−3、1004−4、1004−5および底壁1004−2により隔離されている。この結果、第1面側(上側)の圧力(P1)と第2面側(下側)の圧力(P2)と異なる圧力を印加することが可能となる。
図2(a)に示すように、溝部O(O1、O2)は電気不活性層I(I1、I2、I3、I4、I5)により取り囲まれている。この電気不活性層I(I1、I2、I3、I4、I5)は、平面的に溝部O(O1、O2)を取り囲んでいるだけでなく、図2(b)および図2(c)から分かるように、基板の深さ方向に形成されており、第1面(上面)から第2面溝Qへ達している。すなわち、溝部O(O1、O2)は電気不活性層I(I1、I2、I3、I4、I5)によって完全に隔離されている。基板1000は導電体であるが、基板1000は、電気不活性層I(I1、I2、I3、I4、I5)により、1000−2および1000−3は完全に隔離されている。たとえば、基板1000−1や1000−4は、基板1000−2や1000−3を取り囲んでいて、基板1000−1や1000−4は、基板1000−2や1000−3と電気的に導通していない。電気不活性層Iの耐電圧までは、基板1000−1や1000−4と、基板1000−2や1000−3との間には電気が流れない。さらに基板1000−2と1000−3とも電気不活性層Iによって隔離されているため、基板1000−2と1000−3とは導通せず、電気不活性層Iの耐電圧までは、基板1000−2と1000−3との間には電気が流れない。
図2(b)に示すように、第1面溝O1の側壁1003−3と第1面溝O2の側壁1004−1は、第2面溝Q2を介して互いに対面している。側壁1003−3と側壁1004−1との距離をdとする。第1面側の圧力P1は第1面溝O1やO2の内部に伝達し、第2面側の圧力P2は第2面溝Q2の内部に伝達される。P1とP2が等しいときは第1面溝O1およびO2の側壁1003−3および1004−1は変形していないので、その時のこれらの側壁間の距離をd0とする。P1がP2より大きいとき、第1面溝O(O1、O2)は膨らみ、側壁1003−1、1003−3、1004−1、1004−3は第2面側の空間Q(Q1、Q2、Q3)の方へ膨らむ。すなわち、d<d0となる。P1がP2より小さいとき、第1面溝O(O1、O2)はへこみ、側壁1003−1、1003−3、1004−1、1004−3は第1面側の空間O(O1、O2)の方へ膨らむ。すなわち、d>d0となる。P1=P2のときは、側壁1003−3と側壁1004−1はほぼ平行であるから、dは側壁1003−3および側壁1004−1の全域でほぼ一定である。
しかし、第1面の上壁1006(1006−1、1006−2、1006−3)は側壁1003−1、1003−3、1004−1、1004−3に比べて厚い(たとえば、基板がシリコンの場合には、使用圧力にもよるが、上壁の厚みは約20μm以上、側壁の厚みは約20μm以下である。)ので、上壁は余り変形せずに側壁の方が大きく変形する。また、第1面溝O1は4つの側壁(1003−1、1003−3、1003−4、1003−5)によって囲まれているので、容量変化に影響をおよぼす距離の方向(図2ではA1−A2の方向)において、側壁同士の角部(たとえば、1003−1と1003−4、1003−1と1003−5、1003−3と1003−4、1003−3と1003−5)では、側壁1003−3の変形は小さい。また、第1面溝O1の底壁1003−2の厚みも容量を構成する側壁1003−3の厚みより厚いので、底壁1003−2の変形は側壁1003−3の変形よりも小さくなる。当然側壁1003−3と底壁1003−2の角部では側壁1003−3の変形は小さい。さらに、上壁1006−2と側壁1003−3との角部における側壁1003−3の変形も小さい。すなわち、P1とP2の圧力差P1−P2が生じると、最も大きく変形する部分は側壁1003−3の中心部付近であり、そこから離れるに従い変形量は小さくなる。1003−3と対面する側壁1004−1に関しても同様である。
P1とP2の圧力差P1−P2によって変形しやすい方が容量変化を大きくできるので、容量を構成する側壁1003−3や1004−1の厚みは小さい方が、圧力検出感度が高まる。(ただし、圧力差による破壊や繰り返しの疲労破壊が生じないほどの厚みは必要である。)一方、壁の中で容量を構成しない側壁(第1面溝O1では1003−4および1003−5、第1面溝O2では1004−4および1004−5)の厚みは、容量を構成する側壁1003−3や1004−1よりも大きくした方が良い。何故なら、第1面溝Oや第2面溝を形成するときに、容量を構成しない側壁の方はプロセス余裕度を高めることができるし、容量を構成する側壁よりも破壊しにくくもできる。さらに、これらが変形がしにくければ、効果的に容量を構成する側壁1003−3や1004−1が変形しやすくなる。底壁や上壁に関しても上述の理由により厚くした方が良いが、さらにエッチングによって形成するときにエッチングの余裕度をできるだけ大きくした方が良いという理由もある。もちろん、精度よく形成できればそれほど厚くする必要はない。
図3にP1>P2のときとP1>P2のときのA1−A2の断面の状態を示す。図2(b)(これは、P1=P2の図とほぼ同じである)と同様の図である。上述したように、P1>P2のとき(図3(a))は、側壁1003−1、1003−3、1004−1、1004−3は第2面溝Q(Q1、Q2、Q3)の方へ膨らみ、余り変形しない上壁1006(1006−1、1006−2、1006−3)や底壁1003−2、1004−2に支持されて、側壁1003−1、1003−3、1004−1、1004−3の中心部の膨らみが他の部分よりも大きくなる。紙面に垂直な方向においても、側壁1003−3および1004−1は、側壁1003−4と1003−5、および1004−4と1004−5に支持されているので、側壁1003−3および1004−1の中心部の膨らみが他の部分よりも大きい凸状になる。P1<P2のとき(図3(b))は、側壁1003−1、1003−3、1004−1、1004−3は第1面溝O(O1、O2)の方へ膨らみ、余り変形しない上壁1006(1006−1、1006−2、1006−3)や底壁1003−2、1004−2に支持されて、側壁1003−1、1003−3、1004−1、1004−2の中心部の膨らみが他の部分よりも大きくなる。紙面に垂直な方向においても、側壁1003−3および1004−1は、側壁1003−4と1003−5、および1004−4と1004−5に支持されているので、側壁1003−3および1004−1の中心部の膨らみ(第1面溝O側への)が他の部分よりも大きい凸状(第1面溝O側への)になる。
従って、P1とP2に圧力差があるときは、容量を構成する側壁1003−3および1004−1の距離dは平均距離を考える必要がある。すなわち、P1とP2に圧力差があるときの容量は、異なる距離dを有する微小部分の容量として、全体の容量はその積分値となる。図3(a)に示すように、P1>P2のときの平均距離をd1とすると、d1<d0となり容量が増大する。第1面溝O1とO2はほぼ等しい特性値を有する(同じ材料であるから、ヤング率Eやポアッソン比σは等しく、また、側壁や底壁や上壁などの厚みやサイズも同じ)とすれば、第1面溝O1とO2は同じ圧力差P1−P2で同じ量だけ膨らむ。すなわち、側壁1003−2および1004−1はΔd1だけ膨らむ(このΔd1も平均値である)とすると、d1=d0−2Δd1となる。本発明はこのように両側から側壁間距離dを小さくするので、2倍の効果がある。(尚、片側だけの構造とすることも簡単にできる。O1は形成するが、O2は電極だけにして第1面溝O2を形成しなければ良い。)図3(a)からすぐ分かるように、圧力差を大きくしてもΔd1をd0/2以上にはできないので、側壁1003−3や1004−1の破壊強度をΔd1=d0/2になるときの圧力差による強度よりも大きくしておけば、側壁1003−3や1004−1が破壊することはない。容量を構成しない側壁(1003−1、1003−4、1003−5、1004−3、1004−4、1004−5)や底壁(1003−2、1004−2)や上壁などは、容量を構成する側壁1003−3や1004−1より厚くしておけば、破壊強度も大きくなるので、これらも圧力差P1−P2の増大による破壊を防止できる。もちろん、容量の上限値を設定してこれよりも圧力差が生じたときに圧力がこのセンサーにかかることを防止する機構を備えておけば、確実にセンサーの破壊を防止できる。さらにこの容量も本発明の圧力センサーを使って検出できる。
また、図3(b)に示すように、P1<P2のときの平均距離をd2とすると、d2>d0となり容量が減少する。第1面溝O1とO2はほぼ等しい特性値を有する(同じ材料であるから、ヤング率Eやポアッソン比σは等しく、また、側壁や底壁や上壁などの厚みやサイズも同じ)とすれば、第1面溝O1とO2は同じ圧力差P1−P2で同じ量だけ縮む。すなわち、側壁1003−3および1004−1はΔd2だけ縮む(このΔd2も平均値である)とすると、d2=d0+2Δd2となる。本発明はこのように両側から側壁間距離dを大きくするので、2倍の効果がある。(尚、片側だけの構造とすることも簡単にできる。O1は形成するが、O2は電極だけにして第1面溝O2を形成しなければ良い。)図3(b)からすぐ分かるように、圧力差を大きくしてもΔd2を{第1面溝O(O1、O2)の幅}/2以上にはできないので、側壁1003−3や1004−1の破壊強度をΔd2={第1面溝O(O1、O2)の幅}/2になるときの圧力差による強度よりも大きくしておけば、側壁1003−3や1004−1が破壊することはない。容量を構成しない側壁(1003−1、1003−4、1003−5、1004−3、1004−4、1004−5)や底壁(1003−2、1004−2)や上壁などは、容量を構成する側壁1003−3や1004−1より厚くしておけば、破壊強度も大きくなるので、これらも圧力差P1−P2の増大による破壊を防止できる。もちろん、容量の下限値を設定してこれよりも圧力差が生じたときに圧力がこのセンサーにかかることを防止する機構を備えておけば、確実にセンサーの破壊を防止できる。
図2(c)は、図2(a)におけるB1−B2における切断面の側面図である。B1−B2の方向は第1面溝O2(奥側のO1は省略する)の縦方向である。(A1−A2の方向は横方向である。)第1面溝O2の壁1004(1004−2、1004−4、1004−5)は導電体であり、同じ導電体である上壁1000(1000−3)とつながっているが、電気不活性領域I4やI5により、その外側の上壁1000(1000−1)とは電気的には接続していない。第1面溝O(O2)の長さ(縦方向長さ)をa、幅(横方向長さ)をb、深さ(上壁の下面から溝の底面までの距離)をh、底壁の厚みをq3、側壁1004−4の厚みをq1、1004−5の厚みをq2とすると、容量を構成する電極の面積S(側壁1003−3および1004−1の容量に寄与する面積にほぼ等しい)は、S=(a+q1+q2)*(h+q3)となる。
側壁1003−3および1004−1で構成される容量Cは、C=ε*S/dで示される。P2=P1のときは、側壁1003−3および1004−1はほぼ平行と考えて良いのでC=ε*S/d0である。P1>P2のときはC=ε*S/d1、P1<P2のときはC=ε*S/d2である。尚、静電容量を測定するときは、図2(b)に示すように、対向する側壁電極1003−3および1004−1へ接続する電極・配線F1およびF2を形成するが、上述したようにF1とF2に生じる静電容量は、側壁電極1003−3および1004−1の間に生じる静電容量のほかに、電気不活性領域I1に生じる静電容量もある。(これらの容量は並列に入っていると考えれば良い。すなわち、全体の静電容量は個々の静電容量の和となる。)しかし、この電気不活性領域I1に生じる静電容量は一定であるから、静電容量変化に寄与するのは、側壁電極1003−3および1004−1の間に生じる静電容量である。
図1〜図3に示したものが本発明の圧力センサーに用いる容量の1つの実施形態である。このように、本発明は、導電体基板の厚み方向に第1面(上面)側および第2面(下面)側から形成した溝を利用した静電容量型圧力センサーである。
導電体基板として、金属や合金などを用いることができる。この場合、電気不活性領域は第1面側の一部に絶縁体を形成して作成することができる。
また、導電体基板として、不純物元素を高濃度に固溶した低抵抗のシリコンなどの半導体基板を使うことができる。この場合、電気不活性領域は第1面側の一部に絶縁体を形成して作成することができる。たとえば、電気不活性領域となるべき部分を酸化または窒化して酸化物(絶縁体)や窒化物(絶縁体)や酸窒化物(絶縁体)を形成して作成できる。或いは、酸素や窒素をイオン注入して酸化物(絶縁体)や窒化物(絶縁体)や酸窒化物(絶縁体)を形成して作成できる。或いは、電気不活性領域となるべき部分にトレンチ溝を形成して絶縁体を埋めこんだり、酸化または窒化して絶縁体を形成して作成できる。
また、導電体基板として、導電体高分子や導電体ゴムを使うこともできる。この場合、電気不活性領域は第1面側の一部に絶縁体を形成して作成することができる。導電体高分子や導電体ゴムはわずかな圧力差により縮小または膨張するので、微小な圧力変動を検出することができる。
また高濃度不純物を有する低抵抗の半導体基板上に高濃度不純物元素と逆導電体の元素である低濃度の不純物を有する半導体をエピタキシャル成長させた基板、或いは、高濃度不純物を有する低抵抗の半導体基板上に高濃度不純物元素と逆導電体の元素である低濃度の不純物を有する半導体基板を接合させた複合基板を用いることができる。これらの場合、第1面溝の側壁およびこれに接続する第1面溝の一部に高濃度不純物領域と同じ導電体の元素を有する高濃度領域を形成し、容量を形成する2つの電極に接続する第1面に形成される高濃度領域はそれぞれ離間して形成する。このようにすると低濃度の不純物領域がこれらの電極間の電気的不活性領域となる。
さらに導電体基板として、貼り合わせ基板を用いることもできる。第1面側には電気不活性領域を形成しやすい基板を用い、その下側に深い溝部を形成しやすい基板或いは、薄い側壁を形成しやすい基板、或いはヤング率が低い基板、さらには破壊強度が高く繰り返し疲労強度が高い基板を使用することができる。
導電体基板として、高濃度不純物を含み低抵抗のシリコン半導体基板を使用する場合に、本発明の圧力センサーを製造する方法について図4に基づいて説明する。図4においては、簡単のために活性領域と1つの第1面溝を有する場合について説明するが、これをそのまま用いることにより圧力センサーを作成できる。図4(a)に示すように、シリコン半導体基板として、N型不純物元素を高濃度に含み低抵抗のシリコン半導体基板(N+基板)1101を用いる。(前述したようにP+シリコン基板も用いることができる。)このN+基板1101の両面に絶縁膜を形成する。(第1面側の絶縁膜を1102、第2面側の絶縁膜を1103とする。)この絶縁膜は、N+基板1101を酸化したシリコン酸化膜、N+基板1101を窒化したシリコン窒化膜、N+基板1101を酸窒化したシリコン酸窒化膜、CVD(化学気相成長)法やPVD(物理気相成長)法によって成長させたシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜などである。第1面側の絶縁膜1102上にフォトレジスト1104を形成し、電気不活性領域を形成する部分を窓開けする(この窓を1105とする)。この窓開けは、フォトレジスト等の感光性膜を感光するなどしてフォトリソ法を用いて行う。
次に図4(b)に示すように、この窓1105を用いて、その下に存在する絶縁膜1102を除去する。この絶縁膜1102の除去には、この絶縁膜1102をエッチング可能な液体中へ浸漬したり、液体を吹きかけたりして行なう。(WET法)たとえば、絶縁膜1102がシリコン酸化膜であれば、ふっ酸(HF)を含む溶液を用いることができる。或いは、この絶縁膜1102をエッチング可能なガスを用いてドライエッチング法を用いて行うことができる。たとえば、絶縁膜1102がシリコン酸化膜であれば、CF系(CF4など)ガス、CCl系ガス(CCl4など)、CHF系ガス(CHF3など)、CHCl系ガス(CHCl3など)、CBr系ガス(CBr4など)、CHBr系ガス(CH2Br2など)、CI系ガス(CI4など)、CHI系ガス(CH2I2など)、塩素系ガス(Cl2など)などのガスや他のガスおよびこれらのガスの混合ガスをプラズマ化してエッチングすることができる。絶縁膜1102をエッチングした後、その下にあるN+シリコン基板1101をエッチングし、窪み部(凹部)1106を形成する。N+シリコン基板1101のエッチングは、シリコン基板のエッチング可能なガスを用いてドライエッチング法を用いて行うことができる。たとえば、CF系(CF4など)ガス、SF系ガス(SF6)、CCl系ガス(CCl4など)、CHF系ガス(CH3Fなど)、CHCl系ガス(CHCl3など)、CBr系ガス(CBr4など)、CHBr系ガス(CH2Br2など)、CI系ガス(CI4など)、CHI系ガス(CH2I2など)、塩素系ガス(Cl2など)などのガスや他のガスおよびこれらのガスの混合ガスをプラズマ化してエッチングすることができる。或いは、アルカリ性エッチング液や熱リン酸溶液などのWET法でN+シリコン基板1101をエッチングすることができる。尚、絶縁膜1102や1103は必要がなければ、形成しなくても良い。またフォトレジストなどを使わなくても、選択的に電気不活性領域を形成できる場合には、フォトレジストを用いなくても良い。
次に、図4(c)に示すように、イオン注入を行い、窓1105から酸素等のイオンを高濃度に注入し、酸素イオン等を高濃度に含む領域1108を形成する。このプロセスの目的は、N+シリコン基板の第1面側の深い部分までを形成することである。図1〜図3も用いて説明したように電気不活性領域Iは、容量部分を構成する2つの対向する電極を電気的に完全に分離できる領域でなければならない。ここで用いる導電体基板はN+シリコン基板という1つの導電体材料からなるので、電気不活性領域Iを絶縁体として上壁部分の厚み方向に絶縁体を完全に形成する必要がある。一方、第2面溝を形成するとき、第2面溝は第1面溝に達しないようにする必要がある。第1面溝の深さ(図2の「h+上壁の厚み」))は、100μmは欲しい(もっと薄くても良いが、容量が小さくなるとともに、圧力による変形量dが小さくなるので、圧力検知の感度が悪くなる)ので、第2面溝も約100μmはエッチングする必要がある。また、上壁は圧力により余り変形しない方が良いので、上壁の厚みは容量を構成する側壁の厚みより少なくとも約3μmは厚くした方が良い。側壁の厚みを約3〜5μmとすれば、上壁の厚みは約6μm以上の厚みが必要となる。すなわち、電気不活性領域Iの厚みはこの6μmよりも深い領域まで形成しておく必要がある。第2面溝のエッチングのばらつきも考慮すれば、約10μmの深さまで電気不活性領域Iを形成しておくと良い。酸化や窒化だけで絶縁体を約10μmまで形成するのはかなりの時間酸化処理や窒化処理を行う必要があり、プロセスコストがかかるだけでなく、N+シリコン基板中の欠陥を増大させるので、長時間の熱処理は問題がある。そこで、図4(b)や(c)に示すように、凹部1106を形成しさらに深い領域まで高濃度の酸素イオンや窒素イオンを注入する。酸素や窒素を深い領域まで注入するには、高電圧イオン注入を行う。また高濃度の酸素イオンや窒素イオンを注入する必要があるので、高電流のイオン注入を行う。
次に、図4(d)に示すように、フォトレジスト1104を除去して、酸化処理や窒化処理や熱処理を行って、厚い絶縁体1110を形成する。この絶縁体1110はシリコン酸化物やシリコン窒化物やシリコン酸窒化物である。酸化処理等で絶縁体1110を形成しても凹部1106や1105が残っている場合において、この窪み部1106や1105を埋めるときには、SOG(silicon on glass)等の絶縁膜を塗布した後熱処理して固化して平坦化しても良いし、および/またはCVD法やPVD法で絶縁膜を積層して平坦化しても良い。この状態が図4(e)に示されていて、1111が絶縁膜である。尚、凹部1106をさらに深くして(いわゆるトレンチを形成し)、このトレンチにシリコン酸化物やシリコン窒化物やシリコン酸窒化物等を熱処理法やCVD法やPVD法等で積層したり、SOG法で平坦化したりして電気不活性層を形成しても良い。
次に図4(f)に示すように、フォトレジスト等の感光性膜1113を第1面上に形成して、第1面溝Oを形成する領域の感光性膜1113を窓開けして、窓部1114を形成し、この窓部1114を用いてその下に存在する絶縁膜1111および1102をエッチング除去する。このエッチング除去には、上述したWET法やドライ法を用いることができる。このようにして、N+シリコン基板が露出した領域1115を選択的に得ることができる。
次に図4(g)に示すように、窓部1114(1115も含む)を用いて、第1面溝Oを形成する。この第1面溝の深さ(g=h+上壁厚み)は約100μm以上である。第1面溝の幅kは容量部分には余り関係しないので比較的大きくても良い。たとえば、k=100μmでも良いので、g=300μmとすれば、アスペクト比3(g/k)の溝を形成すれば良い。ボッシュ法等のドライエッチング技術により、サイドエッチングの非常に少ない溝を形成することができる。ドライエッチングを行うときには、露出したN+シリコン基板だけではなく、フォトレジスト等の感光性膜1113もエッチングされていくので、N+シリコンのエッチングに対して感光性膜1113や(感光性膜1113が除去されて絶縁膜1111や1102が露出されることも考慮して)絶縁膜1111や1102のエッチング選択比が良好なエッチング条件を選択する必要がある。尚、kが小さい方がサイドエッチングの少ない第1面溝が形成できるならばそのような良好なkを選択すれば良いが、圧力を第1面溝Oの内部にスムーズに伝達する必要があるので、10μmはあると良い。また、kが大きすぎると、容量素子のサイズが大きくなるので、圧力センサーのサイズも考慮してkの大きさを決めると良い。第1面溝は第2面に達しないようにする必要があるので、N+シリコン基板の厚みをmとしたときに、当然m>gである。また上述したように、第1面溝の底壁は容量を構成しないが、底壁の部分における圧力差による変動が容量を構成する側壁の部分よりも小さい方が好ましいので、容量を構成する側壁の厚みよりも厚くするのが良い。また、第1面溝のエッチングはストッパーによる検知ができなければ、時間管理で置かなう必要があるため、ある程度のオーバーエッチングが必要となる。以上の問題や第1面溝の厚さ方向のエッチングばらつきを考慮すれば、底壁の厚みは第1面溝の深さgの約5%〜10%程度が良い。もちろん、エッチング精度が良くなれば、約5%より小さくもできるし、エッチング精度が悪ければ約10%より大きくすることもできる。さらに、設計値で問題なければ約10%以上にすることもできる。たとえば、第1面溝の深さが300μmであれば、底壁の厚みは約15〜30μmとし、最初のN+基板の厚みは約315μm〜330μmとすれば良い。ただし、後述するように容量部分を浮かせたいときには、最初のN+基板の厚みは約315μm〜330μmよりももっと厚くすると良い。
次に、図4(h)に示すように、感光性膜1113を除去して、第1面溝のエッチングダメッジや汚染を除去するための洗浄や処理(WETやドライ)を施したり、第1面溝の内壁を熱処理(酸化、窒化や酸窒化などの処理)をしたり、CVD法やPVD法を用いて、絶縁膜1117を形成する。この絶縁膜1117は第1面溝の内壁を保護する。この絶縁膜1117の形成は必要がなければ行なわなくても良い。或いは、絶縁膜でなく多結晶シリコン(PolySi)膜、金属やシリサイド膜などの導電体膜でも良い。このような導電体膜を形成すれば、第1面溝の内壁の抵抗をさらに下げることもできる。或いは、高濃度の不純物をドープしたり拡散したりしても良い。或いは、上記の処理を併用しても良い。
次に、図4(h)に示すように第2面(下面)に第2面溝を形成するためのパターニングを行う。たとえば、フォトレジスト等の感光性膜1120を形成してパターニングし、第2面溝を形成すべき領域を窓開けする。(窓部1121)その後で、窓部1121の下(図面では上の方になるが、適宜このように記載する)にある絶縁膜1103をエッチング除去する。尚、この絶縁膜1103は必要がなければ形成する必要はないし、或いは、感光性膜1120を形成する前に第2面から除去しておいても良い。ただし、感光性膜1120を直接N+シリコン基板上に形成するよりも絶縁膜1103上に感光性膜1120を形成した方がパターニング性が良くなる場合は、絶縁膜1103を形成しておくと良い。(或いは、残しておくと良い。)或いは、第2面溝を形成するためにN+シリコン基板のエッチングのときに、N+シリコン基板をエッチングしたくない場所に存在する感光性膜1120もなくなる恐れがあるときは、絶縁膜1103を残してストッパーとして使用すると良い。絶縁膜1103のエッチングはドライでもWETでも適宜行うことができる。
その次に、窓部1121において露出したN+シリコン基板をエッチング(絶縁膜やシリコンのエッチングを図4(h)では矢印で表している)して、図4(i)に示すように第2面溝Qを形成する。このエッチングも深堀エッチング(Deep RIE)で行い、サイドエッチングの非常に小さく、深さ方向のエッチングも制度の良いドライエッチングで行なう。第2面溝は前述の電気不活性領域I、すなわち、厚い絶縁体1110まで達する必要がある。しかし、第1面に達しないようにする。上壁1006は容量を構成する側壁よりも圧力による変形度が小さい方が望ましいこと、エッチングばらつきなども考慮する必要があることから、上壁1006は側壁の厚みよりも約3〜5μm以上厚い方が良い。たとえば、容量を構成する側壁の厚みを約3〜5μmとすれば、上壁1006の厚みを約6〜10μm以上とする。容量を構成する側壁の厚みを約5〜10μmとすれば、上壁1006の厚みを約8〜15μm以上とする。容量を構成する側壁の厚みを約10〜20μmとすれば、上壁1006の厚みを約13〜25μm以上とする。容量を構成する側壁の厚みを約20〜30μmとすれば、上壁1006の厚みを約23〜35μm以上とする。第2面溝の深さをn、上壁1006の厚みをpとすれば、n=m−pとなる。
第2面溝の形成において最も重要なことは、容量を構成する側壁(図4(i)においては、1003−3)の厚みyと電極間の距離dである。厚みyが薄ければ圧力差による感度が良くなる。たとえば、周囲のみが拘束された厚みyの長方形(h*a)のシリコンダイヤフラムの最大たわみ(長方形の中心部)はおおよそ以下の計算式で与えられる。
Wmax=α*z*h4/(Ey3)
(zは圧力差(=P1−P2)、Eはダイヤフラム材料のヤング率、αはシリコンダイヤフラムの縦横比により変化する定数)
h=a=300μmのとき(正方形状ダイヤフラム)には、α=0.0138となり、
Wmaxは約600z/y3(μm)となる。ただし、zをMpa単位で示し、yはμm単位で示す。たとえば、zを1Mpa(約1atm)、yを5μmとするとWmax=約5μmとなる。また、zを1Mpa(約1atm)、yを3μmとするとWmax=約22μmとなる。
h=a=400μmのとき(正方形状ダイヤフラム)には、Wmaxは約1890z/y3(μm)となる。たとえば、zを1Mpa(約1atm)、yを5μmとするとWmax=約15μmとなる。また、zを1Mpa(約1atm)、yを3μmとするとWmax=約70μmとなる。
h=300μm、a=600μmのとき(長方形状ダイヤフラム)には、α=0.0277となり、Wmaxは約1200z/y3(μm)となる。ただし、zをMpa単位で示し、yはμm単位で示す。たとえば、zを1Mpa(約1atm)、yを5μmとするとWmax=約10μmとなる。また、zを1Mpa(約1atm)、yを3μmとするとWmax=約45μmとなる。
上記の式は理論式であるから、この式等を考慮して設計して、できあがったものでデータを取り、実際値と理論式を近づければ精密なセンサーを作製できる。
以上から、たとえば、N+シリコン基板の厚みを400μmとして、第1面溝の深さを300μm、第1面溝の長さを600μmにとり、側壁厚みを3μm、第2面溝の幅(圧力差が0のときの容量電極間距離)を100μmとすると、1Mpa前後の圧力差でも顕著な容量変化が起きるので、精度良く圧力を検知できる。側壁厚みを3μmとすることも、第1面溝と第2面溝の合わせ精度は約0.5μm以下とすることは現在の技術でも問題なく実現できるし、将来はもっと精度の良い合わせも可能となるであろう。また、第2面溝の幅は100μmで第2面溝の深さは、大きくても約390μmでアスペクト比が3.9であるから、問題なくサイドエッチングの少ない垂直な溝を形成できる。また、現状の技術においてもアスペクト比が20でも問題なくエッチング可能であることから、第2面溝の幅をもっと狭くすることが可能である。その場合は、1Mpaよりももっと小さな圧力の検出も精度良く行なうことができる。逆に1Mpaよりももっと高い圧力の場合には、側壁厚みを3μmより厚くできるので、プロセス上かなり余裕をもって容量を形成できる。将来はもっと高いアスペクト比の第2面溝を形成できるであろう。このように、使用圧力により、最適なサイズの容量を形成できるのも本発明の特徴である。
第2面溝の形成において最も重要なことは、容量を構成する側壁(図4(i)においては、1003−3)の厚みyと電極間の距離dであり、厚みyが薄ければ圧力差による感度が良くなることを上述した。図4(h)から分かるように、第2面(下面)に、第1面溝の部分をエッチングしないように第1面溝より大きいサイズで感光性膜1120を形成する。すなわち、第1面溝の側壁内面より感光性膜1120の外側を大きくする。この距離をrとすると、r>0であることが必要である。この条件を満たさないと第2面溝を形成するときに、第1面溝と第2面溝が重なってしまう。第1面溝の側壁はできるだけ感光性膜1113の窓1114に忠実に形成するようにする。すなわち、サイドエッチング量を極力小さくし、第1面溝の側壁は垂直か極力垂直に近くする。(或いは、サイドエッチング量を正確に制御できる場合にはサイドエッチングを前提に考慮することができる。しかし、サイドエッチングがある程度起きても垂直か垂直に近い形状が望ましい。)このようにすることにより、容量を構成する側壁の厚みを一定か一定に近づけることができる。感光性膜1113の窓1114のサイズと第1面溝Oのサイズとの差をΔsとしたときに、第1面溝全体に渡りΔsはできるだけ小さいことが望ましい。(或いは、Δsが一定でそのばらつきが小さい方が望ましい。この場合は、このΔsを考慮してパターン設計をすることによって、最適な溝を形成することができる。)
次に図4(i)において、第1面溝Oに対して第2面溝Qのパターンを正確に合わせる。両面マスク(或いは、レチクル)アライナーやステッパーを用いれば非常に精度良く合わせることが可能である。
さらに本発明の圧力センサーの場合には、第1面に形成されたパターン(合わせ用のパターンだけでなく本パターンも含む)を第1面側から読み込んで、その情報を第2面にパターンを形成するときに利用してパターン合わせを行うという従来方法以外に、もっと合わせ精度を向上させる方法を用いることができる。すなわち、第1面のパターンに第2面のマスク合わせ(或いは、レチクル合わせ)を行うときに、第1面溝パターンに対して直接合わせ込む方法を取ることができる。その方法の1つとして、第1面溝はかなり深い溝となっているので、第1面溝の底壁の厚みがかなり薄くなっている。従って、厚いシリコン基板では透過できないが、薄いシリコン基板であれば透過可能な波長の光や電磁波を用いることにより、第2面に第1面溝のパターン情報を直接伝達することができる。光や電磁波の情報を使って第2面溝の感光性パターンを合わせ込めば非常に精度の高い合わせ込みが可能となる。すなわち、片面だけでの合わせ込みと同じ精度でパターン合わせが可能である。しかも実パターン(第1面溝)に合わせ込めるので、第1面溝と第2面溝の感光性パターンの合わせ精度はさらに向上する。特にステッパーを用いて合わせ込みもできるので、合わせ精度が非常に向上する。
さらに別の方法も用いて合わせ精度をさらに向上できる。この方法では、第1面溝を形成する前か或いは第1面溝を形成した後で、第2面の一部だけエッチングにより薄くして第1面溝と貫通させるか或いは第1面溝の底壁の厚みを非常に薄くしておく方法である。この方法により、その貫通された部分(或いは、非常に薄くなった部分)を通して第2面から第1面の溝パターンを読むことができ、第1面溝パターンに直接合わせ込むことができる。この場合は、合わせ込みに用いた第1面溝パターンを実パターンとして用いることはできないが、種々の場所に設けておくことにより、ステッパーによる合わせ込みも可能となるので、非常に精度良く合わせ込みが可能となる。
さらに別の方法も用いることができる。第2面側にガラス基板を接合する方法である。この場合は、N+シリコン基板の第2面(下面)側にガラス基板を接合する。ガラス基板なので陽極接合も可能となり強固な接合を行うことができる。N+シリコン基板は第1面溝形成のときに厚み方向に完全に貫通させる。N+シリコン基板とガラス基板は材質が異なるので、ガラス基板がエッチングストッパーとなるので、第1面溝の深さ方向の厚みも非常に精度良くコントロールすることができる。第1面溝のパターンは第2面側から正確に読み取れるので直接に第1面溝に対して第2面溝の感光性パターンを合わせこむことが可能となる。この結果、第1面溝と第2面溝を非常に精度良く形成できる。この場合、第2面溝を形成するとき、最初にガラス基板を垂直にエッチングして感光性膜パターンにできるだけ忠実に形成する必要がある。この場合も材質が異なるので、シリコン基板をストッパーとして用いることが可能であり、オーバーエッチングの余裕度も大きいので、ウエハの全域にわたり、必要な場所においてシリコン基板を完全に露出させることができる。その後で別のエッチング種を用いて(条件しだいでは同じエッチング種でもできる場合がある)第2面溝を垂直に精度良く形成することができるので、第1面溝と第2面溝の間に形成される側壁の厚みを非常に精度良く形成できる。この場合は、第1面溝の底壁はガラス基板となる。ガラス基板は絶縁体であるが、側壁のN+シリコンを通して電気を伝達できるので容量特性には特に問題はない。さらにガラス基板を使用するメリットとして、第1面溝を形成した後でガラス基板全体をエッチングして薄くすることもできる。この薄くする方法として、ウエットエッチングを用いることもできるし、ドライエッチングを用いることもできるし、さらにはBG法(裏面研磨法)やCMP法(化学的機械的研磨方法)を用いることもできる。ウエットエッチングの場合には、HF系のエッチング液を用いて精度良いエッチングを行うことができる。ドライエッチングの場合にも前述したCF系等のエッチングガスを用いて精度良くガラス基板のエッチングを行うことができる。このように第2面溝の感光性パターン形成前にガラス基板を薄くしておけば、第2面溝形成時にエッチングするガラス基板の厚みが薄くなっている。従って、オーバーエッチングも少なくて済むので精度良いエッチングが可能となり、第2面溝も精度良く形成できる。
第2面溝Q(Q1、Q2、Q3)を形成した後、感光性膜1120を除去した後、第2面溝で露出したシリコン基板のエッチングダメッジや汚染物を除去する。この方法として、第2面側の露出したシリコンをWET法やドライ法で軽くエッチングする方法がある。さらに、図4(j)に示すように、第2面側の露出したシリコンを軽く酸化(或いは、窒化)して酸化膜(或いは、窒化膜や酸窒化膜)等の絶縁膜1122を形成しても良い。或いは、CVD法やPVD法で酸化膜、窒化膜や酸窒化膜等の絶縁膜1122を積層しても良い。その後に、第2面側に接着層1125を介して薄板1126を張り付けて、第2面溝Qを固定させることもできる。この接着方法として、第1面側から基板(ウエハ)1101を持ちあげて、第2面側の底壁1124および第2面側でエッチングしていない基板面(図示されていない)に接着層1125を塗布または浸漬または貼り付けて、薄板1126に基板1101を接着させる。或いは、薄板側に接着層1125を付着させて基板1101を接着させることもできる。この場合には、薄板1126の所望の部分に接着層1125をパターニングしてから接着しても良いが、接着後の乾燥処理や熱処理でアウトガスなどが発生して問題が生じなければ薄板1126の全面に接着層を形成した方がプロセス上簡便となる。或いは、接着層1125を用いずに薄板1126を基板1101に押しあてて、圧力および/または熱により基板1101に薄板1101を直接接合させる。基板1101の第2面に形成された絶縁膜1103等が不要であれば事前に除去してから接合または接着しても良い。薄板1126には第2面溝に圧力を伝達するための圧力伝達孔1127を設けても良い。この圧力伝達孔1127は、薄板1126を接合する前に形成しても良いし、或いは薄板1126を付着した後に形成しても良い。薄板1126を接合する前に形成する場合には、この孔1127が第2面溝Qの部分に来るようにアライメントする必要があることは言うまでもない。
また、薄板1126を付着させた後で孔1127を形成するには、第2面溝のある場所に形成するようにすることも当然である。孔1127を形成する方法としてレーザーによる方法やマスクを通してエッチングまたはレーザー照射により形成する方法などがある。感光性膜を形成して露光による窓開けをしてその窓を通して薄板1126に孔1127をドライエッチングやWETエッチングにより形成する方法もある。圧力伝達孔1127を形成しない場合には、第2面溝Qは完全に閉じられてしまうので、閉じた時点における圧力P3が第2面溝の圧力として保持され、この圧力P3を基準にして第1面側の圧力P1が検出される。非常に低圧(ほぼ真空状態に近い)状態で薄板1126を完全に基板1101の第2面側に付着すれば、P3はほぼ0となり、P1の絶対圧を検出できる。1気圧(約1Mpa)で薄板1126を完全に基板1101の第2面側に付着すれば、P3はほぼ1気圧であるから、1気圧に対する圧力としてP1を検出することができる。
薄板1126は絶縁体基板でも導電体基板でも半導体基板でも使用することができる。薄板1126を付着させることにより、第1面溝Qや支持基板1101と電気的に導通するなどして容量特性に影響を与えないようにする必要がある。薄板1126として導電体(たとえば、金属性板など)や半導体板(シリコン板など)を使用するときは、N+シリコン基板1101と薄板1126の間に絶縁膜1103や絶縁性の接着層1125を介するようにすると良い。薄板1126として絶縁体(セラミック板、プラスチック板、ガラス板など)を使用するときは、N+シリコン基板1101と導通はしないので、直接N+シリコン基板と接着することもできる。
また、薄板1126として、可視光に対して透明なガラス板を用いれば、第2面溝や容量素子等をガラス板を通して見ることができるので、位置合わせや容量素子等の出来栄えを観察することが容易である。また、ガラス板をシリコン基板1101に直接付着するときに陽極接合法により強力に接着することもできる。或いは、ガラス板をシリコン酸化膜1103に接着するときは同じ材質なので付着させやすい。
図4(j)においては、第1面溝Oの底壁1124が薄板1126に付着している。これは第2面のエッチングしていない面(図示していないが、半導体基板1101の第2面)と同じレベルなので、プロセス上自然に薄板1126と接触してしまう。ここで、接着層1125を介して第1面溝Oの底壁1124を薄板1126に確実に付着させることにより、底壁が圧力により変動することを防止でき、容量を構成する側壁の変動だけを考慮して設計できる。しかし、第1面溝Oを浮かせることも可能である。その方法として、図4(k)に示すように第1面溝Oの部分における底壁1124を薄くすれば良い。第2面溝を形成する前に第1面溝の底壁部分を第2面側で窓開けしてエッチングして底壁を薄くすれば良い。このときに第2面溝を形成する領域も含めて窓開けしておけば、第2面溝を形成する領域もエッチングされるので、第2面溝を形成するときのエッチング量を少しではあるが減らすことができる。尚、第1面溝を形成する前にこの領域を薄くしておくこともできる。
このようにすることによって、図4(l)に示すように、第1面溝Oが浮いたものを作成することができる。この図においては、N+シリコン基板1101の支持基板部分1101−1、1101−2も示されている。すなわち、薄板1126は支持基板部分1101−1や1101−2に接着層1125を介して付着しているが、第1面溝Oの底壁1124等は薄板1126に接触していない。つまり、第1面溝Oは浮いた状態になっていて、薄板1126の振動などが容量を構成する第1面溝に直接伝わらない。また、第2面溝全体を同じ空間とすることもできるので、圧力伝達孔1127も少なくて済む。
さらに、図4(j)に示すように、基板1101の第1面側に薄板1130を付着させる。接着層1129を介して、絶縁膜1111上に薄板1130を付着させても良いし、圧力および/または熱処理だけで絶縁膜1111上に薄板1130を付着させても良い。その方法は薄板1126を第2面側に付着させる方法と同様である。すなわち、薄板1130と絶縁膜1111とが付着すべき部分に接着層1129を形成した後に薄板1130を基板1101側に合わせて付着させる。接着層1129は絶縁膜1111上に形成した後に、薄板1130を付着させることもできるし、薄板1130に接着層1129を形成して薄板1130を基板1101側に付着させても良い。薄板1130の全面に接着層1129を形成してそのまま薄板1130を基板1101側に付着させることもできるが、特に第1面溝の開口部分の接着層1129は第1面溝Oの内部向いているので、この場合にはその後の処理や熱プロセスでアウトガスにより第1面溝Oの内部が変質して問題が生じないかを確認する必要がある。ただし、アウトガスが発生して第1面溝Oの内部に存在しても、圧力伝達孔1131を通してアウトガスを外側に出すことができるので、アウトガス自体は完全に除去可能である。(たとえば、外界を真空状態にすれば溝内部のアウトガスを抜くことができる。)接着層1129を介して薄板1130をN+シリコン基板1101の第1面側に接着する場合は、適切な熱処理などを行って薄板1130をN+シリコン基板1101の第1面側に強固に接着することができる。
アウトガスをできるだけ少なくするには、必要な部分だけに接着層1129を形成する。たとえば、接着層に感光性タイプの樹脂を使用し必要な部分だけに接着層を残したり、或いは感光性膜を接着層の上に形成して必要な部分以外の所は感光性膜を除去し、さらにその開口部分の接着層を除去してその後感光性膜を除去し、必要な部分だけに接着層を残せば良い。N+シリコン基板1101の第1面側の絶縁膜1111上に接着層1129を形成する場合、接着層剤が液状のものをスピンコーティングするとき、接着剤が第1面溝Oの内部に入り、この接着剤をその後取れない可能性がある。そこで接着層としてシートタイプのものをN+シリコン基板1101の第1面側の絶縁膜1111上に貼り合わせる方法を使用することもできる。シートタイプの接着層は第1面溝の内部に余り入り込まないようにすることができる。或いは、入り合わせる前に第1面溝の部分の接着層を除去しておくこともできる。また、感光性接着層剤の場合、ネガ型が扱いやすい。すなわち、第1面溝Oの内部へ入り込んだ接着剤を取るために第1面溝Oの内部へ光を当てなくても現像の際、第1面溝の内部の接着剤を完全に除去できる。
第1面溝Oの開口された部分にあたる薄板の一部に圧力伝達孔1131を形成する。この孔1131は、あらかじめ薄板1130にあけておいても良いし、薄板1130を付着させた後にあけても良い。この圧力伝達孔1131を通して第1面側の圧力P1を第1面溝へ伝達できる。尚、この圧力伝達孔1131は外界の圧力P1がスムーズに第1面溝に伝達されるほどのサイズにする必要がある。このサイズとしては、10〜50μmの径があれば充分であるが、第1面溝のサイズは図2および前述のダイヤフラムの最大撓み量Wmaxの説明から分かるように、第1面溝の長さ方向aは大きいほど感度が良い。(ただし、余り大きくなるとセンサーサイズが大きくなるが。)すなわち、300μm以上あればかなり良い感度が得られる。また、第1面溝Oの幅kに関しては図3(b)から分かるように、P1<P2のときにすぐに側壁がつかない程度にすること(小さな圧力差により側壁が接触すればそれ以上の圧力差を検出できなくなる)、余り変形しすぎて側壁が破壊しない程度の寸法よりもkが小さいことなどが要求されるが、圧力センサー素子の大きさがある程度大きくなっても良ければ、約100μmは確保できる。(尚、容量測定に無関係な側壁は厚くても良い)従って、その場合には前述したサイズの圧力伝達孔1131を形成することは全く問題ない。ただし、余り大きくすると外界から異物が侵入する可能性があるので、それらを総合的に考えて圧力伝達孔1131のサイズを選定すると良い。異物の侵入を簡単に除去するには、第1面溝Oと同じサイズの孔で良いという考えもある。圧力センサーの使用環境も考慮しても良い。
次に、図4(j)に示すように、第1面側の上壁1006−2(1006−2−1、1006−2−2)と電気的な導通を取るためのコンタクト孔1132(1132−1、1132−2)を形成してこの部分に導電体1133(1133−1、1133−2)を形成する。第2面溝の幅dの長さによって、コンタクト孔1132の(この方向における)サイズは決定される。上述したように圧力差が小さいときやダイヤフラムとしての側壁の厚みが厚いときにはダイヤフラムの変位が小さいので、そのときにも容量変化を大きくするにはdを小さくすることが効果的となる。しかし、余りdを小さくすると第2面溝Qを形成するときのアスペクト比が大きくなり深堀エッチングが難しくなる。将来は優れた深堀エッチングが実現する可能性が大きいが、現状ではアスペクト比が30程度が良い所と考えられるので、第2面溝のエッチング量hを約300μmとするとdは約10μm程度となる。電気不活性領域の幅eはかなり小さくても5V程度の耐圧は充分取れるが、プロセス上の限界から約1μm程度と考えると、コンタクト孔1132のサイズは約1〜3μmとなる。一方、絶縁膜1102と1111のトータル厚みは耐圧面から1000Aあれば充分であるが、プロセス上の安定性から考慮すれば約0.5μm程度は必要となる。さらに接着層1129および薄板1130の厚みは、容量センサーを保護するという観点とプロセス上の安定度から考えると約5μmは欲しい。そうすると全体のコンタクト孔の深さは約5.5μmということになる。1μmサイズでアスペクト比5.5のコンタクト孔1132を形成することは充分可能である。たとえば、絶縁体1102および1111がシリコン酸化膜で薄板1130もガラス板(或いは石英板)である場合には、薄板1130上に感光性膜を形成してコンタクト孔部分を窓開けして、さらにその窓からドライエッチング法(エッチングガスとして前述したようにCF系ガスなど種々のガスを適宜条件やエッチング装置を選択する)により薄板1130、絶縁膜1111および1102を順次エッチングしていけば良い。或いは、感光性膜を用いずにマスク(或いはマスクレス)を用いてレーザーによる窓開けも可能である。コンタクト孔サイズがもっと大きくなればレーザー光やドライエッチング法によるコンタクト孔形成はもっと容易になるし、サイドエッチングも許容できるのでWETエッチングによるコンタクト孔形成も可能となる。
コンタクト孔1132を形成した後で、このコンタクト孔1132に導電体1133(1133−1、1133−2)を形成する。たとえば、バリアメタルやシード層金属をPVD法により形成してメッキ法によりコンタクト孔1132にメタルを形成できる。或いは、CVD法やPVD法によってメタルやシリサイド膜を積層しても良い。コンタクトサイズがもっと大きくなれば、導電性ペーストを塗布し、スキージングしてコンタクト孔1132に導電性ペーストを入れ込むこともできる。導電性ペーストでコンタクト孔を埋め込む場合には適度な熱処理を行い導電体として安定化させる。さらに、薄板1130の上に金属膜やシリサイド膜や低抵抗のPolySi膜を積層しパターニングして電極・配線1134(1134−1、1134−2)を形成する。このようにしてN+シリコン基板1006−2(1006−2−1、1006−2−2)と電気的に接続する電極・配線1134を薄板上に取りだすことができる。図4(j)に示される2つの電極・配線1134−1と1134−2に数V程度の電圧を印加しても、導電体であるN+シリコン基板1006は絶縁体である電気不活性層1110によって分離されているので、2つの電極・配線1134−1と1134−2間には電気が流れない。前述したようにこの領域で容量(コンデンサ)を形成していて、第2面溝Qの空間における側壁電極による静電容量CはC=ε*S/dとなっていて、第1面溝Oの圧力P1と第2面溝Qの圧力P2との圧力差により第1面溝Oと第2面溝に挟まれた側壁が膨張したり窪んだりしてdを変化させるので、この静電容量が変化する。逆に容量変化を検出して、P1−P2の圧力差を計算することが可能となる。尚、導電体1133と電極・配線1134の導電体膜は兼用することもできる。
上述した様に薄板1130はコンタクト孔1132、コンタクト内導電体1133や電極・配線1134を有するので、薄板1130の材質は絶縁体である。たとえば、ガラス板、石英板、セラミック板、プラスチック板などである。また、薄板1130は容量素子を保護する役割も有するので、ある程度の強度も必要である。薄板上の電極・配線は必要があれば長く配線して他の容量素子や容量以外の素子(たとえば、抵抗、インダクタ、トランジスタ、場合によってはIC)と接続することもできる。その場合保護膜で配線や電極を保護することもできる。薄板1130や1126は本発明の静電容量素子型圧力センサーを保護する役目もあるので、ある程度強度が必要である。そのためにはある程度厚くする。たとえば、50〜100μm。もっと強度を持たせるには100μm〜200μm、さらに強度を持たせるには200μm以上とする。特に薄板1130は厚すぎるとコンタクト孔1132のアスペクト比が大きくなるが、被覆性の良い方法で導電膜1134を形成するとか、薄板1130のコンタクト孔1132をテーパー化するなど種々の方法を取ることができる。尚、導電体膜1133は電極・配線1134を形成する導電体膜と兼用することもできる。
薄板1130を使用しないで、絶縁膜1102、1111にコンタクト孔を開けて、そのコンタクト孔へ金属膜、シリサイド膜や低抵抗のPolySi膜を積層してさらに絶縁膜1111上に電極・配線を形成することもできる。この場合は薄板を使用していないのでアスペクト比が小さくなるので、コンタクト孔への導電体膜を形成しやすい。さらに、電極・配線上に保護膜(シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜やポリイミド膜などのパッシベーション膜)を形成し、パッド電極穴開けを行いパッド電極だけを露出させておくということもできる。この場合は、電極・配線は保護膜に保護されているので、信頼性も向上する。ただし薄板を用いた方が容量素子の保護特性(特に外部からの力に対する強度)は向上する。
図61は圧力伝達経路をさらに設けた圧力センサーを示す図である。図4(j)に示す構造の圧力センサの第2面側に支持層1142、1144を形成し、その上にプレート1146を接着する。プレート1146には圧力導入孔1147が開けられ、外部からの圧力P2を圧力伝達孔1127を通して第2面溝Qへ伝達する。薄板1126とプレート1146との間の空間1145は支持層1142、1144により作られた空間であり、全体がつながっていて各第2面溝Qへの圧力伝達孔1127が入り込んでいる。支持層1144は枠状で閉じていてこの枠の外側と内側を完全に分離し気密を保っている。また。支持層1142は柱状或いは壁状になっていて薄板1126とプレート1146を支えているだけで気密な空間を形成しているわけではなく、その外側および内側および周囲で圧力は同じ状態になっている。枠状の支持層1144だけでプレート1146を支持できればこの支持層1142はなくとも良い。支持層1142および1144は同時に形成できるので、工程負荷および工程付加にはならない。薄板1126上に感光性接着剤を塗布するか、感光性接着シートを張り付けて、露光現像して支持層1142、1144を形成することができる。このパターニングされた支持層1142、1144にプレート1146を張り付けて気密な空間1145を形成できる。プレート1146を十分な強度を有する材料(中が見える方が良ければ、ガラスや透明プラスチックが良い)を用いれば、第2面溝Qや圧力センサーを保護することができる。プレート1146の適当な部分に圧力導入孔1147を設ければ(レーザー法、エッチング法など種々の方法を使用できる)、この圧力導入孔1147から第2面溝Qへ圧力を導入できる。尚、薄板1126を使用せずにこのプレート1146を設けることもできる。図4(l)のような構造であればそのまま適用できるし、図4(j)のような構造の場合には支持層1142や1144を第1面溝の底壁などの上に(図では下に)設ければ良い。
第1面側にも同様にして、電極・配線1134を形成した後に、支持層1148、1150を形成し、その上にプレート1152を接着させる。プレート1152には圧力導入孔1154が開けられ、この圧力導入孔1154から外部の圧力P1が第1面溝Oに伝達される。支持層1150は枠状に閉じられ、この枠の外に対して内側を気密な空間に保持する。支持層1148は、プレート1152と薄板1130を支持しているが、枠状の支持層1150だけで支持できれば必要はない。支持層1148の外側、内側、周囲は同じ圧力である。このようなプレート1152を備えることにより第1面溝Oや電極・配線1134や圧力センサーを保護することができる。尚、薄板1130を設けない場合でも(図61では絶縁膜1102など省略している)直接支持層1148、1150を作製してプレート1152を接着することもできる。支持層1148、1150には感光性接着膜(たとえば、塗布法のよるもの、シートによるもの)を用いることができる。プレート1152の強度は使用環境に合わせて選定すれば良い。内部が見えるようにするには、ガラスや透明プラスチック等を使用すれば良い。点線で示すライン1156はスクライブラインであるが、第1面溝や第2面溝形成のときに一部或いは全部をあけておけば、プレート1146や1152だけの切断になるので、切断しやすい。切断には通常のダイシング法やレーザーダイシング法、エッチングダイシング法など種々の方法を用いることができる。
次に図5に基づいて、高濃度不純物元素を有する低抵抗のシリコン半導体基板1201に、これと逆導電体の低濃度不純物元素を有する高抵抗のシリコン半導体基板1202を接合させた基板(複合基板とも言う)1200を用いて良好な特性を持つ容量型圧力センサーを形成することもできる。この複合基板として、それぞれの半導体基板を貼り合わせた基板(貼り合わせ基板)や、高濃度不純物シリコン半導体基板に逆導電体の低濃度不純物元素を有する単結晶シリコンをエピタキシャル成長させたエピ基板を使用することができる。
低抵抗のシリコン半導体基板1201がN型の場合には、不純物元素はヒ素(As)、リン(P)、アンチモン(Sb)等のV族元素であり、その不純物濃度はたとえば、約1019/cm3以上で、抵抗率は約0.01Ωcm以下である。低抵抗のシリコン半導体基板1201がP型(いわゆるN+シリコン)の場合には、不純物元素はホウ素(B)、アルミニウム(Al)等のV族元素であり、その不純物濃度はたとえば、約1019/cm3以上で、抵抗率は約0.02Ωcm以下である。(ただし、圧力センサーの特性によってはこれらより1桁〜2桁高い抵抗率を有するものでも使用できる場合がある。)
高抵抗のシリコン半導体基板1202がN型の場合には、その不純物濃度はたとえば、約1017/cm3以下(好適には、約1016/cm3以下)であり、抵抗率は約0.1Ωcm以上(好適には、約0.7Ωcm以上)である。高抵抗のシリコン半導体基板1202がP型の場合には、その不純物濃度はたとえば、約1017/cm3以下(好適には、約1016/cm3以下)であり、抵抗率は約0.3Ωcm以上(好適には、約1Ωcm以上)である。
このような複合基板1200の第1面(上面)および/または第2面(下面)に絶縁膜1203、1204を形成する。複合基板1200の第1面とは高抵抗基板1202側の面であり、複合基板1200の第2面とは低抵抗基板1201側の面である。絶縁膜1203、1204は、シリコン酸化膜(SiOx膜)、シリコン窒化膜(SiNx膜)、シリコン酸窒化膜(SiOxNy膜)などであり、これらは酸化、窒化、CVD法、PVD法、或いは塗布法(+熱処理)などにより形成できる。尚、これらの絶縁膜1203、1204はプロセス中に複合基板の表面を保護したり、感光性膜を形成しやすくすることなどのために形成するので、プロセス上問題がなければ、絶縁膜を形成しなくても良い。
次に図5(a)に示すように、感光性膜1205をパターニングして、第1面溝を形成するための窓1206(1206−1、1206−2)をあける。次に図5(b)に示すように、この窓1206(1206−1、1206−2)からその下に存在する絶縁膜1204を除去し、高抵抗の半導体基板の表面(第1面)を露出させる。絶縁膜1204の厚みは約0.1μm〜2μmであるが、第1面溝を垂直に形成するために、窓1206に忠実な大きさで形成することが望ましい。そのため、絶縁膜1204の除去は、ドライエッチング法、それも異方性エッチングが望ましい。(この後、深いシリコン溝を異方性エッチングで形成するので、感光性膜1205もエッチングされて絶縁膜1204が出てきたときに、さらに絶縁膜1204もエッチングされてシリコン基板1200が露出するとシリコン基板の表面が荒れたりダメッジを受けたりする。シリコン基板1200が露出しないようにするために、絶縁膜1204の厚みを2μm以上にする場合もある。)
次に図5(c)に示すように、窓1206の下に存在するシリコン基板1202および1201を順次エッチングして第1面溝O(O1、O2)を形成する。この第1面溝Oの内壁面は基板1202(高抵抗シリコン基板)の第1面に対して垂直になるようにエッチングすることが望ましい。しかも、窓1206のサイズとほぼ同じサイズで基板の深さ方向にエッチングする。ただし、第1面溝は第2面に達しないように適度な厚みを残してエッチングを終了する。このようにして深い第1面溝O(O1、O2)を形成する。
次に、図5(d)に示すように、アッシング法等のドライ法や或いはWET法(レジスト剥離液、たとえば、有機系剥離液や、熱濃硫酸)を用いて、感光性膜1205をリムーブする。その後で、再度、感光性膜1208をパターニングする。高濃度の不純物層を形成すべき領域に感光性膜1208が残らないようにし、高濃度の不純物層を形成しない領域に感光性膜1208が残るように感光性膜1208をパターニングする。基本的には第1面溝Oにおける高抵抗基板1202の内壁側面には高濃度不純物層を形成するので、第1面溝よりも大きく窓開けされ、感光性膜1208は、図5(a)で示された感光性膜1205のサイズより小さくなり、感光性膜1205の内側に形成される。第1面溝Oに存在する感光性膜を現像液で取り除くためには、感光性膜はネガ型が望ましい。ネガ型感光性膜は、光や電子ビームが当たった所が現像液に不可溶となり、光や電子ビームが当たらない所が現像液に可溶となる。第1面溝の深い所に入った感光性膜まで光が届かない可能性が高いので、ポジ型では第1面溝に感光性膜が残る可能性がある。これに対してネガ型では、光が当たらない所の感光性膜は現像液で除去できるから、第1面溝の深い所に入った感光性膜も現像液で除去することができる。尚、感光性膜として、ドライフィルムタイプや液状タイプがある。ドライフィルムタイプではフィルムを基板等に張り付けて露光するので、第1面溝のような深い溝の中までフィルムが入らない可能性が大きい。従ってドライフィルムの方が本発明においては使用しやすい。しかも第1面溝や第2面溝を形成するときに厚いシリコン基板をエッチングするので、選択比の高い条件を選択しても感光性膜がかなりエッチングされる。たとえば、溝のシリコン基板を300μmエッチングする場合には、シリコンと感光性膜の選択比が50としても、6μm以上の厚みが必要である。このような厚い感光性膜を形成するにはドライフィルムの方が扱いやすい。液状タイプのフォトレジストの場合、厚く形成することが困難であるということのほかに、第1面溝の内部深くまで液状レジストが入り込むので、たとえネガ型でも現像液で完全に取りきるのは時間がかかるという問題がある。
次に図5(e)に示すように、感光性膜1208をマスクにして絶縁膜1204をエッチングし、感光性膜1208が存在する部分以外の絶縁膜1204を除去し、半導体基板1202の表面を露出させる。(尚、後述するイオン注入法を用いる場合には、感光性膜1208をリムーブせずに、さらに絶縁膜1204を除去しなくても良い。)その後で、感光性膜1208をリムーブし、図5(f)に示すように、絶縁膜1204がなくシリコン基板が露出した部分に高濃度の不純物拡散を行い、高濃度不純物拡散層1210(1210−1、1210−2)を形成する。この不純物元素の導電タイプは低濃度不純物(高抵抗)基板1202と逆である。たとえば、低濃度不純物(高抵抗)基板1202がP型であれば、N型の高濃度不純物拡散を行う。たとえば、リン(P)拡散を行う。すなわち、P型の高抵抗基板1202中にN+層が形成される。第1面溝においては途中まで(高抵抗基板1202の厚み分)は、P型であるから、第1面溝の内壁にN+層が形成される。第1面溝の深い方はN型基板で、しかもこの基板は不純物濃度が高く低抵抗基板であるから、この基板濃度がさらに濃くなるだけである。この結果、低抵抗基板1201は高抵抗基板1202のN+層と接続して高濃度基板1202の表面まで電気的接続が可能となる。低濃度不純物(高抵抗)基板1202がN型であれば、P型の高濃度不純物拡散を行う。たとえば、ホウ素(B)拡散を行う。すなわち、N型の高抵抗基板1202中にP+層が形成される。第1面溝においては途中まで(高抵抗基板1202の厚み分)は、N型であるから、第1面溝の内壁にP+層が形成される。第1面溝の深い方はP型基板で、しかもこの基板は不純物濃度が高く低抵抗基板であるから、この基板濃度がさらに濃くなるだけである。この結果、低抵抗基板1201は高抵抗基板1202のP+層と接続して高抵抗基板1202の表面まで電気的接続が可能となる。
図5(f)に示す絶縁膜1204(1204−1、1204−2、1204−3)でカバーされている基板1202の部分には、不純物拡散層は形成されない。従って、この部分において、不純物拡散層1210は分断されている。後述するように、第1面溝O1とO2は第2面溝によって高濃度不純物(低抵抗)半導体基板1201の領域では完全に分離されているので、完成品の容量素子においては、拡散層1210−1と拡散層1210−2は電気的には導通していない。尚、高抵抗基板1202の不純物濃度が低い場合、基板表面が空乏化または反転しやすくなり、低い電圧差でも電気が流れやすくなる場合があるが、そのような可能性のある基板では、あらかじめ高抵抗基板1202の表面に同じ導電タイプのイオンをイオン注入して表面の不純物濃度を少し高めておけば良い。このイオン注入は基板1202の表面全体へ行なうことができるので、マスクプロセスは特に必要はないから、この工程追加によるコストアップや工程負荷は小さい。ただし、イオン注入量が多すぎると、基板表面濃度が高くなり、逆導電体型の拡散層1210との接合耐圧が低下するので、実用上問題ないレベルで行なう必要がある。さらに言えば、基板表面が空乏化または反転しやすくなるような基板ではなく、最初から基板表面が空乏化または反転しにくい少し高い濃度の半導体基板1202を使用すれば、イオン注入工程もなくすことができる。本発明の容量素子だけを形成する場合は、最初から基板表面が空乏化または反転しにくい少し高い濃度の半導体基板1202を使用することができるが、MOSトランジスタやバイポーラ等の他の半導体素子も同じ基板に形成する場合は、VTH(閾値電圧)やベース抵抗等の制御のために高抵抗基板を使う必要があるから、イオン注入工程が必要となる可能性がある。
図5(f)における不純物拡散は、たとえば以下のように行なう。BCl3やPOCl3等の不純物ソースから半導体基板(ウエハ)上にBやPの不純物拡散源を付着させ(適当な熱処理を行う)たり、CVD法により半導体基板表面にPSG膜(Pを含むSiO2)やBSG膜(Bを含むSiO2)を積層させたりした後に、拡散炉でこの不純物拡散源から基板内へ不純物を拡散させる。拡散温度と時間によって不純物(拡散)層の深さが決定する。
図5(f)に示した不純物拡散法は、上述のように拡散源をプリデポあるいは高濃度の不純物層を形成しその層から基板中に拡散を行う方法であるが、イオン注入を用いて行なうこともできる。その方法を図6に示す。すなわち、図6に示す構造は、図5(e)に示す構造と同じであるが、この構造の半導体基板1200の第1面側から高濃度イオン注入を行う。ここで注入するイオンは高抵抗基板1202の導電タイプと逆のイオンである。たとえば、高抵抗基板1202の導電タイプがP型であれば、N型不純物元素(As、P、Sbなど)のイオン注入を行う。高抵抗基板1202の導電タイプがN型であれば、P型不純物元素(B.Alなど)のイオン注入を行う。イオン注入のシリコン中への注入深さはイオン種とその加速電圧によって決められ(もちろん、シリコン基板の結晶方位依存性もある)、不純物濃度はイオン注入量(ドーズ量)によって決められる。また、イオン注入した後の熱処理条件(たとえば、温度、時間)でどの程度拡散するかによって不純物層の濃度や深さが決定される。
加速電圧は、イオンの種類と注入する深さにより適宜選択すれば良い。また、注入量に関しては、注入後に熱処理を行い形成した拡散層(不純物層)の不純物濃度が図5で示した拡散層1210と同程度であるから、たとえば、N型で1019/cm3以上、P型で1019/cm3以上になるようにすると、かなり低い抵抗となる。このような濃度にするには、たとえば、イオン注入量を1014/cm2以上、好適には1*1015/cm2以上とする。もっと好適には3*1015/cm2、さらに好適には5*1015/cm2とすれば、拡散層1210の抵抗をさらに下げることができる。
Bイオン(B+)の場合には、たとえば100kevの加速電圧で(シリコン中)ピーク深さが約0.3μm(標準偏差0.07μm)である。Pイオン(P+)の場合には、たとえば100kevの加速電圧で(シリコン中)ピーク深さが約0.12μm(標準偏差0.05μm)である。この後、熱処理をして不純物層を広げる。
本発明においては、第1面溝Oの側壁にも不純物層を形成する。イオン注入法では、通常チャネリング防止のためにイオン注入の進行方向に対して半導体基板を少し傾けて(イオン注入角度を持って)イオン注入を行うが、第1面溝Oは深いためイオン注入されない領域が存在する。イオン注入角度を基板面に垂直に注入しても、第1面溝Oは基板面(第1面)に対してほぼ垂直な側壁を持つので、この垂直な側壁の内面には殆どイオン注入されない領域が存在する。第1面溝の深い方の基板1201は、イオン注入する不純物元素と同じ導電タイプであって高濃度不純物元素を有する低抵抗の半導体基板であるから、この部分にはイオン注入されなくても良いが、その上に接合する高抵抗の基板1202は、逆導電タイプの基板であるから、第1面溝Oの側壁の内面にイオン注入して高濃度の不純物層を形成する必要がある。そのために回転イオン注入法を用いてイオン注入を行う。すなわち、基板面(第1面)の法線に対してイオン注入角度をα°傾けて、かつ基板を回転させてイオン注入1300を行う。この回転イオン注入により第1面溝側壁内面(のどの方向)にもイオン注入され、所定濃度の不純物層1302(1302−1、1302−2、1302−3、1302−4)が形成される。尚、イオン注入がα°傾いているので、感光性膜1208や絶縁膜1204の下の周辺付近にも少しまわりこんでいく。しかし、絶縁膜1204の幅を充分に取れば(イオン注入の加速電圧やイオン注入量、α°、その後の熱処理条件などにもよるが、約5μm以上)不純物層1210−2と1210−3がつながることはない。
高抵抗基板1202の厚みをu、第1面溝の幅をvとすると、tanα<v/uであるように、イオン注入角度α(ただし、αは0度ではない)を設定すれば、回転イオン注入法によって第1面溝の側壁の内面における高抵抗基板領域全体にイオン注入層1302を形成できる。たとえば、u=20μm、v=100μmとすると、tanα<5となるような角度(約78度)より小さい角度で回転イオン注入をすれば良い。回転イオン注入法により形成した不純物層を活性化するために、熱処理を行う。たとえば、900℃の温度で30分以上アニールすれば充分活性化される。ハロゲンランプアニールであれば1000℃で30秒以上アニールすれば良い。不純物層1302の不純物を拡散して不純物層を広げても良い。絶縁膜1204の下には不純物層1302は形成されないし、絶縁層1204の幅をある程度取れば、その後の熱処理によっても不純物拡散層1302が絶縁膜1204の下でつながることはない。絶縁膜1204は第1面溝Oの周囲を取り巻いているので、たとえば、不純物(拡散)層1302−2と1302−3は高抵抗基板1202の領域ではつながらない。すなわち、不純物(拡散)層1302−2と1302−3の間に逆導電型の低濃度(高抵抗)半導体層1202が存在するので、低抵抗基板1201がなければ、電気的に導通はしない。(もちろん、不純物(拡散)層1302−2と1302−3は一定距離離れているので、この距離に相当する耐圧より大きな電圧をかけるか、高抵抗半導体基板1202の不純物濃度に起因する逆方向耐圧より大きな電圧をかければ、電流は流れるが、それらの耐圧以下の電圧印加では電流は流れない。不純物(拡散)層1302−2と1302−3との距離を1μm以上、工程項半導体基板1202の不純物濃度を1017/cm3以下にすれば、10V以上の耐圧があるから、容量素子の実用上は問題ない。)
尚、図5(f)では、高濃度不純物層をシリコン基板1202の表面に作成するために、事前に不純物層1210を形成すべき部分の絶縁膜1204を取り除いていたが、図6に示すイオン注入法の場合には、この絶縁膜1204を残しておいても良い。この絶縁膜の厚みを考慮してイオン注入の加速電圧を選択すれば、この絶縁膜をイオンが突き抜けてシリコン基板に入っていく。このときのイオン注入のマスクは1208の感光性膜1208ということになる。従って、イオン注入法においてはこの感光性膜1208をイオン注入前にリムーブしておく必要はない。特に回転イオン注入法ではこのマスクにより影になる部分もない。尚、図5(f)では不純物層を形成するときに、熱処理を行うので、事前に感光性膜1208や絶縁膜1204等をリムーブしておく必要がある。このように、図5(f)の高濃度不純物層の形成法(プリデポ法)では工程が増えるので、上述の回転イオン注入法を用いれば、工程が簡略化できる。
図5(f)や図6に示したように、不純物拡散層1210(図6においては、不純物層1302)を形成した後に、図5(g)に示すように、イオン注入やプリデポなどによるダメッジや汚染の除去、或いは露出したシリコン基板の保護のために、絶縁膜1212(1212−1、1212−2)を形成する。第1面溝O1側に形成する絶縁膜を1212−1、第1面溝O2側に形成する絶縁膜を1212−2と称す。既存の絶縁膜1204を残して形成しても良いが、この場合は、既存の絶縁膜1204も厚みが増す。或いは、絶縁膜1212を形成する前に、露出したシリコン表面や絶縁膜1204の表面のダメッジや汚染を除去するために、それらの表面を洗浄したり、軽くエッチングしてから絶縁膜1212を形成しても良い。或いは、表面の絶縁膜1204および/または第2面の絶縁膜1203をエッチングしてから、絶縁膜1212を形成することもできる。絶縁膜1212の厚みはこの段階では、露出したシリコン基板の保護や汚染などが目的であるから、約1000Aもあれば良い。尚、図6に示すようなイオン注入法の場合には、シリコン基板1200に絶縁膜を形成してイオン注入を行っても良いので、既に絶縁膜が存在する場合にはここで再度絶縁膜を形成する必要はない。絶縁膜1212の形成方法として、酸化、窒化、酸窒化、CVD法やPVD法による積層などがある。また、前述したイオン注入層やプリデポ層を形成後のアニールや拡散処理と兼用して絶縁膜形成を行なっても良い。
次に、図5(h)に示すように、第2面に感光性膜1214(1214−1、1214−2)をパターニングする。このパターニングは第2面溝Qを形成するためであるから、第2面溝Qをあけるべき領域を窓開けする。第1面溝Oの領域は通常はエッチングしないので、図5(h)に示すように、第1面溝O1の領域は感光性膜1214−1で、第1面溝O2の領域は感光性膜1214−2でカバーする。次に感光性膜1214をマスクにして絶縁膜1203をエッチングする。このエッチング法はWET法またはDRY法であるが、この後の第2面溝Qのエッチング時のサイドエッチングやエッチングばらつきを抑えるために、サイドエッチングの小さなエッチング、好適には感光性膜1214に忠実なエッチングが良い。たとえば、RIE等の異方性エッチングを用いる。尚、感光性膜1214がシリコン半導体基板1201に対して密着性等の問題がなくパターニングできることや第2面溝Qをエッチングするときに感光性膜1214がなくならないなどで絶縁膜がなくても良ければ、絶縁膜1203を除去してから感光性膜1214を形成しても良い。しかし、絶縁膜が必要であって、絶縁膜1203だけの厚みで不足であれば、あらたに絶縁膜を形成してから感光性膜1214を形成しパターニングしても良い。
次に、図5(i)に示すように、感光性膜パターン1214および絶縁膜パターン1203(1203−1、1203−2)をマスクにしてシリコン基板1200をエッチングし、第2面溝Q(Q1、Q2、Q3)を形成する。このエッチングでは、図4において説明したように、第1面溝Oと第2面溝Qとの間の側壁1216(1216−1、1216−2、1216−3、1216−4)の厚みをできるだけばらつきを少なく形成することが重要である。特に容量(1216−2、1216−3)を構成する側壁の厚みを精度良く形成する。(尚、隣接して容量を形成することもできるので、Q1とQ3もQ2と同様に容量空間を作ることもできる。その場合には、1216−1や1216−4の厚み精度も非常に重要となる。)従って、第1に感光性膜1214と第1面溝Oとの位置合わせを精度良く行なう必要がある。この位置合わせ精度を高める方法として前述したように種々の方法がある。第1面溝Oの底壁1218(1218−1、1218−2)は非常に薄くなっているので、この底壁を透過できる波長を持つ光や電磁波(X線、γ線など)や粒子線(電子線やα線など)を第1面側から照射し第2面側で受けて位置合わせが可能である。特に照射する光や電磁波の波長や強度を調整すれば、感光性膜1214の感光性に影響を与えずに位置合わせができる。さらには、音波なども利用できる。
また、シリコン基板1200のサイドエッチングを抑えるとともに、エッチングばらつきを少なくする。第2面溝の深さは深い方が容量値を大きくすることができるので深い方が望ましいが、深くなればなるほどエッチングばらつき量も増えて来るので、エッチングばらつきやサイドエッチング量の小さなエッチン方法で行なう。また、深さ方向についてもエッチング速度ができるだけ速くかつエッチングばらつきの少ないエッチング方法で行なう。また、エッチングのマスクとなる感光性膜1214とエッチングされる材料(ここでは、シリコン)とのエッチング選択比が大きいエッチング方法で行なう。これらの条件を満足するエッチング方法としてボッシュ法やクライオ法やアルバック法によるエッチングがあり、その他の種々のエッチング方法も種々開発適用されている。本発明においてはこれらの方法を適宜選択して使用できる。
上述した精度の良い感光性膜1214の合わせ込みやサイドエッチングの小さなエッチング方法およびエッチングバラツキの小さなエッチング方法などによって、容量を構成する側壁1216(1216−2、1216−3など)を非常に薄く作成することができる。(これらは、容量成分の電極となる。)たとえば、10μm、好適には7μm、もっと好適には5μm、より好適には3μm、さらに好適には1μmにすれば非常に小さな圧力差まで検出できる。すなわち、側壁1216(1216−2、1216−3)は小さな圧力差でも変形しやすくなる。また、容量成分としての電極間距離(第2面溝Q2等の幅)も小さくすることができ感度の良い容量変化を検出することができる。(電極間距離が小さくなると、少ない変形量でも容量変化が大きくなる。)尚、容量成分を構成しない部分(たとえば、第1面溝O1の側壁1216−1や底壁1218−1、第1面溝O2の側壁1216−4や底壁1218−2)はもっと厚くできる。従って、容量成分を構成しない部分はパターニング許容度やエッチング許容度を持たせることができる。(また、これらの部分を厚くすることにより、第1面溝の強度を大きくすることができる。)
この実施形態において特に重要な点は、この第2面溝Qの形成時のエッチングにおいて、低濃度基板1202に達するまでエッチングし、深さ方向に関して高濃度シリコン基板1201を完全にエッチングすることである。しかし、低濃度基板1202内に第2面溝の底部QB(QB1、QB2、QB3)が存在するので、第1面溝Oは低濃度基板1202により支持されている。これにより、容量を構成する対向電極(たとえば、1216−2と1216−3)は高濃度基板1201内では完全に離間していて、低濃度基板内1202内では低濃度領域をそれらの間に挟んでいる(すなわち、絶縁膜1204の下の低濃度領域1202には高濃度不純物層1210は形成されない)ので電気は流れない。容量の領域を構成する第2面溝Q2の部分を見ると、高濃度基板1201の厚みをn1、低濃度基板1202の厚みをn2、基板1200のエッチング量をn3とすればn3>n1となるようにエッチングし、これを満足したときにエッチングを終了して第2面溝を形成する。このときに、n2+n1>n3でなければならない。第1面溝Qはエッチングされた後の残っている基板1202によって支持されているので、充分な寿命と信頼性がなければならないので、一定の厚みが必要となる。この厚みは、通常20μm以上であるが、使用環境によっては、さらに厚くしなければならないし、もっと薄くても良い場合もある。深さ方向のエッチングばらつきも極力小さくしなければならない。このばらつき量をエッチング量のΔg%とすれば、確実に高濃度基板をエッチングするには、(n3−n3*Δg/100)>n1、(n3+n3*Δg/100)<(n1+n2)とする。現状のエッチング法ではΔgは約1〜10%であるから、この分を考慮する必要がある。Δgが約5%の場合には、n1が200μmとするとn3>211μmであり、n3はこれ以上の場合は小さい方が良いので、215μmのエッチングを行うとすれば、n1+n2>226μmとなる。低濃度基板の強度を保つには20μm以上必要とすれば、n2>46μmとなる。最初の基板厚みもばらついているので、それらも考慮する必要がある。以上から、この例では、基板厚みばらつきを考慮せずに、n2を約50μmとすれば良い。(あるいは、これ以上)当然のようにばらつきの小さい手法を実現すれば、基板1202の厚みをかなり薄くできる。
次に、図5(j)に示すように、感光性膜1214をリムーブした後、必要により第2面溝Qの内壁のダメッジや汚染などの除去のために、第2面溝内壁や、その他の部分を洗浄等行い、さらにそれらの目的に加えて、第2面溝Qの保護のために絶縁膜1220(1220−1、1220−2、1220−3)を形成しても良い。次に第1面側で、絶縁膜1210の所望の部分にコンタクト孔1222(1222−1、1222−2)をあけて、さらにその部分に導電体1224(1224−1、1224−2)を積層させ、さらにその導電体1224に接続する導電体膜を付けてパターニングし電極・配線1226(1226−1、1226−2)をパターニングする。これらのパターニングは通常のフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術を使用できる。(導電体膜1224と1226は兼用できる。)電極・配線1226は別の場所に伸ばして他の容量或いは他の素子(抵抗、トランジスタ、ICなど)と接続することもできるし、他の配線・電極と接続しても良い。或いは、図4に示すように蓋などをつけても良いし、保護膜でカバーしても良い。電極・配線1226−1は導電体1224−1および高濃度不純物拡散層1210−1を通じて第1面溝部O1の側壁1216−2へ接続する。側壁はその上部を除いて高濃度不純物(低抵抗)半導体基板1201である(側壁の上部は高濃度不純物拡散層が形成されている)から、これらの電位は同電位となる。一方、電極・配線1226−2は1224−2および1210−2を通じて第1面溝部O2の側壁1216−3へ接続する。側壁はその上部を除いて高濃度不純物(低抵抗)半導体基板1201である(側壁の上部は高濃度不純物拡散層が形成されている)から、これらの電位は同電位となる。電極・配線1226−1と電極・配線1226−2は低濃度不純物基板1202により電気は流れないので、容量を構成する側壁電極1216−2と1216−3との間で容量空間第2面溝Q2の容量を検出することができる。
以上のようにして、電極・配線1226−1と1226−2の間で、第2面溝Q2を空間領域(空間成分)とした容量素子を形成できる。このような容量素子を複数並列におよび/または直列につないで行くこともできる。このつなぎかたは、不純物拡散層1210でつなげても良いし、高濃度不純物基板でつなげても良い。ただし、このつなげ方には限度がある(第2面溝Qによる高濃度基板1201の分離や絶縁膜1204の下に存在する低濃度不純物領域などにより、つなげることができない場合がある)ので、そのときは配線・電極1226によって接続することができる。
図7に示す実施形態は、図5に示す実施形態と同様に、低濃度不純物基板および高濃度不純物基板の二種類の濃度を有する基板が接合した複合基板を用いる。図7(a)および図7(b)に関しては、図5(a)および図5(b)と同様であるから、その説明を省略する。図7(c)に示すように、この実施形態では、第1面溝Oは第2面に貫通する貫通溝である。(溝の定義とは少し意味合いが異なるが、これを第1面貫通溝R(R1、R2)と称する。後の説明で溝となることが分かる。)図5に示す第1面溝Oは、第2面には達しないので基板1200のエッチングを途中で終了する必要がある。この方法としては、エッチング速度をできるだけ一定にして、かつばらつきも小さくし、時間管理でエッチングを行う方法である。たとえば、エッチング速度をr0として、一定時間t1だけエッチングすると、第1面溝深さはr0*t1となる。エッチングばらつきをエッチング量のf%とし、第1面溝Oの底壁の厚み(最低限残しておくべき量)をjとすると、基板1200の厚みはr0*t1*(1+f/100)+jとなる。j=20μm、f=5%、第1面溝深さを300μmとすれば、基板厚みは335μmとなる。fが大きくなれば当然基板厚みを厚くする必要がある。このように常にエッチングばらつきを考慮して基板厚みを計算し、容量の設計をしなければならない。すなわち、第1面溝深さにはエッチングばらつきを考慮せざるを得ない。
そこで本実施形態では、エッチングばらつきを考慮しなくても良い構造と方法を提供する。本発明の実施形態では、基板1200を貫通して貫通溝を形成するので、第1面貫通溝のエッチングばらつきを考える必要がない。すなわち、貫通溝の深さは基板1200の厚みと同じとなる。(厳密には、第1面および第2面上に絶縁膜1204および1203等を形成する場合があるので、その分を加えたものとなる場合がある。絶縁膜を用いなければ、基板1200の厚みと同じくなる。)第2面側に絶縁膜1203を形成する場合には、第1面貫通溝がこの絶縁膜1203に到達したときに、この絶縁膜1203を垂直にエッチングしていくためにエッチング条件を変更した方が良い場合もある。第1面貫通溝の側壁の厚みをできるだけ一定とするために、開口1206(1206−1、1206−2)のサイズに可能な限り忠実にエッチングし、第1面貫通溝の側壁は第1面および第2面に対して可能な限り垂直にエッチングする。貫通溝であるために、必ずしも第1面からエッチングする必要はなく、第2面からのエッチングでも良い。従って、第2面側にもエッチングパターンが形成されるので、第2面溝形成のときには、感光性膜の位置合わせ精度が飛躍的に向上する。
次に図7(d)に示すように、感光性膜1205をリムーブし、新たな感光性膜1208(1208−1、1208−2、1208−3)をパターニングすることは、図5(d)と同様である。次に図7(e)に示すように、この感光性膜1208をマスクとして下地の酸化膜1204をエッチングすることも、図5(e)と同様である。次に図7(f)に示すように、高濃度不純物層1240(1240−1、1240−2、1240−3、1240−4)を形成することも、図5(f)と同様である。図7(f)では、高濃度不純物層1240は、貫通溝の下部にも当然形成される。ただし、この下部領域は高濃度不純物を有する低濃度基板1201であるから、この領域に高濃度不純物層が形成されても特に問題はない。このように、第1面の絶縁膜がない部分および貫通溝の内壁全体に不純物層が形成される。
また、図6に示した回転イオン注入も用いることができる。この場合に、第1面貫通溝の下部までイオン注入する必要がなく、低濃度基板1202の領域部分に確実にイオン注入できれば良いことも図6に示した場合と同様である。
次に、図7(g)に示すように、露出したシリコン上に絶縁膜1242(1242−1、1242−2、1242−3、1242−4)を形成する。これも図5(g)と同様であるが、貫通溝の下部にも絶縁膜を形成する。次に、図7(h)に示すように、第2面に第3基板1362を接合する。第3基板1362は、高濃度不純物基板1201が露出している(たとえば、絶縁膜1203がない)場合においてこれに第3基板1362を直接接合するときは、絶縁基板である必要がある。何故なら、高濃度不純物基板1201と第3基板1362が電気的に導通してしまう。高濃度不純物基板1201に絶縁膜1203等が形成されてこの絶縁膜1203等によって高濃度不純物基板1201と第3基板1362が電気的に導通しない場合には、第3基板1362は導電体基板であっても良いし、半導体基板であっても良い。もちろん、絶縁基板であっても良い。第3基板は、好ましくは位置合わせする光等に対して透明であると良い。このことは肉眼では不透明でも位置合わせする光等を第1面側から照射してこの基板を透過すれば、貫通溝Rの位置を正確に知ることができるので、この後の第2面溝形成用の感光性膜形成パターンの合わせ精度を飛躍的に向上することができる。肉眼でも第2面側から貫通溝Rを観察したければ、可視光に透明な基板とすれば良い。たとえば、ガラス基板、石英基板や透明プラスチック基板が良い。尚、第3基板として導電体基板を用いれば静電気対策ともなる。
ここで、第2面に第3基板を1362を接合する方法について説明する。第2面に絶縁膜1203がない場合において、第3基板がガラスであれば半導体基板1200と陽極接合が可能であり、強固に接合できる。低濃度不純物基板1202に高濃度不純物(拡散)層1240を形成した後にガラス基板1362を接合すれば、この後で、500℃以上の高温処理をしないプロセスを取ることができるので、ガラス基板とシリコン基板の熱膨張差などによるガラス基板とシリコン基板の接合を破壊するプロセスを取らなくても良い。従って、第1面貫通溝Rの底に付着したガラス基板1362が離れることはないし、かなりの圧力差まで接合が破壊することはない。第2面に絶縁膜がある場合でもシリコン酸化膜(SiOx膜)以外の絶縁膜(SiNx膜など)であれば、陽極接合が可能である。(将来的にはシリコン酸化膜とガラスとの陽極接合も可能となると思われる。)半導体基板1200の第2面にシリコン酸化膜1203が存在する場合には、このシリコン酸化膜をエッチングすれば良い。このエッチングはドライエッチングでもWETエッチングでも使用できる。その後に、ガラス基板1362を第2面に陽極接合すれば良い。接着層を用いても第2面側に第3基板1362を付着することができることは前述の通りである。
次に図8に基づいて、半導体基板1200に第3の基板を接合する一般的方法について説明する。第3基板はガラス基板でもセラミック基板でもプラスチック基板でも導電体基板でも、基本的にはどんな基板でも良い。図8(a)に示すように、半導体基板の第2面側に接着層1361を形成する。この形成方法としては、半導体基板の第2面側にスプレー方式で塗布したり、接着シートを貼りつける方法がある。これらも本発明には使用できるが、接着層が貫通溝Rに入り込むおそれがある。接着層が余り入り込むと容量特性を悪くするのでできるだけ入らないようにする。接着層を貫通溝Rに余り入らないようにするには、塗布法よりはシート法がコントロールしやすい。フォトリソ法で取り除いても良い。また感光性膜を接着層として使用すれば、フォトリソ法を用いて貫通溝Rの部分の接着層(感光性膜)を取り除くこともできる。また、スタンプ法を用いて接着剤(液)へ第2面を接触させて接触面だけに接着層をつけることができるので、貫通溝Rの内部に接着層が入り込むのを防止できる。
次に、図8(b)に示すように、第3基板1362を貼りつけたプレート1364を第2面に押しつけて、第2面の接着層を介して第3基板1362を接着させる。プレート1364に第3基板1362は接着層(第2接着層)1363に接着している。第2面の接着層1361に対して第3基板1362が強固に接着する温度(この温度をT1とする)以上の温度や光(或いは電磁波)を照射して第3基板を半導体基板1200(或いは、絶縁膜1203)へ接着する。接着層1361が光を照射して第3基板と半導体基板を接着し硬化するタイプである場合には、第3基板1362もプレート1364も当該光を透過する材料とする。また、接着層1361がT1以上で第3基板と半導体基板を接着し硬化するタイプである場合には、接着層1361は熱硬化性の接着樹脂とする。一方、第2接着層1363はある温度(この温度をT2とする)以上で接着性を失い軟化する熱可塑性接着性樹脂とする。T1<T2であるような樹脂を選定することにより、接着層1361に第3基板1362を接着させたプレート1364を押しつけた後に、T1とT2の間の温度で熱処理することにより、第3基板1362は(プレート1364とともに)強固に半導体基板1200に付着する。この強固な付着が行なわれた後に、T2以上の温度に上げて熱処理をすることにより、第3基板1362とプレート1364の接着力は小さくなる。その状態で図8(c)に示すように、プレート1364を離せば第3基板はプレートから離れ半導体基板に強固に付着した状態になる。
図8に示す基板の接着方法は、第3基板1362と半導体基板1200を貼り合わせる前において、第3基板1362とプレート1364は第2接着層1363を介して強固に接着しているので、第3基板1362と半導体基板1200を強固に貼り合わせるまで、第3基板1362と半導体基板1200との位置ずれは殆ど発生せず、精度の高い貼り合わせが可能である。従って、第3基板にパターンが形成されている場合でも、それらのパターンと半導体基板のパターンとの位置ずれも非常に小さくできる。しかし、第3基板にパターンが形成されていない場合など、半導体基板との精度の良い貼り合わせをする必要がないときには、第3基板1362とプレート1364との強固な接着は必要がないので、第2接着層1363は接着テープのような接着力がそれほど強固でないものでも使用できる。またその場合には、プレート1364と接着層1363との付着は真空引きや静電力で行なうこともできる。さらに、第3基板がある程度の強度を有していれば接着層1363を使用せずに直接プレート1364へ真空引きや静電力により付着させて、半導体基板へ付着しても良い。その場合は、真空引きや静電力をなくせば第3基板1362がプレート1364から離れるので、取り扱いが簡単である。さらに、第3基板1362が磁石に付着するものであれば、プレートに電磁石機構を持たせれば、電磁力をコントロールすることにより簡単に第3基板をプレートに付着させたり離したりすることが可能となる。このような第3基板としては鉄、ニッケル、コバルトやこれらの合金など種々の磁性体材料を使用できる。さらには、これらの材料に絶縁材料等や保護膜を被覆したものも使用できる。(導電材料の場合にも、絶縁材料を被覆した第3基板を用いれば、半導体基板1200に直接付着することができる。)
上述した方法を使えば、第3基板を非常に薄くできるので、半導体基板1200などに第3基板を付着させた後における第2面溝形成の感光性膜のパターニングも精度良く行なうことができる。すなわち、透明基板の場合には直接第2面側から直接位置合わせができるが、透明基板でなくとも前述したように第1面側から第3基板を透過できる光や電磁波や音波を出したりすれば、第1面貫通溝Rに対して第2面溝の感光性膜パターンを精度良く合わせることができる。或いは、裏側から第2基板側へ第2基板の厚み程度を通過して第1面貫通溝の底から反射して来る光や電磁波や音波を使えば、第1面貫通溝Rに対して第2面溝の感光性膜パターンを精度良く合わせることができる。また、第2面溝形成のエッチングのときに第3基板を最初にエッチングしなければならないので、薄い第3基板の場合には、第3基板のエッチングも容易にしかも精度良くパターンに忠実に行なうことができる。この結果、第2面溝も非常に精度良く形成することができ、本発明の容量を精度良く形成できる。
第3基板を非常に薄くする方法として、第3基板1362をプレート1364に貼りつけた状態(図8(a)の下側の状態)で、第3基板の表面からエッチングすれば良い。たとえば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)を用いて薄くできる。或いは、ドライエッイングやWETエッチングや通常のBG(Back Grind)法も用いることができる。現状のCMP法によれば、ガラス基板やシリコン基板を約20μmの厚み程度は問題ないので、将来はさらに薄い基板も作成できる。このように非常に薄くなった基板は、単独では取り扱いが困難であるが、図8に示した方法では、プレート1364に貼りついているので、通常の取り扱いで半導体基板1200等に付着できる。半導体基板1200等に強固に付着した後は、プレートから薄い第3基板を離しても第3基板が変形したり位置ずれを起こすことはない。或いは、第3基板1362を半導体基板1200に貼りつけてから、第3基板を薄くしても良い。ただし、薄くする方法は同じであるが、工程を付加することになるので、容量作成プロセス工程が長くなる。しかし、(薄くなった第3基板を付着させる工程を行うことなく)薄くなった状態でそのまま次の工程に進ませることができるので、プロセスとしては安定する。
次に図7(i)に示すように、第2面溝を形成するための感光性膜1366(1366−1、1366−2)をパターニングする。第2面溝Qを形成するときに、第1面貫通溝Rと第2面溝Qの間に側壁も形成される。従って第1面貫通溝Rをエッチングしないように第1面貫通溝Rの領域を感光性膜1366(1366−1、1366−2)でカバーする。前述したように、第3基板が透明の場合には第1面貫通溝Rに直接この感光性膜1366のパターニングが可能であるから、精度良く感光性膜1366を合わせることができる。第3基板が透明でなくても第3基板を薄く(たとえば、50μm以下、好適には30μm以下、もっと好適には20μ以下、さらに好適には10μm以下)すれば、光や電磁波や音波をある程度透過できるので、第1面貫通溝Rに感光性幕1366のパターンを合わせることができる。従って、現状でも0.5μm以下、好適には0.3μm以下、もっと好適には0.2μm以下、さらに好適には0.1μm以下の合わせ精度を実現できる。
次に図7(j)に示すように、感光性膜1366のパターンを用いて、下地の第3基板1362をエッチングする。可能な限り感光性膜1366のパターンに忠実であるようにエッチングする。すなわち、第3基板1362をほぼ垂直にエッチングする。第3基板がガラスや石英の場合にはシリコン酸化膜(SiO2)が主成分であるから、それらをエッチングするとともにサイドエッチングの小さいエッチング法で行う。たとえば、CF4、C2F6、C4F6、CHF3、SF6、塩素系ガス等のガスを用いたRIE等のドライエッチングがある。第3基板がシリコン基板であるときも同様のガスで垂直にエッチングできる。(ただし、エッチング条件は異なるであろう。)他の種類の材料でできた基板の場合には、その材料に合わせたエッチング条件を使用すれば良い。次に図7(j)に示すように、題3基板の下地の絶縁膜1203をエッチングする。この絶縁膜1203の厚みは厚くても約2μm程度であるから、第3基板1362の厚みに比べると薄いが、やはりサイドエッチングの小さい条件で垂直にエッチングする。第3基板1362と絶縁膜1203の材質が同じであれば同一条件でエッチングできる可能性があるが、材質が異なればエッチング条件を変える必要があるかも知れない。第3基板1362と絶縁膜1203の間に接着層が存在すればその接着層のエッチングも必要となる。絶縁膜1203がない場合には、接着層(あれば)と第3基板1362のエッチングだけである。
次に図7(k)に示すように、第2面溝Qを形成するためのエッチングを行う。やはりサイドエッチングの小さい垂直なエッチングを行うことが重要である。図5において説明したように、第2面溝Qの深さ方向において高濃度基板1201を完全にエッチングする必要がある。(尚、残っていても電気的に導通しなければ良いという考え方もある。)すなわち、第2面溝の底1369は図7(k)で点線で示す高濃度基板1201の位置1368よりも深くする。これまでのプロセスにより、高濃度基板1201から低濃度基板1202へ不純物が拡散した場合には、その部分も含めてエッチング除去する必要がある。すなわち、不純物が拡散して低濃度領域で反転した領域も含めてエッチングする。従って、熱処理、特に拡散を大きくする熱処理(約800℃以上)はできるだけ少ない方が拡散を少なくするためには好ましい。高濃度基板1201と低濃度基板では不純物の種類が逆タイプとなっているので、これを利用してエッチングの終点を検知できる。たとえば、N+基板上にP−基板がある場合は、N+側の不純物であるP、As、Sbなどを検出して、これらが殆どなくなったときに高濃度基板1201をエッチングできたと判定できる。逆にP+基板上にN−基板がある場合には、P+側の不純物であるBなどを検出して、エッチングの終点を判定できる。
このような点を考慮すれば、高濃度基板または低濃度基板として異なる半導体基板を用いることもできる。たとえば、高濃度シリコン半導体基板上にGe半導体基板を接合すれば、シリコンを検出しながらエッチングをしてシリコンの量が大きく減少したときやGeを大量に検出したときにエッチング終点であると判定できる。また、高濃度シリコン半導体基板上にGaAs基板を接合すれば、シリコンを検出しながらエッチングをしてシリコンの量が大きく減少したときやGa或いはAsを大量に検出したときにエッチング終点であると判定できる。本発明で重要な点として、高濃度半導体基板1201は導電体基板であれば良く、必ずしもシリコン半導体や他の半導体基板でなくとも良い。たとえば、金属等の導電体基板の上に低濃度のシリコン半導体または他の半導体でも良い。その場合には、金属元素を検出してその検出量が少なくなったときにエッチング終点と判定できる。
次に図7(l)に示すように、感光性膜1366をリムーブして第1面側に絶縁膜1372を形成する。この第1面側の絶縁膜1372はこの上に電極や配線を形成する際の層間絶縁膜となるものである。既に存在する絶縁膜1242がある程度厚ければ、たとえば約0.5μm以上あれば、この絶縁膜1242を層間絶縁膜に使用できる場合があるので、その場合には絶縁膜1372は必ずしも必要はない。あるいは、絶縁膜1372第3基板1362を付着する前に積層することもできる。
この絶縁膜1372は、酸化法や窒化法よりも低温でしかも厚く形成できるCVD法或いはPVD法が良い。既に第3基板1362を半導体基板1200に付着させているので、熱処理温度が高いと熱歪により欠陥やはがれなどの問題を生じる可能性がある。CVD法の場合には、たとえばSiH4ガスとO2ガスを300℃〜500°Cで反応させることによりSiOx膜を積層できる。光CVD法やプラズマCVD法を用いれば成長温度をさらに下げることもできる。500℃以下の熱処理温度であれば熱歪もそれほど大きくはないので、第3基板1362を半導体基板1200の接合による欠陥やはがれ等の問題の発生は殆どない。容量の対向電極となる第1面溝Rの側壁1381(1381−3)および1382(1382−1)の厚みは圧力差による変形に影響する。すなわち、厚くなると変形しにくくなるので、感度を高めるには薄い方が良い。従って、第1面溝Rの溝側から側壁1381(1381−3)や1382(1382−1)に積層される絶縁膜1242や1372の厚みは薄い方が良い。一方、第1面表面上の絶縁膜1242や1372の厚みは層間絶縁膜としての機能からある程度厚い方が良い。CVD法やPVD法による絶縁膜は、溝部の内部の成長速度は表面に比較して遅くなるので、この要求を満足する方向となっているが、積層条件によっても異なるので、そのことも考慮してCVD法やPVD法の積層条件を選定すれば良い。尚、電気的絶縁性から考えて層間絶縁膜の厚みは約0.5μmあれば良い。
さらに、第2面溝Qの内部にも、汚染や保護などのために半導体基板1200が露出しないように絶縁膜1384を積層する。この絶縁膜1384もより低い温度で絶縁膜を成長可能なCVD法やPVD法が良い。絶縁膜としてシリコン窒化膜(SiNx膜)を積層する場合は、たとえばSiH4とNH3を約200℃〜400℃の温度でプラズマCVD法により反応させることができる。絶縁膜としてシリコン酸窒化膜(SiNxOy膜)を積層する場合は、たとえばSiH4とNH3とN2Oを約200℃〜400℃の温度でプラズマCVD法により反応させることができる。絶縁膜としてシリコン酸化膜(SiOy膜)を積層する場合は、たとえばSiH4とN2Oを約200℃〜400℃の温度でプラズマCVD法により反応させることができる。第2面溝Qの内部に絶縁膜1384を形成するときも側壁1381(1381−3、1382−1)上に積層される絶縁膜の厚みは余り厚くしないようにする。好適には約0.2μ以下、もっと好適には約0.1μm以下とする。尚、汚染対策や保護をする必要がなければ、絶縁膜1384を積層しなくても良い。
次に図7(m)に示すように、第1面表面の絶縁膜1242および絶縁膜1372の所望部分にコンタクト孔1374(1374−1、1374−2)を形成して、その後、そのコンタクト孔に導電体1375(1375−1、1375−2)を積層する。さらに導電体層1376を積層して所望のパターニングを行い、電極・配線1376(1376−1、1376−2)を形成する。このコンタクト孔1374は容量を構成する電極に接続する不純物拡散層に接触するように形成する。たとえば、側壁1381−3からつながる不純物拡散層1240−2に接続するようにコンタクト孔1374−1を形成する。また側壁1382−1からつながる不純物拡散層1240−3に接続するようにコンタクト孔1374−2を形成する。コンタクト孔1374の形成方法として、フォトリソ法により感光性膜をパターニングしてコンタクト孔1374を形成したい部分を開口し、その開口部から絶縁膜1242や1272をエッチングする。そのコンタクト孔に導電体膜をCVD法やPVD法で積層してコンタクト孔に導電体膜1375を形成する。導電体膜としては、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、タングステン(W)、モリブテン(Mo)、チタン(Ti)、金(Au)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の金属やこれらの合金、或いは、これらの金属シリサイド(たとえば、Wsix、MoSix、TiSix)、高濃度不純物を含む導電性多結晶(或いはアモルファス)シリコン膜などがある。これらの導電体膜を複数積層して用いても良い。またメッキ法によりコンタクト部に金属(合金を含む)を形成しても良い。コンタクト部の導電層を平坦化したいときは、メッキ法でコンタクト部を埋めたり、或いは厚く導電体膜を積んでコンタクト部を埋めた後でエッチバック法や研磨法で平坦化することもできる。次に、導電体膜1376をコンタクトの導電体膜1375上に積層して、所望の配線・電極1376(1376−1、1376−2)をフォトリソ法を用いて形成する。この導電体膜1376もコンタクト部の導電体膜1375と同じような上記に示した導電体膜であり、その成長方法も類似の方法で良い。従って、コンタクト孔の導電体膜1375と導電体膜1376は兼用可能である。以上により、容量素子が完成する。すなわち、電極1376−1と電極1376−2は互いに導通しないので側壁電極1381−3とこれと対向する側壁電極1382−1との間で容量空間Q2により決定される容量を測定できる。
第1面側からP1の圧力がかかると、圧力P1は第1面貫通溝R(R1、R2)にも同じ圧力がかかる。第2面側からP2の圧力がかかると、圧力P2は第2面溝Q(Q1、Q2、Q3)にも同じ圧力がかかる。第1面貫通溝Rと第2面溝Qの間の側壁1381や1382はP1―P2の圧力差によって変形する。特に容量素子を形成し容量電極でもある側壁1381−3およびそれと対抗する側壁1382−1は他の側壁の厚さに比べて薄くなっているので特に変形しやすく、これらの電極間の容量が圧力差P1−P2により変化する。この変化量を電極・配線1376−1および1376−2により検出できる。また、この電極・配線から得られる出力の変化をIC等の演算装置に接続すれば、逆に容量変化からP1−P2の圧力差が自動的に分かり、P1、P2のどちらかが既知であれば、他方の圧力も知ることができる。
図7(n)は第2面側にさらにプレート1386を取りつけた図である。第3基板1362の下面に付着した接着層(図示せず)を介して強固にプレート1386を接着する。或いは、プレートの種類によっては低温で直接接合を行うこともできる。非常に低い圧力(真空に近い圧力)でプレート1386を付着すれば、第2面溝Qの内部は、完全に閉じられた状態になり、真空に近い圧力を保持できる。すなわち、P2=約0MPaの圧力となり、P1の絶対圧力を測定できる。或いは、圧力P2の状態でプレート1386を第3基板1362に付着すれば、第2面溝Qはその圧力P2が保持される。この場合には、P2(一定圧力)を基準とした圧力P1を測定できる。プレート1386に第3基板1362に付着する前か、または付着した後で、圧力伝達孔1388を形成すれば、第2面溝側の圧力P2の圧力と第2面溝Qの圧力が同じにすることができる。また、このプレート1386は第2面溝を保護する役目も果たしている。プレート1386の材質は、ガラスやセラミックやプラスチック等の絶縁体、或いは第1面溝部と導通しなければシリコン等の半導体基板や金属等の導電体基板でも良い。さらにこのプレート1386に圧力伝達孔1388を作成すれば、外部からの圧力を第2面溝へ導入できる。
図7(o)は第1面側にさらにプレート1390を取りつけた図である。第1面上の絶縁膜1204、1242、1372の上に接着層(図示せず)を介して付着させる。接着層としては、通常半導体プロセスで用いられる種々の接着層を用いることができる。図7(n)で示した電極・配線1376上に接着層を介してプレート1390を付着させても良い。電極・配線をプレート1390の上に出す場合には、図7(o)に示すように、プレート1390を付着させてから、フォトリソ法を用いて、感光性膜をパターニングした後で、プレート1390、絶縁膜1372、1242をエッチングして不純物拡散層1240へ接続するコンタクト孔1394(1394−1、1394−2)を形成し、次いでこのコンタクト孔に導電体膜を形成し、さらに導電膜1396を積層して、フォトリソ法を用いて電極・配線1396(1396−1、1396−2)を形成すると良い。コンタクト孔の導電体膜は電極・配線1396と兼用して同時に積層することもできる。この電極・配線1396−1と1396−2は、それぞれのコンタクト孔内の導電体、およびそれぞれの不純物拡散層を通じてそれぞれの容量電極(側壁電極1381−3、1382−1)に接続しているが、この電極・配線1396−1と1396−2は電気的には接続していない。この電極・配線1396は適当に引きまわして、他の容量素子の電極や他の素子(コンデンサ、抵抗、IC、トランジスタ等)等と接続することもできる。また、この電極・配線1396の保護用として保護膜を形成することもできる。図7(o)に示すように、第1面貫通溝の開放端側(第1面側)のプレート1390に圧力伝達用孔1392(1392−1、1392−2)を形成することにより、第1面側の圧力P1を第1面貫通溝R内部の圧力と同じにすることができる。これにより、第1面側圧力P1と第2面溝内部の圧力P2との差圧を知ることができる。もし、この圧力伝達孔1392を形成しなければ、第1面貫通溝Rの内部圧力は、プレート1390を第1面に付着させたときのプロセス時の圧力が維持される。このようにプレート1390を取りつけることにより容量素子や第1面貫通溝が外部環境から化学的(汚染など)に、物理的に(機械的な力に対して)保護される。
図7に示す本発明の実施形態のプロセスでは、第3基板1362を第1面貫通溝Rを形成した後で第2面側に付着させていたが、第1面貫通溝をRを形成する前に第2面側に付着させて、その後のプロセスを行うこともできる。すなわち、複合基板1202の第2面側に第3基板1362を付着させる。第2面側に絶縁膜1203を積層せずに第2面側の基板1201に付着させても良い。付着方法はこれまで何度も説明した方法と同様である。次に第1面貫通溝形成用の感光性膜1206を第1面側の基板1202上にパターニングする。絶縁膜1204は必要がなければ形成しなくても良いのは前述の通りである。その後貫通溝Rを形成する。このとき、第3基板の材質をと基板1201の材質と異なるものを用いれば、導電体基板1201をかなりオーバーエッチングして基板(ウエハ)内全体の貫通溝の深さ方向における導電体基板1201を完全にエッチングしても、第3基板を余りエッチングしないようにすることが可能である。たとえば、導電体基板1201がシリコンで、第3基板1362がガラス基板であれば、シリコンとガラス(SiO2)のエッチング選択比を大きくできるエッチング条件でシリコンをエッチングすれば、かなりオーバーエッチングしてもガラス基板である第3基板1362は余りエッチングされない。しかもエッチングの終点検出も可能となる(たとえば、酸素Oを検出すれば良い)ので、余りオーバーエッチングする必要がなくなる。
この後のプロセスは図7に示すプロセスと同様のプロセスを行うことができる。ただし、第3基板1362が導電体基板1201に付着しているので、500℃以上のプロセスを極力とらないようにする。たとえば絶縁膜の形成はCVD法やPVD法で行なう。また不純物拡散はイオン注入法で行ない、打ち込んだイオンの活性化や拡散はランプアニールなどの短時間高温処理で行なう。このようにすれば、プロセス中に第3基板を導電体基板に付着させたことにより発生する問題(熱歪による欠陥発生や、基板剥離などの問題)を防止することができる。
図9は、図7に示した容量素子を用いた圧力センサー1250の模式図を示す。図7に示す容量素子1個を含む圧力センサーパッケージと考えると良い。図9(b)は平面図であり、図9(a)は図9(b)のA1−A2における断面(立面)図である。容量成分に関係ない第2面溝Q1やQ3は、容量に寄与する第2面溝Q2とつながっていて、第2面溝Q(Q1、Q2、Q3)は第1面貫通溝R(R1、R2)を取り囲んでいる。第1面溝Rの外側の側壁(容量に寄与する側壁電極以外の側壁)は容量に寄与する側壁よりも厚くして、圧力による変形を小さくした方が、容量特性への影響が小さいので、望ましい。第2面溝Q(Q1,Q2、Q3)を取り囲み、密閉空間としている半導体基板1201(1201−11、1201−12)は圧力センサーパッケージ1250の最外側にあって保護する役割を果たす。従ってある程度の強度を持たせるために、十分な厚みとする。たとえば、約50μm以上、もっと強度を上げるには約100μm以上、さらに強度を上げる場合には200μm以上とする。圧力伝達孔1388を形成した場合でも、これらの半導体基板1201(1201−11、1201−12)の外側の圧力と異なる場合もあるので、この外側圧力によって第2面溝Qの圧力が変動しないようにするためにもある程度厚くすると良い。約50μm以上、或いはそれ以上の厚みとすれば、第2面溝Qにかかる圧力P2と圧力センサーパッケージ1250の外側の圧力差によって変化することは殆どなく、容量素子の特性への影響も殆どない。図9に示すものが圧力センサーの1つのパッケージ(PKG)と考えることができる。
図9(b)は図9(a)を平面的に見たものであり、説明に不要な部分は省略している。図9(b)から良く分かるように、第1面貫通溝R(R1.R2)は側壁1381や1382を隔てて第2面溝Q(Q1、Q2、Q3)によって取り囲まれている。(第2面溝Q1、Q2、Q3はつながっている。)その第2面溝Qを圧力センサーパッケージ1250の保護部材となる半導体基板1201が取り巻いている。圧力センサーパッケージ1250の外形はスクライブライン(基板切断線)1254によって決まり、半導体基板1201とスクライブライン(基板切断線)1254の間には、高抵抗のシリコン半導体基板1252(半導体基板1202の一部領域)がある。この高抵抗のシリコン半導体基板1252の下に存在した低抵抗のシリコン半導体基板1201は第2面溝Qを形成したときに同時に除去されている。第2面溝Qを形成するときに除去しないときは、厚いシリコン基板1201もダイシングしなければならないためダイシング装置に負荷をかけるしスクライブする時間も長くなる。従って、第2面溝Qの形成時に除去しておくと良い。第2面溝Qの形成時に除去しない場合には、図9(b)で示す半導体基板1201と同じくなる。図9(b)には示されていないが、側壁1381、1382も半導体基板1201も、第1面側は高抵抗のシリコン半導体基板1202や1252、プレート1390に支持されていて、第2面側はプレート1386に支持されている。
図9(a)においては、第1面貫通溝R(R1、R2)は第3基板1362を介してプレート1386に付着しているが、プレート1386を付着する前に、第1面貫通溝溝R(R1、R2)に付着している第3基板1362をエッチング等によって薄くしておけば、第1面貫通溝(R1、R2)をプレート1386に付着させないようにすることができる。このようにすれば、第1面貫通溝(R1、R2)は外部からの衝撃や振動の影響を受けにくくなり、容量素子の精度も向上する。たとえば、図7(O)でプレート1386を付着する前に、たとえば感光性シートを第2面側に付着して、貫通溝R(R1、R2)の部分の感光性膜を露光法により除去し、第3基板1362を上部からエッチング(ドライまたはウエット)でエッチングすれば良い。ぞの時、貫通溝R(R1、R2)の外側や第2面溝の表面の絶縁膜などもエッチングされたら、それらの保護のために再度絶縁膜を積層すれば良い。
第2面溝Q2の幅(d)を約100μm、第1面貫通溝Rの幅を約50μm、第2面溝Q1およびQ3の幅を約100μm、それらを取り囲む半導体基板1201(1201−11、1201−12)の厚みを約100μmとすれば、圧力センサーPKGの幅は、約600μm(0.6mm)となる。圧力センサーの厚みや長さは容量素子の面積に関係するが、厚みを約400μm、長さを約600μmとすれば、半導体基板1200のサイズが6インチ(直径約150mm)ウエハから、約17000個以上の圧力センサーを得ることができ、非常に多数のPKGを多量に生産できる。図9に示す圧力センサー1250の第1面貫通溝Rの圧力伝達孔1392に測定したい圧力を連絡し、第2面溝Q2の圧力伝達孔1388へ基準となる圧力を連絡すれば、それらの圧力差によって側壁1381−3および1382−1が変化し、これらの電極間の容量が変動する。この容量変化が電極・配線1396−1および1396−2に現れるので、この電極・配線1395−1および1396−2をIC(演算回路を持つ)等に接続すれば、圧力に換算できる。
図5〜図9に示した実施形態において、低抵抗のシリコン基板1201の上にこれよりも薄い厚みを持つ高抵抗のシリコン基板1202が接合した構造となっている。この構造において、高抵抗のシリコン基板1202上にはMOSトランジスタやバイポーラトランジスタや抵抗素子やインダクタ素子や他の容量素子を形成することができるので、各種の演算機能を持たせたICも作成できる。従って、同じ基板の中に圧力センサーとICを搭載できるので、圧力センサー側の電極・配線(たとえば、1376)をIC側の電極・配線と接続すれば、1チップで圧力のセンシングと圧力計算を行う機能やその他の機能を持たせることができる。このように本実施形態は非常に応用範囲が広く、圧力センサー+周辺機能を搭載した超小型の圧力センサーデバイスを1チップ構成で実現できる。IC等には第1面(貫通)溝や第2面溝は必要はないので、第1面溝や第2面溝形成時にIC領域側を感光性膜等で被覆しておけば良い。絶縁膜や拡散層、コンタクト孔、導電体膜、電極・配線などは兼用できるので、余り工程増にならない。第3基板の付着も必要な部分だけに行えば良いし、或いはウエハ全体に付着させて後で除去することもできる。プレート1386や1390も必要な時に必要な場所に適宜付着させれば良いので、IC側に影響を与えないプロセスを適宜選択できる。
図10(a)は図9に示したものと同じ図であるが、電極1396−1と1396−2との間に発生する主要な容量Cを見たものである。すなわち、絶縁膜1204を挿んだ部分に生じる容量C13(電極間距離d13は絶縁膜1204の幅に近似する)、高抵抗基板1202における拡散層の間に生じる容量C12(拡散層間距離をd12とする)、第2面溝Q2に生じる容量C11(側壁電極間距離をd11とする)が主要容量である。C13=ε13*ε0*S13/d13(S13は電極面積)、C12=ε12*ε0*S12/d12、C11=ε11*ε0*S11/d11となる。(ε0は真空誘電率、ε12とε13はSiの比誘電率、ε11は第2面溝Qの空間の比誘電率である。)Cは近似的にC=C11+C12+C13である。これらの容量の中で変化するのはC11だけであるから、容量Cの変化によりC11の変化を把握できるが、他の容量C12やC13が比較的大きければ、容量Cの変化を読み取りにくくなる。(すなわち、感度が悪くなる。)C13のS13は小さい(拡散層1240の深さ(約1μm)に依存する程度である)が、d13が小さくなると影響が大となる。そこで、このC13の効果を小さくするために、d13を大きくすれば良いので、第1面溝Q2の上にくる拡散層1240をなくせば良い。すなわち、第1面溝Q2の領域となるべき部分の高抵抗基板1202の部分を絶縁膜1204でカバーすれば良い。同時にこの領域には拡散層1240はなくなるので、コンタクト孔1394や電極・配線1396もこの領域から別の場所(具体的には、第2面溝Q1およびQ3側など)に移動する。次に、C12も第2面溝Q2側にある拡散層1240をなくせば良い。そのためには、第2面溝Q2側にある貫通溝R(R1、R2)の側壁(特に高抵抗基板1202側)に絶縁膜をつけてこの領域にプリデポしないようにする方法や感光性膜をつけてイオン注入しないようにすれば良い。この結果、電極1396間(1396−1および1396−2)に発生する主要容量はC11だけとなる。尚、C12が残る場合には、高抵抗基板1202の厚みが影響し、シリコンの比誘電率ε12は11.8であるから、低抵抗基板1201の厚みが高抵抗基板1202の約10倍程度とすれば、第1面溝の容量C11と同程度の容量が入ることになる。
図10(b)の図は、容量空間となる第2面溝Q2の領域に拡散層1240を作成しない場合を示した図である。第2面溝Q2の上部にある高抵抗基板1202(1202−11)に絶縁膜1204を形成して、その部分の絶縁膜1204を残してプリデポをせず拡散層1240を形成しない。イオン注入法による場合には、この部分に感光性膜を形成して、イオンが第2面溝Q2の上部にある高抵抗基板1202(1202−11)に入らないようにする。この結果第2面溝Q2の上部にある高抵抗基板1202(1202−11)には拡散層1240(1240−2、1240−3)が形成されなくなり、図10(a)において説明したような容量C13が生じない。その代わりに、第1面貫通溝Rをはさんで第2面溝Q2と対向する第2面貫通溝Q1およびQ3側の上部にある高抵抗基板1202(1202−12、1202−13)の拡散層1240(1240−1、1240−4)の領域を広くして、ここにコンタクト孔1394(1394−12、1394−13)を形成し、導電体膜や電極・配線1396(1396−12、1396−13)を形成する。このようにして、第2面溝Q2の上部にある高抵抗基板1202(1202−11)に拡散層1240を作成しないようにできる。
次に図11に基づいて、図10(b)の構造を作成するプロセスを説明する。図11(a)〜(c)は図7(a)〜(c)と同じであり、第1面貫通溝R(R1、R2)を作成する。次に、図11(d)に示すように、感光性膜1205をリムーブした後、第2面溝Q2側の高抵抗基板1202(1202−11)の上面全体を被うように感光性膜1208(1208−2)を形成する。第2面溝Q1側の高抵抗基板1202(1202−12)の上面の貫通孔R1側は、図に示すように感光性膜1208(1208−1)が被う領域を狭くし、拡散領域が広くなるように感光性膜1208(1208−1)をパターニングする。第2面溝Q3側の高抵抗基板1202(1202−13)の上面の貫通孔R2側も、図に示すように感光性膜1208(1208−3)が被う領域を狭くし、拡散領域が広くなるように感光性膜1208(1208−3)をパターニングする。次に図11(e)に示すように、感光性膜1208をマスクにして絶縁膜1204をエッチングする。これにより、不純物拡散層を形成すべき領域のシリコン基板1202が(貫通溝R内の1201も)露出される。貫通孔R(R1、R2)内部も絶縁膜が除去される。この後、感光性膜1208をリムーブし、図11(f)に示すように、不純物層をプリデポし、熱処理を行い、拡散層1240(1240−1、1240−2、1240−3、1240−3、1240−4)が形成される。このように第2面溝Q2の上部の高抵抗基板1202の上面には拡散層1240は形成されない。その後図11(g)に示すように絶縁膜1242(1242−1、1242−2、1242−3、1242−4)を形成するのは、図7(g)と同様である。(絶縁膜1242がCVD法やPVD法による積層膜の場合には、絶縁膜1204上にも積層される。)以降のプロセスは図7と同じであるが、上述したように、第2面溝Q2の上部の高抵抗基板1202の上面には拡散層1240は形成されないので、コンタクト孔や導電体膜や電極・配線は、第2面溝Q1および第2面溝Q3の上部の高抵抗基板1202の上面における拡散層1240(1240−1、1240−4)の方に形成する。ここに形成しても貫通孔R1およびR2の内部で低抵抗領域がつながっているので、容量電極となる側壁電極に電気的に接続する。
尚、イオン注入法により拡散層を形成するときは、上述したように、図11(d)において感光性膜1208をパターニングした後に絶縁膜1204を除去しなくても良い。また感光性膜1208をリムーブせずにイオン注入しても良い。さらに、図11(c)において感光性膜1205をリムーブせずに、感光性膜1208をパターニングして、その後でエッチング等により不要な感光性膜1205を除去しても良い。
次に図12を用いて、第2面溝Q2側を向いている第1面貫通溝Rの側壁(特に上部の高抵抗半導体基板1202の側壁)に拡散層を形成しない方法について説明する。図12(a)、図12(b)、図12(c)は、図11(a)〜(c)と同じプロセスである。図12(c)に示すように、第1面貫通溝R(R1、R2)を形成した後、感光性膜1205をリムーブする。その後、図12(d)に示すように、第1面貫通溝R(R1、R2)の側壁に絶縁膜1260(1260−1、1260−2、1260−3、1260−4)を積層する。この絶縁膜は酸化膜(SiOx)、窒化膜(SiNx)、酸窒化膜(SiNxOy)などで、酸化法、窒化法、CVD法、PVD法などで積層する。尚、図には記載していないが、既に存在する絶縁膜1204や1203上にもある程度成長や積層する。次に図12(e)に示すように、感光性膜1208(1208−1、1208−2、1208−3)をパターニングする。このパターニングは、図11(d)に示す場合と同様に、第2面溝Q2が形成される領域の半導体基板1202の上面全体を感光性膜1208−2でカバーするが、第1面貫通溝R側にかぶさるように感光性膜1208−2をパターニングする。すなわち、感光性膜パターン1208−2が第1面貫通溝R1側にはみ出させて廂状部分(はみ出し部分)H(H1)を、第1面貫通溝R2側にはみ出させて廂状部分(はみ出し部分)H(H2)を形成するようにする。このような廂状部分Hを作成するためには、たとえば、シート状感光性膜を貼りつけてパターニングすると良い。第2面溝Q1やQ3側の貫通溝R(R1、R2)の側壁には、拡散層を形成するので図11(d)と同様で良く、廂状部分(はみ出し部分)は形成しない。次に図12(f)に示すように熱処理を行い感光性膜1208を軟化させて、感光性膜1208の廂状部分(はみ出し部分)H(H1、H2)を垂れさせて第1面貫通溝R(R1、R2)の上部となる第2面溝Q2側の半導体基板1202の側壁に積層されている絶縁膜1260(1260−2、1260−3)を感光性膜1208(1208−2)で被覆する。半導体基板1202の厚みとほぼ等しいか、それよりも長く感光性膜1208の廂状部分(はみ出し部分)H(H1、H2)をとれば、第1面貫通溝R(R1、R2)の半導体基板1202の領域を被覆することができる。感光性膜1208の厚みも考慮し熱処理を最適化して軟化で垂れやすくすれば、半導体基板1202の厚みより短い廂状部分(はみ出し部分)H(H1、H2)でも良い。尚、低抵抗半導体基板1201側にも感光性膜1208が被覆するのは特に問題ない。この領域は既に高濃度不純物低抵抗領域であるからである。
次に82(g)に示すように、感光性膜1208で被覆されていない部分の絶縁膜1204および1260をエッチング除去する。たとえば、絶縁膜がシリコン酸化膜のときには、フッ酸系溶液やフッ酸系スプレー液やフッ酸系気相を用いてエッチングする。或いは、シリコン酸化膜をエッチングできるガスを用いてドライエッチングを行う。このドライエッチングは、第1面貫通溝Rの内部、特に感光性膜1208で被覆されていない半導体基板1202の領域に積層した絶縁膜1260(1260−1、1260−4)をエッチングできる条件で行なう。すなわち、拡散層を形成すべき領域(半導体基板1202の表面側も)の絶縁膜を完全に除去する。半導体基板1201の第2面に積層されている絶縁膜1203をエッチングしたくなければ、この部分をエッチング種に接触しないようにすれば良い。装置上や取扱上で困難であれば、半導体基板1201の第2面に積層されている絶縁膜1203を被覆するように感光性膜やシート状テープを付着させるとかすれば良い。或いは、絶縁膜1204や1260と異なる絶縁膜1203として、絶縁膜1204や1260をエッチングできるが、絶縁膜1203をエッチングできない(エッチングしにくい)エッチング種を用いれば良い。たとえば、絶縁膜1204や1260がシリコン酸化膜(SiOx)である場合、絶縁膜1203をシリコン窒化膜(SiNx)とし、ウエットエッチングならフッ酸系エッチング液を用いれば良い。ドライエッチングでもそのようなエッチング種は多数存在する。次に、感光性膜1208をリムーブすると図12(h)に示すように、第2面溝Q2側における第1面貫通溝R(R1、R2)の半導体基板1202の側壁は絶縁膜1260(1260−2、1260−3)で被覆され、その上面も絶縁膜1204で覆われている。尚、感光性膜はリムーブせずに熱処理等により固化させて絶縁膜として残しておくこともできる。
次に図12(i)に示すように、図11(f)で説明したのと同様に、プリデポ(不純物の導入)を行い、さらに(または同時に)熱処理を行い不純物拡散層1240(1240−1、1240−2、1240−3、1240−4)を形成する。このとき、第2面溝Q2側における第1面貫通溝R(R1、R2)の半導体基板1202の側壁は絶縁膜1260(1260−2、1260−3)で被覆され、その上面も絶縁膜1204で覆われているので、これらの領域には不純物拡散層は形成されない。この領域に形成されなくても第1面貫通溝R(R1)は側壁がつながっているので、拡散層1240(1240−2)は低抵抗半導体基板1201を通じて、第2面溝Q1側の第1面貫通溝R1の側壁拡散層1240(1240−1)から高抵抗半導体基板1202の側壁および表面の拡散層1240(1240−1)へつながっているので、電気的に導通が取れる。第1面貫通溝R(R2)の方も側壁がつながっているので、拡散層1240(1240−3)は低抵抗半導体基板1201を通じて、第2面溝Q3側の第1面貫通溝R2の側壁拡散層1240(1240−4)から高抵抗半導体基板1202の側壁および表面の拡散層1240(1240−4)へつながっているので、電気的に導通が取れる。
この後のプロセスは図11で説明した内容と同じであり、最終的に図12(j)で示すように、(この図は、図10(b)の図と類似する図である)第2面溝Q2側の高抵抗半導体基板1202(1202−11)には拡散層1240は形成されない。この結果、電極1396−12と1396−13の間に生じる電気容量Cは、側壁電極1381−3と1382−1との間に発生する容量であり、C=C11=ε11*ε0*S11/d11となり、C12およびC13は考えなくて良い。従って第2面溝Q2によって生じる空間(電気)容量がそのまま容量として反映することになるので、感度がかなり向上する
尚イオン注入法を用いて不純物導入を行う場合には、図12(g)において、感光性膜1208(1208−2)が側壁に積層した絶縁膜1260(1260−2、1260−3)を被覆した後で行なうこともできる。イオン注入の加速エネルギーを調整することにより、感光性膜1208で被覆されていない領域にはイオン注入により不純物元素を導入できる。この時も回転イオン注入法を用いる。特に、第2面溝Q2側における第1面貫通溝R(R1、R2)の半導体基板1202の側壁は絶縁膜1260(1260−2、1260−3)および感光性膜1208で被覆され、その上面も絶縁膜1204および感光性膜1208で覆われているので、これらの領域にはイオン注入による不純物(導入)領域やその後の熱処理でも不純物拡散層は形成されない。また、イオン注入法の場合には、絶縁膜1260や1204を除去しない、図12(f)に示す状態でも行なうことができる。さらには、絶縁膜1260を形成せずに、感光性膜1208の廂を作って軟化させてイオン注入を行っても図12(j)に示す構造の容量を作成できる。
図13は本発明の別の実施形態を示す。図13はこの実施形態の容量素子の幅方向における断面の斜視図である。本実施形態は、導電体基板2002に形成された貫通溝を上下(第1面および第2面)から絶縁基板で閉じて圧力伝達孔以外には外部に通じていない密閉空間を作り、圧力伝達孔からの圧力により変形する側壁を両側電極とする空間容量素子である。導電体基板2002には貫通溝W(W1、W2、W3)、V(V1、V2)が形成され、導電体基板2002の上面(第1面)に第2基板2006が接着し、導電体基板2002の下面(第2面)に第3基板2004が接着している。(導電体基板を第1基板とも呼ぶ。)導電体基板2002内に形成された貫通溝溝W(W1、W2、W3)、V(V1、V2)は、側面を導電体基板2002の側壁により、上部を第2基板2006により(従って、貫通溝の上面(第1面)は第2基板2006となる)、下部を第3基板2004により(従って、貫通溝の下面(第2面)は第3基板2004となる)、囲まれた閉空間となっている。貫通溝W(W1)と貫通溝V1を隔てる側壁2002−3と、貫通溝W(W1)と貫通溝V2を隔てる側壁2002−4とは、(貫通溝W1、V1、V2内の圧力が同じときは)略平行になっていて、この側壁2002−3および側壁2002−4は対向する両側電極となり、これらの側壁2002−3および側壁2002−4により挟まれた(貫通溝)空間W(W1)が静電容量空間となる。この両側電極の側壁2002−3および側壁2002−4の距離、すなわち貫通溝W1の幅をd、電極の面積、すなわち側壁2002−3および側壁2002−4の面積をSとすれば、この容量素子による容量Cは、C=ε*S/dとなる。(εは誘電率、本発明の静電容量空間は空間W1であるから、物質は空気等の気体でεは真空誘電率にほぼ等しい。)
貫通溝W1には第2面側に接着した第3基板2004に圧力伝達孔T(T1)が形成され、第2面側(第3基板2004の下方から)の圧力P2がこの圧力伝達孔T(T1)を通じて貫通溝W1の内部に印加される。貫通溝V1およびV2には第1面側に接着した第2基板2006に圧力伝達孔S(S1、S2)が形成され、第1面側(第2基板2006の上方から)の圧力P1がこの圧力伝達孔S(S1、S2)を通じて貫通溝V1およびV2の内部に印加される。従って、側壁2002−3および2002−4は、貫通溝W1からの圧力と貫通溝V1およびV2との圧力差によって変形する。この変形により、電極間距離dが変化し、静電容量Cが変化する。T(T1)が形成されなければ、貫通溝W1は完全に密閉されているので、内部圧力は一定であり、この圧力とV1およびV2の圧力P1との差によってdが変化し静電容量も変化する。逆に、S1およびS2を形成されなければ、貫通溝V1およびV2は完全に密閉されているので、内部圧力は一定であり、この圧力とW1の圧力P2との差によってdが変化し静電容量も変化する。また、側壁2002−3や2002−4の厚みにより、同じ圧力差でも変形率が異なる。厚みが薄ければ変形率が大きくなる。この厚みは、既に明白なように、或いは後述するように、エッチング量や感光性膜の合わせ精度や感光性膜のパターン形成精度、導電体膜のエッチング精度(特にサイドエッチング量やそのばらつき)などによって薄くできる厚みが異なってくる。これらの精度が良くなると側壁の厚みをかなり薄くできる。薄くできれば変形量を大きくできるので感度が高くなる。現状のエッチング精度や感光性膜の合わせ精度や感光性膜の形成精度では、薄い方は約3μmの厚みが限界(エッチング量が約300μmの場合)であるが、今後の精度向上によりこれよりも薄い厚みの側壁を実現できるであろう。1μm以下でも可能となるかも知れない。
また厚みを薄くすると側壁の破壊強度も小さくなるので使用する圧力も考慮する必要がある。厚い側壁では変形量が小さく感度が悪くなるので小さな圧力差を検出することが困難となる。従って、使用圧力により、側壁の厚みを変化させることも必要となる。さらに、この実施形態では導電体基板2002だけが変形するので、導電体基板の材質も重要となる。小さな圧力で変形量を大きくする場合には、ヤング率が小さな材料を用いると良い。導電体膜が高濃度不純物シリコン半導体基板のヤング率は約100GPa〜200GPa(結晶方位依存性あり)であり、銅、チタンは約100GPa〜130GPa、タングステンは約400Pa、アルミ合金は約70GPa、導電性高分子は約0.2〜5GPa、導電性ゴムは約0.01〜0.1GPaである。カーボンナノチューブは約1000GPa、鋼鉄で約200GPaである。本実施形態では、電極として使用可能な導電体は導電体基板2002として使用できる。加工性能から検討すれば、現状ではシリコンが精度良く加工できベターであるが、他の導電体材料でも良い。導電性ゴムや導電性高分子はヤング率が非常に小さいので微小な圧力変動を検出することができる。またカーボンナノチューブはヤング率が大きいので、高い圧力を検出するのに適している。
導電体基板2002の側壁2002−3は容量素子の電極であるが、対向する電極2002−4とは電気的に導通していない。側壁2002−3は貫通溝Vを隔てたもう一方の対向する側壁2002−2とつながっている。斜視図13では良く分からないが、貫通溝V1は側壁2002−3、これにつながる横側の側壁そしてそれにつながる側壁2002−2、さらにその横側に存在する側壁(この側壁は斜視図の断面側となる)につながり、その側壁が側壁2002−3につながって、貫通溝V1はこれらの側壁に囲まれている。これらの側壁はすべて導電体基板2002であるから、当然電気的に接続している(要するに、一体物である)。これらの側壁の外側は空間(W1およびW2はつながっていて、全体空間はWとなっている)となっていて、導電体基板はなくなっていて、上下の第2基板2006および第3基板2004によって支持されている。第3基板2004および第2基板2006とこれらの側壁は電気的には接続しない。第2基板2006および第3基板2004そのものは絶縁基板でなくとも良いが、導電体基板2002と電気的に接続しないようにする。すなわち、第2基板2006および第3基板2004が導電体基板や半導体基板であるときは、導電体基板2002と接着する部分には絶縁体を介在する必要がある。導電体基板2002と、第2基板2006および第3基板2004とを接続していないことを保証するには、第2基板2006および第3基板2004が絶縁体であることがベターである。たとえば、第2基板2006および第3基板2004が絶縁体であるガラス、石英や透明プラスチックであれば透明であるから、内部が観察でき合わせ精度も向上でき扱いやすい。
側壁2002−3や2002−2につながる側壁の外側空間は、貫通溝W(W1)およびW(W2)の空間と同じであり、同じ圧力となっていて、圧力伝達孔T(T1)が存在すれば第2面側の圧力P2と同じ圧力となる。従って、側壁2002−3と同様にそれ以外の側壁も溝V1の内部圧力P1とP2の圧力を受けている。側壁2002−3と同様に他の側壁も変形しても良いが、変形を小さくした方が容量素子の強度や信頼性を向上できるし、それらの変形が容量素子の特性に影響するので、変形を小さくした方が良い。そこで、容量素子を構成する側壁より厚くなるように形成する。ただし、側壁2002−3の横側につながる側壁の厚みが厚すぎると電極の端部の面積が大きくなる。この部分は電極の厚み方向で見ると厚みがかなり厚くなっている部分であり、殆ど変形しない部分であるから、面積を大きくしなくても良い。たとえば、側壁2002−3の横側につながる側壁の厚みは、側壁2002−3より少し厚めに形成するのが良い。また、この部分は角部になっているので、エッチング時の欠陥や歪や残留応力が残りやすいので、丸みを出して形成するのが良い。一方、側壁2002−3に対向する側壁2002−2はかなり厚くても構わない。この側壁2002−2の厚み(ここでは、基板厚みと区別する意味で幅と言った方が良いと考えられる)を厚くして容量素子と第2基板および第3基板との接着強度を増大させることもできる。ただし、余り厚くするとセンサーのサイズが大きくなるので、全体のバランスを考えてこれらの厚みを決定するのが良い。
容量素子の側壁2002−2と接着している第2基板2006にコンタクト孔2008(2008−1)を形成し、第2基板2006上に導電体膜2010を積層し、このコンタクト孔2008−1を被うようにして電極・配線2010(2010−1)をパターニングし形成する。この電極・配線2010(2010−1)は他の静電容量素子や外部素子(たとえば、IC、トランジスタ、抵抗、インダクタ、コンダンサ等)と接続する。
また、側壁電極2002−4に対しても同様で、貫通溝V2は側壁電極2002−4につながるその横側の側壁、さらにそれらにつながる側壁2002−5によりその周囲を囲まれている。また上面(第1面)を第2基板2006によって、下面(第2面)を第3基板2004によって塞がれているので、貫通溝V2は完全に閉じた空間となっている。ただし、第2基板2006に圧力伝達孔S2が開いている場合には、第2面側、すなわち第2基板2006の外側の圧力P1がこの圧力伝達孔S2から貫通溝V2の内部に圧力が伝達して、貫通溝の内壁2002−4等に圧力P1が印加される。従って、側壁2002−4は貫通溝W1の内部圧力P2と貫通溝V2の内部圧力P1の差圧により変形し、その結果、電極2002−3および2002−4の電極間距離dが変化して電極2002−3および2002−4による静電容量が変化する。側壁電極2002−5と側壁2002−4は一体になっているので、電気的につながっている。側壁2002−5と付着している第2基板2006にはコンタクト孔2008(2008−2)が開いていて、そこに電極・配線2010(2010−2)が形成される。これらの2つの電極2010−1および2010−2から静電容量を検出できる。貫通溝V2は側壁電極2002−4や側壁2002−5等の側壁によって隔離されていて、貫通溝V2を囲んでいる側壁電極2002−4や側壁2002−5等は他の導電体基板2002にはつながっていない。すなわち、側壁電極2002−4や側壁2002−5等の一体となった側壁導電体基板2002は貫通溝W1やW3を含む空間Wに囲まれている。従って貫通溝W(W1、W2、W3)は1つのつながった空間である。図13においては、W2およびW3にも圧力伝達孔T(T2、T3)を形成しているが、貫通溝W(W1、W2、W3)へ迅速に圧力が伝達すれば、圧力伝達孔は1つでも良い。
圧力伝達孔T(T1、T2、T3)は第3基板2004のごく1部分にあいているだけであり、大部分は連続している。(尚、汚染や強度上などの点で、圧力伝達孔Tを大きくあけても問題なければ大きくあけても良い。)また圧力伝達孔S(S1、S2)は第2基板2006のごく1部分にあいているだけであり大部分は連続している。(尚、汚染や強度上などの点で、圧力伝達孔Sを大きくあけても問題なければ大きくあけても良い。)導電体基板2002は至る所で分離しているが、その上面および下面は第2基板2006および第3基板2004に強固に付着しているので大きな圧力差が生じても分離することはない。第2基板2006で言えば、2006−1〜5で1つの容量素子(コンデンサ)を形成しているので、これを単位として1つの実装単位と考えることができる。すなわち1個の静電容量型圧力センサー(検出素子)である。貫通溝W1の静電容量を検出する1つの側壁電極2002−3およびこれと一体となった導電体側壁(2002−2等)並びに貫通溝W1の静電容量を検出するもう1つの側壁電極2002−4およびこれと一体となった導電体側壁(2002−5等)は貫通溝Wに囲まれており、この貫通溝Wは外側導電体側壁2002(2002−1、2002−6等)により囲まれている。従って、貫通溝Wは、上面は第2基板2006によって、下面は第3基板2004によって閉じていて、圧力伝達孔T(T1〜T3)以外には外環境とはつながっていない閉空間となっている。
導電体基板2002の貫通溝(V1およびV2、或いはW1、W2、W3)を形成するとき、この容量素子を取り巻くように貫通溝V3やV4をあけておけば、導電体基板2002ではこれらの1つ1つの容量素子は分離している。このようにしても導電体基板2002は第2基板2006か第3基板2004に強固に付着しているので、ばらばらになることはなく一体となった(1枚の)基板としてプロセス処理は問題なく可能である。1つの静電容量型圧力センサーパッケージの外側側壁は2002−1や2002−6やこれらにつながる導電体側壁である。(2002−7および2002−8は隣のセンサーパッケージの外側側壁である。)これらの側壁の内側が貫通溝空間Wであり、この貫通溝空間Wに囲まれて実際の容量素子が配置されている。一番外側の外側側壁は2002−1や2002−6やこれらにつながる導電体側壁の厚みはセンサーパッケージの強度を考えて選択すれば良いので、非常に丈夫な圧力センサーパッケージを基板内に一度に大量に作成することができる。しかもLSIプロセスやLSI技術を使用できるので、精度良く作成できる。
さらに、第2基板2006に圧力伝達孔S(S1、S2)を形成するときに、これら1つ1つの容量素子を取り囲むように開口部S3やS4をあけておけば、第2基板2006ではこれらの1つ1つの容量素子は分離している。或いは、第3基板2004に圧力伝達孔T(T1〜T3)を形成するときに、これら1つ1つの容量素子を取り囲むように開口部T4やT5に対応するような開口部を第3基板2004にあけておけば、第3基板2004ではこれらの1つ1つの容量素子は分離している。これらのプロセスにより、付着させた基板2002、2004および2006の基板は、基板の厚み方向において、1つ1つの容量素子はかなりの部分が分断した状態になる。従って、最後に1つ1つの容量素子、すなわち圧力センサー(検出素子)パッケージを形成するには、分離していない基板である第2基板2006または第3基板2004においてダイシングラインに相当するV3およびV4に沿ってダイシング等すれば良い。従って、ダイシングにおよぼす負荷が減るとともに既にダイシングラインが相当部分掘られているので非常に精度の良いダイシングが可能となり、ダイシングライン幅を通常より狭くできる。さらにダイシングする基板の厚みも薄くなるのでチッピングや欠け等のダイシングにより欠陥も非常に少なくなり、ダイシング歩留まりが向上する。
導電体基板(ウエハ)2002の中に非常にたくさんのこのような容量素子を作ることができる。しかもこの容量素子はそれだけで1つのパッケージ(実装形態)とすることもできるので、1枚の導電体基板(ウエハ)2002から多数の圧力センサー(検出素子)を生産できる。しかも、用いる材料も少なく、プロセスも非常に簡単で容易なのでランニングコストも非常に小さくなる。
次に、本実施形態のプロセスの1例を詳細に説明する。図14は本実施形態の製造プロセスを説明する工程図である。図14(a)に示すように、導電体基板2002に第3基板2004を付着させた複合基板(或いは、接合基板や貼り合わせ基板と言っても良い。)の第3基板が付着していない方の面(これを上面、或いは第1面と呼ぶ)に絶縁膜2014を形成する。導電体基板2002は、高濃度不純物を含む低抵抗シリコン半導体基板(N+シリコン基板或いはP+シリコン基板)が取扱易くエッチングも簡単なのでベターであるが、他の導電体基板でも良い。金属基板やその他の導電体基板も使用可能である。第3基板2004はガラス基板や石英基板や透明プラスチックなどの透明絶縁体基板がベターであるが、セラミック基板やプラスチック基板等の高分子材料基板などの絶縁基板でも良い。(透明基板でなくとも良い。)或いは、導電体基板や半導体基板を絶縁膜で被覆したものも使用できる。要するに、第3基板2004は導電体基板2002と直接導電しなければ良く、絶縁していれば良い。導電体基板2002と第3基板との付着は、接着層を用いて行なっても良い。当然この接着層は絶縁体である。そうでなければ、接着層を通して分離した導電体間で導通してしまうからである。
導電体基板2002および第3基板の接合面を清浄にすれば、常温接合法や熱接合等を用いて接着層を介さずに導電体基板2002と第3基板2004とを強固に接合することができる。またある程度温度を上げて拡散法や溶融法により導電体基板2002と第3基板2004とを強固に接合することができる。導電体基板がシリコン基板(N+基板、或いはP+基板)であり、第3基板がガラス基板である場合は、陽極接合法により、導電体基板2002と第3基板2004とを強固に接合することができる。接着層を用いる場合には、エポキシ系などの有機系接着剤、無機系接着剤など種々の絶縁タイプの接着剤を用いることができる。本発明のプロセスでも種々の熱処理が行われるし、製品が完成後も信頼性を確保する上では熱歪が発生するので、導電体基板2002および第3基板2004の熱膨張係数は近似している材料が好ましい。
絶縁膜2014はシリコン酸化膜、シリコン窒化膜、有機系膜などの絶縁膜であり、導電体基板2002および第3基板2004を付着させた後は、余り高い温度の熱処理(約400℃〜500℃以上)は熱歪や汚染や変質などの点で余り好ましくないので、CVD法やPVD法、或いは塗布法が良い。酸化法等の高温熱処理を使用する場合は、導電体基板2002および第3基板2004を付着させる前に行なうと良い。
次に、図14(b)に示すように、絶縁膜2014の上に感光性膜2016を形成し所望の形状にパターニングし、感光性膜パターン2016(2016−1、2、3、4、5、6)を形成する。次に、図14(c)に示すように、このパターンを用いて絶縁膜2014をエッチングし、さらに導電体基板2002をエッチングする。このエッチングされた部分が図13の斜視図で示す貫通溝W(W1、W2、W3)、V(V1、V2)となる。導電体基板の厚みa1はダイヤフラムの1辺となるので、かなり厚く、通常は約100μm以上である。(もっと薄くしても良いが、圧力差による変化量が小さくなる。)また厚すぎるとエッチングばらつき量やサイドエッチング量オーバーエッチング量が大きくなるので、容量素子の特性も含めて総合的にa1を決定すると良い。通常は約2.0mm以下、好適には約1.0mm以下が良い。絶縁膜2014をエッチングするときに感光性パターン2016もある程度エッチングされるので、絶縁膜2014に対して感光性膜2016のエッチング選択比が高いものが良い。絶縁膜2014は、感光性膜2016と導電体膜2002との密着性が余り良くないときや、導電体膜からのパターニング光の反射が大きくてパターニング精度が悪いときなどに使用されるので、余り問題ない時は絶縁膜を形成せず、直接導電体膜2002上に感光性膜2016を形成しても良い。絶縁膜2014の厚みa3は上記目的のためには約0.5μm程度以下で充分であるが、感光性膜2016と導電体膜2002とのエッチング選択比が充分でないときに、絶縁膜2014と導電体基板2002とのエッチング選択比が感光性膜2016と導電体膜2002とのエッチング選択比よりも大きいときや、絶縁膜2014を介在した方がサイドエッチング量が小さいときには、約0.5μm以上の厚みの絶縁膜を適宜積層すれば良い。
図14(c)においては、感光性パターンに合わせた精度の良い導電体基板の深い貫通溝を形成することが目的であるから、この目的に合致する方法を適宜選択する。a1が約100μmで、感光性膜2016と導電体基板2002とのエッチング選択比が20あれば、感光性膜の厚みa4は約5μmより厚く形成されるようにする。a1がこれより薄いか選択比が大きければa4はもっと薄くしても良い。逆にa1がこれより厚いか選択比が小さければa4はもっと厚くしなければならない。ただし、絶縁膜2014を形成したときは、この絶縁膜2014の厚みも考慮する。パターンをできるだけ精度良く形成するためには、感光性膜2016のパターンをできるだけ垂直にし、そのパターンを用いた絶縁膜2014や導電体基板2002のエッチングをできるだけ垂直なエッチング形状となるようにする。感光性膜2016のパターンは露光マスクのパターンによって決まるので、この精度も重要である。
図13の斜視図からも分かるように、本発明の重要な点は容量素子を形成する側壁電極2002−3および2002−4の厚みをできるだけ正確にばらつきなく形成することである。この厚みは約1μm〜約20μm程度である。(圧力差が大きいときにはもっと厚くなる場合もある)この側壁電極2002−3や2002−4を形成するパターンは図14(c)の2016−3や2016−4のパターンである。このパターン幅が約1μm〜約20μmとなる。他の部分はもっと幅が広くても良いし、形状(幅)のばらつきももっと大きくても良いので、この部分だけは注意が必要で、パターニング精度を良くする。約3μmの幅(壁の厚み)の導電性電極パターン(側壁)を形成するためには、感光性膜2016−3および2016−4の幅を約3μm、厚みa4を約5μmとして、サイドエッチングの非常に小さい異方性エッチング(たとえば、ボッシュ法などの深堀エッチング(DRIE)など)を用いて深い貫通溝V、Wを形成する。
本実施形態では、導電体基板2002は深さ方向(厚みa1方向)に完全にエッチングする。エッチング速度は基板深さ方向にも基板面内でもある程度ばらつくので、導電体基板2002を深さ方向に完全にエッチングするにはある程度のオーバーエッチングが必要となる。導電体基板2002と第3基板2004のエッチング速度の選択比が小さいと第3基板2004も場所により或る程度エッチングされてしまう。しかし、第3基板2004は導電体基板2002と異なる材質であるから、導電体膜2002と第3基板2004のエッチング選択比の大きなエッチング条件で導電体膜2002をエッチングすれば第3基板2004を殆どエッチングせずに導電体膜2002をエッチングできる。たとえば、導電体基板2002として、300μmの厚み(a1=300μm)のN+シリコン基板、第3基板2004として50μmの厚み(a2=50μm)のガラス基板を用いたときに、N+シリコン基板上に1μm(a3=1μm)のシリコン酸化膜(SiO2膜)、感光性膜(フォトレジスト膜)の厚みが10μm(a4=10μm)、感光性膜の幅を5μmでパターニングして、ボッシュ法等の深堀エッチング(DRIE)を用いて、所望の側壁(幅約5μm、深さ300μm、奥行き600μm)を形成できる。
次に、図14(d)に示すように、感光性膜2016や絶縁膜2014を除去した後に、導電体基板2002に第2基板2006を付着する。この付着においても導電体基板2002に直接第2基板を接合しても良いし、接着層を介して接着しても良い。第2基板がガラス基板のときには陽極接合法も使用できる。また、絶縁膜2014を除去しなくても良ければ残しても良いし、新たに絶縁膜を形成してから導電体基板2002に第2基板を接着しても良い。特に貫通溝内部の導電体基板が露出して不具合を起こす恐れがある(汚染や劣化など)場合には、保護膜として絶縁膜等を溝内部へ積層しても良い。この第2基板接着工程において、各貫通溝V(V1、V2)やW(W1、W2、W3)は密閉されるので、この後の工程で圧力伝達孔(S、T)を形成しなければ、密閉状態のまま製品化され圧力が維持される。従って、図14(d)の工程のプロセス圧力状態が維持される。接着後密閉された貫通溝内部でアウトガスや反応ガスが発生して圧力が変動する場合もある。それを防止するために貫通溝内部にあらかじめこれらのガスを吸着する物質を置いても良い。第2の基板2006を導電体基板2002へ付着させた後で第2の基板をエッチング法や研磨法により薄くすることもできる。最初から薄い第2の基板を付着させる工程よりは取り扱い易いというメリットがある。
次に図14(e)に示すように、導電体基板2002と第2基板2006とを接着している部分で、導電体基板2002と接続すべき部分(2002−2や2002−5)にコンタクト孔2008(2008−1、2008−2)を形成する。このコンタクト孔は、導電体基板2002−3や2002−4などに形成することもできるが、この部分の幅は狭いので、もっと広い部分(2002−2や2002−5)に形成するのが良い。この領域はかなり広い領域となるので充分なサイズのコンタクト孔を形成できる。たとえば、貫通溝の奥行き(長さ)が約400μmであれば、長さ約400μmで、幅方向には圧力センサーの大きさに依存するサイズではあるが、2002−2や2002−5の領域は貫通溝の長さとのバランスから少なくとも約100μ程度は取ることができる(もちろん、これよりも小さいパッケージでも良ければ、もっと小さくもできる)。第2基板2006の厚みもかなり厚くなる(圧力センサーのパッケージの強度から約50μmは欲しいが、もちろん強度をそれほど高める必要がなければ、もっと薄くできる)が、2002−2や2002−5の領域を100μm程度にすれば、コンタクトサイズを50μm以上は取れるのでコンタクト孔のアスペクト比が1程度にはできる。コンタクトが大きければウエットエッチングも可能となる。たとえば、緩衝フッ酸水溶液(HF液+NH4F液)やHF水溶液などのHF系溶液によるエッチングも可能となる。
第2基板2006は絶縁体であることが望ましい。表面を絶縁膜で被覆した導電体基板にコンタクト孔2008を形成する場合は、コンタクト孔2008に導電体が露出してしまうので、再度絶縁膜を積層することになりプロセスが複雑となる。上記のように圧力センサーパッケージの強度等から第2基板2006の厚みを決定し、また圧力センサーパッケージのサイズと導電体基板との密着強度などからコンタクト孔を配置する導電体基板2002−2や2002−5のサイズを決め、次にコンタクト孔2008のサイズを決める。導電体膜2009や2010の形成しやすさ、導電体基板との接続の観点からは、コンタクト孔のサイズは広い方が良い。ただし、電極2010はコンタクトサイズよりは大きくなること、その大きさが外部への接続の点で不具合が起きないほどの大きさであることなどを考慮してコンタクト孔のサイズを決めると良い。導電体膜2009や2010のコンタクト孔2008における被覆性(ステップカバレッジ)を良くするには、PVD方やCVD方の場合には、ステップカバレッジの観点からコンタクト孔にテーパーをつけた方が良い。そのためにはドライエッチングやウエットエッチングで等方エッチングを使うことができる。テーパーを形成するにはコンタクト形成領域はある程度の領域が必要であるが、本実施形態におけるコンタクト形成領域2002−5の部分は比較的広いのでコンタクト孔にテーパーを形成することができる。
尚、あらかじめ第2の基板2006にコンタクト孔2008を形成しておき(圧力伝達孔も同時に形成することができる)、そのコンタクト孔(+圧力伝達孔)付きの第2の基板2006を導電体基板2002に付着しても良い。コンタクト孔(+圧力伝達孔)付きの第2の基板2006を形成するプロセスは、本発明の容量素子形成プロセスと並行して行なうことができるので、作業工程の簡略化および作業時間の短縮化を実現できる。導電体基板2002との付着前に第2の基板2006へコンタクト孔(+圧力伝達孔)を形成する工程は実デバイスとしての導電体基板2002とは別個に行なっているので、比較的ラフな工程を取ることもできるし、コンタクト孔形成時における不良品をメインプロセスに持ちこまないという点で不良発生によるコスト増を低減できる。たとえば、コンタクト孔をウェットエッチングするときは、HF系溶液などに浸漬等するので、感光性膜の密着が悪いときにはその部分からHF系溶液が浸入して製品全体に影響を及ぼしてしまうが、第2基板だけを分けて工程を行っていれば、その損害を最小限に抑えることができる。第2の基板2006にはコンタクト孔(+圧力伝達孔)というパターンがついているので、導電体基板2002との付着工程においてはある程度正確なアライメントが必要となる。すなわち、コンタクト孔2008は導電体基板2002−5の領域に、圧力伝達孔Sは貫通溝Vの領域に来るように位置合わせする必要がある。
次に図14(f)に示すように、コンタクト孔2008(2008−1、2008−2)に導電体膜2009(2009−1、2009−2)を積層する。コンタクト孔だけに導電体膜を積層してコンタクト孔を平坦化させることもできる。たとえば、選択CVD法によりコンタクト孔に金属膜(たとえば、W)を選択成長させたり、メッキ法でコンタクト孔だけにメッキさせても良い。あるいは、第2基板2006上に導電体膜を積層してエッチバック法でコンタクト孔2008だけに導電体膜2009を残す方法も採用できる。また、導電性ペーストをスキージ法やスクリーン印刷法でコートしてコンタクト孔に導電性ペーストを埋め込む方法もある。あるいは、第2基板2006にマスクを密着させて導電性ペーストをスキージ法やスクリーン印刷法によりコンタクト孔2008に埋め込むこともできる。導電性ペースト(たとえば、半田ペースト)をコンタクト孔2008に埋め込むとともに厚く形成し、その後の熱処理により電極・配線2010も同時に形成できる。
次に導電体膜2010を積層し、コンタクト孔2008部分をカバーするとともに、所望の配線を行い電極・配線パターン2010(2010−1、2010−2)を形成する。導電体膜2009と2010はコンタクト孔2008で接続する。この導電体膜2010はアルミニウム(Al)、チタニウム(Ti)、クロム(Cr)、タングステン(W)、銅(Cu)、白金(Pt)、すず(Sn)、金(Au)等の金属膜やこれらの金属の合金膜やシリサイド膜、さらに導電性多結晶シリコン膜、導電性プラスチック等や各種導電体膜を使用できる。さらにはこれらの導電体膜を複数適宜選択して積層しても良い。導電体膜の形成方法として、スパッター等のPVD法やCVD法がある。あるいはメッキ法で形成することもできる。コンタクト孔は比較的大きくできるので、導電体膜2009をコンタクト孔2008に積層させなくても、導電体膜2010を直接コンタクト孔2008にも積層して電極・配線パターン2010(2010−1、2010−2)を形成しても良い。この方が工程を簡略にできる。導電体膜2009の積層でも同じであるが、コンタクト孔2008に直接導電体膜2010を積層するときは、コンタクト孔に露出している導電体基板2002上に残っている不純物層(たとえば、酸化物や他の異物)を除去してから導電体膜2010の積層を行う必要がある。たとえば、PVD法やCVD法で金属膜などを積層する前に、HF系溶液等で前処理をして不純物層を除去する。スパッター等のPVD法の場合は逆スパッターを行ってから金属膜等を積層することもできる。CVD法の場合にはCF系等のエッチングガスを用いて軽くエッチングしてから金属膜等を積層することもできる。銅メッキ法を用いる場合は、CVD法やPVD法により、TiやTaなどの高融点金属、TiNやTaNなどの導電性窒化物、あるいはこれらの積層膜をバリアメタルとして積層した後、シード層のCu膜を積層して電解メッキによりCuメッキ層を形成する。その後必要な部分のメタル層を残して電極・配線パターン2010(2010−1、2010−2)を形成する。あるいは、Cuの電解メッキ前に電極・配線を形成すべき部分以外を感光性膜等で被って、電極・配線を形成すべき部分のみのCuメッキ層を形成した後、感光性膜を除去し、Cuメッキされていないシード層およびバリアメタルをエッチングして、Cuメッキ層の電極・配線パターン2010を形成する。
さらにこの部分にバンプ金属(半田、金、銅、その他の金属や合金)を形成することもできる。貫通溝V1は側壁2002−3、2002−2、およびこれらの側壁をつなぐ側壁(図示されていないが、紙面に対して手前と後方に存在する)により取り囲まれているので、側壁導電体基板2002−2と2002−3は連続体となっている。従って、電極・配線2010−1は側壁2002−3に直接に接続している。一方、この側壁2002−3と対面するもう一方の電極となる側壁導電体基板2002−4もその両サイドにある側壁導電体基板(図示されていないが、紙面に対して手前と後方に存在する)を通じて幅の厚い側壁導電体基板2002−5につながっていて、電極・配線2010−2は側壁2002−4に直接に接続している。
次に図14(g)に示すように、容量を示す貫通溝W1に対しては、第3基板2004に圧力伝達孔T(T1)を形成し、それと対抗する貫通溝V1およびV2に対しては、第2基板2006に圧力伝達孔S(S1、S2)を形成する。(これらの圧力伝達孔はお互いに逆の基板に形成しても良い。)貫通溝W(W1)の空間は、貫通溝V1やV2を囲んでいる導電体側壁基板(2002−2および2002−3、或いは2002−4および2002−5)の周りさらに取り囲んでいて、貫通溝W(W1)はW(W2)およびW(W3)とつながっているので、圧力伝達孔T(T1)は、必ずしもこのW(W1)の部分でなくても良く、W2やW3の部分でも良い。この圧力伝達孔を通じて外界の圧力を導けば圧力差によって貫通溝V1やV2とW1との間の側壁2002−3や2002−4が変形しこれらの電極間容量が変化するので、電極・配線2010−1および2010−2を通して電気容量変化を検出することができる。
図13、図14および図15に示す容量素子は、導電体基板2002の厚みが容量素子の電極面積の1辺を決定するので、導電体基板2002のエッチング量のばらつきの影響を受けないことである。すなわち、導電体基板2002の厚みをa1(図14(c)に記載)とし、奥行き側の貫通溝V(V1、V2)の長さをb1(図15(a)に記載)とすれば、容量素子の電極面積はa1*b1となる。b1も垂直エッチングでは殆ど変化しないので、容量素子の電極面積のばらつきは非常に小さくなる。従って、導電体基板内および導電体基板間の容量素子の特性ばらつきも非常に安定するので、歩留まりの高い製品を実現できる。
図14(c)のプロセスにおいて、感光性膜2016−3および2016−4のパターンによって形成される導電体パターンは2002−3および2002−4は幅に対して縦に非常に長くなっている。(紙面に垂直方向な奥行き方向は長い。)たとえば、幅が約1μm〜約20μm(エッチング精度が良ければ1μmより幅の狭い導電体パターンを形成することができるし、ヤング率が小さな導電体の場合や圧力差が大きな圧力を検出する場合は20μmよりもっと厚い導電体パターンでも良い。)で、高さが約50μm〜約500μm(約50μmより薄い導電体基板は導電体基板の取扱いに注意が必要であり、エッチングの方法や条件を最適化すれば約500μmより厚い基板の使用も可能である。)となる。従って、エッチングが大変であること、エッチング中やエッチング後において縦に長い側壁2002−3や2002−4が変形しないかという恐れがあることなどを考慮すると、図17に示すプロセスを取ることもできる。(尚、パターン幅が約3μmでアスペクト比が50以上になると上記のような問題が発生する可能性がある。この場合でも振動の小さな装置を使い、風の起こらない低圧条件下で、第3基板2004を上にして第2基板2006を下側からゆっくりと付着させれば、上記の問題を発生しないようにすることもできる。)図17(a)は、図14(b)におけるプロセスと同じであるが、感光性パターン2016−3および2016−4の幅の狭いパターンを合わせて太いパターン2016−7としたものである。この部分には、貫通溝W1を形成するのであるが、この段階ではまだ形成しない。2016−7のパターン幅は、2016−3の幅+2016−4の幅+W1の幅となっているので、かなり幅が広い。たとえば、2016−3の幅を5μm、2016−4の幅を5μm、W1の幅を50μmとすると、2016−7のパターン幅は60μmとなる。
次に図17(b)に示すように、感光性膜2016のパターンをマスクとして、絶縁膜2014および導電体膜2002を垂直にエッチングする。図14(c)に示すような細長い垂直のパターンがなくなったので、上記のような問題点が解消された。たとえば、2016−3の幅を3μ、2016−4の幅を3μm、W1の幅を50μmとすると、感光性膜2016−7のパターン幅は56μmであり、導電体基板の厚みを300μmとすると、エッチング後の導電体基板202−7のパターン幅は約56μm(アスペクト比は約5.4)となり、他の導電体基板のパターン2002(2002−1、2002−2、2002−5、2002−6)と同程度になり、上記等の問題が解消している。次に感光性膜2016、絶縁膜2014を除去する。(絶縁膜2014は問題なければ残しても良い。或いは、直接導電体基板2002の上に感光性膜2016を密着性良くパターニングでき、導電体基板2002のエッチングも問題なければ絶縁膜2014を形成する必要はない。)
次に図17(c)に示すように、第2基板2018を導電体基板2002の第1面側に付着させる。第2基板2018は導電体基板2002と導通しないようにする。またコンタクト孔も形成されるので第2基板2018は絶縁体が好ましい。たとえば、ガラス基板や石英基板や透明プラスチックのような透明絶縁体が内部も観察しやすいが、セラミックや高分子材料などの不透明な絶縁体でも良い。導電体基板2002がシリコン基板で絶縁基板2018がガラス基板の場合には、陽極接合法を用いて、導電体基板2002と絶縁基板2018を強固に接合できる。また、導電体基板2002と絶縁基板2018の接着には、直接接合法や接着層を使用することもできる。これらの接合法は、導電体基板2002および絶縁基板2018の材質や形状、プロセスなどを考えて適宜最良な方法を選択できる。この方法による導電体基板2002には図14の2002−3や2002−4のような細長い形状のパターンがないので、第2基板2018を導電体基板2002へ接着することは容易である。もっとパターン幅が狭くなって、たとえば、エッチング後の導電体基板202−7のパターン幅が約16μm程度(2016−3の幅を3μ、2016−4の幅を3μm、W1の幅を10μmとすると、感光性膜2016−7のパターン幅は約16μmとなる)でも、導電体基板2002の厚みa1が約300μm程度(アスペクト比約18.8)の場合には、導電体基板(たとえば、シリコン基板)2002−7を変形させずに垂直なパターンのまま第2基板2018に問題なく付着させることができる。
次に図17(d)に示すように、第3基板2004に(第2面側に)感光性膜2020を形成しパターニングし、貫通溝W1形成用の窓2022をあける。この窓からまず第3基板2004を垂直に窓あけする。次に図17(e)に示すように、この2004にあけられた窓2022から導電体基板2002を垂直にエッチングし、第2基板2018に達するまでエッチングし、貫通溝W1を形成する。貫通溝W1においては、その底に導電体材料を残さないように完全にエッチングすることが望ましい。感光性膜2002のパターン合わせは、貫通溝V1やV2と正確に行なう必要がある。第3基板2004が透明基板であれば、第2面側から直接マスク合わせができるので非常に精度良く合わせることができる。
透明基板でも光や電磁波の透過や反射に問題があれば、感光性膜2020を形成する前に第3基板2004を薄くすれば良い。第3基板2004を薄くする方法として、研磨法(CMPやBG法)やエッチング法、その他種々の方法がある。第3基板2004を薄くすれば、第1面側から光や電磁波を照射して、薄くなった第3基板を透過する光や電磁波を利用して、貫通溝V1やV2のパターンに合わせて感光性膜2020を精度良くパターン合わせできる。このような方法を用いることにより、たとえば貫通溝V1やV2のパターンに対して、感光性膜2020の合わせ精度を現状でも約0.1μm〜約0.5μm程度、或いは約0.5μm〜約1.0μm〜約2.0μm程度にはできるので、エッチング後の導電体基板の側壁2002−3や2002−4の厚み(幅方向)を非常に薄くできる。現状の方法でも約2μmでも可能であるから、将来はもっと薄くできる。この方法のさらなる利点は、細長い導電体基板の側壁2002−3や2002−4を形成する前に第2基板2018および第3基板2004で導電体基板2002を確実に接着して押さえているので、エッチング後でも細長い形状パターン2002−3や2002−4が変形したり、最悪は倒れたり折れたりする危険性がなくなることである。マスク工程が1つ増えて、エッチング工程なども増えるがプロセス安定性を向上することができる。
次に図17(f)に示すように、感光性膜2020をリムーブする。このままでも容量素子(圧力センサー)パッケージとして使用できるが、第3基板2004の上にさらに第4基板2024を接着しても良い。特に、貫通溝W1を閉鎖したいときは必須であるし、第3基板を薄くして強度が小さくなった場合にも第4基板2024を接着すれば強度を大きくすることができる。第4基板は絶縁体である必要はなく、半導体基板でも導電体基板でも使用できる。尚、貫通溝W2やW3はその両側の側壁は幅が広いので、図17においては貫通溝V1やV2と同時に形成したが、貫通溝W1と同時に形成しても良い。このW2やW3の合わせは、W1の合わせほど正確さは必要はない。(ただし、W1のような貫通溝をたくさん作成するときは、それに隣接するV1やV2との合わせを精度良く行なう必要があることは当然である。)この後、図14(e)以降に示す工程と同様のプロセスを行う。
図15は、図13および図14に示す実施形態によって作成した1つの容量素子(圧力センサー)の投影図を模式的に示したものである。図15(b)は図14(g)とほぼ同じで正面図を示す。図15(a)は上面図(或いは平面図)である。図15(b)はこの平面図のA1−A2における断面を正面から見た図と考えることができる。図15(c)は平面図のB1−B2における断面を右側面から見た図と考えることができる。図15により、貫通溝V(V1、V2)を導電体2002が取り囲んでおり、この導電体2002を貫通溝W(W1、W2、W3)が取り巻いていること、導電体基板2002(2002−2、2002−3)は内部でつながっていること、導電体基板2002(2002−4、2002−5)は内部でつながっていること、導電体基板2002(2002−2、2002−3)と導電体基板2002(2002−4、2002−5)は分離して接続していないこと、導電体基板2002(2002−1、2002−6)はつながっていて、貫通溝W(W1、W2、W3)を取り囲み、1つの容量素子パッケージ(圧力センサーパッケージ)を形成していること、貫通溝V(V1、V2)およびW(W1、W2、W3)につながるそれぞれの圧力伝達孔S(S1、S2)およびT(T1)はそれぞれ互いに逆側の第3基板2004または第2基板2006側にあいていること、これらの孔に圧力伝達ラインをつなげれば、貫通溝V(V1、V2)およびW(W1、W2、W3)に圧力を伝達できること、或いは容量素子(圧力センサー)パッケージの第1面(上面)から圧力P1をかけ、容量素子(圧力センサー)パッケージの第2面(下面)から圧力P2をかけると、それぞれの圧力が貫通溝V(V1、V2)や貫通溝W(W1、W2、W3)の内部に伝達することなどが非常に良く理解できる。(尚、圧力伝達孔SおよびTは同じ基板(2004や2006)に形成しても良いし、互いに逆基板に形成しても良いし、両方の基板に形成することもできることも分かる。どのように圧力をこれらの孔に導くかによって適宜選択すれば良い。)
静電容量素子を構成する対向電極は、2002−3および2002−4である。この対向電極である導電体側壁電極2002−3は、側壁2002−7および側壁2002−8につながり、さらに2002−2につながる。導電体側壁電極2002−3は圧力差P1―P2により変形できるように幅(厚み)を選定するが、他の側壁2002(2002−2、7、8)は、圧力差により変形をできるだけ小さくすると良い。そのためには導電体側壁電極2002−3よりも厚く形成する。たとえば、導電体側壁電極2002−3の幅(厚み)が3μm〜10μmであれば、その他の側壁2002(2002−2、7、8)の厚みの3倍以上とする。導電体側壁電極2002−3の幅(厚み)が10μm〜20μmなら、その他の側壁2002(2002−2、7、8)の厚みの2倍以上とする。このようにすることにより、V1溝を囲む側壁2002(2002−2、7、8)の強度を充分に確保できる。しかも導電体側壁電極2002−3の圧力差による変形をスムーズに行なわせることができる。もう1つの対向電極である導電体側壁電極2002−4につながる側壁に関しても同様である。
容量素子パッケージの外側側壁である側壁2002(2002−1、6、8、9)はパッケージを保護しているので、充分な強度が必要である。図15では幅(厚み)を余り大きく描いていないが、幅(厚み)を充分大きくして外部からの力に耐えるようにする必要がある。シリコンの場合通常の環境では50μm以上あれば良いが、使用環境によってはもっと厚くした方が良い。上面の第2の基板2006も同様であるが、ガラス基板の場合には通常約50μm以上あれば良いが、使用環境によってはもっと厚くした方が良い。下面の第3の基板2004も同様であるが、ガラス基板の場合には通常約50μm以上あれば良いが、使用環境によってはもっと厚くした方が良い。また、図15(a)において、一番外側の点線Xで囲まれる部分が1つの容量素子(圧力センサー)パッケージの平面的なサイズを示す。非常に小さなサイズの容量素子(圧力センサー)パッケージを実現できることが分かる。たとえば、導電体基板の厚さを300μm、側壁電極の長さを300μm、W1の幅dを20μm、側壁電極2002−3につながる導電体の幅(A1−A2方向)を100μm、側壁電極2002−4につながる導電体の幅(A1−A2方向)を100μm、W(W2、W3)の幅を50μm、外側を取り囲む側壁2002(2002−1、6、9、10)の幅(厚み)を100μm、Xとこの外側側壁2002(2002−1、6、9、10)との距離を10μmとすれば、1つのパッケージの大きさ(Xの大きさ)は、横方向(A1−A2方向)が0.54mm、縦方向(B1−B2方向)が0.62mmとなる。
図16は、図13〜41で示す容量素子(圧力センサー)パッケージを実装基板に搭載したときの模式図を示す。((他の実施形態にも適用できる。)図14で示すプロセスの後に、第3基板2004に外枠足2030(2030−1、2030−2)および補強足2032(2032−1、2032−2)を取りつける。外枠足2030は実装基板に取り付けた時に、容量素子(圧力センサー)パッケージを桁上げして、この枠の中に圧力を閉じ込めるために周囲が連続した枠となっている。従って2030−1と2030−2は連続している。しかも外枠足2030は、内部を気密に保持できる(圧力空間Uを形成する)ように実装基板に確実に付着している。
補強足2032は容量素子(圧力センサー)パッケージが変形しないようにするためのもので、外枠足2030とともに実装基板に取り付けて容量素子(圧力センサー)パッケージを支えている。従って、外枠足2030(2030−1、2030−2)および補強足2032(2032−1、2032−2)の高さは同じで同じ材質のものが望ましく、第3基板2004に同時に取り付けることができる。別基板にこれらの外枠足2030および補強足2032を多数取りつけておき、この別基板から一括で第3基板に転写すれば、多数の外枠足2030および補強足2032を一挙に第3基板に接着できるので、非常に簡単に安価に速く作成できる。尚、第3基板2004に外枠足2030(2030−1、2030−2)および補強足2032(2032−1、2032−2)を接着するときに接着層を用いても良い。
第2基板側にも、枠体2034(2034−1、2034−2)が第2基板2006に取り付けられ、さらにこの枠体2034の上に蓋2036が取り付けられ、この枠体2034と蓋2036によって第1面側の圧力伝達孔S(S1、S2)が覆われていて、これらに囲まれた空間Zは圧力伝達孔S(S1、S2)を通して貫通溝V(V1、V2)と同じ圧力空間となる。この空間Zから圧力が漏れないようにこれらの接着は確実に行なう必要がある。枠体2034も図14に示すプロセスの後に、枠体2034を第2基板2006に接着する。さらにその上に蓋2036を接着する。或いは、先に枠体2034に蓋2036を取りつけたものを第2基板2006に接着しても良い。これらも多数個を一括して一挙に第2基板に接着できるので、非常に簡単に安価に速く作成できる。枠体2034の上に蓋2036を接着するときに接着層を用いても良い。尚、枠体2034(2034−1、2034−2)を第2基板2006に接着するときも接着層を用いても良い。
以上のようにして基板上に作成された容量素子(圧力センサー)をダイシング等で個片にすれば、1つ1つの容量素子(圧力センサー)パッケージができる。このパッケージを図16に示すように、実装基板2040に搭載する。実装基板2040と容量素子(圧力センサー)パッケージの枠体2030や2032に接着剤を介して取り付けても良い。特に外枠足2030と第3基板2004と実装基板2040で囲む空間Uは圧力伝達孔T(T1)を通して貫通溝W(W1、W2、W3)につながり、同じ圧力空間となるので、実装基板2040と容量素子(圧力センサー)パッケージの枠体2030の接着は圧力漏れがないように確実に行なう必要がある。
実装基板には電極・配線層2042(2042−1、2042−2)が形成されていて、容量素子(圧力センサー)パッケージの電極・配線2010(2010−1、2010−2)とワイヤ2044(2044−1、2044−2)等で接続する。実装基板に形成された電極・配線層2042(2042−1、2042−2)はICやトランジスやその他に能動素子などに接続され、容量素子(圧力センサー)パッケージで検出した容量変化から圧力を計算することが可能となる。圧力空間UやZは検出すべき圧力を有する種々の環境や機器に接続して、そこから圧力空間UやZに圧力を導く。必要であれば、圧力空間Uに関しては枠体2030や実装基板にさらに圧力伝達孔を設けたり、圧力空間Zに関しては枠体2034や蓋2036にさらに圧力伝達孔を設けることもできる。尚、図16に示すような外枠足や枠体を形成しなくとも、図15に示す容量素子(圧力センサー)パッケージでも、測定環境や測定対象によっては圧力を測定できることは言うまでもない。
図18は、本発明の実施形態のバリエイションである。図18(a)は平面的に見たもので、図18(b)は図18(a)におけるA1−A2断面を側面から見た図で、図18(c)はB1−B2断面を側面から見た図である。5001は本発明の容量素子(パッケージ)の単位サイズを示しているだけのもので、スクライブラインと考えると良く、この繰り返しで基板(ウエハ)内に本発明の容量素子を多数個作製できることを意味する。5002は導電体基板、5003は貫通溝(これまで説明したWに相当する。)、5004は貫通溝5003と導電体内では接続しない貫通溝(これまで説明したVに相当する。)、(貫通溝5003や5004は、空間となっているので、貫通溝空間と称することもある。5007は導電体基板5002と導電膜(電極・配線)5008とを接続するためのプレート5009に開けたコンタクト孔、このコンタクト孔には導電膜(これも5007とすることもある)が入っていて導電膜(電極・配線)5008と導電体基板5002と接続する。コンタクト孔5007に入る導電膜は導電膜(電極・配線)5008と兼用(同じ)しても良い。コンタクト孔5007や電極・配線5008のパターンは導電体5002(5002−1、5002−2)とコンタクトできれば図に示された位置に限定されないことは言うまでもない。たとえば、コンタクト孔5007−1や電極・配線5008−1は、導電体基板5002−3、5002−4、さらには5002−2の上でも良い。(ただし、5002−2の領域が狭ければ、コンタクト孔は形成できても配線・電極を配置するには狭すぎる場合は、配線・電極を広い部分に引きまわして持って来れば良い。
5009は導電体基板の上面(第1面)に付着させたプレート(基板と言っても良い)で、基本的には絶縁基板が良い。内部が見えること、マスク合わせの点から、ガラスや石英や透明プラスチックや透明高分子(或いはこれらの複合体)等の透明絶縁体が良い。マスク合わせ時の光(可視光以外の光も含まれる)を透過する材料でも良い。あるいは、マスク合わせ時に必要な光量が透過できる程度の材料でも良い。このことは、光の透過率が低くても光の強度を上げてマスク合わせに必要な光量を確保できれば、そのような材料やそのような厚みを有する材料でも良いということを意味し、逆にマスク合わせ前にプレートの厚みを薄くしてマスク合わせに必要な光量を確保できれば、そのような材料でも良い。
5010は導電体基板の下面(第2面)に付着させたプレート(基板と言っても良い)で、絶縁基板が良い。内部が見えること、マスク合わせの点から、ガラスや石英や透明高分子(或いはこれらの複合体)等の透明絶縁体が良い。(上述したことも含まれることも言うまでもない。尚、これまでに記載したもの、これ以降に記載したものについても同様である。さらに、他の表現や内容についても、本出願文書に具体的に記載していなくても、類似の表現や簡単に記載しているものについては、他の所で別の表現や詳細に記載しているもの(で矛盾なく適用できるもの)が適用できることは当然である。)本実施形態では、スクライブライン5001や貫通溝空間5003−1の所でプレート5010を分離すれば、電極・配線5008−1と5008−2は接続しないので、プレート5010は導電体でも良い。ただ、分離したプレート5010の間に、実装後に導電性物質(水分やゴミも含む)が入る可能性があるので、その対策を考える必要がある。たとえば、貫通溝空間5003−1に圧力を導くためにカバーで覆うなどの方法がある。このことはプレート5009にも適用できる。すなわち、スクライブライン5001や貫通溝空間5003−1の所でプレート5009を分離すれば、プレート5009は導電体でも良い。プレート5009を導電体とすればコンタクト孔5007(5007−1や5007−2)や電極・配線5008(5008−1や5008−2)も不要となり、直接にこの導電体基板であるプレート5009と接続すれば良い。従って、このような容量素子(圧力センサー)を使用できる環境では、非常にコストの低いものを作成することが可能となる。ただし、プレート5009か5010で導電体基板5002を固定しなければならないので、どちらも導電体基板とすることはできない。(導電体基板を絶縁体で被覆する方法はある)
図18に示す実施形態では、導電体基板5002−2が薄いダイヤフラムとなっていて、この導電体基板5002−2が容量素子の一方の電極となる。容量素子のもう1つの対向電極は5002−1で、幅が厚い電極となっていて、ダイヤフラムの役目は果たさない。この容量素子の電極5002−1と5002−2は、貫通溝空間5004の圧力P1と貫通溝空間5003−1の圧力P2が同じときには、距離がc1の平行平板型容量素子となっている。ダイヤフラムは片側の5002−2だけなので、両側にダイヤフラムがある場合に比較するとc1の変形量は小さくなる。導電体基板5002−2の幅方向厚みc2を調節することにより、同じ圧力差でも変形量を調整することができる。
本実施形態の圧力センサーでは、貫通溝空間5004や5003は外部に開放されている(貫通溝空間5004は紙面左方へ開放されている。)ので、このままで実装してもP1とP2は同じ圧力となるので、実装段階で貫通溝空間5004と5003(特に5003−1)を分離しておく必要がある。貫通溝5004を囲む導電体基板5002−2、5002−3、5002−4のうち、5002−3、5002−4は圧力差により変形させないようにした方が、容量素子の特性が安定する。従って、導電体基板5002−3、5002−4の幅方向厚みは導電体基板5002−2より厚くする。これにより、圧力差により、5002−2だけが大きく変形する。
側壁電極5002−2の長さをc3、導電体基板厚みをc4とすると、側壁電極5002−2の面積(ダイヤフラムの面積)は、c3*c4となる。側壁電極5002−2は矩形(正方形や長方形)形状であり、上面がプレート5009で、下面がプレート5010で、側面が5002−3および5002−4で固定されている。尚この実施形態では、貫通溝5004を形成しておけば、ダイシングだけでも形成できる。たとえば、貫通溝5003の全体は形成せずに(導電体基板5002−1と5002−2はつながった状態で)、5003−1の貫通溝をダイシングにより形成する(これにより、導電体基板5002−1と5002−2は分離する)。上面側プレート5009からダイシングするときは、下面側プレート5010側を完全に切断すると容量として使えないので、深さ方向において下面側プレート5010の1部だけダイシングする(理想的には、導電体基板5002だけを完全に切断して下面側プレート5010は切断しない)。導電体基板5002は深さ方向に完全にダイシングする。その次に、点線で示す5001のラインでプレート5009、その下の導電体基板5002、さらにその下のプレート5010をダイシングする。これによって、容量素子型圧力センサーを形成できる。この場合の電極間距離c1(貫通溝5003−1の溝幅)はダイシング時のダイシング幅となる。また、ダイヤフラム側壁電極の幅c2はダイシングの合わせ精度にも依存して来る。
切断刃や切断ワイヤを用いたダイシングの代わりにレーザーで行うこともできる。特に貫通溝5003の形成にはレーザーの方が、貫通溝5004に精度良く合わせることができるので、ダイヤフラム部分の厚みc2を精度良く作ることができる。たとえば、導電体基板5002がシリコン基板である場合、Nd:YVO4レーザーやCO2レーザー等を用いて精度良くレーザーダイシングできる。
さらに導電体基板5002を切断できるレーザーで、プレート5010を切断できないレーザーを用いれば、プレート5010を殆ど削らずに導電体基板5002を完全に分離できる。たとえば、プレート5009およびプレート5010が透明ガラス基板、導電体基板5002がシリコン基板(N+またはP+)であるとき、ガラスを透過し、シリコンを効率良く切断できるたとえばYAGレーザー(波長λ=1.064μm)を用いて導電体基板5002を切断できる。貫通溝5004とのアライメントは透明基板であるプレート5009や5010から貫通溝5004の位置情報を読み取り、この貫通溝5004の位置をもとにして、レーザー光を走査(スキャン)すれば良い。或いは、マスク合わせを行いマスクに形成されたパターンからレーザー光を照射すれば良い。レーザー光の照射側にあるプレートをあらかじめ除去(これもレーザーで可能、たとえば、エキシマレーザーや紫外線レーザーなどがある。)しておけば、レーザー照射により除去された物質はそこから排除できる。貫通溝5002−2の上のプレート5009および/または5010を残しておきたければ、あらかしめダイシングライン5001に沿うプレート5009をレーザーで除去し(この部分のプレートは最終的にはなくなるので除去しておいても良い。)、さらに導電体基板5002をやはりレーザー光で除去しておけば、このスクライブラインに沿う空間から切断された物質(シリコンガスなど)を排除できる。尚、スクライブラインに沿う導電体基板5002を除去したときに、プレート5010を残しておけば、個片化してバラバラになることはない。
その他、貫通溝5003−1の形成はドライエッチング法(DRIE法)を用いても良い。以上のように本実施形態は非常に簡便なプロセスで圧力センサーを作製できる。
図19は、図18に示したもののさらに変形した実施形態である。図19(a)が平面図で、図19(b)が図19(a)のA1−A2における断面図で、図19(c)が図19(a)のB1−B2における断面図である。図19(a)および図19(b)から分かるように、貫通溝5004は導電体基板5002に囲まれている。従って、貫通溝空間5004は上方がプレート5009で、下方がプレート5010で、側面が導電体基板5002(5002−2、5002−3、5002−4、5002−5)によって囲まれた閉空間となっている(図18の実施形態は、導電体基板の側壁5002−5がなく開口されている。)がプレート5009或いはプレート5010を導電体基板5002に付着するときの圧力によって決定される圧力で閉じ込められる。この貫通溝の中に気体吸着物質を入れておけば貫通溝の中の圧力を真空に近い低圧にすることもできる。
或いは気体発生物質を入れておけば、プレート5009およびプレート5010を導電体基板5002に付着して完全密閉した後に、その気体発生物質から気体を出せば所望の圧力にすることもできる。たとえば、この圧力センサーの使用温度をT1〜T2(T1<T2)の間としたとき、気体発生物質の凝固温度(或いは融点、或いは固相−液相の相転移点)がT3、気体発生物質の沸点(或いは、液相―気相の相転移点)がT4、気体発生物質の昇華温度(昇華点、或いは固相−気相の相転移点)がT5であるとき、T4<T1の固体物質を、固体状態で貫通溝の中に入れて密閉する。従って、密閉するときの温度(T6)はT6<T3である。或いは、T4<T1の液体物質を、液体状態で貫通溝の中に入れて密閉する。従って、密閉するときの温度(T6)はT6<T4である。或いは、T5<T1の固体物質を、固体状態で貫通溝の中に入れて密閉する。従って、密閉するときの温度(T6)はT6<T5である。ただし、この物質が、特に気体状態のときに貫通溝内部の物質(上記の例では、ガラスやシリコン)と反応しないようにすることが重要である。固体物質や液体物質がどの程度の気体量になるのかや、貫通溝の体積も分かっているので、T1〜T2のある温度で貫通溝内部の圧力は計算できる。従って、貫通溝内の圧力を知ることができるので、その圧力を用いて貫通溝5003−1の圧力を知ることができる。このことは本発明のすべての実施形態に応用できることは言うまでもない。
貫通溝5004を密閉したくなければ、すなわち外部の圧力を導入する場合には、圧力伝達孔5012をプレート5009に開ければ良い。この貫通溝5012はコンタクト孔5007を形成するときに、圧力伝達孔5012のパターニングも含めて同時に形成できる。この後導電性膜を形成するので、この圧力伝達孔5004の中や貫通溝の中にも入りこむことを考慮する必要がある。また、圧力伝達孔5012を形成するとき、そのエッチングガスやエッチング液やエッチング後の物質(気体、液体、或いは固体)も貫通溝の中に入りこむ。また、コンタクト孔や圧力伝達孔作成用の感光性膜やその残膜や現像液等も入り込む恐れがある。それらがこの後のプロセスや使用時に問題を起こす可能性があれば、それらの物質を除去できる処置を行うと良い。たとえば、液体であれば、水洗して乾燥すれば良い。固体であればそれをエッチングする物質(液体。気体)を入れて、その後水洗して乾燥すれば良い。しかし、このような問題を発生させないために、電極・配線5008(5008−1、5008−2)を形成後(保護膜を形成するなら、その後)に、レーザーで圧力伝達孔5012を開ける方法もある。
或いは、最初から圧力伝達孔5012やコンタクト孔5007を形成したプレート5009を導電体基板5002に付着させても良い。接着層を用いても圧力伝達孔5012やコンタクト孔5007に残った接着層を除去すれば良い。このようにすれば、プレートにコンタクト孔や圧力伝達孔をあけるプロセスを別に行っておけば良いので、プロセスが短くなり製品作成時間が短くなる。このコンタクト孔や圧力伝達孔の合わせは余り精度は必要がないので、導電体基板5002とプレート5009との合わせに影響はない。
図19に示す実施形態では圧力伝達孔5012を作製しない場合には、貫通溝5004の圧力P1と外部とつながった貫通溝5003−1の圧力P2との差圧で導電体基板の側壁のダイヤフラム5002−2が変形する。尚、貫通溝周囲が導電体基板で露出して問題があれば、保護膜を積層するなどして保護すれば良い。保護膜としては、導電体膜が触れる環境によって適宜、材料と厚みを選択すれば良い。耐湿性向上にはシリコン窒化膜やシリコン酸窒化膜が良い。また、この図19では圧力伝達孔をプレート5009に形成したが、プレート5010に形成しても良い。コンタクト孔および電極・配線もプレート5010に形成しても良い。プレート5009と5010は同じ材料でも良いので、その場合には上下逆転して考えることもできる。
尚、図19に示す容量素子は、図18で説明した場合と同様に、貫通溝5003をダイシングで形成することもできる。貫通溝5003−1の溝幅c1はダイシングで決まる。プレート5009および5010のどちらかはダイシングせずに残しておく必要がある。どちらも残して貫通溝5003だけダイシングする場合には適当な波長や強度を持つレーザーを用いてダイシングすると良いが、その場合でもダイシングライン5001においてはプレート5009も5010も切断する必要がある。
図20は図19で示した導電体5002の内部に貫通溝5004がありダイヤフラムとなる導電体基板側壁5002−2とそれと鏡対称なものが貫通溝5003−1を挟んで向かい合わせになっている容量素子を示す。貫通溝5004(5004−1)は、導電体基板5002(5002−2−1、5002−3−1、5002−4−1、5002−5−1)で側面を取り囲まれ、上面および下面はそれぞれプレート5009および5010で覆われていて、閉じた空間となっている。また、圧力伝達孔5012(5012−1)も形成されている。これと鏡対称なものが、貫通溝5003−1を隔てて配置されている。すなわち、貫通溝5004(5004−2)は、導電体基板5002(5002−2−2、5002−3−2、5002−4−2、5002−5−2)で側面を取り囲まれ、上面および下面はそれぞれプレート5009および5010で覆われていて、閉じた空間となっている。また、圧力伝達孔5012(5012−2)も形成されている。導電体基板側壁5002−2−2は導電体基板側壁5002−2−1と対面していて、導電体基板側壁5002−2−1および導電体基板側壁5002−2−2を容量素子の対向電極となり、貫通溝5003−1が容量空間となっている。
これらの電極間距離c8は貫通溝の幅である。貫通溝空間5004−1の圧力P1と貫通溝5003−1の圧力P2の圧力差により、導電体基板側壁5002−2−1は変形する。また、貫通溝空間5004−2の圧力と貫通溝5003−1の圧力P2の圧力差により、導電体基板側壁5002−2−2は変形する。貫通溝空間5004−1の圧力と貫通溝空間5004−2の圧力を同じくし、(たとえば、圧力伝達孔5012(5012−1、5012−2)をあけて、そこから同じ圧力環境に接続すれば良い。)或いは、プロセスで同時に閉空間とすればこれらの空間の圧力は同じとなる。2つの貫通溝空間5004−1と5004−2の圧力をP1とすれば、P1>P2のときには、側壁5002−2−1および5002−2−2はともに貫通溝5003−1側に膨らみ、c8を小さくする。その結果容量が増大する。P1<P2のときは、側壁5002−2−1および5002−2−2はともにへこむので、c8が大きくなり。その結果容量が減少する。このように、図18や図19に示すような片側だけの容量素子よりも圧力変化による感度が良くなる。(c8の変化が大きくなるので)尚、A1−A2断面の側面図が図20(b)で、B1−B2断面の側面図が図20(c)である。コンタクト孔5007(5007−1、5007−2)、電極・配線5008(5008−1、5008−2)も形成されている。
図21は、図20に示す実施形態の発展系であり、図20に示す向かいあった1組の容量素子をさらに閉空間(これも貫通溝である)5003−6(5003−6−1、5003−6−2、5003−6−3、5003−6−4)で取り囲み、この閉空間5003−6は導電体基板側壁5002−6(5002−6−1、5002−6−2、5002−6−3、5002−6−4)によって側面側を取り囲まれている。また、閉空間5003−6の上面はプレート5009により、閉空間5003−6の下面はプレート5010により閉じられている。(導電体基板5002はプレート5009および5010と付着している。)貫通溝5003−6の圧力を外部から制御する場合には、圧力伝達孔5016を形成する。図21ではプレート5010に形成しているが、プレート5009に形成することもできる。容量素子側の貫通溝5004(5004−1、5004−2)に形成した圧力伝達孔5012(5012−1、5012−2)から圧力P1を導入し、圧力貫通孔5016から圧力P2を導入すると、容量素子のダイヤフラム5002−2−1および5002−3−1が変形し、圧力差P1−P2を検出できる。本発明の貫通溝5003−6(5003−6−1、5003−6−2、5003−6−3、5003−6−4)および5003−1は外部環境から隔離されているので、図20に示すような容量素子とは異なり、外部環境と異なる圧力を貫通溝5003−6(5003−6−1、5003−6−2、5003−6−3、5003−6−4)および5003−1に導入できる。(もちろん、図20に示す容量素子を圧力容器などに入れれば、その外側の圧力と異なる状態にすることができる。)さらに容量素子は導電体基板5002−6(5002−6−1、5002−6−2、5002−6−3、5002−6−4)で保護されているので、容量素子を外部環境から隔離できるので、信頼性を向上できる。尚、図21(b)はA1−A2に沿った断面の側面図である。コンタクト孔5007(5007−1、5007−2)および電極・配線5008(5008−1、5008−2)も形成されている。貫通溝5003−1の電極間距離c8が、その両側の導電体電極側壁5002−2−1および5002−2−2の変形により変化する。
図22は、図21をさらに発展させた本発明の実施形態である。この実施形態では、容量素子は4角形形状(平面図の形状を言う。立体的には角柱となる。)で、(三角形形状、5角形形状、それ以上の任意の多角形状でも良い。ここでは矩形形状(正方形状含む長方形状)で記載している。この実施形態では、矩形形状を形成する導電体基板のすべての側面がダイヤフラムの機能を果たす。すなわち、中心に存在する貫通溝5022−1を導電体基板側壁5020−1(各側壁は5020−1−1、5020−1−2、5020−1−3、5020−1−4)が囲む。その周囲を貫通溝5022−2(5022−2−1、5022−2−2、5022−2−3、5022−2−4)が囲む。さらにその貫通溝を導電体基板側壁5020−2(各側壁は5020−2−1、5020−2−2、5020−2−3、5020−2−4)が囲む。その周囲を貫通溝5023−2(5023−2−1、5023−2−2、5023−2−3、5023−2−4)が囲む。さらにこの貫通溝を導電体基板側壁5020−3(各側壁は5020−3−1、5020−3−2、5020−3−3、5020−3−4)が囲む。これらの貫通溝内の圧力によって、各導電体基板の側壁が変形する。たとえば、貫通溝5022−1の圧力と貫通溝5022−2の圧力差により、5020−1の各側壁が変形する。また、貫通溝5022−2の圧力と貫通溝5022−3の圧力差により、5020−2の各側壁が変形する。従って、導電体基板側壁5020−1を1つの電極とし、導電体基板側壁5020−2を他方の電極とし、貫通溝5022−2を容量空間とする容量素子が形成される。周囲がすべて容量となっているので、少ない面積で大きな容量を作ることができる。(尚、1面だけの場合は図21に示されているが、2面だけに容量を作ることもでき、さらに3面だけに容量を作ることができる。ここで容量と言っているのは、圧力差によって容量が変化する容量を言う。)各側壁の厚み(変形する側壁の厚みのことで、図に示すe2およびe3)は使用する圧力や、ダイヤフラムの大きさ、材料の特性で選定すれば良い。4面の側壁厚みを適宜変更しても良い。(同じ厚みにすれば側壁変形量はほぼ同じになる。)貫通溝幅では図に示すj2が容量特性に影響するので、精度良く形成する必要がある。この貫通溝幅も4面それぞれで変更することもできる。(同じにすれば、その両側の側壁電極の厚みも同じにすれば、容量変化も同じになる。)図22で示す容量素子の周りをさらに貫通溝、その周りを導電体基板で囲むということを繰り返して、多数の容量素子を作ることもできる。一番外側に来る導電体基板の厚み(図22では、5020−3の厚みe1)は他の変形する側壁よりも厚くして圧力差により変形しないようにすることが望ましい。圧力センサーとしての強度や信頼性を確保し、内部の容量素子を保護する役目を果たしているのが、5020−3である。貫通溝5022−3の幅j1はそれほど正確に管理しなくても良いが、測定圧力内で導電体側壁5020−2が最外側の導電体側壁5020−3と接触しないようにする必要がある。尚中心部に貫通溝ではなくて、矩形形状の導電体基板5020を配置してそのまわりを貫通溝、そのまわりを導電体基板の側壁電極として次々に囲むこともできる。この場合、中心にある導電体基板5020は変形しないが電極として使用することができる。
図22(a)のA1―A2断面の側面図が図22(b)である。導電体基板5020の上面にプレート5009、下面にプレート5010が付着して、貫通溝を閉空間としている。貫通溝5022−3(5022−3−1、5022−3−3)にはプレート5009に圧力伝達孔5024(5024−1、5024−2)があいている。貫通溝は5022−3−1、5022−3−3はつながっているので、圧力伝達孔5024(5024−1、5024−2)は1つでも良い。中心の貫通溝5022−1にもプレート5009に圧力伝達孔5023があいている。さらに、貫通溝5022−2(5022−2−1、5022−2−3)にはプレート5010に圧力伝達孔5025(5025−1、5025−2)があいている。貫通溝は5022−2−1、5022−2−3はつながっているので、圧力伝達孔5025(5024−1、5024−2)は1つでも良い。貫通溝5022−1の圧力と貫通溝5022−3の圧力は異なっていても良いが、その場合には、圧力伝達孔につながる部分の圧力も異なってくる。ここでは、同じ圧力P1が導入されるとする。貫通溝5022−2の圧力をP2とすると、P1とP2の圧力差により、貫通溝5022−2を囲む導電体基板側壁5020−2(5020−2−1、5020−2−2、5020−2−3、5020−2−4)および、5020−1(5020−1−1、5020−1−2、5020−1−3、5020−1−4)は変形し。これらの電極によって挟まれた容量空間5022−2(5022−2−1、5022−2−2、5022−2−3、5022−2−4)の容量が変化する。この容量変化を検出することにより、圧力差が分かる。図22に示す矩形(4角形)形状の容量素子は角部は殆ど変形せず、その側面の側壁電極が変形すると考えることができる。これによって、シンプルに側壁が変形するので、ダイヤフラムとして扱い易い。従って、容量変化も前述した式をもとにして計算できるし、逆に容量変化から圧力差を計算できる。たとえば、容量空間である貫通溝5022−2の静電容量を各側壁電極につき、C1〜C4とすれば、導電体側壁5020−1および5020−2に生じる静電容量Cは、C1〜C4の並列接続と考えることができるので、C=C1+C2+C3+C4となる。従って、1つの対向する側壁電極間に生じる静電容量の約4倍の容量を示し、その変化量も約4倍となる。
図22のさらなる発展実施形態として、多角形形状のものの多角形を大きくすれば究極的には円形状や楕円形状になる。円形形状の場合について、図23に示す。図23(a)はその平面図を示す。中心部に貫通溝5032−1、その周りに円形形状の導電体基板の側壁電極5030−1、その周囲に貫通溝5032−2、その周りに円形形状の導電体基板の側壁電極5030−2、その周囲に貫通溝5032−3、その周りに円形形状の導電体基板の5030−3がある。この周りをさらに貫通溝、そのまた周囲を導電体基板で囲んで多数の容量素子を形成しても良い。これらの容量素子は、プレート5009や5010にコンタクト孔および電虚・配線を形成して並列或いは直列或いは他の素子と接続することができる。図23に示す容量素子は円形形状の素子となっているが厚さ方向を考えれば円筒(或いは円柱)形状の容量素子である。一番外側の導電体基板も電極として使用することはできるが、余り薄くはできないので、通常は側壁が変形しない電極となる。しかし、一番外側を露出させて電極とすると水分や汚染等の影響で容量素子の特性が悪くなる可能性があるので、保護膜や保護樹脂を形成した方が良い。通常は一番外側の導電体基板は電極としては使用せず、容量素子パッケージの保護基板として使用した方が良い。強度や耐環境性を考えて厚みを厚くした方が良い。また最外側は円形にする必要がなく任意の形状、たとえば四角形形状或いは矩形形状(立体的に見れば、四角柱形状或いは矩形柱状)とすることができる。
図23(b)は図23(a)のA1−A2断面の側面図を示す。導電体基板5030の上面にはプレート5009が付着し、導電体基板5030の下面にはプレート5010が付着して貫通溝を閉空間にしている。貫通溝5032−1にはプレート5009に圧力伝達孔5033が形成され、貫通溝5032−2にはプレート5010に圧力伝達孔5035(5035−1、5035−2)が形成され、貫通溝5032−3にはプレート5009に圧力伝達孔5034(5034−1、5034−2)が形成されている。本実施形態は貫通溝が円形(円筒、或いは円柱)形状に(貫通溝5032−2も)形成され、それ(貫通溝5032−2)を挟んでいる導電体基板の側壁電極5030−1および5030−2も円形(円筒、或いは円柱)形状に形成され、それを同心円状に形成することにより、容量空間となる貫通溝5032−2の幅(電極間距離)r(j2)はどこでも一定となる。側壁電極およびそれらに挟まれた貫通溝も同心円状に形成すれば、側壁電極503−1の変形量はどこでもほぼ一定となり、側壁電極5030−2の変形量もどこでもほぼ一定となる。従って、側壁電極5030−1と5030−2の間の貫通溝5032−2に生じる容量も圧力差による容量変化もどこでもほぼ一定となる。この容量変化から圧力差を知ることが可能となる。圧力伝達孔5034、5033、5035を用いた圧力差によって、rが変化するので、容量が変化し、これを用いて圧力差を知ることができる。
図23は円形形状であるが、楕円形状や他の閉曲線形状を用いて、容量空間となる貫通溝全体の幅(電極間距離)を一定にすることができる。さらにこれらの曲線形状と多角系形状の容量素子を組み合わせることもできる。最外側の形状だけ取扱易い形状(たとえば、四角形形状や矩形形状)にしておくことができるので、圧力に応じて自由に組み合わせることが可能である。
図24は本発明の1実施形態である半導体圧力センサーの構造を示す。半導体基板11の表面に半導体基板の厚み方向に深い溝16、17、18、19、20が存在する。この溝は、直方体形状になっていて、図25に示すように、半導体基板表面の上方から見ると矩形形状になっている。これらの溝および半導体基板表面には絶縁膜12が存在する。溝16、18、20の溝の表面および底面、並びに半導体基板の所望部分に導電膜13が存在する。溝16と18の間に存在する溝17には導電膜13は存在しない。また、溝18と20の間に存在する溝19にも導電膜13は存在しない。溝17や19はキャップ14で蓋がされていて、溝17、19の内部は気密された空間15、25になっている。一方、16、18、19の溝は口が開放されていて、外界環境(圧力を測定すべき所)と同じ圧力になっている。気密空間15の内部圧力は、通常は真空に近い低い圧力状態になっている。ただし、外部環境の圧力によっては、大気圧に近い減圧状態になる場合もあるし、大気圧以上の圧力になる場合もある。溝16と溝17の間における半導体基板21の厚み、溝18と溝17の間における半導体基板22の厚み、溝18と溝19の間における半導体基板23の厚み、および溝19と溝20の間における半導体基板24の厚みは薄く、圧力によりそれぞれの半導体基板21〜24が変形できるようになっている。(これらの厚みは同じでなくても良いが、以下においては特に記載しない限り同じ厚みtと考える。)
図24(a)における電極Aと電極Bとの間の容量は、図24(b)におけるように絶縁膜12−半導体基板21−絶縁膜12−空間15―絶縁膜12―半導体基板22―絶縁膜12の直列接続となっている。図24(a)における電極Aと電極Bとの間の容量をCA−B、溝16と半導体基板21の間の絶縁膜12の容量をCI1、半導体基板21の容量をC21、半導体基板21と気密空間15との間の絶縁膜12の容量をCI2、気密空間15の容量をC15、半導体基板22と気密空間15との間の絶縁膜12の容量をCI3、半導体基板22の容量をC22、半導体基板22と溝18との間の絶縁膜12の容量をCI4とすると、1/CA−B=1/CI1+1/CI2+1/C15+1/CI3+1/C22+1/CI4となる。1/C15以外は一定であるから、後述するようにCA−BはC15に依存する。溝18の他の側にも同様に、電極BとCとの間に容量CB−Cが形成され、CB−Cは半導体基板23と24の間にある気密空間15の容量C15に依存する。
図25は、図24に示す構造の平面図であり、半導体基板表面の上方から見た模式図である。溝の形状は略直方体であるから、図25の平面図においては矩形、すなわち長方形となる。気密空間は略直方体であり、図24に示すように深さがh(絶縁膜12の厚みは薄いので、溝の深さにほぼ等しい)で、図25に示すように横の長さがm、縦の長さがnである(絶縁膜12の厚みは薄いので、溝17の横、縦の長さにほぼ等しい)から、気密空間の容量C15は、C15=ε*S15/m=ε*nh/mとなる。気密空間の面積Sはnhである。圧力センサーの主要容量を決定するのは、溝17や19であるから、溝17と16、溝17と溝18、溝19と溝18、溝19と溝20の重なり部分が気密空間15の容量を決定する。従って、これらの重なり部分(面積Sに相当)をできるだけ大きくする。
図26は、外部から圧力P0を受けたときの本発明の圧力センサーの状態を模式的に示したものである。絶縁膜など説明に不要なものは省略している。気密空間15内の圧力をP15、気密空間25内の圧力をP25とする。溝16、溝18および溝20には圧力Pがかかっているから、P0>P15、P25のとき、半導体基板21、22、23、24は溝16、18、20側から押されて、気密空間側へ湾曲する。その結果、気密空間の距離は初期状態より減少する。この時の気密空間15の容量C15は、気密空間の幅をqとする(この幅は平均幅と考える)と、C15=ε*nh/qとなる。m>qであるから、容量は増加する。従って、圧力差による容量変化量が分かるので、(気密空間の圧力P15は分かっているので)外部圧力Pを把握することができる。たとえば、気密空間が真空状態であれば、P15=0である。
容量変化量は大きいほど検出感度が高くなる。半導体基板の厚みが675μmで、溝の深さhが500μm(=0.5mm)、nが1mm、mが25μm(=0.025mm)であるとき、気密空間の容量は、C15=ε*1*0.5/0.025=20εとなる。このときの本発明のセンサーが占める面積はm*n、すなわち、0.025*1=0.025mm2である。これに対して、これと同じ容量を持つダイヤフラムを従来方法で平面的に作成すると、センサーの占める面積は、横が500μm(=0.5mm)、縦が1mmとなるので、0.5*1=0.5mm2である。従って、本発明のセンサーの占める面積は、従来法に比較して、約1/20となり、大幅にセンサーを縮小できる。
容量は並列に接続することにより大きくできるので、上記の容量を並列に接続していくことによりどんどん大きく出来る。すなわち、本発明を用いることにより、同じ面積で従来法よりも約20倍の容量を持つ容量型圧力センサーを作成することができ、センサー感度も約20倍高めることができる。さらに、本発明は、フォトリソグラフィ等のLSI技術を用いているので、気密空間の幅mをかなり小さくできる。たとえば、10μm以下も可能である。従って、従来法に比較してさらに面積を小さくでき感度も高めることができる。
次に、図27(図27−(1)、図27−(2)、図27−(3)に図面は分割している)により、本発明の製造方法について説明する。図27(a)に示すように、半導体基板41の表面に絶縁膜42を形成する。この絶縁膜42は、直接半導体基板41上にフォトレジスト43を形成して半導体基板41を汚染することを防止したり、エッチング時のダメッジを緩和させたり、或いはフォトレジスト43との密着性を向上したりする目的で、形成される。従って、このような問題が発生しない場合や発生しても問題が生じない場合には、絶縁膜42を形成しなくても良い。絶線膜42はシリコン酸化膜(SiOx)、シリコン窒化膜(SiNy)、シリコン酸窒化膜(SiOxNy)、その他無機系や有機系の絶縁膜などである。これらの絶縁膜は、熱酸化法、熱窒化法、CVD法、PVD法、塗布法などで作成できる。絶縁膜42の厚みは約10nm〜1μmで良い。さらに半導体基板表面への積層により反りが発生する場合などは半導体基板裏面にも形成しても良い。半導体基板として、シリコンやゲルマニウムや炭素などの単元素半導体、GaAsやInPなどの2元系半導体、3元系半導体、これらの半導体基板を用いたSOI(Semiconductor On Insulator)基板、これらの基板同士を接合した基板、これらの基板とガラス・セラミック等の絶縁基板と貼り合わせた基板などを使用できる。絶縁膜42の上にフォトレジスト膜43を作成し、溝を形成したい所をフォトリソ法により窓あけする。
次に図27(b)に示すように、パターニングされたフォトレジスト43をマスクにして、窓あけされた部分の絶縁膜42および半導体基板41をエッチングし、溝44〜48を形成する。上述したように、本発明においては溝を増やすことにより容量を大きくすることができるので、所望の容量を得られるように溝の数を調整する。エッチングにはサイドエッチングの少ない異方性エッチングが望ましい。たとえば、ドライエッチング装置を使用して、反応性イオンエッチング(RIE)やボッシュプロセス(Bosch Process)を用いて異方性エッチングを行うことができる。これらの異方性エッチングを用いることにより、最初の開口形状に合った溝を形成することができる。エッチングガスとしては、フッ素系ガス(CF4、C2F6、C3F8、CHF3、SF6等)や塩素系ガス(CCl4等)が用いられる。溝の平面的な形状は長方形が望ましく、従って、溝は略直方体形状が望ましい。もちろん、他の形状、たとえば、立方体や円柱状や長円柱状でも本発明を使用できる。
溝の深さhは深いほど容量を大きくできるが、半導体基板の厚みiよりは小さくして半導体基板を貫通しないようにする。(ただし、後述する別の実施形態では、完全に貫通しても良い。)たとえば、最近のドライエッチング装置においては、半導体基板の厚みが675μmのときは、h=650μm程度までは制御可能である。hを余り大きくして半導体基板裏面から溝までの距離が小さくなると、外部圧力によっては薄くなった半導体基板裏面が破壊する恐れもあるので、外部圧力との関係や、エッチング性能(精度)も考慮して、hを決定することが望ましい。もちろん、設計値としてhを決定することは当然である。
気密空間となるべき溝45や47の幅(容量に関係する幅)はmである。上述したように、このmの値は小さいほど容量が大きくなるので、圧力による変形に対して変化率が大きくなるので望ましいが、溝のアスペクト比(溝深さhに対する溝幅mの比)が大きくなるので、異方性エッチングの性能によって決定しなければならない。また、圧力による変形量も考慮する必要がある。気密空間となる溝45や47の両側の半導体基板の壁(隔壁または側壁と呼ぶ)49〜52の厚みはtであるが、この厚みが薄くなるほど圧力変化により変形しやすくなる。この隔壁が変形してmが小さくなって、両側の隔壁(45の溝に対しては、隔壁49と50)が接触する可能性もある。接触するとそれ以上隔壁は変形しないので、隔壁の損傷を防止することができるというメリットがある。近年のLSIの発展により、hが大きくなってもtの厚みを薄くできる。たとえば、hが500μmのときに1〜10μmに制御可能である。同様にmも1〜10μmまで小さくすることが可能である。
外部に対して開放する溝となる44、46、48の幅sも小さいほどセンサーサイズを小さくすることができるが、この後のプロセスで絶縁膜や電極材料となる導電体膜を積層する必要があるので、ある程度のスペースが必要である。これも最近の薄膜形成技術は幅が5μmで深さが500μmでもこれらの膜を溝の内面への形成を可能にしているので、これよりも大きいアスペクト比でも溝形成と膜形成が可能である。要は、絶縁膜および導電体膜を溝内面に形成でき、かつ開口からの圧力伝達が隔壁49、50、51、52に行うことができる程度のスペースにすれば良い。
次に図27(c)の示すように、絶縁膜55を溝部(側壁部、底部)および半導体表面に形成する。その後で、導電体膜56をこの絶縁膜55の上に積層する。尚、絶縁膜55を形成する工程と導電体膜56を形成する工程の間に導電体膜56を半導体基板41や他の導電体層へコンタクトするためのコンタクト孔を形成する工程を追加しても良い。絶縁膜55は、シリコン酸化膜(SiOx)、シリコン窒化膜(SiNy)、シリコン酸窒化膜(SiOxNy)、その他無機系や有機系の絶縁膜などである。これらの絶縁膜は、熱酸化法、熱窒化法、CVD法、PVD法、塗布法などで作成できる。
絶縁膜42の厚みは約10nm〜1μmで良い。さらに半導体基板表面への積層により反りが発生する場合などは半導体基板裏面にも形成しても良い。導電体膜56は、リンやボロンやヒ素などをドープして導電性を持った多結晶シリコンやアモルファスシリコン、アルミニウムやタングステンやチタニウムや窒化チタンやチタンタングステンや銅や各種の合金などの金属膜、或いは導電性ポリマーでも良い。或いは、多結晶シリコン膜を積層した後にイオン注入などでリンやボロンやヒ素などをドープしても良い。積層する膜は、特にCVD法やPVD法では溝の内部の厚みが薄くなるので、それを考慮して厚さや積層条件を選択する必要がある。通常、導電体膜56の厚さは最も薄い所で10nm〜500nm以上とする。
次に図27(d)に示すように、導電体膜56の必要な部分以外をエッチング除去する。導電体膜56は容量部分の電極となる。たとえば、溝部44、46、48の導電体膜56は容量部分の電極となる。気密空間となる溝部45、47の導電体膜56は除去される。ただし、回路上問題なければ、溝部45、47に導電体膜56を残しておいても良い。いずれにしても容量部分が形成されるように導電体膜56をパターニングする。ここでは示していないがパターニングはフォトリソ法などを用いる。導電体膜56のエッチングはドライエッチングやウエットエッチングを用いる。エッチング時に絶縁膜55は導電体膜56のエッチングストッパとなり、半導体基板41にダメッジを与えない。導電体膜56は配線パターンとして用いても良い。センサーの周辺には回路を形成する場合もあるので、それらの配線として導電体膜56を用いても良い。溝部45や47の側面に積層した導電体膜56をエッチングするには等方性ドライエッチングやウエットエッチングが良い。また、溝部の側面部の導電体膜56は、配線として形成される平坦部や容量で必要な導電体膜56とつながって容量に悪影響を与えなければ残っていても良いので、異方性エッチングを用いて行っても良い。
次に図27(e)に示すように、キャップ57を被せて、溝部45や47に蓋をして気密空間を形成する。キャップ57はプレート状になっていて半導体基板41とほぼ同じ大きさであり、圧力センサーを形成するウエハプロセスで流動することができる。キャップ57には接着剤58が付いていて半導体基板と良好に接着できるようになっている。特に気密空間となる溝部45、47を気密にシールする。この気密を完全にするために、気密空間となる溝部45や47の部分のキャップが、図27(f)に示すように、凸状59になっていても良い。凸状部分59があることによって、導電体膜56のある部分との接着剤58の厚みが同じにできるため、気密空間となる溝部45、47を良好に気密にシールできる。この蓋をする工程において、気密空間55の内部圧力P0が決定される。すなわち、この蓋をする工程を圧力P0に保たれた装置の中で行うことにより、気密空間55の内部圧力をP0にすることが可能となる。接着はこの工程を行う温度とほぼ同じ温度で確実にできるようにすることが望ましく、そのための接着剤を選定する。温度を上げて接着すると接着剤などからアウトガスが出たりして気密空間55の圧力が上がったりして好ましくない場合もある。もちろん、このような問題が発生しなければ高温で接着しても良い。また、この接着を確実にできるように接着時にキャップの上部または半導体基板の裏面側からプレスしたり、圧力をかけたりしても良い。
キャップ57は、ガラス、セラミック、高分子材料などである。ガラスや石英や透明高分子材料の場合には、上方からの光が透過し、かつ下側からの反射光も透過するので、半導体基板41とキャップ57の合わせが容易となる。凸状部分59が存在する場合には、この突状部分59が合わせマークともなるのでより高精度に位置合わせができる。或いは、キャップ57はシリコンなどの半導体でも良い。キャップ57に半導体基板41と同じ材料を用いると、熱膨張係数が同じであるから、熱処理時に発生する反りや熱応力は発生しないという利点がある。或いは、金属プレートも使用できる。金属の場合には熱伝導が良いという利点や、静電気が発生しにくいという利点がある。キャップ57が半導体や金属の場合には電気を通すので、配線と接触して電気が流れて悪影響を及ぼす場所のキャップ57は除去する必要がある。尚、接着剤が絶縁性を持つものであれば、配線とキャップの間も絶縁されるので、キャップ57は除去しなくても良い。ただし、キャップ57を接着したことにより反りが大きくなる場合にはキャップ57の不要な部分を除去した方が良い。接着剤58はエポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、アクリル樹脂系などの高分子接着材などがある。
さらに、接着剤58をなくすこともできる。すなわち、図27(g)に示すように、溝部45や47の溝上部の溝から出た所の平坦領域にある絶縁膜55を除去して(たとえば、フォトリソ法とエッチング法により)半導体基板を露出させる。このときに溝部45や47の内部の絶縁膜55も除去して良い。キャップ57としてガラス基板を用いて、突状部分59を図27(f)における場合よりも張り出させて、この突状部分が露出した半導体基板に接触できるようにする。この接触部分は、ガラス基板側も半導体基板側もできるだけ平滑にするのが良い。図27(g)に示すように、他の領域には接触しないようにする。半導体基板(シリコンなど)および/またはガラス基板側に圧力をかけて、400℃程度の熱処理と、半導体基板に電圧を印加して半導体基板とガラス基板の突状部分59を接合するいわゆる陽極接合法により確実に接合できる。陽極接合法では接着剤などを用いないので熱処理時などの接合時にガスが出ないという利点があるので、気密空間の圧力を確実に真空に近い低圧状態にすることができる。尚、絶縁膜55がシリコン酸化膜である場合には、溝部45や47の溝上部の溝から出た所の平坦領域にある絶縁膜55を除去しなくても、約400℃〜500℃以上の温度と半導体基板(シリコンなど)および/またはガラス基板側に圧力をかけることにより、ガラス基板と半導体基板上のシリコン酸化膜を接合できる。この場合にも、接着剤などを用いないので熱処理時などの接合時にガスが出ないという利点があるので、気密空間の圧力を確実に真空に近い低圧状態にすることができる。
次に、図27(h)におけるように、フォトリソ法およびエッチング法を用いて、気密空間55をシールする部分のキャップ57および接着剤58を残して、他の領域で不要なキャップ57および接着剤58を除去する。尚、図27(h)は図27(e)に続く工程であるが、図27(f)や図27(g)に続く場合にも図27(h)と同様に、フォトリソ法およびエッチング法を用いて、気密空間55をシールする部分のキャップ57および接着剤58を残して、他の領域で不要なキャップ57および接着剤58を除去する。以上のようにして、容量型の圧力センサーが形成される。溝部55や57はキャップ57で気密にシールされ、溝部44、46、48は外部へ開口されているので、外部の圧力が溝部44、46、48へ伝達される。
尚、図27(i)は図27(h)の応用例であるが、図27(i)に示すように、外部へ開口されなければならない溝部44、46、48の上部にある一部のキャップ57および接着剤58を除去し、溝部44、46、48へ外部の圧力が伝達される程度の開孔(圧力伝達用開孔)59をあけることにより、本発明の圧力センサーを完成させることができる。この開孔59は、フォトリソ法およびエッチング法でもキャップ59および接着剤58を除去してあけることできるし、或いはレーザー法により穴あけをすることもできる。この開孔59のサイズは圧力が伝達される程度の小さな孔で良い。たとえば、0.01mm程度でも充分である。もちろん、大きくても良い。
図28は、本発明の第2の実施形態を示す。第2の実施形態は、第1の実施形態の変形版であるが、導電層13が気密空間15内に形成されている。導電層13は容量電極を形成する。図28における符号に関して、図24と同じものについては同じ符号を付している。図28(a)において、キャップ14は溝17や19を被って気密空間15や25を形成しているのは、図24と同じであるが、キャップ14は導電層14の上に形成されて、密着している。キャップ14を直接導電層13に接着することに問題がある場合には、接着層を介在したり、絶縁膜を介在したりしても良い。特に、キャップ14が半導体や金属などの導電性の材料の場合には、隣の電極同士(13−1と13−2、13−3と13−4)が短絡してしまうので、直接接合は問題がある。容量は気密空間15、25内で形成されている。すなわち、溝部17の一方の側壁に積層された導電層13(13−1)と同じ溝部17の対向する他方の側壁に積層された導電層13(13−2)で容量を形成している、従って、13−1と13−2は完全に電気的に分離している。すなわち、導電層13(13−1)は一方の電極であり(電極13−1)、導電層13(13−2)は他方の電極であり(電極13−2)、容量はその間の空間ということになる。同様に、気密空間25において、13−3と13−4も分離している。
図28(a)において、電極13−1と13−2は距離uだけ離れている。図28(a)の平面構造は図25と同じであるが、図25に示す溝部17や19の溝幅mとの関係について正確に言えば、m=u+2(絶縁膜12の厚み+導電層の厚み)である。図28(a)におけるA(電極13−1に接続している)とB(電極13−2に接続している)との間の回路は、図28(b)であり、図24に示される容量に比べて非常にシンプルである。従って、設計が容易である。このA−B間の容量CA−Bは、CA−B=ε*S/u=ε*nh/uとなり、極めて簡単な式となる。mは小さいほど検出感度が良くなることは前に述べたが、現状のエッチング精度から考えて、5μm程度が下限値と考えられる。hが500μmならアスペクト比は100である。溝部17等の側壁における導電体層(電極)13−1〜4の厚みは電気が通れば良いので、約10nmが下限値である。溝部17等の側壁における絶縁膜12の厚みは、電極13−1〜4と半導体基板との絶縁が確実に取れれば良いので、電圧にもよるが5V印加時で約10nmが下限値である。溝部17等の側壁における絶縁膜12は、通常は約50nm〜500nm、溝部17等の側壁における電極13の厚みは通常50nm〜500nmである。以上の値を考慮して、容量CA−Bを見積もる必要がある。尚、hも溝部底の絶縁膜の厚み分を差し引く必要があるが、通常溝部17等の底部における絶縁膜12の厚みは1μm以下であるから、この容量計算では、hと考えて差し支えない。
C−D(Cは電極13−3に、Dは電極13−4に接続している)間の容量CC−Dも同様に、CC−D=ε*S/u=ε*nh/uとなる。(溝部17と19のサイズは同じとする)この容量を並列につなげば、全体容量は、C=CA−B+CC−D=2C0(CA−B=CC−D=C0)となる。これらの容量を並列に接続するのは、キャップ14の外に出た電極を接続していけば良いので、極めて簡単に設計できる。たとえば、従来法によって半導体基板の表面に形成したダイヤフラム容量(電極間距離10μm、平面サイズ1mm*1mm)と同じ容量(C/ε=1/0.01=100(mm))を持つ本発明のセンサーのサイズは、u=10μm(m=11μm)、n=1mm、h=0.5mmとすると、C/ε=0.5/0.01=50(mm)であることから、約1mm*0.022mmであれば良い。すなわち、本発明のサイズは、従来法に比べて約1/50のサイズで良く極めて小さくなる。
次に本発明の第3の実施形態を図29に基づいて説明する。図29において、半導体基板61の第1の面(表面)からその裏である半導体基板61の第2の面(裏面)に貫通する溝部(貫通孔)71〜74が存在する。貫通孔71〜74の内壁および半導体基板表面および裏面の必要な部分に絶縁膜62があり、その上であって貫通孔71〜74の内壁および半導体基板表面および裏面の必要な部分に導電体層63が形成されている。さらに半導体基板61の表面および裏面の導電体層63、必要ならば溝71〜74の内部の導電体層63の上に絶縁膜64を形成している。絶縁膜62は、半導体基板面(表面、裏面、溝部内壁)と導電体層63と絶縁する目的で存在する。ただし、接続が必要な部分の絶縁膜62は導電体膜63を形成する前に除去される。貫通孔71〜74は、後述するように平面的には長方形(横(幅)m、縦n)であり、深さはh(この場合、半導体基板61を貫通しているので、半導体基板の厚みに等しくなる。)であり、従って、貫通孔71〜74の形状は直方体となっている。絶縁膜64の目的は、導電体層の保護と絶縁性の確保である。この後で、絶縁膜64の上に、キャップ基板65(半導体表面側)およびキャップ基板66が接着されている。尚、問題ないならば、導電体膜63の上に直接キャップウエハ65や66を接着しても良い。
貫通孔71〜74には、半導体基板表面側または裏面側で交互に外部環境とつながる圧力導通孔67(表面側)、68(裏面側)があいている。すなわち、貫通孔71には裏面側に圧力導通孔68があいていて、貫通孔71の隣の貫通孔72には表面側に圧力導通孔67があいている。貫通孔72の隣の貫通孔73には裏面側に圧力導通孔68があいていて、貫通孔73の隣の貫通孔74には表面側に圧力導通孔67があいている。この圧力導通孔67や68は、キャップ基板65や66を接着する前にあいていても良いし、キャップ基板65や66を接着した後であけても良い。このように形成された貫通孔71は圧力導通孔68以外に外部環境と導通する所はなく、気密になっている。貫通孔72は圧力導通孔67以外に外部環境と導通する所はなく、気密になっている。貫通孔73や74も同様である。
図29(b)は半導体基板表面側から見た平面図である。ただし、必要な部分のみを透視的に示している。貫通孔71は平面的には長方形形状となっている。貫通孔の内部に絶縁膜62が積層されている。その上に導電体膜63が積層されている。導電体膜63は、短辺側および底部(下から見ると上底部となる)の導電体膜は除去されている。すなわち、導電体膜63は、長辺側の貫通孔側面に積層されていて、貫通孔71の両側壁に導電体膜63(63−1)および導電体膜63(63−2)が存在し、電気的に完全に分離している。貫通孔71の空間をはさんで電極63−1と63−2が対向しているので、この部分が容量として作用する。すなわち、電極63−1と63−2の間の距離をv、貫通孔71の短辺側の絶縁膜の間の距離をwとすると、貫通孔71の容量C71は、C71=ε*wh/vとなる。
図29(b)に示すように、貫通孔71の裏面側を被っているキャップ基板66には圧力導通孔68が半導体基板裏面側にあいていて、貫通孔71の表面側を被っているキャップ基板65には圧力導通孔はあいていない。このことは図29(a)から明確である。貫通孔72の表面側を被っているキャップ基板65には圧力導通孔67が半導体基板表面側にあいていて、貫通孔72の裏面側を被っているキャップ基板66には圧力導通孔はあいていない。貫通孔73の裏面側を被っているキャップ基板66には圧力導通孔68が半導体基板裏面側にあいていて、貫通孔73の表面側を被っているキャップ基板65には圧力導通孔はあいていない。貫通孔74の表面側を被っているキャップ基板65には圧力導通孔67が半導体基板表面側にあいていて、貫通孔74の裏面側を被っているキャップ基板66には圧力導通孔はあいていない。
そこで、半導体基板表面側に圧力P1をかけ、半導体裏面側に圧力P2をかける。(図29(a)を参照)圧力P1はキャップ基板65に開けられた圧力導通孔67を通して、貫通孔72や74の内部にも作用する。しかし、貫通孔71や73には、圧力導通孔があいていないし、他の部分は気密になっていて、かつキャップ基板65は圧力P1によって変形しないように作成されているので、貫通孔71や73には、半導体基板側壁部61(61−1、61−2、61−3)を除いて、圧力P1の影響を受けないようになっている。また、圧力P2はキャップ基板66に開けられた圧力導通孔68を通して、貫通孔71や73の内部にも作用する。しかし、貫通孔72や74には、圧力導通孔があいていないし、他の部分は気密になっていて、かつキャップ基板66は圧力P2によって変形しないように作成されているので、貫通孔72や74には、半導体基板側壁部61(61−1、61−2、61−3)を除いて、圧力P2の影響を受けないようになっている。
貫通孔71と72の間の半導体基板61−1、貫通孔72と73の間の半導体基板61−2、貫通孔73と74の間の半導体基板61−3は、その厚みt(同じとする)は薄いので、P1とP2の圧力差によって変形するようになっている。たとえば、P2<P1のときは、隔壁(側壁)61−2は貫通孔71側に湾曲する。すなわち、vは最初の幅v0より小さくなる(この幅vをv71とする)。(隔壁は等方的に圧力を受けるが、隔壁の上下左右は固定されているので、中心付近の変形が最も大きくなり、隔壁は湾曲するので、容量の計算には平均幅または積分幅を考える必要があるが、ここでは簡易的に平均幅で考える。)一方、貫通孔72は膨らむので、貫通孔vはv0より大きくなる。また、貫通孔72は貫通孔73の圧力の影響も受けるので、貫通孔73側にやはり膨らんでいく。(この幅vをv72とする)同様に、貫通孔73の幅vは小さくなる。(この幅vをv73とする)同様に、貫通孔74の幅vは大きくなる。(この幅vをv74とする)
貫通孔71の容量C71は、C71=ε*hn/v71、貫通孔72の容量C72は、C72=ε*hn/v72、貫通孔73の容量C73は、C73=ε*hn/v73、貫通孔74の容量C74は、C74=ε*hn/v74となる。P2<P1のときには、C71=C73>C72=C74となる。P1に導通する側の容量は同じ方向に増減するので、これらを並列につなぐことにより、全体容量を大きくできる。また、P2に導通する側の容量も同じ方向に増減するので、これらを並列につなぐことにより、全体容量を大きくできる。このようにして、P1とP2の圧力差を検出でき、圧力センサーを作成できる。
半導体基板の表面側または裏面側だけに圧力導通孔を設けて(たとえば、貫通孔71や73の裏面側に圧力導通孔68を設けて、貫通孔72や74の表面側に圧力導通孔を作成しないで、貫通孔72や74を気密に密閉して圧力センサーを形成できる。気密になった貫通孔の圧力は、キャップ基板65や66を接着するときに、所望の圧力で形成すると得ることができる。たとえば、真空中(1気圧より低い圧力)で行うことにより、その圧力で貫通孔内部を密閉できる。接着には、上述したように接着剤を用いた接着や陽極接合法で接着がある。
また、圧力導通孔は圧力が伝達する程度の大きさがあれば良いが、貫通孔開口部より大きくあけても良い。あるいは上述したようにあらかじめ大きく開口部をあけたキャップ基板を接着しても良い。接着は、これまでも説明したように接着剤を用いても良いし、陽極接合法によって形成しても良い。
第3の実施形態の利点は、半導体基板に完全な貫通孔をあけてしまうので、深さ方向の制御が不要なことである。すなわち、ドライエッチングで貫通孔を形成するとき、オーバーエッチングを十分に行うことができる。また、両方にフォトリソ法によりパターニングしておいて、両面からドライエッチングし、貫通孔を半導体基板内で合わせても良い。このようにするとエッチング時間を大幅に短縮できるし、アスペクト比も実質的に半分程度になるので、精密な貫通孔をあけることができる。
図30に、第4の実施形態を示す。第4の実施形態では、図30に示すように、半導体基板81の両面(表面および裏面)から溝部91、92および溝部93、94を形成し、完全に貫通させないで、反対側の面に溝部が達しないようにする。溝部の重なり部分を利用して、容量を形成する。溝部内部および半導体基板表面・裏面には絶縁膜82、83および導電体膜84、85を形成する。溝部内部の導電体膜84は底部および側面部で除去され、互いに対向して電極となり、容量を形成する。溝部はキャップ86、87で蓋をされ、圧力導通孔88、89が形成される。圧力導通孔から圧力が伝達される。たとえば、半導体基板の表面側の溝部93、94の圧力導通孔89からはP1の圧力がかかり、半導体基板の裏面側の溝部91、92の圧力導通孔88からはP2の圧力がかかる。P1とP2の圧力差により、溝部91と94の間にある半導体基板81(81−1)が変形(湾曲)する。P1とP2の圧力差により、溝部92と94の間にある半導体基板81(81−2)が変形(湾曲)する。P1とP2の圧力差により、溝部92と93の間にある半導体基板81(81−3)が変形(湾曲)する。これらの変形により、溝部91〜94の溝幅が変化して、溝部の側壁に形成された対向電極に発生する容量が変化する。この変化を利用して、圧力センサーを形成できる。
第4の実施形態においては、溝部同士で挟まれた半導体基板が変形するので、溝部同士の重なり部分の面積を大きくするほど容量が大きくなるので、圧力差の検出感度が高くなる。溝部内の電極84は第2〜第3の実施形態と同様に溝部の側壁の間で分離して対向する電極構造を形成している。たとえば、図30に示すように、溝部91内の対向電極84−1と84−2は電気的に完全に分離していて、容量を形成している。電極間の距離をv、溝の深さをh、平面的な溝の長方形形状の長辺長さをnとすると、溝部91の容量C91は、C91=ε*nh/vとなる。P1>P2のときは、vが小さくなり、容量が大きくなる。一方、溝部94は溝部91の方にも溝部92の方にも膨らみ、電極間の距離vが大きくなるので、で、溝部94の容量は小さくなる。
尚、キャップ86、87はなくても半導体基板表面側と裏面側で異なる圧力差を発生し各溝部へ異なる圧力を伝達できるので、そのように圧力センサーを作成すれば、キャップ86および/または87を設けなくても良い。また、一方のキャップに圧力導通孔を設けないようにもできることは第3の実施形態と同様である。
本発明はさらに、ピエゾ抵抗を利用した圧力センサーも作成できる。たとえば、溝または貫通孔側壁(これらがダイヤフラムとなる)にピエゾ抵抗を形成する。この側壁(隔壁)が圧力変動により変形するので、ピエゾ抵抗の抵抗も変化する。この変動を利用して圧力を検出することができる。ピエゾ抵抗も従来は半導体基板に対して平面的に形成していたが、本発明は溝部または貫通孔の側壁(隔壁)(これらが、ダイヤフラムとなるのは、容量の場合と同様である。)に形成しているので、半導体基板内の面積を非常に小さくできる。
本発明の目的は、半導体圧力センサーのサイズを小さくし、圧力検出感度を高めることである。上述したように、半導体基板の厚み方向に深い溝を形成する。溝の一部を気密にして、その溝の隣の溝に圧力をかけると、溝同士の間の隔壁(ダイヤフラムに相当)が湾曲して気密空間または溝部の容量が変化する。この変化量を検出することにより、圧力を検知できる。溝を深くすることにより、容量が増大するので、より面積の小さいセンサーを作成できる。また、隔壁を薄くすることにより、隔壁の変形量を増大できるので、センサーの感度も高まる。
さらに、本発明は、上述したように半導体基板の厚み方向にダイヤフラム部と空間を形成するので、圧力センサーチップを非常に小さくできる。従って、半導体基板(ウエハ)からの圧力センサーチップの取れ個数を増大できる。さらに容易に容量を大きくできるので、静電容量型圧力センサーの感度を高めることもできる。さらに、フォトリソ法等のLSIプロセスを用いるので、空間およびダイヤフラム部となる溝部側壁(隔壁)を精密・正確に作成できるので、非常に薄いダイヤフラムや狭い空間を形成でき、これによっても圧力センサーの感度を高めることができる。
次に、本発明を応用して、ピエゾ抵抗を用いた圧力センサの発明について説明する。図32は、ピエゾ抵抗を用いた圧力センサの構造を示す図である。図32(a)は、基板を縦方向、すなわち厚み方向に見た図である。図32(b)は、その基板を平面的に見たものである。基板(第1基板)9001には、貫通溝8999(8999−1、2、3、4、5)が形成され、その貫通溝の間に形成された側壁9001−2、3、4、5に導電層が形成される。(図32では、この側壁9001−2、3、4、5がすべて導電体であるとして記載している(同じ斜線で塗っている)が、全体が導電体となる場合もあるし、一部だけ(ただし、第1基板9001の厚み方向にはつながって(連続して)いる)が導電体の場合もあり、この結果、厚み方向に電気的につながっている。図32における外側の第1基板9001(9001−1、6)は、導電体でなくても良いが、一部だけ導電体であっても良い。第1基板9001は、たとえばシリコン基板であり、側壁9001−2、3、4、5の導電体部分は高濃度の不純物元素を含む低抵抗シリコン基板(たとえば、N+シリコンあるいはP+シリコン)である。
第1基板9001の一方の面(上面あるいは第1面)には、第2基板9002が付着している。第1基板9002が絶縁体基板である場合には、第2基板の一方の面(下面あるいは第2面)に導電体膜9004(9004−1、2、3)が形成され、それぞれの導電体膜9004(9004−1、2、3)に接続してスルーホール(あるいはコンタクト孔)9005(9005−1、2、3)が形成され、その中の導電体膜に接続して、第2基板の他方の面(上面あるいは第1面)には導電体電極・配線9006(9006−1、2、3)が形成されている。第2基板が絶縁基板である場合には、第2基板はたとえばガラス基板、セラミック基板、石英基板、高分子材料基板あるいはプラスチック基板等である。導電体膜9004は、たとえばアルミニウム、銅、金、銀、タングステン、モリブデン、チタン、クロウム等の金属膜、各種シリサイド膜、TiN、TaN、高濃度不純物元素を含むPolySi膜、導電性カーボンンノチューブ、導電性グラフェンあるいはこれらの複合膜などであり、スルーホール9005内の導電体膜もこれらの導電体膜であり、さらに導電体電極・配線9006も上記の導電体膜である。
第2基板9002が半導体基板(たとえば、シリコン半導体基板)である場合には、導電体膜9004(9004−1、2、3)は上記の導電体膜以外に高濃度不純物元素を含む低抵抗層(拡散層)(たとえば、N+シリコンやP+シリコン)であっても良い。スルーホール9005の中の導電体膜は上記の導電体材料であるが、半導体基板9002とスルーホール9005内導電体膜との間にはショートしないように絶縁膜が形成される。(導電体膜9004とスルーホール内導電体膜との間には当然絶縁膜はない。)また、導電体電極・配線9006と半導体基板9002との間も絶縁膜で隔てられる。
第2基板9002が導電体基板である場合には、上記の9004、9005および9006は一体であっても良いが、それぞれの電極・配線(9006−1、2、3)の間に絶縁膜を形成し、互いに導通しないようにする。
第1基板の他方の面(下面あるいは第2面)にも第3基板8003が付着されている。第3基板も基本的には第2基板と同じである。すなわち、第3基板9003の上面には導電体膜9009(9009−1、2)が形成され、第1基板の導電体側壁9001(9001−2、3、4、5)とつながっている。また、第3基板内にはスルーホール9010(9010−1、2)およびその中に導電体膜が形成され、第3基板9003の下面(第2面)に形成された電極・配線9011(9011−1、2)につながっている。第3基板、導電体膜9009、スルーホール9010内の導電体膜、電極・配線9011の材料は上述した第2基板側と同様である。
図32(b)の平面図では、点線で囲まれた部分が第3基板に形成された部分である。分かりやすいように、第2基板9002に形成される導電体膜9004、スルーホール(およびその中の導電体膜)9005、電極・配線9006は貫通溝8999(8999−1、2、3,4、5)および導電体側壁9001(9001−2、3、4、5)に接して描いているが、貫通溝8999および導電体側壁9001の上に形成することもできる。第3基板9003に形成される導電体膜9009、スルーホール(およびその中の導電体膜)9010、電極・配線9011も同様である。
以上の結果、電極・配線9006−1は、導電体側壁9001−2につながり、導電体膜9009−1を介して導電体側壁体9001−3につながり、導電体膜9004−2を介して導電体側壁9001−4につながり、さらに導電体膜9009−2を介して導電体側壁体9001−5につながり、電極・配線9006−3に接続する。導電体側壁9001−2、3、4、5は抵抗体でもあるから、これらの電極を適当に接続すれば、図33に示すようなブリッジ回路(いわゆるホイートストンブリッジ回路)ができる。たとえば、導電体側壁9001−2、3、4、5は抵抗をそれぞれR1、R2、R3、R4とすれば、電極9006−1はE1に、電極9011−1はE2に、電極9006−2はE3に、電極9011−2はE4に、電極9006−3はE1に対応するが、第2基板および第3基板ではそれらの上面および下面を使って自由に配線可能であるから、簡単に図33に示すブリッジ回路を作製できる。E1−E3の電圧をV0、E2−E4の電流をI0とすると、
V0={(R1*R3−R2*R4)/(R1+R2+R3+R4)}*I0
となる。導電体側壁9001−2、3、4、5の長さをそれぞれm11、m12、m13、m14とし、幅(導電体側壁厚さ)をそれぞれw11、w12、w13、w14とする。上記の長さと厚さは適宜調整できるが、側壁電極の深さ(すなわち、第1基板の厚さ)は一定である(v11とする)。体積抵抗率をr10とすると、
R1=((m11/{v11*w11})*r10・・・(2)
(R2,R3、R4も同様である。)
となる。m11、m12、m13、m14やw11、w12、w13、w14を適当に選んで、R1=R3=n11*r10、R2=R3=n12*r10となるようにできる。そうすれば、V0=(n11−n12)*r10*I0/2となり、r10を求めることができる。また、基準体積抵抗率をr0(一定)、体積抵抗率変化量をΔrとすると、r10=r0+Δrとなり、r10は既知(たとえば、変化量=0(圧力差が0)のときの体積抵抗率)なので、Δrが求められる。
次に、貫通溝8999−1、8999−3、8999−5に圧力を導入するための圧力導入孔9007(9007−1、9007−2、9007−3)を形成する。また、貫通溝8999−2、8999−4に圧力を導入するための圧力導入孔9012(9012−1、9012−2)を形成する。第2基板9002上面側から圧力P1、第3基板9003下面側から圧力P2をかけると、各圧力導入孔を通じて、貫通溝8999−1、8999−3、8999−5の中は圧力P1になり、貫通溝8999−2、8999−4の中は圧力P2になる。この結果、貫通溝によって挟まれた導電体側壁9001−2、3、4、5は変形し、これらの抵抗(R1、R2、R3、R4)も変化する。従って、上述のようにΔrが分かるので、事前に圧力差(P1−P2)とΔrとの関係を知っておけば(知ることもできるし、計算もできる)圧力差(P1−P2)を知ることができ、P1かP2が分かっていれば、他方が求められる。第2基板9002の圧力伝達孔9007(9007−1、2、3)を形成しなければ、貫通溝8999−1、3、5の中の圧力(P1)は一定(導電体側壁が変形したときにわずかに変化するが、貫通溝の体積に比較し無視できるし、仮に無視できなくてもそれを見越して貫通溝の圧力変化も計算もできる。この圧力は第2基板または第3基板を第1基板に付着させるときの圧力で決まる)であるから、P2が分かる。すなわち、絶対圧、ゲージ圧、差圧(相対圧)も分かる。
どれかの貫通溝をなくせば、そこに形成されている導電体側壁は圧力によって変形しないので、この導電体側壁の抵抗も変化しない。このことを利用しても上述の計算式でΔrを計算できる。たとえば、図32において、貫通溝8999−1および8999−5をなくす(ここは第1基板になっているということ)と、導電体側壁9001−2および9001−5は圧力P2が変化しても変形しない。導電体側壁9001−2および9001−3、並びに導電体側壁9001−4および9001−5を接続している導電体膜9009−1および9009−2を分離してそれぞれの電極9011−1および9011−2も分離して、配線の接続状態を変更すれば、R2およびR4にそれぞれ導電体側壁9001−2および9001−5を、R1およびR3にそれぞれ導電体側壁9001−3および9001−4を対応させることができるから、ホイートストンブリッジを構成できる。従って、上述の計算式よりΔrを求めることができ、圧力差(P1−P2)を知ることができる。
次に、図32に示す構造のダイヤフラム型ピエゾ抵抗体を形成する方法について説明する。これまで、種々の所で説明したものについてはその詳細な説明は省略するが、矛盾なく適用できるものはすべて適用できることは言うまでもない。図34は、その1つの実施形態を示す。図34(a)に示すように、サポート基板9021に第1基板9001を接着させて、第1基板の9001の上面側の貫通溝形成用パターン(図示せず)をマスクにして貫通溝8999(8999−1〜5)を形成する。第1基板9001はシリコン基板である。その後イオン注入II21を行い側壁の側面に高濃度不純物元素の層9022(9022−1−1、9022−2−1、9022−3−1、9022−4−1、9022−5−1)を形成する。ここで、シリコン基板9001は低濃度の不純物元素を含む高抵抗基板である。(その濃度は1018/cm3以下、好適には1017/cm3以下である。リーク電流を小さくするには低いほうが良い。ただし、イオン注入時の漏れが予想される場合には、高めの方が良い。ただし、余り濃度を高くすると接合耐圧が下がるので、実用電圧の1.5倍以上の耐圧を確保すと良い。)また、イオン注入元素はシリコン基板9001とは反対の導電型不純物元素である。たとえば、シリコン半導体基板9001がP−基板であれば、イオン注入元素はP、As、Sb等のN型不純物元素である。シリコン半導体基板9001がN−基板であれば、イオン注入元素はB、BF3、Al等のP型不純物元素である。イオン注入量はどの程度の抵抗にするかで異なるが、おおむね5*1014/cm2以上のドーズ量である。また、加速エネルギーはシリコン基板中への侵入深さで異なる。側壁9001−2、3、4、5にどのくらいの深さの不純物拡散層9022を形成するかで異なる。イオン注入II21の際に重要なことは、この側壁9001−2、3、4、5に対して直角方向からイオン注入することである。直角方向という意味は、イオンの進行方向を平面的に投影した場合、イオン注入方向が側壁9001−2、3、4、5に対して直角方向であるということである。(図34(b)を参照すると分かりやすい。)すなわち、II21の方向(投影された方向)は図34(b)に示すように側壁9001−2、3、4、5に対して直角方向である。シリコン基板9001はこの角度になるように正確にイオン注入装置に配置される。従って、貫通溝8999のy方向に存在する側面にはイオン注入されない。全面イオン注入しているから、シリコン基板9001の表面(第1面)にはイオン注入されるが、加速電圧を超えた深さまではイオンは注入されないので、貫通溝8999の側面には入らない。すなわち、y方向には入らない。たとえば、貫通溝8999−1においては、9001−1−y1や9001−1−y2で示す領域である。少し漏れる量もあるので、上述したようにシリコン基板の濃度を少し高めておけば良い。(たとえば、1016/cm3以上、あるいは1017/cm3以上にする。)或いは、y方向の側壁に対してもシリコン基板9001と同じタイプの不純物イオンをイオン注入しても良い。この場合も、y方向の側面に対して直角方向から打ち込み、かつ以下に示す傾きでイオン注入し側壁の底の方まで確実にイオン注入した方が良い。(y方向に関しても、以下と同じく、両方向からイオン注入する。)y方向に漏れるイオン量はそれほど多くはないので、基板と同じタイプのイオンの注入量はそれほど多くなくて良い。上記のようないろいろな対策を打てば、貫通溝8999のy方向側面に拡散層は形成されない。すなわち、ここで接続することはない。(たとえば、9022−1−1と9022−2−2とが9001−1−y1や9001−1−y2にできる拡散層によって接続しない。)
さらに、側壁9001−2、3、4、5の底の方にも確実にイオン注入するために、図34(a)に示すように、イオン注入II21はシリコン基板9001の鉛直方向に対してα21だけ傾かせて行う。貫通溝8999の深さ(側壁の厚さ、すなわち基板9001の厚さ)をh21、貫通溝の幅をd21とすると、tanα21≦(d21/h21)となるように傾き角度α21(ただし、α21≠0度)を選択すれば良い。このようにして、側壁9001−2、3、4、5の側面(この場合には、図面に向かって右側の側面)に高濃度不純物層9022−2−1、9022−3−1、9022−4−1、9022−5−1が(底の方まで)形成される。(尚、ホイートストンブリッジには無関係であるが、9022−1−1も形成される。)α21>0度のときは側壁の右側(紙面に向かって)にだけ形成され左側には形成されない。左側に形成する場合は、イオン注入をII22のようにII21とは逆側にα22傾かせる。(このイオン注入II22も図34(b)に示すように、その投影方向は側壁に対して直角に注入する。)このときも、側壁9001−2、3、4、5の底の方にも確実にイオン注入するために、tanα22≦(d21/h21)となるように傾き角度α22(ただし、α22≠0度)を選択すれば良い。このようにして、側壁9001−2、3、4、5の側面(この場合には、図面に向かって左側の側面)に高濃度不純物層9022−2−2、9022−3−2、9022−4−2、9022−5−2が(底の方まで)形成される。(尚、ホイートストンブリッジには無関係であるが、9022−6−2も形成される。)この後、熱処理および拡散熱処理を行い、側壁9001−2、2、3、4、5の両側面に不純物拡散層9022が形成され、これらがブリッジ回路の抵抗となる。側壁9001−2、2、3、4、5の両面に存在する拡散層9022は、側壁幅やイオン注入条件や熱処理条件によりつながる場合もあるが、それを見越して設計すれば良いだけである。両サイドからのイオン注入(II21、II22)の条件は同じでも異なっても良く、或いはどちらかを行わなくても良い。(どちらか一方でも側壁の上から下までつながっている。このようにして側壁9001−2、3、4、5に非常に精度の良い抵抗を形成できる。
貫通溝8999を形成する前にサポート基板9021を接着しているが、この目的は、シリコン基板9001の補強の意味もあるが、特に側壁9001−2、3、4、5が形成されたとき、この側壁を支持しているものは、両側のシリコン基板9001である(図34(b)参照)。しかし、この側壁は幅(図32でw12)は小さい(薄い、たとえば、約1〜3μm−10〜20μm、測定圧力によってはもう少し厚い場合もある。)のでサポート基板9021がないと不安定であるから、できるだけ多くの場所で支えた方が良い。ということでサポート基板9021を接着している。このサポート基板9021は後で取り外すので、簡単に取り外せる接着法、たとえば熱可塑性タイプの接着剤を用いるとか、紫外線照射により剥離できる接着剤等が扱い易い。尚、サポート基板9021がなくても側壁が不安定でなければ付着しなくても良い。
貫通溝8099の作製前に、シリコン基板9001上に直接感光性膜をパターニングして、それをマスクにして貫通溝8099を形成する場合もあれば、シリコン基板9001上に絶縁膜(SiOx膜やSiNy膜、SiOxNy膜など)を形成してその上に感光性膜をパターニングして、絶縁膜および基板シリコンをエッチングすることもできる。貫通溝8099を形成した後、この感光性膜を残してイオン注入することもできる。この場合には側壁の上には感光性膜が存在するので感光性膜の厚みも考慮してイオン注入の上記角度(α21やα22)を決める必要がある。シリコン基板9001上に絶縁膜を形成したときはその厚みも考慮する必要がある。このように感光性膜や絶縁膜を残しておいてイオン注入を行う場合には、シリコン基板9001の表面(上面)にはイオン注入層は形成されないので、側壁の側面にイオン注入層が形成されるだけで、シリコン基板9001の上面から下面までの構造は、平面的な模式図として図34(b)に示すように、貫通溝の側面ではx方向の側面のみにイオン注入層(熱処理すれば拡散層となる)9022−1−1等が形成されるだけで、y方向側面には形成されない。
しかし、シリコン基板の表面にイオン注入層を形成してそこを配線や拡散層として利用する場合もあるので、その場合には、貫通溝形成前に絶縁膜を形成しておき、イオン注入後に感光性膜をリムーブして、次に再び別の感光性膜をパターニングしてイオン注入をしたい部分を窓あけする。たとえば、図34(a)に示すように、9023−1や9023−6は側壁部分以外のところでイオン注入したい部分であるが、ここを感光性膜の窓開けをする。また、側壁9001−2、3、4、5の上面にもイオン注入してここで導通したいので、この部分も感光性膜の窓あけをする。図34(c)は、シリコン基板の上面を見たものであるが、側壁上面9001−2、3、4,5以外にシリコン基板上面に9024−1、2、3,4の領域にもイオン注入層を形成し、この部分は貫通溝ノイオン注入層に接続する部分で、これを用いて配線(拡散層配線)としての引きまわしや、コンタクトを形成する場合がある。そこで、図34(a)に示すように側壁上面9023−2、3、4、5やシリコン基板9001の上面の一部9023−1や9023−6を感光性膜8992を開口して、シリコン基板上に形成されている絶縁膜8991をエッチング除去し、シリコン基板表面(上面)を露出させる。感光性膜8992でマスクされた部分の絶縁膜8991は残っている。図34(c)を見ると分かるように、感光性膜を窓開けする部分は9024−1、2、3、4、5、6、7、8および側壁上9001−2、3、4、5等であるから、この部分の感光性膜を開口して、この部分の絶縁膜をエッチング除去する。それ以外の部分は絶縁膜8991で被っていたい。そこで、たとえば、感光性膜としてポジレジストを用いて、一例として9024−2の領域および9024−6の領域およびそれらを結ぶ点線9025(9025−1、2)同士の内側の領域(ここには側壁9001−3が含まれる)に光を照射し、その後現像すれば、これらの領域はポジレジストがなくなり窓開けができる。それ以外の部分はポジレジストで覆われている。ただし、この点線で囲まれた領域と側壁との間には溝があり、この溝には厚いレジストが入っているので、奥の方まで光は届かない場合があるから、光が届かなかった部分(光量が不足した部分も含む)はレジストが残る。しかし、側壁の側面には絶縁膜は存在しないので、特に問題はない。このようにポジレジストを使うと絶縁膜をエッチングしたい部分(イオン注入したい部分)を確実に窓開けできる。しかもイオン注入したくない部分(特に、9001−1−y1やy2等)は確実にレジストが覆っているので、全く問題はない。感光性膜がネガタイプの場合には、逆の部分に光を照射する必要があるが、たとえば、9001−1−y1や9001−1−y2の付近の貫通溝はレジストが厚くなるので、完全に光を照射しきれない部分が生じる可能性がある。従ってこの段階のプロセスではポジタイプの感光性膜が良い。液状タイプの感光性膜は上記のようであるが、シート状の感光性膜の場合には、貫通溝の億深くまで入ることは少ないので、ネガタイプを用いることもできる。
絶縁膜8991を除去した後、感光性膜8992はリムーブする。何故ならイオン注入層を形成したい側壁側面にはレジストが残っているからである。その後、絶縁膜8991をマスクにして上述のような角度でイオン注入を行い、側壁側面以外にイオン注入層9023−1、9021−6および側壁上面9023−2、3、4、5にイオン注入層が形成される。図34(c)で言えば、シリコン基板9001上面領域9024−1〜8および側壁上面9022−2−1〜9022−5−2である。(尚、9022−1−1や9022−6−2の上面は絶縁膜8991が形成されているが、イオン注入の斜め入斜による結果として表面に少しイオン注入層が入るが、特に本発明の圧力センサには影響はしない。)
次に図34(d)に示すように、シリコン基板9001に第2基板9002を付着させる。第2基板9002が絶縁基板である場合の製造方法について説明する。その1つの実施形態として、第2基板9002の下面には、第2基板9002をシリコン基板9001に付着させるときにシリコン基板のパターンに対応して、あらかじめ導電体膜9004(9004−1、2、3)を形成しておく。たとえば、この導電体膜9004が金属膜である場合には、第2基板の下面(付着するときは上面になっている場合もある。)にPVD法やCVD法等で金属膜を積層してフォトリソ法でレジストパターンを形成して、金属膜をエッチングすれば良い。この後のプロセス温度が400℃以上なら、700℃以上の融点がある金属が良い。(たとえば、Ti、TiN、W、Mo、Cu、Ag、Au、Cr、Ni等)この後のプロセス温度が400℃以下なら、アルミニウム(Al)でも良い。或いは、シリサイド膜、PolySi(高濃度不純物を含む)膜、導電性CN、導電性グラフェン等でも同様に配線できる。接着層を介在させずに所定圧力と熱処理だけ(加圧せず常温接合もできる場合もある)付着させることができるときは、この後第1基板9001と第2基板9002を接着させる。導電体側壁9001−2、3、4、5が導電体膜パターン9004−1、2、3に合うようにアライメントして接着させる。接着層を用いて接着するときは、導電体側壁9001−2、3、4、5と導電体膜パターン9004−1、2、3の間には導電体接着剤を用いて、その他の部分には絶縁性接着剤を用いる。導電体接着剤の場合には、熱処理条件でシリコン半導体と接合する材料で導電体膜9004を形成しておけば、この部分についての導電性接着剤は不要となるので、それ以外の部分に絶縁性接着剤を用いれば良い。また、第2基板9002がガラス基板である場合には、シリコン基板9001と陽極接合もできる。導電性接着剤を選択的に形成するには接着剤を第2基板9002の表面(下面)に形成した後、必要な部分をフォトリソ方によりパターニングして除去しても良い。あるいは、感光性タイプの接着層を用いても良い。
導電体膜パターン9004(9004−1、2、3)を形成した第2基板を第1基板9001に接着した後、第2基板9002の上面をフォトリソ法により感光性膜をパターニングし、ドライエッチングまたはウエットエッチング法で第2基板9002の材料をエッチングし、第2基板9002にコンタクト孔9005(9005−1、2、3)を形成する。第2基板9002がガラス基板である場合には、ウエットエッチングであればたとえばBHF溶液(緩衝フッ酸水溶液)などでガラス基板をエッチングし、ドライエッチングであればCF4ガスなど種々のガスを用いてエッチングする。パターンサイズによっては異方性ドライエッチングを行いサイドエッチング量を小さくする。図34(d)に示すように、コンタクト孔9005は導電体膜9004に接続するように開けられている。このコンタクト孔9005に導電体膜を形成する。この導電体膜は、PVD法、CVD法、メッキ法、スクリーン印刷法、導電性ペースト塗布法あるいはこれらの組合せ、その他の方法で形成される。次に導電体電極・配線9006を形成するために導電体膜を形成する。この導電体膜は、PVD法、CVD法、メッキ法、スクリーン印刷法、導電性ペースト塗布法あるいはこれらの組合せ、その他の方法で形成される。コンタクトサイズや平坦化の程度によるが、通常はこの導電体膜9006は導電体膜9004と兼用できる。感光性絶縁膜等でパターニングして(スクリーン印刷法ではマスクを用いて)導電体電極・配線9006がコンタクト孔9004をカバーするように形成される。圧力伝達孔9007(9007−1、2、3)はコンタクト孔9004を形成するときに同時に形成することもできるし、プロセスの途中や、導電体電極・配線9006を形成してから形成しても良い。
他の実施形態として、第2基板9002に導電体膜9004を形成しないで行う方法について説明する。第2基板9002には何もパターンを形成しないで第1基板9001に第2基板9002を付着させる。第2基板9002がガラス基板であればシリコン基板9001と陽極接合で接合できる。或いは接着剤を使用せずに常温接合や加圧熱処理による接合などもある。接着層を介在して接合するときは、絶縁性接着剤を用いる。絶縁性接着剤を用いる場合には、第2基板側に接着層を形成(たとえば、塗布法)し貼り合せた後所定の熱処理を行い接合させる。このとき必要な部分のみ(すなわち、貫通溝8999の存在する部分を除いた領域など)に接着層をパターニングすることもできる。この場合は、貫通溝8999内に接着層からのアウトガス等の発生は少ない。第2基板9002を接着する前に不純物拡散層9022を保護するために薄い絶縁膜を形成することもできる。この膜厚は約100nmもあれば良い。(それ以上でも良い)
次に第2基板9002に感光性膜を用いたフォトリソ法でコンタクト孔9005(9005−1、2、3)を形成する。コンタクト孔9005は導電体側壁9001−2、3、4、5の特に導電体領域部分に形成される。第2基板がガラス基板等のアライメント光に対して透明な材料の場合には、アライメントすべき部分(導電体側壁)に直接合わせができるので、非常に精度の良いパターンを形成できる。図34(c)に示す方法を用いれば、導電体側壁にコンタクト孔を形成しなくてももっと広い部分、すなわち、シリコン基板表面に形成されたイオン注入層(拡散層)9024−1〜8に合わせるようにコンタクト孔を形成できるので、コンタクトサイズを大きく形成できる。たとえば、第2基板の厚みを50μmとし、1つの貫通溝の幅を50μmとすれば、コンタクトサイズは約50μm*50μm程度は取れるので、コンタクト孔のスペクト比が約1となるので、このコンタクト孔に積層する導電体膜として、特に平坦化等を行わなくとも良い。(もちろん、行なった方が信頼性はさらに向上できる。)コンタクト孔内に形成する導電体膜はその上をカバーする導電体電極・配線と兼用することもできる。
尚、第2基板の最終厚みは約50μm〜300μmであるが、第1基板9001に貼りつける前にこれよりも厚い基板である場合は、第1基板に接着した後に、所定厚みになるまで薄くすることもできる。たとえば、CMP(化学的機械的研磨)法、BG(裏面)研磨法、あるいはエッチング法で所定の厚みまで薄くする。その後で、コンタクト孔形成プロセスを行う。
第1基板9001に第2基板9002を接着した後、サポート基板9021を取り外す。たとえば、サポート基板9021と第1基板を接着している材料の融点(軟化点)よりも高い温度にしてサポート基板9021を取り外す。あるいは、サポート基板9021を研磨法により薄くしてから、残りのサポート基板9021をエッチングしても良い。(エッチングだけで行なうこともできる。)第1基板がシリコン基板でサポート基板9021がガラス基板である場合は、サポート基板のエッチングはフッ酸系溶液を用いれば、シリコン基板9001をエッチングせずに、サポート基板をエッチングできる。
次に、第1基板9001に第3基板9003を接着させる。第3基板は第2基板と同様な構造となっている。たとえば、第3基板9003にはあらかじめ配線層9009(9009−1、2)のパターンが形成されている場合は、この配線層パターン9009を(既に不純物拡散層9022が形成されている)導電体側壁9001(9001−、2、3、4、5)に合わせて接着させる。配線層パターン9009は(既に不純物拡散層9022が形成されている)導電体側壁9001と電気的接続が取れるように接着する。その後に、コンタクト孔9010(9010−1、2)を形成し、その中に導電体層を形成して、次に電極・配線9011(9011−1、2)を形成する。第3基板に配線層が形成されていない場合には、そのまま第3基板9003を第1基板9001に接着させる。その後、コンタクト孔を導電体側壁に向けて形成し、コンタクト孔に導電体層を形成し、次に電極・配線を形成する。第1基板9001の下面において、側壁以外には不純物拡散層は形成されていないので、第3基板9003を付着させる前に、イオン注入法やプリデポ・拡散法を用いて第1基板9001の下面に不純物拡散層を形成しても良い。尚、この不純物拡散層は第1基板に貫通溝を形成する前にも通常の方法で形成できる。あるいは、第3基板9003を付着させる前に、導電体配線層を第1基板9001の下面に形成し、これに第3基板9003を付着させることもできる。たとえば、図34(c)に示すパターン9024や9022のようなパターンを導電体配線として第1基板9001の下面に形成してから第3基板9003を接着させれば、側壁9001−2、3、4,5だけでなく基板9001の下面の他の領域(9024に相当する部分)にもコンタクト孔を形成できる。この場合も、第3基板上面に配線層9009がない場合には、絶縁性接着剤を用いて第1基板9001と第3基板9003を接着させることができる。図34(d)においては、導電体側壁9001−2および3に1つのつながった配線層9009−1を接続しコンタクト孔9010−1および電極・配線9011−1が接続しているが、それぞれの導電体側壁9001−2、3、4,5にそれぞれ別個に配線層9009(ある場合)やンタクト孔9010や電極・配線9011を形成しても良い。電極・配線9011を形成するときに接続するか、これらにつなげる外部回路で配線接続すれば良い。
以上のプロセスを行って、ホイートストンブリッジ回路を形成して、貫通溝同士の間の側壁に形成された抵抗を用いて、圧力変化によりそれらの側壁を変形させ抵抗変化量から、圧力(差)を知ることができる。
図32、34において説明したものは、側壁全体(すなわち、ダイヤフラム全体)を抵抗体としたときの実施形態であったが、抵抗の変化率がダイヤフラム全体で平均化されるので感度が少し悪いので、感度を向上するための方法について説明する。図35(a)は、一つの側壁9100(図32、34で示す9001−2、3、4,5のうちの任意の1つに対応する)を側面側から見た模式図である。図35(a)におけるy方向が側壁の長手方向(図34(b)に示すy方向と同じ)で、z方向は側壁の深さ方向(すなわち、基板9001の厚み方向)である。この側壁9100の側面を9101、側壁上面を9102、側壁下面を9103とする。側壁側面9101の上面から下面につながるように一定幅の抵抗領域9105を形成し、その両端に接続するように高濃度の不純物(拡散)層9104(9104−1)を形成する。また、側壁上面9102には不純物層9104−1に接続する高濃度の不純物(拡散)層9104(9104−2)が形成され、側壁下面9103には不純物層9104−1に接続する高濃度の不純物(拡散)層9104(9104−3)が形成される。不純物層9104、9105はシリコン基板9101の不純物元素とは逆の導電型である。抵抗体は抵抗が高い(不純物元素濃度が低い)方がピエゾ抵抗係数が大きくピエゾ抵抗変化率が大きいので、抵抗体となる不純物層9104の不純物量を低くして抵抗を上げる。
シリコン基板濃度が1017/cm3以下の場合は、不純物層9104の濃度を約1018/cm3〜1019/cm3、あるいは約1018/cm3〜1020/cm3とする。不純物層9104(9104−1、2、3)はブリッジ回路へ抵抗体9105を導く配線層であるから、できるだけ抵抗を下げる。そのためには不純物濃度を上げ。約1020/cm3、あるいは約1021/cm3以上とする。さらに、不純物層9105よりも幅を広くして抵抗を下げるということも重要である。(図35(a)では幅を広くしている。幅で抵抗を調節するという意味では、不純物層9104と9105の不純物元素濃度は同じでも良く、後に示す窓開けやイオン注入等のドーピングが1回で済むというメリットはある。ただし、不純物層9105は配線金属(たとえば、Al)とオーミック接合させる必要があるため、約1019/cm3以上の濃度にする必要があるため不純物層9105の濃度は高くなるが、その分幅を狭くする。)抵抗体である不純物層9104は不純物層9105と同じ導電タイプであり、接続部を重ねて形成するので、良好な接続が可能である。側壁上面にも不純物層9104(9104−2、9104−2−2)が形成される。側壁上面の不純物層9104−2で第2基板9102のコンタクト孔を形成して電極・配線(図32、34で示す9006)に接続することが困難なときは、側壁上面において不純物拡散層9104−2を9104−2−2で接続してさらに矢印A10方向へ延ばして基板9101上に広い不純物拡散層を形成しても良い。この場合は、他の不純物拡散層と干渉(交わる)しなければ、拡散層領域9104−1をもっと広くして抵抗を下げても良い。
側壁下面も同様で、側壁下面の不純物層9104−3に接続して拡散層9104−3−2を形成しさらに基板9101の仮面に広い不純物拡散層を形成しても良い。このようにして、抵抗体9105を側壁側面9101に形成しそれを上下の拡散層(配線)で側壁上面(下面)や基板9101の上(下)面へ引き伸ばして、一つの抵抗体+配線を形成することができる。尚、高濃度不純物層9104の抵抗はできるだけ小さくした方が良いので、できるだけ抵抗の低い材料で引きまわした方が良い。シリコンでは10−4Ωcmオーダーが限界なので、早めにAl等の金属配線(Alは10−6Ωcmオーダー)に接続させるのが良い。そのためには、側面領域9104−1をコンタクトできる程度に広く取れるときは、側面領域9104−1で行なうのが良い。抵抗体である拡散層9105はダイヤフラムである側壁の側面9101の中央(ダイヤフラムが最も膨らむ部分)を通るようにすると、側壁9100が変形したときに抵抗体9105がどの部分でも伸びて長くなり抵抗が増大する方向となるので効率が良い。かつ9105の長さは長い方が良いので、側壁の側面9101(正方形または長方形である)の対角線方向に作るとさらに感度がアップする。
図35(b)は、側壁の側面9101の中央部(ダイヤフラムが最も膨らむ部分)を通りy方向(中央部を通る限り少し傾いていても良い)に細長い長方形状の抵抗体である9106を示す図である。抵抗体9106の両端には低抵抗拡散配線層9107−1および9107−2が接続している。さらにこの低抵抗拡散配線層9107−1は側壁上面の低抵抗拡散配線層9107−3に接続し、さらに引き出し拡散配線層9107−5からA12方向へ延びてシリコン基板(第1基板)9101の広い平坦面につながっている。そこにコンタクト孔が形成され第2基板9002の電極へ接続する。一方、低抵抗拡散配線層9107−2は、側壁上面の低抵抗拡散配線層9107−4に接続し、さらに引き出し拡散配線層9107−6からA11方向へ延びてシリコン基板(第1基板)9101の広い平坦面につながっている。そこにコンタクト孔が形成され第2基板9002の電極へ接続する。この実施形態では、第2基板9002側だけに電極が形成されるので、第3基板は第1基板に接着するだけで良い(圧力伝達孔を形成する場合には、そのプロセスが必要だが、第3基板を第1基板に接着前に圧力伝達孔を形成しておけば、接着後は圧力伝達孔形成プロセスは不要となる)のでプロセスが簡単になる。しかも、サポート基板をそのまま使用すれば、さらにプロセスが簡単となる。サポート基板が厚ければ研磨法(CMP法やBG法など)やエッチング法で薄くすれば良い。
図35(c)は、側壁の側面9101における上部からスタートし、中央部(ダイヤフラムが最も膨らむ部分)9113を通り、この中央部で折れ曲がり側壁の側面9101における上部へつながって折れた細長い長方形状の抵抗体9111を示す。このような抵抗体も中央部(ダイヤフラムが最も膨らむ部分)9113を通りダイヤフラムの径方向へ細長い形状となっているから、側壁9100が変形すると(ダイヤフラムが膨らむと)抵抗体9111が伸びる。抵抗体9111の一方の端は低抵抗層9112−1へつながり、さらに側壁上面の低抵抗層9112−3へ接続し、A11方向へ延びて基板9001上面の広い拡散層へつながる。抵抗体9111の他方の端は低抵抗層9112−2へつながり、さらに側壁上面の低抵抗層9112−4へ接続し、A12方向へ延びて基板9001上面の広い拡散層へつながる。抵抗体9111が側壁9100の側面9101の対角線方向に存在するときに最も長くなるので、抵抗の変化量も大きくなる。また、側壁9100の側面9101の角部近傍に低抵抗拡散層9112を形成できるので、低抵抗拡散層9112(9112−1と9112−2を合わせた長さ)の長さ(9112−1と9112−2を合わせた長さ)も短くなり、基板9001の広い領域における低抵抗拡散層に接続するための拡散配線層9112等も最も短くできる。この結果低抵抗層の抵抗が抵抗体9111におよぼす影響が小さくなるので、ダイヤフラムの変形が抵抗におよぼす影響は主として抵抗体9111の抵抗変化量にあらわれる。しかも、この実施形態においても第2基板側だけのコンタクトおよび電極形成を検討すれば良い。
本発明の側壁面は種々の結晶面を選択できる。たとえば、シリコン基板9001の結晶面(表面)が(100)面であるとき、側壁面9101は、(0xx)面となる。(xは任意の数)さらに、その側壁面に対して抵抗体9111も種々の方位になるように形成することができる。たとえば、側壁面が(010)面であれば、<110>方向へ抵抗体9111を形成すればピエゾ抵抗効果が最も大きくなるので、抵抗変化も大きくすることができる。
これまでに説明したイオン注入による抵抗体(たとえば、9105、9106、9111)を形成する方法について説明する。図36は、側壁の側面に抵抗体を形成する一実施形態を示す図である。図36(a)はシリコン基板9001に貫通溝8099(8099−1〜5)が形成され、シリコン基板9001の下面(第2面)にサポート基板9021が付着している。側壁9001(9001−1〜6)の側面および9001の上面(第1面)には絶縁膜8991が積層されている。シリコン半導体基板9001の貫通溝8999が開口している面(上面、第1面)上に感光性シート(シート状感光性膜よも言う)9201を付着させる。感光性シート9201を付着させるとき真空中(または低圧状態)で付着させると良い。貫通溝8999の開口部分9203においては、感光性シート9201を支える部分がないため、感光性シート9201は少し窪む。
次に、図36(b)に示すように、プリベークを行って感光性シート9202を軟化させると貫通溝8999内に入り込み、側壁9001(9001−1〜6)の側面および貫通溝8999の底へ付着する。感光性シート9201を付着させるときの圧力より高い圧力をかけてプリベークすれば、その圧力差で感光性シート9201が貫通溝8999の内部に入る。特に貫通溝8999内は真空(または低圧)になっていて殆ど気体がないので、感光性シート9201はスムーズに貫通溝8999の内部に垂れていき、側壁9001(9001−1〜5)の側面および貫通溝の底(すなわち、サポート基板9021の開口面)にしっかりと空隙がなく付着する。貫通溝8999内の感光性シート9201の(平均)膜厚をt21、貫通溝8999内の幅をd21、深さをh21、奥行きをw21とすると、感光性シート9201の貫通溝8999内の体積は約d21*h21*w21*t21となる。付着直後の感光性シートの厚みをteとし、貫通溝8999の開口部の感光性膜が全部貫通溝8999内に入り込んだとすると(実際には、貫通溝8999の開口部の外側、すなわちシリコン基板9001上の感光性シートの一部も軟化して貫通溝8999内に入り込む)、
d21*h21*w21*t21=d21*w21*teが成り立つので、te=h21*t21となる。
イオン注入の注入深さをmax0.3μmとすれば、h21=300μmとすると、t21は0.3μm以上となれば良いので、感光性シート9201として、厚み90μmのものを使用すれば良い。このように、イオン注入の注入深さからこの関係式を用いて使用する感光性シート9201のおおよその厚みを決定すれば良い。
プリベーク後に側壁9001(9001−1〜6)の側面および貫通溝8999の底へ付着した感光性膜9201に光EX12を照射しマスクを用いて感光する。光EX12の照射角度はシリコン基板9101の表面に対してβ22の角度として、側壁9001の側面に照射する。この状態を図36(c)の模式図に基づいて説明する。光EX12は、マスク9205のパターン9207を通って、側壁9001の側面に付着した感光性膜9201上に照射される。光EX12が、側壁9001の側面に付着した感光性膜9201に照射してパターン形成されるためには、シリコン基板9101の表面に対してある角度(β22)傾けて光EX12を照射する必要がある。マスク9205のパターン9207のパターン幅d22は、側壁9001の側面の感光性膜9201上でd22/tanβ22の幅となる。露光後に現像して抵抗体を作りたい所(図36(c)では、x22の部分)の感光性膜を除去する。従って、図36(c)に示す例は感光性膜9201はネガ型である。ポジ型の感光性膜9201の場合には、マスクの空き部分をネガ型の場合と逆にして抵抗体を形成する部分には光を照射しないようにする。露光の照射方向は、図34で説明したイオン注入と同じ方向で、パターンを形成したい側壁9001(9001−1〜6)の側面に照射できるようにする。すなわち、図36(b)において、側壁の右側面にパターン形成したいときは、右側から照射し(図36(b)において、EX12)、側壁の左側面にパターン形成したいときは、左側から照射する(図36(b)において、EX11)。
以上のようにして、図36(d)に示すように抵抗体を形成すべき部分9209が窓開けされる。感光性膜9201の本ベークを行って感光性膜を硬化させた後、側壁9201(9001−1〜6)の側面にイオン注入(II24、II25)を行い、この窓開けされた部分8209の側壁側面シリコン基板にイオン注入層9211を形成する。イオン注入の加速エネルギーは、絶縁膜8991の厚みを考慮して、どの程度の深さにイオン注入層9211を形成するかで決定する。イオン注入の加速エネルギーを下げたければ、窓開けされた部分9209の絶縁膜8991を除去しても良い。この除去方法として、絶縁膜をエッチングできるウエットエッチング液に浸漬したり、あるいは等方角性ドライエッチングを行ったりする。また、イオン注入(II24、II25)は、図34において説明したように、側壁9201(9001−1〜6)の側面にイオン注入するために一定角度(α24、α25)傾けてイオン注入する。イオン注入の方向は、図34で説明したイオン注入と同じ方向で、窓開けされたパターンを形成した側壁9001(9001−1〜6)の側面に照射できるようにする。すなわち、図36(d)において、側壁の右側面に窓開け9209が形成されているときは、右側からイオン注入し(図36(d)において、II25)、側壁の左側面に窓開け9209が形成されているときは、左側からイオン注入する(図36(d)において、II24)。抵抗体の濃度(抵抗)により、イオン注入量を決定する。尚、イオン注入の場合には、絶縁膜8991はなくても良い。イオン注入ではなく、拡散法で抵抗体を形成することもできる。その場合には、窓開けされた部分9209の絶縁膜9209をエッチングした後、感光性膜9201を除去した後に、拡散を行えば良い。
次に抵抗体を配線層に接続する拡散配線層を側壁9201(9001−1〜6)の側面に形成する必要がある。この形成も図36(a)〜(d)において説明した方法と同じ方法で行なうことができる。抵抗体としてのイオン注入層9211を形成した後に感光性膜9201を除去(リムーブ)する。このリムーブは、有機系のレジスト剥離液や濃硝酸等のウエット式剥離法や、酸素プラズマ等を用いたアッシングにより行なう。次に図36(a)および(b)に示した方法と同じく、感光性シートを真空中でシリコン基板9001の第1面側に付着させる。これは真空中や1気圧以下の低圧で行なうことが望ましい。その後プリベークを行って感光性シートを貫通溝の側壁側面や底部に付着させる。次に露光して、既に形成した抵抗体9211に接続できるように感光性シートをパターニングする。この露光も同様に傾斜させて側壁側面にパターニングできるようにする。また、側面のパターンが第1面の配線につながるようにもパターニングする。パターニング終了後、この窓開けされた部分にイオン注入を行う。このイオン注入は、抵抗体を形成したイオン注入よりも高濃度であり、配線抵抗を下げる必要がある。従って、パターニング幅を広くしてイオン注入層の抵抗が低くなるようにする。この高濃度のイオン注入層は抵抗体のイオン注入層9211と接続するようにするが、そのオーバーラップは抵抗体9211の両端であり、抵抗体9211の本体には高濃度のイオン注入がされないように抵抗体9211の本体部分は感光性膜で被覆しておく必要がある。(抵抗体と高濃度イオン注入層(拡散配線層)とは接続しなければならないので、のオーバーラップは必須である。)高濃度のイオン注入であるから、ハイカレントイオン注入装置を使用することが望ましい。尚、簡単に分かるように、高濃度層のイオン注入層を作る工程と抵抗体をイオン注入で作る工程は逆に形成しても良い。また、高濃度の拡散層(配線層)も拡散法(プリデポ)で作ることもできる。以上のようにして、側壁側面に抵抗体およびそれに接続する低抵抗拡散配線層を形成できる。尚、抵抗体の不純物濃度は約1017/cm3〜1020/cm3であり、拡散配線層(低抵抗)の不純物濃度は、抵抗体の不純物濃度より大きく約1019/cm3〜1020/cm3〜1022/cm3である。また、側壁がN型シリコンである場合には不純物はP型であり、側壁がP型シリコンである場合には不純物はN型である。(尚、側壁全体が抵抗体の場合には同じ不純物タイプであっても良い。)さらに、ピエゾ抵抗効果が大きいのはP型であるから、P型の不純物濃度を有する抵抗体にすると、側壁の変化率に対する抵抗体の抵抗変化率が大きくなり感度は上がる。
図37は、1枚の側壁に抵抗体を4個形成した一実施形態を示す。図32〜図37に示した実施形態では、1枚の側壁に1個の抵抗体を形成し、側壁の外側でそれらの抵抗体を接続したものであったので、4つの抵抗体からなるホイートストンブリッジを作製するには4枚の側壁(表と裏に1個ずつの抵抗体を形成した場合には2枚の側壁)が必要であり、サイズが大きくなっていた。図37に示す実施形態では1枚の側壁で済むので、サイズを小さくできる。また、各抵抗体を接続する拡散配線は短くて済むので、拡散配線の抵抗をさらに小さくできる。本発明の側壁は種々の面方位を持つように形成できる。すなわち、シリコン基板の表面の面方位が(a,b,c)であるとき、側壁の面方位(d,e,f)との関係が、ad+be+cf=0の関係になるようにd,e,fを選べば良い。たとえば、シリコン基板の表面の面方位が(1,0,0)であるときは、たとえば、(0,1,1)の面方位を有する側壁を形成すれば良い。これは、側壁がシリコン基板の表面に対して垂直に形成されるからである。
図37に形成する4つの抵抗体9034−1〜4は側壁9030の側面9031の端部に形成される。2つの抵抗体9034−3および9034−4は、側面9031の中心9036に対して対称位置に同じ大きさで、しかも中心9036に対して長手方向が平行になるような長方形形状の抵抗体である。圧力を受けて側壁が変形すると最も歪が大きくなるのが、側面9031の端部付近となる。その部分に抵抗体9034−3および9034−4を配置する。この結果、圧力を受けて側壁が変形すると長方形の抵抗体の長さが最も長くなり抵抗が大きくなる。抵抗体9034−3の両端には、拡散層配線9035−3−1および9035−3−2がつながり、さらに側壁の上面9032および下面9033の配線層9035−3−3および9035―3−4へつながる。同様に、抵抗体9034−4の両端には、拡散層配線9035−4−1および9035−4−2がつながり、さらに側壁の上面9032および下面9033の配線層9035−4−3および9035―4−4へつながる。
他の2つの抵抗体9034−1および9034−2は、側面9031の中心9036に対して対称位置に同じ大きさで、しかも中心9036に対して短辺方向が平行になるような長方形形状の抵抗体である。こちらの抵抗体も側面の端部付近に形成する。圧力を受けて側壁が変形すると最も歪が大きくなるのが、側面9031の端部付近であるが、2つの抵抗体9034−1および9034−2は幅方向に伸びるので、抵抗が小さくなる。抵抗体9034−1の両端には、拡散層配線9035−1−1および9035−1−2がつながり、さらに側壁の上面9032および下面9033の配線層9035−1−3および9035―1−4へつながる。同様に、抵抗体9034−2の両端には、拡散層配線9035−2−1および9035−2−2がつながり、さらに側壁の上面9032および下面9033の配線層9035−2−3および9035―2−4へつながる。
図37においては、電極・配線が側壁の上面9032および下面9033に引き出されていく実施形態である。この後配線・電極を適切に接続して、たとえばホイートストンブリッジ回路を形成する。圧力を受けて側壁が変形すると、抵抗体9034−3および9034−4は長手方向に同じ長さ伸びる。この結果抵抗は増大する(2つの抵抗体9034−3および9034−4は同じ大きさなので、抵抗値は同じ)。また、抵抗体9034−1および9034−2は短辺方向に同じ長さ伸びる。この結果抵抗は減少する(2つの抵抗体9034−1および9034−2は同じ大きさなので、抵抗値は同じ)。側壁が変形していないときの4つの抵抗体の大きさを同じにしておく(抵抗も同じ、この抵抗をR20とする)。圧力差P1−P2によって側壁が変形したときの、抵抗体9034−3および9034−4は長手方向の伸び率をxとする。また、抵抗体9034−1および9034−2は短辺方向の伸び率をyとする。変形後の抵抗体9034−3および9034−4の長手方向長さは、L=L20*(1+x){ここで、L20は変形していないときの長さ}、変形後の抵抗体9034−1および9034−2の幅は、W=W20*(1+y){ここで、W20は変形していないときの長さ}となる。体積抵抗率をρとすると、変形後の抵抗体9034−3および9034−4の抵抗は、R21=L20*(1+x)*ρ/W20、変形後の抵抗体9034−1および9034−2の抵抗は、R22=L20*ρ/{W20*(1+y)}≒L20*ρ/W20*(1−y)となる。抵抗体9034−1〜4の位置を適当に配置することにより、x=yとすることができるし、あるいは位置が明確であればxとyの関係が分かるので、変形後のR21やR22の関係をより簡単にでき、ホイートストンブリッジ回路を用いた測定から、xおよびyの値、すなわち変形率が分かる。事前に変形率と圧力差の関係を測定することもできるし、計算することもできるので、得られた変形率から圧力差を求めることができる。
変形率は大きい方が測定値の差が大きくなり感度が良くなる。従って、抵抗体9034−1〜4を変形率(歪)の大きい側面9031の端部に配置する。さらに、最もピエゾ抵抗効果の大きい結晶面上で、最もピエゾ抵抗効果の大きい結晶軸の方向に抵抗体9034−3および9034−4の長手方向を配置し、かつ最もピエゾ抵抗効果の大きい結晶軸の方向に抵抗体9034−1および9034−2の短辺方向を配置することが望ましい。たとえば、側壁9030の側面9031の面方位が(100)の場合には、<110>方向に抵抗体9034−3および9034−4の長手方向を、かつ<110>方向に抵抗体9034−1および9034−2の短辺方向を配置する。図37においては、抵抗体9034−3および9034−4の長手方向が側壁9030の上面9032および下面9033に平行になっているが、必ずしも平行にならなくても、上記の最適位置に配置することができる。以上のようにして、1枚の側壁(この両サイドは貫通溝となっていて、圧力差P1、P2をかけることができる)を用いて、圧力を検知できる圧力センサーを作製できるので、より小さなサイズの圧力センサーを実現できる。
図38は、1枚の側壁に抵抗体を4個形成した別の実施形態を示す。この実施形態では、電極・配線をすべて側壁9040の上面9032に配置して、下面には配置していない。すなわち、4つの抵抗体9034−1〜4のうち、図37において下面にあった電極・配線9035−2−3、9035−2−4、9035−4、9035−4−3を側壁9040の上面9032に配置している。このような配置にすることは、感光性膜を感光する方法やイオン注入の方法を少し変更することにより、これまで述べた方法を用いて簡単に可能となる。このように電極・配線をすべて側壁9040の上面9032に配置することにより、ホイートストンブリッジ回路等の配線をすべてシリコン基板9001の上面だけで設計できるので、設計やプロセスが簡単となる。尚、ここに記載していないものについては、図37において説明した内容と同様である。
図39は、1枚の側壁に抵抗体を4個形成した別の実施形態を示す。この実施形態においては、4つの抵抗体9034−1〜4は1枚の側壁の側面9031においてその両端同士が低抵抗の拡散配線層9052−1〜4で接続してホイートストンブリッジ回路を形成している。すなわち、4つの抵抗体9034−1〜4は1枚の側壁の側面9031において環状導線の中に直列に介設されている。具体的には、抵抗体9034−1の1つの端部と抵抗体9034−3の1つの端部とは拡散配線層9052−1で接続し、この拡散配線層9052−1は拡散配線層9053−1を介して側壁9050の上面9032の電極・配線9054−1に接続する。抵抗体9034−2の1つの端部と抵抗体9034−3の1つの端部とは拡散配線層9052−2で接続し、この拡散配線層9052−2は拡散配線層9053−2を介して側壁9050の下面9033の電極・配線9054−2に接続する。抵抗体9034−1の1つの端部と抵抗体9034−4の1つの端部とは拡散配線層9052−3で接続し、この拡散配線層9052−3は拡散配線層9053−3を介して側壁9050の上面9032の電極・配線9054−3に接続する。抵抗体9034−2の1つの端部と抵抗体9034−4の1つの端部とは拡散配線層9052−4で接続し、この拡散配線層9052−4は拡散配線層9053−4を介して側壁9050の下面9033の電極・配線9054−4に接続する。このようにして、図39に示す実施形態では、1枚の側壁9050の側面9031に、ブリッジ回路がすべて形成されているので、側壁9050の外側で複雑な接続をする必要がなく、非常にシンプルな構成となっている。側壁外部へ出る電極配線は、9054−1〜4の4つの端子(電極・配線)だけである。尚、抵抗体の配置はこれまで説明したものと同様である。
図40は、1枚の側壁に抵抗体を4個形成した別の実施形態を示す。この実施形態においては、図39と同様に、4つの抵抗体9034−1〜4は1枚の側壁の側面9031においてその両端同士が拡散配線層9052−1〜4で接続してホイートストンブリッジ回路を形成している。しかし、図39においては電極9054−2、4は側壁9050の下面9033にあるが、図40においては、電極9054−1〜4はすべて側壁9060の上面9032にある。すなわち、拡散配線層9053−2および9053−4は上面9032に伸びて、上面9032上の電極配線9054−2、9054−4へ接続する。この結果、電極配線9054−1〜4はすべて上面9032に形成されているので、簡単な設計と簡単なプロセスを実現することができる。
図41は、1枚の側壁に抵抗体を4個形成した別の実施形態を示す。この実施形態では、ピエゾ抵抗体9034−1および9034−2を中心付近に寄せた場合を示す。この実施形態においても抵抗体9034−1および9034−2は側面9031の中心位置9036に対して対称位置に配置される。抵抗体9034−1〜4はこれまでと同様に、側面9031の中心位置9036を通る中心線と平行方向に長手方向が向いている長方形形状の抵抗体である。抵抗体9034−3よび9034−4はこれまでと同様に、側面9031の中心線がほぼ長方形の中心を通るように配置され、抵抗体9034−3よび9034−4は側面9031の中心位置9036に対して対称である。図33に示すホイートストンブリッジ回路において、抵抗体9034−1および9034−2はR2およびR4に、抵抗体9034−3および9034−4はR1およびR3に対応するので、
V0={(R1*R3−R2*R4)/(R1+R2+R3+R4)}*I0
が成り立つ。抵抗体9034−1〜4のサイズを同じに形成すれば、側壁が変形しなければR1*R3−R2*R4=0であるが、側壁が変形すると、抵抗体9034−1および9034−2はほぼ同じように変形し、かつ、抵抗体9034−3および9034−4もほぼ同じように変形するので、R1=R3、R2=R4であるが、抵抗体9034−1および9034−2と抵抗体9034−3および9034−4との変形状態は異なるので、R1=R3≠R2=R4となり、上式から電流が流れる。事前に電流と変形程度(圧力差)との関係を求めておくことにより、側壁の両側面(9031およびその反対側の面)における圧力差(P1−P2)が分かる。このことは、これまでに記載した図32〜図40においても同様である。
以上説明してきたように、本発明の貫通溝で挟んだ側壁の側面(貫通溝)に(ピエゾ)抵抗体を形成する(側壁全体が抵抗体である場合も含む)ことにより、側壁の両側面にかかる圧力差(P1−P2)によって側壁が変形することを用いて、圧力差(P1−P2)を検出することができる。ホイートストンブリッジ回路だけでなく、他の抵抗測定回路を用いても圧力差によるピエゾ抵抗体の変化を測定し、その測定値から圧力を検出することができる。また、LSIで使用するシリコン基板と同じもの(たとえば、不純物濃度や結晶面方位が同じ)を使用できるので、本発明の圧力センサとLSIを同じチップに搭載できる。しかも従来の平面型ダイヤフラムに比べて圧力センサの面積を非常に小さくすることができるので、LSIのチップサイズを大きくすることもない。具体的には、圧力センサの面積は、従来の平面型ダイヤフラムが500μm*500μmのサイズに対して、側壁4枚の場合で500μm*200μmのサイズで充分である。側壁1枚なら、500μm*100μmのサイズで充分であり、プロセス条件を最適化すれば、500μm*50μm以下のサイズも可能となる。
図36において、感光性膜として感光性シートを用いる方法を説明した。これ以外にも感光性膜を側壁の側面に形成する方法がある。図42は、感光性膜を側壁の側面に形成する方法について説明する図である。図42(a)に示すように、液状タイプの感光性膜(通常のレジスト)を貫通溝8999(8999−1〜5)が形成されたシリコン基板9001上に塗布する。貫通溝8999の内部にも液状の感光性膜が入り込む。この塗布は、好適には大気圧中よりも低圧下、望ましくは真空中(超低圧下)で行なうと、貫通溝8999の底まで気泡が入らずに感光性膜が充填する。ただし、貫通溝8999を大部分埋め込む必要はない。次に図42(b)に示すように、挿入型マスク9223を準備する。挿入型マスク9223は貫通溝8999へ入り込む柱状パターン9225を支持するサポート板9224からなる。柱状パターン9225の形状は貫通溝8999の大きさより少し小さめにできていて、形状はほぼ同じである。すなわち、貫通溝8999の幅がd21、奥行き(紙面に対して垂直方向)がw21、柱状パターン9225の幅をd31、奥行き(紙面に対して垂直方向)をw31とすれば、d21>d31、w21>w31である。また柱状パターン9225の長さh31は、貫通溝の深さh21より大きくする。
この挿入型マスク9223を貫通溝8999を有するシリコン基板9001にアライメント合わせを行い、徐々に接近させて、図42(c)に示すように、貫通溝8999の中に柱状パターン9225を挿入する。貫通溝8999の中に入っていた感光性膜9221は、柱状パターン9225に押し出される。適度な深さまで挿入したら、移動を停止する。このときの柱状パターン9225と側壁との距離をe1(左側面との距離)、e2(右側面との距離)とすれば、d21=d31+e1+e2となる。また、柱状パターン9225の底からサポート基板までの距離をf31とする。柱状パターン9225が側壁9001−1〜5に接触しないで貫通溝へ挿入させるためには、挿入型マスク9223とシリコン基板9001とのアライメントは非常に重要である。このアライメントを正確に行なうために、サポート板9224は透明材料であると良い。また、挿入型マスク9223を精度良く作製するために、深堀タイプの異方性エッチング(Deep RIE)を用いて、たとえば石英基板などをエッチングして挿入型マスク9223をとする。尚、側面の感光性膜の厚みは比較的厚くても露光や現像は可能である。たとえば、5〜10μmの厚みでも良いので、d31=d21+10〜20μmでも良い。もちろん合わせ精度が将来は向上するから側面の感光性膜の厚みをさらに小さくすることができる。
挿入型マスク9223を停止させた状態でプリベークを行い半効果させた後、挿入型マスク9223を引き抜く。この結果、図42(d)に示すように、側壁側面に一定厚みの感光性膜9221を側壁にコンフォーマルに形成できる。挿入型マスク9223を引き抜くときに感光性膜9221を一緒に引きずらないようにするために、あらかじめ柱状パターン9225の表面に疎水性溶剤を塗布したり、超音波振動等を加えながら挿入型マスク9223を引き抜いたりすれば良い。このようにして、側壁側面にほぼe1またはe2の厚みを有する感光性膜を形成できる。この後、露光して所望のパターニングを行えば良い。尚、この技術は、圧力センサーへの適用だけでなく、側壁側面にレジストパターンを形成するすべてのパターン形成に適用可能である。尚、挿入型マスク9223にさらにパターンを形成して光が通るようにして柱状パターン9225の内側から光を照射するようにすれば、通常のステッパーやアライナー等の露光装置を使用しなくても良い。プリベークした後に柱状パターン9225から光照射して、その後で挿入型マスク9223を引き抜いて、その後現像すれば、所望の感光性膜パターンを形成することができる。
これまでに説明した図1〜図42において使用している符号または数字とこれから説明する図43〜図96において使用している符号または数字と重複するものがあるが、異なるものであることに注意をするべきである。
図43は、本発明の縦型圧力センサーの断面図を示す図である。本発明の圧力センサーは、第1面(主面)および第2面(裏面)からなる基板において、第1面に形成された凹部(第1凹部)および前記第1凹部に隣接し第2面に形成された凹部(第2凹部)により挟まれた前記基板の側壁をダイヤフラムとする圧力センサーであって、前記第1凹部の基板上に作成された第1導電体膜、前記第1導電体膜上に作成された第1圧電体膜、および前記第1圧電体膜上に作成された第2導電体膜、並びに/あるいは、前記第2凹部の基板上に作成された第3導電体膜、前記第3導電体膜上に作成された第2圧電体膜、および前記第2圧電体膜上に作成された第4導電体膜を含む圧力センサーである。
図43において、第1凹部126、127は基板111の第1面(図43において上面)側から形成された溝形状の凹部である。第2凹部128、129、130は基板111の第2面(図43において下面)側から形成された溝形状の凹部である。本明細書において基板内に形成される溝または凹部とは、基板の主面(第1面)または基板の裏面(第2面)から形成され、基板の主面(第1面)または基板の裏面(第2面)を開口部とし、基板の主面(第1面)または基板の裏面(第2面)に対して垂直な(略垂直な)側面(側壁とも言う)を持つ溝または凹部である。この溝または凹部は異方性ドライエッチングによって形成され、側面は理想的には基板の主面(第1面)または基板の裏面(第2面)に対して垂直であるが、異方性ドライエッチングのバラツキ(変動)等により曲面となったり、垂直に対して少し(好適には10度以下、もっと好適には5度以下)傾いて形成される場合もある。(略垂直とは、垂直方向に対して好適には10度以下、もっと好適には5度以下を概ね意味する。また、この角度(以下に示す、またはこれまでにも示す)とは、平均的な角度を示す。たとえば、凹部の側面の深さは距離がある(たとえば、1μm〜2000μm、これは基板の厚さにもよる)から、この深さの途中では一部この角度を超える側面となる場合もあるが、それらの全部の角度の平均を取ってこの角度を表す。)溝または凹部の底面は基板内に存在する場合もあれば、基板を貫通して基板内に存在しない場合もある。溝または凹部の底面が基板内に存在する場合、すなわち溝または凹部が基板を貫通しない場合、理想的には底面は基板の主面(第1面)または基板の裏面(第2面)に平行な面であるが、異方性ドライエッチングのバラツキ(変動)等により曲面となったり、平行に対して少し(好適には10度以下、もっと好適には5度以下)傾いて形成される場合もある。溝または凹部が基板を貫通する場合、すなわち基板の主面(第1面)または基板の裏面(第2面)のどちらにも開口部を有する場合は、この溝または凹部を貫通溝と呼ぶことがあり、当然基板内に底面は存在しない。しかし、貫通溝の場合にも基板の主面(第1面)または基板の裏面(第2面)側を別の基板(薄板と呼ぶこともある)で蓋をするので、この蓋をした部分を貫通溝の底面と呼ぶこともある。
第1凹部126は第2凹部128に隣接し、第1凹部126と第2凹部128の間に基板111の(基板)側壁132が存在し、第1凹部126と第2凹部128は基板111の側壁132によって隔てられている。第1凹部127は第2凹部128に隣接し、第1凹部127と第2凹部128の間に基板111の側壁133が存在し、第1凹部127と第2凹部128は基板111の側壁133によって隔てられている。また、第1凹部126を挟んで側壁132と対向する基板111の側壁131によって、第1凹部126およびそれと隣接する別の第2凹部129が隔てられている。同様に第1凹部127を挟んで側壁133と対向する基板111の側壁134によって、第1凹部127およびそれと隣接する別の第2凹部130が隔てられている。
第1凹部126および127は、基板111の第1面にほぼ垂直形状に形成された溝形状(略直方体形状)となっており、第1凹部126の底部には基板111の底部135が存在し、第1凹部127の底部には基板111の底部136が存在する。一方、第2凹部128、129、130は、基板111の第2面にほぼ垂直形状に形成された溝形状(直方体形状)となっており、第2凹部128の底部(図43では上にあるので、上部と称す場合もある)には基板111の上部140が存在する。第1凹部126および127は、紙面に対して垂直方向にも側壁が存在して、基板111の第2面側から形成された第2凹部とは隔絶されている。
基板111の第1面側には、基板111上に絶縁膜112、その上に導電体膜114(下部電極となる)、その上に圧電体膜116、さらにその上に導電体膜118(上部電極となる)、その上に絶縁体膜120が形成されている。当然第1凹部126、127の内部も同様の膜構造となっている。基板111の第2面側には、基板111上に絶縁膜113、その上(図43では下になっているが、逆にすれば上になるので、上と称する)に導電体膜115(下部電極となる)、その上に圧電体膜117、さらにその上に導電体膜119(上部電極となる)、その上に絶縁体膜121が形成されている。当然第2凹部128、129、130の内部も同様の膜構造となっている。基板111と導電体膜114の間に絶縁膜112を挟むのは、導電体膜114と基板111との電気低接続をしないようにするためである。基板111がガラスやプラスチックやセラミック等の絶縁体である場合は、絶縁膜112は不要であるが、他の素子や導電体膜が存在する場合は、それらと電気的に接触しないようにするために絶縁膜112を設ける場合もある。また、基板111と導電体膜114との密着性向上を目的として絶縁膜112を設ける場合もある。
基板111の上面には薄板(第1の薄板)122が付着している。この第1の薄板122は、絶縁膜120に付着しており、第1凹部126および127を被っている。第1の薄板122が第1凹部126および127を完全に塞いでいるときは、第1凹部126および127の凹部空間は気密空間となり、圧力が一定に保持される。第1凹部126および127の凹部空間の圧力を可変する場合には、第1の薄板122に圧力導入孔137および138を形成し、外部から圧力P1を導入できるようにする。
一方、基板111の下面には薄板(第2の薄板)123が付着している。この第2の薄板123は、絶縁膜121に付着しており、第2凹部128、129および130を被っている。第2の薄板123が第2凹部128、129および130を完全に塞いでいるときは、第2凹部128、129および130の凹部空間は気密空間となり、圧力が一定に保持される。第2凹部128、129および130の凹部空間の圧力を可変する場合には、第2の薄板123に圧力導入孔139等を形成し、外部から圧力P2を導入できるようにする。
コンタクト孔151は、導電体膜(下部電極)114へ電気的接続を行なうために、絶縁膜120および圧電体膜116を通して形成される。図43においては、コンタクト孔151が形成される領域における導電体膜118をあらかじめ除去している。このコンタクト孔151に導電体膜152を積層する。圧電体膜116が導電性(絶縁性が低い場合も含む)を有するときは、側壁に絶縁膜を形成してから、導電体膜152を形成する。導電体膜152の上には電極・配線(導電体膜)153を形成する。これにより、導電体膜(下部電極・配線)114からコンタクト孔151内導電体膜152を通して電極・配線(導電体膜)153へ電気的接続を行なうことができる。コンタクト孔154は、導電体膜(上部電極)118へ電気的接続を行なうために、絶縁膜120を通して形成される。このコンタクト孔154に導電体膜155を形成する。導電体膜155の上には電極・配線(導電体膜)156を形成する。これにより、導電体膜(上部電極・配線)118からコンタクト孔154内導電体膜155を通して電極・配線(導電体膜)156へ電気的接続を行なうことができる。コンタクト孔151および154を形成すべき領域に第1の薄板122が存在する場合には、前もって(第1の薄板122を付着する前に)この領域の第1の薄板122を除去しておけば良い。あるいは、第1の薄板122を除去せずに、第1の薄板にコンタクト孔を形成してから導電体膜を形成すれば良い。この場合、第1の薄板が導電体(絶縁性が低い場合も含む)である場合には、導電体膜を形成する前にコンタクト孔の側壁に絶縁膜を形成して、導電体膜が第1の薄板122に接触しないようにすれば良い。
基板111の裏側にも導電体膜(電極・配線)115および119があるので、これらからも外側へ電極・配線を取りだす必要がある。上記と同様に、基板111の表側からコンタクト孔を形成して取り出しても良い。この場合は、基板111にもコンタクト孔を形成する必要がある。基板111が導電体(絶縁性が低い場合も含む)である場合には、そのコンタクト孔の側壁に絶縁膜を形成してから導電体膜を形成し、導電体膜が基板111と接触しないようにする。あるいは、以下に示すように基板111の裏側(第2面側)から外側へ電極・配線を取りだしても良い。この方法は上記した基板111の表側(第1面側)へ電極・配線を取りだす方法を逆にすれば良い。
すなわち、コンタクト孔160は、導電体膜(下部電極)115へ電気的接続を行なうために、絶縁膜121および圧電体膜117を通して形成される。図43においては、第2の薄板123も存在するので、この薄板123にもコンタクト孔160を形成する。また、図43においては、コンタクト孔160が形成される領域における導電体膜119が存在するため、コンタクト孔の側壁に絶縁膜161を形成してから導電体膜162を形成する。導電体膜182の上には電極・配線(導電体膜)163を形成する。これにより、導電体膜(下部電極・配線)115からコンタクト孔160内導電体膜162を通して電極・配線(導電体膜)163へ電気的接続を行なうことができる。
コンタクト孔157は、導電体膜(下部電極)119へ電気的接続を行なうために、絶縁膜121を通して形成される。図43においては、第2の薄板123も存在するので、この薄板123にもコンタクト孔1157を形成する。このコンタクト孔に導電体膜158を形成する。導電体膜158の上には電極・配線(導電体膜)159を形成する。これにより、導電体膜(上部電極・配線)119からコンタクト孔157内導電体膜158を通して電極・配線(導電体膜)159へ電気的接続を行なうことができる。第2の薄板123が導電体(絶縁性が低い場合も含む)である場合には、そのコンタクト孔の側壁に絶縁膜を形成してから導電体膜を形成し、導電体膜が第2の薄板123と接触しないようにする。
図44は、本発明の縦型圧力センサーの平面図を示す図で、図43に示す構造を平面的に示したものであり、第1凹部および第凹部の位置関係が分かるように示している。図44において、実線で示している第1凹部182、184および破線で示す第2凹部183、185が形成されている。図44において、第1凹部182、第2凹部183、第1凹部184、第2凹部185は長方形状(高さ方向を考えると直方体形状)で、長辺方向を平行に配列している。第1凹部182およびこれと隣接する第2凹部183との間には基板181の側壁187が存在し、第2凹部183およびこれと隣接する第1凹部184との間には基板181の側壁188が存在し、第1凹部184およびこれと隣接する第2凹部185との間には基板181の側壁189が存在する。図44に示す本発明の実施形態では、第1凹部182、184および第2凹部183、185の上下は基板側壁191、192が存在する。従って、図43および図44から分かるように、第1凹部(図43では126および127、図44では182、184)は、第2凹部(図43では128、129、130、図44では183および185)と基板側壁により分離されている。尚、図44では図43に示した絶縁膜、導電体膜、圧電体膜等は省略している。また、図44における一点鎖線で示すA1−A2断面が図43の断面図を示していると言える。
図45は、圧力が加わったときにおける本発明の縦型圧力センサーの構造を模式的に示した図である。図45の薄膜の積層構造は図43における構造と同様である。すなわち、図45における基板側壁21は図43における基板側壁132、図45における基板側壁41は図43における基板側壁133と考えると良い。基板側壁21の外側の上には絶縁膜27、その上に導電体膜28、その上に圧電体膜29、その上に導電体膜30、その上に絶縁膜31が積層されている。基板側壁21の内側の上には絶縁膜22、その上に導電体膜23、その上に圧電体膜24、その上に導電体膜25、その上に絶縁膜26が積層されている。また、対面する基板側壁41の外側の上には絶縁膜47、その上に導電体膜48、その上に圧電体膜49、その上に導電体膜50、その上に絶縁膜51が積層されている。基板側壁41の内側の上には絶縁膜42、その上に導電体膜43、その上に圧電体膜44、その上に導電体膜45、その上に絶縁膜46が積層されている。
基板側壁21および41の上部および下部にも基板(底部または上部、図43では135、136、または140等)が存在するが、図45においては省略し、薄板32および33のみ示している。この薄板(第1の薄板)32および薄板(第2の薄板)33は図43における薄板122および123に相当する。ただし、図43では、第1凹部の上部は第1の薄板122で、第1凹部の下部は基板111で閉じていて、第2凹部の上部は基板111で、第2凹部の下部は第2の薄板123で閉じている。
基板側壁21、41および薄板32、33等に囲まれた空間37には第2の薄板33に圧力導入孔34が設けられ外部から圧力P2を印加することができる。基板側壁21の外側の空間38には第2の薄板33に圧力導入孔35が設けられ外部から圧力P1を印加することができる。基板側壁41の外側の空間39には第2の薄板33に圧力導入孔36が設けられ外部から圧力P3を印加することができる。たとえば、図43における第1凹部126や127は空間38や39に、図43における第2凹部128は空間37に相当すると考えることができる。尚、これらの圧力導入孔34、35、36は第1の薄板32に設けることもでき、外部からの圧力導入をスムーズに行なうことができるように適宜選択すれば良い。あるいは圧力導入孔を設けないようにすることも可能であり、その場合は内部空間は気密空間となり圧力がほぼ一定に保持されるので、その内部空間の圧力に対する差圧として圧力を検出することが可能となる。たとえば、圧力導入孔34を開けずに、内部空間37を気密にして内部圧力P2を一定として、その圧力P2に対して基板21や41等の圧力差による変形量に対応してP1やP3の圧力を検出することが可能となる。
P2>P1の場合、内部空間37はその圧力差P2−P1によって基板側壁21およびこれに積層した薄膜を内部空間38側に押し、基板側壁21は外側の方へ、すなわち空間38の方へ変形する。基板側壁21等(他に各種膜も含む)および基板側壁41等(他に各種膜も含む)はその上部および下部を上下の第1の薄板および第2の薄板によって変形を押さえられているが、基板側壁21等および基板側壁41等のその他の部分は規制されていないので、圧力差による力によって変形し、特にそれらの中心部付近が最も変形する。(凹部38または39側へ膨らむ。)空間38の上部は上部基板(図45では示されていないが、図43における基板上部140等)やその上に積層した薄膜やその上に付着した第1の薄板32(図43における第1の薄板122)によって変形が抑えられている。空間38の下部は基板底部(図45では示されていないが、図43における基板底部135等)やその上に積層した薄膜やその上に付着した第2の薄板33(図43における第2の薄板123)によって変形が抑えられている。この結果、基板側壁21の中心付近が最も変形し、基板側壁の周縁が殆ど変形しない状態となり、図45に示すように基板側壁21は湾曲状に変形する。
基板側壁21上に積層した薄膜も同様に湾曲状に変形する。従って、湾曲状に歪んだ圧電体膜24の両側の面に電荷が分極し、圧電体膜24の両面に積層している導電体膜23および25の間に電圧差V1が生じる。同様に、湾曲状に歪んだ圧電体膜29の両側の面に電荷が分極し、圧電体膜29の両面に積層している導電体膜28および30の間に電圧差V2が生じる。すなわち、導電体膜23に導電体配線B3を、導電体膜25に導電体配線B4を接続すれば電荷を取り出すことができる。導電体膜30に導電体配線B1を、導電体膜28に導電体配線B2を接続すればこの間の電位差はV2となり、電荷を取り出すことができる。
圧電体膜24および圧電体膜29を同じ材料で同程度の厚みで同じ条件(たとえば、スパッターで積層するときはスパッター条件を同一とし、その後の熱処理条件も同一とする)で作成すれば、基板側壁21の変形にほぼ従って両者の圧電体膜24および圧電体膜29は同程度に変形するから、発生する電位差(電荷)は同程度になる。(|V1|≒=|V2|)変位の向きはB1側とB3側が凸状または凹状となって同じ向きに変形し、これに対して、B2側とB4側はともに逆向きに変形しているから、B1とB3、B2とB4を接続すれば、両方の電荷を加算でき、約2倍の電位差(2|V1|)を得ることができる。
以上は図45における左側の基板側壁21について述べたが、図45における右側の基板側壁41についても同様である。P2>P3の場合、内部空間37はその圧力差P2−P3によって基板側壁41およびこれに積層した薄膜を内部空間39側に押し、基板側壁41は外側の方へ、すなわち空間39の方へ変形する。空間39の上部は上部基板(図45では示されていないが、図43における基板上部140等)やその上に積層した薄膜やその上に付着した第1の薄板32(図43における第1の薄板122)によって変形が抑えられている。空間39の下部は基板底部(図45では示されていないが、図43における基板底部136等)やその上に積層した薄膜やその上に付着した第2の薄板33(図43における第2の薄板123)によって変形が抑えられている。この結果、基板側壁41の中心付近が最も変形し、基板側壁の周縁が殆ど変形しない状態となり、図45に示すように基板側壁41は湾曲状に変形する。
基板側壁41上に積層した薄膜も同様に湾曲状に変形する。従って、湾曲状に歪んだ圧電体膜44の両側の面に電荷が分極し、圧電体膜44の両面に積層している導電体膜43および45の間に電圧差V3が生じる。同様に、湾曲状に歪んだ圧電体膜49の両側の面に電荷が分極し、圧電体膜49の両面に積層している導電体膜48および50の間に電圧差V4が生じる。すなわち、導電体膜43に導電体配線B6を、導電体膜45に導電体配線B5を接続すればこの間の電位差はV3となり、導電体膜50に導電体配線B8を、導電体膜48に導電体配線B7を接続すればこの間の電位差はV4となる。
圧電体膜44および圧電体膜49を同じ材料で同程度の厚みで同じ条件(たとえば、スパッターで積層するときはスパッター条件を同一とし、その後の熱処理条件も同一とする)で作成すれば、基板側壁41の変形にほぼ従って両者の圧電体膜44および圧電体膜49は同程度に変形するから、発生する電位差は同程度になる。(|V3|≒=|V4|)変位の向きはB6側とB8側が凸状となって同じ向きに変形し、これに対して、B5側とB7側はともに逆向きに変形しているから、B6とB8、B5とB7を接続すれば、両方の電荷を加算でき、約2倍の電位差(2|V3|)を得ることができる。
上述したように圧力差P2−P1により基板側壁21が変形し、それに応じて圧電体24および29も変形する。その結果B1−B2間に電圧V1、B3−B4間に電位V2が発生する。圧力差P2−P1により圧電体24および29が変形し、(圧力差P2−P1が大きくなると圧電体24および29の変形量が大きくなる)圧電体24および29の変形量に応じてV1やV2の値が変化する(変形量が大きくなるとV1やV2が増大する)ので、あらかじめ圧力差P2−P1量およびV1またはV2の関係を求めておけば、測定されたV1またはV2の値から圧力差P2−P1を求めることができる。V1およびV2を加算するように配線接続すれば、|V1|≒|V2|のときには約2倍の電位差を得ることができるので、感度を約2倍高めることができ、圧力差P2−P1の精度を高めることができる。さらに、P1またはP2のどちらかが既知であれば、他方の圧力を求めることができる。
同様に、圧力差P2−P3により基板側壁41が変形し、それに応じて圧電体44および49も変形する。その結果B8−B7間に電圧V3、B6−B5間に電位V4が発生する。圧力差P2−P3により圧電体44および49が変形し、(圧力差P2−P3が大きくなると圧電体44および49の変形量が大きくなる)圧電体44および49の変形量に応じてV3やV4の値が変化する(変形量が大きくなるとV3やV4が増大する)ので、あらかじめ圧力差P2−P3量およびV3またはV4の関係を求めておけば、測定されたV3またはV4の値から圧力差P2−P3を求めることができる。V3およびV4を加算するように配線接続すれば、|V3|≒|V4|のときには約2倍の電位差を得ることができるので、感度を約2倍高めることができ、圧力差P2−P3の精度を高めることができる。さらに、P2またはP3のどちらかが既知であれば、他方の圧力を求めることができる。
基板側壁21および41の側壁厚みを同程度にしておけば、P1=P3のときには基板側壁21および41の変形量も同程度となり、圧電体24、29、44、49の材質や厚みや作成条件を同程度にしておけば、(絶縁膜や導電体膜の材質や厚みや作成条件も同程度とする)V1、V2、V3、V4も同程度にすることができる。従って、これら電圧が加算できるように接続すれば、|V1|+|V2|+|V3|+|V4|=4|V1|と4倍の出力を出すことができるから、圧力差を4倍の感度で検出することが可能となる。さらに、基板側壁21や41にさらに繰り返して圧電体膜等を積層していけば、出力電圧をさらに大きくすることが可能となり、圧力検出精度をさらに高めることができる。および/または、図43または図45に示す構造の圧力センサーを複数作成して、出力電圧を加算できるように接続していけばさらに大きな出力電圧を得ることができ、圧力検出精度をさらに高めることができる。
以上から、圧電体の変形が同じ向きとなる方の導電体膜同士を接続し、これと逆向きの圧電体の変形となる方の導電体膜同士を接続すれば、これらの間の電位差から圧力を高精度に検出できることが分かる。すなわち、基板側壁21の片側の方に形成される圧電体膜の内側の電極・配線と、基板側壁21の逆側の方に形成される圧電体膜の外側の電極・配線とを接続すれば良い。そこで、図43に示すように、すべての第1凹部(圧力がP1とする)は同じ方向に変形する(第1凹部はすべて同時に膨らむか、あるいは窪むかのどちらかである)ので、第1凹部上の導電体膜114および118は切断が不要でこのまま接続しておけば良い。もちろん第1凹部以外の場所では必要な配線パターニングを行なっても良い。同様に、第2凹部(圧力P2とする)も同じ方向に変形する(第1凹部はすべて同時に膨らむか、あるいは窪むかのどちらかであり、第1凹部とは反対の変形)ので、第2凹部上の導電体膜115および119は切断が不要でこのまま接続しておけば良い。もちろん第2凹部以外の場所では必要な配線パターニングを行なっても良い。また、これらの導電体膜114、115、118、119のパターニングや作製時および/または引き出し電極・配線153、156、159、163をパターニングや作成時に同じ極性同士を接続しておけば、大きな出力電荷および電位を得ることができる。
絶縁膜22、27、42、47は導電体膜28、23、43、48からの電流が基板側壁21、41へ漏れないようにするために形成されているので、基板側壁21、41が絶縁体であるときは形成しなくても良い。ただし、導電体膜28、23、43、48と基板側壁21、41とが密着性が悪い場合には密着性向上膜として絶縁膜22、27、42、47を形成しても良い。(このことは、当然図43で示したものでも同様である。)また、絶縁膜26、31、46、51は、導電体膜25、30、45、50から電流を漏洩させない目的の他に導電体膜25、30、45、50を保護する役目もある。当然、電流の漏えいや保護する必要がない場合には形成しなくても良い。(このことは、当然図43で示したものでも同様である。)
図44では、第1凹部と第2凹部の間に圧力差が生じたとき、変形する部分は、第1凹部182および第2凹部183によって挟まれた側壁187、あるいは第1凹部184および第2凹部183によって挟まれた側壁188、あるいは第1凹部184および第2凹部185によって挟まれた側壁189であり、長方形(直方体)の凹部同士によって挟まれた長手方向の側壁である。第1凹部および第2凹部185によって挟まれていない(長方形の凹部の短辺側にある)側壁191や192は圧力差が生じないので、当然変形は生じない。さらに言えば、第1凹部および第2凹部によって挟まれていても、圧力差によって側壁が変形しなければ変形しない。側壁が薄ければ変形しやすくなるし、側壁が厚ければ変形しにくくなるし、側壁が変形しにくい材料であったり、圧力差が小さかったりすれば側壁は変形しにくくなる。
直方体形状の凹部において、長手方向の長さ(側壁の長さ)をa、凹部の深さ(側壁の深さ)をh、側壁の厚み(側壁の幅)をyとすると、基板側壁の最大撓みWmaxは以下の式で与えられる。
Wmax=α*z*h2a2/(Ey3)
ここで、zは圧力差であり、αは側壁の形状によって決まる定数であり、Eは基板側壁のヤング率である。この式から分かるように、ヤング率の小さな材料を使用すれば変形量は大きくなり、基板側壁を薄くすれば変形量は大きくなり、基板側壁の面積を広くすれば変形量は大きくなる。また側壁が変形しても圧電体の電圧差を生じる分極性が小さければ電位差は小さく圧力差を検出しにくいので、少しの基板側壁の変形(上式では、変形量W)が小さくても圧電体で発生する電荷の大きな材料を用いれば、圧力差を検出しやすい。従って、これらすべての値を最適化して最適な条件を有する圧力センサーを設計する必要がある。
図46は、本発明の縦型圧力センサーの別の平面図を示す図で、図44と異なるのは、第1凹部の周囲を第2凹部が囲んでいる。すなわち、長方形状(実際は深さもあるので、直方体形状)をした第1凹部196の側壁は、3面(長手方向側壁が204、短辺方向が202、207)ある。長手方向側側壁204は第1凹部196と第2凹部198を隔てている(あるいは、挟まれている)。短辺方向側壁202は第1凹部196と第2凹部209を隔てていて(あるいは、挟まれていて)、短辺方向側壁207は第1凹部196と第2凹部200を隔てている(あるいは、挟まれている)。また、長方形状(実際は深さもあるので、直方体形状)をした第1凹部197の側壁は、4面(長手方向側壁が205および206、短辺方向が208、210)ある。長手方向側側壁205は第1凹部197と第2凹部198を隔てていて(あるいは、挟まれていて)、長手方向側側壁206は第1凹部197と第2凹部199を隔てている(あるいは、挟まれている)。短辺方向側壁208は第1凹部197と第2凹部201を隔てていて(あるいは、挟まれていて)、短辺方向側壁210は第1凹部197と第2凹部203を隔てている(あるいは、挟まれている)。第2凹部198、199、200、201、203、209はつながっている。
このように、第1凹部は第2凹部に囲まれているので、第1凹部および第2凹部の間に圧力差があると、これらを隔てている側壁は変形する。すなわち、第1凹部196の側壁3面(202、204、207)は変形するので、図44に示した1面または2面の場合に比べて変形によって生じる電圧(または電流)が大きくなる。第1凹部197の側壁4面(205、206、208、210)は変形するので、第1凹部196の変形によって生じる電圧(または電流)よりも大きくなる。このように、本発明は第1凹部の側壁を4面まで増やすことができるので、平面的な面積を増大させずに圧電素子の感度を高めることができる。さらに、第1凹部の底面も圧力差によって変形できるようにすれば、さらに圧電素子の化の度を高めることができる。これらに示した直方体(平面的には長方形)形状や正方形(平面的には正方形で、立体的には直方体または立方体)形状の凹部や多角形柱(平面的には多角形)形状の他にも、円柱(円筒)形形状や楕円柱形(底面が楕円形)形状や一般的には曲面柱形(平面的に曲面形)形状など種々の凹部形状を適宜選択して、最適な形状の凹部を選択すれば良い。
尚、上述した本発明の圧力センサーはシリコンやガリウムヒ素や炭化ケイ素(SiC)等の半導体基板を使用できるので、他の素子(IC、トランジスタ、抵抗、コンデンサ、コイル、各種センサー等)を一緒に搭載できる。たとえば、トランジスタやIC等と一緒に搭載すれば、1つのチップの中に本発明の圧力センサーとそれをコントロールし演算処理するデバイスを入れることができる。従って、圧力センサとIC等との2チップまたは複数チップ構成とした場合に比較して、実装基板全体の大きさを小さくできるとともに外部配線を少なくできるので、全体デバイスの信頼性を大幅に増大できる。図43においては、圧力センサー172とIC・トランジスタ171を1つの基板(チップ)に形成した状態を示している。IC・トランジスタ171は基板111上に形成され、たとえば、ソース・ドレイン174、ゲート絶縁膜177、ゲート175等からなるMOSトランジスタ、素子分離173、一層目配線層176、層間絶縁膜178、二層目配線179、保護膜180等から構成される。これらの構造を完成させてから本発明の圧力センサー172を形成しても良いし、兼用できる構成(たとえば、導電体膜、絶縁膜)は一緒に形成することもできる。たとえば、二層目配線179は圧力センサーの導電体膜と兼用もできる。
次に、図43〜図46に示す基板の第1面側に第1凹部、基板の第2面側に第2凹部、第1凹部と第2凹部に挟まれた側壁をダイヤフラムとし、このダイヤフラム上に圧電体膜、よびこの圧電体膜を挟んで両側表面に形成され圧電体膜に発生する電荷を伝達する導電体膜を有する圧力センサーの製造方法の一例を以下に説明する。基板111は、半導体基板、絶縁体基板、あるいは導電体基板であり、その厚みはたとえば基板材料強度によって決定でき、基板材料強度は基板材料の弾性係数やポアッソン比によって決めることもできる。基板サイズも種々選定できる。たとえば、半径1インチ以上の円形基板(厚みを考えれば円板基板)、1辺が1インチ以上の正方形基板や長方形基板(厚みも考慮すれば直方体基板)である。基板111がシリコン半導体基板やガラス基板の場合は、たとえば6インチ(約150mm直径)の円形で、厚みが200μm〜700μmの円板基板(これをウエハとも呼ぶ。厚みに関しては、これらを研磨等によってさらに薄くしたものもある)である。半導体基板の場合には、トランジスタ等の能動素子や抵抗、コンデンサ、コイル等の受動素子を本発明の圧力センサーと一緒の基板に作製でき、これらの素子と圧力センサーを1チップ化も可能である。半導体基板としては、シリコン、ゲルマニウム、炭素等の単一元素半導体、ガリウムヒ素、窒化ガリウム、インジウムリン等の2元系半導体、InGaAs,GaInNAs等の3元系半導体、4元系半導体、多元系半導体がある。ヤング率の小さな材料はより小さな圧力差で撓み易く、大きなダイヤフラムの変形を発生させることができるので、圧力センサーの感度を高めることができる。たとえば、厚みが200μm〜2mm〜5mm〜10mmの各種プラスチック基板や、各種のゴム基板である。
基板111の第1面上に絶縁膜を形成し、その上にフォトレジスト等の感光性膜を形成し、さらに露光法により第1凹部126、127を形成する領域を開口する。感光性膜はフォトレジスト等の塗布膜でも良いし、感光性ドライフィルムでも良い。絶縁膜は、たとえばシリコン酸化膜(SiOx)、シリコン窒化膜(SiNy)、シリコン酸窒化膜(SiOxNy)等である。これらの絶縁膜はCVD法、スパッター等のPVD法で積層できる。あるいは、SOG(Spin On Glass)膜によって形成したシリコン酸化膜等でも良い。シリコン半導体基板の場合は、酸化法によって形成したシリコン酸化膜(SiO2)でも良い。この絶縁膜は感光性膜のパターニングを良好に行ない、第1凹部の形成を良好に行なうためのものであり、および/または凹部形成時のエッチングストッパー等の役割を果たすものであるから、問題なければ基板111の第1面上に絶縁膜を形成せず、直接基板111の第1面上に感光性膜を形成することもできる。絶縁膜の厚みは、良好な感光性膜のパターニングのためには約100nm以上あれば良いが、エッチングストッパー用としては、基板とフォトレジスト、絶縁膜とのエッチング選択比を考慮して決定する。たとえば、凹部エッチング中にフォトレジストが完全にエッチングされて尚、凹部をエッチングする必要がある場合、絶縁膜と基板のエッチングレートの選択比が10(基板が速い)の場合、残りの基板のエッチング深さがXであるとき、絶縁膜の厚みはX/10以上ないと凹部エッチング途中で絶縁膜が消失してしまいその下の基板が露出して、この部分の基板もエッチングっされてしまう。また、凹部のサイズができるだけ変化しないような絶縁膜の厚みにする必要もある。このように絶縁膜の厚みは事前に調査しておけば、エッチング選択比や最も小さなサイズ変化量を有する絶縁膜の厚みを決定できる。感光性膜の厚みに関しても、凹部エッチング中に感光性膜が消失しないようにその厚みを決定する。感光性膜と凹部のエッチング選択比をfとし、凹部のエッチング量をXとし、感光性膜の厚みはX/f以上は必要で、さらに各種バラツキ(たとえば、凹部のエッチングバラツキ、最初の感光性膜のバラツキ)を考慮して感光性膜の厚みを決定すれば良い。たとえば、凹部のエッチング量を300μm、感光性膜と基板とのエッチング選択比を20とすると、感光性膜の厚みは、最低15μm必要であり、全部のバラツキを合わせて30%とすれば、20μmの厚みとすれば良い。更に、凹部の垂直エッチングのために必要な厚みを考慮して最終的な感光性膜の厚みとする。尚、ここで感光性膜の厚みは、感光する前の厚みではなく、パターニングしてエッチング前の厚みを言う。従って、感光性膜露光前のプリベーク、感光性膜露光後かつ現像後のベーク等の熱処理を経た後、かつその後のスカム処理を行なうならばそのスカム処理後の厚みとなる。尚、インプリント法によってパターニングする場合は、インプリントした後、さらにパターン凹部底のインプリント膜を除去後(たとえばO2プラズマ処理後)のインプリント膜の厚みとなる。
感光性膜のパターニング形状は、第1凹部の側面をパターン通りに形成するために、可能な限り垂直パターンが望ましい。次に感光性膜の開口部に露出している絶縁膜をエッチング除去する。この絶縁膜のエッチング形状は、感光性膜のパターニング形状および寸法にできるだけ忠実にサイドエッチングの少ない垂直パターンが望ましい。絶縁膜111をエッチング除去した後、感光性膜および絶縁膜の開口部に露出している基板111をエッチングする。第1凹部および第2凹部に挟まれた基板側壁はダイヤフラムとなるので、基板側壁の面内で厚み(基板側壁厚み)が均一なことが望ましい。そのために、第1凹部は、感光性膜のパターンに忠実でサイドエッチングの少ない垂直パターンが望ましい。ダイヤフラムとなる基板側壁はサイズが大きいほど圧力に対して変形量が大きくなるので、第1凹部の深さは深い方が良い。たとえば、基板厚みに対して50%〜90%の深さにする。基板厚みが500μmの場合には、第1凹部の深さは250μm〜450μmとなる。基板111がシリコン基板の場合は、深堀RIE(DEEP RIE=DRIE)法により感光性膜のパターン寸法に近い凹部を形成することができる。DRIE法には、ボッシュプロセス(Bosch Process)、低温冷却エッチング、NLD(magnetic Neutral Loop Discharge)法など種々の方法がある。
所望の深さの第1凹部126、127を形成した後、凹部内に堆積した有機膜等のデポ膜やパターニングされた感光性膜等を除去する。基板111の第1面上に形成した絶縁膜も除去しても良いし、必要なら残しておいても良い。ただし、第1凹部との間で絶縁膜が廂状に形成されている場合は、この後の導電体膜がこの部分で段切れする可能性があるので、絶縁膜を除去しておくことが望ましい。基板111が半導体基板および導電体基板の場合には、次に基板111の第1面側に絶縁膜112を積層する。基板111がガラス、セラミック、プラスチックやゴム等の絶縁基板の場合には、絶縁膜112を積層しなくても良い。絶縁膜112の目的は、この上に積層する導電体膜114等と基板111との電気的接続を防止することである。たとえば、この絶縁膜はシリコン酸化膜(SiOx)、シリコン窒化膜(SiNy)、シリコン酸窒化膜(SiOxNy)等である。これらの絶縁膜はCVD法、スパッター等のPVD法で積層できる。あるいは、SOG(Spin On Glass)膜によって形成したシリコン酸化膜等でも良い。シリコン半導体基板の場合は、酸化法によって形成したシリコン酸化膜(SiO2)でも良い。絶縁膜112の厚みは、たとえば50nm〜1000nmである。この絶縁膜112は、第1凹部の側面および底面にも当然積層する。
次にこの絶縁膜112上に導電体膜(第1導電体膜)114を積層する。導電体膜は、たとえば、ドーピングした多結晶シリコン膜、各種シリサイド膜、ITO膜等の透明導電体膜、金属膜の窒化物(導電体窒化物)、金属膜の酸化物(導電体酸化物)、金属膜や合金膜等である。金属膜はアルミニウム、金、銀、白金、パラジウム、チタニウム、モリブデン、タングステン、銅、クロム、亜鉛、鉄、ニッケル等で、これらの金属の合金である。これらの導電体膜は、CVD法やスパッター・蒸着等のPVD法により積層できる。第1導電体膜の厚みは100nm〜2000nm程度である。圧電体膜との密着性向上のために第1導電体膜を2層膜以上の導電体膜としても良い。たとえば一層目を白金膜(Pt)、その上にチタン(Ti)、その上に窒化チタン(TiN)の3層膜にする。次に、導電体膜114の必要なパターニングを行なった後に、導電体膜114上に圧電体膜116を積層する。圧電体膜は、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、酸化亜鉛、リチウムテトラボレート、チタン酸カルシウム、燐酸アルミニウム、石英、酒石酸カリウムナトリウム、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の圧電性ポリマー、窒化アルミニウム、燐酸ガリウム、ガリウムヒ素などである。これらの圧電体膜はスパッター法、CVD法等で積層できる。圧電体膜の厚みは100nm〜5000nm程度である。圧電体膜積層後に圧電体膜の圧電性向上のために必要な熱処理を行なっても良い。第1導電体膜114のパターニングを行なわない場合であって、第1導電体膜をスパッター膜とし、圧電体膜もスパッター法で積層する場合、同じスパッター装置で積層すれば、真空状態を確保しながら連続的に第1導電体膜上に圧電体膜を積層することができる。
次に圧電体膜116の不要な領域を除去した後、導電体膜(第2導電体膜)118を積層する。導電体膜は、たとえば、ドーピングした多結晶シリコン膜、各種シリサイド膜、ITO膜等の透明導電体膜、金属膜の窒化物(導電体窒化物)、金属膜の酸化物(導電体酸化物)、金属膜や合金膜等である。金属膜はアルミニウム、金、銀、白金、チタニウム、モリブデン、銅、クロム、亜鉛等で、これらの金属の合金である。これらの導電体膜は、CVD法やスパッター・蒸着等のPVD法により積層できる。第2導電体膜の厚みは100nm〜2000nm程度である。圧電体膜との密着性向上のために第2導電体膜を2層膜以上の導電体膜としても良い。たとえば一層目を窒化チタン(TiN)、その上にチタン(Ti)、白金膜(Pt)の3層膜にする。次に、導電体膜114の必要なパターニングを行なった後に、導電体膜114上に圧電体膜116を積層する。基板側壁131、132、133、134が変形するとそれに伴い圧電体膜116も変形し圧電体膜116の両側の面(上面、下面)に電荷を生じる。第1導電体膜114は圧電体膜116の下面と接触しているので、圧電体膜116の下面に発生した電荷を第1導電体膜114に引き出すことができる。第2導電体膜118は圧電体膜116の上面と接触しているので、圧電体膜116の上面に発生した電荷を第2導電体膜118に引き出すことができる。
次に導電体膜118のフォトリソ法およびエッチング法等により不要な部分を除去した後、絶縁膜120を積層する。この絶縁膜120は、たとえば、この絶縁膜はシリコン酸化膜(SiOx)、シリコン窒化膜(SiNy)、シリコン酸窒化膜(SiOxNy)等である。これらの絶縁膜はCVD法、スパッター等のPVD法で積層できる。あるいは、ポリイミド膜等の有機系絶縁膜でも良い。この絶縁膜120は第1導電体膜、圧電体膜116、第2導電体膜118からなる圧力センサーを保護する役目を果たす。絶縁膜の厚みは、500nm以上あれば良い。次に薄板(第1薄板)122を基板111の第1面側に付着させる。この薄板122は第1凹部126、127をカバーし保護している。薄板122は、絶縁基板、たとえばガラス、石英、プラスチック等の透明な絶縁基板、セラミック等の不透明な絶縁基板である。透明な絶縁基板の場合には、下のパターンを直接観察できるのでパターン合わせを容易に行なうことができ、合わせ精度を向上できる。特に、薄板122の不要な部分を除去したパターンを有する場合(たとえば、電極153や156を形成する領域や、圧力伝達孔137、138を前もって除去しておくなどのパターンを形成している場合や、圧力センサー領域以外のたとえばトランジスタ等を形成している領域を除去しておくなどのパターンを形成している場合)、薄板122を基板111の第1面に精度良く付着させる必要がある。また、電極等に接触しないようにすれば、半導体基板や導電体基板でも良い。
薄板122が基板111との付着する領域に接着剤を塗布または積層した後、薄板122を基板111に付着させる。必要なら熱処理を行ない薄板122が基板111から外れないように固定させる。薄板の厚みは50μm〜1000μm程度であるが、もっと薄くしても良い。あるいはもっと厚くても良い。圧力センサーをできるだけ薄くしたい場合はこの薄板122を薄くする必要がある。しかし、薄い薄板122を薄い状態で付着させるのは、付着工程で薄板122が変形する可能性がある。このような可能性がある場合には、別基板に熱軟化性接着剤(軟化温度Ts)を介して薄板122を付着させ、この状態で薄板122に所望のパターン形成(たとえば、上述した薄板122の不要な領域を除去する)を行なった後、薄板122の所定部分に熱硬化性接着剤(硬化温度Th)を塗布し、基板111に別基板(薄板122側)を付着させる。Th<Tsとすれば、ThとTsの間で熱処理を行なうことにより薄板122は強固に基板111に付着できる。その後、Ts以上の温度にすれば熱軟化性接着剤が軟化して別基板を薄板122から分離できる。この結果、かなり薄い(100μm以下、あるいは50μm以下の)薄板でも基板111の第1面上に付着させることができる。
別基板111に薄い薄板を付着する方法として、別基板に薄板を付着させた後CMPやBG法で薄板を薄くする方法や、別基板上に熱軟化性接着剤を形成した後、その上に薄板材料を塗布法やCVD法やPVD法で薄板材料を形成する方法などがある。薄板122を付着した後に薄板の不要な部分をフォトリソ法およびエッチング法により除去しても良い。薄板122は接着剤を使用せずに、基板111の第1面に薄板122を載せて圧力をかけて常温接合または高温接合を行なって、基板111の第1面に薄板122を付着させても良い。その後、感光性膜を形成しコンタクト孔151形成用のパターニングを行ない、絶縁膜120をエッチングした後圧電体膜116をエッチングしてコンタクト孔151に第1導電体膜112を露出させる。第2導電体膜118は既にこの領域において除去されているので、コンタクト孔形成時には第2導電体膜118を除去しなくても良い。次に感光性膜をリムーブした後、感光性膜を形成しコンタクト孔154形成用のパターニングを行ない、絶縁膜120をエッチングしてコンタクト孔154に第2導電体膜118を露出させる。尚、圧電体膜118も前もってこの領域から除去しておけば、この時点において圧電体膜118の除去も不要であり、絶縁膜120のエッチングだけで良いのでコンタクト孔154も同時に形成できる。次に感光性膜をリムーブした後、導電体膜152、155を積層し、さらに電極配線153、156を形成する。
このコンタクト孔および導電体膜・電極形成は薄板122を付着する前に行なうこともできるし、第2凹部を形成し第2の薄板を付着させた後に行なうこともできる。基板111に薄板122を付着させた後に、基板111の第2面側に第2凹部等を形成する。第2凹部129、128、130を形成する方法、絶縁膜113、導電体膜(下部電極膜)115、圧電体膜117、導電体膜(上部電極)119、絶縁膜121、コンタクト孔157、160、導電体膜158、162、電極・配線159、163、薄板(第2の薄板)123の形成方法や材料等は第1面側と同様である。
第1凹部と第2凹部に挟まれた基板側壁131、132、133、134は圧力センサーのダイヤフラムとなるので、できるだけ厚みを均一に形成する必要がある。そのためには第1凹部に対して第2凹部形成用の感光性膜のパターンを精度良く形成する必要がある。基板111がガラスや石英、透明プラスチック等の透明な材料の場合は、第1凹部が第2面側から見えるのでかなり精度の良い合わせが可能である。シリコン基板などの不透明な基板でも透過可能な波長の光を用いれば合わせ精度を高めることができる。また、第1凹部が形成された後は薄板122で第1面側を固定しているのでプロセス中に基板111の変形を少なくできるのでパターン形成の精度を向上することができる。また、第2凹部形成後も基板111の第1面側は薄板122で固定され補強されているので、プロセス中に基板111が変形することはない。さらに第2の薄板123を第2面側に付着させた後は基板111の第1面も第2面も強化されているので、かなり頑丈な基板となっている。
これまでの実施形態では、第1凹部および第2凹部を構成する基板は圧電体ではなかったが、次の実施形態では、第1凹部および第2凹部を構成する基板が圧電体となる場合である。図47は、圧電体基板中に第1凹部および第2凹部を形成した場合の実施形態を示す図である。図47において、圧電体基板211に第1凹部226、227および第2凹部228、229、230が形成されている。第1凹部226および第2凹部229を隔てている側壁231、第1凹部226および第2凹部228を隔てている側壁232、第1凹部227および第2凹部228を隔てている側壁233、第1凹部227および第2凹部230を隔てている側壁234は圧電体基板であり、これらの側壁が第1凹部の圧力P1と第2凹部の圧力P2との圧力差により変形するダイヤフラムとなる。これらの側壁および圧電体基板211の表面側(すなわち、第1凹部側)には、密着層212、導電体膜214、絶縁膜216が積層される。密着層212は圧電体基板211と導電体膜214との密着性が良くない場合に使用される、密着層といっても電気が流れる導電体膜であり、たとえば導電性接着剤やバリアメタル(密着性向上用)などの導電性膜である。密着性向上用であるから、圧電体基板211と導電体膜214とが密着性が良ければ必要はない。これらの側壁および圧電体基板211の裏面側(すなわち、第2凹部側)には、密着層213、導電体膜215、絶縁膜217が積層される。密着層213は圧電体基板211と導電体膜215とが密着性が良ければ必要はない。
圧電体基板211の表面側には、第1の薄板218が付着している。この第1の薄板218は圧電体デバイスを保護するとともに、第1凹部への圧力導入孔(第1凹部226へは圧力導入孔237、第1凹部227へは圧力導入孔238)を有しており、第1凹部へのスムーズな圧力伝達を行なえるようになっている。圧電体基板211の裏面側には、第2の薄板219が付着している。この第2の薄板219は圧電体デバイスを保護するとともに、第2凹部への圧力導入孔(第2凹部222へは圧力導入孔239、第2凹部229、230への圧力導入孔は図示していない)を有しており、第2凹部へのスムーズな圧力伝達を行なえるようになっている。圧力を固定したいときには、この圧力孔をなくせば良い。
圧電体基板211の表側の導電体膜214から圧電体基板211の表側に電極・配線を引き出すには、図47に示すように絶縁膜216にコンタクト孔254を形成し、そこに導電体膜255を形成し、さらにこの導電体膜255上に電極・配線256を形成する。この結果、電極・配線256は導電体膜214とコンタクト孔255を介して電気的に接続する。圧電体基板211の裏側の導電体膜215から圧電体基板211の表側に電極・配線を引き出すには、図47に示すように絶縁膜216、導電体膜214、密着層212、圧電体基板211、および密着層213にコンタクト孔251を形成し、コンタクト孔251の側壁に絶縁膜250を形成し、さらに導電体膜252を形成し、この上に電極・配線253を形成する。この結果、導電体膜215は電極・配線253とコンタクト孔251内の導電体膜252を介して電気的に接続する。尚、図47の場合には、コンタクト孔251および252を形成する領域の第1の薄板218は予め除去して示しているが、第1の薄板218が存在する場合には、第1の薄板218にもコンタクト孔を形成すれば良い。
圧電体基板211の裏側にも電極・配線を引き出すことができる。すなわち、圧電体基板211の裏側の導電体膜215から圧電体基板211の裏側に電極・配線を引き出すには、図47に示すように絶縁膜217および第2の薄板219にコンタクト孔257を形成し、そこに導電体膜258を形成し、さらにこの導電体膜258上に電極・配線259を形成する。この結果、電極・配線259は導電体膜215とコンタクト孔257を介して電気的に接続する。第2の薄板219が導電体(絶縁性が余り良くない場合も含む)である場合には、コンタクト孔257の側壁に絶縁膜を形成してから導電体膜28を形成する。圧電体基板211の表側の導電体膜214から圧電体基板211の裏側に電極・配線を引き出すには、図47に示すように、第2の薄板219、絶縁膜217、導電体膜215、密着層213、圧電体基板211、および密着層212にコンタクト孔260を形成し、コンタクト孔260の側壁に絶縁膜261を形成し、さらに導電体膜262を形成し、この上に電極・配線263を形成する。この結果、導電体膜214は電極・配線263とコンタクト孔260内の導電体膜262を介して電気的に接続する。尚、コンタクト孔257、260のある領域にある第2の薄板219をあらかじめ除去しておけば、第2の薄板219にコンタクト孔を形成する必要がないので、アスペクト比を小さくでき、プロセスが容易になる。
上述したように、圧電体基板211を用いた本発明の圧電体素子の電極は、圧電体基板211の表面側からも、および/または裏面側からも取りだすことができる。圧電体基板211の表面側に開口している第1凹部側の導電体膜214からの電極配線は圧電体基板211の表面側に(すなわち、電極・配線256)、圧電体基板211の裏面側に開口している第2凹部側の導電体膜215からの電極配線は圧電体基板211の裏面側に(すなわち、電極・配線259)形成するのが、コンタクト孔を深く形成しなくても良いので形成しやすい。また、図47においては電極・配線253、255、259および263は凹部の領域に形成しているが、凹部のない領域にも形成することができるのは当然である。
圧電体基板211の表側にある導電体膜214は1つなぎになって接続している。すなわち、第1凹部側にある導電体膜214は連続していて良い。何故なら、第1凹部ではすべての側壁が第2凹部側に膨らむか、或いは凹むかであるから、同極の電位(すなわち、全部プラス側か、全部マイナス側である)が発生する(同じ側に分極する)。従って、側壁同士の導電体膜214を接続しても良く、電位が増幅されるので、感度が高まる。同様に、圧電体基板211の裏側にある導電体膜215は1つなぎになって接続している。すなわち、第2凹部側にある導電体膜215は連続していて良い。何故なら、第2凹部ではすべての側壁が第1凹部側に膨らむか、或いは凹むかであるから、同極の電位(すなわち、全部プラス側か、全部マイナス側である)が発生する。従って、側壁同士の導電体膜215を接続しても良く、電位が増幅されるので、感度が高まる。このように、第1凹部側の導電体膜214および第2凹部側の導電体膜215は、凹部領域でパターニングする必要がなく、単に積層すれば良いので、フォトリソ工程をなくすことができる。(ただし、凹部以外の領域においては配線パターンを形成する必要がある。特に凹部領域は急激な段差形状となっているため、後述する電鋳レジスト法や斜め露光法など特殊な方法でパターニングする必要があるので、凹部パターニングは手間がかかるが。これらが不要となるメリットは大きい。)第1凹部226の底部にある圧電体基板235、第1凹部227の底部にある圧電体基板236は、第2の薄板219と付着して固定されているので、圧力P1が変動しても殆ど変形しないから、この領域における電荷の発生は殆どない。同様に、第2凹部228の底部にある圧電体基板240も第1の薄板218と付着して固定されているので、圧力P2が変動しても殆ど変形しないから、この領域における電荷の発生は殆どない。
図48は、図47に示す構造、すなわち圧電基板を側壁基板として用いたどき、凹部の圧力変化によって側壁基板が変形した場合を示す模式図である。図48は、図47と同様に断面構造で示している。図48において、圧電体基板側壁53の両側に導電体膜54、56が、その上に絶縁膜55、57が形成されている。凹部68のもう一方の圧電体基板側壁58の両側に導電体膜59、61が、その上に絶縁膜60、62が形成されている。圧電体基板側壁53および58の上部は第1の薄板63が付着し、圧電体基板側壁53および58の下部は第2の薄板64が付着している。凹部68はこれらの側壁および薄板によって囲まれた閉空間となっているが、第1の薄板63に備わる圧力導入孔65から圧力P1が印加される。圧電体基板側壁53の左側の凹部69への圧力導入孔66は第2の薄板64に形成され、圧力P2が印加される。圧電体基板側壁58の右側の凹部70への圧力導入孔67は第2の薄板64に形成され、圧力P3が印加される。P2、P3<P1のとき、圧電体基板側壁53および圧電体基板側壁58は図48に示すように外側へ(凹部69および凹部70側へ)へ膨らみ変形する。圧電体基板側壁53や58の厚みが側壁の高さ方向に対して一定であり、上下の第1の薄板63および第2の薄板64に規制されていれば(すなわち、圧電体基板側壁53および58と第1の薄板63および第2の薄板64との結合部分が動かなければ)、圧電体基板側壁53や58の中心付近が最も変形する。この変形に伴い圧電体基板側壁53の凸側表面に電荷が発生し(分極する)、また圧電体基板側壁53の凹側表面には凸側と逆の電荷が発生し(分極する)、この間に電位差が生じる。すなわち導電体膜54から引き出した電極端子C1と導電体膜56から引き出した電極端子C2との間に電位差が生じる。一方、圧電体基板側壁58の凸側表面に電荷が発生し(分極する)、また圧電体基板側壁58の凹側表面には凸側と逆の電荷が発生し(分極する)、この間に電位差が生じる。すなわち導電体膜59から引き出した電極端子C4と導電体膜61から引き出した電極端子C3との間に電位差が生じる。C1とC4は同じ極性電位であり、C2およびC3は同じ極性電位であるため、これらを合わせれば(C1およびC4を接続、C2およびC3を接続)電位が大きくなり、感度が高まる。
次に図47に示す本発明の圧電体基板211を用いた圧電素子の製造方法を説明する。図49(a)に示すように、圧電体基板211の第1面(表面)上に絶縁膜271を形成し、さらにその上にフォトレジスト272を形成し、第1凹部形成用の窓273を開ける。圧電体基板は、圧電効果を示す物質の基板であり、たとえば、チタン酸ジルコン酸鉛{ジルコニウム酸・チタン酸鉛(Pb(ZrXTi1−X)O3 0<x<1)とも呼ばれ、いわゆるPZT}、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、酸化亜鉛、リチウムテトラボレート等のペロブスカイト構造やタングステン−青銅構造を持つセラミックスであり、あるいは石英、水晶、ロッシェル塩、トパーズ、電気石(トルマリン)、ベルリナイト(リン酸アルミニウム)、窒化アルミニウム、リン酸ガリウム、ガリウムヒ素などであり、あるいは圧電性ポリマー{たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)}、あるいはこれらを主成分とする材料などである。
絶縁膜271は、圧電体基板211の表面を保護するため、および圧電基板211とフォトレジスト272との密着性を向上させるためのものであるが、不要である場合には形成しなくても良い。絶縁膜271は、たとえばCVD法やPVD法で形成したシリコン酸化膜(SiOx)、シリコン窒化膜(SiNy)、シリコン酸窒化膜(SiOxNy)である。圧電体基板211の厚みは圧電素子の大きさに依存するが、約1μm〜2000μmである。圧電体基板が薄く取り扱いが困難である場合には別基板に付着してプロセスすることができる。凹部を精度良く形成できれば2000μmより厚いものでも本発明を適用できる。絶縁膜271の厚みは、密着性改良の目的としては約0.1μm〜1μmであるが、圧電体基板211をエッチングするときにフォトレジスト272もエッチングされるが、フォトレジスト272がすべてエッチングされる場合には絶縁膜271がマスクとなるので、圧電体基板211のエッチング終了時には絶縁膜271を残しておく必要があるから、それらを考慮して絶縁膜271の厚みを決定する。これらを考慮して概ね約0.1μm〜3μmである。フォトレジスト272の厚みは、エッチングする圧電体基板の厚みに依存すると同時に、エッチング時のフォトレジスト膜と圧電体基板とのエッチング選択比による。選択比が高い(圧電体基板の方がエッチング速度がより大きい)場合には、フォトレジスト272の厚みを薄くできる。たとえば、圧電体基板の厚みが300μmであり、エッチング選択比が10である場合には、フォトレジストの厚みは30μm以上あれば良い。(エッチングバラツキも考えて約40μm〜50μmあれば良い。)フォトレジストが厚くなると焦点深度が深い露光法やそれに対応するフォトレジスト膜を選定する。第1凹部はできるだけフォトレジストのパターンに忠実にしかもできるだけ垂直な形状が良いので、フォトレジストの開口部273の形状もできるだけ垂直な形状が望ましい。
次に、図49(b)に示すように、フォトレジストパターン272をマスクとして、開口部273において絶縁膜271をドライエッチングまたはウエットエッチングによりエッチング除去する。絶縁膜271がシリコン酸化膜(SiOx)である場合には、ウエットエッチングではBHF液(緩衝フッ酸液)等のフッ酸系水溶液を用いる。ドライエッチングの場合には、CF4、C2F6、C3F8等のエッチングガスによりドライエッチング装置を用いてシリコン酸化膜(SiOx)をエッチングする。エッチング形状は、できるだけマスクパターンに忠実にしかも垂直パターンが望ましい。絶縁膜271がない場合には当然絶縁膜271のエッチングは必要がない。次に、フォトレジスト272およびエッチングした絶縁膜271をマスクにして、開口部273において露出した圧電体基板211のエッチングを行なう。圧電体基板211のエッチング形状もマスクパターンにできるだけ忠実にしかも垂直パターンが望ましい。たとえば、圧電体基板がPZTである場合は、エッチングガスとして、C3F8やSF6やCl2等でドライエッチング装置を用いて異方性エッチングして垂直パターンを形成できる。このようにして、圧電体基板211内に第1凹部226および227を形成する。第1凹部226および227を形成後、フォトレジストパターン272を除去する。このレジスト除去は酸素プラズマによるアッシングや硝酸系リムーブ液や有機系レジスト剥離剤を用いて行なう。尚、絶縁膜271は問題なければ残しておいても良いし、除去しても良い。
基板の厚みをHs、第1凹部の深さをHc1、第1凹部の幅をWc1とする。Hsは前述したように10μm〜2000μm、Hc1は当然Hsより小さいが、Hc1は大きいほど圧電体基板211の側壁の変形が大きくなるので、それだけ多くの電荷が発生するが、エッチングバラツキを考えて、また第1凹部の底部274の強度を考慮すれば、Hsの10%程度は残しておくことが望ましい。たとえば、500μmの基板厚みであれば、約50μm程度残しておことが望ましい。ただし、後述するようにこの部分には第2の薄板が付着するので、もっと薄くしても実用上の強度は問題ない。第1凹部の幅Wc1は、この後に密着層、導電体膜、絶縁膜を積層するので、第1凹部の内部まで積層できる程度の幅が必要である。これは当然これらの膜の積層方法にも依存する。現状の技術では、CVD法の場合アスペクト比(Hc1/Wc1)が20程度であれば、これらの膜形成が可能である。PVD法の場合は10程度である。たとえば、Hc1が300μmで、Wc1が30μmで、アスペクト比10)、第1凹部内部へのスパッター導電膜の積層は可能である。Wclは小さいほど圧電体基板内の圧電素子の平面サイズは小さくできる。Wc1方向にも圧電体基板側壁を作るとき(Wc1とHc1で決まるダイヤフラム)はWc1はある程度の大きさが必要となるので、上記の膜形成には有利になる方向となる。この場合には、直方体形状の第1凹部の側壁の4面にダイヤフラムを形成できる。
たとえば、第1凹部の奥行き(長手方向)をLc1(直方体形状の第1凹部の、Hc1およびWc1以外の残り1辺の長さであり、図49(c)では斜めに記載しているが、この図は断面構造なので実際にはLc1は紙面に垂直方向となっている)としたとき、Lc1とHc1は同程度のサイズである(ことが望ましい)から、4面がダイヤフラムになる場合のWc1もHc1と同程度のサイズとなる(ことが望ましい)。尚、Hc1が300μmとしたときに、(第1凹部の最小幅Wc1を30μm、第2凹部の最小幅Wc2も30μm、圧電体側壁の幅を10μmとすると、)第1凹部の4つの側壁にダイヤフラムを形成するときに、380μmの大きさが必要となるが、1方向(たとえば横方向)に第1凹部および第2凹部の組合せを並べると、1つの組合せで70μm必要なので、約5組のダイヤフラム組みが380μmの大きさの中に入る。従って、本発明の場合には、1つの第1凹部の周りに4面を形成するダイヤフラムよりも1方向に並べたダイヤフラムの方が小さくできる。(約2.5倍有利となる。)本発明の場合には、第1凹部に導電体膜等を形成できれば、これらの膜について第1凹部領域でパターニングする必要がないので、1方向に並べた方が良い。上述した30μmも薄膜形成技術のさらなる向上によりもっと小さくできるので、将来はさらに有利となる。従って、従来の平面的なダイヤフラムと比較すれば約10倍も有利となり、同じ面積であれば本発明は従来法に比べて約10倍の感度になることを意味する。当然将来はさらに大きなアスペクト比でも第1凹部の内部への膜形成が問題なく可能となるので、さらに小面積で感度アップになる。
第1凹部226および227内の異物を除去し洗浄した後に、図49(c)に示すように、圧電体基板211の第1面(表面)に密着層212、導電体膜214を積層する。導電体膜214は導電性の薄膜であり、たとえば、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)、アルミニウム(Al)やこれらの合金である。密着層212も導電体膜であるが、導電体膜214と圧電体基板211との密着性を向上させる導電体膜である。密着層212は、たとえばチタン(Ti)、窒化チタン(TiN)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaN)である。密着層212は必要がない場合には積層する必要はない。たとえば、密着層212の膜厚は0〜100nmであり、導電体膜214の膜厚は10nm〜2000nmである。圧電体基板211に力が作用し分極したときに、その電荷を密着層212および導電体膜214を通して引き出すことができる。前述したように、第1凹部内で発生する電荷は同じ極性であるから、この導電体膜214(密着層212を含む)は第1凹部内でエッチングしてパターニングする必要はない。ただし、異なる第1凹部内の導電層214(密着層212を含む)を接続するパターンを形成する場合、第1凹部の領域以外の不要な導電層214(密着層212を含む)は除去する必要があるので、そのためのパターン形成をフォトリソ法および導電層214(密着層212を含む)のエッチングを行なう。このとき第1凹部226や227の領域はフォトレジストで被覆しておく。次にフォトレジストをリムーブした後で、絶縁膜216を積層する。この絶縁膜216は第1凹部や導電体膜214を保護するもので、シリコン酸化膜、シリコン酸窒化膜、シリコン窒化膜等で、CVD法、PVD法で積層する。
次に、図49(d)に示すように、圧電体基板211の第1面(表面)にサポート基板(第1の薄板)276を付着する。このサポート基板276は第1凹部等圧電体基板211の第1面(表面)に形成された第1凹部等の素子を保護するとともに、第2凹部形成時に圧電基板211の強度が減少するので、圧電基板211が損傷しないようにすること、プロセス時に圧電基板が変形してパターンゆがみがないようにすることが目的である。従って、問題が発生しない場合には必要がない。たとえば、圧電体基板211内に凹部の割合が少なければ基板のゆがみが少ない。サポート基板として、ガラス基板、石英基板、セラミック基板、プラスチック基板等の絶縁基板、あるいは金属板等の導電体基板でも良いし、半導体基板でも良い。強度やプロセス条件に合わせて適宜選択すれば良い。サポート基板を第1の薄板としても使用する場合は圧電素子の使用環境も考慮して信頼性の高い物を使用する必要があり、上記の材料から厚みも含めて適宜選定すれば良い。
サポート基板276を圧電基板211に付着させる方法として、常温接合する方法や、真空圧着する方法、高温接合や拡散接合、接着材を用いて付着する方法などがある。接着剤を用いる場合には、第1凹部にできるだけ接着剤が入らないようにするために、サポート基板276の必要な部分(圧電体基板211とサポート基板が付着する部分)だけに接着剤をコートしてからサポート基板276を圧電基板211にパターンを合わせ込んで付着させる。たとえば、マスクを用いて接着剤をサポート基板276の必要な部分にコート(スクリーン印刷も可能)した後に、サポート基板276を圧電体基板211に付着させる。接着剤を用いた時には所定の熱処理等を行ない、サポート基板276を圧電体基板211に確実に固着させる。また、接着剤はこの後のプロセスにおいても付着力が低下しないような材料および接着条件を選定する。
サポート基板276を第1の薄板として用いる場合には、一度付着させた後はサポート基板276を圧電基板211から外す必要はないが、サポート基板276を第1の薄板として用いない場合には、圧電基板211の裏面処理が終わった後に取り外す必要があるので、接着剤として取り外すことが可能なものを選定する。たとえば、熱軟化性接着剤で、第2凹部形成プロセスの温度(T2)では軟化しないが、それよりも高い温度で軟化する接着剤を用いることにより、第2凹部プロセス終了後に、T2より高い温度をかけて圧電体基板211からサポート基板276を取り外す。サポート基板276を第1の薄板として用いる場合には、接着剤はT2では軟化しない熱軟化性接着剤でも良いし、あるいは熱硬化性接着剤でも良い。また、サポート基板276を第1の薄板として用いる場合において、第1凹部に圧力導入口を設けない場合は、サポート基板276を圧電体基板211に付着した時に第1凹部に閉じ込めた圧力(これをP0とする)で、その後の第1凹部内の圧力は決定される。P0を真空に近く(P0がほぼ0気圧)したいときは、そのP0の圧力下でサポート基板276を圧電体基板211に付着させる。またP0を1気圧にしたいときは、大気圧下でサポート基板276を圧電体基板211に付着させれば良い。
次に、圧電体基板211の裏面に第2凹部を形成する。図49(e)に示すように、圧電体基板211の第2面(裏面)に絶縁膜277を形成する。この絶縁膜277の目的や形成方法は絶縁膜271と同様である。フォトリソ法を用いて、この絶縁膜277上に第2凹部を形成するためのフォトレジストパターン278を形成する。フォトレジストの開口部279は、第2凹部を形成するための開口部である。フォトレジストパターン278およびフォトレジストの開口部279は、圧電体基板211の第1面(表面)のパターン、特に第1凹部228および227に合わせて位置合わせされて形成される。圧電体基板211が透明もしくはある程度(特定の)光を透過しやすければ、圧電体基板211を透過できる波長を有する光を表面から裏面に向けてその波長の光を照射すれば、その光を受けて直接圧電体基板211の第1面(表面)のパターンに合わせて、裏面のフォトレジストパターン278、279をアライメント(合わせ込み)できるので、高い精度の位置合わせを行なうことができる。たとえば、合わせ精度を0.3μm〜0.1μm以下にすることもできる。圧電体基板がPZTの場合は、500nm〜800nmの波長範囲(可視光の範囲)において光の透過率が50%以上あるので、可視光を基板表面から照射して基板裏面のパターン(マスク)に位置合わせができる。また、図49(e)に示すように、フォトレジスト278は、第1凹部よりも少し大きめにパターニングされる。すなわち、第1凹部の幅Wc1よりも片側が圧電体基板211の側壁の厚み分は大きく形成される。
次に図49(f)に示すように、フォトレジストパターンの開口部279で露出している絶縁膜277をエッチング除去する。この絶縁膜277のエッチングは絶縁膜271のエッチングと同様である。次にフォトレジストパターンの開口部279で露出してきた圧電体基板211をエッチング除去する。このエッチングパターン形状は、フォトレジストパターン278にできるだけ忠実に形成す必要があるので、垂直なパターンが望ましい。また、第1凹部と第2凹部で挟まれた圧電体側壁の厚みはできるだけ等しいことが望ましい。ずなわち、図49(f)において、Wsc―1=Wsc−2=Wsc−3=Wsc−4であることが望ましい。従って、フォトレジストパターン278の幅をWr278、このフォトレジストパターンによってエッチングされたパターン幅をWc2とすれば、好適にはWc2=Wr278であり、好適にはWc2=Wc1+Wsc―1+Wsc−2である。従って、できるだけサイドエッチングの少ない垂直形状の第2凹部228、229、230を形成することが望ましい。
また、第2凹部は第1面に貫通しないようにし、第2凹部の底部240において圧電体基板211を一部残すようにする。尚、このエッチング方法も第1凹部の形成方法と同じで良い。第2凹部の底部240の厚みは、圧電体基板211の5%〜15%残すことが望ましい。たとえば、圧電体基板の厚みが500μmである場合には、25μm〜75μm残すことが望ましい。5%以下になると、エッチングばらつきなどにより、基板(ウエハ)内で圧電体基板211がなくなる部分が出る可能性があり、15%以上に厚くなると、圧電体基板を有効に使っていないことになる。ただし、この第2凹部の底部240では圧電体が極めて薄くなっても存在しさえすれば本発明の特性上は問題ない。すなわち、第2凹部の圧電体基板底部240は、既にサポート基板276に付着しているので、強度的には既に強固に補強されているので、特に問題ない。ただし、サポート基板276を外して、第1の薄板を付着させるまでの工程では、この部分が損傷しないように細心の注意を払う必要がある。第2凹部228、229、230を形成したことにより、第1凹部226、227との間に圧電体基板の側壁231、232、233、234が形成され、これらの側壁がダイヤフラムとなり、第1凹部内圧力と第2凹部内圧力との差によって変形し、それに対応して圧電効果によりこの部分が分極し、圧電体基板211の両サイド面に逆の電荷が発生する。
次にフォトレジスト278をリムーブする。このリムーブ方法は、フォトレジスト272の除去と同様である。圧電体基板211の第1面側の素子(第1凹部や導電体膜)は、サポート基板276で保護されているので、このリムーブ時にダメッジ等が入ることはない。第1凹部の底部235や236の厚みも圧電体基板211の厚みの10%程度は存在するので、問題はない。さらに、奥行き側は、厚い圧電体基板が存在して支持しているので、このフォトレジストリムーブやこの後のプロセスで変形することはない。(尚、平面的には図46と同様であるから、図46を参照)絶縁膜277は問題なければ残しておいても良い。エッチングする場合は、その絶縁膜をエッチングする水溶液(たとえば、絶縁膜がシリコン酸化膜であればフッ酸系のエッチング液)やドライエッチング法で除去すれば良い。ただし、圧電体基板211が露出しているので、この圧電体基板211を極力エッチングしない材料およぶ条件を設定する必要がある。
次に、図49(g)に示すように、密着層213、導電体膜215、絶縁膜217を積層する。この、密着層213は密着層212と同様の目的および同程度の材料や条件で良い。また、導電体膜215は導電体膜214と同様であり、絶縁膜217は絶縁膜216と同様である。第1凹部や第2凹部が形成されているので、圧電体基板211は図49においてはかなりエッチングされたように示されて強度が弱くなったように見えるが、実際にはこの図49の紙面と垂直方向にも壁があり、図46からも分かるように凹部のない厚い基板が残っている領域も多いので、プロセス中の基板211の強度は充分である。さらにサポート基板276は圧電基板211の全体をカバーして支持しているので、圧電基板211の強度は問題ない。尚、密着層213および導電体層215は同じ装置内で積層可能なので連続的に積層可能である。たとえば、スパッター装置を用いて、最初にアルゴンスパッタエッチングを行なって圧電体基板の表面の絶縁膜等を軽くエッチング除去して(逆スパッターとも言う)、その後でチタンをスパッターし、さらに連続して白金等の導電体膜を積層することができる。第1面(表面)側と同じく、導電体膜215は第2凹部のある領域ではエッチング等する必要がないので、第2凹部の内部にこれらの膜を積層できれば本発明の圧電素子を作製できる。平坦な面においてフォトレジストでパターニングして導電体膜をエッチングするときには、第2凹部領域はフォトレジスト等でカバーしてエッチングされないようにしておけば良い。たとえば、ポジレジストを用いて第2凹部領域以外の場所は露光してパターニングすれば微細なパターンを形成でき、第2凹部領域は露光しなければ現像によってポジレジストを第2凹部領域に残しておくことができる。
次に図49(h)に示すように、圧電体基板211の第2面(裏面)に第2の薄板219を付着する。付着する手段や方法は、サポート基板276の付着と同様である。薄板219は本発明の圧電素子を保護するためのもの(特に第2面側に面している第2凹部や配線等)であり、一種のパッケージと考えて良く、このままでも使用することができる。薄板219はたとえば、ガラス基板、石英基板、セラミック基板、プラスチック基板等の絶縁基板である。あるいは、金属等の導電体基板でも良い。導電体基板の場合には、電極間でショートしないように配慮が必要であるが、静電気に強いという特徴を持たせることができる。あるいは半導体基板でも良い。薄板219の厚みは、20μm〜2000μmであり、使用環境や厚みの制限(薄いパッケージの場合には、当然厚みを薄くする)や強度などによって適宜選定すれば良い。第2凹部の圧力を閉じ込める場合には、第2の薄板219を付着させるときのプロセス時の圧力をその圧力に合わせておいて、その圧力下で完全密閉すれば良い。また、第2凹部内にプロセス中に生じるアウトガス等を吸着して内部圧力を下げるガス吸着剤を第2凹部内に入れておいても良い。これは第1凹部も同様である。ガス吸着剤としては、たとえばジルコニア系のものを入れておけば、少なくとも水分、酸素、水素、二酸化炭素、窒素などの一部または全部を吸着できる。
第2の薄板219を圧電体基板211の裏面(第2面)に付着した後で、サポート基板276を除去して、第1の薄板を付着させても良い。第1の薄板の付着方法は第2の薄板の付着方法と同じである。あるいは、第1の薄板はサポート基板276で代用することもできる。代用すれば、サポート基板276を取り外す必要もなくプロセスを簡略化できる。サポート基板276や第2の薄板219や第1の薄板を薄くするときは、これらを付着した後で、エッチングまたは研磨して薄くしても良い。CMP法(化学的研磨法)を用いれば精度良くサポート基板や薄板を薄くできる。10μm〜200μm程度に薄くすることもできる。
次に図49(i)に示すように、圧力導入孔や引き出し電極・配線を形成する。まず、圧電基板211の第1面側に付着したサポート基板276(あるいは第1の薄板218)に圧力導入孔237、238を形成する。そのためにフォトリソ法を用いて圧力導入孔237,238を形成すべき場所以外をフォトレジストで被覆する。フォトレジストは塗布法やドライフィルムを用いることができる。あるいはインプリント法を用いてパターニングすることもできる。この導入孔は微細である必要はないので、ウエットエッチングで形成しても良い。サポート基板276(または第1の薄板218)がガラス基板の場合は、BHF等のフッ酸系のウエットエッチング液でエッチングする。もちろん、ドライエッチングで形成しても良い。サポート基板276(または第1の薄板218)がガラス基板の場合は、ドライエッチング装置を用いてCFx系、SFx系等のフッ素系ガスなどでガラス基板をエッチングする。このサポート基板276のエッチングのときに、導電体膜214や215からコンタクト孔内配線を介して電極・配線を引き出すために、この領域281にあるサポート基板276も同時にエッチング除去する。このサポート基板276を除去すると絶縁膜216が露出する。サポート基板276のエッチング速度より絶縁膜216のエッチング速度を遅くすれば(エッチング選択比を高めれば)、絶縁膜216を余りエッチングせずにサポート基板276を除去することができる。サポート基板276がガラス基板で絶縁膜216をプラズマCVD法で積層したシリコン窒化膜にして、BHF等のフッ酸系水溶液でサポート基板276をエッチングすればその下地の絶縁膜216は殆どエッチングされない。
フォトレジストをリムーブした後で、コンタクト孔254を形成するためのフォトリソ工程を行ない、コンタクト孔254を形成する部分の窓開けを行ない、窓開けした部分から絶縁膜216をエッチングしてコンタクト孔254を形成する。絶縁膜216がシリコン窒化膜(SiNy)、シリコン酸化膜(SiOx)、シリコン酸窒化膜(SiOxNy)であるときには、ドライエッチング装置を用いてCF4やC2F6やC4F8等のフッ素系ガスなどで絶縁膜216をエッチングしコンタクト孔254において導電体膜214を露出させる。この後レジストをリムーブし、コンタクト孔254に導電体膜255を積層する。この導電体膜255は選択CVD法やメッキ法を用いてコンタクト孔254だけに積層しても良い。たとえば、WF6ガスを用いて選択CVD法でコンタクト孔254のみ(導電体膜214が露出している部分のみ)にタングステン(W)膜を選択成長させることができる。あるいは、メッキ法で導電体膜216上にたとえば銅(Cu)膜を積層することができる。あるいは、圧電基板211の第1面全体に導電体膜を積層することにより、コンタクト孔254にも導電体膜255を積層できる。この場合には電極・配線256となる導電体膜とも兼用することができ、導電体膜積層後フォトリソ法および導電体膜のエッチングにより、電極・配線256を形成する。このとき、コンタクト孔に形成された導電体膜255の上は必ず電極・配線で被われているので、同時にコンタクト配線255も形成される。ここで形成する導電体膜は、たとえばアルミニウム、銅膜、金膜などであり、導電体膜214や絶縁膜216との密着性向上のために、および導電体膜214とのコンタクト性を良好にするために、バリアメタルを形成してからこれらのアルミニウム等を形成する。バリアメタルとして、たとえばチタン、窒化チタン(TiNx)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、窒化タンタル(TaNx)等がある。バリアメタルの膜厚はたとえば10nm〜100nm、導電体膜256の膜厚はたとえば500nm〜2000nmである。バリアメタルおよびアルミニウム等の導電体膜はスパッター法や蒸着法あるいはCVD法を用いて連続形成することができる。尚、あらかじ引き出し電極(コンタクト孔を含む)を形成すべき領域281の第1の薄板218(あるいはサポート基板276)を除去してから、圧電基板211に付着すれば、薄板218(あるいはサポート基板276)の除去は必要がない。
次に、導電体膜215からの引き出し電極・配線253を第1面(表面)側に形成するためのプロセスを説明する。この場合、コンタクト孔250は、コンタクト孔254に比べて、さらに導電体膜212、密着層212、圧電体基板211、密着層213を通して形成する。すなわちこれらの膜をすべて順番にエッチングしていく。まずフォトリソ法を用いてコンタクト孔250のレジスト窓開けを行なう。この窓から絶縁膜216、導電体膜214、密着層212、圧電体基板211、密着層213をエッチングする。(密着層213は導電体膜なので残しておいても良い。)1回のプロセスで行なうと簡単なので、ドライエッチング装置でエッチングする膜質ごとにエッチングガスやエッチング条件を変えながら順次エッチングしていくことが望ましい。1つのドライエッチング装置で行なうことが難しければ。膜質ごとに装置を変えてエッチングしても良い。コンタクト孔250を形成した後でレジストを除去する。このとき導電体膜214や密着層212もコンタクト孔250に露出しているので、この部分を絶縁膜で被覆するために、絶縁膜251を積層するとコンタクト孔の側壁に絶縁膜251が形成される。この絶縁膜251は、たとえば、シリコン酸化膜、シリコン酸窒化膜、シリコン窒化膜である。コンタクト孔底部の導電体膜215の上にも絶縁膜251が積層しているので、圧電基板211の第1面側から絶縁膜251の全面エッチング(異方性エッチング)を行なう。この異方性エッチングにより、コンタクト孔250の底部の絶縁膜251は完全にエッチングされ、導電体膜215が露出するが、コンタクト孔250の側壁絶縁膜251は深さ方向に対してはかなり厚いので、コンタクト孔250側壁の絶縁膜251は殆どエッチングされない。この後で導電体膜252および253を積層し、フォトリソ法および導電体膜のエッチング法を用いて電極・配線253を形成する。導電体252は選択CVD法やメッキ法で形成しても良い。形成方法や形成手段、バリアメタル等の積層に関しても電極・配線256を形成する場合と同様である。ただし、コンタクト孔254よりコンタクト孔250は深いので、選択CVD法やメッキ法はコンタクト孔250への被覆性の良い条件で行なうことが望ましい。また、導電体252は、電極・配線用の導電体膜253と兼用しても良いが、コンタクト孔250へ被覆性の良い条件で積層することが重要である。以上のようにして、図49(i)に示すように、圧電基板211の第1面(表面)に導電体膜214や215からの引き出し電極・配線256や253を形成することができる。
次に基板211の裏面側(第2面側)で電極を形成する方法について説明する。この方法や手段は第1面側と同様であるが、第2の薄板219の上に電極・配線を取りだす方法について説明する。導電体膜215から電極・配線259を引き出す場合は、図49(i)に示すように、第2の薄板219にコンタクト孔257形成用のフォトレジストの窓開けをフォトリソ法を用いて行なう。次に窓開けした所より第2の薄板219をエッチングする。第2の薄板がたとえばガラス基板の場合には、ウエットエッチングであればたとえばBHF等のフッ酸系エッチング液で第2の薄板をエッチング除去する。ドライエッチングであれば、CF4やCHF3系のフッ素系ガスなどを用いて第2の薄板をエッチング除去する。その後で絶縁膜217をエッチングして導電体膜215を露出する。この後レジスト等をリムーブして、バリアメタルおよび導電体膜を積層して、フォトリソ法およびエッチング法により、コンタクト内導電体膜258および導電体・配線259を形成する。導電体膜258は選択CVDやメッキで行なっても良い。
導電体膜214から電極・配線263を取りだす方法については、電極・配線253を形成する場合に加えて第2の薄板219を最初にエッチング除去する方法が加わる。コンタクト孔260が形成した後に側壁絶縁膜261を形成して導電体膜215および密着層213を被覆する。その後でコンタクト導電体膜262および電極・配線263を形成する。上述の説明では、導電体膜214および215からの引き出し電極は第1面側にも第2面側にも作製したが、どちらか一方だけで良い。さらに、上記から分かるように、圧電基板211や薄板218(219)にもコンタクト孔をあけるとアスペクト比が大きくなるので、もっと好適には、導電体膜214からの引き出し電極は第1面側の絶縁膜216上に形成し、導電体膜215からの引き出し電極は第2面側から絶縁膜217上に形成すると良い(上述では、第2の薄板にもコンタクト孔をあけたが、この部分の第2の薄板219をあらかじめ除去しておく)。尚、第2の薄板219にも第2凹部228、229、230等への圧力伝達孔(たとえば、239)を形成する。圧力伝達孔の形成方法は、第1の薄板218やサポート基板276に形成する場合と同様であり、コンタクト孔を形成するときに一緒に圧力伝達孔を形成することもできるし、別々に形成しても良い。また、コンタクト孔257や260を形成すべき領域の第2の薄板219を除去したもの(第2の薄板219)を圧電体基板211の第2面(裏面)に貼りつけても良く、このときはコンタクト孔257や260のアスペクト比が小さくなり、導電体膜をこのコンタクト孔内に形成することが容易となる。また、予め圧力伝達孔を作製した第2の薄板219を貼りつけても良い。さらに、圧力伝達孔や薄板またはサポート基板にコンタクト孔を形成する前に、薄板やサポート基板を研磨法やエッチングにより薄くすれば、圧力伝達孔やコンタクト孔を形成しやすくなる。またコンタクト孔のアスペクト比も小さくなるので導電体膜・配線の被覆性(ステップカバレッジ)も良くなる。ただし、この薄板やサポート基板をパッケージ体の保護材料として使用する時には、信頼性や強度を考慮してそれらの厚みを決定する必要がある。
以上の製造方法によって、圧電体基板内に形成した第1凹部および第2凹部に挟まれた圧電体基板側壁をダイヤフラムとした圧電素子を形成することができる。圧電素子は必要な数のダイヤフラムを接続すれば飛躍的に感度が上がり、より小さな圧力差も検出できる。従って、極めて良好な圧電素子(圧力センサー)を実現できる。たとえば、圧電基板の厚みを300μm、第1の薄板および第2の薄板の厚みを各100μmとすれば、パッケージ厚みが約500μm(0.5mm)の非常に薄い圧力センサーとなる。圧力導入孔のどちらか(第1面(表面)側か、または第2面(裏側)か)を閉じておけば(あけなければ)、絶対圧を検出することもでき、その環境中に本発明の圧力センサーパッケージを置いておくだけで、その環境の圧力を検出できる。
あるいは、逆に引き出し電極へ電圧を印加すれば基板側壁(ダイヤフラム)を自由に変形でき、凹部の中に入っている気体や液体を任意に吐き出すことができるとともに、外部からの気体や液体を凹部へ取り入れることもできる。すなわちポンプとしての役目を果たすことができる。たとえば、凹部の電極をマトリックス上に配置しておけば、それに対応する凹部を自由に動かすことができる。圧力伝達孔同士を接続すれば、凹部から別の凹部へ気体や液体を移送することができる。電圧の大きさによって基板側壁の変形量をコントロールできるので、凹部内の体積も自由にコントロールでき、圧力伝達孔を通じて気体や液体を凹部内に入れる量もコントロールできる。これらは、インクジェトデバイスへの応用も可能である。さらに圧力伝達孔に開閉バルブも取り付けておけば、この開閉バルブの制御と側壁の制御を任意にコントロールすれば複雑な動きが可能なポンプやガスおよび液体輸送システムを構築できる。
図50は、インプリント法を用いて本発明の圧電デバイスを作製する方法を示す図である。圧電性ポリマー4011を基板4009上に塗布または滴下、またはシート(フィルム)状の圧電性ポリマー4011を付着させる。圧電性ポリマー4011は熱可塑性であり、ガラス転移点をTg4011とする。この圧電性ポリマー4011の温度をTg4011以上に上げ圧電性ポリマーを軟化または液状にした後、モールド4008を押しつける。あるいは、圧電性ポリマー4011が塗布膜または滴下膜またはゲル状膜である場合は、液状またはゲル状の状態でモールド4008を押しつけて、その後圧電性ポリマー4011の温度をTg4011以上に上げても良い。その後、Tg4011以下に温度を下げて圧電性ポリマー4011を硬化させて、モールド4011を離す。(図50(a))モールド4008の凸部4007は圧電性ポリマー4011の凹部4015を形成し、モールド4008の凹部4005は圧電性ポリマー4011の凸部4004を形成する。
次に導電性ポリマー4013を基板4012上に塗布または滴下、またはシート(フィルム)状の圧電性ポリマー4011を付着させる。導電性ポリマー4013は熱硬化性であり、硬化温度Tg4013はTg4011より低い温度のものを選定する。(Tg4013<Tg4011)液状またはゲル状の導電性ポリマー4013に圧電性ポリマー4011を押しつける。(図50(b)、(c))圧電性ポリマー4011側の温度をTg4013付近(T10)に上げて、導電性ポリマー4013側の温度はTg4013より低く保持する。T10はTg4013−5℃<T10<T10+10℃が良く、もっと好適にはTg4013−1℃<T10<T10+5℃が良い。その後圧電性ポリマー4011を導電性ポリマー4013から離すと、圧電性ポリマー4011の凹凸パターンに導電性ポリマー4013の薄い膜が付着する。圧電性ポリマー4011側の温度をTg4013とTg4011の間で保持し導電性ポリマー4013を完全に硬化させる。この結果、圧電性ポリマー4011の凹凸パターン上に導電性ポリマー4013の薄膜が形成される。{図50(d)}
次に、フォトリソ法またはインプリント法、さらにエッチング法を用いて、導電性ポリマー膜4013の配線パターンを形成する。ここで導電性ポリマー膜4013の配線パターンをしなくても良ければ行なわなくても良い。次に絶縁性ポリマー4017を基板4016に塗布または滴下、またはシート(フィルム)状の圧電性ポリマー4011を付着させる。絶縁性ポリマー4017は熱硬化性であり、硬化温度Tg4017はTg4011より低い温度のものを選定する。液状またはゲル状の絶縁性ポリマー4017に圧電性ポリマー4011(導電性ポリマー膜4013付き)を押しつける。圧電性ポリマー4011側の温度をTg4017付近(T11)に上げて、絶縁性ポリマー4017側の温度はTg4017より低く保持する。T11はTg4017−5℃<T11<T11+10℃が良く、もっと好適にはTg4017−1℃<T11<T11+5℃が良い。その後圧電性ポリマー4011を絶縁性ポリマー4017から離すと、圧電性ポリマー4011の凹凸パターン上に付着した導電性ポリマー4013上に絶縁性ポリマー4017の薄い膜が付着する。圧電性ポリマー4011側の温度をTg4017とTg4011の間で保持し絶縁性ポリマー4017を完全に硬化させる。この結果、圧電性ポリマー4011の凹凸パターン上に付着した導電性ポリマー4013上に絶縁性ポリマー4013の薄膜が形成される。{図50(e)、(f)、(g)}
図50(b)〜(g)においては、圧電性ポリマー4011側の基板4009は省略して記載していないが、圧電性ポリマー4011側の基板4009は存在している。次に圧電性ポリマー4011側の凹凸パターンがある方に第2の薄板4023を付着させる。圧電性ポリマー4011側の凹凸パターンの凸部と第2の薄板4023の間に接着剤4024を介して付着させても良い。この接着剤4024は熱硬化性樹脂であり、その硬化温度をTg4024としたとき、Tg4024はTg4011より低いものを選定する。温度をTg4024とTg4011の間で保持し接着剤4024を完全に硬化させ、圧電性ポリマー4011側の凹凸パターン側に第2の薄板4023を固着する。このとき、圧電性ポリマー4011側の凹凸パターンの凹部4015は第2の薄板4023と圧電性ポリマー4011との間で閉じられている。{図50(h)}
次に基板4009を圧電性ポリマー4011から離す。たとえば、Tg4011より高い温度にすることにより圧電性ポリマー4011が軟化するので、基板4009を圧電性ポリマー4011から離すことができる。次に圧電性ポリマー4011(第2の薄板4023に付着している)の温度をTg4011以上に保持すると、圧電性ポリマー4011は軟化する。圧電性ポリマー4011が軟化した状態で、モールド4018を圧電性ポリマー4011内に押しつけ、モールド4018の凸部を圧電性ポリマー4011の凹部領域となるべき部分4019に入れる。圧電性ポリマー4011の厚みが所定の厚みとなるようにできるだけ精密にアライメントして押しつける。次にTg4011より低い温度に下げて、圧電性ポリマー4011を硬化させた後、モールド4018を圧電性ポリマー4011から離すと、圧電性ポリマー4011の凹部4019が形成される。凹部4019においては、圧電性ポリマー4011の厚み、特に側面の厚みW4011を精度良く作る。{図50(i)、(j)、(k)}
尚、モールド押圧により、凹部4015が変形する可能性があるが、変形しない程度の圧力で制御する必要がある、あるいは、凹部4015のある領域において第2の薄板4023に圧力伝達孔をあけておき、この圧力伝達孔より凹部4015へモールドの押圧に対抗できる圧力(たとえば、エアー圧や窒素圧あるいは液圧)をかけておけば凹部4015の変形を防止することができる。あるいは、第2の薄板4023を付着する前に凹部4015に熱可塑性ポリマーを充填して硬化させておき、(このTgはTg4011より低い)後に第2の薄板4023にあけた圧力伝達孔から外へ流出させるという方法もある。あるいは熱可塑性ポリマーで充填させて別基板でふたをした後、導電性膜4021や絶縁性膜4025を形成した後、別基板を取り外し、凹部4015内のポリマーを取りだすという方法もある。
次に導電性ポリマー4021を塗布、または滴下、またはシート(フィルム)状の圧電性ポリマー4011を付着させる。特に圧電性ポリマー4011の凹部4019内に充填するようにする(あるいは充分入るようにする)。この導電性ポリマー4021は熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂である。この導電性ポリマー4021が熱硬化性樹脂の場合には、その硬化温度Tg4021はTg4011より低いものを選定する。{図50(l)}次に、モールド4022を液状またはゲル状の導電性ポリマー4021に押しつける。モールドの凸部は圧電性ポリマー4011の凹部4019に入る。このとき、押圧により、凹部4015が変形する可能性があるが、変形しない程度の圧力で制御する必要がある、あるいは、凹部4015のある領域に第2の薄板4023に圧力伝達孔をあけておき、この圧力伝達孔より凹部4015へモールドの押圧に対抗できる圧力(たとえば、エアー圧や窒素圧あるいは液圧)をかけておけば凹部4015の変形を防止することができる。あるいは、第2の薄板4023を付着する前に凹部4015に熱可塑性ポリマーを充填して硬化させておき、(このTgはTg4021より低い)後に第2の薄板4023にあけた圧力伝達孔から外へ流出させるという方法もある。あるいは熱可塑性ポリマーで充填させて別基板でふたをした後、導電性膜4021や絶縁性膜4025を形成した後、別基板を取り外し、凹部4015内のポリマーを取りだすという方法もある。尚、導電性ポリマー4021が光硬化性樹脂の場合は、モールド4022を導電性ポリマー4021に押しつけた後に、硬化する光を照射する。従って、モールド4022、あるいは第2の薄板4023はこの光を透過する材料、たとえばガラスや石英で形成されていることが望ましい。{図50(l)、(m)}
次に、全体の温度をTg4021とTg4011の間で保持して、導電性ポリマー4021を硬化させて、モールド4022を離せば、圧電性ポリマー4011上に導電性ポリマー4021の薄膜が形成される。{図50(n)}次に、導電性ポリマー4021に対して、必要な配線パターニングを行なう。その後で、絶縁性ポリマー4025を塗布、または滴下、またはシート(フィルム)状の圧電性ポリマー4011を付着させる。特に圧電性ポリマー4011の凹部4019内に充填するようにする(あるいは充分入るようにする)。この絶縁性ポリマー4025は熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂である。この絶縁性ポリマー4025が熱硬化性樹脂の場合には、その硬化温度Tg4025はTg4011より低いものを選定する。{図50(o)}
次に、モールド4026を液状またはゲル状の絶縁性ポリマー4025に押しつける。モールドの凸部は圧電性ポリマー4011の凹部4019に入る。このとき、押圧により、凹部4015が変形する可能性があるが、変形しない程度の圧力で制御する必要がある、あるいは、凹部4015のある領域で第2の薄板2023に圧力伝達孔をあけておき、この圧力伝達孔より凹部4015へモールドの押圧に対抗できる圧力(たとえば、エアー圧や窒素圧あるいは液圧)をかけておけば凹部4015の変形を防止することができる。あるいは、第2の薄板4023を付着する前に凹部4015に熱可塑性ポリマーを充填して硬化させておき、(このTgはTg4025より低い)後に第2の薄板4023にあけた圧力伝達孔から外へ流出させるという方法もある。あるいは熱可塑性ポリマーで充填させて別基板でふたをした後、導電性膜4021や絶縁性膜4025を形成した後、別基板を取り外し、凹部4015内のポリマーを取りだすという方法もある。{図50(p)}
次に、全体の温度をTg4025とTg4011の間で保持して、絶縁性ポリマー4025を硬化させて、モールド4026を離せば、圧電性ポリマー4011上の導電性ポリマー4021上に絶縁性ポリマー4025の薄膜が形成される。{図50(q)}この絶縁性ポリマー4025は導電性ポリマーの保護膜となる。次に接着剤等を介して第1の薄板4027を絶縁性ポリマー4025に付着させる。{図50(r)}凹部4019の部分において圧力伝達孔や引き出し電極用の領域における第1の薄板を除去する。その後引き出し電極配線等を形成して、圧電素子デバイスが作製される。
以上のように極めて簡単なプロセスで、しかも低温プロセスで精度の高い圧電素子デバイスを作製できる。図50に示す圧電素子デバイスは凹部4019と凹部4021の圧力差によって、これらの凹部によって挟まれた側壁の圧電体4011が変形し、これらの変形によって側壁の圧電体表面に発生した電荷をその両側に密着した導電体配線4017および4025によって取り出して、これらの導電体配線間の電位差によって凹部4019と凹部4021の圧力差を検出できる。あるいは、圧力伝達孔にインク等の液体容器を接続しておけば、これらの導電体配線に電圧を印加して側壁の圧電体膜(ダイヤフラム膜)を変形させることにより、圧力伝達孔からインク等の液体を放出することができ、たとえばインクジェットデバイスとして使用することもできる。さらには、凹部内の気体を精密に吐き出すことができるので、高精度のポンプデバイスとして使用することもできる。
尚、上記のプロセスはインプリント法を中心に説明したが、他の方法を組み合わせても良い。たとえば、4011は圧電性ポリマーとして説明したが、圧電性セラミックでも良い。この圧電性セラミックの場合は、たとえばPZT等{Pb(Zr,Ti)O3、Pb(Zn1/3Nb2/3)O3(97wt%)−Bi2O3(2wt%)−ZnO(1wt%)}を含む微粒子にエチルセルロース系樹脂バインダおよびジエチレングリコールモノブチルエーテル等の溶剤を加えたペーストやスラリーをスクリーン印刷法等で塗布し、この塗布膜にモールド4008を押しつけて、この状態で乾燥し焼成され、これらの圧電性セラミックが硬化した後にモールド4008を離す。尚、圧電性セラミックの場合はかなりの高温にならないと溶融・軟化しないので、図50(i)、(j)に示すようにモールド4018を使用できない。そこでこのプロセスではフォトリソやインプリント法等によってレジストをパターニングしてエッチング法により、凹部4019を形成する。
あるいは、導電体膜4013、4021や絶縁膜4017、4025をCVD法やPVD法で作製しても良い。プロセスとしてはこれらの膜はCVD法やPVD法の方が簡便である。図50に示す凹部内の配線はこのまま接続しておけば良いので、凹部内または凹部管でトリッキーな配線パターニングを行なう必要はない。
図50は、圧電基板4011を基板側壁として用いた場合の構造および製造方法を示したが、図43に示す圧電デバイスについてもインプリント法を用いて作製できる。すなわち、図50に示す圧電基板4011が通常のポリマーやゴム等の絶縁体と時考えれば良い。この後の第1の凹部、第2の凹部を作製する工程は同様のプロセスで行なうことができる。異なるのは、第1凹部内および第2凹部内にそれぞれ下部電極となる導電体膜を作製し、その上に圧電体膜を形成し、さらに上部電極となる導電体膜を形成することである。その後は、上述した方法と同様のプロセスで進めることができる。
あるいは、圧電基板4011がセラミックやガラスと考えれば良い。ガラスの場合はガラスのTgより高い温度でモールドをインプリントした後Tg以下の温度に下げて硬化させる。セラミックの場合にはセラミック微粒子等を含むセラミックペーストやセラミックゲル状態へモールドをインプリントした後固化温度以上に加熱してセラミックを固化させる。あるいは、圧電基板4011が金属等の導電体と考えれば良い。金属の融液にモールドをインプリントした後融点(Tm)以下に温度を下げて金属を固化させれば良い。その後、必要な場合は絶縁膜を形成し、その上に下部電極となる導電体膜を積層し必要なパターニングを行なった後、圧電体膜を積層する。その上に上部電極となる導電体膜を積層し必要なパターニングを行なう。さらに絶縁膜を積層し、薄板を付着して凹部に蓋をする。
次に凹部または貫通溝の深さや幅のバラツキを低減する方法について説明する。図51は凹部または貫通溝の深さや幅のバラツキを低減する方法を示す図である。図51(a)に示すように、基板4051上に絶縁膜4052を形成し、さらにその上に感光性膜4053を形成し、凹部を形成するためのパターニングを行なう。このパターニングされた感光性膜4053(4053−1、2、・・・、i、・・)(一般的な順番としてiを使用)をマスクとして、絶縁膜4052をエッチングし、さらに基板4051の凹部形成のためのエッチングを行なう。エッチングによって形成した凹部4054(4054−1、2、・・・、i、・・)(一般的な順番としてiを使用)の深さ(基板4051の表面からの深さ)をそれぞれ、H1、H2、・・・、Hi、・・、幅をそれぞれ、W1、W2、・・・、Wi、・・・とする。凹部の深さはエッチング等によるバラツキがありH1≠H2≠Hiとなり、ある範囲内には納まるがバラツイテいる。良く管理したエッチングでバラツキは±3〜5%であるが、±15%以上になることもある。本発明の圧力センサーの特性(たとえば、基板側壁の変形量)はこの凹部または貫通溝の深さにも大きく依存する。これを回避するために、凹部ではなく貫通溝にする方法がある。貫通溝にすれば、貫通溝の深さは基板厚みに等しくなるので、バラツキが小さくなる。しかし、基板を基板厚み分全部エッチングする必要があるため、ボッシュ法等の深堀エッチング(DRIE)法を用いても、特に基板の深い方において、貫通溝の幅Wiがバラツイテくる。すなわち、凹部4054(4054−1、2、・・・、i、・・)の凹部または貫通溝の幅W1、W2、・・・、Wi、・・において、W1≠W2≠Wi、となる。良く管理すれば、±3〜5%以内に抑えることはできるが、±15%以上になることもある。本発明の圧力センサーの特性(たとえば、基板側壁の変形量)はこの凹部または貫通溝の幅にも大きく依存する。(この幅は、貫通溝の幅に影響する。)特に基板厚みの2/3以上をエッチングした後に凹部または貫通溝の幅がバラツイテくる。
そこで、基板4051の厚みの2/3(約67%)〜90%をエッチングした後、凹部のエッチングを終了する。従って、このときにはどの凹部4054も第2面(裏面)に貫通していない。(図51(a))次に感光性膜4053をリムーブする。絶縁膜4052もエッチング除去しても良いが、残しておいても良い。尚、この絶縁膜4052を形成せずに感光性膜をパターニングする場合もある。絶縁膜4052もエッチング除去した場合および絶縁膜4052を形成していない場合には、再度絶縁膜を形成するが、この場合には凹部4054内にも形成される。絶縁膜4052を残した場合にも凹部4054内の基板表面を保護するために、再度絶縁膜を形成しても良い。次にレジスト等の有機膜4055を塗布して、凹部4053を埋めると同時に基板4051の表面を平坦化する。(図51(b))適度な熱処理を行ない、有機膜を固化する。このとき平坦度が悪くなる(有機膜が収縮する場合は、特に凹部4054で窪む場合がある)ので再度有機膜を塗布し、再度熱処理を行ない平坦化することができる。尚、凹部が窪んで凹部内に空洞が形成されても余り大きくなければ、凹部内の有機膜は最終的に除去するので、問題はない。
次に、基板4051の表面側から平坦化した有機膜をエッチバックし、絶縁膜4052を露出させる。絶縁膜4052が全面的に露出するまでエッチングする。基板4051上の絶縁膜4052と凹部内を埋めている有機膜4055は、できるだけ同じレベルで平坦化していることが望ましいので、絶縁膜4052と有機膜4055のエッチング速度は同程度であることが望ましい。次に薄板4056を基板4051上の絶縁膜4052および凹部4054内を埋め込んでいる有機膜4055上に付着する。この付着方法として、接着剤を用いる方法や常温接合法等がある。(図51(c))尚、この凹部4054を有機膜で埋め込むのは、プロセス中に基板4051や凹部4054が変形することを防止することや基板4051を裏面から除去したときに凹部4054の内部を保護することを目的としている。従って、このような問題がなければ有機膜4055のプロセスは必要がない。
次に、基板4051の裏面側から基板4051を研磨する。この研磨は、通常のバックグラインドで行なうことができるが、CMP(化学的研磨)法を用いて均一性良く化学的研磨することが望ましい。上述したように、凹部4054は基板厚みの2/3以上の深さになると凹部の幅Wiのバラツキが大きくなるので、そのバラツキの大きくなる凹部の深さを事前に調査しておき、その部分の深さに達するまで基板4051を研磨する。この化学的研磨後の凹部4054(4054−1、2、・・・、i、・・・)の深さをH1−2、H2−2、・・・、i−2、・・・とし、幅をW1−2、W2−2、・・・、i−2、・・・とすると、これらの深さや幅のバラツキを非常に小さくすることができる。すなわち、凹部4054(4054−1、2、・・・、i、・・・)の深さH1−2、H2−2、・・・、i−2、・・・のバラツキはバックグラインド法やCMP法のバラツキとほぼ等しくなり、CMP法であれば±5%以下を確実に達成できる。また凹部4054(4054−1、2、・・・、i、・・・)の幅W1−2、W2−2、・・・、i−2、・・・は深堀エッチング法の均一性が良い方のバラツキになるので±5%以下を確実に達成できる。
次に、凹部4054内の有機膜4055を除去する。この有機膜4055の除去は、たとえば熱濃硫酸や熱濃硝酸で有機膜除去ができるし、あるいは有機系剥離液等で有機膜除去できる。あるいはO2プラズマアッシングでも有機膜除去できる。この有機膜4055を除去した状態が図51(f)である。この後、絶縁膜や導電体膜、さらに圧電体膜や導電体膜等を積層して圧力センサーや圧電デバイスやポンプデバイスを形成することができる。
図52は、基板内の第1面(表面)側に形成した第1凹部だけで側壁を形成した実施形態を示す図である。基板311は、シリコン、ゲルマニウム、ガリウムヒ素(GaAs)、窒化ガリウム、炭素、各種化合物半導体等の半導体基板、あるいはガラス、石英、セラミック、ポリマー、ゴム弾性体等の絶縁体基板、鉄、銅、アルミニウム、各種金属、各種合金等の金属基板である。以下はシリコン基板として説明する。シリコン基板311内に第1凹部301および302を隣接して形成する。図53は、本発明の実施形態の平面図(基板面に平行な面における断面図)である。シリコン基板311の第1面側(表面側)から見たものである。この図から分かるように、隣接する第1凹部は長方形状であり、立体的に見れば直方体形状である。この直方体形状の側面が隣接して第1凹部が並んでいる。第1凹部301と302に挟まれたシリコン基板側壁323がダイヤフラムとなる。図52に示す第1凹部301および302の側面は基板面に対して垂直か、垂直に近く、いわゆる略垂直に形成されることが望ましい。また、第1凹部の深さは、第2面(裏面)には達しないように形成される。この第1凹部の底部の残っているシリコン基板315の厚みは、シリコン基板の厚みの5〜15%程度として形成する。5%以下の場合には、第1凹部をエッチングで作るときに基板内でバラツクので、基板内の場所により薄くなったり、あるいは貫通したりして、第1凹部の底部の強度が小さくなる。15%以上残しても良いが、その場合はシリコン基板を薄くすることもできるので、最初から薄いシリコン基板を使用することもできる。ダイヤフラムとなるシリコン基板側壁323の厚みは、1μm〜100μmであり、使用する圧力やフォトリソの精度やエッチング時の作製精度によって決定される。ただし、裏面から第2凹部を形成する方法に比較して、フォトリソ工程やエッチング工程や膜形成工程等がほぼ半分に減るというメリットの他に、第1凹部と第2凹部の合わせが不要になること、フォトリソ工程やエッチング工程のバラツキ等に関して第1凹部および第2凹部の相互作用や相互関係が不要になること等のメリットがある。ただし、隣接する凹部の変形は逆になるので、配線を切断する必要がある。
第1凹部のシリコン基板上に絶縁膜312、その上に第1導電体膜(下部電極・配線)313、圧電体膜314、さらにその上に第2導電体膜(上部電極・配線)316、絶縁膜320が形成される。第1導電体膜313は、第1凹部301と第1凹部302との間317で切れており導通していない{プロセス上では第1導電体膜313を少なくともこの部分で切断する(エッチング除去する)必要がある}。この切れた部分には圧電体膜314が形成されている(この部分の第1導電体膜313を切断した後に圧電体膜314を形成する)。切れた部分は、シリコン基板側壁323の上面にある。この部分は変形しない所なので、電荷発生には殆ど寄与しない部分である。また、第2導電体膜316は、第1凹部301と第1凹部302との間318で切れており導通していない{プロセス上では第2導電体膜316を少なくともこの部分で切断する(エッチング除去する)必要がある}。この切れた部分には絶縁膜320が形成されている(この部分の第2導電体膜316を切断した後に絶縁膜320を形成する)。切れた部分は、シリコン基板側壁323の上面にある。この部分は変形しない所なので、電荷発生には殆ど寄与しない部分である。第1凹部301内の圧力P1と隣接する第1凹部302内の圧力P2とは異なっており、この圧力差によってシリコン基板側壁323がダイヤフラムとして変形する。この変形に伴って、このシリコン基板側壁323に付着した圧電体膜314(314−2)および314(314−3)が変形する。シリコン基板側壁323に付着した圧電体膜314(314−2)は第1凹部301側の側壁圧電体膜であり、シリコン基板側壁323に付着した圧電体膜314(314−3)は第1凹部302側の側壁圧電体膜である。圧電体膜314(314−2)および314(314−3)の両表面には、変形により電荷が分極する。
このとき、圧電体膜314(314−2)の上部側の変形方向と圧電体膜314(314−3)の上部側の変形方向は異なる(一方が膨らむと他方は凹んでいる)ので、圧電体膜314(314−2)の上部側の表面に発生する電荷と圧電体膜314(314−3)の上部側の表面に発生する電荷は逆となる。従って、第2の導電体膜316が接続していると相殺されてしまうので、第2の導電体膜316は318で切断する必要がある。第1凹部301側にある第2の導電体膜316を316−1とし、第1凹部302側にある第2の導電体膜316を316−2とする。また、圧電体膜314(314−2)の下部側の表面に発生する電荷と圧電体膜314(314−3)の下部側の表面に発生する電荷は逆となる。従って、第1の導電体膜313が接続していると相殺されてしまうので、第1の導電体膜313は317で切断する必要がある。第1凹部301側にある第1の導電体膜313を313−1とし、第1凹部302側にある第1の導電体膜313を313−2とする。
シリコン基板311の第1面(表面)上には第1凹部301および302をカバーする第1の薄板319が付着している。第1の薄板319は第1凹部301および302を被っていて第1凹部を保護している。また、第1凹部301をカバーしている薄板319には圧力導入孔321が設けてあり、圧力P1を導入できるようになっている。第1凹部302をカバーしている薄板319にも圧力導入孔322が設けてあり、圧力P2を導入できるようになっている。第1の導電体膜313(313−1)および第2の導電体膜316(316−1)の引き出し電極を形成する領域338および第1の導電体膜313(313−2)および第2の導電体膜316(316−2)の引き出し電極を形成する領域338および339においては、第1の薄板319は除去されている。
この薄板319のない領域338において、第1の導電体膜313(313−1)上にある圧電体膜314およびその上に積層している絶縁膜320にはコンタクト孔341が形成されており、そのコンタクト孔341内に導電体膜342が形成され、さらにその上に電極・配線343が形成され、圧電体膜314(314−2)の変形により圧電体膜314(314−2)の下面に発生した電荷は、導電体膜313−1を通って、さらにコンタクト孔341内の導電体膜342を介して、電極・配線343に引き出される。圧電体膜314の絶縁性が余り良くないときは、コンタクト孔341の側壁にあらかじめ絶縁膜を形成してコンタクト孔341内の導電体膜342と圧電体膜314が接触しないようにする。あるいは、コンタクト孔341を形成する領域にある圧電体膜314をあらかじめエッチング除去しておくことが望ましい。尚、このコンタクト孔341を形成する領域における導電体膜316(316−1)はあらかじめエッチング除去してある。
さらに、薄板319のない領域338において、第2の導電体膜316(316−1)上にある絶縁膜320にはコンタクト孔344が形成されており、そのコンタクト孔344内に導電体膜345が形成され、さらにその上に電極・配線346が形成され、圧電体膜314(314−2)の変形により圧電体膜314(314−2)の上面に発生した電荷は、導電体膜316−1を通って、さらにコンタクト孔344内の導電体膜345を介して、電極・配線346に引き出される。このようにして、圧電体膜314(314−2)の変形により圧電体膜314(314−2)の上下面に発生した互いに逆電位の電荷が、電極・配線343および346へ引き出される。
薄板319のない領域339において、第1の導電体膜313(313−2)上にある圧電体膜314およびその上に積層している絶縁膜320にはコンタクト孔331が形成されており、そのコンタクト孔331内に導電体膜332が形成され、さらにその上に電極・配線333が形成され、圧電体膜314(314−3)の変形により圧電体膜314(314−3)の下面に発生した電荷は、導電体膜313−2を通って、さらにコンタクト孔331内の導電体膜332を介して、電極・配線333に引き出される。圧電体膜314の絶縁性が余り良くないときは、コンタクト孔331の側壁にあらかじめ絶縁膜を形成してコンタクト孔331内の導電体膜332と圧電体膜314が接触しないようにする。あるいは、コンタクト孔331を形成する領域にある圧電体膜314をあらかじめエッチング除去しておくことが望ましい。尚、このコンタクト孔331を形成する領域における導電体膜316(316−2)はあらかじめエッチング除去してある。
さらに、薄板319のない領域339において、第2の導電体膜316(316−2)上にある絶縁膜320にはコンタクト孔334が形成されており、そのコンタクト孔334内に導電体膜335が形成され、さらにその上に電極・配線336が形成され、圧電体膜314(314−3)の変形により圧電体膜314(314−3)の上面に発生した電荷は、導電体膜316−2を通って、さらにコンタクト孔334内の導電体膜335を介して、電極・配線336に引き出される。このようにして、圧電体膜314(314−3)の変形により圧電体膜314(314−3)の上下面に発生した互いに逆電位の電荷が、電極・配線333および336へ引き出される。
引き出された電荷のうち同極性のものを集めれば大きな電位となり、この電位の大きさから隣接する第1凹部内の圧力差P2−P1を知ることができるので、一方が既知であれば他方の圧力を求めることができ、圧力センサーとして機能する。基板をシリコン基板とした時には、同じシリコン基板内にICも作製できるので、圧力センサーおよび圧力計算を行なう演算用ICと一緒に1チップ化することも可能となる。
以上のように、本発明は、凹部を基板の第1面にのみ形成しても圧電素子を用いた圧力センサーを作製できる。この利点は、裏面側に第2凹部を設ける必要がないこと(プロセスが複雑となる)、そのことにより表面と裏面とのパターン合わせをする必要がないこと、隣接する凹部同士のアライメントが必要がないので、隣接する凹部の間隔を狭められること、すなわち、隣接する凹部間の基板側壁を薄くできるので、より小さな圧力差でこの基板側壁を変形させることができるようになり、圧力検知の感度が向上することなどである。
図53は、本発明の実施形態の平面図(基板面に平行な面における断面図)であるが、第1凹部を平行に並べていけば多数のダイヤフラム部からの電位を集めることができて、少ない面積で大きな電位となり、圧力センサーとしての感度を高めることができる。この発明の利点は、凹部領域では配線等をパターニングする必要がないため、(配線を切断するのは第1面(表面)の平坦部分)多数の凹部を並べることができることである。第1凹部の幅をWc−3、側壁の幅(厚み)をWs、第1凹部の長さをLc−3、第1凹部の深さをHc−3とする。従来の平面的なダイヤフラムの大きさを300μmx300μmとして、この大きさの中に本発明の圧電素子(ダイヤフラム)が入るかを見積もる。Hc−3=300μm、Lc−3=300μmとし、Ws=5μm、Wc−3を30μmとすると、平面的なサイズ300μmx300μmに本発明のダイヤフラム構造は300μm/35μm≒8個入る。1個当たり2つのダイヤフラムとなるので、16個のダイヤフラムとなるので、従来に比べて16倍の感度となり、従来に比較すると飛躍的に感度の良好な圧力センサーを作製できる。
図54は、本発明の圧電素子を用いた圧力センサーの動作を模式的に示した図である。シリコン基板側壁323を挟んで両サイドに第1凹部356および357が形成されている。シリコン基板側壁323の第1凹部357側には、シリコン基板側壁323の上に絶縁膜312、その上に第1の導電体膜313(313−2)、圧電体膜314、その上に第2の導電体膜316(316−2)、その上に絶縁膜320が積層されている。シリコン基板側壁323の第1凹部356側には、シリコン基板側壁323の上に絶縁膜312、その上に第1の導電体膜313(313−1)、圧電体膜314、その上に第2の導電体膜316(316−1)、その上に絶縁膜320が積層されている。シリコン基板側壁323の上部は薄板351で規制されている。シリコン基板側壁323の下部は薄板352で規制されている。図52との関係で言えば、薄板351は第1の薄板319に相当し、薄板352はシリコン基板底部315に相当する。
薄板351の圧力導入孔354から圧力P1が印加され、圧力導入孔353から圧力P2が導入される。P2<P1のとき、図54に示すように、シリコン基板側壁323は第1凹部356側へ膨らみ、これに付着した圧電体膜314も第1凹部356側へ膨らむ。その結果、圧電体膜314(314−2)の上側表面および下側表面で分極し、圧電体膜314(314−2)の上側表面で発生する電荷と圧電体膜314(314−2)の下側表面で発生する電荷は逆電位となる。たとえば、圧電体膜314(314−2)の上側表面で発生する電荷をプラスとすると、下側表面で発生する電荷はマイナスとなる。圧電体膜314(314−2)の上側表面には第2の導電体膜316(316−1)が付着していて、圧電体膜314の下側表面には第1の導電体膜313(313−1)が付着しているので、第2の導電体膜316(316−1)と接続した電極C1と、第1の導電体膜313(313−1)と接続した電極C2との間に電位差が生じる。
同様に考えて、圧電体膜314(314−3)の上側表面および下側表面で分極し、圧電体膜314(314−3)の上側表面で発生する電荷と圧電体膜314(314−3)の下側表面で発生する電荷は逆電位となる。圧電体膜314(314−2)は上側表面側に膨らんでいるが、圧電体膜314(314−3)は下側表面側に膨らんでいるので、発生する電荷の極性は圧電体膜314(314−2)と圧電体膜314(314−3)とは逆になる。上のたとえに合わせると、圧電体膜314(314−3)の上側表面で発生する電荷はマイナスとなり、下側表面で発生する電荷はプラスとなる。圧電体膜314(314−3)の上側表面には第2の導電体膜316(316−2)が付着していて、圧電体膜314(314−3)の下側表面には第1の導電体膜313(313−2)が付着しているので、第2の導電体膜316(316−2)と接続した電極C4と、第1の導電体膜313(313−2)と接続した電極C3との間に電位差が生じる。従って、同じ極性同士を接続すれば、ずなわち、C1とC3を接続し、C2とC4を接続すれば、これらの間の電位差が倍増するので、圧力に対する感度が高くなったことが分かる。このような構造をどんどんつなげていけば感度がどんどん高くなる。
図55は、図52に示す本発明の圧電素子を用いた圧力センサーの製造方法を示す図である。基板を厚み方向の断面図で示している。尚、これまでに関しても、またこれから説明することに関しても(図55に限らず)、これまでに説明した内容や別の実施形態で示す内容については重複するので説明していない部分もあるが、他の実施形態で説明した内容で矛盾なく適用できる所は、当該実施形態において具体的に記載していなくても適用できることは言うまでもない。
図55(a)に示すように、シリコン基板等の基板311の第1面(表側)に絶縁膜361を形成する。この絶縁膜361は、シリコン酸化膜等である。CVD法やPVD法や熱酸化法などで形成できる。その上にフォトリソ法を用いて、第1凹部を形成するためのフォトレジストパターン362を形成する。フォトレジストの開口部363は第1凹部を形成する領域である。フォトレジストは、塗布法によるレジストやシート状の感光性ドライフィルムも使用できる。あるいはインプリント法も用いることもできる。フォトレジストの厚みは、この後の第1凹部形成時に減少する分を考慮して決める。たとえば、絶縁膜361を使用しないで直接シリコン基板311にフォトレジストパターンを形成したとして、シリコン基板311の厚みを500μm、第1凹部の深さを400μmとし、シリコン基板のエッチング時におけるレジストとシリコン基板のエッチング選択比を10とし、5%のオーバーエッチングをしたとして、レジストの厚さを50μmとすれば良い。
次に図55(b)に示すように、フォトレジストパターン362をマスクとして、開口部363に露出した絶縁膜361をエッチング除去する。このエッチングは異方性エッチングが望ましい。さらに、開口部363の絶縁膜361を除去した後、シリコン基板をエッチングし、第1凹部301や302を形成する。このエッチングはできるだけフォトレジストパターンに忠実にエッチングすることが望ましい。いわゆる深堀エッチング(DRIE)法を用いて基板311をエッチングする。本実施形態では、第1凹部は基板311の第2面(裏面)まで到達(貫通)させないようにする。第1凹部の深さ(Hc1)は、基板厚み(Hsub)の95%〜80%程度にする。95%を超えるとエッチングバラツキ等により第1凹部の底部の基板315の厚みが薄くなりすぎて強度が小さくなりすぎ、場合によっては第2面まで貫通してしまう恐れがある。また、第1凹部の深さは、ダイヤフラムの特性によって決めることであるから、80%未満の深さでも良いが、基板311をできるだけ使用するという意味では第1凹部の深さは80%以上が良い。尚、本発明の圧力センサーは占有面積を非常に小さくできるとともに1つ1つの素子をつなげて感度を上げることができるので、第1凹部の深さを80%未満として余り深くせず、導電体膜や圧電体膜の被覆性を向上させて、圧力検出の感度に関しては多数並べて向上させるという方法もある。
さらに、この方が第1凹部を略垂直パターンとして作製しやすく、また第1凹部301および302間の基板側壁323の強度も向上できるという利点がある。基板311の厚みHsubは10〜2000μm、第1凹部の深さHc1は1〜1500μm、第1凹部の幅Wc1は1〜200μm、ダイヤフラムとなる第1凹部間の基板側壁の幅Wsは0.1μm〜100μm、第1凹部の長さ(紙面に垂直方向の幅で、基板側壁の長さとほぼ等しい)Lsは1〜1500μmであるが、基本的には使用される基板材料や圧電膜材料の特性、適用する圧力によって適宜決定する。また、技術的問題がクリアされれば、もっと小さな下限値やもっと大きな上限値でも良い。基板側壁323の幅Wsはダイヤフラムの特性を決定するので特に精度良く作製する必要があり、レジストマスク{362(362−2)}にできるだけ忠実に垂直に近い形状で形成することが望ましい。尚、基板311が薄い場合(たとえば、100μm以下の厚み)には、基板311の第2面(裏面)にサポート基板を付着してプロセス中に変形しないようにすれば良い。
基板側壁323の最大たわみWmaxは概略以下で見積もることができる。
Wmax=α*z*h2a2/(Ey3)
ここで、zは圧力差(z=P2−P1)、hは凹部の深さ(h=Hc1)、aは凹部の長さ(a=Ls)、Eはヤング率、yは基板側壁幅(y=Ws)、αはダイヤフラムの形状によって決まる定数である。シリコンのヤング率はE=100GPa〜200GPa(結晶方位依存性あり)である。h=a=30μm(正方形状ダイヤフラム)には、α=0.0138となり、Wmaxは約60z/y3(μm)となる。y=3μmとすれば、z=1atmで、Wmaxは約2.2μmとなる。h=30μm、a=60μm(長方形ダイヤグラム)には、α=0.0277となり、Wmaxは約120z/y3(μm)となる。y=3μmとすれば、z=1atmで、Wmaxは約4.4μmとなる。ヤング率のもっと小さなポリマーやゴムを用いればさらに変形量は大きくなる。
次に図55(c)に示すように、フォトレジストパターン362や絶縁膜361をリムーブした後(絶縁膜361は必要な場合には残しても良い)に、絶縁膜312、下部電極となる第1の導電体膜313、圧電体膜314、上部電極となる第2の導電体膜316を積層する。絶縁膜312は基板と第1の導電体膜313とのリークを防止する目的で形成され、シリコン酸化膜(SiOx)、シリコン酸窒化膜(SiOxNy)、シリコン窒化膜(SiNy)などであり、CVD法、PVD法、熱酸化法で形成される。厚みは100nm〜2000nmである。基板がガラスや石英やセラミックやポリマーやゴム等の絶縁体である時には絶縁膜312を形成しなくても良い。(第1の導電体膜と基板が密着性が悪いなどの時には、密着性等の向上のために絶縁膜を形成する。)第1の導電体膜313は、タングステン、モリブデン、アルミニウム、銅、金、ニッケル、白金、酸化イリジウム、イリジウム、クロム等の各種金属、これらの合金、各種シリサイド、導電性多結晶(アモルファス)シリコン、導電性ポリマー等であるが、密着性向上のためにこれらの導電体膜を形成する前に、チタン、窒化チタン、クロム、タンタル、窒化タンタル等を形成しても良い。第1の導電体膜の厚みは、たとえば、100nm〜2000nmで、好適には500nm〜1500nmである。
第1の導電体膜313を積層した後、第1凹部301側の第1の導電体膜313−1と第1凹部302側の第1の導電体膜313−2とを分離する。たとえば、第1凹部301と302で挟まれた基板側壁323の上面317をフォトリソ法で窓開けして、導電体膜313をエッチングする。基板側壁323の幅Wsが5μm以下のときには、この窓開けも1〜2μm幅となるが、ウエットエッチングでも可能なレベルである。さらに、他の領域において、第1導電体膜313の配線パターンを形成する必要がある場合には、そのためのフォトリソによるパターン形成および第1の導電体膜313のエッチングが必要となる。たとえば、導電体膜が白金である場合には、ウエットエッチング液としてシアン系水溶液、希釈王水、塩酸と過酸化水素水の混合液等がある。ドライエッチングの場合には、たとえば、Cl2、S2Cl2、SiCl4、BCl3、CCl4等の塩素系ガス(これらにAr、COやO2を加えて最適化する)を用いて白金をエッチングできる。
導電体膜313をパターニングした後、圧電体膜314を形成する。圧電体膜は、たとえばチタン酸ジルコン酸鉛(ジルコニウム酸・チタン酸鉛(Pb(ZrXTi1−X)O3 0<x<1)とも呼ばれ、いわゆるPZT)、PLT(PbLaXTi1−XO3)、PLZT、SrTiO3、BaTiO3、BST(BaXSr1−XTiO3)、SBT(SrBi2Ta2O9)、KNN(K0.5Na0.5NbO3)や、KN(KNbO3)、NN(NaNbO3)、KNNに不純物(例えば、Li,Nb,Ta,Sb,Cuなど)を添加したものなどのKNN系材料、BLT(ビスマス-ランタン-タンタル)、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、酸化亜鉛、窒化ガリウム、リチウムテトラボレート等のペロブスカイト構造やタングステン−青銅構造を持つセラミックスであり、あるいは石英、水晶、ロッシェル塩、トパーズ、電気石(トルマリン)、ベルリナイト(リン酸アルミニウム)、窒化アルミニウム、リン酸ガリウム、ガリウムヒ素などであり、あるいは圧電性ポリマー{たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)}などである。
圧電体膜の積層方法として、その圧電体をターゲットとしたスパッタリング法、蒸着法、CVD法、MOCVD(Metal
Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属化学気相蒸着)法、レーザーアブレーション法(PLAD:Pulsed Laser Ablation Deposition),塗布法、スクリーン印刷法、ゾルゲル法(たとえば、PZTのような誘電体材料を有機溶媒に溶解させた溶液を、スピンコートにより1層当たり約50nm程度の厚さで塗り、これを350℃程度のホットプレート上で仮焼成し、この作業を3〜4回繰り返した後に急速加熱炉を用いて約700℃で急速に焼結させる)、エアロゾル堆積法、化学的溶液積層(chemical solution deposition、CSD)法などであり、圧電体膜の積層後適切な熱処理を行なって圧電性や信頼性を高めることもできる。この圧電体膜の厚みは、0.1μm〜100μmであり、膜質向上および反り量低減のためには好適には0.5μm〜20μmである。第1凹部内の略垂直な側壁にできるだけ均一性良く(厚みバラツキを小さく)積層することが望ましい。スパッタリング法、蒸着法、CVD法、MOCVD法では積層した状態で、第1凹部内の略垂直な側壁に忠実に近い状態で積層できる。液状ポリマーやゲル状物質を塗布等する場合は、第1凹部内に厚くたまるので、インプリント法等を用いて、略垂直な側壁に忠実に近い状態で形成することができる。
圧電体膜314は、第1凹部以外は必要ないので、不要な部分(たとえば、図55(c)における電極取り出し領域364)からエッチング除去しても良い。マスクを用いてスクリーン印刷法やスパッタリング法で圧電体膜を積層すればこのエッチング除去工程は不要となる。フォトリソ法を用いてレジストをパターニングするときには、微細なパターンを形成する必要はないので、プロセスは簡単である。たとえば、PZTの場合HFとHNO3系のエッチング液でエッチングしても良い。ドライエッチングの場合にはフッ素系ガスや塩素系ガスを用いて行なうと良い。尚、この上に第2の導電体膜を形成するが、圧電体膜のエッチング除去された段差で導電体膜のステップカバレッジが悪くならないように、テーパーエッチすることが望ましい。あるいは、第2の導電体膜316が圧電体膜314の段差部をまたがないように第2の導電体膜316をパターニングする方法もある。あるいは、圧電体膜314が絶縁体であるときには、リークを心配する必要がないので、そのまま残しておくこともできる。ただし、第1の導電体膜313の取り出し電極を形成する部分からは圧電体膜314を除去しておくことが望ましい。圧電体膜314を残したままコンタクト孔を形成すると、コンタクト孔の深さが圧電体膜314の厚み分深くなる。この結果コンタクト孔形成時間が長くなるとともに、異なる層(絶縁膜と圧電体膜)を連続してエッチングするのでエッチング条件が複雑になる。さらに、コンタクト孔が深くなるとコンタクト孔内に形成する導電体膜の被覆性が問題になり、これを解決する導電体膜の形成条件も複雑になり、コンタクトサイズを大きくしたり、あるいはコンタクトにテーパーをつけるというプロセスも必要になる。
圧電体膜314を形成した後に、第2の導電体膜316を形成する。第2の導電体膜316は、タングステン、モリブデン、アルミニウム、銅、金、ニッケル、白金、酸化イリジウム、イリジウム、クロム等の各種金属、これらの合金、各種シリサイド、導電性多結晶(アモルファス)シリコン、導電性ポリマー等であるが、密着性向上のためにこれらの導電体膜を形成する前に、チタン、窒化チタン、クロム、タンタル、窒化タンタル等を形成しても良い。第2の導電体膜の厚みは、たとえば、100nm〜2000nmで、好適には500nm〜1500nmである。
第2の導電体膜316を積層した後、第1凹部301側の第2の導電体膜316−1と第1凹部302側の第1の導電体膜316−2とを分離する。たとえば、第1凹部301と302で挟まれた基板側壁323の上面318をフォトリソ法で窓開けして、導電体膜313をエッチングする。基板側壁323の幅Wsが5μm以下のときには、この窓開けも1〜2μm幅となるが、ウエットエッチングでも可能なレベルである。また、第1の導電体膜313からの引き出し電極を形成する領域364からも第2の導電体膜316を除去しておくことが望ましい。何故なら、第1の導電体膜313からの引き出しコンタクト孔内に第2の導電体膜316が露出するからである。さらに、他の領域において、第2導電体膜316の配線パターンを形成する必要がある場合には、そのためのフォトリソによるパターン形成および第2の導電体膜316のエッチングが必要となる。
たとえば、導電体膜が白金である場合には、ウエットエッチング液としてシアン系水溶液、希釈王水、塩酸と過酸化水素水の混合液等がある。ドライエッチングの場合には、たとえば、Cl2、S2Cl2、SiCl4、BCl3、CCl4等の塩素系ガス(これらにAr、COやO2を加えて最適化する)を用いて白金をエッチングできる。第2の導電体膜がアルミニウムの場合には、ウエットエッチング液として混酸水(硝酸、酢酸、燐酸、水)、ドライエッチングガスとしては、Cl2、S2Cl2、SiCl4、BCl3、CCl4等の塩素系ガス(これらにAr、COやO2を加えて最適化する)がある。
次に、図55(d)に示すように、第2の導電体膜316をパターニングし、適切な熱処理等を行なった後に、絶縁膜320を積層する。この絶縁膜320は、圧電素子や導電体膜316を保護する膜である。絶縁膜320として、たとえばシリコン酸化膜(SiOx)、シリコン窒化膜(SiNy)、シリコン酸窒化膜(SiOxNy)であり、CVD法、PVD法、塗布法等で積層する。あるいは絶縁膜320はポリイミド等の有機膜でも良い。特に感光性有機膜(たとえば、感光性ポリイミド)であれば、この後レジスト等を用いる必要がなくこの感光性有機膜を直接露光しパターニングできる。塗布法を用いたときには凹部内にも厚く堆積するので、たとえばインプリント法を用いて凹部内の絶縁膜を略垂直な側壁パターンにできるだけ忠実に形成することができる。
次に第1凹部301および302をふさぐ薄板319を付着させる。次に第1凹部301へ圧力を印加する圧力導入孔321、第1凹部302へ圧力を印加する圧力伝達孔322、コンタクト領域338、339など薄板がなくても良い部分(あるいは薄板がない方が良い部分)における薄板319を除去する。あるいは、薄板319を付着する前にこれらの部分を開口した薄板をアライメントして基板311の第1面に付着させる方法もある。別工程で、パターンのない薄板を用いて、フォトリソ法および薄板のエッチングを用いて別途開口した薄板を作製しておけば、本発明の圧力センサーの製造プロセス工程や時間に影響は与えない。
図55(d)においては、圧力導入孔321を第1凹部301に、圧力導入孔322を第1凹部302の両方を形成しているが、片方だけを形成した場合は、圧力導入孔のない第1凹部(たとえば、第1凹部302とする)は常に同じ圧力に保たれている(これを圧力P0とする)ので、隣接する他の第1凹部(たとえば、第1凹部301)の圧力P1とP0との圧力差によって、基板側壁323が変形する。P0は、薄板319を付着させたときの圧力とほぼ等しいので、真空に近い低圧状態で薄板319を付着させればP0はほぼ0気圧となり、大気圧で薄板319を付着させればP0はほぼ1気圧となる。従って基準圧力に対する圧力を検出する圧力センサーを作製できる。尚、薄板319を付着して第1凹部を塞いで密閉した後に、薄板の付着を確実にするための熱処理を行なったり、その後のプロセスで熱処理が行なわれたりして、薄板付着に用いた接着剤から溶媒等のアウトガスが発生し、気密にした第1凹部内の圧力P0が変化する可能性がある。従って、接着剤を使用しない接着方法(たとえば、常温接合法)を用いたり、あるいはアウトガスを吸着する吸着剤を第1凹部内に入れておいたりする方法を採用しても良い。
次に、薄板319のない領域338および339において、電極・配線を作製する。領域338において、第2の導電体膜316および圧電体膜314のない領域で、第1の導電体膜313上の絶縁膜320にフォトリソ法および絶縁膜320のエッチングによりコンタクト孔341を形成する。コンタクト孔341に導電体膜342を積層し、さらに電極配線用の導電体膜343を積層し、電極・配線パターン343をフォトリソ法および導電体膜343のエッチングにより形成する。導電体膜342と343は兼用することもできる。また、第2の導電体膜316上の絶縁膜320にフォトリソ法および絶縁膜320のエッチングによりコンタクト孔344を形成する。コンタクト孔344に導電体膜345を積層し、さらに電極配線用の導電体膜346を積層し、電極・配線パターン346をフォトリソ法および導電体膜346のエッチングにより形成する。導電体膜345と346は兼用することもできる。また、これらのプロセスは同時に行なうこともできる。
領域339においては、第1の導電体膜313上に圧電体膜314を残している状態を示している。圧電体膜314が残っている場合は、第1の導電体膜313へのコンタクト孔331は、フォトリソ法並びに、絶縁膜320および圧電体膜314をエッチングして形成する。次にコンタクト孔331内に導電体膜332を積層し、さらに電極配線用の導電体膜333を積層し、電極・配線パターン333をフォトリソ法および導電体膜333のエッチングにより形成する。導電体膜332と333は兼用することもできる。また、第2の導電体膜316上の絶縁膜320にフォトリソ法および絶縁膜320のエッチングによりコンタクト孔334を形成する。コンタクト孔334に導電体膜335を積層し、さらに電極配線用の導電体膜336を積層し、電極・配線パターン336をフォトリソ法および導電体膜336のエッチングにより形成する。導電体膜335と336は兼用することもできる。また、これらのプロセスは同時に行なうこともできるが、圧電体膜314のエッチングを加味したプロセス条件を設定する必要がある。このように、圧電体膜314を残しておくとコンタクト孔および導電体膜の形成プロセスが複雑になるので、好適には圧電体膜314は除去しておいても良い。もちろん、領域338および339のコンタクト孔や電極配線パターンは同じ工程で行なうことができる。
以上の製造プロセスによって凹部を基板の第1面側にのみ形成し、隣接する凹部間の基板側壁上に導電体膜によって挟まれた圧電体膜を作製し、隣接する凹部間の圧力差によって変形する基板側壁とともに圧電体膜が変形し、圧電体膜の表面に電荷が発生し、その上下にある導電体膜間で電位が生じる。あらかじめ凹部間の圧力差と圧電体膜の上下の電極・配線間における電位との関係を求めておけば、逆にこの発生した電位から凹部間の圧力差を計算することができる。あるいは、圧電体膜の上下の導電体膜(電極・配線)間に電界をかけると、圧電体膜が変形し、圧電体膜が付着した基板側壁が同様に変形する。この基板側壁の変化によって隣接する凹部間に圧力差を生じさせることができる。
図56は、図52〜図55で示した実施形態と類似するが、本実施形態は凹部が第1面(表面)から第2面(裏面)に貫通しているものである。基板411はサポート基板400に付着し、第1凹部401、402、403は第1面から第2面側に貫通している。すなわち、第1凹部401、402、403の底部はサポート基板400となっている。第1面側に、絶縁膜412、第1の導電体膜413、圧電体膜414、第2の導電体膜416、絶縁膜420が積層している。これらの積層膜構造は図52〜図55で示した実施形態と同じである。第1面側の絶縁膜420上に薄板419が付着し、第1凹部401、402、403をカバーして保護している。第1凹部401の上部の薄板419には圧力導入孔425が、第1凹部402の上部の薄板419には圧力導入孔426が、第1凹部401の上部の薄板419には圧力導入孔427が、開いている。また、電極・配線を形成すべき領域438および439の薄板419は除去されている。領域438には、第1の導電体膜413(413−1)に接続するコンタクト孔441には導電体膜442が形成され、その上に電極・配線443が形成されている。また、第2の導電体膜416(416−1)に接続するコンタクト孔444には導電体膜445が形成され、その上に電極・配線446が形成されている。領域439には、第1の導電体膜413(413−3)に接続するコンタクト孔431には導電体膜432が形成され、その上に電極・配線433が形成されている。また、第2の導電体膜416(416−3)に接続するコンタクト孔434には導電体膜435が形成され、その上に電極・配線436が形成されている。
第1凹部401の両側の圧電体を414−1、414−2、第1凹部402の両側の圧電体を414−3、414−4、第1凹部403の両側の圧電体を414−5、414−6とする。基板側壁423は、第1凹部401の圧力P1と第1凹部402の圧力P2との差P1−P2によって変形する。P2>P1のとき、基板側壁423は第1凹部401側に膨らむ。この変形に伴い圧電体膜414(414−2)も第1凹部401側へ膨らみ、圧電体膜414(414−2)の表面側および裏面側で分極して、それぞれに逆電荷が発生する。圧電体膜414(414−2)の裏面側に発生した電荷を第1の導電体層413(413−1)およびコンタクト孔内導電体層442を通して電極・配線443へ引き出すことができる。圧電体膜414(414−2)の表面側に発生した電荷を第2の導電体層416(416−1)およびコンタクト孔内導電体層445を通して電極・配線446へ引き出すことができる
P2>P1のとき、圧電体膜414(414−3)も第1凹部401側へ膨らみ(第1凹部402側で凹み)、圧電体膜414(414−3)の表面側および裏面側で分極して、それぞれに逆電荷が発生する。圧電体膜414(414−3)の裏面側に発生した電荷を第1の導電体層413(413−2)を通して外側電極・配線(図56においては示されていない)へ引き出すことができる。圧電体膜414(414−3)の表面側に発生した電荷を第2の導電体層416(416−2)を通して外側電極・配線(図56においては示されていない)へ引き出すことができる。圧電体膜414(414−2)と圧電体膜414(414−3)は同じ側に変形しているが、第1導電体膜413および第2導電体膜416から見れば逆の変形になっているので、第1の導電体層413(413−1)と第2の導電体層416(416−2)とが同じ極性であり、第2の導電体層416(416−1)と第1の導電体層413(413−2)とが同じ極性である。従って、第1の導電体膜413は基板側壁423の上部417(417−1)で切れており、第2の導電体膜416は基板側壁423の上部418(418−1)で切れている。
第1凹部403の圧力をP3とすると、P2>P3のとき、基板側壁424は第1凹部403側に膨らむ。この変形に伴い圧電体膜414(414−5)も第1凹部403側へ膨らみ、圧電体膜414(414−5)の表面側および裏面側で分極して、それぞれに逆電荷が発生する。圧電体膜414(414−5)の裏面側に発生した電荷を第1の導電体層413(413−3)およびコンタクト孔内導電体層432を通して電極・配線433へ引き出すことができる。圧電体膜414(414−5)の表面側に発生した電荷を第2の導電体層416(416−3)およびコンタクト孔内導電体層435を通して電極・配線436へ引き出すことができる
P2>P3のとき、圧電体膜414(414−4)も第1凹部403側へ膨らみ(第1凹部402側で凹み)、圧電体膜414(414−4)の表面側および裏面側で分極して、それぞれに逆電荷が発生する。圧電体膜414(414−4)の裏面側に発生した電荷を第1の導電体層413(413−2)を通して外側電極・配線(図56においては示されていない)へ引き出すことができる。圧電体膜414(414−4)の表面側に発生した電荷を第2の導電体層416(416−2)を通して外側電極・配線(図56においては示されていない)へ引き出すことができる。圧電体膜414(414−5)と圧電体膜414(414−4)は同じ側に変形しているが、第1導電体膜413および第2導電体膜416から見れば逆の変形になっているので、第1の導電体層413(413−3)と第2の導電体層416(416−2)とが同じ極性であり、第2の導電体層416(416−3)と第1の導電体層413(413−2)とが同じ極性である。従って、第1の導電体膜413は基板側壁423の上部417(417−2)で切れており、第2の導電体膜416は基板側壁423の上部418(418−2)で切れている。
圧電体膜414(414−3)と圧電体膜414(414−4)は変形方向が逆であるが、第1導電体膜413および第2導電体膜416から見れば同じ方向の変形になっているので、圧電体膜414(414−3)に面している導電体膜と圧電体膜414(414−4)に面している導電体膜はつながっていて良い。すなわち、413(413−2)および416(416−2)は圧電体膜414(414−3)および圧電体膜414(414−4)の間で連続している。従って、凹部内で導電体膜を切断するフォトリソ工程やエッチングを行なう必要がないので、プロセスとして複雑な工程はない。たとえば、導電体膜413や416をエッチングするとき、これらの導電体膜の上にフォトレジストを塗布する。液状のフォトレジストは凹部(4101、402、403)へも入ってこの凹部内では厚くなる。あるいはフォトレジストがフィルム状のシートタイプの場合は基板の第1面側の導電体膜上に感光性のドライフィルムを付着して軟化させると、凹部内に入り込むので凹部領域は厚くなる。フォトレジストを開口する部分は基板側壁の上面や第1面の平坦部であり、フォトレジストの厚みは厚くはない。フォトレジストがポジレジストの場合、この開口部分に露光すれば良いので、薄いフォトレジスト内を完全に露光することができるから、導電体膜を除去する部分はレジストを除去できる。それ以外の部分には光は照射されないので、レジストは除去されず被覆されている。従って全く問題なく導電体膜の必要な部分を除去できる。フォトレジストがポジレジストの場合は、導電体膜を除去しない部分を露光するが凹部内の厚いレジストの奥まで光を通す強度で露光すれば良い。あるいは、凹部内のレジストの上部だけ露光すれば現像時には凹部の内部まで現像液が入らないので、結局凹部領域はレジストで被覆されている。導電体膜を除去したい部分はレジストが薄くなっているので、光が回り込んで解像度が悪くなるが、導電体膜を除去したい部分として1μm以上を取れば問題はない。従って全く問題なく導電体膜の必要な部分を除去できる。
このように、凹部が第1面から第2面に貫通していても本発明の圧電素子を用いた圧力センサーを適用できる。この貫通した凹部を有する圧力センサーは、凹部のエッチングのときに終点検出を考慮する必要がないという利点がある。図52〜図55において示した、第1凹部のエッチングを基板内でストップさせる方法は、時間管理でエッチングする必要があるので、場所によって深さが異なる。すなわち、深堀エッチングのバラツキ精度により場所によって第1凹部の深さが異なる。これに対して、貫通させる本実施形態は、貫通孔の深さは基板厚と同じくなる。深堀エッチングによる基板のエッチング速度とサポート基板400のエッチング速度の選択比を大きく取る条件によって基板エッチングを行なうことにより、基板内のすべての場所で凹部の貫通を完了したとしても、すなわち深堀エッチング時のオーバーエッチングを大きく取ったとしても、サポート基板400は殆どエッチングしないようにできる。エッチング選択比を10としたときに、基板厚みが500μmとして、深堀エッチングを10%オーバーエッチングを行なったときに、(エッチングバラツキは通常5%程度であるから、10%オーバーエッチングによって、基板内のすべての領域で貫通した凹部を作製できる。)サポート基板400は最大で、5μmしかエッチングされない。基板411をシリコン、サポート基板をガラスとしたときに、エッチング選択比10は問題なく達成できる。このように、貫通した凹部を用いることにより精度のよいダイヤフラム構造を作製できる。
上記はサポート基板をそのまま第2の薄板として使用する場合であるが、貫通した凹部を形成した後、サポート基板を外して、新しい第2の薄板を基板411の裏面に付着させれば、第2の薄板は全くエッチングされていないので、精度の良い凹部を作製できる。
さらにエッチング精度を高める方法として、サポート基板を付着させずに基板のまま貫通した凹部を形成すれば良い。このときは、オーバーエッチングを大きく取っても貫通した凹部があいているだけなので、サポート基板が削れるということもない。貫通凹部を形成した後に、第2の薄板を付着させれば良い。
図57は、基板内に第1面(表面)から第2面(裏面)に貫通した凹部を有する圧力センサーの製造方法を示す図である。基本的には図55に示す場合と類似するプロセスであり、第1凹部が貫通していないか貫通しているかの違いである。図57(a)に示すように、基板411の第1面に絶縁膜を形成する。この絶縁膜は第1面を保護する目的やこの後にレジストを付着させるのでレジストとの密着性向上やパターニング改良、さらには凹部形成時の第1面保護層となるものであるが、問題なければ不要である、次に基板411の第2面にサポート基板400を付着する。このサポート基板400は、貫通する凹部を形成するときのエッチングストッパーとなる。さらに、プロセス中に基板411の補強をするとともに、製品として残しておき、基板411の保護部材ともなる。さらには、基板411を個片化して単体として扱うときは、圧力センサーを保護する保護部材ともなる。あるいは、第1面に素子が完成してから取り外しても良い。その場合は別のサポート基板(第2の薄板)に取り替える必要がある。
サポート基板400は、ガラス、石英、セラミック、ポリマー、プラスチック等の絶縁体基板である。基板411とサポート基板を付着させる方法は種々ありプロセス条件(温度や圧力等の環境条件、エッチング条件など)を考慮して適切な方法を選択する。たとえば、基板411とサポート基板400を密着させ圧力および熱を加えて接合する拡散接合、高真空中で接合面を活性化させて接合する常温接合法、陽極接合法、接着剤を用いて付着する方法がある。基板411がシリコン基板でサポート基板400がガラスや石英の場合には、陽極接合法を用いて強固に接着できる。絶縁性がありかつ熱伝導性も良い窒化アルミニウム(AlN)基板や炭素基板を用いることもできる。接合に問題なければ基板411とサポート基板400の間に絶縁膜を形成しても良い。絶縁膜の厚みは100nm〜20000nmが望ましい。および/または金属層を介してサポート基板400と基板411を接合しても良い。金属層は低融点金属で基板411およびサポート基板400と密着性の良い材料が良い。金属層は第1凹部のエッチング時に基板411とのエッチング選択比を大きく取れるので、金属層を殆どエッチングせずに貫通した凹部を形成することができる。
接着剤を用いる場合は、その後のプロセスで接着能力が悪くなるものや変質したりするもの、アウトガスなどが出るものなどは用いないようにする。従って、熱硬化性接着剤が望ましい。しかし、熱軟化性接着剤も用いることもできる。たとえば、その後のプロセス温度の最高温度よりも高い温度で軟化し、その最高温度よりも低い温度では確実に付着する接着剤を用いる。この接着剤を用いれば、圧力センサー素子が完成した後に、最高温度よりも高い温度でサポート基板400を基板411から取り外して、別のサポート基板に交換することもできる。サポート基板400として、銅、鉄、ニッケル、各種合金、各種シリサイド、導電性ポリマー等の導電性基板を使用することもできる。これらは熱伝導性も良いし、静電気対策にも効果がある。これらの導電性基板の付着方法も上述した方法を使用できる。導電性基板の場合には、基板411とのエッチング選択比を大きく取れるので、サポート基板を殆どエッチングせずに基板411の貫通した凹部を形成できる。
サポート基板400の厚みは、基板411に付着するプロセス、第1凹部を形成するときに基板411は貫通するがサポート基板は貫通しないようにする条件、基板411を貫通した第1凹部が形成された後のプロセスでも損傷したり破壊したりしない程度の厚み、さらには個片化した後の完成品を取り扱っても問題ない程度の厚み、外側の圧力によってサポート基板が変形しない程度の厚み等によって決められる。従って、サポート基板400の厚みは通常は100μm〜2000μmであり、もっと薄くする場合は全体のプロセス条件を考慮し、プロセス中に変形したり損傷しないような厚みを選定し、さらにこの後のプロセスで反りが大きくならないように厚みを選定する必要もある。
次に図57(a)に示すように絶縁膜461の上にフォトリソ法やインプリント法によりフォトレジストパターン462および開口パターン463を形成する。この開口パターン463は凹部パターンとなる。この凹部パターンはできるだけフォトレジストパターンのサイズ通りに形成することが望ましいので、フォトレジストパターンはできるだけ垂直な形状が良い。次に図57(b)に示すように、開口パターン463において露出している絶縁膜461をエッチングし、さらに基板411の異方性エッチングを行ない、基板の厚み方向に基板411を完全にエッチングする。しかし、サポート基板400は余りエッチングしないようにする。基板411のエッチングはサイドエッチングの少ない異方性エッチングでできるだけ垂直パターンが望ましい。たとえば、基板411がシリコンである場合は、ボッシュプロセスや、誘導結合プラズマ(ICP)等の高密度プラズマエッチングプロセス、などの深堀エッチング(Deep RIE)を用いて垂直な側壁を有する深い凹部を形成できる。あるいは、たとえば、磁気中性子線放電エッチング法やClF3ガスを用いたクラスターエッチングでも垂直な側壁を有する深い凹部を形成できる。
またレジストパターンの開口部463(463−1、2、3)の部分に形成される凹部401、402、403の底部にある基板411はすべてエッチングすることが望ましい。しかし、サポート基板400はできるだけエッチングしないようにすることが望ましい。これは、基板の厚さをHsubとしたとき、凹部の深さHc1がHsubとほぼ等しくなり、正確な凹部を形成できるからである。基板411は1つの凹部の幅Wc1に比べてかなり広く(たとえば、Wc1=30μm、基板411のサイズは200mmである。)、基板411内に多数の凹部が形成されているので、場所によりエッチング速度がばらつく。従って、平均的なエッチング速度(Ssub)から単純計算で求めたエッチング時間(Hsub/Ssub)でエッチングを終えると、基板内で完全に基板411がエッチングされない部分が出るので、ある程度のオーバーエッチングを行なう。このオーバーエッチングのときに、サポート基板400が速く露出した場所はそれだけ長い時間エッチングされていくので、基板411のエッチング速度に比べてサポート基板400のエッチング速度(Ssup)をできるだけ小さくする。すなわち、エッチング選択比(Ssub/Ssup)のできるだけ大きくするエッチング条件が望ましい。
基板411とサポート基板400の材料は通常は異なるので、エッチング条件を適切に選択すれば良好なエッチング選択性(エッチング選択比が大きい)を得られるから、サポート基板400を余りエッチングされないようにすることが可能である。たとえば、基板411がシリコン基板、サポート基板がガラスや石英(SiO2)とすれば、たとえば上述したエッチング方法では、選択比20〜50程度は取れる。たとえば、シリコン基板厚みを500μmとしたとき、10%のオーバーエッチングをしたとき、シリコン基板は50μmエッチングされるが、サポート基板は1μm〜2.5μmしかエッチングされないので、凹部の深さHc1はほぼ基板厚みHsubと同じくなり、圧力センサーの品質が極めて安定する。
尚、サポート基板400と基板411との選択比を取れない場合は、サポート基板400と基板411との間に選択性が取れる材料を挟めば良い。たとえば、サポート基板400と基板411をともにシリコンとしたときは、サポート基板400と基板411との間にシリコン酸化膜等を挟めば良い。サポート基板400上または基板411上(裏面)にシリコン酸化膜をCVD法や酸化法などで形成することができる。あるいは、銅やチタン、ニッケル等の金属膜を挟んでも良い。また、ここで基板411を薄くする場合は、サポート基板400を付着させた後に研磨法やエッチングにより基板411を薄くして所望の厚みに調節すれば良い。本発明の圧力センサー以外のデバイスを一緒の基板411に搭載して、当該デバイスの基板厚みは通常の厚みとして、圧力センサー部分の厚みだけを薄くする場合には、フォトリソ法でこの領域だけ窓開けしてエッチング法(WETやDRY)により基板411をエッチングして所望の厚みの基板厚さにすれば良い。
凹部401、402、403を形成した後、フォトレジスト462をリムーブし、凹部や基板411やサポート基板上の異物をリムーブし、洗浄した後、必要な場合には絶縁膜461を除去する。次に図57(c)に示すように、凹部表面および基板411の第1面(表面)絶縁膜412、その上に第1の導電体膜413を積層する。この第1の導電体膜413は圧電体膜414の下部電極となる。次に、凹部401および凹部402の間の基板側壁423の上面(基板411の第1面の一部)の領域417(417−1)でフォトリソ法およびエッチング法を用いて第1の導電体膜413をエッチングし、凹部401側の第1の導電体膜413(413−1)および凹部402側の第1の導電体膜413(413−2)の接続を遮断する。同様に、凹部401および凹部402の間の基板側壁424の上面(基板411の第1面の一部)の領域417(417−2)でフォトリソ法およびエッチング法を用いて第1の導電体膜413をエッチングし、凹部402側の第1の導電体膜413(413−2)および凹部403側の第1の導電体膜413(413−3)の接続を遮断する。尚、第1の導電体膜413は凹部や凹部に挟まれた基板側壁の上面だけでなく、基板411の第1面全体に積層しているので、413−1と413−2、413−2と413−3が接続しないように必要な配線パターンを形成する必要がある。さらに、この第1の導電体膜413のパターニング時に、凹部の形成されない領域で第1の導電体膜413を用いた配線または電極形成のパターニングを行なっても良い。特に、同じ極性となる凹部の配線を接続する電極・配線パターンを接続するパターニングを行なっても良い。たとえば、凹部401および403が同じ圧力となる場合は、第1の導電体膜413−1と第1の導電体膜413−3は同じ極性となるので、これらを接続する配線パターンを形成することができる。
次に、図57(c)に示すように、圧電体膜414を積層する。次に第2の導電体膜416を積層する。次に不要な第2の導電体膜416を除去する。たとえば、基板側壁423の上面(基板411の第1面の一部)の領域418(418−1)でフォトリソ法およびエッチング法を用いて第2の導電体膜416をエッチングし、凹部401側の第1の導電体膜416(416−1)および凹部402側の第2の導電体膜416(416−2)の接続を遮断する。同様に、基板側壁424の上面(基板411の第1面の一部)の領域418(418−2)でフォトリソ法およびエッチング法を用いて第2の導電体膜416をエッチングし、凹部402側の第2の導電体膜416(416−2)および凹部403側の第2の導電体膜416(416−3)の接続を遮断する。
尚、第2の導電体膜416は凹部や凹部に挟まれた基板側壁の上面だけでなく、基板411の第1面全体に積層しているので、416−1と416−2、416−2と416−3が接続しないように必要な配線パターンを形成する必要がある。さらに、この第2の導電体膜416のパターニング時に、凹部の形成されない領域で第2の導電体膜416を用いた配線または電極形成のパターニングを行なっても良い。特に、同じ極性となる凹部の配線を接続する電極・配線パターンを接続するパターニングを行なっても良い。たとえば、凹部401および403が同じ圧力となる場合は、第2の導電体膜416−1と第2の導電体膜416−3は同じ極性となるので、これらを接続する配線パターンを形成することができる。
さらに、第1の導電体膜413からの電極取り出す領域428や429における圧電体膜414を除去しておくことが望ましい。圧電体膜414は0.1μm〜100μmの厚みを有するので、ここにコンタクト孔を形成すると、コンタクト孔の深さがこの圧電体膜の厚さ分深くなるので、コンタクト孔形成時にこの圧電体膜414もエッチングする必要があることに加えて、コンタクト孔内に積層する導電体膜をコンタクト孔内へ積層させることが困難になる可能性があり、さらにはそれを改善するためにコンタクトテーパー化ヤコンタクト孔サイズを大きくするなどの対策も必要になる。そこで、この領域428や429における圧電体膜414を除去しておくと良い。従って、領域428や429においては、導電体膜416も除去されている。次に絶縁膜420を積層する。この絶縁膜420は第2の導電体膜416や圧電素子や圧力センサーを保護するための保護膜としての役目を果たす。この絶縁膜は、たとえばシリコン酸化膜(SiOx)、シリコン酸窒化膜(SiOxNy)、シリコン窒化膜(SiNy)であり、CVD法やPVD法で積層される。この絶縁膜の厚みは、500nm〜2000nmである。この絶縁膜420を形成後平坦化のために、あるいはさらなる保護膜としてSOG膜や、ポリイミド膜等を塗布法等で積層しても良い。ポリイミド膜の場合には感光性ポリイミド膜を形成することによりこの後のフォトレジスト塗布を省くこともできる。
次に図57(d)に示すように、絶縁膜420上に薄板419を付着する。接着剤を用いたり、接着剤を使用しない常温接合で付着させることができる。接着剤を用いる場合には、薄板に接着剤をコートしたり、あるいは基板411の第1面にコートしたりして付着させることができる。付着後は適切な条件で熱処理を行ない、薄板419を確実に基板411上に付着させる。その後、第1の導電体膜(下部電極)413や第2の導電体膜(上部電極)416からの電極・配線を形成するために、これらの形成領域438、439等から、薄板419を除去するエッチングを行なう。また、これと同時に(別工程でも良い)圧力伝達孔425、426、427も形成する。さらに、他の領域で不要な部分において薄板419を除去する。この薄板419の除去はフォトリソとエッチング法で行なう。薄板419は圧力センサーを環境から化学的にかつ物理的に保護する役目もあり、その厚みは約20μm〜2000μmである、従って非常に厚いが、微細パターンではない(1μm以上の精度であれば良い)ので、ウエットエッチングや等方性エッチングで薄板419をエッチングすることができる。薄板419は、ガラス基板、石英基板、セラミック基板、ポリマー等の絶縁体基板、あるいはシリコン基板等の半導体基板、あるいは銅、アルミニウム、鉄、亜鉛等の各種金属、合金、導電体ポリマー等の導電体基板でも良い。薄板419がガラス基板である場合には、フッ酸/硝酸系エッチング液によってガラス基板をエッチングすることができ、このときはガラス基板と付着する膜はシリコン酸窒化膜(SiOxNy)、シリコン窒化膜(SiNy)が良いエッチングストッパー膜となる。
あるいはあらかじめパターニングした(必要な部分のみ薄板を残しておき、他はエッチング等で除去しておく。薄板を貼り合わせても良い。このときは、圧力センサー形成プロセスとは異なる別のプロセスで薄板のパターニングができるので、この薄板のパターニングによるプロセス時間が増大することがない。また、下地材料とのエッチング速度の選択性を考慮する必要がないというメリットもある。ただし、薄板419を基板411の第1面に付着させるときにはパターン合わせが必要となるが、微細なパターンを形成するわけではないので、マスク合わせは容易である。特に薄板419がガラス基板である場合には、下地(すなわち、基板411の第1面側パターン)は良く見えるので(マスク合わせ用の光やレーザー光がガラス基板を透過する)問題なく短時間にマスク合わせが可能である。
次に図57(d)に示すようにコンタクト孔431、441、434.444をフォトリソ法および絶縁膜420のエッチングにより形成する。その後、導電体膜432、442、435、445、および導電体膜433、443、436、446を積層して、電極・配線パターン433、443、436、446をフォトリソ法および導電体膜433、443、436、446のエッチングにより形成する。この結果、下部電極である第1導電体膜413および上部電極である第2導電体膜416から電荷を取りだすことができる。
サポート基板400は、凹部を形成してから貼り合わせることもできる。この場合は、凹部のエッチングにおいて、サポート基板400のエッチングを考慮する必要がないので、オーバーエッチング量を大きくすることが可能となる。基板411の第2面(裏面)とサポート基板400との接合も接着剤、拡散接合、常温接合、陽極接合を使用できる。特に基板411がシリコン、サポート基板400がガラスや石英の場合には陽極接合で強固な接合を得ることができる。この後で、上述した絶縁膜412等を順次形成していけば良い。
あるいは、サポート基板400は絶縁膜412を形成した後、あるいはその後のプロセスでも基板411に付着することができる。サポート基板400に絶縁膜や圧電体膜や導電体膜等が形成されなくとも(凹部の底部に)特に問題はない。たとえば、導電体膜413や416を形成後にサポート基板400を付着した場合、これらの導電体膜はサポート基板400に積層しないが、接続は基板側壁で行なわれる。あるいは、薄板419を付着した後でサポート基板400を付着しても良い。さらには、電極・配線パターン433、443、436、446が形成した後でサポート基板400を付着させることができる。この場合は、第2の薄板と呼んだ方が良い。以上のように、サポート基板400の付着はプロセス途中のいつでも可能である。
尚、図43に示した場合と同様に、第1の導電体膜からの引き出し電極を裏面側から取り出すこともできる。たとえば、凹部の一部においてサポート基板400を除去して絶縁膜412にコンタクト孔を開けて第1の導電体膜413を露出させて電極・配線を接続すれば良い。コンタクト孔を開ける部分におけるサポート基板400を除去したものを裏面に付着すれば、サポート基板400を付着した後にサポート基板400を除去するプロセスも必要がなくプロセスが簡単になる。このように裏面側から第1の導電体膜からの引き出し電極を取れば、圧電体膜414をエッチング除去する必要もない。圧電体膜414のエッチングが困難である場合や圧電体膜414の厚みが厚い場合には、このような裏面からの引き出し電極も有利である。
図58は、圧電体基板体に貫通する凹部を有する圧力センサーを示す図である。圧電体基板511に第1面(表面)から第2面(裏面)に貫通する凹部516(516−1、516−2、516−3、516−4、516−5)が形成されている。圧電体基板511の裏面にはサポート基板513が付着している。凹部516を形成前にサポート基板513が圧電体基板511に付着している場合は、凹部516を形成時にサポート基板513における凹部516の部分もエッチングされて凹部が形成されるが、サポート基板513のエッチング速度の遅い条件を選定して凹部516を形成することにより、サポート基板513のエッチング量を少なくすることができるか。殆どエッチングされない(凹部が形成されない)ようにできる。いずれにしてもサポート基板513における凹部はサポート基板513の裏面(圧電体基板511と付着する面を表面とする)には貫通しない。凹部516を形成した後にサポート基板513を圧電体基板511に付着した場合には、サポート基板513に凹部は形成されない。
凹部516は略直方体形状に基板511に形成されている。隣接する凹部516同士に挟まれた圧電体基板が基板側壁となって、この圧電体基板側壁が隣接する基板516内の圧力差によって圧電体基板側壁が変形する。いわゆるこの圧電体基板側壁はダイヤフラムの役割を果たす。この変形によって圧電体基板側壁の表面に電荷が分極する。1つの圧電体基板側壁をみたときに一方が凸状に変形すると反対側は凹状に変形するので、圧電体基板側壁の一方の変形面に発生する電荷と他方の変形面に発生する電荷は逆になる。従って、これらの両面に発生する電荷を外部電極へ取りだすことによって、これらの電極の間に電位差を生じる。
基板側壁511−2は凹部516−1と516−2によって形成される。基板側壁511−3は凹部516−2と516−3によって形成される。基板側壁511−4は凹部516−3と516−4によって形成される。基板側壁511−5は凹部516−4と516−5によって形成される。基板511−1の片面は凹部516−1であるが、反対側には凹部516は形成されていない。また、基板511−6の片面は凹部516−5であるが、反対側には凹部516は形成されていない。あるいは、隣接する凹部516はかなり離間しているので、圧力差によって変形しない。
これらの凹部516内および圧電体基板511の第1面に導電体膜521が形成される。凹部516内の基板側壁511−2〜5には導電体膜521が直接接している。通常隣の凹部516は圧力が異なるので、基板側壁は変形する。たとえば、凹部516−1と凹部516−2の圧力は異なるので、その間の基板側壁511−2は変形する。たとえば、、凹部516−1内の圧力がP1、凹部516−2の圧力がP2であり、P1<P2の時は基板側壁511−2は凹部516−1側へ凸状となり凹部516−2側は凹状となる。従ってこれらの間を導電体膜521で接続すると、発生する電荷が相殺されて殆ど電荷を外部へ引き出せない。そこで、凹部内の圧力が異なる凹部を接続して形成されている導電体膜521は、接続しないようにこれらの間で除去する。たとえば、基板側壁511−2の上面における522−2の部分で導電体膜521をエッチング除去する。これによって、凹部516−1側の導電体膜521−1は凹部516−2側の導電体膜521−2は接続していない。同様に、基板側壁511−3の上面における522−3の部分で導電体膜521をエッチング除去する。これによって、凹部516−2側の導電体膜521−2は凹部516−3側の導電体膜521−3は接続していない。同様に、基板側壁511−4の上面における522−4の部分で導電体膜521をエッチング除去する。これによって、凹部516−3側の導電体膜521−3は凹部516−4側の導電体膜521−4は接続していない。同様に、基板側壁511−5の上面における522−5の部分で導電体膜521をエッチング除去する。これによって、凹部516−4側の導電体膜521−4は凹部516−5側の導電体膜521−5は接続していない。尚、凹部516内が同じ圧力になる場合にはこれらの凹部516内の基板側壁は同じ形状で変形し、発生する電荷は同極なので、これらの凹部内に形成された導電体膜521は接続していても良い。また、導電体膜521を配線として使用する場合も、不要な部分、たとえば圧電体基板511の平坦な第1面(表面)状の522−1や522−6でも導電体膜521を除去する。
導電体膜521上に絶縁膜525を形成する。この絶縁膜525は圧力センサーおよび導電体膜521を保護する。特に凹部516内には外気が入る場合があるので、凹部内の導電体膜521が外気中の水分や腐食性ガスなどで変質するのを防止する。基板511の第1面(表面)において、絶縁膜525上に薄板523を付着させる。この薄板523には、圧力導入孔526(526−1、2、3、4、5)が形成される。この圧力導入孔からそれぞれの凹部へ適切な圧力が導入される。また、導電体膜521からの引き出し電極を形成する領域527(527−1、2)の薄板523も除去しておく。あるいは、薄板523を絶縁膜525上に付着する前にこれらの領域に対応する部分を除去しておいたパターニングされた薄板523を絶縁膜525上に付着しても良い。薄板527のない領域にコンタクト孔528(528−1、2)を形成しこれらの孔内に導電体膜を形成し、さらに外部への接続電極529(529−1、2)を形成する。
以上のようにして、圧電体基板511内に第1面(表面)から第2面(裏面)に貫通した凹部を有する圧力センサーができる。凹部516はサポート基板513、圧電体基板511、薄板523によって囲まれた気密空間となる。ただし、圧力導入孔526が形成された場合は、そこから圧力を印加することができる。基板側壁511−2の変形によって凹部516―1側の基板側壁511−2表面に発生した電荷は、その上に形成された導電体膜521−1−3を通って外部電極529−1へ取りだされる。尚基板511−1は変形しないので変形による電荷は殆ど発生しないので、その上の導電体膜521−1−1には電荷が移動しない。この導電体膜521−1−1は配線として利用される。基板側壁511−2の反対側(凹部516−2側)に発生した電荷は導電体膜521−2−1を通して外部電極・配線(図示していない。また内部配線されて別の配線へ接続する場合もある。以下同様)へ引き出される。
基板側壁511−3の変形によって凹部516−2側の基板側壁511−3表面に発生した電荷は、その上に形成された導電体膜521−2−3を通って外部電極・配線(図示していない。)へ取りだされる。基板側壁511−3の反対側(凹部516−3側)に発生した電荷導電体膜521−3−1を通して外部電極・配線(図示していない)へ引き出される。基板側壁511−4の変形によって凹部516−3側の基板側壁511−4表面に発生した電荷は、その上に形成された導電体膜521−3−3を通って外部電極・配線(図示していない。)へ取りだされる。基板側壁511−4の反対側(凹部516−4側)に発生した電荷導電体膜521−4−1を通して外部電極・配線(図示していない)へ引き出される
基板側壁511−5の変形によって凹部516−4側の基板側壁511−5表面に発生した電荷は、その上に形成された導電体膜521−4−3を通って外部電極・配線(図示していない。)へ取りだされる。基板側壁511−5の反対側(凹部516−5側)に発生した電荷導電体膜521−5−1を通して外部電極・配線529−2へ引き出される。基板511−6は殆ど変形しないので、その表面には電荷が発生しない。従ってこの基板511−6上に形成された導電体膜521−5−3には基板511−6からの電荷は殆ど移動しないので、配線として使用されている。
凹部526の底部にも導電体膜521(521−1−2、521−2−2、521−3−2、521−4−2、521−5−2)が形成されているが、これらの導電体膜521(521−1−2、521−2−2、521−3−2、521−4−2、521−5−2)は他の凹部内の導電体膜と接続しており、またサポート基板513とも接続しているので、サポート基板513が絶縁体である必要がある。サポート基板513が絶縁体であれば、基板側壁で発生した電荷はサポート基板513へ移動しないので、問題はない。ただし、サポート基板513が絶縁基板でない場合でも、サポート基板513上に絶縁膜を形成してから基板511と付着させる(凹部形成後でも良い)ことにより、導電体膜521が凹部516の底部に形成されても、基板側壁で発生した電荷はサポート基板513へ移動しないようにすることができる。
次に、本発明の凹部を有する圧力センサーを、インプリント法を用いて作製する方法について説明する。図59は、インプリント法を用いた圧力センサーの製造方法を示す図である。図59(a)に示すように基板611上にポリマー615を形成する。基板611は圧力センサーを搭載する基板となるものであるから最適な基板を選択する。たとえば、基板611はシリコン基板である。シリコン基板を使用した場合、本インプリント法を用いた圧力センサーをIC等の能動素子や抵抗等の受動素子と一緒に同じ基板に形成することができるので、圧力センサーで得た電位や電流変化をIC等で演算処理して圧力値等を計算することができる。あるいは、基板611はガラス基板、石英基板、セラミック基板等の絶縁基板である。絶縁基板の場合は圧電素子で発生する電荷が基板内に漏れることを懸念する必要はない。あるいは、基板611は金属や合金等の導電体基板である。導電体基板の場合には静電気等が発生しても静電気を速やかに外部へ放出することができる。また導電体基板、特に金属や合金等の基板である場合は熱良導体でもあるから、発生した熱を外部へ放出することができる。あるいは、基板611はシリコン、炭素、ガリウムヒ素、窒化ガリウム等の半導体基板である。導電体基板や半導体基板の場合には、圧電素子で発生する電荷が基板内に漏れる可能性があるので、図59(a)に示すように、基板611上に絶縁膜613を形成した後に、この絶縁膜613上にポリマー615を形成する。絶縁膜613は、酸化法やCVD法やPVD法等で形成したシリコン酸化膜、シリコン酸窒化膜、シリコン窒化膜等の絶縁膜である。絶縁膜の厚みは、絶縁性を確保するために100nm以上あれば良い。
ポリマー615は、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル、液晶ポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、N−メチルー2−ピロリドン(NMP)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリジメチルシロクサン(PDMS)、ポリイミド樹脂、ポリ乳酸、各種ゴム(天然ゴムや合成ゴム)、あるいはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン(VDF/TrFE)共重合体、フッ化ビニリデンテトラフルオロエチレン(VDF−TeFE)等の強誘電性高分子、シアン化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、ナイロン−11等の極性高分子等の圧電性高分子など種々の高分子材料である。これらの材料を溶剤等で溶解した溶液を塗布・滴下してポリマー膜層を作り、必要ならプリベーク等した後にモールドをこのポリマー膜層に押し入れる。その後、光硬化性樹脂であれば紫外線等の光照射を行ないポリマーを硬化させたり、熱硬化性樹脂であれば硬化温度以上の熱処理でポリマーを硬化させたり、熱軟化性(熱可塑性)樹脂であれば一度軟化温度以上にしてポリマーを軟化させた後軟化温度以下に温度を下げてポリマーを硬化させたりする。あるいは、熱軟化性樹脂シートの場合は、軟化温度以上にしてポリマーを軟化した後モールドを押し入れた後軟化温度以下でポリマーを硬化させる。
すなわち、図59(b)に示すように、凹部形成用のモールドパターン619が形成されたモールド617を基板611に形成されたポリマー615にプレスする。たとえば、ポリマー615は熱可塑性樹脂(ガラス転移温度Tg)であり、Tgより高い温度でポリマー615内に押し込む。モールド全体617をポリマー615中に全部入れて押し込んでも良いし、図59(a)に示すように少しの隙間をあけてポリマー615中に入れても良い。隙間をあける場合には、ポリマー615は硬化後体積変化するので、その体積変化を考慮して隙間の間隔を選定する。熱可塑性樹脂として、具体的にはポリカーボネート(PC)、アクリル(PMMA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアセタール(PCM)、ポリプロピレン(PP)各種ゴム(天然ゴムや合成ゴム)、等が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマー615は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリイミド等の熱硬化性樹脂でも良いが、一度硬化した後は熱を加えても軟化できないことに注意する必要がある。熱可塑性樹脂の場合は、何度でも軟化できるので、たとえばパターン崩れが発生しても再度軟化させてモールを押し込めば良い。
モールド617のパターン619をポリマー615に押し込んだ後、冷却しTgより低くするとポリマー615が硬化する。その後、モールド617を引き上げると、図59(c)に示すように、ポリマー615内にモールド617のパターン619が転写され、凹部621(621−1、2、3、4)が形成される。モールドをポリマーに挿入前にモールド表面に離型剤を塗布等しておけばポリマーを硬化後に硬化したポリマーからモールドを分離することが容易となる。図59の図は基板611の断面構造を模式化した図(断面図)であるが、これを平面的に見れば、図60のようになる。すなわち、図60は、図59の平面図である。図60(a)はモールド617およびモールドパターン619を示す図である。モールド617に凸状の直方体形状パターン619(619−1、2、3、4)が形成されている。図60(b)は図59(c)の断面図に対応するものであるが、モールド617に凸状の直方体形状パターン619(619−1、2、3、4)がポリマー615に転写され、直方体形状の凹部621(621−1、2、3,4)が形成される。
隣接する凹部同士の間のポリマー615の側壁615−1、615−2、615−3は凹部内の圧力差によって変形するダイヤフラムとなる。インプリント法の利点は、プロセスが簡単なこと、パターンが正確に形成できることである。すなわち、インプリント法で形成された直方体形状の凹部621の大きさ、深さHc1、幅Wc1、長さLc1、および隣接する凹部621同士の距離(ポリマー側壁の厚み)Wsはバラツキが少なく形成される。本発明の圧力センサーにとって、これらの値は極めて重要であるから、できるだけバラツキがなく目標値通りに作製する必要がある。従ってインプリント法は本発明にとって非常に優れた方法である。深さHc1、長さLc1、および基板側壁厚みWsはダイヤフラムの大きさであるから、これらの値がバラツキが小さくほぼ一定に作られれば、圧力P1またはP2によって変形する量のバラツキも小さくなり、生じる電荷もほぼ一定となり、非常に正確な圧電デバイス(圧力センサー)となる。モールド617および619にポリマー615が付着してパターン崩れが発生しないように、モールド617および619をポリマー615に入れる前にモールド617および619の表面に離型剤を塗布しても良い。あるいはモールド617および619の表面にフッ素樹脂等をコーティングしても良い。
上記では、熱プリント法、すなわち常温より高い温度の熱処理を行ないポリマー615を軟化・硬化したが、UVプリント法を用いれば常温でもポリマー615を硬化させることができる。紫外線を照射すると硬化するUVポリマー615を用いて、モールド617および619をポリマー615内に押し込んだ後で、モールド617、619を通して、および/または基板611、絶縁膜613を通してポリマー615を硬化できる波長の光を照射する。この波長の光は紫外線やγ線やX線等が多い。従って、モールド617、619や基板611、絶縁膜613はこれらの光が透過できる材料を用いる。たとえば、ガラス製や石英製である。紫外線照射によりポリマー615が硬化した後で、モールド617および619を引き抜くと、凹部621が形成される。モールド617および619にポリマー615が付着してパターン崩れが発生しないように、モールド617および619をポリマー615に入れる前にモールド617および619の表面に離型剤を塗布しても良い。あるいはモールド617および619の表面にフッ素樹脂等をコーティングしても良い。この後、さらに硬化を確実にするために熱処理を行なう場合もある。
この後、底部に形成されたポリマー615Bを除去しても良い。たとえば、酸素プラズマによる異方性エッチングを基板全面(ポリマー615上面から全面)で行なえば良い。全面エッチングであるから、凹部底部のポリマー615Bだけでなく、ポリマー615の上面もエッチングされるので、全体のポリマー615の厚みが減少するが、凹部621の形状やポリマー側壁615(615−1〜3)の形状は維持される。ただし、凹部底部のポリマー615Bを基板内全体で除去するには、オーバーエッチングが必要となる。先にポリマー615Bがエッチングされた所は、下地の絶縁膜613(絶縁膜613がない場合は基板611)が露出するが、絶縁膜613や基板611がシリコン酸化膜系であれば酸素プラズマでは殆どエッチングされないし、シリコン窒化膜系でも余りエッチングされない。一方ポリマー上面はエッチングされるので、余りオーバーエッチングを行なうと凹部深さHc1が減少する。従って、オーバーエッチング量を小さくするために、酸素プラズマによるポリマーの異方性エッチング量のバラツキを小さくすると同時に凹部底部のポリマー615Bの厚みをできるだけ小さくする必要がある。モールドパターン619の深さバラツキを小さくするとともに、モールド本体617の平坦度のバラツキも小さくし、さらにモールドのプレス圧力が基板全体で均一になるようにする。モールドのプレス圧力が基板全体で均一にするには、モールドパターン619を基板全体で均一に配置しておくと良い。さらに、凹部底部のポリマー615Bがエッチングされ下地が露出し始めると、CO等の反応種が少なくなるので、その量をセンシングしてエンドポイントを決めることもできる。
次に、この硬化したポリマー615の上に第1の導電体膜{第1の電極・配線(下部電極)}623、圧電体膜625、第2の導電体膜{第2の電極・配線(上部電極)}627、絶縁膜629を形成する。この形成方法や条件等はこれまでに説明した内容と同様である。(たとえば、図43、図49、図50、図55、図57)第1の導電体膜623も基板側壁の上面の637(637−1、2、3)においてつながらないようにすることや第2の導電体膜627も基板側壁の上面の639(639−1、2、3)においてつながらないようにすることも同様である。次に薄板631を付着して、各凹部621(621−1、2、3、4)に圧力導入孔633を形成する。また第1導電体膜623や第2の導電体膜627からの引き出し電極を形成すべき領域における薄板631を除去することも同様である。この後、これらの引き出し電極を形成するためのコンタクト孔やコンタクト内導電体膜や電極・配線用の導電体膜を形成する。
以上によって、基板611上にポリマー615を基板側壁とし、その上に圧電体膜を形成した圧力センサーが形成された。尚、ポリマー615が絶縁体でない場合には、第1導電体膜623を形成する前に第1導電体膜623上に絶縁膜(たとえば、CVD法やPVD法によるシリコン酸化膜等)を形成する。第1凹部は、たとえば、幅Wc1が1μm〜500μm、深さHc1が1μm〜500μm、長さLc1が1μm〜2000μm、基板側壁の厚みWsが0.5μm〜100μmの大きさであるが、インプリント法を用いれば非常に正確な凹部および基板側壁を形成できる。インプリント法の中でもナノインプリント法を用いれば非常に微細なパターンでかつ深い凹部を形成できる。
たとえば、ポリマーとしてPET(Tg=430℃)を用いた場合、PETシート(厚み約50μm)をシリコン基板(厚み400μm、4インチ)上のシリコン酸化膜(1μm厚み)上に貼り付け、約450℃以上の温度で軟化させる。この軟化したPETにモールド(シリコン製)を押しつけ、その後Tg以下に温度を下げて冷却して、モールドパターンをPET中に転写することができる。(深さHc1=30μm、長さLc1=60μm、幅Wc1=30μm、基板側壁の厚みWs=5μm)このPETで作製された凹部に白金(Pt)(第1導電体膜)を1μm積層し、白金を塩素系ガスでドライエッチングして配線パターンを形成する。その後PZTをスパッター法により2μm(側壁厚み)積層し、さらに白金膜(第2導電体膜)を1μm積層する。次に白金を塩素系ガスでドライエッチングして配線パターンを形成する。次にCVD法によって、シリコン酸窒化膜を2μm積層した後、引き出し電極部を窓開けしたガラス板(厚み200μm)を接着剤(熱硬化性樹脂)で貼り付けて固着した後、引き出し電極を作製した。さらに、圧力伝達孔を凹部領域のガラスに形成した。モールドパターンを転写した後は、すべてのプロセス温度をPETのTg以下の温度(約400℃)で行なった。以上のようにして図59(d)に示す構造の圧電デバイス(圧力センサー)を作製できた。
尚、PET上に白金を積層する前にチタン(Ti)等の密着層を薄く(10nm〜100nm程度)積層しても良い。また、PZT等の圧電性を高めるために優先方位(111)面方位を有する白金をスパッターした後にPZT膜をスパッターしても良く、この場合は、白金の優先方位(111)面に配向したPZT膜を得ることができ、PZT膜の圧電性を向上させることができる。
図59に示す場合には、基板611の第1面の平坦な面にポリマーを塗布または滴下またはシートを貼りつけるので、ポリマー膜の厚み分は基板611の第1面の平坦な面よりも厚くなってしまう。圧電デバイス(圧力センサー)のみの場合には、この厚いポリマー膜の上に導電体膜等を積層すれば良いので、導電体膜等の段差部での被覆性(ステップカバレッジ)や段差部での導電体膜の段切れ等の問題は少ないが、他のデバイス(IC、抵抗、コンデサ、コイルなど)を基板611に一緒に搭載する場合には、これらの問題が深刻になる。特に基板611に搭載されたIC等の配線と圧電デバイスの配線とを接続する場合は問題になる。さらに他のデバイスと一緒に圧電デバイスを搭載するときはもちろん、単独のときにもポリマー膜の厚み分は厚くなってしまうので、薄くしたいという要求を満足できない。そこで、図61に示すように、圧電デバイスを形成する領域において基板611をエッチング除去して薄くする。図61はシリコン半導体基板等の半導体基板等内に形成した凹部内に圧電デバイスを形成する方法を示す図である。
すなわち、図61(a)に示すように基板内の圧電デバイスを形成する領域611内に凹部614を形成する。フォトリソ法やインプリント法を用いてレジストパターンを形成して、ウエットエッチングまたはドライエッチングで凹部614を形成する。ポリマーが凹部614内に入りやすくするために凹部に斜面616を形成しても良い。たとえば基板611が(100)シリコン基板の場合において、KOH溶液でエッチングすると傾斜した斜面{(111)面}を得ることができる。あるいはフッ硝酸系エッチング液によって等方性エッチングが可能であり、またドライエッチングでも等方性エッチングが可能である。
図94は、シリコン等の半導体基板内にこのような凹部を形成する方法について説明する図である。図94(a)に示すように、シリコン基板611の第1面上に絶縁膜612を形成する。絶縁膜612は、たとえば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜であり、CVD法やPVD法、あるいはSOG法等の塗布法、あるいは熱酸化法、熱窒化法等によって形成する。次に、この絶縁膜612上に感光性膜620を塗布法やシート貼り付け法(シート状、、またはフィルム状の感光性膜をシリコン基板に付着する)により形成し、露光法を用いて開口部622を形成する。次に、図94(b)に示すようにこの開口部622パターンを用いて、絶縁膜612をエッチング除去する。絶縁膜622がシリコン酸化膜の場合には、ドライエッチングであればCF系ガス(たとえば、CF4)やCHF系ガス(たとえばCHF)等やあるいはこれらに酸素やCO系ガスや水素等を混合した混合ガスを用いてプラズマエッチングし、ウエットエッチングであれば緩衝フッ酸(BHF)系エッチング液やフッ酸系エッチング液等を用いてウエットエッチングする。
次に絶縁膜612をエッチングした後の開口部パターン622に露出したシリコン基板をエッチングし、凹部614を形成する。上述したように、基板611が(100)シリコン基板の場合には、KOH溶液やヒドラジン溶液等を用いてシリコン基板をエッチングすることにより、(100)面である第1面に対して傾斜面616を持つ凹部614を形成できる。あるいは、SF系ガス(たとえばSF6)、CF系ガス(たとえば、C4F8)、塩素系ガス(たとえば、Cl2、BCl2、SiCl4)、あるいはこれらに酸素等を混合した混合ガスを用いて等方性プラズマエッチングを行なうことにより、テーパー面616を有する凹部614を形成できる。あるいは、フッ硝酸系溶液(たとえばHF+HNO3、あるいはHF+HNO3+CH3COOH)を用いて(100)面である第1面に対して傾斜面616を持つ凹部614を形成できる。尚、絶縁膜612は感光性膜620との密着性向上のために形成したが、シリコン基板611と感光性膜620との密着性に問題がなければ、感光性膜620をシリコン基板611上に直接形成しても良い。あるいは、シリコン基板611の他の領域にトランジスタ等が形成されており、既に領域622に絶縁膜等が形成され、その絶縁膜等と感光性膜620との密着性が問題なければその絶縁膜等の上に直接感光性膜を形成しても良いし、その絶縁膜等と感光性膜620との密着性に問題があれば親水性処理などによって密着性向上処理を行なった後感光性膜を形成しても良いし、あるいはこの領域622を含む領域における絶縁膜を除去してから、上記の絶縁膜612を形成しても良い。
次にポリマー615を塗布等して凹部614に厚く積層した後軟化させて、図61(b)に示すようにこのポリマー614にモールド617の凸状パターン619を押しつける。ポリマー615を硬化させた後モールド615を引き抜くと、基板611内の凹部領域614内の厚く積層したポリマー615内に凹部621が形成される。{図61(c)}このように基板611に凹部614を形成して、この部分に塗布されたポリマー615内に凹部621を形成することにより、全体の厚み(基板611の厚み+平坦部におけるポリマー618の厚み)を薄くすることができる。基板611の第1面の平坦部分618にもインプリント跡のポリマー618が残るが、この部分の厚みはインプリントモールド617の押圧力、基板611の強度、ポリマーの当初厚み、ポリマーの反発力等によって決定されるが、概ね0.1μm〜20μmである。この値をできるだけ小さくするために、条件を最適化する必要がある。最適化すれば0.1μm〜2μmも実現できる。この結果、図61(d)に示すように、導電体膜625や629のレベルが基板の第1面のレベルに近づき、より平坦なパターンが実現でき、導電体膜625や629の被覆性や絶縁膜623や629の被覆性等も改善され、導電体膜等の段切れ等も解消される。また圧電素子(圧力センサー)の厚みも減少するので、薄型機器にも適用できる。
ポリマー615が圧電体である場合、たとえばポリフッ化ビニリデン(PVDF)等の高分子強誘電体、(たとえば、図59と同様に)、ポリマー615の側壁(615−1、2、3)に一層の導電体膜を形成すれば良い。すなわち、図59(c)の後で、図59(e)に示すように、導電体膜641を形成し、さらにポリマー側壁615−1、2,3の上面において導電体膜641をエッチング除去し、異なる圧力となる凹部同士にある導電体膜641は接続しないようにする。次に絶縁膜643を形成し、さらにその上に薄板645を付着し、凹部を気密に塞ぐ。次に凹部621(621−1、2、3、4)への圧力導入孔647をあけ、また薄板645が不要な領域649、たとえば、導電体膜641からの引き出し電極を形成する領域、にある薄板645を除去する。あるいは、あらかじめ圧力導入孔647や不要な領域が窓開けされた薄板645を用意して、その窓開けされた薄板645を絶縁膜643上に付着しても良い。その後、導電体膜641からの引き出しコンタクト孔形成およびコンタク孔内導電体膜形成および電極・配線形成を行なう。
以上のようにして圧電体ポリマー内にインプリント法によって凹部および側壁ポリマーを形成して圧力センサーを形成できる。しかも導電体膜は一層で済むので(引き出し電極・配線層を含めれば二層)、プロセスが非常に簡単になる。また、基板611としてシリコン基板等の半導体基板を用いると、同じ基板内またはチップ内に圧力センサーとそれをコントロールあるいは演算処理する機能やその他の種々の機能を持つICとを一緒に搭載することができる。従って、実装面積を小さくできので実装サイズを小型にできること、さらに接続配線を少なくできるので信頼性向上および歩留まり向上を実現できる。
図62は、凹部を用いた圧縮型圧力センサーを示す図である。本発明の凹部の形成方法、各種薄膜の形成方法、薄板の付着方法、取り出し電極の作製方法等はこれまで説明したものと同様であるが、以下概説する。基板651の第1面にフォトリソ法やインプリント法等で凹部形成用のレジストパターンを形成し、基板651内に凹部652を形成する。基板651は、絶縁基板、半導体基板、導電体基板等適宜選択できる。また、基板651は、基板上にポリマーやゴム等を形成したものを使用しても良い。さらに、このポリマーやゴム等の液状膜またはゲル状膜にインプリント法を用いて凹部を形成しても良い。基板651内に凹部は多数形成しても良いが、隣接する凹部間の基板側壁は圧力によって変形しないように、十分な強度と厚みが必要である。
次に凹部652を含む基板651の第1面に、第1の絶縁膜653、第1の導電体膜654、圧電体膜655、第2の導電体膜656、第2の絶縁膜657を積層する。それぞれの薄膜を積層した後に、それぞれの薄膜のパターニングを行なっても良い。たとえば、第1の導電体膜653を積層した後に、接続しない凹部における導電体膜は切断したり、必要な配線をパターニングする。あるいは、たとえば、第2の導電体膜656を積層した後に、接続しない凹部における導電体膜は切断したり、必要な配線をパターニングする。次に薄板658を基板651の第1面側に付着し、凹部652に蓋をする。圧力伝達孔659を薄板に形成し、凹部652と外部環境と接続する。この凹部から、液体や気体等の圧力を凹部652内に導入し、圧電体膜655に印加する。また、導電体膜654、656からの引き出し電極を形成する領域660における薄板658を除去する。これらの薄板659の開口部は、薄板659を基板651に貼りつける前に行なっても良い。
次に第1の引き出し電極663を形成するために、コンタクト孔661を形成する。第1の導電体膜654上には圧電体膜652および絶縁膜657が積層されている(第2の導電体膜656は予め除去しておくことが望ましい)で、フォトリソ法やインプリント法を用いてレジストパターンを形成し、絶縁膜657および圧電体膜652を除去する。圧電体膜652は基本的には絶縁体膜であるが、分極等して絶縁性が悪くなる場合には、コンタクト孔の側壁に絶縁膜を形成しておく。次にコンタクト孔661内に導電体膜662を形成し、さらに導電体膜663を形成しパターニングを行ない電極・配線663を作製する。導電体膜662と導電体膜663は兼用することもできる。
同様にして、第2の引き出し電極666を形成するために、コンタクト孔664を形成する。第2の導電体膜656上には絶縁膜657が積層されているので、フォトリソ法やインプリント法を用いてレジストパターンを形成し、絶縁膜657を除去する。次にコンタクト孔664内に導電体膜665を形成し、さらに導電体膜666を形成しパターニングを行ない電極・配線666を作製する。導電体膜665と導電体膜666は兼用することもできる。第1の引き出し電極663と第2の引き出し電極666の形成は同一プロセスで行なうこともできる。
このようにして形成した圧電デバイスにおいて、圧力伝達孔659を通して凹部652内に圧力を導入し、凹部内の圧電体膜655を圧縮または逆圧縮(圧力を下げた場合)する。圧電体膜はこの圧縮により分極して圧電体膜の表面に電荷を誘起する。この電荷を上下の導電体膜654および656で集めて引き出し電極663および666へ導く。圧電体膜655の裏表で電荷の極性は逆になっているので、引き出し電極663および666の間で電位(電圧)が生じる。この電位の大きさによって凹部652内に印加された圧力の大きさを計算できる。凹部内はすべて同じ圧力がかかっている(静水圧)ので、引き出し電極663および666はそれぞれ接続しておいて良いので、凹部領域でこれらの導電体膜のパターニングは必要がない。また、印加する圧力が小さくて発生する電荷が少ない場合などは多数の凹部内に形成したそれぞれの導電体膜を接続して電荷を多数集めることにより、感度を高めることができる。
従来の平面的な圧電体素子では、基板内の広い面積が必要であったが、本発明を用いると基板の平面的なサイズを小さくすることが可能となる。たとえば、1辺がW1の正方形で、深さがH1の凹部を凹部間の間隔をWsで、1辺がLの正方形の面積に並べた場合、この中に{L/(W1+Ws)}2個の凹部が形成されるので、約{L2+4H1xW1x{L/(W1+Ws)}2}の面積が圧力を受けることになるので、従来法に比較して約{1+4(H1xW1x)/(W1+Ws)}2}倍の感度となる。たとえば、H1=300μm、W1=25μm、Ws=5μmとすれば、9.3倍の感度となっている。尚、同じ圧力を受ける凹部は、凹部同士の間隔を狭めても変形しないので、Wsは凹部形成の限界まで小さくできる。また凹部の平面的大きさW1も凹部が形成できて各種膜が凹部内に形成できる限界まで小さくできる。現在のレベルでも上記の値よりもさらに小さくできるから感度はさらに高めることが可能である。尚同じ圧力を受ける領域における基板651の上面(すなわち凹部間の側壁上面)は薄板658を付着させる必要はないので、同じ圧力を受ける領域の一番外側だけを凸部にして基板611と付着させれば良い。このようにすれば、凹部間の側壁上面にも圧力を印加できるので感度がさらにアップする。
図63は、凹部側壁の位置によって発生する電荷が逆特性となる場合における電荷の引き出し原理について説明する図である。図63に示すように基板側壁671の上面が第1の薄板672で、基板側壁671の下面が第1の薄板673で固定されて変形が規制されている。従って凹部間の圧力差Pによってダイヤフラムである基板側壁671の中心付近が最も大きく変形し(膨らみ)、基板側壁671の上面や下面に近い部分は余り変形しない。このとき基板側壁である圧電体671によっては、ダイヤフラムの中心付近674とダイヤフラムの周辺675、676付近で異なる極性の電荷が発生する場合がある。そのときに導電体膜をそのまま接続していると電荷が相殺される部分が出て十分な感度が得られない。その場合は、ダイヤフラム(基板側壁671)の中心付近674とダイヤフラム(基板側壁671)の周辺付近675、676で電極を別にすると良い。
すなわち、基板側壁671上に第1の導電体膜677、678、679を積層した後、第1の導電体膜を中心側の第1の導電体膜677と周辺側の第1の導電体膜678、679と分離する。同様に基板側壁671の反対側についても、基板側壁671上に第2の導電体膜681、682、683を積層した後、第2の導電体膜を中心側の第2の導電体膜681と周辺側の第2の導電体膜682、683と分離する。各導電体膜から図63に示すようにJ1、J2、J3およびJ4、J5、J6と引き出し電極を取れば、J1はJ5、J6と同じ極性となり、J4はJ2、J3と同じ極性となる。
図63(b)は図63(a)を側面から見た図であるが、長方形状のダイヤフラムである基板側壁671を、中心付近の円形形状の電極677、681と周辺付近のドーナツ形状の電極678、679、682、683と分離しているが、678と679、あるいは682と683はつながっていても良い。また、図63(b)では円形形状として示しているが長方形上でも良い。また、図63(b)長方形状のダイヤフラムの角部には電極を設けていないが、角部も電極を含んでも良い。
図64は、凹部内面に導電体膜パターンを形成する方法について説明する図である。これは、たとえば、図63に示すような凹部内の基板側壁671の側面に中心付近と周辺付近を分離したパターンを形成するときにも適用できる。まず、図64(a)に示すように基板685内に凹部686を形成し、次に基板685の第1面上に絶縁膜687、導電体膜688を形成している。図63に従えば、基板685は圧電体基板であり、絶縁膜687はなく、直接基板685に導電体膜688を形成している。次に感光性膜689を導電体膜688上に形成する。通常の塗布法(たとえば、ディップ、滴下、スピンコート、スクリーン塗布)では凹部686内にフォトレジストが厚く溜まるので、パターニングするためには強度の強い露光法(焦点深度が大きいもの、たとえば、X線露光やSOR(シンクロトロン放射光)法)を用いる必要がある。そこで、たとえば、電着法によって凹部内の段差にも忠実に感光性膜(感光性レジスト)689を積層する。ここで電着法とは溶液中に分散化された感光性高分子を導電体膜上に電気泳動法で塗膜として析出する方法である。
感光性膜689を積層した後、図64(b)に示すように斜め露光法691により凹部内の基板側壁の側面に露光する。基板側壁は略垂直形状なので、通常の垂直露光法では基板側壁の側面に露光できないので、斜め露光法を用いる。電着レジスト膜689がポジ型の場合には光が当たる所が現像により取れるようにマスクを作製し、電着レジスト膜689がネガ型の場合には光が当たらない所が現像により取れるようにマスクを作製する。凹部686の深さをHc1、凹部686の幅をWc1とすれば、tanθ=Wc1/Hc1となるような傾きθで露光すれば、基板側壁の側面の底部まで光を照射することができる。凹部686の4つの内面にすべて露光する場合、直方体形状の凹部内面のすべてに光を照射する場合は、凹部686のそれぞれの面に対して垂直方向)平面的に見たとき)から斜め露光を(すなわち4回)行なう。基板685の上面の平坦部にもパターンを形成できるが、異なった方向から4回露光するのでうまくパターン形成できるように露光方法を工夫する。たとえば、基板685の上面の平坦部には1回だけ露光して他の3回の露光ではマスクをブラインドしておく。基板側壁側面のパターンが各面同じであれば、回転露光する方法で行なうことができる。
次に現像すれば図64(c)に示すように、凹部内面、基板側壁側面上にレジストパターン689が形成される。基板上面にも所望のレジストパターン689が形成される。この電着レジストパターン689をマスクとして下地の導電体膜688のエッチングを行なうことにより、凹部側面に導電体の配線パターン688が形成できる。{図64(d)}導電体膜パターン688が形成された後で、電着レジスト689はリムーブして取り除く。図63に示す場合(基板として圧電体を使用する場合)には導電体膜は一層で良いので、この後絶縁膜を形成して、薄板を付着させ圧力伝達孔をあけて、引き出しコンタクトおよび電極を形成すれば良い。基板が圧電体ではないときは、この後、圧電体膜690をスパッターやCVD法で積層し、さらに導電体膜691を積層する。この導電体膜691のパターンについても凹部686の側面(基板側壁の側面)に作製する場合は、電着法を用いてレジストを凹部内の内面に忠実に積層して、斜め露光法によって側面に所望の導電体パターン691を形成すれば良い。その後、絶縁膜692を積層して、薄板693を付着して凹部686を塞ぎ、さらに圧力伝達孔694を形成したり、引き出しコンタクト孔695や697、および引き出し電極696や698を形成すべき領域の薄板693を除去する。次に引き出しコンタクト孔695や697、および引き出し電極696や698を形成する。{図64(e)}尚、電着法以外にもシート状のドライフィルムを用いる方法やプラズマ重合法で形成する感光性レジストを用いる方法でも凹部内にパターン形成を行なうことができる。
上記の方法は、凹部が貫通溝、すなわち基板685の第1面(表面)から第2面(裏面)へ貫通する凹部において、凹部における側面にもパターンを形成できる。図65は図48と類似する図であるが、基板側壁に形成する導電体膜を分割した状態を示す図である。圧電体基板側壁53上に形成した導電体膜54および56において、中央部と周辺部の導電体膜を分離する。すなわち、導電体膜54は中央部と周辺部の間699−1や699−2でエッチング除去され、中央部の導電体膜54−2、周辺部の導電体膜54−1や54−3に分割される。その後、絶縁膜55が積層され、これらの分離部699−1や699−2にも絶縁膜55が形成される。これらの分割された導電体膜54は配線されて、引き出し配線・電極へ接続する。たとえば、中央部の導電体膜54−2はC5に、周辺部の導電体膜54−1はC6へ、周辺部の導電体膜54−3はC1へ接続する。周辺部の導電体膜54−1や54−3は同じ極性であるからC1とC6は接続しても良い。また、導電体膜56は中央部と周辺部の間699−3や699−4でエッチング除去され、中央部の導電体膜56−2、周辺部の導電体膜56−1や56−3に分割される。その後、絶縁膜57が積層され、これらの分離部699−3や699−4にも絶縁膜57が形成される。中央部の導電体膜56−2はC7に、周辺部の導電体膜56−1はC8へ、周辺部の導電体膜56−3はC2へ接続する。周辺部の導電体膜56−1や56−3は同じ極性であるからC2とC8は接続しても良い。同様に圧電体基板側壁58上に形成した導電体膜60および56において、中央部と周辺部の導電体膜を分離する。このようにして、圧電体膜の変形によって、圧電体膜上に異なった極性の電荷が発生する場合には、その上に形成した導電体膜を発生する極性に応じて分離する。分離した導電体膜から配線・電極等を通して同じ極性同士の電荷を集めることにより、検出感度を高めることができる。
図66は、本発明の隣接する凹部間の基板側壁の側面にピエゾ抵抗を配置してそのピエゾ抵抗効果を利用した圧力センサーの構造および製造方法を示す図である。図67は、基板側壁の側面におけるピエゾ抵抗のパターンの一例を示す図である。図67において、正方形状または長方形状の基板側壁の側面5021上にピエゾ抵抗5014が4個(5014−1、2、3,4または5、6、7、8)配置されている。基板側壁の側面5021の実線で示す5022の位置がダイヤフラム部の境界となっている。すなわち基板側壁の側面5021はダイヤフラム部であり、隣接する凹部内の圧力差によってその中心位置Oが最も膨らむか窪む。図66に示すピエゾ抵抗の配置は、図68に示す4個のピエゾ抵抗によるブリッジ回路(いわゆるホイートストンブリッジ回路)をなすように配置されている。図67(a)において、4個のピエゾ抵抗は基板側壁5021の周辺に配置されており、ピエゾ抵抗5014−2と5014−4は同じ方向に配置され、ピエゾ抵抗5014−1と5014−3は同じ方向に配置されている。従って、ダイヤフラム(基板側壁)の変形によってピエゾ抵抗5014−2と5014−4は同じ抵抗値で変化し、一方ピエゾ抵抗5014−1と5014−3は同じ抵抗値で変化し、変化の度合いは逆となる。図67(b)において、ピエゾ抵抗5014−5、6、7、8は同じ方向に配置されているが、ピエゾ抵抗5014−5と8は周辺に配置され、ピエゾ抵抗5014−6と7は中心方向に配置されている。従って、ピエゾ抵抗5014−5と8は同じ抵抗値で変化し、一方ピエゾ抵抗5014−6と5014−7は同じ抵抗値で変化し、その変化の度合いが異なる。従ってブリッジ回路の測定から抵抗値の変化量が分かるので、その抵抗値の変化量から圧力を計算することができる。尚、図67ではピエゾ抵抗だけ示しているが、ピエゾ抵抗に電圧をかけて電流を流すための配線パターンも基板側壁の側面に形成されている。
図66(a)に示すように、基板5011内に凹部5012(5012−1、2、3)が形成される。この凹部5012内および基板5011の第1面に絶縁膜5013を形成し、さらにピエゾ抵抗用の薄膜抵抗5014を積層する。さらにこの薄膜抵抗をパターニングするためのレジストパターン5015を形成する。このレジストは電着法等により形成し、さらに露光法(斜め)により基板側壁の垂直面である側面にもレジストパターンを形成する。この基板側壁の側面のレジストパターンの一部がピエゾ抵抗となる。薄膜抵抗は、たとえばクロムシリコン(SiCrx)膜や他のシリサイド膜、多結晶シリコン膜である。多結晶シリコン膜の場合、ドーピング量を変えて多結晶シリコン膜の抵抗を変化させても良いし、イオン注入法で抵抗を変えても良い。たとえば、図66(a)において、多結晶シリコン膜5014を形成し、レジスト膜5015を形成する前に、全面イオン注入を行ない薄膜抵抗としての濃度分をイオン注入する。このとき、凹部5012内の基板側面にもイオン注入するために斜め回転イオン注入をすると良い。斜めイオン注入だけだと矩形凹部の場合、4回の斜めイオン注入が必要となるが、回転斜めイオン注入を使用すれば1回のイオン注入で済む。さらにピエゾ抵抗となる部分にレジストパターンを形成して配線用の高濃度のイオン注入を行なう。これによって、ピエゾ抵抗部分は所定のイオン注入量、配線パターンとなる部分は高濃度のイオン注入を行なわれる。
次にレジストパターン5015をマスクとして薄膜抵抗をエッチングして、薄膜抵抗部分と配線部分をパターニングし、レジスト5015をリムーブする。(図66(b))次に、絶縁膜5020を積層する。この絶縁膜5020は薄膜抵抗5014を保護している。薄膜抵抗5014はピエゾ抵抗にもなるし配線としても使用されている。次に、絶縁膜5020上に薄板5016を付着して凹部5012(5012−1、2,3)に蓋をする。その後、薄板5016に圧力伝達孔5012(5012−1、2、3)を開ける。さらに薄膜抵抗配線5014からの引き出し電極を取るコンタクト領域5018における薄板5016を除去する。次にコンタクト孔5019を形成し、薄膜抵抗配線5014にかける電圧を印加し電流を流せるようにする。このコンタクト部にさらに配線・電極を設けても良い。
以上のようにして、凹部内の内面、すなわち基板側壁5011(5011−1、2)の側面にピエゾ抵抗およびブリッジ回路用配線を形成できた。凹部5012−2の圧力をP2とし、基板側壁5011−1を隔てた凹部5012−1の圧力をP1とし、P2>P1とすれば基板側壁5011−1が凹部5012−1側へ膨らむ。このとき、薄膜抵抗5014からなるピエゾ抵抗値の変化をブリッジ回路で測定できる。図66(c)から分かるように、基板側壁5011−1の側壁の両面にブリッジ回路を形成できるので、感度が2倍となる。尚5011−1の両側では変化方向が逆になる(一方が膨らむと他方は凹む)ので、ピエゾ抵抗変化も逆になることに注意する。
凹部5012−2の圧力をP2とし、基板側壁5011−2を隔てた凹部5012−3の圧力をP3とし、P2>P3とすれば基板側壁5011−2は凹部5012−3側へ膨らむ。このとき、薄膜抵抗5014からなるピエゾ抵抗値の変化をブリッジ回路で測定できる。図66(c)から分かるように、基板側壁5011−2の側壁の両面にブリッジ回路を形成できるので、感度が2倍となる。尚、5011−2の両側では変化方向が逆になる(一方が膨らむと他方は凹む)ので、ピエゾ抵抗変化も逆になることに注意する。
このように本発明のブリッジ回路は少ない平面的面積で構成できる。たとえば、ダイヤフラムの大きさを300μmx300μmとしたとき、凹部の幅を25μm、基板側壁の幅を5μmとすれば、本発明の圧力センサーの大きさは60μmx300μmとなり、平面的な従来のダイヤフラムに比べると1/5の面積となり、しかも2つのブリッジ回路を組めるので、感度が2倍となっている。また、同じ平面的な占有面積とすれば、9個のダイヤフラムを形成でき、その両側にブリッジ回路を組めるので、感度は18倍になっている。
これまでに説明したように、本発明の基板はポリマーやゴム等を使用できるし、シリコン等の半導体基板上にもインプリント法等を用いてポリマーやゴム内に凹部や薄膜抵抗等を使用できる。しかもポリマーやゴム等はシリコンよりヤング率がかなり小さい(シリコンのヤング率約130GPa、ポリマー約0.1〜5GPa、ゴム約0.01〜0.1GPa)ので、1桁小さいダイヤフラムでも同程度の変形量を得ることができる。たとえば、ポリマーやゴム等の厚みを50μm程度にしてインプリント法やフォトリソ+エッチング法で凹部および基板側壁を形成して、基板側壁(ダイヤフラム)の大きさを30μm(深さ方向)x30μm(長さ方向)、基板側壁の厚み5〜10μmとしても大きな変形量を得ることができるので、その側壁の側面にピエゾ抵抗パターンを形成し、従来のシリコン基板のダイヤフラム(300μmx300μm、厚み5〜10μm)並みのピエゾ抵抗変化を得ることができる。2個の凹部で不足であれば必要な分凹部を作り接続していけば良く、それでもかなり小さな面積となる。このようにすれば、シリコン半導体基板にICを作製した後に、ICの隙間部分にポリマーやゴムを塗布してピエゾ抵抗型圧力センサーを作製できる。従って、圧力センサー+ICを1チップ化でき、しかもICの面積は殆ど変わらないようにすることもできる。
また、シリコン等の半導体基板に、前述した様にポリマーやゴム層の基板厚みと同程度の凹部を形成し、その凹部にポリマーやゴム層を埋め込んでその部分を基板とすれば、他のシリコン等の半導体基板との段差も小さくできるので、ポリマーやゴム層からなる圧力センサ部と半導体基板側を接続する配線の段切れ等の問題も解消することができる。さらに、ピエゾ抵抗型圧力センサーは、基板を第1面から第2面に貫通した貫通溝タイプにも使用できる。また、第1面側から形成した第1凹部と第2面側から形成した第2凹部とで挟まれた基板側壁の側面に形成することもできる。
図69は、シリコン等の半導体基板内にピエゾ抵抗を形成する場合の構造および製造方法を示す図である。半導体基板5031内に凹部5032(5032−1、2、3)を形成した後、第1面上に薄い絶縁膜5037を形成する。この後、導電体膜5033を積層する。絶縁膜5037は導電体膜5033を半導体基板5031上に直接形成すると問題ある場合に積層する。たとえば、密着性向上の目的、導電体膜5033をリムーブするときに半導体基板5031にダメッジが入らないようにする目的などである。絶縁膜5037は絶酸化膜でも良いし、CVD、PVD等による積層膜でも良い。導電体膜5033は感光性の電着レジスト膜を形成する目的で形成する。また、その膜厚(絶縁膜5037の膜厚と合わせて)は、イオン注入時に半導体基板内に不純物イオンが入ることができる厚みとする。従って、電着レジスト膜が形成できれば薄いほど良い。たとえば、絶縁膜5037の厚みは5nm〜100nm、導電体膜の厚みは10nm〜200nmである。導電体膜5033は電着レジストが可能な導電膜であり、たとえば、ドープしたシリコン膜、アルミニム、チタン、クロム等の金属膜や合金膜、あるいは導電炭素膜、導電性ポリマーでも良い。
次に電着法で感光性の電着膜5034を積層し、斜め露光法等で必要なパターニング5034を行なう。特にピエゾ抵抗となる領域や配線となるべき部分は窓開けする。次にイオン注入を行ない、窓開けした所から半導体基板内部のピエゾ抵抗、配線領域にイオン注入する。基板の第1面に垂直な基板側壁の側面にもイオン注入するために、斜めイオン注入を行なう。凹部が矩形の場合、凹部の面に垂直方向から照射するのが望ましいのですべての側面にイオン注入するには4回イオン注入する必要がある。ただし、回転イオン注入であれば(基板を回転しても良い)1回で済む。電着レジスト膜で窓開けした部分には導電体膜5034や絶縁膜5033が存在するので、これらの厚みや材料を考慮してイオン注入の加速エネルギーを決定する。当然マスクとなっている電着レジスト膜の厚みの考慮も必要である。あるいは、電着膜を窓開けした後に窓開けした部分の導電体膜5034をエッチング除去してからイオン注入しても良い。絶縁膜5037はこの導電体膜5034のエッチングストッパーともなる。
イオン注入後電着レジスト膜を除去し、さらに導電体膜5034を除去する。絶縁膜5037も除去しても良いし、残しても良い。その後、イオン注入したイオンを活性化するための熱処理を行ないイオン注入層5036を形成する。ダイヤフラムとなる基板側壁5031(5031−1、2)にピエゾ抵抗領域となるイオン注入層5036や配線層となるイオン注入層5036が形成される。この絶縁膜5037は薄いので、次に絶縁膜5038を形成し、さらに導電体膜5039を形成する。この導電体膜はこの上に電着レジスト膜5040を形成する目的であるが、凹部5032(5032−1、2)内にパターンを形成しないときは、基板5031の上面のみにパターンを形成するだけなので、この導電体膜5039を形成せず直接感光性レジストを形成することができる。次に斜め露光法等により、凹部内に開口部5042や基板5031の第1面上に開口部5041を形成する。(図69(c))この導電体膜5039は電着膜5040を形成する目的であるため、電着膜5040を形成できれば薄いほど良い。
次にこの開口部5041、5042から導電体膜5039をエッチング除去し、さらにこの開口部の絶縁膜5038をエッチングし、基板5031内のイオン注入層5036を露出させる。{図69(d)}次に電着レジスト膜5040をリムーブし、さらに導電体膜5039をリムーブする。ただし導電体膜5039は問題なければ残しておくこともできる。次に図69(e)に示すように導電体膜5045を積層する。この導電体膜5045はコンタクト領域5043(基板5031上の平坦部)やコンタクト領域5044(凹部内)にも積層しイオン注入層5036とコンタクトする。この導電体膜5045は金属シリサイド膜、ドープした多結晶シリコン膜、各種金属膜、導電性ポリマー等を適宜選択すれば良い。
次に導電体膜5045をパターニングし必要な配線を行なう。次に絶縁膜5046を形成し、さらに薄板5047を付着して凹部5032(5032−1、2、3)に蓋をする。その後、圧力伝達孔5048(5048−1、2、3)をあける。また、導電体膜5045からの引き出し電極を形成すべき領域の薄板5047を除去する。尚これらの薄板の開口は予め除去しておいた薄板5047をアライメントして基板5031上に付着しても良い。次に、導電体膜5045との接続孔(コンタクト孔)5051を形成し、引き出し電極5052を形成する。
以上のようにして、基板側壁5031−1、2の側面にピエゾ抵抗層を形成でき、半導体基板5031内のイオン注入層(拡散層)5036による配線、そこと接続した導電体膜5045による配線を用いてブリッジ回路を組んで、圧力伝達孔5048(5048−1、2、3)から凹部5032(5032−1、2、3)へ印加した圧力P1、P2、P3による圧力差から生じる基板側壁5031(5031−1、2)の変形によって変化するピエゾ抵抗の変化量に基づいて印加された圧力差を求めることができる。尚、イオン注入層5036の代わりに拡散層5036を作製することもできる。たとえば、図69(a)において、電着レジストパターンによって、導電体膜5033をエッチングしてさらにその下の絶縁膜5037もエッチングした後、電着レジストをリムーブし、さらに導電体膜5033をリムーブして絶縁膜5037の開口部を得る。この拡散法により、絶縁膜5037の開口部から所望の濃度のプリデポ+拡散で拡散層5036を得ることができる。尚、この場合には絶縁膜5037がプリデポおよび拡散のマスクとなっているので、イオン注入法による場合よりも厚く絶縁膜5037を積層することが望ましい。また、基板5031内のイオン注入層(拡散層)配線層の濃度を上げるために、前述したことと同様の方法で、さらにイオン注入層またはプリデポ+拡散層を形成することもできる。半導体基板5031内にピエゾ抵抗層を作製すると、このピエゾ抵抗層は半導体基板そのものであるから、信頼性や品質が高いことが利点である。
図70は、基板内に形成した凹部を用いた静電容量型の圧力センサーの構造および製造方法を示す図である。基板5111内に凹部5112(5112−1、2、3)を形成した後、絶縁膜5113を形成し、さらに導電体膜5114を形成する。次に感光性膜5115を形成し、必要なパターンを形成する。基板5111はシリコンや化合物半導体等の半導体基板、ガラス、石英、ポリマー、セラミック等の絶縁体基板、あるいは金属や合金や導電性高分子等の導電体基板でも良い。あるいはこれらの基板を貼り合わせた基板であっても良い。あるいは、上記の基板等に形成したポリマーやゴムやペースト(絶縁性または導電性)等の液状体膜やゲル状膜を形成し、インプリント法を用いて凹部を形成しても良い。さらに、図70では凹部は第1面(表面)に開口しかつ第2面(裏面)には貫通していないが、第2面に貫通した貫通溝であっても良い。基板5111が絶縁体であるときは、絶縁膜5113を形成しなくても良い。ただし導電体膜5114と基板5111の密着性が余り良くないときは絶縁膜を積層する場合もある。凹部5112内にパターン形成する場合、感光性膜5115は、凹部5112の内部にできるだけ忠実に形成することが望ましい。たとえば、電着レジスト膜を形成する。他にシート状のドライフィルムを用いる方法やプラズマ重合法で形成する感光性レジストを用いる方法でも良い。凹部5112内にパターン形成しない場合は、通常の塗布法やディップ法等でレジストを形成する方法でも良い。次に露光法(フォトリソ法)で感光性膜5115をパターニングする。たとえば、凹部5112(5112−1、2、3)の底部5116(5116−1、2、3)を開口する。および/または凹部5112(5112−1、2、3)の間の基板側壁5111(5111−1、2、3)の上部5117(5117−1、2、3)を開口する。および/または凹部内側面を開口する場合もある。{図70(a)}
次にこのパターニングした感光性膜5115をマスクとして導電体膜5114をエッチングする。凹部内側面に形成された導電体膜5114をエッチングするときは、ウエットエッチングまたは等方性ドライエッチングが良い。これにより導電体膜5114は基板側壁上面5119(5119−1、2)で、および/または凹部底部5118(5118−1、2、3)で、および/または凹部側面(基板側壁の側面)で切断される。さらに基板5111の第1面で必要な配線形成が行なわれる。導電体膜が多結晶シリコン膜やシリサイド膜の場合はたとえばフッ硝酸系のエッチング液やハロゲン系のガスを用いたドライエッチングでエッチングできる。導電体膜が透明導電体膜(ITO、ATO、ZnO等)の場合はたとえばフッ硝酸系のエッチング液やハロゲン系のガスを用いたドライエッチングでエッチングできる。導電体膜がアルミニウムの場合はたとえばリン酸系のエッチング液やハロゲン系のガスを用いたドライエッチングでエッチングできる。その他の材料についても良好なエッチング法を適宜選択すれば良い。このエッチングによって、導電体膜5114は、5114−1、2、3、4、5、6等に分割される。(ただし、これらの間で必要な部分は接続する場合もある。)次に絶縁膜5120を積層する。この絶縁膜5120は導電体膜5114を保護し、この後付着する薄板と導電体膜5114とを介在する絶縁膜でもある。{図70(b)}
次に薄板5121を付着し凹部5112に蓋をする。この接着法は、接着剤を使用する方法や、常温接合法などがある。この薄板5121の凹部5112(5112−1、2、3)に圧力伝達孔5122(5122−1、2、3)を形成する。また、コンタクト孔5124や引き出し電極5125を形成すべき領域5123における薄板5121も除去することが望ましい。さらにその他の薄板5121が不要な部分から薄板5121を除去する。あるいは、あらかじめ薄板5121が不要な部分を除去した薄板5121を基板5111上に付着しても良い。次に導電体膜5114からの引き出し電極を形成するために、フォトリソ法およびエッチング法を用いて絶縁膜5120にコンタクト孔5124を形成し、コンタクト孔5124に導電体膜を形成し引き出し電極5125を形成する。{図70(c)}
図71は、図70に示す圧力センサーの平面図を示す。凹部5112(5112−1、2、3、4)と導電体膜5114(5114−1、2、3、4、5、6、7、8)を示す。直方体形状の凹部5112(5112−1、2、3、4)が平行にならんでおり、凹部5112(5112−1、2、3、4)の間に側壁5111(5111−1、2、3、4)が形成されている。また。側壁5111(5111−1、2、3、4)の側面には導電体膜5114(5114−1、2、3、4、5、6、7、8)が形成されており、凹部内を含め導電体膜5114(5114−1、2、3、4、5、6、7、8)が分離している。図71(a)から分かるように、凹部内の内面に導電体膜5114を形成しその間の凹部空間を静電容量空間(たとえば、凹部5112−2)とする場合、一方の電極となる導電体膜5114−3は基板側壁5111−1の凹部5112−2の内側面に形成され、他方の電極となる導電体膜5114−4は基板側壁5111−2の凹部5112−2の内側面に形成され、これらの電極の間は凹部底部も凹部側面(この場合凹部短辺側)において導電体膜はエッチング除去される。この結果凹部内を容量空間として、両側の基板側壁側面5114−3および4を電極とする静電容量素子ができる。
凹部5112内のレジストパターニングが難しいときは、1つの凹部(たとえば5112−2)内の導電体膜5114(5114−3、5114−4を含めた凹部5112−2内の導電体膜)はすべてエッチング除去する。この凹部に隣接する凹部(5112−1、または5112−3)に形成された電極をコンデンサの電極とする。ただし、このときの容量成分は凹部の空間容量、基板側壁5111−1および5111−2も容量を形成している。凹部51112−1および5112−3内の導電体膜5114はそのまま残しておくので、導電体膜5114−1と5114−2、また導電体膜5114−5と5114−6はつながっている。このようにすると、凹部5112内ではレジストのパターニングをしなくて良く、レジストのパターニングを行なうのは基板5111の第1面の平坦部なので通常のフォトリソ法およびエッチング法で導電体膜5114を除去できる。この結果、凹部5112(5112−1、2、3、4)内の空間を静電容量として、その両側の導電体膜を電極5114(5114−1、2、3、4、5、6、7、8)とするコンデンサが出来上がっている。これらのコンデンサの静電容量をC1、C2,C3、C4とすると、これらのコンデンサを適宜並列および/または直列に接続することにより、コンデンサの容量を増減できる。
図72は、図70および図71に示す静電容量型圧力センサーの動作および原理を示す図である。図72に示す構造は図70とは少し異なっているが、本質的には同じ構造である。図72においては、凹部5112(5112−1、2、3、4)は基板5111内で第1面から第2面へ貫通した貫通溝となっている。この貫通溝5112(5112−1、2、3、4)の形成方法は記述済である。たとえば、薄板5126を基板5111の第2面に貼りつけて基板5111の第1面に形成したレジストパターン等をマスクにして垂直エッチングやインプリント法を用いて第2面に到達する貫通溝を形成する。その後薄板5126を取り付けた状態で第1面側に薄板5121を取り付ける。その後薄板5126は別の薄板へ貼り替えても良い。あるいは、たとえば、薄板5126を基板5111の第2面に貼りつけないで、基板5111の第1面に形成したレジストパターン等をマスクにして垂直エッチングやインプリント法を用いて第2面に到達する貫通溝を形成する。その後、第1面側および第2面側に薄板を貼りつけても作製できる。
圧力伝達孔5122(5122−1、2、3、4)から圧力P1、P2、P3、P4を凹部5112(5112−1、2、3、4)へ導入すると、これらの凹部の間の基板側壁5111(5111−1、2、3)が凹部内の圧力差によって変形する。たとえば、P1<P2のとき、図72に示すように基板側壁5111−1は凹部5112−1側へ膨らむ。また、P2>P3のとき、図72に示すように基板側壁5111−2は凹部5112−3側へ膨らむ。圧力差がないときにおける凹部5112−2の凹部の幅(電極間距離)をd1、P1<P2における基板側壁5111−1の変形量をd2、P2>P3における基板側壁5111−2の変形量をd3とする。d2、d3は凹部5112の深さによって異なり、その中心付近で最も大きくなるが、d2、d3をこの平均量と考えれば、圧力差がないときの容量C2=εS/d1は圧力差を受けてC2’=εS/(d1+d2+d3)に変化(この場合は減少)する。(εは誘電率、Sは電極面積)基板側壁5111−1および5111−2の厚みが同じで、P1=P3とすれば、d2=d3と考えて良い。この静電容量変化と圧力の関係を予め求めておけば、未知の圧力差で変形したときに静電容量の変化から圧力差を求めることができる。
凹部5112−3について見ると、P2>P3のときには基板側壁5111−2が凹部5112−3側へ凹み(変形量d5)、P4>P3のときには基板側壁5111−3が凹部5112−3側へ凹む(変形量d6)。圧力差がないときにおける凹部5112−3の凹部の幅(電極間距離)をd4とすればd5、d6は凹部5112の深さによって異なり、その中心付近で最も大きくなるが、d5、d6をこの平均量と考えれば、圧力差がないときの容量C2=εS/d4は圧力差を受けてC2’=εS/(d4―d4―d5)に変化(この場合は増加)する。(εは誘電率、Sは電極面積)基板側壁5111−2および5111−3の厚みが同じで、P2=P4とすれば、d5=d6と考えて良い。この静電容量変化と圧力の関係を予め求めておけば、未知の圧力差で変形したときに静電容量の変化から圧力差を求めることができる。
尚、図70における実施形態では、基板5111−4や5111−5については、変形は殆どしないので、凹部5112−1および5112−4の静電容量変化は片側だけの変形になる。以上のように本発明の凹部(あるいは貫通溝)を作製して、これらの凹部間の基板側壁が凹部間の圧力差によって変形するときに静電容量が変化するので、この変化量から圧力を求めることができる。これらの凹部を多数並べて同じ圧力となる凹部における電極を並列に接続していけば、全体の容量は1つ1つの容量の和となるので1つ1つの変化量が小さくても全体としては大きな容量変化となるので、感度を増大できる。また、凹部の幅を基板側壁の変化の限界量以下で作製すれば、基板側壁は凹部の幅(の半分)以上には変形しないので、基板の歯会や損傷を防止することができる。また、圧力伝達孔や電極は第2面側にも作製できるので、(特に図70に示す場合はどちらでも可能)設計しやすい。
本発明の静電容量型圧力センサーもインプリント法で作製できることは上述の通りであるが、ヤング率の低いポリマーやゴム等を用いれば寸法が小さくても大きく変形するので静電容量を大きく変化させることが可能となる。上述の繰り返しにはなるが、基板内に深さが10〜500μm、縦および横が約1000μm以下の凹部を形成し、各種ポリマーやゴムを凹部に塗布またはディップ等して凹部内を埋めて、これらの液状またはゲル状の状態にインプリント法で凹部を形成する。あるいは、ポリマーやゴム等を硬化してからフォトリソ法およびエッチング法で凹部を形成する。次にこれらのポリマーやゴムは絶縁体である場合には導電体膜を積層する。導電体膜をパターニングした後絶縁膜を積層してこれらの凹部に薄板で蓋をして、引き出し電極を形成する。これらのポリマーやゴムは絶縁体でない場合には絶縁膜を形成した後に導電体膜を積層する。導電体膜をパターニングした後絶縁膜を積層してこれらの凹部に薄板で蓋をして、引き出し電極を形成する。これによって、たとえば、シリコン基板等の半導体基板内に上記の埋め込み圧力センサーを形成できる。
埋め込んだ凹部の基板側壁の上面を半導体基板内に形成したICや各種デバイスの高さとほぼ等しくすれば、圧力センサーの導電体膜はIC等のデバイスに用いる導電体膜と兼用も可能である。特にポリマーやゴムの硬化温度を半導体プロセスの最終温度(最終保護膜の形成温度)である約300℃〜500℃より低く設定できるので、IC等の素子を形成した後に圧力センサーを同じIC等のチップ内に搭載することができる。このときは、IC等の最終保護膜を形成した後に、半導体基板内に凹部を形成して圧力センサーを形成すれば良い。圧力センサーの導電体膜形成時に、IC等のパッドに配線接続すれば良い。あるいは、ポリマーやゴムの硬化温度が半導体プロセスの最終温度より高ければ、半導体プロセスで使用する最終の導電体膜の形成前に半導体基板内に凹部を形成して、ポリマー等を凹部へ入れてインプリント法やフォトリソ法で圧力センサー用の凹部を形成した後、圧力センサー用の導電体膜と半導体プロセスで使用する最終の導電体膜とを兼用することができる。これらの導電体膜をパターニングした後、最終保護膜(絶縁膜)を形成し、薄板で圧力センサー用凹部に蓋をすれば良い。尚、上述した方法は、本発明のすべての圧電センサー(これ以降に記載するものも含める)に適用できることは言うまでもない。
図73は圧力センサーのパッケージの一例を示す図である。図73(a)はその平面図であり、図73(b)はその側面断面図であるが、この図73に示すように、圧力センサー(圧電素子)の外側は、基板5131(5131−1)である。その内側に凹部(または貫通溝)5132−2が基板側壁5131−2を取り囲む。一番内側に凹部(または貫通溝)5131−1がある。凹部5131−1の内側側面の基板側壁5131−2に導電体膜5133(5133−1、2、3、4)が積層されている。説明に不要な膜は記載していない。内側凹部5132−1と外側凹部5132−2との間の基板側壁5131−2が、これらの凹部間の圧力差によって変形する。図73(a)では4つの基板側壁が存在していて、各基板側壁は圧力差に応じて内側へ凹むか外側へ膨らむかして変形する。この変形に応じて、静電容量型圧力センサーの場合には、これらの対向する電極間(たとえば、5133−1と5133−3、5133−2と5133−4)の容量変化を検出する。また、基板側壁に圧電体膜を用いた場合はこれまで説明したような膜構造を構成して、圧電体膜の両側に形成した電極に引き出された電荷量を検出する。基板側壁に形成した圧電体膜を用いた場合はこれまで説明したような膜構造を構成して、圧電体膜の両側に形成した電極に引き出された電荷量を検出する。尚、図74に示すように(図74(a)は平面断面図、図74(b)は側面断面図であり、膜構造は既述しているので必要な部分だけ記載している)、圧電体基板または圧電体膜の場合には、同じ方向に変化しているので、凹部5132−1の内側側面の電極5133−2はすべて接続しても良く、基板側壁5131−2の外側にも圧電体膜や電極を作製でき、それらの電極5133−1は接続しておくことができる、凹部内部でパターニングする必要がないので、プロセスも簡単である。
基板側壁の側面にピエゾ抵抗素子を形成してブリッジ回路を組んだピエゾ抵抗型圧力センサーも基板側壁の各面および表面・裏面に作製できるので、検出感度が増大する。尚、図73や図74に示す実装パッケージの外壁5131−1の厚みは使用する圧力で変形しないようにする。図73や図74は、圧力伝達孔や引き出し電極を記載していないが、必要な場所に適宜形成すれば良い。このような実装パッケージは極めて小型に形成でき、半導体プロセスを適用でき、プロセスが極めて簡単である。従って、1枚の基板から多数形成できる。たとえば、0.5mm*0.5mm*0.5mmの実装パッケージを実現でき、6インチウエハであれば約65000個形成でき、極めて安い圧力センサーを実現できる。
図75は、本発明の縦型圧力動作素子を用いたインクジェットデバイスを示す図である。基板内に第1面(表面)から第2面に貫通し、側面が基板側壁で囲まれた複数の凹部を有し、基板側壁の上面には第1の薄板が付着し、基板側壁の下面には第2の薄板が付着し、この凹部の上部は第1の薄板で被われており、凹部の下部は第2の薄板で被われている。上部が第1の薄板で、下部が第2の薄板で、側面が基板側壁で囲まれた一部の凹部(インク溜まり凹部)は、その上部を被っている第1の薄板の一部が外側と貫通しており、その貫通孔(インク導入孔)を通して第1の薄板の上方からインクが当該凹部へ導入されるようになっており、通常インク溜まり凹部内にはインクが入っている。また、当該凹部の下部を被っている第2の薄板の一部が外側と貫通しており、その貫通孔(インク放滴孔)を通して当該凹部からインクを放滴できるようになっている。インクが導入される当該凹部の側面を構成する側壁の少なくとも一部を隔てて隣接する凹部(隣接凹部)は、側面が基板側壁で囲まれた凹部であり、この隣接凹部の上部は第1の薄板で被われており、隣接凹部の下部は第2の薄板で被われている。この隣接凹部の上部を被っている薄板の一部が外側と貫通しており、その貫通孔(圧力伝達孔)を通して隣接凹部の圧力を高くしたり低くしたりできるようになっている。圧力伝達孔を通して隣接凹部の圧力を一定圧力(たとえば、1気圧)より低くすると隣接凹部とインク溜まり凹部を隔てている基板側壁が隣接凹部側に膨らみ、その結果外部のインク液容器からインク導入孔を通してインク溜まり凹部内へインクが流入する。一定量インク溜まり凹部内へインクが溜まったら、隣接凹部の上部を被う薄板に開いている圧力伝達孔を通して隣接凹部の圧力を一定圧力(たとえば、1気圧)より高くすると隣接凹部とインク溜まり凹部を隔てている基板側壁がインク溜まり凹部側に膨らみ、インク放滴孔を通してインク溜まり凹部内のインクは外側へ滴出される。
本発明の凹部を形成した基板を用いたインクジェット用素子の構造は上述したようにこれまで説明した圧力センサーと同じであるが、さらにその製造方法の概要を以下に説明する。図75に示すように、第2の薄板2015を基板2011の第2面(裏面)に付着させる。基板2011はシリコン基板等の半導体基板、ガラス基板やプラスチック基板等の絶縁基板、鉄や銅や合金や金属等の導電体基板など種々適用できる。(あるいは、第2の薄板上に形成したポリマーやセラミック等にインプリント法を用いたものでも良い。)第2の薄板2015もシリコン基板等の半導体基板、ガラス基板やプラスチック基板等の絶縁基板、鉄や銅や合金や金属等の導電体基板など種々適用できる。また、基板2011および第2の薄板2015は接着剤(金属、低融点ガラス等を含む)を用いて付着したり、常温接合、拡散融合、高温接合、陽極接合を用いて付着することができる。たとえば、シリコン基板とガラス基板は電界をあけて陽極接合をして強固に付着させることができる。
その後、基板2011の第1面にフォトリソ法またはインプリント法により厚いレジストパターンを形成する。基板2011上に絶縁膜を形成してからレジストパターンを形成しても良い。このレジストの厚みは、この後基板2011をエッチングするので、このエッチング中に消失しないでパターン形状を維持できる厚みにする。このフォトレジストパターンを用いて、基板2011を異方性エッチング(ドライエッチング)する。フォトレジストパターンにできるだけ忠実に基板2011の凹部を形成するために、凹部は基板面(第1面)に略垂直にパターン寸法通りにできるだけ近くエッチングすることが望ましい。基板2011は第2面を貫通するまでエッチングする。第2面には第2の薄板2015が付着しているので、この第2の薄板をエッチングストッパーとしてエッチングする。たとえば、第2の薄板2015のエッチングレートを基板2011のエッチングレートより遅くするようなエッチング条件で基板2011をエッチングすれば、基板2011をエッチングした後のオーバーエッチング時に第2の薄板2015を余りエッチングさせずに基板全体の凹部において基板2011の貫通した凹部(この場合は貫通溝と呼ぶ方が良い)を形成できる。また、エッチング種(エッチングによって生成したイオン種)をモニターして、基板2011の凹部2017が貫通すると特定のエッチング種の発生が少なくなるので、これをエンドポイントとして用いることによって、オーバーエッチング量を小さくできる。
次にレジストやエッチング時に凹部2017の内部に生成した堆積物(エッチングによって生成した残渣など)を除去して、第1面に第1の薄板2013を付着させる。この付着も接着剤(金属、低融点ガラス等を含む)、常温接合、拡散融合、高温接合、陽極接合を用いて行なうことができる。基板2011がシリコンで第1の薄板2013がガラスの場合(あるいは、これらが逆の場合も)は陽極接合を用いてこれらの基板同士を強固に付着させることができる。また、接着剤を用いるときは、基板2011の第1面を下にして接着剤液に第1面を接触させて凹部の間の側壁上面のみに接着剤を付着させて第1の薄板と付着させると良い。あるいは、第1の薄板の付着面側に接着剤を塗布した後で、第1の薄板2013を下側にして基板の第1面をその上方から付着するのが良い。あるいは、スクリーン印刷においてマスクを用いて第1の薄板の必要な部分にのみ接着剤を塗布する方法もある。
第2の薄板はエッチングにより凹部2017の底面がエッチングされているので、問題があれば、取り外して別の薄板と取り替えても良い。交換する場合には、第2の薄板2015と基板2011との付着には、たとえば熱可塑性(熱軟化性)の接着剤を用いると良い。ガラス転移温度をTgとしたとき、第2の薄板2015と基板2011とを付着させた後は取り外すまで、Tg以下の温度でプロセスを行なう。特に第1の薄板2013を付着させる温度をこのTg以下にする必要がある。さらに、第2の薄板2015と基板2011とを離す場合にはTg以上の温度にする必要があるので、この温度で第1の薄板2013と基板2011の接着性が悪くならないようにする必要がある。あるいは、接着剤として低融点金属や低融点合金を用いても良い。ただし、この後のプロセスは融点または軟化温度Tm以下の温度で行なう必要がある。
以上のようにして、第1面から第2面に貫通した凹部(貫通溝)を多数有する基板2011を作製できた。この貫通した凹部の第1面側(上部、あるいは表面側)は第1の薄板2013で塞がれている。この貫通した凹部の第2面側(下部、あるいは裏面側)は第2の薄板2015で塞がれている。この凹部には、インクが入る凹部2017(2017−2、5)と圧力を印加する凹部2017(圧力印加凹部)(2017−1、3、5)がある。インクが入る凹部(インク容器凹部)2017(2017−2、5)と圧力を印加する凹部2017(2017−1、3、5)との間の基板側壁2011(2011−2、3、5、6)は圧力変化により変形でき、しかもその印加された圧力によってインクが入っている凹部2017(2017−2、5)からインクを外部へ滴出できるような厚みにする。
次に、第1の薄板2013に圧力伝達孔およびインク導入孔を形成する。第1の薄板2013上にフォトリソ法またはインプリント法を用いて圧力伝達孔およびインク導入孔を形成するためのレジストパターンを形成する。このレジストパターンを用いて第1の薄板2013をエッチング除去し、圧力伝達孔2019(2019−1、3、4)およびインク導入孔2019(2019−2、5)を作製する。第1の薄板2013の厚みが厚いときは、研磨法や全面ウエットエッチング法や全面ドライエッチング法を用いて、レジストパターニング前に薄くしても良い。あるいは、レジストパターニング後に最初に高速エッチング(ウエットまたはドライ)を行ないこの領域のみ薄くしておく方法もある。あるいは凹部の幅は10μm以上にすることもできるので、ドリルで開ける方法、レーザー光で開ける方法、あるいは高圧水流で開ける方法もある。
レーザー光で開ける場合には、第1の薄板2013の上方からレーザーを照射するが、下側の第2の薄板2015にも孔があく可能性があるので、それを防止するために第1の薄板2013と第2の薄板2015の材料を変えて、第1の薄板2013にはレーザー光により孔をあけることができるが、第2の薄板2015には同じレーザー光により孔をあけることができないようにすれば良い。あるいは、本発明のインクジェットデバイスでは、インク容器凹部2019(2019−2、5)はインク導入孔とインク排出孔{第2の薄板2015側の2023(2023−1、2)}が必ず両方あいているので、第2の薄板2015の下面側からレーザー照射を行なえば、第1の薄板2013および第2の薄板2015の孔を同時にあけることができ、プロセス(工程)も少なくなる。この孔形成において高いマスク合わせ精度が要求されない(合わせ誤差が1〜3μmでも良い)場合は、レーザー光や高圧水流で孔をあけるときは、メタル等のマスクを用いても良い。さらに異方性の強いドライエッチングであれば、フォトリソ法またはインプリント法を用いずにメタルマスク等の外付けマスクでも良いので、プロセスが簡単になる。
次に、第2の薄板2015にインク排出用のインク排出孔2023(2023−1、2)をあける。このインク排出孔は圧力印加凹部2017(2017−1、3、4)にはあけない。このインク排出孔2023の形成方法は、上述のインク導入孔の形成方法と同様で良い。第1の薄板2013および第2の薄板2015に孔を形成した後、必要なら孔の形状をなめらかにする手段を講じる。たとえば、第1の薄板2013および第2の薄板2015がガラスの場合には、ライトフッ酸処理を行なうと良い。次に、インク導入孔2019(2019−2、5)にインク通路管やインク溜まり容器2021(2021−1、2)を接続したり、圧力伝達孔2019(2019−1、3、4)には圧力導入管を接続したり、圧力排出孔2023(2023−1、2)にも必要な部材を接続する。
図76は、本発明のインクジェットデバイスを平面的に示したものである。図76(a)は、その一例であり、直方体形状の凹部2017(2017−1、2、3)が隣接して平行に配列されている。図76(b)もその一例であり、正方形状(あるいは直方体形状)のインク容器凹部2017−2を、基板側壁2011−2を介して圧力印加凹部2017(2017−1、3)が取り囲んでいる。図76(a)において、インク容器凹部2017−2と圧力印加凹部2017−1との間の側壁2011−2の幅(厚み)をWc(=y)、長さをLc(=a)、深さ(基板厚みに等しい)をHsub(=Hc=h)とすると、この基板側壁2011−2はダイヤフラムと考えて良く、この基板側壁が両側の凹部の圧力差zによって撓むときに、この基板側壁2011−2の最大たわみはおおよそ以下の計算式で与えられる。
Wmax=α*z*h2a2/(Ey3)
基板2011がシリコン基板であるとき、ヤング率Eは100GPa〜200GPa(結晶方位依存性あり)である。h=a=300μmのとき(正方形状ダイヤフラム)には、α=0.0138となり、Wmaxは約600z/y3(μm)となる。ただし、zをMpa単位で示し、yはμm単位で示す。たとえば、zを1Mpa(約1atm)、yを5μmとするとWmax=約5μmとなる。また、zを1Mpa(約1atm)、yを3μmとするとWmax=約22μmとなる。h=a=400μmのとき(正方形状ダイヤフラム)には、Wmaxは約1890z/y3(μm)となる。たとえば、zを1Mpa(約1atm)、yを5μmとするとWmax=約15μmとなる。また、zを1Mpa(約1atm)、yを3μmとするとWmax=約70μmとなる。h=300μm、a=600μmのとき(長方形状ダイヤフラム)には、α=0.0277となり、Wmaxは約1200z/y3(μm)となる。ただし、zをMpa単位で示し、yはμm単位で示す。たとえば、zを1Mpa(約1atm)、yを5μmとするとWmax=約10μmとなる。また、zを1Mpa(約1atm)、yを3μmとするとWmax=約45μmとなる。以上のように圧力差を与えるとインク容器凹部2017−2は凹んだり膨らんだりするので、インク容器凹部2017−2内部へインクを吸入でき、インク容器凹部2017−2内部のインクを外に吐出できる。上記の式は理論式であるから、この式等を考慮して設計して、できあがったものでデータを取り、実際値と理論式を近づければ精密なインクジェットデバイスを作製できる。
上述のたわみは基板がシリコンのときであるが、この材料を種々変更することにより、より高精度のインクジェットデバイスも作製できる。たとえば、ポリカーボネートのヤング率は2.2GPaであるから、ダイヤフラムが300μm*300μmの正方形形状の場合、Wmax≒5x104*(z/y3)であるから、基板側壁厚みを10μmとすると圧力差1気圧で約50μmという大きな変形となる。さらにゴムの場合には、ヤング率が0.01〜0.1GPaであるから、たとえば、0.022GPaとするとダイヤフラムが300μm*300μmの正方形形状の場合、Wmax≒5x106*(z/y3)であるから、基板側壁厚みを30μmとすると圧力差0.1気圧でも約20μmという大きな変形となる。
以上のように、ゴムやプラスチック等の場合はヤング率がシリコン等に比べて非常に小さくなるので、余り微細なものを作製しなくても高精度のインクジェットデバイスを作製することができる。しかもゴムやプラスチック等の場合はインプリント法を用いて微小で精度の高いサイズのものを作製できる。インプリント法を用いて本発明のインクジェットデバイスを作製ずる方法は、図59において説明した内容と同様である。本発明のインクジェットデバイスでは、基板611が第2の薄板2015に対応する。また、絶縁膜633は形成しなくても良い。インプリント法で凹部を形成した後、凹部底部に膜が残る(図59における615B)ので、凹部を基板(第2薄板)側に貫通させるために全面エッチングしてこの残膜を除去する。また、第2薄板および第1薄板は必要な場合は、研磨法やエッチング法等により所望の厚さまで薄くする。さらに本発明のインクジェットデバイスは凹部(貫通凹部)を形成した後に絶縁膜を形成する必要はない(保護膜として形成しても良いが)し、導電体膜を形成しない。従って、弾力性のあるゴムも使用することができる。ゴムとしては、各種ゴム(天然ゴムや合成ゴム)であり、たとえばシリコーンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、合成天然ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、多硫化ゴム、ウレタンゴム、天然ゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴムを使用することができる。
図76(a)に示す構造の場合は、インク容器凹部2017は基板側壁2011−2および2011−3を挟んで両側の圧力印加凹部2017−1および2017−3から(2方向から)圧力を受けてインク容器凹部2017にインクを吸入したり、排出したりする。これに対して図76(b)に示す構造の場合には、インク容器凹部2017は、基板側壁2011−2および2011−3を挟んで周囲を圧力印加凹部2017−1および2017−3の4方向から囲まれているので、4方向から圧力を受けてインク容器凹部2017にインクを吸入したり、排出したりする。凹部2017の深さHsub、長さLc、基板側壁幅Wcが、図76(a)および102(b)で等しいとすれば、図76(b)に示すインク容器凹部の方が、図76(a)に示すインク容器凹部よりも約2倍の力でインクを吸入したり排出したりできる。逆の見方をすると、吸入量や排出量が同じとすれば、図76(b)に示すインク容器凹部の方が、図76(a)に示すインク容器凹部よりも小さな力(圧力差)で行なうことができる。また、図76(b)に類似する実施形態として、インク容器凹部2017−2の形状が円筒形の場合には、周囲を囲んでいる圧力印加凹部2017より等しく力を受けるので、圧力差による力の分配が均等で効率の良いインク吸入や排出ができる。
図77は、本発明のインクジェットデバイスの動作方法を示す図である。インク溜まり容器2021(2021−1、2)は(ここにインク通路管を介しても良い)インク導入孔2019(2019−2,5)を通してインク容器凹部2017(2017−2、5)に接続し、さらにインク排出孔2023(2023−1、2)を通して外側へ排出されるようになっている。圧力は、エアーやその他の気体(窒素など)、あるいは液体を圧力導管等を介して圧力発生器(図示していないが、たとえば、高圧ガス容器や、ガス圧縮器、液体圧縮器等)等で発生した圧力P1、P2、P3を、圧力伝達孔2019(2019−1、3、4)を通して圧力印加凹部2017(1、3、4)へ伝達する。インク容器凹部2017内の圧力をPqとしたとき、Pq>P1であればインク容器凹部2017−2と圧力印加凹部2017−1との間の基板側壁2011−2は圧力印加凹部2017−1側へ変形し(膨らみ){図77(a)}、Pq<P1であれば基板側壁2011−2はインク容器凹部2017−2側へ変形する(膨らむ、すなわち、インク容器凹部2017−2は凹む){図77(b)}。
従って、Pq>P1とすると、インク溜まり容器2021−1からインク容器凹部2017へインクが吸入される。この後、Pq<P1とするとインク容器凹部2017−2内のインクはインク排出孔2023−1を通して、インクジェットの滴2025(2025−1)が外側へ排出される。インク導入孔2019−2またはインク通路管に開閉バルブを備えて、インクをインク容器凹部2017−2内へ導入するときにこの開閉バルブを開けて、インク容器凹部2017−2内のインクを外側へ排出するときにこの開閉バルブを閉じても良く、このようにすればインク容器凹部2017−2内のインクの出入を効率良く行なうことができる。また、インク排出孔2023−1またはインク排出管(図示していないが、インク排出孔2023から外側へ通じる排出通路)に開閉バルブを備えて、インクをインク容器凹部2017−2内へ導入するときにこの開閉バルブを閉じて、インク容器凹部2017−2内のインクを外側へ排出するときにこの開閉バルブを開けても良く、このようにすればインク容器凹部2017−2内のインクの出入を効率良く行なうことができる。
凹部2017−3が凹部2017−1と別個の空間になっているとき(たとえば、図76(a)に示す場合)、圧力印加凹部2017−3の圧力P2は圧力印加凹部2017−1の圧力P1と別個に制御できるので、インク容器凹部2017−2内へのインクの出入量をコントロールすることができる。また、別のインク容器凹部2017−5内へのインクの出入もその周りの圧力印加凹部2017−4の圧力P3を制御して、他の圧力P1やP2とは別個にコントロールすることもできる。尚、圧力を別個に制御する場合には、たとえば、圧力印加凹部2017−3と圧力印加凹部2017−4との間の基板側壁2011−4の幅を厚くして圧力変動しても余り変形しないようにすれば、P2およびP3はお互いに影響を受けずにコントロールできる。図77の場合には、P3の圧力はインク容器凹部2017−5内の圧力と同じ状態にしているので、これらの凹部の間の基板側壁2011−5は変形しない。尚、このときインク導入孔2019−5やインク排出孔2023−2につながる通路等へ設けた開閉バルブを連動させておけば(このときは閉じておく)、インクを外側へ排出させないようにすることを確実に実行できる。
カラー印刷を行なう場合は、インクを混合して種々の色彩を作る必要があるが、本発明を適用して、たとえば、3原色(赤、青、黄)と黒のインクを入れたインク容器凹部2017(2017−11、12、13、14)を図78に示すように配列できる。この配列を適当数配置してインクジェット装置を作製する。この図78に示す1つの配列を1dotと考えることができる。インク容器凹部2017(2017−11、12、13、14)の外側の圧力印加凹部2017(2017−15、16、17、18)の圧力を制御してそれぞれのインク容器凹部2017(2017−11、12、13、14)から各種のインクを吐出する。それぞれインク吸入用および排出用のバルブおよび圧力を制御して、色彩に対応して各種の色インクを吐出し、色彩を形成させる。インク容器凹部2017の大きさをLc1*Lc2とし、圧力印加凹部2017の大きさをLc3*Lc2とし、それぞれの凹部間の距離をWcとすると、1dotの大きさは、{2(Lc1+Lc3)+4Wc}*{2Lc2+2Wc}となる。Lc1=10μm、Lc2=20μm、Lc3=10μm、Wc=5μmとすると、1dotの大きさは、60μm*50μmとなる。従って、解像度は423dpi*508dpiとなり、かなり良い印刷解像度となる。尚黒色だけならば、1dotの大きさは、(Lc1+Lc3+2 Wc)*(Lc2+Wc)であるから、上記の値の場合は1dotの大きさは、30μm*25μmであるから、解像度は846*1016dpiとなり、非常に良い印刷解像度となる。本発明のインクジェットデバイスはさらに微細化が可能なので、さらに良い解像度も実現できる。
図79は、ダイヤフラム型アクチュエータを用いたインクジェットデバイスを示す図である。ここで、基板2011は圧電体である。圧電体基板は、圧電効果を示す物質の基板であり、たとえば、チタン酸ジルコン酸鉛(ジルコニウム酸・チタン酸鉛(Pb(ZrXTi1−X)O3 0<x<1)とも呼ばれ、いわゆるPZT)、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ニオブ酸カリウム、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、タングステン酸ナトリウム、酸化亜鉛、リチウムテトラボレート等のペロブスカイト構造やタングステン−青銅構造を持つセラミックスであり、あるいは石英、水晶、ロッシェル塩、トパーズ、電気石(トルマリン)、ベルリナイト(リン酸アルミニウム)、窒化アルミニウム、リン酸ガリウム、ガリウムヒ素などであり、あるいは圧電性ポリマー{たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)}などである。これらの基板から凹部2017(2017−1、2、3、4、5)を形成する方法はこれまでに説明した方法と同様である。
圧電体基板2011内に凹部2017(2017−1、2、3、4、5)を形成した後、導電体膜2031を積層する。この導電体膜2031は個々の基板側壁の表面に電界を発生して基板側壁(特に、インク容器凹部2017−2および圧力印加凹部2017−1との間の基板側壁2011−2、インク容器凹部2017−2および圧力印加凹部2017−3との間の基板側壁2011−3、インク容器凹部2017−5および圧力印加凹部2017−4との間の基板側壁2011−5)を変形させることを目的とする。次にフォトリソ法またはインプリント法等およびエッチング法等を用いて、基板側壁2011(2011−1、2、3、4、5、6)の上面で導電体膜2031をエッチングし、変形しようとする基板側壁の両側に存在する凹部(特にインク容器凹部および圧力印加凹部)内の導電体膜同士が接続しないようにする。すなわち、2032(2032−1、2、3、4、5、6)で導電体膜2031を切断する。次に絶縁膜2034を積層し、導電体膜2031を保護する。当然導電体膜2031を切断した部分2032(2032−1、2、3、4、5、6)にも絶縁膜2034が積層する。
次に第1の薄板2013等を圧電基板2011上に付着させ、圧力伝達孔2019(2019−1、3、4)およびインク導入孔2019(2019−2、5)をあける。次に第2の薄板2015にインク排出孔2023(2023−1、2023−2)をあけ、インク導入孔2019(2019−2、5)にインク溜まり容器2021(2021−1、2)等を接続する。ここでインク排出孔2023(2023−1、2023−2)をあけたときに、インク容器凹部底面で導電体膜2031が露出する。{たとえば、2033(2033−1、2)}導電体膜2031がインクに接触して腐食したり反応したりして問題を起こす場合、さらには導電体膜2031に電界をかえたときにインクが接触して問題を起こす場合には、インク排出孔2023(2023−1、2023−2)をあけた後で、この部分に絶縁膜2033を積層すれば良い。CVD法やPVD法を用いれば露出した導電体膜2031の上に絶縁膜を積層できる。導電体膜2031を積層した後、または導電体膜2031をパターニングした後で第2の薄板2015にインク排出孔2023(2023−1、2023−2)をあけ、その後で絶縁膜2034を積層すれば、絶縁膜2033と兼用できるので、工程増にはならない。あるいは、導電体膜2031をパターニングするときにインク排出孔2023(2023−1、2023−2)をあける部分の導電体膜を除去しておき、インク排出孔2023(2023−1、2023−2)をあけても導電体膜を露出させないようにすれば良い。あるいは、貫通溝2017を形成した後、導電体膜2031を形成する前に第2の薄板2015を取り外した状態で導電体膜を積層すれば、第2の薄板2015には導電体膜は積層しない。その後で第2の薄板2015を付着させて、インク排出孔2023(2023−1、2023−2)をあければ良い。あるいは、前もってインク排出孔2023(2023−1、2023−2)をあけた第2の薄板を付着しておけば良く、インク排出孔2023(2023−1、2023−2)にも導電体膜2031は積層するがその上を絶縁膜2034でカバーするので問題は発生しない。
次に、あるいは、第1の薄板2013に圧力伝達孔やインク導入孔をあけるときに、導電体膜2031の各電極2031(2031−1、2、3、4、5、6、7)から引き出し電極・配線を形成すべき領域における第1の薄板2013を除去しておき、その後で絶縁膜2034にコンタクト孔をあけて導電体膜2031を露出させて、この部分から引き出し電極を取りだす。たとえば、新たにこのコンタクト孔に導電体膜を形成して電極・配線を形成したり、この部分にワイヤボンディングして引き出し電極・配線とする。
このようにして圧電体基板側壁2011−2、3、5等の両側に電極を形成すれば、これらの両側の電極に電界をかけると基板側壁2011−2、3、5等は変形し、電界の向き(電極の極性の相違による)によって、インク容器凹部が膨らんだり凹んだりする。たとえば、電極2031−2および2−31−3の間に電界をかけてインク容器凹部2017−2を膨らまして、インク溜まり容器2021−1からインク導入孔2019−2を通してインク容器凹部2017−2内にインクを吸入する。このとき圧力印加凹部2017−1は凹むので圧力印加凹部2017−1内の気体は圧力伝達孔2019−1を通して外側へ出ていく。次に両側の電極に逆の電界かけてインク容器凹部2017−2を凹ませて、インク容器凹部2017−2内のインクを、インク排出孔2023−1を通して外側へ排出される。このとき圧力印加凹部2017−1は凹むので圧力伝達孔2019−1を通して圧力印加凹部2017−1内に外側から気体が入っていく。さらに、インク導入孔2019−2やインク排出孔2023−1につながるインク通路に開閉バルブを設けて、導電体膜電極への電界印加と連動させれば、より精度良くインクの吸入や排出をすることができる。
図80は、基板側壁2011(2011−1、2、3、4、5、6)状に圧電体膜2039を形成し、その上下に形成した導電体膜2031および導電体膜2035を電極として、これらの電極に電界をかけて圧電体膜2039を変形させて、基板側壁(特にインク容器凹部2017−2の両側の基板側壁2011−2および2011−3、インク容器凹部2017−5の基板側壁2011−5)を一緒に変形させることにより、インク容器凹部2017−2または2017−5にインクを吸入したり、インク容器凹部2017−2または2017−5からインクを排出したりする。構造および製造方法は、図75〜図79に示したものと同様であり、インクを用いたり、圧力をかけない所が異なる。また、その動作も逆で、圧電体膜2039の上下の導電体膜2031および2035に電位をかけて基板側壁を動かす点で異なる。
第2の薄板2015を付着した基板2011に圧力印加凹部2017(2017−1、3、4)およびインク容器凹部2017(2017−2、5)を形成し、これらの凹部の間に基板側壁2011(2011−1、2、3、4、5、6)を形成する。次に、導電体膜2031を形成し、同じ極性にならない導電体膜2031は、基板側壁上面の2032(2032−1、2、3、4、5、6)で切断する。その他の場所でも導電体膜2031で必要な配線を形成する。次に、圧電体膜2039を形成し、さらに導電体膜2035を形成し、同じ極性にならない導電体膜2031は、基板側壁上面の2037(2037−1、2、3、4、5、6)で切断する。その他の場所でも導電体膜2035で必要な配線を形成する。次に導電体膜2035を保護するための絶縁膜2036を形成する。その後、第1の薄板2013を基板2011上に付着させ、圧力導入孔2019(2019−1、3、4)やインク導入孔2019(2019−2、5)や導電体膜2031および2035からの引き出し電極を形成する領域などで第1の薄板2013をエッチング除去する。第2の薄板についても、インク排出孔2023(2023−1、2)を形成する。このインク排出孔2023を形成すると導電体膜2031や2035が露出するので、この露出部をカバーする絶縁膜2033(2033−1、2)および2038(2038−1、2)を形成する。しかし、導電体2035をパターニングした後で、第2の薄板のインク排出孔2023(2023−1、2)を形成し、その後で絶縁膜2036を形成すれば、この導電体膜2031および2035の露出部をカバーできるので、新たな絶縁膜2033や2038を形成しなくても良い。その後インク溜まり容器等必要な部材を形成または接続する。
図80に示すインクジェットデバイスでは、基板側壁2011−2、2011−3、2011−5の両側に形成した導電体膜2031(下部電極)、圧電体膜2039、導電体膜2035(上部電極)の構造において、上部電極と下部電極の間に電界をかけると圧電体膜2035が変形する。この変形に応じて基板側壁が変形して、インク容器凹部2017−2、2017−5が膨らんだり、凹んだりするので、これらのインク容器凹部2017−2、2017−5内部へインクが吸入したり、インク容器凹部2017−2、2017−5内部のインクが外部へ吐出したりする。インク容器凹部2017−2、2017−5へつながるインク導入孔2019−2、2019−5やインク排出孔2023−1、2023−2に接続するインク通路等へ開閉バルブをつけて、これらの開閉バルブと上部および下部電極への電圧印加を連動させれば、さらに精度良くインクの出入を行なうことができる。以上はインクを対象として説明してきたが、インクを含む種々の液体にも適用できる。従って、これらのインクジェットデバイスは液体吐出デバイスでもある。さらに液体だけでなく気体にも適用できるので、気体吐出デバイスとも言えるし、まとめて液体および気体を含む媒体吐出デバイスでもある。
以上に示すインクジェットデバイスの説明から分かるように、本発明の凹部または貫通溝はポンプデバイスを作製できる。図81は、そのポンプデバイスの一実施例を示す図である。圧電体基板2041内に第1面から第2面に貫通する貫通溝(または貫通凹部)2042(2042−1、2、3、4)が形成され、これらの貫通溝2042(2042−1、2、3、4)の間に基板側壁2041(2041−2、3、4)が形成される。図81において、貫通溝2042−1において基板側壁2041―2と対向する基板側壁を2041−1とし、貫通溝2042−4において基板側壁2041―4と対向する基板側壁を2041−5とする。貫通溝2042(2042−1、2、3、4)の内側面、すなわち基板側壁の側面に導電体膜2043(2043−1、2、3、・・・、8)が積層され、さらにその上に絶縁膜2044(2044−1、2、3、・・・、8)が積層されている。圧電体基板2041の第1面(上面または表面)に第1の薄板2047が付着している。圧電体基板2041の第2面(下面または裏面)に第2の薄板2048が付着している。第1の薄板内部には、図示しない外側(または別の貫通溝)と通じる通路2046(2046−1)が形成されており、貫通溝2042(2042−1)へつながっている。また、第1の薄板内部には、貫通溝2042(2042−2)から貫通溝2042(2042−3)へ通じる通路2046(2046−2)が形成されている。さらに、第1の薄板内部には、貫通溝2042(2042−4)から図示しない外側(または別の貫通溝)と通じる通路2046(2046−3)が形成されている。これらの通路2046(2046−1、2、3)には開閉バルブ2049(2049−1、3、5)を設けても良い。
第2の薄板2048内部には、貫通溝2042(2042−1)から貫通溝2042(2042−2)へ通じる通路2045(2045−1)が形成されている。さらに、第2の薄板2048内部には、貫通溝2042(2042−3)から貫通溝2042(2042−4)へ通じる通路2045(2045−2)が形成されている。これらの通路2045(2045−1、2)には開閉バルブ2049(2049−2、4)を設けても良い。基板側壁2041の側面に形成された導電体膜2043(2043−1、2、3、・・・、8)にはそれぞれ引き出し配線・電極が形成されていて、個別に電圧を印加できるようになっている。これらの導電体膜2043(2043−1、2、3、・・・、8)に電圧を印加すると圧電体基板側壁2041(2041−1、2、3、4、5)は貫通溝の内側または外側へ変形できる。従って、圧電体基板側壁2041(2041−1、2、3、4、5)を動かす方向と電圧印加の大きさおよび極性(プラスかマイナス)が一致する場合には、引き出し配線・電極を接続することができる。通常は、同じ貫通溝内の導電体膜は同じ大きさで同じ極性となっているので、1つの貫通溝の動作は、プラスとマイナスの電圧を交互に入れ変えて(すなわち、交流的に印加する)導電体膜に印加すると、基板側壁は貫通溝内部に窪んだり膨らんだりする。
まず、開閉バルブ2049(2049−2)を閉じ、開閉バルブ2049(2049−1)を開けて、導電体膜2043−1および2043−2へ電圧を印加し、貫通溝2042−1を膨らませると、通路2046−1を通じて外部(または別の貫通溝)から液体や気体を貫通溝2042−1内へ吸入できる。次に、開閉バルブ2049(2049−2)を開けて、開閉バルブ2049(2049−3)を閉じて、導電体膜2043−3および2043−4へ電圧を印加し、貫通溝2042−2を膨らませる。一方、導電体膜2043−1および2043−2へ電圧を印加し、貫通溝2042−1を凹ませる。このとき、基板側壁2041−2の動きは一致しているので問題はない。この結果貫通溝2042−1内に入っている気体または液体は通路2045−1を通じて貫通溝2042−2へ入っていく。次に開閉バルブ2049−2を閉じて、開閉バルブ2049−3を開け、開閉バルブ2049−4を閉じて、導電体膜2043−3および2043−4に電圧を印加して、貫通溝2042−2を窪ませ、さらに導電体膜2043−5および2043−6に電圧を印加して、貫通溝2042−3を膨らませる。この結果、貫通溝2042−2内に入っていた気体または液体は貫通溝2042−3へ導かれる。これらの導電体膜への電圧印加によって基板側壁2041−3の動きは同じ方向であるから問題ない。
次に開閉バルブ2049−3を閉じて、開閉バルブ2049−4を開け、開閉バルブ2049−5を閉じて、導電体膜2043−5および2043−6に電圧を印加して、貫通溝2042−3を窪ませ、さらに導電体膜2043−7および2043−8に電圧を印加して、貫通溝2042−5を膨らませる。この結果、貫通溝2042−3内に入っていた気体または液体は貫通溝2042−4へ導かれる。これらの導電体膜への電圧印加によって基板側壁2041−4の動きは同じ方向であるから問題ない。次に開閉バルブ2049−4を閉じて、開閉バルブ2049−5を開けて、導電体膜2043−7および2043−8に電圧を印加して、貫通溝2042−4を窪ませると、貫通溝2042−4内に入っていた気体または液体は通路2046−3を通って外側(または別の貫通溝)へ出ていく。
このように、隣接する貫通溝を通路でつなぎ、その間に開閉バルブを設けておき、基板側壁の側面の電極へ電圧を印加し、これと連動するように開閉バルブを動作させることにより、貫通溝内の液体や気体を移動させることができるので、非常に微小なポンプを作ることができる。尚、開閉バルブを設けなくても、基板側壁の側面電極への電圧印加だけで、隣接する貫通溝の動作を逆にすることができる(すなわち、一方が凹めば他方を膨らませることができるし、この逆も同じである)ので、液体や気体を連続的に一方向へ移動させることができる。薄板内の通路は、あらかじめ通路を作製した薄板を基板に付着しても良い。薄板内の通路はレーザーで開けることもできるし、1つの薄板(A薄板)にその表面に通路を作ってからもう1枚の薄板(B薄板)を貼り合わせて作ることができる。あるいはレーザー光を用いれば薄板内部に所望の通路を形成することもできる。開閉バルブはA薄板上に配置してからB薄板を付着させれば良いし、薄板内へ配線すれば電気的に制御できる。また開閉バルブを圧電体素子で形成しても良い。
図96は、ポンプデバイスの別の実施例を示す図である。図81と同じ働きをするものに関しては同じ符号をつけており、図示すると見にくい場合は符号を省略しているので図81も参照して欲しい。圧電体基板2041内に第1面から第2面に貫通する貫通溝(または貫通凹部)2042(2042−1、2、3、4、5、6,7)が形成され、これらの貫通溝2042(2042−1、2、3、4、5、6,7)の間に基板側壁2041(2041−6、7、8、9、10、11)が形成される。図96において、貫通溝2042−1において基板側壁2041―6と対向する基板側壁を2041−1とし、貫通溝2042−4において基板側壁2041―11と対向する基板側壁を2041−5とする。貫通溝2042(2042−1、2、3、4、5、6,7)の内側面、すなわち基板側壁の側面に導電体膜2043(2043−9、10、11、・・・、21)が積層され、さらにその上に絶縁膜2044が積層されている(この絶縁膜は図96では省略している)。圧電体基板2041の第1面(上面または表面)に第1の薄板2047が付着している。圧電体基板2041の第2面(下面または裏面)に第2の薄板2048が付着している。第1の薄板内部には、図示しない外側(または別の貫通溝)と通じる通路2046(2046−1)が形成されており、貫通溝2042(2042−1)へつながっている。また、第1の薄板内部には、貫通溝2042(2042−2)から貫通溝2042(2042−3)へ通じる通路2046(2046−2)が形成されている。さらに、第1の薄板内部には、貫通溝2042(2042−4)から図示しない外側(または別の貫通溝)と通じる通路2046(2046−3)が形成されている。これらの通路2046(2046−1、2、3)には開閉バルブ2049(2049−1、3、5)を設けても良い。
第2の薄板2048内部には、貫通溝2042(2042−1)から貫通溝2042(2042−2)へ通じる通路2045(2045−1)が形成されている。さらに、第2の薄板2048内部には、貫通溝2042(2042−3)から貫通溝2042(2042−4)へ通じる通路2045(2045−2)が形成されている。これらの通路2045(2045−1、2)には開閉バルブ2049(2049−2、4)を設けても良い。基板側壁2041の側面に形成された導電体膜2043(2043−9、10、11、・・・、21)にはそれぞれ引き出し配線・電極が形成されていて、個別に電圧を印加できるようになっている。これらの導電体膜2043(2043−9、10、11、・・・、21)に電圧を印加すると圧電体基板側壁2041(2041−1、5、6、7、8、9、10、11)は貫通溝の内側または外側へ変形できる。従って、圧電体基板側壁2041(2041−1、5、6、7、8、9、10、11)を動かす方向と電圧印加の大きさおよび極性(プラスかマイナス)並びにタイミングが一致する場合には、引き出し配線・電極を接続することができる。通常は、同じ貫通溝内の導電体膜は同じ大きさで同じ極性となっているので、1つの貫通溝の動作は、プラスとマイナスの電圧を交互に入れ変えて(すなわち、交流的に印加する)導電体膜に印加すると、基板側壁は貫通溝内部に窪んだり膨らんだりする。
まず、開閉バルブ2049(2049−2)を閉じ、開閉バルブ2049(2049−1)を開けて、導電体膜2043−1および2043−10、11へ電圧を印加し、貫通溝2042−1を膨らませると、通路2046−1を通じて外部(または別の貫通溝)から媒体(液体や気体)を貫通溝2042−1内へ吸入できる。このとき、貫通溝2042−1および2042−2の間にある貫通溝2042−5はその容積を変動するが、その変動分は第1の薄板2047に開けられた外気との連通孔2040(2040−1)を通して出入するので、貫通溝2042−5の圧力変動はないので、圧電体基板側壁2041(2041−6)の上記の変化には影響を与えない。従って、圧電体基板側壁2041(2041−6)上の導電体膜へ印加された電圧にほぼ従って圧電体基板側壁2041(2041−6)は変形する。
次に、開閉バルブ2049(2049−2)を開けて、開閉バルブ2049(2049−1、3)を閉じて、導電体膜2043−12、13および2043−14、15へ電圧を印加し、貫通溝2042−2を膨らませる。一方、導電体膜2043−1および2043−10、11へ電圧を印加し、貫通溝2042−1を凹ませる。このとき、貫通溝2042−1および2042−2の間にある貫通溝2042−5はその容積を変動するが、その変動分は第1の薄板2047に開けられた外気との連通孔2040(2040−1)を通して出入するので、貫通溝2042−5の圧力変動はないので、圧電体基板側壁2041(2041−6、7)の上記の変化には影響を与えない。従って、圧電体基板側壁2041(2041−6、7)上の導電体膜へ印加された電圧にほぼ従って圧電体基板側壁2041(2041−6、7)は変形する。また、貫通溝2042−2および2042−3の間にある貫通溝2042−6はその容積を変動するが、その変動分は第2の薄板2048に開けられた外気との連通孔2040(2040−2)を通して出入するので、貫通溝2042−6の圧力変動はないので、圧電体基板側壁2041(2041−8)の上記の変化には影響を与えない。従って、圧電体基板側壁2041(2041−8)上の導電体膜へ印加された電圧にほぼ従って圧電体基板側壁2041(2041−8)は変形する。この結果貫通溝2042−1内に入っている気体または液体は通路2045−1を通じて貫通溝2042−2へ入っていく。
次に開閉バルブ2049−2を閉じて、開閉バルブ2049−3を開け、開閉バルブ2049−4を閉じて、導電体膜2043−12、13および2043−14、15に電圧を印加して、貫通溝2042−2を窪ませ、さらに導電体膜2043−16、17および2043−18、19に電圧を印加して、貫通溝2042−3を膨らませる。このとき、貫通溝2042−1および2042−2の間にある貫通溝2042−5はその容積を変動するが、その変動分は第1の薄板2047に開けられた外気との連通孔2040(2040−1)を通して出入するので、貫通溝2042−5の圧力変動はないので、圧電体基板側壁2041(2041−7)の変化には影響を与えない。従って、圧電体基板側壁2041(2041−7)上の導電体膜へ印加された電圧にほぼ従って圧電体基板側壁2041(2041−7)は変形する。また、貫通溝2042−2および2042−3の間にある貫通溝2042−6はその容積を変動するが、その変動分は第2の薄板2048に開けられた外気との連通孔2040(2040−2)を通して出入するので、貫通溝2042−6の圧力変動はないので、圧電体基板側壁2041(2041−8、9)の変化には影響を与えない。従って、圧電体基板側壁2041(2041−8、9)上の導電体膜へ印加された電圧にほぼ従って圧電体基板側壁2041(2041−8、9)は変形する。さらに貫通溝2042−3および2042−4の間にある貫通溝2042−7はその容積を変動するが、その変動分は第1の薄板2047に開けられた外気との連通孔2040(2040−3)を通して出入するので、貫通溝2042−7の圧力変動はないので、圧電体基板側壁2041(2041−10)の変化には影響を与えない。従って、圧電体基板側壁2041(2041−10)上の導電体膜へ印加された電圧にほぼ従って圧電体基板側壁2041(2041−10)は変形する。この結果、貫通溝2042−2内に入っていた気体または液体は貫通溝2042−3へ導かれる。
次に開閉バルブ2049−3を閉じて、開閉バルブ2049−4を開け、開閉バルブ2049−5を閉じて、導電体膜2043−16、17および2043−18、19に電圧を印加して、貫通溝2042−3を窪ませ、さらに導電体膜2043−20、21および2043−22に電圧を印加して、貫通溝2042−4を膨らませる。このとき、貫通溝2042−2および2042−3の間にある貫通溝2042−6はその容積を変動するが、その変動分は第2の薄板2048に開けられた外気との連通孔2040(2040−2)を通して出入するので、貫通溝2042−6の圧力変動はないので、圧電体基板側壁2041(2041−9)の変化には影響を与えない。従って、圧電体基板側壁2041(2041−9)上の導電体膜へ印加された電圧にほぼ従って圧電体基板側壁2041(2041−9)は変形する。また、貫通溝2042−3および2042−4の間にある貫通溝2042−7はその容積を変動するが、その変動分は第1の薄板2047に開けられた外気との連通孔2040(2040−3)を通して出入するので、貫通溝2042−7の圧力変動はないので、圧電体基板側壁2041(2041−10、11)の変化には影響を与えない。従って、圧電体基板側壁2041(2041−10、11)上の導電体膜へ印加された電圧にほぼ従って圧電体基板側壁2041(2041−10、11)は変形する。さらに貫通溝2042−4および2042−5の間にある貫通溝2042−7はその容積を変動するが、その変動分は第1の薄板2047に開けられた外気との連通孔2040(2040−3)を通して出入するので、貫通溝2042−7の圧力変動はないので、圧電体基板側壁2041(2041−11)の変化には影響を与えない。従って、圧電体基板側壁2041(2041−11)上の導電体膜へ印加された電圧にほぼ従って圧電体基板側壁2041(2041−11)は変形する。この結果、貫通溝2042−3内に入っていた気体または液体は貫通溝2042−4へ導かれる。
次に開閉バルブ2049−4を閉じて、開閉バルブ2049−5を開けて、導電体膜2043−20、21および2043−22に電圧を印加して、貫通溝2042−4を窪ませると、貫通溝2042−4内に入っていた気体または液体は通路2046−3を通って外側(または別の貫通溝)へ出ていく。このとき、貫通溝2042−3および2042−4の間にある貫通溝2042−7はその容積を変動するが、その変動分は第1の薄板2047に開けられた外気との連通孔2040(2040−3)を通して出入するので、貫通溝2042−7の圧力変動はないので、圧電体基板側壁2041(2041−11)の変化には影響を与えない。
このように、隣接する貫通溝を通路でつなぎ、その間に開閉バルブを設けておき、基板側壁の側面の電極へ電圧を印加し、これと連動するように開閉バルブを動作させることにより、貫通溝内の液体や気体を移動させることができるので、非常に微小なポンプを作ることができる。尚、開閉バルブを設けなくても、基板側壁の側面電極への電圧印加だけで、隣接する貫通溝の動作を逆にすることができる(すなわち、一方が凹めば他方を膨らませることができるし、この逆も同じである)ので、液体や気体を連続的に一方向へ移動させることができる。薄板内の通路は、あらかじめ通路を作製した薄板を基板に付着しても良い。薄板内の通路はレーザーで開けることもできるし、1つの薄板(A薄板)にその表面に通路を作ってからもう1枚の薄板(B薄板)を貼り合わせて作ることができる。あるいはレーザー光を用いれば薄板内部に所望の通路を形成することもできる。開閉バルブはA薄板上に配置してからB薄板を付着させれば良いし、薄板内へ配線すれば電気的に制御できる。また開閉バルブを圧電体素子で形成しても良い。
また、図81や図96で示した貫通溝をつなぐ通路は、第1の薄板および第2の薄板へ交互につないでいるが、平面的に考慮すれば第1の薄板(または第2の薄板)だけに通路および開平バルブを設けて液体や気体等の媒体を移動させることができる。(図95を参照)従って、図81や図96で示したような貫通溝でなくても貫通しない凹部でも良い。
さらに図81や図96では圧電体基板を用いたが、圧電体基板ではない基板も本発明を使用できる。すなわち、これまでに種々の所で説明した様に、基板内に複数の凹部(貫通溝を含む)を形成し、隣接する凹部間の基板側壁上に第1の導電体膜、その上に圧電体膜、その上に第2の導電体膜を形成することにより本発明のポンプデバイスを作製できる。
あるいは、圧電体基板や圧電体膜を用いないでも圧力変動だけで本発明のポンプデバイスを作製できる。たとえば、図96に示した構造と類似する構造で圧力変動を用いたポンプデバイスを実現できる。この場合は図96に示した導電体膜も必要がない。(基板側壁に絶縁膜(保護膜として)を設けても良い)まず、開閉バルブ2049−1を開けて開閉バルブ2049−2を閉じ、圧力伝達孔2040−1から圧力を抜いて貫通溝2042−5の圧力を低くして(貫通溝2042−1の圧力よりも)基板側壁2041−6を貫通溝2042−5側へ変形して貫通溝2042−1を膨らませると、通路2046−1を通して外部から媒体(液体や気体)が貫通溝2042−1へ導入される。
次に開閉バルブ2049−1を閉じ、開閉バルブ2049−2を開けて、圧力伝達孔2040−1から圧力を印加して圧力変動貫通溝2042−5の圧力を高くして(貫通溝2042−1の圧力よりも)基板側壁2041−6を貫通溝2042−1側へ変形して貫通溝2042−1を凹ませ、さらに圧力伝達孔2040−2から圧力を抜いて貫通溝2042−6の圧力を低くして(貫通溝2042−2の圧力よりも)基板側壁2041−8を貫通溝2042−6側へ変形させると、基板側壁2041−7は貫通溝2042−2側へ変形しているので、両方でほぼ相殺されて貫通溝2042−2の容積は余り変わらない。この結果、貫通溝2042−1の媒体は貫通溝2042−2へ移動する。これを繰り返すことによって媒体を移動させることができる。尚、媒体が移動する貫通溝の間に2つの圧力変動貫通溝を設けることにより、媒体を押し出す方の貫通溝を窪ませて、同時に媒体を導入する方の貫通溝を膨らませることができる。たとえば、貫通溝2042−1および貫通溝2042−2の間に圧力変動貫通溝2042−5を2つ(2042−5−1、2)設けて、圧力を別々に印加できるようにすれば良い。
図81に示すポンプは、基板2041が圧電体基板であるが、これまで説明したように、圧電体基板は圧電膜であっても良い。あるいは、基板2041は圧電体以外の基板や厚膜でも良く、その場合は上述してきたように基板側壁の側面に導電体膜および圧電膜を形成したものでも良い。あるいは、図75に示したような圧力差を用いて図81に示す構造のポンプを作製しても良い。たとえば、図75に示すインク導入孔2019−2および2019−5を接続し、インク排出孔2023−1および2023−2を接続していけば良い。このように本発明のポンプは圧電体基板を用いても作製できるし、圧電膜を用いても作製できるし、圧力差を用いても作製できる。
図82は、本発明の凹部または貫通溝を用いた微小な液体混合容器または気体混合容器の一実施形態を示す図で、基板の第1面に平行な平面図で示す。この実施形態は図81に示す実施形態の応用である。図82は1組の微小液体(気体)混合容器を示すが、基板内に多数の混合容器を並べて形成することができる。1組の微小液体(気体)混合容器は、中心部に円筒形の貫通溝2052(2052−5)が形成され、その周りを円筒形の貫通溝2052(2052−4)が取り囲んでいる。この貫通溝2052(2052−4)の周りを円筒形の基板側壁2051(2051−5)が取り囲んでいる。基板側壁2051(2051−5)の周囲は、4組の貫通溝2052(2052−1、2、3)、2052(2052−6、7、8)、2052(2052−9、10、11)、2052(2052−12、13、14)が取り囲んでいる。これらの4組の貫通溝2052(2052−1、2、3)、2052(2052−6、7、8)、2052(2052−9、10、11)、2052(2052−12、13、14)は基板側壁2051−3、4、5、6によって区切られている。またこれらの4組の貫通溝2052(2052−1、2、3)、2052(2052−6、7、8)、2052(2052−9、10、11)、2052(2052−12、13、14)は、基板側壁2051(2051−1)によって囲まれている。この基板側壁2051(2051−1)は本発明の微小液体(気体)混合容器の外側枠体となっている。
1組の貫通溝2052(2052−1、2、3)において、貫通溝2052(2052−1)の両側に他の貫通溝2052(2052−2、3)が配置されている。貫通溝2052(2052−1)と他の貫通溝2052(2052−2、3)との間に基板側壁2051(2051−4、5)が作成されていて、この基板側壁2051(2051−4、5)が変形する。他の3組の貫通溝2052(2052−6、7、8)、2052(2052−9、10、11)、2052(2052−12、13、14)についても同様の構造である。これらの基板2051の第1面には、図81の断面図に示したものと同様に、第1の薄板が付着し、基板2051の第2面には第2の薄板が付着している。第1の薄板内または第2の薄板内には、図81の断面図に示したものと同様に、液体または気体の通路2053(2053−1、2)、通路2055が走っている。それぞれの通路2053(2053−1、2)および通路2055には開閉バルブ2054(2054−1、2)および2056を備えても良い。他の3組の貫通溝2052(2052−6、7、8)、2052(2052−9、10、11)、2052(2052−12、13、14)についても第1の薄板内または第2の薄板内には、図81の断面図に示したものと同様に、液体または気体の通路2053が走っている。またこれらの通路2053に開閉バルブを備えても良い。
通路2053(2053−1)の一方は、外側または他の貫通溝等に接続し。所望の液体または気体を導入できるようになっている。通路2053(2053−1)の他方は、貫通溝2052(2052−1)へ通じている。また通路2053(2053−2)は貫通溝2052(2052−1)から中央の円筒形貫通溝2052(2052−5)へ入っている。基板側壁2051(2051−4、5)は、図81等において説明したように、窪んだり膨張したりできるようになっている。この貫通溝2052(2052−1)の動作によって、さらにこれらに組み合わせた開閉バルブ2054(2054−1、2)の動作によって、通路2053(2053−1)を通じて外側等から液体や気体を貫通溝2052(2052−1)へ導入し、さらに通路2053(2053−2)を通じて貫通溝2052(2052−1)から円筒形貫通溝2052(2052−5)へ液体や気体を導入する。他の3組の貫通溝からも通路2053を通じて円筒形貫通溝2052(2052−5)へ各種の液体や気体を導入する。円筒形貫通溝2052(2052−5)はこれらの液体や気体の混合容器となっていて、異なる種々の液体や気体を混合させて種々の混合液や反応液を作製できる。円筒形貫通溝2052(2052−5)を囲む基板側壁2051(2051−6)は変形できるようになっているので、円筒形貫通溝2052(2052−5)へ液体等を導入するときは基板側壁2051(2051−6)を膨らませる。このとき開閉バルブ2054−2を動作させると効果的である。円筒形貫通溝2052(2052−5)内の混合液や反応液は、基板側壁2051(2051−6)を窪ませて、通路2055を通じて外側(または別の貫通溝)へ排出する。このとき開閉バルブ2056を動作させると効果的である。
図82に示す微小な液体混合容器または気体混合容器は、圧力差によって動作させる場合は、たとえば貫通溝2052(2052−2、3)に圧力を可変させて、貫通溝2052(2052−1)を窪ませたり凹ませたりすることができる。また、圧電基板を用いる場合は、基板2051が圧電基板となり、変形可能な基板側壁2051(2051−4、5)等や中央部の変形可能な基板側壁2051(2051−6)の側面に導電体膜を形成して、これらの両側目の導電体膜に電界をかけて圧電体基板側壁を変形させる。さらに、通常の基板等を用いる場合であって圧電体膜を用いる場合も、基板側壁の両側面に両側に電極・配線を持つ圧電体膜を積層して、これらの両側の電極にそれぞれ電界をかけて(片側だけでも良い)基板側壁を変形させる。
円筒形の基板側壁2051(2051−5)の周囲を囲んでいる、4組の貫通溝2052(2052−1、2、3)、2052(2052−6、7、8)、2052(2052−9、10、11)、2052(2052−12、13、14)は、混合前の各液体や気体を一次保管しておくような場所であり、ここから通路2053(2053−2)を通して混合容器である円筒形貫通溝2052(2052−5)へ投入液量を調節する。調節する方法は、圧力を調節したり、導電体膜へ印加する電圧を調節すれば良い。尚、開閉バルブ2054(2054−2)を用いれば、円筒形貫通溝2052(2052−5)の変形量を調節すれば各場所からそれぞれの液体や気体を導入できるから、円筒形基板側壁2051(2051−5)の外側の4組の貫通溝を省略できる。そのときは本発明の微小な液体混合容器または気体混合容器をさらに小型化を実現できる。
これらの微小な液体混合容器または気体混合容器をどの程度小型化できるか見積もる。もちろん、どの程度の液体や気体が必要かによっても決定されるが、現状で実現できるサイズから見積もってみる。たとえば、中央の円筒形貫通溝2052(2052−5)は直径が20μmはOKである。また、その周囲の基板側壁2051(2051−6)の幅は1μmでも可能だが、5μmとする。そのまわりの円筒形貫通溝2052(2052−4)の幅は10μm、それを囲む円筒形の基板側壁2051(2051−5)は変形しないようにするために10μmとする。これまでの大きさは、直径が70μmである。その外側の矩形の大きさは、片側25μm、外壁の基板側壁はこの容器のパッケージとなるので、片側25μmとする。従って、全体で170μmの正方形形状となる。基板内で切断のり白を入れて200μmの正方形形状になる。6インチ基板(150mm直径)の場合、約40万個の混合容器を作製できる。極めて安価な混合容器または反応容器ができる。しかも材料や厚みを最適化できればもっとサイズを小さくすることもできる。尚、基板2051の厚みは、10μm〜2000μm、好適には30μm〜1000μm、もっと好適には50μm〜500μmと適宜調節できる。また必要ならもっと薄くも厚くすることもできる。
本発明の媒体吐出デバイスやポンプデバイスは、半導体基板にも搭載することができる。上述した媒体吐出デバイスやポンプデバイスを形成した基板またはチップを半導体基板またはチップに付着して、必要な配線を行なえば半導体基板上に別に形成されたICやトランジスタを用いて媒体吐出デバイスやポンプデバイスを作動させることができる。あるいは、半導体基板に基板を付着させて前述したプロセスで媒体吐出デバイスやポンプデバイスを作製することもできる。あるいは、半導体基板に直接媒体吐出デバイスやポンプデバイスを形成すれば、半導体基板上に別に形成されたICやトランジスタと媒体吐出デバイスやポンプデバイスと接続して、媒体吐出デバイスやポンプデバイスを作動させることができる。あるいは、半導体基板上にポリマーまたはセラミックを積層して、これらのポリマーまたはセラミック内に媒体吐出デバイスやポンプデバイスを作製することもでき、半導体基板上に別に形成されたICやトランジスタと媒体吐出デバイスやポンプデバイスと接続して、媒体吐出デバイスやポンプデバイスを作動させることができる。このとき、ポリマーまたはセラミック内の凹部や貫通溝をインプリント法を用いて形成して、ポリマーまたはセラミック内に媒体吐出デバイスやポンプデバイスを作製することもでき、半導体基板上に別に形成されたICやトランジスタと媒体吐出デバイスやポンプデバイスと接続して、媒体吐出デバイスやポンプデバイスを作動させることができる。このとき、半導体基板に凹部を形成した後で、凹部内にポリマーまたはセラミックを形成すれば、作製した媒体吐出デバイスやポンプデバイスと半導体基板上に別に形成されたICやトランジスタとの接続の段差を小さくでき、接続部の接続配線等の段切れなどの問題も発生しないようにすることもできる。
このような容器の使用方法として、たとえば人間の血液を使った各種検査を簡便に迅速にしかも安価にできる。1つの貫通溝に血液を入れて(たとえば、指に針を少し指してほんの少し吸入する)、他の貫通溝には検査試薬を入れておく。中央の反応容器へ血液を導き(この量は極めて精密にコントロールできる)、さらに各種試薬を別の貫通溝から中央の反応容器へ導く。これらを混合し反応させてその結果を見ることができる。特に透明の薄板を用いれば、顕微鏡観察(最早肉眼では見えないだろう)で判定できる。あるいは光をあててその結果を知ることができる。外側の貫通溝が少なければ多く作製できるという自由度が高いのも本発明の利点である。図82では、中央に円筒形貫通溝を設けたが、矩形の貫通溝を混合容器としても良いし、他の任意の形状を適宜選択しても良い。また、配置の順番も、混合容器を中央に配置する必要もない。ただし、1個の実装形態は図82に示すような矩形(長方形または正方形)形状がウエハ上には形成しやすく切断(ダイシング)しやすいことは言うまでもない。
次に、本発明の基板内または厚膜材料内に形成した凹部を用いた加速度センサーについて説明する。図83は、本発明の加速度センサーの構造および製造方法を示す図である。本発明の加速度センサーは、図83に示す凹部を有する凹部側電極部3001および凸部を有する凸部側電極3002から構成される。まず、凹部側電極部3001の構造および製造方法を説明する。
図83(a)に示すように、基板3011上に絶縁膜3012を形成する。次に厚膜3013を形成する。基板3011は、半導体基板(たとえば、シリコン基板、窒化ガリウム基板(GaN)、ヒ化ガリウム(GaAs)等)、炭素基板、絶縁基板(たとえば、窒化アルミ(AlN)、ガラス、石英、セラミック等)、高分子、樹脂、金属(たとえば、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、各種合金)などであり、絶縁膜3012は、たとえばシリコン酸化膜(SiOx)、シリコン酸窒化膜(SiOxNy)、シリコン窒化膜(SiNy)であり、厚膜3013が絶縁膜である場合および基板3011と厚膜3013の密着性が良くかつ厚膜3013が基板3011に形成しやすい場合には形成しなくても良い。
厚膜3013は、凹部が形成できて、かつ通常の使用環境では形成した凹部の変形が小さい材料が良い。たとえば、ポリマー(PMMA(Polymethyl metacrylate)、PC(Polycarbonate)、PDMA(Polydimethylsiloxane)、・・・)、ガラス、セラミック等の絶縁体、あるいはシリコンや炭素やヒ化ガリウムやガリウムヒ素等の半導体、あるいは金属でも良い。厚膜3013の上にフォトレジスト等の感光性膜を形成して感光性膜をパターニングして、このパターニングされた感光性膜をマスクとして厚膜3013をエッチングして、いわゆるフォトリソ法とエッチング法を用いて厚膜3013内に凹部3017(3017−1、2、3、4)を形成する。尚、レジストパターンの形成方法には、インプリント法を用いることもできる。たとえば、レジスト(感光性でなくても良い)を塗布したり、シート状レジスト(感光性でなくても良い)を付着させたりして形成したレジスト膜に、凹部形成用のモールドを押しつけてレジストパターンを形成する。(凹部の底部に残る残膜はたとえば酸素プラズマの異方性全面エッチングで除去する)このパターニングされたレジスト膜をマスクとして厚膜3013をエッチングして、厚膜3013内に所望の深さの凹部3017を形成する。凹部3017の側面は静電容量素子の一方の電極となるので、できるだけレジストマスクパターン通りに垂直に形成する。凹部3017の側面の形状は通常平坦面が形成しやすいが、曲面でも良い。凹部3017の側面の形状が平坦面の場合は、矩形形状が形成しやすい。凹部3017の深さ(基板面に対して垂直方向)は、厚膜(基板)3013の厚みによって最大値は決定するが、加速度センサー素子の特性や形成しやすさなどによって最適化することが望ましい。たとえば、1μmの深さとすることも可能である。また、厚膜(基板)3013の厚みを厚くすれば、より深い凹部を形成できる。たとえば、500μmの厚膜(基板)3013であれば、500μmの深さ(この場合は貫通する)まで可能である。1000μmの厚膜(基板)3013であれば、1000μmの深さ(この場合は貫通する)まで可能である
厚膜3013として、各種の基板でも良い。(このときは、厚膜というより基板と称した方が良い。)各種の基板とは、たとえばシリコンや炭素やヒ化ガリウムやガリウムヒ素等の半導体基板、あるいはガラス、セラミック、プラスチック等の絶縁体基板、あるいは金属、合金等の金属基板である。これらの基板3013を基板3011に直接付着させても良いし、あるいは絶縁膜3012を介して付着させても良い。貼り合わせる方法として、接着剤を用いる方法、常温接合法、高温融着法、拡散接合法あるいは電解接合(陽極接合など)法でも良い。シリコン基板とガラス基板(石英基板を含む)の接合には陽極接合法で強固に接合させることができる。この基板内に凹部を形成する方法は上述と同様な方法で形成することができる。
しかし、プロセスを簡単にするために基板3011に基板3013を貼り合わせずに、基板3011に直接凹部3017を形成しても良い。その場合の凹部形成も上述した方法で形成できる。さらに以下のような方法で厚膜3013を形成し厚膜3013内に凹部3017を形成することもできる。
厚膜3013として、ポリマーを基板3011上の絶縁膜3012上に厚く形成することもできる。ポリマー3013の形成方法として、滴下法、スピンコーティング法、スクリーン印刷法等により塗布膜を形成する方法(塗布法)や、ポリマーのシート材を基板3011上の絶縁膜3012上に付着させる方法がある。ポリマーが熱可塑性ポリマーの場合には、塗布膜では凹部形成用のパターンが形成されたモールド(金型)を一定の圧力でポリマー3013へ押しつけ、加温してポリマーを軟化状態にする。あるいは、シート材または塗布膜では加温してポリマーを軟化状態にし、凹部形成用のパターンが形成されたモールド(金型)を一定の圧力でこの軟化したポリマー3013へ押しつける。次にポリマー3013を押圧した状態で温度を下げて(Tg以下)ポリマー3013を硬化した後、モールドを剥離すると、ポリマー3013内に凹部3017(3017−1、2、3、4)が形成される。このように凹部3017がポリマー厚膜3013内にインプリント法を用いて形成できる。
ポリマーが熱硬化性ポリマーの場合には、凹部形成用のパターンが形成されたモールド(金型)を一定の圧力で塗布膜であるポリマー3013へ押しつけ、次にポリマー3013を押圧した状態で加熱して熱硬化性ポリマーの硬化温度以上に加熱保持する。ポリマー3013を硬化した後に、モールドを剥離すると、ポリマー3013内に凹部3017(3017−1、2、3、4)が形成される。
ポリマーが光硬化性ポリマーの場合は、塗布膜に凹部形成用のパターンが形成されたモールド(金型)を一定の圧力でポリマー3013へ押しつけ、紫外線等の光をモールド型または基板3011の裏面側から照射し、モールド型または基板3011を通してポリマー3013へ光を照射してポリマー3013を硬化させる。ポリマー3013が硬化した後モールドを剥離すると、ポリマー3013内に凹部3017(3017−1、2、3、4)が形成される。
厚膜3013内の凹部3017は、厚膜3013としてセラミック等を用いても形成できる。たとえば、セラミックの微粒子(たとえば、アルミナ(Al2O3)微粒子、窒化アルミ(AlN)微粒子、シリカ(SiO2)微粒子)を溶媒中でペースト状やゲル状にして基板3011上の絶縁膜3012上に塗布する。スクリーン印刷法を用いて塗布が可能で、さらにマスクを用いれば所望の所だけに塗布できる。このペースト状またはゲル状の塗布膜へ、凹部形成用のパターンが形成されたモールド(金型)を一定の圧力で押しつける。次にペースト状またはゲル状の塗布膜が固化する温度異常に加熱し、塗布膜が固化した後モールドを剥離すると、ポリマー3013内に凹部3017(3017−1、2、3、4)が形成される。このように凹部3017がセラミック厚膜3013内にインプリント法を用いて形成される。
厚膜3013内の凹部3017は、厚膜3013としてガラスを用いても形成できる。たとえば、ガラスの薄板を厚膜3013を形成すべき領域において基板3011上の絶縁膜3012上に接着して、ガラス転移温度(Tg)以上の温度に加熱して軟化させる。あるいは溶融したガラスを基板3011上の絶縁膜3012上に付着させる。この軟化したガラス内または溶融したガラス内へ、凹部形成用のパターンが形成されたモールド(金型)を一定の圧力で押しつける。その後Tg以下へ温度を下げてガラスを固化した後にモールド(金型)を剥離させる。
厚膜3013内の凹部3017は、厚膜3013として金属を用いても形成できる。たとえば、金属の薄板を厚膜3013を形成すべき領域において基板3011上の絶縁膜3012上に接着して、金属の融点(Tm)付近または融点以上の温度に加熱して軟化または溶融させる。あるいは溶融した金属を基板3011上の絶縁膜3012上に付着させる。この軟化した金属内または溶融した金属内へ、凹部形成用のパターンが形成されたモールド(金型)を一定の圧力で押しつける。その後Tm以下へ温度を下げて金属を固化した後にモールド(型)を剥離させる。
次に、凹部3017が形成された厚膜3013のパターン上に絶縁膜3014、導電体膜3015を形成する。この絶縁膜3014は、厚膜3013が完全な絶縁体でない場合、導電体膜3015から厚膜3013へ電流が流れたりすることを防止する。厚膜3013の絶縁性が完全でも(導電体膜3015から厚膜3013へ電流が流れない)、厚膜3013と導電体膜3015の密着性が良くないときに、密着性を向上させる目的で形成する。従って、厚膜3013の絶縁性が完全で、かつ厚膜3013と導電体膜3015の密着性が良いときは、絶縁膜3014を形成しなくても良い。この絶縁膜3014は、たとえばシリコン酸化膜(SiOx)、シリコン酸窒化膜(SiOxNy)、シリコン窒化膜(SiNy)等であり、CVD法やPVD法等で積層する。絶縁膜3014の厚みは、凹部内で100nm〜500nmを確保できるようにする。
導電体膜3015は加速度センサーの一方の電極・配線となるものである。導電体膜3015は、たとえば、アルミニウム、銅、チタニウム、モリブデン、タングステン、白金、金、ニッケル等の金属膜またはこれらの合金膜であり、あるいは金属シリサイド膜、あるいは導電性多結晶シリコン膜等であり、CVD法やPVD法により形成する。絶縁膜3014(ない場合は、厚膜3013)と導電体膜3015の密着性向上用の密着性向上膜(これも導電体膜である)を積層してから、導電体膜3015を形成しても良い。たとえば、導電体膜3015が銅、金、白金の場合にはチタニウムや窒化チタン(TiN)を密着性向上膜として使用することができる。導電体膜3015の厚みは、凹部内で100nm〜500nmを確保できるようにする。
次に導電体膜3015のパターニングを行ない、不要な導電体膜3015をエッチング除去する。このパターニングは通常のフォトリソ法を用いてフォトレジストを塗布するか感光性シートを付着するかして必要な部分に感光性膜を残し、感光性膜を除去した部分の導電体膜3015をエッチング除去する。凹部3017内にある導電体膜3015もエッチングする。特に凹部3017の2つの側面に存在する導電体膜3015は接続しないようにする必要があるので、たとえば3031(3031−1、2、3、4)の部分にある導電体膜3015をエッチング除去する。図83においては、凹部3017の底部の領域となっているが、紙面に対して垂直方向にある2つの側面においても導電体膜3015をエッチング除去する。従って凹部3017の内部にも感光性膜を形成して、凹部3017の底部および紙面に対して垂直方向にある2つの側面においてその感光性膜を窓開けする必要がある。この感光性膜のパターニングはこれまでに説明した方法で行なうことができる。たとえば、電着レジストを用いる方法や、シート状の感光性膜を用いる方法がある。塗布法を用いた場合でも、凹部内の感光性膜は厚くなるが、凹部の底まで到達する光や電磁波を用いれば良い。このパターニング(窓開け)された感光性膜を用いて導電体膜3015をエッチング除去する。また、2つ以上の容量素子がある場合には、加速度に応じて容量が同じ方向へ変化する側の電極と逆方向へ変化する側の電極があるから、(たとえば、容量が増大する側、あるいは容量が減る側)逆に容量が変化する電極同士は接続しないようにする必要がある。そこで、図83に示すように、3032(1、2、3)でも導電体膜3023をエッチング除去する。このときの感光性膜のパターニングは平坦部のパターニングとなるから、特に問題なく感光性膜パターニングやエッチング除去は問題ない。尚、凹部3017内における導電体膜3015はエッチングしないで残すことができる場合もある(後に説明する)ので、その場合は、フォトリソ法およびその後の導電体膜3015のエッチングは凹部3017以外の平坦部であるから、プロセスは簡単である。
次に、導電体膜3015の上に絶縁膜3016を積層する。この絶縁膜3016は導電体膜3015の保護膜であると同時に他方の電極が接触したときの短絡を防止する。この絶縁膜3016は、たとえばシリコン酸化膜(SiOx)、シリコン酸窒化膜(SiOxNy)、シリコン窒化膜(SiNy)等であり、CVD法やPVD法等で積層する。絶縁膜3016の厚みは、凹部内で100nm〜500nmもあれば十分であるが、接触する可能性が高ければその頻度を考慮して膜厚を決定する。さらに平坦部において、凸部側電極部3002と接触する部分であるから、これも考慮し膜厚を決定する。従って平坦部では通常は500nm以上の厚みとすれば良い。導電体膜3015をエッチング除去した部分3031や3032も絶縁膜3016が積層されるから、側面電極3015の短絡は発生しない。
次に凸部側電極部の構造および製造方法を説明する。凸部側電極部3002の構造は、凹部側電極部3001の凹部3017(3017−1、2、3、4)に入り込む凸部3024(3024−1、2、3、4)を有し、さらに、凹部側電極部3001と凸部側電極部3002が結合したときに、凹部側電極部3001の平坦部(上部平坦部)と結合する平坦部3025を有する。また、凸部側電極部3002の基板および膜構成は、基本的には凹部側電極部3001と同じである。凸部側基板3021上に絶縁膜を形成し、その上に厚膜3022を形成する。図83においては凸部側基板3021上の絶縁膜は記載していない。
次に、厚膜3022内に凹部側電極部3001と結合したときに凹部3017(3017−1、2、3、4)に入り込む凸部3024(3024−1、2、3、4)を形成する。この凸部3024の形成方法は、凹部側電極部3001の凹部3017の形成方法と同じ方法を使用することができる。ただし、凸部側電極部3002の凸部3024は、凹部側電極部3001の凸部よりも領域は少ない。たとえば、フォトリソ法(インプリント法でレジストパターンを作製する方法も含む)とエッチング法を用いる方法や、各種のインプリント法を用いて凸部3024を形成する。あるいは、厚膜3022は各種の基板でも良く、凹部側電極部3001において説明したことと同様な方法で各種基板を凸部側電極部3002の基板3021上に、あるいは絶縁膜を介して付着させて、凸部3024をフォトリソ法(インプリント法でレジストパターンを作製する方法も含む)とエッチング法を用いて作製する。あるいは、直接凸部側電極部3002の基板3021に凸部3024を作製しても良い。
次にこれらの凸部3024および凹部3026(3026−1、2,3、4、5)の厚膜3022上に絶縁膜3028(図84に記載)を形成し、さらに導電体膜3023を形成する。この導電体膜3023は凹部側電極部3001の電極・配線3015の対向電極・配線となる。次にこの導電体膜3023の必要なパターニングを行なう。この導電体膜3023の必要なパターニングとは、加速度センサーを作製するための容量素子が形成されるような電極・配線のパターニングである。1つの容量素子において、加速度を受けたときに凸部3024が変形し容量が変化するが、一方側は電極間距離が小さくなるので容量が増えるが、他方側は電極間距離が大きくなるので容量が減るから、このまま接続していると容量変化が相殺されてしまうから、凹部3026の容量電極となる2つの側面における導電体膜3023は接続しないようにする必要がある。そこで、図83に示すように、凸部3024の先端部および紙面に垂直な方向における2つの側面部において、一部の導電体膜3023をエッチング除去する。すなわち、導電体膜3023のエッチング除去した領域3029(3029−1、2、3、4)を形成する。もちろん、平坦部でも接続しないように一部の導電体膜3023をエッチング除去する。また、2つ以上の容量素子がある場合にも、同じような容量変化を示す電極同士は接続しても良いが、異なる容量変化を示す電極同士は接続しないようにする必要がある。たとえば、図83に示すように、領域3030(3030−1、2、3、4)において、導電体膜3023をエッチング除去する。これらのパターニングも凹部側電極部3001の導電体膜3015をエッチング除去した方法(感光性膜のパターニングも含めて)と同様な方法を採用することができる。
次にこの導電体膜3023を保護するために絶縁膜3027を形成する。尚、図83ではこの絶縁膜3027は記載していないが図84で示している。この絶縁膜3027は対向電極である導電体膜3015との接触による短絡防止も兼ねている。既に凹部側電極部3001で導電体膜3015の保護膜および短絡防止膜として絶縁膜3016を形成している場合で、短絡や保護する必要がない場合にはこの絶縁膜3027は省略しても良い。尚、この絶縁膜3027を省略しても、凹部側電極部3001と凸部側電極部3002と結合させたときにその結合部となる凹部側電極部3001の平坦部3018と凸部側電極部3002の平坦部3025の間には接着剤等が介在するので、この接着剤等に保護膜や短絡防止用の材料(たとえば、絶縁性接着剤等)を用いれば、導電体膜3023の保護や短絡防止を行なうことができる。凸部側電極部3002の膜構成は凹部側電極部3001とほぼ同じであり(上述のように、一部の絶縁膜は省略して良い場合もある。)、同じ生成条件で形成しても良いので、プロセスコストを大幅に低減できる。たとえば、枚葉処理の装置では連続して処理可能であり、バッチ処理では一緒にプロセスが可能である。凸部側電極部3002の凸部3024は、凹部3017よりも小さな形状で、凹部3017の側面に対して凸部3024の側面が平行になることが望ましい。従って、凹部3017が矩形形状であれば、凸部3024もその凹部3017に入り込み、側面同士が平行(略平行)となるような矩形形状となるようにするのが良い。
尚、凹部は矩形形状(矩形柱形状、これは側面が平面となっている)、すなわち凹部の内側面は矩形柱形状の側面である他に種々の形状を有することができ、これに対向する凸部もこの凹部の中に離間して挿入されるとともに矩形柱形状の側面である他に種々の形状を有することができる。(凹部の内側面とこの中に挿入される凸部の外側面が平行に対向する。)たとえば、凹部は多角形形状(多角形柱形状、これは側面が平面となっている)、すなわち凹部の内側面は多角形柱形状の側面でも良く、これに対向する凸部もこの凹部の中に離間して挿入されるとともに、多角形形状(多角形柱形状)、すなわち多角形形状(多角形柱形状)の側面でも良い。あるいはたとえば、凹部は曲面形状(曲面柱形状、これは側面が曲面となっている)、すなわち凹部の内側面は曲面柱形状の側面でも良く、これに対向する凸部もこの凹部の中に離間して挿入されるとともに、凹部は曲面形状(曲面柱形状、これは側面が曲面となっている)、すなわち曲面形状(曲面柱形状)の側面でも良い。たとえば、この曲面は円柱側面や楕円柱側面である。(凹部の内側面とこの中に挿入される凸部の外側面が平行に対向する。)
次に、図83(b)に示すように、凹部側電極部3001と凸部側電極部3002を結合する。凹部側電極部3001の凹部3017は、凸部側電極部3002の凸部3024の大きさより大きく、凹部側電極部3001の凹部3017の数は、凸部側電極部3002の凸部3024の数以上に存在し、凹部側電極部3001と凸部側電極部3002を結合したときに、凸部側電極部3002のすべての凸部3024は凹部側電極部3001の凹部3017に入るような位置関係になっている。凹部側電極部3001の凹部3017の所定位置に凸部側電極部3002の凸部3024が配置されるように、凹部側電極部3001と凸部側電極部3002を合わせる。たとえば、凹部側電極部3001の合わせマーク(凹部パターンでも良い)を凸部側電極部3002の合わせマーク(凸部パターンでも良い)に合わせながら、凹部側電極部3001と凸部側電極部3002を接近させて、凸部側電極部3002の凸部3024(3024−1、2、3、4)を凹部側電極部3001の凹部3017(3017−1、2、3、4)内に入れて、凸部側電極部3002の平坦部3025と凹部側電極部3001の平坦部3018を付着させる。
合わせマークのアライメントは、たとえば凹部側電極部3001および/または凸部側電極部3002を通る透過光により合わせることにより非常に精度の良い合わせができる。(合わせ精度を0.3μm以下にすることもできるので、本加速度センサーでは問題ないレベルである。)従って、このような直接的合わせを行なう場合は、基板3011や基板3021をこの合わせを行なう透過光に対して透過率の高い材料を選定する。たとえば、これらの基板3011や基板3021にガラス基板や石英基板、あるいはプラスチック基板を使用すれば良い。さらに、導電体膜3015や3023は一般には光の透過率が低いので、ダミーの凹部パターン(凹部側電極部3001側)や凸部パターン(凸部側電極部3002側)を形成しておき、これらのパターンの周囲の導電体膜を、導電体膜エッチングプロセスのときに同時に除去しておき、この領域を使用して光を透過させてアライメントをすれば良い。アライメントに透過光を使用できないときは、間接的アライメント(たとえば、凹部側電極部3002のパターンを記憶しておき、その情報に基づいて凸部側電極部3002を合わせる)を行なうか、反射波を用いてアライメントを行なえば良い。
これらの平坦部の付着は、図83(b)に示すように接着剤3026を介して付着させることができる。たとえば、凹部側電極部3001の平坦部3018(あるいは、凸部側電極部3002の平坦部3025)に接着剤を塗布法、スクリーン印刷法(マスクを用いて所定部分だけに接着剤を塗布する方法も含む)、ディップ法(接着剤液に凹部側電極部3001の平坦部3018をディップする方法で、凹部側電極部3001の平坦部3018を下側にして平坦部3018の必要な部分に接着剤をつける)、接着剤シートを付着させる方法{凹部領域をあらかじめ抜いた接着剤シートを凹部側電極部3001の平坦部3018(あるいは、凸部側電極部3002の平坦部3025)の所定部分だけに付着させる方法、接着剤シートを付着させて凹部側電極部3001の凹部領域(あるいは、凸部側電極部3002の凸部3024の領域)を含む凹部側電極部3001(あるいは、凸部側電極部3002)の所定部分を除去して凹部側電極部3001(あるいは、凸部側電極部3002)の接着したい部分だけに接着剤シートを形成する方法}などにより、これらの平坦部3018と3025の付着を行なう。接着剤の付着力を高めるために、この後熱処理を行なったりする。あるいは、他の接着法としてこれらの平坦部の付着は常温接合法や高温圧着法で行なうことができる。
図84は、図83に示す本発明の加速度センサーの一部を拡大して示した図である。図84に示す構造で本発明の加速度センサーの基本構造が構成される。図83では凸部側電極部3002の膜構造の絶縁膜は示していないが、図84ではそれらの絶縁膜3027や3028を示している。図84(a)に示すように、本発明の加速度センサーは、凸部側電極部3002の凸部3024が凹部側電極部3001の凹部3017に入り込んだ構造であり、凹部側電極部3001の凹部3017の周囲の側壁3013の上面は凸部側電極部3002の凸部3024の周囲の底面と接着剤3026等により付着しているので、凹部3017の空間は密閉されている。この気密空間では、凹部側電極部3001と凸部側電極部3002を結合したときの雰囲気空間がほぼ維持される。たとえば真空中(超低圧中)で結合すれば、この気密空間はほぼ真空状態となる。大気圧中で結合すれば、この気密空間はほぼ1気圧となっている。または、不活性ガス(窒素中、アルゴン中など)中であれば、この気密空間は不活性ガス雰囲気となる。
図85は、図83(b)および図84の状態を平面的に見た図である。凸部3024は、直方体形状(長辺方向Ly、短辺方向Wx、高さHz)で、直方体形状の凹部3017に入りこんでいて、力が働いていないときは、直方体形状の長辺側は凹部3017の長辺側と略平行であり、距離x1(左側)、x2(右側)だけ離間している。また、直方体形状の短辺側は凹部3017の短辺側と略平行であり、距離y1(上側)、y2(下側)だけ離間している。また、直方体形状の底面側は凹部3017の底面側と略平行であり、距離z1(下側)だけ離間している。
導電体膜3015が凹部3017内および凹部3017間で連続(接続)している場合、並びに導電体膜3023が凸部3024および凸部3024巻で連続(接続)している場合を検討する。すなわち、導電体膜のエッチング除去部分3029、3030、3031、3032がない場合である。このときは、凹部3017の側壁側および底面側の厚膜3013上に形成された導電体膜3015を一方の電極とし、凸部3024の側面および底面に形成された導電体膜3023を他方の電極として、これらの電極に挟まれた空間3017を容量空間として、容量が形成されている。
図85では、凹部3017は2つ(3017−1、2)、これに組み合わされた凸部3024も2つ(3024−1、2)だけ示しているが、他の凹部および凸部は省略している。また基板や薄膜の詳細も省略し(見にくいので)、凹部3017と凸部3024の関係や、それぞれの電極・配線3015、3023について記載している。図85から分かるように、導電体膜3015(破線でその輪郭を示す)は凹部3017全体(凹部の4つの側面および1つの底面)に形成されており、この凹部3017内ではパターニングせずつながっている。また、導電体膜3023(模様でその領域を示す)は凸部3024全体(凸部の4つの側面および1つの底面)に形成されており、この凸部3024内ではパターニングせずつながっている。また、導電体膜3015は隣接する凹部3017(3017−1、2、3、4等)はつながっていて、それらの引き出し電極が3037であり、コンタクト孔3036で接続している。一方、導電体膜3023は隣接する凸部3024(3024−1、2、3、4等)はつながっていて、それらの引き出し電極が3038であり、コンタクト孔3039で接続している。
距離x1(=dx1)で離間している容量空間を3041、この間の容量をCx1とすると、Cx1=εSx1/dx1{εは誘電率、Sx1は容量空間3041の電極面積(Sx1=Ly*Hz)}である。距離x2(=dx2)で離間している容量空間を3042、この間の容量をCx2とすると、Cx2=εSx2/dx2{εは誘電率、Sx2は容量空間3042の電極面積(Sx2=Ly*Hz)}である。距離y1(=dy1)で離間している容量空間を3044、この間の容量をCy1とすると、Cy1=εSy1/dy1{εは誘電率、Sy1は容量空間3044の電極面積(Sy1=Wx*Hz)}である。距離y2(=dy2)で離間している容量空間を3045、この間の容量をCy2とすると、Cy2=εSy2/dy2{εは誘電率、Sy2は容量空間3045の電極面積(Sy2=Wx*Hz)}である。距離z1(=dz1)で離間している容量空間を3043、この間の容量をCz1とすると、Cz1=εSz1/dz1{εは誘電率、Sz1は容量空間3043の電極面積(Sz1=Wx*Ly)}である。これらの容量は並列に接続しているので、凹部3017の側壁および底部に形成された電極3015と凸部3024の側面および底面に形成された電極3023との間の空間容量C3017は、C3017=Cx1+Cx2+Cy1+Cy2+Cz1となる。
本発明の加速度センサーはこの容量の変化により検出される。凸部3024がx方向(短辺方向)の力を受けた時、凸部3024はx方向(凸部3024の厚み、すなわちカンチレバーの厚み方向)へ変化するが、y方向(長辺方向)には変化しない。また、凸部3024がy方向(長辺方向)の力を受けた時も、凸部3024はy方向へ変化しにくい。すなわち、凸部3024は長辺方向(凸部3024の幅、すなわちカンチレバーの幅方向)には変化しにくいので、凸部3024はx方向(短辺方向)への変化量によって加速度(力)の大きさを判定できる。本発明の加速度センサーでは凹部3017の容量変化を検出して加速度の大きさを測定する。すなわち、凸部3024のカンチレバーが力を受けると凸部3024はx方向に変位するので、Cx1とCx2が変化し、他の容量Cy1、Cy2、Cz1は殆ど変化しない。つまりC3017=Cx1+Cx2+C0(C0は定数)と考えて良い。凸部3024が力を受けていないとき、すなわち凸部3024が鉛直下方に静止しているときがC3017は最も小さく、左右に(図85において)変位すると静電容量C3017が増加するので、この容量増加から力または変位量を知ることができる。容量変化が小さくても図84で示す1個の直方体形状の加速度センサーを多数並べていけば容量変化が大きくなるので精度良く検出できる。ただし、凸部3024の変位量が小さいときはCx1の変化量(ΔCx1)とCx2の変化量(ΔCx1)は同程度の大きさで符号が逆(増える場合と減る場合)になるので、C3017は殆ど変化しない。
たとえば、図83や図85で示すように、同じ大きさで同じ向きに形成された凹部3017、凸部3024を多数並べていけば良い。n個並べれば1個の加速度センサー単位のn倍の感度が出る。1つの凹部3017の幅を30μm、長さを100μmとし、隣接する凹部3017の間隔を10μm(x方向およびy方向とも)とすると、x方向440μm、y方向440μmの領域に、x方向に11列、y方向に4列、全部で44個の加速度センサーを配置できる。従って、1個の加速度センサーに比べて感度が44倍向上する。従来のカンチレバー型加速度センサーは基板に対して平面的な{すなわち、平面側がカンチレバーの長さ方向とカンチレバーの長辺方向(カンチレバーの幅方向となる)で構成されている}ため、余り多数配置できなかった。たとえば、従来法では、カンチレバーの長さを200μm、カンチレバーの長辺方向(カンチレバーの幅方向)を100μmとして、1個の加速度センサーの平面的大きさを、220μm*110μmとすれば、x方向440μm、y方向440μmの領域に、x方向に4列、y方向に2列、全部で8個の加速度センサーを配置できるのみである。従って、本発明の加速度センサーは従来法の5.5倍の感度を得ることができる。しかも本発明の加速度センサーでは、1つの凹部3017の幅(x方向)は30μmよりもっと小さくでき、しかもそのようにしても1個1個の加速度センサーの能力は変わらないので、もっとたくさんの加速度センサーを配置でき、感度をさらに向上できる。
しかも本発明の加速度センサーの優れている所は、この領域内で薄膜、特に導電体膜(3015や3024)のパターニングは必要がなく、すべてそのまま積層した状態にすれば良いということである。図85で示したコンタクトや引き出し電極も平坦な部分に形成すれば良い(この領域外でも良い)のでプロセス上で困難な問題は発生しない。従来法の場合には下側の電極の引き出しが難しくプロセスが複雑になるので、従来に比較してプロセスが格段に簡単になる。また、本発明では、凹部側電極部3001と凸部側電極部3002の形成を平行して別々に行なうことができると同時に、基板および薄膜(厚膜も含む)構成が同じくできるので、プロセススピードが速くプロセスもシンプルとなっているので、プロセスコストも大幅に下げることができる。
以上のように、導電体膜3015が凹部3017内および凹部3017間で連続(接続)している場合、並びに導電体膜3023が凸部3024および凸部3024巻で連続(接続)している場合、すなわち、導電体膜のエッチング除去部分3029、3030、3031、3032がない場合は、凹部や凸部でのパターニングが必要はないのでプロセスが簡単になる。しかし、凸部3024の変位量が小さいときはC3017は殆ど変化しないから、小さな加速度の場合は検出が困難である。また、加速度の向き(x方向のプラス側か、マイナス側か)を検出できないという問題もある。そこで、導電体膜3015が凹部3017内および凹部3017間で分離している場合、並びに導電体膜3023が凸部3024および凸部3024巻で分離している場合、すなわち、図83や図84で示した導電体膜のエッチング除去部分3029、3030、3031、3032を設ける。図85で言えば、y方向の側面容量空間3044側および3045側の導電体膜は除去され、また底面容量空間3043のの導電体膜も除去されているので、容量として検出できるのはx方向の側面容量空間3041および3042の容量Cx1およびCx2だけである。これらの容量Cx1およびCx2は一方が増えれば他方は減るという逆の関係になっている。これらは接続していないので、個別に容量を検出できる。Cx1が増大しCx2が減少するということは凸部3024がX方向のマイナス側(図84において左側)への力(加速度)が働いているということである。逆に、Cx1が減少しCx2が増大するということは凸部3024がX方向のプラス側(図84において右側)への力(加速度)が働いているということである。このようにCx1の増減、Cx2の増減を検知すれば加速度の向きも分かる。また。小さな加速度でも(凸部3024の変位が小さくても)Cx1またはCx2は変化するので、小さな加速度も検出できる。Cx1の変化量が小さくても多数のCx1を接続すれば大きな変化量となり、同様にCx2の変化量が小さくても多数のCx2を接続すれば大きな変化量となるので、より小さな加速度でも検出できる。
本発明の加速度センサーを同じ方向に並べればその方向(図84、図85ではx方向)の加速度に対しては感度が高まるが、別の方向、特に直角方向(図84、図85ではy方向)に対する加速度は測定できない。そこで、本発明の加速度センサーの向きを90度変化させたものも一緒に配置させる。たとえば、図86(a)に示すように、本発明の加速度センサー3005をX方向に配列したもの3005−X−1および2(X方向の加速度を検出できるということでXを添える)と、本発明の加速度センサー3005をY方向に配列したもの3005−Y−1および2(Y方向の加速度を検出できるということでYを添える)を1つの基板で作製する。このようにすれば、X方向だけでなくY方向についても加速度を検出できる。X方向だけの加速度センサーの導電体膜3015および3023をそれぞれ一緒にまとめ、Y方向だけの加速度センサーの導電体膜3015および3023をそれぞれ一緒にまとめれば、X方向およびY方向の静電容量変化を別々に測定できるので、X方向およびY方向の加速度を別々に検出できる。
さらに、図86(b)に示すように、X方向に対して45度方向の加速度を検出できる3005−X45−1および2、Y方向に対して45度方向の加速度を検出できる3005−Y45−1および2も一緒の基板またはチップ上に作製できる。本発明の加速度センサーは基板平面で小さな面積となるので、このように種々の方向の加速度を検出できる加速度センサーを実現できる。このように本発明の加速度センサーを用いれば、XY平面で多数の方向の加速度を検出できる。尚、Z軸方向は、本発明の加速度センサーをチップ化して、Z軸方向に傾ければ良い。さらに、図86(c)に示すように、図86(b)で示すような加速度センサーチップ3006−1、2、3をXY平面、XZ平面、ZY平面にそれぞれ配置することにより、立体的方向のすべての方向についての加速度を検出することができる。このように従来の加速度センサーでは多数のセンサーチップが必要であったが、本発明の加速度センサーではチップが3個あればすべての方向の加速度を検出できる。しかもチップ自体の面積(体積)は小さいので、非常に小型の加速度センサーを作製できる。
図84(b)に示すように、カンチレバーとなる凸部3024が加速度に対する感度を上げるために凸部3024の先端部(底面部)に、凸部3024より比重の大きい錘3051または3052を付着させれば良い。錘3051は厚膜3022の凸部3024の先端部に付着しており、錘3052は厚膜3051の凸部3024の先端部上に積層した絶縁膜3027の上に付着している。これらの錘3051、3052を形成する方法について以下説明する。インプリント法、フォトリソ法+エッチング法などにより厚膜3022に凸部3024を形成した後で、接着剤等を用いてこの凸部3024に錘3051の錘基板を付着する。たとえば、この接着剤を予め錘基板に塗布するか接着剤シート材を貼りつけておき、凸部側電極部3002の厚膜3022の凸部3024をこの錘基板に付着し、その後で接着剤を硬化させて、錘基板と凸部3024を強固に接着する方法がある。あるいは、凸部側電極部3002の厚膜3022の凸部3024の先端を接着液につけたり、シート材をつけたりしてこの先端部のみにつけた接着剤または接着剤シート材を介して錘基板を接着し、その後接着剤を硬化させて、錘基板と凸部3024を強固に接着する方法がある。次にフォトロソ法およびエッチング法により凸部3024の先端部に付着した錘3051以外の領域における錘基板をエッチングする。
あるいは、図87(a)、(b)、(c)に示すように、あらかじめ基板3053に接着層3054を挟んで錘3051のパターンを形成したものに対して、凸部3024が形成された厚膜3022を形成した凸部側電極部3002をアライメントして、凸部3024の先端部に錘3051を付着させる。このとき、凸部3024の先端部または錘部3051の上部に接着剤をつけて凸部3024の先端部に錘3051を付着させる。その後、接着層3054と錘部3051の接着を外せば、凸部3024の先端部に錘3051を形成できる。たとえば、錘部3051と凸部3024の間の接着剤を熱硬化性接着剤として、その硬化温度をT1とする。接着層3054を熱可塑性接着剤としその軟化温度、すなわちガラス転移点TgがT1より高いもの(T1<Tg)を使用する。T1とTgの間で熱処理すると錘部3051と凸部3024が完全に固着する。その後、Tg以上で熱処理すると接着層3054が軟化するので、錘部3051が接着素3054から離れる。この後、絶縁膜3028、導電体膜3023等を形成すれば良い。
あるいは、凸部3024の先端部を溶融金属液体(たとえば、半田)にディップして付着させる方法、あるいはメッキ液(たとえば、銀、半田、銅用のメッキ液)に凸部3024の先端部を浸漬して金属をメッキする方法でも良い。また、錘3052を凸部3024の先端部の絶縁膜3027上に付着する場合も上述した方法と同様の方法で行なうことができる。これらの錘3051や3053052はカンチレバーとなる厚膜3022の材料より比重が重い材料であれば良く、たとえば、厚膜がPMMAやPC等である場合(比重は1〜2)は、錘3051や3052は鉄(比重7.9)、白金(比重21.4)等の金属であれば十分な錘となる。
凹部側電極部3001の引き出し電極は、たとえば凹部を形成以内領域において、フォトリソ法および絶縁膜3016のエッチング法を用いて、絶縁膜3016を除去すれば下地の導電体膜3015が露出するので、この上に電極・配線を形成すれば良い。この絶縁膜3016をエッチングする順番として、凸部側電極部3002を凹部側電極部3001に付着してから、凸部側電極部3002の基板3021や厚膜3022やその上の各種膜を除去しても良い。(この場合、この領域における厚膜3022上の導電体膜3015は、導電体膜3015のパターニング時に除去しておくことが望ましい。)あるいは、凸部側電極部3002を凹部側電極部3001に付着する前に、この領域における基板3021や厚膜3022やその上の各種膜を除去しておいても良い。
凸部側電極部3002の引き出し電極は、凹部側電極部3001の引き出し電極と同様にして形成することができる。ただし、このようにすると、凹部側電極部3002の引き出し電極と凸部側引き出し電極は互いに反対側に形成されることに注意する。一方側だけに引き出し電極を形成するには、たとえば次のようにする。凸部側電極部3002を凹部側電極部3001に付着させて、加速度センサーを形成した後(すなわち、凹部3017に凸部3024を入れて凹部周囲または凸部周囲を密着して凹部空間を気密にした後)、電極部形成領域において、基板3021をウエットエッチングまたはドライエッチングで除去する。次に厚膜3022を除去する。さらにその上に積層している絶縁膜3028を除去する(ある場合)。次にその上に積層している導電体膜3023をエッチング除去し、その上の絶縁膜3027や接着剤層3026も除去する(ある場合)。次にフォトリソ法および絶縁膜3016のエッチング法を用いて絶縁膜3016を除去するとコンタクト孔が形成され導電体膜3015が露出する。ここをパッド領域としてワイヤボンディングすることもできるし、このコンタクト孔にさらに電極・配線層を形成することができる。尚、コンタクトパターン形成用のフォトリソ法は、導電体膜3023を除去した後で行なっても良い。また、凸部側電極部3002を形成するときに、既に導電体膜3023をエッチング除去してあれば、基板3021をエッチングする前にコンタクト孔形成用のパターニングを行なうこともできるし、その後の厚膜3022のエッチングする前でも可能である。
一方、凸部側電極部3002の導電体膜3023からの引き出し電極は、まずこの領域における基板3021をウエットエッチングまたはドライエッチングで除去する。次に厚膜3022を除去する。その後で、フォトリソ法および絶縁膜3028のエッチング法を用いて絶縁膜3028を除去するとコンタクト孔が形成されて導電体膜3023が露出する。ここをパッド領域としてワイヤボンディングすることもできるし、このコンタクト孔にさらに電極・配線層を形成することができる。尚、基板3021をエッチングする前にコンタクト孔形成用のパターニングを行なうこともできるし、その後の厚膜3022のエッチングする前でも可能である。以上のようにして、凸部側電極部3002側に両方の引き出し電極を形成することができる。同様にして、凹部電極部3001側に両方の引き出し電極を形成することもできる。
次に加速度センサーの可動部分、すなわち凸部電極の可動性を向上させる方法について説明する。図88はその一実施形態の製造方法を示す図である。図88(a)に示すように、凸部側基板3111上に厚膜3112を形成する。次に厚膜3112上に錘となる材料膜(錘膜)3113を形成する。厚膜3112は各種の基板でも良い。錘膜3113は厚膜3112より比重が大きい材料である。たとえば、白金、タングステン、銅、鉄、ニッケル、亜鉛等の各種金属や合金、あるいは金属酸化物などであり、CVD法やPVD法で形成したり、スクリーン印刷や塗布などで形成することができる。あるいはこれらの材料からなる基板(薄板)でも良い。尚、錘膜3113は必要がない場合は形成しなくても良い。錘膜が必要でないときは形成する必要はない。あるいは密着性向上膜やエッチングストッパー膜として3113を形成しても良く、その場合は上記の金属膜や金属酸化膜あるいは絶縁膜等が望ましい。
次にフォトレジスト法またはインプリント法等でレジストパターン3114を形成する。{図88(a)}次に、図88(b)に示すようにレジストパターン3114をマスクとして、錘膜3113をエッチングする。レジストパターン3114のパターンに近い形状でエッチングすることが望ましい。さらに、厚膜3112をエッチングする。このエッチングをレジストパターン3114およびエッチングされた錘膜のサイズにできるだけ忠実な形状にエッチングする。すなわち異方性エッチングで垂直な形状に近いパターンで厚膜3112を形成する。図88に示す本実施形態では厚膜3112を完全にエッチングして、凸部側基板3111を露出させる。
次に図88(c)に示すように、この垂直パターンをマスクとして(レジストパターン3114はリムーブした後でも良い)凸部側基板3111を等方性エッチングする。この基板3111のエッチングでは、厚膜3112、錘膜3113をできるだけエッチングしないようなエッチング条件で行なう。等方性エッチングであるから、厚膜3112の下にある部分3115の基板3111もエッチングされる。すなわち、基板3111の深さ方向の基板3111のエッチング量をE3111vertとし、パターン3112のサイドエッチング量をE3111sideとすると、E3111side=0.5E3111vert〜E3111vertとなる。結果として、(厚膜3112(パターン幅W3112)は殆どエッチングされないとして)凸部側基板3111と厚膜3112との接続部の凸部側基板3111の幅は、W3112−2E3111sideとなる。
次にレジストパターン3114を除去した後、図88(d)に示すように、導電体膜3116を積層する。この導電体膜3116が凸部側電極の電極・配線となる。この導電体膜3116が厚膜パターン3112の廂部3115にも積層するように、ステップカバレッジの良い方法(たとえば、CVD法)で積層することが望ましい。この後、これまで説明した様に、導電体膜3116をパターニングし、保護膜として絶縁膜を積層して、凸部側電極を作製する。このように作製した凸部電極3112は、加速度を受けたとき、凸部電極3112の根元(すなわち、凸部側基板3111と凸部電極3112の接続部分)を基点として変形するので、この接続部が細くなりより変形しやすくなっている。すなわち、静電容量が大きく変化することになり、加速度測定の感度が増大する。たとえば、厚膜3112をシリコン、基板をガラスや石英(SiO2)とすると、緩衝フッ酸(BHF)溶液で基板のガラス等をエッチングすれば、厚膜3112のシリコンはエッチングされずに、基板のガラス等がサイドエッチングされる。このサイドエッチング量はエッチング速度から計算された時間管理で行なう。
図89は、加速度センサーの可動部分、すなわち凸部電極の可動性を向上させる別の実施形態の製造方法を示す図である。この実施形態では、凸部電極となる厚膜自体と凸部電極との付け根(接続)部分を細くする方法に関する。図89(a)の図は、図88(a)と構造が同じなので省略する。図89(b)に示すように、レジストパターン3114をマスクとして錘膜3113さらに厚膜3112を異方性エッチングする。厚膜3113は全部エッチングせずに図89に示すように一部を残す。従って、厚膜3112は基板でも良く、その場合は凸部側基板3111と兼用でも良い。次にレジストパターン3114を除去した後、図89(c)に示すように、側壁カバー膜3121を積層する。この側壁カバー膜3121は厚膜3112の垂直パターン3112−1、2の側壁に被覆性良く積層することが望ましいので、CVD法やPVD法による積層膜が良い。たとえば、シリコン酸化膜、シリコン酸窒化膜、シリコン窒化膜等の絶縁膜、ポリシリコンや各種のシリサイド膜、あるいは銅やタングステン等の金属膜である。このように、側壁カバー膜3121は厚膜3112パターン3112−1、2および錘膜3113のパターンをコンフォーマルに積層する。
次に側壁カバー膜3121を全面異方性エッチングする。凸型電極パターン3112(3112−1、2)および錘3113パターンは垂直形状パターンであるから、図89(d)に示すように、その側壁部に積層した側壁カバー膜3121は側壁カバー膜3121として残り、平坦部にある側壁カバー膜3121はエッチング除去される。この全面異方性エッチングでは下地の厚膜3112や錘膜3113は余りエッチングされない条件を選択する。次に、図89(e)に示すように厚膜3112の等方性エッチングを行なう。このとき、側壁カバー膜3121や錘膜3113は余りエッチングされないようなエッチング液やエッチング条件を選択する。この結果、凸部電極パターン3112−1、2の下部3112もエッチングされて、図88の場合と同様に、凸部電極3112(3112−1、2)の付け根が細くなり、加速度に対して動きやすい凸部電極が形成される。この後、側壁カバー膜3121を除去して(除去しなくても良い)導電体膜等を積層して、図88(d)に示すような構造を得る。
次に、インプリント法を用いた凸部電極の作製方法について説明する。図90(a)に示すように、凸部電極パターンを形成する凹部3122を有するモールド3131と、錘材料3133を付着した基板3141を用意する。基板3141には、モールド3131の凹部3122の内部に入ることができる凸状パターン3142が形成され、この凸状パターン3142の先端に接着層3143を介して錘材料3133が付着している。錘材料は凸部電極部を構成する材料より比重の大きい上述したような材料であるが、モールド3131の材料より融点(あるいは軟化点)が低い材料が望ましい。たとえば、モールド材料が石英(融点約1600℃)やシリコン(融点約1410℃)で、錘材料が鉛(融点約330℃)、アルミニウム(融点約660℃)、銀(約962℃)、亜鉛(約420℃)、スズ(約232℃)、や各種半田や各種合金である。基板3142や凸状パターン3142は石英やシリコン基板やステンレス、各種金属材料である。あるいは高分子材料やセラミック材料でも良い。接着層3143は各種接着剤でも良いが、熱軟化性接着剤が望ましい。この熱軟化性接着剤の軟化点は、基板3141および凸状部材3142より融点が低いものが望ましい。エネルギーや作業性の観点から軟化点は低い方が良い。あるいは接着層3143を介在せずに錘材料3133を溶かして凸状パターン3142の上面に直接付着させても良い。あるいは、錘材料3133が磁性体の場合には、基板3141や凸状部材3142に電磁石を備えて錘材料3133を付着させても良い。あるいは、凸状パターン3142の先端部に静電気を発生させて錘材料3133を静電的に吸着しても良い。あるいは、凸状パターン3142の先端部に真空ラインを設けて錘材料3133を真空吸着しても良い。
次に凸状パターン3142上面に付着した錘材料3133をモールド3131の凹部3132内へ挿入し、接着層3143の接着性を消失させて錘材料3133をモールド3131の凹部3132内へ配置する。従って、錘材料3133のサイズは凹部3132より小さくなければならない。モールド3131の凹部3132と凸状部材3142およびこれに付着した錘材料3133のアライメントは、モールド3131または基板3141がアライメント光を透過する材料である場合には、モールド3131または基板3141を通してアライメントすれば精度の良いアライメントが可能である。また、接着層3143の接着性を消失させる方法として、接着層3143が熱軟化性の接着剤である場合には、その軟化点よりも温度を高くして接着性を弱めれば良い。錘材料3133を融かして凹部3132内へ滴下しても良い。錘材料3133が凹部3132内へ配置された後、錘の融点以上の温度で錘材料3133を融かして、凹部3132の底部に錘材料を付着させる。{図90(c)}
次に基板3111上に形成された厚膜3112の液状膜あるいはゲル状膜にこのモールド3131を押しつける。{図90(c)、(d)}厚膜3112が熱硬化性材料の場合、厚膜3112が硬化する温度まで上昇させて、厚膜3112を硬化させる。あるいは、厚膜3112が熱可塑性材料の場合、厚膜3112が軟化する温度(軟化点)以上まで上昇させた後、(この状態でモールド3131を押しつけても良い)軟化点以下の温度に下げて厚膜3112を硬化させる。あるいは、厚膜3112が光硬化性材料である場合には、硬化する光(たとえば、紫外線やX線)を照射する。(このときは、モールド基板3131または基板3111は硬化する光を透過する材料で形成されている必要がある)厚膜3112が硬化した後、モールド3131を引き離すと、図90(e)に示すように錘材料3133が厚膜凸状部3112(3112−1、2)の上面に付着する。ここで、図89に示すプロセスで厚膜凸状部3112(3112−1、2)の下部をサイドエッチすることができる。あるいは、図90(f)に示すように、酸素プラズマによる異方性全面エッチングにより、厚膜3112の残膜をエッチング除去する。次に図88に示すプロセスで厚膜凸状部3112(3112−1、2)の下部にある基板3111をサイドエッチすることができる。以上のようにして非常に簡単なプロセスで錘材料3133を付着した凸状部3112(3112−1、2)を作製することができる。
図91は、凹部を用いた圧電体マイクの構造および製造方法を示す図である。圧電体基板4061内に凹部4062をフォトリソ法およびエッチング法、あるいはインプリント法などにより形成する。基板4061上に、またこの凹部4062内面に導電体膜4063を形成し、必要な導電体膜4063のパターニングを行なう。凹部4062の1つ4062(4062−2)は外部からの振動を受けられる凹部(振動受動凹部とも呼ぶ)で、その凹部4062(4062−2)に隣接して別の凹部4062(4062−1、4062−3)が配置されている。これらの凹部4062(4062−1、3)と振動受動凹部4062(4062−2)とで挟まれた基板側壁4061(4061−1、2)は、振動受動凹部4062(4062−2)に入ってきた振動波によって振動するダイヤフラムの役目を果たす。導電体膜4063は、この基板側壁4061(4061−1、2)の上面において、その一部4064(4064−1、2)がエッチング除去され、振動受動凹部4062(4062−2)側の導電体膜4063(4063−2)は隣接する凹部4062(4062−1、3)側の導電体膜4063(4063−1、3)と接続されていない。また基板4061の第1面(上面)の他の部分において、導電体膜4063は必要な配線や電極が形成されている。この導電体膜4063上に絶縁膜4064が形成される。導電体膜4063がエッチング除去された基板側壁4061(4061−1、2)上の4064(4064−1、2)にも絶縁膜4064が形成されている。この絶縁膜4064は導電体膜4063や凹部4062を保護している。
基板4061の第1面(上面)におけるこの絶縁膜4064上に薄板4066が付着し、必要な部分以外は除去されている。この薄板4066の除去は薄板4066を基板4061上に付着させてから行なっても良いし、予め除去した薄板4066を基板4061上に付着しても良い。振動受動凹部4062(4062−2)は外部から振動波が入るようにするために、薄板4066はカバーしていない。(ただし、振動波が入ればOKなので、一部だけカバーする部分があっても良い。たとえば、振動受動凹部4062(4062−2)の上も薄板4066でカバーして、一部だけに振動波を導入する振動導入孔を備える場合がある。)振動凹部4062(4062−2)に隣接する凹部4062(4062−1、3)は薄板4066(40661−、2)でカバーされている。これは、外部から振動波が入ることを防止する役目を果たす。従って、外部から振動波が入って来なければ薄板4066でカバーしなくても良いし、一部に外界との通気孔を設けることもできる。その後、導電体膜4063からの電位変化を取りだすために、必要な部分において絶縁膜4064にコンタクト孔をあけて電極パッドを設けるか、さらにそのコンタクト孔に導電体膜を形成して必要な電極・配線を形成することもできる。ここで、導電体膜4063(4063−1、2,3)からの電位変化取り出し端子を図91に示すように、a、b、cとする。
振動受動凹部4062(4062−2)へ入ってきた空気振動(他の気体振動や液体振動でも良い)によって、基板側壁4061(4061−1、2)が振動する。(基板側壁4061(4061−1、2)は薄く(基板材料にもよるが、1μm〜100μm程度)、その両側が空間凹部4062(4062−1、2、3)になっていて、基板側壁4061(4061−1、2)はダイヤフラムになっている。)この基板側壁4061(4061−1、2)が振動すると、基板側壁4061(4061−1、2)は圧電体であるから圧電効果によりその側面(表面)に電荷が分極する。従って、基板側壁4061(4061−1、2)の側面上に形成された導電体膜4063(4063−1)および4063(4063−2)、あるいは導電体膜4063(4063−3)および4063(4063−2)との間に電位差が生じる。その電位差を端子aおよび端子b、および/または電位差を端子aおよび端子で取り出す。振動の大きさによってこの電位差が変化し、また振動の向きによって電位差の符号が変化する。(すなわち、プラスとマイナス)すなわち、本発明の基板面に対して垂直方向に形成した凹部を用いたデバイスによって、振動波を電気信号に変換させることができ、いわゆる圧電体マイクを作製できる。
図92は、図91に示す圧電体マイクの断面図を平面的に示した図である。図92(a)は、矩形形状の凹部が平行に配列している。すなわち、立体的に見れば直方体形状の凹部が平行に配列している。これらの凹部4062(4062−1、2、3)の間の基板側壁4061(4061−1、2)がダイヤフラムとなっている。これらの基板側壁4061(4061−1、2)は直方体形状になっている。これらの凹部4062(4062−1、2、3)内および基板4061の上面に導電体膜4063が積層され、基板側壁4061(4061−1、2)の上部および基板4061の第1面(上面)上でパターニングされ、導電体膜4063(4063−1、2、3)に分割されていて、それぞれ端子a、b、cが接続している。基板側壁4061(4061−1、2)は同じ幅、同じ深さで形成されており、凹部4062(4062−1、3)は同じ圧力に保持されているので、4062(4062−2)内に導入された振動波によって同じように振動する。従って発生する電荷も同じであるから、端子aとcは接続しても良い。この図92(a)から分かるように凹部内では導電体膜4063のパターニングはないので、通常のフォトリソ法およびエッチング法でプロセスが可能である。
図92(b)は、別の平面形状を示す図で、円柱形状の振動受動凹部4062(4062−2)の周りを円筒形状の基板側壁4061(4061−1)が囲み、さらにこれらを円筒形状の凹部4062(4062−1)が囲んでいる。導電体膜4063(4063−1)は円筒形状の凹部4062(4062−1)をカバーし、導電体膜4063(4063−2)は円筒形状の凹部4062(4062−2)をカバーしている。これらの導電体膜4063(4063−1、2)は、凹部4062−1および4062−2によって挟まれた基板側壁4061(4061−1)の上部で切断されていて接続していない。これらの導電体膜4063(4063−1、2)に端子a、bが接続している。凹部4062−1は薄板でカバーされているが、凹部4062−2は薄板でカバーされていない。この実施形態では、振動波が振動受動凹部4062(4062−2)に入ると円筒形の基板側壁4061−1全体が振動し、その基板側壁4061−1の両側面にある導電体膜電極4063−1および4063−2の間(端子a−b間)に電位差が生じ、この電位差が振動波形に対応して変化する。このように円筒形型の凹部を持つマイクロホン(すなわち、振動波を電位変化に変換する装置)は、基板側壁全体が一様に変形するので、非常に効率的で、面積の小さなマイクロホン素子を作製できる。尚、同様な実施形態として楕円型凹部を有するマイクロホンも同様な特性を持つマイクロホン素子となる。さらに任意の曲面、特に振動波を忠実に基板側壁の振動へ伝達できる形状の曲面を有する凹部および基板側壁を持つマイクロホン素子でも良い。
図92(c)は、別の形状を有するマイクロホン素子を示す図である。すなわち、矩形形状(正方形や長方形)を持つ振動受動凹部4062(4062−2)をさらに矩形形状(正方形や長方形)の凹部4062(4062−1)が囲んでいるタイプで、これらの凹部間の基板側壁4061が4か所4061(4061−1、2、3、4)存在する。これらの4つの基板側壁4061(4061−1、2、3、4)がダイヤフラムとなる。基板凹部4062(4062−2)の側面、すなわち基板側壁4061(4061−1、2、3、4)の基板凹部4062(4062−2)側の側面には導電体膜4063(4063−2)が連続して形成されている。一方、基板凹部4062(4062−1)の側面、基板側壁4061(4061−1、2、3、4)の基板凹部4062(4062−1)側の側面には導電体膜4063(4063−1)が連続して形成されている。これらの導電体膜4063(4063−1、2)は基板側壁4061(4061−1、2、3、4)の上部でせつだんされ、導電体膜4063(4063−1)および4063(4063−2)は接続していない。導電体膜4063(4063−1)および4063(4063−2)には、それぞれ端子aおよびbが接続している。振動受動凹部4062(4062−2)に振動波が入ると、基板側壁4061(4061−1、2、3、4)がそれぞれ同じように振動し、この振動に対応して、端子a−b間に電位差が生じて、この電位差が変化する。図92(c)に示す実施形態では、このような矩形形状の全部の基板側壁を使用しているので、効率的で面積の小さなマイクロホン素子を作製できる。図92に記載した形状以外にも、多角形形状等でも本発明のマイクロホン素子を作製できる。
図93は、圧電体基板ではない基板を用いて圧電体膜を形成したマイクロホン素子の構造および製造方法を示す図である。圧電体基板ではない基板4071内に凹部4072(4072−1、2、3)を形成する。凹部4072(4072−2)は振動受動凹部となる。凹部4072(4072−1、3)と振動受動凹部4072(4072−2)との間に基板側壁4071(4071−1、2)が形成されている。振動受動凹部4072(4072−2)に振動波が入ると基板側壁4071(4071−1、2)が振動する。次に基板4071の表面(第1面){凹部4072の内面を含む}に絶縁膜4073を形成する。基板4071が絶縁体の場合にはこの絶縁膜は形成しなくても良い。次に、絶縁膜4073上に導電体膜4074を形成し、基板側壁4071(4071−1、2)上の4075(4075−1、2)の部分で導電体膜4074を切断する。このとき、基板4071の第1面の平坦部分(凹部4072ではない部分)でも必要な配線パターニングを行なうことができる。導電体膜4074の切断は、凹部内のパターニングはないので、通常のフォトリソおよび導電体膜のエッチングで可能である。凹部内のパターニングを行なう場合には、電着レジスト法や、感光性膜プラズマ重合法、感光性ドライフィルム法、感光性膜スパッター法、その他の方法で行なうことができる。尚、導電体膜4074の切断はレーザーによっても可能である。
次に、導電体膜4074上に圧電体膜4076を形成する。圧電体膜4076は導電体膜4074を除去した部分にも形成されるが、圧電体膜4076は基本的には絶縁性を有するので特に問題はない。絶縁膜4073、導電体膜4074、圧電体膜4076の材料や作製方法や作製条件などは既に記載した通りである。たとえば、導電体膜4074は、白金(Pt)、チタニウム(Ti)、銅(Cu)、金(Au)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、銀(Ag)等の金属膜、これらの合金、あるいは酸化物導電体膜(ZnOx、InxOy、SnOx、GaxOy、CuAlxOy、CuGaxOy、CuInxOy、CuFexOy、NiOx、IrOx、SbSnxOy、InSnxOy等)、グラフェン導電膜や炭素系ナノチューブ導電膜等の炭素系導電膜、導電性ポリマー、導電性多結晶シリコンや導電性アモルファスシリコン等がある。圧電体膜4076としては、たとえばPZT、LiTaO3、LiNbO3、La3Ga5SiO14、Li2B4O7、ZnO、GaPO4、PbPO3、BaTiO3、GaTiO3、KNbO3、LiTaO3、NaxWO3、BaNaNb5O5、Pb2KNb5O15、GaPO4、La3Ga5SiO14、Al2SiO4(F,OH)2、AlPO4、KNaC4H4O6、Al2SiO4(F,OH)2、アパタイト系等の酸化物系圧電体膜、AlN、GaAs、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等の圧電性ポリマーがある。
圧電体4076上に導電体膜4077を形成し、必要な部位をエッチング除去する。たとえば、基板側壁4071(4071−1、2)上の4078(4078−1、2)や、基板4071の第1面の平坦部(凹部4072ではない部分)でエッチング除去する。導電体膜4074の切断はレーザーによっても可能である。このように、導電体膜4071のパターニングは凹部内で行なう必要はないので、通常のフォトリソ法、およびエッチング法で行なうことができる。導電体膜4071のパターニングを凹部内で行なう場合は、電着レジスト法、感光性膜プラズマ重合法、感光性ドライフィルム法、感光性膜スパッター法、その他の方法で行なうことができる。次に絶縁膜4079を形成する。その後、薄板4081を基板4071の第1面上に付着する。薄板4081の不要な部分を除去した後、導電体膜4074および導電体膜4077から電圧を引き出すためのコンタクト孔を形成し、必要なら電極・配線層を形成する。導電体膜4074(4074−1、2、3)は圧電体膜4076の下部電極、導電体膜4077(4077−1、2、3)は圧電体膜4076の上部電極となる。
振動受動凹部4072(4072−2)には振動波を導入するので、薄板4081でカバーしない。(もちろん、振動波が入れば薄板4081で振動受動凹部4072(4072−2)の一部をカバーするのは問題ない。たとえば、振動導入通路を薄板へ設ける場合などである。)凹部4072(4072−1、3)は薄板4081(4081−1、2)でカバーされている。振動受動凹部4072(4072−2)に対して、凹部4072(4072−1、3)は基準となるので、振動波が凹部4072(4072−1、3)内に入らないようにするために、薄板4081(4081−1、2)で凹部4072(4072−1、3)をカバーしている。従って、振動波が凹部4072(4072−1、3)内に入らなければ、薄板4081(4081−1、2)はの一部はあいていても良いし、あるいは薄板4081(4081−1、2)で凹部4072(4072−1、3)をカバーしなくても良い。すなわち、凹部4072(4072−1、3)内の圧力は振動受動凹部4072(4072−2)内の圧力によってできるだけ変化しないようにする。
振動受動凹部4072(4072−2)内に振動波が入ると振動受動凹部4072(4072−2)内の気圧(または振動受動凹部4072(4072−2)内に液体が入っているときは液圧)が変動するので、基板側壁4071(4071−1、3)が変位する。基板側壁4071(4071−1、3)が変位すると、基板側壁4071(4071−1、3)上に形成された圧電体膜4076も変位する。圧電体膜4076が変位すると圧電体膜4076の表面に電荷が分極する。この結果、圧電体膜4076の両側に形成されている導電体膜4074(下部電極)と導電体膜4077(上部電極)との間に電位差(電圧)が生じる。たとえば、導電体膜4074(4074−1)に接続している端子a1と導電体膜4077(4077−1)に接続している端子a2との間に、あるいは導電体膜4074(4074−2)に接続している端子b1と導電体膜4077(4077−2)に接続している端子b2との間に、あるいは導電体膜4074(4074−3)に接続している端c1と導電体膜4077(4077−3)に接続している端子c2との間に、電位差(電圧)が生じる。発生する電荷の向きはa1、b2、c1が同じであり、a2、b1、b2が同じ向きであるからこれらを総合した電位差(電圧)を検出できるので、検出感度を向上できる。
このように、圧電基板を用いなくても種々の基板を用いてその基板上に圧電体膜を形成することによりマイクロホンデバイスを作製できる。たとえば、基板がシリコン基板である場合、IC、トランジスタ、抵抗、コンデンサ等の素子と一緒に搭載できる。この結果、たとえば1チップ内に本発明のマイクロホンデバイスとこのマイクロホンデバイスで発生した電位を波形に演算処理したり音声に変換したりする演算用ICとを搭載できる。従って、従来はこれらのデバイスを別々の2チップで実装しなければならないものが1チップで実装できるから、実装面積が大幅に減少すること、2チップをワイヤボンディング等で接続する必要がなくなること、ICに使用する導電体膜とマイクロホン素子に使用する導電体膜とを兼用できるか接続が容易になること、さらに1チップ内の配線接続により信頼性が向上することなど、大きな利点を獲得できる。また、この場合の平面的形状も図92に示すような種々の形状を用いることができる。
尚、これまで説明したように、図91〜図93に示す振動受動凹部は裏面(第2面)に、その周りを囲む凹部は表面(第1面)に形成することもできる。この場合、第2面側だけに振動波を導入でき、第1面側には振動波が導入できないようにすれば、薄板を設ける必要がないし、また凹部と振動受動凹部との間で導電体膜を切断する必要がないので、パターニングが非常に簡単になる。また、図91〜図93に示すマイクロホンデバイスは、これまでに説明した様に、基板第1面から第2面に貫通する凹部(すなわち貫通溝)を用いて作製することもできる。たとえば、基板の裏面に第2の薄板を付着し、貫通溝を作製して、その後図91〜図93に示すプロセスでマイクロホン素子を作製すれば良い。あるいは、基板に貫通溝を作製した後で、第2の薄板を付着させてから図91〜図93に示すプロセスでマイクロホン素子を作製すれば良い。また、基板上にポリマーを形成して、このポリマー内に凹部(または貫通溝)を作製してマイクロホンデバイスを作製することもできる。この方法は、たとえば上述したように、別デバイスと本発明のマイクロホン素子を一緒の基板で作製するときに有用な方法である。この場合、ポリマーを軟化させたり、液状、ゲル状の状態にしてインプリント法を用いて凹部を形成し、マイクロホン素子を作製することができる。この場合基板内にマイクロホン素子を配置する凹部を形成し、その凹部にポリマーで埋め込んでその中にマイクロホン素子用の凹部を形成すれば、マイクロホン素子の表面と基板表面のレベルをほぼ同程度にできるので、マイクロホン素子に使用する導電体膜とそれ以外の基板内の導電体膜と兼用もできるし、兼用しない場合でも接続が容易となる(接続配線の段差が小さくなる。あるいはワイヤボンディングで接続する場合も段差が小さくなる)。
上記に示したマイクロホンデバイスは、基板の第1面から第2面側に向かって形成した凹部または基板の第1面から第2面側に貫通した貫通溝によって挟まれた基板側壁を用いて、外部の振動波を電気信号に変換するものであるが、逆の見方をすればスピーカーとしても機能する。たとえば、電気信号を圧電体膜を挟む上下の電極(導電体膜)に、あるいは圧電体基板を挟む上下の電極(導電体膜)に印加すれば、圧電体膜が振動しそれに応じて基板側壁が振動し、あるいは圧電体基板が振動子、音等の振動波を振動受動凹部内で発生する。この振動波を外部へ出せばスピーカーとなる。従って、本発明は、マイクロホンにもなればスピーカーにもなるという、音響トランスデュサーとしても機能させることができる。また、スピーカー以外にも発音素子や発音ブザーとしても使用できる。特に非常に小型になり安く作製できる。
図95は、本発明を適用した熱交換器を示す図である。図95(a)は基板4083の基板面に対して平行な平面図である。図95(a)に示すように基板4083内に熱媒体流路4088(4088−1、4088−2)が形成され、基板側壁4083(4083−2、3、4、5)を挟んで熱交換媒体流路4086(4086−1、4086−2、4086−3)が配置されている。熱媒体4095は熱媒体流路4088(4088−1、4088−2)の入り口である媒体口4091(4091−1、4091−3)から入り、熱媒体流路4088(4088−1、4088−2)の出口である媒体口4091(4091−4、4091−6)から出ていく。一方、熱交換媒体4096は熱交換媒体流路4086(4086−1、4086−2、4086−3)の入り口である媒体口4091(4091−2、4086−1および4086−3の入り口は記載せず)から入り、熱交換媒体流路4086(4086−1、4086−2、4086−3)の出口である媒体口4091(4091−5、4086−1および4086−3の入り口は記載せず)から出ていく。
平面図95(a)のA1−A2における基板面に対して垂直な断面図を図95(b)に示す。基板4083内に基板面に垂直方向に第1凹部(または、第1貫通溝)4088(4088−1、2)および第2凹部(または、第2貫通溝)4086(4086−1、2、3)が形成されている。第1凹部4088および第2凹部4086の間に基板側壁4083(2、3,4、5)が形成され、第1凹部4088および第2凹部4086を隔てている。第1凹部4088は熱媒体流路となり、第2凹部4086は熱交換媒体流路4086となっている。第1凹部4088および第2凹部4086の開口側である基板4083の第1面には薄板4084が付着し、第1凹部4088および第2凹部4086の開口部を被っている。第1凹部4088および第2凹部4086が基板4083の第2面に貫通している場合は、基板4083の第2面には薄板4084が付着し第1凹部4088および第2凹部4086の貫通口を塞いでいる。
熱媒体流路4088および熱交換媒体流路4086を隔てている基板側壁4083(2、3,4、5)は非常に薄い(1μm〜100μm)ので、熱媒体流路4088を流れている熱媒体4095の熱は、基板側壁4083(2、3,4、5)を通して速やかに、熱交換媒体流路4086を流れている(に入っている)熱交換媒体4096へ伝達する。また、図95(a)から分かるように、熱媒体流路4088は細く曲がりくねり流れ、その周りを熱交換媒体4096が取り囲んでいて、熱媒体流路4088と熱交換媒体流路4086との接触面積は非常に大きいので、特に迅速に熱媒体4095の熱が熱交換媒体4096へ伝達する。基板4083が熱良導体の場合は、さらに素早く熱が移動する。たとえば、基板4083が、炭素(カーボンナノチューブ、フラーレン等も含む)、窒化アルミニウム(AlN)、金属(たとえば、銀、金、銅、アリミニウム)、半導体基板(たとえば、シリコン)である。
熱媒体4095は薄板4084に開いた入り口(媒体口)4091−1や4091−3に接続した導管4089−1や4089−2から熱媒体流路4088へ入り、熱交換した後出口(媒体口)4091−4や4091−6から出ていき、この交換器の外部で熱を交換して再度導管4089−1や4089−2へ戻り循環している。(循環しないで、一方通行の場合もあり。)熱交換媒体4096は薄板4084に開いた入り口4091−2に接続した導管4087から熱交換媒体流路4086へ入り、熱交換した後出口4091−5から出ていき、この交換器の外部で熱を交換して再度導管4087へ戻り循環している。(循環しないで、一方通行の場合もあり。)熱媒体4095は気体や液体あるいは気体と液体の共存媒体であり、たとえばヒートパイプのように外部の熱源で媒体が蒸発して気体になり、その気体が熱媒体流路4088へ入り熱交換して凝縮して液体となって出口から出ていくという一連の相変化が連続的に生じさせて、熱移動を迅速に行なわせることもできる。熱交換媒体4096も気体や液体あるいは気体と液体の共存媒体であり、こちらもヒートパイプ方式を採用でき、冷却した液体で熱交換媒体流路4086へ入り、熱交換媒体流路4086内で熱媒体4095より熱をもらって蒸発して気体になって出口から外部へ出ていくという一連の相変化が連続的に生じさせて、熱移動を迅速に行なわせることもできる。このように本発明は、半導体プロセスを適用できるので非常に微細な毛細管のような流路を形成し、しかも自由な曲線流路を形成できるので、非常に効率の良い熱移動を行なうことができる。たとえば、体温調節が困難な患者の血液を本システムで循環させて体温を一定温度に保持することも可能となる。
しかも本熱交換システムは非常に簡単なプロセスで作製できるし、非常に小さなチップにもできるので、大量にしかも安く作製することができる。その製造方法の一例を次に説明する。本製造方法は、これまでに種々の製造方法と極めて類似しているので、説明するまでもないが、その概略は以下のようである。基板4083の第1面に絶縁膜を積層する。基板の種類は前述の通りであるが、その厚みは1μm〜100μm、さらには100μm〜1000μm、さらにはもっと厚い基板も使用できる。適用する目的に合わせて適宜選定することができる。基板サイズも2インチ(5cmφ)以上、かなり大きなものも可能である。絶縁膜は感光性膜との密着性向上およびエッチングマスクとなることが主な目的であるから、必要がなければ積層しなくても良い。次に感光性膜を形成し露光法で凹部(第1および第2)形成用のパターニングをする。その感光性膜のパターンに基づき、絶縁膜および基板4083をエッチングする。このエッチングは感光性膜のパターン通りに作製することが望ましいので、できるだけ垂直パターンが望ましい。その結果、第1凹部4088(4088−1、2)および第2凹部4086(4086−1、2,3)を形成する。基板4083を貫通した場合は貫通溝となる。貫通溝の場合には貫通溝の深さをそろえることができる。すなわち貫通溝の深さは基板4083の厚みとなる。凹部の場合にはエッチングバラツキも考慮してエッチングを行なう必要がある。凹部または貫通溝を形成する前に基板4083の第2面に薄板4085を付着しても良い。
次に感光性膜をリムーブして、基板4083の第1面側に第1の薄板4084を、基板4083の第2面側に第2の薄板4085を付着させる。この付着には接着剤を用いることもできるし、常温接合や高温接合、拡散接合等を用いることができる。基板4083がシリコンで薄板がガラスの場合には静電接合することもできる。既に第2面側に薄板4085を付着させている場合には、第1面側に薄板4084を付着させれば良い。また、たとえば、第1凹部4088を第1面側から形成し、その後第2面側から第2凹部4086を形成することもできる。この場合、マスク工程は1つ増えるが、基板側壁4083(4083−2、3、4、5)が薄い状態で薄板に付着していない状態はなくなるので、基板側壁4083(4083−2、3、4、5)の安定度は格段に向上する。すなわち、まず基板4083の第2面側に第2の薄板4085を付着させた後、第1凹部(第1貫通溝)4088を基板4083の第1面側から形成し、次に基板4083の第1面側に第1の薄板4084を付着させた後に、第2凹部(第2貫通溝)4086を基板4083の第2面側から形成する。このとき、第1凹部4088が貫通溝でない場合は、基板4083の第1面側に第1の薄板4084を付着させた後に、基板4083の第2面側における第2の薄板4085を取り外してから、第2凹部4086を基板4083の第2面側から形成すれば、第2の薄板4085をエッチングしなくても良く、第2凹部(こちらは貫通溝でも良い)形成後、基板4083の第2面側に再度第2の薄板(第3の薄板)を付着させる。第1凹部4088が貫通溝である場合は、基板4083の第2面側における第2の薄板4085もエッチングし、さらに基板4083をエッチングして第2凹部(第2貫通溝)4086を形成し、その後第3の薄板を基板4083の第2面側(の第2の薄板上)に付着させる。その後、第1の薄板4084に媒体口4091(4091−1、2、3、4、5、6)を形成する。尚、この媒体口4091は第2の薄板4085に開けても良い。また、あらかじめ媒体口4091を形成した薄板を付着しても良い。第1の薄板4084および第2の薄板4085は、たとえばガラス、金属等の各種導電体、各種セラミック、各種半導体基板であり、厚みは使用環境や材料強度等により選定すれば良いが、概ね1μm〜500μmである。
図97は、インプリント法を用いて本発明の凹部パターンを形成する方法を示す図である。図97(a)に示すように、第1基板711上にポリマー層712を形成する。この実施形態におけるポリマーは熱軟化性(熱可塑性)である。ポリマー層712は、ポリマーを溶剤に溶解した溶液を第1基板711上に滴下して形成する方法(滴下法)やポリマーを溶剤に溶解した溶液を第1基板にスピンコートして形成する方法(スピンコート法)などの塗布法により第1基板711上に形成する。この後、図97(b)に示すように、凹部(第2凹部)パターンを有するモールド713をこのポリマー層712に挿入した後、軟化温度以上で熱処理して溶剤を完全に蒸発させてポリマーを軟化または溶融する。モールド713をポリマー層712に挿入する前に、ポリマー層712をプリベークしても良い。ポリマーが熱可塑性ポリマーである場合は、溶剤を完全に蒸発させて軟化温度以上で熱処理してポリマー層を軟化または溶融してモールド713を挿入しても良い。ポリマーがペースト状の場合にはスクリーン印刷法によってポリマー層712を第1基板711上に形成し、このペースト状のポリマー層712にモールド713を挿入しても良い。あるいは、第1基板711上にポリマーシートを付着して軟化温度以上に熱処理してポリマー層を軟化または溶融してポリマー層712を第1基板711上に形成し、この軟化または溶融したポリマー層712にモールド713を挿入しても良い。
ポリマー層712にモールド713を挿入した後に軟化温度以上に熱処理してポリマー層を軟化または溶融した状態にする。この状態で図97(c)に示すように、第1基板711をポリマー層712から分離する。あるいは、ポリマー層を軟化または溶融した後に軟化温度以下の温度にしてポリマー層712を固化して後、第1基板711を分離する。この分離では、図97(c)に示すように、第1基板711を上側にして第1基板711を上方へ移動して(あるいは、モールド713に付着したポリマー層712を下方へ移動して)分離しても良い。次にポリマー層712の軟化温度以上に熱処理を行ない、モールド713に付着したポリマー層712を軟化または溶融して、第1凹部形成用のモールド715を上方から下方へ移動して{図97(d)}、ポリマー層712へモールド715を挿入する。このとき、図97(e)に示すように、モールド713の凹部714(714−1,2)へモールド715の凸部715(715−1、2)を挿入し、またモールド716の凹部716(716−1,2)へモールド713の凸部713(713−1、2)を挿入する。モールド713および716を所定位置で固定して軟化温度以下で保持してポリマー712を固化してポリマー612の形状を決める。この後、モールド713および715はポリマー層712から分離するので、モールド715の凸部715−1および715−2はポリマー層712の主面(第1面、表面)側の凹部(第1凹部)となり、モールド713の凸部713−1および713−2はポリマー層712の副面(第2面、裏面)側の凹部(第2凹部)となる。
従って。モールド713の凸部713(713−1、2)およびモールド715の凸部715(715−1、2)の間の基板側壁712−S1、712−S2、712−S3はダイヤフラムとなるので、基板側壁の厚み(モールド713の凸部およびモールド715の凸部の距離)s1、s2等、基板側壁の深さ(長さ)(モールド713の凸部およびモールド715の凸部の深さ方向のオーバーラップ部)h1および基板側壁の幅(紙面と垂直方向におけるモールド713の凸部713およびモールド715の凸部715のオーバーラップ部で図示せず)をできるだけ一定にすることが望ましい。すなわち、モールド713のパターンに対してできるだけ正確にアライメントしてモールド715のパターンを挿入する必要がある。ポリマー層712およびモールド715に対して透過する光を用いてアライメントすることが望ましい。また、s1=S2とするようにアライメントすることも重要である。さらに、h1を一定にするために、モールド713の凸部(たとえば、713−1)とモールド715の凹部(たとえば、716−1)の距離t1やモールド715の凸部(たとえば、715−1)とモールド713の凹部(たとえば、714−1)の距離b1をできるだけ一定にする必要があるので、モールド713に対してモールド715の挿入深さを一定にする。尚、現状の合わせ精度は、s1やs2の精度はバラツキ3σで50nm〜300nmであり、t1やb1の精度はバラツキ3σ100nm〜500nmであるから、かなり精度の良いダイヤフラムを作製できる。(ポリマー層の厚みは、1μm〜2000μm程度であり、凹部の幅は1μm〜3000μm程度である。厚みおよび幅はもっと大きくても良い。)
ポリマー層712の固化後、モールド715をポリマー層712から分離する。(図97(f))モールド715の表面に離型剤を塗布したりしてモールド715がポリマー層712から分離しやすくしても良い。モールド715を分離しても、ポリマー層712はモールド713に支持されているので変形することはない。この後は、これまでに種々説明したようなプロセスを用いて種々の膜を積層し、またエッチングするなどして所望の積層膜構造とすることができる。たとえば、繰り返しになるが、ポリマー層712が圧電体である場合は、モールド715の凸部715(715−1、2)の跡である第1凹部720(720−1、2)が形成されたポリマー層712の上に導電体膜717を積層し、導電体膜717の所望のパターニングを行ない、その次に絶縁膜718を積層して導電体膜717を保護し、さらに絶縁膜717の所望のパターニングを行なう。この後、第1の薄板719を付着させる。この薄板719によって、第1凹部720−1、2の形状を固定化することもできる。(図97(g))
この後、図97(h)に示すように、モールド713を分離する。モールド713の分離をスムーズに行なうために、モールド713をポリマー層712に挿入する前に離型剤をモールド713の表面に塗布しても良い。モールド713を分離しても、ポリマー層712は第1の薄板719に支持されているので変形することはない。この後、モールド713の凸部713(713−1、2)の跡である第1凹部724(724−1、2)が形成されたポリマー層712の上に導電体膜721を積層し、導電体膜721の所望のパターニングを行ない、その次に絶縁膜722を積層して導電体膜721を保護し、さらに絶縁膜722の所望のパターニングを行なう。この後、第2の薄板722を付着させる。この薄板722によって、第2凹部724−1、2の形状を固定化することもできる。(図97(i))図97では記載していないが、他の所で説明した様に導電体膜からの引き出し電極や圧力伝達孔なども作製できる。以上のように、ポリマー層の両面からインプリント法を用いてポリマーを基板側壁とした圧力センサーを簡単なプロセスで作製でき、しかも小型化できる。この結果基板内に多数のセンサーを作製できるので、非常にコストの易いセンサーを実現できる。
図97では、図97(g)以降について基板を圧電体基板として説明したが、これまでの色々な所で説明したように、圧電性ポリマー以外のポリマーの場合でも、第1凹部および/または第2凹部側のポリマー上に第1導電体膜、その上に圧電体膜、その上に第2導電体膜を積層することによって、圧力センサーを作製できる。また、図98に示すように、ポリマー712内の第1凹部720(720−1、2)および/または第2凹部724(724−1、2)の側壁に対向電極導電体膜717(717−1、2、3)、721(721−1、2、3)を形成して、静電容量型圧力センサーを作製することもできる。すなわち、第1凹部720−1を容量空間とし、717−1および717−2をその対向電極とした静電容量型圧力センサー、第1凹部720−2を容量空間とし、717−2および717−3をその対向電極とした静電容量型圧力センサー、さらに第2凹部724−1を容量空間とし、721−1および721−2をその対向電極とした静電容量型圧力センサー、第2凹部724−2を容量空間とし、721−2および721−3をその対向電極とした静電容量型圧力センサーを作製できる。さらに、このようなインプリント法を用いて、圧力センサー以外にも、これまでに説明した音響トランスデューサー、ポンプデバイス、インクジェットデバイス、加速度センサー、圧電体マイクなども作製することができる。
図97においては、出発基板を平坦な基板である第1基板711を用いたが、モールドを出発基板とすることもできる。すなわち、図97(d)に示す状態から開始することができる。凹凸パターンを有するモールド713上に、ディップ法、滴下法、塗布法、スピンコート法等を用いて溶液ポリマー712をコートして、そこにやはり凹凸パターンを有するモールド715を挿入することもできる。モールド713の凹部にポリマーが入らない場合は、真空状態で溶液ポリマー712をコートすることもできる。この状態でポリマーの軟化温度以上で熱処理を行ない溶剤を蒸発させるとともに軟化または溶融させてモールド713上にポリマーを形成後モールド715を挿入することもできる。
図99は、ポリマーフィルムまたはポリマーシートを用いて、インプリントする方法について説明する図である。図99(a)に示すように、凹凸パターンを有するモールド713上にポリマーシート726を配置し、ポリマーの軟化温度以上で熱処理を行なうと、ポリマーシート726は軟化または溶融して、重力でモールド713上の凹部に入り込みモールド713上に充満して平坦に近く形成される。平坦になってから凹凸パターンを有するモールド715を挿入すれば、図99(b)に示すように、ポリマー側壁712(712−S1、S2、S3)を形成することができる。あるいは、ポリマーシート726を軟化または溶融させながらモールド715を挿入しても、同様にポリマー側壁712(712−S1、S2、S3)を形成することができる。以上のように、第1基板711を用いずに、モールド713および715だけを用いてもポリマーパターンを形成できるので、プロセスがさらに簡単になる。
熱可塑性ポリマーは、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンフィルム、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル、液晶ポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、N−メチルー2−ピロリドン(NMP)、アクリル樹脂(PMMA)、ポリ酢酸ビニル、ポリジメチルシロクサン(PDMS)、ポリ乳酸、各種ゴム(天然ゴムや合成ゴム)、あるいはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン(VDF/TrFE)共重合体等の強誘電性高分子、シアン化ビニリデン−酢酸ビニル共重合体、ナイロン−11等の極性高分子等の圧電性高分子など種々の高分子材料である。また、これらの熱可塑性ポリマーを複数混合させたものでも良い。さらに圧電性の熱可塑性ポリマーとしては、前記ポリマーの他に圧電性セラミック(たとえば、PZT、チタン酸バリウム(BaTiO3)、ニオブ酸リチウム(LiNO3)、水晶、メタニオブ酸鉛(PbNb2O6)、酸化亜鉛、これらの混合物)の微小粒子をこれらの熱可塑性ポリマーと混合したものも使用できる。
本発明の実施形態の説明において、説明をしなかったことで、他の部分で説明していることは、互いに矛盾しない限り適用できることは言うまでもない。