以下、本発明のエアバッグ装置の第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1ないし図5において、10はエアバッグ装置で、このエアバッグ装置10は、自動車のインストルメントパネル部に備えられる助手席乗員用のエアバッグ装置10を構成するものである。インストルメントパネル部は、車室の前部に車幅方向の略全長にわたり設けられ、このインストルメントパネル部の上方には、フロントウィンドウガラスが位置している。そして、このインストルメントパネル部の内部には、助手席の乗員に対向して、エアバッグ装置10が設置されている。
そして、このエアバッグ装置10は、折り畳んで配置されたエアバッグ12と、このエアバッグ12を膨張展開させるインフレータ13と、これらエアバッグ12及びインフレータ13を覆うカバー体14とを備えている。
インフレータ13は、円盤状あるいは円柱状などの形状で、燃焼タイプ(パイロタイプ)、あるいはガスを圧縮して貯留するストアードタイプ、これらを組み合わせたハイブリッドタイプなど、各種のインフレータ13が用いられる。また、このインフレータ13の外周には、四角形状のフランジ部13aが突設されており、このフランジ部13aの四隅近傍には、ボルト挿通孔13bがそれぞれ設けられている(一部のみ図示)。さらに、このインフレータ13は、フランジ部13aよりも一端側の部分がエアバッグ12内に挿入されて連結されている。
そして、このエアバッグ装置10を備えた自動車が衝突などすると、インフレータ13から供給されるガスによりエアバッグ12が膨出し、この膨出する圧力により、カバー体14を破断して膨出口を形成し、膨出側である所定方向としての上方Aに向かってエアバッグ12が突出し、エアバッグ12が乗員の前方に膨張展開する。なお、以下、エアバッグ12の膨出側すなわち乗員側である所定方向を上方(図1などに示す矢印A方向)、正面側あるいは表面側とし、膨出側の反対側を下方、背面側あるいは裏面側として説明する。また、このエアバッグ装置10を自動車に取り付けた状態における前後方向及び両側方向を、前後方向(図1に示す矢印F方向及び矢印B方向)及び両側方向(図5に示す矢印L方向及び矢印R方向)として説明するが、エアバッグ装置10の取付状態は、この構成に限られず、例えば、膨出側が後側上方あるいは後方に向かう状態で取り付けることもできる。
そして、カバー体14は、エアバッグリッドなどとも呼ばれ、自動車の内装パネルであるインストルメントパネル部に一体的に構成されるものであり、一般的な材質として、TPO(熱可塑性オレフィン系エラストマー樹脂)、TPE(熱可塑性エラストマー系樹脂)、PP(ポリプロピレン)あるいはPPC(添加剤入りポリプロピレン)などが用いられるものである。そして、このカバー体14は、インストルメントパネルを構成する表板部21と、この表板部21の背面21aから下方に向けて突出する裏板部としての側壁部22とを一体に、あるいは一体的に備えている。
表板部21は、背面21a側に、開裂の基点となる破断予定部としての弱部であるテアライン24が形成され、非展開部である外郭部25と、この外郭部25に囲まれた一対の平面長方形状の扉予定部26,26とが区画形成されている。さらに、この扉予定部26,26が、通常時に折り畳んで収納されたエアバッグ12の膨出側を覆っている。そして、この表板部21の背面21aには、扉予定部26,26の一側である前側に位置する側壁部22と反対側の扉予定部26,26の他側である後側の位置に、固定部27が突設されている。
テアライン24は、テア、テア溝、破断予定部、開裂予定溝、扉予定線部あるいは破断部などとも呼び得るもので、隣接する部分より脆弱で、破断可能及び変形容易な弱部であり、本実施の形態では、中央部を両側に延びる中央テアライン24aと、この中央テアライン24aの両側に連続する側部テアライン24b,24bとを有した略「H」の字状に構成されている。また、テアライン24は、例えば射出成形時に金型のキャビティの形状により成形され、例えば鈍角状に下方に開く断面三角状の溝部28により、テアライン24の幅方向の略中央部のいわばテアセンター部が最も厚さ寸法が小さい最薄部である破断予定線29となっている。そして、テアライン24は、この破断予定線29に沿って破断することが好ましく、この破断予定線29がいわば所望の破断位置となっている。
固定部27は、引っ掛けリブとも呼ばれ、扉予定部26の他側の位置で表板部21の背面21aに対してほぼ垂直リブ状に突出している。この固定部27は、中央テアライン24aに対してほぼ平行、すなわち両側方向に延びるように配置されており、表板部21の背面21aに対して側壁部22よりも突出量が小さい。さらに、この固定部27の基端側には、側壁部22の一部を係合するための開口部31が両側方向に沿って長穴状に形成されている。
なお、表板部21は、例えばインストルメントパネルを構成するアウタ部、このアウタ部の背面側に位置するインナ部及びアウタ部の表面を覆う表皮部などにより多層に構成してもよい。
また、側壁部22は、固定用側壁とも呼ばれ、四角形の平板状に形成されており、扉予定部26の一側の位置で表板部21の背面21aに対してほぼ垂直状に突出している。さらに、この側壁部22は、中央テアライン24aに対してほぼ平行、すなわち両側方向に延びるように配置され、基端がヒンジ部33により表板部21に対して連結されている。また、この側壁部22の中央部には、インフレータ13が挿通される円形状のインフレータ挿通孔34が厚さ方向に貫通して形成されているとともに、このインフレータ挿通孔34の周囲に、エアバッグ12をインフレータ13とともに保持する保持部材であるリテーナ35を固定するための例えば4つのリテーナ固定用孔36が厚さ方向に貫通して形成されている。さらに、この側壁部22の先端側である下端側には、この側壁部22を湾曲させた状態で表板部21に対して固定部27で係合固定するための係合部37が形成されている。そして、この側壁部22は、係合部37が固定部27に対して係合固定されることにより、折り畳まれたエアバッグ12及びインフレータ13の少なくとも上下を覆って収納する収納空間38を、表板部21との間に区画する。
係合部37は、引っ掛け爪部とも呼ばれ、側壁部22の先端側全体に亘って形成されており、この側壁部22に対して前側すなわち一主面22a側、言い換えるとエアバッグ12及びインフレータ13が取り付けられる他主面22bに対して反対側へと折り返し形成されている。
また、ヒンジ部33は、側壁部22を表板部21に対して前後方向に湾曲(変形)可能とするように連結するものであり、側壁部22の基端全体に亘って形成されている。また、このヒンジ部33は、側壁部22に対して前側、すなわち側壁部22の一主面22a側が薄肉状に形成されているとともに、両側方向に略等間隔に離隔されて補強用のリブ33aが順次形成されている。
また、リテーナ35は、インフレータ13を保持するとともにこのインフレータ13とエアバッグ12とを一体的に連結してエアバッグユニットUを構成するもので、例えば金属などにより四角形板状に形成されており、エアバッグ12を例えば複数の基布の縫製によって形成する際に予めエアバッグ12の内部に配置されている。このリテーナ35は、インフレータ13を挿通する円形状の開口35aが中央部に形成されており、この開口35aの周囲である四隅などに、固定部材である複数、例えば4つのスタッドボルト41が溶接などにより一体化されている(一部のみ図示)。これらスタッドボルト41は、リテーナ35の厚さ方向に突出しており、エアバッグ12の外部へと露出し、インフレータ13のフランジ部13aのボルト挿通孔13b及び側壁部22のリテーナ固定用孔36にそれぞれ先端側が挿通されて、側壁部22の一主面22a側でナット42により締め付け固定されている。したがって、スタッドボルト41を介して、エアバッグ12及びインフレータ13が側壁部22に対して固定されている。
次に、エアバッグ装置10の組み立て工程を説明する。
まず、図2及び図5に示すように、折り畳まれたエアバッグ12に対して予め取り付けたリテーナ35に一体化されたスタッドボルト41をそれぞれインフレータ13のボルト挿通孔13bに挿通してインフレータ13をリテーナ35の開口35aに挿入し、エアバッグユニットUを構成した後、このエアバッグユニットUを平板状の側壁部22に対して他主面22b側(後側)から取り付ける。すなわち、各スタッドボルト41を各リテーナ固定用孔36に挿通するとともに、インフレータ13をインフレータ挿通孔34に挿通し、側壁部22の一主面22a側(前側)に突出した各スタッドボルト41をナット42により締め付けることで、エアバッグユニットUを側壁部22の他主面22b側に固定する。
次いで、図3に示すように、側壁部22を、ヒンジ部33を中心として後方へと回動させて湾曲させ、この側壁部22の先端側の係合部37を、表板部21の背面21aから突出する固定部27の開口部31に挿入して係合させる。
この結果、図1に示すように、エアバッグ12及びインフレータ13が収納空間38の内部に収納された状態で、表板部21の扉予定部26,26の背面側にエアバッグ12が対向し、エアバッグ装置10が完成する。
そして、このエアバッグ装置10を備えた自動車が衝突などすると、センサが検出した衝撃に基づき制御手段がインフレータ13を起動し、このインフレータ13から供給されるガスによりエアバッグ12を膨出させ、この膨出する圧力によりカバー体14のテアライン24を破断する。なお、通常、テアライン24は、中央テアライン24aが破断し、次いで、両側の側部テアライン24bが破断するようになっている。すると、扉予定部26から図1に2点鎖線で示す前後の扉部43が形成され、これら扉部43を前後に展開させて突出口を形成し、この突出口からエアバッグ12を矢印A方向に展開させる。そして、このように膨張展開したエアバッグ12により、乗員を迅速に拘束して保護できる。
このように、本実施の形態によれば、カバー体14の背面側の扉予定部26の一側に突設した側壁部22にエアバッグ12及びインフレータ13を取り付け、この側壁部22を、エアバッグ12を扉予定部26の背面側に対向させるように湾曲させてその先端側である係合部37を扉予定部26の他側に固定することでエアバッグ装置10を構成できる。したがって、例えばエアバッグ12及びインフレータ13を収納するためのケース体などの、カバー体14の他の部材を用いることなくエアバッグ12及びインフレータ13を収納及び固定でき、部品点数を削減できるとともに、カバー体14と他の部材との組み付けも不要となり、組み立てが容易となる。この結果、部品コスト及び製造コストなどのコストを削減できるとともに、エアバッグ装置10の重量を軽減できる。
また、側壁部22の基端側に変形可能なヒンジ部33を設けることにより、カバー体14をヒンジ部33からより容易に湾曲させてその先端側である係合部37を扉予定部26の他側に容易に固定でき、組み立てがより容易となる。
さらに、カバー体14の表板部21の背面21a側の扉予定部26の他側に突設した固定部27に対して係合される係合部37を側壁部22の先端側に設けることにより、この係合部37を固定部27に係合させるだけで、カバー体14の先端側を扉予定部26の他側に対して、より容易に固定でき、組み立てがより容易となるとともに、側壁部22を固定するためのボルト、あるいはナットなどの部材が別途不要となり、エアバッグ装置10をより軽量化できる。
次に、第2の実施の形態を図6を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
この第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態において、カバー体14の表板部21の背面21aの少なくとも一側、本実施の形態では左右両側に、リブ状の側壁44,44が下方に向けてほぼ垂直に突設されているものである。
これら側壁44,44は、収納空間38の両側を覆って閉塞あるいは実質的に閉塞するものであり、表板部21のテアライン24の側部テアライン24b,24bの外側方の位置に、前後方向に沿って形成されている。すなわち、これら側壁44,44は、扉予定部26,26の両側の位置で、側壁部22に対して交差(直交)する方向に沿って扉予定部26,26の外方の外郭部25に形成されている。したがって、これら側壁44,44は、側壁部22の先端側の係合部37を固定部27の開口部31に係合固定することにより、表板部21及び側壁部22とともに、エアバッグ12及びインフレータ13の上下左右ほぼ全体を覆って収納する収納空間38を区画する。なお、本実施の形態において、これら側壁44,44は、側壁部22の両側よりも外方で、かつ、この側壁部22に対して後方に配置されているが、扉予定部26,26の側方の位置であれば、例えば側壁部22の両側に少なくとも一部が対向する位置、換言すれば側壁部22の両側よりも外方でかつ側壁部22と一部が前後方向に重なる位置に配置してもよいし、側壁部22の両側とほぼ面一、あるいはこの側壁部22の両側よりも内方の位置でかつ側壁部22の後方の位置(側壁部22の一主面22aに対向する位置)などに配置してもよい。
そして、上記第1の実施の形態と同様に、エアバッグ12及びインフレータ13を取り付けた側壁部22を、ヒンジ部33を中心として後方へと回動させて湾曲させ、この側壁部22の先端側の係合部37を、表板部21の背面21aから突出する固定部27の開口部31に挿入して係合させることで、エアバッグ12及びインフレータ13を収納空間38の内部に収納したエアバッグ装置10を組み立てる。
さらに、インフレータ13から供給されるガスにより膨出するエアバッグ12は、側壁44,44によりガイドされながらカバー体14のテアライン24を破断させる。
このように、カバー体14の背面側の扉予定部26の一側に突設した側壁部22にエアバッグ12及びインフレータ13を取り付け、この側壁部22を、エアバッグ12を扉予定部26の背面側に対向させるように湾曲させてその先端側である係合部37を扉予定部26の他側に固定するなど、上記第1の実施の形態と同様の構成を有することにより、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
さらに、収納空間38の両側を(実質的に)閉塞する側壁44,44を表板部21の背面21aの扉予定部26,26の両側に突設することにより、側壁部22の先端側(係合部37)を表板部21(の固定部27)に固定した状態で、表板部21、側壁部22及び側壁44によってエアバッグ12(エアバッグユニットU)のほぼ全体を覆うことができるので、エアバッグ12(エアバッグユニットU)の収納空間38への収納性及び収まりを向上できるとともに、エアバッグ12の展開時には、このエアバッグ12の展開方向を側壁44,44によりガイドでき、エアバッグ12をより円滑に展開させることができる。
なお、上記各実施の形態において、図7に示す第3の実施の形態のように、側壁部22の先端側に、係合部37に代えて、孔部45を厚さ方向に貫通して例えば複数箇所に形成するとともに、固定部27に、開口部31に代えて挿通孔部46を形成し、これら孔部45及び挿通孔部46を位置合わせして、収納空間38の外側(後側)からボルト47を挿入し、収納空間38の内側でナット48により締め付けることで、側壁部22の先端側を表板部21の背面21aにより強固に固定してもよい。また、図8に示す第4の実施の形態のように、側壁部22の先端側に、係合部37に代えて、リブ状の突出部51を一主面22aに突設し、側壁部22の一主面22aと突出部51との間で固定部27を前後方向に挟み込むとともに、側壁部22及び突出部51に孔部52,53を形成して、これら孔部52,53及び固定部27の挿通孔部46を位置合わせして、収納空間38の外側(後側)からボルト47を挿入し、収納空間38の内側でナット48により締め付けることで、側壁部22の先端側を表板部21の背面21aにより強固に固定してもよい。さらに、側壁部22の先端側は、表板部21の背面21aに対して、例えば熱かしめ、あるいは振動溶着などを用いて、より強固に固定してもよい。すなわち、側壁部22の先端側を表板部21に固定する構成は、任意に形成できる。
また、側板部22及びヒンジ部33は、上記各実施の形態のように、外部から力が加わっていない状態でエアバッグユニットUを取り付け可能とする他、外部から力を加えて湾曲させた状態でエアバッグユニットUを取り付け可能とすることもできる。
次に、第5の実施の形態を図9を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
このエアバッグ装置10は、自動車のハンドル55に備えられる運転席乗員(運転手)用のエアバッグ装置10であり、エアバッグユニットUをカバー体56により収納保持している。なお、ハンドル55は、通常傾斜した状態で車両に備えられるステアリングシャフトに装着されるものであるが、以下、車両の直進状態を基準とし、ステアリングシャフト側を背面側、乗員側を正面として、フロントガラスに向かう方向(矢印A方向)を上側として説明する。
ハンドル55は、ステアリングホイールとも呼ばれるもので、円環状をなす湾曲状の把持部、すなわちグリップ部であるリム部61と、このリム部61の内側に位置する固定部としての本体部(ボス部)であるハブ部62と、これらリム部61とハブ部62とを連結する複数の連結部としてのスポーク部63と、ハブ部62の下側を覆うロアカバー64とを有している。
また、ハブ部62は、背面部に形成された図示しない円筒状のボスなどを介してステアリングシャフトに嵌着固定されている。また、このハブ部62とスポーク部63とは、芯金が一体形成され、スポーク部63の芯金にリム部61の芯金が溶接されて一体的に構成されている。そして、これらハブ部62、スポーク部63及びリム部61の芯金は、軟質の表皮部により覆われている。
エアバッグ装置10は、ハブ部62の正面側を覆うように配置されている。このエアバッグ装置10のカバー体56は、一般的な材質として、TPO(熱可塑性オレフィン系エラストマー樹脂)、TPE(熱可塑性エラストマー系樹脂)、PP(ポリプロピレン)あるいはPPC(添加剤入りポリプロピレン)などが用いられるものである。そして、このカバー体56は、ハンドル55の中央部の正面側を構成する表板部66と、この表板部66の背面66aから突出する裏板部としての側壁部67とを一体、あるいは一体的に備えている。
表板部66は、板状に形成されており、背面66a側に、開裂の基点となる破断予定部としての弱部である例えば左右幅方向に沿って一直線状のテアライン71が形成されており、非展開部である外郭部72と、この外郭部72に周囲が囲まれた一対の扉予定部73,73とが上下に区画形成されている。さらに、この扉予定部73,73が、通常時に折り畳んで収納されたエアバッグ12の膨出側を覆っている。そして、この表板部66は、外郭部72に対して扉予定部73,73が正面側に膨出するように湾曲して形成されている。
テアライン71は、テア、テア溝、破断予定部、開裂予定溝、扉予定線部あるいは破断部などとも呼び得るもので、隣接する部分より脆弱で、破断可能及び変形容易な弱部である。また、テアライン71は、例えば射出成形時に金型のキャビティの形状により成形され、例えば鈍角状に開く断面三角状の溝部75により、テアライン71の幅方向の略中央部のいわばテアセンター部が最も厚さ寸法が小さい最薄部である破断予定線76となっている。そして、テアライン71は、この破断予定線76に沿って破断することが好ましく、この破断予定線76がいわば所望の破断位置となっている。
外郭部72は、ハブ部62とスポーク部63とが連続する部分である装置固定部78に例えばねじ79などにより固定されている。装置固定部78は、上下方向に沿う平面状に形成されており、エアバッグ装置10のカバー体56の表板部66の外郭部72の一部(外郭部72の他側)である下側の部分72aを除く部分及び側壁部67の下側の部分を面状に受けることで、エアバッグ装置10がハンドル55に対して安定的に固定される座部となっている。
なお、表板部66は、例えばアウタ部、このアウタ部の背面側に位置するインナ部及びアウタ部の表面を覆う表皮部などにより多層に構成してもよい。
また、側壁部67は、固定用側壁とも呼ばれ、扉予定部73の一側である上側の位置で表板部66の背面66aに対して突出している。さらに、この側壁部67は、基端がテアライン71に対してほぼ平行、すなわち両側方向に延びてヒンジ部81により表板部66に対して連結されている。また、この側壁部67は、ヒンジ部81と反対側の先端側が表板部66の背面66a側へと予め湾曲されており、この先端側には、この側壁部67を表板部66に対して固定するための被固定部82が形成されている。したがって、この側壁部67は、予め一主面67a側が背面側に位置し、他主面67b側が表板部66の背面66aと対向している。さらに、この側壁部67の中央部、すなわちヒンジ部81と被固定部82との間には、表板部66の扉予定部73,73の膨出方向に対して反対方向へと、すなわち背面側へと膨出するように湾曲した湾曲部83が形成されており、この湾曲部83には、インフレータ13が挿通される円形状のインフレータ挿通孔84が厚さ方向に貫通して形成されているとともに、このインフレータ挿通孔84の周囲に、エアバッグユニットUのリテーナ35を固定するための例えば4つのリテーナ固定用孔85が厚さ方向に貫通して形成されている。そして、この側壁部67は、被固定部82が表板部66の外郭部72とともに装置固定部78に対してねじ79などにより固定されることで、折り畳まれたエアバッグ12及びインフレータ13の周囲全体を覆って収納する収納空間87を、湾曲部83と表板部66の扉予定部73,73との間に区画する。
ヒンジ部81は、側壁部67を表板部66に対して湾曲(変形)可能とするように連結するものであり、側壁部67の基端全体に亘って形成されている。また、このヒンジ部81は、側壁部67に対して下側、すなわち側壁部67の他主面67b側が薄肉状に形成されているとともに、両側方向に略等間隔に離隔されて補強用のリブ81aが順次形成されている。
次に、エアバッグ装置10の組み立て工程を説明する。
まず、上記各実施の形態と同様に構成したエアバッグユニットUを側壁部67の湾曲部83に対して他主面67b側から取り付ける。すなわち、側壁部67を、ヒンジ部81を中心として半表板部66側へと回動させて開いた状態で各スタッドボルト41を各リテーナ固定用孔85に挿通するとともに、インフレータ13をインフレータ挿通孔84に挿通し、側壁部67の一主面67a側に突出した各スタッドボルト41をナット42により締め付けることで、エアバッグユニットUを側壁部67の他主面67b側に固定する。
次いで、側壁部67を、ヒンジ部81を中心として表板部66側へと回動させて湾曲させ、この側壁部67の先端側の被固定部82を、表板部66の外郭部72の下側の部分72aに重ね、表板部66の外郭部72の下側の部分72aを除く部分と、この外郭部72の下側の部分72aに重ねた側壁部67の被固定部82とを、ハンドル55の装置固定部78に対してねじ79により正面側から一体的に固定する。
この結果、エアバッグ12及びインフレータ13が収納空間87の内部に収納された状態で、表板部66の扉予定部73,73の背面側にエアバッグ12が対向し、エアバッグ装置10が完成する。
そして、このエアバッグ装置10を備えた自動車が衝突などすると、センサが検出した衝撃に基づき制御手段がインフレータ13を起動し、このインフレータ13から供給されるガスによりエアバッグ12を膨出させ、この膨出する圧力によりカバー体56のテアライン71を破断することで、扉予定部73,73から扉部が形成され、これら扉部を上下に展開させて突出口を形成し、この突出口からエアバッグ12を展開させる。そして、このように膨張展開したエアバッグ12により、乗員を迅速に拘束して保護できる。
このように、上記第5の実施の形態によれば、カバー体56の背面側の扉予定部73の一側に突設した側壁部67にエアバッグ12及びインフレータ13を取り付け、この側壁部67を、エアバッグ12を扉予定部73の背面側に対向させるように湾曲させてその先端側である被固定部82を扉予定部73の他側に固定するなど、上記各実施の形態と同様の構成を有することにより、エアバッグ装置10を運転席用に適用しても、上記各実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
また、側壁部67の先端側である被固定部82をカバー体56の背面側に固定するためのねじ79によってエアバッグ装置10をハンドル55に対して固定できる、すなわち側壁部67の固定用の部材とエアバッグ装置10の取り付け用の部材とを1つの部材で共用できるため、側壁部67の固定とエアバッグ装置10の取り付けとが同時にでき、組み立てがより容易となるとともに、より軽量化できる。
なお、上記第5の実施の形態において、ねじ79により側壁部67をカバー体56の背面側に固定するとともにエアバッグ装置10をハンドル55に固定する構成に代えて、上記各実施の形態のように、側壁部67をカバー体56の背面側に固定する構成を適用してもよい。
また、上記各実施の形態のエアバッグ装置10の構成は、自動車の助手席、あるいは運転席などだけでなく、任意の箇所に適用できる。