JP5668727B2 - 車両用ブレーキシステム - Google Patents

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Description

本発明は、車両に搭載されるブレーキシステムに関する。
下記特許文献には、ブレーキ操作部材であるブレーキペダルに加えられた運転者のブレーキ操作力とは別の力を発生させる力源装置として、高圧の作動液を供給する高圧源装置を備えた車両用ブレーキシステムが開示されている。それらのシステムは、通常時、車輪に設けられたブレーキ装置が発生させるブレーキ力が、高圧源装置から供給される作動液の圧力、つまり、力源装置が発生させる力である力源力に依存したブレーキ力(以下、「力源力依存ブレーキ力」と言う場合がある)となるように構成されており、それらのシステムでは、通常時、その力源力依存ブレーキ力が制御されることで、ブレーキ力がブレーキペダルの操作の程度に応じた大きさとなるように制御される。そのような車両用ブレーキシステムは、力源力依存型車両用ブレーキシステムと呼ぶことができる。一方で、下記特許文献のシステムは、何らかの失陥が生じた場合、作動モードが切り換えられる。詳しく言えば、作動モードが、通常時の作動モードである通常モードから、失陥に対処するための作動モードである失陥時モードに移行する。その結果、ブレーキ力が、通常モードにおいて発生させられるブレーキ力である通常ブレーキ力から、失陥時モードにおいて発生させられるブレーキ力である失陥時ブレーキ力に変更されることになる。
特開2011−156998号公報 特開2009−61816号公報
上記通常ブレーキ力と上記失陥時ブレーキ力とが、大きさにおいて異なる場合には、ブレーキ操作中に通常モードから失陥時モードに移行する際、ブレーキ操作の程度が変わらないにも拘わらずブレーキ力が急変する事態となる。この事態は、安定したブレーキ力の発生,良好なブレーキ操作感といった観点からは、好ましくない。つまり、力源力依存型車両用ブレーキシステムには、それらの観点における改良の余地が残されており、改良を加えることで、そのシステムの実用性を向上させることが可能となる。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高い車両用ブレーキシステムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の車両用ブレーキシステムは、上記力源力依存型の車両用ブレーキシステムであって、ブレーキ操作中に、通常モードから失陥時モードに移行する際、通常モードで発生させられるブレーキ力と、失陥時モードで発生させられるブレーキ力との中間の大きさのブレーキ力を発生させるように構成される。
本発明の車両用ブレーキシステムによれば、ブレーキ操作中に通常モードから失陥時モードに移行するときであっても、上述したブレーキ力の急変が、抑制若しくは緩和されることになり、本発明の車両用ブレーキシステムは、上述の安定したブレーキ力の発生,良好なブレーキ操作感といった観点において、優れたシステムとなる。つまり、本発明によれば、実用性の高い車両用ブレーキシステムが実現されることになるのである。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合があり、本願発明を含む概念である)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(2)項が請求項2に、(3)項が請求項3に、(6)項が請求項4に、(4)項が請求項5に、(5)項が請求項5に、それぞれ相当する。また、(21)項が請求項7に相当し、(23)項が請求項8に、(26)項が請求項9に、(27)項が請求項10に、(29)項が請求項11に、(30)項が請求項12に、(31)項が請求項13に、それぞれ相当する。さらに、(41)項が請求項14に、(42)項が請求項15に、(44)項が請求項16に、それぞれ相当する。
≪基本態様≫
(1)(A)運転者によってブレーキ操作がなされるブレーキ操作部材と、(B)そのブレーキ操作部材に加えられる力であるブレーキ操作力とは別の力を発生させる力源装置と、(C)車輪に設けられ、ブレーキ力を発生させるブレーキ装置と、(D)そのブレーキ装置が発生させるブレーキ力を制御する制御装置とを備え、通常時において、前記ブレーキ装置が発生させるブレーキ力の少なくとも一部が、前記力源装置が発生させる力である力源力に依存したブレーキ力である力源力依存ブレーキ力となるように構成された車両用ブレーキシステムであって、
前記制御装置が、
通常時において、前記力源力依存ブレーキ力を制御することで、ブレーキ操作の程度に応じた大きさのブレーキ力である通常ブレーキ力を車輪に与えるための通常制御を実行する通常制御部と、
当該車両用ブレーキシステムの作動モードが、ブレーキ操作中に、前記通常制御の下で前記ブレーキ装置がブレーキ力を発生させる通常モードから、当該車両用ブレーキシステムの失陥に対処するための失陥時モードに移行する際、前記力源力依存ブレーキ力を制御することで、前記通常ブレーキ力と前記失陥時モードにおいて車輪に与えられるブレーキ力である失陥時ブレーキ力との中間の大きさのブレーキ力である過渡ブレーキ力を車輪に与えるための過渡制御を実行する過渡制御部と
を有する車両用ブレーキシステム。
本態様によれば、ブレーキ操作中に上記通常モードから上記失陥時モードに切換る場合であっても、上記過渡制御が実行されて上記中間の大きさのブレーキ力としての過渡ブレーキ力が発生させられるため、上述のブレーキ力の急変が、抑制若しくは緩和されることとなる。なお、過渡ブレーキ力は、例えば、上記通常ブレーキ力と同様に、ブレーキ操作の程度に応じた大きさのブレーキ力とすることが可能である。
上記「力源装置」は、高圧の作動液の圧力によって上記力源力を発生させるようなものであってもよく、また、電磁力によって上記力源力を発生させるようなものであってもよい。具体的に言えば、作動液を高圧にする高圧源装置を含んで構成されるようなものであってもよく、電磁モータを含んで構成されるようなのもであってもよい。後者には、例えば、電磁モータの発生させる力によってブレーキ装置に供給される作動液を加圧するようなものも含まれる。
また、本態様のシステムでは、通常ブレーキ力の一部が上記力源力依存ブレーキ力とされてもよく、また、通常ブレーキ力の全部が上記力源依存ブレーキ力とされてもよい。言い換えれば、例えば、ブレーキ装置が、ブレーキ操作力に依存したブレーキ力(以下、「操作力依存ブレーキ力」と言う場合がある)に加えて、力源力依存ブレーキ力を発生させるように、当該システムが構成されていてもよく、また、ブレーキ装置が、操作力依存ブレーキ力を発生させずに、力源力依存ブレーキ力のみを発生させるように、当該システムが構成されていてもよいのである。なお、前者は、力源力によって操作力をアシストする態様のシステムと考えることが可能である。さらに、当該システムが、回生ブレーキシステムをも搭載する場合、通常ブレーキ力の一部が、その回生ブレーキシステムが発生させる回生ブレーキ力とされていてもよい。
失陥時ブレーキ力は、多くの場合、通常ブレーキ力よりも小さくされるが、逆に、通常ブレーキ力よりも大きくされてもよい。また、失陥時ブレーキ力は、通常ブレーキ力と同様に、それの少なくとも一部が力源力依存ブレーキ力とされてもよく、また、力源力依存ブレーキ力を含まないようにされてもよい。後者には、例えば、失陥時ブレーキ力の全部が、上述の操作力依存ブレーキ力とされる態様が含まれる。その態様は、力源装置自体が失陥した場合等において有効な態様である。さらに、当該システムが、回生ブレーキシステムをも搭載する場合、失陥時ブレーキ力の一部が、回生ブレーキ力とされていてもよく、失陥時において回生ブレーキ力を発生させないようにされていることで、失陥時ブレーキ力が、回生ブレーキ力を含まないようにされていてもよい。
≪過渡制御実行条件≫
(2)前記制御装置が、前記通常モードから前記失陥時モードへの移行の際、前記通常ブレーキ力と前記失陥時ブレーキ力との差が設定差を超える状況において、前記過渡制御部が前記過渡制御を実行するように構成された(1)項に記載の車両用ブレーキシステム。
本態様は、過渡制御の実行の条件に関する限定を加えた態様である。通常ブレーキ力と失陥時ブレーキ力との差が、ある程度大きいときに、通常モードから失陥時モードへ移行した場合、ブレーキ力の急変が生じる。そのことを考慮して、本態様では、作動モードの移行においてブレーキ力の変化が実質的に問題となるような場合に、過渡制御を実行するように、上記設定差を設定することが望ましい。
≪過渡制御終了条件≫
以下のいくつかの項の態様は、過渡制御を終了させるための条件に関する限定を加えた態様である。
(3)前記制御装置が、前記過渡ブレーキ力と前記失陥時ブレーキ力との差が設定差を下回る状況となった場合に、前記過渡制御部による前記過渡制御の実行を終了させるように構成された(1)項または(2)項に記載の車両用ブレーキシステム。
過渡ブレーキ力と失陥時ブレーキ力との差が小さくなったときに過渡制御を終了して過渡ブレーキ力から失陥時ブレーキ力に切換わる場合には、ブレーキ力の変化は比較的小さく、その変化が問題とはなり難い。そのことを考慮して、本態様は、作動モードの移行においてブレーキ力の変化が実質的に問題とならなくなった場合に、過渡制御を終了させるように、上記設定差を設定することが望ましい。
(4)前記制御装置が、前記過渡制御による前記過渡制御の実行の時間が設定時間を超えた場合に、その実行を終了させるように構成された(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
過渡制御が比較的長い時間実行された場合は、ブレーキ操作が比較的長い時間行われたと考えることができ、そのときの車両走行速度は、相当に低くなっていると考えることができる。車両走行速度が低い場合には、ブレーキ力の変化がある程度のものであっても、問題とはならない。特に、ブレーキ力がある程度低下しても、安定したブレーキ力,良好なブレーキ操作感といった観点における悪影響は小さいと考えることができる。そのことを考慮して、本態様では、ブレーキ力の変化が実質的に問題とはならなくなった場合に、過渡制御を終了させるように、上記設定時間を設定することが望ましい。
(5)前記制御装置が、ブレーキ操作が終了した場合に、前記過渡制御部による過渡制御の実行を終了させるように構成された(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
一旦ブレーキ操作が終了した後には、次のブレーキ操作の最初の段階から失陥時ブレーキ力を発生させたとしても、ブレーキ操作中におけるブレーキ力の急変という問題は生じない。本態様では、そのことを考慮して、作動モードの切換え時に行われていたブレーキ操作が終了した場合に、過渡制御を終了させるようにしているのである。
≪過渡ブレーキ力の発生手法≫
(6)前記過渡制御部が、前記過渡制御において、ブレーキ操作の程度が減少するときに、ブレーキ操作の程度の変化に対しての前記過渡ブレーキ力の変化の勾配を、ブレーキ操作の程度が増加するときの勾配に沿って前記過渡ブレーキ力を減少させた場合に比較して、より前記失陥時ブレーキ力に近づく側の勾配となるように設定し、その設定された勾配に沿った前記過渡ブレーキ力を車輪に与えるための制御を行うように構成された(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
一般的に、通常ブレーキ力および失陥時ブレーキ力は、それらの大きさが異なるものの、ブレーキ操作の程度の増加に応じて増加するような勾配に沿って発生されられる。そのことに鑑みれば、過渡ブレーキ力は、それら通常ブレーキ力および失陥時ブレーキ力の中間の大きさのブレーキ力として、それら通常ブレーキ力および失陥時ブレーキ力と同様に、ブレーキ操作の程度の増加に応じて増加するような勾配に沿って発生されられることが望ましい。本態様は、このような勾配に沿った過渡ブレーキ力を発生させる場合において、ブレーキ操作の程度が増加する場合における勾配と、ブレーキ操作の程度が減少する場合における勾配とを、互いに異ならせる態様である。本態様は、過渡制御中においてブレーキ操作の程度が減少する状況が存在する場合に有効である。具体的に言えば、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダルの踏み戻し操作が行われる場合に有効な態様である。なお、ここで言う「勾配」は、必ずしも直線的なブレーキ力の変化における勾配に限定されず、曲線的なブレーキ力の変化における勾配をも含む概念である。
本態様では、過渡制御において、ブレーキ操作の程度が減少する際の勾配が、ブレーキ操作の程度が増加する際の勾配に沿って減少させた場合よりも、より失陥時ブレーキ力に近づくような勾配とされている。そのため、本態様によれば、ブレーキ操作の程度が減少する場合、比較的早い時期に、過渡ブレーキ力が失陥時ブレーキ力に近づくこととなる。したがって、本態様を、例えば、先に説明した態様、つまり、過渡ブレーキ力と失陥時ブレーキ力との差が設定差を下回る状況となった場合に過渡制御部による過渡制御の実行を終了させるように構成された態様と組み合わせることにより、ブレーキ操作の程度が減少する際、より早い時期に、ブレーキ力の変化が問題にならない状態で過渡制御を終了させることが可能となる。
≪通常制御の手法、対処する失陥、および、過渡制御における対処手法≫
以下のいくつかの項は、通常制御における制御手法、対処される失陥、過渡制御において失陥に対処するための手法に関する限定を加えた態様である。
(11)前記制御装置が、前記ブレーキ装置が発生させるブレーキ力を指標するブレーキ力指標を利用して前記ブレーキ装置が発生させるブレーキ力の制御を実行するように構成されており、
前記通常制御部および前記過渡制御部が、それぞれ前記通常制御および前記過渡制御として、ブレーキ力指標の制御目標となる目標ブレーキ力指標を、前記ブレーキ操作の程度に基づいて決定し、前記ブレーキ装置が、その目標ブレーキ力指標に対応するブレーキ力を発生させるような制御を実行するように構成された(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
本態様によれば、過渡制御においてもブレーキ操作の程度に応じた大きさの過渡ブレーキ力が得られるとともに、通常ブレーキ力と失陥時ブレーキ力との中間の大きさの過渡ブレーキ力を確実に得ることが可能となる。
本態様における「ブレーキ力指標」は、ブレーキ装置が発生させるブレーキ力、詳しくは、そのブレーキ力の大きさを直接的若しくは間接的に表わすものと考えることができる。本態様では、ブレーキ装置が発生させるブレーキ力そのものをブレーキ力指標として採用してもよく、当該システムが液圧ブレーキシステムである場合には、ブレーキ装置に供給される作動液の圧力を採用してもよい。具体的には、マスタシリンダ装置を有してそのマスタシリンダ装置から供給される作動液がブレーキ装置に供給されるようなシステムの場合、そのマスタシリンダ装置から供給される作動液の圧力、すなわちマスタ圧を、ブレーキ力指標として採用することができる。また、当該システムが、液圧ブレーキシステムとされるとともに、後に説明するように、力源装置としての高圧源装置と、その高圧源装置から供給された作動液を調圧して供給する調圧装置とを有して、ブレーキ装置がその調圧装置から供給される作動液の圧力に応じた大きさのブレーキ力を発生させるように構成されている場合には、その調圧装置から供給される作動液の圧力を、ブレーキ力指標として採用することも可能である。さらに、調圧装置が、自身から供給される作動液の圧力を、自身に導入されるパイロット圧に応じて調圧するように構成された調圧器を有している場合には、そのパイロット圧を、ブレーキ力指標として採用することも可能である。
(12)当該車両用液圧ブレーキシステムが、ブレーキ力指標を検出するブレーキ力指標検出器を備え、
前記通常制御部が、前記通常制御において、前記ブレーキ力指標検出器によって検出された実際のブレーキ力指標を前記目標ブレーキ力指標に近づけるべく前記力源力依存ブレーキ力を制御するように構成された(11)項に記載の車両用ブレーキシステム。
本態様のシステムでは、端的に言えば、通常制御において、上記ブレーキ力指標検出器によって検出された実際のブレーキ力指標に基づいて、フィードバック制御が行われる。
(13)当該車両用ブレーキシステムが、前記ブレーキ力指標検出器の失陥に対処すべく、前記通常モードから前記失陥時モードに移行するように構成された(12)項に記載の車両用ブレーキシステム。
ブレーキ力指標検出器が失陥した場合には、力源装置自体は正常に作動するものの、例えば、過渡制御において、普通の手法では、ブレーキ力についての上述のフィードバック制御が実行できない。本態様によれば、過渡制御において、そのようなブレーキ力指標検出器の失陥に効果的に対処可能なシステムを構築することが可能である。
(14)前記過渡制御部が、前記過渡制御において、ブレーキ力指標を推定し、その推定されたブレーキ力指標を前記目標ブレーキ力指標に近づけるべく前記力源力依存ブレーキ力を制御するように構成された(13)項に記載の車両用ブレーキシステム。
本態様によれば、失陥しているブレーキ力指標検出器に頼らずに、過渡制御においても、ブレーキ力指標に基づく上述のフィードバック制御が可能となる。
(15)当該車両用液圧ブレーキシステムが、力源力を指標する力源力指標を検出する力源力指標検出器を備え、
前記過渡制御部が、前記過渡制御において、ブレーキ力指標を、前記力源力指標検出器によって検出された実際の力源力指標に依拠して推定するように構成された(14)項に記載の車両用ブレーキシステム。
本態様における「力源力指標」は、力源装置が発生させる力源力の大きさを直接的若しくは間接的に表すものであり、例えば、作動液を高圧にする高圧源装置を含んで力源装置が構成されているような場合には、その高圧源装置によって高圧とされた作動液の圧力を、力源力指標として採用することが可能である。また、電磁モータ等を含んで力源装置が構成されているような場合には、その電磁モータに供給される電力を、力源力指標として採用することが可能である。
目標ブレーキ力指標が、ブレーキ操作の程度に応じて決定される場合、当該システムが、ブレーキ操作力を力源力によってアシストするようにしてブレーキ力を発生させるように構成されたものであっても、また、ブレーキ操作力によらずに力源力によってのみブレーキ力を発生させるように構成されたものであっても、ブレーキ力指標は、力源力指標自体、若しくは、力源力指標の変化に依拠することにより、比較的正確に推定することが可能である。本態様によれば、過渡制御において、そのように推定されたブレーキ力指標に基づいて、比較的正確なブレーキ力のフィードバック制御が可能となる。
高圧源装置を力源装置とする液圧ブレーキシステムに関する具体的な態様については後に詳しく説明するが、電磁モータを力源装置し、マスタシリンダ装置においてブレーキ操作力と電磁モータの力との両方によって作動液を加圧し、その加圧された作動液がマスタシリンダ装置からブレーキ装置に供給されるシステムに関する具体的な一態様は以下のようなものである。例えば、マスタシリンダ装置から供給される作動液の圧力をブレーキ力指標として検出するマスタ圧検出器を、ブレーキ力指標検出器として備え、かつ、電磁モータに供給される電流を力源力指標として検出するモータ供給電流検出器を、力源力指標検出器として備え、通常制御において、マスタ圧検出器によって検出された実際のマスタ圧に基づいて、フィードバック制御の手法に従って電磁モータに供給される電流が制御されるシステムを考える。そのシステムに関して言えば、マスタ圧検出器が失陥したような場合、モータ供給電流検出器によって検出された実際のモータ供給電流に依拠してマスタ圧を推定し、その推定されたマスタ圧に基づいて、フィードバック制御の手法に従って、モータに供給される電流が制御されるような過渡制御を行うことで、本態様が実現されるされることとなる。
(16)当該車両用液圧ブレーキシステムが、力源力を指標する力源力指標を検出する力源力指標検出器を備え、
前記通常制御部が、前記通常制御において、前記力源力指標検出器によって検出された実際の力源力指標に基づいて前記力源力依存ブレーキ力を制御するように構成された(11)項に記載の車両用ブレーキシステム。
本態様のシステムは、上記力源力指標に基づく制御を、上記フィードバック制御に加えて実行するように構成することもでき、上記フィードバック制御を行わずして実行するように構成することも可能である。前者の場合、例えば、直接の制御対象についての制御量として、力源力指標検出器によって検出された実際の力源力指標に基づくフィードフォワード成分と、上記ブレーキ力指標に基づくフィードバック成分とをそれぞれ決定し、それらの成分を足し合わせたものに基づいて制御対象を制御するようなシステムが含まれる。また、後者の場合、ブレーキ操作の程度に基づいて、目標となる力源力指標である目標力源力指標を決定し、力源力指標検出器によって検出された実際の力源力指標がその目標力源力指標となるように、制御対象を制御するようなシステムが含まれる。
(17)当該車両用ブレーキシステムが、前記力源力指標検出器の失陥に対処すべく、前記通常モードから前記失陥時モードに移行するように構成された(16)項に記載の車両用ブレーキシステム。
本態様によれば、過渡制御において、力源力指標検出器の失陥に効果的に対処可能なシステムを構築することも可能である。
(18) 前記過渡制御部が、前記過渡制御において、力源力指標を推定し、その推定された力源力指標に基づいて前記力源力依存ブレーキ力を制御するように構成された(17)項に記載の車両用ブレーキシステム。
本態様によれば、失陥している力源力指標検出器に頼らずに過渡制御が可能となる。
(19)当該車両用液圧ブレーキシステムが、ブレーキ力指標を検出するブレーキ力指標検出器を備え、
前記過渡制御部が、前記過渡制御において、力源力指標を、前記ブレーキ力指標検出器によって検出された実際のブレーキ力指標に依拠して推定するように構成された(18)項に記載の車両用ブレーキシステム。
先に説明したように、ブレーキ力指標は、力源力指標に基づいて推定することができる。そのことに鑑みれば、逆に、力源力指標を、ブレーキ力指標に依拠することで、比較的正確に推定することが可能である。そのことを利用し、本態様によれば、過渡制御において、実際のブレーキ力指標に基づいて推定された力源力指標に基づいて、比較的正確なブレーキ力の制御が可能となる。
高圧源装置を力源装置とする液圧ブレーキシステムに関する具体的な態様は後に詳しく説明するが、電磁モータを力源装置し、マスタシリンダ装置においてブレーキ操作力と電磁モータの力との両方によって作動液を加圧し、その加圧された作動液がマスタシリンダ装置からブレーキ装置に供給されるシステムに関する具体的な一態様は以下のようなものである。例えば、マスタシリンダ装置から供給される作動液の圧力をブレーキ力指標として検出するマスタ圧検出器を、ブレーキ力指標検出器として備え、かつ、電磁モータに供給される電流を力源力指標として検出するモータ供給電流検出器を、力源力指標検出器として備え、通常制御において、ブレーキ操作の程度に応じて発生させるべきブレーキ力に基づいて電磁モータに供給すべき電流である目標モータ供給電流を決定し、モータ供給電流検出器によって検出された実際のモータ供給電流をモニタしつつ、目標モータ供給電流に基づく適切な電流をモータに供給することでブレーキ力が制御されるシステムを考える。そのシステムに関して言えば、モータ供給電流検出器が失陥したような場合、マスタ圧検出器によって検出された実際のマスタ圧に依拠してモータ供給電流を推定し、その推定されたモータ供給電流をモニタしつつ、目標モータ供給電流に基づく適切な電流を電磁モータに供給するようにしてブレーキ力が制御されるような過渡制御を行うことで、本態様が実現されるされることとなる。
≪液圧ブレーキシステム≫
(21)当該車両用ブレーキシステムが、
(a)前記力源装置として機能し、高圧の作動液を供給する高圧源装置と、(b)電磁式の増圧リニア弁および電磁式の減圧リニア弁を有して、それら増圧リニア弁および減圧リニア弁の作動によって、前記高圧源装置から供給される作動液をブレーキ操作に応じた圧力に調整して供給する調圧装置とを備えるとともに、前記ブレーキ装置が、前記調圧装置から供給される作動液とその調圧装置から供給される作動液の圧力に応じた圧力の作動液との一方を受け入れて、その一方の圧力に応じた大きさのブレーキ力を発生させることで、前記ブレーキ装置が発生させるブレーキ力が前記力源力依存ブレーキ力となるように構成され、
前記制御装置が、前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々に供給される励磁電流を制御することで、ブレーキ力を制御するように構成された(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
本態様は、液圧ブレーキシステムに特化した一態様であり、本態様では、増圧リニア弁,減圧リニア弁のそれぞれが、ブレーキ装置が発生させるブレーキ力を制御するための直接の制御対象とされ、それぞれに供給される励磁電流が、それら制御対象についての制御量とされる。
本態様のシステムは、増圧リニア弁と減圧リニア弁とによって調整圧に調整された作動液が、直接的にブレーキ装置に供給されるような構成のものであってもよい。また、後に説明するように、調整圧とされた作動液が、調圧装置の一部としての調圧器(レギュレータ)若しくはマスタシリンダ装置に供給され、その調整圧に応じた圧力の作動液が、それら調圧器若しくはマスタシリンダ装置からブレーキ装置に供給されるような構成ものものであってもよい。さらに、調整圧とされた作動液が調圧器に供給され、その調整圧に応じた圧力の作動液が、その調圧器からマスタシリンダ装置に供給され、その作動液の圧力に応じた圧力の作動液が、マスタシリンダ装置からブレーキ装置に供給されるような構成のものであってもよい。
≪液圧ブレーキシステムにおける通常制御≫
以下の態様は、当該システムが液圧ブレーキシステムに特化された態様において、さらに、通常制御の手法に関する限定を加えた態様である。
(22)当該車両用ブレーキシステムが、ブレーキ力を指標するブレーキ力指標を検出するブレーキ力指標検出器を備え、
前記通常制御部が、前記通常制御において、
ブレーキ力指標の制御目標である目標ブレーキ力指標を、前記ブレーキ操作の程度に基づいて決定し、
前記ブレーキ力指標検出器によって検出された実際のブレーキ力指標に基づいて、ブレーキ力指標の前記目標ブレーキ力指標に対する偏差をなくすべく前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々に供給される励磁電流の成分であるフィードバック成分を決定し、
そのフィードバック成分を含む励磁電流を、前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々に供給するように構成された(21)項に記載の車両用ブレーキシステム。
本態様では、通常制御において、ブレーキ力指標に基づくフィードバック制御の手法に従って、増圧リニア弁,減圧リニア弁の各々に供給される励磁電流が制御される。つまり、ブレーキ力に関するフィードバック制御が行われるのである。
(23)当該車両用ブレーキシステムが、
前記高圧源装置から供給される作動液の圧力である高圧源圧を、力源力を指標する力源力指標として検出し、力源力指標検出器として機能する高圧源圧検出器を備え、
前記通常制御部が、前記通常制御において、
さらに、前記ブレーキ力指標検出器によって検出された実際のブレーキ力指標と、前記高圧源圧検出器によって検出された実際の高圧源圧とに基づいて、前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々の構造に依拠して定まる弁開閉均衡状態におけるブレーキ力指標と高圧源圧と励磁電流との相互関係に従ってそれら各々に供給される励磁電流の成分であるフィードフォワード成分を決定し、
前記フィードバック成分と前記フィードフォワード成分とを含む励磁電流を、前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々に供給するように構成された(22)項に記載の車両用ブレーキシステム。
本態様では、上記フィードバック制御の手法に加え、フィードフォワード制御の手法にも従った励磁電流の制御が実行される。つまり、ブレーキ力の制御に関して、フィードバック制御とフィードフォワード制御との両方が行われる。後に詳しく説明するが、一般的な増圧リニア弁,減圧リニア弁は、ばね付勢力,差圧作用力,電磁作用力によって、開弁度,開弁圧が決まる。そして、それらの力がちょうどバランスした状態で、開弁と閉弁との境、つまり、上記弁開閉均衡状態となる。この状態とするための励磁電流の成分が、上記フィードフォワード成分である。本態様では、増圧リニア弁,減圧リニア弁の各々に、そのフィードフォワード成分の励磁電流が供給された上で、上述のフィードバック成分の励磁電流が供給される。したがって、本態様によれば、良好なブレーキ力の制御が可能となる。なお、以下、弁開閉均衡状態にある増圧リニア弁の下流側の圧力,減圧リニア弁の上流側の圧力を、つまり、弁開閉均衡状態における開弁圧(「閉弁圧」と考えることもできる)を、「開閉均衡圧」と呼ぶ場合があることとする。
ちなみに、ばね付勢力は、増圧リニア弁,減圧リニア弁に固有の力である。差圧作用力は、増圧リニア弁の場合は、高圧源圧と調圧装置から供給される作動液の圧力に依存して決まるため、高圧源圧とブレーキ力指標とによって決まると考えることができる。一方、減圧リニア弁の場合は、低圧源圧と調圧装置から供給される作動液の圧力に依存して決まるため、低圧源圧とブレーキ力指標とによって決まると考えることができる。このように、高圧源圧とブレーキ力指標と励磁電流は、相互に関係しており、弁開閉均衡状態において、それらは特定の相互関係にある。その相互関係に従うことで、高圧源圧とブレーキ力指標とに基づくことにより、増圧リニア弁,減圧リニア弁の各々に供給すべきフィードフォワード成分を決定することができるのである。本態様では、そのようなフィードフォワード成分の決定において、上記高圧源圧検出器によって検出された実際の高圧源圧が利用される。
なお、増圧リニア弁,減圧リニア弁についての上述のフィードバック制御の手法に従った制御、あるいは、フィードバック制御の手法およびフィードフォワード制御の手法に従った制御は、必ずしも、ブレーキ力が増加する過程(以下、「ブレーキ力増加過程」と言う場合がある),ブレーキ力が維持される過程(以下、「ブレーキ力維持過程」と言う場合がある),ブレーキ力が減少する過程(以下、「ブレーキ力減少過程」と言う場合がある)のすべてについて行われることを要しない。つまり、ブレーキ操作におけるそれらのいずれかの過程において、増圧リニア弁,減圧リニア弁の少なくとも一方について、上記制御が行われなくてもよいのである。ちなみに、このことは、上記通常制御のみならず、上記過渡制御におけるフィードバック制御の手法に従った制御、フィードフォワード制御の手法に従った制御、あるいは、フィードバック制御の手法およびフィードフォワード制御の手法に従った制御についても同様である。
≪液圧ブレーキシステムにおける過渡制御1:ブレーキ力指標検出器失陥対応≫
(24)当該車両用ブレーキシステムが、前記ブレーキ力指標検出器の失陥に対処すべく、前記通常モードから前記失陥時モードに移行するように構成された(22)項または(23)項に記載の車両用ブレーキシステム。
本態様によれば、過渡制御において、ブレーキ力指標検出器の失陥に効果的に対処可能な液圧ブレーキシステムを構築することも可能である。以下のいくつかの項の態様は、上記態様の液圧ブレーキシステムにおいて、ブレーキ力指標検出器の失陥に対処すべく実行される過渡制御に関する態様である。
(25)当該車両用ブレーキシステムが、
前記高圧源装置から供給される作動液の圧力である高圧源圧を、力源力を指標する力源力指標として検出し、力源力指標検出器として機能する高圧源圧検出器を備え、
前記過渡制御部が、前記過渡制御において、
前記目標ブレーキ力指標を、前記ブレーキ操作の程度に基づいて決定し、
前記高圧源検出器によって検出された実際の高圧源圧に依拠して推定されたブレーキ力指標に基づいて、前記フィードバック成分を決定し、
そのフィードバック成分を含む励磁電流を、前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々に供給するように構成された(24)項に記載の車両用ブレーキシステム。
本態様では、過渡制御において、失陥しているブレーキ力指標検出器に頼らずに、高圧源検出器によって検出された実際の高圧源圧に依拠して推定されたブレーキ力指標に基づいて、増圧リニア弁,減圧リニア弁に対して、フィードバック制御が行われる。
簡単に言えば、例えば、ブレーキ力増加過程であれば、高圧源装置から供給された作動液の液量は、高圧源圧検出器によって検出された実際の高圧源圧の変化から推定することができ、高圧源装置から供給された作動液の液量に基づくことにより、調圧装置から供給された液量が推定でき、その液量から、ブレーキ力指標を推定できる。本態様では、そのようにして推定されたブレーキ力指標を用いて、過渡制御が実行される。なお、ブレーキ力減少過程においては、例えば、減圧リニア弁に供給された励磁電流により、減圧リニア弁を通過して低圧源に排出された作動液の液量が推定でき、その推定に基づくことにより、ブレーキ力指標を推定することが可能である。ちなみに、高圧源装置の作動状態によって、高圧源圧が変化する場合には、その作動状態をも加味して、ブレーキ力指標の推定を行うことが望ましい。
(26)前記過渡制御部が、前記過渡制御において、
さらに、前記推定されたブレーキ力指標と、前記高圧源圧検出器によって検出された実際の高圧源圧とに基づいて、前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々の構造に依拠して定まる弁開閉均衡状態におけるブレーキ力指標と高圧源圧と励磁電流との相互関係に従って前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々に供給される励磁電流の成分であるフィードフォワード成分を決定し、
前記フィードバック成分と前記フィードフォワード成分とを含む励磁電流を、前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々に供給するように構成された(25)項に記載の車両用ブレーキシステム。
本態様では、上述のようにして推定されたブレーキ力指標に基づいて、増圧リニア弁,減圧リニア弁に対して、フィードバック制御に加え、フィードフォワード制御も実行される。
(27)当該車両用ブレーキシステムが、
前記高圧源装置から供給される作動液の圧力である高圧源圧を、力源力を指標する力源力指標として検出し、力源力指標検出器として機能する高圧源圧検出器を備え、
前記過渡制御部が、前記過渡制御において、
前記目標ブレーキ力指標を、前記ブレーキ操作の程度に基づいて決定し、
前記目標ブレーキ力指標と、前記高圧源圧検出器によって検出された実際の高圧源圧とに基づいて、前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々の構造に依拠して定まる弁開閉均衡状態におけるブレーキ力指標と高圧源圧と励磁電流との相互関係に従って前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々に供給される励磁電流の成分であるフィードフォワード成分を決定し、
そのフィードフォワード成分からなる励磁電流を、前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々に供給するように構成された(24)項に記載の車両用ブレーキシステム。
簡単に言えば、当該システムが、通常制御において、増圧リニア弁,減圧リニア弁に対して、上記フィードバック制御、若しくは、上記フィードバック制御および上記フィードフォワード制御が行われるように構成されている場合において、本態様では、過渡制御において、目標ブレーキ力指標に基づくフィードフォワード制御のみが実行される。
先に説明したように、弁開閉均衡状態においては、増圧リニア弁,減圧リニア弁の各々について、ブレーキ力指標、高圧源圧若しくは低圧源,励磁電流は特定の相互関係にある。したがって、その相互関係に従うことで、増圧リニア弁と減圧リニア弁と各々において弁開閉均衡状態を実現させるために増圧リニア弁,減圧リニア弁の各々に供給されるべき励磁電流を決定することができる。本態様では、過渡制御において、増圧リニア弁,減圧リニア弁の各々に、そのようにして決定された励磁電流を供給することで、増圧リニア弁,減圧リニア弁の両方において弁開閉均衡状態若しくはその状態に近い状態を実現し、その実現によって、ブレーキ力が概ね目標ブレーキ指標となるような制御が行われるのである。ちなみに、以下、この制御を、便宜的に、「両弁開閉均衡状態実現制御」と呼ぶこととする。
ちなみに、本態様における過渡制御は、ブレーキ力指標を推定することなく行われるため、ブレーキ力指標検出器が失陥した場合であっても、簡便に行うことが可能である。
≪液圧ブレーキシステムにおける過渡制御2:高圧源圧検出器失陥対応≫
(28)当該車両用ブレーキシステムが、
前記高圧源装置から供給される作動液の圧力である高圧源圧を、力源力を指標する力源力指標として検出し、力源力指標検出器として機能する高圧源圧検出器を備え、
前記高圧源圧検出器の失陥に対処すべく、前記通常モードから前記失陥時モードに移行するように構成された(22)項または(23)項に記載の車両用ブレーキシステム。
本態様によれば、過渡制御において、力源力指標検出器である高圧源圧検出器の失陥に効果的に対処可能な液圧ブレーキシステムを構築することも可能である。以下のいくつかの項の態様は、上記態様の液圧ブレーキシステムにおいて、高圧源圧検出器の失陥に対処すべく実行される過渡制御に関する態様である。
(29)前記過渡制御部が、前記過渡制御において、
前記目標ブレーキ力指標を、前記ブレーキ操作の程度に基づいて決定し、
前記ブレーキ力指標検出器によって検出された実際のブレーキ力指標に基づいて、前記フィードバック成分を決定し、
さらに、前記ブレーキ力指標検出器によって検出された実際のブレーキ力指標と、その実際のブレーキ力指標に依拠して推定された高圧源圧とに基づいて、前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々の構造に依拠して定まる弁開閉均衡状態におけるブレーキ力指標と高圧源圧と励磁電流との相互関係に従って前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々に供給される励磁電流の成分であるフィードフォワード成分を決定し、
前記フィードバック成分と前記フィードフォワード成分とを含む励磁電流を、前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々に供給するように構成された(28)項に記載の車両用ブレーキシステム。
本態様は、過渡制御において、増圧リニア弁,減圧リニア弁に関して、フィードバック制御とフィードフォワード制御との両方を行う態様であり、高圧源圧を、ブレーキ力指標検出器によって検出された実際のブレーキ力指標から推定して、フィードフォワード制御を行う態様である。先に説明したように、高圧源圧からブレーキ力指標が推定可能であるため、逆の推定を行うことにより、ブレーキ力指標から高圧源圧を推定することも可能である。本態様では、そのようにして高圧源圧を推定することが可能である。詳しく言えば、ブレーキ力指標の変化,増圧リニア弁および減圧リニア弁の各々に供給された励磁電流,高圧源装置の作動状態等に基づいて、高圧源圧を推定すればよい。
(30)前記過渡制御部が、前記過渡制御において、
前記目標ブレーキ力指標を、前記ブレーキ操作の程度に基づいて決定し、
前記目標ブレーキ力指標と、推定された高圧源圧とに基づいて、前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々の構造に依拠して定まる弁開閉均衡状態におけるブレーキ力指標と高圧源圧と励磁電流との相互関係に従って前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々に供給される励磁電流の成分であるフィードフォワード成分を決定し、
そのフィードフォワード成分からなる励磁電流を、前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々に供給するように構成された(28)項に記載の車両用ブレーキシステム。
本態様は、高圧源圧検出器が失陥している場合に、過渡制御において、先に説明した両弁開閉均衡状態実現制御を実行する態様である。本態様における高圧源圧の推定は、先に説明したように、ブレーキ力指標に依拠して行われてもよく、また、別の推定を行ってもよい。高圧源圧検出器が失陥している場合は、高圧源装置を上手く制御できないことが考えられる。その場合、後に説明するように、例えば、実際の高圧源圧とは関係なく高圧源装置を間欠的に作動させるための制御が行われるような場合もある。その場合等には、例えば、実行されている制御下において取り得る特定の圧力(最高の高圧源圧,最低の高圧源圧等)をもって、その時点の高圧源圧と推定することも可能である。
≪両弁開閉均衡状態実現制御における励磁電流のバリエーション≫
以下のいくつかの態様は、両弁開閉均衡状態実現制御において増圧リニア弁,減圧リニア弁に供給される励磁電流のバリエーションに関する態様である。
(31)前記過渡制御部が、前記過渡制御において、
前記増圧リニア弁と前記減圧リニア弁との少なくとも一方に、前記目標ブレーキ力指標に対応した弁開閉均衡状態における開弁圧よりも高い若しくは低い圧力で開弁若しくは閉弁させるための補正を加えた前記フィードフォワード成分からなる励磁電流を供給するように構成された(27)項または(30)項に記載の車両用ブレーキシステム。
先に説明した両弁開閉均衡状態実現制御では、増圧リニア弁,減圧リニア弁の各々に対して、開閉均衡圧が目標ブレーキ力指標に対応する圧力(以下、「基準開閉均衡圧」という場合がある)となるような励磁電流(以下、「基準励磁電流」と言う場合がある)を供給することも可能である。そのような励磁電流を供給することで、概ね、過渡ブレーキ力を良好に制御できる。しかし、増圧リニア弁,減圧リニア弁の構造上の特性等により、必ずしも正確な過渡ブレーキ力を発生させ得ない場合もある。そのようなことを考慮して、本態様では、増圧リニア弁と減圧リニア弁との少なくとも一方に供給される励磁電流、詳しくは、それのフィードフォワード成分に補正を加えている。なお、増圧リニア弁と減圧リニア弁との少なくとも一方に供給される励磁電流に補正を加える場合、必ずしも、ブレーキ力増加過程,ブレーキ力維持過程,ブレーキ力減少過程のすべてにおいて補正を加えることを要しない。つまり、それらの過程のうち、いずれかの過程においてのみ補正を加えてもよいのである。また、補正量は、必ずしも一定とされることを要さず、例えば、ブレーキ力の変化の過程に応じて変更されてもよい。
(32)前記過渡制御部が、前記過渡制御において、ブレーキ力の変化の過程の如何に拘わらず、前記増圧リニア弁に、前記目標ブレーキ力指標に対応した弁開閉均衡状態における開弁圧より低い圧力で開弁させるための補正を加えた前記フィードフォワード成分からなる励磁電流を供給するとともに、前記減圧リニア弁に、前記目標ブレーキ力指標に対応した弁開閉均衡状態における開弁圧より高い圧力で閉弁させるための補正を加えた前記フィードフォワード成分からなる励磁電流を供給するように構成された(31)項に記載の車両用ブレーキシステム。
本態様では、両弁開閉均衡状態実現制御において、上記ブレーキ操作の過程がいずれの過程であっても、増圧リニア弁に対して、開閉均衡圧が上記基準開閉均衡圧よりも低目となるような励磁電流(以下、「開閉均衡圧が低目の励磁電流」と言う場合がある)が、減圧リニア弁に対して、開閉均衡圧が上記基準開閉均衡圧よりも高目となるような励磁電流(以下、「開閉均衡圧が高目の励磁電流」と言う場合がある)が、それぞれ供給される。本態様によれば、上記低目の圧力と上記高目の圧力との中間の圧力範囲に対応するブレーキ力が発生させられるため、増圧リニア弁,減圧リニア弁の特性が正規の特性よりずれているような場合においても、ある程度正確なブレーキ力の制御が可能となる。
(33)前記過渡制御部が、前記過渡制御において、
ブレーキ力が増加する過程で、前記減圧リニア弁に、前記目標ブレーキ力指標に対応した弁開閉均衡状態における開弁圧より高い圧力で閉弁させるための補正を加えた前記フィードフォワード成分からなる励磁電流を供給し、
ブレーキ力が維持される過程で、前記増圧リニア弁に、前目標ブレーキ力指標に対応した記弁開閉均衡状態における開弁圧より低い圧力で開弁させるための補正を加えた前記フィードフォワード成分からなる励磁電流を供給するとともに、前記減圧リニア弁に、前記目標ブレーキ力指標に対応した弁開閉均衡状態における開弁圧より高い圧力で閉弁させるための補正を加えた前記フィードフォワード成分からなる励磁電流を供給し、
ブレーキ力が減少する過程で、前記増圧リニア弁に、前記目標ブレーキ力指標に対応した弁開閉均衡状態における開弁圧より低い圧力で開弁させるための補正を加えた前記フィードフォワード成分からなる励磁電流を供給するように構成された(31)項に記載の車両用ブレーキシステム。
本態様によれば、例えば、ブレーキ力増加過程において、増圧リニア弁には、上記基準励磁電流が、減圧リニア弁に開閉均衡圧が高目の励磁電流が、それぞれ供給され、ブレーキ力維持過程において、増圧リニア弁には、開閉均衡圧が低目の励磁電流が、減圧リニア弁には、開閉均衡圧が高目の励磁電流が、それぞれ供給され、ブレーキ力減少過程において、増圧リニア弁には、開閉均衡圧が低目の励磁電流が、減圧リニア弁には、開閉均衡圧が基準となる励磁電流が、それぞれ供給される。増圧リニア弁,減圧リニア弁は、その構造から、ある程度のヒステリシス特性を有しており、ブレーキ操作の過程に拘わらず増圧リニア弁,減圧リニア弁に基準励磁電流を供給する場合、そのヒステリシス特性に起因して、ブレーキ力が発生させるべきブレーキ力を超えて大きくなったり小さくなったりする現象、あるいは、ブレーキ力が発生させるべきブレーキ力に追従し得ない現象が発生する。本態様によれば、ブレーキ操作の過程に応じて上記のように補正を加えた励磁電流が増圧リニア弁,減圧リニア弁に供給されるため、そのような現象が、抑制若しくは緩和されることになる。
≪液圧ブレーキシステムの構造に関するバリエーション≫
以下のいくつかの態様は、液圧ブレーキシステムに関して、そのシステムの構造に関する限定を加えた態様である。
(41)前記調圧装置が、
パイロット室を有し、前記高圧源装置から供給される作動液を、そのパイロット室の作動液の圧力に応じた圧力に調整して、当該調圧装置から供給される作動液として供給する調圧器を備え、
前記増圧リニア弁が、前記高圧源装置と前記パイロット室との間に配設されて、前記パイロット室の作動液の圧力を増圧するとともに、前記減圧リニア弁が、前記パイロット室と低圧源との間に配設されて、前記パイロット室の作動液の圧力を減圧するように構成された(21)項ないし(33)項のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
本態様のシステムには、調圧器からの作動液が直接的にブレーキ装置に供給される態様のシステムと、調圧器からの作動液がマスタシリンダ装置に供給され、そしてその作動液の圧力に応じた圧力の作動液が、マスタシリンダ装置からブレーキ装置に供給される態様のシステムとが含まれる。本態様のシステムでは、増圧リニア弁と減圧リニア弁とによって調整圧に調整された作動液がブレーキ装置に直接的に供給されずに、その作動液は上記調圧器のパイロット室に供給される。したがって、本態様のシステムによれば、増圧リニア弁,減圧リニア弁を通過する作動液の量が比較的少なくて済むため、それら増圧リニア弁,減圧リニア弁の体格を小さくでき、比較的低コストの液圧ブレーキシステムが構築可能である。
(42)前記調圧器が、
前記パイロット室とは別に、ブレーキ操作力に応じた圧力の作動液、若しくは、ブレーキ装置に供給される作動液が導入されるもう1つのパイロット室を有し、
失陥時モードにおいて、前記高圧源装置から供給される作動液を、前記もう1つのパイロット室の作動液の圧力に応じた圧力に調整して、当該調圧装置から供給される作動液として供給する(41)項に記載の車両用ブレーキシステム。
本態様のシステムでは、当該システムの欠陥時において、高圧源装置が正常に作動可能である場合、若しくは、高圧源装置に高圧の作動液が残存している場合に、調圧器は、その高圧源装置から供給される高圧の作動液を、ブレーキ操作力、若しくは、ブレーキ装置に供給される作動液の圧力に応じて調整して供給することが可能である。つまり、本態様のシステムは、いわゆる機械的なバックアップ機能を備えたシステムであり、失陥時においても十分なブレーキ力を発揮させることが可能である。
(43)前記調圧器が、
ハウジングと、そのハウジング内においてそのハウジングの軸線方向に移動可能に配設された可動体と、前記ハウジング内において前記軸線方向においてその可動体と並んで配設された弁機構と、低圧源に連通する低圧源連通路とを有し、前記可動体の前記弁機構の側に、当該調圧器から供給される作動液が収容される調圧室が、前記可動体の前記弁機構とは反対側に、前記パイロット室が、前記調圧室とで前記弁機構を挟むようにして、前記高圧源装置から供給される作動液を受け入れる高圧室が、それぞれ形成され、
前記調圧室の作動液の圧力と前記パイロット室の作動液の圧力との差圧に依拠して前記可動体に作用する差圧作用力によって前記可動体が前記軸線方向に移動させられ、その可動体が前記弁機構に向かう方向に移動させられた場合に、その可動体が前記弁機構と係合して、その弁機構によって、前記調圧室と前記高圧室とが連通させられるとともに、前記調圧室と前記低圧源通路との連通が遮断され、前記可動体が前記弁機構から離れる方向に移動させられた場合に、その可動体のその弁機構との係合が解除されて、前記調圧室と前記高圧室との連通が遮断されるともに、前記調圧室と前記低圧源通路とが連通するように構成された(41)項または(42)項に記載の車両用ブレーキシステム。
本態様は、調圧器の具体的な構造に関する限定を加えた態様である。本態様における調圧器のパイロット室は、上記もう1つのパイロット室をも意味する。2つのパイロット室を有する調圧器の場合、例えば、それぞれが上記可動体となる2つの可動体を2つのパイロット室の一方を挟んで直列的に配置し、いずれのパイロット室の圧力によっても弁機構による調圧機能が発揮されるように構成すればよい。
(44)当該車両用ブレーキシステムが、
前記ブレーキ操作部材が連結され、前記調圧装置からの作動液を受け入れ、前記ブレーキ操作部材に加えられる運転者のブレーキ操作力に依存せずに前記受け入れた作動液の圧力に依存して加圧した作動液を前記ブレーキ装置に供給するマスタシリンダ装置を有し、
そのマスタシリンダ装置から前記ブレーキ装置に供給される作動液の圧力に依存した大きさのブレーキ力を、前記ブレーキ装置が発生させるように構成された(41)項ないし(43)項のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
本態様の液圧ブレーキシステムでは、調圧装置からの作動液が、直接ブレーキ装置に供給されるのではなく、マスタシリンダ装置に供給され、マスタシリンダ装置において、その作動液の圧力に依存して加圧された作動液がブレーキ装置に供給される。マスタシリンダ装置には、一般的に、ブレーキ操作が入力される。したがって、マスタシリンダ装置の構造に工夫を凝らすことによって、当該システムに何らかの失陥が生じたときにおいて、ブレーキ操作部材に加えられるブレーキ操作力に依存して、ブレーキ装置に供給する作動液を加圧するように構成したり、また、任意に、上記導入された作動液の圧力とブレーキ操作力との両者に依存して、ブレーキ装置に供給する作動液を加圧するように構成したりすることも可能である。そのような構成のマスタシリンダ装置とすれば、本態様のシステムの実用性はさらに高くなる。なお、本態様におけるマスタシリンダ装置は、ブレーキ操作力に依存せずに高圧源圧に依存して作動液を加圧して、ブレーキ装置に供給可能に構成されている。したがって、本態様のシステムは、回生ブレーキシステムが併用される車両に対して、好適なシステムである。
(45)前記マスタシリンダ装置が、
(A)前方側の端部が閉塞され、内部を前方室と後方室とに区画するとともに自身を貫通する開口が形成された区画部を有するハウジングと、(B)後端に鍔が形成されて前記前方室内に配設された本体部を有する加圧ピストンと、(C)前記ブレーキ操作部材と連結され、前記後方室に配設された入力ピストンと、(D)その入力ピストンの前進に対するその前進の量に応じた大きさの反力を前記入力ピストンに付与する反力付与機構とを有し、
(i)前記加圧ピストンの前記本体部の前方に、前記ブレーキ装置に供給される作動液が前記加圧ピストンの前進によって加圧される加圧室が、(ii)前記加圧ピストンと前記入力ピストンとの間に、前記ハウジングの前記区画部に形成された前記開口を利用してそれら加圧ピストンと入力ピストンとが向かい合うピストン間室が、(iii)前記加圧ピストンの前記本体部に形成された前記鍔と前記区画部との間に、前記調整圧若しくはその調整圧に応じた圧力の作動液が導入される入圧室が、(iv)前記鍔の前方に、その鍔を挟んで前記入圧室と対向し、前記ピストン間室と連通する対向室が、それぞれ形成されるとともに、前記ピストン間室の作動液の圧力が前記加圧ピストンに作用する受圧面積と、前記対向室の作動液の圧力が前記加圧ピストンに作用する受圧面積とが等しくされた(44)項に記載の車両用ブレーキシステム。
本態様は、マスタシリンダ装置の具体的構造に関する限定を加えた態様である。
≪高圧源装置に関する限定≫
以下のいくつかの項の態様は、高圧源装置に関する限定を加えた態様である。
(46)前記高圧源装置が、低圧源から作動液を汲み上げて加圧するためのポンプと、そのポンプによって加圧された作動液を貯めるアキュムレータとを有する(21)項ないし(45)項のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
本態様は、一般的に用いられている高圧源装置の具体的構造に関する態様である。本態様のシステムは、失陥時であっても、比較的高圧の作動液がアキュムレータに作動液が残存している限り、その高圧の作動液に依存したブレーキ力を発生させるように構成することが可能である。
(47)当該車両用ブレーキシステムが、前記制御装置が、前記高圧源装置から供給される作動液の圧力である高圧源圧を、力源力を指標する力源力指標として検出し、力源力指標検出器として機能する高圧源圧検出器を備え、
前記制御装置が、前記高圧源圧検出器によって検出される高圧源圧が設定下限圧を下回った場合に前記ポンプの作動を開始させ、設定上限圧を上回った場合に前記ポンプの作動を停止させることで、その高圧源圧を設定圧力範囲内に維持する制御である通常高圧源制御を実行する高圧源制御部を有する(46)項に記載の車両用ブレーキシステム。
本態様は、上記構造を有する高圧源装置の通常時における制御に関する限定を加えた態様である。
(48)前記高圧源制御部が、前記高圧源圧検出器が失陥した場合に、前記通常高圧源制御に代えて、前記ポンプを設定駆動時間だけ設定時間間隔を空けて繰り返し駆動するポンプ間欠駆動制御を実行するように構成された(47)項に記載の車両用ブレーキシステム。
本態様は、高圧源圧検出器の失陥時における高圧源装置の制御に関する限定を加えた態様である。高圧源圧検出器の失陥した場合、上記通常時高圧源制御は実行できないが、本態様によれば、高圧源圧検出器の失陥した場合であっても、ポンプ間欠駆動制御によって、充分な高圧源圧が得られることになる。
請求可能発明の実施例である車両用ブレーキシステムのハード構成を示す図である。 図1の車両用ブレーキシステムの制御において、ブレーキ力を決定するためにブレーキ電子制御ユニット(ECU)に格納されているブレーキ力決定マップを示す概念図である。 ブレーキ電子制御ユニット(ECU)によって実行されるブレーキ制御プログラムのメインルーチンを示すフローチャートである。 ブレーキ制御プログラムの一部を構成する通常制御ルーチンを示すフローチャートである。 通常制御ルーチンの一部を構成する通常高圧源制御サブルーチンを示すフローチャートである。 通常制御ルーチンの一部を構成する増圧弁フィードバック制御サブルーチンを示すフローチャートである。 通常制御ルーチンの一部を構成する減圧弁フィードバック制御サブルーチンを示すフローチャートである。 ブレーキ制御プログラムの一部を構成する失陥時制御ルーチンを示すフローチャートである。 失陥時制御ルーチンの一部を構成するポンプ間欠駆動制御サブルーチンを示すフローチャートである。 ブレーキ制御プログラムの一部を構成するサーボ圧センサ失陥時過渡制御ルーチンを示すフローチャートである。 サーボ圧センサ失陥時過渡制御ルーチンの一部を構成する増圧弁フィードフォワード制御サブルーチンを示すフローチャートである。 サーボ圧センサ失陥時過渡制御ルーチンの一部を構成する減圧弁フィードフォワード制御サブルーチンを示すフローチャートである。 ブレーキ制御プログラムの一部を構成する高圧源圧センサ失陥時過渡制御ルーチンを示すフローチャートである。 ブレーキ電子制御ユニット(ECU)の機能構成を示すブロック図である。
以下、請求可能発明の代表的な実施形態を、実施例として、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、下記変形例,前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。また、〔発明の態様〕の各項の説明に記載されている技術的事項を利用して、下記実施例の変形例を構成することも可能である。
[A]ブレーキシステムのハード構成
i)全体構成
請求可能発明の実施例である車両用ブレーキシステムは、ブレーキオイルを作動液としてハイブリッド車両に搭載される液圧ブレーキシステムである。本ブレーキシステムは、図1に示すように、大まかには、(A) 4つの車輪10に設けられ、それぞれがブレーキ力を発生させる4つのブレーキ装置12と、(B) ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル14の操作が入力されるとともに、加圧された作動液を各ブレーキ装置12に供給するマスタシリンダ装置16と、(C) マスタシリンダ装置16と4つのブレーキ装置12の間に配置されたアンチロックユニット18と、(D) 作動液を低圧源であるリザーバ20から汲み上げて加圧することにより、高圧の作動液を供給し、運転者によってブレーキペダル14に加えられるブレーキ操作力とは別の力を発生させる力源装置として機能する高圧源装置22と、(E) 高圧源装置22から供給される作動液を調圧してマスタシリンダ装置16に供給する調圧器であるレギュレータ24と、(F) レギュレータ24から供給される作動液の圧力を調整するための電磁式増圧リニア弁26および電磁式減圧リニア弁28(以下、それぞれ、単に、「増圧リニア弁26」および「減圧リニア弁28」と略す場合がある)と、(G) それらの装置,機器,弁を制御することで当該ブレーキシステムの制御を司る制御装置としてのブレーキ電子制御ユニット30とを含んで構成されている。ちなみに、アンチロックユニット18は、「ABSユニット18」と呼ぶ場合があり、図では、[ABS]という符号が付されている。また、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28は、図では、それぞれ、それらの記号標記である[SLA],[SLR]という符号が付されている。さらに、ブレーキ電子制御ユニット30は、以下、「ブレーキECU30」と呼ぶ場合があり、図では、[ECU]という符号で表わされている。なお、4つの車輪10は、左右前後を表わす必要のある場合に、右前輪10FR,左前輪10FL,右後輪10RR,左後輪10RLと表わすこととする。また、4つのブレーキ装置12等の構成要素も、左右前後を区別する必要がある場合に、車輪10と同様の符号を付して、12FR,12FL,12RR,12RL等と表わすこととする。
ii)ブレーキ装置およびABSユニット
各車輪10に対応して設けられたブレーキ装置12は、車輪10とともに回転するディスクロータ,キャリアに保持されたキャリパ,キャリパに保持されたホイールシリンダ,キャリパに保持されてそのホイールシリンダによって動かされることでディスクロータを挟み付けるブレーキパッド等を含んで構成されたディスクブレーキ装置である。また、ABSユニット18は、各車輪に対応して設けられて対をなす増圧用開閉弁および減圧用開閉弁,ポンプ装置等を含んで構成されたユニットであり、スリップ現象等によって車輪10がロックした場合に作動させられて、車輪のロックが持続することを防止するための装置である。なお、ブレーキ装置12,ABSユニット18は、一般的な装置,ユニットであり、請求可能発明の特徴とは関連が小さいため、それらの構造についての詳しい説明は省略する。
iii)マスタシリンダ装置
マスタシリンダ装置16は、ストロークシミュレータ一体型のマスタシリンダ装置であり、概して言えば、ハウジング40の内部に、2つの加圧ピストンである第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44、入力ピストン46が配設されるとともに、ストロークシミュレータ機構48が組み込まれている。なお、マスタシリンダ装置16に関する以下の説明において、便宜的に、図における左方を前方,右方を後方と呼び、同様に、後に説明するピストン等の移動方向について、左方に動くことを前進,右方に動くことを後退と呼ぶこととする。
ハウジング40は、第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44、入力ピストン46が配設される空間を有し、その空間は、前方側の端部が閉塞されるとともに、環状をなす区画部50によって前方室52と後方室54とに区画されている。第2加圧ピストン44は、前方に開口する有底円筒状をなしており、前方室52内において前方側に配設される。一方、第1加圧ピストン42は、有底円筒状をなすとともに後端に鍔56が形成された本体部58と、本体部58から後方に延びる突出部60とを有しており、本体部58が、前方室52内において第2加圧ピストン44の後方に配設されている。区画部50は、環状をなしていることから中央に開口62が形成されたものとされており、突出部60は、その開口62を貫通して後方室54に延び出している。入力ピストン46は、後方室54に、詳しく言えば、それの一部分が後方から後方室54の内部に臨み入るようにして、配設され、後端部に、リンクロッド64を介して、上記ブレーキペダル14が連結されている。
第1加圧ピストン42と第2加圧ピストン44との間には、詳しく言えば、第1加圧ピストン42の本体部58の前方には、2つの後輪10RR,10RLに対応する2つのブレーキ装置12RR,12RLに供給される作動液を第1加圧ピストン42の前進によって加圧するための第1加圧室R1が、第2加圧ピストン44の前方側には、2つの前輪10FR,10FLに対応する2つのブレーキ装置12FR,12FLに供給される作動液を第2加圧ピストン44の前進によって加圧するための第2加圧室R2が、それぞれ形成されている。一方、第1加圧ピストン42と入力ピストン46との間には、ピストン間室R3が形成されている。詳しく言えば、区画部50に形成された開口62から後方に延び出す突出部60の後端と、入力ピストン46との前端とが向かい合うようにして、つまり、開口62を利用して第1加圧ピストン42と入力ピストン46とが向かい合うようにして、ピストン間室R3が形成されているのである。さらに、ハウジング40の前方室52内には、突出部60の外周において、区画部50の前端面と、第1加圧ピストン42の本体部58の後端面、つまり、鍔56の後端面とによって区画されるようにして、レギュレータ24から供給される作動液が導入される環状の入力室R4が、本体部58の外周における鍔56の前方に、その鍔56を挟んで入力室R4と対向する環状の対向室R5が、それぞれ形成されている。
第1加圧室R1,第2加圧室R2は、それぞれ、第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44が移動範囲における後端に位置する際に、大気圧ポートP1,P2を介してリザーバ20と連通可能とされており、また、それぞれ、出力ポートP3,P4を介するとともにABSユニット18を介して、ブレーキ装置12と連通させられている。ちなみに、第1加圧室R1は、後に説明するレギュレータ24をも介してブレーキ装置12RR,12RLと連通させられている。なお、入力室R4は、入力ポートP5を介して、後に説明するレギュレータ24の調圧ポートと連通させられている。
ピストン間室R3は、連結ポートP6と、対向室R5は、連通ポートP7と、それぞれ連通しており、それら連通ポートP6と連通ポートP7は、外部連通路である室間連通路70によって繋げられている。この外部連通路64の途中には、常閉型の電磁式開閉弁72、つまり、非励磁状態で閉弁状態となり、励磁状態で開弁状態となる開閉弁72が設けられており、開閉弁72が開弁状態とされた場合に、ピストン間室R3と対向室R5は連通させられる。それらピストン間室R3と対向室R5とが連通する状態では、それらによって、1つの液室、すなわち、反力室R6と呼ぶことのできる液室が形成されていると考えることができる。なお、電磁式開閉弁72は、ピストン間室R3と対向室R5との連通,非連通を切換える機能を有することから、以下、「室間連通切換弁72」と呼ぶこととする。
また、マスタシリンダ装置16には、さらに2つの大気圧ポートP8,P9が設けられており、それらは、内部通路にて連通している。一方の大気圧ポートP8はリザーバ20に繋げられており、他方の大気圧ポートP9は、外部連通路である大気圧開放路74を介して、室間連通切換弁72と対向室R5との間において室間連通路70に繋げられている。大気圧開放路74には、常開型の電磁式開閉弁76、つまり、非励磁状態で開弁状態となり、励磁状態で閉弁状態となる開閉弁76が設けられている。この開閉弁76は、対向室R5を大気圧に開放する機能を有することから、以下、「大気圧開放弁76」と呼ぶこととする
ハウジング40には、第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44、入力ピストン46が配設されている空間とは別の空間を有しており、ストロークシミュレータ機構48は、その空間と、その空間内に配設された反力ピストン80と、反力ピストン80を付勢する2つの反力スプリング82,84(いずれも圧縮コイルスプリングである)とを含んで構成されている。反力ピストン80の後方側には、バッファ室R7が形成されている(図では、殆ど潰れた空間として表わされている)。ブレーキペダル14の操作によって入力ピストン46が前進する際、バッファ室R7には、内部通路を介して、対向室R5の作動液、すなわち、反力室R6の作動液が導入され、その導入される作動液の量、すなわち、入力ピストン46の前進量に応じた反力スプリング82,84の弾性反力が反力室R6に作用することで、ブレーキペダル14に操作反力が付与される。つまり、このストロークシミュレータ機構48は、入力ピストン46の前進に対するその前進の量に応じた大きさの反力を入力ピストン46に付与する反力付与機構として機能しているのである。ちなみに、2つの反力スプリング82,84は直列的に配置されるとともに、反力スプリング84は、反力スプリング82に比較して、相当にばね定数が小さくされており、ブレーキペダル14の操作の進行の途中において反力スプリング84の変形が禁止されることで、ストロークシミュレータ機構48は、その途中から増加勾配が大きくなるような反力特性を実現するものとされている。なお、本システムでは、室間連通路70に、反力室R6の作動液の圧力(反力圧)を検出するための反力圧センサ86が設けられている(図では、反力圧の記号標記である[PRCT]という符号が付されている)。
通常の状態では、上記室間連通切換弁72は、開弁状態、上記大気圧開放弁76は、閉弁状態にあり、ピストン間室R3と対向室R5とによって、上記反力室R6が形成されている。本マスタシリンダ装置16では、第1加圧ピストン42を前方に移動させるべくピストン間室R3の作動液の圧力が作用する第1加圧ピストン42の受圧面積(対ピストン間室受圧面積)、すなわち、第1加圧ピストン42の突出部58の後端の面積と、第1加圧ピストン42を後方に移動させるべく対向室R5の作動液の圧力が作用する第1加圧ピストン42の受圧面積(対対向室受圧面積)、すなわち、第1加圧ピストンの鍔56の前端面の面積とが、等しくされている。したがって、ブレーキペダル14を操作して入力ピストン46を前進させても、ブレーキ操作力、すなわち、反力室R6の圧力によっては、第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44は前進せず、マスタシリンダ装置16によって加圧された作動液がブレーキ装置12に供給されることはない。その一方で、入力室R4に高圧源装置22からの作動液の圧力が導入されると、その作動液の圧力に依存して第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44は前進し、入力室R4の作動液の圧力に応じた圧力に加圧された作動液が、ブレーキ装置12に供給される。つまり、本マスタシリンダ装置16によれば、通常状態において、ブレーキペダル14に加えられたブレーキ操作力に依存せずに高圧源装置22からマスタシリンダ装置16に供給される作動液の圧力に依存した大きさのブレーキ力をブレーキ装置12が発生させる高圧源圧依存制動力発生状態が実現されるのである。言い換えれば、その状態でブレーキ装置が発生させるブレーキ力は、力源装置として機能する高圧源装置22が発生させる力である力源力に依存した力源力依存ブレーキ力となるのである。
本システムが搭載されている車両は、上述したようにハイブリッド車両であり、当該車両においては、回生ブレーキ力が利用できる。そのため、車輪に与えるべきブレーキ力としてブレーキ操作に基づいて決定されたブレーキ力から、回生ブレーキ力を減じた分のブレーキ力を、ブレーキ装置12によって発生させればよい。本システムは、上記高圧源圧依存制動力発生状態が実現されることから、ブレーキ操作力に依存しないブレーキ力をブレーキ装置12が発生させることができる。そのような作用から、本システムは、ハイブリッド車両に好適な液圧ブレーキシステムなのである。
一方、電気的失陥時等には、上記室間連通切換弁72は、閉弁状態、上記大気圧開放弁76は、開弁状態にあり、ピストン間室R3は密閉されるとともに対向室R5は大気圧に開放される。その状態では、ブレーキペダル14に加えられたブレーキ操作力は、ピストン間室R3の作動液を介して第1加圧ピストン42に伝達され、第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44は前進する。つまり、ブレーキペダル14に加えられたブレーキ操作力に依存した大きさのブレーキ力をブレーキ装置12が発生させる操作力依存制動力発生状態が実現されるのである。言い換えれば、その状態でブレーキ装置12が発生させるブレーキ力は、ブレーキ操作力に依存した操作力依存ブレーキ力となるのである。
なお、上記室間連通切換弁72を閉弁状態と、上記大気圧開放弁76を開弁状態とし、入力室R4に高圧源装置22からの作動液を導入すれば、第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44は、高圧源装置22からマスタシリンダ装置16に供給される作動液の圧力とブレーキ操作力との両方によって前進させられ、それら両方に依存した大きさのブレーキ力、つまり、高圧源装置22からマスタシリンダ装置16に供給される作動液の圧力に依存した大きさのブレーキ力である上記力源力依存ブレーキ力と、操作力に依存した大きさのブレーキ力である上記操作力依存ブレーキ力とが足し合わされたブレーキ力をブレーキ装置12が発生させる操作力・高圧源圧依存制動力発生状態が実現されることになる。
iv)高圧源装置
高圧源装置22は、リザーバ20から作動液を汲み上げて加圧するポンプ90と、そのポンプ90を駆動するモータ92と、ポンプ90によって加圧された作動液を蓄えるアキュムレータ94(図では[ACC]という符号が付されている)とを含んで構成されている。なお、高圧源装置22には、アキュムレータ94内の作動液の圧力、すなわち、供給する作動液の圧力(高圧源圧)を検出するための高圧源圧センサ96が設けられている(図では、高圧源圧の記号標記である[PACC]という符号が付されている)。ちなみに、高圧源圧は、力源装置である高圧源装置22が発生させる力である力源力を指標する力源力指標であり、高圧源圧センサ96は、力源力指標検出器として機能する。
v)レギュレータ
調圧器としてのレギュレータ24は、2重構造をなして内部に空間が形成されたハウジング100と、その空間内にハウジング100の軸線方向(左右方向)において図の左方から順に並んで配置された第1ピストン102,第2ピストン104,弁座環106,弁ロッド108を含んで構成されている。第1ピストン102,第2ピストン104は、それぞれ可動体として機能し、ハウジング100の軸線方向に移動可能とされている。第2ピストン104は、凹所が形成されたピストン本体110と、その凹所に嵌め込まれたプランジャ112とによって構成されている。弁座環106は、鍔部を有するとともに両端が開口する筒状をなしており、2つのスプリング114,116によって、第2ピストン104とハウジング100とに浮動支持されている。弁ロッド108は、左端が弁子として機能し、弁座として機能する弁座環106の右端部にその弁ロッド108の左端が着座可能に配設され、スプリング118によって左方に向かって付勢されている。つまり、弁座環106,弁ロッド106,スプリング118を含んで、後に説明する弁機構120が構成されているのであり、その弁機構120は、ハウジング100の軸線方向において可動体である第2ピストン104と並んで配設されているのである。なお、第2ピストン104のプランジャ112の先端(右端)は、弁座環106内において弁ロッド108の左端に当接可能とされている。
ハウジング100の上記空間内には、複数の液室が区画形成されている。具体的には、第1ピストン102の左側には、第1パイロット室R8が、第1ピストン102と第2ピストン104との間には、第2パイロット室R9が、第2ピストン104のプランジャ112の外周における概してピストン本体110と弁座環106の鍔部との間には、調圧されて当該レギュレータ24からマスタシリンダ装置16へ供給される作動液が収容される調圧室R10が、弁ロッド108の外周には、高圧源装置22から供給される作動液を受け入れる高圧室R11が、それぞれ形成されている。大まかに言えば、調圧室R10は、第2ピストン104の上記弁機構120の側に形成され、高圧室R11と調圧室R10とは、それらで弁機構120を挟むようにして形成されているのである。
ハウジング100には、各種のポートが設けられており、上記複数の液室は、それらのポートを介して当該システムの各装置等と連通させられている。具体的には、高圧室R11は、高圧ポートP10を介して、高圧源装置22からの作動液が供給される。調圧室R10は、調圧ポートP11を介して、マスタシリンダ装置16の入力ポートP5と連通させられている。第2ピストン104の内部には、プランジャ112を軸線方向に貫通する液通路と、その液通路に連通するとともにピストン本体110を径方向に貫通する液通路とからなる大気圧通路130が設けられており、2つの大気圧ポートP12,P13の各々は、その大気圧通路130を介して互いに連通している。一方の大気圧ポートP12は、上記大気圧開放路74に繋げられており、大気圧通路130は、マスタシリンダ装置16を介して、リザーバ20に連通している。すなわち、大気圧通路130は、低圧源に連通する低圧源連通路として機能しているのである。ちなみに、他方の大気圧ポートP13は、リリーフ弁132を介して、上記高圧ポートP8とは別の高圧ポートP14と繋げられており、高圧室R11の圧力が高すぎる状態となった場合に、高圧室R11の圧力がリザーバ20に開放される。
第1パイロット室R8は、第1パイロットポートP15,P16を介して、それぞれ、マスタシリンダ装置16の出力ポートP3,後輪側のブレーキ装置12RR,12RLに連通させられている。つまり、第1パイロット室R8は、マスタシリンダ装置16からブレーキ装置12RR,12RLに供給される作動液の通路の一部とされている。第2パイロット室R9は、2つの第2パイロットポートP17,P18と繋がっており、一方の第2パイロットポートP17は、上記増圧リニア弁26を介して、高圧ポートP14に、他方の第2パイロットポートP18は、上記減圧リニア弁28を介して、上記大気圧開放路74に繋げられている。つまり、第2パイロット室R9は、増圧リニア弁26を介して高圧源装置22に、減圧リニア弁28を介してリザーバ20に、それぞれ繋げられており、後に詳しく説明するように、第2パイロット室R9の作動液の圧力は、それら増圧リニア弁26,減圧リニア弁28によって調整された圧力(以下、「調整圧」と言う場合がある)に調整される。
第2ピストン104には、調圧室R10の作動液の圧力、すなわち、当該レギュレータ24から供給される作動液の圧力(いわゆる調圧器供給圧であり、以下、「サーボ圧」と言う場合がある)と、第2パイロット室R9の圧力である第2パイロット圧との差圧に依拠する差圧作用力が作用し、その差圧作用力によって、第2ピストン104は、ハウジング100内を軸線方向に移動させられる。実際には、スプリング114,116の弾性反力等を考慮する必要があるが、簡単に言えば、第2ピストン104は、第2パイロット圧に依拠する作用力がサーボ圧に依拠する作用力に優る場合に、図における右方に、つまり、弁機構120に向かって移動させられ、逆に、サーボ圧に依拠する作用力が第2パイロット圧に依拠する作用力に優る場合に、図における左方に、つまり、弁機構120から離れる方向に移動させられる。右方に移動させられた場合、第2ピストン104が、プランジャ112の先端において、弁機構120と係合して、弁ロッド108の先端が弁座環106から離座することで、その弁機構120により、調圧室R10と高圧室R11とが連通する。その場合、プランジャ112の先端に設けられた上記大気圧通路130の開口は、弁ロッド108の先端によって塞がれており、調圧室R10と大気圧通路130との連通は遮断される。逆に、左方に移動させられた場合、プランジャ112の先端における第2ピストン104の弁機構120との係合が解除されることで、調圧室R10と高圧室R11との連通が遮断される。その場合、大気圧通路130の開口が弁ロッド108の先端によっては塞がれずに、調圧室R10と大気圧通路130とが連通する。このようなレギュレータ24の動作により、調圧室R10内の作動液の圧力は、第2パイロット圧に応じた圧力、つまり、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28によって調整された上記調整圧に応じた圧力に調整される。なお、本システムでは、サーボ圧を検出するためのサーボ圧センサ134が設けられている(図では、サーボ圧の記号標記である[PSRV]という符号が付されている)。
以上のような作用から、レギュレータ24は、高圧源装置22が、サーボ圧と第2パイロット圧との両者の圧力源として機能するタイプの調圧器であり、「高圧源圧依存型調圧器」と呼ぶことができる。そして、その調圧器が配備されている本液圧ブレーキシステムは、「高圧源圧依存型調圧器配備システム」と呼ぶことができるのである。
通常の状態では、調圧器であるレギュレータ24からマスタシリンダ装置16に導入されるサーボ圧は、上述のように、上記調整圧に応じた圧力に調整される。先の説明から解るように、通常の状態では、マスタシリンダ装置16からブレーキ装置12に供給される作動液の圧力(以下、「マスタ圧」と言う場合がある)は、サーボ圧に応じた圧力となることから、マスタ圧は調整圧に応じた圧力となる。したがって、本システムでは、通常の状態において、調整圧に依存した大きさのブレーキ力がブレーキ装置12によって発生させられることとなる。ちなみに、通常の状態では、第1パイロット室R8の圧力である第1パイロット圧はマスタ圧となるが、マスタシリンダ装置16の構造に依拠するサーボ圧とマスタ圧との比、および、レギュレータ24の構造に依拠する調整圧とサーボ圧との比は、調整圧となる第2パイロット圧とマスタ圧となる第1パイロット圧との差圧に依拠して第1ピストン102に作用する差圧作用力によっては第1ピストン102がハウジング100内おいて右方に移動しないように設定されている。
例えば、増圧リニア弁26の失陥等により、第2パイロット室R9に調整圧の作動液を供給できない場合には、もう1つのパイロット室である第1パイロット室R8に導入されたマスタ圧と、サーボ圧との差圧によって作用する差圧作用力によって、第1ピストン102と第2ピストン104とが、それらが当接した状態のまま、つまり、それらが一体となって、ハウジング100内を軸線方向に移動する。そして、通常の状態と同様に、弁機構120による高圧室R11と調圧室R10との連通とその連通の遮断、および、大気圧通路130と調圧室R10との連通とその連通の遮断が切り換えられ、マスタ圧に応じた圧力となるサーボ圧の作動液が、レギュレータ24からマスタシリンダ装置16に供給される。つまり、本システムでは、第2パイロット室R9に調整圧の作動液を供給できない状況に陥った場合であっても、高圧源装置22が正常に機能しているとき、若しくは、正常に機能していなくてもアキュムレータ94にある程度の圧力が残っているときには、上記高圧源圧依存制動力発生状態、若しくは、上記操作力・高圧源圧依存制動力発生状態の実現、つまり、上記力源力依存ブレーキ力、若しくは、上記力源力依存ブレーキ力と上記操作力依存ブレーキ力とが足し合わされたブレーキ力をブレーキ装置12が発生させる状態の実現が可能とされているのである。
なお、本システムでは、レギュレータ24の第1パイロット室R8には、マスタ圧が導入されるように構成されているが、その構成に代え、例えば、反力室R6若しくはピストン間室R3の作動液の圧力が導入されるように構成することもできる。そのような構成であっても、第2パイロット室R9に調整圧の作動液を供給できない状況に陥った場合に、上記高圧源圧依存制動力発生状態、若しくは、上記操作力・高圧源圧依存制動力発生状態の実現が可能とされているのである。
vi)増圧リニア弁および減圧リニア弁
増圧リニア弁26,減圧リニア弁28は、一般的な電磁式リニア弁であり、構造の図示については省略する。増圧リニア弁26は、高圧源装置22とレギュレータ24の第2パイロット室R9との間に配設された常閉型の電磁式リニア弁である。この増圧リニア弁26は、先端が弁子として機能するプランジャと、そのプランジャが着座する弁座を有している。そして、その弁座を挟んで、レギュレータ24の第2パイロット室R9と連通してそれの圧力である第2パイロット圧PPLT2に相当する調整圧PAJTの作動液が収容される調整圧室が、プランジャの側に、高圧源装置22と連通して高圧源圧PACCの作動液が受け入れられる高圧室が、プランジャとは反対側に、それぞれ配置されている。プランジャには、それら高圧源圧PACCと調整圧PPLTとの差圧による差圧作用力FΔPAが、当該プランジャを弁座から離座させる方向に作用しており、その一方で、プランジャは、その差圧作用力FΔPAを上回るスプリングの付勢力FKAによって、当該プランジャを弁座に着座させる方向に付勢されている。また、プランジャには、コイルの励磁によって、そのコイルに通電される励磁電流iAに応じた大きさの電磁作用力FEAが、差圧作用力FΔPAと同じ方向、つまり、スプリングの付勢力FKAとは反対の方向に作用する。大まかに言えば、本増圧リニア弁26では、それらの力の釣り合いを考慮しつつ、任意の調整圧PAJTが得られるような励磁電流がiAが決定され、コイルに通電される。励磁電流iAの決定については、後に詳しく説明する。ちなみに、本増圧リニア弁26では、励磁電流iAが大きくなるほど、調整圧PAJTが高くなる。言い換えれば、開弁度(例えば、閉弁状態から開弁状態への移行のし易さ)が高くなり、スプリングの付勢力FKA,差圧作用力FΔPA,電磁作用力FEAがバランスした状態である弁開閉均衡状態における開弁圧、すなわち、開閉均衡圧が高くなるのである。
一方、減圧リニア弁28は、レギュレータ24の第2パイロット室R9と低圧源であるリザーバ22との間に配設された常開型の電磁式リニア弁である。この減圧リニア弁28は、先端が弁子として機能するプランジャと、そのプランジャが着座する弁座を有し、その弁座を挟んで、リザーバ20と連通して大気圧PRSVとなる大気圧室が、プランジャの側に、レギュレータ24の第2パイロット室R9と連通して第2パイロット圧PPLT2に相当する調整圧PAJTの作動液が収容される調整圧室が、プランジャとは反対側に、それぞれ配置されている。プランジャには、それら調整圧PAJTと大気圧PRSVとの差圧による差圧作用力FΔPRが、当該プランジャを弁座から離座させる方向に作用しており、それに加え、プランジャは、スプリングの付勢力FKRによって、差圧作用力FΔPRと同じ方向に付勢されている。その一方で、プランジャには、コイルの励磁によって、そのコイルに通電される励磁電流iRに応じた大きさの電磁作用力FERが、差圧作用力FΔPRおよびスプリングの付勢力FKRとは反対方向に作用する。本減圧リニア弁28では、大まかに言えば、それらの力の釣り合いを考慮しつつ、任意の調整圧PPLTが得られるような励磁電流がiRが決定され、コイルに通電される。励磁電流iRの決定については、増圧リニア弁26の場合と同様に、後に詳しく説明する。ちなみに、本減圧リニア弁28では、励磁電流iRが大きくなるほど、調整圧PAJTが高くなる。言い換えれば、開弁度(例えば、閉弁状態から開弁状態への移行のし易さ)が低くなり、上記弁開閉均衡状態における開弁圧、すなわち、開閉均衡圧が高くなるのである。
以上のような増圧リニア弁26,減圧リニア弁28の機能によれば、本システムでは、それら増圧リニア弁26,減圧リニア弁28を含んで、作動液を調整圧PAJTに調整するための圧力調整弁装置が構成されていると考えることができる。そしてその圧力調整弁装置は、レギュレータ24の第2パイロット圧PPLT2を調整圧PAJTとして調整するものとされているのである。さらに言えば、本システムでは、それら増圧リニア弁26,減圧リニア弁28と、上記レギュレータ24とを含んで、高圧源装置22から供給される作動液を調整して供給する調圧装置が構成されているのである。
vii)制御系
本システムの制御、つまり、ブレーキ制御は、ブレーキECU30によって行われる。ブレーキECU30は、大まかには、高圧源装置22(詳しくは、それが有するモータ92)の制御を行い、また、増圧リニア弁26および減圧リニア弁28の制御を行う。ブレーキECU30は、中心的な要素であるコンピュータと、高圧源装置22のモータ92,増圧リニア弁26,減圧リニア弁28等をそれぞれ駆動させるための駆動回路(ドライバ)とを含んで構成されている。
ブレーキECU30には、反力室R6若しくは対向室R5内の圧力PRCT(以下、「反力圧PRCT」と呼ぶことがある)、高圧源装置22からレギュレータ24に供給される作動液の圧力である高圧源圧PACC(いわゆる「アキュムレータ圧」である)、レギュレータ24からマスタシリンダ装置に送られる作動液の圧力であるサーボ圧PSRVを、制御に必要な情報として取得するため、反力圧センサ86,高圧源圧センサ96,サーボ圧センサ134が接続されている。ちなみに、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28,レギュレータ24を含んで構成される調圧装置から供給される作動液の圧力であるサーボ圧PSRVは、ブレーキ装置12が発生させるブレーキ力を指標するブレーキ力指標の一種であるため、サーボ圧センサ134は、ブレーキ力指標検出器として機能する。また、高圧源圧PACCは、力源装置としての高圧源装置22が発生させる力である力源力を指標する力源力指標の一種であり、高圧源圧検出器である高圧源圧センサ96は、力源力指標検出器として機能する。
また、本システムには、ブレーキ操作量δPDL,ブレーキ操作力FPDLを、ブレーキ操作部材であるブレーキペダル14の操作情報として取得するために、ブレーキ操作量センサ140,ブレーキ操作力センサ142が設けられており(図では、それぞれ、ブレーキ操作量,ブレーキ操作力の記号標記である[δPDL],[FPDL]という符号が付されている)、それらのセンサ140,142も、ブレーキECU30に接続されている。本システムにおける制御は、それらセンサの検出値に基づいて行われる。ちなみに、ブレーキ操作量δPDL,ブレーキ操作力FPDLは、いずれも、ブレーキペダル14の操作の程度、つまり、ブレーキ操作の程度を指標するブレーキ操作指標であり、それらブレーキ操作量センサ140,ブレーキ操作力センサ142は、ブレーキ操作指標検出器として機能する。
[B]ブレーキシステムにおけるブレーキ力の制御の概要
本システムは、通常の状態から当該システムに失陥が生じた状態となった場合に作動モードが、通常モードから失陥時モードに切換えられる。本システムでは、ブレーキ装置12が発生させるブレーキ力(以下、「液圧ブレーキ力」と言う場合がある)に関して、通常モードにおいて、通常制御が、失陥時モードにおいて、失陥時制御が、それぞれ行われるが、それらの制御に加え、ブレーキ操作中に通常モードから失陥時モードに移行する際に、過渡的な制御である過渡制御が行われる。以下に、それらの制御の各々の概要について、図2を参照しつつ、ブレーキ力の決定を中心に説明する。
i)通常制御
通常モードでは、室間連通切換弁72が開弁状態と、大気圧開放弁76が閉弁状態とされ、上述の高圧源圧依存制動力発生状態が実現される。通常制御は、この通常モード下で行われ、通常制御では、ブレーキ操作の程度に応じた大きさのブレーキ力を車輪に与えるように、液圧ブレーキ力が制御される。なお、本システムは、回生ブレーキシステムをも搭載した車両に搭載されており、ブレーキ操作の程度に基づいて、車輪に与えられるべきブレーキ力として、通常ブレーキ力GNが決定され、その通常ブレーキ力GNから、発生させられる回生ブレーキ力GREGを減じることによって、通常モードにおいて発生させるべき液圧ブレーキ力である目標液圧ブレーキ力G* LIQが決定される。そして、通常制御では、液圧ブレーキ力GLIQが目標液圧ブレーキ力G* LIQとなるように、力源力依存ブレーキ力GPSが制御される。ちなみに、高圧源圧依存制動力発生状態では、操作力依存ブレーキ力GOPは発生しないことから、液圧ブレーキ力GLIQは、力源力依存ブレーキ力GPSと等しいものとなる。
具体的には、液圧ブレーキ力GLIQを指標するブレーキ力指標として、調圧装置、すなわち、レギュレータ24からマスタシリンダ装置16に供給される作動液であるサーボ圧PSRVが用いられ、そのブレーキ力指標の制御目標である目標ブレーキ力指標として、目標サーボ圧P* SRVが、目標液圧ブレーキ力G* LIQに応じた高さ、つまり、力源力依存ブレーキ力GPSに応じた高さに決定され、サーボ圧PSRVがその目標サーボ圧P* SRVとなるように、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28に供給されるべき励磁電流IA,IRがそれぞれ決定され、その決定された励磁電流IA,IRが、それら増圧リニア弁26,減圧リニア弁28にそれぞれ供給される。
上述した通常ブレーキ力GNの決定は、ブレーキECU30に格納されているブレーキ力決定マップに従って行われる。ブレーキ力決定マップは、図2に示すようなものであり、ブレーキ操作の程度に関係付けられたブレーキ力の大きさを示すものとなっている。ちなみに、ブレーキ操作の程度は、ブレーキ操作量センサ140,ブレーキ操作力センサ142のそれぞれの検出によって取得されたブレーキ操作量δPDL,ブレーキ操作力FPDLに基づいて、公知の手法に従って認定されるが、図2では、理解を容易にするために、ブレーキ操作の程度をブレーキ操作力FPDLと擬制して表している。通常ブレーキ力GNは、図2に示すブレーキ力決定マップにおいて実線で表わされたものであり、そのマップに従って、ブレーキ操作力FPDLに応じて、ブレーキ操作力FPDLが大きくなるにつれて大きくなるように決定される。
ii)失陥時制御
失陥時モードでは、室間連通切換弁72が閉弁状態と、大気圧開放弁76が開弁状態とされ、上述の操作力・高圧源圧依存制動力発生状態が実現される。失陥時制御は、この失陥時モード下で行われるが、失陥時制御では、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28についての実質的な制御は行われない。具体的に言えば、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28のいずれにも、励磁電流IA,IRは供給されない。この状態では、マスタシリンダ装置16から供給される作動液の圧力であるマスタ圧PMSTがレギュレータ24の第1パイロット室に、第1パイロット圧PPLT1として導入され、レギュレータ24によって、そのマスタ圧PMSTに応じた高さにサーボ圧PSRVが調整される。マスタシリンダ装置16内において、サーボ圧PSRVがブレーキ操作力をアシストし、ブレーキ装置12は、操作力依存ブレーキ力GOPに力源力依存ブレーキ力GPSが加わった液圧ブレーキ力GLIQを発生させる。なお、失陥時モードでは、回生ブレーキ力GREGが発生させられないようになっており、車輪に与えられる失陥時ブレーキ力GDは、液圧ブレーキ力GLIQに等しいものとなる。
失陥時ブレーキ力GDも、図2に示すブレーキ力決定マップに含まれてており、そのマップにおける破線で表わされたものが失陥時ブレーキ力GDである。失陥時ブレーキ力GDも、通常ブレーキ力GNと同様に、ブレーキ操作力FPDLに応じて、ブレーキ操作力FPDLが大きくなるにつれて大きくなるようになっている。ただし、そのマップから解るように、通常ブレーキ力GNと比較して、相当に小さいものとなっている。ちなみに、図では、概ね半分の大きさとして示されている。言い換えれば、通常モードにおいて発生させられる通常ブレーキ力GNが失陥時ブレーキ力GDよりも相当に大きなものとなるように、上記通常制御によって、液圧ブレーキ力GLIQが制御されるのである。
iii)過渡制御
過渡制御は、上述した通常ブレーキ力GNと失陥時ブレーキ力GDとの差に鑑みて、ブレーキ操作中に失陥が生じて、通常モードから失陥時モードに移行する際、その差によるブレーキ力の急変を抑制若しくは緩和するために行う制御である。本システムでは、通常モードから失陥時モードに移行させた上で、つまり、室間連通切換弁72を閉弁状態と、大気圧開放弁76を開弁状態とし、上述の操作力・高圧源圧依存制動力発生状態を実現させた上で行われる。
過渡制御において車輪に与えられるべきブレーキ力である過渡ブレーキ力GTも、図2に示すブレーキ力決定マップに含まれており、そのマップにおいて、太実線で表わされたものが過渡ブレーキ力GTである。過渡ブレーキ力GTも、失陥時ブレーキ力GD,通常ブレーキ力GN,失陥時ブレーキ力GDと同様に、ブレーキ操作力FPDLに応じて、ブレーキ操作力FPDLが大きくなるにつれて大きくなるようになっている。ただし、そのマップから解るように、通常ブレーキ力GNと失陥時ブレーキ力GDとの中間の大きさとなるようにされている。過渡制御では、このマップに従って過渡ブレーキ力GTが決定される。
過渡制御が行われる際にも、回生ブレーキ力GREGが発生させられないようになっており、液圧ブレーキ力GLIQが過渡ブレーキ力GTのすべてを担うことになる。つまり、過渡ブレーキ力GTが、目標液圧ブレーキ力G* LIQとして決定される。その一方で、過渡制御が行われる際、ブレーキ装置12は、操作力依存ブレーキ力GOPに力源力依存ブレーキ力GPSが加わった液圧ブレーキ力GLIQを発生させる。したがって、過渡制御では、過渡ブレーキ力GTに決定された目標液圧ブレーキ力G* LIQから、取得されたブレーキ操作力FPDLに基づいて認定された操作力依存ブレーキ力GOPを減じることで、力源力依存ブレーキ力GPSが決定され、その力源力依存ブレーキ力GPSに応じた高さに、目標ブレーキ力指標としての目標サーボ圧P* SRVが決定される。そして、サーボ圧PSRVがその目標サーボ圧P* SRVとなるように、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28に供給されるべき励磁電流IA,IRがそれぞれ決定され、その決定された励磁電流IA,IRが、それら増圧リニア弁26,減圧リニア弁28にそれぞれ供給される。
なお、過渡制御においては、ブレーキ力の変化の過程によって、過渡ブレーキ力GTは、変更される。詳しく言えば、過渡ブレーキ力GTの決定において、ブレーキ操作の程度が減少するとき、つまり、ブレーキ力減少過程と、ブレーキ操作の程度が増加するとき、つまり、ブレーキ力増加過程とで、マップにおいて依拠する過渡ブレーキ力GTを表す線(以下、「過渡ブレーキ力線」という場合がある)が、変更される。具体的に言えば、ブレーキ力増加過程において、図2のブレーキ力決定マップの太実線で示す過渡ブレーキ力線に沿って過渡ブレーキ力GTが決定されるが、ある時点(例えば、図2における○で示す時点)でブレーキ力増加過程からブレーキ力減少過程に切換った場合、その時点から、ブレーキ力減少過程において、図2に示す太破線で表わされた過渡ブレーキ力線に沿って決定される。
ブレーキ力減少過程における過渡ブレーキ力線の勾配、つまり、ブレーキ操作の程度の変化に対しての過渡ブレーキ力の変化の勾配は、ブレーキ力増加過程におけるその勾配に沿ってブレーキ力を減少させた場合に比較して、より失陥時ブレーキ力GDに近づく側の勾配とされている。言い換えれば、本システムでは、過渡ブレーキ力GTが失陥時ブレーキGDより大きくされているため、ブレーキ力減少過程において、ブレーキ力増加過程における勾配よりも急な勾配に沿って、過渡ブレーキ力GTが減少させられることになる。本システムでは、過渡制御の際中にブレーキ力増加過程からブレーキ力減少過程に変わった場合にはその変わった時点で、若しくは、ブレーキ力減少過程において通常モードから失陥時モードに移行した際にはその移行の時点で、ブレーキ力減少過程における過渡ブレーキ力線が上記のように設定され、その線に沿って、過渡ブレーキ力が決定される。
なお、逆に、過渡制御を行っている最中に、ブレーキ力減少過程からブレーキ力増加過程に移行する場合には、その移行の時点(例えば、図2における◎印の時点)において、ブレーキ力増加過程における過渡ブレーキ力線が、その時点での過渡ブレーキ力をその線上に位置させるべく、図2のブレーキ力決定マップにおける2点鎖線に示すようにシフトさせられ、移行後には、ブレーキ力増加過程において、過渡ブレーキ力GTが、そのシフトさせられた過渡ブレーキ力線に沿って決定される。
iv)過渡制御の開始条件,終了条件
先に説明したように、過渡制御は、ブレーキ操作中のブレーキ力の急変を抑制若しくは緩和する目的で行われる制御であるため、a)ブレーキ操作中であること、b)失陥が生じた時点のブレーキ操作の程度における通常ブレーキ力GNと失陥時ブレーキ力GDとの差が設定差を超える状況であることの2つの条件を充足した場合に行われる。また、上記目的から、a)過渡ブレーキ力GTと失陥時ブレーキ力GDとの差が設定差を下回る状況となったこと、b)過渡制御の実行の時間が設定時間を超えたこと、c)ブレーキ操作が終了したことのいずれかの条件が充足した場合に終了させられる。ちなみに、上記b)の終了条件は、過渡制御がある程度の時間行われた場合には、車速が相当に低くなっており、ブレーキ力の変化がある程度のものであっても問題とはならないことを考慮したものである。
[C]ブレーキシステムの具体的制御
以下に、本ブレーキシステムの具体的な制御について、その制御を行うためのプログラムを説明しつつ、そのプログラムの流れにそって説明する。そのプログラムは、図3にメインルーチンを示すブレーキ制御プログラムであり、本ブレーキシステムの制御は、ブレーキECU30が、そのプログラムを短い時間ピッチ(例えば、数msec〜数十msec)で繰り返し実行することによって、行われる。以下の説明は、メインルーチンによる処理、通常制御、失陥時制御、2種の過渡制御の順に行うこととする。なお、本ブレーキ制御プログラムは、理解を容易にするため、サーボ圧センサ134の失陥,高圧源圧センサ96の失陥だけを、当該システムの欠陥として扱うこととし、それらの失陥に対処するためのプログラムとされている。
i)メインルーチンによる処理
図3に示すメインルーチンの実行によって、概して言えば、通常制御、失陥時制御、2種の過渡制御のいずれを行うかを決定するための処理が行われる。このメインルーチンに従う処理では、まず、ステップ1(以下、「S1」と言う場合があり、他のステップも同様である)において、先に説明したように、ブレーキ操作の程度が、ブレーキ操作量センサ140,ブレーキ操作力センサ142のそれぞれの検出によって取得されたブレーキ操作量δPDL,ブレーキ操作力FPDLに基づいて、公知の手法に従って認定される。続く、S2において、認定されたブレーキ操作の程度に基づいて、図2に示すブレーキ力決定マップを参照しつつ、そのブレーキ操作の程度に応じた通常ブレーキ力GN,失陥時ブレーキ力GD,過渡ブレーキ力GTが、それぞれ決定される。さらに、このS2では、決定された通常ブレーキ力GN,失陥時ブレーキ力GD,過渡ブレーキ力GTに基づいて、通常ブレーキ力と失陥時ブレーキ力との差である通常・失陥ブレーキ力差ΔGN-D、および、過渡ブレーキ力と失陥時ブレーキ力との差である過渡・失陥ブレーキ力差ΔGT-Dが認定される。
続くS3において、過渡フラグFTのフラグ値が判断される。過渡フラグFTは、過渡制御が行われているか否かを判断するためのフラグであり、初期値は“0”とされ、過渡制御が行われている場合に、“1”とされる。S3において過渡制御が行われていない場合には、S4において、モードフラグFMのフラグ値が判断される。モードフラグFMは、初期値は“0”とされ、作動モードが通常モードから失陥時モードに完全に移行した場合、つまり、失陥時制御が行われている場合に、“1”とされる。S4において、失陥時モードに完全に移行したと判断されなかった場合は、すなわち、通常モードとされている場合である。
S4において、通常モードであると判断された場合には、S5において、失陥が発生したか否かが判断される。失陥が発生していないと判断された場合、S6において、通常モードを実現させるため、つまり、高圧源圧依存制動力発生状態を実現させるために、室間連通切換弁72が開弁状態とされ、大気圧開放弁76が閉弁状態とされる。そして、続くS7において、通常制御が実行される。
失陥が発生したと判断された場合には、S8において、ブレーキ操作中か否かが判断され、ブレーキ操作中であると判断された場合には、S9において、通常・欠陥ブレーキ力差ΔGN-Dが設定差ΔGTH1を超えているか否かが判断される。ブレーキ操作中ではない、あるいは、通常・欠陥ブレーキ力差ΔGN-Dが設定差ΔGTH1を超えていないと判断された場合には、S10において、過渡フラグFTが“0”と、S11において、モードフラグFMが“1”とされ、S12において、失陥時モードを実現するため、つまり、操作力・高圧源圧依存制動力発生状態を実現させるために、室間連通切換弁72が閉弁状態とされ、大気圧開放弁76が開弁状態とされる。そしてその後、S13において、失陥時制御が実行される。つまり、過渡制御を行わずして失陥時制御が実行されるのである。なお、既に、失陥時制御が行われている場合には、S4の判断によって、S10〜S13の処理が実行される。
S8においてブレーキ操作中であると判断され、かつ、S9において通常・欠陥ブレーキ力差ΔGN-Dが設定差ΔGTH1を超えていると判断された場合には、S14において、過渡フラグFTが“1”にセットされ、続くS15において、室間連通切換弁72が閉弁状態と、大気圧開放弁76が開弁状態とされ、操作力・高圧源圧依存制動力発生状態が実現される。そして、S16において、失陥がサーボ圧センサ134の失陥であるのか高圧源圧センサ96の失陥であるのかが判断され、サーボ圧センサ134の欠陥であると判断された場合には、S17において、2種の過渡制御のうちの1つであるサーボ圧センサ欠陥時過渡制御が、高圧源圧センサ96の失陥であると判断された場合には、S18において、2種の過渡制御のうちのもう1つである高圧源圧センサ欠陥時過渡制御が、それぞれ実行される。
S3において既にいずれかの過渡制御が行われていると判断された場合には、S19において、計時カウンタCがカウントアップされる。計時カウンタCは、初期値が“0”とされており、過渡制御の実行の時間を計時するためのものである。続くS20において、過渡制御の実行の時間が設定時間CTHを超えたか否かが判断される。また、S21において、ブレーキ操作中であるか否か、つまり、ブレーキ操作が終了したか否かが判断され、S22において、上述の過渡・失陥ブレーキ力差ΔGT-Dが設定差ΔGTH2を下回ったか否かが判断される。過渡制御の実行の時間が設定時間CTHを超えたと判断された場合、ブレーキ操作が終了したと判断された場合、若しくは、過渡・失陥ブレーキ力差ΔGT-Dが設定差ΔGTH2を下回ったと判断された場合には、実行中の過渡制御を終了させて失陥時制御を実行すべく、S10〜S13の処理が行われる。過渡制御の実行の時間が設定時間CTHを超えていないと判断され、ブレーキ操作が終了していないと判断され、かつ、過渡・失陥ブレーキ力差ΔGT-Dが設定差ΔGTH2を下回っていないと判断された場合には、過渡制御を継続すべく、S14〜S18の処理が実行される。
ii)通常制御
S7の通常制御は、図4にフローチャートを示す通常制御ルーチンが実行されるこことによって行われる。このルーチンに従う処理では、まず、S31において、サーボ圧センサ134の検出によってブレーキ力指標としてのサーボ圧PSRVが取得され、続くS32において、高圧源圧センサ96の検出によって力源力指標としての高圧源圧PACCが取得される。そして、S33において、後に詳しく説明するところの、通常時における高圧源装置22の制御である通常高圧源制御が実行される。次に、S34において、ブレーキ操作の程度に基づいて決定されている通常ブレーキ力GNから、発生させられる回生ブレーキ力GREGを減じることによって、目標液圧ブレーキ力G* LIQが決定される。通常モードにおいては、液圧ブレーキ力GLIQが力源力依存ブレーキ力GPSと等しいことから、S35において、目標液圧ブレーキ力G* LIQに基づいて、目標ブレーキ力指標としての目標サーボ圧P* SRVが決定され、S36において、その目標サーボ圧P* SRVから、取得されているサーボ圧PSRVを減じることにより、サーボ圧偏差ΔPSRV(=P* SRV−PSRV)が算出される。そして、S37において、取得されているサーボ圧PSRVと、レギュレータ24の構造によって定まる増圧比(パイロット圧に対するサーボ圧の比)とに基づいて、第2パイロット室R9の作動液の圧力である第2パイロット圧PPLT2が認定される。それらの決定,算出,認定の後、S38,S39において、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28の各々への励磁電力IA,IRの供給によってそれらの各々を制御する増圧弁フィードバック制御,減圧弁フィードバック制御が実行される。
ii-a)通常高圧源制御
S33の通常高圧源制御は、高圧源圧PACCを調整するための制御であり、図5にフローチャートを示す通常高圧源制御サブルーチンの実行によって行われる。このサブルーチンに従う処理では、まず、S41において、高圧源圧PACCが、設定上限圧PACC-Uを超えているか否かが判断される。高圧源圧PACCが設定上限圧PACC-Uを超えていると判断された場合には、S42において、ポンプ90の駆動を停止する旨の指令が発せられる。具体的には、モータ92の作動を停止する旨の信号が、駆動回路に送られる。それに対して、高圧源圧PACCが設定上限圧PACCUを超えていないと判断された場合には、S43において、高圧源圧PACCが、設定下限圧PACC-Lを下回っているか否かが判断される。高圧源圧PACCが、設定下限圧PACC-Lを下回っていると判断された場合には、S44において、ポンプ90を駆動する旨の指令が発せられる。具体的には、モータ92を作動させる旨の信号がモータドライバに送られる。それに対して、高圧源圧PACCが、設定下限圧PACC-Lを下回っていないと判断された場合、すなわち、高圧源圧PACCが設定下限圧PACC-L以上かつ設定上限圧PACC-U以下である場合には、S45において、ポンプ90の現在の状態を維持する旨の指令が、つまり、ポンプ90が駆動させられている場合にはその駆動を継続する指令が、ポンプ90の停止させられている場合にはその停止を維持する旨の指令が発せられる。具体的には、モータ92が作動している場合には、作動させる旨の信号が、モータ90の作動が停止している場合には、停止する旨の信号が、駆動回路に送られる。このような通常高圧源制御が行われることにより、高圧源圧PACCは、通常、設定上限圧PACC-Uと設定下限圧PACC-Lとで画定される設定圧力範囲に維持されることになる。
ii-b)増圧弁フィードバック制御
S38の増圧弁フィードバック制御は、簡単に言えば、励磁電流IAを、フィードフォワード電流成分IA-FFにフィードバック電流成分IA-FBを加えることによって決定して、増圧リニア弁26に供給するための制御である。この増圧弁フィードバック制御は、図6にフローチャートを示す増圧弁フィードバック制御サブルーチンが実行されることによって行われる。
増圧弁フィードバック制御サブルーチンに従う処理では、まず、S51において、増圧リニア弁26の構造に依拠して定まる上記弁開閉均衡状態におけるサーボ圧PSRVと高圧源圧PACCと励磁電流IAとの相互関係に従ってフィードフォワード電流成分IA-FFが決定される。サーボ圧PSRVと第2パイロット圧PPLT2とは上述の増圧比に従った関係にあるため、実際には、第2パイロット圧PPLT2と高圧源圧PACCと励磁電流IAとの相互関係に従って決定される。具体的には、弁開閉均衡状態における差圧作用力FΔP-A,スプリングの付勢力FK-A,電磁作用力FE-Aの釣り合いは以下のような式で表わされる。
E-A=FKA−FΔPA
ちなみに、弁開閉均衡状態における励磁電流をIA-FFとすれば、
E-A=αA・IA-FF
FΔP-A=βA・(PACC−PPLT2) αA,βA:係数
であるから、上記式は、
A-FF={FK-A−βA・(PACC−PPLT2)}/αA
となる(FKAは定数と考えることができる)。S51では、この式に従う励磁電流IA-FFを、フィードフォワード電流成分IA-FFとして決定する。ちなみに、通常制御でのフィードフォワード電流成分IA-FFの決定においては、高圧源圧PACCは、高圧源圧センサ96の検出によって取得された実際の圧力が、第2パイロット圧PPLT2は、サーボ圧センサ134の検出により取得されている実際のサーボ圧PSRVに依拠して認定された圧力がそれぞれ用いられる。
続くS52において、サーボ圧偏差ΔPSRVに基づいて、フィードバック電流成分IA-FBが決定される。このフィードバック電流成分IA-FBは、サーボ圧PSRVを目標サーボ圧P* SRVに近づけるための電流成分と考えることができる。具体的には、次式に従って、フィードバック電流成分IA-FBが決定される。
A-FB=γA・ΔPSRV γA:制御ゲイン
ちなみに、通常制御でのフィードバック電流成分IA-FBの決定においては、サーボ圧センサ134の検出により取得されている実際のサーボ圧PSRVに依拠して算出されたサーボ圧偏差ΔPSRVが用いられる。
次のS53において、実際に供給される励磁電流IAの基礎となる基礎励磁電流IA0が、次式に基づいて決定される。
A0=IA-FF+IA-FB
そして、S54,S55において、目標サーボ圧P* SRVの変化に基づいて、ブレーキ力増加過程,ブレーキ力減少過程あるいはブレーキ力が維持される過程であるブレーキ力維持過程(目標ブレーキ力が変化しない過程を意味する)のいずれにあるかが判断される。ブレーキ力増圧過程若しくはブレーキ力維持過程にあると判断された場合には、S56において、供給する励磁電流IAが、上記基礎励磁電流IA0に決定される。一方、ブレーキ力減少過程にあると判断された場合には、S57において、増圧リニア弁26の電力消費に鑑み、励磁電流IAが、基礎励磁電流IA0ではなく、0に決定される。そして、S58において、決定された励磁電流IAについての指令が発せられる。具体的には、駆動回路に励磁電流IAに関する信号が送られる。
ii-c)減圧弁フィードバック制御
S39の増圧弁フィードバック制御は、簡単に言えば、増圧リニア弁26と同様に、励磁電流IRを、フィードフォワード電流成分IR-FFにフィードバック電流成分IR-FBを加えることによって決定して、減圧リニア弁28に供給するための制御である。この減圧弁フィードバック制御は、図7にフローチャートを示す減圧弁フィードバック制御サブルーチンが実行されることによって行われる。
減圧弁フィードバック制御サブルーチンに従う処理では、増圧リニア弁26に対する処理と同様、まず、S61において、減圧リニア弁28の構造に依拠して定まる上記弁開閉均衡状態におけるサーボ圧PSRVと大気圧PRSVと励磁電流IRとの相互関係に従ってフィードフォワード電流成分IR-FFが決定される。サーボ圧PSRVと第2パイロット圧PPLT2とは上述の増圧比に従った関係にあるため、実際には、第2パイロット圧PPLT2と大気圧PRSVと励磁電流IRとの相互関係に従って決定される。具体的には、弁開閉均衡状態における差圧作用力FΔP-R,スプリングの付勢力FK-R,電磁作用力FE-Rの釣り合いは以下のような式で表わされる。
E-R=FKR+FΔPR
ちなみに、弁開閉均衡状態における励磁電流をIR-FFとすれば、
E-R=αR・IR-FF
FΔP-R=βR・(PPLT2−PRSV) αR,βR:係数
であるから、上記式は、
R-FF={FK-R+βR・(PPLT2−PRSV)}/αR
となる(FKRは定数と考えることができる)。S61では、この式に従う励磁電流IR-FFを、フィードフォワード電流成分IR-FFとして決定する。ちなみに、通常制御でのフィードフォワード電流成分IR-FFの決定においては、大気圧PRSVは、概ね1気圧が、第2パイロット圧PPLT2は、サーボ圧センサ134の検出により取得されている実際のサーボ圧PSRVに依拠して認定された圧力がそれぞれ用いられる。
続くS62において、サーボ圧偏差ΔPSRVに基づいて、フィードバック電流成分IR-FBが決定される。このフィードバック電流成分IR-FBは、サーボ圧PSRVを目標サーボ圧P* SRVに近づけるための電流成分と考えることができる。具体的には、次式に従って、フィードバック電流成分IR-FBが決定される。
R-FB=γR・ΔPSRV γR:制御ゲイン
ちなみに、通常制御でのフィードバック電流成分IRFBの決定においては、サーボ圧センサ134の検出により取得されている実際のサーボ圧PSRVに依拠して算出されたサーボ圧偏差ΔPSRVが用いられる。
次のS63において、実際に供給される励磁電流IRの基礎となる基礎励磁電流IR0が、次式に基づいて決定される。
R0=IR-FF+IR-FB
ちなみに、減圧リニア弁28の場合、このフィードバック電流成分IR-FBは、ブレーキ力減少過程においては実際のサーボ圧PSRVが目標サーボ圧P* SRVよりも高く、サーボ圧偏差ΔPSRVが負になることで負の値となるため、結果的には、フィードフォワード電流成分IRFFを減じる成分となる。そして、S64,S65において、目標サーボ圧P* SRVの変化に基づいて、ブレーキ力増加過程,ブレーキ力減少過程あるいはブレーキ力維持過程のいずれにあるかが判断される。ブレーキ力減少過程若しくはブレーキ力維持過程にあると判断された場合には、S66において、供給する励磁電流IRが、上記基礎励磁電流IR0に決定される。一方、ブレーキ力増加過程にあると判断された場合には、S67において、減圧リニア弁28を充分な閉弁状態とすべく、励磁電流IRが、基礎励磁電流IR0にマージン電流IMAGを足し合わせた電流として決定される。そして、S68において、決定された励磁電流IRについての指令が発せられる。具体的には、駆動回路に励磁電流IRに関する信号が送られる。
iii)失陥時制御
S13の失陥時制御は、図8にフローチャートを示す失陥時制御ルーチンが実行されることによって行われる。このルーチンに従う処理では、まず、S71において、発生した失陥が、サーボ圧センサ134の失陥であるか高圧源圧センサ96の失陥であるかが判断される。サーボ圧センサ134の失陥であると判断された場合には、S72において、高圧源センサ96の検出によって高圧源圧PACCが取得され、S73において、その取得された高圧源圧PACCに基づいて、先に説明した通常高圧源制御、つまり、図5にフローチャートを示す通常高圧源制御サブルーチンが実行される。一方、S71において高圧源圧センサ96の失陥であると判断された場合には、当該センサ96によっては高圧源圧PACCが取得できないため、S74において、後に詳しく説明するポンプ間欠駆動制御が行われる。通常高圧源制御若しくはポンプ間欠駆動制御の後、S75において、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28の各々に供給される励磁電流IA,IRが0とされ、S76において、その励磁電流IA,IRに関する指令が発せられる。つまり、失陥時制御では、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28に対して、実質的な制御は行われず、レギュレータ24の第2パイロット圧PPLT2は、大気圧とされる。したがって、先に説明したように、サーボ圧PSRVは、マスタ圧PMSTとなる第1パイロット圧PPLT1に応じた高さとなる。
S74のポンプ間欠駆動制御は、図9にフローチャートを示すポンプ間欠駆動制御サブルーチンが実行されることによって行われる。このサブルーチンに従う処理では、まず、S81において、間欠駆動における駆動時間および駆動間隔時間を計測するための計時カウンタC’が、ブレーキ制御処理プログラムが実行される時間ピッチに応じたカウントアップ値ΔC’だけカウントアップされる。ちなみに、この計時カウンタC’の初期値は、“0”とされている。次いで、S82において、計時カウンタC’によって計られた時間がポンプ駆動限度時間C’ON-LIM以下である否かが、S83において、ポンプ停止限度時間C’OFF-LIMを超えているかが、それぞれ判断される。計時カウンタC’によって計られた時間がポンプ駆動限度時間C’ON-LIM以下である場合には、S84において、ポンプ90を駆動する旨の指令が発せられ、その時間が、ポンプ駆動限度時間C’ON-LIMを超えかつポンプ停止限度時間C’OFF-LIM以下である場合には、S85において、そのポンプ90の駆動を停止する旨の指令が発せられる。ポンプ停止限度時間C’OFF-LIMを超えている場合には、S86において、計時カウンタC’がリセットされる。以上の処理によって、ポンプ間欠駆動制御においては、ポンプ90は、設定駆動時間だけ設定時間間隔を空けて繰り返し駆動されるようにして、間欠的に駆動される。このポンプ間欠駆動制御によれば、実際の高圧源圧PACCが取得できない場合であっても、高圧源圧PACCをある程度の圧力に維持することが可能である。
iv)サーボ圧センサ失陥時過渡制御
2種の過渡制御のうちの1つであるS17のサーボ圧センサ失陥時過渡制御は、図10にフローチャートを示すサーボ圧センサ失陥時過渡制御ルーチンが実行されることによって行われる。この制御では、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28の各々の制御に関して態様の異なる2つの制御のうちの1つが選択的に行われるようにされている。2つの制御のうちの一方は、先に説明した増圧弁フィードバック制御,減圧弁フィードバック制御であり、他方は、後に説明する増圧弁フィードフォワード制御,減圧弁フィードフォワード制御である。
サーボ圧センサ失陥時過渡制御ルーチンに従う処理では、まず、S91において、高圧源圧センサ96の検出によって高圧源圧PACCが取得され、S92において、その取得された高圧源圧PACCに基づいて、先に説明した通常高圧源制御、つまり、図5にフローチャートを示す通常高圧源制御サブルーチンが実行される。続くS93において、先に説明したように、既に決定されている過渡ブレーキ力GTに基づき、その過渡ブレーキ力GTが目標液圧ブレーキ力G* LIQとして決定され、S94において、先に説明したように、目標液圧ブレーキ力G* LIQから操作力依存ブレーキ力GOPを減じることで、力源力依存ブレーキ力GPSが決定され、その力源力依存ブレーキ力GPSに応じた高さに、目標サーボ圧P* SRVが決定される。
先に説明した2つの態様の制御の選択は、S95において、制御選択第1設定パラメータSET1の値によって行われる。このパラメータは、“0”と“1”との2つの値をとり、“0”である場合に、増圧弁フィードバック制御,減圧弁フィードバック制御が、“1”である場合に、増圧弁フィードフォワード制御,減圧弁フィードフォワード制御が行われる。このパラメータは、当該システムにおいて、車両に適合させて最初から設定されており、また、車両のユーザによって任意に設定することも可能である。
増圧弁フィードバック制御,減圧弁フィードバック制御が行われる場合には、まず、S96において、サーボ圧PSRVが、高圧源圧センサ96の検出によって取得された高圧源圧PACCに基づいて、推定される。この推定は、サーボ圧センサ134が失陥しているために必要な処理である。詳しい説明は省略するが、失陥直前の時点でのサーボ圧PSRVは取得されており、その時点からの高圧源圧PACCの変化から、レギュレータ24からマスタシリンダ装置16へ供給された作動液の量が推定され、その量に基づいて、サーボ圧PSRVが推定される。その際、ポンプ90が駆動されている場合には、その駆動による高圧源圧PACCの変化をも考慮して推定される。つまり、高圧源装置22の作動状態をも考慮して推定されるのである。なお、ブレーキ力減少過程では、減圧リニア弁28に供給された励磁電流IR,その供給の時間等により、マスタシリンダ装置16からレギュレータ24に戻る作動液の量を推定し、その量に基づいてサーボ圧PSRVを推定することが可能である。
上記のように推定されたサーボ圧PSRVに基づいて、先に説明した通常制御における場合と同様に、S97において、サーボ圧偏差ΔPSRVが算出され、S98において、第2パイロット圧PPLT2が認定される。そしてそれらの算出,認定の後、S99,S100において、先に説明した増圧弁フィードバック制御,減圧弁フィードバック制御が、それぞれ実行される。つまり、先に説明したところの、図6にフローチャートを示す増圧弁フィードバック制御サブルーチン,図7にフローチャートを示す減圧弁フィードバック制御サブルーチンが、上記推定されたサーボ圧PSRV,それに基づくサーボ圧偏差ΔPSRV,第2パイロット圧PPLT2を用いて、それぞれ実行されるのである。
もう1つの態様の制御である増圧弁フィードフォワード制御,減圧弁フィードフォワード制御では、それらの制御が相俟って、増圧リニア弁,減圧リニア弁の両方において弁開閉均衡状態若しくはその状態に近い状態を実現され、その実現によって、ブレーキ力が概ね目標ブレーキ指標となるような制御が行われるのである。つまり、それらの制御によって、両弁開閉均衡状態実現制御が行われると考えることができる。したがって、それらの制御では、サーボ圧偏差ΔPSRVに基づくフィードバック電流成分の決定を行わず、また、実際のサーボ圧PSRVではなく目標サーボ圧P* SRVに基づいて認定された第2パイロット圧PPLT2が用いられることから、それらの制御が行われる場合には、S101において、その第2パイロット圧PPLT2の認定が行われる。具体的には、サーボ圧PSRVが目標サーボ圧P* SRVになっていると仮定し、目標サーボ圧P* SRVと上述した増圧比とに基づいて、第2パイロット圧PPLT2が認定される。その認定の後に、増圧弁フィードフォワード制御,減圧弁フィードフォワード制御がそれぞれ実行される。
S102の増圧弁フィードフォワード制御は、図11にフローチャートを示す増圧弁フィードフォワード制御サブルーチンが実行されることによって行われる。このサブルーチンに従う処理では、まず、S111において、基準励磁電流が決定される。この基準励磁電流は、上述の開閉均衡圧が目標サーボ圧P* SRVとなった場合、つまり、開閉均衡圧が基準開閉均衡圧となった場合のフィードフォワード電流成分と考えることができるものであり、上記認定された第2パイロット圧PPLT2に基づいて、増圧弁フィードバック制御におけるフィードフォワード電流成分IA-FFの決定と同様の手法で決定される。ちなみに、そのことに鑑み、以下、基準励磁電流を、「基準励磁電流IA-FF」と呼ぶ場合があることとする。
増圧弁フィードフォワード制御では、上記基準励磁電流IA-FFに補正を加えた電流が励磁電流IAが増圧リニア弁26に供給されるようにされており、その補正のモードとして、2つのモードが準備され、そのうちの1つが選択的に採用されるようになっている。そのモードの選択は、S112において、制御選択第2設定パラメータSET2の値によって行われる。このパラメータは、“0”と“1”との2つの値をとり、“0”である場合に、第1補正モードが、“1”である場合に第2補正モードが、それぞれ採用される。このパラメータは、当該システムにおいて、車両に適合させて最初から設定されており、また、車両のユーザによって任意に設定することも可能である。
上記第1補正モードは、ブレーキ操作の過程、つまり、ブレーキ力の変化の過程に拘わらず、開閉均衡圧が上記基準開閉均衡圧よりも低目となるような励磁電流IA、すなわち、開閉均衡圧が低目の励磁電流IAが供給されるような補正がなされるモードである。第1補正モードが選択されている場合には、S113において、ブレーキ力増加過程における補正電流である増加過程補正電流IA-U,ブレーキ力維持過程における補正電流である維持過程補正電流IA-R,ブレーキ力減少過程における補正電流である減少過程補正電流IA-Dのいずれもが、それぞれIAC0とされる。一方、上記第2補正モードは、ブレーキ力増加過程において基準励磁電流IA-FFが、ブレーキ力維持過程およびブレーキ力減少過程において開閉均衡圧が低目の励磁電流IAが、それぞれ供給されるような補正がなされるモードである。第2補正モードが選択されている場合には、S114において、それぞれ、増加過程補正電流IA-Uが0と、維持過程補正電流IA-RがIAC1と、減少過程補正電流IA-DがIAC2とされる。ちなみに、IAC1は、IAC2より小さくされている。
補正電流が決定された後、S115,S116において、ブレーキ操作の過程、つまり、ブレーキ力の変化の過程が判断される。ブレーキ力増加過程であると判断された場合には、S117において、ブレーキ力維持過程であると判断された場合には、S118において、ブレーキ力減少過程であると判断された場合には、S119において、それぞれ、基準励磁電流IA-FFから、増加過程補正電流IA-U,維持過程補正電流IA-R,減少過程補正電流IA-Dが減じられて、供給される励磁電流IAが決定され、S120において、決定された励磁電流IAに関する指令が発せられる。
S103の減圧弁フィードフォワード制御は、図12にフローチャートを示す減圧弁フィードフォワード制御サブルーチンが実行されることによって行われる。このサブルーチンに従う処理では、増圧リニア弁28に対する制御と同様に、まず、S121において、基準励磁電流が、上記認定された第2パイロット圧PPLT2に基づいて、減圧弁フィードバック制御におけるフィードフォワード電流成分IR-FFの決定と同様の手法で決定される。ちなみに、増圧弁フィードフォワード制御と同様に、以下、基準励磁電流を、「基準励磁電流IR-FF」と呼ぶ場合があることとする。
減圧弁フィードフォワード制御では、増圧弁フィードフォワード制御と同様、上記基準励磁電流IR-FFに補正を加えた電流が励磁電流IRが減圧リニア弁28に供給されるようにされており、上述の補正のモード、つまり、上記第1補正モード,第2補正モードのいずれかに従って行われる。S122では、増圧弁フィードフォワード制御と同様に、制御選択第2設定パラメータSET2の値によって、補正のモードが選択される。
上記第1補正モードは、ブレーキ操作の過程、つまり、ブレーキ力の変化の過程に拘わらず、開閉均衡圧が上記基準開閉均衡圧よりも高目となるような励磁電流IR、すなわち、開閉均衡圧が高目の励磁電流IRが供給されるような補正がなされるモードである。第1補正モードが選択されている場合には、S123において、増加過程補正電流IR-U,維持過程補正電流IR-R,減少過程補正電流IR-Dのいずれもが、それぞれIRC0とされる。一方、上記第2補正モードは、ブレーキ力増加過程およびブレーキ力維持過程において開閉均衡圧が高目の励磁電流IRが、ブレーキ力減少過程において基準励磁電流IR-FFが、それぞれ供給されるような補正がなされるモードである。第2補正モードが選択されている場合には、S124において、それぞれ、増加過程補正電流IR-U,維持過程補正電流IR-RがIRC1と、減少過程補正電流IR-Dが0とされる。
補正電流が決定された後、増圧弁フィードフォワード制御と同様に、S125,S126において、ブレーキ操作の過程、つまり、ブレーキ力の変化の過程が判断される。ブレーキ力増加過程であると判断された場合には、S127において、ブレーキ力維持過程であると判断された場合には、S128において、ブレーキ力減少過程であると判断された場合には、S129において、それぞれ、基準励磁電流IR-FFに、増加過程補正電流IR-U,維持過程補正電流IR-R,減少過程補正電流IR-Dが足されて、供給される励磁電流IRが決定され、S130において、決定された励磁電流IRに関する指令が発せられる。
v)高圧源圧センサ失陥時過渡制御
2種の過渡制御のうちのもう1つであるS18の高圧源圧センサ失陥時過渡制御は、図13にフローチャートを示すサーボ圧センサ失陥時過渡制御ルーチンが実行されることによって行われる。この制御では、サーボ圧センサ失陥時過渡制御と同様に、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28の各々の制御に関して態様の異なる2つの制御のうちの1つが選択的に行われるようにされている。2つの制御のうちの一方は、先に説明したのと同様の増圧弁フィードバック制御,減圧弁フィードバック制御であり、他方は、先に説明したのと同様の増圧弁フィードフォワード制御,減圧弁フィードフォワード制御である。
高圧源圧センサ失陥時過渡制御ルーチンに従う処理では、まず、S131において、サーボ圧センサ134の検出によってサーボ圧PSRVが取得される。そして、高圧源圧センサ96が失陥しているため、S132において、先に説明したポンプ間欠駆動制御、つまり、図9にフローチャートを示すポンプ間欠駆動制御サブルーチンが実行される。続くS133において、先に説明したように、既に決定されている過渡ブレーキ力GTに基づき、その過渡ブレーキ力GTが目標液圧ブレーキ力G* LIQとして決定され、S134において、先に説明したように、目標液圧ブレーキ力G* LIQから操作力依存ブレーキ力GOPを減じることで、力源力依存ブレーキ力GPSが決定され、その力源力依存ブレーキ力GPSに応じた高さに、目標サーボ圧P* SRVが決定される。
先に説明した2つの態様の制御の選択は、S135において、先に説明した制御選択第1設定パラメータSET1の値によって行われる。サーボ圧センサ失陥時過渡制御と同様、このパラメータが“0”である場合に、増圧弁フィードバック制御,減圧弁フィードバック制御が、“1”である場合に、増圧弁フィードフォワード制御,減圧弁フィードフォワード制御が行われる。
増圧弁フィードバック制御,減圧弁フィードバック制御が行われる場合には、まず、S136において、高圧源圧PACCが、サーボ圧センサ134の検出によって取得されたサーボ圧PACCに基づいて推定される。詳しい説明は省略するが、失陥時点での高圧源圧PACCは取得されており、その時点からのサーボ圧PSRVの変化、特に、ブレーキ力増加過程におけるサーボ圧PSRVの増加から、レギュレータ24からマスタシリンダ装置16へ供給された作動液の量が推定され、その量に基づいて、高圧源圧PACCが推定される。その際、ポンプ90の間欠駆動による高圧源圧PACCの変化をも考慮して推定される。つまり、高圧源装置22の作動状態をも考慮して推定されるのである。
先に取得されているサーボ圧PSRVに基づいて、先に説明した通常制御における場合と同様に、続くS137において、サーボ圧偏差ΔPSRVが算出され、S138において、第2パイロット圧PPLT2が認定される。そしてそれらの算出,認定の後、S139,S140において、先に説明した増圧弁フィードバック制御,減圧弁フィードバック制御が、それぞれ実行される。つまり、先に説明したところの、図6にフローチャートを示す増圧弁フィードバック制御サブルーチン,図7にフローチャートを示す減圧弁フィードバック制御サブルーチンが、サーボ圧センサ134の検出によって取得されたサーボ圧PSRV,それに基づくサーボ圧偏差ΔPSRVおよび第2パイロット圧PPLT2を用いて、それぞれ実行されるのである。
もう1つの態様の制御である増圧弁フィードフォワード制御,減圧弁フィードフォワード制御も、サーボ圧センサ失陥時過渡制御における場合と同様の制御である。ただし、高圧源圧センサが失陥しているため、増圧弁フィードフォワード制御,減圧弁フィードフォワード制御が行われる際には、S141において、まず、高圧源圧PACCが擬制認定される。この擬制認定は、増圧弁フィードフォワード制御,減圧弁フィードフォワード制御が行われる場合の推定とは異なり、高圧源圧PACCが、ポンプ90の上記間欠駆動によって実現され得ると推測される最低の高圧源圧PACCとなっていると見做し、その最低の高圧源圧PACCを高圧源圧PACCとして認定するようにして行われる。そして、サーボ圧センサ失陥時過渡制御における場合と同様、S142において、サーボ圧PSRVが目標サーボ圧P* SRVになっていると仮定し、目標サーボ圧P* SRVと上述した増圧比とに基づいて、第2パイロット圧PPLT2が認定される。それらの認定の後、S143,S144において、先に説明した増圧弁フィードフォワード制御,減圧弁フィードフォワード制御がそれぞれ実行される。つまり、図11にフローチャートを示す増圧弁フィードフォワード制御サブルーチン、図12にフローチャートを示す減圧弁フィードフォワード制御サブルーチンが、それぞれ実行される。
[D]制御装置の機能構成
上記ブレーキ制御プログラムに従った処理を行う当該システムの制御装置であるブレーキ電子制御ユニット30は、その制御機能に鑑みれば、図14のブロック図に示すような機能構成を有していると考えることができる。具体的に言えば、失陥が発生した場合に、作動モードを通常モードから失陥時モードに切換えるモード切換部150、高圧源装置22の制御を司る高圧源制御部152、通常モード下でブレーキ力の制御を実行する通常制御部154、ブレーキ操作中において作動モードが切換った場合に過渡的なブレーキ力を発生させるようにブレーキ力を制御する過渡制御部156を有していると考えることができる。そして、通常制御部154,過渡制御部156は、それぞれが、ブレーキ力を決定するブレーキ力決定部158、その決定されたブレーキ力が車輪に与えられるように増圧リニア弁26,減圧リニア弁28の各々に適切な励磁電流を供給する弁制御部160を有していると考えることができる。
上記ブレーキ制御プログラムに従う処理との関係で、より詳しく言えば、モード切換部150は、図3に示すメインルーチンのS12,S15において室間連通切換弁72を閉弁状態としかつ大気圧開放弁76を開弁状態とする処理によって実現される機能部と考えることができる。また、高圧源制御部152は、図4に示す通常制御ルーチン,図8に示す失陥時制御ルーチン,図10に示すサーボ圧センサ失陥時過渡制御ルーチン,図13に示す高圧源圧センサ失陥時過渡制御ルーチンにおいて、通常高圧源制御,失陥時ポンプ間欠駆動制御のいずれかを実行する機能部、つまり、図5に示す通常高圧源制御サブルーチン,図9に示すポンプ間欠駆動制御サブルーチンの実行によって実現される機能部と考えることができる。さらに、通常制御部154は、(a)上記メインルーチンのS2において通常ブレーキ力GNを決定する処理によって実現される機能部である上記ブレーキ力決定部158と、(b)上記通常制御ルーチンにおいて、高圧源装置22についての制御を除く処理の実行によって実現される機能部である上記弁制御部160とを含んで構成される機能部と考えることができ、過渡制御部156は、(a)上記メインルーチンのS2において過渡ブレーキ力GTを決定する処理によって実現される機能部である上記ブレーキ力決定部158と、(b)上記サーボ圧センサ失陥時過渡制御ルーチン,上記高圧源圧センサ失陥時過渡制御ルーチンにおいて、高圧源装置22についての制御を除く処理の実行によって実現される機能部である弁制御部160とを含んで構成される機能部であると考えることができる。
[E]変形例
上記実施例のシステムでは、過渡制御が実行される際には、室間連通切換弁72を閉弁状態と、大気圧開放弁76を開弁状態とし、上述の操作力・高圧源圧依存制動力発生状態が実現させられるようになっている。つまり、通常モードから失陥時モードに移行させた上で過渡制御が実行される。そのような制御に代え、失陥時モードに移行させる前に通常モードのままで、つまり、室間連通切換弁72を開弁状態と、大気圧開放弁76を閉弁状態とされているままで、過渡制御が実行されてもよい。その場合、高圧源圧依存制動力発生状態が実現させられているため、過渡ブレーキ力GTに基づいて決定された目標液圧ブレーキ力G* LIQが、力源力依存ブレーキ力GPSとなり、目標サーボ圧P* SRVをその力源力依存ブレーキ力GPSに応じた高さに決定すればよい。そして、過渡制御の実行の終了によって、室間連通切換弁72を閉弁状態と、大気圧開放弁76を開弁状態として、失陥時モードに移行させればよい。
上記実施例のシステムでは、過渡制御が行われる際には、回生ブレーキ力GREGは発生させられないようにされているが、回生ブレーキ力GREGが発生させられるようになっていてもよい。その場合、過渡ブレーキ力GTから回生ブレーキ力GREGを減じたものを、目標液圧ブレーキ力G* LIQとして決定し、その目標液圧ブレーキ力G* LIQに基づいて目標サーボ圧P* SRVを決定すればよい。
上記実施例のシステムでは、上述した増圧弁フィードフォワード制御,減圧弁フィードフォワード制御において、2つの補正モードを採用して、基準励磁電流IA-FF,IR-FFに対して、異なる態様の補正を選択的に施して励磁電流IA,IRを決定しているが、2つの補正モードのうちの一方しか採用しないような増圧弁フィードフォワード制御,減圧弁フィードフォワード制御を行うことも可能である。さらに言えば、基準励磁電流IA-FF,IR-FFに対して補正を行わずして励磁電流IA,IRを決定するような増圧弁フィードフォワード制御,減圧弁フィードフォワード制御を行ってもよい。
上記実施例のシステムでは、過渡制御において、増圧弁フィードバック制御,減圧弁フィードバック制御と増圧弁フィードフォワード制御,減圧弁フィードフォワード制御との2種の制御が選択的に実行されているが、過渡制御において、それらのいずれかしか行わないようにされたシステムを構築することも可能である。
上記実施例のシステムでは、高圧源圧センサ失陥時過渡制御において、高圧源圧PACCを得るために、2種の制御のいずれが実行されるかによって、上述のサーボ圧PSRVに基づく推定と、擬制認定とが使い分けられているが、使い分けを逆にする、若しくは、サーボ圧PSRVに基づく推定と、擬制認定とのいずれか一方のみを採用して使い分けを行わないようにすることも可能である。
上記実施例のシステムでは、増圧弁フィードバック制御,減圧弁フィードバック制御において、フィードフォワード電流成分IA-FF,IR-FFにフィードバック電流成分IA-FB,IR-FBを加えることによって、励磁電流IA,IRを決定しているが、フィードフォワード電流成分IA-FF,IR-FFを求めずに、フィードフォワード電流成分IA-FF,IR-FFだけに基づいて励磁電流IA,IRを決定するような増圧弁フィードバック制御,減圧弁フィードバック制御を実行するようなシステムとすることも可能である。
上記実施例のシステムでは、サーボ圧センサ134,高圧源圧センサ96の失陥に限定して対処するようなシステムとされているが、他の失陥に対処すべく、通常モードから失陥時モードに移行させ、過渡制御を実行するようなシステムを構築することも、当然に可能である。その場合、先に説明したサーボ圧PSRV,高圧源圧PACCの推定を行わずに、失陥していないサーボ圧センサ96,高圧源圧センサ96によって取得された実際のサーボ圧PSRV,高圧源圧PACCに基づいて、過渡制御を実行すればよい。
10:車輪 12:ブレーキ装置 14:ブレーキペダル〔ブレーキ操作部材〕 16:マスタシリンダ装置 20:リザーバ〔低圧源〕 22:高圧源装置〔力源装置〕 24:レギュレータ〔調圧器〕〔調圧装置〕 26:増圧リニア弁〔調圧装置〕 28:減圧リニア弁 30:ブレーキ電子制御ユニット〔制御装置〕 40:ハウジング 42:第1加圧ピストン〔加圧ピストン〕 44:第2加圧ピストン〔加圧ピストン〕 46:入力ピストン 48:ストロークシミュレータ機構〔反力付与機構〕 50:区画部 52:前方室 54:後方室 56:鍔 58:本体部 60:突出部 62:開口 70:室間連通路 72:電磁式開閉弁(室間連通切換弁) 74:大気圧開放路 76:電磁式開閉弁(大気圧開放弁) 90:ポンプ 92:モータ 94:アキュムレータ 96:高圧源圧センサ〔力源力指標検出器〕 100:ハウジング 102:第1ピストン〔可動体〕 104:第2ピストン〔可動体〕 106:弁座環 108:弁ロッド 110:ピストン本体 112:プランジャ 114:スプリング 116:スプリング 118:スプリング〔弁機構〕 120:弁機構 130:大気圧通路〔低圧源連通路〕 134:サーボ圧センサ〔ブレーキ力指標検出器〕 140:ブレーキ操作量センサ 142:ブレーキ操作力センサ 150:モード切換部 152:高圧源制御部 154:通常制御部 156:過渡制御部 158:ブレーキ力決定部 160:弁制御部 R1:第1加圧室〔加圧室〕 R2:第2加圧室〔加圧室〕 R3:ピストン間室 R4:入力室 R5:対向室 R6:反力室 R8:第1パイロット室〔もう1つのパイロット室〕 R9:第2パイロット室〔パイロット室〕 R10:調圧室 R11:高圧室 GN:通常ブレーキ力 GD:失陥時ブレーキ力 GT:過渡ブレーキ力

Claims (16)

  1. (A)運転者によってブレーキ操作がなされるブレーキ操作部材と、(B)そのブレーキ操作部材に加えられる力であるブレーキ操作力とは別の力を発生させる力源装置と、(C)車輪に設けられ、ブレーキ力を発生させるブレーキ装置と、(D)そのブレーキ装置が発生させるブレーキ力を制御する制御装置とを備え、通常時において、前記ブレーキ装置が発生させるブレーキ力の少なくとも一部が、前記力源装置が発生させる力である力源力に依存したブレーキ力である力源力依存ブレーキ力となるように構成された車両用ブレーキシステムであって、
    前記制御装置が、
    通常時において、前記力源力依存ブレーキ力を制御することで、ブレーキ操作の程度に応じた大きさのブレーキ力である通常ブレーキ力を車輪に与えるための通常制御を実行する通常制御部と、
    当該車両用ブレーキシステムの作動モードが、ブレーキ操作中に、前記通常制御の下で前記ブレーキ装置がブレーキ力を発生させる通常モードから、当該車両用ブレーキシステムの失陥に対処するための失陥時モードに移行する際、前記力源力依存ブレーキ力を制御することで、前記通常ブレーキ力と前記失陥時モードにおいて車輪に与えられるブレーキ力である失陥時ブレーキ力との中間の大きさのブレーキ力である過渡ブレーキ力を車輪に与えるための過渡制御を実行する過渡制御部と
    を有する車両用ブレーキシステム。
  2. 前記制御装置が、前記通常モードから前記失陥時モードへの移行の際、前記通常ブレーキ力と前記失陥時ブレーキ力との差が設定差を超える状況において、前記過渡制御部が前記過渡制御を実行するように構成された請求項1に記載の車両用ブレーキシステム。
  3. 前記制御装置が、前記過渡ブレーキ力と前記失陥時ブレーキ力との差が設定差を下回る状況となった場合に、前記過渡制御部による前記過渡制御の実行を終了させるように構成された請求項1または請求項2に記載の車両用ブレーキシステム。
  4. 前記過渡制御部が、前記過渡制御において、ブレーキ操作の程度が減少するときに、ブレーキ操作の程度の変化に対しての前記過渡ブレーキ力の変化の勾配を、ブレーキ操作の程度が増加するときの勾配に沿って前記過渡ブレーキ力を減少させた場合に比較して、より前記失陥時ブレーキ力に近づく側の勾配となるように設定し、その設定された勾配に沿った前記過渡ブレーキ力を車輪に与えるための制御を行うように構成された請求項3に記載の車両用ブレーキシステム。
  5. 前記制御装置が、前記過渡制御による前記過渡制御の実行の時間が設定時間を超えた場合に、その実行を終了させるように構成された請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
  6. 前記制御装置が、ブレーキ操作が終了した場合に、前記過渡制御部による過渡制御の実行を終了させるように構成された請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
  7. 当該車両用ブレーキシステムが、
    (a)前記力源装置として機能し、高圧の作動液を供給する高圧源装置と、(b)電磁式の増圧リニア弁および電磁式の減圧リニア弁を有して、それら増圧リニア弁および減圧リニア弁の作動によって、前記高圧源装置から供給される作動液をブレーキ操作に応じた圧力に調整して供給する調圧装置とを備えるとともに、前記ブレーキ装置が、前記調圧装置から供給される作動液とその調圧装置から供給される作動液の圧力に応じた圧力の作動液との一方を受け入れて、その一方の圧力に応じた大きさのブレーキ力を発生させることで、前記ブレーキ装置が発生させるブレーキ力が前記力源力依存ブレーキ力となるように構成され、
    前記制御装置が、前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々に供給される励磁電力を制御することで、ブレーキ力を制御するように構成された請求項1ないし請求項6のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
  8. 当該車両用ブレーキシステムが、ブレーキ力を指標するブレーキ力指標を検出するブレーキ力指標検出器と、前記高圧源装置から供給される作動液の圧力である高圧源圧を、力源力を指標する力源力指標として検出し、力源力指標検出器として機能する高圧源圧検出器とを備え、
    前記通常制御部が、前記通常制御において、
    ブレーキ力指標の制御目標である目標ブレーキ力指標を、前記ブレーキ操作の程度に基づいて決定し、
    前記ブレーキ力指標検出器によって検出された実際のブレーキ力指標に基づいて、ブレーキ力指標の前記目標ブレーキ力指標に対する偏差をなくすべく前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々に供給される励磁電力の成分であるフィードバック成分を決定し、
    前記ブレーキ力指標検出器によって検出された実際のブレーキ力指標と、前記高圧源圧検出器によって検出された実際の高圧源圧とに基づいて、前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々の構造に依拠して定まる弁開閉均衡状態におけるブレーキ力指標と高圧源圧と励磁電力との相互関係に従ってそれら各々に供給される励磁電力の成分であるフィードフォワード成分を決定し、
    前記フィードバック成分と前記フィードフォワード成分とを含む励磁電力を、前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々に供給するように構成された請求項7に記載の車両用ブレーキシステム。
  9. 当該車両用ブレーキシステムが、前記ブレーキ力指標検出器の失陥に対処すべく、前記通常モードから前記失陥時モードに移行するように構成され、
    前記過渡制御部が、前記過渡制御において、
    前記目標ブレーキ力指標を、前記ブレーキ操作の程度に基づいて決定し、
    前記高圧源検出器によって検出された実際の高圧源圧に依拠して推定されたブレーキ力指標に基づいて、前記フィードバック成分を決定し、
    前記推定されたブレーキ力指標と、前記高圧源圧検出器によって検出された実際の高圧源圧とに基づいて、前記フィードフォワード成分を決定し、
    前記フィードバック成分と前記フィードフォワード成分とを含む励磁電力を、前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々に供給するように構成された請求項8に記載の車両用ブレーキシステム。
  10. 当該車両用ブレーキシステムが、前記ブレーキ力指標検出器の失陥に対処すべく、前記通常モードから前記失陥時モードに移行するように構成され、
    前記過渡制御部が、前記過渡制御において、
    前記目標ブレーキ力指標を、前記ブレーキ操作の程度に基づいて決定し、
    前記目標ブレーキ力指標と、前記高圧源圧検出器によって検出された実際の高圧源圧とに基づいて、前記フィードフォワード成分を決定し、
    そのフィードフォワード成分からなる励磁電力を、前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々に供給するように構成された請求項8に記載の車両用ブレーキシステム。
  11. 当該車両用ブレーキシステムが、前記高圧源圧検出器の失陥に対処すべく、前記通常モードから前記失陥時モードに移行するように構成され、
    前記過渡制御部が、前記過渡制御において、
    前記目標ブレーキ力指標を、前記ブレーキ操作の程度に基づいて決定し、
    前記ブレーキ力指標検出器によって検出された実際のブレーキ力指標に基づいて、前記フィードバック成分を決定し、
    さらに、前記ブレーキ力指標検出器によって検出された実際のブレーキ力指標と、その実際のブレーキ力指標に依拠して推定された高圧源圧とに基づいて、前記フィードフォワード成分を決定し、
    前記フィードバック成分と前記フィードフォワード成分とを含む励磁電力を、前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々に供給するように構成された請求項8に記載の車両用ブレーキシステム。
  12. 当該車両用ブレーキシステムが、前記高圧源圧検出器の失陥に対処すべく、前記通常モードから前記失陥時モードに移行するように構成され、
    前記過渡制御部が、前記過渡制御において、
    前記目標ブレーキ力指標を、前記ブレーキ操作の程度に基づいて決定し、
    前記目標ブレーキ力指標と、推定された高圧源圧とに基づいて、前記フィードフォワード成分を決定し、
    そのフィードフォワード成分からなる励磁電力を、前記増圧リニア弁および前記減圧リニア弁の各々に供給するように構成された請求項8に記載の車両用ブレーキシステム。
  13. 前記過渡制御部が、前記過渡制御において、
    前記増圧リニア弁と前記減圧リニア弁との少なくとも一方に、前記目標ブレーキ力指標に対応した弁開閉均衡状態における開弁圧よりも高い若しくは低い圧力で開弁若しくは閉弁させるための補正を加えた前記フィードフォワード成分からなる励磁電力を供給するように構成された請求項10または請求項12に記載の車両用ブレーキシステム。
  14. 前記調圧装置が、
    パイロット室を有し、前記高圧源装置から供給される作動液を、そのパイロット室の作動液の圧力に応じた圧力に調整して、当該調圧装置から供給される作動液として供給する調圧器を備え、
    前記増圧リニア弁が、前記高圧源装置と前記パイロット室との間に配設されて、前記パイロット室の作動液の圧力を増圧するとともに、前記減圧リニア弁が、前記パイロット室と低圧源との間に配設されて、前記パイロット室の作動液の圧力を減圧するように構成された請求項7ないし請求項13のいずれか1つに記載の車両用ブレーキシステム。
  15. 前記調圧器が、
    前記パイロット室とは別に、ブレーキ操作力に応じた圧力の作動液、若しくは、ブレーキ装置に供給される作動液が導入されるもう1つのパイロット室を有し、
    失陥時モードにおいて、前記高圧源装置から供給される作動液を、前記もう1つのパイロット室の作動液の圧力に応じた圧力に調整して、当該調圧装置から供給される作動液として供給する請求項14に記載の車両用ブレーキシステム。
  16. 当該車両用ブレーキシステムが、
    前記ブレーキ操作部材が連結され、前記調圧装置からの作動液を受け入れ、前記ブレーキ操作部材に加えられる運転者のブレーキ操作力に依存せずに前記受け入れた作動液の圧力に依存して加圧した作動液を前記ブレーキ装置に供給するマスタシリンダ装置を有し、
    そのマスタシリンダ装置から前記ブレーキ装置に供給される作動液の圧力に依存した大きさのブレーキ力を、前記ブレーキ装置が発生させるように構成された請求項14または請求項15に記載の車両用ブレーキシステム。
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