JP5692141B2 - 液圧ブレーキシステム - Google Patents

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Description

本発明は、車両に設けられる液圧ブレーキシステムに関する。
車両用液圧ブレーキシステムの中には、下記特許文献に記載されているような調圧器、すなわち、いわゆるレギュレータを備えたシステムが存在する。そのシステムにおけるレギュレータは、パイロット室を有し、高圧源装置から供給される作動液を、そのパイロット室の圧力であるパイロット圧に応じた圧力に調整して供給する機能を有している。そして、パイロット圧は、高圧源装置とパイロット室の間に配設された増圧リニア弁によって増圧させられる。つまり、そのレギュレータは、当該レギュレータから供給される作動液の圧力である調圧器供給圧(以下、「サーボ圧」と言う場合がある)と、パイロット圧との両方が、高圧源装置から供給される作動液の圧力である高圧源圧に依存して増圧させられるような構造を有しており、「高圧源圧依存型調圧器」と呼ぶことができる。そして、そのレギュレータが配備された液圧ブレーキシステムは、「高圧源圧依存型調圧器配備システム」と呼ぶことができ、そのシステムは、車輪に設けられたブレーキ装置が、サーボ圧に依存した大きさのブレーキ力を発生させるように構成される。
特願2011−235721号公報
上記高圧源圧依存型調圧器配備システムでは、調圧器の構造に起因する問題、例えば、高圧源圧の如何によっては、調圧器供給圧が適正に制御できず、ひいては、ブレーキ力が適切に制御できなくなるといった問題を抱える。そして、その構造に起因する問題に対処することによって、高圧源圧依存型調圧器配備システムの実用性を向上させることが可能であると考える。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、高圧源圧依存型調圧器を備えたシステムであって、実用性の高い液圧ブレーキシステムを提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明の高圧源圧依存型調圧器配備システムは、必要ブレーキ力に基づいて、ブレーキ力指標の目標となる目標ブレーキ力指標が決定され、その目標ブレーキ力指標に対するブレーキ力指標の偏差に基づいて、増圧リニア弁に供給される励磁電流が決定され、ブレーキ力が必要ブレーキ力にまで増加し得ない状況と、ブレーキ力が必要ブレーキ力を超えることが予測される状況との少なくとも一方において、すなわち、特定状況において、励磁電流が制限されるように構成される。
高圧源圧依存型調圧器では、高圧源圧が低い場合には、調圧器供給圧を充分には増圧することができず、そのため、増圧リニア弁に調圧器供給圧の不足を補うべき励磁電流が供給される。このときに、高圧源圧が充分に高い圧力にまで回復すれば、調圧器供給圧が高くなり過ぎ、ブレーキ力が必要ブレーキ力を超えてしまう事態に陥る。本発明のシステムによれば、上記特定状況において、励磁電流が制限されることから、上記事態を防止することが可能であり、本発明のシステムは、実用性の高いシステムとなる。
発明の態様
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合があり、請求項に係る発明をも含む概念である)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、それらの発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から何某かの構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
なお、以下の各項において、(1)項が請求項1に相当し、(4)項が請求項2に、(5)項が請求項3に、(6)項が請求項4に、(7)項が請求項5に、(8)項が請求項6に、(9)項が請求項7に、(10)項が請求項8に、(11)項が請求項9に、(16)項が請求項10に、(15)項が請求項11に、それぞれ相当する。
≪基本的態様≫
(1)車両に設けられる液圧ブレーキシステムであって、
(a)車輪に設けられて自身に供給される作動液の圧力に応じた大きさのブレーキ力を発生させるブレーキ装置と、(b)高圧源圧となる高圧の作動液を供給する高圧源装置と、(c)パイロット室を有し、前記高圧源装置から供給される作動液を、そのパイロット室の作動液の圧力であるパイロット圧に応じた圧力に調整して供給する調圧器と、(d)前記高圧源装置と前記パイロット室との間に配設され、自身に供給される励磁電流に依存してパイロット圧を増圧するための電磁式の増圧リニア弁と、(e)当該液圧ブレーキシステムの制御を司る制御装置とを備えて、前記調圧器から供給される作動液の圧力である調圧器供給圧に依存した大きさのブレーキ力を、前記ブレーキ装置が発生させるように構成され、
前記制御装置が、
前記ブレーキ装置が発生させるべきブレーキ力である必要ブレーキ力に基づいて、ブレーキ力を指標するブレーキ力指標の当該液圧ブレーキシステムの制御における目標として、目標ブレーキ力指標を決定する目標ブレーキ力指標決定部と、
前記目標ブレーキ力指標に対するブレーキ力指標の偏差に基づいて、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を決定する励磁電流決定部と、
ブレーキ力が前記必要ブレーキ力にまで増加し得ない状況と、ブレーキ力が前記必要ブレーキ力を超えることが予測される状況との少なくとも一方である特定状況において、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を制限する励磁電流制限部と
を有する液圧ブレーキシステム。
本態様は、請求可能発明の基本的態様である。本態様のシステムにおいて採用されている調圧器は、高圧源装置が調圧器供給圧とパイロット圧との両者の圧力源として機能するタイプの調圧器であり、「高圧源圧依存型調圧器」と呼ぶことのできるものである。そして、その調圧器が配備されている本態様のシステムは、「高圧源圧依存型調圧器配備システム」と呼ぶことのできるシステムである。本態様のシステムは、調圧器供給圧の作動液が、調圧器から、直接、ブレーキ装置に供給されるような構成のものであってもよく、後に説明するように、調圧器供給圧の作動液が調圧器からマスタシリンダ装置に供給され、その供給された作動液の圧力に依存してマスタシリンダ装置が作動液を加圧し、調圧器供給圧に依存した圧力の作動液がマスタシリンダ装置からブレーキ装置に供給されるような構成のものであってもよい。
本態様における「ブレーキ力指標」は、ブレーキ装置が発生させるブレーキ力の大きさを直接的若しくは間接的に表すものである。そのブレーキ力の大きさは、調圧器供給圧に応じた大きさとなり、調圧器供給圧は、パイロット圧に応じた高さの圧力となる。したがって、増圧リニア弁に供給する励磁電流を決定するために用いられるブレーキ力指標として、ブレーキ力,調圧器供給圧,パイロット圧等のいずれをも採用することができる。また、先に説明したようなマスタシリンダ装置を備えたシステムにおいては、マスタシリンダ装置からブレーキ装置に供給される作動液の圧力であるマスタシリンダ装置供給圧(以下、「マスタ圧」という場合がある)をも、上記ブレーキ力指標として採用することができる。また、「目標ブレーキ力指標」は、制御における目標となるブレーキ力指標、つまり、達すべき値を持つブレーキ力指標を意味し、必要ブレーキ力を直接的若しくは間接的に表すものとなる。
本態様における増圧リニア弁に供給する励磁電流の決定、つまり、目標ブレーキ力指標に対するブレーキ力指標の偏差に基づく励磁電流の決定は、例えば、いわゆるフィードバック制御の手法を利用した決定と考えることができる。決定される励磁電流には、少なくともその手法に従ったフィードバック成分が含まれているが、フィードフォワード成分等の他の成分が含まれていてもよい。
なお、励磁電流は、増圧リニア弁が、常閉型の弁、つまり、励磁されていない場合に閉弁状態となり、励磁によって開弁状態となる弁である場合には、励磁電流が大きくなればなる程、開弁度が高くなる。つまり、開弁し易く、当該増圧リニア弁を通過する作動液の流量が大きくなる。増圧リニア弁の構造によっては、逆に、励磁電流が小さければ小さい程、開弁度が高くなるような弁も存在する。以下の説明においては、その説明を単純化するために、励磁電流が大きくなればなるほど開弁度が高くなる構造の弁を例にとって行うものとする。したがって、励磁電流が小さくなればなるほど開弁度が高くなる構造の弁については、励磁電流の大小に関する記述が逆になるとの理解の下、説明を省略することとする。
本態様における「特定状況」のうちの1つである「ブレーキ力が必要ブレーキ力まで増加し得ない状況」(以下、「ブレーキ力不充分状況」という場合がある)とは、例えば、高圧源圧との関係でブレーキ力が必要ブレーキ力まで増加することができない状況が含まれる。具体的には、調圧器供給圧が高圧源圧と等しくなったとしてもブレーキ力が必要ブレーキ力に満たない程度にその高圧源圧が低い状況等が含まれる。一方、もう1つである「ブレーキ力が必要ブレーキ力を超えることが予測される状況」(以下、「ブレーキ力過剰予測状況」という場合がある)とは、例えば、現状の励磁電流の供給状態では、ブレーキ力が必要ブレーキ力を超えてしまうであろうと予想される状況が含まれる。具体的には、励磁電流が過剰となると予測される状況等が含まれる。
例えば、上記ブレーキ力不充分状況では、実際にはブレーキ力が大きくはならないものの、ブレーキ力を増加させるべく、励磁電流が大きくされる。詳しく言えば、目標ブレーキ力指標に対するブレーキ力指標の偏差が大きくなり、決定される励磁電流は、上記フィードバック成分が大きくなることで大きくなる。その状態において、その状況を脱した場合、制御の遅れ等によって、その後のブレーキ力は、必要ブレーキ力を超えることが予測される。つまり、通常の制御ではその状況の変化に追従できず、ブレーキ力が過剰となる可能性が高まり、上記ブレーキ力過剰予測状況に陥ることになる。この状況で、通常の制御を継続すれば、ブレーキ力が必要ブレーキ力に対して過剰となるばかりか、いわゆる制御の発散現象が生じる可能性もある。つまり、ブレーキ操作に対してブレーキ力が過剰応答となる事態が生じるのである。このことは、高圧源圧が低いことに起因してブレーキ力不充分状況に陥った場合に、特に顕著である。
なお、高圧源圧依存型調圧器は、一般的に、パイロット圧より調圧器供給圧が高くなるように設計される。つまり、パイロット圧に対する調圧器供給圧の比である増圧比が1より大きく設計される。また、高圧源圧依存型調圧器は、一般的に、パイロット室に導入される作動液の流量に対する調圧器から供給される作動液の流量、つまり、流量比が、相当に大きくされる。したがって、例えば、励磁電流の決定のためのブレーキ力指標として、調圧器供給圧を採用する場合、その大きな流量比から、上記増圧比に従って調圧器供給圧から推定される推定パイロット圧よりも、実際のパイロット圧が高くなる。したがって、励磁電流を決定するためのブレーキ力指標に調圧器供給圧を採用する場合、高圧源圧が上昇して目標調圧器供給圧にある程度近づいたとき、実際のパイロット圧が推定パイロット圧よりも高くなっていることは、上記過剰応答となる事態を助長するものとなる。特に、発散現象の可能性を相当に高くする一因となる。
上記実情に鑑み、本態様のシステムでは、ブレーキ力不足状況とブレーキ力過剰予測状況との少なくとも一方において、増圧リニア弁に供給する励磁電流が制限される。そのことにより、本態様のシステムでは、上記過剰応答が、効果的に防止されるのである。
なお、本態様における「励磁電流を制限する」とは、供給される励磁電流をそれの値が一定の値を超えないようにすることだけを意味するものではなく、通常の制御において供給される励磁電流(以下、「通常励磁電流」と言う場合がある)よりも小さな値の励磁電流を供給すること等を含む広い概念である。具体的には、通常励磁電流に一定の若しくは変動的な割合を乗じた励磁電流を供給すること,通常励磁電流から一定の若しくは変動的な電流を減じた励磁電流を供給すること等も、励磁電流の制限に該当する。
≪ブレーキ力指標についての限定≫
以下の2つの項の態様は、励磁電流の決定のためのブレーキ力指標に関して限定を加えた態様である。
(2)前記目標ブレーキ力指標決定部が、ブレーキ力指標として調圧器供給圧を採用し、目標ブレーキ力指標として目標調圧器供給圧を決定するように構成されており、
前記励磁電流決定部が、前記目標調圧器供給圧に対する調圧器供給圧の偏差に基づいて、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を決定するように構成された(1)項に記載の液圧ブレーキシステム。
本態様では、調圧器供給圧が、励磁電流を決定するためのブレーキ力指標として採用され、簡単に言えば、その調圧器供給圧に基づくフィードバック制御手法に従って励磁電流が決定される。調圧器供給圧はセンサによって取得し易く、また、そのセンサは、高圧源圧依存型調圧器配備システムにおいて一般に配設されている。さらに、調圧器供給圧は、ブレーキ力を比較的正確に指標するものである。そのようなことから、本態様によれば、正確なブレーキ力の制御を簡便に実行可能である。
(3)前記目標ブレーキ力指標決定部が、ブレーキ力指標としてパイロット圧を採用し、目標ブレーキ力指標として目標パイロット圧を決定するように構成されており、
前記励磁電流決定部が、前記目標パイロット圧に対するパイロット圧の偏差に基づいて、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を決定するように構成された(1)項に記載の液圧ブレーキシステム。
本態様では、パイロット圧が、励磁電流を決定するためのブレーキ力指標として採用され、簡単に言えば、例えばパイロット圧センサによって検出された実際のパイロット圧、若しくは、調圧器供給圧から推定されたパイロット圧に基づいて、フィードバック制御手法に従って、励磁電流が決定される。
なお、上記2つの態様には、2以上のブレーキ力指標を採用するとともに、2以上の目標ブレーキ力指標を決定し、それら2以上のブレーキ力指標のいずれか1つに基づくフィードバック制御手法に従って励磁電流が決定される態様も含まれるのである。具体的に言えば、上記2つの態様のうちの後者には、例えば、調圧器供給圧とパイロット圧との両方をブレーキ力指標として採用し、必要ブレーキ力に基づいて、目標調圧器供給圧を決定し、その目標調圧器供給圧に基づいて目標パイロット圧を決定し、パイロット圧に基づくフィードバック制御の手法に従って、励磁電流を決定する態様が含まれるのである。
≪励磁電流の具体的制限態様≫
以下のいくつかの項の態様は、励磁電流をどのようにして制限するかに関する具体的限定を加えた態様である。
(4)前記目標ブレーキ力指標決定部が、ブレーキ力指標として調圧器供給圧を採用し、目標ブレーキ力指標として目標調圧器供給圧を決定するように構成されるとともに、前記励磁電流決定部が、前記目標調圧器供給圧に対する調圧器供給圧の偏差に基づいて、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を決定するように構成されており、
前記励磁電流制限部が、
前記特定状況において、前記目標調圧器供給圧を、高圧源圧以下に設定された設定上限圧を超えない制限調圧器供給圧に変更し、前記励磁電流決定部に、その制限調圧器供給圧に対する調圧器供給圧の偏差に基づいて、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を決定させることで、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を制限するように構成された(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
先に説明したように、高圧源依存型調圧器の構造からすれば、調圧器供給圧は高圧源圧を上回ることはできず、高圧源圧が低い場合には、ブレーキ力不充分状況に陥る可能性が高い。本態様によれば、ブレーキ力指標に調圧器供給圧を採用し、目標調圧器供給圧が高圧源圧を上回らないようにされることで、効果的に励磁電流が制限される。
上記「設定上限圧」は、高圧源圧と等しい圧力であってもよく、また、高圧源圧より低い圧力であってよい。また、設定上限圧は、固定的に設定されるものであってもよく、高圧源圧に応じて変更されるようにして設定されるものであってもよい。したがって、本態様における上記「制限調圧器供給圧」は、高圧源圧以下の圧力となる。具体的には、例えば、目標調圧器供給圧が、高圧源圧より一定の若しくは変動的なマージンだけ低い圧力に変更されるような態様,高圧源圧に一定の若しくは変動的な割合を乗じた圧力に変更されるような態様等が、本態様に含まれる。その場合、マージンを大きくすればする程、若しくは、割合を小さくすればする程、励磁電流の制限が大きくなり、ブレーキ力が必要ブレーキ力を超える事態、つまり、過剰応答を、より確実に予防若しくは回避することが可能となる。しかし、制限を大きくすると、急ブレーキ等、比較的大きなブレーキ力が急激に必要とされる場合に、充分なブレーキ力が得られない可能性が高い。したがって、上記マージン,比率は、そのような観点から、適切な値に設定されることが望ましい。
(5)前記励磁電流決定部が、前記目標ブレーキ力指標に対するブレーキ力指標の偏差に制御ゲインを乗じて決定される成分を含むように励磁電流を決定するように構成されており、
前記励磁電流制限部が、
前記特定状況において、前記制御ゲインをそれの値よりも値が小さい制限ゲインに変更し、前記励磁電流決定部に、前記目標ブレーキ力指標に対するブレーキ力指標の偏差にその制限ゲインを乗じて決定される成分を含むように励磁電流を決定させることで、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を制限するように構成された(1)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
本態様は、励磁電流の決定におけるいわゆるフィードバックゲインを小さくすることで、励磁電流を制限する態様である。本態様によれば、効果的に励磁電流が制限される。上記「制限ゲイン」は、一定の値に設定されてもよく、変動的な値に設定されてもよい。なお、制限ゲインを小さくすればするほど、ブレーキ力が必要ブレーキ力を超える事態、つまり、過剰応答を、より確実に予防若しくは回避することが可能となる。しかし、制限ゲインを小さくすると、急ブレーキ等、比較的大きなブレーキ力が急激に必要とされる場合に、充分なブレーキ力が得られない可能性が高い。制限ゲインは、そのような観点から、適切な値に設定されることが望ましい。
≪過剰応答の予防≫
以下のいくつかの項の態様は、上記特定状況として、ブレーキ力不充分状況を特定し、その状況に対処する態様であり、言い換えれば、上記過剰応答となる可能性を比較的早い段階で検知し、その過剰応答を未然に防止する態様である。つまり、過剰応答を予防する態様であるといえる。
(6)前記励磁電流制限部が、
ブレーキ力が前記必要ブレーキ力にまで増加し得ない状況を前記特定状況として、その状況において、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を制限するように構成された(1)項ないし(5)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
(7)前記目標ブレーキ力指標決定部が、ブレーキ力指標として調圧器供給圧を採用し、目標ブレーキ力指標として目標調圧器供給圧を決定するように構成されており、
前記励磁電流制限部が、
前記目標調圧器供給圧が高圧源圧以下に設定された設定上限圧を超える場合に、ブレーキ力が前記必要ブレーキ力にまで増加し得ない状況にあると判断して、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を制限するように構成された(6)項に記載の液圧ブレーキシステム。
本態様は、ブレーキ力不充分状況の認定に関しての限定を加えた態様である。本態様では、高圧源圧と目標調圧器供給圧との関係で、ブレーキ力不充分状況であるか否かが判断され、簡単に言えば、目標調圧器供給圧が高圧源圧にある程度近づいた場合に、ブレーキ力不充分状況となったと認定されることとなる。本態様によれば、確実なブレーキ力不充分状況の認定が可能となる。
本態様における「設定上限圧」は、高圧源圧と等しい圧力であってもよく、また、高圧源圧より低い圧力であってよい。また、設定上限圧は、固定的に設定されるものであってもよく、例えば高圧源圧に応じて変更されるようにして、つまり、変動的に設定されるものであってもよい。具体的には、例えば、高圧源圧より一定圧だけ低い圧力に設定されるような態様,高圧源圧に一定の割合を乗じた圧力に設定される態様等が、本態様に含まれる。なお、本態様における設定上限圧は、先の態様における設定上限圧、つまり、上記制限調圧器供給圧に関して設定される設定上限圧と同じ値に設定されてもよく、また、異なる値に設定されてもよい。
なお、本態様において採用されるブレーキ指標、および、決定される目標ブレーキ力指標は、特定状況の認定のためのものであり、先に説明したブレーキ指標,目標ブレーキ指標、つまり、励磁電流の決定のために採用されるブレーキ指標,決定される目標ブレーキ指標と異なるものであってもよい。具体的には、例えば、特定状況の認定のためのブレーキ力指標として、調圧器供給圧とパイロット圧との一方が採用され、励磁電流の決定のためのブレーキ力指標として、それらの他方が採用されてもよいのである。
(8)前記励磁電流制限部が、
ブレーキ力指標の増加程度が下限基準を下回っている場合、若しくは、上限基準を上回っている場合に、ブレーキ力が前記必要ブレーキ力にまで増加し得ない状況にあると判断して、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を制限するように構成された(6)項または(7)項に記載の液圧ブレーキシステム。
本態様は、ブレーキ力不充分状況の認定に関しての限定を加えた態様である。本態様では、ブレーキ力指標の増加程度に基づいて、ブレーキ力不充分状況が認定される。本態様における「ブレーキ力指標の増加程度」には、ブレーキ力指標がどの程度増加しているかを示すものが含まれる。具体的には、ブレーキ力指標の増加勾配等が含まれる。例えば、高圧源圧が低いことでブレーキ力不充分状況となっている場合には、調圧器供給圧,パイロット圧等のブレーキ力指標の増加程度は、低くなる。本態様では、そのことに鑑みて、ブレーキ指標の増加程度によって、ブレーキ力不充分状況を判断するようにされており、確実なブレーキ力不充分状況の認定が可能となる。
本態様における「下限基準」,「上限基準」は、固定的に設定されてもよく、要望されるブレーキ力指標の増加程度(以下、「目標増加程度」と言う場合がある)、つまり、ブレーキ力指標の増加程度の目標に応じて変動するようにして設定されてもよい。励磁電流は、目標ブレーキ力指標に対するブレーキ力指標の偏差に基づいて決定されるため、上記目標増加程度を示すものとなる。したがって、本態様には、例えば、励磁電流を基に決定された目標増加程度に所定の係数を乗じたもの、つまり、その目標増加程度に所定の割合のものを、下限基準として設定し、ブレーキ力指標の増加程度がその基準を下回った場合に、ブレーキ力不充分状況であると認定するような態様が含まれる。また、先に説明したように、ブレーキ力不充分状況では、調圧器供給圧から調圧器の増圧比に従って推定されたパイロット圧より実際のパイロット圧が高くなる現象が生じる。そこで、ブレーキ力指標として実際のパイロット圧を採用し、そのパイロット圧が、推定されたパイロット圧を上限基準として、その推定パイロット圧を超えた場合に、ブレーキ不十分状況であると認定するような態様も、本態様に含まれる。
なお、本態様におけるブレーキ力指標は、先の態様のブレーキ力指標と同じものであってもよく、異なるものであってもよい。つまり、以下の態様においてもそうであるが、励磁電流を決定するために採用されるブレーキ力指標と、特定状況にあるか否かを判断するために採用されるブレーキ力指標とは、同じものであってもよく、異なるものであってもよい。具体的に言えば、例えば、調圧器供給圧の目標調圧器供給圧の偏差に基づいて増圧リニア弁に供給される励磁電流を決定するとともに、パイロット圧の増加勾配に基づいて特定状況にあるか否かを判断するような態様であっても、本態様に含まれるのである。
≪過剰応答の回避≫
以下のいくつかの項の態様は、上記特定状況として、ブレーキ力過剰予測状況を特定し、その状況に対処する態様であり、言い換えれば、上記過剰応答となる蓋然性が高まった場合に、その過剰応答を防止する態様である。つまり、過剰応答を、それが生じる時期に比較的近づいた場合に、回避する態様であるといえる。
(9)前記励磁電流制限部が、
ブレーキ力が前記必要ブレーキ力を超えることが予測される状況を前記特定状況として、その状況において、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を制限するように構成された(1)項ないし(8)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
(10)前記励磁電流制限部が、
ブレーキ力指標の増加程度の変化が上限基準を超えて大きくなった場合に、ブレーキ力が前記必要ブレーキ力を超えることが予測される状況にあると判断して、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を制限するように構成された(9)項に記載の液圧ブレーキシステム。
本態様には、例えば、調圧器供給圧,パイロット圧等の増加勾配が大きく変化する時点を捉えて、ブレーキ力過剰予測状況を認定する態様が含まれる。先に説明したように、高圧源圧が比較的低いことに起因して生じるブレーキ力不充分状況においては、調圧器供給圧,パイロット圧等のブレーキ力指標の増加程度は、比較的低い。その状況において高圧源圧が充分に高くなった場合には、上記増加程度は高くなり、そのままではブレーキ力が必要ブレーキ力を超える事態、つまり、過剰応答となる可能性が高い。したがって、ブレーキ力指標の増加の程度の変化を監視することにより、ブレーキ力過剰予測状況となったことが容易に判断できるのである。具体的には、例えば、調圧器供給圧,パイロット圧等の増加勾配が、それまでの増加勾配に対して設定比(設定倍)を超えて大きくなった場合に、ブレーキ力指標の増加程度の変化が上限基準を超えて大きくなったとして、ブレーキ力過剰予測状況となったと判断すればよい。
≪励磁電流の制限の解除≫
以下のいくつかの項の態様は、励磁電流の制限の解除に関する限定を加えた態様である。
(11)前記励磁電流制限部が、
前記特定状況を脱した場合に、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を制限を解除するように構成された(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
(12)前記励磁電流制限部が、
高圧源圧が、設定圧以上となった場合に、前記特定状況を脱したと判断して、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を制限を解除するように構成された(11)項に記載の液圧ブレーキシステム。
高圧源圧が充分に高くなる場合には、ブレーキ力不充分状況は解消される。したがって、本態様は、特定状況がブレーキ力不充分状況である場合において、そのブレーキ力不充分状況において行われていた励磁電流の制限の解除に好適な態様である。本態様によれば、高圧源圧が充分に高くなった場合において、必要ブレーキ力までのブレーキ力の増加が担保される。なお、本態様における「設定圧」は、先の態様における設定圧と同じ値であってもよく、異なる値であってもよい。つまり、ブレーキ力不充分状況に陥ったと認定する場合の設定圧と、ブレーキ力不充分状況から脱したと認定する場合の設定圧とが、同じ圧力に設定されてもよく、互いに異なる圧力に設定されてもよいのである。
(13)前記励磁電流制限部が、
ブレーキ力指標の増加程度が、設定基準以上、若しくは、設定基準以下となった場合に、前記特定状況を脱したと判断して、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を制限を解除するように構成された(11)項または(12)項に記載の液圧ブレーキシステム。
ブレーキ力不充分状況が解消された場合は、先に説明したブレーキ力指標の増加程度は充分な程度となる。したがって、本態様は、特定状況がブレーキ力不充分状況である場合において、そのブレーキ力不充分状況において行われていた励磁電流の制限の解除に好適な態様である。
本態様における「設定基準」は、先に説明した「下限基準」,「上限基準」と同様に、固定的に設定されてもよく、目標増加程度に応じて変動するようにして設定されてもよい。本態様には、例えば、励磁電流を基に決定された目標増加程度に所定の係数を乗じたもの、つまり、その目標増加程度の所定の割合のものを、設定基準として設定し、ブレーキ力指標の増加程度がその基準以上となった場合に、ブレーキ力不充分状況を脱したと認定するような態様が含まれる。なお、設定基準は、上記下限基準,上限基準と同じ基準として設定されてもよく、異なる基準として設定されてもよい。言い換えれば、ブレーキ力不充分状況になったことを認定する基準と、ブレーキ力不充分状況を脱したことを認定する基準とが、同じであってもよく、互いに異なっていてもよいのである。
(14)前記励磁電流制限部が、
前記目標ブレーキ力指標に対するブレーキ力指標の偏差が、設定差以下となった場合に、前記特定状況を脱したと判断して、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を制限を解除するように構成された(11)項ないし(13)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
本態様は、簡単に言えば、ブレーキ力が概ね必要ブレーキ力となった場合に、特定状況を脱したと判断して、励磁電流の制限を解除する態様である。ブレーキ力指標が目標ブレーキ力指標となった若しくは相当に近づいた場合には、上記過剰応答が生じる可能性は低く、本態様では、そのことに鑑みて、励磁電流の制限が解除される。したがって、上記「設定差」は、0に近い値に設定されることが望ましい。なお、設定差は、固定的に設定されてもよく、高圧源圧等に応じて変動するようにして設定されてもよい。
≪調圧器の具体的構造≫
(15)前記調圧器が、
ハウジングと、そのハウジング内においてそのハウジングの軸線方向に移動可能に配設された可動体と、前記ハウジング内において前記軸線方向においてその可動体と並んで配設された弁機構と、低圧源に連通する低圧源連通路とを有し、前記可動体の前記弁機構の側に、当該調圧器から供給される調圧器供給圧の作動液が収容される調圧室が、前記可動体の前記弁機構とは反対側に、前記パイロット室が、前記調圧室とで前記弁機構を挟むようにして、前記高圧源装置から供給される高圧源圧の作動液を受け入れる高圧室が、それぞれ形成され、
前記調圧器供給圧と前記パイロット圧との差圧に依拠して前記可動体に作用する差圧作用力によって前記可動体が前記軸線方向に移動させられ、その可動体が前記弁機構に向かう方向に移動させられた場合に、その可動体が前記弁機構と係合して、その弁機構によって、前記調圧室と前記高圧室とが連通させられるとともに、前記調圧室と前記低圧源通路との連通が遮断され、前記可動体が前記弁機構から離れる方向に移動させられた場合に、その可動体のその弁機構との係合が解除されて、前記調圧室と前記高圧室との連通が遮断されるともに、前記調圧室と前記低圧源通路とが連通するように構成された(1)項ないし(14)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
本態様は、高圧源圧依存型調整器、つまり、請求可能発明の液圧ブレーキシステムにおいて採用可能な調圧器の具体的構造に関する限定を加えた態様である。
≪当該システムの調圧器の周辺のハード構成≫
以下のいくつかの態様は、請求可能発明の液圧ブレーキシステムにおいて採用可能なハード構成、詳しくは、高圧源依存型調圧器の周辺のハード構成について限定を加えた態様である。
(16)当該液圧ブレーキシステムが、
ブレーキ操作部材が連結され、前記調圧器から調圧器供給圧の作動液を受け入れ、前記ブレーキ操作部材に加えられる運転者の操作力に依存せずに前記受け入れた作動液の圧力に依存して加圧した作動液を前記ブレーキ装置に供給するマスタシリンダ装置を有し、
そのマスタシリンダ装置から前記ブレーキ装置に供給される作動液の圧力であるマスタ圧に依存した大きさのブレーキ力を、前記ブレーキ装置が発生させるように構成された(1)項ないし(15)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
本態様の液圧ブレーキシステムでは、調圧器供給圧とされた作動液が直接ブレーキ装置に供給されるのではなく、調圧器供給圧とされた作動液がマスタシリンダに供給され、その調圧器供給圧に依存した圧力の作動液がブレーキ装置に供給される。本態様におけるマスタシリンダ装置では、マスタシリンダ装置の構造に依拠して、導入された調圧器供給圧に応じた圧力に作動液が加圧され、その加圧された作動液がマスタシリンダ装置からブレーキ装置に供給される。一方、マスタシリンダ装置には、一般的に、ブレーキ操作が入力される。したがって、マスタシリンダ装置の構造に工夫を凝らすことによって、当該システムに何らかの失陥が生じたときにおいて、ブレーキ操作部材に加えられるブレーキ操作力に依存して、ブレーキ装置に供給する作動液を加圧するように構成したり、また、任意に、上記導入された作動液の圧力とブレーキ操作力との両者に依存して、ブレーキ装置に供給する作動液を加圧するように構成したりすることも可能である。そのような構成のマスタシリンダ装置とすれば、本態様のシステムの実用性はさらに高くなる。
なお、本態様におけるマスタシリンダ装置は、ブレーキ操作力に依存せずに高圧源圧に依存して作動液を加圧して、ブレーキ装置に供給可能に構成されている。したがって、本態様のシステムは、回生ブレーキシステムが併用される車両に対して、好適なシステムである。
(17)前記マスタシリンダ装置が、
(A)前方側の端部が閉塞され、内部を前方室と後方室とに区画するとともに自身を貫通する開口が形成された区画部を有するハウジングと、(B)後端に鍔が形成されて前記前方室内に配設された本体部を有する加圧ピストンと、(C)前記ブレーキ操作部材と連結され、前記後方室に配設された入力ピストンと、(D)その入力ピストンの前進に対するその前進の量に応じた大きさの反力を前記入力ピストンに付与する反力付与機構とを有し、
(i)前記加圧ピストンの前記本体部の前方に、前記ブレーキ装置に供給される作動液が前記加圧ピストンの前進によって加圧される加圧室が、(ii)前記加圧ピストンと前記入力ピストンとの間に、前記ハウジングの前記区画部に形成された前記開口を利用してそれら加圧ピストンと入力ピストンとが向かい合うピストン間室が、(iii)前記加圧ピストンの前記本体部に形成された前記鍔と前記区画部との間に、前記調整圧若しくはその調整圧に応じた圧力の作動液が導入される入圧室が、(iv)前記鍔の前方に、その鍔を挟んで前記入圧室と対向し、前記ピストン間室と連通する対向室が、それぞれ形成されるとともに、前記ピストン間室の作動液の圧力が前記加圧ピストンに作用する受圧面積と、前記対向室の作動液の圧力が前記加圧ピストンに作用する受圧面積とが等しくされた(16)項に記載の液圧ブレーキシステム。
本態様は、マスタシリンダ装置の具体的構造に関する限定を加えた態様である。
(18)当該液圧ブレーキシステムが、さらに、
前記パイロット室と低圧源との間に配設され、自身に供給される励磁電流に依存してパイロット圧を減圧するための電磁式の減圧リニア弁を備えた(1)項ないし(17)項のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
本態様によれば、パイロット圧の減圧は、上記電磁式リニア弁によって行われる。つまり、本態様では、パイロット圧の増圧,減圧ともにリニア弁にて行われるため。比較的正確に、ブレーキ力を制御することが可能ととなる。
請求可能発明の実施例である車両用液圧ブレーキシステムのハード構成を示す図である。 図1の液圧ブレーキシステムが備えるブレーキ電子制御ユニット(ECU)によって実行されるブレーキ制御プログラムを示すフローチャートである。 ブレーキ制御プログラムの一部を構成する高圧源制御ルーチンを示すフローチャートである。 ブレーキ制御プログラムの一部を構成する増圧弁制御ルーチンを示すフローチャートである。 ブレーキ制御プログラムの一部を構成する減圧弁制御ルーチンを示すフローチャートである。 ブレーキ操作中の目標サーボ圧および実際のサーボ圧の経時的変化を模式的に示すグラフである。 ブレーキ制御プログラムの一部を構成する過剰応答防止処理ルーチンを示すフローチャートである。 過剰応答防止処理ルーチンの一部を構成する第1処理サブルーチンを示すフローチャートである。 過剰応答防止処理ルーチンの一部を構成する第2処理サブルーチンを示すフローチャートである。 過剰応答防止処理ルーチンの一部を構成する第3処理サブルーチンを示すフローチャートである。 過剰応答防止処理ルーチンの一部を構成する第4処理サブルーチンを示すフローチャートである。 ブレーキ電子制御ユニット(ECU)の機能を示すブロック図である。
以下、請求可能発明の代表的な実施形態を、実施例として、図を参照しつつ詳しく説明する。なお、請求可能発明は、下記実施例の他、下記変形例,前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。また、〔発明の態様〕の各項の説明に記載されている技術的事項を利用して、下記実施例の変形例を構成することも可能である。
≪液圧ブレーキシステムのハード構成≫
i)全体構成
請求可能発明の実施例である車両用液圧ブレーキシステムは、ブレーキオイルを作動液としてハイブリッド車両に搭載される液圧ブレーキシステムである。本液圧ブレーキシステムは、図1に示すように、大まかには、(A) 4つの車輪10に設けられ、それぞれがブレーキ力を発生させる4つのブレーキ装置12と、(B) ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル14の操作が入力されるとともに、加圧された作動液を各ブレーキ装置12に供給するマスタシリンダ装置16と、(C) マスタシリンダ装置16と4つのブレーキ装置12の間に配置されたアンチロックユニット18と、(D) 作動液を低圧源であるリザーバ20から汲み上げて加圧することにより、高圧の作動液を供給する高圧源装置22と、(E) 高圧源装置22から供給される作動液を調圧してマスタシリンダ装置16に供給する調圧器であるレギュレータ24と、(F) レギュレータ24から供給される作動液の圧力を調整するための電磁式増圧リニア弁26および電磁式減圧リニア弁28(以下、それぞれ、単に、「増圧リニア弁26」および「減圧リニア弁28」と略す場合がある)と、(G) それらの装置,機器,弁を制御することで当該液圧ブレーキシステムの制御を司る制御装置としてのブレーキ電子制御ユニット30とを含んで構成されている。ちなみに、アンチロックユニット18は、「ABSユニット18」と呼ぶ場合があり、図では、〔ABS〕という符号が付されている。また、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28は、図では、それぞれ、それらの記号標記である[SLA],[SLR]という符号が付されている。さらに、ブレーキ電子制御ユニット30は、以下、「ブレーキECU30」と呼ぶ場合があり、図では、[ECU]という符号で表わされている。なお、4つの車輪10は、左右前後を表わす必要のある場合に、右前輪10FR,左前輪10FL,右後輪10RR,左後輪10RLと表わすこととする。また、4つのブレーキ装置12等の構成要素も、左右前後を区別する必要がある場合に、車輪10と同様の符号を付して、12FR,12FL,12RR,12RL等と表わすこととする。
ii)ブレーキ装置およびABSユニット
各車輪10に対応して設けられたブレーキ装置12は、車輪10とともに回転するディスクロータ,キャリアに保持されたキャリパ,キャリパに保持されたホイールシリンダ,キャリパに保持されてそのホイールシリンダによって動かされることでディスクロータを挟み付けるブレーキパッド等を含んで構成されたディスクブレーキ装置である。また、ABSユニット18は、各車輪に対応して設けられて対をなす増圧用開閉弁および減圧用開閉弁,ポンプ装置等を含んで構成されたユニットであり、スリップ現象等によって車輪10がロックした場合に作動させられて、車輪のロックが持続することを防止するための装置である。なお、ブレーキ装置12,ABSユニット18は、一般的な装置,ユニットであり、請求可能発明の特徴とは関連が小さいため、それらの構造についての詳しい説明は省略する。
iii)マスタシリンダ装置
マスタシリンダ装置16は、ストロークシミュレータ一体型のマスタシリンダ装置であり、概して言えば、ハウジング40の内部に、2つの加圧ピストンである第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44、入力ピストン46が配設されるとともに、ストロークシミュレータ機構48が組み込まれている。なお、マスタシリンダ装置16に関する以下の説明において、便宜的に、図における左方を前方,右方を後方と呼び、同様に、後に説明するピストン等の移動方向について、左方に動くことを前進,右方に動くことを後退と呼ぶこととする。
ハウジング40は、第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44、入力ピストン46が配設される空間を有し、その空間は、前方側の端部が閉塞されるとともに、環状をなす区画部50によって前方室52と後方室54とに区画されている。第2加圧ピストン44は、前方に開口する有底円筒状をなしており、前方室52内において前方側に配設される。一方、第1加圧ピストン42は、有底円筒状をなすとともに後端に鍔56が形成された本体部58と、本体部58から後方に延びる突出部60とを有しており、本体部58が、前方室52内において第2加圧ピストン44の後方に配設されている。区画部50は、環状をなしていることから中央に開口62が形成されたものとされており、突出部60は、その開口62を貫通して後方室54に延び出している。入力ピストン46は、後方室54に、詳しく言えば、それの一部分が後方から後方室54の内部に臨み入るようにして、配設され、後端部に、リンクロッド64を介して、ブレーキペダル14が連結されている。
第1加圧ピストン42と第2加圧ピストン44との間には、詳しく言えば、第1加圧ピストン42の本体部58の前方には、2つの後輪10RR,10RLに対応する2つのブレーキ装置12RR,12RLに供給される作動液を第1加圧ピストン42の前進によって加圧するための第1加圧室R1が、第2加圧ピストン44の前方側には、2つの前輪10FR,10FLに対応する2つのブレーキ装置12FR,12FLに供給される作動液を第2加圧ピストン44の前進によって加圧するための第2加圧室R2が、それぞれ形成されている。一方、第1加圧ピストン42と入力ピストン46との間には、ピストン間室R3が形成されている。詳しく言えば、区画部50に形成された開口62から後方に延び出す突出部60の後端と、入力ピストン46との前端とが向かい合うようにして、つまり、開口62を利用して第1加圧ピストン42と入力ピストン46とが向かい合うようにして、ピストン間室R3が形成されているのである。さらに、ハウジング40の前方室52内には、突出部60の外周において、区画部50の後端面と、第1加圧ピストン42の本体部58の後端面、つまり、鍔56の後端面とによって区画されるようにして、レギュレータ24から供給される作動液が導入される環状の入力室R4が、本体部58の外周における鍔56の前方に、その鍔56を挟んで入力室R4と対向する環状の対向室R5が、それぞれ形成されている。
第1加圧室R1,第2加圧室R2は、それぞれ、第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44が移動範囲における後端に位置する際に、大気圧ポートP1,P2を介してリザーバ20と連通可能とされており、また、それぞれ、出力ポートP3,P4を介するとともにABSユニット18を介して、ブレーキ装置12と連通させられている。ちなみに、第1加圧室R1は、後に説明するレギュレータ24をも介してブレーキ装置12RR,12RLと連通させられている。なお、入力室R4は、入力ポートP5を介して、後に説明するレギュレータ24の調圧ポートと連通させられている。
ピストン間室R3は、連結ポートP6と、対向室R5は、連通ポートP7と、それぞれ連通しており、それら連通ポートP6と連通ポートP7は、外部連通路である室間連通路70によって繋げられている。この外部連通路64の途中には、常閉型の電磁式開閉弁72、つまり、非励磁状態で閉弁状態となり、励磁状態で開弁状態となる開閉弁72が設けられており、開閉弁72が開弁状態とされた場合に、ピストン間室R3と対向室R5は連通させられる。それらピストン間室R3と対向室R5とが連通する状態では、それらによって、1つの液室、すなわち、反力室R6と呼ぶことのできる液室が形成されていると考えることができる。なお、電磁式開閉弁72は、ピストン間室R3と対向室R5との連通,非連通を切換える機能を有することから、以下、「室間連通切換弁72」と呼ぶこととする。
また、マスタシリンダ装置16には、さらに2つの大気圧ポートP8,P9が設けられており、それらは、内部通路にて連通している。一方の大気圧ポートP8はリザーバ20に繋げられており、他方の大気圧ポートP9は、外部連通路である大気圧開放路74を介して、室間連通切換弁72と対向室R5との間において室間連通路70に繋げられている。大気圧開放路74には、常開型の電磁式開閉弁76、つまり、非励磁状態で開弁状態となり、励磁状態で閉弁状態となる開閉弁76が設けられている。この開閉弁76は、対向室R5を大気圧に開放する機能を有することから、以下、「大気圧開放弁76」と呼ぶこととする
ハウジング40には、第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44、入力ピストン46が配設されている空間とは別の空間を有しており、ストロークシミュレータ機構48は、その空間と、その空間内に配設された反力ピストン80と、反力ピストン80を付勢する2つの反力スプリング82,84(いずれも圧縮コイルスプリングである)とを含んで構成されている。反力ピストン80の後方側には、バッファ室R7が形成されている(図では、殆ど潰れた空間として表わされている)。ブレーキペダル14の操作によって入力ピストン46が前進する際、バッファ室R7には、内部通路を介して、対向室R5の作動液、すなわち、反力室R6の作動液が導入され、その導入される作動液の量、すなわち、入力ピストン46の前進量に応じた反力スプリング82,84の弾性反力が反力室R6に作用することで、ブレーキペダル14に操作反力が付与される。つまり、このストロークシミュレータ機構48は、入力ピストン46の前進に対するその前進の量に応じた大きさの反力を入力ピストン46に付与する反力付与機構として機能しているのである。ちなみに、2つの反力スプリング82,84は直列的に配置されるとともに、反力スプリング84は、反力スプリング82に比較して、相当にばね定数が小さくされており、ブレーキペダル14の操作の進行の途中において反力スプリング84の変形が禁止されることで、ストロークシミュレータ機構48は、その途中から増加勾配が大きくなるような反力特性を実現するものとされている。なお、本システムでは、室間連通路70に、反力室R6の作動液の圧力(反力圧)を検出するための反力圧センサ86が設けられている(図では、反力圧の記号標記である[PRCT]という符号が付されている)。
通常の状態では、上記室間連通切換弁72は、開弁状態、上記大気圧開放弁76は、閉弁状態にあり、ピストン間室R3と対向室R5とによって、上記反力室R6が形成されている。本マスタシリンダ装置16では、第1加圧ピストン42を前方に移動させるべくピストン間室R3の作動液の圧力が作用する第1加圧ピストン42の受圧面積(対ピストン間室受圧面積)、すなわち、第1加圧ピストン42の突出部58の後端の面積と、第1加圧ピストン42を後方に移動させるべく対向室R5の作動液の圧力が作用する第1加圧ピストン42の受圧面積(対対向室受圧面積)、すなわち、第1加圧ピストンの鍔56の前端面の面積とが、等しくされている。したがって、ブレーキペダル14を操作して入力ピストン46を前進させても、操作力、すなわち、反力室R6の圧力によっては、第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44は前進せず、マスタシリンダ装置16によって加圧された作動液がブレーキ装置12に供給されることはない。その一方で、入力室R4に高圧源装置22からの作動液の圧力が導入されると、その作動液の圧力に依存して第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44は前進し、入力室R4の作動液の圧力に応じた圧力に加圧された作動液が、ブレーキ装置12に供給される。つまり、本マスタシリンダ装置16によれば、通常状態において、ブレーキペダル14に加えられた操作力に依存せずに高圧源装置22からマスタシリンダ装置16に供給される作動液の圧力に依存した大きさのブレーキ力をブレーキ装置12が発生させる高圧源圧依存制動力発生状態が実現されるのである。
本システムが搭載されている車両は、上述したようにハイブリッド車両であり、当該車両においては、回生ブレーキ力が利用できる。そのため、ブレーキ操作に基づいて決定されるブレーキ力から回生ブレーキ力を減じた分のブレーキ力を、ブレーキ装置12によって発生させればよい。本システムは、上記高圧源圧依存制動力発生状態が実現されることから、ブレーキ操作力に依存しないブレーキ力をブレーキ装置12が発生させることができる。そのような作用から、本システムは、ハイブリッド車両に好適な液圧ブレーキシステムなのである。
一方、電気的失陥時等には、上記室間連通切換弁72は、閉弁状態、上記大気圧開放弁76は、開弁状態にあり、ピストン間室R3は密閉されるとともに対向室R5は大気圧に開放される。その状態では、ブレーキペダル14に加えられた操作力は、ピストン間室R3の作動液を介して第1加圧ピストン42に伝達され、第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44は前進する。つまり、ブレーキペダル14に加えられた操作力に依存した大きさのブレーキ力をブレーキ装置12が発生させる操作力依存制動力発生状態が実現されるのである。なお、上記室間連通切換弁72を閉弁状態と、上記大気圧開放弁76を開弁状態とし、入力室R4に高圧源装置22からの作動液を導入すれば、第1加圧ピストン42,第2加圧ピストン44は、高圧源装置22からマスタシリンダ装置16に供給される作動液の圧力と操作力との両方によって前進させられ、それら両方に依存した大きさのブレーキ力、つまり、高圧源装置22からマスタシリンダ装置16に供給される作動液の圧力に依存した大きさのブレーキ力と操作力に依存した大きさのブレーキ力とが足し合わされたブレーキ力をブレーキ装置12が発生させる操作力・高圧源圧依存制動力発生状態が実現されることになる。
iv)高圧源装置
高圧源装置22は、リザーバ20から作動液を汲み上げて加圧するポンプ90と、そのポンプ90を駆動するモータ92と、ポンプ90によって加圧された作動液を蓄えるアキュムレータ94(図では[ACC]という符号が付されている)とを含んで構成されている。なお、高圧源装置22には、アキュムレータ94内の作動液の圧力、すなわち、供給する作動液の圧力(高圧源圧)を検出するための高圧源圧センサ96が設けられている(図では、高圧源圧の記号標記である[PACC]という符号が付されている)。
v)レギュレータ
レギュレータ24は、2重構造をなして内部に空間が形成されたハウジング100と、その空間内にハウジング100の軸線方向(左右方向)において図の左方から順に並んで配置された第1ピストン102,第2ピストン104,弁座環106,弁ロッド108を含んで構成されている。第1ピストン102,第2ピストン104は、それぞれ可動体として機能し、ハウジング100の軸線方向に移動可能とされている。第2ピストン104は、凹所が形成されたピストン本体110と、その凹所に嵌め込まれたプランジャ112とによって構成されている。弁座環106は、鍔部を有するとともに両端が開口する筒状をなしており、2つのスプリング114,116によって、第2ピストン104とハウジング100とに浮動支持されている。弁ロッド108は、左端が弁子として機能し、弁座として機能する弁座環106の右端部にその弁ロッド108の左端が着座可能に配設され、スプリング118によって左方に向かって付勢されている。つまり、弁座環106,弁ロッド106,スプリング118を含んで、後に説明する弁機構120が構成されているのであり、その弁機構120は、ハウジング100の軸線方向において可動体である第2ピストン104と並んで配設されているのである。なお、第2ピストン104のプランジャ112の先端(右端)は、弁座環106内において弁ロッド108の左端に当接可能とされている。
ハウジング100の上記空間内には、複数の液室が区画形成されている。具体的には、第1ピストン102の左側には、第1パイロット室R8が、第1ピストン102と第2ピストン104との間には、第2パイロット室R9が、第2ピストン104のプランジャ112の外周における概してピストン本体110と弁座環106の鍔部との間には、調圧されて当該レギュレータ24からマスタシリンダ装置16へ供給される作動液が収容される調圧室R10が、弁ロッド108の外周には、高圧源装置22から供給される作動液を受け入れる高圧室R11が、それぞれ形成されている。大まかに言えば、調圧室R10は、第2ピストン104の上記弁機構120の側に形成され、高圧室R11と調圧室R10とは、それらで弁機構120を挟むようにして形成されているのである。
ハウジング100には、各種のポートが設けられており、上記複数の液室は、それらのポートを介して当該システムの各装置等と連通させられている。具体的には、高圧室R11は、高圧ポートP10を介して、高圧源装置22からの作動液が供給される。調圧室R10は、調圧ポートP11を介して、マスタシリンダ装置16の入力ポートP5と連通させられている。第2ピストン104の内部には、プランジャ112を軸線方向に貫通する液通路と、その液通路に連通するとともにピストン本体110を径方向に貫通する液通路とからなる大気圧通路130が設けられており、2つの大気圧ポートP12,P13の各々は、その大気圧通路130を介して互いに連通している。一方の大気圧ポートP12は、上記大気圧開放路74に繋げられており、大気圧通路130は、マスタシリンダ装置16を介して、リザーバ20に連通している。すなわち、大気圧通路130は、低圧源に連通する低圧源連通路として機能しているのである。ちなみに、他方の大気圧ポートP13は、リリーフ弁132を介して、上記高圧ポートP8とは別の高圧ポートP14と繋げられており、高圧室R11の圧力が高すぎる状態となった場合に、高圧室R11の圧力がリザーバ20に開放される。
第1パイロット室R8は、第1パイロットポートP15,P16を介して、それぞれ、マスタシリンダ装置16の出力ポートP3,後輪側のブレーキ装置12RR,12RLに連通させられている。つまり、第1パイロット室R8は、マスタシリンダ装置16からブレーキ装置12RR,12RLに供給される作動液の通路の一部とされている。第2パイロット室R9は、2つの第2パイロットポートP17,P18と繋がっており、一方の第2パイロットポートP17は、上記増圧リニア弁26を介して、高圧ポートP14に、他方の第2パイロットポートP18は、上記減圧リニア弁28を介して、上記大気圧開放路74に繋げられている。つまり、第2パイロット室R9は、増圧リニア弁26を介して高圧源装置22に、減圧リニア弁28を介してリザーバ20に、それぞれ繋げられており、後に詳しく説明するように、第2パイロット室R9の作動液の圧力は、それら増圧リニア弁26,減圧リニア弁28によって調整された圧力(以下、「調整圧」と言う場合がある)に調整される。
第2ピストン104には、調圧室R10の作動液の圧力、すなわち、当該レギュレータ24から供給される作動液の圧力(いわゆる調圧器供給圧であり、以下、「サーボ圧」と言う場合がある)と、第2パイロット室R9の圧力である第2パイロット圧との差圧に依拠する差圧作用力が作用し、その差圧作用力によって、第2ピストン104は、ハウジング100内を軸線方向に移動させられる。実際には、スプリング114,116の弾性反力等を考慮する必要があるが、簡単に言えば、第2ピストン104は、第2パイロット圧に依拠する作用力がサーボ圧に依拠する作用力に優る場合に、図における右方に、つまり、弁機構120に向かって移動させられ、逆に、サーボ圧に依拠する作用力が第2パイロット圧に依拠する作用力に優る場合に、図における左方に、つまり、弁機構120から離れる方向に移動させられる。右方に移動させられた場合、第2ピストン104が、プランジャ112の先端において、弁機構120と係合して、弁ロッド108の先端が弁座環106から離座することで、その弁機構120により、調圧室R10と高圧室R11とが連通する。その場合、プランジャ112の先端に設けられた上記大気圧通路130の開口は、弁ロッド108の先端によって塞がれており、調圧室R10と大気圧通路130との連通は遮断される。逆に、左方に移動させられた場合、プランジャ112の先端における第2ピストン104の弁機構120との係合が解除されることで、調圧室R10と高圧室R11との連通が遮断される。その場合、大気圧通路130の開口が弁ロッド108の先端によっては塞がれずに、調圧室R10と大気圧通路130とが連通する。このようなレギュレータ24の動作により、調圧室R10内の作動液の圧力は、第2パイロット圧に応じた圧力、つまり、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28によって調整された上記調整圧に応じた圧力に調整される。なお、本システムでは、サーボ圧を検出するためのサーボ圧センサ134が設けられている(図では、サーボ圧の記号標記である[PSRV]という符号が付されている)。
以上のような作用から、レギュレータ24は、高圧源装置22が、サーボ圧と第2パイロット圧との両者の圧力源として機能するタイプの調圧器であり、「高圧源圧依存型調圧器」と呼ぶことができる。そして、その調圧器が配備されている本液圧ブレーキシステムは、「高圧源圧依存型調圧器配備システム」と呼ぶことができるのである。
通常の状態では、調圧器であるレギュレータ24からマスタシリンダ装置16に導入されるサーボ圧は、上述のように、上記調整圧に応じた圧力に調整される。先の説明から解るように、通常の状態では、マスタシリンダ装置16からブレーキ装置12に供給される作動液の圧力(以下、「マスタ圧」と言う場合がある)は、サーボ圧に応じた圧力となることから、マスタ圧は調整圧に応じた圧力となる。したがって、本システムでは、通常の状態において、調整圧に依存した大きさのブレーキ力がブレーキ装置12によって発生させられることとなる。ちなみに、通常の状態では、第1パイロット室R8の圧力である第1パイロット圧はマスタ圧となるが、マスタシリンダ装置16の構造に依拠するサーボ圧とマスタ圧との比、および、レギュレータ24の構造に依拠する調整圧とサーボ圧との比は、調整圧となる第2パイロット圧とマスタ圧となる第1パイロット圧との差圧に依拠して第1ピストン102に作用する差圧作用力によっては第1ピストン102がハウジング100内おいて右方に移動しないように設定されている。
例えば、増圧リニア弁26の失陥等により、第2パイロット室R9に調整圧の作動液を供給できない場合には、第1パイロット室R8に導入されたマスタ圧と、サーボ圧との差圧によって作用する差圧作用力によって、第1ピストン102と第2ピストン104とが、それらが当接した状態のまま、つまり、それらが一体となって、ハウジング100内を軸線方向に移動する。そして、通常の状態と同様に、弁機構120による高圧室R11と調圧室R10との連通とその連通の遮断、および、大気圧通路130と調圧室R10との連通とその連通の遮断が切り換えられ、マスタ圧に応じた圧力となるサーボ圧の作動液が、レギュレータ24からマスタシリンダ装置16に供給される。つまり、本システムでは、第2パイロット室R9に調整圧の作動液を供給できない状況に陥った場合であっても、高圧源装置22が正常に機能しているとき、若しくは、正常に機能していなくてもアキュムレータ94にある程度の圧力が残っているときには、上記高圧源圧依存制動力発生状態の実現、つまり、高圧源装置22からマスタシリンダ装置16に供給される作動液の圧力に依存した大きさのブレーキ力をブレーキ装置12が発生させる状態の実現が可能とされているのである。
なお、本システムでは、レギュレータ24の第1パイロット室R8には、マスタ圧が導入されるように構成されているが、その構成に代え、例えば、反力室R6若しくはピストン間室R3の作動液の圧力が導入されるように構成することもできる。そのような構成であっても、第2パイロット室R9に調整圧の作動液を供給できない状況に陥った場合に、上記高圧源圧依存制動力発生状態の実現、詳しく言えば、ブレーキペダル14に加えられた運転者の操作力に応じた大きさのブレーキ力を高圧源装置22から供給される作動液の圧力に依存してブレーキ装置12が発生させる状態の実現が可能とされているのである。
vi)増圧リニア弁および減圧リニア弁
増圧リニア弁26,減圧リニア弁28は、一般的な電磁式リニア弁であり、構造の図示については省略する。増圧リニア弁26は、高圧源装置22とレギュレータ24の第2パイロット室R9との間に配設された常閉型の電磁式リニア弁である。この増圧リニア弁26は、先端が弁子として機能するプランジャと、そのプランジャが着座する弁座を有している。そして、その弁座を挟んで、レギュレータ24の第2パイロット室R9と連通してそれの圧力である第2パイロット圧PPLTに相当する調整圧PAJTの作動液が収容される調整圧室が、プランジャの側に、高圧源装置22と連通して高圧源圧PACCの作動液が受け入れられる高圧室が、プランジャとは反対側に、それぞれ配置されている。プランジャには、それら高圧源圧PACCと調整圧PPLTとの差圧による差圧作用力FΔPAが、当該プランジャを弁座から離座させる方向に作用しており、その一方で、プランジャは、その差圧作用力FΔPAを上回るスプリングの付勢力FKAによって、当該プランジャを弁座に着座させる方向に付勢されている。また、プランジャには、コイルの励磁によって、そのコイルに通電される励磁電流iAに応じた大きさの電磁作用力FEAが、差圧作用力FΔPAと同じ方向、つまり、スプリングの付勢力FKAとは反対の方向に作用する。大まかに言えば、本増圧リニア弁26では、それらの力の釣り合いを考慮しつつ、任意の調整圧PAJTが得られるような励磁電流がiAが決定され、コイルに通電される。励磁電流iAの決定については、後に詳しく説明する。ちなみに、本増圧リニア弁26では、励磁電流iAが大きくなるほど、調整圧PAJTが高くなる。言い換えれば、開弁度(例えば、閉弁状態から開弁状態への移行のし易さ)が高くなり、開弁圧が高くなるのである。
一方、減圧リニア弁28は、レギュレータ24の第2パイロット室R9と低圧源であるリザーバ22との間に配設された常開型の電磁式リニア弁である。この減圧リニア弁28は、先端が弁子として機能するプランジャと、そのプランジャが着座する弁座を有し、その弁座を挟んで、リザーバ20と連通して大気圧PRSVとなる大気圧室が、プランジャの側に、レギュレータ24の第2パイロット室R9と連通して第2パイロット圧PPLTに相当する調整圧PAJTの作動液が収容される調整圧室が、プランジャとは反対側に、それぞれ配置されている。プランジャには、それら調整圧PAJTと大気圧PRSVとの差圧による差圧作用力FΔPRが、当該プランジャを弁座から離座させる方向に作用しており、それに加え、プランジャは、スプリングの付勢力FKRによって、差圧作用力FΔPRと同じ方向に付勢されている。その一方で、プランジャには、コイルの励磁によって、そのコイルに通電される励磁電流iRに応じた大きさの電磁作用力FERが、差圧作用力FΔPRおよびスプリングの付勢力FKRとは反対方向に作用する。本減圧リニア弁28では、大まかに言えば、それらの力の釣り合いを考慮しつつ、任意の調整圧PPLTが得られるような励磁電流がiRが決定され、コイルに通電される。励磁電流iRの決定については、増圧リニア弁26の場合と同様に、後に詳しく説明する。ちなみに、本減圧リニア弁28では、励磁電流iRが大きくなるほど、調整圧PAJTが高くなる。言い換えれば、開弁度(例えば、閉弁状態から開弁状態への移行のし易さ)が低くなり、開弁圧が高くなるのである。
以上のような増圧リニア弁26,減圧リニア弁28の機能によれば、本システムでは、それら増圧リニア弁26,減圧リニア弁28を含んで、作動液を調整圧PPLTに調整するための圧力調整弁装置が構成されていると考えることができる。そしてその圧力調整弁装置は、レギュレータ24の第2パイロット圧PPLTを調整圧PAJTとして調整するものとされているのである。
vii)制御系
本システムの制御、つまり、ブレーキ制御は、ブレーキECU30によって行われる。ブレーキECU30は、大まかには、高圧源装置22(詳しくは、それが有するモータ92)の制御を行い、また、増圧リニア弁26および減圧リニア弁28制御を行う。ブレーキECU30は、中心的な要素であるコンピュータと、高圧源装置22のモータ92,増圧リニア弁26,減圧リニア弁28等をそれぞれ駆動させるための駆動回路(ドライバ)とを含んで構成されている。
ブレーキECU30には、反力室R6若しくは対向室R5内の圧力PRCT(以下、「反力圧PRCT」と呼ぶことがある)、高圧源装置22からレギュレータ24に供給される作動液の圧力である高圧源圧PACC(いわゆる「アキュムレータ圧」である)、レギュレータ24からマスタシリンダ装置に送られる作動液の圧力であるサーボ圧PSRVを、制御に必要な情報として取得するため、反力圧センサ86,高圧源圧センサ96,サーボ圧センサ134が接続されている。また、本システムには、ブレーキ操作量δPDL,ブレーキ操作力FPDLを、ブレーキ操作部材であるブレーキペダル14の操作情報として取得するために、ブレーキ操作量センサ140,ブレーキ操作力センサ142が設けられており(図では、それぞれ、ブレーキ操作量,ブレーキ操作力の記号標記である[δPDL],[FPDL]という符号が付されている)、それらのセンサ140,142も、ブレーキECU30に接続されている。本システムにおける制御は、それらセンサの検出値に基づいて行われる。
なお、図1において破線で示すように、調整圧PAJTとされるレギュレータ24の第2パイロット圧PPLTを検出するパイロット圧センサ144(図では、第2パイロット圧の記号標記である[PPLT]という符号が付されている)を設け、それによって検出された第2パイロット圧PPLTに基づいて、本システムにおける制御を行ってもよい。
≪液圧ブレーキシステムにおける制御,処理≫
以下に、本システムにおけるブレーキ制御について、その制御を行うためのプログラムを説明しつつ、そのプログラムの流れにそって説明する。そのプログラムに沿った制御では、通常の制御に加え、ブレーキ力が過剰応答となる事態を防止するための制御をも行うようにされている。そこで、本ブレーキ制御の理解を容易にするため、ブレーキ制御のメインフロー,通常のブレーキ制御,ブレーキ力の過剰応答,過剰応答を防止するための処理を順に説明し、その後に、本ブレーキ制御に関するブレーキECU30の機能構成について説明する。
[A]ブレーキ制御のメインフロー
ブレーキ制御は、ブレーキ装置12が適切なブレーキ力を発生させるために行われる制御であり、ブレーキECU30が、図2にフローチャートを示すブレーキ制御プログラムを、短い時間ピッチ(例えば、数msec〜数十msec)で繰り返し実行することによって、行われる。
このプログラムに従う制御処理では、まず、ステップ1(以下、「S1」と言う場合があり、他のステップも同様である)において、高圧源装置22の制御、つまり、高圧源制御が行われる。詳しく言えば、この高圧源制御は、高圧源装置22から供給される作動液の圧力である高圧源圧PACCの制御である。続く、S2において、必要ブレーキ力G*が決定される。必要ブレーキ力G*は、本液圧ブレーキシステムに要求されているブレーキ力、すなわち、4つのブレーキ装置12が発生させるべきブレーキ力であり、目標ブレーキ力と呼ぶことのできるものである。具体的には、まず、ブレーキ操作量センサ140,ブレーキ操作力センサ142によって検出されたブレーキ操作量δPDLおよびブレーキ操作力FPDLに基づいて、既に公知の手法に従って、車両全体に必要とされるブレーキ力である対車両全体必要ブレーキ力GTOTALが算出され、次いで、車両駆動システムの電子制御ユニットから送られてくる情報に基づいて、現時点で発生させられる回生ブレーキ力GREGが取得される。そして、対車両必要ブレーキ力GTOTALから回生ブレーキ力GREGを減じることによって、上記必要ブレーキ力G*が決定される。
次いで、S3において、S2にて決定された必要ブレーキ力G*に基づいて、サーボ圧PSRVの目標である目標サーボ圧P* SRVが決定される。具体的には、各ブレーキ装置12が有するホイールシリンダのピストンの受圧面積,マスタシリンダ装置16の入力室R4に対する第1加圧ピストン42の受圧面積,第1加圧室R1および第2加圧室R2に対する第1加圧ピストン42および第2加圧ピストン44の各々の受圧面積の比に基づいて、必要ブレーキ力G*から、目標サーボ圧P* SRVが算出される。続くS4おいて、サーボ圧センサ13の検出値に基づいて、実際のサーボ圧PSRVが取得され、S5において、目標サーボ圧P* SRVに対するサーボ圧PSRVの偏差であるサーボ圧偏差ΔPSRVが、次式に従って算出される。
ΔPSRV=P* SRV−PSRV
サーボ圧PSRVは、実際のブレーキ力Gを間接的に表すブレーキ力指標の1つであり、後に詳しく説明する増圧リニア弁26,減圧リニア弁28の各々の励磁電流の決定のために用いられるブレーキ力指標である。そして、目標サーボ圧P* SRVは、ブレーキ力指標として採用されたサーボ圧PSRVの制御における目標、つまり、目標ブレーキ力指標である。続いて、S6において、サーボ圧センサ134の検出値に基づいて取得されたサーボ圧PSRVから、レギュレータ24の構造によって定まる増圧比に従って、第2パイロット圧PPLTが推定される。
次に、S7において、後に詳しく説明する過剰応答を防止するための処理である過剰応答防止処理が行われ、S8において、増圧リニア弁26の制御、詳しくは、増圧リニア弁26へ供給される励磁電流IAに関する制御である増圧弁制御が、S9において、減圧リニア弁28の制御、詳しくは、減圧リニア弁28へ供給される励磁電流IRに関する制御である減圧弁制御が、それぞれ行われる。
[B]通常のブレーキ制御
i)高圧源制御
ブレーキ制御におけるS1の上記高圧源制御は、図3にフローチャートを示す高圧源制御ルーチンの実行によって行われる。この制御は、高圧源圧PACCを調整するための制御である。高圧源制御ルーチンに従う処理では、まず、S11において、高圧源圧センサ96の検出に基づいて、高圧源圧PACCが取得される。続く、S12において、高圧源圧PACCが、設定上限圧PACCUを超えているか否かが判断される。S12において高圧源圧PACCが設定上限圧PACCUを超えていると判断された場合には、S13において、ポンプ90の駆動を停止する旨の指令が発せられる。具体的には、モータ92の作動を停止する旨の信号が、駆動回路に送られる。それに対して、高圧源圧PACCが設定上限圧PACCUを超えていないと判断された場合には、S14において、高圧源圧PACCが、設定下限圧PACCLを下回っているか否かが判断される。高圧源圧PACCが、設定下限圧PACCLを下回っていると判断された場合には、S15において、ポンプ90を駆動する旨の指令が発せられる。具体的には、モータ92を作動させる旨の信号がモータドライバに送られる。それに対して、高圧源圧PACCが、設定下限圧PACCLを下回っていないと判断された場合、すなわち、高圧源圧PACCが設定下限圧PACCL以上かつ設定上限圧PACCU以下である場合には、S16において、ポンプ90の現在の状態を維持する旨の指令が、つまり、ポンプ90が駆動させられている場合にはその駆動を継続する指令が、ポンプ90の停止させられている場合にはその停止を維持する旨の指令が発せられる。具体的には、モータ92が作動している場合には、作動させる旨の信号が、モータ90の作動が停止している場合には、停止する旨の信号が、駆動回路に送られる。
以上のような高圧源制御が行われることにより、高圧源圧PACCは、通常、設定上限圧PACCUと設定下限圧PACCLとで画定される設定圧力範囲に維持されることになる。なお、高圧源制御においては、モータ90の作動は、一定の電流を供給することによって行われる。つまり、ポンプ90は、一定のパワーで駆動される。また、本ブレーキ制御では、高圧源制御ルーチンの実行によって行われる高圧源装置22の制御は、後に説明する増圧弁制御ルーチン,減圧弁制御ルーチンの実行によって行われる増圧リニア弁26,減圧リニア弁28の制御に対して独立した制御となっている。
ii)増圧弁制御
増圧リニア弁26の制御であるS8の上記増圧弁制御は、図4にフローチャートを示す増圧弁制御ルーチンが実行されることによって行われる。このルーチンに従う処理では、増圧リニア弁26に供給される励磁電流IAの基礎となる基礎励磁電流IA0が決定されるが、その決定に先立って、まず、S21において、基礎励磁電流IA0の一成分であるフィードフォワード電流成分IAFFが決定される。先に説明した増圧リニア弁26の構造により、差圧作用力FΔPA,スプリングの付勢力FKA,電磁作用力FEAの釣り合いは以下のような式で表わされる。
EA=FKA−FΔPA
ちなみに、釣り合い時における励磁電流をIAFFとすれば、
EA=αA・IAFF
FΔPA=βA・(PACC−PPLT) αA,βA:係数
であるから、上記式は、
αA・IAFF=FKA−βA・(PACC−PPLT
となる(FKAは定数と考えることができる)。高圧源圧PACCは、上記液圧源制御において取得されており、また、第2パイロット圧PPLTは、上記メインフローのS6において推定されている。それら取得されている高圧源圧PACC,推定された第2パイロット圧PPLTに基づき、上記式に従って、釣り合い時の励磁電流IAFFをフィードフォワード電流成分IAFFとして算出する。
続いて、実際のサーボ圧PSRVを目標サーボ圧P* SRVに近づけるための成分として、上記メインフローのS5において取得されているサーボ圧偏差ΔPSRVに基づいて、基礎励磁電流IA0の別の一成分であるフィードバック電流成分IAFBが決定されるが、それに先立って、その成分IAFBを決定するための制御ゲインγA(フィードバックゲイン)が特定される。その特定では、まず、S22において、後に詳しく説明する第1制限フラグFR1の値が判断される。このフラグFR1は、ある制限手法に従って励磁電流の制限を行う場合に値が“1”とされるフラグであり、ここでは、通常の制御についてのみ説明を行っているため、第1制限フラグFR1の値が“0”となっているものとして扱うこととする。したがって、通常の制御の場合、S23において、制御ゲインγAが、通常ゲインγANORとされる。そして、続くS24において、次式に従って、フィードバック電流成分IAFBが決定される。
AFB=γA・ΔPSRV γA:制御ゲイン
そして、次のS25において、上記フィードフォワード電流成分IAFFとフィードバック電流成分IAFBとを、次式に従って足し合わせることで、基礎励磁電流IA0が決定される。
A0=IAFF+IAFB
次に、S26において、後に詳しく説明する第2制限フラグFR2の値が判断される。このフラグFR1は、上記制限手法とは別の制限手法に従って励磁電流の制限を行う場合にフラグ値が“1”とされるフラグであり、ここでは、通常の制御についてのみ説明を行っているため、第2制限フラグFR2の値が“0”となっているものとして扱うこととする。したがって、通常の制御の場合、特別な処理を行うことなく、S27に移行する。
続くS27,S28において、目標サーボ圧P* SRVの変化に基づいて、ブレーキ力が増加過程,減少過程あるいは維持過程(変化のない状態を意味する)のいずれにあるかが判断される。つまり、先回以前に実行されたブレーキ制御プログラムの実行時において決定された目標サーボ圧P* SRVと、今回決定された目標サーボ圧P* SRVを比較することによって、サーボ圧PSRVが増圧中,減圧中あるいは維持中(現在のサーボ圧PSRVが保持されるべき状態であることを意味する)のいずれであるかが判断される。増圧中若しくは維持中であると判断された場合には、S29において、供給する励磁電流IAが、上記IA0に決定される。一方、減圧中であると判断された場合には、S30において、増圧リニア弁26の電力消費に鑑み、励磁電流IAが0に決定される。そして、S31において、決定された励磁電流IAについての指令が発せられる。具体的には、駆動回路に励磁電流IAに関する信号が送られる。
iii)減圧弁制御
減圧リニア弁28の制御であるS9の上記減圧弁制御は、図5にフローチャートを示す減圧弁制御ルーチンが実行されることによって行われる。このルーチンに従う処理では、減圧リニア弁28に供給される励磁電流IRの基礎となる基礎励磁電流IR0が決定されるが、その決定に先立って、まず、S41において、基礎励磁電流IR0の一成分であるフィードフォワード電流成分IRFFが決定される。先に説明した減圧リニア弁28の構造により、差圧作用力FΔPR,スプリングの付勢力FKR,電磁作用力FERの釣り合いは以下のような式で表わされる。
ER=FKR+FΔPR
ちなみに、釣り合い時における励磁電流をIRFFとすれば、
ER=αR・IRFF
FΔPR=βR・(PPLT−PRSV) αR,βR:係数
であるから、上記式は、
αR・IRFF=FKR+βR・(PRSV−PPLT
となる(FKRは定数と考えることができる)。大気圧PRSVは、概ね1気圧と考えることができ、第2パイロット圧PPLTは、上記メインフローのS6において取得されている。それら大気圧RSV,取得されている第2パイロット圧PPLTに基づき、上記式に従って、釣り合い時の励磁電流IRFFをフィードフォワード電流成分IRFFとして算出する。
次に、S42において、実際のサーボ圧PSRVを目標サーボ圧P* SRVに近づけるための成分として、基礎励磁電流IA0の別の一成分であるフィードバック電流成分IRFBが、上記取得されているサーボ圧偏差ΔPSRVに基づいて、次式に従って、決定される。
RFB=γR・ΔPSRV γR:制御ゲイン
続くS43において、次式に従ってそれらフィードフォワード電流成分IRFFとフィードバック電流成分IRFBとを足し合わせることで、基礎励磁電流IR0が決定される。
R0=IRFF+IRFB
ちなみに、減圧リニア弁28の場合、このフィードバック電流成分IRFBは、実際のサーボ圧PSRVが目標サーボ圧P* SRVよりも高い場合に発生させるときには、サーボ圧偏差ΔPSRVが負になることで負の値となり、結果的には、フィードフォワード電流成分IRFFを減じる成分となる。
続くS44,S45において、目標サーボ圧P* SRVの変化に基づいて、ブレーキ力が減少過程,増加過程あるいは維持過程(変化のない状態を意味する)のいずれにあるかが判断される。つまり、先回以前に実行されたブレーキ制御プログラムの実行時において決定された目標サーボ圧P* SRVと、今回決定された目標サーボ圧P* SRVを比較することによって、サーボ圧PSRVが減圧中,増圧中あるいは維持中(現在のサーボ圧PSRVが保持されるべき状態であることを意味する)のいずれであるかが判断される。減圧中若しくは維持中であると判断された場合には、S46において、供給する励磁電流IRが、上記基礎励磁電流IR0に決定される。一方、増圧中であると判断された場合には、S47において、減圧リニア弁28を充分な閉弁状態とすべく、励磁電流IRが、基礎励磁電流IR0にマージン電流IMAGを足し合わせた電流として決定される。そして、S48において、決定された励磁電流IRについての指令が発せられる。具体的には、駆動回路に励磁電流IRに関する信号が送られる。
以上説明した増圧弁制御,減圧弁制御は、それらが一体となって、調整圧PAJT、すなわち、レギュレータ24の第2パイロット圧をPPLTを、目標サーボ圧P* SRVが得られるように調整するための制御を構成していると考えることができる。
[C]ブレーキ力の過剰応答
高圧源圧依存型調圧器であるレギュレータ24は、上記構造から、サーボ圧PSRVは、高圧源圧PACCを超えることができず、また、第2パイロット圧PPLTも、高圧源圧PACCを超えることができない。したがって、上述のように、必要ブレーキ力G*を決定し、その必要ブレーキ力G*に基づいて目標サーボ圧P* SRVを決定して、サーボ圧PSRVを目標サーボ圧P* SRVにまで高めようとしたとしても、高圧源圧PACCの如何によっては、サーボ圧PSRVを目標サーボ圧P* SRVにまで達することがなく、充分なブレーキ力Gが得られない場合もある。先に説明したように、通常、高圧源圧PACCは、上記高圧源制御によって、設定圧力範囲に維持されるのではあるが、例えば、頻繁にブレーキ操作が行われた直後等の場合には、その設定圧力範囲よりも低い圧力となってしまうこともあり、また、例えば、急激なブレーキ操作により、目標サーボ圧P* SRVが設定圧力範囲の設定下限圧PACCLを上回る場合もある。その場合、ブレーキ力が必要ブレーキ力まで増加し得ない状況、つまり、ブレーキ力不充分状況に陥る。
図6は、ブレーキ操作中の目標サーボ圧P* SRVおよび実際のサーボ圧PSRVの経時的変化を模式的に示すグラフであり、このグラフを参照しつつ説明すれば、例えば、ブレーキ操作が開始された時点において高圧源圧PACCが低い場合には、目標サーボ圧P* SRVが高圧源圧PACCを超えるときに、実際のサーボ圧PSRVが目標サーボ圧P* SRVにまで達しない時間域、すれわちグラフに示す第1時間域RE1が生じてしまう。この第1時間域RE1が、ブレーキ力が必要ブレーキ力まで増加し得ない状況、つまり、「ブレーキ力不充分状況」となっている時間域である。ちなみに、サーボ圧PSRVの増加には遅れがあり、第1時間域RE1は、その遅れがないと仮定した場合において、実際のサーボ圧PSRVが目標サーボ圧P* SRVにまで達しない時間域である。
増圧リニア弁26に供給される励磁電流IAは、上述のように、目標サーボ圧P* SRVに対するサーボ圧PSRVの偏差であるサーボ圧偏差ΔPSRVに基づくフィードバック電流成分IAFBを含んでおり、通常の制御によれば、ブレーキ力不充分状況においては、サーボ圧偏差ΔPSRVが大きいためフィードバック電流成分IAFBが大きく、その結果、励磁電流IAが大きくされることになる。つまり、ブレーキ力不充分状況では、増圧リニア弁26の開度が相当高くされることになるのである。
ブレーキ力不充分状況において、高圧源制御によって高圧源圧PACCが高められ、その高圧源圧PACCと目標サーボ圧P* SRVとの差が小さくなった若しくは無くなった場合、つまり、ブレーキ力不充分状況から脱した場合には、それまで増圧リニア弁26の開度が高くされていたことに起因して、作動液が、比較的早い流速でレギュレータ24からマスタシリンダ装置16に供給され、その結果、サーボ圧PSRVの増加勾配が増加することになる。この状態となる時間域がグラフに示す第2時間域RE2であり、グラフでは、第1時間域RE1と第2時間域RE2との間で、増加勾配が変化している様子が示されている。
そして、遂には、状況の変化にサーボ圧PSRVの制御が追従し得えず、第3時間域RE3において、サーボ圧PSRVが目標サーボ圧P* SRVを超えてしまい、ブレーキ力Gが必要ブレーキ力G*を超えてしまう。つまり、ブレーキ力Gが過剰になってしまうのである。さらに、グラフでは、制御の発散現象として、サーボ圧PSRVが、乱高下して、ブレーキ力Gも乱高下している様子が示されている。このブレーキ力Gの過剰,発散現象は、言い換えれば、ブレーキ操作に対する「ブレーキ力の過剰応答」であり、第3時間域RE3は、その過剰応答が生じている時間域となる。なお、上述のサーボ圧PSRVの増加勾配が増加する現象は、ブレーキ力Gの過剰応答の予兆と考えることができるため、上記第2時間域RE2は、ブレーキ力Gが必要ブレーキ力G*を超えることが予測される状況、つまり、「ブレーキ力過剰予測状況」となる時間域と考えることができる。
また、図6のグラフでは、目標サーボ圧P* SRVに対応する目標第2パイロット圧P* PLT(実現されるべき第2パイロット圧PPLTである)の経時的変化、実際の第2パイロット圧PPLT,サーボ圧PSRVから推定された第2パイロット圧PPLTの経時的変化も示されている。ちなみに、レギュレータ24における第2パイロット圧PPLTに対するサーボ圧PSRVの比である増圧比は1.1程度であるが、グラフでは、理解を容易にするために、2.0程度であると仮定して示してある。
このグラフでは、誇張して示しているが、第1時間域RE1において、実際の第2パイロット圧PPLTが目標第2パイロット圧P* PLTを超えるという現象が生じている。このパイロット圧過剰現象は、(A)上記増圧比が1を超えていること、(B)第2パイロット室R9への作動液の流入量に比較して、レギュレータ24からマスタシリンダ装置16への作動液の供給量が大きいこと、(C)推定された第2パイロット圧PPLTに基づいて決定されたフィードフォワード電流成分IAFFが、実際の第2パイロット圧PPLTに依拠する差圧作用力FΔPA,スプリングの付勢力FKA,電磁作用力FEA,差圧作用力FΔPAの釣り合いを崩すほどに大きくなっていること等に起因して生じる。この第2パイロット圧PPLTの過剰現象は、上記ブレーキ力の過剰応答を助長するものとなっている。つまり、実際の第2パイロット圧PPLTが高いことで、高圧源圧PACCと目標サーボ圧P* SRVとの差が小さくなった若しくは無くなった場合に、サーボ圧PSRVの増加勾配は、より大きくなるのである。
上記ブレーキ力の過剰応答は、適切なブレーキ力の制御という観点からは、防止することが望ましく、そのことに鑑み、本システムでは、ブレーキ力の過剰応答を防止するための処理(過剰応答防止処理)として、以下に詳しく説明するように、上記ブレーキ力不充分状況、若しくは、上記ブレーキ力過剰予測状況を、特定状況として認定し、その特定状況において、増圧リニア弁26へ供給される励磁電流IAを制限するための処理を行っている。なお、グラフから解るように、ブレーキ力不充分状況を特定状況として、その状況において励磁電流を制限する処理は、ブレーキ力の過剰応答を予防する処理と考えることができ、一方、ブレーキ力過剰予測状況を特定状況として、その状況において励磁電流を制限する処理は、ブレーキ力の過剰応答を回避する処理と考えることができる。
[D]過剰応答を防止するための処理
過剰応答を防止するための処理である過剰応答防止処理は、ブレーキ制御のメインフローにおけるS7において行われる。この処理は、図7にフローチャートを示す過剰応答防止処理ルーチンが実行されることによって行われる。この処理では、車両の運転者の選択,車両製造時の設定等により、4つの処理である第1〜第4処理のうちの1つが実行される。
本ルーチンに従う処理では、上記4つの処理のいずれかの実行に先立って、まず、S51において、メインフローのS4において算出されたサーボ圧偏差ΔPSRVが、設定差ΔPSRV0以下であるかどうかが判断される。この判断は、励磁電流IAの制限がある場合、その制限を解除するかどうかを決定するために行われる。設定差ΔPSRV0は、0に近い値に設定されており、サーボ圧偏差ΔPSRVが設定差ΔPSRV0以下である場合には、ブレーキ力が概ね必要ブレーキ力となって過剰応答が生じる可能性がなくなっていると判断され、励磁電流IAの制限がある場合にその制限を解除すべく、S52において、先に説明した第1制限フラグFR1,第2制限フラグFR2がそれぞれ“0”にリセットされる。つまり、特定状況を脱したか否かを判断するためのブレーキ力指標として、サーボ圧PSRVを採用し、サーボ圧偏差ΔPSRVに基づく判断によって、励磁電流IAの制限が解除されるのである。
サーボ圧偏差ΔPSRVが設定差ΔPSRV0を超えている場合には、S53〜S55において、制御選択設定パラメータSETの値が判断される。このパラメータSETには、それの値として、上記第1〜第4処理に対応して“1”〜“4”の4つの値が準備されている。S53〜S55において、そのパラメータSETの値が“1”であると判断された場合には、S56において、第1処理が、“2”であると判断された場合には、S57において、第2処理が、“3”であると判断された場合には、S58において、第3処理が、“4”であると判断された場合には、S59において、第4処理が、それぞれ実行される。以下に、4つの処理について、個々に説明する。
i)第1処理
S56の第1処理は、簡単に言えば、目標サーボ圧P* SRVと高圧源圧PACCとの関係からブレーキ力不充分状況であるか否かを判断し、ブレーキ力不充分状況である場合に、励磁電流IAを決定するための目標ブレーキ力指標である目標サーボ圧P* SRVを変更することによって、励磁電流IAを制限するための処理である。つまり、ブレーキ力不充分状況おいて励磁電流IAを制限することで、ブレーキ力の過剰応答を予防する処理である。この処理は、図8にフローチャートを示す第1処理サブルーチンが実行されることによって行われる。
第1処理サブルーチンに従う処理では、まず、S61において、高圧源制御において取得されている高圧源圧PACCを基に、目標サーボ圧P* SRVについての設定上限圧P* SRVUが設定される。具体的には、高圧源圧PACCから第1マージン圧PM1を減じた圧力を、設定上限圧P* SRVUとして設定する。次いで、S62において、メインフローのS3において決定された目標サーボ圧P* SRVが、設定上限圧P* SRVUを超えているか否かが判断される。目標サーボ圧P* SRVが設定上限圧P* SRVUを超えている場合には、ブレーキ力不充分状況にあると認定され、S63において、目標サーボ圧P* SRVが、制限調圧器供給圧である制限サーボ圧P’SRVに変更される。具体的には、高圧源圧PACCそのものを設定上限圧として、高圧源圧PACCから第2マージン圧PM2を減じた圧力を、その設定上限圧を超えない制限サーボ圧P’SRVに決定し、目標サーボ圧P* SRVが、その圧力に変更される。ちなみに、第2マージン圧PM1は、第1マージン圧PM2より大きくされている。
S63に続き、S64において、サーボ圧偏差ΔPSRVが、決定された制限サーボ圧P’SRVに基づいて、再算出される。言い換えれば、制限サーボ圧P’SRVに対するサーボ圧PSRVの偏差が、サーボ圧偏差ΔPSRVとされる。再算出されたサーボ圧偏差ΔPSRVは、先に算出されているサーボ圧偏差ΔPSRVよりも小さく、後のS8の増圧弁制御において、再算出されたサーボ圧偏差ΔPSRVに基づいて、励磁電流IA、詳しくは、フィードバック電流成分IAFBが決定されることで、その励磁電流IAは小さくされる。つまり、この第1処理が行われることにより、増圧リニア弁26に供給される励磁電流IAが制限されることになるのである。なお、励磁電流が既に制限されている状態において、目標サーボ圧P* SRVが上記上限圧P* SRVU以下となった場合には、高圧源圧PACCが設定圧以上となったと認定されて、本第1処理において、その制限が解除されることになる。
ii)第2処理
S57の第2処理は、簡単に言えば、ブレーキ力指標として、サーボ圧PSRVを採用し、そのサーボ圧PSRVの増加程度が下限基準を下回る場合に、ブレーキ力不充分状況であると認定し、フィードバック電流成分IAFBを決定するための制御ゲインγAを小さくすることで、励磁電流IAを小さくするための処理である。つまり、ブレーキ力不充分状況おいて励磁電流IAを制限することで、ブレーキ力の過剰応答を予防する処理である。この処理は、図9にフローチャートを示す第2処理サブルーチンが実行されることによって行われる。
図6を参照しつつ先に説明したように、ブレーキ力不充分状況では、実際の第2パイロット圧PPLTが、目標第2パイロット圧P* PLTを上回ることが予想される。実際のパイロット圧PPLTの増加勾配dPPLTは、増圧リニア弁26の開度,高圧源圧PACCから推定することが可能である。すなわち、実際に供給されている励磁電流IAに基づくことにより、第2パイロット室R9に導入される作動液の量が推定できることから、実際の第2パイロット圧PPLTの増加勾配dPPLTが推定できるのである。この推定された第2パイロット圧PPLTの増加勾配dPPLTに基づけば、実現されるべきサーボ圧PSRVの増加勾配dPSRVである理論増加勾配dPSRV0が推定できる。このようにして、推定されたサーボ圧PSRVの理論増加勾配dPSRV0と、実際のサーボ圧PSRVの増加勾配dPSRVを比較することにより、ブレーキ力不充分状況であるか否かが判断できるのである。本第2処理では、そのような理論に基づいて、ブレーキ力不充分状況であるか否かが判断される。
具体的には、まず、S71において、今回以前の本プログラムの実行時のメインフローのS4において取得されたサーボ圧PSRVに基づいて、サーボ圧PSRVの増加程度として、サーボ圧の時間経過に対する増加勾配dPSRVが算出される。次いで、S72において、先回以前の本プログラム実行時において供給されている励磁電流IAを基に、先に説明した理論に従って、目標増加程度としてのサーボ圧PSRVの理論増加勾配dPSRV0が算出され、その算出された理論増加勾配dPSRV0に、設定されている係数δ(1.0以下)を乗じることによって、下限基準としての、下限増加勾配dPSRVLが設定される。次に、S73において、算出されたサーボ圧PSRVの増加勾配dPSRVが下限増加勾配dPSRVLを下回っているか否かが判断される。サーボ圧PSRVの増加勾配dPSRVが下限増加勾配dPSRVLを下回っている場合には、ブレーキ力不充分状況にあると認定され、S74において、第1制限フラグが、“1”にセットされる。一方、サーボ圧PSRVの増加勾配dPSRVが下限増加勾配dPSRVL以上である場合には、S75において、第1制限フラグFR1が、リセットされる。
第1制限フラグFR1が“1”とされた場合には、後のS8の増圧弁制御において、フィーバック電流成分IAFBを決定するための制御ゲインγAが小さくされる。図4に示すフローチャートを参照しつつ具体的に説明すれば、S22において第1制限フラグFR1が“1”とされていると判断された場合に、S32において、制御ゲインγAが、その値が通常ゲインγANORの値より小さい制限ゲインγARSTに変更される。この変更により、決定されるフィードバック電流成分IAFBが小さく決定されることになり、結果として、励磁電流IAが小さく制限されることになる。なお、励磁電流IAが既に制限されている状態において、サーボ圧PSRVの増加勾配dPSRVが下限増加勾配dPSRVL以上となった場合には、ブレーキ力指標の増加程度が設定基準以上になったと認定されて、本第2処理において、その制限が解除されることになる。
iii)第3処理
S58の第3処理は、簡単に言えば、ブレーキ力指標として、推定された第2パイロット圧PPLTを採用し、その第2パイロット圧PPLTの増加程度の変化が、上限基準を上回っている場合に、ブレーキ力過剰予測状況にあると認定し、励磁電流IAを小さくするための処理である。つまり、ブレーキ力過剰予測状況おいて励磁電流IAを制限することで、ブレーキ力の過剰応答を回避する処理である。この処理は、図10にフローチャートを示す第3処理サブルーチンが実行されることによって行われる。
図6を参照しつつ先に説明したように、第1時間域RE1から第2時間域RE2に移行する時点で、ブレーキ力指標の増加程度としてのサーボ圧PSRVの増加勾配dPSRVが、大きくなるように変化する。つまり、勾配が急になるのである。サーボ圧PSRVから推定された第2パイロット圧PPLTの増加勾配dPPLTも、ブレーキ力指標の増加程度を表すものであり、その増加勾配dPPLTも、同様に、大きくなるように変化する。第3処理では、この第2パイロット圧PPLTの増加勾配dPPLTの変化を捉えて、その増圧勾配dPPLTがある程度大きく変化した場合に、第2時間域RE2に移行したと、すなわち、ブレーキ力過剰予測状況となったと認定する。
具体的には、まず、S81において、第2制限フラグFR2の値に基づいて、既に、励磁電流IAが制限されているか否かが判断される。未だ励磁電流IAが制限されていないと判断された場合にのみ、S82以下の処理が実行される。S82以下の処理の処理では、まず、S82において今回以前の本プログラムの実行時においてメインフローのS6において推定されている第2パイロット圧PPLTに基づいて、現時点での第2パイロット圧PPLTの増加勾配dPPLTが推定される。次に、S83おいて、前回以前の本プログラムの実行時においてメインフローのS6において推定されている第2パイロット圧PPLTに基づいて、現時点以前の増加勾配として、参照増加勾配dPPLTREFが推定され、S84において、参照増加勾配に、係数ε(1.0以上)を乗じることによって、上限基準として、上限勾配dPPLTUが設定される。そして、S85において、現時点での第2パイロット圧PPLTの増加勾配dPPLTが上限勾配dPPLTUを超えているか否かが判断される。現時点での第2パイロット圧PPLTの増加勾配dPPLTが上限勾配dPPLTUを超えている場合には、ブレーキ力過剰予測状況になったと認定され、S86において、第2制限フラグFR2が“1”にセットされる。
第2制限フラグFR2が“1”とされている場合には、後のS8の増圧弁制御において、上述の基礎励磁電流IA0が小さくされる。図4に示すフローチャートを参照しつつ具体的に説明すれば、S26において第2制限フラグFR2が“1”とされていると判断された場合に、S33において、上述の基礎励磁電流IA0が、減少電流IRDCだけ減じられ、その小さくされた基礎励磁電流IA0に基づく励磁電流IAが、増圧リニア弁26に供給される。この結果として、励磁電流IAが小さく制限されることになる。なお、第3処理を行う場合、励磁電流IAの制限の解除は、第3処理においては行われず、先に説明したS51,S52の処理によって行われる。つまり、サーボ圧偏差ΔPSRVが設定差ΔPSRV0以下となった場合に、ブレーキ力が概ね必要ブレーキ力となって過剰応答が生じる可能性がなくなっていると判断され、励磁電流IAの制限が解除されることになる。
iv)第4処理
S59の第4処理は、本システムが第2パイロット圧センサ144を備える場合に有効な処理である。図6を参照しつつ先に説明したように、ブレーキ力不十分状況にある第1時間域RE1においては、実際の第2パイロット圧PPLTは、推定された目標第2パイロット圧P* PLTを超える可能性がある。第4処理は、そのことに鑑みて行われる処理であり、簡単に言えば、ブレーキ力指標として、第2パイロット圧センサ144の検出によって取得された実際の第2パイロット圧PPLTを採用し、その第2パイロット圧PPLTの増加程度が、上限基準とされた目標第2パイロット圧P* PLTを超える程度である場合に、ブレーキ力不十分状況にあると認定し、励磁電流IAを小さくするための処理である。つまり、ブレーキ力不十分状況において励磁電流IAを制限することで、ブレーキ力の過剰応答を予防する処理である。この処理は、図11にフローチャートを示す第4処理サブルーチンが実行されることによって行われる。
具体的には、第4処理サブルーチンに従う処理では、まず、S91において、第2パイロット圧センサ144の検出値に基づいて、実際の第2パイロット圧PPLTが取得される。次のS92において、メインフローのS4において取得されたサーボ圧PSRVに基づいて、レギュレータ24の上記増圧比に従って、目標第2パイロット圧P* PLTが推定される。続く、S93において、実際の第2パイロット圧PPLTが目標第2パイロット圧P* PLTを超えているか否かが判断される。実際の第2パイロット圧PPLTが目標第2パイロット圧P* PLTを超えている場合には、ブレーキ力不十分状況にあると認定され、S94において、第2制限フラグFR2が、“1”にセットされる。一方、実際のパイロット圧PPLTが目標第2パイロット圧P* PLT以下である場合には、S95において、第2制限フラグFR2がリセットされる。
第3制御に関連して説明したように、第2制限フラグFR2が“1”とされている場合には、後のS8の増圧弁制御において、上述の基礎励磁電流IA0が、減少電流IRDCだけ減じられ、励磁電流IAが小さく制限されることになる。なお、励磁電流IAが既に制限されている状態において、実際の第2パイロット圧PPLTが目標第2パイロット圧P* PLT以下となった場合には、ブレーキ力指標の増加程度が設定基準以下になったと認定されて、本第4処理において、その制限が解除されることになる。ちなみに、本第4処理では、実際の第2パイロット圧PPLTをブレーキ力指標として採用して、ブレーキ力不十分状況の認定を行っており、その認定は、比較的正確なものとなる。
[E]ブレーキ電子制御ユニットの機能構成
本液圧ブレーキシステムの制御装置であるブレーキECU30は、上記ブレーキ制御プログラムの実行によって機能する各種の機能部を有すると考えることができる。具体的には、図12のブロック図に示すように、高圧源制御部150,目標ブレーキ力指標決定部152,励磁電流決定部154,励磁電流制限部156を備えている。
具体的には、高圧源制御部150は、高圧源装置22の制御を司る機能部であり、ブレーキ制御プログラムのS1の高圧源制御の実行によって実現される。目標ブレーキ力指標決定部152は、主に、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28の励磁電流を決定するためのブレーキ力指標である目標サーボ圧を、必要ブレーキ力に基づいて決定する機能部であり、主に、ブレーキ制御プログラムのS3の実行によって実現される。励磁電流決定部154は、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28に供給される励磁電流を決定して、それら増圧リニア弁26,減圧リニア弁28を制御する機能部であり、ブレーキ制御プログラムのS8の増圧弁制御,S9の減圧弁制御の実行によって実現される。そして、励磁電流制限部156は、特定状況であることを認定し、特定状況にある場合に、増圧リニア弁26に供給される励磁電流を制限する機能部であり、ブレーキ制御プログラムのS7の過剰応答防止処理の実行によって実現される。
≪変形例≫
上記実施例の液圧ブレーキシステムは、レギュレータ24からの供給圧であるサーボ圧がマスタシリンダ装置16に導入され、マスタシリンダ装置24からの供給圧であるマスタ圧がブレーキ装置12に導入されるように構成されている。請求可能発明の適用は、そのような構成のシステムに限定されない。例えば、レギュレータからのサーボ圧がマスタシリンダ装置を介さずに、直接ブレーキ装置に導入されるような構成のシステムであってもよい。
上記実施例の液圧ブレーキシステムは、増圧リニア弁26,減圧リニア弁28に供給される励磁電流を決定するためのブレーキ力指標として、調圧器供給圧であるサーボ圧を採用しているが、請求可能発明の液圧ブレーキシステムは、調圧器のパイロット圧(例えば、レギュレータ24の第2パイロット圧)を採用してもよい。つまり、必要ブレーキ力に基づいて、目標パイロット圧を決定し、その目標パイロット圧に対するパイロット圧の偏差に基づいて励磁電流を決定するような構成とすることも可能である。
上記実施例の液圧ブレーキシステムでは、過剰応答防止処理として、第1〜第4処理という4つの処理が実行可能とされていたが、必ずしもそれら4つの処理を実行可能でなくてもよく、例えば、それら4つの処理のうちのいずれか1以上の処理を実行可能とされるように構成されてもよい。
上記実施例の液圧ブレーキシステムでは、過剰応答を防止するための励磁電流の制限の手法として、上記第1処理において、目標ブレーキ力指標の低減を、上記第2処理において、制御ゲインの低減を、第3処理および第4処理において、基礎励磁電流の低減を、それぞれ採用している。そのような手法の採用に代え、第1処理において、制御ゲインの低減と基礎励磁電流の低減とのいずれかを、第2処理において、目標ブレーキ力指標の低減と基礎励磁電流の低減とのいずれかを、第3処理および第4処理において、目標ブレーキ力指標の低減と制御ゲインの低減とのいずれかを採用してもよい。
上記実施例の液圧ブレーキシステムでは、特定状況を認定するためのブレーキ力指標として、第1処理において、目標サーボ圧を、第2処理において、サーボ圧を、第3処理において、推定されたパイロット圧を、第4処理において、実際のパイロット圧を採用している。そのような採用に代え、第1〜第4処理の各々おいて、採用されているブレーキ力指標以外のブレーキ力指標を採用してもよい。具体的には、例えば、第2処理においてパイロット圧を、第3処理において、サーボ圧を、それぞれ採用することも可能である。
10:車輪 12:ブレーキ装置 14:ブレーキペダル〔ブレーキ操作部材〕 16:マスタシリンダ装置 20:リザーバ〔低圧源〕 22:高圧源装置 24:レギュレータ〔調圧器〕 26:電磁式増圧リニア弁[SAR] 28:電磁式減圧リニア弁[SLR] 30:ブレーキ電子制御ユニット(ブレーキECU)[ECU]〔制御装置〕 40:ハウジング 42:第1加圧ピストン〔加圧ピストン〕 44:第2加圧ピストン〔加圧ピストン〕 46:入力ピストン 48:ストロークシミュレータ機構〔反力付与機構〕 50:区画部 52:前方室 54:後方室 56:鍔 58:本体部 60:突出部 62:開口 96:高圧源圧センサ[PACC] 100:ハウジング 102:第1ピストン〔可動体〕 104:第2ピストン〔可動体〕 106:弁座環 108:弁ロッド 110:ピストン本体 112:プランジャ 114:スプリング 116:スプリング 118:スプリング〔弁機構〕 120:弁機構 130:大気圧通路〔低圧源連通路〕 134:サーボ圧センサ[PSRV] 144:第2パイロット圧センサ [PPLT] 150:高圧源制御部 152:目標ブレーキ指標決定部 154:励磁電流決定部 156:励磁電流制限部 R1:第1加圧室〔加圧室〕 R2:第2加圧室〔加圧室〕 R3:ピストン間室 R4:入力室 R5:対向室 R6:反力室 R7:バッファ室 R8:第1パイロット室 R9:第2パイロット室〔パイロット室〕 R10:調圧室 R11:高圧室

Claims (11)

  1. 車両に設けられる液圧ブレーキシステムであって、
    (a)車輪に設けられて自身に供給される作動液の圧力に応じた大きさのブレーキ力を発生させるブレーキ装置と、(b)高圧源圧となる高圧の作動液を供給する高圧源装置と、(c)パイロット室を有し、前記高圧源装置から供給される作動液を、そのパイロット室の作動液の圧力であるパイロット圧に応じた圧力に調整して供給する調圧器と、(d)前記高圧源装置と前記パイロット室との間に配設され、自身に供給される励磁電流に依存してパイロット圧を増圧するための電磁式の増圧リニア弁と、(e)当該液圧ブレーキシステムの制御を司る制御装置とを備えて、前記調圧器から供給される作動液の圧力である調圧器供給圧に依存した大きさのブレーキ力を、前記ブレーキ装置が発生させるように構成され、
    前記制御装置が、
    前記ブレーキ装置が発生させるべきブレーキ力である必要ブレーキ力に基づいて、ブレーキ力を指標するブレーキ力指標の当該液圧ブレーキシステムの制御における目標として、目標ブレーキ力指標を決定する目標ブレーキ力指標決定部と、
    前記目標ブレーキ力指標に対するブレーキ力指標の偏差に基づいて、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を決定する励磁電流決定部と、
    ブレーキ力が前記必要ブレーキ力にまで増加し得ない状況と、ブレーキ力が前記必要ブレーキ力を超えることが予測される状況との少なくとも一方である特定状況において、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を制限する励磁電流制限部と
    を有する液圧ブレーキシステム。
  2. 前記目標ブレーキ力指標決定部が、ブレーキ力指標として調圧器供給圧を採用し、目標ブレーキ力指標として目標調圧器供給圧を決定するように構成されるとともに、前記励磁電流決定部が、前記目標調圧器供給圧に対する調圧器供給圧の偏差に基づいて、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を決定するように構成されており、
    前記励磁電流制限部が、
    前記特定状況において、前記目標調圧器供給圧を、高圧源圧以下に設定された設定上限圧を超えない制限調圧器供給圧に変更し、前記励磁電流決定部に、その制限調圧器供給圧に対する調圧器供給圧の偏差に基づいて、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を決定させることで、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を制限するように構成された請求項1に記載の液圧ブレーキシステム。
  3. 前記励磁電流決定部が、前記目標ブレーキ力指標に対するブレーキ力指標の偏差に制御ゲインを乗じて決定される成分を含むように励磁電流を決定するように構成されており、
    前記励磁電流制限部が、
    前記特定状況において、前記制御ゲインをそれの値よりも値が小さい制限ゲインに変更し、前記励磁電流決定部に、前記目標ブレーキ力指標に対するブレーキ力指標の偏差にその制限ゲインを乗じて決定される成分を含むように励磁電流を決定させることで、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を制限するように構成された請求項1または請求項2に記載の液圧ブレーキシステム。
  4. 前記励磁電流制限部が、
    ブレーキ力が前記必要ブレーキ力にまで増加し得ない状況を前記特定状況として、その状況において、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を制限するように構成された請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
  5. 前記目標ブレーキ力指標決定部が、ブレーキ力指標として調圧器供給圧を採用し、目標ブレーキ力指標として目標調圧器供給圧を決定するように構成されており、
    前記励磁電流制限部が、
    前記目標調圧器供給圧が高圧源圧以下に設定された設定上限圧を超える場合に、ブレーキ力が前記必要ブレーキ力にまで増加し得ない状況にあると判断して、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を制限するように構成された請求項4に記載の液圧ブレーキシステム。
  6. 前記励磁電流制限部が、
    ブレーキ力指標の増加程度が下限基準を下回っている場合、若しくは、上限基準を上回っている場合に、ブレーキ力が前記必要ブレーキ力にまで増加し得ない状況にあると判断して、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を制限するように構成された請求項4または請求項5に記載の液圧ブレーキシステム。
  7. 前記励磁電流制限部が、
    ブレーキ力が前記必要ブレーキ力を超えることが予測される状況を前記特定状況として、その状況において、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を制限するように構成された請求項1ないし請求項6のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
  8. 前記励磁電流制限部が、
    ブレーキ力指標の増加程度の変化が上限基準を超えて大きくなった場合に、ブレーキ力が前記必要ブレーキ力を超えることが予測される状況にあると判断して、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を制限するように構成された請求項7に記載の液圧ブレーキシステム。
  9. 前記励磁電流制限部が、
    前記特定状況を脱した場合に、前記増圧リニア弁に供給する励磁電流を制限を解除するように構成された請求項1ないし請求項8のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
  10. 当該液圧ブレーキシステムが、
    ブレーキ操作部材が連結され、前記調圧器から調圧器供給圧の作動液を受け入れ、前記ブレーキ操作部材に加えられる運転者の操作力に依存せずに前記受け入れた作動液の圧力に依存して加圧した作動液を前記ブレーキ装置に供給するマスタシリンダ装置を有し、
    そのマスタシリンダ装置から前記ブレーキ装置に供給される作動液の圧力であるマスタ圧に依存した大きさのブレーキ力を、前記ブレーキ装置が発生させるように構成された請求項1ないし請求項9のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
  11. 前記調圧器が、
    ハウジングと、そのハウジング内においてそのハウジングの軸線方向に移動可能に配設された可動体と、前記ハウジング内において前記軸線方向においてその可動体と並んで配設された弁機構と、低圧源に連通する低圧源連通路とを有し、前記可動体の前記弁機構の側に、当該調圧器から供給される調圧器供給圧の作動液が収容される調圧室が、前記可動体の前記弁機構とは反対側に、前記パイロット室が、前記調圧室とで前記弁機構を挟むようにして、前記高圧源装置から供給される高圧源圧の作動液を受け入れる高圧室が、それぞれ形成され、
    前記調圧器供給圧と前記パイロット圧との差圧に依拠して前記可動体に作用する差圧作用力によって前記可動体が前記軸線方向に移動させられ、その可動体が前記弁機構に向かう方向に移動させられた場合に、その可動体が前記弁機構と係合して、その弁機構によって、前記調圧室と前記高圧室とが連通させられるとともに、前記調圧室と前記低圧源通路との連通が遮断され、前記可動体が前記弁機構から離れる方向に移動させられた場合に、その可動体のその弁機構との係合が解除されて、前記調圧室と前記高圧室との連通が遮断されるともに、前記調圧室と前記低圧源通路とが連通するように構成された請求項1ないし請求項10のいずれか1つに記載の液圧ブレーキシステム。
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