A.第1実施例:
A1.微粒子センサの構成:
図1は、本発明の一実施例としての微粒子センサを搭載する車両の構成、および微粒子センサを制御するセンサ駆動部の構成を示す概略図である。図1(A)に示すように、車両490は、内燃機関400と、燃料供給部410と、車両制御部420とを備える。内燃機関400は、車両490の動力源であり、例えばディーゼルエンジンによって構成することができる。
燃料供給部410は、燃料配管411を介して内燃機関400に燃料を供給する。内燃機関400には、排ガス配管415が接続されており、内燃機関400からの排ガスは、排ガス配管415を介して車両490の外部へと排出される。排ガス配管415には、排ガス中に含まれる煤などの微粒子を除去するためのフィルタ装置416(例えば、DPF(Diesel particulate filter):ディーゼル微粒子捕集フィルタ)が設けられている。
車両制御部420は、マイクロコンピュータによって構成され、車両490全体の運転状態を制御する。具体的には、車両制御部420は、燃料供給部410からの燃料の供給量や、内燃機関400の燃焼状態などを制御する。
車両490には、さらに、図1(B)に示す微粒子センサ100と、センサ駆動部110とが搭載されている。微粒子センサ100は、排ガス配管415のフィルタ装置416より下流側に取り付けられており(図1(A)参照)、ケーブル120を介してセンサ駆動部110と接続されている。
微粒子センサ100は、その構成要素であるセンサユニット300の一部およびプロテクタ501が排ガス配管415の内部に挿入された状態で、排ガス配管415の外表面に取り付けられる。より具体的には、微粒子センサ100は、取付用ボス417を介して、排ガス配管415の外表面に取り付けられる。微粒子センサ100は、断面が矩形形状をなす四角柱状のセンサユニット300が、微粒子センサ100の取付部位における排ガス配管415の延伸方向DLに対してほぼ垂直に排ガス配管415内に挿入されるように、取り付けられる。
センサユニット300には、詳細は後述するが、排ガスをセンサユニット300に取り込むための流入孔45と、取り込んだ排ガスをセンサユニット300から排出するための排出孔35とが設けられている。センサユニット300が排ガス配管415に取り付けられた状態において、流入孔45と排出孔35とは、排ガス配管415内に位置する。センサユニット300は、流入孔45を介して内部に取り込んだ排ガス中に含まれる微粒子の量に基づいて、排ガス中に含まれる微粒子の濃度を測定する。なお、流入孔45は、本実施の形態の微粒子センサ100では、排ガス配管415内における排ガスの流れの下流側に配される。排ガスの流れの向きを図1において矢印Fで示す。
微粒子センサ100の後端側(センサユニット300とは逆の側)には、複数の配線121,122,124,125,126や空気供給管123などを内部に一体的に収容したケーブル120が接続されている。ケーブル120の他端は、センサ駆動部110に接続されている。ケーブル120は可撓性を有しているため、比較的自由に車両490内に配設することが可能である。
センサ駆動部110は、微粒子センサ100を駆動し、微粒子センサ100の検出信号に基づき排ガス中の微粒子量を検出する。排ガス中の微粒子量は、例えば、微粒子の表面積を基準とする量として評価することもでき、微粒子の質量を基準とする量として評価することもできる。あるいは、排ガス中の微粒子量は、単位体積量の排ガス中の微粒子の個数を基準とする量として評価することもできる。センサ駆動部110は、排ガス配管415から離隔して設置されている。
センサ駆動部110は、センサ制御部111と、電気回路部112と、エア供給部113とを備えている。センサ制御部111は、マイクロコンピュータによって構成される。センサ制御部111は、電気回路部112と、エア供給部113とを制御する。また、センサ制御部111は、微粒子センサ100を用いて検出した排ガス中の微粒子量を車両制御部420(図1(A)参照)に送信する。
電気回路部112は、ケーブル120に収容されている絶縁電線121,122,125,126を介して微粒子センサ100を駆動するための電力を供給する。また、電気回路部112は、同じくケーブル120に収容されている信号線124を介して微粒子センサ100のセンサ信号を受信する。そして、電気回路部112は、そのセンサ信号に基づく計測結果をセンサ制御部111に送信する。
エア供給部113は、ポンプ(図示は省略)を備えている。エア供給部113は、センサ制御部111からの指令に基づき、微粒子センサ100の駆動の際に用いられる高圧空気を、ケーブル120内の空気供給管123を介して、微粒子センサ100の内部に供給する。なお、微粒子センサ100は、空気供給管123を介して、他の種類の圧縮気体の供給を受けるものとしてもよい。
図1(A)に示す車両制御部420は、センサ制御部111(図1(B)参照)から送信された排ガス中の微粒子量が、所定量より多い場合には、フィルタ装置416の劣化や異常を車両490の運転手に警告する態様とことができる。また、車両制御部420は、センサ制御部111の検出値に基づき、内燃機関400における燃焼状態を調整する態様とすることもできる。
図2および図3はそれぞれ、90度、異なる方向から見た微粒子センサ100の概略断面図である。図4は微粒子センサ100の分解斜視図である。図2〜図4には、センサユニット300側(単に「先端側」とも呼ぶ)を紙面下側とし、ケーブル120側(単に「後端側」とも呼ぶ)を紙面上側として、微粒子センサ100が図示されている。また、図2〜図4には、微粒子センサ100の仮想中心軸CLを一点鎖線で示す。参考のために、微粒子センサ100が排ガス配管415に取り付けられた際の、排ガス配管415および取付用ボス417の断面の位置を、図2において破線で示す。また、排ガスの流れ方向を示す矢印F(図1(B)参照)を示す。
図2〜図4には、さらに、各図が対応するように三次元の各軸を示す矢印X,Y,Zを示す。具体的には、矢印Zは、微粒子センサ100の仮想中心軸CLに沿った方向を示しており、紙面下方向を示している。矢印Yは、流入孔45が開口している向きとは逆の向きを示している。矢印Yは、図2では紙面右方向を示し、図3では紙面手前方向を示し、図4では紙面左奥の方向を示している。矢印Xは、矢印Zに垂直でかつ流入孔45の開口面に沿った方向を示している。矢印Xは、図2では、紙面手前方向を示し、図3では紙面左方向を示し、図4では紙面右奥の方向を示している。
なお、以下では、微粒子センサ100の構成を順に説明する。しかし、その説明の順番は、微粒子センサ100の製造工程において各構成が取り付けられる順番を示すものではない。
微粒子センサ100は、絶縁セラミックで設けられた略四角柱状のセンサユニット300を有する(図2および図3の下段、ならびに図4の左中段参照)。センサユニット300は、略四角形の穴を有する円柱状の滑石(滑石リング)506に通されている。そして、滑石506は主体金具503内に配置されると共にセンサユニット300の所定位置に配置された状態で仮想中心軸CLの先端側に向かって圧縮されることにより、主体金具503の内周面とセンサユニット300の外周面との間で圧縮充填され、センサユニット300を主体金具503に対して気密に保持する。滑石506に対して先端側の位置には、略四角形の穴を有する円柱状の第1のセラミックリング505が配される。センサユニット300のうち、第1のセラミックリング505よりも前に位置する部分300eが、排ガス配管415内を流通する排ガスに接触する部分である(図2の下段参照)。
一方、滑石506に対して後端側の位置には、略四角形の穴を有する段付き円柱状の第2のセラミックリング507が配される。第1のセラミックリング505および第2のセラミックリング507は、アルミナ等の絶縁性セラミックで構成される。センサユニット300は、滑石506、第1のセラミックリング505、および第2のセラミックリング507に設けられた略四角形の穴を貫通している。
第1のセラミックリング505、センサユニット300を保持する滑石506、第2のセラミックリング507は、主体金具503(図2および図3の下段、ならびに図4の右下部参照)に設けられた、先端に向かうにつれて順に細くなる段付き円柱状の穴の中に配される。第1のセラミックリング505と主体金具503の穴内の段の間には、環状の板パッキン504が配される。
主体金具503は、後端に向かうにつれて順に外径が大きくなる略3段の段付き円柱状の外形を有しており、2番目と3番目の円柱の間には、3番目の円柱よりもさらに半径方向に大きい六角柱状のフランジが設けられている。また、2番目に細い円柱の外側には主体金具503、ひいては微粒子センサ100を取付用ボス417(図2の下段参照)にねじ込んで装着するためのネジ部が形成されている。主体金具503の段付き円柱状の穴の軸は、主体金具503の段付き円柱状の外形の軸と一致する。主体金具503は、導電性を有し、また、取付用ボス417も導電性を有するため、主体金具503は、車両490のグランドであるシャーシグランドの電位を有する。
主体金具503の先端側の最も細い円柱状の外側には、先端側に底を有する円筒状のプロテクタ501がはめ込まれる。センサユニット300の先端は、主体金具503よりも先端側に突出しており、円筒状のプロテクタ501内部に位置する(図2および図3の下段参照)。プロテクタ501は、プロテクタ501の円筒の中心軸が、仮想中心軸CLと一致するように配される。
プロテクタ501の側壁には、複数の通気孔が設けられている。また、プロテクタ501の底にも、円筒の中心軸上に、通気孔が設けられている。これらの通気孔は、微粒子センサ100の検出対象である煤を伴って排ガスが流通できる大きさおよび形状で設けられている。主体金具503の2番目に細い円柱状の外側部分であって、六角柱状のフランジとの境界部分には、環状のガスケット502が取り付けられる。
一方、主体金具503の段付き穴内の第2のセラミックリング507(図2および図3の中段、ならびに図4の右上部参照)の後端側には、円弧状の線パッキン508が配される。線パッキン508、第1のセラミックリング505、滑石506、および第2のセラミックリング507は、主体金具503の段付き円柱状の穴の中に配される。そして、主体金具503のうち3番目の円柱の後端側を径方向内側に向けてかしめることにより、主体金具503の内側に、板パッキン504、第1のセラミックリング505、滑石506、第2のセラミックリング507、および、線パッキン508が固定され、その結果、センサユニット300が主体金具503に対して固定される。
センサユニット300の後端側には、セパレータ510が配される(図2および図3の中段、ならびに図4の左下部参照)。セパレータ510の先端側には、略四角柱状の凹部が設けられており、センサユニット300の後端は、この凹部にはめ込まれる。セパレータ510は、略十字形状の断面を有する柱状の部材である。セパレータ510は、その柱の軸が、微粒子センサ100の仮想中心軸CLと一致するように配される。セパレータ510には、その柱の軸に一致するように貫通孔510hが設けられている。貫通孔510hは、先端側において、前述の略四角柱状の凹部と接続されている。また、セパレータ510の十字状の外形のうち、前述の略四角柱状の凹部が設けられている先端側の部分は、後端側よりも厚く設けられている。
セパレータ510の略十字形の断面によって仕切られる四つの空間には、それぞれケーブル120の絶縁電線121,122,125,126(図1(B)参照)の先端部分が配される。ケーブル120の先端部分においては、ケーブル120の外側の構成部分が除かれて、絶縁電線121,122,125,126が露出している。絶縁電線121,122,125,126の先端部分には、それぞれ端子121t,122t,125t,126tが取り付けられている(図2の中段、ならびに図4の左下部参照)。端子121t,122t,125t,126tの先端側は、セパレータ510よりも先端側に位置する。そして、端子121t,122t,125t,126tの先端側は、センサユニット300の表面および裏面に設けられた電極パッドと接触している(図2の中段参照)。
セパレータ510および端子121t,122t,125t,126tは、先端に向かって細くなる段付きの円筒形状を有する内筒509内に収容されている(図2および図3の中段、ならびに図4の左下部参照)。センサユニット300は、内筒509の細い方の円筒を通って、セパレータ510の略四角柱状の凹部内に至っている。内筒509は、導電性を有する。内筒509の先端側の細い方の円筒には、一対の端子124t,124tが取り付けられている(図2の中段、および図4左下部参照)。一対の端子124t,124tは、センサユニット300を両側から挟んでいる。一方の端子124tは、センサユニット300の表面に設けられた電極パッドと接触している。
内筒509は、後端側において、外側の二層を剥離されたケーブル120とかしめられている。図2および図3の上段において、かしめ部509cを示す。内筒509のかしめ部509cは、ケーブル120の外側から数えて3番目の層を貫通し、4番目の層である第1のシールド線SL1(図5参照)と導通している。この第1のシールド線SL1は、電気回路部112と微粒子センサ100との間で信号を送受信するための信号線124(図1(B)参照)として機能する。
ケーブル120と、主体金具503のうちの最も後端側(3番目)の円柱の外側とは、外筒512によって接続されている。すなわち、主体金具503のうちの最も後端側の円柱の外側には、外筒512の先端部がはめ込まれている。そして、外筒512の後端部は、ケーブル120とかしめられている。図2および図3の上段において、かしめ部512cを示す。外筒512の後端部がかしめられている部分において、ケーブル120は、外層を剥離されていない。外筒512のかしめ部512cは、ケーブル120の最外層を貫通し、ケーブル120の外側から数えて2番目の層である第2のシールド線SL2(図5参照)と導通している。その結果、この第2のシールド線SL2は、外筒512を介して主体金具503、排ガス配管415等と導通することとなり、シャーシグランドの電位を有することとなる。
図2の上段に示すように、ケーブル120のうち、絶縁電線121,122,125,126が露出している部分の端面120eには、空気供給管123(図1(B)参照)が開口している。その結果、空気供給管123から供給された圧縮空気は、内筒509内に充満し、セパレータ510の貫通孔510hからセンサユニット300に向かって供給される。なお、空気供給管123から供給された圧縮空気は、内筒509の底部の開口から外筒512内部にも充満する。しかし、外筒512内の空間の後端側はグロメット511およびかしめ部512cによってほぼ密封されており、先端側は、主体金具503、ならびに滑石506および板パッキン504によって密封されている。このため、ほとんどの圧縮空気は、セパレータ510の貫通孔510hを介して、センサユニット300に供給される。
図5は、本実施例の微粒子センサ100に接続されるケーブル120の構成を示す概略断面図である。ケーブル120には、第1の絶縁電線121と、第2の絶縁電線122と、第3の絶縁電線125と、第4の絶縁電線126と、空気供給管123と、信号線124とが一体的に収容されている(図1(B)も参照)。このような構成とすることにより、微粒子センサ100に接続される配線および配管の取り回しが容易となる。よって、微粒子センサ100の車両490への搭載が容易になる。
第1の絶縁電線121は、その中心に導電線である芯線1210を有している。芯線1210の外周には樹脂被覆層1211が設けられている。第2〜第4の絶縁電線122,125,126も同様の構成を有する。図5において、芯線1220,1250,1260、ならびに樹脂被覆層1221,1251,1261を示す。
なお、ここでは、図5に示すケーブル120の断面図を使用して第1〜第4の絶縁電線121,122,125,126の構成を説明した。しかし、第1〜第4の絶縁電線121,122,125,126が、ガラス繊維部1201およびその外側の層に覆われておらず、露出している部分(図2および図3の中段、および図4左側上段参照)においても、第1〜第4の絶縁電線121,122,125,126の被覆層は、上述の構成を有する。
図5に示す空気供給管123は、樹脂部材によって中空筒状に構成される。空気供給管123の外周は、補強部材123sによって被覆されている。補強部材123sは、可撓性を有しつつ、樹脂部材よりも高い剛性を有するように構成されていることが好ましく、例えば、金属線を編み組みすることによって構成されるものとすることができる。この補強部材123sによって、温度上昇に伴って空気供給管123を構成する樹脂部材が少なからず軟化した場合であっても、空気圧による空気供給管123の膨張変形が抑制される。すなわち、このケーブル120を用いれば、高温環境下においても微粒子センサ100に、より高い圧力の空気を供給することが可能である。
絶縁電線121,122,125,126と空気供給管123の補強部材123sの外周には、ガラス繊維が充填されたガラス繊維部1201が形成されている。そして、ガラス繊維部1201の外周は、第1のケーブル被覆層1202によって被覆されている。第1のケーブル被覆層1202は、樹脂によって構成することができる。
第1のケーブル被覆層1202の外周には、導電線が編み組された第1のシールド線SL1が配設されている。そして、第1のシールド線SL1の外側には、樹脂によって構成された第2のケーブル被覆層1203が設けられている。さらに、第2のケーブル被覆層1203の外周には、導電線が編み組みされた第2のシールド線SL2が配設されている。そして、第2のシールド線SL2の外周は、樹脂構成された外皮1204によって被覆されている。
第1のシールド線SL1は、前述のように、内筒509を介して、センサユニット300と電気的に接続される(図2および図3の中段参照)。このような構成とすることにより、第1のシールド線SL1は、上述したように、微粒子センサ100のセンサユニット300と電気回路部112とを接続する信号線124として機能する。
一方、第2のシールド線SL2は、前述のように、外筒512と導通する(図2および図3の上段参照)。その結果、第2のシールド線SL2は、それぞれ導電性を有する外筒512、主体金具503、取付用ボス417、排ガス配管415を介して、車両490のシャーシ(図示せず)と電気的に接続される。その結果、第2のシールド線SL2は、接地されている。
図6は、センサユニット300の構成を示す分解斜視図である。図6にも、図2〜図4と対応するように三次元矢印X,Y,Zを図示す。図6において、矢印Xは、図面の右奥の方向を示し、矢印Yは、図面左奥の方向を示し、矢印Zは、微粒子センサ100の仮想中心軸CL(図2〜図4参照)に沿った方向を示している。
センサユニット300の中央には、第1のセラミック層310が設けられている。第1のセラミック層310は、一対の外周部312,314と、外周部312,314の間に配される柱状部316とを備える。
互いに線対称の形状を有する一対の外周部312,314は、センサユニット300内において高圧空気、イオン、および排ガスが流れる流路を定める。流路は、外周部312と外周部314の間に構成される。排ガスなどの流体は、主に、図6の上から下に向かって、より具体的には、微粒子センサ100の後端側から先端側に向かって、流路を流れる。なお、一対の外周部312,314は、略長方形の外形を形成するように形成および配置される。
外周部312と外周部314の間に構成される流路は、センサユニット300の後端側から先端側に向かって順に、流路611〜618である。流路611〜618は、微粒子センサ100の仮想中心軸CLを含むように構成される(図4参照)。なお、流路611〜618は、センサユニット300の「内部」である。
流路611の後端は、セパレータ510の貫通孔510hに接続される(図2の中段、ならびに図4の左下部および右上部参照)。流路611は、セパレータ510の貫通孔510hを介して圧縮空気を受け取る。この圧縮空気は、流路611〜618を流れて、センサユニット300の先端側に設けられた排出孔35(図3の下段参照)から、排ガスとともに排出される。流路618の下流端の開口が排出孔35である。なお、流路611の先端部611nは、流れの方向に沿って流路の断面積が小さくなるように構成されている。すなわち、流路611の先端部611nは、ノズル(オリフィス)として機能する。また、柱状部316は、流路616と流路617の接続部分に配されて、圧縮空気が先端側に向かう直線状の流れを阻害する。柱状部316の機能については、後に説明する。
第1のセラミック層310に対してY軸負の側(以下、「表側」という)には、図6に示すように、放電パターン320とトラップパターン325とが配されている。なお、放電パターン320とトラップパターン325は、実際には第2のセラミック層330のY軸正の側の表面にパターン印刷されることで形成されている。放電パターン320の先端部322は、流路611の先端部611n上に位置し、一方の放電電極として機能する。以下では、放電パターン320の先端部322を「第1の電極322」とも表記する。放電パターン320のうち先端部322以外の部分323は、第1のセラミック層310の外周部312上に配される。
トラップパターン325の先端部326は、捕捉部の一部を構成する流路616,617上に位置し、同様に捕捉部の一部として機能する。トラップパターン325のうち先端部326以外の部分327は、第1のセラミック層310の外周部314上に配される。
放電パターン320とトラップパターン325に対してさらに表側には、第2のセラミック層330が配される。第2のセラミック層330は、Y軸方向に投影したときに外周部312,314が形成する外形と重なるような略長方形の外形を有する。第2のセラミック層330は、混合部として機能する流路612上に、開口330hを有する。開口330hは、排ガスをセンサユニット300内に導入するための流入孔45の一部として機能する(図1(B)、ならびに図2および図3の下段参照)。
放電パターン320とトラップパターン325は、第2のセラミック層330に覆われる。より詳細には、放電パターン320のうち先端部322以外の部分323と、トラップパターン325のうち先端部326以外の部分327とは、第1のセラミック層310と第2のセラミック層330によって挟まれて、それらによって覆われている。その結果、放電パターン320の部分323と、トラップパターン325の部分327とは、流路611〜618において露出しない。また、放電パターン320とトラップパターン325は、センサユニット300の外部において露出しない。なお、実際の製造工程においては、放電パターン320とトラップパターン325は、上述したように、第1のセラミック層310と向かい合う側の第2のセラミック層330の面上に、あらかじめパターン印刷することで設けられている。
第2のセラミック層330に対してさらに表側には、第1のグランドパターン340が配される。第1のグランドパターン340は、第2のセラミック層330の外形より小さい略長方形の外形を有する。第1のグランドパターン340は、Y軸方向に投影したときに第2のセラミック層330の領域に含まれる位置に、配される。
第1のグランドパターン340は、混合部として機能する流路612上に、開口340hを有する。開口340hは、Y軸方向に投影したときに第2のセラミック層330の開口330hと重なる位置に、配される。ただし、開口340hは開口330hよりも大きい。開口340hは、開口330hとともに、流入孔45の一部として機能する(図1(B)、ならびに図2および図3の下段参照)。また、第1のグランドパターン340は、Y軸方向に投影したときに放電パターン320の後端部324と重なる位置に、開口342を備える。そして、第1のグランドパターン340は、Y軸方向に投影したときにトラップパターン325の後端部328と重なる位置に、開口344を備える。
第1のグランドパターン340に対してさらに表側には、第3のセラミック層350が配される。第3のセラミック層350は、Y軸方向に投影したときに第2のセラミック層330と重なる略長方形の外形を有する。第3のセラミック層350は、混合部として機能する流路612上に、開口350hを有する。開口350hは、Y軸方向に投影したときに、第2のセラミック層330の開口330h、第1のグランドパターン340の340hと重なる位置に、配される。ただし、開口350hは開口340hよりも小さい。開口350hは、開口330h,340hとともに、流入孔45の一部として機能する(図1(B)、ならびに図2および図3の下段参照)。
第1のグランドパターン340は、開口340hの端面も含めて、第3のセラミック層350に覆われる。すなわち、第1のグランドパターン340は、第2のセラミック層330と第3のセラミック層350によって挟まれ、それらによって覆われている。その結果、第1のグランドパターン340は、流路611〜618およびセンサユニット300の外部において露出しない。
第2のセラミック層330と、第3のセラミック層350は、Y軸方向に投影したときに放電パターン320の後端部324と重なる位置に、それぞれビア330v1,350v1を2個ずつ備える。ビア330v1は、第2のセラミック層330を貫通している。ビア350v1は、第3のセラミック層350を貫通している。2組のビア330v1,350v1には導電部材が充填されている。それら導電部材は、第1のグランドパターン340と絶縁された状態で当該第1のグランドパターン340の開口342を通って、放電パターン320の後端部324と導通している。さらに、第3のセラミック層350の表側には、ビア350v1と導通するように電極パッド352が設けられる。
電極パッド352には、絶縁電線121に接続された端子121tが接触する(図4左下部参照)。放電パターン320は、絶縁電線121、端子121t、電極パッド352、ビア350v1,330v1を介して、電気回路部112(図1(B)参照)から電力を供給される。
同様に、第2のセラミック層330と、第3のセラミック層350は、Y軸方向に投影したときにトラップパターン325の後端部328と重なる位置に、それぞれビア330v2,350v2を2個ずつ備える。ビア330v2は、第2のセラミック層330を貫通している。ビア350v2は、第3のセラミック層350を貫通している。ビア330v2,350v2には導電部材が充填されている。そして、それら導電部材は、第1のグランドパターン340と絶縁された状態で当該第1のグランドパターン340の開口344を通って、トラップパターン325の後端部328と導通している。第3のセラミック層350の表側には、ビア350v2と導通するように電極パッド354が設けられる。
電極パッド354には、絶縁電線122に接続された端子122tが接触する(図2中段および図4左下部参照)。トラップパターン325は、絶縁電線122、端子122t、電極パッド354、ビア350v2,330v2を介して、電気回路部112(図1(B)参照)から電力を供給される。
さらに、第3のセラミック層350は、Y軸方向に投影したときに第1のグランドパターン340と重なる位置に、2個のビア350v3を備える。ビア350v3は、第3のセラミック層350を貫通している。ビア350v3には導電部材が充填されている。そして、それら導電部材は、第1のグランドパターン340と導通している。第3のセラミック層350の表側には、ビア350v3と導通するように電極パッド356が設けられる。
電極パッド356には、導電性の内筒509等を介して信号線124(第1のシールド線SL1)に接続された端子124tが接触する(図2中段および図4左下部参照)。第1のグランドパターン340の電位は、ビア350v3、電極パッド356、端子124t、内筒509等、信号線124を介して、センサ駆動部110の電気回路部112に伝えられる。
なお、センサユニット300が微粒子センサ100に組み込まれた状態において、電極パッド352,354,356は、主体金具503、および第2のセラミックリング507よりも後端側に位置する(図4の右側中段および図3の中段参照)。このため、電極パッド352,354,356は、排ガスに接触しない。
一方、第1のセラミック層310に対してY軸正の側(以下、「裏側」という)には、図6に示すように、第2のグランドパターン360が配される。第2のグランドパターン360は、Y軸方向に投影したときに第1のセラミック層310の外周部312,314が形成する略長方形の外形より小さい略長方形の外形を有する。第2のグランドパターン360は、Y軸方向に投影したときに外周部312,314が形成する略長方形の外形に含まれる位置に、配される。第2のグランドパターン360は、流路611〜618に対して露出しており、流路611〜618の底面を構成する。
第2のグランドパターン360に対してさらに裏側には、第4のセラミック層370が配される。第4のセラミック層370は、Y軸方向に投影したときに外周部312,314が形成する略長方形の外形と重なる略長方形の外形を有する。
第2のグランドパターン360は、第4のセラミック層370に覆われる。すなわち、第2のグランドパターン360は、第1のセラミック層310と第4のセラミック層370によって挟まれ、それらによって覆われている。その結果、第2のグランドパターン360は、センサユニット300の外部に露出しない。
第4のセラミック層370に対してさらに裏側には、ヒータパターン380が、配されている。ヒータパターン380は、センサユニット300の後端側に両端を有する一続きの電熱線のパターンである。ヒータパターン380は、電力を供給されることにより、第2のグランドパターン360の第2の電極362、トラップパターン325の先端部326、放電パターン320の第1の電極322などを含むセンサユニット300全体を、550〜600度に昇温させる。その結果、第2のグランドパターン360のうち流路611〜618において露出している部分、流路616,617において露出している先端部326、流路613において露出した第1の電極322などに付着した煤は、燃焼される。このため、それらの構成は、煤に覆われることなく長期にわたって性能を発揮できる。
なお、第2のグランドパターン360のうち流路611〜618において露出している部分、流路616,617において露出している先端部326、流路613において露出している第1の電極322は、白金で構成されることが好ましい。そのような態様とすることにより、電極自身の耐酸化性を向上させることができる。
また、第2のセラミック層330のうちの開口330hの外周を構成する部分332(以下「流入孔部332」と表記する)、および第3のセラミック層350のうちの開口350hの外周を構成する部分358(以下「流入孔部358」と表記する)も、ヒータパターン380により、550〜600度に加熱される。流入孔部332,358は、流入孔45の外周を構成する。このため、流入孔45の外周に付着した煤は、ヒータパターン380による加熱によって、燃焼される。このため、流入孔45は、外周に堆積した煤によって塞がれることなく、長期にわたって性能を発揮することができる。
また、第1のセラミック層310の外周部312のうち、流路618の外周を構成する部分313(以下「排出孔部313」と表記する)、第1のセラミック層310の外周部314のうち、流路618の外周を構成する部分315(以下「排出孔部315」と表記する)、第2のセラミック層330のうち、流路618の外周を構成する部分334(以下「排出孔部334」と表記する)、第4のセラミック層370のうち、流路618の外周を構成する部分372(以下「排出孔部372」と表記する)も、ヒータパターン380により、550〜600度に加熱される。排出孔部313,315,334,372は、排出孔35の外周を構成する。このため、排出孔35の外周に付着した煤は、ヒータパターン380による加熱によって、燃焼される。このため、排出孔35は、外周に堆積した煤によって塞がれることなく、長期にわたって性能を発揮することができる。
なお、第2のセラミック層330の流入孔部332、および第3のセラミック層350の流入孔部358が、「課題を解決するための手段」における「流入孔部」に相当する。流入孔部INpを図6に示す。
また、第1のセラミック層310の排出孔部313,315、第2のセラミック層330の排出孔部334、第4のセラミック層370の排出孔部372が、「課題を解決するための手段」における「排出孔部」に相当する。排出孔部EXpを図6に示す。
ヒータパターン380に対してさらに裏側には、第5のセラミック層390が配される。第5のセラミック層390は、Y軸方向に投影したときに第4のセラミック層370と重なる略長方形の外形を有する。ヒータパターン380は、第5のセラミック層390に覆われる。すなわち、ヒータパターン380は、第4のセラミック層370と第5のセラミック層390によって挟まれて、それらによって覆われている。その結果、ヒータパターン380は、流路611〜618およびセンサユニット300外において露出しない。
なお、第1〜第5のセラミック層310,330,350,370,390は、絶縁セラミック(例えば、アルミナ)で構成されている。第1〜第5のセラミック層310,330,350,370,390で構成される構造が、「課題を解決するための手段」における「構造体」に相当する。構造体STを図6に示す。構造体STの外側が、センサユニット300の「外部」である。
第5のセラミック層390は、Y軸方向に投影したときにヒータパターン380の二つの後端部382,384とそれぞれ重なる位置に、それぞれビア390v1,390v2を2個ずつ備える。ビア390v1,390v2は、第5のセラミック層390を貫通している。ビア390v1,390v2には導電部材が充填されている。そして、それら導電部材は、ヒータパターン380の二つの後端部382,384とそれぞれ導通している。さらに、第5のセラミック層390の裏側には、ビア390v1と導通するように電極パッド392が設けられる。そして、第5のセラミック層390の裏側には、同様に、ビア390v2と導通するように電極パッド394が設けられる。
電極パッド392には、絶縁電線125に接続された端子125tが接触する(図4左下部参照)。電極パッド394には、絶縁電線126に接続された端子126tが接触する(図2中段および図4左下部参照)。ヒータパターン380は、絶縁電線125、端子125t、電極パッド392、ビア390v1、ならびに絶縁電線126、端子126t、電極パッド394、ビア390v2を介して、電気回路部112(図1(B)参照)から電力を供給される。
なお、センサユニット300が微粒子センサ100に組み込まれた状態において、電極パッド392,394は、主体金具503第2のセラミックリング507よりも後端側に位置する(図4の右側中段および図3の中段参照)。このため、電極パッド392,394は、排ガスに接触しない。
前述のように、ヒータパターン380によりセンサユニット300全体が550〜600度に昇温される。このため、たとえば、表面に露出している第3のセラミック層350や第5のセラミック層390に、排ガス中に含まれる水滴が付着した場合には、第3のセラミック層350や第5のセラミック層390が熱衝撃によって損傷する可能性がある。
しかし、本実施例においては、センサユニット300は、排ガス管415内においてプロテクタ501に覆われている(図1(B)、図2および図3参照)。また、排ガス配管415内を流通する排ガスに接触する部分300eのうち、排ガス管415の外部に位置する部分は、プロテクタ501および主体金具503の先端部に覆われている。このため、センサユニット300に直接、水滴が付着する可能性は低い。よって、上記のような事態が生じる可能性を低減することができる。なお、プロテクタ501には、通気孔が設けられている。このため、センサユニット300は、プロテクタ501の通気孔を通った排ガスを取り込むことができる。
図6中央に示す第1のセラミック層310は、外周部312,314が形成する略長方形の外形の辺に沿って、Y軸方向に投影したときに第1のグランドパターン340および第2のグランドパターン360と重なる位置に、複数のビア310vを備える。これらの複数のビア310vは、流路611〜618、ならびに放電パターン320、およびトラップパターン325を囲む位置に配される。ビア310vは、第1のセラミック層310を貫通している。
また、第2のセラミック層330は、略長方形の外形の辺に沿って、Y軸方向に投影したときに第1のセラミック層310のビア310vと重なる位置に、複数のビア330v3を備える。ビア330v3は、第2のセラミック層330を貫通している。
第1のセラミック層310のビア310vおよび第2のセラミック層330のビア330v3には、導電部材が充填されている。そして、それら導電部材は、第1のグランドパターン340および第2のグランドパターン360と導通している。
放電パターン320およびトラップパターン325は、第1のグランドパターン340および第2のグランドパターン360、ならびにそれらを結ぶ複数のビア310v,330v3内の導電部材で囲まれている。その結果、第1および第2のグランドパターン340,360、ならびにそれらを結ぶ複数のビア310v,330v3内の導電部材は、放電パターン320およびトラップパターン325に対するファラデーケージとして機能する。すなわち、放電パターン320およびトラップパターン325は外部の電場から遮断される。その結果、放電パターン320およびトラップパターン325は、外部のノイズによって電位を変動されることなく、正確に機能することができる。
A2.微粒子センサの機能:
図7は、排ガス中の微粒子量を検出するためのセンサユニット300の機能を説明するための模式図である。図7においては、排ガス配管415内に挿入されたセンサユニット300の内部構造が模式的に図示されている。ただし、図7においては、特にX軸方向およびY軸方向の各部の配置については、技術の理解を容易にするため、実際の状態が反映されていない。
センサユニット300は、後端側である上流側から、先端側である下流側に向かって、流路611〜618を有する(図6の中央部も参照)。流路611は、空気供給管123から供給される高圧空気を受け取る(図2中段参照)。なお、図7において、センサユニット300が受け取る高圧空気の流れを矢印faで示す。
流路612の流路断面は、図4、図6および図7に示すように、流路611の流路断面よりも大きい。流路612においては、流入孔45(図6の開口330h,340h,350h)から供給される、煤Sを含んだ排ガスと、流路611から供給される高圧空気とが、混合される。なお、図7において、センサユニット300に取り込まれる排ガスの流れを矢印fiで示す。
流路611の先端部611nの流路断面は、下流にいくほど小さくなっており(図6の中央部、図7の上段参照)、先端において、流路611よりも流路の断面積が大きい流路612に接続されている。流路611の先端部611nは、ノズルとして機能する。
流路611の底面には、第2のグランドパターン360が露出している。流路611においては、第2のグランドパターン360のうち流路611の底を形成する電極部分361と、放電パターン320の先端部322(第1の電極322)と、の間で放電が行われる。その放電の結果、陽イオンPIが生成される。陽イオンPIは、高圧空気とともに流路611から流路612に流入する。流路611の先端部611nにおいて生成された陽イオンPIと、流路612において流入孔45から導入された排ガスとは、主に流路612において混合される。その際、一部の陽イオンPIは、排ガス中の煤Sに付着し、煤を帯電させる。そして、帯電した煤、イオンは排ガスと共に、流路613、614、615の順に流れる。なお、以下では、第2のグランドパターン360のうち流路611の先端部611nの底を形成する電極部分361を、「第2の電極361」とも表記する。
流路611と、第2のグランドパターン360の電極部分361(第2の電極361)と、放電パターン320の先端部322(第1の電極322)とは、「課題を解決するための手段」における「イオン発生部」として機能する。イオン発生部IGを図7に示す。
また、流路612は、「課題を解決するための手段」における「帯電部」として機能する。帯電部ECを図7に示す。
流路616,617の流路断面は、流路614,615の流路断面よりも大きい。流路616,617の底面には、前述のように、第2のグランドパターン360が露出している(図6の中央部参照)。流路616,617の上面には、トラップパターン325の先端部326が露出している。そして、流路616,617の接続部分であって、流路の底面としての第2のグランドパターン360と、流路の上面としての先端部326の間には、柱状部316が配されている。流路614および柱状部316は、それぞれ、微粒子センサ100の仮想中心軸CLを含む位置に配される(図6の中央部参照)。
トラップパターン325の先端部326は、絶縁電線122を介して、電気回路部112により第2のグランドパターン360よりも高い電位とされている。このため、陽イオンと、陽イオンの付着により帯電された煤とは、トラップパターン325の先端部326から斥力を受ける。その結果、質量の小さい陽イオンは、底面側に進路を変更され、先端部326と向かい合う第2のグランドパターン360に捕捉される。トラップパターン325の先端部326と向かい合う第2のグランドパターン360の部分を、捕捉領域362として図6および図7に示す。
一方で、帯電された煤は、質量が大きいため、先端部326からの斥力による進路の変更の程度が少ない。このため、帯電された煤は、第2のグランドパターン360の捕捉領域362に捕捉されることなく、そのまま、流路618から排出孔35を経て、センサユニット300外部に排出される。なお、図7において、センサユニット300から排出される排ガスの流れを矢印foで示す。
なお、柱状部316は、流路614の下流側の正面に配される。このため、流路613〜615を通過した排ガスおよび空気は、直接、流路617,618に向かわず、柱状部316によって進路を乱される。よって、本実施例によれば、柱状部316が設けられず、流路613〜615を通過した排ガスおよび空気がそのまま下流の流路617,618に向かう態様に比べて、陽イオンを効率的に捕捉領域362で捕捉することができる。
流路616,617と、柱状部316と、トラップパターン325の先端部326と、第2のグランドパターン360の捕捉領域362とは、「課題を解決するための手段」における「捕捉部」として機能する。捕捉部CPを図7に示す。ただし、狭義には、捕捉領域362が「捕捉部」である。
図8は、センサ制御部111による微粒子センサ100を用いた排ガス中の煤量の検出を説明するためのブロック図である。電気回路部112は、一次側電源部210と、二次側電源部220と、第3電流供給回路223と、電流差計測部230とを備える。一次側電源部210は、センサ制御部111(図1(B)参照)の指令に従って、トランスを介して二次側電源部220に高圧電力を供給する。二次側電源部220は、第1電流供給回路221と第2電流供給回路222を備えている。
第1電流供給回路221は、第2の絶縁電線122を介して、トラップパターン325の先端部326(図6の中段および図7の下段参照)に接続されている。トラップパターン325の先端部326は、第1電流供給回路221から、陽イオンPIに斥力を付与するための電力(100V)を供給される。
第2電流供給回路222は、第1の絶縁電線121を介して放電パターン320の第1の電極322(図6の中段、および図7の上段参照)と接続されている。第1の電極322は、第2電流供給回路222から、コロナ放電のための電力(2〜3kV、100kHz)が供給される。なお、第2電流供給回路222は、定電流回路であり、コロナ放電に際して、例えば5μA程度の一定の電流Iinを放電パターン320の第1の電極322に供給する。
第3電流供給回路223は、第3および第4の絶縁電線125,126を介してヒータパターン380(図6の左上部参照)と接続されている。ヒータパターン380は、第3電流供給回路223から、センサユニット300を昇温させるための電力が供給される。なお、第3電流供給回路223、第3および第4の絶縁電線125,126、ならびにヒータパターン380で構成される回路は、放電パターン320、トラップパターン325、第2のグランドパターン360とは独立に構成される。
電流差計測部230は、信号線124(第1のシールド線SL1)を介して、第2のグランドパターン360の捕捉領域362と電気的に接続されている。また、電流差計測部230は、排ガス配管415または車両490のシャーシを介して接地されている。
第2電流供給回路222から放電パターン320の第1の電極322に入力電流Iinが流れると、コロナ放電により、第1の電極322から第2の電極361を介して第2のグランドパターン360に放電電流Idcが流れるとともに、陽イオンPIが生成される。その陽イオンPIの一部は、図7に示すように、煤Sの帯電に用いられ、煤Sの帯電に用いられなかった残りの陽イオンPIは、第2のグランドパターン360の捕捉領域362において捕捉される。
ここで、煤Sの帯電に用いられてセンサユニット300の外部へと漏洩する陽イオンPIの流れに相当する電流を「漏洩電流Iesc」と呼ぶ。一方、第2のグランドパターン360の捕捉領域362に捕捉される陽イオンPIの流れに相当する電流を「捕捉電流Itrp」と呼ぶ。このとき、コロナ放電によって流れるこれらの4つの電流Iin,Idc,Iesc,Itrpについて、以下の関係式(1)が成り立つ。
Iin=Idc+Itrp+Iesc …(1)
これらの電流のうち、放電電流Idcと、捕捉電流Itrpとは、第2のグランドパターン360に流れる電流である。また、放電パターン320の第1の電極322への入力電流Iinは、前述のように、第2電流供給回路222によって一定に制御されている。従って、入力電流Iinと、第2のグランドパターン360に流れる2つの電流Idc,Itrpの合計との差をとることにより、漏洩電流Iescを得ることができる(下記(2)式)。
Iesc=Iin−(Idc+Itrp)…(2)
第2のグランドパターン360では、入力電流Iinに対して漏洩電流Iescの分が不足する分だけ、その電位が、外部の基準電位(車両490のシャーシの電位)より低下する。これに対し、電流差計測部230からは、その低下分を補償するように、補償電流Icが信号線124に流れる。この補償電流Icは漏洩電流Iescに相当する電流である。電流差計測部230は、この補償電流Icの計測値を漏洩電流Iescの計測値として、センサ制御部111に送信する。
漏洩電流Iescは、煤Sの帯電に用いられた陽イオンPIの量と相関関係を有する電流である(図7の下段参照)。そして、煤Sの帯電に用いられた陽イオンPIの量は、排ガス中の単位流量当たりの煤Sの量と相関関係を有する量である。従って、上記のように漏洩電流Iescを計測(検出)することにより、排ガス中の単位流量当たりの煤Sの量を求めることができる。センサ制御部111は、予め記憶されたマップや演算式などを用いて、電流差計測部230において検出された漏洩電流Iescに対する排ガス中の煤Sの量を取得する。
このように、センサ制御部111は、煤Sの帯電に用いられてセンサユニット300の外部へと漏洩した陽イオンPIの量に応じて変化する第2のグランドパターン360の電位に起因して、第2のグランドパターン360に流れる電流の量に基づいて、排ガス中の煤Sの量を検出する。言い換えれば、センサ制御部111は、煤Sの帯電に用いられず、第2のグランドパターン360の捕捉領域362に捕捉された陽イオンPIの量に応じて変化する第2のグランドパターン360の電位に起因して、第2のグランドパターン360に流れる電流の量に基づいて、排ガス中の煤Sの量を検出する、と表現することもできる。
本実施例の微粒子センサ100によれば、簡易かつ小型な構成で、内燃機関400から排出される排ガスに含まれる煤Sなどの微粒子の量を検出することができる。
B.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
B1.変形例1:
上記実施例においては、ヒータパターン380は、電気回路部112の第3電流供給回路223から電力を供給されて(図8参照)、センサユニット300を550〜600度に昇温させる。しかし、ヒータによって加熱されるセンサユニットの各部の温度は、他の温度であってもよい。すなわち、加熱温度は、ガスに接触する導電部分の素材、ならびにその導電部分に付着する微粒子やその他の不純物の組成に応じて定めることができる。
ただし、加熱温度は、検出対象である微粒子を含むガスが含んでいる、その微粒子を燃焼させることができる温度であることが好ましい。また、加熱温度は、ガスが含み得る検出対象の微粒子以外の不純物であって、各構成に付着しうるものを燃焼させることができる温度であることが、さらに好ましい。
B2.変形例2:
また、上記実施例においては、ヒータパターン380は、センサユニット300全体を550〜600度に昇温させる。しかし、ヒータは、センサユニットの各部をそれぞれ昇温させるための複数のヒータとして設けることもできる。そのような態様においては、たとえば、捕捉部CP(図7の下部参照)を昇温させるための第1のヒータを設けることが好ましい。そして、排出孔部EXp(図6の左下部、および図7の下部参照)を、昇温させるための第2のヒータを設けることが好ましい。さらに、流入孔部INp(図6の左下部、および図7の右上参照)を、昇温させるための第3のヒータを設けることが好ましい。また、第1および第2の電極ならびに捕捉部をそれぞれ昇温させることができるヒータを設けることも好ましい。そして、上記の各ヒータのうちの2以上のヒータが、一つのヒータとして設けられていてもよい。
さらに、上述の各部を昇温させるヒータのうち、一部を備えない態様とすることもできる。たとえば、捕捉部CPを構成する部材のうち捕捉領域362を含む一部のみを昇温させるヒータを備える態様とすることもできる。そして、他のヒータを備えない態様とすることもできる。
B3.変形例3:
上記実施例においては、第2のセラミック層330の流入孔部332は、流入孔45の全周であって、ガスの流通方向の一部を構成する。第3のセラミック層350の流入孔部358は、流入孔45の全周であって、ガスの流通方向の一部を構成する。しかし、ヒータによって昇温される流入孔部は、流入孔の全周の一部を構成するなど、他の態様の一部分を構成するものとすることもできる。また、ヒータによって昇温される流入孔部は、単一の部材で流入孔全体を構成するものとすることもできる。さらに、流入孔を構成する構造のうち、一部がヒータによって昇温されない態様とすることもできる。そのような態様としても、流入孔周辺への微粒子の堆積の進行を遅らせることができる。
B4.変形例4:
上記実施例においては、排出孔部313,315,334,372は、それぞれ、四角柱状の流路618の一側面を構成する。しかし、ヒータによって昇温される排出孔部は、排出孔の全周であってガスの流通方向についての一部を構成するなど、他の態様の一部分を構成するものとすることもできる。また、ヒータによって昇温される排出孔部は、単一の部材で排出孔全体を構成するものとすることもできる。さらに、排出孔を構成する構造のうち、一部がヒータによって昇温されない態様とすることもできる。そのような態様としても、排出孔周辺への微粒子の堆積の進行を遅らせることができる。
B5.変形例5:
上記実施例においては、イオン発生部IGにおいて生じたイオンPIを帯電部ECおよび捕捉部CPへと流入させるために利用される気体は、空気である。しかし、イオンPIを帯電部ECおよびイオン捕捉部CPへと流入させるために利用される気体は、検出対象である微粒子を含まない他の気体とすることもできる。イオンPIを帯電部ECおよび捕捉部CPへと流入させるために利用される気体は、微粒子センサ100が使用される環境下において電離しにくいものであることが好ましい。そして、イオンPIを帯電部ECおよび捕捉部CPへと流入させるために利用される気体は、コロナ放電により、電離されるものであることが、より好ましい。さらに、微粒子センサ100が使用される環境において微粒子センサ100やセンサ駆動部110の周囲に存在する気体であることが好ましい。
B6.変形例6:
上記実施例では、センサユニット300内部の流路611の先端部611nには、ノズルが形成されている。しかし、センサユニット300内の流路にはノズルは形成されていなくともよい。ただし、ノズルを設けることにより、ノズルからの噴流によって下流の空間に負圧を発生させることができる。流入孔45をノズルの下流の空間の壁部に設けることにより、外部から排ガスを効率的に取り込むことができる。
B7.変形例7:
上記実施例では、コロナ放電により放電パターン320の第1の電極322と第2のグランドパターン360の第2の電極361との間で陽イオンを発生させ、トラップパターン325の先端部326にて陽イオンとの間で斥力を生じさせる構成としたが、これに限定されるものではない。例えば、第1の電極322と第2の電極361の正負の接続先を変更し、トラップパターン325の極性を逆にすることで、コロナ放電により陰イオンを発生させ、トラップパターン325の先端部326にて陰イオンとの間で斥力を生じさせる構成を採って被検出ガス中に含まれる微粒子の量を検出するようにしてもよい。
B8.変形例8:
また、上記実施例においては、イオン発生部IGでは、2〜3kVの電圧を、100kHzで断続的に第1の電極322に印加する。しかし、イオンを生成するために電極に電圧を印加する態様は、他の電圧や他の周波数とするなど、他の態様であってもよい。ただし、断続的に電圧が印加されたり、交流電圧が印加される態様において、絶縁電線の被覆の劣化は顕著である。このため、本発明は、そのような態様に適用するとより好適である。
B9.変形例9:
上記実施例においては、放電パターン320のうち先端部322以外の部分323、トラップパターン325のうち先端部326以外の部分327、第1のグランドパターン340、第1のセラミック層310のビア310v、第2のセラミック層330のビア330v3は、絶縁セラミック製の構造体ST内部に設けられている。しかし、検出対象である粒子を含むガスに接触しない部位においては、それらの導電部材は、構造体の外部に露出していてもよい。
B10.変形例10:
上記実施例においては、柱状部316は、流路616と流路617の接続部分おいて、流路の底部から天井部に至る構成として設けられている。しかし、流路においてガスの直線状の流れを阻害し、イオンの捕捉を促すための構成は、他の形状および構造とすることもできる。たとえば、流路においてガスの直線状の流れを阻害する構成としては、流路の底部において、天井部には至らない坂を形成する構成とすることもできる。また、板状の構成を流路内に配することもできる。また、捕捉部CPは、流路においてガスの直線状の流れを阻害する構成を備えない態様とすることもできる。