JP5663609B2 - 画像表示パネルの修正方法 - Google Patents

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Description

本発明は、液晶表示装置等の表示装置を構成する画像表示パネルに関し、詳しくは該画像表示パネルを構成する透明なガラス基板の表面に生じたキズ、ディンプル等の欠陥を修正する方法に関する。
なお、本出願は2011年2月18日に出願された日本国特許出願2011−033148号に基づく優先権を主張しており、その出願の全内容は本明細書中に参照として組み入れられている。
液晶テレビ等の液晶表示装置、プラズマディスプレイ装置、有機ELディスプレイ装置等の表示装置には、その主要構成部材として目的の画像(映像を包含する。以下同じ。)を表示させる透明なガラス基板を有する画像表示パネルが組み込まれている。例えば、携帯電話や液晶テレビのような液晶表示装置に組み込まれる一般的な液晶表示パネルは、前面側と背面側の2枚のガラス基板間に液晶層を挟み込む構造である。
近年の表示装置自体の薄型化の要請から、主要部材である画像表示パネルの薄層化も進んでいる。例えば、液晶テレビに装備される液晶表示パネルを構成するのに用いられる一枚のガラス基板の厚さは1mm以下(例えば100μm〜800μm、典型的には200μm〜700μm)が主流である。また、最近の液晶テレビ等の画像表示装置の大型化にともなって画像表示パネルを構成するガラス基板のサイズも大型化してきている。例えば家庭用液晶テレビのサイズも50インチ以上(例えば70インチクラス)が急速に普及してきており、さらに100インチ以上の大型ガラス基板の要求も高まっている。
このようなガラス基板の大型化且つ薄層化に伴う課題の一つとして、ガラス基板を構成するガラス板に生じる打痕キズやディンプル(即ち予め打突等の外力によって応力を受けたガラスの一部位に生じる凹痕をいう。特に応力を受けた部位をエッチング処理した際に顕在化し易い。以下同じ。)といった欠陥の修正が挙げられる。薄層化や大型化に伴ってガラス自体の物理的強度は低下するため、例えば搬送時において打痕等の衝撃が加わったガラス基板に上記のような欠陥が発生し易くなる。或いはまた、ガラス基板の製造工程においてカレット(微細なガラス破砕物)等の異物がガラス表面に付着し、該異物に圧力が加わることによってもその周囲にキズが発生し得る。また、カレットのような異物自体の存在も光学的な欠陥の理由となり得る。
即ち、かかる欠陥(キズや異物)は、当該部位における偏光を阻害して光透過方向の乱れの原因となり、乱反射を生じさせる虞がある。光の乱反射は画像表示パネル上に輝点や輝線を発生させる原因であり、また、表示される画像の質の低下を招くため好ましくない。しかし、かかる欠陥が生じたガラス基板を全て廃棄していたのでは該基板の製造ラインにおける歩留まりが悪くなり、結果として製造コストの増大や資源(材料)の無駄を招く虞があり好ましくない。
このことに関し、以下の特許文献1〜3には、画像表示パネルを構成するガラス基板に生じた欠陥を修正する方法が記載されている。例えば特許文献1には、画像表示パネルの一種であるプラズマディスプレイパネルの前面板を構成するガラス基板における開口した欠陥部位に修正用ガラスペーストを塗布し、乾燥後にパルスレーザによる加工を施して整形し、さらに加熱・焼成することにより欠陥を修正する方法が記載されている。また、特許文献2には、画像表示パネルの一種である液晶表示パネルを構成するガラス基板の表面に生じた欠陥凹部に透明な樹脂を充填する修正方法が記載されている。また、特許文献3には、ガラス基板に砥粒となる粉体を噴き付けるいわゆる砥粒ブラストを行うことを特徴とする修正方法が記載されている。
日本国特許出願公開2000−294141号公報 国際公開第2009/004886号 国際公開第2009/044576号
しかしながら、上記特許文献1に記載の修正方法では、欠陥部位に塗布したガラスペーストを加工する必要があるうえに、当該塗布物(ガラス)を定着させるために焼成する必要があり、簡易な修正方法とは言い難い。また、薄層化したガラス基板に対して欠陥修正のために再度の焼成処理を行うことは困難である。また、特許文献2や特許文献3に開示される修正方法は一定の成果をあげているが、より簡易な手法によって欠陥のサイズや形状にかかわらず確実に修正を行える方法が望まれている。
そこで本発明は画像表示パネルを構成するガラス基板の欠陥修正に関する上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、上記の各特許文献に記載されているような従来の修正方法と比較して、より簡便に且つ確実に画像表示パネルを構成するガラス基板(特に上記のような厚さの薄いガラス基板)の欠陥を修正可能な方法を提供することである。また、本発明の他の目的は、そのような修正方法により欠陥が修正された画像表示パネルと画像表示パネルを備える液晶表示装置その他の表示装置を製造することである。
上記目的を実現するべく、本発明によって、従来とは異なる形態の画像表示パネル修正方法が提供される。
即ち、ここで開示される方法は、画像表示パネルを構成するガラス基板に存在する欠陥を修正する方法である。そして本修正方法は、
上記ガラス基板に生じた乱反射の要因たる欠陥部位とその周縁に局所的にエッチャントを供給すること、
上記エッチャントを上記基板の欠陥部位とその周縁に保持させることにより該欠陥部位とその周縁において局所的にエッチングを行い、乱反射の消失又は緩和を実現すること、および、
上記エッチャントを上記供給した部分から除去すること;
を包含する。
本明細書ならびに特許請求の範囲の記載において「画像表示パネルを構成するガラス基板」とは、用途に応じて画像表示パネルの表面に求められるレベルの光透過性(透明性)を有するガラス材から構成された基板をいう。
また、本明細書ならびに特許請求の範囲の記載において「欠陥」とは、ガラス基板にイレギュラーに生じ得る物理的(機械的)な欠損若しくは変形をいう。「欠陥部位」とは、当該欠陥が生じている部位をいう。従って、画像表示パネルを構成するガラス基板を取り扱っている際にイレギュラーに生じ得るキズやひび(例えば打痕によるキズやひび)或いは上記ディンプル(凹痕)のような欠損若しくは変形は、ここでいう欠陥に包含される典型例である。
また、本明細書ならびに特許請求の範囲の記載において「エッチャント」とは、エッチング液と同義であり、ガラス基板を構成するガラス材の一部を化学反応(腐食)により除去する(即ちエッチングする)ために用いられる液剤をいう。かかるエッチャントの好適な一態様として、フッ酸(HF:Hydrogen Fluoride)、バッファードフッ酸(Buffered Hydrogen Fluoride)等のフッ素を主成分とするエッチャント(以下「フッ素系エッチャント」ともいう。)が挙げられる。
ここで開示される上記構成の画像表示パネル修正方法では、ガラス基板に生じた乱反射の要因たる欠陥部位とその周縁にエッチャントを供給することにより、当該欠陥部位及びその周縁において局所的にエッチングを行うことを特徴とする。
ガラス基板を構成するガラス材(ガラス板)の一部が機械的な外力を受けることにより生じた欠陥部位(キズ、ひび、ディンプル等)は、ガラス材それ自体が物理的にダメージを受けているため、その周囲の非欠陥部位よりもエッチャントによる化学反応(即ちエッチング)を受け易く、選択的にエッチング処理することができる。このため、本構成の修正方法によると、比較的単純な処理であるにもかかわらず、局所的に供給したエッチャントの作用によって、乱反射の原因となるような角やコーナー部が鋭くなった或いは尖った凸部を有する欠陥部位の構造を、乱反射の原因とならなくなる程度まで緩やかな形状に修正することができる。具体的には欠陥部位における角やコーナー部を緩やかにしたり、尖った凸部や複雑なクラックを消失させたり若しくはより滑らかにするような修正(典型的には欠陥部位のフラット化)をエッチャントの供給によって容易に行うことができる。
従って、ここで開示される修正方法によると、局所的なエッチャント供給という比較的簡便な処理によって光学的な不具合(典型的には乱反射に基づく輝点や輝線の発生)を引き起こす要因となる欠陥部位を容易に修正することができる。
ここで開示される修正方法の好ましい一つの態様では、上記エッチングを行う過程において、上記基板の欠陥部位とその周縁から予め供給しておいたエッチャントを除去するとともに新たなエッチャントを該部位とその周縁に供給するエッチャント交換作業が少なくとも1回行われる。
かかる態様の修正方法では、修正対象である欠陥部位とその周縁に供給したエッチャントを少なくとも1回交換することにより、最初に供給したエッチャントが長時間放置されることによる蒸発によって当該エッチャントに含まれる成分が結晶化して析出(光学的不良の要因になり得る。)することを防止する。さらには新鮮なエッチャントの補給によって、より効率よく修正を行うことができる。
また、ここで開示される修正方法の好ましい他の一態様では、上記エッチャントの供給前に、上記欠陥部位の少なくとも一部を予め機械的に削り取る処理を行い、該処理後の当該欠陥凹部とその周縁に局所的に上記エッチャントを供給する。
かかる態様の修正方法では、予め機械的な削り取り処理(例えばドリル等によるメカニカルな局所的研削及び/又は切削)を施すことにより、欠陥部位の表面構造の単純化(例えばエッチャントが浸入し得ないようなクラックの除去)を行い、その後のエッチャントによる処理を容易ならしめることができる。従って、本態様の修正方法によると、より効果的に修正を行うことができる。
また、ここで開示される修正方法の好ましい他の一態様では、上記エッチャントの供給前に、上記基板の欠陥部位の周縁の少なくとも一部を有色の水性インクによりマーキングしておき、上記基板の欠陥部位とその周縁であって上記マーキングした部位を包含する周縁に上記エッチャントを供給する。
このようなマーキングを行うことにより、微小な欠陥部位であってもその位置を作業者が容易に視認することができる。また、水性インクを使用することにより、作業後は水洗によって容易にガラス基板上から洗い流すことができる。また、ガラス基板上に供給したエッチャント中に水性インク(即ちインク中の色素成分である顔料若しくは染料)が分散してエッチャントの供給位置を容易に視認することもできる。また、処理後にエッチャント(即ち有色化されたエッチャント)が処理部位から完全に除去されたか否かをガラス基板上の着色度合いから容易に判別することも可能である。このため、本態様の修正方法によると、作業部位の視認性を向上させ、より容易にエッチャントによる処理を行うことができる。好ましくは、色素成分として少なくとも一種の顔料を含む水性インクを使用する。顔料はエッチャント中での分散性がよく、また、水洗によってガラス基板上から容易に除去することができる。
ここで開示される修正方法の好適な一態様では、上記エッチャントを上記供給した部分から除去した後、上記エッチングを行った欠陥部位の上に偏光板を配置し、乱反射の有無又は程度を評価することを更に包含する。
このように、修正対象である欠陥部位について、上記エッチャント処理後の乱反射の有無とその程度を光学的に評価する(典型的にはCCDカメラ(Charge Coupled Device Camera)等を用いてコンピュータにより解析・評価する)ことにより、修正の可否と追加修正の必要の有無とを容易に判断することができる。このため、本態様の修正方法によると、正しく修正されたかどうかの判定が容易に行われ、修正の不備を防止して確実に修正されたガラス基板を効率よく作製することができる。
従って、本発明によると、ここで開示される何れかの態様の修正方法によって少なくとも一カ所の欠陥部位を修正することを特徴とする、画像表示パネルを構成するガラス基板の製造方法が提供される。具体的には、ここで開示される画像表示パネル用ガラス基板の製造方法は、用意されたガラス基板の表面に乱反射の要因たる欠陥部位が生じているか否かを確認し、該欠陥部位が確認された場合は該欠陥部位に対してここで開示されるいずれかの修正方法を実施することを特徴とする。
また、好ましい一態様では、上記欠陥部位に対してここで開示されるいずれかの修正方法が実施された後に、ガラス基板を構成するガラス全体の薄板化のためのエッチングが行われることを特徴とする。
また、本発明によると、該製造方法により得られたガラス基板を用いて構築された液晶表示パネルその他の画像表示パネルが提供される。
図1は、本発明によって提供される画像表示パネルの一例である液晶表示パネルを模式的に示す正面図である。 図2は、図1におけるII−II線断面図である。 図3Aは、一実施形態に係る本発明の修正方法の一工程を説明する図である。 図3Bは、一実施形態に係る本発明の修正方法の一工程を説明する図である。 図3Cは、一実施形態に係る本発明の修正方法の一工程を説明する図である。 図4Aは、一実施形態に係る本発明の修正方法の一工程を説明する図である。 図4Bは、一実施形態に係る本発明の修正方法の一工程を説明する図である。 図5Aは、一実施形態に係る本発明の修正方法の一工程を説明する図である。 図5Bは、一実施形態に係る本発明の修正方法の一工程を説明する図である。 図5Cは、一実施形態に係る本発明の修正方法の一工程を説明する図である。 図5Dは、一実施形態に係る本発明の修正方法の一工程を説明する図である。 図5Eは、一実施形態に係る本発明の修正方法の一工程を説明する図である。 図5Fは、一実施形態に係る本発明の修正方法の一工程を説明する図である。 図5Gは、一実施形態に係る本発明の修正方法の一工程を説明する図である。 図6Aは、一実施形態に係る本発明の修正方法の一工程を説明する図である。 図6Bは、一実施形態に係る本発明の修正方法の一工程を説明する図である。 図6Cは、一実施形態に係る本発明の修正方法の一工程を説明する図である。 図7Aは、一実施形態に係る本発明のガラス基板製造方法の一工程を説明する図である。 図7Bは、一実施形態に係る本発明のガラス基板製造方法の一工程を説明する図である。 図7Cは、一実施形態に係る本発明のガラス基板製造方法の一工程を説明する図である。 図8Aは、一実施形態に係る本発明の修正方法の一工程を説明する図である。 図8Bは、一実施形態に係る本発明の修正方法の一工程を説明する図である。 図8Cは、一実施形態に係る本発明の修正方法の一工程を説明する図である。 図8Dは、一実施形態に係る本発明の修正方法の一工程を説明する図である。 図8Eは、一実施形態に係る本発明の修正方法の一工程を説明する図である。 図8Fは、一実施形態に係る本発明の修正方法の一工程を説明する図である。 図9Aは、修正後のガラス基板における修正箇所の検査の一工程を説明する図である。 図9Bは、修正後のガラス基板における修正箇所の検査の一工程を説明する図である。 図10Aは、一実施例に係る欠陥部位の修正前の状態を示す光学顕微鏡写真である。 図10Bは、一実施例に係る欠陥部位の修正後の状態を示す光学顕微鏡写真である。
以下、図面を参照しながら、本発明の好適ないくつかの実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば本発明の修正方法の実施形態)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、画像表示パネルの詳細な構造や該パネルに装着される回路構成等)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
ここで開示される修正方法は、画像表示パネルに装備されるガラス基板(即ち所望するクオリティレベルの画像を表示可能な光透過性(透明性)を有するガラス基板の表面に生じた欠陥とその周縁に局所的に適当なエッチャントを添加(供給)することにより、当該欠陥を修正する方法である。従って、かかるエッチャントによる修正を行い得る限りにおいて、本発明の適用対象とする画像表示パネル(具体的には透明なガラス基板)の種類や形態は限定されない。
好適な適用対象の例として、液晶表示パネル、プラズマディスプレイパネル、有機ELディスプレイパネル等が挙げられる。これらパネル類の表面を構成する透明なガラス基板(典型的には視聴者に面する前面側を構成する透明な基板)に生じた光学的な欠陥(例えば乱反射に起因する輝点や輝線)を修正するために本発明の修正方法が採用され得る。例えば、上記表示パネル類を構成するガラス基板としては、一般的なホウケイ酸ガラスやソーダ・ライムガラスの他、低アルカリ含有ガラス、無アルカリ含有ガラス、シリカガラス等からなるガラス基板が挙げられる。
ここで開示される修正方法に使用されるエッチャントは、この種のガラス材(例えば液晶表示パネル用ガラス基板を構成するガラス板)に対してエッチングを行うのに従来から使用されているものであればよく、特に制限はない。フッ酸(HF)、フッ化アンモニウム(NHF)、テトラフルオロホウ酸(HBF)等からなるフッ素系エッチャントを好適に使用することができる。特にHFにNHFやHBFを適当な配合比で混合して調製されたバッファードフッ酸を好適に用いることができる。また、バッファードフッ酸におけるHF濃度を増減することによって、腐食(エッチング)の強度を調整することができる。例えば、フッ酸(典型的には50質量%)とフッ化アンモニウム水溶液(典型的には40質量%)とを混合してHF濃度が1〜5質量%程度となるように調製したバッファードフッ酸を好適に使用することができる。
或いはまた、主成分がフッ酸以外であるもの、例えばアルカリ成分(典型的にはNaOHやKOH)を主成分とするエッチャントを使用することができる。
以下、図面を参照しつつ本発明の好ましい実施形態を説明する。図1は、本発明の修正方法を好適に適用し得る画像表示パネルを備える表示装置の一例である液晶テレビ1を示す斜視図である。即ち、図示される液晶テレビ1或いは図示しない他の表示装置(例えばパソコンのディスプレイ装置)には、画像表示パネルとしての液晶表示パネル10が備えられている。イレギュラーな欠陥が発生する部位や数はパネル毎にまちまちであるため、かかる画像表示パネル10に生じた欠陥を大がかりな修正装置を使用して行うことは効率的ではなく、また困難でもある。
従って、作業者が手作業で容易に行える本発明の修正方法は、個々のパネルに対応することが可能であり、この種のパネル10のガラス基板12,14(図2参照)に生じるイレギュラーな光学的な欠陥を修正するのに特に適する修正方法である。以下、画像表示パネルの典型例として液晶テレビ用に設計された液晶表示パネル10を対象に本発明の修正方法を具体的に説明するが、この種の画像表示パネル用ガラス基板に修正対象ガラス基板を限定することを意図したものではない。
図2は、図1に示す液晶表示装置(液晶テレビ)1に装備される矩形状の液晶表示パネル10の断面図(図1のII−II線断面図)である。
図示するように、液晶表示パネル10は、大まかにいって、対向する一対のガラス基板12,14、即ち前面側ガラス基板(CF基板)12と背面側ガラス基板(TFT基板)14とを備えており、その間には所定のシール剤によって形成された枠状のシール部18で囲まれた内部空間に液晶層16が形成されている。特に限定されないが、この種の表示装置に装備される液晶表示パネル10では、上記一対のガラス基板12,14それぞれのガラス基板(ガラス板)の厚さは概ね1mm以下、例えば100μm〜800μm、典型的には200μm〜700μm程度である。なお、かかる液晶表示パネル10には、上記主要構成部材(一対のガラス基材等)の他に、種々の回路やチップ類が形成或いは付設されているが、本発明の説明には何ら必要がないので詳細な説明や図示は省略する。
図1及び図2に示すように、このような画像表示パネル(液晶表示パネル)10のガラス基板(図では前面側ガラス基板)12の表面には、ガラス基板の製造過程(例えばマザーガラス板からの切り出し工程時やガラス基板の搬送時)において、基板(ガラス面)表面に種々のイレギュラーな欠陥D1,D2が生じ得る。例えば図に示すような、直径が200μm以下(典型的には直径100μm以下、例えば直径1〜50μm程度)の凹部であるディンプルD1、或いは打痕によって生じた幅が上記サイズ程度のキズ(微細なクラック)D2が生じ得る。このような微視的な欠陥であるが乱反射の要因となり得る光学的欠陥部位を修正するのに本発明に係る修正方法は好適に採用され得る。
次に、図面を参照しつつ、ここで開示される修正方法の具体的なプロセスについて詳細に説明する。なお、以下に説明する図面のうちの幾つかは液晶表示パネル(ガラス基板)を模式的に断面で示しているが、本発明の説明に関して液晶層16やシール部18の図示は全く必要がないため省略している。また、以下の説明では、液晶表示パネル10の前面側ガラス基板(CF基板)12に生じた欠陥を修正する具体例を説明するが、背面側ガラス基板14に生じた欠陥(ディンプル、打痕キズ等)についても同様の手法をとることができる。
ここで開示される修正方法は、エッチャントを使用した手作業で種々のサイズ、形状の欠陥を修正する方法であり、その実施のタイミングは特定の時期に限定されない。典型的には、構築された画像表示パネル(ここでは液晶表示パネル)10を所定の場所に搬送した後に行われる。例えば、製品検査工程の一部として本発明の修正方法を行うことができる。かかる方法の大まかな流れを図3A〜3Cに示す。
即ち、パネル検査(典型的には構築した液晶表示パネル10に所定の偏光板を貼り付ける前の検査)においてカメラを用いた自動検査(輝度計)にてガラス基板12上の異常輝点若しくは輝線(即ちキズ等が生じている欠陥部位D3)を検出する(図3A)。次いで、該欠陥部位(キズ等)D3が完全に包囲されるように該欠陥部位D3とその周縁にエッチャント20を添加(供給)する(図3B)。かかる局所的に供給したエッチャント20によるエッチングによって、欠陥部位D3において乱反射の原因となる角(コーナー部)D31や突起部(凸部)D32を乱反射の原因とならなくなる程度まで緩やかな形状に修正することができる(図3C)。即ち、角若しくはコーナー部D31を緩やかにしたり突起部(凸部)D32を消失若しくはより滑らかに変形させることができる。
具体的には、図3B〜3Cならびに図4A〜4Bに示すように、エッチャント20の局所的な供給(図3B、図4A)によって機械的な外力が加えられてガラスがダメージを受けているガラス基板12上の欠陥部位D3において選択的にエッチングが進行するが、同時にエッチャント20が供給されている欠陥部位D3の周縁部分E3においてもある程度のエッチングが進行する。これにより、図3C、図4Bに示すように、欠陥部位D3、その周縁部E3、更にその外方の非エッチャント供給部分F3の順に段階的且つ緩やかにエッチング深さが異なるガラス断面形状を形成することができる。換言すれば、欠陥部位D3の構造を乱反射の原因とならなくなる程度まで緩やかな形状に修正することができる。
また、液晶表示パネルの場合は、図示されるような段階的にエッチング深さが緩やかに異なる断面形状に欠陥部位D3が修正されたことにより、図示しない偏光板即ち偏光フィルムをガラス基板12上に貼り付ける際に、複雑な形状の欠陥部位D3において気泡が挟み込まれるのを防止し、また、偏光板の接着剤(接着層)の追従性を阻害せず、ガラス基板12上に偏光板を密着させることができる。これにより、乱反射の発生を防ぎ若しくは緩和し、光学的な不具合(輝点や輝線)の発生を防止することができる。
このように、ここで開示される修正方法によると、局所的なエッチャント20の供給という比較的簡便な処理によって光学的な不具合を引き起こす要因となる欠陥部位D3を容易に修正することができる。
なお、特に限定するものではないが、修正後の欠陥部位(凹部)D3(図4B参照)の深さの約2倍又はそれ以上の厚さの接着層(接着材により構成されている層、即ち糊厚さ)を備える偏光板を採用すると、修正後の欠陥部位(凹部)D3の深さによって当該偏光板の接着剤(接着層)の追従性が阻害されず、ガラス基板12上に偏光板を良好に密着させることができるため、好ましい。
次に、図5A〜5Gを参照しつつ具体的な処理手順を説明する。先ず、パネル検査においてガラス基板12上の異常輝点若しくは輝線(即ちキズ等が生じている欠陥部位D5)を検出する(図5A)。好ましくは、後のエッチャント処理をより効率よく行うため、検出した欠陥部位D5及びその周縁部に例えばイソプロピルアルコール(IPA)等のアルコール系溶剤を供給して予め脱脂清掃しておくとよい。
次いで、図5Bに示すように、適量のエッチャント(典型的にはバッファードフッ酸のようなフッ素系エッチャント)をスポイド50等により対象部位に添加する。そして、図示しないスキージ等を用いてエッチャント20を欠陥部位D5全体とその周縁に広げる(図5C)。かかるエッチャント20を供給した状態で大気圧、室温条件下、適当な時間(典型的には3分〜15分、例えば5分〜8分)放置し、エッチングを進行させる。これにより、光学的な不具合を引き起こす要因となる欠陥部位D5を容易に修正することができる。
エッチャントの長時間放置に伴う溶媒蒸発による結晶の析出を防止し且つ新鮮なエッチャントを供給するためにエッチャントの交換を少なくとも1回行うことが好ましい。具体的には所定時間の放置後、純水を十分浸み込ませたウエス等でエッチャントを拭き取り(図5D)、次いで最初のエッチャント処理(図5B〜5C)と同様、適量のエッチャントをスポイド50等により対象部位に添加し(図5E)、欠陥部位D5全体とその周縁に広げ、適当時間放置してエッチングを継続する(図5F)。その後、純水を十分浸み込ませたウエス等でエッチャントを十分に拭き取ること(若しくは局所的な水洗)により処理を終える(図5G)。
好ましくは、図6A〜6Cに示すように、欠陥部位D6の周縁の少なくとも一部に有色の水性インク(好ましくは少なくとも一種のコバルトブルー等の無機顔料を含む水性インク)32によりマーキングしておき(図6A)、そのマーキング部位30を包含するようにしてエッチャント20を供給する(図6B)。
かかるマーキングにより、欠陥部位D6の位置を作業者が容易に視認することが可能となり、さらに図6Cに示すように、ガラス基板12上に供給したエッチャント20中に水性インク32中の色素成分が分散するため、エッチャント20の供給位置を容易に視認することもでき、エッチング処理後に着色したエッチャント20が処理部位から完全に除去されたか否かをガラス基板12上の着色度合いから容易に判別することもできる。このため、作業性が向上する。なお、水性インク32は水洗(例えば上記ウエスによる拭き取り)によってエッチャント20とともに容易にガラス基板12上から除去する(例えばウエスで拭き取る)ことができる。なお、以降の処理手順は上記図5A〜5Gで説明したものと同様であるので重複した説明は省略する。
上述したように、ここで開示される修正方法によってディンプルやキズ(クラック)のような乱反射の要因となる欠陥部位を容易に修正することができる。また、かかる修正により、選択的にエッチングが進行し易い欠陥部位(例えば物理的衝撃を受けて発生したクラックの周縁部)が除去されるため(具体的には欠陥部位の形状がフラット化、即ち微細な凸部や鋭角の角(コーナー部)或いはクラック等が除去されて欠陥部位全体が緩やか(滑らか)な凹部になるため)、修正後のガラス基板のガラス全体を薄板化のためにエッチングした際にも、当該欠陥部位が極端にエッチングされてその周囲から急激に窪むことを防止することができる。
即ち、図7A〜7Cに示すように、欠陥部位D7(図7A)に対して本発明の修正方法を実施して欠陥部位D7の形状を緩やかな(フラットな)凹部D71に修正できるため(図7B)、その後に、ガラス基板12の全体にわたって薄板化のためのエッチング処理を行っても周囲に対して大きな窪み(変曲点)が凹部D71周縁部に生じることはなく、全体にほぼフラットにガラスの薄板化を図ることができる(図7C)。
次に、ここで開示される修正方法に関し、上述したエッチング処理の前に機械的な削り取り処理(即ち研削や切削)を行う態様について図8A〜8Fを参照しつつ説明する。
図8Aに示すような、エッチャントが浸入し難い微細なクラックD81が存在するような複雑な欠陥部位D8では、エッチャントによるエッチング処理を行う前に、予め機械的に研削及び/又は切削処理を行うことが好ましい。即ち、図8Bに示すように、欠陥部位D8に対して研削若しくは切削用の工具90、例えばガラス研削/研磨用の砥石車やガラス切削用ドリル(ここではドリル90)を使用して微細なクラックD81が除去される程度に切削及び/又は研削処理を行う(図8C)。また、図8Dに示すように、工具90を用いて行った削り取り処理によって得られた凹部D83の角(コーナー部)D82が更なる乱反射の原因となるような鋭角になっている場合には、エッチャント供給前に当該角(コーナー部)D82を削って緩やかになるように更なる削り取り処理を追加してもよい。
そして、図8Eに示すような、上記工具90を用いた機械的な削り取り処理によって微細なクラックD81や鋭い角D82が除去された凹部D83に対して上述したようなエッチング処理を施し(図5A〜5G等参照)、凹部D83を更にフラット化する(図8F)。かかる一連の処理工程により、微細なクラックD81が存在するような複雑な欠陥部位D8であっても、乱反射の発生を防止する修正を容易に行うことができる。
また、図8Fに示すように、局所的なエッチング処理によって機械的な削り取り処理後の鋭角な変曲点となり得る角部(コーナー部)D82(図8E等参照)が緩やかな形状に修正されたことにより、図示しない偏光板即ち偏光フィルムをガラス基板12上に貼り付ける際に欠陥部位D8(修正後の凹部D83)において気泡が挟み込まれるのを防止し、また、偏光板の接着剤(接着層)の追従性を阻害せず、ガラス基板12上に偏光板を密着させることができる。これにより、乱反射の発生を防ぎ若しくは緩和し、光学的な不具合(輝点や輝線)の発生を防止することができる。
以上、ここで開示される修正方法に関する幾つかの好適な実施形態を図面を参照しつつ説明したが、上述した局所的なエッチング処理後に当該エッチングの状況を視覚的に確認し、修正対象の欠陥部位において乱反射が正しく消失しているかどうか或いは乱反射の程度がどの程度低減しているかを検査し、評価することが特に好ましい。
好ましくは、予めバックライト装置80と所定の偏光板70とを配置した作業台上において当該バックライト装置80上の偏光板70の上に修正対象の液晶表示パネル10(ガラス基板12,14)を載置し、所定の欠陥部位D9とその周縁にエッチャント20を供給して、上述したような局所的エッチング処理を行う(図9A)。修正後、処理対象の欠陥部位D9に検査用の偏光板(典型的にはパッチ状の偏光フィルム)72を貼り付け、バックライト装置80から偏光板70を透過して対象パネル10(ガラス基板12)に照射された光が当該修正後の欠陥部位D9において乱反射されるか否かの検査を行う。具体的には、図9Bに示すように、検査用偏光板72の上方に乱反射の有無を検出可能なCCDカメラ40を配置する。また、CCDカメラ40は、図示しない画像解析装置(コンピュータ)に接続されている。
かかる構成により、バックライト装置80からの入射光が当該修正後の欠陥部位D9において乱反射するか否か(或いは乱反射する場合はその光強度)を目視若しくは画像解析装置(コンピュータ)でのデータ解析で検出、判定することができる。
かかる構成によると、エッチャント20を供給して行う局所的エッチング処理の効果を迅速に判定し得るとともに、効果が不十分(即ち修正が不十分)である場合には、追加の修正処理を迅速に開始することができる。従って、より効率のよい修正を行うことができる。
以上、図面に基づいて本発明の修正方法の好適な幾つかの実施形態を詳細に説明したが、実施例として液晶テレビに装備される液晶表示パネルを構成するガラス基板を対象にして上記図5A〜5Gならびに図6A〜6Cを参照しつつ説明した修正方法を実施した。具体的には、厚さ700μm程度のガラス基板(CF基板とTFT基板)を備える液晶表示パネルを使用し、打痕によって幅(開口幅)が5μm〜10μm程度の微細な溝状のキズを形成した。また、エッチャントとしてHF濃度が4.6質量%、NHF濃度が36.4質量%であるバッファードフッ酸を使用した。
而して、修正対象であるキズの周縁に市販の無機顔料入り水性インクでマーキングを施した後、当該キズのできている部位(欠陥部位)とその周縁にあるマーキング部位とを包含する領域に上記バッファードフッ酸を供給し、スキージを用いてキズ全体を包含する領域にエッチャントを広げた。そうして約8分間のエッチング処理を25℃、大気圧下で行った。その後、純水を十分に浸み込ませたウエスを用いて上記水性インク(顔料)を含むエッチャントを拭き取った。
こうして修正処理されたパネルの修正部分(欠陥部位)について、当該処理の前と後においてパネル背面側(キズの反対側の面)から光を入射し、その入射光が修正部分(欠陥部位)において乱反射するか否かを光学顕微鏡で観察した。結果を図10A(処理前)ならびに10B(処理後)に示す。図中の矢印は、当該観察によって乱反射の認められた箇所を指している。
これら顕微鏡写真の比較から明らかなように、ここで開示される修正方法を実施することにより、光学的に問題のないレベル(即ち典型的には視認されるレベルの乱反射がない状態)まで各欠陥が修正できることが確認された。また、上記プロセスからも明らかなように、ここで開示される修正方法は、煩雑で神経を使う繊細な操作を行うことなく、手作業による簡易な処理によってディンプルや打痕キズのようなパネル毎にイレギュラーに生じる欠陥を、個々のパネル毎に容易に修正することができる。
本発明によると、液晶表示パネルその他の画像表示パネルの製造における歩留まりの悪化を抑制し、結果として製造コスト増や資源(材料)の無駄を省いて、効率よく、目的とする画像表示パネル(例えば液晶表示パネル)ならびに該パネルを備える表示装置(例えば液晶表示装置)を製造することができる。
1 液晶テレビ(表示装置)
10 液晶表示パネル(画像表示パネル)
12 前面側ガラス基板
14 背面側ガラス基板
16 液晶層
20 エッチャント
30 マーキング部位
32 水性インク
40 カメラ
70 偏光板
72 検査用偏光板
80 バックライト装置
90 工具(ドリル)
D1、D2、D3、D5、D6、D7、D8、D9 欠陥部位

Claims (6)

  1. 画像表示パネルを構成するガラス基板に存在する欠陥を修正する方法であって:
    前記ガラス基板に生じた乱反射の要因たる欠陥部位とその周縁に局所的にエッチャントを供給すること;
    前記エッチャントを前記基板の欠陥部位とその周縁に保持させることにより該欠陥部位とその周縁において局所的にエッチングを行い、前記乱反射の消失又は緩和を実現すること;
    前記エッチャントを前記供給した部分から除去すること;
    を包含し、
    前記エッチングを行う過程において、前記基板の欠陥部位とその周縁から予め供給しておいたエッチャントを除去するとともに新たなエッチャントを該部位とその周縁に供給するエッチャント交換作業が少なくとも1回行われ
    前記エッチャントの供給前に、前記基板の欠陥部位の周縁の少なくとも一部を有色の水性インクによりマーキングしておき、前記基板の欠陥部位とその周縁であって前記マーキングした部位を包含する周縁に前記エッチャントを供給する、修正方法。
  2. 前記水性インクは、少なくとも一種の顔料を含む、請求項に記載の修正方法。
  3. 前記エッチャントとして、フッ素を主成分とするエッチャントを使用する、請求項1又は2に記載の修正方法。
  4. 前記エッチャントの供給前に、前記欠陥部位の少なくとも一部を予め機械的に削り取る処理を行い、該処理後の当該欠陥凹部とその周縁に局所的に前記エッチャントを供給する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の修正方法。
  5. 前記エッチャントを前記供給した部分から除去した後、前記エッチングを行った欠陥部位の上に偏光板を配置し、乱反射の有無又は程度を評価することを更に包含する、請求項1〜のいずれか一項に記載の修正方法。
  6. 画像表示パネルを構成するガラス基板の製造方法であって、用意された前記ガラス基板の表面に乱反射の要因たる欠陥部位が生じているか否かを確認し、該欠陥部位が確認された場合は該欠陥部位に対して請求項1〜のいずれか一項に記載の修正方法を実施し、
    前記欠陥部位に対して前記修正方法が実施された後に、ガラス基板を構成するガラス全体の薄板化のためのエッチングを行うことを特徴とする、画像表示パネル用ガラス基板の製造方法。
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