JP5663313B2 - ストロムライシン1と特異的に反応するモノクローナル抗体 - Google Patents
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Description
1.免疫原性抗原の調製
2.免疫原性抗原による動物の免疫
3.ミエローマ細胞(骨髄腫細胞)の調製
4.抗体産生細胞とミエローマ細胞の細胞融合
5.ハイブリドーマ(融合細胞)の選択及びモノクローン化
6.モノクローナル抗体の製造
7.ストロムライシン2及び3と交差反応しないモノクローナル抗体の選抜
抗原としては、例えば、正常ヒト皮膚線維芽細胞NB1RGB(RCB222)培養上清より、Obataら,Clin.Chim.Acta,211,59−72,1992の方法に従い精製されて得られたストロムライシン1を用いることができる。こうして得られたストロムライシン1は、さらに免疫原性コンジュゲート等にしてもよいが、そのまま適当なアジュバントと混合して動物を免疫するのに使用できる。
動物を免疫するには、例えば村松繁ら編,実験生物学講座14,免疫生物学,丸善株式会社,昭和60年、日本生化学会編,続生化学実験講座5,免疫生化学研究法,東京化学同人,1986年、日本生化学会編,新生化学実験講座12,分子免疫学III,抗原・抗体・補体,東京化学同人,1992年等に記載の方法に準じて行うことができる。抗原と共に用いられるアジュバントとしては、例えばフロイント完全アジュバント、リビ(Ribi)アジュバント、百日咳ワクチン、BCG、リピッドA、リポソーム、水酸化アルミニウム、シリカ等が挙げられる。免疫は、例えばBALB/c等のマウスをはじめとする動物を使用して行われる。抗原の投与量は、例えばマウスに対して約1〜400μg/動物で、一般には宿主動物の腹腔内や皮下に注射し、以後1〜4週間おきに、好ましくは1〜2週間ごとに腹腔内、皮下、静脈内あるいは筋肉内に追加免疫を2〜10回程度反復して行う。免疫用のマウスとしてはBALB/c系マウスの他、BALB/c系マウスと他系マウスとのF1マウス等を用いることもできる。必要に応じ、抗体価測定系を調製し、抗体価を測定して動物免疫の程度を確認できる。
細胞融合に使用される無限増殖可能株(腫瘍細胞株)としては免疫グロブリンを産生しない細胞株から選ぶことができ、例えばP3−NS−1−Ag4−1(NS−1、Kohlerら,Eur.J.Immunol.,6,511〜519,1976)、SP2/0−Ag14(SP2、Shulmanら,Nature,276,269〜270,1978)、マウスミエローマMOPC−21セルライン由来のP3−X63−Ag8−U1(P3U1、Yeltonら,Current topics in Microbiol.and Immunol.,81,1〜7,1978)、P3−X63−Ag8(X63、Kohlerら,Nature,256,495〜497,1975)、P3−X63−Ag8.653(653、Kearneyら,J.Immunol.,123,1548〜1550,1979)等を用いることができる。8−アザグアニン耐性のマウスミエローマ細胞株はダルベッコ変法イーグル培地(DMEM培地)、RPMI−164
0培地等の細胞培地に、例えばペニシリン、アミカシン等の抗生物質、牛胎児血清(FCS)等を加え、さらに8−アザグアニン(例えば5〜45μg/ml)を加えた培地で継代されるが、細胞融合の2〜5日前に正常培地で継代して所要数の細胞株を用意することができる。また使用細胞株は、凍結保存株を約37℃で完全に解凍したのちRPMI−1640培地等の正常培地で3回以上洗浄後、正常培地で培養して所要数の細胞株を用意したものであってもよい。
上記2.の工程に従い免疫された動物、例えばマウスは最終免疫後、2〜5日後にその脾臓が摘出され、脾細胞懸濁液を得る。脾細胞の他、生体各所のリンパ節細胞を得て、それを細胞融合に使用することもできる。こうして得られた脾細胞懸濁液と上記3.の工程に従い得られたミエローマ細胞株を、例えば最小必須培地(MEM培地)、DMEM培地、RPMI−1640培地等の細胞培地中に置き、細胞融合剤、例えばポリエチレングリコールを添加する。細胞融合剤としては、この他各種当該分野で知られたものを用いることができ、例えば不活性化したセンダイウイルス(HVJ:Hemagglutinating virus of Japan)等が挙げられる。好ましくは、例えば30〜60%のポリエチレングリコールを0.5〜2ml加えることができる。そのようなポリエチレングリコールの分子量は1000〜8000であることが好ましく、さらに分子量が1000〜4000であることが好ましい。融合培地中でのポリエチレングリコールの濃度は、30〜60%となるようにすることが好ましい。必要に応じ、例えばジメチルスルホキシド等を少量加え、融合を促進することもできる。融合に使用する脾細胞(リンパ球):ミエローマ細胞株の割合は、例えば1:1〜20:1とすることが挙げられるが、より好ましくは4:1〜10:1とすることができる。融合反応を1〜10分間行い、次にRPMI−1640培地等の細胞培地を加える。融合反応処理は複数回行うこともできる。融合反応処理後、遠心等により細胞を分離した後選択用培地に移す。
選択用培地としては、例えばヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含む、FCS含有MEM培地又はRPMI−1640培地等の培地、いわゆるHAT培地が挙げられる。選択培地交換の方法は、一般的には培養プレートに分注した容量と当容量を翌日加え、その後1〜3日ごとにHAT培地で半量ずつ交換して行うことができるが、適宜これに変更を加えて行うこともできる。また融合後8〜16日目には、アミノプテリンを除いた、いわゆるHT培地で1〜4日ごとに培地交換をすることができる。フィーダーとして、例えばマウス胸腺細胞を使用することができ、それが好ましい場合がある。ハイブリドーマの増殖のさかんな培養ウェルの培養上清を、例えば放射免疫分析(RIA)、酵素免疫分析(ELISA)、蛍光免疫分析(FIA)等の測定系、又は蛍光惹起細胞分離装置(FACS)等で、ストロムライシン1若しくはその断片ペプチド又は標識抗マウス抗体を用いて目的抗体を検出し、スクリーニングしたり分離したりする。次に、目的抗体を産生しているハイブリドーマをクローニングする。クローニングは、寒天培地中でコロニーをピックアップするか、あるいは限界希釈法により行うことができる。限界希釈法でクローニングすることがより好ましい。クローニングは複数回行うことが好ましい。
得られたハイブリドーマ株は、FCS含有MEM培地、RPMI−1640培地等の適当な増殖用培地中で培養し、その培地上清から所望のモノクローナル抗体を得ることが出来る。大量の抗体を得るためには、ハイブリドーマを腹水化することが挙げられる。この場合ミエローマ細胞由来の動物と同系の組織適合性動物の腹腔内に各ハイブリドーマを移植し、増殖させるか、例えばヌードマウス等に各ハイブリドーマを移植し、増殖させ、該動物の腹水中に産生されたモノクローナル抗体を回収して得ることが出来る。ハイブリドーマの移植に先立ち、プリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン)等の鉱物油を腹腔内投与した後、ハイブリドーマを増殖させ、腹水を採取すればよい。腹水液はそのまま、あるいは従来公知の方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿法等の塩析、セファデックス等によるゲルろ過法、イオン交換クロマトグラフィー法、電気泳動法、透析、限外ろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、高速液体クロマトグラフィー法等により精製してモノクローナル抗体として用いることができる。好ましくは、モノクローナル抗体を含有する腹水は、硫安分画した後、DEAE−セファロースのような陰イオン交換ゲル及びプロテインAカラムのようなアフィニティーカラム等で処理し、精製分離処理できる。特に好ましくは抗原又は抗原断片(例えば合成ペプチド、組換え抗原タンパク質あるいはペプチド等、抗体が特異的に認識する部位)を固定化したアフィニティークロマトグラフィー、プロテインAを固定化したアフィニティークロマトグラフィー等が挙げられる。
6.で得られたストロムライシン1に対するモノクローナル抗体の中から、ストロムライシン2及びストロムライシン3と交差反応しない抗体を選抜する。選抜は、イムノアッセイ、例えば競合型イムノアッセイ又は非競合型イムノアッセイで行うことができ、RIA、ELISA等を用いることができ、B−F分離を行ってもあるいは行わなくてもできる。好ましくは直接吸着法又はサンドイッチ法によるELISAが挙げられる。アッセイは直接法でも間接法でもよい。また間接法の変法、例えばPAP法(ペルオキシダーゼ アンチペルオキシダーゼ法)、ABC法(アビジン ビオチン コンプレックス法)、プロテインA法等を用いることもできる。
上記のようにして得られた、ストロムライシン1と特異的に反応し、ストロムライシン2及びストロムライシン3と交差反応しないモノクローナル抗体は、ストロムライシン1の特定の反応部位と反応する。このような反応部位を同定し、この反応部位と反応するモノクローナル抗体を1.〜6.で説明した方法で作製することにより、作製されたモノクローナル抗体の交差反応性を調節することが可能となる。反応部位は、以下のようにして同定することができる。酵素によってストロムライシン1をペプチドに分解する。得られたペプチドをクロマトグラフィー等従来公知の方法によって分画し、7.で得られたモノクローナル抗体と各画分のペプチドとを反応させれば、反応性の高い画分にストロムライシン1の反応部位であるペプチドが含まれている。該反応性の高い画分に含まれるペプチドは、従来公知の方法を用いてさらに精製することができ、公知のアミノ酸配列分析法により、反応部位のアミノ酸配列を決定することができる。
また、本発明は、配列番号1の一部のアミノ酸配列からなるペプチドと特異的に反応し、かつ、ストロムライシン1と特異的に反応するモノクローナル抗体であって、該アミノ酸配列は配列番号1の425番〜436番の配列を含み、該ペプチドの長さが12〜20アミノ酸残基である、モノクローナル抗体を提供する。配列番号1のアミノ酸配列はストロムライシン1タンパク質のアミノ酸配列である。配列番号1の425番〜436番の配列からなるペプチドは交差反応性に関与すると考えられる。上記モノクローナル抗体は、6.で得られたストロムライシン1に対するモノクローナル抗体の中から、配列番号1の425番〜436番の配列からなるペプチドと反応性を示すモノクローナル抗体を選抜することによって得ることができる。選抜は、7.で示したアッセイ法によってすることができ、例えば、7.に示した直接吸着法によるELISAにおいて、ストロムライシン1の代わりに配列番号1の425番〜436番の配列からなるペプチドを抗原として用いればよい。上記モノクローナル抗体は、ストロムライシン2及びストロムライシン3と交差反応しないことが好ましい。ストロムライシン2及びストロムライシン3と交差反応しないモノクローナル抗体は、7.に示す方法により選抜することができる。
また、本発明はストロムライシン1に特異的に反応するモノクローナル抗体であって、ストロムライシン1をリジルエンドペプチダーゼで分解することによりストロムライシン1に対する反応性を消失する、モノクローナル抗体を提供する。このようなモノクローナル抗体は、ストロムライシン1タンパク質の二次構造又は三次構造等の立体構造を認識するモノクローナル抗体である。「ストロムライシン1を分解することによりストロムライシン1に対する反応性を消失する」とは、ストロムライシン1分解後の反応性が分解前の反応性より低いことをいう。このようなモノクローナル抗体は、6.で得られたストロムライシン1に対するモノクローナル抗体の中から、以下のようにして選抜することによって得ることができる。酵素によってストロムライシン1をペプチドに分解する。ストロムライシン1と特異的に反応するモノクローナル抗体の、ストロムライシン1に対する反応性を、分解前と分解後で比較し、ストロムライシン1分解後の反応性が分解前の反応性より低いモノクローナル抗体を選抜する。分解後の反応性がより低いものほど、ストロムライシン1の一次構造によらず、ストロムライシン1の立体構造を認識してストロムライシン1と反応するモノクローナル抗体である。好ましくは、分解前のストロムライシン1に対する反応性を100%としたとき、分解後の反応性が10%以下である。反応性は7.に示す方法により直接吸着法又はサンドイッチ法のいずれかのELISAによって測定することができ、好ましくは、直接吸着法のELISAによって測定した分解後の反応性が分解前の反応性の10%以下である。より好ましくは、8.0%以下であり、さらに好ましくは7.3%以下である。
以下のように、Obataら,Clin.Chim.Acta,211,59−72,1992に記載の方法に従って、正常ヒト皮膚線維芽細胞NB1RGB(RCB222)培養上清より、ストロムライシン1を精製した。NB1RGB細胞を、10%ウシ胎児血清、14mM HEPES、1.4g/l NaHCO3含有RITC80−7基礎培地(pH7.2)中、5%CO2存在下、37℃でコンフルエントまで培養した。細胞を100mlのRITC80−7基礎培地で洗浄後、2g/lラクトアルブミン水解物及び10000U/lインターロイキン1α含有無血清RITC80−7基礎培地300ml中で培養し、その上清を回収した。
以下のように、Obataら,Clin.Chim.Acta,211,59−72,1992に記載の方法に従って、実施例1で精製したストロムライシン1を抗原としてモノクローナル抗体を調製した。
実施例1に記載の方法により調製したストロムライシン1を44.6μg、等重量のフロイント完全アジュバントと共に6週齢BALB/c雌マウス2匹に腹腔内投与し初回免疫とした。その後19日目に0.4MNaCl、10mM CaCl2及び0.5g/l Brij35含有50mMトリス塩酸緩衝液(pH7.5)に溶解した40.4μgのストロムライシン1で追加免疫した。最終免疫として55日目に43.2μgのストロムライシン1で免疫した。最終免疫から3日後にマウス脾臓を取り出し脾臓細胞を調製した。
以下の材料及び方法を用いた。
RPMI 1640培地:RPMI 1640(JRH Biosciences製)に24mM重炭酸ナトリウム、1mMピルビン酸ナトリウム、50U/mlペニシリンGカリウム、50μg/ml硫酸ストレプトマイシン及び100μg/ml硫酸アミカシンを加え、ドライアイスでpHを7.2にし、0.22μmミリポアフィルターで除菌ろ過した。
NS−1培地:上記RPMI−1640培地に除菌ろ過したFBS(JRHBiosciences製)を15%(v/v)の濃度に加える。
PEG4000溶液:RPMI−1640培地にポリエチレングリコール4000(PEG4000,Merck and CO.,Inc.製)50%(w/w)無血清溶液を調製した。
使用する培地は以下のとおりである。
HAT培地:前記実施例2(b)で述べたNS−1培地にさらにヒポキサンチン(100μM)、アミノプテリン(0.4μM)及びチミジン(16μM)を加えた。
HT培地:アミノプテリンを除去した以外は上記HAT培地と同一組成のものである。
以下のようにして、直接吸着法によるELISAを行った。96穴マイクロウェルプレート(Nunc社)に100ng/ウェルになるように0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈したストロムライシン1を抗原としてコートした。4℃で一晩以上放置後、コーティング液を吸引し、0.05%Tween20含有PBS(pH7.2)でマイクロウェルプレートを洗浄した。確認したいハイブリドーマの培養上清(一次抗体)を100μl/ウェル加えて、室温で約1時間インキュベート(静置)した。洗浄後、二次抗体としてヤギ抗マウスIg(G+M+A)immunoglobulin−ペルオキシダーゼ(POD)(CAPPEL社)をブロッキング液で1/10000に希釈したものを100μl/ウェル加え、室温で約1時間インキュベート(静置)した。洗浄後、基質である過酸化水素とテトラメチルベンジジン(TMB)を100μl/ウェル加え、室温で約20分反応させ、1M硫酸を100μl/ウェル加えて反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(TOSOH、MPR A4)にて測定波長450nmでの吸光度を測定した。ストロムライシン1との反応が陽性を示した16ウェルについて、細胞の凍結及び復元を実施し、限界希釈法によるクローニングを実施した。
以下の材料及び方法を用いた。
RPMI 1640培地−(2):RPMI1640 MEDIUM(SIGMA R8758)500ml(1本)に、FOETAL BOVINE SERUM (SIGMA F9423)50ml、PENICILLIN−STREPTOMYCIN SOLUTION(SIGMA P0781)2.5mlを添加した。
BriClone含有RPMI 1640培地;RPMI 1640培地−(2)にBriClone(Hybridoma cloning Medium)(NICB社製)を5%になるように添加した。
以下のようにして、直接吸着法によるELISAを行った。直接吸着法によるELISAでは、96穴マイクロウェルプレート(Nunc社)に50ng/ウェルになるように0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈したストロムライシン1を抗原としてコートした。4℃で一晩以上放置後、コーティング液を吸引し、200μl/ウェルのブロッキング液(1%BSA及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液、pH7.0)を用い、室温で1時間以上ブロッキングを行った。0.1%Tween20及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)でマイクロウェルプレートを洗浄後、確認したいハイブリドーマの培養上清(一次抗体)を100μl/ウェル加えて、室温で約1時間インキュベート(静置)した。洗浄後、二次抗体としてヤギ抗マウスIg(G+M+A)immunoglobulin−ペルオキシダーゼ(POD)(CAPPEL社)をブロッキング液で1/3000に希釈したものを100μl/ウェル加え、室温で約1時間インキュベート(静置)した。洗浄後、TMB One Component HRP Microwell Substrate (BioFX社, Product# TMBW−1000−01)を100μl/ウェル加え、室温で約5〜10分反応させた。1M硫酸を100μl/ウェル加えて反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(TECAN SPECTRA)にて測定波長450nmでの吸光度を測定した。
実施例2(d)記載のELISAに従って、以下のようにモノクローナル抗体のサブクラスを同定した。実施例2(d)に記載の、ストロムライシン1をコートした96穴マイクロウェルのブロッキングまでの操作を行った。0.1%Tween20及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)で洗浄後、各モノクローナル抗体産生ハイブリドーマの培養上清を100μl/ウェル加え、室温で約1時間インキュベート(静置)した。洗浄後、アイソタイプ特異的ウサギ抗マウスIg抗体(Mouse MonoAb−ID Kit、Zymed Laboratories社)を50μl/ウェル加え、室温で約1時間インキュベート(静置)した。更に洗浄後、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識ヤギ抗ウサギIgG(H+L)抗体をブロッキング液で1/50に希釈した溶液を50μl/ウェル加え、室温で約1時間インキュベート(静置)した。洗浄後、TMB One Component HRP Microwell Substrate (BioFX社、Product#TMBW−1000−01)を100μl/ウェル加えて発色させ、1M硫酸を100μl/ウェル加えて反応を停止させ、測定波長450nmでの吸光度を測定した。その結果、表1に示すように、得られたモノクローナル抗体は、γ1/κが4個、γ2b/κが3個、μ/κが4個、α/κが1個であった。
実施例2で得られた12種類のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの培養上清に対し、抗原としてストロムライシン1の代わりにストロムライシン2又はストロムライシン3を用いて、実施例2(d)の方法に従ってELISAを行った。ストロムライシン1の吸光値を100%としたときの、ストロムライシン2及び3の吸光値の割合を表2に示す。296−29C1、296−12H8、296−7B10の3クローンの抗体は、同培養上清のストロムライシン1に対する反応性を100%とすると、ストロムライシン2に対しての反応性が1%であり、ストロムライシン2と交差反応しなかった。それ以外のクローンの抗体は、ストロムライシン2に対しての反応性が10%〜337%であり、ストロムライシン2との交差反応性が認められた。また、ストロムライシン3に対する反応性は0%〜6%であり、交差反応しないものがほとんどであった。
ストロムライシン1及び2の各抗原をc−PAGEL(アトー社)でそれぞれ電気泳動に供した後、Sequi−Blot PVDF Membrane for Protein Sequencing(厚さ0.2μm)(Bio Rad社)にトランスファーを行った。SDSを除去するために0.1%Tween20及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)で、トランスファーした膜を洗浄した。さらに、1%BSA及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)でブロッキングを行った。この膜を、得られた12種類のモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの培養上清中で、4〜8℃で一晩静置した。膜を洗浄後、2次抗体反応として、ヤギ抗マウスIg(G+M+A)immunoglobulin−POD(CAPPEL社)をブロッキング液で1/3000に希釈した溶液中で、室温で約2時間振とうした。膜を洗浄後、基質である過酸化水素とジアミノベンジジン(DAB)を加えて発色を行った。結果を表2に示す。296−29C1、296−12H8、296−7B10の3クローンの抗体は、ストロムライシン1との反応が認められたが、ストロムライシン2との反応が認められなかった。296−21C4、296−21F3、296−21E4、296−33F3、296−33E4、296−23A8、296−24C8、296−30C12、296−31A4の9クローンの抗体は、ストロムライシン1との反応が認められたが、ストロムライシン2とも反応が認められた。
表1に示すクローンのうち、296−21C4、296−29C1、296−12H8、296−7B10、296−33F3及び296−23A8を選択し、抗体精製を行った。296−21C4、296−29C1、296−12H8、296−7B10の4種類については、細胞を増殖させ、その細胞をBalb/cマウス5匹の腹腔内に投与し、腹水を採取した。採取した腹水は、硫酸アンモニウム(硫安)分画を行い、DEAEイオン交換クロマトグラフィーにより抗体を精製した。296−33F3については、細胞を増殖させ、その細胞をBalb/cマウス5匹の腹腔内に投与し、腹水を採取した。採取した腹水を、硫安分画により抗体を精製した。296−23A8については、細胞を増殖させ、増殖後、培地を無血清培地(E−RDF培地)に交換し、約1lの培養上清を回収した。回収した培養上清より、硫安分画により抗体を精製した。
実施例2(d)の方法に従って、ELISAにより、実施例6で精製した抗体のストロムライシン2及び3に対する交差反応性を調べた。一次抗体として精製抗体を100ng/ウェル用い、測定波長450nmでの吸光度を測定した。A450(一次抗体が0ng/mlのときとの差)を表3に示す。
サンドイッチ法のELISAによる免疫学的測定により、ストロムライシン1の定量を行った。96穴マイクロウェルプレート(Nunc社)に、実施例6で得られた精製抗体100μg/ml含有0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を100μl/ウェル加え、4℃で16時間静置した。抗体溶液を除き、1%BSA、0.1M NaCl及び10mM EDTA含有0.01M リン酸緩衝液(pH7.0)を300μl/ウェル加え、4℃で一晩以上ブロッキングを行い、抗体結合ウェルとした。使用時にウェルを0.1%Tween20及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)(以下、「洗浄液」という)で洗浄した。
以下のようにして、実施例6で得られた精製モノクローナル抗体について、ストロムライシン1分子上の反応部位の解析を行った。
エッペンドルフチューブに、0.1M Tris−HCl(pH8.5)34μl及び51μg(17μl)のストロムライシン1を加えた。さらにリジルエンドペプチダーゼ26.1mU(17μl)を加え、反応を開始した。反応は37℃、15分間行なった。反応後、反応液(分解液)をSDS−PAGEに供したところ、リジルエンドペプチダーゼのバンドは確認されたが、ストロムライシン1のバンドは認められず、充分分解されたことが示された。
リジルエンドペプチダーゼによる分解後のストロムライシン1に対する抗体の反応性を直接吸着法のELISAにより調べた。(a)で得られたストロムライシン1の分解液に932μlの0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)を加えた液の一部を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で1/100(ストロムライシン1濃度に換算して510ng/ml)に希釈後、96穴マイクロウェルに100μlを加え、4℃で一晩静置してコーティングした。コントロールとして、51μg/mlの分解前のストロムライシン1を同様に510ng/mlになるように希釈してコーティングした。コーティング後、1%BSA及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)(アッセイbuffer)300μlを加え、一晩静置した。使用時にウェルを0.01%Tween20及び0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)(洗浄液)で洗浄した。
結果を表8に示す。
上記反応液に932μlの0.1%TFAを加え、950μlをFPLC(Fast protein liquid chromatography、AKTA explorer、GEヘルスケア社)に供するサンプルとした。カラムはC18Sephasil peptideを用い、溶出は0.1%TFA(A液)と、80%アセトニトリルを含む0.1%TFA(B液)とを用いて、20カラム容量でB液が100%となるようにした。サンプルアプライ後、6mlのA液でカラムを洗浄(1ml/画分)し、その後A液とB液のグラジエント溶液約33.2mlで溶出(0.5ml/画分)した。フラクションはサンプルアプライ後からA1とし、洗浄、溶出画分を連続して採取した。画分はA1〜A12、B1〜B12というように、12画分ずつ番号付けした。
各FPLC画分に対するモノクローナル抗体の反応性を直接吸着法のELISAにより調べた。96穴マイクロウェルプレート(Nunc社)に各FPLC画分の10倍希釈溶液100μl(0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で希釈)を加え、4℃で一晩静置した。各ウェルの液を除去し、アッセイbufferを300μl/ウェル加え、4℃で一晩ブロッキングを行いペプチド結合ウェルとした。使用時にウェルを洗浄液で洗浄した。次に、296−29C1及び296−7B10を10μg/mlになるようアッセイbufferで希釈し、ペプチド結合ウェルに各100μl/well加えて、25℃で1時間インキュベート(静置)した。洗浄液でウェルを洗浄後、二次抗体としてヤギ抗マウスIg(G+M+A)immunoglobulin−POD(CAPPEL社、Cat#55556)をアッセイbufferで1/3000に希釈したものを100μl/ウェル加え、25℃で40分間インキュベート(静置)した。洗浄後、発色剤を100μl/ウェル加え、25℃で15分間反応し、1M硫酸を100μl/ウェル加えて反応を停止させ、マイクロプレートリーダー(TECAN SPECTRA)にて測定波長450nmでの吸光度を測定した。各画分の吸光度のグラフを図1に示す。296−29C1及び296−7B10は、FPLC画分C10及びD9(以下それぞれ「Fr.C10」及び「Fr.D9」という)と反応性を示した。2つの画分に反応のピークが認められることから、リジルエンドペプチダーゼの部分分解により、2つの画分に同一の配列が含まれている可能性がある。
296−29C1及び296−7B10が反応したFPLC画分のうち、Fr.D9は測定波長230nmの吸光度が高い第1及び第2のピークの後に続く画分であり、ペプチドの分離が充分ではないと考えられたため、比較的シャープなピークであったFr.C10のN末端アミノ酸配列分析を行った。N末端アミノ酸配列分析は、アプロサイエンスへ外注し、Edman分解法により行なわれた。Fr.C10を50μl使用し、N末端5残基の測定をしたが、各サイクルで複数のアミノ酸が検出され、配列の確定には至らなかった。そこで、検出されたいくつかアミノ酸の中から、検出量および配列等からそのペプチド配列を推定した。その結果、QIAEDである配列が候補に挙げられた。各アミノ酸の検出量は約9pmolであった。ストロムライシン1の全アミノ酸配列(配列番号1)から候補ペプチド配列を照合し、Fr.C10に含まれるペプチドを推定した。ペプチドは、QIAEDFPGIDSK(配列番号1の425番〜436番)であることが推定された。ストロムライシン2の全アミノ酸配列(配列番号2)の中で上記ペプチド配列に相応するアミノ酸配列は、LIADDFPGVEPK(配列番号2の424番〜435番)であり、12個のアミノ酸中7個(58%)のアミノ酸が一致していた。
ペプチドQIAEDFPGIDSKを合成し、モノクローナル抗体との反応性を調べた。ペプチドの合成はInvitrogen社に外注し、95.15%の純度で8mgのペプチドを得た。測定分子量は1318.40であり、理論分子量1319.45とほぼ一致していた。このペプチドを0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)で500ng/mlになるよう希釈後、96穴マイクロウェルに100μlを加え、4℃で一晩静置してコーティングした。洗浄液で洗浄後、表9に示す各モノクローナル抗体をアッセイbufferで6.3μg/mlに希釈し、ペプチドをコーティングしたウェルに100μl/ウェルずつ加えて、25℃で1時間インキュベート(静置)した。後の操作は実施例9(b)に記載の方法と同様に行った。本実施例で得られたペプチドを抗原としたときのA450(一次抗体が0ng/mlのときとの差)を表9に示す。
マウス由来単クローン性抗ヒトストロムライシン抗体産生ハイブリドーマ55−2A4(国際寄託番号:FERM BP−3743、寄託日:平成3年6月12日、寄託機関:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)
マウス由来単クローン性抗ヒトストロムライシン1抗体産生ハイブリドーマ296−29C1(国際寄託番号:FERM BP−11199、寄託日:平成20年12月19日、寄託機関:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)
マウス由来単クローン性抗ヒトストロムライシン1抗体産生ハイブリドーマ296−23A8(国際寄託番号:FERM BP−11198、寄託日:平成20年12月19日、寄託機関:独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター中央第6)
Claims (4)
- 配列番号1の一部のアミノ酸配列からなるペプチドと特異的に反応し、かつ、ストロムライシン1と特異的に反応するモノクローナル抗体であって、該アミノ酸配列は配列番号1の425番〜436番の配列を含み、該ペプチドの長さが13〜20アミノ酸残基である、モノクローナル抗体。
- 請求項1に記載のモノクローナル抗体を用いることを特徴とする、免疫染色法。
- 請求項1に記載のモノクローナル抗体を用いて、ストロムライシン1を定量することを特徴とする、ストロムライシン1の免疫学的測定法。
- ストロムライシン1に対する2種類以上のモノクローナル抗体を用いる免疫学的測定法であって、前記モノクローナル抗体のうちの少なくとも1種類が請求項1に記載のモノクローナル抗体である、請求項3に記載の免疫学的測定法。
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