JP5660851B2 - ステッピングモータの駆動装置 - Google Patents
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Description
図10は二つのコイルの各々に対して通電方向の正逆を切り換えて駆動する従来のバイポーラ型2相ステッピングモータ1の個々のコイルごとに設けられた駆動装置100の一構成例を示すブロック図である。
この駆動装置100は、ステッピングモータ110の動作指令である電流値指令を出力するCPU101と、電流値指令に応じた指令電流値を出力するD/A変換部102と、指令電流値に対するステッピングモータのコイルに流れる電流値の差分により偏差を出力する電流偏差生成部103と、規則的な鋸歯状の三角波を出力する三角波発生回路104と、比較値の信号と三角波の信号との比較に応じてON-OFFの連続信号であるPWM信号を生成するPWM発生回路105と、ステッピングモータ110の二つのコイルのそれぞれに流す電流の正逆方向及びON-OFFの切り換えを行うブリッジ回路106と、各コイルに流れる電流を検出する電流検出部107とを主に備えている。
そして、上記構成により、駆動装置100では、ステッピングモータ110に対して、いわゆる比例制御(P制御)を行っていた(例えば、特許文献1参照)。
そこで、その対応として比例+積分制御(PI制御)を用いる方法もあるが、バイポーラ型2相ステッピングモータは、各コイルに流す電流の正負の極性を周期的に切り換える必要があり、モータの高速回転時の電流がプラスからマイナス(もしくはマイナスからプラス)に切替るとき、それまでに積算された電流偏差の積算値により、電流追従が遅れるという問題があった。
図11は、横軸を時間、縦軸を電流値として、電流値指令Irと実際にコイルに流れる電流値Idとこれらの電流偏差Ieと電流偏差の積算値Ieiの変化を示す線図であり、これに基づいて説明する。
積分制御では、電流偏差の積算値Ieiをコイルに流す電流値に反映させることで定常偏差やノイズの影響を低減することが可能である。しかし、電流値指令Irがプラスからマイナスに変わった時点(図中の点C1)で電流偏差の積算値Ieiはまだプラスであるために、コイルにマイナスの電流値(逆方向の電流)を流すべきところを積分制御の成分は積算値Ieiを反映してプラスの補正を行うこととなり、追従性を低下させてしまう。
また、電流値指令Irがマイナスからプラスに変わった時点(図中の点C2)でも同様の現象が発生していた。
図1は本発明の実施形態たる駆動装置7が接続されたバイポーラ型2相ステッピングモータ1(以下、単にステッピングモータ1とする)の構成を示す説明図である。以下、図1から図9に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本発明の実施形態たるステッピングモータ1の駆動装置7は、ステッピングモータ1のA相及びB相の各コイル4,5ごとに設けられており、各駆動装置7はステッピングモータ1の目的とする動作に応じて定められた電流値指令を出力するCPU8に接続されている。
ステッピングモータ1は、当該ステッピングモータ1の回転軸と一体をなして回転可能に設けられた円柱状の回転子2と、回転子2の周囲に設けられた円筒状の固定子3と、固定子3の内周部において回転子2に近接する方向に突出して設けられた芯部3a、3bに巻きつけられて、後述する駆動装置7による電流制御によって励磁されて回転子2の回転角度を変更/維持するコイル4,5とを備えている。なお、各コイル4,5は簡略化して図示しているが、実際には、それぞれ複数のコイルからなり、それらは回転子2の周囲に直列且つ均一間隔で交互に配置されている。
コイル4,5は、芯部3a、3bに巻きつけられた巻線であり、後述する駆動装置7によって電流が流されることによって励磁されて電磁石として機能する。このときコイル4,5は各駆動装置7を通じてCPU8により位相をずらして周期的に電流値が変化する電流制御が行われる。また、二つのコイル4,5の電流比率を細かく変えていくことで、より細かいステップ角度を得ることができるマイクロステップにより、ステッピングモータ1の回転駆動が行われるようになっている。
次に、ステッピングモータの駆動装置7について詳細に説明する。
ステッピングモータの駆動装置7は、ステッピングモータ1の駆動/停止及び回転角度を制御する。ステッピングモータの駆動装置7は、図1に示すように、ステッピングモータ1のコイル4,5のそれぞれに設けられてコイル4,5に流れる電流の制御を行う。
図2はステッピングモータ1の駆動装置7の構成を示すブロック図である。
なお、以下の説明にあっては、コイル4に接続された駆動装置7について説明を行い、同様の仕組みであるコイル5の駆動装置7についての説明は省略する。
電流検出部11は、コイル4に直列接続されたシャント抵抗であり、コイル4に流れる電流値に応じた検出信号を得ることができる。
図3はブリッジ回路20の回路図である。図3に示すように、ブリッジ回路20は、FET21〜24及びダイオード25〜28によるHブリッジ回路を構成しており、かかるブリッジ回路20を介してコイル4を電源装置6に接続している。
なお、電源装置6はコイル4,5で共用される。つまり、一つの電源装置6に対して二つの駆動装置7のブリッジ回路20が接続され、コイル4,5に電流が流される。
また、FET21〜24はゲートがDSP30と接続されており、当該DSP30によってゲートに電圧が印加されると、当該電圧の値に応じた電流を電源装置6からコイル4に流す「スイッチング素子」として機能する。なお、FET21〜24は双方向の通電が可能である。
図4はDSP30の機能ブロック図である。
即ち、DSP30は、主に、CPU8からのステッピングモータ1のコイル4に基づく指令電流値Irに対する電流検出部11の検出電流値Idの偏差Ieを求める比較部31と、偏差Ieに比例ゲインKpを乗算する比例処理部32と、偏差Ieに基づいて積分処理を行う積分処理部33と、比例処理部32と積分処理部33との処理結果に基づいてコイル4に所定電流の通電が行われるようにブリッジ回路20へのPWM信号を生成するPWM信号生成部36としての機能を実現するよう構成されている。
なお、上記各部31,32,33,36における連続した一連の処理は、一定の周期で繰り返し実行される。
コイル4とコイル5とには、π/2の位相差をもって正弦波形となる周期的な電流値の変化が繰り返されるように通電が行われる。そして、CPU8は、上記正弦波形をプロットするように段階的変化をなす指令電流の数値出力を行い、マイクロステップ駆動を実行する。
比較部31は、上記CPU8からの指令電流値Irと電流検出部11からの検出電流値Idとを減算して電流偏差Ieを算出する。
Ir−Id=Ie
そして、算出した電流偏差Ieを比例処理部32と積分処理部33とに出力する。
そこで、積分処理部33の判定部35では、CPU8からの指令電流値Irを読み取って、直前の指令電流値に対してその極性が切り替わったか否かを判定する。具体的には、指令電流値Irと電流偏差積算値Ieiとを乗算した乗算値がマイナスの極性となるか否かにより判定する。つまり、指令電流値Irの極性が変化してない場合には、それまでの電流偏差積算値Ieiと極性が一致するので乗算すると必ずプラスとなり、指令電流値Irの極性が切り替わった直後は電流偏差積算値Ieiと一致しないので乗算するとその乗算値は必ずマイナスとなるので、指令電流値Irの極性の切り替わりを検出することができる。
そして、判定部35は、指令電流値Irの極性が切り替わった直後ではないと判定した時には、従前の制御と同様に、電流偏差積算値Ieiに積分ゲインを乗算してPWM信号生成部36に出力する。また、指令電流値Irの極性が切り替わった直後と判定した時には、電流偏差積算値Ieiを0としてPWM信号生成部36に出力する。
即ち、図5に示すように、指令電流値Irの極性が切り替わったポイントP1〜P3において、電流偏差積算値Ieiは0にリセットされ、それ以降は新たに積算が行われるようになっている。
Ret=Kp×Ie+Ki×Iei
なお、合計値RetとPWM信号のデューティー比とは、互いに対応関係を定めたテーブルをDSP30内に用意し、これを参照して合計値Retに応じたデューティー比を特定する処理を行っても良い。
これにより、コイル4に対して正又は逆の方向に所定の電流が流れて通電量が指令電流値に追従するように修正される。
即ち、DSP30(制御部)は、電流偏差の積算値Iei(電流偏差積算値Iei)を求め、当該積算値Ieiと電流偏差Ieの値とによりコイル4に流す電流値を決定すると共に、指令電流値Irの正負の極性が切り替わると電流偏差の積算値をリセット(Iei=0)してから積算を継続する。
上記駆動装置7によるステッピングモータ1の制御について、特に、DSP30(制御部)によるステッピングモータ1のコイル4に対する通電制御を図6のフローチャートに基づいて説明する。
まず、ステッピングモータ1の駆動が開始される際には、電流偏差積算値Ieiの値がリセットされる(〔Iei=0〕:ステップS1)。
そして、DSP30は、指令電流値IrをCPU8から読み取ると共に検出電流値Idを電流検出部11から読み取り(ステップS3)、比較部31は、指令電流値Irから検出電流値Idを減算して電流偏差Ieを算出する(〔Ir−Id=Ie〕:ステップS5)。
さらに、判定部35は、指令電流値Irと電流偏差積算値Ieiを乗算し、その乗算値が0未満(マイナス)となるか否かを判定する(〔Ir×Iei<0〕:ステップS9)。
このとき、Ir×Iei<0であれば(ステップS9:YES)、指令電流値Irの極性が切り替わった直後で電流偏差積算値Ieiはまだ極性が切り替わっていない状態ということとなるので、メモリ内の電流偏差積算値Ieiをリセットする処理を行う(〔Iei=0〕:ステップS11)。
そして、PWM信号生成部36では、合計値Retに基づいてデューティー比を特定し、これに応じたPWM信号をブリッジ回路20に出力する(ステップS15)。
その後、ステップS3に処理を戻して、次の指令電流値Irと検出電流値Idの読み込みを行う。なお、ステップS3からS17までの処理はステッピングモータ1の駆動中は、一定の周期で繰り返し実行される。
また、上記フローチャートでは、ステッピングモータ1における一方のコイル4に対する電流制御のみを示しているが、もう一方のコイル5についても、指令電流値Irの位相をπ/2遅らせた状態で上記と同じ電流制御が行われる。
上記ステッピングモータの駆動装置7により電流制御は、指令電流値Irの極性の切り替わりを検出して電流偏差積算値Ieiをリセットすることに特徴を有している。
これによる効果について図7〜図9に基づいて説明する。各図は時間経過に伴う指令電流値Ir、電流偏差積算値Ieiをリセットする制御を行った場合(上記実施形態の場合)の検出電流値Id、電流偏差積算値Ieiをリセットしない制御を行った場合(従来のPI制御)の検出電流値Idmの変化を示す線図であり、図7はステッピングモータ1を低速で駆動する場合、図8は中速で駆動する場合、図9は高速で駆動する場合を示している。
図7に示すステッピングモータ1の低速駆動時には、上記駆動装置7による検出電流値Idと従来のPI制御による検出電流値Idmとでは差が小さいが、図8に示す中速駆動時には、駆動装置7による検出電流値Idは従来のPI制御による検出電流値Idmよりも指令電流値Irに近い値で追従し、図9における高速駆動時には、駆動装置7による検出電流値Idは従来のPI制御による検出電流値Idmよりも指令電流値Irに近い値で且つ指令電流値Irに近い位相で追従することを可能としていることが分かる。
なお、上記ステッピングモータの駆動装置7では、CPU8の指令電流値Irがマイクロステップに応じた出力を行う場合を例示したが、例えば、よりステップ数が少ないフルステップ駆動やハーフステップ駆動の場合も同様の電流制御を行っても効果的である。
また、駆動装置7では、DSP30を使用しているが、これに替えて、電流の読み込み処理が可能なCPU、シーケンサを用いたマイコン、アナログ回路を使用しても良い。
4,5 コイル
6 電源装置
7 駆動装置
9 アース
11 電流検出部
20 ブリッジ回路
30 DSP(制御部)
31 比較部
32 比例処理部
33 積分処理部
34 積算部
35 判定部
36 PWM信号生成部
Id 検出電流値
Ie 電流偏差
Iei 電流偏差積算値
Ir 指令電流値
Claims (2)
- バイポーラ型2相ステッピングモータのコイルに流れる電流値を検出する電流検出部と、
前記バイポーラ型2相ステッピングモータへの動作指令に基づく前記コイルへの指令電流値と前記電流検出部の検出電流値との電流偏差に基づいて前記コイルに流す電流のフィードバック制御を行う制御部とを備え、
前記制御部は、前記電流偏差の積算値を求め、当該積算値と前記電流偏差の値とにより前記コイルに流す電流値を決定すると共に、
前記指令電流値の正負の極性が切り替わると前記電流偏差の積算値をリセットしてから積算を継続し、
前記制御部は、前記指令電流値の正負の極性の切り替わりを、当該指令電流値と電流偏差の積算値の乗算値から判定することを特徴とするバイポーラ型2相ステッピングモータの駆動装置。 - 前記制御部は、DSP(Digital Signal Processor)から構成したことを特徴とする請求項1記載のバイポーラ型2相ステッピングモータの駆動装置。
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