JP5660838B2 - 醗酵調味料の製造方法 - Google Patents
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一方、多様化する食生活に対応するべく、更なる特徴のある調味料が求められているのも事実である。
一方、近隣の竹林を見るに、昨今の人件費の高騰、労働人口の減少等により竹の消費量は減少の一途を辿り、竹林の維持が困難になりつつある。過っては日本の風雅の代表であった竹林も荒廃するに任せている。
食用の竹の子は今でも消費されているが、竹細工職人の減少等によって成竹の消費量は先細ってきている。
しかし、成竹が含有する食物繊維や蛋白質を容易に人体に摂取することのできる食品(食品添加材など)はいまだ開示されていない。
醗酵調味料として、菜種粕を主原料とする(特許文献1参照)が開示されているが、係る従来技術(特許文献1)で製造される発酵食品は、竹が含有する食物繊維や蛋白質を容易に人体に摂取することのできる食品には該当しない。
そして、係る知見に基いて、新たな醗酵調味料を製造する方法を創作した。
更に、本発明の製造方法では、加熱蒸煮の際に加える「ふすま」、或いは冷却工程時に加える「ふすま麹」を用いているが、「ふすま」或いは「ふすま麹」の原料は共に小麦粉の蛋白質(グルテン)を練り固めたものであり、これらも比較的安価で且つ安定的に入手できる。このことも、本発明による調味料の製造コストを低く抑制できる一因である。
また、竹を原料とした醗酵調味料である味噌、醤油は、それらの調味料を用いた料理が一種独特な清涼感(風味)を伴い、新たな味の創生を促し、食文化を更に豊かに育てていくことができる。
その結果、簡便かつ容易に、本発明により醗酵調味料を製造できる。
そして、材料である竹を採取するに際しては、現在密集して荒れるに任せた竹林に人の手を入れ、余分な竹を間引くことで材料が安価に得られる。また、それまで荒れていた竹林に人の手が入るために、美林が取り戻せて環境整備にもつながる。
さらに、材料(成竹)採取のための雇用の増加が見込まれるために、国内経済の発展に役立つ。
図示の実施形態の説明に際して、竹以外の材料の添加量は、竹1kgに対する質量割合、或いは、竹1kgに対する量(質量、容積、その他)で記載されている。
先ず、図1、図2を参照して第1実施形態を説明する。
第1実施形態は、竹粉末に水を加え、所定時間浸漬した後、加熱蒸煮する際に「ふすま」を添加して、液状の醗酵調味料(醤油)を製造する製造方法に係る実施形態である。
図2において、第1実施形態に係る醗酵調味料(醤油)の製造方法は、先ず、ステップS10において、予め竹を粉末に加工する。
図示の実施形態では、例えば微粉末粉砕機により、竹を粉末に加工している。微粉末粉砕機については、公知、市販のものを適用することが出来る。
ここで、水の添加量を少なくすれば、濃い味の醤油が得られ、水の量が多ければ薄い味の醤油が得られる。
この加熱蒸煮工程S20は、材料(竹の粉末)及び添加する「ふすま」の殺菌のために行なわれる。
90℃という温度は、加熱容器の中心部分における水温であり、加熱容器周辺の水温ではない。
ここで、ステップS10で、竹粉末と水との混合比率が1:1の場合には、「ふすま」の量を竹粉末に対して質量割合で50%以下にすれば、竹の分解が停滞し、一方、150%以上にすれば製造された醗酵調味料の風味を損なう。
係る理由と、竹を材料とする醗酵調味料の特性を活かすため、竹粉末に対する「ふすま」の添加割合を80〜120(質量)%とした。
係る冷却工程では加熱を停止して、徐冷によって材料を40〜30℃の範囲で冷却する。
冷却を開始したら所定時間経過後に種麹を添加(接種)し、麹作製を開始する(ステップS40:図1(c)参照)。
ここで、冷却工程における冷却温度が低温過ぎると麹菌は活性化せず、冷却温度が高温過ぎると麹菌は死滅してしまう。
また、ステップS40の麹作製工程の際には、図示の例では処理容器内の麹作製温度を25℃〜40℃(例えば、35℃)に保ち、2日〜7日(例えば、3日)かけて麹作製を行なう。
ここで、麹作製温度が低温過ぎると麹菌が活性化せず、高温過ぎると麹菌が死滅してしまう。
また、作製期間が短いと麹が出来ず、作製期間が長いと胞子が出てしまい、麹が出来ない。
食塩の添加量が15(質量)%を超えると、後述する乳酸菌及び酵母の活性を妨げるので、上記範囲に留めるべきである。
一方、水の添加量が多すぎると醗酵調味料は薄く仕上がり、少ないと醗酵調味料は硬くなるため、製造中はこれらの状況を見て水の加減を行うとよい。
食塩と水を添加後に、処理容器内の材料を例えば、電動モーター駆動のミキサ、或いは人力によって攪拌する(図1(d)参照)。
ここで、耐塩性乳酸菌培養液添加の目的は、乳酸を増殖させ、塩味を緩和し、pHを下げ、雑菌の増殖を抑制する目的がある。そして耐塩性乳酸菌には、ペディオコッカスハローフィルスを用いるのがよい。その時の培養液は麹エキス培地である。
また、耐塩性酵母培養液添加の目的は、香気成分を作り、味・風味を調える。
そして対塩性酵母として、チゴサッカロマイセスルキシを、その培養液として麹エキス培地を用いることが好ましい。
醗酵は、その時期の常温で行なう。
発明者による実験によれば、いわゆる「常温」(1〜37℃)であれば、一年中、醗酵工程は実行することが出来る。
そして発明者の実験によれば、低温時(例えば冬季:常温は1℃〜10℃)には、十分醗酵するまでに約3ヶ月を要し、高温時(例えば夏季:常温は30℃〜37℃)では1日で十分に醗酵する。
十分に醗酵しているか否かは、例えば、当該材料の単位質量当りにおける耐塩性酵母の数を光学顕微鏡下でカウントすることにより判断することが出来る。この場合、耐塩性酵母の数が所定量以上あれば、「十分に醗酵している」と判断する。
圧搾濾過では、圧力を掛けて搾っている。
そして、いわゆる「オリ引き」を目的として、圧力を掛けて搾った液体を静置して、比重差により「オリ引き」(液体と固体の分離のことで、沈殿した固体部分を除去すること)を行なう。或いは、圧力を掛けて搾った液体を、濾布を用いて濾過し、或いは、遠心分離機により濾過する。
殺菌については、公知の加熱殺菌法で行なわれる。例えば、常圧で、目標温度(65℃〜105℃)まで加熱し、目標温度まで昇温したならば、5分〜30分加熱状態を維持し、その後、水等により冷却する。
酵素死活、微生物殺菌を目的として、例えば、熱交換器を有するタイプの加熱殺菌装置を使用することが出来る。もちろん、加熱殺菌装置を別途設けることなく、醗酵後の圧搾濾過された液体を貯溜する容器(タンク、釜)自体に加熱機構を持たせても良い。
材料である竹の多くは、その量が無尽蔵に近く、国内いたるところで豊富且つ安価で安定的に入手できるからである。
更に、加熱蒸煮の際に加える「ふすま」、或いは冷却工程時に加える「ふすま麹」の原料は、共に小麦粉の皮と糠部分であり、これらも比較的安価で且つ安定的に入手できるからである。
そして、第1実施形態により製造された醗酵調味料(醤油)は、竹を原料としているため、係る調味料(醤油)を用いた料理は一種独特な清涼感を伴い、新たな味の創生を促し、食文化を更に豊かに育てていくことができる。
そのため、設備導入コスト(或いは、第1実施形態のイニシャルコスト)は殆ど発生しないので、簡便かつ容易に実施することができる。
そのため、密集して荒れるに任せた状態の竹林に対して人手が入り、余分な竹が間引かれるので、竹林そのものが良好に保全され、美しい状態を取り戻すことが出来るので、環境整備にもつながる。
さらに、材料である成竹採取のための雇用の増加が見込まれるために、国内経済の発展に寄与することが可能である。
図1、図2の第1実施形態は、醗酵調味料が液状の醤油であった。それに対して、図3、図4の第2実施形態は、醗酵調味料は、固めのペースト状の味噌である。
以下、第2実施形態の第1実施形態と異なる工程(醗酵工程或いはもろみ醗酵より後の段階:ステップS60より後の工程)について、図3を参照しつつ、図4のフローチャートに基づいて説明する。
図3、図4の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、図1、図2の第1実施形態と同様である。
図1、図2の第1実施形態では、加熱蒸煮の工程(ステップS20)において「ふすま」を添加し、冷却工程(ステップS30)で種麹を接種することにより、一連の製造工程中で「ふすま麹」を生成している。
それに対して、図5、図6の第3実施形態は、一連の製造工程中で「ふすま麹」を生成することは行なわず、予め生成しておいた「ふすま麹」を冷却工程において添加する。ここで、「ふすま麹」は、竹と「ふすま」の混合麹である。
以下、図5を参照しつつ、図6のフローチャートに基づいて、第3実施形態について、図1及び図2の第1実施形態と異なる点を主体にして説明する。
第1実施形態では、ステップS20の加熱蒸煮工程では、竹粉末に対して「ふすま」を80〜120(質量)%添加し、ステップS30の冷却工程で種麹を添加(接種)して、添加した「ふすま」より「ふすま麹」を生成している。
これに対して、図5、図6の第3実施形態では、上述した様に、予め作製しておいた「ふすま麹」を冷却工程S30で添加している。
図5、図6の第3実施形態は、醗酵調味料が液状の醤油であった。
それに対して、図7、図8の第4実施形態では、醗酵調味料が固めのペースト状の味噌を製造している。
図7、図8で示す第4実施形態の製造方法は、図5、図6の第3実施形態の製造工程に対して、醗酵工程(もろみ醗酵:ステップS60)より後の工程が異なるのみで、図8のステップS10〜ステップS60は第3実施形態と同様である。
図8において、ステップS60のもろみの醗酵工程の後に、醗酵工程で用いた醗酵容器内から、例えば、柄杓などを用いて味噌をすくい上げ、販売用の例えば樹脂容器中に所定量だけ詰める(図7(g)参照)。
それ以外の構成及び作用効果について、図7、図8の第4実施形態は、図5、図6の第3実施形態と同様である。
以下において、係る実験(実験例1〜実験例14)について説明する。
[実験例1]
実験例1では、竹を粉末に加工する際における粉末の粒径について検証した。
実験例1では、微粉末粉砕機により、粒径が0.3mm〜1.6mmの範囲で、0.1mmずつ変化させて、上述の実施形態に従って麹を作製する実験を行なった。
実験例1の結果を、下表1に示す。
表1
粒径が1.1mm以上の場合に麹作製が良好には行なわれなかったのは、竹粉末の粒径が大き過ぎると、竹の繊維分が上手く醗酵されないことに起因すると推定される。
一方、市販の微粉末粉砕機では、粒径0.4mm以下の粉末状に竹を加工することが出来なかった。そのため、表1では、粒径0.3mm、0.4mmの欄には「−」が標記されている。
従って、竹粉末の粒径は、0.5mm〜1.0mmに決定した。なお、表1では明示はされていないが、竹粉末の粒径が0.7mmの場合が麹作製が最も好適に行なわれた。
[実験例2]
実験例2では、竹粉末に対する水の添加量を変化させて、麹の混合状態を目視で判定した。そして、第1実施形態と同一の要領で液体調味料(醤油)を製造し、製造された醤油味の濃淡を10人の検査員により検証(判断)した。
ここで、「醤油味の濃淡」は、含有された塩分の質量ではなく、いわゆる「こく」や「淡白さ」を意味しており、味覚に関する検証である。
混合状態については、作製した麹が均一に混合していない不適当な状態を「×」、均一性には欠けるが、麹作製を阻害しない程度を「△」、均一に良好に混合しており、麹作製に適切な状態を「○」として、三段階で評価している。
醤油の味(濃淡)については、「淡白」、「やや淡白」、「適正」、「やや濃厚」、「濃厚」の5段階評価で行なった。そして、10人の検査員の平均的な感想を抽出した。
醤油味の濃淡の評価において、水の添加量が400ml、600mlのサンプルは、麹の混合状態の評価が「×」であったため、評価を行なっていない。
水添加量800ml、1000mlのサンプルは「適正」と評価され、水添加量1200mlのサンプルは「やや淡白」と評価され、水添加量1400ml、1600mlは「淡白」と評価されている。
表1で示す結果より、竹粉末1kgに対する水の添加量の範囲は、800〜1200ml、すなわち、80〜120(質量)%と設定した。
第1実施形態のステップS10において、粉末状に加工された竹(粉末)を水に浸漬させる時間は、2時間以上、好ましくは12時間以上としているが、係る浸漬時間については、以下の実験(実験例3)で決定した。
実験例3では、浸漬時間を1時間〜14時間の範囲で1時間ずつ変化して作成したサンプルを、90℃まで昇温して60分加熱し、その後、30℃まで冷却してから、第1実施形態と同様に、麹作製を行ない、醗酵した。そして、各々のサンプルについて、醗酵の程度を調べた。
表2から明らかな様に、浸漬時間が2時間以上であれば、調味料製造には問題がない程度に醗酵が行なわれる。そして、浸漬時間が12時間以上であれば、醗酵が良好に行なわれることが確認された。
実験例3の結果から、粉末に加工された竹(粉末)を水に浸漬させる時間は、2時間以上、好ましくは12時間以上に決定した。
[実験例4]
12時間水に浸漬した竹粉末1kgに水1000mlを添加し、「ふすま」の添加量が0.5kg(質量割合50%)、0.8kg(質量割合80%)、1.0kg(質量割合100%)、1.2kg(質量割合120%)、1.5kg(質量割合150%)、2.0kg(質量割合200%)の6種類のサンプルと作成した。
そして、各サンプルを均一に混合して、滅菌したシャーレ内に50gずつ収容して、種麹(菌)としてアスペルギルスオリゼを同一量ずつ接種し、25℃で3日間保持した。そして、各サンプルにおける麹菌のコロニーの面積により、麹菌発生率を判定した。
実験例4では、「ふすま」添加量が0.5kg(質量割合50%)の場合は、麹菌のコロニーの面積が小さく、麹菌の培養は良好ではなかった。このことは、麹化の時間が長すぎて、採算ベースに合わないことを意味しており、調味料製造には不適当であると判断される。
一方、「ふすま」の含有量が大きい場合、具体的には、「ふすま」添加量が0.8kg(質量割合80%)の場合は、麹菌のコロニーの面積が大きくなり、麹菌の培養が良好に行なわれた。
その結果、加熱蒸煮の際に添加する「ふすま」の量は、竹粉末1kgに対して0.8〜1.2kgの幅に設定した。
[実験例5]
12時間水に浸漬した竹粉末1kgに水1000mlを添加し、「ふすま」1.0kgを加え、加熱容器に収容して、加熱容器の中心部分における水温を所定の温度まで昇温し、その状態を60分間維持した後、35℃まで冷却する。そして種麹を接種し、3日間静置して、雑菌の繁殖の有無を確認した。「所定温度」として、70℃〜100℃の範囲で10℃刻みに変動し、以って、4種類の場合(サンプル)について、実験を行なった。
表5より、第1実施形態におけるステップS20の加熱蒸煮工程において、加熱温度を「少なくとも90℃」(90℃以上)に決定した。
[実験例6]
12時間水に浸漬した竹粉末1kgに水1000ml添加し、「ふすま」1.0kgを加え、加熱容器に収容して、加熱容器の中心部分における水温を90℃まで昇温した。そして、当該水温を90℃に維持する時間(加熱時間)を、30分〜100分の範囲で、10分刻みに変動して、8種類のサンプルを用意した。各サンプルについて35℃まで冷却してから、種麹を接種し、3日間静置して、雑菌の繁殖の有無を確認した。
表6より、加熱時間が50分以上であれば、十分に殺菌が行なわれている。ここで、別途行なわれた実験では、加熱時間を80分以上にすると、燃料消費量が多くなり過ぎて、殺菌処理のためのコストが増大することが判明している。
これ等の結果より、第1実施形態におけるステップS20の加熱蒸煮工程における加熱時間を、50分〜70分に決定した。
[実験例7]
12時間水に浸漬した竹粉末1kgに水1000ml添加し、「ふすま」1.0kgを加え、加熱容器に収容して、加熱容器の中心部分における水温を90℃まで昇温した。そして、90℃の水温を60分維持して、冷却した。冷却温度を20℃〜50℃の範囲で、5℃刻みに変動して、7種類のサンプルを用意した。そして、7種類のサンプルを、冷却温度に維持した状態で、滅菌したシャーレに充填し、種麹(菌)としてアスペルギルスオリゼを同一量ずつ接種し、35℃で3日間静置した。そして、各サンプルにおける麹菌のコロニーの面積により、麹菌発生率を判定した。
実験例7では、冷却温度が30℃よりも低温であれば麹菌が活性化せず、良好に培養されず、冷却温度が40℃よりも高温であれば麹菌は接種された段階で死滅してしまったものと推定される。
実験例7より、第1実施形態のステップS30における冷却工程における冷却温度は、「30℃〜40℃」に決定された。
[実験例8]
12時間水に浸漬した竹粉末1kgに水1000ml添加し、「ふすま」1.0kgを加え、加熱容器に収容して、加熱容器の中心部分における水温を90℃まで昇温した。そして、90℃の水温を60分維持して、35℃に冷却した。
そして、種麹(菌)としてアスペルギルスオリゼを同一量ずつ接種し、3日間静置した。この間の雰囲気温度(麹作製温度)を20℃〜45℃の範囲で、5℃ずつ変動して、6つのサンプルを作成して、醗酵状態を検証した。
実験例8では、麹作製温度が25℃よりも低温であれば麹菌が活性化せず、麹作製温度が40℃よりも高温であれば麹菌が死滅してしまったものと推定される。
実験例8より、実施形態における麹作製温度を25℃〜40℃に設定した。
例えば、醗酵温度が1℃〜10℃であっても、醗酵期間を3ヶ月にすれば、十分に醗酵することが、実験により確認されている。
[実験例9]
12時間水に浸漬した竹粉末1kgに水1000ml添加し、「ふすま」1.0kgを加え、加熱容器に収容して、加熱容器の中心部分における水温を90℃まで昇温した。そして、90℃の水温を60分維持して、35℃に冷却した。
そして、種麹(菌)としてアスペルギルスオリゼを同一量ずつ接種し、35℃で静置した。ここで、静置する期間(作製期間)を1日〜8日の範囲で、1日ずつ変動して、8つのサンプルを作成して、麹の作製状態を検証した。
実験例9では、作製期間が2日よりも短いと麹が出来ず、作製期間が7日よりも長いと胞子が出てしまい、麹が出来なかった。
これにより、麹作製期間を2日〜7日に設定した。
[実験例10]
12時間水に浸漬した竹粉末1kgに水1000ml添加し、「ふすま」1.0kgを加え、加熱容器に収容して、加熱容器の中心部分における水温を90℃まで昇温した。そして、90℃の水温を60分維持して、35℃に冷却した。
そして、種麹(菌)としてアスペルギルスオリゼを同一量ずつ接種し、35℃で3日間静置した。その後、水1000mlと食塩とを添加した。
その際に、食塩の添加量は、160g(竹粉末に対して16質量%)以下の範囲で、10g(竹粉末に対して1質量%)ずつ変動した。
その後、耐塩性乳酸菌培養液及び耐塩性酵母培養液を100mlずつ添加して、30℃で3日醗酵して、醗酵状況を検証した。
食塩の添加量が150g(15質量%)を超えると、後述する乳酸菌及び酵母の活性を妨げるため、醗酵が不良になると推定される。
なお、食塩を添加しないと(添加量が0g:0質量%)、雑菌或いはカビが繁殖したので、不都合である。
以上より、第1実施形態のステップS40の麹作製工程の後に食塩を添加する量(竹粉末に対する食塩の添加率)は、1(質量)%〜15(質量)%に決定した。
[実験例11]
12時間水に浸漬した竹粉末1kgに水1000ml添加し、「ふすま」1.0kgを加え、加熱容器に収容して、加熱容器の中心部分における水温を90℃まで昇温した。そして、90℃の水温を60分維持して、35℃に冷却した。
そして、種麹(菌)としてアスペルギルスオリゼを同一量ずつ接種し、35℃で3日間静置した。その後、食塩100gと水とを添加した。
その際に、水の添加量は、300ml(竹粉末に対して30質量%)〜1700ml(竹粉末に対して180質量%)の範囲で、200ml(竹粉末に対して20質量%)ずつ変動した。
その後、耐塩性乳酸菌培養液及び耐塩性酵母培養液を100mlずつ添加して、30℃で3日醗酵して、調味料の状況を検証した。
表11において、水の添加量が1500ml(竹粉末に対して150質量%)を超えると調味料が薄く仕上がってしまう。一方、水の添加量が500ml(竹粉末に対して50質量%)より少ないと、調味料の粘性が高くなり過ぎてしまった。
以上により、第1実施形態のステップS40の麹作製工程の後における水の添加量は、500ml(竹粉末に対して50質量%)〜1500ml(竹粉末に対して150質量%)に決定した。
[実験例12]
12時間水に浸漬した竹粉末1kgに水1000ml添加し、「ふすま」1.0kgを加え、加熱容器に収容して、加熱容器の中心部分における水温を90℃まで昇温した。そして、90℃の水温を60分維持して、35℃に冷却した。
種麹(菌)としてアスペルギルスオリゼを同一量ずつ接種し、35℃で3日間静置した。その後、食塩100gと水1000mlとを添加した。
そして、耐塩性酵母培養液100mlと耐塩性乳酸菌培養液を添加して、30℃で3日醗酵して、醗酵時における雑菌の増殖を検証した。その際に、耐塩性乳酸菌培養液の添加量50ml〜170mlの範囲で、20mlずつ変動させた。
実験例12では、耐塩性乳酸菌はペディオコッカスハローフィルスであり、その培養液は麹エキス培地を用いている。
耐塩性乳酸菌培養液が70mlよりも少ないと、乳酸が十分に増殖せず、pHが下がらなかったものと推定される。
一方、耐塩性乳酸菌培養液が70ml以上の場合には雑菌は増殖しないが、150mlよりも多いと、発酵後の調味料における酸味が強くなり過ぎてしまった。
その結果、第1実施形態のステップS50の後における耐塩性乳酸菌培養液の添加量は、70ml〜150mlに決定した。
[実験例13]
12時間水に浸漬した竹粉末1kgに水1000ml添加し、「ふすま」1.0kgを加え、加熱容器に収容して、加熱容器の中心部分における水温を90℃まで昇温した。そして、90℃の水温を60分維持して、35℃に冷却した。
種麹(菌)としてアスペルギルスオリゼを同一量ずつ接種し、35℃で3日間静置した。その後、食塩100gと水1000mlとを添加した。
そして、耐塩性乳酸菌培養液100mlと耐塩性酵母培養液を添加して、30℃で3日醗酵して、醗酵後の調味料の味・風味を検証した。その際に、耐塩性酵母培養液の添加量50ml〜170mlの範囲で、20mlずつ変動させた。
実験例13では、耐塩性酵母はチゴサッカロマイセスルキシであり、その培養液は麹エキス培地を用いている。
耐塩性酵母培養液が70mlよりも少ないと、醗酵後の調味料の香気成分が不足するため、味・風味が良くなかった。
一方、耐塩性酵母培養液が150ml以上の場合には、香気が強くなり過ぎて、味・風味に悪影響を与えることが分った。
その結果、第1実施形態のステップS50の後における耐塩性酵母培養液の添加量は、70ml〜150mlに決定した。
[実験例14]
12時間水に浸漬した竹粉末1kgに水1000mlを添加し、水温を90℃まで昇温して60分維持し、35℃に冷却した。そして、ふすま麹を0.7kg(竹粉末に対して70質量%)〜1.5kg(竹粉末に対して150質量%)の範囲で0.1kg(竹粉末に対して10質量%)ずつ変化して、複数のサンプルを作成した。
そして、35℃で3日間静置した後、食塩100gと水1000mlとを添加し、耐塩性乳酸菌培養液100mlと耐塩性酵母培養液100mlを添加して、30℃で3日醗酵して、醗酵状況を検証した。
実験例4では、「ふすま麹」添加量が0.8kg(竹粉末の80質量%)の場合は、麹そのものが不足しており、醗酵が十分に行なわれなかったことが推定される。
一方、「ふすま麹」の量が多い場合、具体的には、「ふすま麹」添加量が0.8kg(竹粉末の80質量%)の場合は、醗酵は良好であった。ただし、「ふすま麹」添加量が1.2kg(竹粉末の120質量%)、1.3kg(竹粉末の130質量%)、1.4kg(竹粉末の140質量%)、1.5kg(竹粉末の150質量%)のサンプルにおいては、醗酵の状態に有意な差がなかった。その結果、原料コストを抑制する意味で、「ふすま麹」の添加量の上限は、竹粉末1kgに対して1.2kg(質量割合120%)とするのが妥当であると判断される。
その結果、第3実施形態のステップS30の冷却工程の後において、「ふすま麹」の添加量は、竹粉末1kgに対して0.8〜1.2kgに設定した。
Claims (2)
- 竹を原料とした醗酵調味料の製造方法において、竹を粒径0.5〜1.0mmの粉末に加工して、竹粉末1kgに水を800〜1200ml加えて2時間以上浸漬させ(S10)、次いで90℃以上で竹粉末に対してふすまを80〜120質量%添加して50〜70分間加熱蒸煮し(S20)、その後40〜30℃で冷却し(S30)、種麹を接種して25〜40℃で2〜7日かけて麹作製を行い(S40)、その後竹粉末に対して1〜15質量%の食塩と50〜150質量%の水を添加してもろみを醸成し(S50)、耐塩性乳酸菌培養液および耐塩性酵母培養液を添加してもろみを醗酵させ(S60)、圧搾濾過し(S61)、殺菌し(S62)、そして容器詰めを行う(S70)ことを特徴とする醗酵調味料の製造方法。
- 竹を原料とした醗酵調味料の製造方法において、竹を粒径0.5〜1.0mmの粉末に加工して、竹粉末1kgに水を800〜1200ml加えて2時間以上浸漬させ(S10)、次いで90℃以上で50〜70分間加熱蒸煮し、40〜30℃で冷却し(S30)、竹粉末に対して80〜120質量%のふすま麹を添加し、竹粉末に対して1〜15質量%の食塩と50〜150質量%の水を添加してもろみを醸成し(S50)、耐塩性乳酸菌培養液および耐塩性酵母培養液を添加してもろみを醗酵させ(S60)、圧搾濾過し(S61)、殺菌し(S62)、そして容器詰めを行う(S70)ことを特徴とする醗酵調味料の製造方法。
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