JP5660525B2 - アルミニウム合金並みの常温成形性を発揮する汎用マグネシウム合金板材及びその製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金並みの常温成形性を発揮する汎用マグネシウム合金板材及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5660525B2
JP5660525B2 JP2010049906A JP2010049906A JP5660525B2 JP 5660525 B2 JP5660525 B2 JP 5660525B2 JP 2010049906 A JP2010049906 A JP 2010049906A JP 2010049906 A JP2010049906 A JP 2010049906A JP 5660525 B2 JP5660525 B2 JP 5660525B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
rolling
magnesium alloy
sample
less
alloy
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2010049906A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2011184726A (ja
Inventor
新ショウ 黄
新ショウ 黄
満 坂本
満 坂本
千野 靖正
千野  靖正
鈴木 一孝
一孝 鈴木
英樹 森
英樹 森
馬渕 守
馬渕  守
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Original Assignee
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST filed Critical National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority to JP2010049906A priority Critical patent/JP5660525B2/ja
Publication of JP2011184726A publication Critical patent/JP2011184726A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5660525B2 publication Critical patent/JP5660525B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Description

本発明は、易成形性マグネシウム合金の製造方法、易成形性マグネシウム合金プレス成形体及び易成形性マグネシウム合金部材に関するものであり、さらに詳しくは、予め押出し加工を施した汎用マグネシウム合金(Mg−Al−Zn−Mn系合金)を、所定の試料表面温度(490〜566℃)に加熱した上で、圧延を行い、該圧延工程において、押出し方向とは異なる角度で圧延を1パス以上行い、その後に、焼鈍を行うことで、常温(30℃)で、アルミニウム合金(5000系もしくは6000系相当)に匹敵する成形性を付与し、さらに、板材の面内異方性を改善した、マグネシウム合金板材、その製造方法、そのプレス成形体及びその部材に関するものである。本発明は、宇宙・航空材料・電子機器材料、自動車部材等、幅広い分野で利用することが可能なマグネシウム合金製部材及び筐体に関する新技術・新製品を提供するものである。
マグネシウムは、実用構造金属材料中、最も低密度(=1.7g/cm)であり、金属材料特有の易リサイクル性を有し、資源も豊富に存在することから、次世代の構造用軽量材料として注目されている。
塑性加工プロセス、特に、板材のプレス成形は、高い歩留まりを保持しつつ、精密成形品・大型成形品を作製するための重要な手段であり、さらに、成形と同時に高強度・高靭性化を図ることができることから、需要拡大の有効な手段と言える。マグネシウム合金製板材から、プレス成形により成形体を作製できる場合、薄肉、かつ高比強度な成形体を安価なプロセスで作製することができ、家電製品筐体等、多くの需要が予測できる。
金属の塑性変形の基本となる転位の運動性は、すべり面間隔/原子間距離の比に影響されることが知られている。したがって、最密六方晶であるマグネシウム合金の場合、a軸長さとc軸長さの比(c/a比)が大きく(c/a=1.6236)、底面すべりと非底面すべりでは、転位の運動性に大きな違いが生じる。
そのため、マグネシウム合金の非底面すべりの臨界分解せん断応力(CRSS)は、常温において、他のすべり系と比較して非常に大きく、常温成形性は、必然的に低い。さらに、マグネシウム合金板材には、(0002)面が板面に対して平行に配向する集合組織が形成されるため、塑性変形時の板厚方向の歪みが期待できず、そのことが、常温成形性を低める一因となっている。
現在、幅広い分野で利用されているアルミニウム合金の常温成形性(エリクセン値)は、上記のマグネシウム合金よりも高く、5000系合金であると8.3(5083−O材)、6000系合金であると9.2(6061−T4材)、1000系合金であると11.0(1100−O材)である(非特許文献1)。一方、商用マグネシウム合金の常温成形性(エリクセン値)は、せいぜい2.0〜5.0である(非特許文献2)。
したがって、マグネシウム合金に関しても、今後、マグネシウム合金板材の著しい需要を見込むためには、アルミニウム合金板材に相当する常温成形性(常温でのエリクセン値が少なくとも8.0以上)を付与することが必要であり、当技術分野においては、優れた易成形性を有する新しいマグネシウム合金板材の製造技術及びその製品を開発することが強く要請されている。
成形性に乏しいマグネシウム合金を、常温でプレス成形する手法としては、集合組織を制御したマグネシウム合金板材を利用することが挙げられる。近年、本発明者らは、規定量の軽希土類元素、Zn、Mn、Zrを添加したマグネシウム合金もしくは、規定量のCa、Zn、Al、Mn、Zrを添加したマグネシウム合金を、特定の条件で熱間・温間圧延し、特定の条件で焼鈍すると、板材の(0002)面集合組織に、板幅方向(TD方向)に約35度傾いた極が現れ、成形性が著しく改善する(エリクセン値8.0以上)ことを発見した(手法1:特許文献1)。
本手法を利用すると、アルミニウム合金並の常温成形性を有するマグネシウム合金板材を作製することができ、デジタルカメラ・ノートパソコン・PDA等の家電製品プレス成形体にマグネシウム合金を積極的に適用することが可能である。一方、本合金を作製するためには、軽希土類元素等の高価な元素を利用する必要があり、商用マグネシウム合金(Mg−Al−Zn−Mn系合金)と比較すると、製品コストは高くなる。
また、本手法により得られる圧延材の(0002)面集合組織は、TD方向に約35°傾いた極を有するため、TD方向には変形し易いが、圧延方向(RD方向)には相対的に変形しにくい。それゆえに、成形性や機械的特性の異方性を解消することが、実用化に向けた課題となっている。
汎用マグネシウム合金(Mg−Al−Zn−Mn系合金)の常温成形性をアルミニウム合金並みに高めるための手段として、繰り返し曲げ加工を行う手法、短時間で高温に昇温した後に圧延する手法、高温で圧延を行った後に仕上げ圧延を行う手法等が提案されている。しかし、いずれの手法も、成形性は改善するが、試料に面内異方性が存在し、成形性、機械的特性に無視できない異方性が生じることが問題となっている。
すなわち、マグネシウム合金の集合組織を改質する手法として、マグネシウム合金板材に繰り返し曲げ加工を施す手法が提案されている。本手法は、汎用マグネシウム合金(Mg−Al−Zn−Mn系合金)に適用することができ、汎用マグネシウム合金の常温成形性をアルミニウム合金並(エリクセン値:6.5以上)に高めることができる(手法2:特許文献2)。しかし、本手法により作製された圧延材の(0002)面集合組織には、RD方向に約45°傾いた極が現れるため、RD方向には変形し易いが、TD方向には変形しにくい。それゆえに、上記手法1と同様、成形性や機械的特性の異方性を解消することが、実用化に向けた課題となっている。
近年、本発明者らは、マグネシウム合金の集合組織を改質する他の手法として、汎用マグネシウム合金(Mg−Al−Zn−Mn系合金)を、所定の試料温度(490℃〜566℃)まで短時間(好ましくは5分未満)で昇温し、圧延率5%以上、好ましくは5〜50%の範囲で熱間圧延を行い、圧延後に、焼鈍を行う手法を開発した(手法3:特許文献3)。
また、近年、本発明者らは、汎用マグネシウム合金に対し、固相線温度より50℃低い温度から固相線温度までの温度範囲に加熱した試料を一回又は複数回で圧延し、その後、温間(150℃〜300℃)で、仕上げ圧延を実施し、圧延後に、焼鈍を行う手法を開発した(手法4:特許文献4)。上記手法により作製される圧延材の(0002)面集合組織は、公知のマグネシウム合金とほぼ同じであり、上記の手法1、2と比較すると、成形性や機械的特性の異方性は少ない。
一方、公知のマグネシウム合金圧延材の(0002)面集合組織にも異方性は存在し、TD方向もしくはRD方向に(0002)面が傾斜した集合組織を示す。それゆえに、公知のマグネシウム合金板材の成形性や機械的特性にも異方性は存在し、その異方性を解消することが課題となっている。先行技術として、AZ31マグネシウム合金板をクロス圧延することにより、RD方向からTD方向へ集積が広がる傾向を示すことが報告されている(特許文献5)。
近年、本発明者らは、汎用マグネシウム合金(Mg−Al−Zn−Mn系合金)に、微量(0.01〜0.5質量%)のカルシウムを添加した合金を、所定の試料表面温度(450℃〜566℃)まで昇温し、圧延率5%以上の範囲で熱間圧延を行い、圧延後に、焼鈍を行うことにより作製する手法を開発した(手法5:特許文献6)。本手法により作製された板材は、アルミニウム合金なみの常温成形性(エリクセン値で少なくとも7.0以上)を示し、優れた面内異方性を示す。
上記手法5は、微量のカルシウムを添加した汎用マグネシウム合金を高温で圧延することにより、優れた成形性と面内異方性を同時に発現することに成功したものである。しかし、市場に出回るマグネシウム合金インゴットの殆どは、カルシウムを含有しないマグネシウム合金(Mg−Al−Zn−Mn系合金)であり、上記手法5を実施するためには、新合金のマテリアルフローの構築(インゴット供給システムの構築、リサイクルシステムの構築)、周辺技術の開発(表面処理技術の開発、接合技術の開発)が必要である。それゆえに、当技術分野においては、市場に出回る汎用マグネシウム合金(Mg−Al−Zn−Mn系合金)の成形性と面内異方性を同時に改善する技術の開発が強く望まれている。
特願2008−292848号 特開2005−298885号公報 特願2009−114038号 特願2009−047403号 特開2004−010959号公報 特願2010−044795号
アルミニウムハンドブック(第4版),軽金属協会編(軽金属協会発行,東京,1989),p.98 Y.Chino,H.Iwasaki and M.Mabuchi:Mater.Sci.Eng.A,Vol.466(2007),p.90
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、成形性や機械的特性に著しい異方性を生じさせずに、汎用マグネシウム合金(Mg−Al−Zn−Mn系合金)に、アルミニウム合金並みの常温成形性(エリクセン値で8.0以上)と優れた面内異方性を付与することを目標として鋭意研究を重ねた結果、予め押出し加工を施した汎用マグネシウム合金(Mg−Al−Zn−Mn系合金)を、所定の試料表面温度(490〜566℃)に加熱した上で、圧延を行い、特に、押出し方向とは異なる角度で、1パス以上の圧延を行い、その後に、焼鈍を行うことにより、アルミニウム合金並みの常温成形性を有し、かつ異方性の少ない汎用マグネシウム合金圧延材を作製することに成功し、本発明を完成するに至った。
本発明は、汎用マグネシウム合金(Mg−Al−Zn−Mn系合金)を利用して、優れた常温成形性と面内異方性を同時に示す板材を作製するための手法を提供することを目的とするものである。また、本発明は、公知のマグネシウム合金圧延材よりも優れた成形性と面内異方性を有するマグネシウム合金板材を提供することを目的とするものである。また、本発明は、該マグネシウム合金板材を成形して、複雑形状を有するマグネシウム合金製プレス成形体及びマグネシウム合金製部材を常温で作製する製造方法を提供することを目的とするものである。さらに、本発明は、上記手法により作製されたマグネシウム合金板材、マグネシウム合金製プレス成形体及びマグネシウム合金製部材を提供することを目的とするものである。
上記技術課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)予め押出し加工を施した、質量%で、Al:2.5〜7.2%、Zn:0超〜2.0%以下、Mn:0超〜1.0%以下、残部がMg及び不可避不純物からなるMg合金の試料表面を、490〜566℃まで加熱し、押出し方向とは異なる角度で、総圧延率15%以上の熱間圧延を1パスのみ行うか、2パス以上の場合は熱間圧延をすべて同方向もしくは逆方向で行い、さらに、熱間圧延後に、焼鈍を行うことを特徴とする、易成形性マグネシウム合金板材の製造方法。
(2)Mg合金の試料表面を、490〜566℃まで加熱し、押出し方向に対して垂直方向に、総圧延率15%以上の熱間圧延を1パス以上行う、前記(1)に記載の易成形性マグネシウム合金板材の製造方法。
(3)焼鈍前に、圧延板の試料表面温度を300℃未満に設定し、総圧延率50%未満の範囲で仕上げ圧延を行う、前記(1)又は(2)に記載の易成形性マグネシウム合金板材の製造方法。
(4)予め押出し加工を施した、質量%で、Al:2.5〜7.2%、Zn:0超〜2.0%以下、Mn:0超〜1.0%以下、残部がMg及び不可避不純物からなるMg合金の試料表面を、490〜566℃まで加熱し、押出し方向と同じ方向にのみ、総圧延率15%以上の熱間圧延を1パス以上行い、その後、圧延板の試料表面温度を300℃未満に設定し、押出し方向と異なる角度で、総圧延率50%未満の範囲で1パスの仕上げ圧延を行うか、2パス以上の場合は仕上げ圧延をすべて同方向もしくは逆方向で行い、さらに、焼鈍を行うことを特徴とする、易成形性マグネシウム合金板材の製造方法。
(5)Mg合金の試料表面温度を、490〜566℃まで加熱し、押出し方向と同じ方向に、総圧延率15%以上の熱間圧延を1パス以上行い、その後、圧延板の試料表面温度を300℃未満に設定し、押出し方向に対して垂直方向に、総圧延率50%未満の範囲で仕上げ圧延を行う、前記(4)に記載の易成形性マグネシウム合金板材の製造方法。
(6)前記(1)から(5)のいずれかに記載の製造方法で製造してなる底面集合組織の形成が抑制されたMg合金圧延材であって、質量%で、Al:2.5〜7.2%、Zn:0超〜2.0%以下、Mn:0超〜1.0%以下、残部がMg及び不可避不純物からなり、エリクセン値が、少なくとも8.0以上であり、面内異方性の指標値である、圧延方向と引張り方向が0°の条件で得られる0.2%耐力と、圧延方向と引張り方向が90°の条件で得られる0.2%耐力の差が、30MPa以下である優れた面内異方性を有することを特徴とする易成形性マグネシウム合金板材。
(7)エリクセン値が、少なくとも8.8以上である、前記(6)に記載の易成形性マグネシウム合金板材。
(8)前記(6)から(7)のいずれかに記載の易成形性マグネシウム合金板材の成形体からなることを特徴とするマグネシウム合金製プレス成形体。
(9)請求項8に記載のマグネシウム合金製プレス成形体からなることを特徴とするマグネシウム合金製部材。
次に、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明は、予め押出し加工を施した、質量%で、Al:2.5〜7.2%、Zn:0超〜2.0%以下、Mn:0超〜1.0%以下、残部がMg及び不可避不純物からなるMg合金の試料表面を、490〜566℃まで加熱し、押出し方向とは異なる角度、好ましくは、押出し方向に対して垂直方向で、総圧延率15%以上の熱間圧延を1パス以上行い、熱間圧延後に、焼鈍を行うことを特徴とするものである。
また、本発明は、予め押出し加工を施した、質量%で、Al:2.5〜7.2%、Zn:0超〜2.0%以下、Mn:0超〜1.0%以下、残部がMg及び不可避不純物からなるMg合金の試料表面を、490〜566℃まで加熱し、押出し方向とは異なる角度、好ましくは、押出し方向に対して垂直方向で、総圧延率15%以上の熱間圧延を1パス以上行い、圧延終了前に、圧延板の試料表面温度を300℃未満に設定し、総圧延率50%未満の範囲で仕上げ圧延を行い、圧延後に、焼鈍を行うことを特徴とするものである。
また、本発明は、予め押出し加工を施した、質量%で、Al:2.5〜7.2%、Zn:0超〜2.0%以下、Mn:0超〜1.0%以下、残部がMg及び不可避不純物からなるMg合金の試料表面温度を、490〜566℃まで加熱し、押出し方向と同じ方向に、総圧延率15%以上の熱間圧延を1パス以上行い、その後、圧延板の試料表面温度を300℃未満に設定し、押出し方向とは異なる角度、好ましくは、押出し方向に対して垂直方向で、総圧延率50%未満の範囲で仕上げ圧延を行い、圧延後に、焼鈍を行うことを特徴とするものである。
また、本発明は、質量%で、Al:2.5〜7.2%、Zn:0超〜2.0%以下、Mn:0超〜1.0%以下、残部がMg及び不可避不純物からなるMg合金圧延材であり、エリクセン値が少なくとも8.0以上、好ましくは8.8以上であり、面内異方性の指標値、すなわち圧延方向と引張り方向が0°の条件で得られる0.2%耐力と、圧延方向と引張り方向が90°の条件で得られる0.2%耐力の差が、30MPa以下を示す板材である。
さらに、本発明は、上記製造方法で作製した易成形性マグネシウム合金板材の成形体であって、上記のエリクセン値と上記の面内異方性を示す、マグネシウム合金製プレス成形体、及び該マグネシウム合金製プレス成形体からなるマグネシウム合金部材の点に特徴を有するものである。
本発明者らは、以前の研究において、汎用マグネシウム合金(Mg−Al−Zn−Mn系合金)のプレス成形体を、常温(30℃)で作製するための手段として、当該マグネシウム合金を、所定の試料温度(490℃〜566℃)まで、短時間、好ましくは5分未満で昇温し、圧延率5%以上の熱間圧延を行い、圧延後に、焼鈍を行う手法を開発した(手法3)。
また、本発明者らは、以前の研究において、汎用マグネシウム合金に対し、固相線温度より50℃低い温度から固相線温度までの温度範囲に加熱した試料を一回又は複数回で圧延し、その後、温間、すなわち150℃〜300℃で、仕上げ圧延を実施し、圧延後に、焼鈍を行う手法を開発した(手法4)。この手法の原理の一つは、試料表面温度を490℃以上に設定して、柱面<a>すべりや錐面<c+a>すべり(非底面すべり)の活動を活発化し、圧延中に(0002)面集合組織の形成を促進する{10−12}<10−11>双晶の活動を抑制することにある。
この手法により作製された圧延材の(0002)面集合組織は、公知のマグネシウム合金とほぼ同じ形状を示すが、公知のマグネシウム合金よりも著しく低い極密度を示す。それゆえに、高い冷間成形性が発現する。なお、公知のマグネシウム合金圧延材の(0002)面集合組織にも異方性は存在し、TD方向もしくはRD方向に(0002)面が傾斜した集合組織を示す。それゆえに、公知のマグネシウム合金にも成形性や機械的特性に異方性が存在し、その異方性を解消することが課題となっている。
さらに、近年、本発明者らは、汎用マグネシウム合金(Mg−Al−Zn−Mn系合金)に、微量(0.01〜0.5質量%)のカルシウムを添加した合金を、所定の試料表面温度(450℃〜566℃)まで昇温し、圧延率5%以上の範囲で熱間圧延を行い、圧延後に、焼鈍を行う手法を開発した(手法5)。
この手法により作製された圧延材の(0002)面集合組織は、公知のマグネシウム合金の(0002)面集合組織と比較して、同心円上の極の分布を示し、さらに、公知のマグネシウム合金の(0002)面集合組織よりも著しく低い極密度を示す。この手法の原理の一つは、汎用マグネシウム合金に微量のカルシウムを添加することにより、柱面<a>すべりや錐面<c+a>すべり(非底面すべり)の活動を活発化することにある。一方、本発明のマグネシウム合金は、汎用マグネシウム合金と組成が異なるため、新たなマテリアルフローや周辺技術の構築が必要であることが課題となっている。
そこで、本発明者らは、加工プロセスの制御により、汎用マグネシウム合金(Mg−Al−Zn−Mn系合金)に、高い常温成形性と優れた面内異方性を同時に付与することを目標に掲げ、詳細かつ系統的な実験を試みた結果、予め押出し加工を施した汎用マグネシウム合金を、所定の試料表面温度(490〜566℃)に加熱した上で圧延を行い、特に、押出し方向とは異なる角度で行う圧延を1パス以上実施し、その後に、焼鈍を行うと、その集合組織が改質され、優れた常温成形性と面内異方性が同時に発現することを見出した。
ここで、後記する実施例で利用するMg−3.0質量%Al−1.0質量%Zn−0.5質量%Mn合金押出し材(AZ31合金押出し材)の(0002)面集合組織を図1に示す。図1に示す通り、押出し加工に供した汎用マグネシウム合金(AZ31合金)は、(0002)面が押出し方向に対して平行に揃い、TD方向に(0002)面の極が分布する集合組織を示す。
次に、後記する実施例で説明する、AZ31合金押出し材を圧延した試料の(0002)面集合組織とエリクセン試験結果を図2に示す。図2[比較例1]は、AZ31合金を、試料表面温度225℃で、押出し方向に対して平行に、厚み5mmから1mmまで4パスで圧延し、熱処理(350℃、1時間)に供した試料の結果である。圧延後の(0002)面集合組織には、押出し材の(圧延前の)集合組織の影響が残存し、TD方向に極の分布が確認できる。
図2[比較例2]は、AZ31合金を、試料表面温度550℃で、押出し方向に対して平行に、厚み5mmから1.5mmまで3パスで圧延し、次に、試料表面温度225℃で、1.5mmから1mmまで1パスで、押出し方向に対して平行に圧延し、最後に熱処理(350℃、1時間)に供した試料の結果である。550℃の高温で圧延を実施することにより、(0002)面集合組織の形成は抑制され、極密度は、著しく低い値を示す。結果として、比較例2は、比較例1と比較して、著しく高い常温成形性(エリクセン値:9.1)を示す。
一方、押出し方向と同じ方向の圧延を実施した場合、高温で圧延を行っても、押出し材の(圧延前の)集合組織の影響は残存し、TD方向への極の分布を有する集合組織を示す。TD方向への(0002)面の極の分布を有する圧延材は、TD方向に変形し易く、RD方向に変形しにくくなり、機械的特性の異方性及び面内異方性が発現する。
図2[実施例1]は、試料表面温度550℃で、押出し方向に対して垂直に、厚み5mmから1.5mmまで3パスで圧延し、次に、試料表面温度225℃で、押出し方向に対して垂直に、厚み1.5mmから1mmまで1パスで圧延し、最後に熱処理(350℃、1時間)に供した試料の結果である。実施例1で作製したAZ31合金の(0002)面集合組織は、比較例2と同様に、比較例1よりも著しく低い極密度を示す。
一方、比較例2と比較して、RD方向に拡張した極の分布を示し、相対的に同心円状の極密度分布を示す。比較例1よりも著しく低い極密度と、比較例1や比較例2よりも相対的に同心円状の極密度分布を示す実施例1の試料は、優れた常温成形性(エリクセン値:9.7)と優れた面内異方性を示す。
試料表面温度490〜566℃で、熱間圧延を実施すると、焼鈍後の(0002)面集合組織の極密度が著しく低い値を取るのは、当該温度域まで試料を加熱すると、柱面<a>すべりや錐面<c+a>すべり(非底面すべり)が活動し易くなり、非底面すべりの活発化により、圧延中の(0002)面集合組織の形成を促進する{10−12}<10−11>双晶の活動が抑制されるからである(手法3)。
また、押出し方向と熱間圧延の方向を異なる方向(好ましくは90°)に設定すると、押出し加工の際に形成される(0002)面集合組織と、加工の際に形成される(0002)面集合組織が相殺され、集合組織形成が抑制され、かつ同心円状の底面集合組織が形成される。
本発明者らは、以上の研究開発から得られた知見より、予め押出し加工を施した、汎用マグネシウム合金(Mg−Al―Zn−Mn系合金)を、所定の試料表面温度(490〜566℃)に加熱した上で、圧延を行い、特に、押出し方向とは異なる角度で行う圧延を1パス以上行い、その後に、焼鈍を行うことにより、優れた常温成形性と、優れた面内異方性を示す易成形性マグネシウム合金板材を創製することに成功した。
本発明のマグネシウム合金板材の成分及び作製条件の限定理由を説明する。本発明の製造方法に適用されるマグネシウム合金は、重量%で、Al:2.5〜7.2%、Zn:0超〜2.0%以下、Mn:0超〜1.0%以下を含有し、残部がMg及び不可避不純物からなる成分組成を有するものである。
Alの含有量は、十分な鋳造性と固溶強化を図るために、2.5〜7.2%の範囲内で添加されていることが好ましい。なお、Alの添加量が7.2%を超えると、熱間加工性が低下する。また、Alの添加量が2.5%未満では、十分な固溶強化が図れない。
Znの含有量は、2.0%以下の範囲内で添加されてもよい。Znは、Alと同様に、鋳造性と強度等の機械的性質の向上に寄与するものであるが、Znの添加量が2.0%を超えると、鋳造性が低下する。
Mnの含有量は、1.0%以下の範囲内で添加されることが好ましい。Mg−Al−Zn系合金にMnを添加すると、Al−Mn系の金属間化合物が粒内・粒界に析出し、熱間圧延時の異状粒成長を抑制する役割を果たす。一方、Mn添加量が1.0%を超えると、金属間化合物が粗大化するので、過度の添加は避けるべきである。
押出し加工の際に形成される底面集合組織と、圧延加工の際に形成される底面集合組織を相殺し、底面集合組織の形成を抑制するためには、押出し方向とは異なる角度で圧延を実施することが好ましい。好適には、押出し方向に対して垂直方向に圧延を実施すると、効果的に底面集合組織の形成を相殺することができる。
熱間圧延に際しては、柱面<a>すべりや錐面<c+a>すべりが十分活動する、490℃以上に試料表面温度を加熱する必要がある。一方、試料表面温度を固相線温度(566℃)以上に加熱すると、試料が溶解するため、試料表面温度は、566℃未満と設定すべきである。
試料に目的の集合組織を造りこむためには、熱間圧延中に十分な塑性変形を板材に付与する必要がある。具体的には、少なくとも熱間圧延の全圧延率を、15%以上に設定する必要がある。
圧延前に、試料を490℃以上に長時間加熱すると、結晶粒が異常粒成長し、圧延後の結晶粒は粗大化する。粗大な結晶粒を有するマグネシウム合金の強度は低く、延性は劣化する。それゆえに、試料加熱時間は、短ければ短い方がよい。好適には、試料加熱時間は、5分未満とすべきである。一方、試料時間加熱時間を比較的長く(5〜15分)設定しても、最後に、温間(試料温度300℃未満)で、仕上げ圧延を行えば、仕上げ圧延の効果により、結晶粒を微細化することができる。それゆえに、試料加熱時間に合わせて、温間仕上げ圧延を実施するかどうかを決めればよい。
圧延の最終段階で仕上げ圧延を行う場合は、仕上げ圧延のみ押出し方向と圧延方向を垂直に設定することも可能である。すなわち、表面温度490〜566℃まで試料を加熱し、押出し方向と平行に総圧延率15%以上の熱間圧延を1パス以上行い、最後に、試料温度300℃未満の仕上げ圧延(総圧下率50%未満)を、押出し方向に対して垂直に実施すると、押出しの際に形成された(0002)面集合組織の形成と、仕上げ圧延の際に形成される(0002)面集合組織の形成が相殺され、同心円状の(0002)面集合組織が得られ、優れた常温成形性と優れた面内異方性が発現する。
なお、圧延の最終段階で、仕上げ圧延を行わない場合は、圧延中に試料を高温に晒す機会を極力減らすことが必要である。たとえば、所定の厚みまで、比較的低い試料表面温度(400℃未満)で圧延を行い、最後の圧延のみ、試料を短時間で高温に加熱して、圧延を行うと、試料を高温に晒す機会を減らすことができ、結晶粒の異常粒成長を極少化できる。
熱間圧延後の試料内部には、高密度の転位が蓄積されているため、板材の常温成形を行う前に熱処理(完全焼き鈍し)を行うことが望ましい。具体的には、300〜450℃において、10分以上の熱処理に供した後に、プレス成形に供することが望ましい。
上記、発明要素を駆使して作製されたマグネシウム合金板材は、常温(30℃)で、アルミニウム合金に相当する成形性(エリクセン値で8.0以上、好ましくは8.8以上)を示す。ここでは、マグネシウム合金板材の成形性を表す指標として、エリクセン値を採用した。エリクセン試験は、JIS B7729及びJIS Z2274に準ずる試験を指す。なお、得られる試験片サイズの都合上、本実施例は、φ50mmもしくはφ60mmのブランクを利用した。
上記、発明要素を駆使して作製されたマグネシウム合金板材は、優れた常温成形性と優れた面内異方性を示す。ここでは、面内異方性を示す指標値として引張り試験により得られる0.2%耐力に注目した。具体的には、圧延方向と引張り方向が0°の条件で得られる0.2%耐力と圧延方向と引張り方向が90°の条件で得られる0.2%耐力の差が30MPa以下であることを指標値とした。
本発明により、次のような効果が奏される。
(1)予め押出し加工を施した汎用マグネシウム合金(Mg−Al−Zn−Mn系合金)を、所定の試料表面温度(490〜566℃)に加熱した上で圧延を行い、特に、圧延工程において、押出し方向とは異なる角度で行う圧延を1パス以上行い、その後に、焼鈍を行うことにより、優れた常温成形性と面内異方性を有するマグネシウム合金板材を作製することができる。
(2)得られた板材は、優れた常温成形性(エリクセン値8.0以上、好ましくは8.8以上)を示し、さらに、優れた面内異方性(圧延方向と引張り方向が0°の条件で得られる0.2%耐力と圧延方向と、引張り方向が90°の条件で得られる0.2%耐力の差が30MPa以下)を示すマグネシウム合金板材を作製することが可能であり、幅広い用途に適用可能なマグネシウム合金板材を提供することができる。
(3)本発明を利用すると、既存の圧延装置を利用して、優れた常温成形性と面内異方性を示す汎用マグネシウム合金板材を作製することが可能であり、低コストで板材を作製することができる。
(4)上記マグネシウム合金板材を常温成形することにより、マグネシウム合金製プレス成形体を作製し、提供することができる。
(5)上記マグネシウム合金製プレス成形体からなる筐体等のマグネシウム合金製部材を作製し、提供することができる。
実施例において利用したマグネシウム合金押出し材の(0002)面集合組織を示したものであり、(0002)面が押出し方向に対して平行に揃い、TD方向(板幅方向)に(0002)面の極が分布する集合組織を示す。 実施例において利用したマグネシウム合金圧延材の(0002)面集合組織とエリクセン試験の結果を示したものであり、[比較例1]、[比較例2]、[実施例1]は、比較例1、比較例2、実施例1で作製した試料の(0002)面集合組織とエリクセン試験結果を示す。
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1〜3
予め押出し加工を実施したAZ31合金(Mg−3.0質量%Al−1.0質量%Zn−0.5質量%Mn)を供試材とした。圧延前の試料形状は、80×110×5.0mm(比較例1〜2及び実施例1〜3)もしくは、50×60×5.0mm(実施例4)である。供試材の(0002)面集合組織を図1に示す。図1に示す通り、押出し加工に供した汎用マグネシウム合金(AZ31合金)は、(0002)面が押出し方向に対して平行に揃い、TD方向に(0002)面の極が分布する集合組織を示す。
比較例1〜2及び実施例1〜3の試料の圧延条件をまとめて表1に示す。予め、225〜550℃に保持したマッフル炉を利用して、試料表面の加熱を実施した。マッフル炉の温度は、目標とする試料表面温度と同じである。マッフル炉に試料を投入後、熱電対により計測する試料表面温度が所定値に到達した時点で、試料を、マッフル炉から取り出し、すかさず、熱間圧延に供した。
いずれの圧延パスも、試料加熱時間は、約10分である。圧延時の1パス当たりの圧延率は、33%とし、所定の厚みまで熱間圧延を実施した。比較例1及び比較例2は、押出し方向と圧延方向は、常に同じ向きとした。実施例1は、試料温度550℃で、押出し方向と垂直方向の圧延を3パス実施し、試料温度225℃で、押出し方向と垂直方向に圧延を1パス実施した。
実施例2は、試料温度550℃で、押出し方向と同じ向きの圧延を2パス実施し、次に、試料温度550℃で、押出し方向と垂直方向の圧延を1パス実施し、最後に、試料温度225℃で、押出し方向と垂直方向に圧延を1パス実施した。実施例3は、試料温度550℃で、押出し方向と同じ向きの圧延を3パス実施し、次に、試料温度225℃で、押出し方向と垂直方向に圧延を1パス実施した。いずれの試料も、圧延後に、350℃、60分の条件で焼鈍を行った。
実施例4の試料の圧延条件を表1の下部に示す。予め480℃もしくは545℃に保持したマッフル炉を利用して、試料表面の加熱を実施した。マッフル炉の温度は、目標とする試料表面温度よりも20〜30℃高く設定した。マッフル炉に試料を投入後、熱電対により計測する試料表面温度が所定値に到達した時点で、試料を、マッフル炉から取り出し、すかさず、熱間圧延に供した。
いずれの圧延パスも、試料加熱時間は、5分未満である。圧延時の1パス当たりの圧延率は、20%とし、全てのパスにおいて、押出し方向に対して垂直方向に熱間圧延を実施した。具体的には、厚み5.0mmから1.5mmまでの5パスは、試料温度450℃(炉温度480℃)に達した時点で、圧延を実施し、厚み1.5mmから1.0mmまでの2パスは、試料温度525℃(炉温度545℃)で、圧延を実施した。圧延後に、350℃、90分の条件で焼鈍を行った。
作製したマグネシウム合金板材の常温成形性を評価するために、エリクセン試験を実施した。エリクセン試験は、JIS B7729及びJIS Z2247に準拠する。なお、ブランク形状は、板材形状の都合上、比較例1〜2及び実施例1〜3では、φ50mmのブランクを利用した。実施例4では、φ60mmのブランクを利用した。いずれも、試料の厚みは1.0mmである。金型(試料)温度は、30℃とし、成形速度は、5mm/minとし、しわ押さえ力は、10kNとした。潤滑剤には、グラファイトグリスを利用した。
作製したマグネシウム合金板材の常温における面内異方性を評価するために、常温引張り試験を実施した。圧延方向と引張り方向の角度が0°と90°となる引張り試験片を、圧延材から切り出した。比較例1〜2及び実施例1〜3では、平行部長さ12mm、平行部幅3.5mm、平行部厚み1.0mmの試験片を、圧延材より作製し、クロスヘッドスピード2.0mm/minで、引張り試験を実施した。
実施例4では、平行部長さ10mm、平行部幅5mm、平行部厚み1.0mmの試験片を、圧延材より作製し、クロスヘッドスピード1.0mm/minで、引張り試験を実施した。引張り試験により得られた0.2%耐力を測定し、その差を読み取った。各試料のエリクセン値及び0.2%耐力の値を表2にまとめて示す。
比較例1は、試料温度225℃で、いずれの圧延も、押出し方向と平行に実施した結果である。エリクセン値は、8.0未満であり、面内異方性の指標値も、30MPa以上となった。比較例2は、試料温度550℃で、押出し方向と平行に3パス圧延を行い、最後に、試料温度225℃で、押出し方向と平行に1パス圧延を行った結果である。エリクセン値8.0以上の優れた常温成形性を示したが、面内異方性の指標値は、30MPa以上であった。
実施例1は、試料温度550℃で、押出し方向と垂直方向の圧延を3パス実施し、試料温度225℃で、押出し方向と垂直方向に圧延を1パス実施した結果である。押出し方向に対して垂直方向に熱間圧延を行うことにより、優れた常温成形性(エリクセン値:9.7)と優れた面内異方性(0.2%耐力の差:22MPa)が発現した。
実施例2は、試料温度550℃で、押出し方向と同じ向きの圧延を2パス実施し、次に、試料温度550℃で、押出し方向と垂直方向の圧延を1パス実施し、最後に、試料温度225℃で、押出し方向と垂直方向に圧延を1パス実施した結果である。押出し方向と垂直方向に圧延を行う回数を減らしても、総圧下率が15%以上であれば、優れた常温成形性(エリクセン値:9.6)と優れた面内異方性(0.2%耐力の差:20MPa)が発現することが確認された。
実施例3は、試料温度550℃で、押出し方向と同じ向きの圧延を3パス実施し、次に、試料温度225℃で、押出し方向と垂直方向の圧延を1パス実施した結果である。押出し方向と圧延方向の角度が異なる圧延が、最後の仕上げ圧延だけであっても、優れた常温成形性(エリクセン値:9.1)と優れた面内異方性(0.2%耐力の差:25MPa)が発現することが確認された。
実施例4は、厚み5.0mmから1.5mmまでの圧延は、試料温度450℃で、実施し、厚み1.5mmから1.0mmまでの圧延は、試料温度525℃で、実施した結果である。圧延方向は、押出し方向に対して垂直方向である。試料を短時間で昇温して、所定の総圧下率の熱間圧延を実施すると、温間仕上げ圧延を行わなくても、優れた常温成形性(エリクセン値:8.8)と優れた面内異方性(0.2%耐力の差:9MPa)が発現することが確認された。
以上詳述したように、本発明は、アルミニウム合金並みの常温成形性を発揮する汎用マグネシウム合金板材及びその製造方法に係るものであり、本発明により、予め押出し加工を施した汎用マグネシウム合金(Mg−Al−Zn−Mn系合金)を、所定の試料表面温度(490〜566℃)に加熱した上で、圧延を行い、特に、押出し方向とは異なる角度で行う圧延を1パス以上行い、その後に、焼鈍を行うことにより易成形性マグネシウム合金板材を作製することができる。作製された板材は、アルミニウム合金なみの常温成形性を示し、優れた面内異方性を示す。本発明を利用すると、アルミニウム合金に匹敵する成形性と、優れた面内異方性を有するマグネシウム合金板材を低コストで作製することが可能であり、異方性と成形性を同時に改善したマグネシウム合金板材を作製することができる。本発明は、デジタルカメラ・ノートパソコン・PDA等、主に家電製品のプレス成形体を中心として積極的に適用することが可能である易成形性マグネシウム合金板材及びその製造方法を提供するものとして有用である。

Claims (9)

  1. 予め押出し加工を施した、質量%で、Al:2.5〜7.2%、Zn:0超〜2.0%以下、Mn:0超〜1.0%以下、残部がMg及び不可避不純物からなるMg合金の試料表面を、490〜566℃まで加熱し、押出し方向とは異なる角度で、総圧延率15%以上の熱間圧延を1パスのみ行うか、2パス以上の場合は熱間圧延をすべて同方向もしくは逆方向で行い、さらに、熱間圧延後に、焼鈍を行うことを特徴とする、易成形性マグネシウム合金板材の製造方法。
  2. Mg合金の試料表面を、490〜566℃まで加熱し、押出し方向に対して垂直方向に、総圧延率15%以上の熱間圧延を1パス以上行う、請求項1に記載の易成形性マグネシウム合金板材の製造方法。
  3. 焼鈍前に、圧延板の試料表面温度を300℃未満に設定し、総圧延率50%未満の範囲で仕上げ圧延を行う、請求項1又は2に記載の易成形性マグネシウム合金板材の製造方法。
  4. 予め押出し加工を施した、質量%で、Al:2.5〜7.2%、Zn:0超〜2.0%以下、Mn:0超〜1.0%以下、残部がMg及び不可避不純物からなるMg合金の試料表面を、490〜566℃まで加熱し、押出し方向と同じ方向にのみ、総圧延率15%以上の熱間圧延を1パス以上行い、その後、圧延板の試料表面温度を300℃未満に設定し、押出し方向と異なる角度で、総圧延率50%未満の範囲で1パスの仕上げ圧延を行うか、2パス以上の場合は仕上げ圧延をすべて同方向もしくは逆方向で行い、さらに、焼鈍を行うことを特徴とする、易成形性マグネシウム合金板材の製造方法。
  5. Mg合金の試料表面温度を、490〜566℃まで加熱し、押出し方向と同じ方向に、総圧延率15%以上の熱間圧延を1パス以上行い、その後、圧延板の試料表面温度を300℃未満に設定し、押出し方向に対して垂直方向に、総圧延率50%未満の範囲で仕上げ圧延を行う、請求項4に記載の易成形性マグネシウム合金板材の製造方法。
  6. 請求項1から5のいずれかに記載の製造方法で製造してなる底面集合組織の形成が抑制されたMg合金圧延材であって、質量%で、Al:2.5〜7.2%、Zn:0超〜2.0%以下、Mn:0超〜1.0%以下、残部がMg及び不可避不純物からなり、エリクセン値が、少なくとも8.0以上であり、面内異方性の指標値である、圧延方向と引張り方向が0°の条件で得られる0.2%耐力と、圧延方向と引張り方向が90°の条件で得られる0.2%耐力の差が、30MPa以下である優れた面内異方性を有することを特徴とする易成形性マグネシウム合金板材。
  7. エリクセン値が、少なくとも8.8以上である、請求項6に記載の易成形性マグネシウム合金板材。
  8. 請求項6から7のいずれかに記載の易成形性マグネシウム合金板材の成形体からなることを特徴とするマグネシウム合金製プレス成形体。
  9. 請求項8に記載のマグネシウム合金製プレス成形体からなることを特徴とするマグネシウム合金製部材。
JP2010049906A 2010-03-05 2010-03-05 アルミニウム合金並みの常温成形性を発揮する汎用マグネシウム合金板材及びその製造方法 Active JP5660525B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010049906A JP5660525B2 (ja) 2010-03-05 2010-03-05 アルミニウム合金並みの常温成形性を発揮する汎用マグネシウム合金板材及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2010049906A JP5660525B2 (ja) 2010-03-05 2010-03-05 アルミニウム合金並みの常温成形性を発揮する汎用マグネシウム合金板材及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2011184726A JP2011184726A (ja) 2011-09-22
JP5660525B2 true JP5660525B2 (ja) 2015-01-28

Family

ID=44791360

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010049906A Active JP5660525B2 (ja) 2010-03-05 2010-03-05 アルミニウム合金並みの常温成形性を発揮する汎用マグネシウム合金板材及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5660525B2 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6035645B2 (ja) * 2012-02-20 2016-11-30 国立大学法人 熊本大学 マグネシウム合金材の製造方法
WO2017111550A1 (ko) * 2015-12-23 2017-06-29 주식회사 포스코 마그네슘 합금 판재, 및 그 제조방법
CN105603341B (zh) * 2016-02-04 2017-08-04 哈尔滨工业大学(威海) 制造高塑性/成形性变形镁合金板材的方法
CN107435159A (zh) * 2016-05-02 2017-12-05 纳米及先进材料研发院有限公司 使用微弧氧化工艺的合金表面色彩处理
KR20190000676A (ko) * 2017-06-23 2019-01-03 주식회사 포스코 마그네슘 합금 판재 및 이의 제조방법
CN107299304B (zh) * 2017-06-23 2019-09-13 中国科学院长春应用化学研究所 一种细化热挤压镁合金显微组织的方法
CN111647833B (zh) * 2020-07-29 2021-05-25 中南大学 一种大尺寸卫星用镁合金的热处理方法
CN112210735B (zh) * 2020-10-22 2021-12-28 重庆科技学院 一种具有梯度结构镁合金板材的制备方法

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004010959A (ja) * 2002-06-06 2004-01-15 Mitsui Mining & Smelting Co Ltd マグネシウム合金板の改質方法及びマグネシウム合金板
JP2004237351A (ja) * 2003-02-10 2004-08-26 Mitsubishi Heavy Ind Ltd 帯材の圧延方法および圧延装置
JP2004346351A (ja) * 2003-05-20 2004-12-09 Toyo Kohan Co Ltd マグネシウム板の製造方法
JP3988888B2 (ja) * 2004-04-09 2007-10-10 日本金属株式会社 塑性加工性に優れたマグネシウム合金の板の製造方法
JP4599594B2 (ja) * 2005-09-20 2010-12-15 独立行政法人産業技術総合研究所 マグネシウム合金大クロス圧延材によるプレス成形体

Also Published As

Publication number Publication date
JP2011184726A (ja) 2011-09-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5660525B2 (ja) アルミニウム合金並みの常温成形性を発揮する汎用マグネシウム合金板材及びその製造方法
JP5515167B2 (ja) 常温成形性を改善した商用マグネシウム合金板材およびその作製方法
WO2009147861A1 (ja) 易成形性マグネシウム合金板材及びその作製方法
JP4189687B2 (ja) マグネシウム合金材
JP5590660B2 (ja) 冷間成形性と面内異方性を改善したマグネシウム合金板材及びその作製方法
CN104046934B (zh) 制备超细晶镁锌锰合金的方法
JP5692847B2 (ja) 常温成形性と強度を改善したマグネシウム合金板材及びその作製方法
CN110193530B (zh) 使用铝合金的弯曲成型品的制造方法
JP5252363B2 (ja) マグネシウム合金プレス成形体及びその作製方法
CN111020254B (zh) 一种低合金化高强韧易编织可降解医用锌合金丝材及其制备方法
JP2008240026A (ja) 強度および成形性に優れたチタン合金材およびその製造方法
JP7248252B2 (ja) 強度-延性バランスと常温加工性に優れたマグネシウム合金板
JP4599594B2 (ja) マグネシウム合金大クロス圧延材によるプレス成形体
JP5700379B2 (ja) マグネシウム合金圧延材の製造方法及びマグネシウム合金圧延材並びにプレス成形体
JP2011230171A (ja) 優れたプレス成形性を有するチタン板及びその製造方法
WO2017065208A1 (ja) 超弾性効果及び/又は形状記憶効果を発現するマグネシウム合金
JP3597747B2 (ja) ねじ部品の製造方法
CN112281093A (zh) 一种高性能镁锂合金薄带的制备工艺
CN110923518B (zh) 一种6xxx系铝合金及其时效工艺
JP2006161153A (ja) 絞り成形性に優れたアルミニウム合金板材およびその製造方法
CN110669972B (zh) 一种高强耐蚀镁合金及其制备方法
JP3808757B2 (ja) 高延性Mg合金素材の製法
CN102002654B (zh) 提高镁合金强度和塑性的热处理工艺
CN100363147C (zh) 一种镁合金型材及其挤压方法
JP2021055168A (ja) マグネシウム合金板

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20130304

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20130304

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20130304

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20140306

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20140312

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20140512

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20140512

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20140514

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20140624

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20141119

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20141125

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5660525

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250