JP5660324B2 - 樹脂組成物およびその製造方法 - Google Patents
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Description
導電性ナノフィラー(A)、2種以上の樹脂(B)、ならびにアルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基、カルボキシル基、オキセタン基およびオキサゾリン基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物(C)を含有する樹脂組成物であり、
該樹脂組成物は、前記2種以上の樹脂(B)のうちの導電性ナノフィラー(A)との親和性が最も高い樹脂(Baff)により形成された連続相と、前記樹脂(Baff)以外の樹脂(B1)により形成された分散相とを備え、
前記樹脂(B aff )は、ポリオレフィン系樹脂、ポリアリーレンスルフィド、ポリエステル系樹脂および窒素原子を含有する樹脂からなる群から選択される1種であり、
前記樹脂(B1)は、芳香族ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、およびイミド環含有ビニル系重合体からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記分散相には前記導電性ナノフィラー(A)が存在し、
前記樹脂組成物全体に対する前記分散相の割合をX(単位:容量%)、および全導電性ナノフィラー(A)に対する前記分散相中に含まれる導電性ナノフィラー(Adsp)の割合をY(単位:容量%)としたとき、Y/Xが1.0以上であることを特徴とするものである。
導電性ナノフィラー(A)、2種以上の樹脂(B)、および官能基を有する化合物(C)を含有する樹脂組成物の製造方法であって、
前記2種以上の樹脂(B)のうちの導電性ナノフィラー(A)との親和性が最も高い樹脂(B aff )が、ポリオレフィン系樹脂、ポリアリーレンスルフィド、ポリエステル系樹脂および窒素原子を含有する樹脂からなる群から選択される1種であり、
前記2種以上の樹脂(B)のうちの前記樹脂(B aff )以外の樹脂(B1)が、芳香族ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、およびイミド環含有ビニル系重合体からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記官能基を有する化合物(C)が、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基、カルボキシル基、オキセタン基およびオキサゾリン基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有するものであり、
前記導電性ナノフィラー(A)の少なくとも一部と、前記樹脂(B1)の少なくとも一部とを混合して前記導電性ナノフィラー(A)と前記樹脂(B1)との混合物を調製した後、
前記混合物と前記樹脂(Baff)とを混合することを特徴とする方法である。本発明の樹脂組成物の製造方法において、前記官能基を有する化合物(C)は、前記混合物の調製時に混合してもよいし、前記混合物と前記樹脂(Baff)とを混合する際に混合してもよい。
本発明に用いられる導電性ナノフィラー(A)としては特に制限はないが、例えば、カーボン系ナノフィラー、金属系ナノフィラー、および金属や導電性高分子などで被覆されたナノフィラーなどが好ましい。これらの導電性ナノフィラーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。このような導電性ナノフィラーのうち、熱伝導性および機械強度の向上という観点から、異方性導電性ナノフィラーが好ましく、異方性カーボン系ナノフィラーおよび異方性金属系ナノフィラーがより好ましく、異方性カーボン系ナノフィラーが特に好ましい。
本発明においては、樹脂を2種以上(好ましくは2種)使用する。このような樹脂(B)としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、熱硬化性イミド樹脂、熱硬化性ポリアミドイミド、熱硬化性シリコーン樹脂、尿素樹脂(ユリア樹脂)、不飽和ポリエステル樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキド樹脂、シアネート樹脂、ウレタン樹脂、およびジアリルフタレート樹脂などの熱硬化性樹脂;ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリ(α−メチルスチレン)、α−メチルスチレン−アクリロニトリル共重合体、ポリ(クロロメチル)スチレン、メタクリル酸メチル−アクリロニトリル−スチレン樹脂などの芳香族ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル、ポリ(メタ)アクリル酸プロピル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、ポリ(メタ)アクリル酸、およびこれらの共重合体などのアクリル系樹脂、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−アクリル酸メチル樹脂およびアクリロニトリル−ブタジエン樹脂といったシアン化ビニル系樹脂、イミド環含有ビニル系重合体、ポリオレフィン系樹脂、酸無水物変性アクリル系エラストマー、エポキシ変性アクリル系エラストマー、シリコーン樹脂、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリ1,4−シクロヘキサンジメチルテレフタレートといったポリエステル系樹脂、ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリアリーレンエーテル、ポリフェニレンスルフィドなどのポリアリーレンスルフィド、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリオキシメチレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレンプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデンおよびポリフッ化ビニルに代表されるフッ素樹脂、ポリ乳酸、ポリ塩化ビニル、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルアミド、多環芳香族基含有重合体などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
で表されるマレイミド系モノマー単位、下記式(II):
で表されるグルタルイミド基含有構成単位などが挙げられる。
本発明に用いられる官能基を有する化合物(以下、「官能基含有化合物(C)」という)は、前記高親和性樹脂(Baff)および前記その他の樹脂(B1)のうちの少なくとも1種との親和性および/または反応性を有するものであり、中でも、前記高親和性樹脂(Baff)および前記その他の樹脂(B1)のうちの少なくとも1種との反応性を有するものが好ましい。このような官能基含有化合物(C)を用いることによって導電性ナノフィラー(A)は前記その他の樹脂(B1)により形成された分散相に局在化する。なお、本発明においては、この官能基含有化合物(C)が前記高親和性樹脂(Baff)および前記その他の樹脂(B1)のうちの少なくとも1種と反応している場合には、その反応生成物も本発明にかかる官能基含有化合物(C)に含まれるものとする。
3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシランといったエポキシ基含有アルコキシシラン化合物;
N−ジグリシジル−N,N−ビス(3−(メチルジメトキシシリル)プロピル)アミン、N−ジグリシジル−N,N−ビス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アミンといったエポキシ基とアルコキシシリル基を含有するアミン化合物;
イソシアン酸3−(トリメトキシシリル)プロピル、イソシアン酸3−(トリエトキシシリル)プロピルといったアルコキシシリル基含有イソシアン酸エステル化合物;
1,3,5−N−トリス(3−トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−メチルジメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、1,3,5−N−トリス(3−トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートといったアルコキシシリル基含有イソシアヌレート化合物;
3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリエトキシシランといったアミノ基含有アルコキシシラン化合物;
ビニルトリエトキシシランといったアルコキシシリル基含有ビニル化合物;
クロロシラン、ブロモシランといったハロシランやポリハロシラン;
N,N−ビス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アミン、N,N−ビス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)エチレンジアミン、N,N−ビス((メチルジメトキシシリル)プロピル)アミン、N,N−ビス(3−(メチルジメトキシリル)プロピル)エチレンジアミンといった複数のアルコキシシリル基を含有するアミン化合物;
N,N−ビス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)メタクリルアミド、N,N−ビス(3−(トリメトキシシリル)プロピル)アクリルアミド、N,N−ビス((メチルジメトキシシリル)プロピル)メタクリルアミドといったアルコキシシリル基含有アミド化合物;
ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルファン、ビス(トリエトキシシリルエチルトリレン)ポリスルファンといったアルコキシシリル基含有ポリスルファン;
ビスフェノールA−ジグリシジルエーテルといったビスフェノールA型エポキシ化合物;
ビスフェノールF−ジグリシジルエーテルといったビスフェノールF型エポキシ化合物;
ビスフェノールAD−ジグリシジルエーテルといったビスフェノールAD型エポキシ化合物;
フタル酸グリシジルエステルといったグリシジルエステル系エポキシ化合物;
N−グリシジルアニリンといったグリシジルアミン系エポキシ化合物
などが挙げられる。
アルコキシシリル基含有ポリエチレン、アルコキシシリル基含有ポリプロピレンといったアルコキシシリル基含有ポリオレフィン;
シラノール基変性ポリエチレン、シラノール基変性ポリプロピレン、シラノール基変性エチレン−プロピレン共重合体、シラノール基変性エチレン−プロピレン−ジエン共重合体といったシラノール基変性ポリオレフィン;
フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂といったノボラック型エポキシ樹脂;
エポキシ基含有ポリエチレン、エポキシ基含有ポリプロピレンといったエポキシ基含有ポリオレフィン;
エポキシ基含有(メタ)アクリル系ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−N−フェニルマレイミド−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン−N−フェニルマレイミド−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体など)、エポキシ基含有芳香族ビニル系ポリマー(例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体、スチレン−N−フェニルマレイミド−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体スチレン−アクリロニトリル−N−フェニルマレイミド−(メタ)アクリル酸グリシジル共重合体など)、エポキシ基含有アクリルエラストマーといったエポキシ基含有ビニル系ポリマー;
カルボキシル基含有(メタ)アクリル系ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−N−フェニルマレイミド−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン−N−フェニルマレイミド−(メタ)アクリル酸共重合体など)、カルボキシル基含有芳香族ビニル系ポリマー(例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−N−フェニルマレイミド−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル−N−フェニルマレイミド−(メタ)アクリル酸共重合体など)、カルボキシル基含有アクリルエラストマーといったカルボキシル基含有ビニル系ポリマー;
酸無水物基含有(メタ)アクリル系ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン−無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−N−フェニルマレイミド−無水マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸メチル−スチレン−N−フェニルマレイミド−無水マレイン酸共重合体など)、酸無水物基含有芳香族ビニル系ポリマー(例えば、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル−無水マレイン酸共重合体、スチレン−N−フェニルマレイミド−無水マレイン酸共重合体、スチレン−アクリロニトリル−N−フェニルマレイミド−無水マレイン酸共重合体など)、酸無水物基含有アクリルエラストマーといった酸無水物基含有ビニル系ポリマー;
アルコキシシリル基含有(メタ)アクリル系ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル共重合体など)、アルコキシシリル基含有芳香族ビニル系ポリマー(例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル共重合体など)といったアルコキシシリル基含有ビニル系ポリマー;
アミノ基含有(メタ)アクリル系ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸2−アミノエチル共重合体など)、アミノ基含有芳香族ビニル系ポリマー(例えば、スチレン−2−アミノエチル共重合体など)といったアミノ基含有ビニル系ポリマー;
オキセタン基含有(メタ)アクリル系ポリマー、オキセタン基含有芳香族ビニル系ポリマーといったオキセタン基含有ビニル系ポリマー;
オキサゾリン基含有(メタ)アクリル系ポリマー(例えば、(メタ)アクリル酸メチル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン共重合体など)、オキサゾリン基含有芳香族ビニル系ポリマー(例えば、スチレン−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−2−イソプロペニル−2−オキサゾリン共重合体など)といったオキサゾリン基含有ビニル系ポリマー
なども本発明にかかる官能基含有化合物(C)として使用することができる。
本発明の樹脂組成物においては、必要に応じて充填材(D)を含有させてもよい。これにより、得られる樹脂組成物の強度、耐熱性、熱伝導性などをさらに向上させることができる。このような充填材(D)は繊維状のものであっても粒状などの非繊維状のものであってもよい。その具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アラミド繊維、セルロース繊維、アスベスト、チタン酸カリウムウィスカ、ワラステナイト、ガラスフレーク、ガラスビーズ、タルク、モンモリロナイトに代表される粘土鉱物、マイカ(雲母)鉱物およびカオリン鉱物に代表される層状ケイ酸塩、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化アルミニウムおよびドロマイトなどが挙げられる。本発明の樹脂組成物における充填材の含有率としては、充填材の種類によって異なるため一概に規定はできないが、例えば、樹脂組成物全体に対して0.05容量%以上が好ましく、0.1容量%以上がより好ましく、1容量%以上がさらに好ましく、また、90容量%以下が好ましく、80容量%以下がより好ましく、70容量%以下がさらに好ましく、60容量%以下が特に好ましい。
本発明の樹脂組成物には、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリ(パラフェニレン)、ポリチオフェンおよびポリフェニレンビニレンといった導電性ポリマーなどの導電性物質、および前記導電性物質で被覆されたフィラーなどを含有させることもできる。このような導電性物質および導電性物質で被覆されたフィラーの添加量としては特に制限はないが、絶縁性(体積抵抗率が好ましくは1013Ω・cm以上)を維持できる範囲内であることが好ましい。また、前記導電性物質および前記導電性物質で被覆されたフィラーの分散状態としては特に制限はないが、絶縁性を維持したまま、これらの添加による効果を得るという観点からは、これらの少なくとも一部がその他の樹脂(B1)により形成された分散相中に含まれていることが好ましく、これらの添加量の半分以上がその他の樹脂(B1)により形成された分散相中に含まれていることがより好ましい。
次に、本発明の樹脂組成物の製造方法について説明する。本発明の樹脂組成物の製造方法としては、例えば、導電性ナノフィラー(A)、前記導電性ナノフィラー(A)との親和性が最も高い樹脂(Baff)、その他の樹脂(B1)、官能基含有化合物(C)、および必要に応じて、充填材(D)、その他の添加剤を混合した後、押出機などを用いた溶融混練により混合する方法;バンバリーミキサーやゴムロール機を用いた溶融混練により混合する方法などが挙げられる。前記押出機としては、十分な混練能力のあるものであれば特に制限はなく、一軸または多軸のベントを有するものなどが挙げられる。また、前記各成分の形状は特に制限はなく、ペレット状、粉末状、細片状などいずれの形状のものを使用してもよい。
このようにして調製された本発明の樹脂組成物は、上述したように、前記その他の樹脂(B1)により形成された分散相と高親和性樹脂(Baff)により形成された連続相を備えており、前記分散相に導電性ナノフィラー(A)が存在するものであり、前記分散相と前記連続相との界面に官能基含有化合物(C)の少なくとも一部が存在していることが好ましい。これにより熱伝導性および絶縁性が向上する傾向にある。なお、本発明の樹脂組成物において分散相とは、前記その他の樹脂(B1)が前記高親和性樹脂(Baff)に取り囲まれた部分を意味する。
試料を重水素化ジメチルスルホキシドに溶解し、30℃、400MHzの条件で1H−NMR測定を実施し、得られた各構成単位のプロトンの積分値の比から各構成単位のモル比を決定し、質量比に換算した。なお、1H−NMRチャートにおいて、スチレン単位のベンゼン環のプロトンは7.1〜7.45ppmに、N−フェニルマレイミド単位のフェニル基のメタ位のプロトンは7.5ppm付近に、メタクリル酸メチル単位のメチルエステル基のメチル基のプロトンは3.5ppm付近に、メタクリル酸グリシジル単位の2,3−エポキシメチル基中のエステル基に結合したメチレン基のプロトンは4.0ppm付近と4.5ppm付近に確認できる。
ペレット状の樹脂組成物を表1に示す条件で真空乾燥した後、表1に示す成形温度でプレス成形を行い、厚み2mmの成形品を得た。この成形品から直径100mm、厚み2mmの円盤状の試料を切り出し、ハイレジスタンスメータ(アジレント・テクノロジー(株)製「AGILENT4339B」)を用い、JIS K6911に準拠して500Vを印加し、1分後の体積抵抗率を測定した。
ペレット状の樹脂組成物を表1に示す条件で真空乾燥した後、表1に示す成形温度でプレス成形を行い、厚み2mmの成形品を得た。この成形品から長さ25mm×幅25mm×厚み2mmの試料を切り出し、定常法熱伝導率測定装置(アルバック理工(株)製「GH−1」)を用い、40℃(上下の温度差24℃)で試料の厚み方向の熱伝導率(W/(mK))を測定した。
ペレット状の樹脂組成物を表1に示す条件で真空乾燥した後、表1に示す成形温度でプレス成形を行い、厚み1mmの成形品を得た。この成形品から長さ40mm×幅5mm×厚み1mmの試料を切り出し、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御(株)製「itk DVA−220」)を用いて、温度範囲:30℃〜200℃、昇温速度:5℃/分、変形モード:引張、歪み:0.05%、測定周波数:10Hz、チャック間距離:25mmの条件で動的粘弾性測定を行い、40℃の貯蔵弾性率(GPa)を求めた。
ペレット状の樹脂組成物を表1に示す条件で真空乾燥した後、表1に示す成形温度でプレス成形を行い、厚み2mmの成形品を得た。この成形品から40mm×5mm×2mmの試料を切り出し、この試料の中央部の凍結破断面の中心部(表面から0.8〜1.2mmの範囲の部分)のうちの任意の部分を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて撮影し、厚みが均一な印画紙に現像した。得られたSEM写真において、成形品の大きさで90μm×90μmの範囲を任意に5箇所抽出した。この抽出した範囲の写真の質量を測定した後、前記抽出範囲からその他の樹脂(B1)により形成された分散相に相当する部分を切り取り、切り取った部分の写真の質量を測定し、前記抽出範囲に対する前記分散相に相当する部分の写真の質量割合(質量%)を算出した。この写真の質量割合は、使用した印画紙の厚みが均一であるため、前記抽出範囲における樹脂組成物に対する分散相の容量割合(容量%)とみなすことができる。以下の実施例および比較例においては、前記抽出した任意の5箇所について前記分散相の容量割合を求め、その平均値を、樹脂組成物全体に対する分散相の割合X(単位:容量%)とした。
・導電性ナノフィラー(a−1)
多層カーボンナノチューブ(ナノカーボンテクノロジーズ(株)製「MWNT−7」、直径分布40〜90nm、アスペクト比100以上、G/D値8.0)。
・高親和性樹脂(baff−1)
ポリフェニレンスルフィド((株)クレハ製「フォートロンW202A」、比重1.35)。
・高親和性樹脂(baff−2)
ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)製高密度ポリエチレン「ノバテックHD HY430」、JIS K6922−1に準拠して測定したメルトフローレート0.8g/10min、比重0.96)。
・樹脂(b1−1)
以下の方法により合成したスチレン−N−フェニルマレイミド共重合体
撹拌機と還流管を備えた反応容器に、スチレン35質量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.4質量部およびメチルエチルケトン200質量部を仕込み、この溶液を、窒素気流下、200rpmで攪拌しながら75℃まで昇温した。その後、75℃に保持しながらN−フェニルマレイミド30質量部、スチレン35質量部およびメチルエチルケトン300質量部を2時間かけて等速添加し、さらに75℃で2時間保持して重合を終了した。重合後の溶液を30℃まで冷却した後、5倍当量のメタノールに注ぎ込み、再沈殿により精製し、得られた沈殿物を真空乾燥して溶媒を完全に留去し、スチレン−N−フェニルマレイミド共重合体を得た。
ポリスチレン(Aldrich社製、製品番号430102、比重1.05)。
・樹脂(b1−3)
ポリフェニレンスルフィド((株)クレハ製「フォートロンW202A」、比重1.35)。
・官能基含有化合物(c−1)
以下の方法により合成したメタクリル酸メチル−N−フェニルマレイミド−メタクリル酸グリシジル共重合体
メタクリル酸メチル25.5質量部、N−フェニルマレイミド72質量部、メタクリル酸グリシジル2.5質量部、n−ドデシルメルカプタン0.13質量部および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.15質量部をメチルエチルケトン(MEK)250質量部に溶解し、還流管を備えた三つ口フラスコに仕込んだ。この溶液を窒素雰囲気下で攪拌しながら60℃まで昇温し、60℃で4時間保持した後、室温まで冷却した。得られた溶液をクロロホルムで希釈した後、不溶分を取り除き、過剰量のメタノールに滴下して再沈殿により精製し、得られた沈殿物を真空乾燥してメタクリル酸メチル−N−フェニルマレイミド−メタクリル酸グリシジル共重合体を得た。
以下の方法により合成したスチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体
スチレン95質量部、メタクリル酸グリシジル(GMA)5質量部、n−ドデシルメルカプタン0.13質量部および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.15質量部をメチルエチルケトン(MEK)250質量部に溶解し、還流管を備えた三つ口フラスコに仕込んだ。この溶液を窒素雰囲気下で攪拌しながら60℃まで昇温し、60℃で4時間保持した後、室温まで冷却した。得られた溶液をクロロホルムで希釈した後、不溶分を取り除き、過剰量のメタノールに滴下して再沈殿により精製し、得られた沈殿物を真空乾燥してスチレン−メタクリル酸グリシジル共重合体を得た。
・官能基含有化合物(c−3)
エポキシ変性ポリエチレン(住友化学(株)製「ボンドファースト−E」、メタクリル酸グリシジル含有量12質量%、比重0.94)。
導電性ナノフィラー(a−1)4.76容量%および樹脂(b1−1)95.24容量%を配合し、ベントを備えた二軸溶融混練押出機((株)テクノベル製、スクリュ径:15mm、L/D:60)に投入して、樹脂温度300℃、スクリュ回転数100rpmの条件で溶融混練を実施した。吐出された混練物をストランド状に押し出し、冷却後にストランドカッターにより切断してペレットを製造した。このペレットを80℃で12時間真空乾燥した後、目的とする樹脂組成物の全成分の合計100容量%に対して、前記ペレット21容量%(導電性ナノフィラー(a−1)1容量%および樹脂(b1−1)20容量%からなるもの)、高親和性樹脂(baff−1)74容量%および官能基含有化合物(c−1)5容量%を前記二軸溶融混練押出機に投入して、樹脂温度300℃、スクリュ回転数100rpmの条件で溶融混練を実施した。吐出された混練物をストランド状に押し出し、冷却後にストランドカッターにより切断してペレット状の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物について、Y/X値、体積抵抗率、熱伝導率および弾性率を前記方法に従って測定した。その結果を表2に示す。
樹脂(b1−1)の代わりに樹脂(b1−2)を95.24容量%配合し、樹脂温度を250℃に変更した以外は実施例1と同様にして、導電性ナノフィラー(a−1)と樹脂(b1−2)とを含有するペレットを作製した。導電性ナノフィラー(a−1)と樹脂(b1−1)とを含有するペレットの代わりに、このペレットを21容量%(導電性ナノフィラー(a−1)1容量%および樹脂(b1−2)20容量%からなるもの)用い、樹脂温度を290℃に変更した以外は実施例1と同様にしてペレット状の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物について、Y/X値、体積抵抗率、熱伝導率および弾性率を前記方法に従って測定した。その結果を表2に示す。
全成分の合計100容量%に対して、導電性ナノフィラー(a−1)1容量%、高親和性樹脂(baff−1)79容量%および樹脂(b1−1)20容量%を配合し、ベントを備えた二軸溶融混練押出機(テクノベル社製、スクリュ径15mm、L/D:60)に投入して、樹脂温度300℃、スクリュ回転数は100rpmの条件で溶融混練を実施した。吐出された混練物をストランド状に押し出し、冷却後にストランドカッターにより切断してペレット状の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物について、Y/X値、体積抵抗率、熱伝導率および弾性率を前記方法に従って測定した。その結果を表2に示す。
表2に示す組み合わせおよび配合量で、導電性ナノフィラー、高親和性樹脂、その他の樹脂および官能基含有化合物を用いた以外は比較例1と同様にしてペレット状の樹脂組成物を得た。これらの樹脂組成物について、Y/X値、体積抵抗率、熱伝導率および弾性率を前記方法に従って測定した。その結果を表2に示す。
実施例1と同様にして導電性ナノフィラー(a−1)と樹脂(b1−1)とを含有するペレットを作製した。このペレットを80℃で15時間真空乾燥した後、目的とする樹脂組成物の全成分の合計100容量%に対して、前記ペレット21容量%(導電性ナノフィラー(a−1)1容量%および樹脂(b1−1)20容量%からなるもの)および高親和性樹脂(baff−1)79容量%を前記二軸溶融混練押出機に投入した以外は実施例1と同様にしてペレット状の樹脂組成物を得た。この樹脂組成物について、Y/X値、体積抵抗率、熱伝導率および弾性率を前記方法に従って測定した。その結果を表2に示す。
全成分の合計100容量%に対して、導電性ナノフィラー(a−1)1容量%およびその高親和性樹脂(baff−1)99容量%を配合した以外は比較例1と同様にしてペレット状の樹脂組成物を得た。これらの樹脂組成物について、体積抵抗率、熱伝導率および弾性率を前記方法に従って測定した。その結果を表2に示す。
Claims (6)
- 導電性ナノフィラー(A)、2種以上の樹脂(B)、ならびにアルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基、カルボキシル基、オキセタン基およびオキサゾリン基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有する化合物(C)を含有する樹脂組成物であり、
該樹脂組成物は、前記2種以上の樹脂(B)のうちの導電性ナノフィラー(A)との親和性が最も高い樹脂(Baff)により形成された連続相と、前記樹脂(Baff)以外の樹脂(B1)により形成された分散相とを備え、
前記樹脂(B aff )は、ポリオレフィン系樹脂、ポリアリーレンスルフィド、ポリエステル系樹脂および窒素原子を含有する樹脂からなる群から選択される1種であり、
前記樹脂(B1)は、芳香族ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、およびイミド環含有ビニル系重合体からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記分散相には前記導電性ナノフィラー(A)が存在し、
前記樹脂組成物全体に対する前記分散相の割合をX(単位:容量%)、および全導電性ナノフィラー(A)に対する前記分散相中に含まれる導電性ナノフィラー(Adsp)の割合をY(単位:容量%)としたとき、Y/Xが1.0以上であることを特徴とする樹脂組成物。 - Yが20容量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
- 前記導電性ナノフィラー(A)がカーボン系ナノフィラーであることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物。
- 熱伝導率が0.3W/(mK)以上であり且つ体積抵抗率が1013Ω・cm以上であることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の樹脂組成物。
- 導電性ナノフィラー(A)、2種以上の樹脂(B)、および官能基を有する化合物(C)を含有する樹脂組成物の製造方法であって、
前記2種以上の樹脂(B)のうちの導電性ナノフィラー(A)との親和性が最も高い樹脂(B aff )が、ポリオレフィン系樹脂、ポリアリーレンスルフィド、ポリエステル系樹脂および窒素原子を含有する樹脂からなる群から選択される1種であり、
前記2種以上の樹脂(B)のうちの前記樹脂(B aff )以外の樹脂(B1)が、芳香族ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、およびイミド環含有ビニル系重合体からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記官能基を有する化合物(C)が、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基、カルボキシル基、オキセタン基およびオキサゾリン基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有するものであり、
前記導電性ナノフィラー(A)の少なくとも一部と、前記樹脂(B1)の少なくとも一部とを混合して前記導電性ナノフィラー(A)と前記樹脂(B1)との混合物を調製した後、
前記混合物と、前記樹脂(Baff)と、前記官能基を有する化合物(C)とを混合することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。 - 導電性ナノフィラー(A)、2種以上の樹脂(B)、および官能基を有する化合物(C)を含有する樹脂組成物の製造方法であって、
前記2種以上の樹脂(B)のうちの導電性ナノフィラー(A)との親和性が最も高い樹脂(B aff )が、ポリオレフィン系樹脂、ポリアリーレンスルフィド、ポリエステル系樹脂および窒素原子を含有する樹脂からなる群から選択される1種であり、
前記2種以上の樹脂(B)のうちの前記樹脂(B aff )以外の樹脂(B1)が、芳香族ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、およびイミド環含有ビニル系重合体からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記官能基を有する化合物(C)が、アルコキシシリル基、エポキシ基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、メルカプト基、ウレイド基、カルボキシル基、オキセタン基およびオキサゾリン基からなる群から選択される少なくとも1種の官能基を有するものであり、
前記導電性ナノフィラー(A)の少なくとも一部と、前記樹脂(B1)の少なくとも一部と、前記官能基を有する化合物(C)の少なくとも一部とを混合して前記導電性ナノフィラー(A)と前記樹脂(B1)との混合物を調製した後、
前記混合物と前記樹脂(Baff)とを混合することを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
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