JP5656429B2 - 振動波駆動装置 - Google Patents
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Description
一般に、超音波モータは振動子と被駆動体との間の摩擦力を用いて、振動子の発生する超音波領域の振動により振動子と被駆動体との相対移動を行う装置である。
そのため摩擦力を発生させる手段として振動子と被駆動体間の加圧構造を備える必要がある。
一般に実用化されている加圧構造は、金属等で形成されるバネの変形力を利用している。
バネを用いる加圧構造は安定した加圧力が得られるので超音波モータとしても安定した出力が得られるが、部品点数を要するため加圧構造のためのスペースを必要とする。
超音波モータは小型機器への搭載が求められており、加圧構造の小型、簡素化が課題となっている。
ここでは、振動体として作用する略矩形状の圧電基板の第一の面に、永久磁石を有する被駆動体を配置し、圧電基板の第一の面と対向する面に永久磁石との間で磁気吸引力を発生する軟磁性体からなる磁気ヨークを有する構造が開示されている。
一方、近年は直線運動を生成するいわゆるリニア型超音波モータが開発されている。
このようなリニア型超音波モータとして、例えば、特許文献1ではつぎのようなものが開示されている。
振動子は凸状に形成された突起部を有し、少なくとも電気−機械エネルギ変換素子からなる板状の振動体と、突起部に加圧接触する被駆動体とを備える。
振動体は、電気−機械エネルギ変換素子への駆動信号の入力を受けることで、節の発生方向が互いに略直交し、周波数が略一致する2つの曲げ振動モードを励起し、突起部を介して被駆動体に対して相対的に移動するように構成されている。ここで提案されているリニア型超音波モータにおいても、磁力を用いた加圧構造を形成することができる。
その際、例えば、特許文献2で提案されているリニア型超音波モータのように、加圧構造を形成することが可能である。
すなわち、被駆動体の少なくとも一部を永久磁石として、さらに板状の振動体を構成する部品を軟磁性体とすることで、突起部において振動体と被駆動体との間の加圧力を発生させることが可能である。
そして、被駆動体であるスライダは、磁石材料から成る角棒状のスライダ基部を備え、振動板を構成する軟磁性材と合わせて磁気回路を形成し、スライダと振動板との間で摩擦力を発生させる。
リニア型超音波モータにおける振動子と被駆動体は、支持部材、あるいはガイド部材により拘束や位置決めが行われる。
これらの支持部材やガイド部材においては、寸法精度や組立時の位置ずれを避けることが困難であり、そのため振動子と被駆動体との間において相対的な位置ずれが常に生じることになる。
例えば、特許文献2のリニア型超音波モータの場合、振動子と被駆動体が、これらの相対駆動方向と直交する方向にずれた場合、振動子と被駆動体の接触面に発生する加圧力に偏りが生じる。
そのため、加圧力が大きくなる付近は駆動時の摩耗が進み、加圧力が小さい箇所は駆動力が低下してしまうこととなる。
このような振動子と被駆動体の位置ずれが、結果としてリニア型超音波モータの出力性能や耐久性を低下させるという課題が生じる。
前記振動子と前記被駆動体は第1の方向に相対的に移動可能に構成され、
前記被駆動体は、第一の磁力発生部を備え、
前記振動子は、前記第1の方向と直交し前記加圧の方向とも直交する方向において第一の磁力発生部の幅より狭い範囲に第二の磁力発生部を備え、
前記被駆動体の前記接触部との前記第2の方向への加圧接触が、前記第一の磁力発生部と前記第二の磁力発生部との間で発生する磁気吸引力により行われることを特徴とする。
実施例1として、本発明の振動波駆動装置を適用したリニア型超音波モータの構成例について、図1、図2を用いて説明する。
これらの図に示されるように、本実施例のリニア型超音波モータにおいて、振動子1は平板状の金属板から成る振動板12、矩形平板状の電気―機械変換素子13、加圧部材11を備える。
振動板12はオーステナイト系ステンレスであるSUS304の板材から所望の形に加工して形成されている。
振動板12は矩形状に形成される振動部位12−1と振動子の支持及び固定の用途を成す2つの支持部位12−2とから構成される。
振動板12の第一の面には電気―機械変換素子13が接着により一体化されている。振動板12の第一の面と対向する第二の面には加圧部材11が接着により一体化されている。
振動板12の振動部位12−1、電気―機械変換素子13、加圧部材11はそれぞれ図2中Y方向に対称形状であり、支持部位12−2を除き振動子1はY方向に対称となるように形成されている。
加圧部材11には、接触部として2か所の接触面11−1が形成されている。接触面11−1はZ方向に凸状に形成された箇所であり、振動子1においてZ方向に一番上部に位置している。
加圧部材11は軟磁性体であるマルテンサイト系ステンレスであるSUS420J2を選択し焼き入れ処理により硬度を確保している。
加圧部材11に形成される接触面11−1は被駆動体2との加圧接触を行う部位であり、耐摩耗性が得られる材料と処理方法が選択される。この加圧部材11は第二の磁力発生部として作用する。
被駆動体2は略直方体形状で、永久磁石により形成され、第一の磁力発生部として作用する。
本実施例では磁力を確保するためにNdFe磁石を選択している。また、被駆動体2の表面は全面に防錆のためのNiメッキ処理が施されている。
被駆動体2は、被駆動体接触面2−1(図3参照)において振動子接触面11−1と加圧接触しており、前述のNiメッキは被駆動体2における摩擦材の用途を兼ねている。
ここで、発生させる曲げ振動モードの作用により接触面11−1はX−Z面内の楕円運動を生じる。この接触面11−1に発生させる楕円運動の作用により、被駆動体2とのX方向の相対移動が行われる。
この相対移動の詳しい説明は、例えば特許文献1に記載されており、ここでの詳述は略す。
被駆動体2は前述のようにNdFe磁石で形成されており、図中Z方向に着磁処理が施されている。
振動子1の加圧部材11は前述のように軟磁性体であるマルテンサイト系ステンレスで形成されており、被駆動体2との間で磁力による吸引力が発生する。
この作用により被駆動体接触面2−1と振動子接触面11−1は加圧接触される。
振動子接触面11−1は、被駆動体接触面2−1よりY方向に短くなるように形成されている。
振動体1は2つの支持部12−2において、不図示の保持部材に固定されている。
被駆動体2は不図示のガイド部材によりY方向に移動しないように、且つX方向に移動可能なように保持されている。
振動子1において磁気吸引力を発生させる部位は加圧部材11のみであり、他の部位は作用しない。
このことから磁気吸引力はY方向において振動子の中央位置に集中していることとなる。
相対位置ずれにより磁気吸引力はY方向に偏りを生じるが、これにより生じるX軸回りのモーメント力を抑えることができる。
また、相対位置ずれの量を考慮して、上記のように振動子接触面11−1は、被駆動体接触面2−1よりY方向に短くなるようにすることで、振動子接触面11−1はY方向に被駆動体接触面2−1より常に内側に配置されるように、Y方向の幅が選択されている。
これにより、振動子は、被駆動体との相対移動の方向と直交する方向において上記第一の磁力発生部の幅より狭い範囲に、上記第二の磁力発生部を備えた構成とすることができ、出力性能の安定化と耐久性の向上を図ることが可能となる。
すなわち、磁気による吸引力は被駆動体2の角部、即ち図中2−2の個所に集中する。
そのため、仮に振動子接触面11−1が角部2−2を含むように接触した状態で超音波モータの動作を行っていると角部2−2及び振動子接触面11−1の角部2−2と接する箇所、各々が局所的な摩耗が急速に進行してしまう。
この結果、超音波モータの本来の耐久性を確保できず、短期間での性能低下が生じてしまう。
これに対して、本実施例の上記した第一の磁力発生部の幅より狭い範囲に、上記第二の磁力発生部を備えた構成によれば、振動子接触面11−1が角部2−2と接触せずに駆動することができる。そのため、耐久性を維持し、長期の安定駆動を実現することが可能となる。
また、加圧部材11は上記したように振動子接触面11−1を含んでおり、被駆動体2に近接しているので、磁気吸引力を効果的に発生させることができる。そして、被駆動体2及び加圧部材11はサイズを大きくすることなく所望の磁気吸引力が得られる。
振動子1を薄くできる利点を生かした上で、本発明の構成を採用することでリニア型超音波モータの小型化を実現することが可能となる。
また、本実施例では被駆動体2は永久磁石により形成され、振動子1の加圧部材11は軟磁性体で形成されているが、このような構成に限定されるものではない。加圧部材部材を永久磁石により形成しても良く、被駆動体または加圧部材の少なくとも一方が永久磁石を含む構成であれば良い。
実施例2として、本発明の振動波駆動装置を適用したリニア型超音波モータの構成例について、図4、図5を用いて説明する。
これらの図に示されるように、本実施例のリニア型超音波モータにおいて、振動子は振動板12、電気―機械変換素子13、接触部材14、及び磁気部材15を備える。
振動板12及び電気―機械変換素子13は、図2を用いて説明した実施例1と同一であるのでここでの説明は略す。
接触部材14はSUS440Aに焼き入れ処理を施しており、軟磁性材料であることと振動子の摩擦材料としての作用を併せ持つ。
接触部材14は、振動板12の上面でありX及びY方向の略中央に配置される。磁気部材15は接触部材14の表面に重ねるように配置される。磁気部材15の寸法は、図中X方向は2つの振動子接触面14−1の間隔に収まる長さでありZ方向は振動子接触面14−1の高さを超えないように選ばれている。
また、磁気部材15のY方向は接触部材14のY方向寸法を超えないように選ばれている。磁気部材15はNdFe磁石で形成されており、図5の矢印で示す方向に着磁処理がなされている。
接触部材14は軟磁性体であるので磁気部材15の発生する磁場に対する磁路を形成するヨークとしても作用する。
このように、振動子1には接触部材14および磁気部材15により第二の磁力発生部が形成される。
被駆動体2は略棒状であることは実施例1と同一であるが、材料は電磁軟鉄を用いている。
被駆動体2の表面にはNiメッキが施されている。被駆動体2は第一の磁力発生部として作用する。
接触部材14及び磁気部材15のY方向寸法は、実施例1と同様に被駆動体2のY方向寸法より狭くなるように形成されている。
このような構成とすることで、実施例1と同様に被駆動体2と振動子1のY方向の相対ずれが生じても、磁気吸引力により報じるX軸回りのモーメントの発生を抑えることができる。
永久磁石とヨークを振動子1上に配置することで、磁力発生手段を省スペースに抑えることができる。
実施例3として、本発明の振動波駆動装置を適用したリニア型超音波モータの構成例について、図6、図7を用いて説明する。図6において被駆動体2のX方向正側は略して示している。
これらの図に示されるように、本実施例のリニア型超音波モータにおいて、被駆動体2は実施例1と同様にNdFe磁石材料を用いた永久磁石によって形成されており、図7の矢印の方向に着磁処理が施されている。被駆動体2の表面にはNiメッキが施されている。
本実施例においては、図6で示すように振動子接触面12−3は振動板12と同一部材で一体に形成されている。
軟磁性体により形成される加圧部材14は2つの振動子接触面12−3の間に位置する箇所において振動板12上に固定されている。
被駆動体2と加圧部材14の磁気作用により被駆動体接触面2−1と振動子接触面12−3に間に加圧力が生じる。
この加圧部材14は被駆動体2とは接触しない厚さを選択している。図7に示すように加圧部材14は被駆動体2のY方向の幅に対して狭く形成されている。
また、振動子接触面12−3と加圧部材14を別の部品で形成することで、振動子接触面12−3は軟磁性体に限定されることなく任意の材料を選択することができる。
2:被駆動体
3:振動型駆動装置(リニア型超音波モータ)
11:加圧部材
11−1:接触面
12:振動板
12−1:振動部位
12−2:支持部位
13:電気−機械変換素子
Claims (6)
- 少なくとも電気−機械エネルギー変換素子と接触部とを有する振動子と、前記接触部と加圧接触する被駆動体とを備え、
前記振動子と前記被駆動体は第1の方向に相対的に移動可能に構成され、
前記被駆動体は、第一の磁力発生部を備え、
前記振動子は、前記第1の方向と直交し前記加圧の方向とも直交する第2の方向において第一の磁力発生部の幅より狭い範囲に第二の磁力発生部を備え、
前記被駆動体の前記接触部との前記第2の方向への加圧接触が、前記第一の磁力発生部と前記第二の磁力発生部との間で発生する磁気吸引力により行われることを特徴とする振動波駆動装置。 - 前記接触部が、前記第二の磁力発生部を構成していることを特徴とする請求項1に記載の振動波駆動装置。
- 前記第一の磁力発生部と前記第二の磁力発生部の少なくとも一方が、永久磁石を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動波駆動装置。
- 前記接触部が平板状の振動板に配設され、前記振動板に面外曲げ振動モードを発生させ、前記接触部に楕円運動を生じさせることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の振動波駆動装置。
- 前記電気−機械エネルギー変換素子への交流信号の印加によって前記接触部に楕円運動を生じさせ、該接触部と加圧接触する前記被駆動体を前記振動子に対して相対移動させる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の振動波駆動装置。
- 前記第2の方向において、前記第二の磁力発生部は、全体が前記被駆動部材の接触面よりも内側に配置されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の振動型駆動装置。
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